(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010657
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】加熱冷却システム及び加熱冷却システムに用いる貯留槽
(51)【国際特許分類】
F25B 1/06 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
F25B1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020111340
(22)【出願日】2020-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】飛田 泰平
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でありながら、冷却応答に優れた加熱冷却装置の提供。
【解決手段】加熱冷却装置は、対象となる生産物に対して加熱と冷却を切り換えて生産物の温度を制御する。そして、加熱冷却装置が備えるドレンタンク2は、第一仕切り板21及び第二仕切り板22によって第一室71と第二室72に区分されており、ドレン排出管53からの高温のドレンは第一室71に流入する一方、冷却モードにおいて第二室72内の水が水供給管52を通じてジャケット部25に供給される。このため、第一室71に流入した高温のドレンが、第二室72内の水に直ちに混ざり合うことはなく、冷却モードにおいてジャケット部25には冷却に適した温度の水が供給される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を加熱する加熱手段、
冷却用流体を内部に貯留する貯留槽、
貯留槽から冷却用流体を導出して対象物に向けて供給し、対象物を冷却する冷却手段、
対象物の加熱又は冷却に際して発生する高温流体を貯留槽の内部に補給する補給手段、
を備えており、対象物の加熱と冷却との切り換えが可能な加熱冷却システムにおいて、
前記貯留槽は、内部を第一空間と第二空間とに区分する区分手段であって、第一空間と第二空間とを連通させ、冷却用流体が流れる連通流路が形成されるよう配置された区分手段を備えており、
補給手段は第一空間に向けて前記高温流体を補給し、冷却手段は第二空間から前記冷却用流体を導出する、
ことを特徴とする加熱冷却システム。
【請求項2】
請求項1に係る加熱冷却システムにおいて、
前記連通流路は、冷却用流体に蛇行する流れを生じさせるように形成されている、
ことを特徴とする加熱冷却システム。
【請求項3】
請求項2に係る加熱冷却システムにおいて、
前記区分手段は複数配置されており、
当該複数の区分手段は水平方向にずれた位置に配置され、一方の区分手段の下端部と他方の区分手段の上端部とがそれぞれ鉛直方向に交差して配置されていることによって、連通流路を冷却用流体が蛇行するように形成されている、
ことを特徴とする加熱冷却システム。
【請求項4】
請求項1、請求項2又は請求項3に係る加熱冷却システムにおいて、
前記貯留槽に貯留された冷却用流体の温度を制御する温度制御手段、
を備えたことを特徴とする加熱冷却システム。
【請求項5】
内部に貯留された冷却用流体が対象物に向けて導出され、対象物の加熱又は冷却に際して発生する高温流体が内部に補給される、加熱冷却システムに用いる貯留槽において、
内部を第一空間と第二空間とに区分する区分手段であって、第一空間と第二空間とを連通させ、冷却用流体が流れる連通流路が形成されるよう配置された区分手段を備えており、
第一空間に向けて前記高温流体を補給し、第二空間から前記冷却用流体を導出する、
ことを特徴とする加熱冷却システムに用いる貯留槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る加熱冷却システム及び加熱冷却システムに用いる貯留槽は、対象物の加熱又は冷却を切り換えることが可能な加熱冷却システムに用いる貯留槽の構造の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱冷却システムとしての加熱冷却装置は、食品や医薬品等の製造・加工過程で用いられる装置であり、生産物である対象物の加熱と冷却を切り換え、対象物の温度を自在にコントロールする。
【0003】
加熱冷却装置としては、後記特許文献1に開示されている装置がある。この加熱冷却装置1は、反応釜21内の対象物を加熱する場合、蒸気供給管11を通じて反応釜21を覆うジャケット部22に蒸気を供給する。
