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特開2022-106738圧縮点火エンジンの改善したシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106738
(43)【公開日】2022-07-20
(54)【発明の名称】圧縮点火エンジンの改善したシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   F02B 23/00 20060101AFI20220712BHJP
   F02F 3/24 20060101ALI20220712BHJP
   F02F 3/28 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
F02B23/00 A
F02F3/24
F02F3/28 B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022063483
(22)【出願日】2022-04-06
(62)【分割の表示】P 2018556791の分割
【原出願日】2017-01-06
(31)【優先権主張番号】62/278,919
(32)【優先日】2016-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/286,795
(32)【優先日】2016-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/295,445
(32)【優先日】2016-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/326,594
(32)【優先日】2016-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/337,727
(32)【優先日】2016-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/344,230
(32)【優先日】2016-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/417,897
(32)【優先日】2016-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/442,336
(32)【優先日】2017-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518251642
【氏名又は名称】ノーティラス・エンジニアリング・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Nautilus Engineering, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ライリー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】内燃エンジンでの圧縮点火(及び/又はスパーク補助式または燃料補助式の圧縮点火)を達成し、及び/又は制御するための装置、システムおよび方法を改善する。
【解決手段】マルチゾーン式燃焼チャンバを利用するためのシリンダ300と、前記シリンダ300内に設置され、中央突起110を含むピストン100と、前記シリンダ300内にある前記ピストン100を囲むシリンダヘッド500であって、前記中央突起110と関連した中央凹部510を含むシリンダヘッド500と、前記中央凹部510内に設置された弁400とを備え、前記シリンダ300、シリンダヘッド500および中央凹部510により、1次および2次燃焼チャンバを画定する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内に設置され、中央突起を含むピストンと、
前記シリンダ内にある前記ピストンを囲むシリンダヘッドであって、前記中央突起と関連した中央凹部を含むシリンダヘッドと、
前記中央凹部内に設置された弁とを備え、
前記シリンダ、シリンダヘッドおよび中央凹部は、燃焼チャンバを画定する、内燃エンジン。
【請求項2】
前記中央凹部および前記突起は、前記燃焼チャンバ内に、少なくとも1次チャンバおよび2次チャンバを画定する、請求項1記載のエンジン。
【請求項3】
前記吸気弁は、前記燃焼チャンバ内のトラップ容積を減少させるのに役立つ、請求項2記載のエンジン。
【請求項4】
前記吸気弁は、カーボン堆積及び/又は壊滅的な干渉を防止及び/又は低減する、請求項3記載のエンジン。
【請求項5】
前記吸気弁は、前記燃焼チャンバ内の均質な混合物を確保するのに役立つ、請求項2記載のエンジン。
【請求項6】
前記1次チャンバおよび前記2次チャンバは、前記シリンダ内の前記ピストンの全体行程の際、互いに一定の流体連通状態にある、請求項2記載のエンジン。
【請求項7】
前記1次チャンバ内で圧縮点火が生ずる、請求項6記載のエンジン。
【請求項8】
前記ピストンが前記行程の上死点を通過した後、前記2次チャンバ内の点火が生ずる、請求項7記載のエンジン。
【請求項9】
前記中央突起を通る1つ以上のポートをさらに備える、請求項6記載のエンジン。
【請求項10】
前記1つ以上のポートは、前記流体連通を支援する、請求項9記載のエンジン。
【請求項11】
前記1つ以上のポートは、前記流体連通を制御する、請求項9記載のエンジン。
【請求項12】
前記シリンダヘッドを通って、前記中央突起と前記シリンダの内部との間に延びる1つ以上のポートをさらに備える、請求項6記載のエンジン。
【請求項13】
前記1つ以上のポートは、前記流体連通を支援する、請求項12記載のエンジン。
【請求項14】
前記1つ以上のポートは、前記流体連通を制御する、請求項12記載のエンジン。
【請求項15】
前記中央凹部に設置された可変圧縮比ピストンをさらに備える、請求項1記載のエンジン。
【請求項16】
前記中央突起の外周と前記中央凹部の内壁との間に、流体連通を可能にするのに充分な間隙をさらに備える、請求項1記載のエンジン。
【請求項17】
シリンダと、
前記シリンダ内に設置され、突起を含むピストンと、
前記シリンダ内にある前記ピストンを囲むシリンダヘッドであって、前記突起と関連した凹部を含むシリンダヘッドとを備え、
前記シリンダ、シリンダヘッドおよび凹部は、燃焼チャンバを画定し、
前記凹部および前記突起は、前記燃焼内に、少なくとも1次チャンバおよび2次チャンバを画定し、
前記1次チャンバおよび前記2次チャンバは、前記シリンダ内の前記ピストンの全体行程の際、互いに一定の流体連通状態にある、内燃エンジン。
【請求項18】
前記突起と前記凹部との間に、前記一定の流体連通を可能にするのに充分な間隙をさらに備える、請求項17記載のエンジン。
【請求項19】
シリンダと、
前記シリンダ内に設置され、中央突起を含むピストンと、
前記シリンダ内にある前記ピストンを囲むシリンダヘッドであって、前記中央突起と関連した中央凹部を含むシリンダヘッドと、
前記中央突起の場所付近で前記ピストンに装着されたロッドとを備え、
前記シリンダ、シリンダヘッドおよび中央凹部は、燃焼チャンバを画定する、内燃エンジン。
【請求項20】
シリンダと、
前記シリンダ内に設置されたピストンと、
前記シリンダ内にある前記ピストンを囲むシリンダヘッドと、
ホットスポットが位置する、前記シリンダの壁に沿った場所において、前記シリンダを通って延びる弁とを備える、内燃エンジン。
【請求項21】
前記弁は、エンジンの中心線に沿って設置される、請求項20記載のエンジン。
【請求項22】
前記中心線からオフセットした、エンジンの対向側にそれぞれ位置する2つの追加弁をさらに備える、請求項21記載のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、同時係属する仮米国特許出願第62/278919号(2016年1月14日出願)、同時係属する仮米国特許出願第62/286795号(2016年1月25日出願)、同時係属する仮米国特許出願第62/295445号(2016年2月15日出願)、同時係属する仮米国特許出願第62/326594号(2016年4月22日出願)、同時係属する仮米国特許出願第62/337727号(2016年5月17日出願)、同時係属する仮米国特許出願第62/344230号(2016年6月1日出願)、同時係属する仮米国特許出願第62/417897号(2016年11月4日出願)、同時係属する仮米国特許出願第62/442336号(2017年1月4日出願)について優先権の利益を請求するものであり、その全体開示内容は、参照によりここに組み込まれる。
【0002】
