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▶ フィッシャー アンド ペイケル ヘルスケア リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106798
(43)【公開日】2022-07-20
(54)【発明の名称】呼吸回路のための医療用管
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/08 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
A61M16/08 330
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022068414
(22)【出願日】2022-04-18
(62)【分割の表示】P 2019502592の分割
【原出願日】2017-07-21
(31)【優先権主張番号】62/365,285
(32)【優先日】2016-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513259285
【氏名又は名称】フィッシャー アンド ペイケル ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ、ウィリアム、スタントン
(72)【発明者】
【氏名】ギャビン、ウォルシュ、ミラー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】管内の流れの全体的な抵抗を大きくせずに、患者に送達される加湿ガス中の蒸気量を増やすことができる吸気管を提供する。
【解決手段】呼吸療法で使用するための呼吸回路100は、吸気管103及び呼気管117を含む。呼吸回路の吸気管は、平滑なボアを有する。呼吸回路の呼気管は、波形である。好ましくは、呼気管は、蒸気透過性である。平滑なボアの吸気管と波形の呼気管との組合せの使用は、呼吸回路及びその構成要素の性能を改善するという予想外の結果を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸回路であって、
吸気ガスを患者に輸送するための吸気リムであって、
らせん状に巻かれて、長さ方向軸を有する第一の長尺状管を少なくとも部分的に形成する中空本体と、前記長さ方向軸に沿って延びる第一のルーメンと、前記ルーメンを取り囲む中空壁とを含む第一の長尺状部材と、
らせん状に巻かれ、且つ前記第一の長尺状部材の隣接する巻き間に結合される第二の長尺状部材であって、前記第一の長尺状管の前記ルーメンの少なくとも一部を形成する第二の長尺状部材と
を含む吸気リムと、
前記患者からの呼気ガスを輸送するための呼気リムであって、
入口及び出口と、
第二のルーメンを取り囲む第二の管を含む第三の長尺状部材であって、前記第二のルーメンは、前記呼気ガスを収容するように構成され、及び前記第二の管は、水蒸気に対して透過性であり、且つ液体の水及び前記呼気ガスのバルク流に対して実質的に不透過性である、第三の長尺状部材と
を含む呼気リムと
を含む呼吸回路。
【請求項2】
第二の管の壁は、水蒸気に対して透過性であり、且つ液体の水及び前記呼気ガスのバルク流に対して実質的に不透過性である発泡ポリマーを含む、請求項1に記載の呼吸回路。
【請求項3】
前記発泡ポリマーは、全体に分散されたセルボイドを有する中実の熱可塑性エラストマー材料を含む、請求項1又は2に記載の呼吸回路。
【請求項4】
前記吸気リムの前記第一のルーメンは、平滑なボアを有する、請求項1~3の何れか一項に記載の呼吸回路。
【請求項5】
前記吸気リムの前記第二の長尺状部材は、少なくとも1つの加熱素子を取り囲む、請求項1~4の何れか一項に記載の呼吸回路。
【請求項6】
前記吸気リムの前記第一の長尺状部材は、長さ方向の断面において、複数のバブルであって、前記第一のルーメンの壁の少なくとも一部を形成する平坦な面をそれぞれ有する、複数のバブルを形成する、請求項1~5の何れか一項に記載の呼吸回路。
【請求項7】
前記吸気リムの前記第二の長尺状部材は、少なくとも1つの加熱素子を取り囲み、前記少なくとも1つの吸気加熱素子は、前記複数のバブルのうちのバブルと前記吸気リムの前記第一のルーメンとの間にある、請求項1~6の何れか一項に記載の呼吸回路。
【請求項8】
前記呼気リムの前記第三の長尺状部材は、波形である、請求項1~7の何れか一項に記載の呼吸回路。
【請求項9】
前記第一の長尺状管は、前記第一のルーメン内に加熱素子を取り囲む、請求項1~8の何れか一項に記載の呼吸回路。
【請求項10】
前記呼気リムの前記第三の長尺状部材は、前記第二のルーメン内に加熱素子を取り囲む、請求項1~9の何れか一項に記載の呼吸回路。
【請求項11】
前記呼気リムの前記第三の長尺状部材は、前記第二の管の前記内壁に取り付けられた加熱素子を含む、請求項1~9の何れか一項に記載の呼吸回路。
【請求項12】
前記呼気リムの前記第三の長尺状部材は、前記第二の管の前記壁内に埋め込まれた加熱素子を含む、請求項1~9の何れか一項に記載の呼吸回路。
【請求項13】
前記第二の管は、前記第二のルーメンに隣接する内面を有し、及び前記呼気リムは、前記内面の周囲に円周方向に配置され、且つ前記入口と前記出口との間で概して長さ方向に整列された複数の補強リブをさらに含む、請求項1~12の何れか一項に記載の呼吸回路。
【請求項14】
デバイスであって、
呼吸回路であって、
ガス源からの吸気ガス流を受け取るように構成された吸気管であって、吸気入口と、吸気出口と、吸気中心ボアを取り囲む内壁とを含み、前記吸気管の前記内壁は、平滑である、吸気管と、
患者からの呼気ガス流を受け取るように構成された呼気管であって、呼気入口と、呼気出口と、呼気中心ボアを取り囲む内壁とを含み、前記呼気管の前記内壁は、波形であり、前記呼気管の前記内壁は、水蒸気に対して透過性であり、且つそれを通って流れる液体及び呼気ガスのバルク流に対して実質的に不透過性である、呼気管と
を含む呼吸回路
を含むデバイス。
【請求項15】
前記呼気管の前記壁は、水蒸気に対して透過性であり、且つ液体の水及び呼気ガスのバルク流に対して実質的に不透過性である発泡ポリマーを含む、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記吸気管は、前記吸気中心ボア内に加熱素子を取り囲む、請求項14又は15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記吸気管は、前記吸気管の前記内壁に取り付けられた加熱素子を含む、請求項14又は15に記載のデバイス。
【請求項18】
前記吸気管は、前記吸気管の前記内壁に埋め込まれた加熱素子を含む、請求項14又は15に記載のデバイス。
【請求項19】
前記呼気管は、前記呼気中心ボア内に加熱素子を含む、請求項14~18の何れか一項に記載のデバイス。
【請求項20】
前記呼気管は、前記呼気管の前記壁に取り付けられた加熱素子を含む、請求項14~18の何れか一項に記載のデバイス。
【請求項21】
前記呼気管は、前記呼気管の前記壁内に埋め込まれた加熱素子を含む、請求項14~28の何れか一項に記載のデバイス。
【請求項22】
前記吸気管は、長さ方向の断面において、複数のバブルであって、前記呼気中心ボアの前記壁の少なくとも一部を形成する平坦な面をそれぞれ有する、複数のバブルを含む、請求項14~21の何れか一項に記載のデバイス。
【請求項23】
前記吸気管は、少なくとも1つの加熱素子を含み、前記少なくとも1つの吸気加熱素子は、前記複数のバブルのうちのバブルと前記吸気中心ボアとの間にある、請求項14~22の何れか一項に記載のデバイス。
【請求項24】
前記呼気管は、前記内壁の周囲に円周方向に配置され、且つ前記入口と前記出口との間で概して長さ方向に整列された複数の補強リブを含む、請求項14~23の何れか一項に記載のデバイス。
【請求項25】
前記呼吸回路は、患者への吸気ガス流を加湿するように構成された加湿器を含み、前記加湿器は、
液体の体積を貯蔵するように構成され、且つ前記吸気ガス流と流体連通するように構成された加湿チャンバと、
前記吸気ガス流が蒸気によって加湿されるように、前記加湿チャンバ内の前記液体の体積を加熱して前記蒸気を生成するように構成されたヒータと
を含む、請求項14~24の何れか一項に記載のデバイス。
【請求項26】
呼吸器であって、
患者への吸気ガス流を加湿するように構成された加湿器と、
前記加湿器からの前記吸気ガス流を受け取るように構成された吸気管であって、吸気入口と、吸気出口と、吸気中心ボアを取り囲む内壁とを含み、前記吸気管の前記内壁は、平滑である、吸気管と、
前記患者からの呼気ガス流を受け取るように構成された呼気管であって、呼気入口と、呼気出口と、呼気中心ボアを取り囲む内壁とを含み、前記呼気中心ボアは、波形であり、前記呼気管の前記内壁は、水蒸気に対して透過性であり、且つそれを通って流れる液体及び呼気ガスのバルク流に対して実質的に不透過性である、呼気管と
を含む呼吸器。
【請求項27】
前記吸気管は、前記吸気中心ボア内に少なくとも1つの加熱素子を含む、請求項26に記載の呼吸器。
【請求項28】
前記吸気管は、前記吸気管の前記内壁に取り付けられた少なくとも1つの加熱素子を含む、請求項26又は27に記載の呼吸器。
【請求項29】
前記吸気管は、前記吸気管の前記内壁内に取り囲まれた少なくとも1つの加熱素子を含む、請求項26又は27に記載の呼吸器。
【請求項30】
前記呼気管は、前記呼気中心ボア内に少なくとも1つの加熱素子を含む、請求項26又は27に記載の呼吸器。
【請求項31】
前記呼気管は、前記呼気管の前記内壁に取り付けられた少なくとも1つの加熱素子を含む、請求項26~30の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項32】
前記呼気管は、前記呼気管の前記内壁内に埋め込まれた少なくとも1つの加熱素子を含む、請求項26~30何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項33】
前記吸気管は、長さ方向の断面において、複数のバブルであって、前記吸気中心ボアの壁の少なくとも一部を形成する平坦な面をそれぞれ有する、複数のバブルを形成するらせん状に巻かれた部材を含む、請求項26~32の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項34】
前記吸気管は、少なくとも1つの加熱素子を取り囲み、前記少なくとも1つの吸気加熱素子は、前記複数のバブルのうちのバブルと前記吸気中心ボアとの間にある、請求項26~33の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項35】
前記呼気管の前記内壁は、発泡ポリマーを含む、請求項26~34の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項36】
呼吸器であって、
患者への吸気ガス流を加湿するように構成された加湿器であって、
液体の体積を貯蔵するように構成され、且つ前記吸気ガス流と流体連通するように構成された加湿チャンバと、
前記吸気ガス流が蒸気によって加湿されるように、前記加湿チャンバ内の前記液体の体積を加熱して前記蒸気を生成するように構成されたヒータと
を含む加湿器と、
前記加湿器からの前記加湿された吸気ガス流を受け取るように構成された吸気管であって、吸気中心ボアを取り囲む壁を含み、前記吸気管の前記吸気中心ボアは、平滑であり、前記吸気管は、
長さ方向の断面において、複数のバブルであって、前記吸気中心ボアの壁の少なくとも一部を形成する平坦な面をそれぞれ有する、複数のバブルを形成するらせん状に巻かれた第一の長尺状部材であって、前記バブルは、前記吸気中心ボアを断熱するように構成される、らせん状に巻かれた第一の長尺状部材と、
前記第一の長尺状部材の隣接する巻き間に結合されるらせん状に巻かれた第二の長尺状部材であって、第一の長尺状管のルーメンの少なくとも一部を形成し、且つ前記第二の長尺状部材内に埋め込まれた少なくとも1つの吸気加熱素子を含む、らせん状に巻かれた第二の長尺状部材と
を含む吸気管と、
前記患者からの呼気ガス流を受け取るように構成された呼気管であって、
呼気中心ボアを取り囲む導管であって、前記呼気中心ボアは、波形であり、前記導管は、水蒸気に対して透過性であり、且つそれを通る液体の流れに対して実質的に不透過性である、導管と、
前記呼気中心ボア内の少なくとも1つの呼気加熱素子と
を含む呼気管と、
前記加湿器のヒータ、前記少なくとも1つの吸気加熱素子、及び前記少なくとも1つの呼気加熱素子に電力を送達するように構成された制御システムと
を含む呼吸器。
【請求項37】
前記呼気管の前記壁は、水蒸気に対して透過性であり、且つ液体の水及び呼気ガスのバルク流に対して実質的に不透過性である発泡ポリマーを含む、請求項36に記載の呼吸器。
【請求項38】
前記発泡ポリマーは、全体に分散されたセルボイドを有する中実の熱可塑性エラストマー材料を含む、請求項36又は37に記載の呼吸器。
【請求項39】
前記少なくとも1つの吸気加熱素子は、前記複数のバブルのうちのバブルと前記吸気中心ボアとの間にある、請求項36~38の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項40】
前記吸気管と前記呼気管との間の患者インタフェースアセンブリをさらに含む、請求項36~39の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項41】
前記制御システムによって送達される前記電力は、前記加湿器による増大した加湿と、前記少なくとも1つの呼気加熱素子及び前記少なくとも1つの吸気加熱素子による制御された凝結管理とを提供するように計算される、請求項36~40の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項42】
前記吸気ガス流を提供し、且つ前記呼気ガス流を受け取るように構成されたベンチレータを含む、請求項36~41の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項43】
前記ベンチレータは、パルス状の吸気ガス流を前記加湿器に供給するように構成される、請求項36~42の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項44】
前記ベンチレータは、一定の吸気ガス流を前記加湿器に供給するように構成される、請求項36~43の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項45】
前記ベンチレータは、ガスのバイアス流を提供するように構成される、請求項36~44の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項46】
呼吸器であって、
患者への吸気ガス流を加湿するように構成された加湿器と、
ガス源からの前記吸気ガス流を受け取るように構成された吸気管であって、吸気入口と、吸気出口と、吸気中心ボアを取り囲む壁とを含み、前記吸気管の前記内壁は、平滑である、吸気管と、
患者からの呼気ガス流を受け取るように構成された呼気管であって、呼気入口と、呼気出口と、呼気中心ボアを取り囲む壁とを含み、前記呼気管の前記壁は、波形であり、前記呼気管の前記壁は、水蒸気に対して透過性であり、且つそれを通って流れる液体及び呼気ガスのバルク流に対して実質的に不透過性である、呼気管と
を含む呼吸器。
【請求項47】
前記呼気管の前記壁は、水蒸気に対して透過性であり、且つ液体の水及び呼気ガスのバルク流に対して実質的に不透過性である発泡ポリマーを含む、請求項46に記載の呼吸器。
【請求項48】
前記吸気管は、前記吸気中心ボア内に少なくとも1つの加熱素子を含む、請求項46又は47に記載の呼吸器。
【請求項49】
前記吸気管は、前記呼吸管の前記内壁に取り付けられた少なくとも1つの加熱要素を含む、請求項46又は47に記載の呼吸器。
【請求項50】
