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特開2022-106645放電処理装置及びシート材処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106645
(43)【公開日】2022-07-20
(54)【発明の名称】放電処理装置及びシート材処理システム
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/24 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
H05H1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2021135140
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000109727
【氏名又は名称】株式会社デュプロ
(72)【発明者】
【氏名】金田 孝則
(72)【発明者】
【氏名】角田 和隆
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA07
2G084BB21
2G084CC22
2G084CC34
2G084DD01
2G084DD12
2G084FF07
2G084FF20
(57)【要約】
【課題】放電処理を施すシート材に摺擦傷が付くことを抑制できる放電処理装置を提供する。
【解決手段】シート材の搬送経路120の上方に配置された上電極110と、搬送経路120の下方に配置された下電極112と、搬送経路120を通過するシート材の下面を支持する支持部材108bと、を備え、上電極110と下電極112との間で放電を発生させ、シート材に対して放電処理を行う放電処理装置26において、支持部材108bの上面にシート材の下面に接触するシート材接触材208を備え、シート材接触材208は、支持部材108bよりも剛性が低く、導電性を有するものである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材の搬送経路の上方に配置された上電極と、
前記搬送経路の下方に配置された下電極と、
前記搬送経路を通過する前記シート材の下面を支持する支持部材と、を備え、
前記上電極と前記下電極との間で放電を発生させ、前記シート材に対して放電処理を行う放電処理装置において、
前記支持部材の上面に前記シート材の下面に接触するシート材接触材を備え、
前記シート材接触材は、前記支持部材よりも剛性が低く、導電性を有することを特徴とする放電処理装置。
【請求項2】
請求項1の放電処理装置において、
前記シート材接触材は、導電性繊維からなることを特徴とする放電処理装置。
【請求項3】
請求項1または2の放電処理装置において、
前記支持部材の下方に負圧が形成される負圧形成部が配置され、
前記支持部材は、前記搬送経路と前記負圧形成部とを連通する連通部が形成された板状部材であることを特徴とする放電処理装置。
【請求項4】
請求項3の放電処理装置において、
前記下電極を前記シート材の搬送方向に複数備え、
前記支持部材は前記シート材の搬送方向の上流側に位置する上流側下電極と下流側に位置する下流側下電極との間に配置され、
前記支持部材は前記下流側下電極との間に前記負圧形成部と連通する隙間部を有し、
前記連通部は前記隙間部と繋がった切り欠き形状であることを特徴とする放電処理装置。
【請求項5】
請求項3または4の放電処理装置において、
前記シート材接触材を、前記連通部と対向する位置を避けて配置することを特徴とする放電処理装置。
【請求項6】
請求項3乃至5の何れか一項に記載の放電処理装置において、
前記シート材接触材を、前記シート材の搬送方向に直交する幅方向に複数配置していることを特徴とする放電処理装置。
【請求項7】
請求項6の放電処理装置において、
前記幅方向に複数配置された前記シート材接触材同士の間に、前記支持部材の前記連通部が位置することを特徴とする放電処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の放電処理装置において、
前記支持部材は、接地された導電性素材を有する部材であることを特徴とする放電処理装置。
【請求項9】
シート材の搬送経路の上方に配置された上電極と、
前記搬送経路の下方に配置された下電極と、
前記搬送経路を通過する前記シート材の下面を支持する支持部材と、を備え、
前記上電極と前記下電極との間で放電を発生させ、前記シート材に対して放電処理を行う放電処理装置において、
前記支持部材として、前記シート材を挟持して前記シート材の搬送方向に沿って表面移動する表面移動部材を備えることを特徴とする放電処理装置。
【請求項10】
請求項9の放電処理装置において、
前記上電極と前記下電極との組合せを、前記シート材の搬送方向に複数組備え、
複数の前記下電極のうちの二つの前記下電極の間に配置された前記支持部材として、板状のガイド板と前記表面移動部材とを備えることを特徴とする放電処理装置。
【請求項11】
枚葉シート材に放電処理を施す放電処理手段と、
前記放電処理手段に前記枚葉シート材を供給するシート材供給手段と、を備えるシート材処理システムにおいて、
前記放電処理手段として、請求項1乃至10の何れかに記載の放電処理装置を備えることを特徴とするシート材処理システム。
【請求項12】
請求項11のシート材処理システムにおいて、
