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特開2022-106581CRP結合核酸分子、CRP検出用センサ、CRP検出試薬、CRPの検出方法、およびCRP結合領域
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106581
(43)【公開日】2022-07-20
(54)【発明の名称】CRP結合核酸分子、CRP検出用センサ、CRP検出試薬、CRPの検出方法、およびCRP結合領域
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/115 20100101AFI20220712BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220712BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20220712BHJP
   C12Q 1/6811 20180101ALI20220712BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220712BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
C12N15/115 Z ZNA
C12M1/00 A
C12Q1/6876 Z
C12Q1/6811 Z
G01N33/53 X
G01N33/531 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001681
(22)【出願日】2021-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】000232092
【氏名又は名称】NECソリューションイノベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【弁理士】
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】加藤 信太郎
(72)【発明者】
【氏名】皆川 宏貴
(72)【発明者】
【氏名】藤田 智子
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB15
4B029CC01
4B029FA15
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ79
4B063QR32
4B063QR62
4B063QS32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新たな手法により設計された、小型化されたCRPアプタマーを提供する。
【解決手段】CRP結合核酸分子、CRP検出用センサ、CRP検出試薬、CRPの検出方法、およびCRP結合領域に関し、CRP結合核酸分子は、特定の配列からなる塩基配列のポリヌクレオチドからなることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記配列番号3~11のいずれかの塩基配列のポリヌクレオチドからなることを特徴とする、CRP(C反応タンパク質)結合核酸分子。
配列番号3:CCCGGTTACAGATGATCAGGGG
配列番号4:CCGGTTACAGATGATCAGGGGCATTCGA
配列番号5:AGCCCGGTTACAGATGATCAGGGGCATTCGACAGGCT
配列番号6:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGGGG
配列番号7:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGGGGC
配列番号8:CGCACATCAGTTTAGTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGGGGC
配列番号9:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAG
配列番号10:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGG
配列番号11:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGGG
【請求項2】
下記(a)または(b)のいずれかのポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、CRP結合核酸分子。
(a)配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b)前記(a)の塩基配列において、1個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、CRPに結合するポリヌクレオチド
配列番号2:CGGTTACAGATGATCA
【請求項3】
前記結合核酸分子が、塩基が修飾基で修飾された修飾塩基を含む、請求項1または2記載のCRP結合核酸分子。
【請求項4】
前記修飾塩基が、チミン塩基が修飾基で修飾された修飾チミン塩基である、請求項3記載のCRP結合核酸分子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のCRP結合核酸分子を含むことを特徴とする、CRP検出用センサ。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載のCRP結合核酸分子を含むことを特徴とする、CRP検出試薬。
【請求項7】
試料と核酸分子とを接触させ、前記試料中のCRPを検出する工程を含み、
前記核酸分子が、請求項1から4のいずれか一項に記載のCRP結合核酸分子であり、
前記検出工程において、前記試料中のCRPと前記核酸分子とを結合させて、前記結合により、前記試料中のCRPを検出することを特徴とする、CRPの検出方法。
【請求項8】
下記(a)または(b)のいずれかのポリヌクレオチドからなることを特徴とする、CRP結合領域。
(a)配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b)前記(a)の塩基配列において、1個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、CRPに結合するポリヌクレオチド
配列番号2:CGGTTACAGATGATCA
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CRP結合核酸分子、CRP検出用センサ、CRP検出試薬、CRPの検出方法、およびCRP結合領域に関する。
【背景技術】
【0002】
CRP(C反応タンパク質)は、炎症反応の代表的なマーカーとして知られている。CRPの検出のため、CRPを抗原とする抗体を使用したELISA法が報告されている(特許文献1)。
【0003】