前記吸気管は、前記吸気管の前記内壁内に取り囲まれた少なくとも1つの加熱素子を含む、請求項46又は47に記載の呼吸器。
【請求項51】
吸気リムの第一の長尺状部材は、長さ方向の断面において、複数のバブルであって、前記呼気中心ボアの前記壁の少なくとも一部を形成する平坦な面をそれぞれ有する、複数のバブルを形成する、請求項46~50の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項52】
前記吸気管は、少なくとも1つの加熱素子を取り囲み、前記少なくとも1つの吸気加熱素子は、前記複数のバブルのうちのバブルと前記吸気中心ボアとの間にある、請求項46~51の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項53】
前記呼気管は、前記呼気中心ボア内に少なくとも1つの加熱素子を含む、請求項46~52の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項54】
前記呼気管は、前記呼気管の前記壁に取り付けられた少なくとも1つの加熱素子を含む、請求項46~52の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項55】
前記呼気管は、前記呼気管の前記壁内に埋め込まれた少なくとも1つの加熱素子を含む、請求項46~52の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項56】
前記呼気管は、前記壁の周囲に円周方向に配置され、且つ前記入口と前記出口との間に概して長さ方向に整列された複数の補強リブを含む、請求項46~55の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項57】
前記加湿器のヒータ及び前記少なくとも1つの加熱素子に電力を送達するように構成された制御システムをさらに含む、請求項46~56の何れか一項に記載の呼吸器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
参照による援用
本願は、2016年7月21日に出願された米国仮特許出願第62/365285号明細書からの優先権を主張するものであり、その全内容は、全体が参照により本明細書に援用される。加えて、以下の本開示では、米国特許出願第公開第2013/0098360 A1号明細書として公開された米国特許出願公開第13/517,925号明細書、米国特許出願公開第2014/0202462 A1号明細書として公開された米国特許出願公開第14/123,485号明細書、及び米国特許出願公開第2015/0306333 A1号明細書として公開された米国特許出願公開第14/649,801号明細書の様々な特徴が参照される。これらの出願及び公開の全開示は、本明細書により、全体が本明細書に記載されているかのように本明細書の一部とされ、それらに含まれるすべてについて、あらゆる目的のために参照により援用される。
【0002】
本開示は、概して、医療用として適した管、特に例えば呼吸加湿システム等において、患者に加湿ガスを供給し、且つ/又は患者からガスを除去することに適した呼吸回路に使用される医療用管に関する。
【背景技術】
【0003】
呼吸回路において、各種の構成要素は、温かい及び/又は加湿されたガスを患者へ及び患者から輸送する。呼吸加湿は、感染及び/又は組織の損傷の可能性を低減させるのに役立つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の特定の特徴、態様及び利点は、呼気管内の呼気ガスからの蒸気の除去を増大させる一方、管内の流れの全体的な抵抗を大きくせずに吸気管を通じて患者に送達される加湿ガス中の蒸気量を増やすことができる改良の必要性を認識している。本開示の特定の特徴、態様及び利点は、呼吸回路の圧縮可能容積を縮小するか、又は少なくとも呼吸回路のリムの圧縮可能容積を縮小する改良の必要性を認識している。本明細書に記載されているように、吸気管と呼気管との間で圧縮可能容積及び流れに対する抵抗の両方のトレードオフがあり得る。吸気管の圧縮可能容積及び/又はその中の流れに対する抵抗の減少と、呼気管の圧縮可能容積及び/又はその中の流れの抵抗の増大とがあり得る。吸気管内の圧縮可能容積の縮小は、少なくとも部分的に吸気管の直径の減少によるものであり得る。管径の減少は、流れに対する抵抗を減少させることによって可能となり得、これは、少なくとも部分的に平滑なボアを有することによるものであり得る。呼気管内の圧縮可能容積の増大は、少なくとも部分的に壁の表面積の増大、管径、管の断面積、又は呼気管の壁の長さの増大によるものであり得る。呼気管内の流れに対する抵抗の増大は、少なくとも部分的に波形部によるものであり得る。呼気管内での増大した圧縮可能容積及び流れに対する増大した抵抗は、本明細書に記載されている様々な要素によりその透過性を改善できる。吸気管と呼気管との間のこのトレードオフは、呼吸回路全体における同じ全体的な圧縮可能容積及び/又は流れに対する抵抗を保持できる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
呼吸回路の圧縮可能容積が小さいほど、伸展性が一定である場合の呼吸回路の空気圧コンプライアンスが低くなり、患者の肺コンプライアンスに関する呼吸回路の空気圧コンプライアンスが低いほど、送達される1回換気量のエラーの可能性が低くなる。
【0006】
呼吸回路は、吸気ガスを患者に輸送するための吸気リムを含むことができる。吸気リムは、らせん状に巻かれて、長さ方向軸を有する第一の長尺状管を少なくとも部分的に形成する中空本体と、長さ方向軸に沿って延びる第一のルーメンと、ルーメンを取り囲む中空壁とを含む第一の長尺状部材を含むことができる。吸気リムは、らせん状に巻かれ、且つ第一の長尺状部材の隣接する巻き間に結合される第二の長尺状部材を含むことができ、第二の長尺状部材は、第一の長尺状管のルーメンの少なくとも一部を形成する。呼吸回路は、患者からの呼気ガスを輸送するための呼気リムを含むことができる。呼気リムは、入口及び出口を含むことができる。呼気リムは、第二のルーメンを取り囲む第二の管を含む第三の長尺状部材を含むことができる。第二のルーメンは、呼気ガスのバルク流を収容するように構成され得、及び第二の管は、水蒸気に対して透過性であり、且つ液体の水及び呼気ガスのバルク流に対して実質的に不透過性である。
【0007】
呼気管の壁は、水蒸気に対して透過性であり、且つ液体の水及び呼気ガスのバルク流に対して実質的に不透過性である発泡ポリマーを含むことができる。発泡ポリマーは、全体に分散されたセルボイドを有する中実の熱可塑性エラストマー材料を含むことができる。吸気リムの第一のルーメンは、平滑なボアを有することができる。吸気リムの第二の長尺状部材は、少なくとも1つの加熱素子を取り囲むことができる。吸気リムの第一の長尺状部材は、長さ方向の断面において、複数のバブルであって、ルーメンにおいて平坦な面を有する、複数のバブルを形成できる。吸気リムの第二の長尺状部材は、少なくとも1つの加熱素子を取り囲むことができ、少なくとも1つの吸気加熱素子は、複数のバブルのうちのバブルと吸気中心ボアとの間にある。呼気リムの第三の長尺状部材は、波形であり得る。第一の長尺状管は、そのルーメン内に加熱素子を取り囲むことができる。呼気リムの第三の長尺状部材は、第二のルーメン内に加熱素子を取り囲むことができる。呼気リムの第三の長尺状部材は、第二の管の内壁に取り付けられた加熱素子を含むことができる。呼気リムの第三の長尺状部材は、第二の管の壁内に埋め込まれた加熱素子を含むことができる。第二の管は、第二のルーメンに隣接する内面を有することができ、及び呼気リムは、内面の周囲に円周方向に配置され、且つ入口と出口との間で概して長さ方向に整列された複数の補強リブをさらに含む。
【0008】
デバイスは、呼吸回路を含むことができる。呼吸回路は、ガス源からの吸気ガス流を受け取るように構成された吸気管を含むことができ、吸気管は、吸気入口と、吸気出口と、吸気中心ボアを取り囲む壁とを含む。吸気管の内壁は、平滑であり得る。呼吸回路は、患者からの呼気ガス流を受け取るように構成された呼気管を含むことができる。呼気管は、呼気入口と、呼気出口と、呼気中心ボアを取り囲む壁とを含むことができる。呼気管の内壁は、波形であり得る。呼気管の壁は、水蒸気に対して透過性であり、且つそれ通って流れる液体及び呼気ガスのバルク流に対して実質的に不透過性であり得る。
【0009】
呼気管の壁は、水蒸気に対して透過性であり、且つ液体の水及び呼気ガスのバルク流に対して実質的に不透過性である発泡ポリマーを含むことができる。吸気管は、その中心ボア内に加熱素子を取り囲むことができる。吸気管は、その内壁に取り付けられた加熱素子を含むことができる。吸気管は、その壁内に埋め込まれた加熱を含むことができる。呼気管は、その中心ボア内に加熱素子を含むことができる。呼気管は、その内壁に取り付けられた加熱素子を含むことができる。呼気管は、その内壁に埋め込まれた加熱素子を含むことができる。吸気管は、長さ方向の断面において、複数のバブルであって、ルーメンにおいて平坦な面を有する、複数のバブルを含むことができる。吸気管は、少なくとも1つの加熱素子を含むことができ、少なくとも1つの吸気加熱素子は、複数のバブルのうちのバブルと吸気中心ボアとの間にある。呼気管は、内面の周囲に円周方向に配置され、且つ入口と出口との間で概して長さ方向に整列された複数の補強リブを含むことができる。呼吸回路は、患者への吸気ガス流を加湿するように構成された加湿器を含むことができる。加湿器は、液体の体積を貯蔵するように構成され、且つ吸気ガス流と流体連通するように構成された加湿チャンバを含むことができる。加湿器は、吸気ガス流が蒸気によって加湿されるように、加湿チャンバ内の液体の体積を加熱して蒸気を生成するように構成されたヒータを含むことができる。
【0010】
呼吸器は、患者への吸気ガス流を加湿するように構成された加湿器を含むことができる。呼吸器は、加湿器からの吸気ガス流を受け取るように構成された吸気管を含むことができる。吸気管は、吸気入口と、吸気出口と、吸気中心ボアを取り囲む壁とを含むことができる。吸気管の内壁は、平滑であり得る。呼吸器は、患者からの呼気ガス流を受け取るように構成された呼気管を含むことができる。呼気管は、呼気入口と、呼気出口と、呼気中心ボアを取り囲む壁とを含むことができる。呼気中心ボアは、波形であり得る。呼気管の壁は、水蒸気に対して透過性であり、且つそれ通って流れる液体及び呼気ガスのバルク流に対して実質的に不透過性であり得る。
【0011】
吸気管は、その中心ボア内に少なくとも1つの加熱素子を含むことができる。吸気管は、その内壁に取り付けられた少なくとも1つの加熱素子を含むことができる。吸気管は、その壁内に取り囲まれた少なくとも1つの加熱素子を含むことができる。呼気管は、呼気中心ボア内に少なくとも1つの加熱素子を含むことができる。呼気管は、その内壁に取り付けられた少なくとも1つの加熱素子を含むことができる。呼気管は、その内壁内に埋め込まれた少なくとも1つの加熱素子を含むことができる。吸気管は、長さ方向の断面において、複数のバブルであって、吸気中心ボアにおいて平坦な面を有する、複数のバブルを形成するらせん状に巻かれた部材を含むことができる。吸気管は、少なくとも1つの加熱素子を取り囲むことができ、少なくとも1つの吸気加熱素子は、複数のバブルのうちのバブルと吸気中心ボアとの間にあり得る。呼気管の壁は、発泡ポリマーを含むことができる。
【0012】
呼吸器は、患者への吸気ガス流を加湿するように構成された加湿器を含むことができる。加湿器は、液体の体積を貯蔵するように構成され、且つ吸気ガス流と流体連通するように構成された加湿チャンバを含むことができる。加湿器は、吸気ガス流が蒸気によって加湿されるように、加湿チャンバ内の液体の体積を加熱して蒸気を生成するように構成されたヒータを含むことができる。呼吸器は、加湿器からの加湿された吸気ガス流を受け取るように構成された吸気管を含むことができる。吸気管は、吸気中心ボアを取り囲む壁を含むことができる。吸気管の吸気中心ボアは、平滑であり得る。吸気管は、長さ方向の断面において、複数のバブルであって、吸気中心ボアにおいて平坦な面を有する、複数のバブルを形成するらせん状に巻かれた第一の長尺状部材を含むことができる。バブルは、吸気中心ボアを断熱するように構成され得る。吸気管は、第一の長尺状部材の隣接する巻き間に結合されるらせん状に巻かれた第二の長尺状部材を含むことができ、第二の長尺状部材は、第一の長尺状管のルーメンの少なくとも一部を形成し、且つ第二の長尺状部材内に埋め込まれた少なくとも1つの吸気加熱素子を含む。呼吸器は、患者からの呼気ガス流を受け取るように構成された呼気管を含むことができる。呼気管は、呼気中心ボアを取り囲む導管を含むことができる。呼気中心ボアは、波形であり得る。導管は、水蒸気に対して透過性であり、且つそれを通る液体の流れに対して実質的に不透過性であり得る。呼気管は、呼気中心ボア内の少なくとも1つの呼気加熱素子を含むことができる。呼吸器は、加湿器のヒータ、少なくとも1つの吸気加熱素子、及び少なくとも1つの呼気加熱素子に電力を送達するように構成された制御システムを含むことができる。
【0013】
呼気管の壁は、水蒸気に対して透過性であり、且つ液体の水及び呼気ガスのバルク流に対して実質的に不透過性である発泡ポリマーを含むことができる。発泡ポリマーは、全体に分散されたセルボイドを有する中実の熱可塑性エラストマー材料を含むことができる。少なくとも1つの吸気加熱素子は、複数のバブルのうちのバブルと吸気中心ボアとの間にあり得る。呼吸器は、吸気管と呼気管との間の患者インタフェースアセンブリを含むことができる。制御システムによって送達される電力は、加湿器による増大した加湿と、少なくとも1つの呼気加熱素子及び少なくとも1つの吸気加熱素子による制御された凝結管理とを提供するように計算され得る。呼吸器は、吸気ガス流を提供し、且つ呼気ガス流を受け取るように構成されたベンチレータを含むことができる。ベンチレータは、パルス状の吸気ガス流を加湿器に供給するように構成され得る。ベンチレータは、一定の吸気ガス流を加湿器に供給するように構成され得る。ベンチレータは、ガスのバイアス流を提供するように構成され得る。
【0014】
呼吸器は、患者への吸気ガス流を加湿するように構成された加湿器を含むことができる。呼吸器は、ガス源からの吸気ガス流を受け取るように構成された吸気管を含むことができる。吸気管は、吸気入口と、吸気出口と、吸気中心ボアを取り囲む壁とを含むことができる。吸気管の内壁は、平滑であり得る。呼吸器は、患者からの呼気ガス流を受け取るように構成された呼気管を含むことができる。呼気管は、呼気入口と、呼気出口と、呼気中心ボアを取り囲む壁とを含むことができる。呼気管の内壁は、波形であり得る。呼気管の壁は、水蒸気に対して透過性であり、且つそれ通って流れる液体及び呼気ガスのバルク流に対して実質的に不透過性であり得る。
【0015】
呼気管の壁は、水蒸気に対して透過性であり、且つ液体の水及び呼気ガスのバルク流に対して実質的に不透過性である発泡ポリマーを含むことができる。吸気管は、その中心ボア内に少なくとも1つの加熱素子を含むことができる。吸気管は、その内壁に取り付けられた少なくとも1つの加熱要素を含むことができる。吸気管は、その壁内に取り囲まれた少なくとも1つの加熱素子を含むことができる。吸気リムの第一の長尺状部材は、長さ方向の断面において、複数のバブルであって、ルーメンにおいて平坦な面を有する、複数のバブルを形成することができる。吸気管は、少なくとも1つの加熱素子を取り囲むことができ、少なくとも1つの吸気加熱素子は、複数のバブルのうちのバブルと吸気中心ボアとの間にあり得る。呼気管は、呼気中心ボア内に少なくとも1つの加熱素子を含むことができる。呼気管は、その内壁に取り付けられた少なくとも1つの加熱素子を含むことができる。呼気管は、その内壁内に埋め込まれた少なくとも1つの加熱素子を含むことができる。呼気管は、内壁の周囲に円周方向に配置され、且つ入口と出口との間に概して長さ方向に整列された複数の補強リブを含むことができる。呼吸器は、加湿器のヒータ及び少なくとも1つの加熱素子に電力を送達するように構成された制御システムを含むことができる。