前記放電処理手段から排出された前記枚葉シート材にニスを塗布するニス塗布手段を備えることを特徴とするシート材処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電処理装置及びシート材処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート材の搬送経路の上方に配置された上電極と、搬送経路の下方に配置された下電極と、搬送経路を通過するシート材の下面を支持する支持部材と、を備え、上電極と下電極との間で放電を発生させ、シート材に対して放電処理を行う放電処理装置が知られている。この種の放電処理装置として、シート材に印刷やコーティングする際の付着性、つまり濡れ性(親和性)を高めるために、シート材の表面をコロナ放電により改質するコロナ処理装置が提案されている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2016-516571公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の放電処理装置では、処理対象のシート材が放電処理装置を通過したときにシート材に摺擦傷が付くことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、シート材の搬送経路の上方に配置された上電極と、前記搬送経路の下方に配置された下電極と、前記搬送経路を通過する前記シート材の下面を支持する支持部材と、を備え、前記上電極と前記下電極との間で放電を発生させ、前記シート材に対して放電処理を行う放電処理装置において、前記支持部材の上面に前記シート材の下面に接触するシート材接触材を備え、前記シート材接触材は、前記支持部材よりも剛性が低く、導電性を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、放電処理を施すシート材に摺擦傷が付くことを抑制できる、という優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の加飾印刷システムを模式的に示す側面図。
図2】実施形態の加飾印刷システムを模式的に示す平面図。
図3】実施形態のコロナ処理装置の側方断面図。
図4】二つの受電部とその近傍のガイドプレートの説明図、(a)は斜視図、(b)は上面図。
図5】第二の実施形態のコロナ処理装置の側方断面図。
図6】比較例のコロナ処理装置の側方断面図。
図7】比較例の二つの受電部とその近傍のガイドプレートの説明図、(a)は斜視図、(b)は上面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0009】
以下、本発明に係る放電処理装置の一実施形態について説明する。
【0010】
図1及び図2は、本実施形態に係る放電処理装置であるコロナ処理装置26を備える加飾印刷システム10を模式的に示す図である。
図1は側面図であり、図2は平面図である。加飾印刷システム10は、シート材を搬送しながらシート材に所定の加飾印刷を施す装置である。シート材の素材は、紙、布、樹脂、金属などさまざまである。以降、シート材が搬送される方向(図1及び図2において右から左に向かう方向)を搬送方向Y、搬送方向Yと直交する方向(図1において紙面に直交する方向であって図2の上下方向)を幅方向Xと呼ぶ。
【0011】
加飾印刷システム10は、シート材を一枚ずつ給紙する給紙装置12と、一枚ずつ給紙されるシート材にニスを塗布するニス塗布装置14と、シート材上に塗布したニスのタック性を利用してシート材に箔を転写する箔押し装置16と、シート材を蓄積するスタッカ18と、加飾印刷システム10を統合的に制御する制御装置20と、を備える。給紙装置12、ニス塗布装置14、箔押し装置16、スタッカ18は、搬送方向Yに上流側(図1及び図2では右側)からこの順に一列に並ぶ。制御装置20は、給紙装置12、ニス塗布装置14、箔押し装置16及びスタッカ18とネットワーク2を介して接続される。
【0012】
給紙装置12は、フィーダ22と、コロナ処理装置26と、レジスト部24と、を備える。フィーダ22は、テーブル28と、吸着ヘッド30と、を含む。テーブル28にはシート材が積載される。テーブル28は、昇降可能に構成される。吸着ヘッド30は、テーブル28に積載されたシート材を上から順に一枚ずつ送り出す。
【0013】
コロナ処理装置26は、フィーダ22が送り出したシート材に対して、コロナ放電によりその表面の改質を行う。コロナ処理装置26の詳細な構成は後述する。
【0014】
レジスト部24は、図2中の矢印「α」で示すように、搬送方向に対して傾斜した搬送力をシート材に付与することで、シート材の幅方向の一方の端面(搬送方向に対して右側の端面)をレジスト基準ガイド32に突き当てながら搬送する。これにより、フィーダ22が送り出したシート材の幅方向Xの位置を揃える。
【0015】
ニス塗布装置14は、シート材センサ42と、一対のCCDセンサ44と、少なくとも一つのニス吐出部46と、半硬化用紫外線ランプ48と、本硬化用紫外線ランプ50と、を含む。シート材センサ42、一対のCCDセンサ44、ニス吐出部46、半硬化用紫外線ランプ48、本硬化用紫外線ランプ50は、この順に上流側から並ぶように配置される。図示の例では、ニス塗布装置14は三つのニス吐出部46を含んでいるが、これには限定されず、ニス塗布装置14は幅方向Xの全域にわたって延在する一つのニス吐出部46を含んでもよいし、二つまたは四つ以上のニス吐出部46を含んでもよい。半硬化用紫外線ランプ48及び本硬化用紫外線ランプ50には紫外線を照射するLEDを用いるが、紫外線を照射するものであれば、電球や蛍光灯などの他の光源であってもよい。光源は出力調整可能なものが望ましい。
【0016】
シート材センサ42は、給紙装置12から給紙され、レジスト部24から搬出されたシート材を検出する。
【0017】
ニス吐出部46は、特に限定しないが図示の例ではライン型のインクジェットヘッドである。ニス吐出部46は、シート材センサ42によるシート材の先端エッジの検出をトリガとして、ニス吐出データに従って紫外線硬化性ニスを吐出し、シート材に紫外線硬化性ニスを塗布する。ニス吐出データは、シート材のどこにニスを塗布するのかを示すデータである。
【0018】
給紙装置12が給紙するシート材には、予め、下地画像と、下地画像の位置を特定する基準となる複数のレジストレーションマークと、が印刷されていてもよい。ニス塗布装置14は、シート材におけるニスの塗布部分を規定するニス吐出データに従って、下地画像と所定の関係を有するようにニスを塗布するものであり、例えば下地画像に重なるように、ニスを塗布してもよい。
【0019】
