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特開2022-106644保持器、転がり軸受、軸受ユニット及び回転機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106644
(43)【公開日】2022-07-20
(54)【発明の名称】保持器、転がり軸受、軸受ユニット及び回転機器
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/41 20060101AFI20220712BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20220712BHJP
   F16C 35/12 20060101ALI20220712BHJP
   F16C 35/063 20060101ALI20220712BHJP
   A61C 1/08 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
F16C33/41
F16C19/06
F16C35/12
F16C35/063
A61C1/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133226
(22)【出願日】2021-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2021001397
(32)【優先日】2021-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】飯野 朗弘
【テーマコード(参考)】
3J117
3J701
4C052
【Fターム(参考)】
3J117AA02
3J117DA01
3J117DA02
3J117DB07
3J701AA03
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA25
3J701BA34
3J701BA44
3J701BA45
3J701BA49
3J701BA50
3J701DA11
3J701DA14
3J701DA16
3J701EA03
3J701EA06
3J701EA13
3J701EA14
3J701EA31
3J701EA34
3J701EA36
3J701EA37
3J701EA76
3J701FA31
3J701FA38
3J701GA24
3J701GA28
3J701GA53
3J701GA60
3J701XB03
3J701XB14
3J701XB26
4C052CC17
(57)【要約】
【課題】転動体の公転速度に差異が生じたとしても、転動体から受ける負荷を抑制すること。
【解決手段】共通の軸線O上に配置された内輪と外輪との間に配置され、軸線と同軸に配置された環状の本体部30と、本体部を径方向に貫通するように形成され、内輪と外輪との間に配置された複数の転動体27を周方向に間隔をあけて配列させた状態で転動体を転動可能に各別に保持する複数の保持孔31とを備え、保持孔は、転動体を挟んで周方向に向かい合うように配置された第1周壁面35及び第2周壁面36と、本体部の軸方向を向くと共に第1周壁面及び第2周壁面を周方向に繋ぐ軸壁面37とを備え、軸壁面は第1周壁面と第2周壁面との間の周方向に沿った最大間隔が転動体の直径よりも大きい間隔となるように、周方向に沿って平坦状に延びるように形成されている保持器28を提供する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の軸線上に配置された内輪と外輪との間に配置され、前記軸線と同軸に配置された環状の本体部と、
前記本体部を径方向に貫通するように形成され、前記内輪と前記外輪との間に配置された複数の転動体を周方向に間隔をあけて配列させた状態で、前記転動体を転動可能に各別に保持する複数の保持孔と、を備え、
前記保持孔は、
前記転動体を挟んで周方向に向かい合うように配置された第1周壁面及び第2周壁面と、
前記本体部の軸方向を向くと共に、前記第1周壁面及び前記第2周壁面を周方向に繋ぐ軸壁面とを備え、
前記軸壁面は、前記第1周壁面と前記第2周壁面との間の周方向に沿った最大間隔が前記転動体の直径よりも大きい間隔となるように、周方向に沿って平坦状に延びるように形成されていることを特徴とする保持器。
【請求項2】
請求項1に記載の保持器において、
前記第1周壁面及び前記第2周壁面は、前記転動体の外表面の曲率半径に対応した曲面状に形成されている、保持器。
【請求項3】
請求項1に記載の保持器において、
前記第1周壁面のうち軸方向の中央に位置する部分には、前記第1周壁面のうちの残りの部分よりも先に前記転動体が接触可能な第1接触部が設けられ、
前記第2周壁面のうち軸方向の中央に位置する部分には、前記第2周壁面のうちの残りの部分よりも先に前記転動体が接触可能な第2接触部が設けられ、
前記軸壁面は、前記第1接触部と前記第2接触部との間の周方向に沿った間隔が、前記転動体の直径よりも大きい間隔となるように、周方向に沿って平坦状に延びるように形成されている、保持器。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の保持器において、
前記保持孔は、前記転動体を挟んで前記軸壁面に対して軸方向に向かい合うように配置された対向壁面を備え、
前記対向壁面は、前記第1周壁面及び前記第2周壁面を周方向に繋ぐと共に、前記軸壁面に対応して周方向に沿って平坦状に延びるように形成されている、保持器。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の保持器において、