【0016】
呼吸回路は、回路の吸気リムを介して患者に送達される加湿ガス内の蒸気を増大させ、且つ管の流れに対する全体的な抵抗を増大させずに回路の呼気リム内で呼気ガスからの蒸気の除去を増大させ、したがって呼吸回路内の圧力低下の増大を回避するための、平滑なボアの吸気管と波形の蒸気透過性の呼気管との組合せを含むことができる。平滑なボアの吸気管は、トレードオフのための機会を提供できる。平滑なボアは、流れに対する抵抗を低下させることができ、それにより吸気管の直径又は断面積の減少を可能にする一方、流れに対する容認可能な抵抗を保持することができる。吸気管の直径又は断面積をこのように減少させることにより、吸気管の圧縮可能容積が減少する。より小径の吸気管は、呼吸回路の少なくとも一部の圧縮可能容積を縮小でき、これは、送達される1回換気量のエラーの可能性を低減させる。ベンチレータは、典型的に、設定された体積のガス(「1回換気量」)を1呼吸ごとに患者に送達することを意図している。送達される1回換気量におけるエラーの低減により、患者は、正しい体積のガスを確実に受け取る。
【0017】
平滑なボアの吸気管と波形の呼気管との組合せの使用は、呼吸回路及びその構成要素の性能を期待以上に改善する予想外の相乗効果を有する。同等の波形管より小さい内径を有する平滑なボアの吸気管の使用は、管の圧縮可能容積を縮小できる。圧縮可能容積のこのような縮小により、適正な体積のガスが患者に確実に送達されるようにし得る。本明細書に記載されているように、より小さい内径の吸気管は、呼吸回路の全体的な圧縮可能容積及び空気圧コンプライアンスを低下させることができる。本明細書に記載されているように、より小さい内径の吸気管は、縮小された圧縮可能容積を有することができ、これは、呼気管の増大された圧縮可能容積とトレードオフであり得る。
【0018】
実践上の理由により、呼吸回路チュービングの圧縮可能容積及びしたがってコンプライアンスは、通常、患者の肺よりはるかに大きい。呼吸回路の管の圧縮可能容積に影響を与える要素としては、チュービングのガス流に対する抵抗を最小化すること、及び管をベッド空間内で患者を管理するのに十分に長くできることが含まれる。これは、患者の肺が非常に硬化し、低コンプライアンスとなるような一部の肺疾患の状態によって悪化する。加えて、長さの減少(例えば、短縮された管)による小さい圧縮可能容積は、有用性及び通気性のある呼気リムの両方と直接対立する。実際には、一般に長い管がよりよく、例えば患者の移動及び体位を自由にすることができる。実際には、一般に、呼気リムの通気性を増大させるために、呼気リムのより大きい表面積がよりよい。
【0019】
十分に小さい圧縮可能容積を保つために、呼吸回路の構成要素間でのトレードオフが可能である。吸気管の直径又は断面積を縮小できる。しかしながら、吸気管の内径を小さくすると、吸気管内の流れに対する抵抗(RTF)も増大する。吸気管の内部ボアを平滑にすると、このようなRTFの増大を補償できることがわかっており、これは、平滑なボアの場合、波形ボア又は他の種類の非平滑なボアを有する管と比較してRTFが減少するからである。平滑なボアの使用には、蒸気及び凝縮物の捕捉を減少させるという追加の利点もある。また、管の内径を小さくすることによるRTFの増大を平滑なボアの使用によるRTFの減少が上回る場合、呼吸回路内のRTFは、正味で減少するか、又は少なくとも吸気管内のRTFは、正味で減少することもわかっている。吸気管の平滑なボアは、RTFを低下させ、それによって通常RTFを増大させる吸気管の直径縮小が可能となり、ボアの平滑さと直径の縮小とのバランスをとることができる。本明細書に記載されているように、直径又は断面積の縮小により、圧縮可能容積を小さくすることができる。吸気管の圧縮可能容積をこのように小さくすることにより、例えば呼気管の直径又は断面積の増大による呼気管の圧縮可能容積の増大を相殺できる。呼気管の直径又は断面積を大きくすると、呼気管の表面積がより大きくなり、それによって呼気管の蒸気透過性が増大する。
【0020】
呼吸回路の構成要素の圧縮可能容積に関する発明的実現の特定の特徴、態様及び利点は、以下の1つ又は複数の組合せを特色とする:吸気管の内径の縮小、吸気管の平滑なボア、吸気管の平滑なボアの圧縮可能容積の縮小、呼気管の圧縮可能容積の増大、呼気管の直径の増大、呼気管の表面積の増大、及び/又は呼気管の蒸気透過性の増大。本開示の特定の特徴、態様及び利点は、平滑なボアの吸気管によるRTFのこのような正味の減少により、回路全体にとっての全体的な圧縮可能容積、全体的なRTF、及び/又は全体的な圧力低下を変化させずに、回路の他の構成要素を改変できるという発明的実現を反映する。平滑なボアの吸気管の使用により、本来であれば回路内のRTFを増大させることになるより長い波形呼気管の使用を可能にできる。呼気管の長さを長くすると、管が呼気ガスから蒸気を取り除く能力が向上し、これは、少なくとも部分的に滞留時間が長くなることによる。呼気管の直径を大きくすることにより、管が呼気ガスから蒸気を取り除く能力を向上させることができ、これは、蒸気が透過する壁の表面積が大きくなるからである。平滑なボアの吸気管を使用することによって全体としての回路のRTFが低下した場合、呼気管を長くすることによってRTFが増大しても、回路全体におけるRTFの正味の増大、圧縮可能容積の正味の増大、及び/又は対応する圧力低下が生じないことがあり得る。例えば、設計に基づいて、吸気管の長さの増大及び平滑なボアの吸気管の直径の縮小は、RTFに関して正味で中立であり得る。
【0021】
呼吸回路内での波形の又は同様に平滑でない壁の管の代わりの平滑なボアの吸気管の使用は、呼吸回路での、RTFを減少させることになるより広い(より大きい断面積又は直径の)呼気管の使用と組み合わされ得る。RTFにおけるトレードオフはないことがあり得、この場合、それは、何れの管においても減少する。平滑なボアは、波形ボア又は他の種類の非平滑なボアを有する管と比較してRTFを減少させる。しかしながら、吸気管内のRTFの減少は、RTFを増大させる直径又は断面積の縮小により相殺され得る。断面積又は直径がより大きい呼気管もRTFを減少させる。代わりに、吸気管及び呼気管の直径又は断面積の変化による圧縮可能容積のトレードオフを行うことができ、これは、吸気管で減少するが、呼気管で増大する。より小径の吸気管は、より小さい圧縮可能容積を有する。より大径の呼気管は、より大きい圧縮可能容積を有する。
【0022】
呼吸回路は、吸気ガスを患者に搬送するための吸気リムを含むことができる。吸気リムは、らせん状に巻かれて、長さ方向軸を有する第一の長尺状管を少なくとも部分的に形成する中空本体と、長さ方向軸に沿って延びる第一のルーメンと、ルーメンを取り囲む中空壁とを含む第一の長尺状部材を含むことができる。吸気リムは、らせん状に巻かれて、第一の長尺状部材の隣接する巻き間に結合される第二の長尺状部材をさらに含むことができ、第二の長尺状部材は、第一の長尺状管のルーメンの内壁の少なくとも一部を形成する。呼吸回路は、患者からの呼気ガスを輸送するための呼気リムをさらに含むことができる。呼気リムは、入口と、出口と、第二のルーメンを取り囲む第二の管を含む第三の長尺状部材とを含む。第二のルーメンは、呼気ガスのバルク流を収容するように構成され、及び第二の管は、水蒸気に対して透過性であり、且つ液体の水及び呼気ガスのバルク流に対して実質的に不透過性である。
【0023】
上記の呼吸回路は、以下の特性の1つ、幾つか、又は全部並びに本開示に記載されている何れかの1つ又は複数の特性も有することができる。呼気管の壁は、水蒸気に対して透過性であり、且つ液体の水及び呼気ガスのバルク流に対して実質的に不透過性である発泡ポリマーを含むことができる。本開示の解釈において、「水蒸気に対して透過性であり、且つ液体の水及びガスのバルク流に対して実質的に不透過性である」として(又は実質的に同様の文言で)説明されるすべての物質は、本明細書では、水蒸気の分子を拡散、促通拡散、受動輸送、能動輸送、又は水蒸気分子を選択的に輸送するための他の同様のメカニズムによって通過させるが、物質の1つの主要外面から物質の他の主要外面へとリーク経路を通じて液体の水又はガスのバルク流を通過させるようなリーク経路を有さない物質と定義される。
【0024】
発泡ポリマーは、全体に分散されたセルボイドを有する中実の熱可塑性エラストマー材料を含むことができる。吸気リムの第一のルーメンは、平滑なボアを有することができる。吸気リムの第二の長尺状部材は、少なくとも1つの加熱素子を取り囲むことができる。吸気リムの第一の長尺状部材は、長さ方向の断面において、複数のバブルであって、ルーメンにおいて平坦な面を有する、複数のバブルを形成し得る。吸気リムの第二の長尺状部材は、少なくとも1つの加熱素子をさらに含むことができ、少なくとも1つの吸気加熱素子は、複数のバブルのうちのバブルと吸気中心ボアとの間に位置付けられ得る。呼気リムの第三の長尺状部材は、波形であり得る。第一の長尺状部材は、そのルーメン内に加熱素子を取り囲むことができる。呼気リムの第三の長尺状部材は、第二のルーメン内に加熱素子を取り囲むことができる。呼気リムの第三の長尺状部材は、第二の管の内壁に取り付けられた加熱素子を含むことができる。呼気リムの第三の長尺状部材は、第二の管の壁に埋め込まれた加熱素子を含むことができる。第二の管は、第二のルーメンに隣接する内面を有することができ、及び呼気リムは、内面の周囲に円周方向に配置され、且つ入口と出口との間で概して長さ方向に整列された複数の補強リブをさらに含むことができる。発泡ポリマーは、好ましくは、中実の熱可塑性エラストマー材料が水蒸気分子を選択的に輸送するが、全体に分散されたセルボイドが、液体の水又はガスのバルク流を、リーク経路を通じて通過させるリーク経路を形成しないように選択又は製造される。
【0025】
デバイスは、呼吸回路を含むことができる。呼吸回路は、ガス源からの吸気ガス流を受け取るように構成された吸気管をさらに含むことができる。吸気管は、吸気入口と、吸気出口と、吸気中心ボアを取り囲む壁とを含み、吸気管の内壁は、平滑である。呼吸回路は、患者からの呼気ガス流を受け取るように構成された呼気管をさらに含む。呼気管は、呼気入口と、呼気出口と、呼気中心ボアを取り囲む壁とを含む。呼気管の内壁は、波形であり、及び呼気管の壁は、水蒸気に対して透過性であり、且つそれ通って流れる液体及び気体に対して実質的に不透過性である。
【0026】
上記のデバイスは、以下の特性の1つ、幾つか、又は全部並びに本開示に記載されている何れかの1つ又は複数の特性も有することができる。呼気管の壁は、水蒸気に対して透過性であり、且つ液体の水及び呼気ガスのバルク流に対して実質的に不透過性である発泡ポリマーを含むことができる。吸気管は、その中心ボア内に加熱素子を取り囲むことができる。吸気管は、その壁に取り付けられた加熱素子を含むことができる。吸気管は、その壁に埋め込まれた加熱素子を含むことができる。呼気管は、その中心ボア内に加熱素子を含むことができる。呼気管は、その内壁に取り付けられた加熱素子を含むことができる。呼気管は、その内壁内に埋め込まれた加熱素子を含むことができる。吸気管は、長さ方向の断面において、複数のバブルであって、ルーメンにおいて平坦な面を有する、複数のバブルを含むことができる。吸気管は、少なくとも1つの加熱素子を含むことができ、及び少なくとも1つの吸気加熱素子は、複数のバブルのうちのバブルと吸気中心ボアとの間に位置付けられ得る。
【0027】
さらに、呼気管は、内面の周囲に円周方向に配置され、且つ入口と出口との間に概して長さ方向に整列された複数の補強リブを含むことができる。呼吸回路は、患者に送達される吸気ガス流を加湿するように構成された加湿器をさらに含むことができる。加湿器は、液体の体積を貯蔵するように構成され、且つ吸気ガス流と流体連通するように構成された加湿チャンバと、吸気ガス流が蒸気によって加湿されるように、加湿チャンバ内の液体の体積を加熱して蒸気を生成するように構成されたヒータとを含むことができる。
【0028】
呼吸器は、加湿器と、吸気管と、呼気管とを含むことができる。加湿器は、患者への吸気ガス流を加湿するように構成される。吸気管は、加湿器からの吸気ガス流を受け取るように構成される。吸気管は、吸気入口と、吸気出口と、吸気中心ボアを取り囲む壁とを含み、吸気管の内壁は、平滑である。呼気管は、患者からの呼気ガス流を受け取るように構成される。呼気管は、呼気入口と、呼気出口と、呼気中心ボアを取り囲む壁とを含み、呼気中心ボアは、波形であり、呼気管の壁は、水蒸気に対して透過性であり、且つそれ通って流れる液体及び呼気ガスのバルク流に対して実質的に不透過性である。
【0029】
上記の呼吸器は、以下の特性の1つ、幾つか、又は全部並びに本開示に記載されている何れかの1つ又は複数の特性も有することができる。吸気管は、その中心ボア内に少なくとも1つの加熱素子を含むことができる。吸気管は、その内壁に取り付けられた少なくとも1つの加熱素子を含むことができる。吸気管は、その壁内に取り囲まれた少なくとも1つの加熱素子を含むことができる。呼気管は、呼気中心ボア内に少なくとも1つの加熱素子を含むことができる。呼気管は、その内壁に取り付けられた少なくとも1つの加熱素子を含むことができる。呼気管は、その内壁内に埋め込まれた少なくとも1つの加熱素子を含むことができる。呼気管は、長さ方向の断面において、複数のバブルであって、吸気中心ボアにおいて平坦な面を有する、複数のバブルを形成するらせん状に巻かれた部材を含むことができる。吸気管は、少なくとも1つの加熱素子を取り囲むことができ、及び少なくとも1つの吸気加熱素子は、複数のバブルのうちのバブルと吸気中心ボアとの間に位置付けられ得る。呼気管の壁は、発泡ポリマーを含むことができる。
【0030】
呼吸器は、加湿器と、吸気管と、呼気管と、制御システムとを含むことができる。加湿器は、患者に送達される吸気ガス流を加湿するように構成される。加湿器は、加湿チャンバとヒータを含む。加湿チャンバは、液体の体積を貯蔵するように構成され、且つ吸気ガス流と流体連通するように構成される。ヒータは、吸気ガス流が蒸気によって加湿されるように、加湿チャンバ内の液体の体積を加熱して蒸気を生成するように構成される。吸気管は、加湿器からの加湿吸気ガス流を受け取るように構成される。吸気管は、吸気中心ボアを取り囲む壁を含み、及び吸気管の中心ボアは、平滑である。吸気管は、長さ方向の断面において、複数のバブルをであって、吸気中心ボアにおいて平坦な面を有する、複数のバブルを形成するらせん状に巻かれた第一の長尺状部材をさらに含む。バブルは、吸気中心ボアを断熱するように構成される。吸気管は、第一の長尺状部材の隣接する巻き間に結合されるらせん状に巻かれた第二の長尺状部材をさらに含む。第二の長尺状部材は、第一の長尺状管のルーメンの少なくとも一部を形成し、且つ第二の長尺状部材内に埋め込まれた少なくとも1つの吸気加熱素子を含む。呼気管は、患者からの呼気ガス流を受け取るように構成される。呼気管は、呼気中心ボアを取り囲む導管を含み、呼気中心ボアは、波形であり、導管は、水蒸気に対して透過性であり、且つそれを通る液体の流れに対して実質的に不透過性である。呼気管は、呼気中心ボア内に少なくとも1つの呼気加熱素子をさらに含む。制御システムは、加湿器のヒータに電力を送達するように構成され得る。制御システムは、少なくとも1つの吸気加熱素子に電力を送達するように構成され得る。制御システムは、少なくとも1つの呼気加熱素子に電力を送達するように構成され得る。制御システムは、加湿器のヒータ及び少なくとも1つの吸気加熱素子に電力を送達するように構成され得る。制御システムは、加湿器のヒータ及び少なくとも1つの呼気加熱素子に電力を送達するように構成され得る。制御システムは、少なくとも1つの吸気加熱素子及び少なくとも1つの呼気加熱素子に電力を送達するように構成され得る。制御システムは、以下:加湿器のヒータ、少なくとも1つの吸気加熱素子、及び少なくとも1つの呼気加熱素子の2つ以上に電力を送達するように構成される。制御システムは、加湿器のヒータ、少なくとも1つの吸気加熱素子、及び少なくとも1つの呼気加熱素子に電力を送達するように構成される。
【0031】