本発明概念は、一般に、内燃エンジンでの圧縮点火(及び/又はスパーク補助式または燃料補助式の圧縮点火)を達成するための装置、システムおよび方法に関する。詳細には、本発明概念は、内燃エンジンでの圧縮点火(及び/又はスパーク補助式または燃料補助式の圧縮点火)を達成するために、マルチゾーン式燃焼チャンバ(及び/又は複数の燃焼チャンバ)を利用するための装置、システムおよび方法に関する。さらに本発明概念は、「サイアミーズ(Siamese)シリンダ」内燃エンジンでの圧縮点火(及び/又はスパーク補助式または燃料補助式の圧縮点火)を達成し、及び/又は制御するための改善した装置、システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
実際、内燃エンジンの発明から、人々は効率を増加させ、排出量を低減する努力を行っている。内燃エンジンの2つの共通カテゴリが、スパーク点火および圧縮点火である(ここで使用するように、語句「圧縮点火」は、これに必ずしも限定されないが、ディーゼル/層状供給圧縮点火(SCCI)、均質供給圧縮点火(HCCI)、均質圧縮点火(HCI)、スパーク点火を用いた均質供給(HCSI)、ガス直接圧縮点火(GDCI)、ディーゼルおよび他の燃料、そして、異なるタイプの燃料として気化及び/又は注入された燃料混合物、燃料混合物圧縮点火、スパーク補助式点火、燃料補助式点火などを含む)。
【0004】
スパーク点火エンジンは、スパークプラグからのスパークを利用して、エンジンの燃焼チャンバ内で空気-燃料混合物の燃焼プロセスを点火する。これに対して圧縮点火は、燃焼チャンバ内での空気-燃料混合物の温度および濃度(density)の増加を利用して、燃焼プロセスを自動点火する。スパーク点火は、典型的には圧縮点火エンジンよりかなり低い効率を有する。炎が点火ポイント(即ち、スパーク)から伝搬するため、不完全な燃焼をもたらす。圧縮点火エンジンにおいて、火炎前面が存在せず、その代わり燃焼が増加した圧力によって開始するため、点火は均一化され、及び/又は、燃焼チャンバ内で複数の場所で起こり、空気-燃料混合物全体に渡ってほぼ同時/即時の点火を生じさせ、より完全な燃焼をもたらす。従来の圧縮点火エンジンは、上死点(top dead center)の直前に燃焼を提供し、燃焼チャンバの中に注入される(典型的には、燃焼サイクルを制御するために直接注入される)燃料のタイミングを考慮して、燃焼が生ずるのが早すぎた場合にエンジンへの壊滅的な損害を回避するように慎重に設計する必要がある。
【0005】
圧縮点火エンジンの燃焼チャンバ内の空気-燃料混合物全体のほぼ瞬間的な点火に起因して、膨大な量の圧力が燃焼チャンバ内で一度に生成され、炎がスパーク点火エンジンの燃焼チャンバを通って伝搬する際に生成される圧力のより緩やかな増加とは反対である。この即時の圧力増加は、均質供給圧縮点火(HCCI)エンジンにおいて特に高い。このようにエンジン製造者は、圧縮点火エンジンを慎重に制御することが要求されており、そのためエンジンのピストンが上死点にあり、または上死点から下方に移動する場合に点火は生ずるようになる。さもなければ、もしピストンが上死点に到達する前に点火が生じた場合、壊滅的なエンジン故障が生ずることになる(即ち、これに限定されないが、曲がったピストンロッド、崩壊したピストンスカート、吹き飛ばされたヘッドガスケットなど)。それでもこうした正確な制御要求は、極端に厳しい設計パラメータを必要とし、こうしたエンジンについて圧縮比及び/又は動作温度を制限する。高すぎる圧縮比は、上死点前の自動点火を生じさせることがある。しかしながら、圧縮比を減少させることは、自動点火を達成するのに必要な温度を増加させ、エンジンが低温環境で動作するのを困難にする。
【0006】
米国特許第6557520号(ロバーツ・ジュニア(Roberts,Jr.))(その全体開示内容は参照によりここに組み込まれる)は、マルチゾーン式燃焼チャンバおよび、圧縮点火エンジンで生成される即時の燃焼圧力サージ(surge)を制御するのに役立つ、圧縮点火エンジンでの燃焼制御のための方法を開示する。ロバーツ・ジュニアは、ピストンおよびシリンダヘッドの段差(stepped)形状設計により、燃焼チャンバを、複数のより小型な封止されたチャンバ(例えば、1次チャンバおよび少なくとも2次チャンバ、そして可能ならば3次チャンバ、またはさらに続くチャンバ)に物理的に隔離する。詳細には、図1を参照して、ロバーツ・ジュニアは、ピストンの円周突起壁142部分によって包囲された中央凹部141を有するカップ形状のピストン140を開示する。ロバーツ・ジュニアのシリンダヘッド132は、ピストンのカップ形状を嵌合的に(matingly)受け入れ、円周凹部134によって包囲された中央突起133を有するように構成される。ピストンの中央凹部141は、ヘッドの中央突起133を摺動的に(slidingly)受け入れるように構成され、円周突起壁142は、ピストンシリンダ130、中央突起133および凹部134の間に摺動的に受け入れられるように構成される。図2図8は、ロバーツ・ジュニアのエンジンの内部燃焼プロセスの多相的シーケンスを示しており、1次チャンバ143内で燃焼が開始するとともに、2次チャンバ144内での燃焼を遅延させる。
【0007】
図2は、第1相を示し、これは通常の吸入行程の後に開始し、空気が燃焼チャンバ146の中に導入される。燃料は、弁41及び/又は燃料噴射器62を経由して燃焼システムの中に供給され混合される。
【0008】
図3は、燃焼チャンバ146の圧縮行程での後の第2相を示す。この相は、圧縮加熱に起因して、1次チャンバ143および2次チャンバ144での未燃焼の燃料/空気集団150,151内の化学反応の開始を示す。この相において、燃焼チャンバ146は、ピストンの設計および動きおよび燃焼チャンバの設計に起因して、2つの個別の燃焼チャンバ(1次チャンバ143および2次チャンバ144)に分離される。
【0009】
図4は、1次チャンバ143内にトラップされた燃料/空気集団150が圧縮点火プロセスを受ける第3相を示す。圧縮点火が始まると、1次チャンバ143での燃料/空気集団150の急速な燃焼が生ずる。1次チャンバ143のサイズは、1次チャンバ143内にトラップされたエネルギー量を調節し、そのため燃料/空気集団150が点火すると、達成される圧力および温度が設計を通じて制御できる。燃料/空気集団150を点火するのに必要な圧力は、熱力学的相互作用の関数である。1次チャンバ143および2次チャンバ144は異なる圧縮比値を有し、そのため2次チャンバ144内の燃料/空気集団151は、ピストンからの圧縮に起因して自動点火することにはならない。
【0010】
図5は、圧縮点火プロセスが1次チャンバ143内で急速な燃焼プロセスに進行する第4相を示す。1次チャンバ143は、2次チャンバ144のための点火制御として利用されるため、TDC後のタイミングは必要ではない。
【0011】
図6は、燃料/空気集団150が、1次チャンバ143内で高圧高温の燃焼ガス150Aに変換される第5相を示す。ロバーツ・ジュニアにおいて、ピストン140が下向き行程44の方向に移動する場合、第5相はTDC後に発生する。この第5相において、燃焼ガス150Aは、膨張し続けて、2次チャンバ144に残留する燃料/空気集団151(または残留する可燃性ガス)から隔離されたままである。
【0012】
図7は、ピストン140が予め定めた位置に移動して、1次チャンバ143および2次チャンバ144の隔離が除去される第6相を示す。ピストンが下向き行程44の方向に移動し続けて、第6相はTDC後に生ずる。この相において、2次チャンバ144に残留する燃料/空気集団151の燃焼が開始する。図7は、2次チャンバ144の残留する燃料/空気集団151と熱力学的に連通し、残留する燃焼ガス151Aに変換される、1次チャンバ143からの燃焼ガス150Aを示す。1次チャンバ143および2次チャンバ144が隔離解消され、1次チャンバ143の燃焼ガス150Aが2次チャンバ144と連通するのが許容された後、1次チャンバ143の燃焼ガス150Aおよび1次チャンバ143の熱力学的状態は、2次チャンバ144での残留する燃焼ガス151Aのための点火源として使用される。
【0013】
図8は、2次チャンバ144の残留する燃料/空気集団151の全てが点火され、燃焼ガス151Aに変換される第7相を示す。2次チャンバの点火は、圧縮点火、直接炎接触またはこれらの組合せによって可能である。
【0014】
ロバーツ・ジュニアの多相燃焼プロセスは、燃焼プロセスがピストンによって生ずる圧縮によって開始するのを可能とし、反応の正確な制御を要求することなく、ピストンが上死点に、またはそれを過ぎたときにそれが生ずることを確保する。代わりに、燃焼チャンバの隔離は、ピストンが1次チャンバ内だけで自動点火を引き起こすことが可能になり、1次チャンバは2次チャンバより高い圧縮比を有する。1次燃焼チャンバの比較的小さい容積は、ピストンでの下向き力を低減し、たとえピストンがその上向き行程にあっても、エンジンへの損傷のリスクを低減する。ピストンがその下向き行程になり、1次燃焼チャンバと2次燃焼チャンバとの間のシール/バリア(ピストンおよびヘッド形状によって生成される)が除去されるまで、残りの燃焼は生じない。
【0015】
