(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106803
(43)【公開日】2022-07-20
(54)【発明の名称】アラジール症候群の処置のためのアンチセンスオリゴマー
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20220712BHJP
A61K 31/712 20060101ALI20220712BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20220712BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20220712BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220712BHJP
C07H 21/02 20060101ALI20220712BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220712BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20220712BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220712BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20220712BHJP
【FI】
A61K48/00
A61K31/712 ZNA
A61K31/7125
A61P21/04
A61P43/00 105
C07H21/02 CSP
A61P1/16
A61K31/7088
G01N33/53 M
C12N15/113 140Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022069164
(22)【出願日】2022-04-20
(62)【分割の表示】P 2018529221の分割
【原出願日】2016-12-13
(31)【優先権主張番号】62/267,210
(32)【優先日】2015-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504278156
【氏名又は名称】コールド スプリング ハーバー ラボラトリー
(71)【出願人】
【識別番号】518195690
【氏名又は名称】ストーク セラピューティクス,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】アズナレズ,イザベル
(72)【発明者】
【氏名】ナッシュ,ヒュー エム.
(72)【発明者】
【氏名】クライナー,エイドリアン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アラジール症候群(ALGS)を有する患者を処置するための方法を提供する。
【解決手段】患者の細胞を、標的タンパク質または機能RNAをコードするRIC mRNA前駆体の標的部分に相補的なアンチセンスオリゴマー(ASO)と接触させる工程を含み、それによって、保持されたイントロンは、標的タンパク質または機能RNAをコードするRIC mRNA前駆体から構成的にスプライシングされ、それにより、被験体の細胞内で、標的タンパク質または機能RNAをコードするmRNAのレベルを増加させ、標的タンパク質または機能RNAの発現を増加させる、方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の細胞により標的タンパク質または機能RNAの発現を増加させることによって
必要としている被験体のアラジール症候群を処置する方法であって、該細胞は、保持され
たイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)を有し、該RIC mRNA
前駆体は、保持されたイントロン、5’スプライス部位に隣接しているエクソン、および
3’スプライス部位に隣接しているエクソンを含み、ここでRIC mRNA前駆体は、
標的タンパク質または機能RNAをコードし、該方法は、被験体の細胞を、標的タンパク
質または機能RNAをコードするRIC mRNA前駆体の標的部分に相補的なアンチセ
ンスオリゴマー(ASO)と接触させる工程を含み、それによって、保持されたイントロ
ンは、標的タンパク質または機能RNAをコードするRIC mRNA前駆体から構成的
にスプライシングされ、それにより、被験体の細胞内で、標的タンパク質または機能RN
AをコードするmRNAのレベルを増加させ、標的タンパク質または機能RNAの発現を
増加させる、方法。
【請求項2】
保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)を有している細
胞によってJAG1である標的タンパク質の発現を増加させる方法であって、該RIC
mRNA前駆体は、保持されたイントロン、保持されたイントロンの5’スプライス部位
に隣接しているエクソン、および保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接して
いるエクソンを含み、ここでRIC mRNA前駆体はJAG1タンパク質をコードし、
該方法は、細胞を、JAG1タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の標的部分
に相補的なアンチセンスオリゴマー(ASO)と接触させる工程を含み、それによって、
保持されたイントロンは、JAG1タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体から
構成的にスプライシングされ、それにより、細胞内で、JAG1タンパク質をコードする
mRNAのレベルを増加させ、JAG1タンパク質の発現を増加させる、方法。
【請求項3】
標的タンパク質がJAG1である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
標的タンパク質または機能RNAが、被験体において量または活性が不足している標的
タンパク質または機能RNAを機能的に増強または交換する、補償するタンパク質または
補償する機能RNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
細胞が、JAG1タンパク質の量または活性の不足によって引き起こされた疾病を有す
る被験体内にあるか又は被験体に由来する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
標的タンパク質の量の不足が、標的タンパク質のハプロ不全によって引き起こされ、こ
こで被験体は、機能的な標的タンパク質をコードする第1の対立遺伝子、および標的タン
パク質が産生されない第2の対立遺伝子、または非機能性の標的タンパク質をコードする
第2の対立遺伝子を有し、アンチセンスオリゴマーは、第1の対立遺伝子から転写された
RIC mRNA前駆体の標的部分に結合する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の
方法。
【請求項7】
被験体が、標的タンパク質の量または機能の不足から結果として生じる障害によって引
き起こされた疾病を有し、ここで被験体が、
a.第1の変異対立遺伝子であって、
i.標的タンパク質が、野生型対立遺伝子からの産生と比較して、低下したレベルで産
生される、
ii.標的タンパク質が、同等の野生型タンパク質と比較して、機能が低下した形態で
産生される、または
iii.標的タンパク質が産生されない、第1の変異対立遺伝子、および
b.第2の変異対立遺伝子であって、
i.標的タンパク質が、野生型対立遺伝子からの産生と比較して、低下したレベルで産
生される、
ii.標的タンパク質が、同等の野生型タンパク質と比較して、機能が低下した形態で
産生される、または
iii.標的タンパク質が産生されない、第2の変異対立遺伝子を有し、および
ここで被験体が、a.iii.の第1の変異対立遺伝子を有するときに、第2の変異対
立遺伝子は、b.i.またはb.ii.の変異対立遺伝子であり、被験体が、b.iii
.の第2の変異対立遺伝子を有するときに、第1の変異対立遺伝子は、a.i.またはa
.ii.の変異対立遺伝子であり、およびRIC mRNA前駆体は、a.i.またはa
.ii.である第1の変異対立遺伝子及び/又はb.i.またはb.ii.である第2の
変異対立遺伝子のいずれかから転写される、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法
。
【請求項8】
標的タンパク質が、同等の野生型タンパク質と比較して機能が低下した形態で産生され
る、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
標的タンパク質が、同等の野生型タンパク質と比較して完全に機能的である形態で産生
される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
RIC mRNA前駆体の標的部分が、保持されたイントロンにおいて、保持されたイ
ントロンの5’スプライス部位に対する+6の領域から、保持されたイントロンの3’ス
プライス部位に対する-16の領域内にある、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方
法。
【請求項11】
RIC mRNA前駆体の標的部分が、保持されたイントロンにおいて、
(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に対する、+6から+500、+6
から+400、+6から300、+6から200、または+6から+100の領域内;ま
たは
(b)保持されたイントロンの3’スプライス部位に対する、-16から-500、-
16から-400、-16から-300、-16から-200、または-16から-10
0の領域内にある、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
RIC mRNA前駆体の標的部分が、
(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソンにおける+
2eから-4eの領域内;または
(b)保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンにおける+
2eから-4eの領域内にある、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
RIC mRNA前駆体が、SEQ ID NO:1に対して、少なくとも約80%、8
5%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を
有する遺伝子配列によってコードされる、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法
。
【請求項14】
RIC mRNA前駆体が、SEQ ID NO:2に対して少なくとも約80%、85
%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有
する配列を含む、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
アンチセンスオリゴマーが、機能RNAまたは標的タンパク質をコードする遺伝子から
転写されたmRNA前駆体の選択的スプライシングを調節することにより標的タンパク質
または機能RNAの量を増加させない、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
アンチセンスオリゴマーが、標的タンパク質または機能RNAをコードする遺伝子の突
然変異から結果として生じる異常スプライシングを調節することにより標的タンパク質ま
たは機能RNAの量を増加させない、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
RIC mRNA前駆体が、全長mRNA前駆体の部分的スプライシングまたは野生型
mRNA前駆体の部分的スプライシングによって産生された、請求項1乃至16のいずれ
か1項に記載の方法。
【請求項18】
標的タンパク質または機能RNAをコードするmRNAが、全長成熟mRNAまたは野
生型成熟mRNAである、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
産生される標的タンパク質が、全長タンパク質または野生型タンパク質である、請求項
1乃至18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
アンチセンスオリゴマーと接触させられた細胞内で産生された標的タンパク質または機
能RNAをコードするmRNAの総量は、対照細胞において産生された標的タンパク質ま
たは機能RNAをコードするmRNAの総量と比較して、約1.1倍から約10倍、約1
.5倍から約10倍、約2倍から約10倍、約3倍から約10倍、約4倍から約10倍、
約1.1倍から約5倍、約1.1倍から約6倍、約1.1倍から約7倍、約1.1倍から
約8倍、約1.1倍から約9倍、約2倍から約5倍、約2倍から約6倍、約2倍から約7
倍、約2倍から約8倍、約2倍から約9倍、約3倍から約6倍、約3倍から約7倍、約3
倍から約8倍、約3倍から約9倍、約4倍から約7倍、約4倍から約8倍、約4倍から約
9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約
2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約
5倍、または少なくとも約10倍増加される、請求項1乃至19のいずれか1項に記載の
方法。
【請求項21】
アンチセンスオリゴマーと接触させられた細胞によって産生された標的タンパク質の総