上記の呼吸器は、以下の特性の1つ、幾つか、又は全部並びに本開示に記載されている何れかの1つ又は複数の特性も有することができる。呼気管の壁は、水蒸気に対して透過性であり、且つ液体の水及び呼気ガスのバルク流に対して実質的に不透過性である発泡ポリマーを含むことができる。発泡ポリマーは、全体に分散されたセルボイドを有する中実の熱可塑性エラストマー材料を含むことができる。少なくとも1つの吸気加熱素子は、複数のバブルのうちのバブルと吸気中心ボアとの間にあり得る。呼吸器は、吸気管と呼気管との間に患者インタフェースアセンブリをさらに含むことができる。制御システムによって送達される電力は、加湿器による増大した加湿を提供するように計算され得る。制御システムによって送達される電力は、少なくとも1つの呼気加熱素子による制御された凝結管理を提供するように計算され得る。制御システムによって送達される電力は、少なくとも1つの吸気加熱素子による制御された凝結管理を提供するように計算され得る。制御システムによって送達される電力は、加湿器による増大した加湿と、少なくとも1つの呼気加熱素子及び少なくとも1つの吸気加熱素子による制御された凝結管理とを提供するように計算され得る。呼吸器は、吸気ガス流を供給し、且つ呼気ガス流を受け取るように構成されたベンチレータをさらに含むことができる。ベンチレータは、パルス状の吸気ガス流を加湿器に供給するように構成され得る。ベンチレータは、一定の吸気ガス流を加湿器に供給するように構成され得る。ベンチレータは、ガスのバイアス流を供給するように構成され得る。
【0032】
呼吸器は、加湿器と、吸気管と、呼気管とを含むことができる。加湿器は、患者への吸気ガス流を加湿するように構成される。吸気管は、ガス源からの吸気ガス流を受け取るように構成される。吸気管は、吸気入口と、吸気出口と、吸気中心ボアを取り囲む壁とを含み、吸気管の内壁は、平滑である。呼気管は、患者からの呼気ガス流を受け取るように構成される。呼気管は、呼気入口と、呼気出口と、呼気中心ボアを取り囲む壁とを含む。呼気管の内壁は、波形であり、呼気管の壁は、水蒸気に対して透過性であり、且つそれ通って流れる液体及びガスに対して実質的に不透過性である。呼気管の壁は、水蒸気に対して透過性であり、且つ液体の水及びと呼気ガスのバルク流に対して実質的に不透過性である発泡ポリマーを含むことができる。吸気管は、その中心ボア内に少なくとも1つの加熱素子を含むことができる。呼吸器は、以下の特性の1つ、幾つか、又は全部並びに本開示に記載されている何れかの1つ又は複数の特性も有することができる。吸気管は、その内壁に取り付けられた少なくとも1つの加熱素子を含むことができる。吸気管は、その壁内に取り囲まれた少なくとも1つの加熱素子を含むことができる。吸気リムの第一の長尺状部材は、長さ方向の断面において、複数のバブルであって、ルーメンにおいて平坦な面を有する、複数のバブルを形成できる。吸気管は、少なくとも1つの加熱素子を取り囲むことができ、及び少なくとも1つの吸気加熱素子は、複数のバブルのうちのバブルと吸気中心ボアとの間にあり得る。吸気管は、吸気中心ボア内に少なくとも1つの加熱素子を含むことができる。呼気管は、その内壁に取り付けられた少なくとも1つの加熱素子を含むことができる。呼気管は、その内壁内に埋め込まれた少なくとも1つの加熱素子を含むことができる。呼気管は、内面の周囲に円周方向に配置され、且つ入口と出口との間に概して長さ方向に整列された複数の補強リブを含むことができる。呼吸器は、加湿器のヒータ及び少なくとも1つの加湿素子に電力を送達するように構成された制御システムをさらに含むことができる。
【0033】
ここで、本開示の特定の特徴、態様及び利点を、図面を参照しながら説明する。図面及びそれに関連する説明は、本開示の特定の特徴、態様及び利点を例示するために提供されており、本開示の範囲を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】1つ又は複数の医療用管を組み込んだ呼吸回路の概略図である。
図1A】1つ又は複数の医療用管を組み込んだ呼吸回路の概略図である。
図1B】呼吸回路のコンプライアンスが1回換気量のエラーに与える影響を実証する3つのグラフを示す。
図2A】複合管の一部の側面図である。
図2B図2Aの複合管の長さ方向の断面図である。
図3A】蒸気透過性発泡ポリマー材料を組み込んだ管の一部の側面図である。
図3B図3Aの管の断面図である。
図4A】一体の補強リブを組み込んだ管の一部の正面斜視図であり、管は、部分的に波形である。
図4B図4Aの管の一部の正面斜視図であり、管は、全体が波形である。
図5A】リブを組み込んだ管の一部の正面斜視図である。
図5B図5Aの管の正面斜視図である。
図6】呼気管の一部の概略図である。
図7】呼気管の一部の概略図である。
図8】加湿器と、吸気管と、呼気管とを含む呼吸回路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
1つ又は複数の医療用管を含む呼吸回路
本開示をより詳細に理解するために、まず呼吸回路100を示す図1を参照する。このような呼吸回路100は、呼吸加湿回路であり得る。呼吸回路100は、1つ又は複数の医療用管を含む。呼吸回路100は、吸気管103と呼気管117とを含むことができる。
【0036】
本明細書で使用される限り、医療用管は、広い用語であり、当業界者にとってのその通常の慣例的な意味が付与されるものとし(すなわち、これは、専用又は特殊な意味に限定されない)、ルーメンを画定するか、通路を含む円筒形及び非円筒形の長尺形状、例えば医療処置で使用されるように構成され、及び他にそのような使用に関する適用可能な標準に適合する、中空の長尺状の本体を含み、これらに限定されない。吸気管は、患者の呼吸ガスを送達するように構成された医療用管である。呼気管は、患者から呼気ガスを排出するように構成された医療用管である。
【0037】
ガスは、図1の回路100において輸送できる。周囲ガスは、ガス源105から加湿器107に流れる。加湿器107は、ガスを加湿できる。ガス源105は、ベンチレータ、ブロワ若しくはファン、圧縮ガスを収容するタンク、医療施設内の壁埋め込み供給口、又は他のあらゆる適当な呼吸ガス源であり得る。
【0038】
加湿器107は、ポート111を介して吸気管103の入口109(加湿ガスを受け取るための端)に接続され、それによって加湿ガスを吸気管103に供給する。ガスは、吸気管103を通り、吸気管103の出口113(加湿ガスを排出する端)へと、さらに出口113に接続された患者インタフェース115を通じて患者101へと流れる。呼気管117は、患者インタフェース115に接続される。呼気管117は、吐き出された加湿ガスを患者インタフェース115からガス源105又は周囲大気へと戻す。本明細書で使用される限り、患者インタフェースは、広い意味を有し、当業者にとってのその通常の慣例的な意味が付与され、患者インタフェースはまた、フルフェイスマスク、鼻マスク、口マスク、口鼻マスク、鼻枕マスク、鼻カニューレ、鼻プロング、ラリンジアルマスク、又は医療回路と患者の気道との間の他のあらゆる適当なカップリングの任意の1つ以上を含み、これらに限定されない。
【0039】
ガスは、ベント119を通ってガス源105に入ることができる。ブロワ又はファン121は、空気又は他のガスをベント119から引き込むことにより、ガスがガス源105内に流れるようにすることができる。ブロワ又はファン121は、速度可変ブロワ又はファンであり得る。電子コントローラ123は、ブロワ又はファンの速度を制御できる。特に、電子コントローラ123の機能は、電子マスタコントローラ125によって制御できる。機能は、マスタコントローラ125からの入力及びダイアル、又は他の適当な入力デバイス127を介した圧力又はブロワ若しくはファン速度の使用者設定による所定の必要な値(プリセット値)に応答して制御できる。
【0040】
加湿器107は、加湿チャンバ129を含む。加湿チャンバ129は、水130又は他の適当な加湿液の体積を収容するように構成され得る。加湿チャンバ129は、加湿器107から取り外すことができる。取り外せることにより、加湿チャンバ129の殺菌又は使用後の廃棄がより容易となる。加湿器107の加湿チャンバ129の部分は、一体構成であり得、又は相互に結合して加湿チャンバ129を画定する複数の構成要素から形成することもできる。加湿チャンバ129の本体は、非導電性ガラス又はプラスチック材料から形成できる。加湿チャンバ129は、導電性構成要素を含むこともできる。例えば、加湿チャンバ129は、加湿チャンバ129が加湿器107に取り付けられたときに加湿器107上のヒータプレート131と接触するか、又はそれに関連付けられるように構成された熱伝導性の高いベース(アルミニウムベース)を含むことができる。
【0041】
加湿器107は、電子制御機能を含むことができる。加湿器107は、電子、アナログ、又はデジタルマスタコントローラ125を含むことができる。マスタコントローラ125は、関連するメモリ内に保存されたコンピュータソフトウェアコマンドを実行するマイクロプロセッサベースのコントローラであり得る。使用者入力デバイス133を介した使用者設定による湿度又は温度の値の入力及び他の入力に応答して、マスタコントローラ125は、いつ(又はどのレベルまで)ヒータプレート131にエネルギーを供給して加湿チャンバ129内の水130の体積を加熱するかを決定する。
【0042】
温度プローブ135は、患者インタフェース115の付近で吸気管103に接続でき、又は温度プローブ135は、患者インタフェース115に接続できる。温度プローブ135は、吸気管103内に内蔵させることができる。温度プローブ135は、患者インタフェース115の付近の又はその温度を検出する。温度を反映する信号は、温度プローブ135によって電子、アナログ、又はデジタルマスタコントローラ125に供給できる。加熱素子(図示せず)は、患者インタフェース115及び/又は吸気管103の温度を調節して、吸気管103及び/又は患者インタフェース115の温度を飽和温度より高くなるように上昇させ、それによって不要な凝結の機会を減らすために使用できる。
【0043】
図1において、吐き出された加湿ガスは、患者インタフェース115から呼気管117を介してガス源105に戻される。呼気管117は、蒸気透過性材料を含むことができ、これについては後に詳細に説明する。蒸気透過性呼気管は、波形であり得る。
【0044】
呼気管117は、吸気管103に関して上述したように、温度プローブ及び/又は加熱素子を有し、凝結がガス源105に到達する機会を減らすことができる。呼気管117は、呼気ガスをガス源105に戻す必要はない。吐き出された加湿ガスは、周囲環境又は他の補助的機器、例えばエアスクラバ/フィルタ(図示せず)等に直接流れることができる。
【0045】
図1において、吸気管103は、平滑なボアを有する導管を包含するか又は含む。平滑なボアという用語には、当業者にとってのその通常の慣例的な意味が付与され、非波形のボア、ルーメン、又は通路を含み、これらに限定されない。「平滑なボア」という用語は、その内面が、管内のガス流に大きく影響を与えるような大きい内側の波形、環状リブ、突起又は穴を含まない管を説明するために使用され得る。「平滑なボア」という用語はまた、平滑なボアによって画定される通路又はルーメンを通る概して層状の流れを妨害するような、繰返しの内面特徴物を有さない管を説明するために使用され得る。波形という用語には、当業者にとってのその通常の慣例的な意味が付与され、隆起又は溝のある表面を有することを含み、これに限定されない。有利には、平滑なボアにより、導管は、波形ボアを有する同等の寸法の導管より低いRTFを有することになる。平滑なボアは、流れに対する抵抗を低くし、それによってボア(すなわち直径又は断面積)を縮小でき、その結果、同等の流れに対する抵抗を有する波形の管と比較して圧縮可能容積が小さくなる。吸気導管は、複合的導管であり得る。複合的導管は、一般に、相互に結合された導管を画定する2つ以上の個別の部分、又はより具体的には2つ以上の構成要素を含む導管と定義され得る。複合的導管は、らせん状に巻くことができる。複合的導管は、2つ以上の構成要素がらせん状に撚り合わせられるか、又はらせん状態になるように横に並べて連結されるような方法でらせん状に巻くことができる。
【0046】
呼気管117は、その少なくとも一部分が蒸気透過性を有する導管を包含するか又は含む。蒸気透過性により、湿気の除去が容易になる。呼気管117の少なくとも蒸気透過性部分は、波形であり得る。波形は、管の内側に設けることができる。波形により、管の内表面積が大きくなる。蒸気透過性材料を通じて拡散できる蒸気の量は、材料のうち、蒸気と直接接触する表面積と相関する。波形は、呼気管内のガスの乱流も増大させる。乱流が増大することは、ガスがよりよく混合されることを意味し、それにより、水蒸気は、呼気管117の外壁へと移動する。乱流が増大すると、呼気管内の波形内での局所的滞留を増やすことができ、これは、蒸気透過性の属性と合わされた場合に湿気除去をさらに改善させる。局所的な滞留時間が長くなると、各波形の「ポケット」内で渦状になるガスの温度が、同等の大きさの平滑なボアの管のそれと比較して低温になり、それにより、これらのガスの相対湿度は、同等の大きさの平滑なボアの管のそれと比較して高くなる。相対湿度の上昇により、呼気管117の壁を通じた蒸気圧勾配は、同等の大きさの平滑なボアの管のそれと比較して高くなり、それは、したがって波形呼気管の壁を通る蒸気の拡散を同等の大きさの平滑なボアの管のそれと比較して増大させる。
【0047】
蒸気透過性の波形導管は、水蒸気に対して透過性であり、且つ液体の水及びガスのバルク流に対して実質的に不透過性である発泡ポリマーから少なくとも部分的に形成され得る。呼気管117は、呼気管117内に空間を画定する壁を含むことができる。壁の少なくとも一部は、水蒸気に対して透過性であり、且つ液体の水及びガスのバルク流に対して実質的に不透過性であるように構成された発泡材料から形成できる。
【0048】
蒸気透過性呼気管117は、非発泡性材料から形成できる。非発泡性材料は、らせん巻きにされた蒸気透過性テープを含むことができる。呼気管117の波形は、非発泡性材料を使用いて実現できる。非発泡性材料は、直径の異なるビードを、波形内面を形成するように交互のパターンに配置したものを含むことができる。
【0049】
吸気管103は、平滑なボアの導管を含む。平滑なボアの導管は、加熱して、断熱することにより、凝結物の生成を最小化し、湿気輸送を最大化することができる。吸気管内の凝結物形成を減らすことにより、加湿ガス内でより多くの蒸気が患者に送達されるようにすることができる。幾つかの要素が吸気管103内の凝結物生成に影響を与え、これには内部ボアの直径、内部ボアの平滑さの程度、管の断熱レベル、管103に関連する加熱素子(ワイヤ及び素子等)の存在、及び管103内の加熱素子の位置(加熱素子が管103の内側ボア内にあるか、又は管103の壁内にあるか)が含まれる。具体的には、吸気管103の内側ボアの直径を小さくすると、ガスが吸気管103内を移動するときのガスの速度が速くなる。ボアの平滑さを大きくすると、乱流が減少し、ルーメンの内壁を横切ってより放物面状の波面が生成される。したがって、内側ボアの直径を小さくし、内側ボアを平滑にすることにより、管の中心付近にあるより高速のガスが、管の壁付近にあるより低速のガスに伝える熱が少なくなる。平滑なボアの管は、蒸気が捕捉されるか又は凝結物がたまり得る、波形管にあるようなポケットを提供しない。したがって、ガスにより運ばれる蒸気は、管から排出され、したがって患者へと送達されやすくなる。
【0050】
管の断熱の程度を高めると、吸気管103の壁を通じた熱損失が減り、それによって凝結形成が最小化されて湿気の送達が最大化される。吸気管103の断熱をさらに増大させることにより、加熱素子が標的温度及び湿度を保持するために動作する程度が減り、呼吸回路100がより効率的にもなり、それは、断熱された管が、管を通って移動するガスの温度及び絶対湿度をよりよく保てるからである。
【0051】
