(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106566
(43)【公開日】2022-07-20
(54)【発明の名称】管腔内物質捕捉用デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 17/22 20060101AFI20220712BHJP
A61F 2/01 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
A61B17/22
A61F2/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001661
(22)【出願日】2021-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】591245624
【氏名又は名称】株式会社東海メディカルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏成
(72)【発明者】
【氏名】山田 真悟
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160EE30
4C160MM37
(57)【要約】
【課題】
効率よく、かつ確実に、デブリスや血栓等の塞栓物質を捕捉することができる管腔内物質捕捉用デバイスを提供する。
【解決手段】
管腔内用物質捕捉デバイス100は、全長に亘って中空のルーメンが形成された外鞘10と、外鞘10内に配置される操作用シャフト20と、操作用シャフト20に設けられた塞栓捕捉フィルター30と、操作用シャフト20の先端又は先端近傍に設けられ、外鞘のルーメンと略同一の直径に形成されたアンカー40と、を備え、塞栓捕捉フィルター30は、袋状又は傘状に形成されており、開口部が先端側を向くように操作用シャフト20に取り付けられており、アンカー40は、全体が前記開口部より先端に配置されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体内の管腔に挿入された物質を捕捉するための管腔内用物質捕捉デバイスにおいて、
全長に亘って中空のルーメンが形成された外鞘と、
前記外鞘内に配置される操作用シャフトと、
前記操作用シャフトに設けられた塞栓捕捉フィルターと、
前記操作用シャフトの先端又は先端近傍に設けられ、前記外鞘のルーメンと略同一の直径に形成されたアンカーと、
を備え、
前記塞栓捕捉フィルターは、袋状又は傘状に形成されており、開口部が先端側を向くように前記操作用シャフトに取り付けられており、前記アンカーは、先端側端部が前記塞栓捕捉フィルターの長手方向の2分の1よりも先端側に配置されていることを特徴とする管腔内用物質捕捉デバイス。
【請求項2】
前記アンカーは、全体が開口部よりも先端に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の管腔内用物質捕捉デバイス。
【請求項3】
前記アンカーは、円錐台形、円錐形、球形又は楕円球形に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の管腔内用物質捕捉デバイス。
【請求項4】
前記アンカーは、表面に凹凸、溝又は粗面からなる滑止め加工が施されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の管腔内用物質捕捉デバイス。
【請求項5】
前記塞栓捕捉フィルターは、前記操作用シャフトの先端に複数取り付けられ、先端側が前記操作用シャフトの外周方向に放射状に開くように形状記憶されている複数のワイヤと、
隣接する前記ワイヤの間に血液を透過可能な網目状に形成されたメッシュ部材と、
を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の管腔内用物質捕捉デバイス。
【請求項6】
前記塞栓捕捉フィルターは、前記操作用シャフトの先端に複数取り付けられ、先端側が前記操作用シャフトの外周方向に放射状に開くように形状記憶されている複数のワイヤと、
直線状の前記ワイヤの両側に設けられた血液を透過可能な網目状に形成されたメッシュ部材と、を備え、
前記メッシュ部材は、隣接する前記ワイヤに設けられた前記メッシュ部材と少なくとも一部が重なって設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の管腔内用物質捕捉デバイス。
【請求項7】
前記塞栓捕捉フィルターは、前記操作用シャフトの先端に複数取り付けられ、先端がループ状に形成されたループ部を有している複数のワイヤと、
前記ループ部に設けられたメッシュ部材と、を有し、