一方、アプタマーを用いて標的分子の検出を行う方法が知られている。アプタマーは、標的分子に結合する核酸リガンドであり、その製造方法は、SELEX(Systematic Evolution of Ligands by Exponential enrichiment)法が一般的である(特許文献2)。SELEX法は、核酸プールと前記標的分子との接触、および前記標的分子に結合した核酸の増幅を、1セットの選択処理とし、複数ラウンドを繰り返し行う。これによって、初期の核酸プールから、標的分子に結合可能な配列を目的アプタマーとして選択する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-209140号公報
【特許文献2】特許第2763958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、構造多様性による標的分子との結合量の低下、核酸の人工合成時のエラーの発生、核酸の合成にかかるコスト増加等の観点から、アプタマーを小型化することが求められている。
【0006】
本発明は、新たな手法により設計された、小型化されたCRPアプタマーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の第1のCRP(C反応タンパク質)結合核酸分子は、下記配列番号3~11のいずれかの塩基配列のポリヌクレオチドからなることを特徴とする。
配列番号3:CCCGGTTACAGATGATCAGGGG
配列番号4:CCGGTTACAGATGATCAGGGGCATTCGA
配列番号5:AGCCCGGTTACAGATGATCAGGGGCATTCGACAGGCT
配列番号6:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGGGG
配列番号7:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGGGGC
配列番号8:CGCACATCAGTTTAGTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGGGGC
配列番号9:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAG
配列番号10:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGG
配列番号11:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGGG
【0008】
本発明の第2のCRP結合核酸分子は、下記(a)または(b)のいずれかのポリヌクレオチドを含むことを特徴とする。
(a)配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b)前記(a)の塩基配列において、1個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、CRPに結合するポリヌクレオチド
配列番号2:CGGTTACAGATGATCA
【0009】
本発明のCRP検出用センサは、前記本発明のCRP結合核酸分子を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明のCRP検出試薬は、前記本発明のCRP結合核酸分子を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明のCRPの検出方法は、試料と核酸分子とを接触させ、前記試料中のCRPを検出する工程を含み、
前記核酸分子が、前記本発明のCRP結合核酸分子であり、
前記検出工程において、前記試料中のCRPと前記核酸分子とを結合させて、前記結合により、前記試料中のCRPを検出することを特徴とする。
【0012】
本発明のCRP結合領域は、下記(a)または(b)のいずれかのポリヌクレオチドからなることを特徴とする。
(a)配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b)前記(a)の塩基配列において、1個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、CRPに結合するポリヌクレオチド
配列番号2:CGGTTACAGATGATCA
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、新たな手法により設計された、小型化されたCRPアプタマーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施例1における、小型化配列のスコアを示すヒートマップである。
図2図2は、実施例1における、小型化配列のスコアを示すヒートマップである。
図3図3は、実施例2における、CRPに対する小型化配列の結合性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のCRP結合核酸分子において、前記結合核酸分子が、塩基が修飾基で修飾された修飾塩基を含む、という態様であってもよい。
【0016】
本発明のCRP結合核酸分子において、前記修飾塩基が、チミン塩基が修飾基で修飾された修飾チミン塩基である、という態様であってもよい。
【0017】
(1)CRP結合核酸分子
(1-1)第1のCRP結合核酸分子
本発明の第1のCRP(C反応タンパク質)結合核酸分子は、下記配列番号3~11のいずれかの塩基配列のポリヌクレオチドからなることを特徴とする。
配列番号3:CCCGGTTACAGATGATCAGGGG
配列番号4:CCGGTTACAGATGATCAGGGGCATTCGA
配列番号5:AGCCCGGTTACAGATGATCAGGGGCATTCGACAGGCT
配列番号6:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGGGG
配列番号7:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGGGGC
配列番号8:CGCACATCAGTTTAGTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGGGGC
配列番号9:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAG
配列番号10:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGG
配列番号11:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGGG
【0018】
本発明の核酸分子は、前述のようにCRPに結合可能である。前記CRPは、特に制限されず、その由来は、例えば、ヒト、非ヒト動物等があげられる。前記非ヒト動物は、例えば、マウス、ラット、サル、ウサギ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ等があげられる。ヒトCRPのアミノ酸配列の情報は、例えば、UniProt(http://www.uniprot.org/)アクセッション番号P02741に登録されている。