多相燃焼プロセスによって提供される利点にも関わらず、ロバーツ・ジュニアの装置および方法は、幾つかの不具合に悩まされる。例えば、ピストン中央凹部141およびヘッドの円周凹部134の設計は、トラップ容積エリアを生成し、そこでは、均質な空気-燃料混合物(以下で使用されるように、排気、排気再循環(EGR)、吸気および燃料が均質な方法で全て混合されることを意味する)を得ることが困難である。これは、エンジンの性能および効率を著しく低減させることがある。さらに、ピストンの中央凹部141は、ロッドのピストンを接続するリストピンの位置を低下させる。こうした設計は、ピストンクレードルのロック/ピストンスラップ(slap)の減少した制御、そしてピストンでの著しい応力のエリアでの減少した強度に起因して、エンジン故障の可能性を増加させる。さらに、1次燃焼チャンバと2次燃焼チャンバ(3次なども)との間に生成される物理的シールは、均質な空気-燃料混合物を生成する困難さを増やし、エンジンノック(knock)を制御するのを困難にする。従って、RPMの範囲のある大きさ、温度、及び/又は複数の負荷(load)(ブースト、例えば、過給(supercharge)、ターボなどの有り無し)での圧縮点火についての制御を有するために、トラップ容積を減少させ、エンジンノックを減少させ、及び/又はエンジン故障の可能性を低減する多相圧縮点火を達成するためのシステムおよび方法を提供することは有益であろう。
【0016】
さらに、「サイアミーズ(Siamese)シリンダ」エンジンでの圧縮点火の使用は、制御するのが困難または不可能であった。「サイアミーズシリンダ」エンジンは、マルチシリンダエンジンであり、循環する水または他の冷却剤のために、隣接するシリンダ間のシリンダ壁にチャネルを有さないようにエンジンシリンダが配置される。こうした配置は、制限されたサイズのエンジンブロックを有することが要望される場合、またはシリンダボアの安定性が関心事である場合(例えば、レース用エンジン)、典型的に使用される。冷却剤の欠如は、隣接するシリンダが互いに交差する場所におけるホットスポットを生じさせ、圧縮点火の制御を困難にする。従って、「サイアミーズシリンダ」内燃エンジンでの圧縮点火(スパーク補助式及び/又は燃料補助式圧縮点火を含む)を達成し、及び/又は制御するための装置、システムおよび方法を提供することは有益であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明概念は、ロバーツ・ジュニアに記載されたものと類似の方法で多相圧縮点火を達成するための装置、システムおよび方法を備えるとともに、トラップ容積を低減/最小化/除去し、カーボン堆積を低減し、エンジンノックを低減し、ロバーツ・ジュニアの設計に固有であるエンジン故障の可能性を低減し、RPMの範囲のある大きさ、温度、及び/又は複数の負荷(ある種の吸気のブーストの有り無し)での圧縮点火についての制御を提供する。発明概念は、シリンダヘッドでの中央凹部(または複数の凹部)と嵌合する略中央突起(または複数の突起)を含む段差付きピストンを含み、エンジンの燃焼チャンバを複数のより小型なチャンバ(例えば、1次チャンバおよび少なくとも2次チャンバ、そして可能ならば3次チャンバ、またはさらに続くチャンバ)に物理的に隔離する。幾つかの実施形態において、燃焼チャンバ間の流体連通は、1次燃焼チャンバと2次燃焼チャンバ(3次なども)/点火源との間に一定の流体連通が存在する多相ダイナミック圧縮点火燃焼プロセスを通じて制御される。こうした実施形態において、多相ダイナミックプロセスは、均質な空気-燃料混合物を生成するのを支援し、点火を減速させ、完全な点火が生ずる(例えば、1次チャンバ、2次チャンバなどを含む燃焼チャンバ全体に渡って)前に、ピストンが上死点を通過することが可能になる。
【0018】
本発明概念の種々の実施形態は、これに限定されないが、ディーゼル/層状供給圧縮点火、均質供給圧縮点火、均質圧縮点火(HCI)、スパーク点火を用いた均質供給、ガス直接圧縮点火(GDCI)、ディーゼルおよび他の燃料、そして、異なるタイプの燃料として気化及び/又は注入された燃料混合物、燃料混合物圧縮点火、スパーク補助式点火、燃料補助式点火などを含む、現在既知であり、または今後発見されるいずれのタイプの圧縮点火エンジン技術に関連して利用されることになることは理解されよう。本発明概念の実施形態は、2サイクルおよび4サイクル技術の両方、ミラーサイクル、アトキンソンサイクル、ロータリエンジン、変更したピストンエンジン(例えば、オフセット楕円ピストン、または他の渦巻き形状のピストン)、タービンファン、対向ピストン、スクデリ(Scuderi)または他のスプリットサイクルエンジン、現在既知でありまたは今後開発される他のエンジン技術を含む。幾つかの2サイクル実施形態において、吸気弁および排気弁は、ヘッドに含まれる。他の実施形態において、排気は、側面に設置され、ピストンは、排気を制御する排気弁として機能する。幾つかの好ましい実施形態において、少なくとも1つの吸気弁がヘッドに設置され、トラップ容積を最小化するのに役立つ。幾つかの実施形態において、バタフライ(または他の適切な弁アセンブリ)が排気内に含まれる。こうした実施形態において、弁は、燃焼チャンバの内側での熱及び/又は排気ガスをトラップするために利用され、次の燃焼サイクルを窒息(または部分的に窒息)させ、エンジンでの圧縮点火を支援する。幾つかのこうした実施形態において、トラップされた熱は、次の燃焼サイクルのための触媒として機能する。種々の実施形態において、バタフライ排気弁は、いずれか所定時間に開放、閉止または調整され、圧縮点火プロセスを制御することは理解されよう。幾つかの実施形態において、バタフライ弁は、より高いRPMでさらに開放され、より低いRPMでより閉止される。発明概念のバタフライ排気弁は、ここで(例えば、ここで開示した多相ダイナミック圧縮点火燃焼エンジン)、単独または他の特徴との組合せで、そして他の2サイクル、4サイクルまたは他のエンジンタイプの先行技術および今後発見されるもの(例えば、多相ダイナミック圧縮点火燃焼を利用しないエンジン)と関連して、エンジン実施形態のいずれにも利用されることは理解されよう。
【0019】
図示していないが、発明概念の種々の実施形態は、燃焼チャンバの周りに種々の場所に設置されて、所望の均質な空気/燃料/EGR混合物を燃焼チャンバ全体に提供する燃料噴射器を含む。幾つかの実施形態において、噴射器は、種々の角度および向きに設置され、燃料/空気の所望の混合物を燃焼チャンバの中に提供する。幾つかの実施形態において、燃料が燃焼チャンバの中に直接注入されず、代わりに燃料は、予備吸気エリア(例えば、吸気弁を経由して燃焼チャンバに入る前)において空気の中に混合される。種々の実施形態において、空気-燃料混合物は、高いまたは低い圧力ポート、スロットル本体(スロットル本体の中に接続された上流リニアEGR、及び/又は、空気/燃料及び/又はEGR混合のより良い噴霧化を支援する下流燃料噴射を含む)、順次的な支援ポート、直接または間接噴射またはその任意の組合せを介して達成される。さらに他の実施形態において、空気-燃料混合物またはその一部を達成するためにキャブレタが使用される。幾つかの実施形態において、スロットル本体のための層状(stratified)クラウド噴射が利用され、90PSIまたはそれ以上の燃料圧力が電気または機械ポンプを経由して生成され、高い噴霧化能力で細かい霧(mist)を生成する。他の低圧噴射の実施形態において、10PSIまたはそれ以上の燃料圧力が利用される。幾つかの実施形態は、シングル、ツイン、トリプル、クワッド(quads)などのスロットルの高圧クラウドスロットル本体を含む。高い圧力は、燃料を噴霧化し、HCCTのための改善した均質な燃料-混合をもたらす。幾つかの実施形態において、発明概念は、複数のノズルを介して高圧燃料噴射を利用し、クラウド噴射を生成する。
【0020】
幾つかの実施形態において、標準的なスロットル制御が利用され、エンジンの吸気ガスを制御する。幾つかの実施形態において、バタフライスロットル制御が利用され、吸気ガスを制限する。幾つかの実施形態において、エンジン吸気に入る空気/燃料の量を制御するために、バタフライアセンブリを備えたスロットル本体、及び/又は、調整可能な希薄/濃縮制御機能を備えたキャブレタが利用される。幾つかの実施形態において、電子制御が濃縮化(enrichment)ニードルと関連して利用され、希薄/濃縮機能を制御し、いずれか所定の時間に吸気での燃料の量を制御する。幾つかの実施形態において、希薄/濃縮機能の電子制御は、キャブレタの一部である。幾つかの実施形態において、キャブレタは、吸気ガスのスロットル制御を含む。
【0021】
幾つかの実施形態において、点火を支援するために、スパークプラグまたはグロープラグが利用される。例えば、幾つかの実施形態において、スパークプラグは、低温、低いRPMまたはエンジン始動の状況において利用される。スパークプラグの角度および場所は、エンジンの所望の性能に基づいて変化する。幾つかの実施形態において、スパークプラグは、吸気弁との干渉を防止するために、ピストンに対して45度の角度に位置決めされる。幾つかの実施形態において、スパークプラグは、1次チャンバに設置される。幾つかの実施形態において、スパークプラグは、2次チャンバ(3次など)に設置される。幾つかの実施形態において、スパークプラグは、1次チャンバおよび2次チャンバの両方に設置される。