吸気管103に加熱素子を追加しても、加湿送達は最大化し、凝結が減る。吸気管103の壁内に1つ又は複数の加熱素子を位置付けることは、加湿を最大化し、凝結物形成を最小化し、吸気管103、呼吸回路100、又は加湿システムの効率に寄与する。加熱素子は、吸気管103の壁内に位置付けられた場合、壁を加熱し、ガスを直接加熱しない。壁を加熱すると、壁付近のガスの相対湿度が低下する(ガスを加熱すると温度が上昇し、それが相対湿度を下げる)。加熱素子を吸気管103の断熱用「バブル」(以下に定義)の内壁のルーメン側に位置付けることにより(以下により詳細に説明する)、吸気管103の壁を通じて外に向かう熱損失をさらに減らすことができ、それは、したがって凝結物の生成を最小化しながら加湿を最大化する。本明細書で使用される限り、「バブル」という用語は、例えば、図2Bに示されているように、第一の長尺状部材203の長尺状の巻き付け又は巻きから形成される中空の本体の、巻き付け又は巻きを通る横方向の断面における断面形状を指す。本明細書で使用される限り、「バブル」への言及のすべては、断面においてその中に中空の空間を有する、壁によって画定される形状を有する長尺状の中空本体を意味する。このような形状は、図2Bに関して、楕円又は「D」字形状を含むことができる。このような形状は、「O」字形状及び他の対称及び非対称の規則的及び不規則的形状を含むことができる。
【0052】
呼気管117は、蒸気除去を最大化しながら凝結物形成を最小化し、波形部での局所的滞留時間を長くするために波形導管を含むことができる。呼気管117は、蒸気除去を最大化するために蒸気透過性導管を含むことができる。呼気管117は、蒸気除去を最大化しながら凝結物形成を最小化するために、加熱される導管を含むことができる。呼気管117は、蒸気除去を最大化しながら凝結物形成を最小化し、波形部内の局所的滞留時間を長くするために波形の、蒸気透過性の、及び/又は加熱された導管を含むことができる。呼気管117における凝結物形成を減少させることにより、より多くの蒸気を呼気管117の壁を通じて拡散させることができる。加熱素子の存在により、ガスの相対湿度を100%未満に保つ(すなわちガス温度を露点飽和温度より高く保つ)ことができる。加熱素子を呼気管117の壁の付近又はその中に位置付けることにより、呼気管117の壁の付近のガスが加熱される。呼気管117の壁の付近のガス温度を露点より高く保つことにより、凝結物形成が回避又は限定される。吸気管103及び呼気管117は、本明細書中の他の箇所にはるかにより詳細に説明されている。
【0053】
再び図1を参照すると、ガス源105は,典型的に、1回の呼吸につき設定された体積のガスを患者101に送達するように意図される。この設定された体積は、1回換気量と呼ぶことができる。肺への損傷の可能性を低減させ、十分な喚気の可能性を増大させるために、患者101は,正しいガス体積を受け取ることが望ましい。ベンチレータ等のガス源105が患者のために呼吸を起こさせる際、ガス源105は,患者の肺と呼吸回路100との両方を満たさなければならず、回路は、フィルタと、ベンチレータから加湿器までの供給管と、加湿チャンバと、吸気管と、呼気管と、図1に関して図示又は説明された他のあらゆる構成要素とを含むことができる。したがって、ガス源105は、呼吸回路100を満たすために使用されるガスを推測するか又は他に考慮して、これを補償し、患者にガス体積を正確に送達する可能性を高めなければならない。
【0054】
ガス源105は、呼吸回路100の空気圧コンプライアンスの試験を行うことができる。この試験では、ガス源105は、特定の圧力を作るために必要な体積を特定することを試みる。空気圧コンプライアンスは、少なくとも圧縮可能容積に依存する。呼吸回路100の圧縮可能容積が小さいほど、伸展性が一定の場合の呼吸回路100の空気圧コンプライアンスは低い。患者の肺コンプライアンスに関する呼吸回路の空気圧コンプライアンスが低いほど、送達される1回換気量のエラーの可能性が低くなる。呼吸回路の空気圧コンプライアンスの測定が少量だけ誤っており、呼吸回路の空気圧コンプライアンスが患者の肺コンプライアンスと比較して大きい場合、患者に送達される1回換気量におけるパーセンテージエラーは、非常に大きくなる。例えば、呼吸回路の空気圧コンプライアンスの測定が5%誤っており、呼吸回路の空気圧コンプライアンスが患者の肺コンプライアンスと比較して大きい場合、患者に送達される1回換気量のおけるパーセンテージエラーは、5%よりはるかに大きい可能性がある。
【0055】
図1Bは、3つのグラフを示す。図1Bのグラフは、呼吸回路の空気圧コンプライアンスのガス源での測定に導入された理論的エラーが10%の場合の、送達された1回換気量中のエラーを示す。3つのグラフは、3種類の仕様の回路コンプライアンス(例えば、新生児用、成人用、小児用)のものである。新生児用回路の場合、呼吸回路のコンプライアンス(Cbs)は、0.9ml.cmH20-1と等しい。成人用回路の場合、呼吸回路のコンプライアンス(Cbs)は、2.1ml.cmH20-1と等しい。小児用回路の場合、呼吸回路のコンプライアンス(Cbs)は、1.3ml.cmH20-1と等しい。各グラフは、呼吸系コンプライアンスが低い患者のために送達された1回換気量のエラーを示す。
【0056】
エラーは、患者の体重の減少と共に劇的に増大することがわかった。患者の体重は、所期の1回換気量に相関する。患者の体重が減少すると、所期の1回換気量は減少する。図1Bのグラフを比較すると、ある1回換気量について、呼吸回路のコンプライアンスがより高いとエラーがより大きくなることを示す。呼吸回路の全体的な圧縮可能容積とコンプライアンスを、治療を受ける予定の患者の肺の特性に関してできるだけ低く保つことが望ましいことがわかった。
【0057】
チュービングのガス流に対する抵抗を最小化すること、及び管を、ベッド空間内で患者を管理するのに十分に長くできること等の実践上の理由により、呼吸回路チュービングの圧縮可能容積及びしたがってコンプライアンスは、通常、患者の肺よりはるかに大きい。この差は、患者の肺が非常に硬化し、低コンプライアンスとなるような一部の肺疾患の状態によって増大する。短い管の結果であり得る小さい圧縮可能容積は、有用性の観点から不利である可能性がある。より長い管と、より大きい表面積から恩恵を受ける通気性のある呼気リムとは、圧縮可能容積の観点から不利となる可能性がある。
【0058】
圧縮可能容積の妥当性は、十分に小さい圧縮可能容積を保持することにおいて、呼吸回路の構成要素間でトレードオフができることである。吸気管103の平滑なボアは、流れに対する抵抗を下げ、それによって吸気管103の直径を小さくし、したがって圧縮可能容積を縮小できる。呼吸管103の圧縮可能容積をこのように小さくすると、直径を大きくことによって呼気管117の圧縮可能容積を大きくすることができる。呼気管117の直径を大きくすると、呼気管117の表面積がより大きくなり、それによって管117の蒸気透過性が増大する。
【0059】
より小径の平滑なボアの導管を有する吸気管103を、波形の導管を有する呼気管117と共に取り入れることにより、全体的なシステムの圧縮可能容積を保持しながら、呼気管117を、他に可能であるものより直径を大きく及び/又は長くできることを認識した。加えて又は代わりに、より小径の平滑なボアの吸気管103とより大径の波形の呼気管117との組合せは、全体的な圧力低下を保持できる。加えて又は代わりに、より小径の平滑なボアの吸気管103とより大径の波形呼気管117との組合せは、呼吸回路100の流れに対する抵抗(RTF)を所望のレベルに保持できる。通常、導管の長さを長くすると、望ましくない点として、導管の圧縮可能容積及びしたがって全体的な呼吸回路の圧縮可能容積が増大する。通常、導管の長さを長くすると、望ましくない点として、導管のRTF及びしたがって全体的な呼吸回路のRTFが増大する。その反面、導管が蒸気透過性であると、長さを増大させると、有利には、導管が呼気ガスから蒸気を除去する能力が向上する。より小径の平滑なボアを有する吸気管103と波形で蒸気透過性のより大径の導管を有する呼気管117との組合せにより、全体的なシステムの圧縮可能容積、圧力低下、及び/又はRTFを増大させることなく、呼気管117が呼吸回路から水蒸気を除去する能力が増大することがわかった。
【0060】
平滑なボアの導管を有する吸気管103を、波形導管を有する呼気管117と共に取り入れることにより、加湿器107は、湿度性能を向上させ、患者に治療上の利益を提供する一方、ガス源105への液体による損傷又は患者への凝結物の逆流のリスクを高めずに、完全に飽和したガスに近付けることをさらに認識した。
【0061】
平滑なボアの、らせん状に巻かれた導管を有する吸気管103は、波形の蒸気透過性導管を有する呼気管117と対にすることができる。前述のように、吸気管103の平滑なボアは、同等の大きさの波形ボアより低いRTFを有する。それはまた、波形導管より小さい内径を有することができる。通常、内径を小さくすると圧縮可能容積が減少し、望ましくないことに吸気管のRTFが増大する。しかしながら、平滑なボアの特性は、吸気管103の平滑なボアに関連するRTFの減少は、吸気管103のより小さい内径によるRTFの増大を上回るように選択できる。より小径の吸気管103のこの選択はまた、吸気管103の圧縮可能容積を小さくする。この選択により、全体的なシステムの圧力低下又は圧縮可能容積を増大させずに、平滑なボアの吸気管103と対にされた波形の呼気管117を長くし、及び/又はより大きい直径又は断面積を有するようにし得る。呼気管117の長さを長くすると、通常、望ましくないことに管のRTF及び圧縮可能容積が増大する。しかしながら、長さを長くすることにより、蒸気透過性管が呼気ガスから蒸気を除去する能力も向上する。この構成では、平滑なボアの吸気管103と波形呼気管117とを対にすることで呼気管117の性能が向上する。ベンチレータの出口からベンチレータの入口までに存在し得る呼吸回路のシステム圧力低下は、回路内の各要素の圧力特性(RTF)により影響を受ける可能性がある。再び図1を参照すると、ベンチレータから加湿器、加湿チャンバ、インタフェース管、及びインタフェース本体までの供給管の圧力特性が一定であると仮定すると、システム圧力低下に寄与する主要な要素は、吸気管103及び呼気管117の流れに対する抵抗及び寸法(長さ及び直径)である。これらの要素の1つの任意の変化は、有利な態様として、システムの圧力低下、RTF、及び/又は圧縮可能容積の増大を回避するように他の要素とバランスをとるべきである。本明細書に記載されているように、圧縮可能容積に寄与する主な要素は、吸気管103及び呼気管117の管プロファイル、伸展性、及び寸法(長さ及び直径又は断面積)である。吸気管103の圧縮可能容積の縮小と呼気管117の圧縮可能容積の増大との間でトレードオフを行うことができる一方、呼吸回路の圧縮可能容積が保持される。本明細書に記載されているように、呼気管117の圧縮可能容積の増大は、呼気リムにおける蒸気透過性において有利である。
【0062】
吸気管103の平滑なボアは、流れに対する抵抗を(波形吸気管と比較して)減少させ、全体的なシステム圧力低下を減少させることができる。これにより、他の3つの要素(波形呼気管117の流れに対する抵抗又はそれぞれの管の寸法)の何れか又は全部を、システム圧力低下を増大させるように変更できる。吸気管103の内径は、同等の波形吸気管より小さくすることができ、これは、望ましいことに吸気管103を通って流れるガスの速度を速める。しかしながら、より小径にすると、流れに対する抵抗もある程度大きくなる。より小径にすることによるRTFの増大幅が、平滑なボアの使用に起因するRTF減少幅より十分に小さい限り、波形呼気管117の長さは、システム圧力低下を増大させずに長くすることができる。呼気管117の長さを長くすると、呼気管117の管壁の表面積が大きくなる。蒸気透過性材料を通じて拡散可能な蒸気の量は、材料の表面積と相関する。呼気管117の長さを長くすると、呼気管117の壁の表面積が増大し、また呼気管117のガスの滞留時間も長くなる。透過性材料を通じて拡散できる蒸気の量は、蒸気搬送ガスが材料と接触する時間の長さにも相関する。
【0063】
呼吸回路の圧縮可能容積(ガス流路全体の累積体積)も同様の方法でバランスをとることができる。例えば、吸気管103の寸法(断面積又は直径、長さ)の変化は、波形呼気管117の寸法(断面積又は直径、長さ)の変化と相殺できる。本明細書に記載されているように、吸気管103の直径を小さくすると、圧縮可能容積を縮小できる。圧縮可能容積をこのように小さくすると、送達される1回換気量の精度を高めることができる。本明細書に記載されているように、吸気管103の直径の縮小は、呼気管117の直径の増大及び/又は長さの増大を相殺できる。本明細書に記載されているように、呼気管117の寸法の変更は、例えば、呼気管117の蒸気透過性を増大させることにより、呼気管117の機能を促進できる。管径を変化させることは、システム圧力低下とシステム圧縮可能容積との両方に影響を与えるため、有利な態様として、何れの等式も、変更時に同時にバランスをとられるか又は選択されるべきである。吸気管103の直径を小さくすることにより、流れに対する抵抗の増大と圧縮可能容積の減少との両方が可能であり、管を通じた平均ガス速度が速まる。波形呼気管117の長さを長くすると、流れに対する抵抗が増大し、圧縮可能容積も増大する。表1は、これらの2つのシステムメトリクスに対する各種の特徴の影響をまとめる。
【0064】
【表1】
【0065】
波形呼気管117を平滑なボアの吸気管103と対にすることにより、吸気管103の性能を高めることができる。より大径の呼気管117をより小径の吸気管103と対にすることは、圧縮可能容積について正味で中立であるが、呼吸回路の機能を増大させることができる(例えば、呼気管117における蒸気拡散が増大)。この構成において、平滑なボアの吸気管103は、凝結物生成を最小化し、したがって湿気送達を最大化する。全体的な圧縮可能容積は、寸法、例えば吸気管103及び呼気管117の直径及び長さの変化により減少させることができる。幾つかの構成では、吸気管103は、断熱され、これは、加湿器107及び/又は加熱素子、例えばヒータプレート131等を、患者101に送達される湿気の生成においてより効率的にするのに役立つ。ヒータプレート131は、それほど動作する必要はなく、これは、加湿チャンバポート111において高い標的温度を生成しなくてよいからであり、これは、加熱され、断熱された吸気管103が、加湿チャンバポート111から吸気管103を通って流れるガスの絶対湿度をよりよく保持するからである。
【0066】
吸気管103の壁内にヒータワイヤを位置付けることも、ガスの相対湿度の保持における吸気管103の効率を増大させる。ヒータワイヤは、吸気管103の壁を加熱でき、吸気管103のルーメンを通って流れるガスは加熱せず、それにより吸気管103の壁の付近のガスの相対湿度が低下する。吸気管103がらせん状に巻かれた中空の本体、すなわち「バブル」管(以下により詳細に説明する)を有する複合的導管を含む場合、ヒータワイヤは、断熱用バブルの下(内壁のルーメン側)にあり、それによって吸気管103の壁を通って外に向かう熱損失が減少する。
【0067】
平滑なボアの吸気管103は、層状のガス流を促進し、これは、吸気管103のルーメンを横切るより放物面状の波面を生成し、ルーメンの中心により近いガスは、吸気管103の壁により近いガスに関してより速い速度を有する。この構成において、より高い速度のガスは、入口109から出口113へと移動して隣接するより低い速度のガスに熱を伝える時間がより短い。ヒータワイヤにより生成される熱が内側方向に向かうことと共に、この配置は、ガス流により保持される熱をさらに増大させるのに役立つ。
【0068】
平滑なボアの吸気管103はまた、波形管が有するような、蒸気が捕捉されか又は凝結物がたまり得るポケットを提供しない。ガスにより運ばれる蒸気は、そのため、蒸気相のままとなり、吸気管103から出て、したがって患者101に送達されやすくなる。
【0069】