【0004】
この蒸気は対象物と熱交換して凝縮し、対象物を加熱するが、この際、凝縮によってドレン(凝縮水)が発生する。発生したドレンは、スチームトラップ33が設けられているドレン排出管13を通じて第1エグゼクタ26に吸引され、ドレンタンク23に貯留される(特許文献1、段落番号[0019])。
【0005】
反応釜21内の対象物を冷却する場合は、第2ポンプ25を駆動し、ドレンタンク23内の水を、水供給管12を通じてジャケット部22に供給する。これによって、水が対象物と熱交換して気化し、対象物が気化冷却される。なお、ジャケット部22で気化しきれなかった水はドレン排出管13を介して第1エグゼクタ26に吸引され、ドレンタンク23に流入する(特許文献1、段落番号[0020])。
【0006】
また、加熱冷却装置として、後記特許文献2に開示されている装置がある。この加熱冷却装置は、反応釜1のジャケット部2に、冷却流体供給管5と蒸気供給管8を接続している。そして、ジャケット部2の下部にエグゼクタ10を介在して組み合わせ真空ポンプ4を接続している。この組み合わせ真空ポンプ4は、循環ポンプ14及び冷水タンク13、循環ポンプ24及び温水タンク25、並びにヒートポ ンプ3を有しており、三方切換弁29で接続されている。
【0007】
そして、三方切換弁29によって供給ラインを切り換え、これによって対象物の加熱又は冷却を行う(特許文献2、段落番号[0011]-[0017])。なお、ジャケット部2内における加熱によって発生したドレンと一部の蒸気は、排出管20、21を通じてエグゼクタ10に吸引され温水タンク25に流入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-218994号公報
【特許文献2】特開2013-64528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、前述の特許文献1に開示された加熱冷却装置は、加熱から冷却に切り換えるとき、冷却応答に遅れが生じ、急冷却を行うことができない場合がある。
【0010】
すなわち、この加熱冷却装置は対象物を冷却する場合、ドレンタンク23内の水をジャケット部22に供給するが、ドレンタンク23には加熱時に発生した高温のドレンがドレン排出管13を通じて流入している。このため、ドレンタンク23内の温度を制御して低温に設定したとしても、ドレンタンク23内の水温が下がりにくく、加熱から冷却への切り換えに遅れが生じる。冷却応答の遅れは、冷却時間や使用水量の増大を招く。
【0011】
これに対して、前述の特許文献2に開示された加熱冷却装置は、冷却タンク13と温水タンク25とを別々に設け、ジャケット部2で発生した高温のドレンを温水タンク25に流入させている。このため、特許文献2に開示された加熱冷却装置においては、高温のドレンの混入によって冷却水の温度が高くなることはなく、冷却応答に遅れが生じることはない。
【0012】
しかし、特許文献2に開示された加熱冷却装置は、冷却タンク13と温水タンク25とを別々に設け、さらに供給ラインを切り換えるための三方切換弁29を設ける必要があり、構成が複雑化、大型化してしまう。
【0013】
そこで本願に係る加熱冷却システム及び加熱冷却システムに用いる貯留槽は、簡易な構成でありながら、冷却応答に優れた加熱冷却装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願に係る加熱冷却システムは、
対象物を加熱する加熱手段、
冷却用流体を内部に貯留する貯留槽、
貯留槽から冷却用流体を導出して対象物に向けて供給し、対象物を冷却する冷却手段、
対象物の加熱又は冷却に際して発生する高温流体を貯留槽の内部に補給する補給手段、
を備えており、対象物の加熱と冷却との切り換えが可能な加熱冷却システムにおいて、
前記貯留槽は、内部を第一空間と第二空間とに区分する区分手段であって、第一空間と第二空間とを連通させ、冷却用流体が流れる連通流路が形成されるよう配置された区分手段を備えており、
補給手段は第一空間に向けて前記高温流体を補給し、冷却手段は第二空間から前記冷却用流体を導出する、
ことを特徴とする。
【0015】
また、本願に係る加熱冷却システムに用いる貯留槽は、
内部に貯留された冷却用流体が対象物に向けて導出され、対象物の加熱又は冷却に際して発生する高温流体が内部に補給される、加熱冷却システムに用いる貯留槽において、