【0022】
本発明概念の幾つかの実施形態は、上述したものと類似した方法で、「サイアミーズシリンダ」内燃エンジンでの多相圧縮点火を達成するための装置、システムおよび方法を含む。幾つかの実施形態において、発明概念は、シリンダヘッドでの中央凹部と嵌合する略中央突起を含む段差付きピストンを含み、エンジンの燃焼チャンバを複数のより小型なチャンバ(例えば、1次チャンバおよび少なくとも2次チャンバ、そして可能ならば3次チャンバ、またはさらに続くチャンバ)に物理的に隔離する。幾つかの実施形態において、段差付きピストンは、燃焼チャンバを複数のチャンバに物理的に隔離するが、分離チャンバは、互いに物理的に封止されておらず、これらの間で流体連通を許容する。幾つかのこうした実施形態において、燃焼チャンバ間の流体連通は、1次燃焼チャンバと2次燃焼チャンバ(3次なども)/点火源との間に一定の流体連通が存在する多相ダイナミック圧縮点火燃焼プロセスを通じて制御される。こうした実施形態において、多相ダイナミックプロセスは、均質な空気-燃料混合物を生成するのを支援し、点火を減速させ、完全な点火が生ずる(例えば、1次チャンバ、2次チャンバなどを含む燃焼チャンバ全体に渡って)前に、ピストンが上死点を通過することが可能になる。
【0023】
前述および他の目的は、発明概念の説明であることを意図しており、限定する意味では意味しない。発明概念の多くの可能な実施形態が行われてもよく、下記の明細書およびその一部を含む添付図面の検討の際に容易に明らかになるであろう。発明概念の種々の特徴およびサブコンビネーションは、他の特徴およびサブコンビネーションを参照することなく採用してもよい。発明概念の他の目的および利点は、発明概念の実施形態およびその種々の特徴を例示および例として記述される添付図面に関連して下記説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
発明概念の好ましい実施形態は、本出願人が原理を適用することを想定した最良の形態の例示であり、下記の説明において記述され、図面において示される。
【0025】
図1】先行技術のマルチゾーン燃焼チャンバ圧縮点火エンジンの断面図を示す。
図2図1の先行技術エンジンでの燃焼の複数の相を示す。
図3図1の先行技術エンジンでの燃焼の複数の相を示す。
図4図1の先行技術エンジンでの燃焼の複数の相を示す。
図5図1の先行技術エンジンでの燃焼の複数の相を示す。
図6図1の先行技術エンジンでの燃焼の複数の相を示す。
図7図1の先行技術エンジンでの燃焼の複数の相を示す。
図8図1の先行技術エンジンでの燃焼の複数の相を示す。
図9】本発明概念の実施形態のマルチゾーン燃焼チャンバ圧縮点火エンジンの断面図を示す。図9において、ピストンは、燃焼チャンバが隔離されないように位置決めされる。換言すると、1次燃焼チャンバおよび2次燃焼チャンバ(およびいずれか後続のもの)は全て互いに完全に流体連通している。
図10図9のエンジンの断面図を示し、ピストンは、燃焼チャンバが1次燃焼チャンバおよび2次燃焼チャンバに隔離されるように位置決めされる。
図11図9の断面ライン11-11に沿った図9および図10のピストンの断面平面図である。
図12図9の断面ライン12-12に沿った図9および図10のヘッドの断面底面図である。
図13】本発明概念の他の実施形態のマルチゾーン燃焼チャンバ圧縮点火エンジンの断面図を示す。図13において、ピストンは、燃焼チャンバが隔離されないように位置決めされる。換言すると、1次燃焼チャンバおよび2次燃焼チャンバ(およびいずれか後続のもの)は全て互いに完全に流体連通している。さらに図13において、ピストンにポートが含まれており、多相ダイナミック圧縮点火燃焼を提供する。さらに、ヘッドにポートが含まれており、自動点火時、及び/又はその前後に燃焼チャンバ内にスピン回転(spin)を生成することによって、均質な空気-燃料混合物を生成するのを支援する。
図14図13のエンジンの断面図を示し、ピストンは、燃焼チャンバが1次燃焼チャンバおよび2次燃焼チャンバに隔離されるように位置決めされる。図14に示すように、燃焼チャンバが隔離された場合でも、これらは互いに封止されていない。
図15図13の断面ライン19-19に沿った図13および図14のピストンの断面平面図である。
図16図13の断面ライン18-18に沿った図13および図14のヘッドの断面底面図である。
図17図9および図10のエンジンの代替の実施形態の断面図を示し、ピストンは、燃焼チャンバが1次燃焼チャンバおよび2次燃焼チャンバに隔離されるように位置決めされる。
図18図18A図18B図18Cは、発明概念の実施形態の多段式噴射器の代表的な断面平面図を示す。
図19A】発明概念の2サイクルエンジンの実施形態を示し、ピストンは、排気弁および吸気弁として機能し、さらに排気出口内にバタフライ弁を含み、燃焼チャンバの内側で熱および排気ガスをトラップして、圧縮点火を支援する。
図19B】発明概念のエンジンの他の実施形態を示し、排気出口内にバタフライ弁を含み、燃焼チャンバの内側で熱および排気ガスをトラップして、圧縮点火を支援する。
図19C】発明概念のエンジンの他の実施形態を示し、排気出口内にバタフライ弁を含み、燃焼チャンバの内側で熱および排気ガスをトラップして、圧縮点火を支援する。
図20】3シリンダ式サイアミーズシリンダエンジンの代表的な平面図を示し、発明概念の実施形態のシリンダおよび弁の配置を描く。
図21図20のエンジンの断面正面図を示す。
図22】発明概念の複数の突起を含む3シリンダ式サイアミーズシリンダエンジンの他の実施形態の代表的な平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
必要に応じて、本発明概念の詳細な実施形態をここに開示する。しかしながら、開示した実施形態は、発明概念の原理の単なる例示であり、種々の形態で具現化できることを理解すべきである。従って、ここで開示される特定の構造的および機能的な詳細は、限定的として解釈されるべきではなく、単に請求項のための基礎として、また、当業者が、実質的に何れかの適切に詳細な構造で本発明概念を種々に採用することを教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0027】
図9図12を参照して、発明概念の例示の実施形態が、シリンダ300のボア内で軸方向に往復するように構成されたピストン100を含み、ピストンは、上部位置と下部位置との間で移動可能なようにしている。ヘッド500がシリンダの上部に連結され、ピストンが上部位置にある場合、ピストンの上面がヘッドの下面に接近している。幾つかの実施形態において、ヘッドの下面およびピストンの上面は、ピストンが上部位置にある場合、ピストンとヘッドとの間に位置決めされた1つ以上の空間の特定の容積を定義するように構成される。
【0028】
幾つかの実施形態において、略中央突起110がピストンの本体の上部から延びており、ピストンの上面が、ピストンの本体の上面によって部分的に、そして突起の上面によって部分的に画定される。幾つかのこうした実施形態において、シリンダヘッド500は、突起が係合構成にある場合、ピストンの突起110を嵌合的に(matingly)受け入れるように構成された略中央凹部510を含む。ピストンの中央突起110は、初期の係合構成と完全係合構成との間で移動する際、ヘッドの中央凹部510に摺動的に(slidingly)受け入れるように構成され、突起の完全係合構成は、ピストンの上部位置に一致する。ピストンが下部位置から上部位置(しばしば上死点と称される)に向けて移動すると、ピストンの中央突起110は、離脱(disengaged)構成から初期の係合構成に移動し、これはヘッドの凹部によって最初に受け入れられたピストンの突起に一致する。ピストンが上部位置に向けて移動し続けると、突起は、ヘッドの中央凹部510の中に摺動して、1次燃焼チャンバ600および2次燃焼チャンバ700を生成する。1次燃焼チャンバ600は、突起の上面と凹部の上面との間の空間によって画定される。2次燃焼チャンバ700は、ピストンの本体の上面とヘッドの下面との間の1つ以上の空間によって画定される。
【0029】
幾つかの実施形態において、1次燃焼チャンバ600および2次燃焼チャンバ700の個々の容積は、1次燃焼チャンバ600の圧縮比が2次燃焼チャンバ700より高くなる(他の実施形態において、逆も真実である)ように設計される。こうしてピストンが上死点に到達した時またはその前後に、2次燃焼チャンバ700での自動点火が生じないように、燃料-空気混合物の自動点火が1次燃焼チャンバ600で得られる。ピストンが上部位置から遠くに移動すると、突起110は、係合構成から、突起がヘッドの凹部510から変位する離脱構成に向けて移動し、1次燃焼チャンバ600内の燃焼によって生成された圧力が2次燃焼チャンバ700の中に膨張可能になり、2次燃焼チャンバ700内の燃焼、燃焼点火及び/又は点火を開始する。