前記ループ部は、隣接する前記ループ部と少なくとも一部が重なるように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の管腔内用物質捕捉デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管腔内物質捕捉用デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、総頸動脈、鎖骨下動脈、大動脈等の血管狭窄部において、インターベンション術のステントグラフト留置によって、経皮的血管形成手術やバルーンカテーテルによる拡張手術等が行われている。こうした手術中に遊離したデブリスや血栓等が血管末梢に流れると、血管等を梗塞させる可能性がある。
【0003】
フィルターデバイスは、こうした手術において、血管などの塞栓物質が末梢側に流出することを防止するために、治療部位より末梢側に設置されて塞栓物質を捕捉するためのデバイスである。このフィルターデバイスとして、袋状の開口部をガイドワイヤの近位後端側に配置し、袋部を遠位先端側に配置した袋状のフィルターが取り付けられたデバイスが使用されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、効率よく、かつ確実に、デブリスや血栓等の塞栓物質を捕捉することができる管腔内物質捕捉用デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の管腔内用物質捕捉デバイスは、
身体内の管腔に挿入された物質を捕捉するための管腔内用物質捕捉デバイスにおいて、
全長に亘って中空のルーメンが形成された外鞘と、
前記外鞘内に配置される操作用シャフトと、
前記操作用シャフトに設けられた塞栓捕捉フィルターと、
前記操作用シャフトの先端又は先端近傍に設けられ、前記外鞘のルーメンと略同一の直径に形成されたアンカーと、
を備え、
前記塞栓捕捉フィルターは、袋状又は傘状に形成されており、開口部が先端側を向くように前記操作用シャフトに取り付けられており、前記アンカーは、先端側端部が塞栓捕捉フィルターの長手方向の2分の1よりも先端側に配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明にかかる管腔内用物質捕捉デバイスは、操作用シャフトの先端に設けられた塞栓捕捉フィルターが傘状に開いた状態で維持できるように形成されている。そのため、外鞘から塞栓捕捉フィルターを押し出すことによって、塞栓捕捉フィルターは自動的に傘状に開いて管腔内で固定されるとともに、管腔断面に対して高い比率で断面を塞ぐことができる(概ね90%以上の断面を塞ぐことができる。)。一方、回収するときは、捕捉した捕捉物質を周囲からメッシュ部材で包み込むようにして外鞘内に収容することができるので、捕捉物質を血液の流下方向に流してしまう可能性を低減することができる。さらに、外鞘内に回収した捕捉物質は、塞栓捕捉フィルターより先端側で外鞘のルーメンをアンカーで蓋をするかもしくはアンカーと外鞘で挟み込むことができるので、一旦回収した塞栓物質を外鞘から再度拡散させる可能性を防ぐことができる。
【0009】
また、本発明にかかる管腔内用物質捕捉デバイスにおいて、前記アンカーは、全体が開口部よりも先端に配置されていることを特徴とするものであってもよい。
【0010】
かかる構成を採用することによって、塞栓物質に対してより確実に蓋をすることができ、一旦回収した塞栓物質を外鞘から再度拡散させる可能性を防ぐことができる。
【0011】
また、本発明にかかる管腔内用物質捕捉デバイスにおいて、前記アンカーは、円錐台形、円錐形、球形又は楕円球形に形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0012】
かかる構成を採用することによって、アンカーを外鞘のルーメン内に引き戻しやすくすることができる。
【0013】
さらに、本発明にかかる管腔内用物質捕捉デバイスにおいて、前記アンカーは、表面に凹凸、溝又は粗面からなる滑止め加工が施されていることを特徴とするものであってもよい。
【0014】
かかる構成を採用することによって、一度捕捉した塞栓物質を再拡散する可能性を低減することができる。
【0015】
さらに、本発明にかかる管腔内用物質捕捉デバイスにおいて、前記塞栓捕捉フィルターは、前記操作用シャフトの先端に複数取り付けられ、先端側が前記操作用シャフトの外周方向に放射状に開くように形状記憶されている複数のワイヤと、
隣接する前記ワイヤの間に血液を透過可能な網目状に形成されたメッシュ部材と、
を備えていることを特徴とするものであってもよい。
【0016】
かかる構成を採用することによって、血管等の管腔の断面をほぼ完全に閉塞させることができるので、捕捉物質を取り逃すことをほぼ防止することができる。
【0017】
さらに、本発明にかかる管腔内用物質捕捉デバイスにおいて、