【0019】
本発明において、「CRPに結合する」とは、例えば、CRPに対する結合能を有している、または、CRPに対する結合活性を有しているともいう。本発明の核酸分子と前記CRPとの結合は、例えば、表面プラズモン共鳴分子相互作用(SPR;Surface Plasmon resonance)解析等により決定できる。前記解析は、例えば、ProteON(商品名、BioRad社)が使用できる。本発明の核酸分子は、CRPに結合することから、例えば、CRPの検出に使用できる。本発明の核酸分子は、アプタマーともいう。
【0020】
本発明の核酸分子は、例えば、DNA、RNAまたはDNAおよびRNAから構成されてもよい。本発明の核酸分子がDNAから構成される場合、本発明の核酸分子は、例えば、DNA分子、DNAアプタマーということができる。
【0021】
前記核酸分子の構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基である。前記ヌクレオチド残基は、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基およびリボヌクレオチド残基があげられる。本発明の核酸分子は、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基のみから構成されるDNA、1もしくは数個のリボヌクレオチド残基を含むDNA等があげられる。後者の場合、「1もしくは数個」は、特に制限されず、例えば、前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、1~3個である。
【0022】
前記ポリヌクレオチドは、例えば、修飾塩基を含んでもよい。前記修飾塩基は、特に制限されず、例えば、天然塩基(非人工塩基)が修飾された塩基があげられ、前記天然塩基と同様の機能を有することが好ましい。前記天然塩基は、特に制限されず、例えば、プリン骨格を有するプリン塩基、ピリミジン骨格を有するピリミジン塩基等があげられる。前記プリン塩基は、特に制限されず、例えば、アデニン(a)、グアニン(g)があげられる。前記ピリミジン塩基は、特に制限されず、例えば、シトシン(c)、チミン(t)、ウラシル(u)等があげられる。前記塩基の修飾部位は、特に制限されない。前記塩基がプリン塩基の場合、前記プリン塩基の修飾部位は、例えば、前記プリン骨格の7位および8位があげられる。前記塩基がピリミジン塩基の場合、前記ピリミジン塩基の修飾部位は、例えば、前記ピリミジン骨格の5位および6位があげられる。前記ピリミジン骨格において、4位の炭素に「=O」が結合し、5位の炭素に「-CH」または「-H」以外の基が結合している場合、修飾ウラシルまたは修飾チミンということができる。前記ポリヌクレオチドは、例えば、いずれか1種類の前記修飾塩基のみを含んでもよいし、2種類以上の前記修飾塩基を含んでもよい。
【0023】
本発明の核酸分子は、例えば、下記配列番号3~11に示す下線部のチミンが、修飾塩基であってもよい。
配列番号3:CCCGGTTACAGATGATCAGGGG
配列番号4:CCGGTTACAGATGATCAGGGGCATTCGA
配列番号5:AGCCCGGTTACAGATGATCAGGGGCATTCGACAGGCT
配列番号6:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGGGG
配列番号7:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGGGGC
配列番号8:CGCACATCAGTTTAGTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGGGGC
配列番号9:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAG
配列番号10:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGG
配列番号11:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGGG
【0024】
本発明の核酸分子は、例えば、後述する、推定結合領域である、下記配列番号2の塩基配列を含む。このため、本発明の核酸分子は、下記配列番号2の塩基配列に対応するチミンが、修飾塩基であってもよい。
配列番号2:CGGTTACAGATGATCA
【0025】
すなわち、本発明の核酸分子は、例えば、下記配列番号6~11に示す下線部のチミンが、修飾塩基であってもよい。
配列番号6:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGGGG
配列番号7:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGGGGC
配列番号8:CGCACATCAGTTTAGTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGGGGC
配列番号9:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAG
配列番号10:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGG
配列番号11:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGGG
【0026】
修飾塩基の具体例として、例えば、アデニン残基で修飾されたチミジンヌクレオチド残基である、下記式(1)に示す残基(以下、「KS9」ともいう)があげられる。ただし、これには制限されず、例えば、置換アデニン残基で修飾されたチミジンヌクレオチド残基である、下記式(2)に示す残基(以下、「KK10」ともいう)等でもよい。前記KS9及びKK10については、例えば、国際公開2017/081926号を参照することができる。なお、本発明は、これには限定されない。
【0027】
【化1】
【0028】
【化2】
【0029】
前記配列番号3~11のポリヌクレオチドにおいては、例えば、前記下線部のチミンが、前記KS9のヌクレオチド残基であることが好ましい。
【0030】
本発明の核酸分子が、例えば、前記チミジンヌクレオチド残基を有する場合、前記ポリヌクレオチドの合成には、例えば、下記式(3)に示すヌクレオチド三リン酸(以下、「KS9モノマー」ともいう)を、モノマー分子として使用することができる。前記ポリヌクレオチドの合成において、例えば、前記モノマー分子は、ホスホジエステル結合により、他のヌクレオチド三リン酸と結合する。
【0031】
【化3】
【0032】
本発明の核酸分子は、例えば、修飾ヌクレオチドを含んでもよい。前記修飾ヌクレオチドは、前述の前記修飾塩基を有するヌクレオチドでもよいし、糖残基が修飾された修飾糖を有するヌクレオチドでもよいし、前記修飾塩基および前記修飾糖を有するヌクレオチドでもよい。