ここで、シート材の下地画像がずれていたり歪んでいたりすることもあり得る。したがって、下地画像と所定の関係を有するようにニスを塗布する場合は、ずれや歪みを考慮してニス吐出データを補正しておく必要がある。例えば、CCDセンサ44が、シート材センサ42によるシート材の検出をトリガとしてシート材を撮像し、制御装置20がCCDセンサ44による撮像データを画像解析し、複数のレジストレーションマークの理論位置との相違により、レジストレーションマークに囲まれた領域のニス吐出データを補正してもよい。なお、当該補正には、本出願人が先に出願した特開2016-083898号公報に記載の方法を適用できる。
【0020】
半硬化用紫外線ランプ48は、シート材上のニスに出力の比較的弱い紫外線を照射し、ニスを半硬化させる。半硬化は、ニスの流動性を低下させつつも完全には硬化させない程度に軽く(例えばさらに硬化させることができる状態に)硬化させることをいう。ニスの少なくとも表面を半硬化することにより、ニスのタック性を維持しつつも、ニスがシート材上を流れるのを防止してニスのシート材上での位置を安定させることができる。半硬化状態のニスは、箔押し装置16において本硬化される。シート材に箔押ししない場合は、通常、半硬化用紫外線ランプ48をオフにするが、箔押ししない場合に半硬化用紫外線ランプ48を使用してもよい。例えば、シート材上に塗布したニスが滲みやすい場合、半硬化用紫外線ランプ48をオンにしてニスの少なくとも表面を半硬化させる。これにより、ニスの滲みを抑えることができる。
【0021】
本硬化用紫外線ランプ50は、シート材に塗布されたニスに紫外線を照射し、ニスを本硬化させる。シート材に箔押しする場合は、本硬化用紫外線ランプ50をオフにする。
【0022】
つまり、シート材に箔押しする場合は、半硬化用紫外線ランプ48によってニスを半硬化させ、箔押し装置16の箔押し用紫外線ランプ66によって半硬化状態のニスを本硬化させる。この場合、本硬化用紫外線ランプ50はオフにする。シート材に箔押ししない、すなわちシート材にニスを塗布するだけの場合は、本硬化用紫外線ランプ50でニスを本硬化させる。この場合、半硬化用紫外線ランプ48及び箔押し装置16の箔押し用紫外線ランプ66はオフにする。ただし、上述したように、半硬化用紫外線ランプ48は、箔押ししない場合でもオンにすることがある。また、箔押し用紫外線ランプ66の光源には紫外線を照射するLEDを用いるが、紫外線を照射するものであれば他の光源でもよい。
【0023】
箔押し装置16は、ウェブ52をロール・ツー・ロールで搬送する。ウェブ52は、フィルムに箔(例えば金属箔)が保持された箔保持フィルムである。箔押し装置16では、ウェブ52とシート材とを搬送しながら接触させる。シート材上の半硬化状態のニスには、そのタック性により、ウェブ52が保持する箔が接着する。この状態、すなわち箔がウェブ52に保持されつつも半硬化状態のニスに接着した状態で、箔押し用紫外線ランプ66が当該ニスに紫外線を照射し、ニスを本硬化させる。ニスが本硬化すると、ウェブ52が箔を保持する力よりも本硬化したニスが箔を接着する力の方が強い状態となる。この状態で、シート材を搬送してシート材とウェブ52とを分離させると、ウェブ52に保持されていた箔は、シート材上のニスが塗布された部分に転写される。
【0024】
スタッカ18は、箔押し装置16から搬出されたシート材を蓄積する。
【0025】
制御装置20は、例えばPCなどの情報処理端末である。制御装置20は、加飾印刷ジョブの定義についての入力を受け付ける。制御装置20は、所定のジョブ管理画面を表示し、当該ジョブ管理画面を介して、ジョブの定義についての入力を受け付けてもよい。ジョブの定義には、例えば、加飾印刷を施すシート材の枚数(加飾印刷部数)、加飾印刷を施すシート材のシート材サイズ、ニス吐出データ、コロナ処理の有無、箔押しの有無、及びピニングの強度(半硬化の硬化度合い)の調節等、が含まれる。制御装置20は、ジョブの定義に基づいて、給紙装置12、ニス塗布装置14及び箔押し装置16を制御する。
【0026】
以上が加飾印刷システム10の基本構成である。
【0027】
変形例として、加飾印刷システム10は、給紙装置12に代えて、シート材に下地画像とレジストレーションマークとを印刷するプリンタを備え、プリンタから一枚ずつシート材を給紙してもよい。
【0028】
また、加飾印刷システム10は、箔押し装置16とスタッカ18との間に、シート材を切断したり綴じたりする後処理装置を備えてもよい。
【0029】
次に、コロナ処理装置26の構成について詳細に説明する。
図3は、コロナ処理装置26を示す断面図である。コロナ処理装置26は、二つのコロナ処理部102(102a、102b)と、ハウジング104と、吸引装置106と、を備える。
【0030】
コロナ処理部102は、搬送経路120の上方に配置される放電部110と、放電部110と上下で対向するように搬送経路120の下方に配置される受電部112と、を含む。放電部110及び受電部112は、幅方向Xの長さが、シート材の幅方向Xの長さ、すなわちシート材の幅よりも長い。受電部112は、放電部110との間でコロナ放電を行うことができるものであれば特に限定されない。本実施の形態の受電部112は、幅方向Xに垂直な断面が円弧状の上面112fを有する。受電部112は、幅方向Xに垂直な断面が円形の回転ローラであってもよいし、回転しない円柱状の部材であってもよい。図示の例では、コロナ処理装置26は、上流側コロナ処理部102a(上流側放電部110aと上流側受電部112aとを含む)と、下流側コロナ処理部102b(下流側放電部110bと下流側受電部112bとを含む)と、の二つのコロナ処理部102を備えるが、コロナ処理部102の数は特に限定されない。
【0031】
ハウジング104は、シート材の搬送経路120を挟んで上下に位置する、上ハウジング130と、下ハウジング140と、を備える。上ハウジング130は、上面が開いた箱状の上ハウジング着脱部132と、下面が開いた箱状の上ハウジング固定部134と、を含む。上ハウジング着脱部132は、各コロナ処理部102の放電部110を収容する。上ハウジング着脱部132の下面は、放電部110の下方が開口している。上ハウジング着脱部132は、放電部110と一体となって着脱可能なように構成される。上ハウジング着脱部132が取り付けられた状態において、上ハウジング着脱部132の内部空間(132s)と上ハウジング固定部134(134s)の内部空間とは、上ハウジング着脱部132の上面の着脱側開口133と上ハウジング固定部134の下面の固定側開口135とを介して、連通する。下ハウジング140は、上面が開いた箱状で、各コロナ処理部102の受電部112を収容する。下ハウジング140の上面の開口部には、ガイドプレート108が設けられている。ガイドプレート108は、コロナ処理装置26を通過するシート材の下面を支持する。