量は、対照細胞によって産生された標的タンパク質の総量と比較して、約1.1倍から約
10倍、約1.5倍から約10倍、約2倍から約10倍、約3倍から約10倍、約4倍か
ら約10倍、約1.1倍から約5倍、約1.1倍から約6倍、約1.1倍から約7倍、約
1.1倍から約8倍、約1.1倍から約9倍、約2倍から約5倍、約2倍から約6倍、約
2倍から約7倍、約2倍から約8倍、約2倍から約9倍、約3倍から約6倍、約3倍から
約7倍、約3倍から約8倍、約3倍から約9倍、約4倍から約7倍、約4倍から約8倍、
約4倍から約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、
少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、
少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍増加される、請求項1乃至20のいずれか
1項に記載の方法。
【請求項22】
アンチセンスオリゴマーが、ホスホロチオエート結合またはホスホロジアミデート結合
を含む骨格修飾を含む、請求項1乃至21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
アンチセンスオリゴマーが、ホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド核酸、ペプチ
ド核酸、2’-O-メチル、2’-フルオロ、または2’-O-メトキシエチル部分を含
む、請求項1乃至22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
アンチセンスオリゴマーが、少なくとも1つの修飾された糖部を含む、請求項1乃至2
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
各糖部が、修飾された糖部である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
アンチセンスオリゴマーが、8~50の核酸塩基、8~40の核酸塩基、8~35の核
酸塩基、8~30の核酸塩基、8~25の核酸塩基、8~20の核酸塩基、8~15の核
酸塩基、9~50の核酸塩基、9~40の核酸塩基、9~35の核酸塩基、9~30の核
酸塩基、9~25の核酸塩基、9~20の核酸塩基、9~15の核酸塩基、10~50の
核酸塩基、10~40の核酸塩基、10~35の核酸塩基、10~30の核酸塩基、10
~25の核酸塩基、10~20の核酸塩基、10~15の核酸塩基、11~50の核酸塩
基、11~40の核酸塩基、11~35の核酸塩基、11~30の核酸塩基、11~25
の核酸塩基、11~20の核酸塩基、11~15の核酸塩基、12~50の核酸塩基、1
2~40の核酸塩基、12~35の核酸塩基、12~30の核酸塩基、12~25の核酸
塩基、12~20の核酸塩基、または12~15の核酸塩基から成る、請求項1乃至25
のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
アンチセンスオリゴマーが、タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の標的部
分に、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少
なくとも98%、少なくとも99%、または100%相補的である、請求項1乃至26の
いずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
RIC mRNA前駆体の標的部分が、SEQ ID NO:437-439から選択さ
れる配列内にある、請求項1乃至27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
アンチセンスオリゴマーが、SEQ ID NO:3-436のいずれか1つに対して、
少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96
%、97%、98%、または99%配列同一性であるヌクレオチド配列を含む、請求項1
乃至28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
アンチセンスオリゴマーが、SEQ ID NO:3-436から選択されるヌクレオチ
ド配列を含む、請求項1乃至28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
細胞が、標的タンパク質または機能RNAをコードする遺伝子から転写されたRIC
mRNA前駆体の集団を含み、ここでRIC mRNA前駆体の集団は、2つ以上の保持
されたイントロンを含み、アンチセンスオリゴマーは、RIC mRNA前駆体の集団に
おいて最も豊富な保持されたイントロンに結合する、請求項1乃至30のいずれか1項に
記載の方法。
【請求項32】
最も豊富な保持されたイントロンへのアンチセンスオリゴマーの結合が、標的タンパク
質または機能RNAをコードするmRNAを産生するために、RIC mRNA前駆体の
集団からの2つ以上の保持されたイントロンのスプライシングアウトを誘発する、請求項
31に記載の方法。
【請求項33】
細胞が、標的タンパク質または機能RNAをコードする遺伝子から転写されたRIC
mRNA前駆体の集団を含み、ここでRIC mRNA前駆体の集団は、2つ以上の保持
されたイントロンを含み、アンチセンスオリゴマーは、RIC mRNA前駆体の集団に
おいて2番目に豊富な保持されたイントロンに結合する、請求項1乃至30のいずれか1
項に記載の方法。
【請求項34】
2番目に豊富な保持されたイントロンへのアンチセンスオリゴマーの結合が、標的タン
パク質または機能RNAをコードするmRNAを産生するために、RIC mRNA前駆
体の集団からの2つ以上の保持されたイントロンのスプライシングアウトを誘発する、請
求項33に記載の方法。
【請求項35】
疾病が、疾患また障害である、請求項5乃至34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
疾患または障害が、アラジール症候群または筋ジストロフィーである、請求項35に記
載の方法。
【請求項37】
標的タンパク質およびRIC mRNA前駆体が、JAG1遺伝子によってコードされ
る、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
JAG1タンパク質発現を評価する工程をさらに含む、請求項1乃至37のいずれか1
項に記載の方法。
【請求項39】
アンチセンスオリゴマーが、JAG1 RIC mRNA前駆体の標的部分に結合し、こ
こで標的部分は、SEQ ID NO:49、50、51、52、53、54、55、56
、および57から選択される配列内にある、請求項1乃至38のいずれか1項に記載の方
法。
【請求項40】
被験体がヒトである、請求項1乃至39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
被験体がヒト以外の動物である、請求項1乃至39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
被験体が、胎児、胚、または小児である、請求項1乃至40のいずれか1項に記載の方
法。
【請求項43】
細胞がエクスビボにある、請求項1乃至41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
アンチセンスオリゴマーが、被験体の腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、または静脈
内注射によって投与される、請求項1乃至41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
5’スプライス部位に隣接しているエクソンの-3eから-1eおよび保持されたイン
トロンの+1から+6での9つのヌクレオチドが、対応する野生型配列と同一である、請
求項1乃至44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
保持されたイントロンの-15から-1および3’スプライス部位に隣接しているエク
ソンの+1eでの16のヌクレオチドは、対応する野生型配列と同一である、請求項1乃
至45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
請求項1乃至39のいずれか1項の方法で使用される、アンチセンスオリゴマー。
【請求項48】
SEQ ID NO:3-436のいずれか1つに対して、少なくとも約80%、85%
、90%、95%、97%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、アンチセ
ンスオリゴマー。
【請求項49】
請求項47または48のアンチセンスオリゴマーおよび賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項50】
腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、または静脈内注射により医薬組成物を投与するこ
とによって必要としている被験体を処置する方法。
【請求項51】
タンパク質不足または機能RNA不足に関係する必要としている被験体のアラジール症
候群を処置するために細胞によって標的タンパク質または機能RNAの発現を増加させる
方法に使用するためのアンチセンスオリゴマーを含む組成物であって、ここでタンパク質
不足または機能RNA不足は、被験体における量または活性の不足であり、アンチセンス
オリゴマーは、標的タンパク質または機能RNAをコードする保持されたイントロン含有
mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)の構成的スプライシングを増強し、ここで標
的タンパク質は、
(a)不足したタンパク質;または
(b)被験体において不足したタンパク質を機能的に増強または交換する、補償するタ
ンパク質であり、
および機能RNAは、
(a)不足したRNA;または
(b)被験体において不足した機能RNAを機能的に増強または交換する、補償する機
能RNAであり、
ここでRIC mRNA前駆体は、保持されたイントロン、5’スプライス部位に隣接し
ているエクソン、および3’スプライス部位に隣接しているエクソンを含み、保持された
イントロンは、標的タンパク質または機能RNAをコードするRIC mRNA前駆体か
らスプライシングされ、それによって、被験体において標的タンパク質または機能RNA
の産生または活性を増加させる、組成物。
【請求項52】
必要としている被験体においてJAG1タンパク質に関係する疾病を処置する方法に使
用するためのアンチセンスオリゴマーを含む組成物であって、該方法は、被験体の細胞に
よってJAG1タンパク質の発現を増加させる工程を含み、ここで細胞は、保持されたイ
ントロン、保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソン、および
保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンを含む、保持された
イントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)を有し、RIC mRNA前駆
体は、JAG1タンパク質をコードし、該方法はまた、細胞をアンチセンスオリゴマーと
接触させる工程を含み、それによって、保持されたイントロンは、JAG1タンパク質を
コードするRIC mRNA前駆体の転写産物から構成的にスプライシングされ、それに
より、被験体の細胞内で、JAG1タンパク質をコードするmRNAのレベルを増加させ
、標的タンパク質または機能RNAの発現を増加させる、組成物。
【請求項53】
疾病が、疾患また障害である、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
疾患または障害が、アラジール症候群または筋ジストロフィーである、請求項53に記
載の組成物。
【請求項55】
標的タンパク質およびRIC mRNA前駆体が、JAG1遺伝子によってコードされ
る、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
アンチセンスオリゴマーが、保持されたイントロンにおいて、保持されたイントロンの
5’スプライス部位に対する+6の領域から、保持されたイントロンの3’スプライス部
位に対する-16の領域内にある、RIC mRNA前駆体の一部を標的とする、請求項
51乃至55のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項57】
アンチセンスオリゴマーが、保持されたイントロンにおいて、
(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に対する+6から+100の領域内
;または
(b)保持されたイントロンの3’スプライス部位に対する-16から-100の領域
内にある、RIC mRNA前駆体の一部を標的とする、請求項51乃至56のいずれか
1項に記載の組成物。
【請求項58】
アンチセンスオリゴマーが、少なくとも1つの保持されたイントロンの5’スプライス
部位の約100のヌクレオチド下流から、少なくとも1つの保持されたイントロンの3’
スプライス部位の約100のヌクレオチド上流までの領域内にある、RIC mRNA前
駆体の一部を標的とする、請求項51乃至57のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項59】
RIC mRNA前駆体の標的部分が、
(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソンにおける+
2eから-4eの領域内;または