【0033】
前記修飾塩基の個数は、特に制限されない。前記ポリヌクレオチドにおいて、前記修飾塩基の個数は、例えば、1個以上である。また、全ての塩基が、前記修飾塩基でもよい。
【0034】
本発明の核酸分子は、例えば、1もしくは数個の人工核酸モノマー残基を含んでもよい。前記人工核酸モノマー残基は、例えば、PNA(ペプチド核酸)、LNA(Locked Nucleic Acid)、ENA(2’-O, 4’-C-Ethylene-bridged Nucleic Acids)等があげられる。前記モノマー残基における核酸は、例えば、前述と同様である。
【0035】
本発明の核酸分子は、例えば、ヌクレアーゼ耐性であることが好ましい。本発明の核酸分子は、ヌクレアーゼ耐性のため、例えば、前記修飾化ヌクレオチド残基および/または前記人工核酸モノマー残基を有することが好ましい。本発明の核酸分子は、ヌクレアーゼ耐性のため、例えば、5’末端または3’末端に、数10kDaのPEG(ポリエチレングリコール)またはデオキシチミジン等が結合してもよい。
【0036】
本発明の核酸分子は、例えば、さらに付加配列を有してもよい。前記付加配列は、例えば、前記核酸分子の5’末端および3’末端の少なくとも一方に結合していることが好ましく、より好ましくは3’末端である。前記付加配列は、特に制限されない。前記付加配列の長さは、特に制限されず、例えば、1~200塩基長、1~50塩基長、1~25塩基長、18~24塩基長である。前記付加配列の構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基であり、デオキシリボヌクレオチド残基およびリボヌクレオチド残基等があげられる。前記付加配列は、特に制限されず、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基からなるDNA、リボヌクレオチド残基を含むDNA等のポリヌクレオチドがあげられる。前記付加配列の具体例として、例えば、ポリdT、ポリdA等があげられる。
【0037】
本発明の核酸分子は、例えば、担体に固定化して使用できる。前記本発明の核酸分子は、例えば、5’末端および3’末端のいずれかを固定化することが好ましく、より好ましくは3’末端である。本発明の核酸分子を固定化する場合、例えば、前記核酸分子は、前記担体に、直接的に固定化してもよいし、間接的に固定化してもよい。後者の場合、例えば、前記付加配列を介して固定化することが好ましい。
【0038】
本発明の核酸分子は、例えば、さらに標識物質を有してもよく、具体的には、前記核酸分子に前記標識物質が結合してもよい。前記標識物質が結合した前記核酸分子は、例えば、本発明の核酸センサということもできる。前記標識物質は、例えば、前記核酸分子の5’末端および3’末端の少なくとも一方に結合させてもよい。前記標識物質による標識化は、例えば、結合でもよいし、化学修飾でもよい。前記標識物質は、特に制限されず、例えば、酵素、蛍光物質、色素、同位体、薬物、毒素および抗生物質等があげられる。前記酵素は、例えば、ルシフェラーゼ、NanoLucルシフェラーゼ等があげられる。前記蛍光物質は、例えば、ピレン、TAMRA、フルオレセイン、Cy3色素、Cy5色素、FAM色素、ローダミン色素、テキサスレッド色素、JOE、MAX、HEX、TYE等の蛍光団があげられ、前記色素は、例えば、Alexa488、Alexa647等のAlexa色素等があげられる。前記標識物質は、例えば、前記核酸分子に直接的に連結してもよいし、リンカーを介して、間接的に連結してもよい。前記リンカーは、特に制限されず、例えば、ポリヌクレオチドのリンカー等である。
【0039】
本発明の核酸分子の製造方法は、特に制限されず、例えば、化学合成を利用した核酸合成方法等、遺伝子工学的手法、公知の方法により合成できる。
【0040】
本発明の核酸分子は、前述のように、前記CRPに結合性を示す。このため、本発明の核酸分子の用途は、前記CRPへの結合性を利用する用途であれば、特に制限されない。本発明の核酸分子は、例えば、前記CRPに対する抗体に代えて、種々の方法に使用できる。
【0041】
本発明の核酸分子によれば、CRPを検出できる。CRPの検出方法は、特に制限されず、例えば、後述の検出方法を参照し、CRPと前記核酸分子との結合を検出することによって行える。
【0042】
(1-2)第2のCRP結合核酸分子
本発明の第2のCRP結合核酸分子は、下記(a)または(b)のいずれかのポリヌクレオチドを含むことを特徴とする。
(a)配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b)前記(a)の塩基配列において、1個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、CRPに結合するポリヌクレオチド
配列番号2:CGGTTACAGATGATCA
【0043】
本発明の第2のCRP結合核酸分子は、前記本発明の第1のCRP結合核酸分子の説明を参照することができる。
【0044】
本発明の核酸分子は、前記(a)または(b)のポリヌクレオチドからなる分子でもよいし、前記ポリヌクレオチドを含む分子でもよい。
【0045】
前記(a)のポリヌクレオチドは、前記配列番号2の塩基配列を含むポリヌクレオチドでもよいし、前記配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチドでもよい。
【0046】
本発明の核酸分子は、例えば、下記配列番号2に示す下線部のチミンが、修飾塩基であってもよい。
配列番号2:CGGTTACAGATGATCA
【0047】
本発明の核酸分子が、例えば、複数のポリヌクレオチドを含む場合、複数のポリヌクレオチドの配列が連結して、一本鎖のポリヌクレオチドを形成していることが好ましい。前記複数のポリヌクレオチドの配列は、例えば、それぞれが直接的に連結してもよいし、リンカーを介して、それぞれが間接的に連結してもよい。前記ポリヌクレオチドの配列は、それぞれの末端において、直接的または間接的に連結していることが好ましい。前記ポリヌクレオチドの配列を複数含む場合、前記配列の数は、特に制限されず、例えば、2以上、2~20、2~10、2または3である。
【0048】
前記リンカーの長さは、特に制限されず、例えば、1~200塩基長、1~24塩基長、1~20塩基長、3~12塩基長、5~9塩基長である。前記リンカーの構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基であり、デオキシリボヌクレオチド残基およびリボヌクレオチド残基等があげられる。前記リンカーは、特に制限されず、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基からなるDNA、リボヌクレオチド残基を含むDNA等のポリヌクレオチドがあげられる。前記リンカーの具体例として、例えば、ポリデオキシチミン(ポリdT)、ポリデオキシアデニン(ポリdA)、AとTの繰り返し配列であるポリdAdT等があげられ、好ましくはポリdT、ポリdAdTである。
【0049】