内部を第一空間と第二空間とに区分する区分手段であって、第一空間と第二空間とを連通させ、冷却用流体が流れる連通流路が形成されるよう配置された区分手段を備えており、
第一空間に向けて前記高温流体を補給し、第二空間から前記冷却用流体を導出する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本願に係る加熱冷却システム及び加熱冷却システムに用いる貯留槽においては、貯留槽は、内部を第一空間と第二空間とに区分する区分手段であって、第一空間と第二空間とを連通させ、冷却用流体が流れる連通流路が形成されるよう配置された区分手段を備えている。そして、第一空間に向けて高温流体を補給し、第二空間から冷却用流体を導出する。
【0017】
すなわち、区分手段によって、高温流体が補給される第一空間と、冷却用流体を導出する第二空間とを区分している。このため、貯留槽内に区分手段を配置するだけで、第一空間の冷却用水よりも第二空間の冷却用水を低温に維持することができ、簡易な構成でありながら、冷却応答に優れた加熱冷却装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本願に係る加熱冷却システム及び加熱冷却システムに用いる貯留槽の第1の実施形態である加熱冷却装置1を示す全体のブロック図である。
【
図2】
図1に示す加熱冷却装置1のドレンタンク2の詳細を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[実施形態における用語説明]
実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係る加熱冷却システム及び加熱冷却システムに用いる貯留槽の下記の要素に対応している。
【0020】
加熱冷却装置1・・・加熱冷却システム
ドレンタンク2・・・貯留槽
ドレンタンク2、ポンプ16及び水供給管52・・・冷却手段
エグゼクタ12及びドレン排出管53・・・補給手段
反応釜20内の生産物・・・対象物
第一仕切り板21及び第二仕切り板22・・・区分手段
冷却制御部28・・・温度制御手段
蒸気供給管51・・・加熱手段
第一室71・・・第一空間
第二室72・・・第二空間
接続流路75・・・連通流路
水・・・冷却用流体
【0021】
[第1の実施形態]
本願に係る加熱冷却システム及び加熱冷却システムに用いる貯留槽の第1の実施形態を説明する。
【0022】
(加熱冷却装置1の構成の説明)
図1に本実施形態に係る加熱冷却装置1の全体構成を示す。加熱冷却装置1は、反応釜20内の生産物(図示せず)に対する加熱モードと冷却モードを切り換え、生産物の温度を制御する装置である。
【0023】
反応釜20の全周はほぼジャケット部25によって覆われている。そして、このジャケット部25には、蒸気供給弁31が設けられた蒸気供給管51が接続されており、蒸気生成部(図示せず)からジャケット部25に加熱用の蒸気が供給される。また、ジャケット部25には、水供給弁32が設けられた冷却用の水供給管52の一端が接続されている。そして、水供給管52の他端は、第二循環配管56を介して、例えば円筒形のドレンタンク2に接続されており、ドレンタンク2から水供給管52を通じてジャケット部25に冷却用の水が供給される。
【0024】
ドレンタンク2には、第一ポンプ16を介在させた第一循環配管55が設けられている。第一循環配管55の一端はドレンタンク2の鉛直方向における下方に接続され、他端は上方に接続されて、ドレンタンク2内の水を循環させるようになっている。
【0025】
そして、この第一循環配管55の経路上には第一エグゼクタ11が設けられている。第一エグゼクタ11は、第一ノズル部11aと第一ディフューザ11bから構成されており、第一循環配管55内の流体の流れに従って吸引力を生じる。第一エグゼクタ11の第一ノズル部11aには、ドレン排出管53の一端が接続されており、ドレン排出管53の他端はジャケット部25の底部に接続されている。なお、ドレン排出管53の経路上にはスチームトラップ33が設けられている。
【0026】
また、ドレンタンク2には、第二ポンプ17を介在させた第二循環配管56が設けられている。第二循環配管56の一端はドレンタンク2の鉛直方向における下方に接続され、他端は上方に接続されて、ドレンタンク2内の水を循環させるようになっている。
【0027】