(b)保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンにおける+
2eから-4eの領域内にある、請求項51乃至57のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項60】
RIC mRNA前駆体が、SEQ ID NO:1に対して、少なくとも約80%、8
5%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を
有する遺伝子配列によってコードされる、請求項51乃至59のいずれか1項に記載の組
成物。
【請求項61】
RIC mRNA前駆体が、SEQ ID NO:2に対して、少なくとも約80%、8
5%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を
有する配列を含む、請求項51乃至60のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項62】
アンチセンスオリゴマーが、標的タンパク質または機能RNAをコードする遺伝子から
転写されたmRNA前駆体の選択的スプライシングを調節することにより標的タンパク質
または機能RNAの量を増加させない、請求項51乃至61のいずれか1項に記載の組成
物。
【請求項63】
アンチセンスオリゴマーが、標的タンパク質または機能RNAをコードする遺伝子の突
然変異から結果として生じる異常スプライシングを調節することにより機能RNAまたは
機能タンパク質の量を増加させない、請求項51乃至62のいずれか1項に記載の組成物
。
【請求項64】
RIC mRNA前駆体が、全長mRNA前駆体または野生型mRNA前駆体から部分
的スプライシングによって産生される、請求項51乃至63のいずれか1項に記載の組成
物。
【請求項65】
標的タンパク質または機能RNAをコードするmRNAが、全長成熟mRNAまたは野
生型成熟mRNAである、請求項51乃至64のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項66】
産生される標的タンパク質が、全長タンパク質または野生型タンパク質である、請求項
51乃至65のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項67】
保持されたイントロンが、律速のイントロンである、請求項51乃至66のいずれか1
項に記載の組成物。
【請求項68】
保持されたイントロンが、RIC mRNA前駆体において最も豊富な保持されたイン
トロンである、請求項51乃至67のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項69】
保持されたイントロンが、RIC mRNA前駆体において2番目に豊富な保持された
イントロンである、請求項51乃至67のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項70】
アンチセンスオリゴマーが、ホスホロチオエート結合またはホスホロジアミデート結合
を含む骨格修飾を含む、請求項51乃至69のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項71】
アンチセンスオリゴマーが、アンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項51乃至
70のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項72】
アンチセンスオリゴマーが、ホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド核酸、ペプチ
ド核酸、2’-O-メチル、2’-フルオロ、または2’-O-メトキシエチル部分を含
む、請求項51乃至71のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項73】
アンチセンスオリゴマーが、少なくとも1つの修飾された糖部を含む、請求項51乃至
72のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項74】
各糖部が、修飾された糖部である、請求項73に記載の組成物。
【請求項75】
アンチセンスオリゴマーが、8~50の核酸塩基、8~40の核酸塩基、8~35の核
酸塩基、8~30の核酸塩基、8~25の核酸塩基、8~20の核酸塩基、8~15の核
酸塩基、9~50の核酸塩基、9~40の核酸塩基、9~35の核酸塩基、9~30の核
酸塩基、9~25の核酸塩基、9~20の核酸塩基、9~15の核酸塩基、10~50の
核酸塩基、10~40の核酸塩基、10~35の核酸塩基、10~30の核酸塩基、10
~25の核酸塩基、10~20の核酸塩基、10~15の核酸塩基、11~50の核酸塩
基、11~40の核酸塩基、11~35の核酸塩基、11~30の核酸塩基、11~25
の核酸塩基、11~20の核酸塩基、11~15の核酸塩基、12~50の核酸塩基、1
2~40の核酸塩基、12~35の核酸塩基、12~30の核酸塩基、12~25の核酸
塩基、12~20の核酸塩基、または12~15の核酸塩基から成る、請求項51乃至7
4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項76】
アンチセンスオリゴマーが、タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の標的部
分に、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少
なくとも98%、少なくとも99%、または100%相補的である、請求項51乃至75
のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項77】
アンチセンスオリゴマーが、JAG1 RIC mRNA前駆体の標的部分に結合し、こ
こで標的部分は、SEQ ID NO:437-439から選択される配列内にある、請求
項51乃至76のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項78】
アンチセンスオリゴマーが、SEQ ID NO:3-436のいずれか1つに対して、
少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96
%、97%、98%、または99%配列同一性であるヌクレオチド配列を含む、請求項5
1乃至77のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項79】
アンチセンスオリゴマーが、SEQ ID NO:3-436から選択されるヌクレオチ
ド配列を含む、請求項51乃至77のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項80】
請求項51乃至79の組成物のいずれかのアンチセンスオリゴマー、および賦形剤を含
む、医薬組成物。
【請求項81】
腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、または静脈内注射により請求項80の医薬組成物
を投与することによって必要としている被験体を処置する方法。
【請求項82】
不足したJAG1 mRNAの転写産物の標的配列にハイブリダイズするアンチセンス
オリゴマー、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む、医薬組成物であって、ここで不足
したJAG1 mRNAの転写産物は保持されたイントロンを含み、アンチセンスオリゴ
マーは、不足したJAG1 mRNAの転写産物からの保持されたイントロンのスプライ
シングアウトを誘発する、医薬組成物。
【請求項83】
不足したJAG1 mRNAの転写産物が、JAG1 RIC mRNA前駆体の転写産
物である、請求項82に記載の医薬組成物。
【請求項84】
JAG1 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分は、保持されたイントロンにお
いて、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対する+6の領域から、保持された
イントロンの3’スプライス部位に対する-16の領域内にある、請求項82または83
に記載の医薬組成物。
【請求項85】
JAG1 RIC mRNA前駆体の転写産物が、SEQ ID NO:1に対して、少な
くとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または10
0%の配列同一性を有する遺伝子配列によってコードされる、請求項82乃至84のいず
れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項86】
JAG1 RIC mRNA前駆体の転写産物が、SEQ ID NO:2に対して、少な
くとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または10
0%の配列同一性を有する配列を含む、請求項82乃至85のいずれか1項に記載の医薬
組成物。
【請求項87】
アンチセンスオリゴマーが、ホスホロチオエート結合またはホスホロジアミデート結合
を含む骨格修飾を含む、請求項82乃至86のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項88】
アンチセンスオリゴマーが、アンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項82乃至
87のいずれか1項に記載の医薬化合物。
【請求項89】
アンチセンスオリゴマーが、ホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド核酸、ペプチ
ド核酸、2’-O-メチル、2’-フルオロ、または2’-O-メトキシエチル部分を含
む、請求項82乃至88のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項90】
アンチセンスオリゴマーが、少なくとも1つの修飾された糖部を含む、請求項82乃至
89のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項91】
アンチセンスオリゴマーが、8~50の核酸塩基、8~40の核酸塩基、8~35の核
酸塩基、8~30の核酸塩基、8~25の核酸塩基、8~20の核酸塩基、8~15の核
酸塩基、9~50の核酸塩基、9~40の核酸塩基、9~35の核酸塩基、9~30の核
酸塩基、9~25の核酸塩基、9~20の核酸塩基、9~15の核酸塩基、10~50の
核酸塩基、10~40の核酸塩基、10~35の核酸塩基、10~30の核酸塩基、10
~25の核酸塩基、10~20の核酸塩基、10~15の核酸塩基、11~50の核酸塩
基、11~40の核酸塩基、11~35の核酸塩基、11~30の核酸塩基、11~25
の核酸塩基、11~20の核酸塩基、11~15の核酸塩基、12~50の核酸塩基、1
2~40の核酸塩基、12~35の核酸塩基、12~30の核酸塩基、12~25の核酸
塩基、12~20の核酸塩基、または12~15の核酸塩基を含む、請求項82乃至90
のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項92】
アンチセンスオリゴマーが、JAG1 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分に
、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なく
とも98%、少なくとも99%、または100%相補的である、請求項82乃至91のい
ずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項93】
JAG1 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分は、SEQ ID NO:437
-439から選択される配列内にある、請求項82乃至92のいずれか1項に記載の医薬
組成物。
【請求項94】
アンチセンスオリゴマーが、SEQ ID NO:3-436のいずれか1つに対して、
少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96
%、97%、98%、または99%配列同一性であるヌクレオチド配列を含む、請求項8
2乃至93のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項95】
アンチセンスオリゴマーが、SEQ ID NO:3-436から選択されるヌクレオチ
ド配列を含む、請求項82乃至93のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項96】
医薬組成物が、髄腔内注射、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、または
静脈内注射のために製剤される、請求項82乃至95のいずれか1項に記載の医薬組成物
。
【請求項97】
ツベリンタンパク質の機能形態をコードする十分に処理されたJAG1 mRNAの転
写産物を産生するために、保持されたイントロンの除去を促進するように不足したJAG
1 mRNAの転写産物の処理を誘発する方法であって、該方法は、
(a)アンチセンスオリゴマーを被験体の標的細胞と接触させる工程;
(b)アンチセンスオリゴマーを不足したJAG1 mRNAの転写産物にハイブリダ
イズする工程であって、不足したJAG1 mRNAの転写産物が、ツベリンタンパク質
の機能形態をコードすることができ、少なくとも1つの保持されたイントロンを含む、工
程;
(c)ツベリンタンパク質の機能形態をコードする十分に処理されたJAG1 mRN
Aの転写産物を産生するために、不足したJAG1 mRNAの転写産物から少なくとも