前記塞栓捕捉フィルターは、前記操作用シャフトの先端に複数取り付けられ、先端側が前記操作用シャフトの外周方向に放射状に開くように形状記憶されている複数のワイヤと、
直線状の前記ワイヤの両側に設けられた血液を透過可能な網目状に形成されたメッシュ部材と、を備え、
前記メッシュ部材は、隣接する前記ワイヤに設けられた前記メッシュ部材と少なくとも一部が重なって設けられていることを特徴とするものであってもよい。
【0018】
かかる構成を採用することによって、塞栓捕捉フィルターを外鞘に収容する場合に、メッシュ部材を折り畳むのではなく、重なり具合を大きくして収容することになるため、折り畳む場合と比較して、塞栓捕捉フィルターを外鞘内に回収する際に抵抗が小さく、容易に外鞘内に収容することができる。
【0019】
さらに、本発明にかかる管腔内用物質捕捉デバイスにおいて、
前記塞栓捕捉フィルターは、前記操作用シャフトの先端に複数取り付けられ、先端がループ状に形成されたループ部を有している複数のワイヤと、
前記ループ部に設けられたメッシュ部材と、を有し、
前記ループ部は、隣接する前記ループ部と少なくとも一部が重なるように形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0020】
ワイヤをループ状に形成することによって、ワイヤの端部が血管等に接触することを防止することができ、血管等の管腔の内壁を損傷させることを防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる管腔内用物質捕捉デバイスによれば、効率よく、かつ確実に、デブリスや血栓等を捕捉することができる管腔内物質捕捉用デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、第1実施形態にかかる管腔内用物質捕捉デバイス100の構成の概略を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態にかかる管腔内用物質捕捉デバイス100の使用方法を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態にかかる管腔内用物質捕捉デバイス100のアンカー40の配置例を示す図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態にかかる管腔内用物質捕捉デバイス100の構成の概略を示す図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態にかかる管腔内用物質捕捉デバイス100において、塞栓捕捉フィルター30の構成の概略を示す図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態にかかる管腔内用物質捕捉デバイス100の使用方法を示す図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態にかかる管腔内用物質捕捉デバイス100において、塞栓捕捉フィルター30の別実施形態の構成の概略を示す図である。
【
図8】
図8は、第4実施形態にかかる管腔内用物質捕捉デバイス100において、塞栓捕捉フィルター30の構成の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明にかかる管腔内用物質捕捉デバイス100の実施形態について、図を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【0024】
図1は、第1実施形態にかかる管腔内用物質捕捉デバイス100の概略図が示されている。第1実施形態にかかる管腔内用物質捕捉デバイス100は、
図1に示すように、主として、外鞘10と、操作用シャフト20と、塞栓捕捉フィルター30と、アンカー40と、手元側操作部材70と、を備えている。
【0025】
外鞘10は、管腔内用物質捕捉デバイス100の使用前にあらかじめ塞栓捕捉フィルター30を閉じた状態で治療部位まで運ぶための長尺の筒状の部材であり、少なくとも塞栓捕捉フィルター30が閉じた状態で内部に収容可能な程度の内径を有している。外鞘10は、デリバリーカテーテルを兼ねていてもよい。
【0026】