【0030】
図10を参照して、幾つかの実施形態は、突起が係合構成にある場合、突起110の外周と凹部510の内壁との間に間隙800を規定する。幾つかのこうした実施形態において、1つ以上の間隙充填機構、例えば、リングが突起110と連結し、及び/又は凹部510内に固定され、流体が間隙800を通って流れるのを防止または抑制する。幾つかのこうした実施形態において、間隙充填機構は、突起が係合構成にある場合、1次燃焼チャンバ600と2次燃焼チャンバ700との間に気密シールを生成する。しかしながら、他の実施形態において、間隙充填機構、例えば、リング(または他のシール)は利用しておらず、間隙800のサイズは、充分な圧力が1次燃焼チャンバ600内で生成されて、自動点火を生成できるようにし、ピストンがその下向き行程になる前にピストンが上部位置にある場合は、充分な圧力が間隙800を通って逃げて、2次燃焼チャンバ700内で点火を生成するのを許容しないように設計されるためである。さらに幾つかの実施形態において、後述するように、1次燃焼チャンバおよび2次燃焼チャンバは、多相ダイナミック圧縮点火燃焼を生成する目的のために、互いに一定の流体連通状態にある。幾つかの実施形態において、間隙800は、ピストン行程の際に常に1次燃焼チャンバと2次燃焼チャンバとの間でこうした一定の流体連通を提供するのに充分である。
【0031】
図9図10に示すように、吸気弁400が、シリンダの凹部510内に設置され、燃焼チャンバ内のトラップ容積(及び/又は濃縮空気ポケット、及び/又は1次チャンバと2次チャンバとの間の不均衡燃焼)を減少及び/又は除去し、そして燃焼チャンバ全体(1次チャンバおよび2次チャンバ)内で均質な空気/燃料/EGR混合を確保する。他の実施形態において、トラップ容積が存在し、及び/又は空気/燃料/EGR混合が望ましい(例えば、2次燃焼チャンバ内)他の場所に追加の吸気弁が含まれることは理解されよう。例えば、3次以上の燃焼チャンバを備えた実施形態において、吸気弁は各燃焼チャンバに含まれる。幾つかの実施形態において、吸気弁400(及び/又は他の吸気弁)が、排気行程の少なくとも一部において(及び/又は、幾つかの実施形態において動力行程及び/又は圧縮行程の少なくとも一部において)開放されて、トラップ容積を除去することはさらに理解されよう。幾つかのこうした実施形態において、弁は、排気行程の上部で開放される。幾つかの実施形態において、排気弁(不図示)が2次燃焼チャンバ内に設置される。さらに幾つかの実施形態において、排気弁(不図示)が、凹部510、及び/又は燃焼チャンバ内の他の所望の場所に含まれており、トラップ容積を除去するのに役立つ。トラップ容積を除去することによって、発明概念は、等しい空気/燃料を生成し、EGR、炭化水素、一酸化炭素を排出し、低いNOx排出を維持するのに役立つことは理解されよう。発明概念は、例えば、上述したロバーツ・ジュニアなどの先行技術に存在しない2サイクル掃気(scavenging)を可能にする。
【0032】
図9図10を参照して、ピストン100の設計は、突起110がピストン100の中心に設置され、ピストンの増加した厚さの場所(突起に起因して)にリストピン210がロッド200をピストンに装着するのを可能にする。これは、増加した応力下にある場所において強度を増加させる。さらに、ピストンでの比較的高い接続は、ピストンがシリンダ内で上下移動する際、ピストンのより大きい制御および減少したピストンスラップを可能にする。
【0033】
図13図16を参照して、幾つかの実施形態は、ヘッド500の一部によって画定され、これを通って延びる1つ以上のヘッドポート520を含む。幾つかのこうした実施形態において、突起が初期の係合構成にある場合、各ヘッドポート520は、1次燃焼チャンバ600と2次燃焼チャンバ700との間で延びている。幾つかの実施形態において、ポートは、ピストン100がシリンダ内で往復する際に、循環またはスピン回転の気流を生成し、及び/又は、燃焼チャンバへの気流を揺動(roll)及び/又は転回(tumble)させて、一定混合の空気/燃料を生成するように設計される。これは、燃焼チャンバ内のトラップ容積を除去または最小化するのに役立つ。幾つかの実施形態において、図13図16に示すように、突起110は、弁として動作し、突起が完全係合構成にある場合、ヘッドポートを閉止する。幾つかのこうした実施形態において、突起が完全係合構成から遠くへ移動すると、ヘッドポートは再び開放する。他の実施形態において、ヘッドポートの開口は凹部内に位置決めされ、突起の位置に関わらず、1次チャンバ600がヘッドポート520の少なくともいくつかを経由して、2次チャンバ700との連続的な流体連通状態になる。幾つかの実施形態において、図13図16に示すように、ポート520は、上部から下部に約45度で示される。ポート520の他の角度、サイズ、形状、長さなどが種々の実施形態において利用されて、燃焼チャンバ内/間で所望の循環を生成することは理解されよう。さらに、ポート520の数および位置、および出口/入口角度は、所望の循環を得るために実施形態の間で変化することになる。幾つかの実施形態において、間隙800は、ピストン行程の際に常に1次チャンバ600と2次チャンバ700との間で一定の流体連通を提供するのに充分である。
【0034】
幾つかの実施形態において、図13図16に示すように、突起は、突起の上面から突起の側面へ延びる1つ以上のポート130を画定する。幾つかのこうした実施形態において、単一の中央ポート120が突起の上面の中心から突起の中に軸方向に延びており、複数の横方向ポートが中央ポートから突起の側面へ延びている。幾つかのこうした実施形態において、各横方向ポートは、中央ポートに対してある角度で延びており、中央ポートおよび横方向ポートのいずれか1つを通るいずれかの通路の長さは、中央ポートおよび他の横方向ポートのいずれか1つを通る通路の長さと実質的に同じ距離であるようにする。
【0035】
幾つかの実施形態において、図14に示すように、横方向ポートの少なくともいくつかの開口が突起の外面に沿って位置決めされ、横方向ポートは、突起が係合構成にある場合、突起が初期の係合構成または完全係合構成にあるかに関わらず、2次燃焼チャンバ700と流体連通する。こうして1次燃焼チャンバ600と2次燃焼チャンバ700との間の一定で連続的な流体連通を維持することが可能であり、多相ダイナミック圧縮点火燃焼を支援する。幾つかの実施形態において、ポートは、ピストン100がシリンダ内で往復する際に、燃焼チャンバへの循環またはスピン回転の気流を生成するように設計される。これは、燃焼チャンバ内のトラップ容積を除去または最小化するのに役立つ。幾つかの実施形態において、図13図16に示すように、ポート120,130は、上部から下部に突起110の周りに種々の角度で示される。ポート120,130の他の角度、サイズ、形状、長さなどが種々の実施形態において利用されて、燃焼チャンバ内/間で所望の循環を生成することは理解されよう。さらに、ポート120,130の数および位置、および出口/入口角度は、所望の循環を得るために実施形態の間で変化することになる。幾つかの実施形態において、図15に示すように、ポート130は、ポート120を略接線方向に外れて、燃焼チャンバ内に循環流を生成するのに役立つようにする。
【0036】
図17を参照して、図9および図10のエンジンの代替の実施形態の断面図が示され、ピストンは、燃焼チャンバが1次燃焼チャンバおよび2次燃焼チャンバに隔離されるように位置決めされる。図17に示す実施形態において、ピストン100の突起110は、突起110の外周の周りに溝115を含む。類似する溝及び/又は窪み(indentation)が、これに限定されないが、上記図1図16に関して示した種々の実施形態を含む、ここで議論するものに類似した本発明の種々の実施形態に含まれることは理解されよう。幾つかの実施形態において、複数の溝/窪みが利用される。溝/窪みは、摩擦を生成し、燃焼チャンバ内で速度渦/乱流を生成するのに役立つ。
【0037】
幾つかの実施形態において、2次燃焼チャンバ700で発生する2次点火の前に、初期点火が1次燃焼チャンバ600で発生する。他の実施形態において、初期点火が2次燃焼チャンバ700で発生し、2次点火が1次燃焼チャンバ600で発生することは理解されよう。こうした実施形態において、ピストン100、突起110、ヘッド500および中央凹部510は、より高い圧縮比が1次チャンバ600よりも2次チャンバ700で得られるように構成される。
【0038】