【0032】
ガイドプレート108は、放電部110と受電部112とが対向する部分で開口している。この開口によって、上流側受電部112aよりも上流側のコロナ処理前ガイドプレート108a、上流側受電部112aと下流側受電部112bとの間に位置するコロナ処理内ガイドプレート108b及びコロナ処理後ガイドプレート108cに分けられている。
図4は、二つの受電部112とその近傍のガイドプレート108の説明図であり、図4(a)は斜視図、図4(b)は上面図である。
【0033】
上ハウジング着脱部132の搬送方向上流側の上ハウジング上流側側面132aと、下ハウジング140の搬送方向上流側の下ハウジング上流側側面140aとの隙間は、シート材をハウジング104内に搬入するための搬入口150を構成する。上ハウジング着脱部132の搬送方向下流側の上ハウジング下流側側面132bと、下ハウジング140の搬送方向下流側の下ハウジング下流側側面140bとの隙間は、シート材をハウジング104外に搬出するための搬出口152を構成する。
【0034】
ハウジング104外及びハウジング104内の少なくとも一方には、シート材を搬送するための搬送手段が設けられている。図示の例では、図4に示すように、ハウジング104外であって受電部112よりも上流側の位置のコロナ処理前搬送ローラ210と、ハウジング104外であって受電部112よりも下流側の位置のコロナ処理後搬送ローラ211とを備える。コロナ処理前搬送ローラ210は、幅方向Xにおいてコロナ処理前ガイドプレート108aと交互に配置され、コロナ処理前ガイドプレート108aに支持され、コロナ処理部102に向かうシート材に搬送力を付与する搬送手段である。コロナ処理後搬送ローラ211は、幅方向Xにおいてコロナ処理後ガイドプレート108cと交互に配置され、コロナ処理部102を通過し、コロナ処理後ガイドプレート108cに支持されたシート材に搬送力を付与する搬送手段である。
【0035】
シート材は、ガイドプレート108に支持されながら、搬入口150からハウジング104内に搬入され、二つのコロナ処理部102の放電部110と受電部112との間を通過して、搬出口152からハウジング104外に搬出される。ガイドプレート108の上面(後述する導電性シート208を貼り付けている場合は、導電性シート208の上面)は、シート材が搬送される搬送経路120を構成する。
【0036】
シート材がコロナ処理部102の放電部110と受電部112との間を搬送されるとき、放電部110に高周波電圧が印加されると、放電部110と受電部112との間にコロナ放電が発生し、受電部112の表面に沿って移動するシート材の表面(上面)にコロナ処理が施される。放電部110及び受電部112は、シート材以上の幅を有するため、コロナ処理はシート材の搬送にともなってシート材の全面に対し施される。コロナ処理を行うと、ハウジング104内の空気中には、オゾン(O3)が発生する。
【0037】
図3中の破線の矢印はハウジング104内の空気の流れと、ハウジング104内に流入する空気の流れとを示す。
ハウジング104には、放電部110側(すなわち搬送経路120よりも上方)に第一排気口160が形成されている。詳しくは、上ハウジング130に第一排気口160が形成されている。図示の例では、上ハウジング固定部134の上面に第一排気口160が形成されている。ハウジング104には、複数の第一排気口160が設けられてもよい。例えば、幅方向Xに並ぶように複数の第一排気口160が上ハウジング固定部134に形成されてもよい。また、搬送方向Yに並ぶように複数の第一排気口160が上ハウジング固定部134に形成されてもよい。この場合、各コロナ処理部102の上方に、第一排気口160が形成されてもよい。
【0038】
また、ハウジング104には、受電部112側(すなわち搬送経路120よりも下方)に第二排気口162が形成されている。つまり、下ハウジング140に第二排気口162が形成されている。図示の例では、下ハウジング140の下面に第二排気口162が形成されている。ハウジング104には、複数の第二排気口162が設けられてもよい。例えば、幅方向Xに並ぶように複数の第二排気口162が下ハウジング140に形成されてもよい。また、搬送方向Yに並ぶように複数の第二排気口162が下ハウジング140に形成されてもよい。この場合、各コロナ処理部102の下方に、第二排気口162が形成されてもよい。
【0039】
第一排気口160及び第二排気口162からは、吸引装置106によって、ハウジング104内のオゾンを含む気体が吸引され、排気される。ハウジング104内の気体の吸引及び排気は、コロナ処理部102を冷却する効果もある。
【0040】
本実施の形態では、吸引装置106によるハウジング104内からの気体の吸引量、すなわち第一排気口160及び第二排気口162からの排気量は、シート材がハウジング104内に搬入されていないとき(すなわち下ハウジング140の上面の開口が塞がれていないとき)において、放電部110側(上側)の第一排気口160からの排気量よりも受電部112側(下側)の第二排気口162からの排気量を多くする。
【0041】
放電部110と受電部112との間を通過するシート材が受電部112から浮き上がると、たとえばシート材の裏面(下面)と受電部112との間でコロナ放電が発生し、シート材の表面(上面)側でコロナ放電が発生しなくなることがある。このように、シート材が浮き上がると、シート材の表面(上面)側で安定したコロナ放電が得られなくなり、所望の表面改質の効果を得ることができなくなる。これに対し、本実施の形態では、上述したように、上側の排気量よりも下側の排気量を多くすることにより、図3中の破線矢印で示すように、ガイドプレート108と受電部112との隙間には下ハウジング140の内部空間である下部内部空間140sに向けて吸引する負圧が発生する。そして、搬送経路120を搬送されるシート材がこの負圧に吸引されることで、放電部110と受電部112との間を通過するシート材が受電部112から浮き上がることを抑制できる。これにより、シート材が受電部112上を摺動し、シート材の表面(上面)側で安定したコロナ放電を得ることができる。