1つの保持されたイントロンを除去する工程;および
(d)十分に処理されたJAG1 mRNAの転写産物からツベリンタンパク質の機能
形態を翻訳する工程を含む、方法。
【請求項98】
保持されたイントロンが、保持されたイントロン全体である、請求項97に記載の方法
。
【請求項99】
不足したJAG1 mRNAの転写産物が、JAG1 RIC mRNA前駆体の転写産
物である、請求項97または98に記載の方法。
【請求項100】
JAG1タンパク質の量または活性の不足によって引き起こされた疾病を有する被験体
を処置する方法であって、該方法は、
SEQ ID NO:3-436のいずれか1つに対して、少なくとも約80%、85%
、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または
99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むアンチセンスオリゴマーを被験体に
投与する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<相互参照>
本出願は、2015年12月14日に出願された米国仮特許出願第62/267,21
0号の利益を主張し、該仮出願は、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
<配列表>
本出願は配列表を包含しており、これは、EFS-Webを介してASCIIフォーマ
ットで提出され、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。2016年12月9日
に作成された前記ASCIIのコピーは、47991-705_601_SL.txtの
ファイル名であり、201,192バイトのサイズである。前述のファイルは2016年
12月9日に作成され、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
動脈肝異形成症としても知られているアラジール症候群(ALGS)は、珍しい、衰弱
させる、常染色体優性の多系統疾患である(Turnpenny and Ellard,
Eur. J. Hum. Gen. 2012, 20, 251-257)。患者は胆管
内の異常によって引き起こされた肝損傷を患う。他の影響としては、心臓病、血管形成異
常、骨格異常、眼科的特徴、顔面特徴、腎異常、発達遅滞、および膵機能不全が挙げられ
る。1:70,000の報告されたALGSの蔓延は、疾病の変動性および不完全浸透が
原因で過小評価されていると考えられる。
【0004】
Notchシグナル伝達に関係する遺伝子の突然変異はALGSを引き起こすことが報
告された。JAG1の突然変異はALGS1型を引き起こし、一方でNOTCH2の突然
変異はALGS2型を引き起こし、これはALGS1型ほど蔓延していない。JAG1は
、Notch膜受容体に対する細胞表面リガンドである、JAG1タンパク質をコードす
る。Notch受容体へのJAG1タンパク質の結合は、シグナル伝達カスケード引き起
こし、その結果、細胞運命の決定および分化に関係する遺伝子の転写がもたらされる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、アラジール症候群を処置するための組成物および方法を提供し、組成物は、
JAG1の保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)のイン
トロンスプライス部位での構成的スプライシングを促進するアンチセンスオリゴマー(A
SO)を含む。本発明はさらに、必要としている被験体、例えば、JAG1タンパク質の
増加された産生から恩恵を得ることができる被験体の細胞において、成熟JAG1 mR
NAおよび順にJAG1タンパク質の産生を増加させるための組成物および方法を提供す
る。上記方法は、結果としてJAG1タンパク質産生の不足につながる、ミスセンス、ス
プライシング、フレームシフトおよびナンセンスの突然変異を含む、JAG1遺伝子の突
然変異に加えて、全遺伝子欠失によっても引き起こされるアラジール症候群を有する被験
体を処置するために使用されてもよい。他の実施形態では、本発明の組成物および方法は
、筋ジストロフィーを有する被験体を処置するために使用され、被験体はJAG1タンパ
ク質の産生の増加から恩恵を得ることができる。
【0006】
本明細書には、特定の実施形態において、被験体の細胞により標的タンパク質または機
能RNAの発現を増加させることによって必要としている被験体のアラジール症候群を処
置する方法が開示され、ここで該細胞は、保持されたイントロン含有mRNA前駆体(R
IC mRNA前駆体)を有し、該RIC mRNA前駆体は、保持されたイントロン、5
’スプライス部位に隣接しているエクソン、および3’スプライス部位に隣接しているエ
クソンを含み、ここでRIC mRNA前駆体は、標的タンパク質または機能RNAをコ
ードし、該方法は、被験体の細胞を、標的タンパク質または機能RNAをコードするRI
C mRNA前駆体の標的部分に相補的なアンチセンスオリゴマー(ASO)と接触させ
る工程を含み、それによって、保持されたイントロンは、標的タンパク質または機能RN
AをコードするRIC mRNA前駆体から構成的にスプライシングされ、それにより、
被験体の細胞内で、標的タンパク質または機能RNAをコードするmRNAのレベルを増
加させ、標的タンパク質または機能RNAの発現を増加させる。幾つかの実施形態におい
て、本明細書にはまた、保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前
駆体)を有している細胞によって、JAG1である標的タンパク質の発現を増加させる方
法が開示され、該RIC mRNA前駆体は、保持されたイントロン、保持されたイント
ロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソン、および保持されたイントロンの3’
スプライス部位に隣接しているエクソンを含み、ここでRIC mRNA前駆体はJAG
1タンパク質をコードし、該方法は、細胞を、JAG1タンパク質をコードするRIC
mRNA前駆体の標的部分に相補的なアンチセンスオリゴマー(ASO)と接触させる工
程を含み、それによって、保持されたイントロンは、JAG1タンパク質をコードするR
IC mRNA前駆体から構成的にスプライシングされ、それにより、細胞内で、JAG
1タンパク質をコードするmRNAのレベルを増加させ、JAG1タンパク質の発現を増
加させる。幾つかの実施形態では、標的タンパク質はJAG1である。幾つかの実施形態
では、標的タンパク質または機能RNAは、被験体において量または活性が不足している
標的タンパク質または機能RNAを機能的に増強または交換する、補償する(compe
nsating)タンパク質または補償する機能RNAである。幾つかの実施形態では、
細胞は、JAG1タンパク質の量または活性の不足によって引き起こされた疾病を有する
被験体内にあるか又は被験体に由来する。幾つかの実施形態では、標的タンパク質の量の
不足は、標的タンパク質のハプロ不全によって引き起こされ、ここで被験体は、機能的な
標的タンパク質をコードする第1の対立遺伝子、標的タンパク質が産生されない第2の対
立遺伝子、または非機能性の標的タンパク質をコードする第2の対立遺伝子を有し、アン
チセンスオリゴマーは、第1の対立遺伝子から転写されたRIC mRNA前駆体の標的
部分に結合する。幾つかの実施形態では、被験体は、標的タンパク質の量または機能の不
足に起因する障害によって引き起こされた疾病を有し、該被験体は、a)(i)標的タン
パク質が、野生型対立遺伝子からの産生と比較して、低下したレベルで産生させる、(i
i)標的タンパク質が、同等の野性型タンパク質と比較して、機能が低下した形態で産生
される、または(iii)標的タンパク質が産生されない、第1の変異対立遺伝子、およ
びb)(i)標的タンパク質が、野生型対立遺伝子からの産生と比較して、低下したレベ
ルで産生させる、(ii)標的タンパク質が、同等の野性型タンパク質と比較して、機能
が低下した形態で産生される、または(iii)標的タンパク質が産生されない、第2の
変異対立遺伝子を有し、ここで被験体が、a)(iii)の第1の変異対立遺伝子を有す
るときに、第2の変異対立遺伝子は、b)(i)またはb)(ii)の変異対立遺伝子で
あり、被験体が、b)(iii)の第2の変異対立遺伝子を有するときに、第1の変異対
立遺伝子は、a)(i)またはa)(ii)の変異対立遺伝子であり、RIC mRNA
前駆体は、a)(i)またはa)(ii)である第1の変異対立遺伝子及び/又はb)(
i)またはb)(ii)である第2の変異対立遺伝子から転写される。幾つかの実施形態
では、標的タンパク質は、同等の野生型タンパク質と比較して機能が低下した形態で産生
される。幾つかの実施形態では、標的タンパク質は、同等の野生型タンパク質と比較して
完全に機能的である形態で産生される。幾つかの実施形態では、RIC mRNA前駆体
の標的部分は、保持されたイントロンにおいて、保持されたイントロンの5’スプライス
部位に対する+6の領域から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対する-1
6の領域内にある。幾つかの実施形態では、RIC mRNA前駆体の標的部分は、保持
されたイントロンにおいて、(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に対する
、+6から+500、+6から+400、+6から300、+6から200、または+6
から+100の領域内;または(b)保持されたイントロンの3’スプライス部位に対す
る、-16から-500、-16から-400、-16から-300、-16から-20
0、または-16から-100の領域内にある。幾つかの実施形態では、RIC mRN
A前駆体の標的部分は、(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接してい
るエクソンにおける+2eから-4eの領域内;または(b)保持されたイントロンの3
’スプライス部位に隣接しているエクソンにおける+2eから-4eの領域内にある。幾
つかの実施形態では、RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:1に対して少なく
とも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100
%の配列同一性を有する遺伝子配列によってコードされる。幾つかの実施形態では、ヌク
レオチド構築物は、SEQ ID NO:2に対して少なくとも約80%、85%、90%
、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列を
含む。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、機能RNAまたは標的タンパ
ク質をコードする遺伝子から転写されたmRNA前駆体の選択的スプライシングを調節す
ることにより標的タンパク質または機能RNAの量を増加させない。幾つかの実施形態で
は、アンチセンスオリゴマーは、標的タンパク質または機能RNAをコードする遺伝子の
突然変異から結果として生じる異常スプライシングを調節することにより標的タンパク質
または機能RNAの量を増加させない。幾つかの実施形態では、RIC mRNA前駆体
は、全長mRNA前駆体の部分的スプライシングまたは野生型mRNA前駆体の部分的ス
プライシングによって産生された。幾つかの実施形態では、標的タンパク質または機能R
NAをコードするmRNAは、全長成熟mRNAまたは野生型成熟mRNAである。幾つ
かの実施形態では、産生される標的タンパク質は、全長タンパク質または野生型タンパク
質である。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーと接触させられた細胞内で産
生された標的タンパク質または機能RNAをコードするmRNAの総量は、対照細胞にお
いて産生された標的タンパク質または機能RNAをコードするmRNAの総量と比較して
、約1.1倍から約10倍、約1.5倍から約10倍、約2倍から約10倍、約3倍から
約10倍、約4倍から約10倍、約1.1倍から約5倍、約1.1倍から約6倍、約1.
1倍から約7倍、約1.1倍から約8倍、約1.1倍から約9倍、約2倍から約5倍、約
2倍から約6倍、約2倍から約7倍、約2倍から約8倍、約2倍から約9倍、約3倍から
約6倍、約3倍から約7倍、約3倍から約8倍、約3倍から約9倍、約4倍から約7倍、
約4倍から約8倍、約4倍から約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、
少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、
少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍増加される。幾つかの
実施形態では、アンチセンスオリゴマーと接触させられた細胞によって産生された標的タ
ンパク質の総量は、対照細胞において産生された標的タンパク質の総量と比較して、約1
.1倍から約10倍、約1.5倍から約10倍、約2倍から約10倍、約3倍から約10
倍、約4倍から約10倍、約1.1倍から約5倍、約1.1倍から約6倍、約1.1倍か
ら約7倍、 約1.1倍から約8倍、約1.1倍から約9倍、約2倍から約5倍、約2倍
から約6倍、約2倍から約7倍、約2倍から約8倍、約2倍から約9倍、約3倍から約6
倍、約3倍から約7倍、約3倍から約8倍、約3倍から約9倍、約4倍から約7倍、 約
4倍から約8倍、約4倍から約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少
なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少