波形呼気管117は、蒸気の除去を最大化し、凝結物形成を最小化する。呼気管117は、蒸気透過性であり得、これは、呼気管117の壁を通って外部大気中へと蒸気が拡散することを促進する。幾つかの構成において、呼気管117は、蒸気透過性であり、加熱され、管に沿った加熱を制御することにより、呼気管117の壁を通って外部大気中へと蒸気が拡散することが促進される。外部大気中に輸送された蒸気は、ガス源105に送達されない。波形呼気管117は、ガス流の、呼気管117の壁に隣接する部分に乱流を生成し、これは、波形部における壁に隣接したガスの滞留時間を長くする。滞留時間が長くなると、呼気管117の壁を通って蒸気が拡散する機会が増大する。滞留時間が長くなると、各波形部の「ポケット」内で渦状になるガスの温度も低下し、それによってこれらのガスの相対湿度が高くなる。相対湿度が高くなると、呼気管117の壁を通じた蒸気圧勾配が大きくなり、それは、したがって壁を通る蒸気の拡散を増大させる。
【0070】
後述のように、呼気管117は、呼気管117のルーメンの中心の付近に巻かれたヒータワイヤを含むことができる。ヒータワイヤは、そのように位置付けられると、ガス流の乱流を増大させる一方、凝結物形成を最小化する。乱流の増大は、ガスのよりよい混合を意味し、それにより、水蒸気は、呼気管117の外壁へと移動する。波形呼気管117はまた、波形「ポケット」を提供し、これは、蒸気から凝結したあらゆる液体を収集するという利点を有する。波形部にたまった液体は、ガス源105に送達されない液体である。幾つかの構成において、ヒータワイヤは、呼気管117の壁内に位置付けることができる。呼気管117内にヒータワイヤがあることにより、呼気管内の凝結物形成も減少する。
【0071】
平滑なボアの吸気管103と波形呼気管117との組合せにより、加湿器107は、湿度性能を高めることができる。侵襲性及び非侵襲性喚気の何れにおいても、患者及びバイアス流からの寄与がある。両方において、呼気管117は、ガス源105に戻る湿気の量を減少させるように機能できる。呼気管117の機能は、ガス源105に戻される湿気の量を十分に減らすことであり得る。
【0072】
呼気管の機能により、加湿器107と吸気管103は、より多い湿気を患者101に送達可能にすることができる。呼気管117がガス源105に戻される湿気の量を十分に減らすことができない場合、加湿器107及び吸気管103がより多い湿気を患者101に送達する能力を低下させるか又は戻さなければならず、これは、余剰の湿気の一部が呼気管117を通じてガス源105へと運ばれるからである。
【0073】
図1Aは、呼吸回路100を示し、これは、本明細書に記載されている図1と同様であり得る。このような呼吸回路100は、呼吸加湿回路であり得る。呼吸回路100は、1つ又は複数の医療用管を含む。呼吸回路100は、吸気管103と呼気管117とを含むことができる。
【0074】
ガスは、図1Aの回路100において輸送できる。周囲ガスは、ガス源105から加湿器107へと流れる。加湿器107は、ガスを加湿できる。ガス源105は、ベンチレータ、ブロワ若しくはファン、圧縮ガスを収容するタンク、医療施設の壁埋め込み供給口、又は他の何れかの適当な呼吸ガス源であり得る。
【0075】
加湿器107は、吸気管103の入口109(加湿ガスを受け取るための端)にポート111を介して接続され、それによって加湿ガスを吸気管103に供給する。ガスは、吸気管103を通って吸気管103の出口(加湿ガスを排出するための端)に、その後、出口113に接続された患者インタフェース115を通じて患者101へと流れる。呼気管117は、患者インタフェース115に接続される。呼気管117は、吐き出された加湿ガスを患者インタフェース115からガス源105へと又は周囲大気中へと戻す。
【0076】
ガスは、ベント119を通ってガス源105に入ることができる。ファン121のブロワは、空気又は他のガスをベント119から引き込むことにより、ガスがガス源105内に流れるようにすることができる。ブロワ又はファン121は、速度可変ブロワ又はファンであり得る。電子コントローラ123は、ブロワ又はファンの速度を制御できる。特に、電子コントローラ123の機能は、電子マスタコントローラ125によって制御できる。機能は、マスタコントローラ125からの入力及びダイアル、又は他の適当な入力デバイス127を介した圧力又はブロワ若しくはファン速度の使用者設定による所定の必要な値(プリセット値)に応答して制御できる。
【0077】
加湿器107は、加湿チャンバ129を含む。加湿チャンバ129は、水130又は他の適当な加湿液の体積を収容するように構成され得る。加湿チャンバ129は、加湿器107から取り外すことができる。取り外せることにより、加湿チャンバ129をより容易に殺菌し、又は使用後に廃棄することができる。加湿器107の加湿チャンバ129の部分は、一体構成であり得、又は相互に結合して加湿チャンバを画定する複数の構成要素から形成することもできる。加湿チャンバ129の本体は、非導電性ガラス又はプラスチック材料から形成できる。加湿チャンバ129は、導電性構成要素を含むこともできる。例えば、加湿チャンバ129は、加湿チャンバ129が加湿器107に取り付けられたときに加湿器107上のヒータプレート131と接触するか、又はそれに関連付けられるように構成された熱伝導性の高いベース(アルミニウムベース)を含むことができる。
【0078】
加湿器107は、電子制御機能を含むことができる。加湿器107は、電子、アナログ、又はデジタルマスタコントローラ125を含むことができる。マスタコントローラ125は、関連するメモリ内に保存されたコンピュータソフトウェアコマンドを実行するマイクロプロセッサベースのコントローラであり得る。使用者入力デバイス133を介した使用者設定による湿度又は温度の値の入力及び他の入力に応答して、マスタコントローラ125は、いつ(又はどのレベルまで)ヒータプレート131にエネルギーを供給して加湿チャンバ129内の水130の体積を加熱するかを決定する。
【0079】
前述のように、患者インタフェースのために何れの適当な患者インタフェースでも使用できる。温度プローブ135は、患者インタフェース115の付近で吸気管103に接続でき、又は温度プローブ135は、患者インタフェース115に接続できる。温度プローブ135は、吸気管103内に内蔵させることができる。温度プローブ135は、患者インタフェース115の付近の又はその温度を検出する。温度を反映する信号は、温度プローブ135によって電子、アナログ、又はデジタルマスタコントローラ125に供給できる。加熱素子(図示せず)は、患者インタフェース115の温度を調節して、患者インタフェース115の温度を飽和温度より高くなるように上昇させ、それによって不要な凝結の機会を減らすために使用できる。加熱素子145は、吸気管103の温度を調節して、吸気管103の温度を飽和温度より高くなるように上昇させ、それによって不要な凝結の機会を減らすためにも使用できる。
【0080】
図1Aにおいて、吐き出された加湿ガスは、患者インタフェース115から呼気管117を介してガス源105に戻される。呼気管117は、蒸気透過性材料を含むことができ、これについては後に詳細に説明する。蒸気透過性呼気管は、波形であり得る。
【0081】
呼気管117は、吸気管103に関して上述したように、温度プローブ及び/又は加熱素子を有し、凝結がガス源105に到達する機会を減らすことができる。呼気管117は、呼気ガスをガス源105に戻す必要はない。吐き出された加湿ガスは、周囲環境又は他の補助的機器、例えばエアスクラバ/フィルタ(図示せず)等に直接流れることができる。
【0082】
図1Aにおいて、吸気管103は、平滑なボアを有する導管を包含するか又は含む。平滑なボアにより、吸気管103は、波形ボアを有する同等の寸法の導管より低いRTFを有することになる。平滑なボアは、流れに対する抵抗を低くし、それによってボア(すなわち直径又は断面積)を縮小でき、その結果、同等の流れに対する抵抗を有する波形の管と比較して圧縮可能容積が小さくなる。吸気導管は、複合的導管であり得る。複合的導管は、一般に、相互に結合された導管を画定する2つ以上の個別の部分、又はより具体的には2つ以上の構成要素を含む導管と定義され得る。複合的導管は、らせん状に巻くことができる。複合的導管は、2つ以上の構成要素がらせん状に撚り合わせられるか、又はらせん状態になるように横に並べて連結されるような方法でらせん状に巻くことができる。
【0083】
呼気管117は、その少なくとも一部分が蒸気透過性を有する導管を包含するか又は含む。蒸気透過性により、湿気の除去が容易になる。呼気管117の少なくとも蒸気透過性部分は、波形であり得る。波形は、管の内側に設けることができる。波形により、管の内表面積が大きくなる。蒸気透過性材料を通じて拡散できる蒸気の量は、材料のうち、蒸気と直接接触する表面積と相関する。波形は、呼気管内のガスの乱流も増大させる。乱流が増大することは、ガスがよりよく混合されることを意味し、それにより、水蒸気は、呼気管117の外壁へと移動する。乱流が増大すると、呼気管内の波形内での局所的滞留を増やすことができ、これは、蒸気透過性の属性と合わされた場合に湿気除去をさらに改善させる。波形部での滞留時間が長くなると、各波形の「ポケット」内で渦状になるガスの温度が同等の大きさの平滑なボアの管のそれと比較して低温になり、それにより、これらのガスの相対湿度は、同等の大きさの平滑なボアの管のそれと比較して高くなる。相対湿度の上昇により、呼気管117の壁を通じた蒸気圧勾配は、同等の大きさの平滑なボアの管のそれと比較して高くなり、それは、したがって波形呼気管の壁を通る蒸気の拡散を同等の大きさの平滑なボアの管のそれと比較して増大させる。
【0084】
蒸気透過性の波形導管は、水蒸気に対して透過性であり、且つ液体の水及びガスのバルク流に対して実質的に不透過性である発泡ポリマーから少なくとも部分的に形成され得る。呼気管117は、呼気管117内に空間を画定する壁を含むことができる。壁の少なくとも一部は、水蒸気は透過させるが、液体の水及びガスのバルク流の透過を実質的に防止するように構成された蒸気透過性の発泡材料から形成できる。
【0085】
蒸気透過性呼気管117は、非発泡性材料から形成できる。非発泡性材料は、らせん巻きにされた蒸気透過性テープを含むことができる。呼気管117の波形は、非発泡性材料を用いて実現できる。非発泡性材料は、直径の異なるビードを、波形内面を形成するように交互のパターンに配置したものを含むことができる。
【0086】
吸気管103は、平滑なボアの導管を含む。平滑なボアの導管は、加熱して、断熱することにより、凝結物の生成を最小化し、湿気輸送を最大化することができる。吸気管内の凝結物形成を減らすことにより、加湿ガス内でより多くの蒸気が患者に送達されるようにすることができる。幾つかの要素が吸気管103内の凝結物生成に影響を与え、これには内部ボアの直径、内部ボアの平滑さの程度、管の断熱レベル、管103に関連する加熱素子145(ワイヤ及び素子等)の存在、及び管103内の加熱素子の位置、すなわち加熱素子が管103の内側ボア内にあるか又は管103の壁内にあるかが含まれる。具体的には、吸気管103の内側ボアの直径を小さくすると、ガスが吸気管103内を移動するときのガスの速度が速くなる。ボアの平滑さを大きくすると、乱流が減少し、ルーメンを横切ってより放物面状の波面が生成される。したがって、内側ボアの直径を小さくし、内側ボアを平滑にすることにより、管の中心付近にあるより高速のガスが、管の壁付近にあるより低速のガスに伝える熱が少なくなる。平滑なボアの管は、蒸気が捕捉されるか又は凝結物がたまり得る、波形管にあるようなポケットを提供しない。したがって、ガスにより運ばれる蒸気は、管から排出され、したがって患者へと送達されやすくなる。
【0087】
管の断熱の程度を高めると、吸気管103の壁を通じた熱損失が減り、それによって凝結形成が最小化され、湿気の送達が最大化される。吸気管103の断熱をさらに増大させることにより、加熱素子が標的温度及び湿度を保持するために動作する程度が減り、呼吸回路100がより効率的にもなり、それは、断熱された管が、管を通って移動するガスの温度及び絶対湿度をよりよく保てるからである。
【0088】
吸気管103に加熱素子を追加しても、加湿は最大化し、凝結が減る。吸気管103の壁内に1つ又は複数の加熱素子を位置付けることは、加湿を最大化し、凝結物形成を最小化し、吸気管103、呼吸回路100、又は加湿システムの効率に寄与する。加熱素子は、吸気管103の壁内に位置付けられた場合、壁を加熱し、ガスを直接加熱しない。壁を加熱すると、壁付近のガスの相対湿度が低下する(ガスを加熱すると温度が上昇し、それが相対湿度を下げる)。加熱素子を吸気管103の断熱用「バブル」(以下に定義)の内壁のルーメン側に位置付けることにより(以下により詳細に説明する)、吸気管103の壁を通じて外に向かう熱損失をさらに減らすことができ、それは、したがって凝結物の生成を最小化しながら加湿を最大化する。
【0089】
呼気管117は、蒸気除去を最大化しながら凝結物形成を最小化し、波形部での局所的滞留時間を長くするために波形導管を含むことができる。呼気管117は、蒸気除去を最大化しながら凝結物形成を最小化するために蒸気透過性導管を含むことができる。呼気管117は、蒸気除去を最大化しながら凝結物形成を最小化し、波形部内の局所的滞留時間を長くするために波形の、蒸気透過性の、及び/又は加熱された導管を含むことができる。呼気管117における凝結物形成を減少させることにより、より多くの蒸気を呼気管117の壁を通じて拡散させることができる。加熱素子155の存在により、ガスの相対湿度を100%未満に保つ(すなわちガス温度を露点飽和温度より高く保つ)ことができる。加熱素子155を呼気管117の壁の付近又はその中に位置付けることにより、加熱素子155は、主として呼気管117の壁の付近のガスを加熱する。呼気管117の壁の付近のガス温度を露点より高く保つことにより、凝結物形成が回避又は限定される。吸気管103及び呼気管117は、本明細書中の他の箇所にはるかにより詳細に説明されている。
【0090】
より小径の平滑なボアの導管を有する吸気管103を、波形の導管を有する呼気管117と共に取り入れることにより、全体的なシステムの圧縮可能容積を保持しながら、呼気管117を、他に可能であるものより直径を大きく及び/又は長くできることを認識した。加えて又は代わりに、より小径の平滑なボアの吸気管103とより大径の波形の呼気管117との組合せは、全体的な圧力低下を保持できる。加えて又は代わりに、より小径の平滑なボアの吸気管103とより大径の波形呼気管117との組合せは、呼吸回路100の流れに対する抵抗(RTF)を所望のレベルに保持できる。通常、導管の長さを長くすると、望ましくない点として導管の圧縮可能容積及びしたがって全体的な呼吸回路の圧縮可能容積が増大する。通常、導管の長さを長くすると、望ましくない点として導管のRTF及びしたがって全体的な呼吸回路のRTFが増大する。その反面、導管が蒸気透過性であると、長さを増大させると、有利には、導管が呼気ガスから蒸気を除去する能力が向上する。より小径の平滑なボアを有する吸気管103と波形で蒸気透過性のより大径の導管を有する呼気管117との組合せにより、全体的なシステムの圧縮可能容積、圧力低下、及び/又はRTFを増大させることなく、呼気管117が呼吸回路から水蒸気を除去する能力が増大することがわかった。
【0091】
平滑なボアの導管を有する吸気管103を、波形導管を有する呼気管117と共に取り入れることにより、加湿器107は、湿度性能を向上させ、患者に治療上の利益を提供する一方、ガス源105への液体による損傷又は患者への凝結物の逆流のリスクを高めずに、完全に飽和したガスに近付けることもさらに認識した。
【0092】