【0042】
単一の吸引装置106によって第一排気口160及び第二排気口162から吸引する場合、あるいは同一の吸引量が設定された別々の吸引装置106によって第一排気口160及び第二排気口162から吸引する場合、排気経路を次のように設定する。すなわち、第二排気口162からの排気経路である第二排気経路168で断面積が最小になる部分を、第一排気口160からの排気経路である第一排気経路166で断面積が最小になる部分よりも断面積が大きくなるように設定する。これのより、上述の排気量の関係を満たすことができる。
【0043】
例えば、第一排気口160が第一排気経路166における断面積が最小になる部分で、第二排気口162が第二排気経路168における断面積が最小になる部分である場合、第二排気口162の開口面積を第一排気口160の開口面積よりも大きくする。これにより、上述の排気量の関係を満たしてもよい。
【0044】
別々の吸引装置106によって第一排気口160及び第二排気口162から吸引する場合、第二排気口162から吸引する吸引装置106には、第一排気口160から吸引する吸引装置106よりも、設定可能な吸引量の最大値が高いものを採用してもよい。そして、第二排気口162から吸引する吸引装置106の吸引量の設定値を、第一排気口160から吸引する吸引装置106の吸引量の設定値よりも高くすることによって、上述の排気量の関係を満たすことができる。
【0045】
上ハウジング着脱部132は、上ハウジング上流側側面132aの下端から搬送方向下流側に延在する入口側延在部136を有する。この入口側延在部136は、搬入口150の上縁からハウジング内に延在すると捉えることもできる。また、上ハウジング着脱部132は、上ハウジング下流側側面132bの下端から搬送方向上流側に延在する出口側延在部138を有する。この出口側延在部138は、搬出口152の上縁からハウジング内に延在すると捉えることもできる。これらの延在部(136,138)は、放電部110が外部から視認されないよう放電部110を隠蔽するとともに、ユーザが放電部110に触れるのを防ぐ。
【0046】
入口側延在部136の下面である入口側下面136aは、搬送方向下流側ほど下方に位置するように、搬送方向下流側に向かって下り傾斜となっている。また、出口側延在部138の下面である出口側下面138aは、搬送方向上流側ほど下側に位置するように、搬送方向上流側に向かって下り傾斜となっている。
【0047】
ハウジング104内の気体が第一排気口160及び第二排気口162から吸引されることにより、搬入口150及び搬出口152からは周囲の空気が流入する。搬出口152から流入する空気は特に、搬出口152から搬出されるシート材にとって向かい風であるため、これが搬出中のシート材の先端に当たることでシート材がバタつくと考えられる。シート材がバタつくと、シート材が受電部112から浮き上がり、安定したコロナ放電が得られなくなるおそれがある。図3に示す構成と異なり、出口側下面138aがガイドプレート108の上面に対して平行であると、出口側下面138aに沿って流入した空気がシート材に対して向かい風となる範囲が広く、シート材を下向きに抑えることができず、シート材のバタつきが生じやすいと考えられる。
【0048】
これに対し、図3に示す本実施の形態では、出口側下面138aは搬送方向上流側に向かって下り傾斜となっているため、搬出口152から流入する空気の一部は、出口側下面138aに沿って流れることによって下向きの速度成分をもつことになる。つまり、搬出口152からハウジング104内に斜め下向きに流入する。このように斜め下向きに流入する気流によって、シート材は下向きに押さえつけられ、バタつきが抑えられ、安定したコロナ放電が得られると考えられる。
【0049】
次に、本実施形態のコロナ処理装置26の特徴部について説明する。
図3及び図4に示すように、本実施形態のコロナ処理装置26は、搬送経路120を通過するシート材の下面を支持する支持部材の一つであるコロナ処理内ガイドプレート108bの上面に導電性シート208を貼り付けている。導電性シート208は、コロナ処理内ガイドプレート108bの上方を通過するシート材の下面に接触するシート材接触材である。導電性シート208は、コロナ処理内ガイドプレート108bよりも剛性が低く、導電性を有する。
【0050】
図6及び図7は、導電性シート208を備えていない比較例のコロナ処理装置26の説明図である。図6は、比較例のコロナ処理装置26を示す断面図である。図7は、比較例のコロナ処理装置26における二つの受電部112とその近傍のガイドプレート108の説明図であり、図7(a)は斜視図、図7(b)は上面図である。
【0051】
図4及び図7に示すように、コロナ処理内ガイドプレート108bの下流側の縁部には、下流側端部から上流側に向けて切り欠いた形状の切り欠き部108kを幅方向Xの全域に渡って複数備える。
ここで、切り欠き部108kを設けた理由について説明する。
搬送中のシート材がコロナ処理内ガイドプレート108bの下流側端部と、下流側受電部112bとの隙間に落下することを防止するには、コロナ処理内ガイドプレート108bの下流側端部を下流側受電部112bの上面112fできるだけ近づけることが望ましい。
【0052】
コロナ処理内ガイドプレート108bの下流側端部を下流側受電部112bの上面112fに近づけた構成で、下流側端部の形状が幅方向Xについて一様なガイド部材(幅方向Xに平行な直線状の縁を有するガイド部材)をコロナ処理内ガイドプレート108bに用いた場合、下流側放電部110bの上流側でシート詰まりが生じることがあった。これは、以下の理由によると考えられる。
すなわち、コロナ処理内ガイドプレート108bと受電部112との隙間に下部内部空間140sに向けて吸引する負圧が発生していても、コロナ処理内ガイドプレート108bの下流側端部の縁部が幅方向Xに平行な直線状である場合、シート材の先端がコロナ処理内ガイドプレート108bの下流側端部を通過するまでは、シート材を下方に吸引する力が作用しない。このため、搬送経路120内での向かい風やシート材の反りによって、コロナ処理内ガイドプレート108b上のシート材の先端が浮き上がったときに、コロナ処理内ガイドプレート108bの下流側端部を通過した後の下方への吸引では間に合わず、浮き上がったシート材の先端が上ハウジング130下面と下流側放電部110bとの隙間等、搬送経路120の上面を形成する部材に引っかかり、シート詰まりが発生することがある。