本発明の核酸分子において、前記ポリヌクレオチドは、一本鎖ポリヌクレオチドであることが好ましい。前記一本鎖ポリヌクレオチドは、例えば、自己アニーリングによりステム構造およびループ構造を形成可能であることが好ましい。前記ポリヌクレオチドは、例えば、ステムループ構造、インターナルループ構造および/またはバルジ構造等を形成可能であることが好ましい。
【0050】
本発明の核酸分子は、例えば、二本鎖でもよい。二本鎖の場合、例えば、一方の一本鎖ポリヌクレオチドは、前記(a)または(b)のいずれかのポリヌクレオチドを含み、他方の一本鎖ポリヌクレオチドは、制限されない。前記他方の一本鎖ポリヌクレオチドは、例えば、前記(a)または(b)のいずれかのポリヌクレオチドに相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチドがあげられる。本発明の核酸分子が二本鎖の場合、例えば、使用に先立って、変性等により、一本鎖ポリヌクレオチドに解離させることが好ましい。また、解離した前記(a)または(b)のいずれかの一本鎖ポリヌクレオチドは、例えば、前述のように、ステム構造およびループ構造を形成していることが好ましい。
【0051】
本発明の核酸分子の構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基である。前記核酸分子の長さは、特に制限されない。前記核酸分子の長さの下限は、例えば、15塩基長、35塩基長、55塩基長、75塩基長である。前記核酸分子の長さの上限は、例えば、1000塩基長であり、200塩基長、100塩基長、90塩基長、80塩基長である。前記核酸分子の長さの範囲は、例えば、15~1000塩基長、35~200塩基長、55~90塩基長、75~80塩基長である。
【0052】
(2)CRP結合領域
本発明のCRP結合領域は、下記(a)または(b)のいずれかのポリヌクレオチドからなることを特徴とする。
(a)配列番号2~11の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b)前記(a)の塩基配列において、1個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、CRPに結合するポリヌクレオチド
配列番号2:CGGTTACAGATGATCA
配列番号3:CCCGGTTACAGATGATCAGGGG
配列番号4:CCGGTTACAGATGATCAGGGGCATTCGA
配列番号5:AGCCCGGTTACAGATGATCAGGGGCATTCGACAGGCT
配列番号6:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGGGG
配列番号7:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGGGGC
配列番号8:CGCACATCAGTTTAGTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGGGGC
配列番号9:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAG
配列番号10:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGG
配列番号11:GTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGGG
【0053】
前記(a)または(b)のポリヌクレオチドについては、前述の、CRP結合核酸分子における説明を参照することができる。
【0054】
本発明のCRP結合領域は、例えば、CRPに特異的に結合することができる。
【0055】
本発明のCRP結合領域は、例えば、前記本発明の核酸分子における、CRPへの結合領域である。ただし、これには制限されず、本発明のCRP結合領域は、任意の核酸分子におけるCRP結合領域とすることができる。
【0056】
前記任意の核酸分子において、本発明のCRP結合領域が1つ含まれてもよいし、複数含まれてもよい。
【0057】
(3)CRP検出用センサ
本発明の検出用センサは、前述のように、CRPの検出用センサであって、前記本発明の核酸分子を含むことを特徴とする。本発明の検出用センサは、前記本発明の核酸分子を含んでいればよく、その他の構成は、特に制限されない。本発明の検出用センサを使用すれば、例えば、前記核酸分子と前記CRPとを結合させることで、前述のように、前記CRPを検出できる。
【0058】
本発明の検出用センサは、例えば、さらに担体を有し、前記担体に前記核酸分子が配置されている。前記核酸分子は、前記担体に固定化されていることが好ましい。前記担体への前記核酸分子の固定化は、例えば、前述の通りである。本発明の検出用センサの使用方法は、特に制限されず、前記本発明の核酸分子および前記本発明の検出方法を援用できる。
【0059】
(4)検出試薬およびキット
本発明の検出試薬は、前記本発明のCRP結合核酸分子を含むことを特徴とする。本発明の検出試薬は、前記本発明の核酸分子を含んでいればよく、その他の構成は何ら制限されない。本発明の検出試薬を使用すれば、前述のように、例えば、前記CRPの検出等を行うことができる。
【0060】
本発明の検出試薬は、例えば、前記本発明の核酸分子として、前記本発明のセンサを含んでもよい。本発明の検出試薬は、例えば、さらに、標識物質を有し、前記標識物質が、前記核酸分子に結合されてもよい。前記標識物質は、例えば、前記本発明の核酸分子における説明を援用できる。また、本発明の検出試薬は、例えば、担体を有し、前記担体に前記核酸分子が固定化されてもよい。前記担体は、例えば、前記本発明の核酸分子における説明を援用できる。
【0061】
本発明の検出試薬は、例えば、前記本発明の核酸分子の他に、その他の構成要素を含んでもよい。前記構成要素は、例えば、前記担体、緩衝液、使用説明書等があげられる。
【0062】
本発明の検出試薬において例えば、前記核酸分子および前記緩衝液等のその他の構成要素は、それぞれ別個の容器に収容されてもよいし、同一の容器に混合または未混同で収容されてもよい。前記核酸分子と前記その他の構成要素とが別々の容器に収容されている場合、本発明の検出試薬は、検出キットということもできる。
【0063】
(4)検出方法
本発明の検出方法は、前述のように、試料と核酸分子とを接触させ、前記試料中のCRPを検出する工程を含み、前記核酸分子が、前記本発明のCRP結合核酸分子であり、前記検出工程において、前記試料中のCRPと前記核酸分子とを結合させて、前記結合により、前記試料中のCRPを検出することを特徴とする。本発明の検出方法は、前記本発明の核酸分子を使用することが特徴であって、その他の工程および条件等は、特に制限されない。また、本発明の検出方法は、前記本発明の核酸分子として、前記本発明のCRP検出用センサを使用してもよい。
【0064】