なくとも約4倍、 少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍増加される。幾つかの
実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、ホスホロチオエート結合またはホスホロジア
ミデート結合を含む骨格修飾を含む。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは
、ホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド核酸、ペプチド核酸、2’-O-メチル、
2’-フルオロ、または2’-O-メトキシエチル部分を含む。幾つかの実施形態では、
アンチセンスオリゴマーは、少なくとも1つの修飾された糖部を含む。幾つかの実施形態
では、各糖部は、修飾された糖部である。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマ
ーは、8~50の核酸塩基、8~40の核酸塩基、8~35の核酸塩基、8~30の核酸
塩基、8~25の核酸塩基、8~20の核酸塩基、8~15の核酸塩基、9~50の核酸
塩基、9~40の核酸塩基、9~35の核酸塩基、9~30の核酸塩基、9~25の核酸
塩基、9~20の核酸塩基、9~15の核酸塩基、10~50の核酸塩基、10~40の
核酸塩基、10~35の核酸塩基、10~30の核酸塩基、10~25の核酸塩基、10
~20の核酸塩基、10~15の核酸塩基、11~50の核酸塩基、11~40の核酸塩
基、11~35の核酸塩基、11~30の核酸塩基、11~25の核酸塩基、11~20
の核酸塩基、11~15の核酸塩基、12~50の核酸塩基、12~40の核酸塩基、1
2~35の核酸塩基、12~30の核酸塩基、12~25の核酸塩基、12~20の核酸
塩基、または12~15の核酸塩基から成る。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリ
ゴマーは、タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の標的部分に、少なくとも8
0%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少
なくとも99%、または100%相補的である。幾つかの実施形態では、RIC mRN
A前駆体の標的部分は、SEQ ID NO:437-439から選択される配列内にある
。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO:3-436の
いずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、
94%、95%、96%、97%、98%、または99%配列同一性であるヌクレオチド
配列を含む。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO:3
-436から選択されるヌクレオチド配列を含む。幾つかの実施形態では、細胞は、標的
タンパク質または機能RNAをコードする遺伝子から転写されたRIC mRNA前駆体
の集団を含み、ここでRIC mRNA前駆体の集団は、2つ以上の保持されたイントロ
ンを含み、アンチセンスオリゴマーは、RICmRNA前駆体の集団における最も豊富な
保持されたイントロンに結合する。幾つかの実施形態では、最も豊富な保持されたイント
ロンへのアンチセンスオリゴマーの結合は、RIC mRNA前駆体の集団からの2つ以
上の保持されたイントロンのスプライシングアウトを誘発し、標的タンパク質または機能
RNAをコードするmRNAを産生する。幾つかの実施形態では、細胞は、標的タンパク
質または機能RNAをコー
ドする遺伝子から転写されたRIC mRNA前駆体の集団を含み、ここでRIC mRN
A前駆体の集団は、2つ以上の保持されたイントロンを含み、アンチセンスオリゴマーは
、RIC mRNA前駆体の集団において2番目に豊富な保持されたイントロンに結合す
る。幾つかの実施形態では、2番目に豊富な保持されたイントロンへのアンチセンスオリ
ゴマーの結合は、RIC mRNA前駆体の集団からの2つ以上の保持されたイントロン
のスプライシングアウトを誘発し、標的タンパク質または機能RNAをコードするmRN
Aを産生する。幾つかの実施形態では、疾病は、疾患また障害である。幾つかの実施形態
では、疾患または疾病は、アラジール症候群または筋ジストロフィーである。幾つかの実
施形態では、標的タンパク質およびRIC mRNA前駆体は、JAG1遺伝子によって
コードされる。幾つかの実施形態では、方法は、JAG1タンパク質発現を評価する工程
をさらに含む。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、JAG1 RIC m
RNA前駆体の標的部分に結合し、ここで標的部分は、SEQ ID NO:49、50、
51、52、53、54、55、56、および57から選択される配列内にある。幾つか
の実施形態では、被検体はヒトである。幾つかの実施形態では、被験体はヒト以外の動物
である。幾つかの実施形態では、被験体は、胎児、胚、または小児である。幾つかの実施
形態では、細胞はエクスビボにある。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは
、被験体の腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、または静脈内注射によって投与される。
幾つかの実施形態では、5’スプライス部位に隣接しているエクソンの-3eから-1e
および保持されたイントロンの+1から+6での9つのヌクレオチドは、対応する野生型
配列と同一である。幾つかの実施形態では、保持されたイントロンの-15から-1およ
び3’スプライス部位に隣接しているエクソンの+1eでの16のヌクレオチドは、対応
する野生型配列と同一である。
【0007】
本明細書には、特定の実施形態において、上記の方法に使用されるアンチセンスオリゴ
マーが開示される。
【0008】
本明細書には、特定の実施形態において、SEQ ID NO:3-436のいずれか1
つに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、または100%の配
列同一性を有する配列を含むアンチセンスオリゴマーが開示される。
【0009】
本明細書には、特定の実施形態において、上記のアンチセンスオリゴマーおよび賦形剤
を含む医薬組成物が開示される。
【0010】
本明細書には、特定の実施形態において、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、または
静脈内注射により上記の医薬組成物を投与することによって必要としている被験体を処置
する方法が開示される。
【0011】
本明細書には、特定の実施形態において、タンパク質不足または機能RNA不足に関係
する必要としている被験体のアラジール症候群を処置するために細胞によって標的タンパ
ク質または機能RNAの発現を増加させる方法に使用するための、アンチセンスオリゴマ
ーを含む組成物が開示され、ここでタンパク質不足または機能RNA不足は、被験体にお
ける量または活性の不足であり、アンチセンスオリゴマーは、標的タンパク質または機能
RNAをコードする保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体
)の構成的スプライシングを増強し、ここで標的タンパク質は、(a)不足したタンパク
質;または(b)被験体において不足したタンパク質を機能的に増強または交換する、補
償するタンパク質であり、および機能RNAは、(a)不足したRNA;または(b)被
験体において不足した機能RNAを機能的に増強または交換する、補償する機能RNAで
あり、ここでRIC mRNA前駆体は、保持されたイントロン、5’スプライス部位に
隣接しているエクソン、および3’スプライス部位に隣接しているエクソンを含み、保持
されたイントロンは、標的タンパク質または機能RNAをコードするRIC mRNA前
駆体からスプライシングされ、それによって、被験体において標的タンパク質または機能
RNAの産生または活性を増加させる。幾つかの実施形態において、本明細書にはまた、
必要としている被験体においてJAG1タンパク質に関係する疾病を処置する方法に使用
するための、アンチセンスオリゴマーを含む組成物が開示され、該方法は、被験体の細胞
によってJAG1タンパク質の発現を増加させる工程を含み、ここで細胞は、保持された
イントロン、保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソン、およ
び保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンを含む、保持され
たイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)を有し、RIC mRNA前
駆体は、JAG1タンパク質をコードし、該方法はまた、細胞をアンチセンスオリゴマー
と接触させる工程を含み、それによって、保持されたイントロンは、JAG1タンパク質
をコードするRIC mRNA前駆体の転写産物から構成的にスプライシングされ、それ
により、被験体の細胞内で、JAG1タンパク質をコードするmRNAのレベルを増加さ
せ、標的タンパク質または機能RNAの発現を増加させる。幾つかの実施形態では、疾病
は、疾患また障害である。幾つかの実施形態では、疾患または疾病は、アラジール症候群
または筋ジストロフィーである。幾つかの実施形態では、標的タンパク質およびRIC
mRNA前駆体は、JAG1遺伝子によってコードされる。幾つかの実施形態では、アン
チセンスオリゴマーは、保持されたイントロンにおいて、保持されたイントロンの5’ス
プライス部位に対する+6の領域から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対
する-16の領域内にある、RIC mRNA前駆体の一部を標的とする。幾つかの実施
形態では、アンチセンスオリゴマーは、保持されたイントロンにおいて、(a)保持され
たイントロンの5’スプライス部位に対する+6から+100の領域内;または(b)保
持されたイントロンの3’スプライス部位に対する-16から-100の領域内にある。
幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、少なくとも1つの保持されたイント
ロンの5’スプライス部位の約100のヌクレオチド下流から、少なくとも1つの保持さ
れたイントロンの3’スプライス部位の約100のヌクレオチド上流までの領域内にある
、RIC mRNA前駆体の一部を標的とする。幾つかの実施形態では、RIC mRNA
前駆体の標的部分は、(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接している
エクソンにおける+2eから-4eの領域内;または(b)保持されたイントロンの3’
スプライス部位に隣接しているエクソンにおける+2eから-4eの領域内にある。幾つ
かの実施形態では、RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:1に対して少なくと
も約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%
の配列同一性を有する遺伝子配列によってコードされる。幾つかの実施形態では、RIC
mRNA前駆体は、SEQ ID NO:2に対して少なくとも約80%、85%、90
%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列
を含む。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、標的タンパク質または機能
RNAをコードする遺伝子から転写されたmRNA前駆体の選択的スプライシングを調節
することにより標的タンパク質または機能RNAの量を増加させない。幾つかの実施形態
では、アンチセンスオリゴマーは、標的タンパク質または機能RNAをコードする遺伝子
の突然変異から結果として生じる異常スプライシングを調節することにより標的タンパク
質または機能RNAの量を増加させない。幾つかの実施形態では、RIC mRNA前駆
体は、全長mRNA前駆体または野生型mRNA前駆体から部分的スプライシングによっ
て産生された。幾つかの実施形態では、標的タンパク質または機能RNAをコードするm
RNAは、全長成熟mRNAまたは野生型成熟mRNAである。幾つかの実施形態では、
産生される標的タンパク質は、全長タンパク質または野生型タンパク質である。幾つかの
実施形態では、保持されたイントロンは、律速の(rate-limiting)イント
ロンである。幾つかの実施形態では、保持されたイントロンは、RIC mRNA前駆体
において最も豊富な保持されたイントロンである。幾つかの実施形態では、保持されたイ
ントロンは、RIC mRNA前駆体において2番目に豊富な保持されたイントロンであ
る。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、ホスホロチオエート結合または
ホスホロジアミデート結合を含む骨格修飾を含む。幾つかの実施形態では、アンチセンス
オリゴマーは、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。幾つかの実施形態では、アンチ
センスオリゴマーは、ホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド核酸、ペプチド核酸、
2’-O-メチル、2’-フルオロ、または2’-O-メトキシエチル部分を含む。幾つ
かの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、少なくとも1つの修飾された糖部を含む