【0053】
これに対して、図7に示すように、コロナ処理内ガイドプレート108bの下流側の縁部に切り欠き部108kを設けることで、切り欠き部108kの位置でシート材に対して下方に吸引する力を作用させることができる。これにより、コロナ処理内ガイドプレート108bの下流側の縁部では、切り欠き部108kの位置でシート材を吸着しつつ、切り欠き部108k以外の部分でシート材の下面を支持して、下流側受電部112bの上面112fにシート材を受け渡すことができる。このように、切り欠き部108kを設けることで、コロナ処理内ガイドプレート108bと下流側受電部112bとの隙間にシート材が落下することを防止しつつ、シート材の先端が浮き上がることに起因するシート詰まりの発生を防止できる。
【0054】
図7に示すように、コロナ処理内ガイドプレート108bに切り欠き部108kを設けた構成では、コロナ処理装置26を通過したシート材の下面における切り欠き部108kのエッジと対向した位置に摺擦傷が付くことがあった。図7に示す例では、コロナ処理内ガイドプレート108bとして導電性の板金を用いており、板金に設けた切り欠き部108kのエッジにシート材の下面が摺擦すると、シート材に摺擦傷ができてしまう。
【0055】
コロナ処理内ガイドプレート108bに板金を用いるのは以下の理由による。
すなわち、紙や樹脂フィルム等の不導体のシート材にコロナ処理を施すと、シート材が帯電する。このとき、コロナ処理内ガイドプレート108bも不導体であると、静電気によってシート材がコロナ処理内ガイドプレート108bに貼りつき搬送不良となってしまう。これに対して、図7に示す例では、コロナ処理内ガイドプレート108bに板金を用いており、さらに、接地している。これにより、コロナ処理によってシート材が帯電しても下面側はコロナ処理内ガイドプレート108bを介して接地し、除電されるため、静電気によってシート材がコロナ処理内ガイドプレート108bに貼り付くことを防止でき、静電気に起因する搬送不良を防止できる。
【0056】
金属製のコロナ処理内ガイドプレート108bの切り欠き部108kでの摺擦傷を防止するために、本発明者は、マイラーシートと呼ばれることがある樹脂フィルムをシート材接触材として、切り欠き部108kのエッジを保護するように貼り付けたコロナ処理装置26を作成した。このコロナ処理装置26にシート材を通紙してコロナ処理を行ったところ、五枚程度の通紙でシート材が内部で停止し、シート詰まりとなる不具合が生じた。これは、樹脂フィルムからなるシート材接触材が不導体であるため、帯電したシート材が接触することでシート材接触材が帯電し、数枚の通紙でシート材を停止させるほどシート材接触材の表面の電位が上昇したためと考えられる。
【0057】
このような問題を解決する構成として、図3及び図4に示す本実施形態のコロナ処理装置26は、コロナ処理内ガイドプレート108bに貼り付けるシート材接触材として、導電性シート208を用いた構成となっている。
本実施形態のコロナ処理装置26は、比較例と同様に、コロナ処理内ガイドプレート108bに切り欠き部108kを設けているため、コロナ処理内ガイドプレート108bと下流側受電部112bとの隙間にシート材が落下することを防止しつつ、シート材の先端が浮き上がることに起因するシート詰まりの発生を防止できる。
また、コロナ処理内ガイドプレート108bにおける切り欠き部108kのエッジと重なるように、導電性シート208を貼り付けているため、シート材に摺擦傷が付くことを防止できる。
さらに、エッジを保護するシート材接触材が導電性を有することで、帯電したシート材の電位は、シート材接触材である導電性シート208を介して、接地された板金製のコロナ処理内ガイドプレート108bに逃がすことができる。このため、通紙を繰り返すことでシート材接触材の電位が上昇することに起因してシート材の詰まりが発生すること防止することができる。
【0058】
本実施形態の導電性シート208として、静電気除去テープ(日本バイリーン社製静電気除去テープ、型番:SDT255)を用いているがこれに限るものではない。
導電性シート208としては、裏面から表面に対して通気性を有する導電性繊維からなるものやメッシュ状のものでも良いし、裏面から表面に対して通気性を有さないフィルム状のものでもよい。
図4に示すように、切り欠き部108kのエッジ以外は覆わないように導電性シート208を貼り付ける場合は、導電性シート208としては、導電性繊維やメッシュ状のものなど通気性を有するものだけでなく、フィルム状の通気性を有さないものも用いることができる。
【0059】
導電性シート208としては、導電性繊維やメッシュ状のものなど通気性を有するものを用いる場合、切り欠き部108kのようなガイドプレート108の上方と下方とを連通する連通部を覆うように配置してもよい。通気性を有するものであれば、連通部を介してガイドプレート108の上方に位置するシート材を吸引でき、安定した搬送を実現できる。
また、シート材が下方に向かう吸引力を作用させる連通部としては、ガイドプレート108の端部に設けた切り欠き部108kに限らず、ガイドプレート108の端部以外に設けた連通孔でもよい。
また、切り欠き部108k等の連通部を導電性シート208で覆わない配置では、連通部のエッジを導電性シート208で覆わない構成であっても、導電性シート208の厚みによってシート材が連通部のエッジに接触することを防止する構成としてもよい。
【0060】
上述した実施形態では、ガイドプレート108に連通部(切り欠き部108k等)を設け、そのエッジとシート材との接触を防止するように、導電性シート208を配置している。ガイドプレート108に導電性シート208を貼り付ける構成としては、ガイドプレート108に連通部を備える構成に限らない。シート材の下面を支持する支持部材となるガイドプレート108は、シート材を支持する剛性が必要であり、剛性が高い材質のガイドプレート108にシート材が摺擦すると、連通部のエッジがなくてもシート材に摺擦傷が生じる恐れがある。このような場合に、剛性が低くてもシート材に対する摺動性が高い導電性の材質からなる導電性シート208をガイドプレート108のシート材が接触する部分に貼り付けることで、シート材に摺擦傷が付くことを防止できる。