第二循環配管56も第一循環配管55と同様、第二ノズル部12aと第二ディフューザ12bから構成される第二エグゼクタ12が設けられている。第二エグゼクタ12の第二ノズル部12aには、蒸気排出管54の一端が接続されており、蒸気排出管54の他端はジャケット部25に接続されている。また、蒸気排出管54の経路上には蒸気排出弁34が設けられている。なお、第二循環配管12は水供給管52と接続されており、第二循環配管12を循環する水の一部が水供給管52を通じてジャケット部25に冷却用の水として供給される。
【0028】
なお、ドレンタンク2内の温度は冷却制御部28によって制御され、ドレンタンク2内の水が冷却モードに適した低温に維持される。本実施形態に係る冷却制御部28はプレート式熱交換器である。
【0029】
図2は、ドレンタンク2の詳細を示すブロック図である。例えば円筒形のドレンタンク2内には2枚の第一仕切り板21及び第二仕切り板22が設けられている。本実施形態においては、第一仕切り板21はドレンタンク2の内側面に固定されており、鉛直方向におけるドレンタンク2の上面及び下面には接していない。これに対して、第二仕切り板22は、ドレンタンク2の内側面及び下面に接して固定されている。
【0030】
第一仕切り板21から見て、第二仕切り板22と反対側の内側面と、第一仕切り板21との間の空間が第一室71である。また、第二仕切り板22から見て、第一仕切り板21と反対側の内側面と、第二仕切り板22との間の空間が第二室72である。
【0031】
図2に示すように第一仕切り板21の下端部21aと第二仕切り板22の上端部22aとは、それぞれ鉛直方向に交差するように配置されている。また、第一仕切り板21と第二仕切り板22とは、水平方向のずれた位置に配置されている。このため、第一仕切り板21の下21aと第二仕切り板22の上端部22aとの間に空間が生じ、この空間が接続流路75として構成される。
【0032】
前述の第一循環配管55は第一室71に対して設けられており、第一室71内の水が第一循環配管55を循環し、ドレン排出管53からの高温のドレンは第一室71の上部に流入するようになっている。また、前述の第二循環配管56は第二室72に対して設けられており、第二室72内の水が第二循環配管56を循環し、かつ水供給管52を通じてジャケット部25に供給される。
【0033】
なお、ドレンタンク2の上部にはオーバーフロー管19が設けれており、ドレンタンク2の容量を超える余剰のドレンが流入した場合、余剰のドレンはオーバーフロー管19から外部に排出される。
【0034】
(加熱冷却装置1の動作の説明)
続いて加熱冷却装置1の動作を説明する。まず、加熱モードによって反応釜20内の生産物を加熱する場合、第一ポンプ16を駆動すると共に、蒸気供給弁31を開状態に設定し、水供給弁32及び蒸気排出弁34を閉状態に設定する。このとき、第二ポンプ17は停止している。この加熱モードでは、所定温度の蒸気が蒸気供給菅51からジャケット部25に供給され、その蒸気が反応釜20内の生産物と熱交換して凝縮し、生産物が加熱される。
【0035】
また、第一循環配管55においては、第一ポンプ16が駆動することによってドレンタンク2内の水が第一エグゼクタ11に供給され、再びドレンタンク2に戻る。その際、ジャケット部25で蒸気が凝縮して発生したドレンが、スチームトラップ33の作動によってドレン排出管53を通じ第一エグゼクタ11に吸引され、ドレンタンク2の第一室71に流入する。こうして、ジャケット部25で発生したドレンはドレンタンク2に貯留される。
【0036】
次に、冷却モードによって反応釜20内の生産物を冷却する場合、第一ポンプ16及び第二ポンプ17の双方を駆動すると共に、水供給弁32及び蒸気排出弁34を開状態に設定し、蒸気供給弁31を閉状態に設定する。この冷却モードでは、第二循環配管56に設けられている第二ポンプ17が駆動し、ドレンタンク2の第二室72内の水が第二エグゼクタ12に供給されると共に、水供給管52を通じてジャケット部25に供給される。
【0037】
ジャケット部25では、供給された水が反応釜20内の生産物と熱交換して気化し、生産物が気化冷却される。第二エグゼクタ12に供給された水は、再びドレンタンク2に戻る。その際、ジャケット部25で水が気化して発生した蒸気が、蒸気排出管54を介して第二エグゼクタ12に吸引され、ドレンタンク2に流入する。
【0038】
また、第一循環配管55では、加熱モードと同様、第一ポンプ16の駆動によってドレンタンク2の水が第一エグゼクタ11に供給され、再びドレンタンク2に戻る。その際、ジャケット部25で気化しきれなかった水等が、スチームトラップ33の作動によってドレン排出管53を通じ第一エグゼクタ11に吸引されて、ドレンタンク2の第一室71に流入する。
【0039】