幾つかの実施形態において、弁400のためのハウジング及び/又は他の適切な構造が、凹部510内に位置決めされ、凹部510内の容積を変化させるように構成される。こうして弁400のハウジングは、1次燃焼チャンバ600内の圧縮比を調整して、性能のレベルを変化させることが可能になり、及び/又は種々の動作条件を調節することが可能である。幾つかの実施形態において、米国出願公開第2007/084428号(その全体開示内容は参照によりここに組み込まれる)に示したものに類似したピストン配置が利用され、凹部510内の容積を変化させる。図9図10を参照して、例示の可変圧縮比ピストン900は、弁400を収納して、ピストン900は、開放位置と閉止位置との間で移動可能であり、これにより可変圧縮比ピストン900が凹部510内の容積を変化させることを可能にする。幾つかの実施形態において、可変圧縮比ピストンが油圧式(「油圧式可変圧縮比ピストン」)であり、一方、他の実施形態において、ピストン変位は、電気機械油圧式、圧電機械油圧式、または現在既知であり、または今後開発されるいずれか他の変位形態である。幾つかの実施形態において、可変圧縮比ピストンは、電気モータおよびねじ歯車アセンブリを介して移動される。幾つかのこうした実施形態において、エンジンRPMが増減すると、ねじ歯車アセンブリは可変圧縮比ピストンを上下に調整する。幾つかの実施形態において、ねじ歯車アセンブリは、可変圧縮比ピストンのほぼ「より遅い」調整のために利用され、可変圧縮比ピストンは、ピストンの複数の行程について一定の場所に維持され、そのため可変圧縮比ピストンは、各行程で異なる比率に変位されない。幾つかの実施形態において、可変圧縮比ピストンは、接続ロッドおよびカムアセンブリを介して上下に移動される。幾つかのこうした実施形態は、可変圧縮比ピストンのかなり「より速い」変位を可能にし、これにより可変圧縮比ピストンが各行程で異なる比率に変位できるようになる。幾つかのこうした実施形態において、可変圧縮比ピストンは、発明概念のピストン100の突起の往復運動に対向または相対する燃焼サイクル毎に往復する。幾つかのこうした実施形態は、1次燃焼チャンバでの最大燃焼を可能にし、これにより弁列(train)を経由してクランクにエネルギーを発生しつつ、予備燃焼を可能にする。
【0039】
幾つかの実施形態において、発明概念の可変圧縮比ピストンは、いずれの弁からも分離した構造であり、可変圧縮比ピストンの唯一の機能は、凹部510内の容積を変化させることであることは理解されよう。幾つかの実施形態において、可変圧縮比ピストンは、ピストンの内部にまたはその一部として吸気弁を含み、弁はピストンとともに変位する。他の実施形態において、弁は、ピストンから分離しており、弁は静止場所に留まりながら、ピストンは変位する。
【0040】
幾つかの実施形態において、突起110の上面は、凹面形状を画定する。幾つかのこうした実施形態において、凹部510の上面が、対応する凸面形状を画定する。他の実施形態において、突起110の上面は、凸面形状を画定する。幾つかのこうした実施形態において、凹部510の上面が、対応する凹面形状を画定する。
【0041】
幾つかの実施形態において、ピストン100の本体の上面が凸面形状を画定し、一方、他の実施形態において、ピストン100の本体の上面は凹面形状を画定する。幾つかのこうした実施形態において、ヘッド500の下面が凹面形状を画定し、それはピストンの本体の上面の凸面形状に対応するように構成される。幾つかのこうした実施形態において、ヘッド500の下面が凸面形状を画定し、それはピストンの本体の上面の凹面形状に対応するように構成される。発明概念の種々の実施形態は、上述した凹面および凸面との組合せで、略平坦な表面とともに互いに組み合わせた凹面形状および凸面形状の全ての変形例再配列を含むことは理解されよう。更なる実施形態において、非湾曲形状が利用される。例えば、幾つかの実施形態において、突起は、対向する三角形またはピラミッド形の凹部と係合する三角形またはピラミッド形の突起を含む。他の実施形態において、正方形または矩形のニップルおよび凹部が利用される。幾つかの実施形態において、突起110は、テーパー形状を含み、幅が、突起110の上部から、ピストン100の残りと交差するポイントで、突起110の下部に向けてより狭い幅に狭くなるようにする。こうしたテーパー形状は、シリンダーヘッドとの干渉によって生ずるカーボン堆積を低減または防止するのに役立つ。
【0042】
幾つかの実施形態において、ピストン及び/又はヘッドの種々のエッジが、丸く面取り(fillet)され、面取り(chamfer)され、または湾曲され、空気を移動して、1次ピストンの吹き抜け(blow-by)から「ドーナツ」効果を生成し、及び/又は、燃焼チャンバ内の揺動および転回を支援する。例えば、図9での場所114は、幾つかの実施形態において、丸く面取りされる。幾つかの実施形態において、エッジ104は丸く面取りされる。幾つかの実施形態において、エッジ112は丸く面取りされる。幾つかの実施形態において、ヘッドのエッジ502は丸く面取りされる。幾つかの実施形態において、ピストン100の上面102は、突起110を包囲し、凹面形状であり、例えば、カップを形成する。他の実施形態において、表面102は凸面形状である。
【0043】
種々の突起110および対応する中央凹部510の寸法および形状は、所望の圧縮比および性能を提供するために、本発明の実施形態で変化することは理解されよう。幾つかの実施形態において、複数の突起が利用され、そのサイズおよび形状は変化して、異なる燃焼チャンバ、例えば、1次、2次、3次などを生成する。こうした実施形態において、容積は、異なる圧縮比を提供するために変化する。幾つかの実施形態において、複数の突起は、異なる寸法を有することになるが、等しい容積を有し、等価な圧縮比を提供することなる。幾つかの実施形態において、中央突起は1次燃焼チャンバを生成し、一方、中央突起を包囲する他の突起は2次(または3次など)燃焼チャンバを生成し、燃焼チャンバ(例えば、チャンバ700)の残りは、3次(または次の)燃焼チャンバである。他の実施形態において、中央突起を包囲する1つ以上の突起は、1次燃焼チャンバになる。ボア、ストロークおよび他のエンジン設計パラメータは、異なるタイプの燃料についての設計を最適化し、低減しまたは増加させるために変化することは理解されよう。
【0044】
発明概念の幾つかの実施形態は、上述したものに類似した対向ピストン設計を含む。幾つかのこうした実施形態において、幾つかの実施形態において、全て単一シリンダ内で1次ピストンと嵌合する、上述した可変圧縮比ピストンと組み合わせた単一の1次ピストンがある。他の実施形態において、対向ピストンが、別個の対向シリンダ内で動作する。幾つかのこうした実施形態において、可変圧縮比ピストンも利用される。
【0045】
発明概念の実施形態は、ピストンがヘッドから遠くに移動して容積を増加させる際、圧縮点火を1次燃焼チャンバで生成し、燃焼が2次チャンバに伝搬できるようにすることによって、オンデマンド(on demand)炎及び/又は圧力伝搬を生成する。
【0046】
ここで開示した多相および多相式のダイナミック圧縮点火燃焼エンジンの実施形態が、変化する数(例えば、1,2,4,6,8など)のシリンダおよび変化するシリンダ変位を含むことは理解されよう。本発明の幾つかの実施形態において、より低い数のシリンダが利用され(例えば、2つのシリンダ)、より高い数のシリンダエンジン(例えば、8つのシリンダ)で典型的に見られるものと同じエンジン変位を提供する。発明概念は、完全圧縮点火燃焼、及び/又はオンデマンド炎、及び/又は圧力伝搬を可能にするため、シリンダのボアサイズは、排出物の増加または効率の減少を伴うことなく、必要に応じて拡大縮小できる。幾つかの実施形態において、対向する2つのシリンダ構造が利用され、より高い変位(例えば、4.0リットルなど)エンジンを設計する。こうした構造は、エンジンのより小型な全体サイズをもたらし、そして製造時の材料および労力の節約をもたらす。
【0047】
発明概念の幾つかの実施形態において、蓄熱媒体が、ピストンの上部に、例えば、発明概念の突起の上部に、及び/又は、シリンダヘッドに、例えば、シリンダの上部の中心近くに含まれる。幾つかの実施形態において、蓄熱媒体は、熱を保持するように設計され、シリンダまたはピストンの壁より熱くなる。幾つかのこうした実施形態において、蓄熱媒体の増加した熱は、圧縮された供給(charge)の中に散逸し、蓄熱媒体の近くの自動点火を支援する。幾つかの実施形態において、蓄熱媒体は、比較的小さい金属片または、上述した自動点火を支援するための熱を保存し放出するのに適した熱力学的特性を有する他の材料である。幾つかの実施形態において、蓄熱媒体は、ピストン及び/又はヘッドの表面に塗布されるコーティングである。
【0048】
幾つかの実施形態において、空気/燃料及び/又はエンジンに入る水を加熱して、始動および性能を支援するために、吸気マニホールド(manifold)にまたはこれと関連して、予備ヒータが含まれる。
【0049】