前記保持孔は、軸方向のうち前記軸壁面とは反対の一方向に向けて開口部を通じて開口するように形成され、
前記開口部における前記第1周壁面と前記第2周壁面との間の周方向に沿った間隔は、前記転動体の直径以下の間隔とされている、保持器。
【請求項6】
請求項5に記載の保持器において、
前記保持孔は、軸方向の前記一方向に向けて前記本体部よりも突出すると共に、周方向に間隔をあけて向かい合うように形成された第1保持爪及び第2保持爪を有し、
前記第1保持爪の内周面が前記第1周壁面の一部とされ、
前記第2保持爪の内周面が前記第2周壁面の一部とされ、
前記第1保持爪の先端部と前記第2保持爪の先端部との間に位置する部分が前記開口部とされている、保持器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の保持器と、
前記軸線と同軸に配置され、前記保持器よりも径方向の内側に配置された内輪と、
前記軸線と同軸に配置され、前記保持器よりも径方向の外側に配置された外輪と、
前記内輪と前記外輪との間に周方向に間隔をあけて配列され、前記保持孔によって転動可能に保持された複数の転動体とを備えていることを特徴とする転がり軸受。
【請求項8】
請求項7に記載の転がり軸受と、
前記軸線と同軸に配置され、前記内輪よりも径方向の内側に配置された回転軸部とを備え、
前記転がり軸受は、軸方向に間隔をあけて複数配置され、
複数の前記転がり軸受それぞれにおける前記内輪は、前記回転軸部に固定されていることを特徴とする軸受ユニット。
【請求項9】
請求項8に記載の軸受ユニットを備えることを特徴とする回転機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持器、転がり軸受、軸受ユニット及び回転機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、転がり軸受は、同軸上に配置された外輪及び内輪と、内輪と外輪との間に配設された複数の転動体と、複数の転動体を周方向に均等配列させた状態で各転動体を転動可能に保持する保持器と、を備えている。
この種の転がり軸受は、支持する荷重の種類(ラジアル荷重、アキシアル荷重等)や用途等に応じて多種多様なものが知られており、様々な回転機器に組み込まれて使用されている。特に、転動体としてボールを利用する玉軸受は、高速回転する回転軸部を有する回転機器に好適に用いられる。
【0003】
回転機器としては、従来から例えば高速機械のスピンドル、歯科用ハンドピース(下記特許文献1参照)等が知られているが、近年では掃除機、ドライヤー、サーバー用Fanモータ等も知られてり、高性能化等を図るためにさらなる高速化が進んでいる。そのため、回転機器は、少なくとも2つの転がり軸受を利用して高速回転する回転軸部を安定に支持する構成が採用され、高速化に対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-163814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転機器に組み込まれる軸受は、各種の方法で固定される。例えば、回転軸部に対して内輪を締まり嵌めで固定し、且つハウジングに対して外輪を隙間嵌めで固定する方法や、回転軸部に対して内輪を隙間嵌めで固定し、且つハウジングに対しても外輪を隙間嵌めで固定する方法等が一般的に知られている。
さらに別の方法として、例えば歯科用ハンドピースでは、内輪に回転軸部を締まり嵌めで固定し、且つ外輪にOリングを装着したうえでハウジング等の支持体に固定する方法が知られている。なおこの場合には、外輪における一方の軸方向端面を拘束し、他方の軸方向端面をバネ等の付勢部材で加圧する等している。
【0006】
上述したいずれの方法であっても、内輪と外輪との間に配置された複数の転動体は、保持器によって転動可能に保持された状態で、自転しながら保持器と共に回転軸線回りを公転可能とされている。これにより、複数の転動体及び保持器は、内輪と外輪との間の相対移動に伴って抵抗少なくスムーズに公転することが可能とされている。
ところが、例えば回転機器の使用中等において回転軸部に対して何等かの負荷が作用した場合に、内輪の中心軸線と外輪の中心軸線との間に傾きによるずれが生じる、或いは内輪の中心軸線と外輪の中心軸線との間に径方向のずれが生じる等の不都合が生じるおそれがあった。特に、回転機器が高速化するほど、このような不都合が生じ易い。しかも、回転軸部が高速回転するほど、遠心力が作用するので、上記不都合の発生を助長し易い。
【0007】
上記不都合が生じてしまうと、複数の転動体のそれぞれで、内輪転動面内及び外輪転動面内における接触位置が異なってしまうので、転動体の個々の公転速度にばらつきが生じてしまう。これに対して、保持器は常に一定の速度で公転しようとするため、保持器の公転速度に対して公転速度に差異が生じる転動体が発生してしまう。このような転動体は、保持器の公転速度に対して例えば遅れが生じてしまうので、保持器の回転に対してブレーキとなるような働きをしてしまう。
【0008】
そのため、保持器のうち転動体を転動可能に保持する保持部が、転動体から強い応力を受け易く、摩耗するといった不具合や、保持器の変形等の不具合を招いてしまうおそれがあった。特に、保持器自体の変形を招いてしまった場合には、内輪又は外輪と保持器とが接触する可能性があり、さらなる摩耗等を引き起こしてしまうおそれがある。
【0009】
さらに、上述の摩耗等によって回転軸部の回転にも影響を与えてしまい、回転機器の回転性能を低下させることにも繋がってしまう。特に、顕著な高速回転を行う歯科用ハンドピース等の回転機器では、転がり軸受を少なくとも2つ具備しているため、2つの転がり軸受同士の間においても転動体の公転速度に相違が生じ易い。そのため、回転機器としての回転性能が低下し易いだけでなく、ブレーキとして働く転動体が保持器との間で激しい摩耗を発生する可能性がある。