操作用シャフト20は、先端近傍に塞栓捕捉フィルター30が取り付けられており、主として、塞栓捕捉フィルター30を操作するために使用される部材であり、操作用シャフト20は、遠位端側に取り付けられる手元側操作部材70を操作することによって、塞栓捕捉フィルター30を所望の血管等の治療領域内腔に塞栓捕捉フィルター30を開いたり、血栓等の塞栓物質を回収したりする。操作用シャフト20は、単に、塞栓捕捉フィルター30を進退方向に移動させたり、回転させたりするためにのみ使用する場合には、金属ワイヤやプラスチックワイヤ等のワイヤでもよい。金属ワイヤの素材としては、ステンレス鋼、Ni-Ti(ニッケルチタン)合金、Ni-Ti-Co(ニッケルチタンコバルト)合金等が使用される。プラスチックワイヤとしては、例えば、ポリアミド、ポリエチレン、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン又はポリプロピレン等を挙げることができる。一方、薬液を注入したり、ステント等を挿入したりする場合には、外鞘10内に挿通可能な太さを有するカテーテルやマイクロカテーテルを使用してもよい。カテーテルやマイクロカテーテルに使用する素材としては、プラスチックワイヤと同様の素材を挙げることができる。
【0027】
外鞘10及び操作用シャフト20は、先端に向かって硬度が低くなるように形成してもよい。遠位端側をより柔軟に形成して血管の追従性を高めるためである。特に先端から30cm~50cmの長さの範囲を柔軟に形成するとよい。かかる範囲を柔軟に設定することによって、血管内の追従性が効果的に向上し、より挿入しやすくすることができる。
【0028】
また、外鞘10及び操作用シャフト20は、管腔内用物質捕捉デバイス100を挿入する際の挿入性を向上させるため、又は治療デバイスの通過性を向上させるため、又は血栓の付着を防止させるために、フッ素コーティングや親水性コーティング等の滑り性を向上させるための加工を施してもよい。親水性コーティングは、操作用シャフト20が金属の場合に直接コーティングしてもよいが、樹脂を被覆した後にコーティングしてもよい。操作用シャフト20の滑り性を向上させることによって、デリバリーカテーテル内で塞栓捕捉フィルター30を移動させる場合に、よりスムーズに移動させることができる。
【0029】
塞栓捕捉フィルター30は、全体的に袋状の形態を維持するように記憶されてなり、開いた側が先端側に向くように、操作用シャフト20に取り付けられている。具体的には、記憶性を有する金属製のワイヤを編成して形成されたメッシュ部材で形成されている。メッシュ部材は、織り込み又は編み込んで網目状に形成されているシート状の部材であり、メッシュ孔は、血液は通過可能であるが、血栓やデブリス等は通過しない程度に形成されている。塞栓捕捉フィルター30は、操作用シャフト20に対して、操作用シャフト20の先端が塞栓捕捉フィルター30の開口部30aの外側に配置される位置に取り付けられる。
【0030】
アンカー40は、操作用シャフト20の先端又は先端近傍に設けられている。アンカー40は、最も直径の長い部分が外鞘10のルーメンの内径とほぼ同様の直径となるように設けられている。好ましくは、ルーメンの内径に対して、±0.1mm程度の直径となるように作製するとよい。アンカー40は、
図3に示すように、アンカー40の先端が少なくとも塞栓補足フィルター30の長手方向の長さの半分(d/2)よりも先端側に配置されるように配置する。好ましくは、アンカー40全体が塞栓捕捉フィルター30の開口部30aの外側に配置される位置に取り付けるとよい。アンカー40の形態は、円錐体、球体、楕円球体等を採用することができるが、好ましくは、
図1に示すように、円錐台形に形成し、底面側が先端側にくるように取り付けるとよい。かかる形態を採用することによって、アンカーを外鞘10のルーメン内に引き戻しやすくすることができる。また、アンカー40の表面は、凹凸を設けたり、溝を設けたり、粗面に形成したりしてもよい。このように、滑り止め加工を施こすことによって、アンカー40と外鞘10に挟み込んだ際に、塞栓物質2を摩擦力によって確実に保持することができる。
【0031】
以上のように作製された第1実施形態にかかる管腔内用物質捕捉デバイス100は、
図2Aに示すように、使用前は、塞栓捕捉フィルター30は、傘が折り畳まれた状態で外鞘10内に収容されている。この状態で、管腔1内の治療領域である所定の位置まで外鞘10を身体内に挿入した後、
図2Bに示すように、手元側操作部材70によって操作用シャフト20を操作し、塞栓捕捉フィルター30を外鞘10の先端から露出させることによって、
図2Cに示すように塞栓捕捉フィルター30は自動的に開く。この開いた状態で塞栓捕捉フィルター30は管腔1内に固定されるので、流れてくる血栓、デブリス等の塞栓物質2を
図2D、
図2Eに示すように、捕捉することができる。回収する場合には、
図2Fに示すように、操作用シャフト20を外鞘10に対して引くことによって、塞栓物質2を塞栓捕捉フィルター30内に閉じ込めた状態で外鞘10内に収容するとともに、塞栓捕捉フィルター30より先端側で外鞘10のルーメンをアンカー40で蓋をしたり、外鞘10とアンカー40で挟み込んで固定することができるので、一旦回収した塞栓物質2を外鞘10から再度拡散させる可能性を防ぐことができる。