【0061】
また、上述した導電性シート208を貼り付けるガイドプレート108が導電性で接地されている構成について説明したが、導電性シート208が接地された構成であれば、導電性シート208が貼り付けられたガイドプレート108は接地されていなくてもよく、さらには、ガイドプレート108が導電性でなくてもよい。
コロナ処理装置26は、コロナ処理前搬送ローラ210及びコロナ処理後搬送ローラ211等の搬送機構によって所定の方向である搬送方向Yに搬送されるシート材が通過する搬送経路120の上方に設けられた放電電極である放電部110から、シート材の下面に接触する接地側電極である受電部112に対してコロナ放電を行うコロナ放電装置である。導電性シート208を貼り付けたコロナ処理内ガイドプレート108bは導電性の金属板を接地した構成であるため、上流側コロナ処理部102aを通過したシート材の下面を、導電性繊維からなる導電性シート208を介してコロナ処理内ガイドプレート108bが支持することにより、上流側コロナ処理部102aを通過したシート材の帯電した電荷をアースに逃がすことができる。
【0062】
<第二の実施形態>
図5は、本発明に係る第二の実施形態のコロナ処理装置26を示す断面図である。図5に示すコロナ処理装置26は、吸引装置106は図3に示す実施形態と同様であるので、吸引装置106の図示は省略している。
図5に示す例のコロナ処理装置26は、搬送方向Yにおける二つのコロナ処理部102(102a、102b)の間でシート材を支持するコロナ処理内ガイドプレート108bがシート材を支持する範囲の途中に、コロナ処理内搬送ローラ対220を備える。コロナ処理内搬送ローラ対220は、シート材を挟持して搬送方向Yに沿って表面移動する表面移動部材である。
【0063】
コロナ処理部102では、離間して配置された放電部110と受電部112との間をシート材が通過する構成であり、シート材を挟んで挙動を規制する手段を備えていない。このため、搬送方向Yに複数のコロナ処理部102を並べて配置すると、複数のコロナ処理部102を通過する間は、シート材の浮き上がりを規制することが出来ず、浮き上がったシート材の先端が上ハウジング130下面と下流側放電部110bとの隙間等に引っかかることに起因する、シート詰まりが発生するおそれがある。これに対して、図5に示す例では、コロナ処理内搬送ローラ対220によって、シート材の挙動を規制してシート材の浮き上がりを抑制することができるため、切り欠き部108kが不要となり、切り欠き部108kのエッジに起因する摺擦傷が生じないため、導電性シート208も不要となる。
【0064】
コロナ処理内搬送ローラ対220を設けた構成であっても、シート材とコロナ処理内ガイドプレート108bとの摺擦に起因する摺擦傷を抑制するために、コロナ処理内ガイドプレート108bに導電性シート208を貼り付けてもよい。
【0065】
コロナ処理内搬送ローラ対220等の表面移動部材としては、挟持するローラ部材の少なくとも一方が駆動回転する駆動ローラ対でも良いし、シート材の表面移動に応じて従動回転する従動ローラ対でもよい。表面移動部材としては、コロナ処理内搬送ローラ対220のようなローラ部材に限らず、無端ベルトであってもよい。
【0066】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0067】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0068】
〔態様1〕
シート材の搬送経路(搬送経路120等)の上方に配置された放電部110等の上電極と、搬送経路の下方に配置された受電部112等の下電極と、搬送経路を通過するシート材の下面を支持するコロナ処理内ガイドプレート108b等の支持部材と、を備え、上電極と下電極との間で放電を発生させ、シート材に対して放電処理を行うコロナ処理装置26等の放電処理装置において、支持部材の上面にシート材の下面に接触する導電性シート208等のシート材接触材を備え、シート材接触材は、支持部材より剛性が低く、導電性を有することを特徴とするものである。
これによれば、支持部材よりも剛性が低いシート材接触材をシート材に接触させることで、剛性が高い支持部材との摺擦によって摺擦傷が生じるおそれがあるシート材に摺擦傷が生じることを抑制しつつ、シート材接触材が導電性を有することで、シート材を除電することが可能となり、静電気に起因する搬送不良を防止することができる。
【0069】
〔態様2〕
態様1に係る放電処理装置において、シート材接触材は、静電気除去テープ等の導電性繊維からなる部材であることを特徴とするものである。
これによれば、板金等の硬質な材料からなり、シート材との摺擦によりシート材に摺擦傷が生じる恐れがある支持部材によってシート材を支持する場合に、支持部材よりも剛性が低い導電性繊維からなるシート材接触材を用いることで、シート材の摺擦傷を抑制しつつ、シート材の除電を実現できる。
また、導電性繊維でシート材の下面を支持することにより、平面でシート材を支持するガイド板(ガイドプレート108)よりも、シート材の下面との単位面積当たりの接触面積が少なくなり、搬送性が向上する。
【0070】
〔態様3〕
態様1または2の何れかに係る放電処理装置において、支持部材の下方に負圧が形成される下部内部空間140s等の負圧形成部が配置され、支持部材は、搬送経路と負圧形成部とを連通する切り欠き部108k等の連通部が形成されたコロナ処理内ガイドプレート108b等の板状部材であることを特徴とするものである。
これによれば、連通部でシート材を吸引してシート材の浮き上がりに起因するシート詰まりの発生を抑制しつつ、シート材接触材によって支持部材における連通部のエッジにシート材が接触することに起因する摺擦傷の発生を抑制できる。
【0071】
〔態様4〕