ここで、本実施形態においては、前述のようにドレンタンク2内の温度は冷却制御部28によって制御され、ドレンタンク2内の水が冷却モードに適した低温に維持されるようになっている。そして、ドレンタンク2は第一仕切り板21及び第二仕切り板22によって第一室71と第二室72に区分されており、ドレン排出管53からの高温のドレンは第一室71に流入する一方、冷却モードにおいて第二室72内の水が水供給管52を通じてジャケット部25に供給される。
【0040】
このため、第一室71に流入した高温のドレンが、第二室72内の水に直ちに混ざり合うことはなく、冷却モードにおいてジャケット部25には冷却に適した温度の水が供給される。したがって、加熱モードから冷却モードに切り換えた際、冷却応答に遅れが生じることはなく、急冷却を行うことが可能になる。このように、ドレンタンク2内に第一仕切り板21及び第二仕切り板22を配置するだけでジャケット部25に供給される冷却用の水の温度の上昇を抑えることができ、簡易な構成でありながら、冷却応答に優れた加熱冷却装置を得ることができる。
【0041】
さらに、本実施形態においては、第一ポンプ16の駆動によって第一室71内の水は第一循環配管55を循環し、第二ポンプ17の駆動によって第二室72内の水は第二循環配管56を循環する。このように、第一室71内の水と第二室72内の水には、それぞれ独立した循環が生じるため、第二室72内の水温は、第一室71に流入した高温のドレンの影響を受けにくい。したがって、冷却応答に優れた加熱冷却装置をより確実に得ることができる。
【0042】
特に、高温のドレンが流入する第一室71については、加熱モード及び冷却モードのいずれの場合にも第一ポンプ16が駆動して第一室71内の水を循環させている。このため、第二室72内の水温は、第一室71に流入した高温のドレンの影響をより受けにくい。
【0043】
また、第一室71と第二室72とは、接続流路75によって連通しているため、ジャケット部25への冷却用の水の供給によって第二室72内の水量が減少した場合、接続流路75を通じて第一室71内の水が第二室72に移動し、第二室72内の水量が補われる。
【0044】
そして、前述のように、水平方向にずれた位置に配置され、かつ第一仕切り板21の下端部21aと第二仕切り板22の上端部22aとは、それぞれ鉛直方向に交差して配置されているため、接続流路75を通じて第一室71から第二室72に移動する水の流れは、
図2に示す矢印101方向のような蛇行が生じる。このため、第一室71に流入した高温のドレンと、第二室72内の水とはより混ざりにくくなり、冷却応答に優れた加熱冷却装置を確実に得ることができる。
【0045】
[その他の実施形態]
前述の実施形態においては、区分手段として2枚の第一仕切り板21及び第二仕切り板22を例示したが、これに限定されるものではなく、ドレンタンク2(貯留槽)内部を第一空間と第二空間とに区分し、第一空間と第二空間とを連通させる連通流路が形成されるよう配置されたものであれば、他の構造、形状を採用することができる。
【0046】
たとえば、3枚以上の仕切り板を設けることもできる。また、1枚の仕切り板のみを設け、この仕切り板に連通流路として1又は2箇所の貫通孔を形成してもよい。
【0047】
前述の実施形態においては、加熱手段として蒸気を供給する蒸気供給管51を例示したが、これに限定されるものではなく、対象物を加熱するものであれば他の手段を用いることができる。また、前述の実施形態においては、冷却用流体として水を例示したが、対象物を冷却するものであれば他の手段を用いることができる。
【0048】
また、前述の実施形態においては、貯留槽としてドレンタンクを例示したが、冷却用流体を内部に貯留することができものである限り他の構成を採用してもよい。
【0049】
さらに、前述の実施形態においては、補給手段としてエグゼクタ12及びドレン排出管53を例示したが、対象物の加熱又は冷却に際して発生する高温流体を貯留槽の内部に補給するものであれば、他の構成を用いることもできる。たとえば、エグゼクタ12による吸引に代えてポンプの駆動によって直接ドレン(高温流体)を貯留槽に導くようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1:加熱冷却装置 2:ドレンタンク 12:エグゼクタ 16:ポンプ
20:反応釜 21:第一仕切り板 22:第二仕切り板 28:冷却制御部
51:蒸気供給管 52:水供給管 53:ドレン排出管 71:第一室
72:第二室 75:接続流路