平滑なボアの、らせん状に巻かれた導管を有する吸気管103は、波形の蒸気透過性導管を有する呼気管117と対にすることができる。前述のように、吸気管103の平滑なボアは、同等の大きさの波形ボアより低いRTFを有する。それはまた、波形導管より小さい内径を有することができる。通常、内径を小さくすると圧縮可能容積が減少し、望ましくないことに吸気管のRTFが増大する。しかしながら、平滑なボアの特性は、吸気管103の平滑なボアに関連するRTFの減少は、吸気管103のより小さい内径によるRTFの増大を上回るように選択できる。より小径の吸気管103のこの選択はまた、吸気管103の圧縮可能容積を小さくする。この選択により、全体的なシステムの圧力低下及び/又は圧縮可能容積を増大させずに、平滑なボアの吸気管103と対にされた波形の呼気管117を長くすることができる。呼気管117を長くすると、通常、望ましくないことに管のRTF及び圧縮可能容積が増大する。しかしながら、長さを長くすることにより、蒸気透過性管が呼気ガスから蒸気を除去する能力も向上する。この構成では、平滑なボアの吸気管103と波形呼気管117とを対にすることで呼気管117の性能が向上する。ベンチレータの出口からベンチレータの入口までに存在し得る呼吸回路のシステム圧力低下は、回路内の各要素の圧力特性(RTF)により影響を受ける可能性がある。再び図1Aを参照すると、ベンチレータから加湿器、加湿チャンバ、インタフェース管、及びインタフェース本体までの供給管の圧力特性が一定であると仮定すると、システム圧力低下に寄与する主要な要素は、呼気管103及び呼気管117の流れに対する抵抗及び寸法(長さ及び直径)である。これらの要素の1つの任意の変化は、有利な態様として、システムの圧力低下、RTF、及び/又は圧縮可能容積の増大を回避するように、他の要素とバランスをとるべきである。本明細書に記載されているように、圧縮可能容積に寄与する主な要素は、吸気管103及び呼気管117の管プロファイル、伸展性、及び寸法(長さ及び直径又は断面積)である。吸気管103の圧縮可能容積の縮小と呼気管117の圧縮可能容積の増大との間でトレードオフを行うことができる一方、呼吸回路の圧縮可能容積が保持される。本明細書に記載されているように、呼気管117の圧縮可能容積の増大は、呼気リムにおける蒸気透過性において有利である。
【0093】
吸気管103の平滑なボアは、流れに対する抵抗を(波形吸気管と比較して)減少させ、全体的なシステム圧力低下を減少させる。これにより、他の3つの要素(波形呼気管117の流れに対する抵抗又はそれぞれの管の寸法)の何れか又は全部を、システム圧力低下を増大させるように変更できる。吸気管の内径は、同等の波形吸気管より小さくすることができ、これは、望ましいことに吸気管103を通って流れるガスの速度を速める。しかしながら、より小径にすると、流れに対する抵抗もある程度大きくなる。より小径にすることによるRTFの増大幅が、平滑なボアの使用に起因するRTF減少幅より十分に小さい限り、波形呼気管117の長さは、システム圧力低下を増大させずに長くすることができる。呼気管117の長さを長くすると、呼気管117の管壁の表面積が大きくなる。蒸気透過性材料を通じて拡散可能な蒸気の量は、材料の表面積と相関する。呼気管117の長さを長くすると、呼気管117の壁の表面積が増大し、また呼気管117のガスの滞留時間も長くなる。透過性材料を通じて拡散できる蒸気の量は、蒸気搬送ガスが材料と接触する時間の長さにも相関する。
【0094】
呼吸回路の圧縮可能容積(ガス流路全体の累積体積)も同様の方法でバランスをとることができる。例えば、吸気管103の寸法(断面積又は直径、長さ)の変化は、波形呼気管117の寸法(断面積又は直径、長さ)の変化と相殺できる。本明細書に記載されているように、吸気管103の直径を小さくすると、圧縮可能容積を縮小できる。圧縮可能容積をこのように小さくすると、送達される1回換気量の精度を高めることができる。本明細書に記載されているように、吸気管103の直径の縮小は、呼気管117の直径の増大及び/又は長さの増大を相殺できる。本明細書に記載されているように、呼気管117の寸法の変更は、例えば、呼気管117の蒸気透過性を増大させることにより、呼気管117の機能を促進できる。管径を変化させることは、システム圧力低下とシステム圧縮可能容積との両方に影響を与えるため、有利な態様として、何れの等式も、変更時に同時にバランスをとられるか又は選択されるべきである。吸気管103の直径を小さくすることにより、流れに対する抵抗の増大と圧縮可能容積の減少との両方が可能であり、管を通じた平均ガス速度が速まる。波形呼気管117の長さを長くすると、流れに対する抵抗が増大し、圧縮可能容積も増大する。表1(前述)は、これら2つのシステムメトリクスに対する各種の特徴の影響をまとめる。
【0095】
波形呼気管117を平滑なボアの吸気管103と対にすることにより、吸気管103の性能を高めることができる。より大径の呼気管117をより小径の吸気管103と対にすることは、圧縮可能容積について正味で中立であるが、呼吸回路の機能を増大させることができる(例えば、呼気管117における蒸気拡散が増大)。この構成において、平滑なボアの吸気管103は、凝結物生成を最小化し、したがって、湿気送達を最大化する。全体的な圧縮可能容積は、寸法、例えば吸気管103及び呼気管117の直径及び長さの変化により減少させることができる。幾つかの構成では、吸気管103は、断熱され、これは、加湿器107及び/又は加熱素子、例えばヒータプレート131等を、患者101に送達される湿気の生成においてより効率的にするのに役立つ。ヒータプレート131は、それほど動作する必要はなく、これは、加湿チャンバポート111において高い標的温度を生成しなくてよいからであり、これは、加熱され、断熱された吸気管103が、加湿チャンバポート111から吸気管103を通って流れるガスの絶対湿度をよりよく保持するからである。
【0096】
吸気管103の壁内にヒータワイヤ145を位置付けることも、ガスの相対湿度の保持における吸気管103の効率を増大させる。ヒータワイヤは、吸気管103の壁を加熱でき、吸気管103のルーメンを通って流れるガスは加熱せず、それにより吸気管103の壁の付近のガスの相対湿度が低下する。吸気管103がらせん状に巻かれた中空の本体、すなわち「バブル」管(以下により詳細に説明する)を有する複合的導管を含む場合、ヒータワイヤ145は、断熱用バブルの下(内壁のルーメン側)にあり、それによって吸気管103の壁を通って外に向かう熱損失が減少する。
【0097】
平滑なボアの吸気管103は、層状のガス流を促進し、これは、吸気管103のルーメンを横切るより放物面状の波面を生成し、ルーメンの中心により近いガスは、吸気管103の壁により近いガスに関してより速い速度を有する。この構成において、より高い速度のガスは、入口109から出口113へと移動して隣接するより低い速度のガスに熱を伝える時間がより短い。ヒータワイヤにより生成される熱が内側方向に向かうことと共に、この配置は、ガス流により保持される熱をさらに増大させるのに役立つ。
【0098】
平滑なボアの吸気管103はまた、波形管が有するような、蒸気が捕捉されるか又は凝結物がたまり得るポケットを提供しない。ガスにより運ばれる蒸気は、そのため、蒸気相のままとなり、吸気管103から出て、したがって患者101に送達されやすくなる。
【0099】
波形呼気管117は、蒸気の除去を最大化し、凝結物形成を最小化する。呼気管117は、蒸気透過性であり得、これは、呼気管117の壁を通って外部大気中へと蒸気が拡散することを促進する。幾つかの構成において、呼気管117は、蒸気透過性であり、加熱され、管に沿った加熱を制御することにより、呼気管117の壁を通って外部大気中へと蒸気が拡散することが促進される。外部大気中に輸送された蒸気は、ガス源105に送達されない。波形呼気管117は、ガス流の、呼気管117の壁に隣接する部分に乱流を生成し、これは、波形部における壁に隣接したガスの滞留時間を長くする。滞留時間が長くなると、呼気管117の壁を通って蒸気が拡散する機会が増大する。滞留時間が長くなると、各波形部の「ポケット」内で渦状になるガスの温度も低下し、それによってこれらのガスの相対湿度が高くなる。相対湿度が高くなると、呼気管117の壁を通じた蒸気圧勾配が大きくなり、それは、したがって壁を通る蒸気の拡散を増大させる。
【0100】
後述のように、呼気管117は、呼気管117のルーメンの中心の付近に巻かれたヒータワイヤ155を含むことができる。ヒータワイヤは、そのように位置付けられると、ガス流の乱流を増大させる一方、凝結物形成を最小化する。乱流の増大は、ガスのよりよい混合を意味し、それにより、水蒸気は、呼気管117の外壁へと移動する。波形呼気管117はまた、波形「ポケット」を提供し、これは、蒸気から凝結したあらゆる液体を収集するという利点を有する。波形部にたまった液体は、ガス源105に送達されない液体である。他の構成において、ヒータワイヤは、呼気管の壁内に位置付けることができる。呼気管117内にヒータワイヤ155があることにより、呼気管内の凝結物形成も減少する。
【0101】
平滑なボアの吸気管103と波形呼気管117との組合せにより、加湿器107は、湿度性能を高めることができる。侵襲性及び非侵襲性喚気の何れにおいても、患者及びバイアス流からの寄与がある。両方において、呼気管117は、ガス源105に戻る湿気の量を減少させるように機能できる。呼気管117の機能は、ガス源105に戻される湿気の量を十分に減らすことであり得る。
【0102】
呼気管の機能により、加湿器107及び吸気管103は、より多い湿気を患者101に送達可能にすることができる。呼気管117がガス源105に戻される湿気の量を十分に減らすことができない場合、加湿器107及び吸気管103がより多い湿気を患者101に送達する能力を低下させるか又は戻さなければならず、これは、余剰の湿気の一部が呼気管117を通じてガス源105へと運ばれるからである。
【0103】
吸気管103及び呼気管117について、以下にさらに詳細に説明する。
【0104】
吸気管
図2Aは、吸気管の導管201のある区間の側面図を示す。一般に、導管201は、第一の長尺状部材203と第二の長尺状部材205とを含む。部材は、広い用語であり、当業者にとってのその通常の慣例的な意味が付与され、(すなわち、それは、特殊又は専用の意味に限定されない)、一体部分、一体構成要素、及び個別の構成要素を含み、これらに限定されない。第一の長尺状部材203は、「バブル」の外形を有する一方、第二の長尺状部材205は、中空の本体に構造的支持力を追加する構造的支持又は補強部材である。本明細書で使用される限り、「バブル」への言及のすべては、断面においてその中に中空の空間を有する、壁によって画定される形状を有する長尺状の中空本体を意味する。このような形状は、図2Bに関して、楕円又は「D」字形状を含むことができる。このような形状は、「O」字形状及び他の対称及び非対称の規則的及び不規則的形状を含むことができる。この説明では、「バブル」という用語は、例えば、図2Bに示されているように、第一の長尺状部材203の長尺状の巻き付け又は巻きの、巻き付け又は巻きを通る横方向の断面における断面形状を指すことができる。中空の本体及び構造的支持部材は、本明細書に記載されているようにらせん状構成を有し得る。導管201は、前述の吸気管103、後述の同軸管、又は本開示の別の箇所に記載されている他の何れの管を形成するために使用され得る。
【0105】
第一の長尺状部材203は、らせん状に巻かれて、長さ方向軸LA-LAを有する長尺状の管及び長さ方向軸LA-LAに沿って延びるルーメン207を少なくとも部分的に形成する中空本体を含む。第一の長尺状部材203の一部分211は、ルーメン207の内壁の少なくとも一部を形成する。第一の長尺状部材203は、管であり得る。好ましくは、第一の長尺状部材203は、柔軟である。柔軟とは、曲がる能力を指す。さらに、第一の長尺状部材203は、好ましくは、透明であるか、又は少なくとも半透明若しくは部分的に不透明である。ある程度の光学透過性により、看護者又は使用者は、ルーメン207の閉塞又は汚染を検査し、又は水分(すなわち凝結)の存在を確認することができる。医療用プラスチックを含む各種のプラスチックが第一の長尺状部材203の本体に適している。適当な材料には、ポリオレフィンエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、熱可塑性コポリエステルエラストマー、EPDM-ポリプロピレン混合物、及び熱可塑性ポリウレタンが含まれる。
【0106】
第一の長尺状部材203の中空本体構造は、導管201の断熱特性に寄与する。断熱導管は、前述のように、それが熱損失を防止するために望ましい。これにより、導管201は、ガスを加湿器107から患者101に送達する一方、最小限のエネルギー消費でガスの調整された状態を保持できる。
【0107】
第二の長尺状部材205もらせん状に巻かれ、第一の長尺状部材203の隣接する巻き間において第一の長尺状部材203に結合される。第二の長尺状部材205は、長尺状管のルーメン207の少なくとも一部を形成する。第二の長尺状部材205は、第一の長尺状部材203のための構造的支持として機能する。第二の長尺状部材205は、基部(ルーメン207に近い)においてより広く、上部においてより狭くすることができる。第二の長尺状部材は、概して三角形の形状、概してT字形、又は概してY字形であり得る。しかしながら、対応する第一の長尺状部材203の輪郭に適合する何れの形状も適当である。
【0108】
好ましくは、第二の長尺状部材205は、柔軟であり、管の曲げを容易にする。望ましくは、第二の長尺状部材205は、第一の長尺状部材203より柔軟性が低い。これにより、第二の長尺状部材205が第一の長尺状部材203を構造的に支持する能力が高まる。第二の長尺状部材205は、中実又はほとんど中実であり得る。
【0109】
第二の長尺状部材205は、フィラメント、具体的には熱の生成又はセンサ(図示せず)からの情報伝送のために使用されるフィラメント等の導電材料を収容又は格納することができる。加熱素子は、フィラメントを含むことができ、その上に湿気の多いガスからの凝結物形成が起こり得る低温表面を最小化することができる。加熱素子は、導管201のルーメン207内のガスの温度分布を変化させるためにも使用できる。医療用プラスチックを含む各種のポリマー及びプラスチックが第二の長尺状部材205の本体に適している。適当な材料には、ポリオレフィンエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、熱可塑性コポリエステルエラストマー、EPDM-ポリプロピレン混合物、及び熱可塑性ポリウレタンが含まれる。第一の長尺状部材203と第二の長尺状部材205とは、同じ材料から製作され得る。
【0110】
図2Bは、図2Aの導管201の上部分の長さ方向の断面を示す。図2Bは、図2Aと同じ向きである。第一の長尺状部材203は、中空本体形状を有することができる。第一の長尺状部材203は、長さ方向の断面において複数の中空バブルを形成できる。第一の長尺状部材203の部分209は、第二の長尺状部材205の隣接する被覆部分と重なる。第一の長尺状部材203の一部分211は、ルーメン207(管ボア)の壁の少なくとも一部を形成する。隣接するバブルは、ギャップ213により分離できる。T字形の第二の長尺状部材205は、図2Bに示されているように、隣接するバブル間にギャップ213を保持することを促進し得る。
【0111】
第一の長尺状部材203は、長さ方向の断面において複数の中空バブルを形成する。
【0112】
1つ又は複数の導電材料は、ガス流を加熱又は感知するために第二の長尺状部材205内に設置できる。2つの加熱素子215は、第二の長尺状部材205内において、「T」の縦の部分のそれぞれの側に1つずつ収容できる。加熱素子215は、導電材料、例えばアルミニウム(Al)及び/若しくは銅(Cu)の合金又は導電性ポリマーを含む。好ましくは、第二の長尺状部材205を形成する材料は、加熱素子215がその動作温度に到達したときに加熱素子215の金属と反応しないように選択される。加熱素子215は、ルーメン207から離間され得、それにより、素子は、ルーメン207に露出しない。複合管の一方の端において、素子のペアは、接続ループに形成できる。複数のフィラメントを第二の長尺状部材205内に設置できる。
【0113】