。幾つかの実施形態では、各糖部は、修飾された糖部である。幾つかの実施形態では、ア
ンチセンスオリゴマーは、8~50の核酸塩基、8~40の核酸塩基、8~35の核酸塩
基、8~30の核酸塩基、8~25の核酸塩基、8~20の核酸塩基、8~15の核酸塩
基、9~50の核酸塩基、9~40の核酸塩基、9~35の核酸塩基、9~30の核酸塩
基、9~25の核酸塩基、9~20の核酸塩基、9~15の核酸塩基、10~50の核酸
塩基、10~40の核酸塩基、10~35の核酸塩基、10~30の核酸塩基、10~2
5の核酸塩基、10~20の核酸塩基、10~15の核酸塩基、11~50の核酸塩基、
11~40の核酸塩基、11~35の核酸塩基、11~30の核酸塩基、11~25の核
酸塩基、11~20の核酸塩基、11~15の核酸塩基、12~50の核酸塩基、12~
40の核酸塩基、12~35の核酸塩基、12~30の核酸塩基、12~25の核酸塩基
、12~20の核酸塩基、または12~15の核酸塩基から成る。幾つかの実施形態では
、アンチセンスオリゴマーは、タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の標的部
分に、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少
なくとも98%、少なくとも99%、または100%相補的である。幾つかの実施形態で
は、アンチセンスオリゴマーは、JAG1 RIC mRNA前駆体の標的部分に結合し、
ここで標的部分は、SEQ ID NO:437-439から選択される配列内にある。幾
つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO:3-436のいず
れか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94
%、95%、96%、97%、98%、または99%配列同一性であるヌクレオチド配列
を含む。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO:3-4
36から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0012】
本明細書には、特定の実施形態において、上記の組成物のいずれかのアンチセンスオリ
ゴマー、および賦形剤を含む医薬組成物が開示される。幾つかの実施形態において、本明
細書にはまた、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、または静脈内注射により医薬組成物
を投与することによって、必要としている被験体を処置する方法が記載される。
【0013】
本明細書には、特定の実施形態において、不足したJAG1 mRNAの転写産物の標
的配列にハイブリダイズするアンチセンスオリゴマー、および薬学的に許容可能な賦形剤
を含む、医薬組成物が開示され、ここで不足したJAG1 mRNAの転写産物は保持さ
れたイントロンを含み、アンチセンスオリゴマーは、不足したJAG1 mRNAの転写
産物からの保持されたイントロンのスプライシングアウトを誘発する。幾つかの実施形態
では、不足したJAG1 mRNAの転写産物は、JAG1 RIC mRNA前駆体の転
写産物である。幾つかの実施形態では、JAG1 RIC mRNA前駆体の転写産物の標
的部分は、保持されたイントロンにおいて、保持されたイントロンの5’スプライス部位
に対する+6の領域から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対する-16の
領域内にある。幾つかの実施形態では、JAG1 RIC mRNA前駆体の転写産物は、
SEQ ID NO:1に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%
、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する遺伝子配列によってコー
ドされる。幾つかの実施形態では、JAG1 RIC mRNA前駆体の転写産物は、SE
Q ID NO:2に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97
%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列を含む。幾つかの実施形態
では、アンチセンスオリゴマーは、ホスホロチオエート結合またはホスホロジアミデート
結合を含む骨格修飾を含む。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、アンチ
センスオリゴヌクレオチドである。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、
ホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド核酸、ペプチド核酸、2’-O-メチル、2
’-フルオロ、または2’-O-メトキシエチル部分を含む。幾つかの実施形態では、ア
ンチセンスオリゴマーは、少なくとも1つの修飾された糖部を含む。アンチセンスオリゴ
マーは、8~50の核酸塩基、8~40の核酸塩基、8~35の核酸塩基、8~30の核
酸塩基、8~25の核酸塩基、8~20の核酸塩基、8~15の核酸塩基、9~50の核
酸塩基、9~40の核酸塩基、9~35の核酸塩基、9~30の核酸塩基、9~25の核
酸塩基、9~20の核酸塩基、9~15の核酸塩基、10~50の核酸塩基、10~40
の核酸塩基、10~35の核酸塩基、10~30の核酸塩基、10~25の核酸塩基、1
0~20の核酸塩基、10~15の核酸塩基、11~50の核酸塩基、11~40の核酸
塩基、11~35の核酸塩基、11~30の核酸塩基、11~25の核酸塩基、11~2
0の核酸塩基、11~15の核酸塩基、12~50の核酸塩基、12~40の核酸塩基、
12~35の核酸塩基、12~30の核酸塩基、12~25の核酸塩基、12~20の核
酸塩基、または12~15の核酸塩基を含む。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリ
ゴマーは、JAG1 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分に、少なくとも80%
、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なく
とも99%、または100%相補的である。幾つかの実施形態では、JAG1 RIC m
RNA前駆体の転写産物の標的部分は、SEQ ID NO:437-439から選択され
る配列内にある。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO
:3-436のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、91%、9
2%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%配列同一性であ
るヌクレオチド配列を含む。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、SEQ
ID NO:3-436から選択されるヌクレオチド配列を含む。幾つかの実施形態では
、医薬組成物は、髄腔内注射、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射または静
脈内注射のために製剤される。
【0014】
本明細書には、特定の実施形態において、ツベリンタンパク質の機能形態をコードする
十分に処理されたJAG1 mRNAの転写産物を産生するために、保持されたイントロ
ンの除去を促進するように不足したJAG1 mRNAの転写産物の処理を誘発する方法
が開示され、該方法は、(a)アンチセンスオリゴマーを被験体の標的細胞と接触させる
工程;(b)アンチセンスオリゴマーを不足したJAG1 mRNAの転写産物にハイブ
リダイズする工程であって、不足したJAG1 mRNAの転写産物が、ツベリンタンパ
ク質の機能形態をコードすることができ、少なくとも1つの保持されたイントロンを含む
、工程;(c)ツベリンタンパク質の機能形態をコードする十分に処理されたJAG1
mRNAの転写産物を産生するために、不足したJAG1 mRNAの転写産物から少な
くとも1つの保持されたイントロンを除去する工程;および(d)十分に処理されたJA
G1 mRNAの転写産物からツベリンタンパク質の機能形態を翻訳する工程を含む。幾
つかの実施形態では、保持されたイントロンは、保持されたイントロン全体である。幾つ
かの実施形態では、不足したJAG1 mRNAの転写産物は、JAG1 RIC mRN
A前駆体の転写産物である。
【0015】
本明細書には、特定の実施形態において、JAG1タンパク質の量または活性の不足に
よって引き起こされた疾病を有する被験体を処置する方法が開示され、該方法は、SEQ
ID NO:3-436のいずれか1つに対して、少なくとも約80%、85%、90%
、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の
配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むアンチセンスオリゴマーを被験体に投与する
工程を含む。
【0016】
<参照による組み込み>
本明細書で言及されるすべての出版物、特許、および特許出願は、あたかも個々の出版
物、特許、または特許出願が参照により組み込まれるように具体的かつ個々に指示される
程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
本願は以下の発明を包含する。
[項目1] 被験体の細胞により標的タンパク質又は機能RNAの発現を増加させること
によって必要としている被験体のアラジール症候群を処置する方法であって、該細胞は、
保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)を有し、該RIC
mRNA前駆体は、保持されたイントロン、5’スプライス部位に隣接しているエクソン
、及び3’スプライス部位に隣接しているエクソンを含み、ここでRIC mRNA前駆
体は、標的タンパク質又は機能RNAをコードし、該方法は、被験体の細胞を、標的タン
パク質又は機能RNAをコードするRIC mRNA前駆体の標的部分に相補的なアンチ
センスオリゴマー(ASO)と接触させる工程を含み、それによって、保持されたイント
ロンは、標的タンパク質又は機能RNAをコードするRIC mRNA前駆体から構成的
にスプライシングされ、それにより、被験体の細胞内で、標的タンパク質又は機能RNA
をコードするmRNAのレベルを増加させ、標的タンパク質又は機能RNAの発現を増加
させる、方法。
[項目2] 保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)を有
している細胞によってJAG1である標的タンパク質の発現を増加させる方法であって、
該RIC mRNA前駆体は、保持されたイントロン、保持されたイントロンの5’スプ
ライス部位に隣接しているエクソン、及び保持されたイントロンの3’スプライス部位に
隣接しているエクソンを含み、ここでRIC mRNA前駆体はJAG1タンパク質をコ
ードし、該方法は、細胞を、JAG1タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の
標的部分に相補的なアンチセンスオリゴマー(ASO)と接触させる工程を含み、それに
よって、保持されたイントロンは、JAG1タンパク質をコードするRIC mRNA前
駆体から構成的にスプライシングされ、それにより、細胞内で、JAG1タンパク質をコ
ードするmRNAのレベルを増加させ、JAG1タンパク質の発現を増加させる、方法。
[項目3] 標的タンパク質がJAG1である、項目1に記載の方法。
[項目4] 標的タンパク質又は機能RNAが、被験体において量又は活性が不足してい
る標的タンパク質又は機能RNAを機能的に増強又は交換する、補償するタンパク質又は
補償する機能RNAである、項目1に記載の方法。
[項目5] 細胞が、JAG1タンパク質の量又は活性の不足によって引き起こされた疾
病を有する被験体内にあるか又は被験体に由来する、項目2に記載の方法。
[項目6] 標的タンパク質の量の不足が、標的タンパク質のハプロ不全によって引き起
こされ、ここで被験体は、機能的な標的タンパク質をコードする第1の対立遺伝子、及び
標的タンパク質が産生されない第2の対立遺伝子、又は非機能性の標的タンパク質をコー
ドする第2の対立遺伝子を有し、アンチセンスオリゴマーは、第1の対立遺伝子から転写
されたRIC mRNA前駆体の標的部分に結合する、項目1~5のいずれか1項に記載
の方法。
[項目7] 被験体が、標的タンパク質の量又は機能の不足から結果として生じる障害に
よって引き起こされた疾病を有し、ここで被験体が、
a.第1の変異対立遺伝子であって、
i.標的タンパク質が、野生型対立遺伝子からの産生と比較して、低下したレベルで産
生される、
ii.標的タンパク質が、同等の野生型タンパク質と比較して、機能が低下した形態で
産生される、又は
iii.標的タンパク質が産生されない、第1の変異対立遺伝子、及び
b.第2の変異対立遺伝子であって、
i.標的タンパク質が、野生型対立遺伝子からの産生と比較して、低下したレベルで産
生される、
ii.標的タンパク質が、同等の野生型タンパク質と比較して、機能が低下した形態で
産生される、又は
iii.標的タンパク質が産生されない、第2の変異対立遺伝子を有し、及び
ここで被験体が、a.iii.の第1の変異対立遺伝子を有するときに、第2の変異対
立遺伝子は、b.i.又はb.ii.の変異対立遺伝子であり、被験体が、b.iii.
の第2の変異対立遺伝子を有するときに、第1の変異対立遺伝子は、a.i.又はa.i
i.の変異対立遺伝子であり、及びRIC mRNA前駆体は、a.i.又はa.ii.