【0032】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態にかかる管腔内用物質捕捉デバイス100について説明する。第2実施形態にかかる管腔内用物質捕捉デバイス100が
図4に示されている。第2実施形態にかかる管腔内用物質捕捉デバイス100は、外鞘10、操作用シャフト20及びアンカー40は第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。第2実施形態は、第1実施形態に対して、塞栓捕捉フィルター30の形態が異なる。
【0033】
第2実施形態にかかる塞栓捕捉フィルター30は、操作用シャフト20の先端に取り付けられているワイヤ31と、このワイヤ31に取り付けられたシート状のメッシュ部材32と、を備えている。なお、本実施形態においては、操作用シャフト20が金属ワイヤである場合を例に説明する。
【0034】
ワイヤ31は、操作用シャフト20の先端に取り付けられた円筒状のスリーブ34の外周に対して、複数本が等間隔となる配置され、先端側に延びるように取り付けられている。また、ワイヤ31は、スリーブ34の先端又は先端近傍において、
図5に示すように先端側がスリーブ34の断面中心から外周方向へ広がるように屈曲して形成されている。ワイヤ31は、この屈曲形状に復元可能な弾性又は形状記憶性を有する金属又はプラスチックが使用される。屈曲角度αは、長手方向に対して30°~90°に設定される。ワイヤ31の本数は、限定するものではないが、少なくとも3本以上であり、好ましくは、6本以上、より好ましくは、8本以上設けるとよい。ワイヤ31は先端側から視認した場合には、直線状に形成される。
【0035】
メッシュ部材32は、織り込み又は編み込んで網目状に形成されているシート状の部材であり、メッシュ孔は、血液は通過可能であるが、血栓やデブリス等は通過しない程度に形成されている。メッシュ部材32は、傘布を張布するように複数のワイヤ31の間に設けられている。好ましくは、ワイヤ31に対して何らの力を加えていない傘状の形態のときにメッシュ部材32が折り畳まれて重なる部分がない程度に張られるように取り付けることが好ましい。メッシュ部材32は、ワイヤ31の内周側に設けても、外周側に設けても良い。また、ワイヤ31が外部に露出しないように、2枚のメッシュ部材32をワイヤ31の外周側及び内周側の両方に設けても良い。また、ワイヤ31の先端が露出しないように先端側のみメッシュ部材32を折り返して形成したり、
図5の拡大図に示すように、ワイヤ31の先端を折り曲げてワイヤ31の先端が直接管腔に接触しないように設けたりしても良い。アンカー40が、全体が塞栓捕捉フィルター30の開口部30aの外側に配置される位置に取り付けられる点は、第1実施形態と同様である。
【0036】
なお、操作用シャフト20にカテーテルを使用するときは、先端にスリーブ34を取り付けることなく、カテーテルに直接ワイヤ31を取り付けても良い。
【0037】
以上のように作製された第2実施形態にかかる管腔内用物質捕捉デバイス100は、
図6Aに示すように、使用前は、塞栓捕捉フィルター30は、傘が折り畳まれた状態のように外鞘10内に収容されている。この状態で、管腔1内の所定の位置まで外鞘10を身体内に挿入した後、手元側操作部材70によって操作用シャフト20を操作し、塞栓捕捉フィルター30を外鞘10の先端から露出させることによって、
図6Bに示すように傘状に自動的に開く。この開いた状態で管腔1内に固定されるので、流れてくる血栓、デブリス等の塞栓物質2を捕捉することができる。回収する場合には、
図6Cに示すように、操作用シャフト20を外鞘10に対して引くことによって、塞栓物質2をメッシュ部材32内に閉じ込めた状態で外鞘10内に収容して回収することができる。この際に、アンカー40と外鞘10とで、塞栓捕捉フィルター30より先端側で外鞘10のルーメンをアンカー40で蓋をすることができるので、一旦回収した塞栓物質2を外鞘10から再度拡散させる可能性を防ぐことができる。
【0038】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態にかかる管腔内用物質捕捉デバイス100について説明する。第3実施形態にかかる管腔内用物質捕捉デバイス100が
図7に示されている。第3実施形態にかかる管腔内用物質捕捉デバイス100は、外鞘10、操作用シャフト20及びアンカー40は第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。第3実施形態は、第1実施形態に対して、塞栓捕捉フィルター30の形態が異なる。
【0039】