本発明によれば、前記本発明の核酸分子が、CRPに特異的に結合することから、例えば、CRPと前記核酸分子との結合を検出することによって、試料中のCRPを特異的に検出可能である。具体的には、本発明の検出方法は、例えば、試料中のCRPの有無またはCRPの量を検出可能であることから、定性または定量も可能といえる。また、本発明の検出方法は、例えば、定性分析または定量分析が可能なことから、分析方法ということもできる。
【0065】
本発明において、前記試料は、特に制限されない。前記試料は、例えば、唾液、尿、血漿および血清等があげられる。
【0066】
前記試料は、例えば、液体試料でもよいし、固体試料でもよい。前記試料は、例えば、前記核酸分子と接触させ易く、取扱いが簡便であることから、液体試料が好ましい。前記固体試料の場合、例えば、溶媒を用いて、混合液、抽出液、溶解液等を調製し、これを使用してもよい。前記溶媒は、特に制限されず、例えば、水、生理食塩水、緩衝液等があげられる。
【0067】
前記検出工程は、例えば、前記試料と前記核酸分子とを接触させて、前記試料中のCRPと前記核酸分子とを結合させる接触工程と、前記CRPと前記核酸分子との結合を検出する結合検出工程とを含む。また、前記検出工程は、例えば、さらに、前記結合検出工程の結果に基づいて、前記試料中のCRPの有無または量を検出する工程を含む。
【0068】
前記接触工程において、前記試料と前記核酸分子との接触方法は、特に制限されない。前記試料と前記核酸分子との接触は、例えば、液体中で行われることが好ましい。前記液体は、特に制限されず、例えば、水、生理食塩水、緩衝液等があげられる。
【0069】
前記接触工程において、前記試料と前記核酸分子との接触条件は、特に制限されない。接触温度は、例えば、4~37℃、18~25℃であり、接触時間は、例えば、10~120分、30~60分である。
【0070】
前記接触工程において、前記核酸分子は、例えば、担体に固定化された固定化核酸分子でもよいし、未固定の遊離した核酸分子でもよい。後者の場合、例えば、容器内で、前記試料と接触させる。前記核酸分子は、例えば、取扱性に優れることから、前記固定化核酸分子が好ましい。前記担体は、特に制限されず、例えば、基板、ビーズ、容器等があげられ、前記容器は、例えば、マイクロプレート、チューブ等があげられる。前記核酸分子の固定化は、例えば、前述の通りである。
【0071】
前記結合検出工程は、前述のように、前記試料中のCRPと前記核酸分子との結合を検出する工程である。前記両者の結合の有無を検出することによって、例えば、前記試料中のCRPの有無を検出(定性)でき、また、前記両者の結合の程度(結合量)を検出することによって、例えば、前記試料中のCRPの量を検出(定量)できる。
【0072】
そして、前記CRPと前記核酸分子との結合が検出できなかった場合は、前記試料中にCRPは存在しないと判断でき、前記結合が検出された場合は、前記試料中にCRPが存在すると判断できる。
【0073】
前記CRPと前記核酸分子との結合の検出方法は、特に制限されない。前記方法は、例えば、物質間の結合を検出する従来公知の方法が採用でき、具体例として、前述のSPR等があげられる。また、前記結合は、例えば、前記CRPと前記核酸分子との複合体の検出でもよい。
【実施例0074】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例により制限されない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらのプロトコルに基づいて使用した。
【0075】
[実施例1]
候補アプタマーとして、CRPに対する結合性を有するアプタマーを用い、前記候補アプタマーの構造の推定、小型化アプタマー配列の設計、前記小型化アプタマーの構造の推定、スコア算出、及び、前記スコアが予め定めた値以上である小型化アプタマー配列の抽出を行った。
【0076】
(候補アプタマー)
候補アプタマーとして、CRPに対する結合性を有するアプタマーを用いた(配列番号1)。前記配列番号1のポリヌクレオチドを以下に示す。
【0077】
候補アプタマー(配列番号1)
GGTTACGCCGCACATCAGTTTAGTGATAAAAGCCCGGTTACAGATGATCAGGGGCATTCGACAGGCTGGACATATC
【0078】
(候補アプタマーの構造の推定)
配列番号1において、推定結合領域(配列番号2)に、下線を付している。前記推定結合領域は、FSBC(fast string-based clustering)により、文献(Kato S, Ono T, Minagawa H, Horii K, Shiratori I, Waga I, et al. FSBC: fast string-based clustering for HT-SELEX data. BMC Bioinformatics. 2020 Jun 24;21(1):263.)に記載の手法に従って推定を行った。前記推定結合領域は、モチーフ配列ともいうことができる。
【0079】
推定結合領域(配列番号2)
CGGTTACAGATGATCA
【0080】
前記候補アプタマーについて、二次構造、自由エネルギー、存在確率、及び推定結合領域がとる二次構造(モチーフ構造)、をそれぞれ算出した。
【0081】
二次構造は、RNAsuboptにより、下記参考文献1に記載の手法に従って予測を行った。自由エネルギーは、RNAsuboptにおいて、核酸の熱エネルギーパラメータより算出した。パラメータファイルの参考文献としては、例えば、下記参考文献2及び3があげられる。
参考文献1:Lorenz R, Bernhart SH, Hoener Zu Siederdissen C, Tafer H, Flamm C, Stadler PF, et al. ViennaRNA Package 2.0. Algorithms Mol Biol. 2011 Nov 24;6:26.
参考文献2:D.H. Mathews, M.D. Disney, D. Matthew, J.L. Childs, S.J. Schroeder, J. Susan, M. Zuker, D.H. Turner (2004), "Incorporating chemical modification constraints into a dynamic programming algorithm for prediction of RNA secondary structure", Proc. Natl. Acad. Sci. USA: 101, pp 7287-7292
参考文献3:D.H Turner, D.H. Mathews (2009), "NNDB: The nearest neighbor parameter database for predicting stability of nucleic acid secondary structure", Nucleic Acids Research: 38, pp 280-282
【0082】
存在確率は、前記二次構造における自由エネルギーとボルツマン分布の式により計算した。次式(1)に、ボルツマン分布の式を示す。前記式(1)により、状態iの存在確率を計算することができる。
【数1】