【0010】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、転動体の公転速度に差異が生じたとしても、転動体から受ける負荷を抑制することができる保持器、転がり軸受、軸受ユニット及び回転機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係る保持器は、共通の軸線上に配置された内輪と外輪との間に配置され、前記軸線と同軸に配置された環状の本体部と、前記本体部を径方向に貫通するように形成され、前記内輪と前記外輪との間に配置された複数の転動体を周方向に間隔をあけて配列させた状態で、前記転動体を転動可能に各別に保持する複数の保持孔と、を備え、前記保持孔は、前記転動体を挟んで周方向に向かい合うように配置された第1周壁面及び第2周壁面と、前記本体部の軸方向を向くと共に、前記第1周壁面及び前記第2周壁面を周方向に繋ぐ軸壁面とを備え、前記軸壁面は、前記第1周壁面と前記第2周壁面との間の周方向に沿った最大間隔が前記転動体の直径よりも大きい間隔となるように、周方向に沿って平坦状に延びるように形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る保持器によれば、第1周壁面、第2周壁面及び軸壁面で画成された保持孔内に転動体を転動可能に保持することができ、内輪と外輪との相対移動によって軸線を中心として一定の速度で公転する。この際、複数の転動体のそれぞれは、保持孔内において自転しながら、軸線を中心として保持器と同じ方向に公転する。従って、各転動体は、例えば保持孔を構成する軸壁面上で支持されながら、第1周壁面(或いは第2周壁面)に接触或いは近接しながら軸線を中心として公転する。
【0013】
特に、保持孔を構成する軸壁面が周方向に沿って平坦状に延びるように形成され、それによって第1周壁面と第2周壁面との間の周方向に沿った最大間隔が転動体の直径よりも大きい間隔とされている。これにより、周方向に沿った転動体の移動を許容する許容空間(遊び空間)を、保持孔内に確保することができる。従って、内輪と外輪との間に、例えば傾きに起因するずれや径方向のずれ等が生じる等して、複数の転動体のそれぞれで、内輪転動面内及び外輪転動面内における接触位置が異なり、これにより転動体の個々の公転速度にばらつき等の差異が生じた場合であっても、保持器の公転速度に対して例えば遅れが生じる転動体を保持孔内で周方向に移動させることができる。そのため、遅れが生じている転動体を、例えば第1周壁面から第2周壁面に向けて(或いは第2周壁から第1周壁に向けて)、軸壁面上を移動させることができる。
【0014】
これにより、遅れが生じている転動体が、保持器の回転(公転)に対してブレーキとなるような負荷をかけてしまうことを抑制することや、負荷をかける時間を抑制することができる。従って、保持孔の摩耗や、保持器の変形等の不具合を生じさせ難くすることができ、良好な回転特性を維持でき、且つ耐久性が向上した高品質な保持器とすることができる。
【0015】
(2)前記第1周壁面及び前記第2周壁面は、前記転動体の外表面の曲率半径に対応した曲面状に形成されても良い。
【0016】
この場合には、第1周壁面及び第2周壁面が曲面状に形成されているので、例えば転動体としてボール(球)を利用したボール軸受の保持器として好適に利用することができる。
【0017】
(3)前記第1周壁面のうち軸方向の中央に位置する部分には、前記第1周壁面のうちの残りの部分よりも先に前記転動体が接触可能な第1接触部が設けられ、前記第2周壁面のうち軸方向の中央に位置する部分には、前記第2周壁面のうちの残りの部分よりも先に前記転動体が接触可能な第2接触部が設けられ、前記軸壁面は、前記第1接触部と前記第2接触部との間の周方向に沿った間隔が、前記転動体の直径よりも大きい間隔となるように、周方向に沿って平坦状に延びるように形成されても良い。
【0018】
この場合には、複数の転動体のそれぞれが、保持孔内で自転しながら、軸線を中心として保持器と同じ方向に公転するときに、転動体を第1接触部又は第2接触部に対して接触させることが可能である。これにより、第1接触部又は第2接触部を利用して、転動体を定位置に位置決めし易い。そのため、転動体が高速回転する場合であっても、摩擦力の変動を抑え易く、振動の発生を抑えることができると共に、安定した回転特性を具備する保持器とすることができる。
【0019】
(4)前記保持孔は、前記転動体を挟んで前記軸壁面に対して軸方向に向かい合うように配置された対向壁面を備え、前記対向壁面は、前記第1周壁面及び前記第2周壁面を周方向に繋ぐと共に、前記軸壁面に対応して周方向に沿って平坦状に延びるように形成されても良い。
【0020】
この場合には、周方向に向かい合う第1周壁面及び第2周壁面と、軸方向に向かい合う軸壁面及び対向壁面とによって、転動体の周囲を囲みながら転動体を保持孔内に保持することができる。これにより、いわゆるかご型保持器として好適に利用することができる。
【0021】
(5)前記保持孔は、軸方向のうち前記軸壁面とは反対の一方向に向けて開口部を通じて開口するように形成され、前記開口部における前記第1周壁面と前記第2周壁面との間の周方向に沿った間隔は、前記転動体の直径以下の間隔とされても良い。
【0022】
この場合には、開口部を通じて保持孔内に転動体を嵌め込むことができ、いわゆる冠型保持器として好適に利用することができる。
【0023】