表2は、本明細書に記載されている、一方は乳児用、他方は成人用の2種類の複合的導管の寸法の非限定的なサンプル並びにこれらの寸法の幾つかの非限定的なサンプル範囲を示す。寸法は、管の横方向の断面を指す。これらの表では、ルーメンの直径は、管の内径を表す。ピッチは、管に軸方向に沿って測定された2つの繰返し点間の距離、すなわち第二の長尺状部材205の隣接する「T」の縦の部分の先端間の距離を表す。バブル幅は、バブルの幅(最大外径)を表す。バブル高さは、管ルーメンからのバブルの高さを表す。ビード高さは、管ルーメンからの第二の長尺状部材205の最大高さ(例えば、「T」の縦の部分の高さ)を表す。ビード幅は、第二の長尺状部材205の最大幅(例えば、「T」の横の部分の幅)を表す。バブル厚さは、バブルの壁の厚さを表す。
【0114】
【表2】
【0115】
表3及び4は、第二の長尺状部材205の内部に組み込まれた加熱素子を有する、本明細書に記載の複合管(「A」で表す)の特性を示す。比較のために、管のボアの内側にらせん状に巻かれた加熱素子を有する使い捨て波形管であるFisher&PaykelのモデルRT100(「B」で表す)の特性も示されている。
【0116】
流れに対する抵抗(RTF)の測定は、ISO 5367:2000(E)の付属書Aに従って行われた。この刊行物には、標準的装置リスト、手順のステップ、及び流れに対する抵抗の試験結果を、呼吸管を通る定格流量での圧力上昇の測定により表現するための単位が記載されている。これは、直ちに使用可能な状態で供給された呼吸管又は必要な長さにカットするように供給された長さ1mの呼吸チュービングを試験するための分散、並びにYピースに一体に接続された呼吸管のペアを含むデュアルリム回路の各リムを個別に試験するための分散も含む。試験結果は、リザーバの開口部に呼吸管を取り付けた状態と取り付けない状態の、リザーバ内で測定された圧力の差である。
【0117】
結果が表3にまとめられている。以下からわかるように、複合管のRTFは、同等サイズのモデルRT100管のRTFより低い。
【0118】
【表3】
【0119】
管内の凝結又は「レインアウト」は、ガス流量20L/分、室温18℃で1日ごとに収集された結露の重量を指す。加湿された空気は、チャンバから管を通って連続的に流れる。管の重量を各試験日の開始前及び終了後に記録する。試験と試験との間に管を乾燥させて、3回連続で試験を実行する。結果は、以下の表4に示される。その結果は、レインアウトが複合管において同等のサイズのモデルRT100管より有意に低いことを示す。
【0120】
【表4】
【0121】
複合管201は、ガス経路に設置された1つ又は複数の加熱フィラメント215を含むことができる。加熱フィラメントは、ルーメンの壁(管ボア)上にらせん状に配置することができる。1つ又は複数の加熱フィラメント215は、ボンディング、埋め込み、又は他を通じてルーメンの壁に配置でき、組み立てられたときにルーメンの壁を形成する、第二の長尺状部材205の表面上に加熱フィラメントが形成される。したがって、この方法は、1つ又は複数の加熱フィラメント215をルーメンの壁に配置することを含むことができる。
【0122】
吸気管103に適した複合導管に関する他の詳細は、米国特許出願公開第2014/0202462 A1号明細書として公開されている米国特許出願公開第14/123,485号明細書及び米国特許出願公開第2015/0306333 A1号明細書として公開されている米国特許出願公開第14/649,801号明細書の明細書及び図面において開示されており、これらは、それらに含まれるすべてに関して、その全体が参照により本願に援用される。
【0123】
呼気管
図1に関してすでに説明したように、呼吸回路は、相対湿度が高い呼気ガスを扱うために蒸気透過性の(すなわち通気性のある)呼気管を利用できる。通気性は、蒸気拡散を増大させ、したがってこれらの構成要素におけるレインアウト(凝結)を防止するために望ましい。したがって、呼吸回路は、蒸気透過性呼気管を含むことができる。一般に、呼気管は、入口(呼気ガスを受け取るため)と、出口(受け取ったガスを排出するため)と、前記入口と前記出口との間の少なくとも1つのガス通路を画定する包囲壁とを含み、前記包囲壁の少なくとも一部は、蒸気透過性材料であり、水蒸気を透過させるが、液体の水及び呼吸ガスのバルク流の透過を実質的に防止する。呼気管の終端は、入口における第一のコネクタと出口における第二のコネクタとで処理でき、前記入口コネクタと前記出口コネクタとの間の長さに1つのみのガス通路が提供される。
【0124】
その通気性又は蒸気透過性により、壁は、管内のガス空間から、外気であり得る壁の反対側の領域までの水蒸気経路を形成する。好ましくは、包囲壁の蒸気透過部は、発泡材料で形成される。管は、押出成形された波形導管を含むことができる。
【0125】
蒸気透過性の発泡ポリマーを含む呼気管は、有利には、通気性と強度との両方を有することがわかっている。呼気管は、その中に空間を画定する壁を含むことができ、前記壁の少なくとも一部は、蒸気透過性発泡材料製であり、これは、空間内のガスからの蒸気を透過させるが、液体の水の透過を防止する。包囲壁全体が発泡材料で形成できる。好ましくは、壁は、呼吸ガスを含む、空間内のガスのバルク流に対しても不透過性である。その蒸気透過性により、壁は、ガス空間から壁の反対側の領域まで水蒸気の経路を形成する。
【0126】
次に、呼気管の導管301を示す図3A及び3Bを参照する。図3Aは、導管301の側面図を示し、図3Bは、図3Aと同じ側面図に沿った導管301の断面を示す。図3A及び図3Bの何れにおいても、水平軸は、線303-303で示されている。図3Bにおいて壁305として示されている導管の壁は、蒸気透過性発泡材料である。図に示されているように、導管301は、波形である。図3Bにおいて壁305として示されている管の壁は、上述のように通気性のある発泡材料である。
【0127】
管は、1種の構成要素であるため、上述の構成要素の詳細は、ここで論じられる管にも当てはまる。包囲壁の少なくとも一部は、通気性のある発泡材料を含むことができ、これにより、水蒸気が透過できるが、液体の水及び呼吸ガスのバルク流の透過が実質的に防止される。管は、押出成形された波形管であり得る。医療用回路管は、呼吸管若しくは導管として、又は送気システムのリムのための管若しくは導管として使用できる。例えば、管は、それぞれ呼気呼吸管又は排気導管として使用できる。管は、患者インタフェースの一部であり得る。導管301は、前述のような呼気管117、後述のような同軸管、又は本開示の他の箇所に記載されている他の何れの管として使用され得る。
【0128】
通気性又は蒸気透過性の高い発泡材料を取り入れることにより、構成要素は、比較的高い曲げ剛性と高い通気性との両方を有するように製造できる。その高い蒸気透過性(通気性)のために、発泡ポリマーは、水蒸気をそれから急速に拡散させることができる。これは、水蒸気を呼気管内の加湿ガスから周りの周辺空気又は構成要素の反対側の他のより乾燥したガスへと透過させることにより、呼気管内の凝結生成を減少させる。しかしながら、これらの発泡ポリマーから形成される構成要素は、硬く、自立でき、圧縮抵抗を有し、又は半剛性でもあり、圧縮に対する抵抗及び座屈に対する抵抗が比較的高く、さらには追加の補強を必要としないことがあり得る。発泡ポリマーは、医療用回路の構成要素を形成するのに有益であり、これは、発泡ポリマーがガスからの水蒸気を透過させるが、液体の水の透過を防止するからである。これらは、ガスのバルク流に対しても実質的に不透過性であり、それにより、これらは、加湿ガスを送達するための構成要素を形成するために使用できる。発泡ポリマーは、追加の補強を用いずに、「バルク」特性(厚さ、材料、材料の混合、弾性係数、通気性、及び/又はバルク硬さ)がISO 5367:2000(E)標準(すなわち流れに対する抵抗の増大に関する試験)の要求事項を満たし、それでもなお蒸気透過性を有するように選択できる。ISO 5367:2000(E)の全体が参照により本願に援用される。
【0129】
好ましくは、発泡ポリマーは、蒸気透過性の発泡熱可塑性ポリマーである。蒸気透過性熱可塑性ポリマーは、発泡熱可塑性エラストマー(又はISO 18064:2003(E)により定義されるTPE)、例えば(1)コポリエステル熱可塑性エラストマー(例えば、ポリエーテルソフトセグメントを有するコポリエステル熱可塑性エラストマーであるARNITEL(登録商標)、若しくはISO 18064:2003(E)により定義される他のTPC若しくはTPC-ET材料)、又は(2)ポリエーテルブロックアミド(例えば、ポリエーテルソフトセグメントを有するポリアミド熱可塑性エラストマーであるPEBAX(登録商標)、若しくはISO 18064:2003(E)により定義される他のTPA-ET材料)、又は(3)熱可塑性ポリウレタン(ISO 18064:2003(E)により定義されるTPU材料)、又は(4)TPE/ポリブチレンテレフタレート(PBT、例えばDURANEX(登録商標)500FP)ブレンド等の発泡ポリマーブレンドであり得る。蒸気透過性のTPE ARNITEL(登録商標)VT3108は、構成要素の発泡及び形成に特に適当であり得ることがわかっている。この材料について、通気性と強度との関係は、材料を、それが製品又は構成要素へと形成される際に発泡させることよって大幅に改善できる。通気性のある熱可塑性ポリマーが発泡TPE/PBTブレンドである場合、このブレンドは、好ましくは、重量で80%~99%(又は約80%~99%)のTPEと、重量で20%~1%(又は約20%~1%)のPBTとを含む。発泡材料のボイド率は、25%(又は約25%)より大きく、例えば25~60%(又は約25~60%)、又は30~50%(又は約30~50%)であり得る。発泡材料は、発泡材料のボイドのうち、直径500μmを超えるものが5%(又は約5%)を超えないように構成され得る。
【0130】
既知の材料の何れについても、透過性と係数との組合せが、等式:ln(P)=0.019(ln(M))-0.7ln(M))+6.5を示すライン201を超えるものはないことがわかっており、式中、Pは、ASTM E96 Procedure A(温度23℃、相対湿度90%での乾燥方法)に従って測定された材料の透過性をg・mm/m2/日で表し、Mは、材料のヤング係数をMPaで表す。
【0131】
呼吸回路は、発泡系ではない、波形の及び/又は蒸気透過性材料を含む呼気管を含むことができる。幾つかの非限定的な構成において、呼気管の内壁は、らせん状に巻かれた蒸気透過性テープを含むことができる。幾つかの構成において、呼気管の内壁は、異なる直径の一連のビードを含む。異なる直径のビードは、呼気管の内壁に沿って配置されて波形パターンを生成できる。
【0132】
壁はまた、壁を硬くする少なくとも1つの補強リブ又は壁を硬くするために壁が局所的に厚くされた少なくとも1つの領域を含むことができる。管は、包囲壁の周囲に配置された複数の補強リブを含むことができる。これらのリブは、管と共押出加工し、概して管の長さ方向軸と整列されるようにすることができる。好ましくは、3~8つの補強リブ、より詳細には3~5つの補強リブがある。
【0133】
次に図4A及び4Bを参照すると、これらは、呼気管117を形成するために使用できる導管301の一部を示す。導管301は、本明細書に記載されているように発泡蒸気透過性材料から製造できる。導管301は、導管301と共押出可能な複数の補強リブ403をさらに含む。リブ403は、導管301と同じ発泡ポリマーから形成できる。代わりに、リブ403は、導管301と異なる材料から製作できる。これは、共押出により実現できる。図4Aに示されるように、導管301は、所定の場所にリブ403を設けて押出加工し、その後、波形にして図4Bに示される「ドット」構造を形成することができる。導管301は、3~8つの補強リブ、例えば3~5つの補強リブを含むことができる。
【0134】
特に、リブは、管形の円周に沿って配置できる。リブは、管形の内面の周囲に円周方向に配置できる。リブは、入口と出口との間の管形の長さに沿って概して長さ方向に整列させることができる。
【0135】
次に図5A及び5Bを参照すると、これらは、波形でリブ付きの蒸気透過性導管301のための構成を示す。図5において、隆起したリブ403は、導管301の内部の畝間の空間内に見える。
【0136】
上記に加えて、管内の凝結形成を減少させるか又は排除するために、抵抗ヒータワイヤ等のヒータが導管301の通路内、導管301の壁内又は導管301の外壁面の外面の周囲に提供され得る。図6は、導管301の通路内にヒータワイヤ601を組み込んだ、波形の発泡ポリマー導管301の概観図である。図7は、導管301の外壁面の外面の周囲にヒータワイヤ601を組み込んだ波形の発泡ポリマー導管301の概観図である。図8は、管壁内にヒータワイヤ601を組み込んだ呼気管117の概略図を含む。
【0137】
呼気管に関する他の詳細は、米国特許出願公開第2013/0098360 A1号明細書として公開されている米国特許出願公開第13/517,925号明細書の明細書と図面において開示されており、これらは、それらに含まれるすべてに関して、その全体が参照により本願に援用される。
【0138】
図8をさらに参照すると、これは、吸気管103及び呼気管117を含む呼吸回路を示す。吸気管103及び呼気管117の特性は、図1図7に関して上述したものと同様である。吸気管103は、加湿器107と連通する入口109と、それから加湿ガスが患者101へと供給される出口113とを有する。呼気管117も、患者101から吐き出されたガスを受け取る入口109と、出口113とを有する。図1に関して上述したように、呼気管117の出口113は、吐き出されたガスを大気中へ、ガス源105へ、エイスクライバ/フィルタ(図示せず)へ、又は他のあらゆる適当な場所に排出することができる。
【0139】
図1、6、及び7に関して上述したように、ガス(主に管壁付近のガス)の温度を飽和温度より高く上昇させることによって管内の凝結物形成のリスクを低減させるために、加熱ワイヤ215を吸気管103に含めることができ、及び/又は加熱ワイヤ601を呼気管117に含めることができる。理解すべき点として、加熱ワイヤは、望ましくはコイル状又はらせん状の構成を含むことができ、概念的に解釈するために直線で示されている。呼吸回路は、吸気管103及び呼気管117を患者インタフェース(図示せず)に接続するためのコネクタ(Yコネクタ又はwye-ピース801)を含むことができる。当然のことながら、他の呼吸回路の構成も本開示の範囲内であると理解すべきである。
【0140】
上記の説明は、本発明の好ましい形態を含む。本発明の範囲から逸脱することなく、それに対する変更形態がなされ得る。本発明が関連する技術分野の当業者に対し、付属の特許請求の範囲で定義されている本発明の範囲から逸脱せずに、構成の様々な変更形態並びに本発明の多様な実施形態及び応用が着想されるであろう。本明細書の開示及び説明は、純粋に例示的であり、決して限定的であることは意図されていない。
図1
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-05-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸回路であって、
吸気ガスを患者に輸送するための吸気リムであって、
らせん状に巻かれて、長さ方向軸を有する第一の長尺状管を少なくとも部分的に形成する中空本体と、前記長さ方向軸に沿って延びる第一のルーメンと、前記ルーメンを取り囲む中空壁とを含む第一の長尺状部材と、
らせん状に巻かれ、且つ前記第一の長尺状部材の隣接する巻き間に結合される第二の長尺状部材であって、前記第一の長尺状管の前記ルーメンの少なくとも一部を形成する第二の長尺状部材と
を含む吸気リムと、
前記患者からの呼気ガスを輸送するための呼気リムであって、
入口及び出口と、
第二のルーメンを取り囲む第二の管を含む第三の長尺状部材であって、前記第二のルーメンは、前記呼気ガスを収容するように構成され、及び前記第二の管は、水蒸気に対して透過性であり、且つ液体の水及び前記呼気ガスのバルク流に対して実質的に不透過性である、第三の長尺状部材と
を含む呼気リムと
を含む呼吸回路。
【外国語明細書】