前記式(1)において、各記号等の意味は、以下の通りである。
M:状態
Ei:状態iの時のエネルギー
k:ボルツマン定数
T:絶対温度
【0083】
この結果を、表1A~Cに示す。表1A~Cは、前記候補アプタマーの、二次構造、自由エネルギー、存在確率、及び推定結合領域がとる二次構造(モチーフ構造)、を示す表である。表1A~Cに示す二次構造において、「.」(ドット)は、前記候補アプタマーにおける、対応する塩基が、塩基対を形成しないことを示し、「(」及び「)」(ブラケット)は、塩基対を形成することを示す(以下、同様)。なお、「塩基対を形成しない」は、「ループを形成する」と言い換えることができ、「塩基対を形成する」は、「ステムを形成する」と言い換えることができる。表1A~Cに示すように、前記候補アプタマーについて、27種類の二次構造が推定された。また、5種類のモチーフ構造が推定された。
【0084】
【表1A】
【表1B】
【表1C】
【0085】
前記表1の結果から、さらに、前記5種類のモチーフ構造ごとの存在確率を算出した。
【0086】
この結果を表2に示す。表2は、前記5種類のモチーフ構造(モチーフ構造1~5)ごとの存在確率を示す表である。表2に示すように、前記候補アプタマーについて、前記5種類のモチーフ構造(モチーフ構造1~5)ごとの存在確率が算出された。
【0087】
【表2】
【0088】
(小型化アプタマー配列の設計)
つぎに、推定結合領域がとり得る各々の二次構造に対して,小型化配列を設計した。以下の説明において、前記候補アプタマーの5’末端からm塩基、3’末端からn塩基削除した小型化配列を、S(m,n)と示す。本明細書及び図面において、「S(m,n)」、並びに、m及びnの値の組合せの記載により、これらに対応する配列が一意に定まり、開示される。
【0089】
(小型化アプタマーの構造の推定)
前記小型化配列(S(m,n))のそれぞれについて、前述と同様にして、モチーフ構造1~5の存在確率を算出した。
【0090】
(スコア算出)
前記算出した、前記小型化配列(S(m,n))におけるモチーフ構造1~5の前記存在確率を、前記候補アプタマーにおけるモチーフ構造1~5の前記存在確率でそれぞれ除算することにより、これらの比(存在確率の相対値)を求めた。前記比を、モチーフ構造1~5ごとのスコアである、スコア1とした。
【0091】
また、前記小型化配列(S(m,n))のそれぞれについて、モチーフ構造1~5の前記存在確率の合計値を算出した。この合計値を、前記候補アプタマーにおけるモチーフ構造1~5の前記存在確率の合計値で除算することにより、これらの比(存在確率の相対値)を求めた。前記比を、モチーフ構造1~5の組み合わせについてのスコアである、スコア2とした。
【0092】
これらの結果を図1A~F、及び図2に示す。図1A~Eは、それぞれ、モチーフ構造1~5ごとのスコア1の値を示し、図1Fは、小型化配列の長さとスコア1の値との関係を示し、図2は、モチーフ構造1~5の組み合わせについてのスコア2を示す。図1A~E、及び図2は、前記小型化配列(S(m,n))のそれぞれについて、前記スコアを示すヒートマップであり、上下方向が、mの値(0~34)、左右方向が、nの値(0~26)を示し、各マスの濃淡が、前記小型化配列(S(m,n))の前記スコアを示す。前記各マスの濃淡は、前記スコアが、0以上0.5未満、0.5以上1未満、1以上2未満、2以上4未満、及び4以上において、この順番で濃くなるようにした。なお、図2において、「T」および「F」は、それぞれ、後述する実施例2の結合評価における結果を示す(T:結合性あり、F:結合性なし)。
【0093】
図1A~Eに示すように、モチーフ構造1~5のいずれにおいても、スコア1の値が1以上である小型化アプタマー、すなわち、前記小型化配列(S(m,n))におけるモチーフ構造1~5の前記存在確率が、前記候補アプタマーにおけるモチーフ構造1~5の前記存在確率以上である小型化アプタマーが存在していた。
【0094】
また、図1Fに示すように、モチーフ構造1は、小型化配列の長さ約20~75、スコア1の値0.8~2.0の範囲に多く分布し、且つ、小型化配列の長さ約20~55、スコア1の値0.05~0.8未満の範囲にも分布がみられた。モチーフ構造2は、小型化配列の長さ約25~80、スコア1の値0.8~1.5の範囲に多く分布し、且つ、小型化配列の長さ約25~35及び60~75、スコア1の値0.3~0.8未満の範囲にも分布がみられた。モチーフ構造3は、小型化配列の長さ約60~70、スコア1の値0.3~0.4の範囲に分布していた。モチーフ構造4は、小型化配列の長さ約25~80、スコア1の値0.8~1.5の範囲に多く分布し、且つ、小型化配列の長さ約25~35及び60~75、スコア1の値0.3~0.8未満の範囲にも分布がみられた。モチーフ構造5は、小型化配列の長さ約45~75、スコア1の値0.4~1.0の範囲に多く分布していた。
【0095】
また、図2に示すように、モチーフ構造1~5の組み合わせにおいても、スコア2の値が1以上である小型化アプタマー、すなわち、前記小型化配列(S(m,n))におけるモチーフ構造1~5の前記存在確率の合計値が、前記候補アプタマーにおけるモチーフ構造1~5の前記存在確率の合計値以上である小型化アプタマーが存在していた。
【0096】
(小型化アプタマー配列の抽出)
さらに、前記小型化配列(S(m,n))の中から、前記スコアが所定値以上である小型化アプタマー配列を抽出した。
【0097】
図1A~Eに示す結果に基づき、モチーフ構造1~5ごとに、スコア1(存在確率の相対値)が1以上であった前記小型化配列のうち、最も短い配列を選択した。この結果を、表3に示す。
【0098】
【表3】
【0099】
さらに、表3に示す前記小型化配列のうち、最も短い配列を選択した。この結果、モチーフ構造3に対応する小型化配列(S(32,22);配列番号3)が抽出された。
【0100】
また、図2に示す結果に基づき、モチーフ構造1~5の組み合わせにおいて、スコア2の値が1以上であった前記小型化配列のうち、最も短い配列を選択した。
【0101】
この結果、同様に、小型化配列(S(32,22);配列番号3)が抽出された。
【0102】
さらに、図2において、スコア2の値が1.873以上であった前記小型化配列を、表4A~Rに示す(配列番号12~394)。なお、配列番号12~394は、いずれも、前述の、小型化配列(S(32,22);配列番号3)を含んでいた。

【表4A】
【表4B】
【表4C】
【表4D】
【表4E】
【表4F】
【表4G】
【表4H】
【表4I】
【表4J】
【表4K】
【表4L】
【表4M】
【表4N】
【表4O】
【表4P】
【表4Q】
【表4R】
【0103】
本実施例において、推定結合領域がとり得る各モチーフ構造に対して、小型化配列を求める方法は、次式(2)~(4)で表すことができる。
【数2】
前記式(2)~(4)において、各記号等の意味は、以下の通りである。
S(m,n):5’末端からm塩基,3’末端からn塩基削除した小型化配列
S : アプタマー全長配列
Pr(u, S(m,n)) : 小型化配列S(m,n)の時の,推定結合領域がuの時の存在確率