(6)前記保持孔は、軸方向の前記一方向に向けて前記本体部よりも突出すると共に、周方向に間隔をあけて向かい合うように形成された第1保持爪及び第2保持爪を有し、前記第1保持爪の内周面が前記第1周壁面の一部とされ、前記第2保持爪の内周面が前記第2周壁面の一部とされ、前記第1保持爪の先端部と前記第2保持爪の先端部との間に位置する部分が前記開口部とされても良い。
【0024】
この場合には、第1保持爪及び第2保持爪を利用して転動体をより安定に転動可能に保持することができる。さらに、第1保持爪及び第2保持爪を有している分、本体部自身の軸方向の高さを抑えることができ、軽量化等を図り易い。さらに、周方向に隣り合う保持孔において、一方の保持孔の第1保持爪と他方の保持孔の第2保持爪との間に位置する部分を利用して、例えばグリスを保持することが可能となるので、使い易く利便性を向上することができる。
【0025】
(7)本発明に係る転がり軸受は、前記保持器と、前記軸線と同軸に配置され、前記保持器よりも径方向の内側に配置された内輪と、前記軸線と同軸に配置され、前記保持器よりも径方向の外側に配置された外輪と、前記内輪と前記外輪との間に周方向に間隔をあけて配列され、前記保持孔によって転動可能に保持された複数の転動体とを備えていることを特徴とする。
【0026】
本発明に係る転がり軸受によれば、上述した保持器、すなわち良好な回転特性を維持でき、且つ耐久性が向上した高品質な保持器を具備しているので、回転性能が安定した高品質の転がり軸受とすることができる。特に、保持器が変形等し難いので、内輪又は外輪と保持器とが接触して摩耗等を引き起こしてしまう可能性が低く、良好な回転特性を維持することができる。
【0027】
(8)本発明に係る軸受ユニットは、前記転がり軸受と、前記軸線と同軸に配置され、前記内輪よりも径方向の内側に配置された回転軸部とを備え、前記転がり軸受は、軸方向に間隔をあけて複数配置され、複数の前記転がり軸受それぞれにおける前記内輪は、前記回転軸部に固定されていることを特徴とする。
【0028】
本発明に係る軸受ユニットによれば、複数の転がり軸受を利用して回転軸部を回転支持することができるので、高速回転するような回転軸部を安定して回転支持することができる。特に、各転がり軸受が上述した保持器を具備しているので、複数の転がり軸受同士の間においても、転動体の遅れ等に起因する保持器の公転速度に相違が生じ難い。従って、この点においても、高速回転するような回転軸部を安定して支持することができる。
【0029】
(9)本発明に係る回転機器は、前記軸受ユニットを備えることを特徴とする。
【0030】
本発明に係る回転機器によれば、上述の軸受ユニットを具備しているので、歯科用ハンドピース等、顕著に高速回転するような回転機器に好適に利用することができる。特に、回転軸部の回転抵抗を抑えて良好な回転性能を得ることができるので、高品質化及び省電力化等を図り易い。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、転動体の公転速度に差異が生じたとしても、転動体から受ける負荷を抑制することができる保持器、転がり軸受及び回転機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明に係る一実施形態を示す歯科用ハンドピース(回転機器)の外観図である。
図2図1に示すヘッド部周辺の縦断面図である。
図3図2に示す軸受ユニットを構成する第1の転がり軸受を拡大した縦断面図である。
図4図3に示す保持器の斜視図である。
図5図4に示すA-A線に沿った断面図であり、保持孔と転動体との関係を示す図である。
図6】保持器の変形例を示す斜視図である。
図7図6に示すB-B線に沿った断面図であり、保持孔と転動体との関係を示す図である。
図8】保持器の別の変形例を示す斜視図である。
図9図8に示すC-C線に沿った断面図であり、保持孔と転動体との関係を示す図である。
図10図5に示す保持器の変形例を示す断面図である。
図11図9に示す保持器の変形例を示す断面図である。
図12図5に示す保持器の変形例を示す断面図である。
図13図9に示す保持器の変形例を示す断面図である。
図14図5に示す保持器の変形例を示す断面図である。
図15図9に示す保持器の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る一実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態では、回転機器として歯科用ハンドピースを例に挙げて説明する。
【0034】
図1及び図2に示すように、本実施形態の歯科用ハンドピース(本発明に係る回転機器)1は、ユーザが把持可能なハンドピース軸部2と、ハンドピース軸部2の先端部に設けられたヘッド部3と、ヘッド部3に着脱可能に装着された歯科処置具4とを備えている。
【0035】
ハンドピース軸部2の内部には、図示しないエアーチューブ等を介して供給された圧縮空気Fをヘッド部3内に供給する給気通路5、及びヘッド部3内から圧縮空気Fを排出する図示しない排気通路が形成されている。
ヘッド部3は、ハンドピース軸部2の先端部に一体的に組み合わされている。なお、ヘッド部3は、ハンドピース軸部2の先端部に固定されたハウジング、及びハウジングに対して取り外し可能に装着されたヘッドキャップ等で構成されている。なお図2では、ヘッド部3の図示を簡略化している。
【0036】
(軸受ユニット)
図2に示すように、ヘッド部3内には、軸線Oを中心として回転する回転軸部11と、回転軸部11を軸支する転がり軸受12とを有する軸受ユニット10が設けられている。