幾つかの実施形態において(例えば、図20図22を参照)、発明概念のエンジンが、ピストンの中央突起およびその関連した凹部と関連して、中央弁の周りに位置決めされたオフセットの吸気弁および排気弁を含む。幾つかのこうした実施形態において、排気弁は、エンジンの右側および左側に設置され、吸気弁は、クランクと一直線にある。幾つかのこうした実施形態において、排気ポートは、排気弁から上に延びており、個々の排気弁の右または左に向けて延出している。吸気弁に対する排気弁のオフセット場所は、燃焼チャンバ内の均衡した温度を可能にする。弁の場所は、幾つかの実施形態において、より大きい均衡を可能にし、燃焼からの熱がシリンダの中心および吸気から引き出されるのを可能にする。幾つかの実施形態において、引き出された熱は、吸気を予備加熱するために使用される。他の実施形態において、熱は、吸気を予備加熱するために使用されない。それでも他の実施形態において、オフセット弁設計を利用して、吸気弁および排気弁の場所を置き換えることは理解されよう。幾つかの実施形態において、中央弁は、吸気弁および排気弁の両方として機能する。幾つかの実施形態において、全ての弁の場所は、シリンダ内の所望のフロー特性に応じて、吸気、排気のいずれか、及び/又は吸気と排気の両方でも可能である。種々の実施形態において、各弁の開閉の順序、期間、及び/又はタイミングは変化し、シリンダ内で所望のフロー特性を達成するように設計される。発明概念のオフセット弁設計が、圧縮点火、そして従来の点火エンジンを備えた種々の実施形態で利用されることは理解されよう。
【0050】
図18A図18Bおよび図18Cを参照して、発明概念の幾つかの実施形態は、多段式直接噴射器を含む。噴射器は、その座面から少量だけ引き上げられ、第1の最低流量を可能にする第1段を開放する「段差付」噴射器ピンを含む。図18Aを参照して、噴射器ピン1000は、ハウジング1200内の着座位置にあり、そこでは流体フローが発生しない。図18Bは、着座位置から移動して、流体ポート1100の第1段を開放する噴射器ピン1000を示す。噴射器ピン1000がさらに引き上げられると、その段差付設計により連続的により大きい孔を開放し、第2、第3、第4、第5などの段を開放して、各段において流量を徐々に増加させる。図18Cは、図18Bの第1段から第2段に移動した後、追加の流体ポート1100が開放されている噴射器ピン1000を示す。図18Cに示すように、流体ポート1100の第3段が噴射器ピン1000によって閉止したままである。幾つかの実施形態において、Oリングが噴射器の各段に沿って含まれており、封止を改善している。図18A図18Bおよび図18Cに示す実施形態において、単一の燃料/流体ラインが噴射器に供給されるように示される。他の実施形態において、噴射器の各段が、別個の燃料ラインによって供給される。こうして噴射器は、幾つかの実施形態において利用され、各段を経由して異なる燃料タイプまたは他の流体を供給する。例えば、幾つかの実施形態において(例えば、ドラッグカーにおいて)、第1段がアルコールを噴射し、第2段が亜硝酸(nitrous)の第1段を噴射し、第3段が亜硝酸の第2段を噴射する。幾つかの実施形態において、発明概念の噴射器は、キャブレタ式エンジンと関連して利用され、一方、他の実施形態において、燃料噴射システムの一部として利用される。幾つかの実施形態において、発明概念の噴射器は、タービンファンで利用される。他の実施形態において、噴射器は、例えば、多段式のプラスチック射出成形のために、プラスチックインジェクタとして利用される。さらに他の実施形態において、噴射器は、オイル噴射器として利用される。
【0051】
図19A図19Bおよび図19Cを参照して、発明概念のエンジンの種々の実施形態が、燃焼チャンバ内の熱及び/又は排気ガスを選択的にトラップして、圧縮点火を支援するように設計されたバタフライ弁465を含むように示される。図19Aは、発明概念の2サイクルエンジンの実施形態を示し、ピストンは、排気弁および吸気弁として機能し、吸気450および排気出口460を選択的に閉鎖し、そして排気出口460内にバタフライ弁465をさらに含み、燃焼チャンバ内の熱および排気ガスを選択的にトラップし、圧縮点火を支援する。吸気弁400がシリンダヘッドの凹部510内に設置され、燃焼チャンバの該部分内のトラップ容積を低減及び/又は除去する。図19Aに示すエンジンの実施形態において、単一の排気ポートが存在し、バタフライ弁465は、100%閉止されない。代わりに、弁は、部分的に閉止され、排気の一部をトラップし、吸気を予備加熱する。他の実施形態において、複数の排気ポートまたはラインが存在し、バタフライ弁465は、排気の一部を100%閉止し、所望のフロー制限及び/又は予備加熱効果を提供することができる。図19Bは、ピストンが排気弁として機能し、別個の吸気弁450が弁400とともに利用される実施形態におけるバタフライ弁465を示す。図19Cは、排気弁が吸気弁450,400とともにヘッド内に設置された、2サイクルまたは4サイクルエンジンの実施形態におけるバタフライ弁465を示す。他の実施形態において、バタフライ弁465が、図19A図19Cに示す1次および2次(3次など)燃焼チャンバと比較して、単一の燃焼チャンバを含むだけであるエンジンで利用されることは理解されよう。さらに、図19B図19Cに示していないが、可変圧縮比ピストン900が図19B図19Cの発明概念の種々の実施形態に含まれることは理解されよう。同様に、図19Aの発明概念の種々の実施形態が、ここで示した可変圧縮比ピストン900なしで利用される。
【0052】
ここで記載した本発明概念の種々の実施形態が含まれ、及び/又は、PCT/US2014/64866(その全体開示内容は、参照によりここに組み込まれる。)で議論されたタイプの2シリンダスーパーチャージャ式エンジンにおいて多相ダイナミック圧縮点火燃焼を利用する。ここで開示した発明概念の種々の実施形態は、単一シリンダ、2シリンダ、および追加シリンダ(例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つなどのシリンダ)構造を含み、また吸気ブースト(例えば、スーパーチャージャ及び/又はターボチャージャ)のいずれかのタイプを備え、および備えない構造を含む(これに限定されないが、PCT/US2014/64866に開示された構造を含む)ことが理解される。
【0053】
図20図21を参照して、発明概念の例示の実施形態が、3シリンダ式サイアミーズ(Siamese)シリンダエンジンとして示され、これは、シリンダ300(および301,302)内に3つのピストン100を含み、これはピストンの本体の上部から突出する略中央突起110をそれぞれ含む。シリンダヘッド500は、各シリンダのためのピストンの突起110を嵌合的に受け入れるように構成された略中央凹部510を各シリンダ内に含む。ピストンの中央突起110は、ヘッドの中央凹部510(および511,512)に摺動的に受け入れるように構成される。ピストンが上死点に向かって上に移動すると、ピストンの中央突起110は、ヘッドの中央凹部510(および511,512)に摺動して入り、1次燃焼チャンバおよび2次燃焼チャンバを生成する。幾つかの実施形態において、1次燃焼チャンバおよび2次燃焼チャンバの個々の容積は、1次燃焼チャンバの圧縮比が2次チャンバより高くなる(他の実施形態において、逆も真実である。)ように設計される。こうしてピストンが上死点に到達した時またはその前後に、2次燃焼チャンバでの自動点火が生じないように、自動点火が1次燃焼チャンバで得られる。ピストンが上死点から下に移動し、突起110がヘッドの凹部510(および511,512)から出ると、1次燃焼チャンバ内で燃焼によって生成された圧力が、2次燃焼チャンバの中に膨張することが許容され、2次燃焼チャンバ内の燃焼、点火及び/又は燃焼点火を開始する。幾つかの実施形態において、自動点火が、1次から2次燃焼チャンバへの吹き抜けを通じて圧力伝搬から開始される。
【0054】
シリンダの各々に関して、中央吸気弁400(および401,402)が、シリンダヘッドの凹部510(および511,512)に設置され、燃焼チャンバ内のトラップ容積を低減及び/又は除去し、燃焼チャンバ全体(1次チャンバおよび2次チャンバ)内で均質な空気/燃料/EGR混合を確保する。図示した実施形態において、追加の吸気弁410(および420,430)ならびに412(および422,432)、そして排気弁415(および425,435)ならびに417(および427,437)が、2次燃焼チャンバエリアに設置される。図示した実施形態において、全ての吸気弁(400,401,402,410,412,420,422,430,432)が、エンジンブロックの中心線に沿って位置決めされる。こうして吸気弁412,420,422,430は、隣接するピストンのシリンダ壁にごく近接して隣接して設置され、これらはホットスポットが生成される場所である。弁および弁を通じて生成される気流の場所は、熱が、隣接するシリンダの間でホットスポット場所から遠くに浸ることを可能にする。エンジン全体での改善した熱バランスは、圧縮点火のより良い制御および使用を可能にする。発明概念の熱の均衡化は、単一シリンダおよび他の複数のシリンダの実施形態(例えば、2シリンダ、4シリンダなど)との組合せで利用されることは理解されよう。
【0055】