である第1の変異対立遺伝子及び/又はb.i.又はb.ii.である第2の変異対立遺
伝子のいずれかから転写される、項目1~5のいずれか1項に記載の方法。
[項目8] 標的タンパク質が、同等の野生型タンパク質と比較して機能が低下した形態
で産生される、項目7に記載の方法。
[項目9] 標的タンパク質が、同等の野生型タンパク質と比較して完全に機能的である
形態で産生される、項目7に記載の方法。
[項目10] RIC mRNA前駆体の標的部分が、保持されたイントロンにおいて、
保持されたイントロンの5’スプライス部位に対する+6の領域から、保持されたイント
ロンの3’スプライス部位に対する-16の領域内にある、項目1~9のいずれか1項に
記載の方法。
[項目11] RIC mRNA前駆体の標的部分が、保持されたイントロンにおいて、
(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に対する、+6から+500、+6
から+400、+6から300、+6から200、又は+6から+100の領域内;又は
(b)保持されたイントロンの3’スプライス部位に対する、-16から-500、-
16から-400、-16から-300、-16から-200、又は-16から-100
の領域内にある、項目1~9のいずれか1項に記載の方法。
[項目12] RIC mRNA前駆体の標的部分が、
(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソンにおける+
2eから-4eの領域内;又は
(b)保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンにおける+
2eから-4eの領域内にある、項目1~9のいずれか1項に記載の方法。
[項目13] RIC mRNA前駆体が、SEQ ID NO:1に対して、少なくとも
約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配
列同一性を有する遺伝子配列によってコードされる、項目1~12のいずれか1項に記載
の方法。
[項目14] RIC mRNA前駆体が、SEQ ID NO:2に対して少なくとも約
80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列
同一性を有する配列を含む、項目1~13のいずれか1項に記載の方法。
[項目15] アンチセンスオリゴマーが、機能RNA又は標的タンパク質をコードする
遺伝子から転写されたmRNA前駆体の選択的スプライシングを調節することにより標的
タンパク質又は機能RNAの量を増加させない、項目1~14のいずれか1項に記載の方
法。
[項目16] アンチセンスオリゴマーが、標的タンパク質又は機能RNAをコードする
遺伝子の突然変異から結果として生じる異常スプライシングを調節することにより標的タ
ンパク質または機能RNAの量を増加させない、項目1~15のいずれか1項に記載の方
法。
[項目17] RIC mRNA前駆体が、全長mRNA前駆体の部分的スプライシング
又は野生型mRNA前駆体の部分的スプライシングによって産生された、項目1~16の
いずれか1項に記載の方法。
[項目18] 標的タンパク質又は機能RNAをコードするmRNAが、全長成熟mRN
A又は野生型成熟mRNAである、項目1~17のいずれか1項に記載の方法。
[項目19] 産生される標的タンパク質が、全長タンパク質又は野生型タンパク質であ
る、項目1~18のいずれか1項に記載の方法。
[項目20] アンチセンスオリゴマーと接触させられた細胞内で産生された標的タンパ
ク質又は機能RNAをコードするmRNAの総量は、対照細胞において産生された標的タ
ンパク質又は機能RNAをコードするmRNAの総量と比較して、約1.1倍から約10
倍、約1.5倍から約10倍、約2倍から約10倍、約3倍から約10倍、約4倍から約
10倍、約1.1倍から約5倍、約1.1倍から約6倍、約1.1倍から約7倍、約1.
1倍から約8倍、約1.1倍から約9倍、約2倍から約5倍、約2倍から約6倍、約2倍
から約7倍、約2倍から約8倍、約2倍から約9倍、約3倍から約6倍、約3倍から約7
倍、約3倍から約8倍、約3倍から約9倍、約4倍から約7倍、約4倍から約8倍、約4
倍から約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少な
くとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少な
くとも約5倍、又は少なくとも約10倍増加される、項目1~19のいずれか1項に記載
の方法。
[項目21] アンチセンスオリゴマーと接触させられた細胞によって産生された標的タ
ンパク質の総量は、対照細胞によって産生された標的タンパク質の総量と比較して、約1
.1倍から約10倍、約1.5倍から約10倍、約2倍から約10倍、約3倍から約10
倍、約4倍から約10倍、約1.1倍から約5倍、約1.1倍から約6 倍、約1.1倍
から約7倍、約1.1倍から約8倍、約1.1倍から約9倍、約2倍から約5倍、約2倍
から約6倍、約2倍から約7倍、約2倍から約8倍、約2倍から約9倍、約3倍から約6
倍、約3 倍から約7倍、約3倍から約8倍、約3倍から約9倍、約4倍から約7倍、約
4倍から約8倍、約4倍から約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少
なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少
なくとも約4倍、少なくとも約5倍、又は少なくとも約10倍増加される、項目1~20
のいずれか1項に記載の方法。
[項目22] アンチセンスオリゴマーが、ホスホロチオエート結合又はホスホロジアミ
デート結合を含む骨格修飾を含む、項目1~21のいずれか1項に記載の方法。
[項目23] アンチセンスオリゴマーが、ホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド
核酸、ペプチド核酸、2’-O-メチル、2’-フルオロ、又は2’-O-メトキシエチ
ル部分を含む、項目1~22のいずれか1項に記載の方法。
[項目24] アンチセンスオリゴマーが、少なくとも1つの修飾された糖部を含む、項
目1~23のいずれか1項に記載の方法。
[項目25] 各糖部が、修飾された糖部である、項目24に記載の方法。
[項目26] アンチセンスオリゴマーが、8~50の核酸塩基、8~40の核酸塩基、
8~35の核酸塩基、8~30の核酸塩基、8~25の核酸塩基、8~20の核酸塩基、
8~15の核酸塩基、9~50の核酸塩基、9~40の核酸塩基、9~35の核酸塩基、
9~30の核酸塩基、9~25の核酸塩基、9~20の核酸塩基、9~15の核酸塩基、
10~50の核酸塩基、10~40の核酸塩基、10~35の核酸塩基、10~30の核
酸塩基、10~25の核酸塩基、10~20の核酸塩基、10~15の核酸塩基、11~
50の核酸塩基、11~40の核酸塩基、11~35の核酸塩基、11~30の核酸塩基
、11~25の核酸塩基、11~20の核酸塩基、11~15の核酸塩基、12~50の
核酸塩基、12~40の核酸塩基、12~35の核酸塩基、12~30の核酸塩基、12
~25の核酸塩基、12~20の核酸塩基、又は12~15の核酸塩基から成る、項目1
~25のいずれか1項に記載の方法。
[項目27] アンチセンスオリゴマーが、タンパク質をコードするRIC mRNA前
駆体の標的部分に、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくと
も95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%相補的である、項目1~
26のいずれか1項に記載の方法。
[項目28] RIC mRNA前駆体の標的部分が、SEQ ID NO:437~43
9から選択される配列内にある、項目1~27のいずれか1項に記載の方法。
[項目29] アンチセンスオリゴマーが、SEQ ID NO:3~436のいずれか1
つに対して、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、
95%、96%、97%、98%、又は99%配列同一性であるヌクレオチド配列を含む
、項目1~28のいずれか1項に記載の方法。
[項目30] アンチセンスオリゴマーが、SEQ ID NO:3~436から選択され
るヌクレオチド配列を含む、項目1~28のいずれか1項に記載の方法。
[項目31] 細胞が、標的タンパク質又は機能RNAをコードする遺伝子から転写され
たRIC mRNA前駆体の集団を含み、ここでRIC mRNA前駆体の集団は、2つ以
上の保持されたイントロンを含み、アンチセンスオリゴマーは、RIC mRNA前駆体
の集団において最も豊富な保持されたイントロンに結合する、項目1~30のいずれか1
項に記載の方法。
[項目32] 最も豊富な保持されたイントロンへのアンチセンスオリゴマーの結合が、
標的タンパク質又は機能RNAをコードするmRNAを産生するために、RIC mRN
A前駆体の集団からの2つ以上の保持されたイントロンのスプライシングアウトを誘発す
る、項目31に記載の方法。
[項目33] 細胞が、標的タンパク質又は機能RNAをコードする遺伝子から転写され
たRIC mRNA前駆体の集団を含み、ここでRIC mRNA前駆体の集団は、2つ以
上の保持されたイントロンを含み、アンチセンスオリゴマーは、RIC mRNA前駆体
の集団において2番目に豊富な保持されたイントロンに結合する、項目1~30のいずれ
か1項に記載の方法。
[項目34] 2番目に豊富な保持されたイントロンへのアンチセンスオリゴマーの結合
が、標的タンパク質又は機能RNAをコードするmRNAを産生するために、RIC m
RNA前駆体の集団からの2つ以上の保持されたイントロンのスプライシングアウトを誘
発する、項目33に記載の方法。
[項目35] 疾病が、疾患また障害である、項目5~34のいずれか1項に記載の方法
。
[項目36] 疾患又は障害が、アラジール症候群又は筋ジストロフィーである、項目3
5に記載の方法。
[項目37] 標的タンパク質及びRIC mRNA前駆体が、JAG1遺伝子によって
コードされる、項目36に記載の方法。
[項目38] JAG1タンパク質発現を評価する工程をさらに含む、項目1~37のい
ずれか1項に記載の方法。
[項目39] アンチセンスオリゴマーが、JAG1 RIC mRNA前駆体の標的部分
に結合し、ここで標的部分は、SEQ ID NO:49、50、51、52、53、54
、55、56、及び57から選択される配列内にある、項目1~38のいずれか1項に記
載の方法。
[項目40] 被験体がヒトである、項目1~39のいずれか1項に記載の方法。
[項目41] 被験体がヒト以外の動物である、項目1~39のいずれか1項に記載の方
法。
[項目42] 被験体が、胎児、胚、又は小児である、項目1~40のいずれか1項に記
載の方法。
[項目43] 細胞がエクスビボにある、項目1~41のいずれか1項に記載の方法。
[項目44] アンチセンスオリゴマーが、被験体の腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射
、又は静脈内注射によって投与される、項目1~41のいずれか1項に記載の方法。
[項目45] 5’スプライス部位に隣接しているエクソンの-3eから-1e及び保持
されたイントロンの+1から+6での9つのヌクレオチドが、対応する野生型配列と同一
である、項目1~44のいずれか1項に記載の方法。
[項目46] 保持されたイントロンの-15から-1及び3’スプライス部位に隣接し
ているエクソンの+1eでの16のヌクレオチドは、対応する野生型配列と同一である、
項目1~45のいずれか1項に記載の方法。
[項目47] 項目1~39のいずれか1項の方法で使用される、アンチセンスオリゴマ
ー。
[項目48] SEQ ID NO:3~436のいずれか1つに対して、少なくとも約8
0%、85%、90%、95%、97%、又は100%の配列同一性を有する配列を含む
、アンチセンスオリゴマー。
[項目49] 項目47又は48のアンチセンスオリゴマー及び賦形剤を含む、医薬組成
物。
[項目50] 腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、又は静脈内注射により医薬組成物を
投与することによって必要としている被験体を処置する方法。
[項目51] タンパク質不足又は機能RNA不足に関係する必要としている被験体のア
ラジール症候群を処置するために細胞によって標的タンパク質又は機能RNAの発現を増
加させる方法に使用するためのアンチセンスオリゴマーを含む組成物であって、ここでタ
ンパク質不足又は機能RNA不足は、被験体における量又は活性の不足であり、アンチセ
ンスオリゴマーは、標的タンパク質又は機能RNAをコードする保持されたイントロン含
有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)の構成的スプライシングを増強し、ここで
標的タンパク質は、
(a)不足したタンパク質;又は