態様3に係る放電処理装置において、下電極をシート材の搬送方向に二つ等の複数備え、支持部材はシート材の搬送方向の上流側に位置する上流側受電部112a等の上流側下電極と下流側に位置する下流側受電部112b等の下流側下電極との間に配置され、支持部材は下流側下電極との間に負圧形成部と連通する隙間部を有し、連通部は隙間部と繋がった切り欠き形状(切り欠き部108k等)であることを特徴とするものである。
これによれば、連通部で吸引したシート材に対する吸引力が途中で途切れることなく、下流側下電極と支持部材との隙間で吸引する位置までシート材を搬送することができ、より確実にシート材の浮き上がりを抑制することができる。
【0072】
〔態様5〕
態様3または態様4の何れかに係る放電処理装置において、シート材接触材を、連通部と対向する位置を避けて配置することを特徴とするものである。
これによれば、連通部に作用する吸引力がシート材接触材によって阻害されることを抑制でき、より確実にシート材の浮き上がりを抑制することができる。
【0073】
〔態様6〕
態様3乃至5の何れか一項に係る放電処理装置において、シート材接触材を、シート材の搬送方向に直交する幅方向に複数配置していることを特徴とするものである。
これによれば、シート材接触材を幅方向に離間して複数は配置するものであり、シート材接触材を幅方向の全域に渡って一つの部材で形成するよりも、シート材接触材の形状の自由度が高まり、作成や支持部材に対する固定が容易な形状のシート材接触材によって、幅方向の全域に渡ってシート材と支持部材との摺擦を防止できる構成を実現可能となる。
【0074】
〔態様7〕
態様6に係る放電処理装置において、幅方向に複数配置されたシート材接触材同士の間に、支持部材の連通部が位置することを特徴とするものである。
これによれば、シート材接触材が連通部からの吸引を阻害することを抑制できるため、連通部での吸引によってシート材の浮き上がりに起因するシート詰まりの発生を抑制しつつ、シート材接触材によって摺擦傷の発生を抑制できる構成を実現できる。
【0075】
〔態様8〕
態様1乃至7の何れかに係る放電処理装置において、支持部材は、接地された板金等の導電性素材を有する部材であることを特徴とするものである。
これによれば、導電性のシート材接触材及び支持部材を介して、支持部材で支持するシート材の電荷をアースに逃がすことが可能となり、シート材が帯電した静電気に起因するシート材詰まりの発生を抑制できる。導電性素材を有する部材としては、板金等の金属部材、導電性の塗装やメッキを施された部材、導電性プラスチックから成る部材等を挙げることができる。
【0076】
〔態様9〕
シート材の搬送経路(搬送経路120等)の上方に配置された放電部110等の上電極と、搬送経路の下方に配置された受電部112等の下電極と、搬送経路を通過するシート材の下面を支持する支持部材と、を備え、上電極と下電極との間で放電を発生させ、シート材に対して放電処理を行うコロナ処理装置26等の放電処理装置において、支持部材として、シート材を挟持してシート材の搬送方向に沿って表面移動するコロナ処理内搬送ローラ対220等の表面移動部材を備えることを特徴とするものである。
これによれば、表面移動部材よって、シート材の挙動を規制してシート材の浮き上がりを抑制することができるため、切り欠き部108k等の連通部が不要となり、連通部のエッジに起因してシート材に摺擦傷が生じることを抑制できる。
【0077】
〔態様10〕
態様9に係る放電処理装置において、上電極と下電極との組合せを、シート材の搬送方向(搬送方向Y等)に二組等の複数組備え、複数の下電極のうちの二つの下電極の間に配置された支持部材として、板状のガイド板(コロナ処理内ガイドプレート108b等)と表面移動部材(コロナ処理内搬送ローラ対220等)とを備えることを特徴とするものである。
これによれば、搬送方向の異なる位置に配置された二つの下電極の間の支持部材で支持される範囲で、シート材が滞留することを抑制し、シート詰まりの発生を抑制できる。
【0078】
〔態様11〕
シート材等の枚葉シート材に放電処理を施すコロナ処理装置26等の放電処理手段と、放電処理手段に枚葉シート材を供給するフィーダ22等のシート材供給手段と、を備える加飾印刷システム10等のシート材処理システムにおいて、放電処理手段として、態様1乃至10の何れかの態様に係る放電処理装置を備えることを特徴とするものである。
放電処理装置においてシート材が帯電し、放電処理装置内のガイド部材等の支持部材に対してシート材が張り付くような静電気が発生したとしても、ウェブ状のシート材を搬送するものであれば、放電処理装置の下流側からウェブ状のシート材を引っ張ることで放電処理装置においてシート材が静電気によって滞留することを防止できる。このため、支持部材との摺擦に起因するシート材の摺擦傷を防止するために、支持部材の上面に不導体からなるシート材接触材を配置し、静電気によってシート材がシート材接触材に貼り付いても、放電処理装置の下流側からウェブ状のシート材を引っ張ることでシート材の滞留を防止できる。
一方、枚葉シート材の場合は、静電気によってシート材接触材にシート材が貼り付くと、放電処理装置の下流側から引っ張ることができず、シート詰まり等の搬送不良が生じるおそれがある。
これに対して、本態様によれば、シート材接触材として導電性材料を用いることで、シート材接触材によってシート材に摺擦傷が生じることを抑制しつつ、シート材接触材が導電性を有することで、シート材を除電することが可能となり、静電気に起因する搬送不良を防止することができる。
【0079】
〔態様12〕
態様11に係るシート材処理システムにおいて、放電処理手段から排出された枚葉シート材にニスを塗布するニス塗布装置14等のニス塗布手段を備えることを特徴とするものである。
これによれば、放電手段によってシート材の濡れ性を向上することで、ニス塗布手段でのニス塗布の品質を向上しつつ、放電処理手段でのシート材の搬送不良の発生を抑制できる。
【符号の説明】
【0080】
10 :加飾印刷システム
26 :コロナ処理装置
102 :コロナ処理部
108b:コロナ処理内ガイドプレート
110 :放電部
112 :受電部
120 :搬送経路
208 :導電性シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7