図21を参照して、デュアルオーバーヘッドカム配置を示す。中央吸気弁400,401,402が、オーバーヘッドカムシャフト1600によって制御される。2次燃焼チャンバの吸気弁410,412,420,422,430,432および排気弁417,417,425,425,435,437が、オーバーヘッドカムシャフト1600の直ぐ上方に設置されたオーバーヘッドカムシャフト1700によって全て制御される。ロッカーアーム715,710(不図示のシリンダ301,302と関連したロッカーアーム)が、カムシャフト1700から排気弁415,417へそれぞれ延びている。他の実施形態において、単一のカムを利用して、全ての弁を制御する。さらに他の実施形態において、3つ以上のカムが利用される。幾つかの3カムの実施形態において、中央カムシャフトが中央吸気弁を制御し、エンジンの両側にあるカムがエンジンのその側にある個々の弁を制御する。さらに他の実施形態において、機械的、電子的及び/又は油圧的コントローラ及び/又はその組合せが、種々の弁を制御するために利用される。種々の実施形態におい、ここで示した幾つかまたは全ての排気弁が吸気弁として利用され、ここで示した幾つかまたは全ての吸気弁が排気弁として利用されることは理解されよう。さらに、幾つかの実施形態において、所望のエンジン性能に依存して、同じ弁が排気および吸気弁の両方として機能する。デュアルオーバーヘッドカムを図21で示しているが、他の実施形態において、単一のカムを利用して、排気および吸気の両方を制御する。他の実施形態において、3つ以上のカムが利用される。さらに他の実施形態において、弁駆動のための他の機構が利用される。幾つかの実施形態において、吸気弁は電子的に駆動され、排気弁はカムによって機械的に駆動される。図21に示していないが、幾つかの実施形態において、可変圧縮比ピストンが、図21に示す構造との組合せで利用される。
【0056】
幾つかの実施形態において、単一シリンダ内に示される複数の吸気弁(例えば、図20)は、互い違い(staggered)パターンで開くように制御され、燃焼チャンバ内の空気/燃料/EGR混合の揺動および転回を制御するのを支援する。吸気弁がカムによって制御される幾つかの実施形態において、開く弁は、互いに1~20度から交互配列される。
幾つかの実施形態において、1つの吸気弁が互い違いパターンで1回開く。他の実施形態において、複数の弁が、互い違いパターンで開いた他の弁と同時に開放する。パターンは、燃焼チャンバ内での所望の掃引(sweeping)運動、およびコンポーネントの物理的形状、サイズおよび設計に応じて、様々な実施形態において変化することは理解されよう。
【0057】
図21を参照して、図示した実施形態において、ピストン100の設計は、突起110がピストン100の中心に設置され、ピストンの増加した厚さの場所(突起に起因して)にリストピン210がロッド200をピストンに装着するのを可能にする。これは、増加した応力下にある場所において強度を増加させる。さらに、ピストンでの比較的高い接続は、ピストンがシリンダ内で上下移動する際、ピストンのより大きい制御および減少したピストンスラップを可能にする。
【0058】
図20図21に示すエンジンの幾つかの実施形態において、吸気マニホールドおよび排気マニホールドは、排気ラインの少なくとも一部が吸気ラインに物理的接触するように、または少なくともごく近接するように設計される。こうして排気ラインは、吸気を予備加熱するために利用される。幾つかの実施形態において、図19A図19Bおよび図19Cに示したものと類似するバタフライ弁が、排気ラインに接触/近接した排気マニホールドの一部から、吸気ラインから遠くに位置決めされた排気マニホールドの一部へ排気ガスを迂回させるために利用される。こうして弁を利用して、予備加熱を選択的に関与および不関与にできる。幾つかの実施形態において、弁は、マニホールドでの「T字部」に設置され、排気ラインが吸気ラインに対して略平行にポートから出てきて、「T字部」が吸気ラインから下に遠くへ排気を迂回させ、あるいは選択的に迂回しない場合、排気ガスが、吸気ラインに対して平行に(吸気ラインに接触またはごく近接して)続くマニホールドの一部を通って流れるのを許容する。幾つかの実施形態において、エンジンの両側から入る別個の吸気ラインが存在し、エンジンの両側にある排気ラインとともに、平衡化した熱伝達を提供する。幾つかの実施形態において、エンジンの両側にある吸気ラインおよび排気ラインは、隣り合っており(互いに物理的接触またはごく近接している)、エンジンの上部に向けて上向きに湾曲している。吸気ラインは、互いに出会い、エンジンの上部で共に接続し、幾つかの実施形態において、燃料噴射器が吸気の上部に設置される。幾つかの実施形態において、排気ラインは、互いに出会い、共に接続し、交差ポイントの近くで単一排気パイプの中で外側へ流れる。他の実施形態において、各排気ラインは、エンジンの上部で続いており、反対側で下がって、そこから起点となってエンジンから外側へ続く。幾つかの実施形態において、吸気および排気マニホールドは、エンジンヘッドの上でボルト固定される単一の成形品または鋳造品である。幾つかの実施形態において、吸気ラインがエンジンの上部で一緒になる。
【0059】
図22を参照して、発明概念の複数の突起を含む3シリンダ式サイアミーズシリンダエンジンの他の実施形態の代表的な平面図を示す。突起110(図22では、凹部510a,511a,512aと係合する)に加えて、他の突起がピストンの上部付近に突起110を囲むように設置され、凹部510b,510c,510d,510e,511b,511c,511d,511e,512b,512c,512d,512eと係合する。突起の数、サイズ、形状および場所は、異なる実施形態において変化することは理解されよう。幾つかの実施形態において、各突起は、異なる体積を有し、異なる圧縮結果を提供する(例えば、1次、2次、3次などの燃焼チャンバを生成する)。他の実施形態において、各突起の体積は等しく、各凹部内で同じ圧縮を提供する。
【0060】
発明概念の上記実施形態で示し記載した弁は、種々の実施形態において、機械的、電気的、機械電気的、油圧式、これらの組合せ、及び/又は、現在既知でありまたは今後開発される駆動用の他の機構によって制御される。上記の幾つかの実施形態ではカムおよびロッカーアームアセンブリを示したが、他の実施形態において、ここに記載した発明概念の同じまたは類似の特徴と関連して、他の弁駆動機構が利用されることは理解されよう。種々の実施形態において、吸気弁および排気弁が、所望の設計および性能に応じて順番にまたは順不同に駆動される。
【0061】
ここに図示し記載していないが、サイアミーズシリンダの発明概念の種々の実施形態は、ここで開示した圧縮点火の他のシステムおよび方法の種々の特徴、組合せおよびサブコンビネーションとともに採用されることは理解されよう。
【0062】
前述の説明では、特定の用語が、簡潔さ、明瞭さおよび理解のために使用されているが、こうした用語は説明目的のために使用され、広く解釈されることを意図しているため、先行技術の要求を超えて、そこから不必要な限定を暗示するものではない。さらに、本発明の説明および図示は例示的であり、本発明の範囲は、図示または記載された正確な詳細に限定されない。
【0063】
本発明の上述した詳細な説明は、例示の実施形態を参照して記載されており、本発明を実施するために想定される最良の形態が図示され記載されているが、特定の変化、変更または変形が、上記発明を具現化する際に行ってもよく、その構成において、ここで詳細に説明したもの以外に、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者によって達成でき、こうした変化、変更または変形は、本発明の全体範囲内にあると考えられることは理解されよう。従って、本発明およびここで開示され請求される根本的な原理の真の精神および範囲内に入る何れかおよび全ての変化、変更、変形または均等物を網羅することが想定される。その結果、本発明の範囲は、添付した請求項によってのみ限定されることを意図しており、上記説明に含まれ、添付図面に示される全ての事項は、例示的であると解釈すべきであり、限定する意味ではない。
【0064】
ここでは本発明の特徴、発見および原理、本発明が構築され使用される方法、構築の特性、および得られた有利で新しい有用な結果を説明したが、新しい有用な構造、デバイス、エレメント、配置、部品および組合せは、添付した請求項に記述される。
【0065】
下記の請求項は、ここで説明した本発明の一般的および具体的な特徴の全て、および言語の問題として、両者間に入ると言及されることがある本発明の範囲の全ての記述を網羅することが意図されると理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図19C
図20
図21
図22
【手続補正書】
【提出日】2022-05-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内に設置され、中央突起を含むピストンと、
前記シリンダ内にある前記ピストンを囲むシリンダヘッドであって、前記中央突起と関連した中央凹部を含むシリンダヘッドと、
前記中央凹部内に設置された弁とを備え、
前記シリンダ、シリンダヘッドおよび中央凹部は、燃焼チャンバを画定する、内燃エンジン。
【外国語明細書】