本実施形態では、軸線Oから見た平面視で軸線Oに交差する方向を径方向といい、軸線O回りに周回する方向を周方向といい、軸線Oに沿う方向を軸方向という。さらに軸方向のうち、軸受ユニット10から歯科処置具4の先端部に向かう方向を下方といい、その反対方向を上方という。
【0037】
回転軸部11は、軸線Oに沿って延びる例えば円筒状に形成されている。ただし、回転軸部11の形状は、この場合に限定されるものではなく、例えば円柱状に形成されていても構わない。回転軸部11の下端部には、歯科処置具4が軸線Oと同時に配置され、図示しないチャック機構等を介して取り外し可能に装着されている。これにより、歯科処置具4は、回転軸部11の回転に伴って軸線O回りを回転(正逆回転)可能とされている。なお、歯科処置具4は、例えば歯牙や金属修復物等を研磨する際に用いる処置具である。
【0038】
回転軸部11の中間部には、複数の羽根部15aが周方向に間隔をあけて配置されたタービン羽根15が固定されている。タービン羽根15は、給気通路5を通じて供給された圧縮空気Fが羽根部15aに対して吹き付けられるように、給気通路5に対して位置関係が調整されている。これにより、給気通路5を通じて圧縮空気Fをヘッド部3内に供給することで、タービン羽根15及び回転軸部11を軸線O回りに回転させることが可能とされている。従って、回転軸部11に装着された歯科処置具4を軸線O回りに回転させることが可能とされている。
具体的には、300000~400000rpm前後の回転数で、歯科処置具4を超高速に回転させることが可能とされている。なお、羽根部15aに対して吹き付けられた圧縮空気Fは、排気通路を通じてヘッド部3内から排気される。
【0039】
上述した回転軸部11は、2つの転がり軸受12によって軸支されている。2つの転がり軸受12は、タービン羽根15を挟んで軸方向に離れて配置されている。
2つの転がり軸受12のうち、タービン羽根15の上方に位置する第1の転がり軸受20は回転軸部11の上端部側を回転支持し、タービン羽根15の下方に位置する第2の転がり軸受21は回転軸部11の下端部側を回転支持している。これにより、第1の転がり軸受20及び第2の転がり軸受21を利用して、回転軸部11を上下2箇所で回転支持することができ、高速回転する回転軸部11を安定に支持することが可能とされている。
【0040】
以下、第1の転がり軸受20について詳細に説明する。なお、第2の転がり軸受21は、第1の転がり軸受20と同じ構成とされているため、詳細な説明は省略する。
【0041】
(転がり軸受)
図2及び図3に示すように、第1の転がり軸受20は、軸線Oと同軸に配置され、回転軸部11とヘッド部3との間に配置されている。第1の転がり軸受20は、軌道輪である内輪25及び外輪26と、複数の転動体27と、保持器28とを備えている。
【0042】
内輪25は、保持器28よりも径方向の内側に配置され、回転軸部11に外挿されると共に、例えば締まり嵌め等によって回転軸部11に固定されている。これにより、内輪25は回転軸部11と共に回転する回転輪として機能する。
内輪25は、例えばステンレス鋼や軸受鋼等の金属材料により円環状に形成されている。ただし、内輪25は金属製に限定されるものではなく、その他の材料によって形成されていても構わない。
【0043】
内輪25の外周面には、径方向の内側に向かって窪む内輪転動面25aが形成されている。内輪転動面25aは、転動体27の外表面に沿うように断面視半球状に形成されていると共に、内輪25の外周面の全周に亘って周方向に延びる環状に形成されている。なお、内輪転動面25aの曲率半径は、転動体27の外表面の曲率半径と同一或いは若干大きくなるように形成されている。
図示の例では、内輪転動面25aは内輪25の外周面のうち軸方向の中央に位置する部分に形成されている。なお、内輪25の外周面のうち内輪転動面25aを除く部分は、一定の外径で軸方向に延びている。
【0044】
外輪26は、保持器28よりも径方向の外側に配置され、ヘッド部3の内側に例えば隙間嵌め等によって固定されている。ただし、この場合に限定されるものではなく、例えばヘッド部3の内側に図示しないOリング等を介して予圧が付与された状態で外輪26を固定しても構わない。これにより、外輪26がヘッド部3に固定される固定輪として機能する。
外輪26は、内輪25との間に環状の空間を設けた状態で、内輪25及び保持器28を径方向の外側から囲んでいる。外輪26は、例えばステンレス鋼や軸受鋼等の金属材料により円環状に形成されている。ただし、外輪26は金属製に限定されるものではなく、その他の材料によって形成されていても構わない。
【0045】
外輪26の内周面には、径方向の外側に向かって窪む外輪転動面26aが形成されている。外輪転動面26aは、転動体27の外表面に沿うように断面視半球状に形成されていると共に、外輪26の内周面の全周に亘って周方向に延びる環状に形成されている。なお、外輪転動面26aの曲率半径は、転動体27の外表面の曲率半径と同一或いは若干大きくなるように形成されている。
図示の例では、外輪転動面26aは外輪26の内周面のうち、軸方向の中央に位置する部分に形成され、内輪転動面25aに対して径方向に向い合うように配置されている。なお、外輪26の内周面のうち外輪転動面26aを除く部分は、一定の外径で軸方向に延びている。
【0046】
複数の転動体27は、内輪25と外輪26との間に配置されている。具体的には、複数の転動体27は、保持器28によって転動可能に保持されていると共に、周方向に間隔をあけた状態で均等配列されている。そして複数の転動体27は、内輪転動面25aと外輪転動面26aとの間に配置され、内輪転動面25a及び外輪転動面26aに沿って自転しながら、軸線O回りを公転可能とされている。
本実施形態では、転動体27は、例えばステンレス鋼や軸受鋼等の金属材料、或いはジルコニヤ等のセラミック材料等によって球状に形成されている。