Pr(u, S) : 全長配列Sの時の,推定結合領域がuの時の存在確率
u : 全長配列Sにおいて,推定結合領域がとりうる構造
R(u, S(m,n),S) : 二次構造uの小型化配列S(m,n)での存在確率と全長配列Sでの存在確率の相対値
一次ノルム|・|は文字列の長さを示す。
【0104】
また、前記各モチーフ構造に対して小型化配列を推定し、さらに、その中で最も短い小型化配列を求める方法は、次式(5)~(7)で表すことができる。
【数3】
前記式(5)~(7)において、各記号等の意味は、以下の通りである。
Ωs : 推定結合領域が全長配列においてとり得る二次構造の集合
【0105】
以上のように、候補アプタマーとして、CRPに対する結合性を有するアプタマーを用い、前記候補アプタマーの構造の推定、小型化アプタマー配列の設計、前記小型化アプタマーの構造の推定、スコア算出、及び、前記スコアが予め定めた値以上である小型化アプタマー配列の抽出を行うことができた。
【0106】
[実施例2]
実施例1で抽出した小型化アプタマーについて、CRPに対する結合評価を行った。
【0107】
(小型化配列)
小型化配列として、下記表5に示すポリヌクレオチド(小型化配列1~6)を合成した。小型化配列1~6の合成において、下記表5の下線で示すチミンを含むヌクレオチド残基を、前記式(1)に示すヌクレオチド残基(KS9)とした。小型化配列1は、実施例1で抽出した小型化配列(S(32,22);配列番号3)に基づき、酵素法による合成を行うため、最も3’側のチミンから左に15塩基をプライマー領域とした配列(S(22,22);配列番号6)とした。小型化配列2は、小型化配列1よりも1塩基長い配列(S(22,21);配列番号7)であり、小型化配列3は、小型化配列1よりも15塩基長い配列(S(8,21);配列番号8)である。また、小型化配列4~6は、それぞれ、小型化配列1よりも1~3塩基短い配列である。
【0108】
【表5】
【0109】
(結合評価)
小型化配列1~6について、SPRによる結合性の解析を行った。
【0110】
前記小型化配列は、その3’末端に、20塩基長のポリデオキシアデニン(ポリdA)を付加し、ポリdA付加配列として、後述するSPRに使用した。
【0111】
以下のようにして、CRP試料を調製した。CRP(Human、Acris Antibodies GmBH製、製品コード:P100-0)を、1mg/mLとなるように滅菌済み蒸留水で溶解し、前記溶液を、CRP試料とした。なお、下記結合性の解析等において、前記CRP試料の希釈には、SB1Tバッファーを使用した。前記SB1Tバッファーの組成は、40mmol/L HEPES、125mmol/L NaCl、5mmol/L KCl、1mmol/L MgClおよび0.05% Tween(登録商標)20とし、pHは、7.5とした。
【0112】
結合性の解析には、ProteOn XPR36(BioRad社)を、その使用説明書にしたがって使用した。
【0113】
まず、前記ProteOn専用のセンサーチップとして、ストレプトアビジンが固定化されたチップ(商品名 ProteOn NLC Sensor Chip、BioRad社)を、前記ProteOn XPR36にセットした。前記センサーチップのフローセルに、超純水(DDW)を用いて、5μmol/Lのビオチン化ポリdTをインジェクションし、シグナル強度(RU:Resonance Unit)が飽和するまで結合させた。前記ビオチン化ポリdTは、20塩基長のデオキシチミジンの5’末端をビオチン化して調製した。そして、前記チップの前記フローセルに、SB1Tバッファーを用いて、200nmol/Lの前記ポリdA付加配列を、流速25μL/minで80秒間インジェクションし、シグナル強度が飽和するまで結合させた。続いて、5nmol/Lの前記試料を、それぞれ、SB1Tバッファーを用いて、流速50μL/minで300秒間インジェクションし、引き続き、同じ条件で、SB1Tバッファーを流して、洗浄を行った。前記試料のインジェクション開始を0秒として、前記試料のインジェクション後のシグナル強度を測定した。前記SPRは、25℃の条件下で行った。
【0114】
この結果を図3及び表5に示す。図3は、1.25nmol/L、2.5nmol/L、5nmol/L、10nmol/L、及び20nmol/LのCRPに対する前記小型化配列の結合性を示すグラフであり、(A)は、小型化配列3、(B)は、小型化配列2、(C)は、小型化配列1、(D)は、小型化配列6の結果を示す。横軸は、前記試料のインジェクション開始後の経過時間(秒)を示し、縦軸は、シグナル強度(RU)を示す。図17に示すように、小型化配列2及び3は、CRPに対して、結合性を示した。一方、小型化配列1及び6は、いずれも、シグナル強度がほぼ0であり、結合性を示さなかった。
【0115】
また、表5に示すように、小型化配列2及び3は、CRPに対して、結合性を示した。一方、小型化配列1、及び4~6は、いずれも、結合性を示さなかった。
【0116】
これらの結果から、小型化配列2及び3は、CRPに対して優れた特異性で結合すること、および、シグナル強度を測定することにより、前記結合を検出できることがわかった。
【0117】
なお、表5に示すように、CRPに対して結合性を示した小型化配列2及び3は、図2に示すモチーフ構造1~5の組み合わせにおいて、スコア2の値が1.873であった。一方、CRPに対して結合性を示さなかった小型化配列1、及び4~6は、図2に示すモチーフ構造1~5の組み合わせにおいて、スコア2の値が1.873未満、及び1.080以下であった。
【0118】
このことから、実施例3の前記小型化アプタマー配列の抽出において、スコア2の値が、例えば、1.873以上、1.8以上、1.7以上、1.6以上、1.5以上、1.4以上、1.3以上、1.2以上、1.1以上、及び1.08を超える小型化配列を抽出すれば、CRPに対して結合性を示す小型化配列の設計が可能であることが示唆された。
【0119】
また、同様にして、前記候補アプタマーについて、SPRによる結合性の解析を行った。この結果、前記候補アプタマーは、CRPに対して優れた特異性で結合すること、および、シグナル強度を測定することにより、前記結合を検出できることがわかった。
【0120】
以上のように、実施例1で抽出した小型化アプタマーについて、CRPの結合評価を行った。これにより、実施例1で抽出した小型化アプタマーについて、酵素法による合成を行うためのプライマー領域を付加した配列であっても、1塩基違いで、優れた特異性で結合可能なアプタマーを設計することができた。また、実施例1の前記小型化アプタマー配列の抽出において、スコア2の値が所定値以上の小型化配列を抽出すれば、CRPに対して結合性を示す小型化配列の設計が可能であることが示唆された。
【0121】
以上、実施形態及び実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2
図3
【配列表】
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