第3実施形態にかかる塞栓捕捉フィルター30は、第2実施形態と同様に、ワイヤ31が操作用シャフト20の先端に取り付けられた円筒状のスリーブの外周に対して、複数本が等間隔となるよう先端側に延びるように取り付けられており、かつワイヤ31がスリーブの先端又は先端近傍において、先端側がスリーブ34の断面中心から外周方向へ広がるように屈曲して形成されている点は、第2実施形態と同様である。第3実施形態では、メッシュ部材32がワイヤ31の両側に設けられ、先端側の幅が広い涙型の形状となるように取り付けられている。隣り合うワイヤ31に取り付けられたメッシュ部材32は、それぞれ少なくとも一部が重なるように形成されている。
【0040】
こうして作製された塞栓捕捉フィルター30は、外鞘10内に配置されているときは、隣接するワイヤ31に取り付けられたメッシュ部材32が大きく重なった状態で収容される。この状態で、管腔内の所定の位置まで外鞘10を移動させた後に、操作用シャフト20によって、塞栓捕捉フィルター30を外鞘10の先端から露出させることによって、メッシュ部材32の重なり具合が小さくなって先端側が花びらのように開くことになる。この開いた状態での重なり具合は、好ましくは、1つのメッシュ部材32の面積に対して5%以上20%以下であることが好ましい。重なり具合が小さすぎると、塞栓物質や血流の流れによって塞栓物質がメッシュ部材32とメッシュ部材32の間から通過してしまう可能性があるからであり、逆に重なり具合が大きすぎると、閉じた状態のときに外鞘10に収容できない可能性があるからである。
【0041】
なお、第3実施形態にかかる塞栓捕捉フィルター30において、メッシュ部材32の形態は、扇形となるように形成してもよい。扇形に作製することによって、塞栓捕捉フィルター30を開いた場合に、先端側に隙間が発生することを低減することができる。
【0042】
また、第2実施形態と同様に、ワイヤ31の先端が露出しないように先端側のみメッシュ部材32を折り返して形成したり、ワイヤ31の先端を折り曲げてワイヤ31の先端が直接管腔に接触しないように設けたりしても良い。
【0043】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態にかかる管腔内用物質捕捉デバイス100について説明する。第4実施形態にかかる管腔内用物質捕捉デバイス100が
図8に示されている。第4実施形態にかかる管腔内用物質捕捉デバイス100は、外鞘10及び操作用シャフト20は第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。第4実施形態は、第1実施形態に対して、塞栓捕捉フィルター30の形態が異なる。
【0044】
第4実施形態にかかる塞栓捕捉フィルター30は、ワイヤ31を操作用シャフト20の先端にループ状に形成したループ部31aが形成されている。このループ部31aが等間隔となるよう先端側に延びるように取り付けられており、かつワイヤ31がスリーブ34の先端又は先端近傍において、先端側がスリーブ34の断面中心から外周方向へ広がるように屈曲して形成されている。そして、このループ部31aのワイヤ31の内周側にメッシュ部材32が設けられている。隣り合うワイヤ31に取り付けられたメッシュ部材32は、それぞれ一部が重なるように形成されている。
【0045】
こうして作製された塞栓捕捉フィルター30は、第3実施形態と同様に、外鞘10内に配置されているときは、隣接するワイヤ31に取り付けられたメッシュ部材32が大きく重なった状態で収容される。この状態で、管腔内の所定の位置まで外鞘10を移動させた後に、操作用シャフト20によって、塞栓捕捉フィルター30を外鞘10の先端から露出させることによって、メッシュ部材32の重なり具合が小さくなって先端側が花びらのように開くことになる。この開いた状態での重なり具合は、好ましくは、1つのメッシュ部材32の面積に対して5%以上20%以下であることが好ましい。重なり具合が小さすぎると、塞栓物質や血流の流れによって塞栓物質がメッシュ部材32とメッシュ部材32の間から通過してしまう可能性があるからであり、逆に重なり具合が大きすぎると、閉じた状態のときに外鞘10に収容できない可能性があるからである。
【0046】
なお、第4実施形態にかかる塞栓捕捉フィルター30において、ワイヤ31のループ部31aの形状を扇形に形成してもよい。扇形に形成することによって、塞栓捕捉フィルター30を開いた場合に、先端側に隙間が発生することを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
上述した実施の形態で示すように、特に、血栓やデブリスの飛散を防止するのに利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1…管腔、2…塞栓物質、10…外鞘、20…操作用シャフト、30…塞栓捕捉フィルター、30a…開口部、31…ワイヤ、31a…ループ部、32…メッシュ部材、34…スリーブ、40…アンカー、70…手元側操作部材、100…管腔内用物質捕捉デバイス