【0047】
(保持器)
図3及び図4に示すように、保持器28は、内輪25と外輪26との間に軸線Oと同軸に配置され、全体として円環状に形成されている。保持器28は、例えば炭素鋼、高力黄銅、アルミ合金等の金属材料や、合成樹脂材料等によって形成されている。
合成樹脂材料としては、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)等が挙げられる。さらに、これら合成樹脂材料に、例えばガラス繊維や炭素繊維を含有することで、強度を強化しても構わない。
【0048】
保持器28は、軸線Oと同軸に配置された円環状の本体部30と、本体部30を径方向に貫通するように形成された複数の保持孔31とを備えている。
【0049】
本体部30は、例えば径方向の厚みが転動体27の直径Dの例えば1/2~1/3程度に形成されていると共に、軸方向に沿った長さが内輪25及び外輪26の軸方向の長さに対して1/3程度となるように形成されている。
ただし、本体部30の外形サイズは、この場合に限定されるものではない。
【0050】
複数の保持孔31は、転動体27の数に対応して設けられ、複数の転動体27を周方向に間隔をあけて均等配列させた状態で、転動可能に保持する役割を果たしている。本実施形態では、本体部30に7つの保持孔31が形成されている場合を例に挙げて説明する。ただし、保持孔31の個数は、7つに限定されるものではなく、適宜変更して構わない。
【0051】
保持孔31は、本体部30を径方向に貫通するように形成されていることに加え、上方(軸方向の一方向)に向けて開口部32を通じて開口するように形成されている。これにより、本実施形態の保持器28は、転動体27を上方から保持孔31内に組み込むことが可能な冠型保持器として機能する。
保持孔31は、図4及び図5に示すように、転動体27を挟んで周方向に向かい合うように配置された第1周壁面35及び第2周壁面36と、本体部30の上方を向くと共に、第1周壁面35及び第2周壁面36を周方向に繋ぐ軸壁面37とを備えている。
【0052】
第1周壁面35及び第2周壁面36は、転動体27の外表面の曲率半径に対応した曲面状に形成されている。具体的には、第1周壁面35及び第2周壁面36は、転動体27の外表面の曲率半径と同一或いは若干大きくなる曲率半径を有する断面視半球状に形成されている。
軸壁面37は、第1周壁面35と第2周壁面36との間の周方向に沿った最大間隔H1が、転動体27の直径Dよりも大きい間隔となるように、周方向に沿って平坦状に延びるように形成されている。これにより、保持孔31内には、第1周壁面35と第2周壁面36との間において、周方向に沿った転動体27の移動を許容する許容空間(遊び空間)Rが確保されている。
【0053】
このように構成された保持孔31は、軸壁面37の上方に位置する開口部32を通じて開口している。この際、開口部32における第1周壁面35と第2周壁面36との間の周方向に沿った間隔H2は、転動体27の直径D以下の間隔とされている。これにより、保持孔31内に組み込んだ転動体27が、開口部32を通じて保持孔31内から抜けることを防止している。
【0054】
上述のように構成された第1の転がり軸受20において、例えば軸線Oを中心として円環の板状に形成された一対のシールド部材を、複数の転動体27を挟んで軸方向に向かい合うように内輪25或いは外輪26に装着しても構わない。これにより、内輪25と外輪26との間のシール性を向上することができ、外部からの異物等の進入を抑制することができる。
【0055】
なお、第2の転がり軸受21は、図2に示すように第1の転がり軸受20と同様に構成され、回転軸部11の下端部側を回転支持している。これにより、第1の転がり軸受20及び第2の転がり軸受21を利用して、回転軸部11を上下2箇所で回転支持でき、歯科処置具4を軸線O回りに安定に回転支持することが可能とされている。
【0056】
(歯科用ハンドピースの作用)
上述のように構成された歯科用ハンドピース1の作用について説明する。
図2に示すように、歯科処置具4を利用して処置を行う場合には、給気通路5内に供給された圧縮空気Fをタービン羽根15の羽根部15aに吹き付けることで、回転軸部11及び歯科処置具4を、例えば300000~400000rpm前後の回転数で超高速に回転させることができる。これにより、歯科処置具4を利用して歯牙等の処置を行える。
【0057】
ところで歯科処置具4の回転中、回転軸部11の回転に伴って内輪25が軸線O回りに回転するので、これに伴って、保持器28が軸線O回りを一定の速度で公転すると共に、複数の転動体27のそれぞれが保持孔31内において自転しながら軸線O回りを保持器28と同じ方向に公転する。従って、各転動体27は、例えば図5に示す実線の如く、軸壁面37上で支持されながら第1周壁面35に接触或いは近接しながら軸線O回りを公転する。
【0058】
このような状況において、例えば歯科処置具4に何らかの外力が作用して、内輪25と外輪26との間に傾きに起因するずれや径方向のずれ等が生じた場合には、複数の転動体27のそれぞれで、内輪転動面25a内及び外輪転動面26a内における接触位置が異なり、転動体27の個々の公転速度にばらつき等の差異が生じる可能性がある。
【0059】
このような場合であっても、本実施形態の保持器28によれば、保持孔31を構成する軸壁面37が周方向に沿って平坦状に延びるように形成され、それによって第1周壁面35と第2周壁面36との間の周方向に沿った最大間隔が転動体27の直径Dよりも大きい間隔とされている。これにより、保持孔31内に、周方向に沿った転動体27の移動を許容する許容空間Rを確保している。
従って、保持器28の公転速度に対して例えば遅れが生じる転動体27が発生したとしても、図5に示す点線の如く、転動体27を保持孔31内で周方向に移動させることができる。つまり、遅れが生じている転動体27を、許容空間Rを利用して第1周壁面35から第2周壁面36に向けて軸壁面37上を移動させることができる。
【0060】
これにより、遅れが生じている転動体27が、保持器28の回転(公転)に対してブレーキとなるような負荷をかけてしまうことを抑制することや、負荷をかける時間を抑制することができる。従って、保持孔31の摩耗や、保持器28の変形等の不具合を生じさせ難くすることができ、良好な回転特性を維持でき、且つ耐久性が向上した高品質な保持器28とすることができる。
【0061】
さらに、このような保持器28を具備する転がり軸受12(第1の転がり軸受20及び第2の転がり軸受21)によれば、回転性能が安定すると共に、保持器28が変形等し難いので、内輪25又は外輪26と保持器28とが接触して摩耗等を引き起こしてしまう可能性が低く、良好な回転特性を維持することができる。
【0062】
従って、本実施形態の軸受ユニット10によれば、2つの転がり軸受12(第1の転がり軸受20及び第2の転がり軸受21)を利用して回転軸部11を回転支持することができるので、高速回転する回転軸部11を安定して回転支持することができる。特に、2つの転がり軸受12同士の間においても、転動体27の遅れ等に起因する保持器28の公転速度に相違が生じ難いので、この点においても高速回転する回転軸部11を安定して支持することができる。
従って、本実施形態の歯科用ハンドピース1によれば、超高速に回転する回転軸部11及び歯科処置具4を、回転抵抗を抑えながら良好な回転性能で回転させることができ、高品質化及び省電力化等を図り易い。
【0063】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0064】
例えば上記実施形態では、回転機器として歯科用ハンドピース1を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではない。例えば、回転機器として、ファンモータに適用しても構わないし、ハードディスクドライブのスピンドルモータ及びスイングアームのうちの少なくともいずれか一方に適用しても構わない。
さらに上記実施形態では、2つの転がり軸受12を具備する軸受ユニット10を例に挙げて説明したが、例えば3つ以上の転がり軸受12を具備する軸受ユニットとしても構わない。
【0065】
さらに上記実施形態において、保持器28を例えば射出成形や削り出し加工等により形成しても構わないが、この場合に限定されるものではない。例えば、軸方向或いは周方向に複数に分割(例えば2分割)した分割体を、熱カシメ、超音波溶着等の各種接合方法によって一体的に組み合わせることで、保持器28を構成しても構わない。
【0066】
さらに上記実施形態では、球状の転動体27を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではなく、転動体27として例えば円柱状のころを採用しても構わない。
【0067】
さらに上記実施形態において、例えば図6及び図7に示すように、一対の保持爪を具備する保持器(冠型保持器)40としても構わない。
この場合の保持器40は、各保持孔31が、本体部30よりも上方に向けて突出すると共に、周方向に間隔をあけて向かい合うように形成された第1保持爪41及び第2保持爪42を有している。第1保持爪41及び第2保持爪42は、上方に向かうにしたがって互いの距離が接近するように円弧状に立ち上がるように形成されている。そして、第1保持爪41の内周面が第1周壁面35の一部とされ、第2保持爪42の内周面が第2周壁面36の一部とされている。これにより、第1保持爪41及び第2保持爪42を利用して、転動体27を転動可能に保持することが可能とされている。
【0068】
なお、第1保持爪41の先端部と第2保持爪42の先端部との間に位置する部分が開口部32とされている。従って、第1保持爪41の先端部と第2保持爪42の先端部との間の周方向に沿った間隔H2は、転動体27の直径D以下の間隔とされている。
【0069】
このように構成された保持器40であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。特に、第1保持爪41及び第2保持爪42を利用して転動体27をより安定に転動可能に保持することができる。さらに、第1保持爪41及び第2保持爪42を有している分、本体部30自身の軸方向の高さを抑えることができ、軽量化等を図り易い。
さらに、周方向に隣り合う保持孔31において、一方の保持孔31の第1保持爪41と他方の保持孔31の第2保持爪42との間に位置する部分を、グリスを保持するグリスポケットG等として利用できる。従って、グリスポケットGを利用してグリスを安定に保持することができるので、使い易く利便性が向上した保持器40とすることができる。
【0070】
さらに、保持器28としては冠型保持器に限定されるものではなく、例えば転動体27の周囲を囲む保持孔31が形成された、いわゆるかご型保持器としても構わない。
例えば図8及び図9に示す保持器50は、保持孔31が本体部30を径方向に貫通するように形成され、上方に向けて非開口とされている。これにより、保持孔31は、転動体27を挟んで軸壁面37に対して軸方向に向かい合うように配置された対向壁面51を備えている。つまり、保持孔31は、第1周壁面35、第2周壁面36、軸壁面37及び対向壁面51によって画成されている。
対向壁面51は、第1周壁面35及び第2周壁面36を周方向に繋ぐと共に、軸壁面37に対応して周方向に沿って平坦状に延びるように形成されている。
【0071】
このように構成された保持器50であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。特に、この保持器50によれば、周方向に向かい合う第1周壁面35及び第2周壁面36と、軸方向に向かい合う軸壁面37及び対向壁面51によって、転動体27の周囲を囲みながら転動体27を保持孔31内に保持することができる。これにより、例えばアンギュラ型転がり軸受等の保持器として好適に利用することが可能である。
【0072】
さらに上記実施形態では、第1周壁面35及び第2周壁面36を、転動体27の外表面の曲率半径に対応した曲面状に形成した場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではない。
例えば、図10に示すように、第1周壁面35のうち軸方向の中央に位置する部分に、第1周壁面35のうちの残りの部分よりも先に転動体27が接触可能な第1接触部35aを設け、第2周壁面36のうち軸方向の中央に位置する部分に、第2周壁面36のうちの残りの部分よりも先に転動体27が接触可能な第2接触部36aを設けた構成としても構わない。
【0073】
第1周壁面35のうち第1接触部35aを除いた部分(上記残りの部分)は、転動体27の外表面の曲率半径よりも若干大きい曲率半径を有する曲面状に形成されている。第1接触部35aは、上記曲率半径よりも、さらに大きい曲率半径を有する曲面状に形成されている。これにより、第1周壁面35のうち第1接触部35aを除いた部分よりも先に、転動体27を第1接触部35aに接触させることが可能となる。
同様に、第2周壁面36のうち第2接触部36aを除いた部分(上記残りの部分)は、転動体27の外表面の曲率半径よりも若干大きい曲率半径を有する曲面状に形成されている。第2接触部36aは、上記曲率半径よりも、さらに大きい曲率半径を有する曲面状に形成されている。これにより、第2周壁面36のうち第2接触部36aを除いた部分よりも先に、転動体27を第2接触部36aに接触させることが可能となる。
【0074】
さらに、このように構成された保持器28において、軸壁面37は、第1接触部35aと第2接触部36aとの間の周方向に沿った間隔H3が、転動体27の直径Dよりも大きい間隔となるように、周方向に沿って平坦状に延びるように形成されている。これにより、保持孔31内には、第1接触部35aと第2接触部36aとの間において、周方向に沿った転動体27の移動を許容する許容空間(遊び空間)Rが確保されている。
【0075】
このように構成された保持器28であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。それに加えて、この場合の保持器28によれば、転動体27のそれぞれが、保持孔31内で自転しながら、軸線を中心として保持器28と同じ方向に公転するときに、転動体27を第1接触部35a又は第2接触部36aに対して接触させることが可能である。これにより、第1接触部35a又は第2接触部36aを利用して、転動体27を定位置に位置決めし易い。
そのため、転動体27が高速回転する場合であっても、摩擦力の変動を抑え易く、振動の発生を抑えることができると共に、安定した回転特性を具備する保持器28とすることができる。
【0076】
なお、図11に示すように、転動体27の周囲を囲む保持孔31が形成された、いわゆるかご型保持器の保持器50に、第1接触部35a及び第2接触部36aを採用しても構わない。この場合であっても、図10に示す保持器28と同様の作用効果を奏功することができる。
【0077】
さらに図12に示すように、第1接触部35a及び第2接触部36aを曲面状に形成するのではなく、軸方向に沿って延びる平坦面状に形成した保持器28としても構わない。
この場合であっても、平坦面状に形成された第1接触部35a及び第2接触部36aに対して、転動体27を接触させることが可能となる。従って、この場合であっても、同様の作用効果を奏功することができる。
【0078】
なお、図13に示すように、転動体27の周囲を囲む保持孔31が形成された、いわゆるかご型保持器の保持器50に、平坦面状に形成された第1接触部35a及び第2接触部36aを採用しても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏功することができる。
【0079】
さらには、図14に示すように、第1接触部35a及び第2接触部36aを転動体27側に向けて突出した断面半球状の突起状に形成した保持器28としても構わない。
この場合であっても、突起状に形成された第1接触部35a及び第2接触部36aに対して、転動体27を接触させることが可能となる。従って、この場合であっても、同様の作用効果を奏功することができる。
【0080】
なお、図15に示すように、転動体27の周囲を囲む保持孔31が形成された、いわゆるかご型保持器の保持器50に、突起状に形成された第1接触部35a及び第2接触部36aを採用しても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏功することができる。
【符号の説明】
【0081】
O…軸線
1…歯科用ハンドピース(回転機器)
10…軸受ユニット
11…回転軸部
12…転がり軸受
25…内輪
26…外輪
27…転動体
28、40、50…保持器
30…本体部
31…保持孔
32…開口部
35…第1周壁面
35a…第1接触部
36…第2周壁面
36a…第1接触部
37…軸壁面
41…第1保持爪
42…第2保持爪
51…対向壁面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15