(b)被験体において不足したタンパク質を機能的に増強又は交換する、補償するタン
パク質であり、
及び機能RNAは、
(a)不足したRNA;又は
(b)被験体において不足した機能RNAを機能的に増強又は交換する、補償する機能
RNAであり、
ここでRIC mRNA前駆体は、保持されたイントロン、5’スプライス部位に隣接し
ているエクソン、及び3’スプライス部位に隣接しているエクソンを含み、保持されたイ
ントロンは、標的タンパク質又は機能RNAをコードするRIC mRNA前駆体からス
プライシングされ、それによって、被験体において標的タンパク質又は機能RNAの産生
又は活性を増加させる、組成物。
[項目52] 必要としている被験体においてJAG1タンパク質に関係する疾病を処置
する方法に使用するためのアンチセンスオリゴマーを含む組成物であって、該方法は、被
験体の細胞によってJAG1タンパク質の発現を増加させる工程を含み、ここで細胞は、
保持されたイントロン、保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接しているエク
ソン、及び保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンを含む、
保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体) を有し、RIC
mRNA前駆体は、JAG1タンパク質をコードし、該方法はまた、細胞をアンチセンス
オリゴマーと接触させる工程を含み、それによって、保持されたイントロンは、JAG1
タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の転写産物から構成的にスプライシング
され、それにより、被験体の細胞内で、JAG1タンパク質をコードするmRNAのレベ
ルを増加させ、標的タンパク質又は機能RNAの発現を増加させる、組成物。
[項目53] 疾病が、疾患また障害である、項目52に記載の組成物。
[項目54] 疾患又は障害が、アラジール症候群又は筋ジストロフィーである、項目5
3に記載の組成物。
[項目55] 標的タンパク質及びRIC mRNA前駆体が、JAG1遺伝子によって
コードされる、項目54に記載の組成物。
[項目56] アンチセンスオリゴマーが、保持されたイントロンにおいて、保持された
イントロンの5’スプライス部位に対する+6の領域から、保持されたイントロンの3’
スプライス部位に対する-16の領域内にある、RIC mRNA前駆体の一部を標的と
する、項目51~55のいずれか1項に記載の組成物。
[項目57] アンチセンスオリゴマーが、保持されたイントロンにおいて、
(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に対する+6から+100の領域内
;又は
(b)保持されたイントロンの3’スプライス部位に対する-16から-100の領域
内にある、RIC mRNA前駆体の一部を標的とする、項目51~56のいずれか1項
に記載の組成物。
[項目58] アンチセンスオリゴマーが、少なくとも1つの保持されたイントロンの5
’スプライス部位の約100のヌクレオチド下流から、少なくとも1つの保持されたイン
トロンの3’スプライス部位の約100のヌクレオチド上流までの領域内にある、RIC
mRNA前駆体の一部を標的とする、項目51~57のいずれか1項に記載の組成物。
[項目59] RIC mRNA前駆体の標的部分が、
(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソンにおける+
2eから-4eの領域内;又は
(b)保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンにおける+
2eから-4eの領域内にある、項目51~57のいずれか1項に記載の組成物。
[項目60] RIC mRNA前駆体が、SEQ ID NO:1に対して、少なくとも
約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配
列同一性を有する遺伝子配列によってコードされる、項目51~59のいずれか1項に記
載の組成物。
[項目61] RIC mRNA前駆体が、SEQ ID NO:2に対して、少なくとも
約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配
列同一性を有する配列を含む、項目51~60のいずれか1項に記載の組成物。
[項目62] アンチセンスオリゴマーが、標的タンパク質又は機能RNAをコードする
遺伝子から転写されたmRNA前駆体の選択的スプライシングを調節することにより標的
タンパク質又は機能RNAの量を増加させない、項目51~61のいずれか1項に記載の
組成物。
[項目63] アンチセンスオリゴマーが、標的タンパク質又は機能RNAをコードする
遺伝子の突然変異から結果として生じる異常スプライシングを調節することにより機能R
NA又は機能タンパク質の量を増加させない、項目51~62のいずれか1項に記載の組
成物。
[項目64] RIC mRNA前駆体が、全長mRNA前駆体又は野生型mRNA前駆
体から部分的スプライシングによって産生される、項目51~63のいずれか1項に記載
の組成物。
[項目65] 標的タンパク質又は機能RNAをコードするmRNAが、全長成熟mRN
A又は野生型成熟mRNAである、項目51~64のいずれか1項に記載の組成物。
[項目66] 産生される標的タンパク質が、全長タンパク質又は野生型タンパク質であ
る、項目51~65のいずれか1項に記載の組成物。
[項目67] 保持されたイントロンが、律速のイントロンである、項目51~66のい
ずれか1項に記載の組成物。
[項目68] 保持されたイントロンが、RIC mRNA前駆体において最も豊富な保
持されたイントロンである、項目51~67のいずれか1項に記載の組成物。
[項目69] 保持されたイントロンが、RIC mRNA前駆体において2番目に豊富
な保持されたイントロンである、項目51~67のいずれか1項に記載の組成物。
[項目70] アンチセンスオリゴマーが、ホスホロチオエート結合又はホスホロジアミ
デート結合を含む骨格修飾を含む、項目51~69のいずれか1項に記載の組成物。
[項目71] アンチセンスオリゴマーが、アンチセンスオリゴヌクレオチドである、項
目51~70のいずれか1項に記載の組成物。
[項目72] アンチセンスオリゴマーが、ホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド
核酸、ペプチド核酸、2’-O-メチル、2’-フルオロ、又は2’-O-メトキシエチ
ル部分を含む、項目51~71のいずれか1項に記載の組成物。
[項目73] アンチセンスオリゴマーが、少なくとも1つの修飾された糖部を含む、項
目51~72のいずれか1項に記載の組成物。
[項目74] 各糖部が、修飾された糖部である、項目73に記載の組成物。
[項目75] アンチセンスオリゴマーが、8~50の核酸塩基、8~40の核酸塩基、
8~35の核酸塩基、8~30の核酸塩基、8~25の核酸塩基、8~20の核酸塩基、
8~15の核酸塩基、9~50の核酸塩基、9~40の核酸塩基、9~35の核酸塩基、
9~30の核酸塩基、9~25の核酸塩基、9~20の核酸塩基、9~15の核酸塩基、
10~50の核酸塩基、10~40の核酸塩基、10~35の核酸塩基、10~30の核
酸塩基、10~25の核酸塩基、10~20の核酸塩基、10~15の核酸塩基、11~
50の核酸塩基、11~40の核酸塩基、11~35の核酸塩基、11~30の核酸塩基
、11~25の核酸塩基、11~20の核酸塩基、11~15の核酸塩基、12~50の
核酸塩基、12~40の核酸塩基、12~35の核酸塩基、12~30の核酸塩基、12
~25の核酸塩基、12~20の核酸塩基、又は12~15の核酸塩基から成る、項目5
1~74のいずれか1項に記載の組成物。
[項目76] アンチセンスオリゴマーが、タンパク質をコードするRIC mRNA前
駆体の標的部分に、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくと
も95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%相補的である、項目51
~75のいずれか1項に記載の組成物。
[項目77] アンチセンスオリゴマーが、JAG1 RIC mRNA前駆体の標的部分
に結合し、ここで標的部分は、SEQ ID NO:437~439から選択される配列内
にある、請求項51~76のいずれか1項に記載の組成物。
[項目78] アンチセンスオリゴマーが、SEQ ID NO:3~436のいずれか1
つに対して、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、
95%、96%、97%、98%、又は99%配列同一性であるヌクレオチド配列を含む
、項目51~77のいずれか1項に記載の組成物。
[項目79] アンチセンスオリゴマーが、SEQ ID NO:3~436から選択され
るヌクレオチド配列を含む、項目51~77のいずれか1項に記載の組成物。
[項目80] 項目51~79の組成物のいずれかのアンチセンスオリゴマー、及び賦形
剤を含む、医薬組成物。
[項目81] 腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、又は静脈内注射により項目80の医
薬組成物を投与することによって必要としている被験体を処置する方法。
[項目82] 不足したJAG1 mRNAの転写産物の標的配列にハイブリダイズする
アンチセンスオリゴマー、及び薬学的に許容可能な賦形剤を含む、医薬組成物であって、
ここで不足したJAG1 mRNAの転写産物は保持されたイントロンを含み、アンチセ
ンスオリゴマーは、不足したJAG1 mRNAの転写産物からの保持されたイントロン
のスプライシングアウトを誘発する、医薬組成物。
[項目83] 不足したJAG1 mRNAの転写産物が、JAG1 RIC mRNA前
駆体の転写産物である、項目82に記載の医薬組成物。
[項目84] JAG1 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分は、保持されたイ
ントロンにおいて、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対する+6の領域から
、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対する-16の領域内にある、項目82
又は83に記載の医薬組成物。
[項目85] JAG1 RIC mRNA前駆体の転写産物が、SEQ ID NO:1に
対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99
%又は100%の配列同一性を有する遺伝子配列によってコードされる、項目82~84
のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[項目86] JAG1 RIC mRNA前駆体の転写産物が、SEQ ID NO:2に
対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99
%又は100%の配列同一性を有する配列を含む、項目82~85のいずれか1項に記載
の医薬組成物。
[項目87] アンチセンスオリゴマーが、ホスホロチオエート結合又はホスホロジアミ
デート結合を含む骨格修飾を含む、項目82~86のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[項目88] アンチセンスオリゴマーが、アンチセンスオリゴヌクレオチドである、項
目82~87のいずれか1項に記載の医薬化合物。
[項目89] アンチセンスオリゴマーが、ホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド
核酸、ペプチド核酸、2’-O-メチル、2’-フルオロ、又は2’-O-メトキシエチ
ル部分を含む、項目82~88のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[項目90] アンチセンスオリゴマーが、少なくとも1つの修飾された糖部を含む、項
目82~89のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[項目91] アンチセンスオリゴマーが、8~50の核酸塩基、8~40の核酸塩基、
8~35の核酸塩基、8~30の核酸塩基、8~25の核酸塩基、8~20の核酸塩基、
8~15の核酸塩基、9~50の核酸塩基、9~40の核酸塩基、9~35の核酸塩基、
9~30の核酸塩基、9~25の核酸塩基、9~20の核酸塩基、9~15の核酸塩基、
10~50の核酸塩基、10~40の核酸塩基、10~35の核酸塩基、10~30の核
酸塩基、10~25の核酸塩基、10~20の核酸塩基、10~15の核酸塩基、11~
50の核酸塩基、11~40の核酸塩基、11~35の核酸塩基、11~30の核酸塩基
、11~25の核酸塩基、11~20の核酸塩基、11~15の核酸塩基、12~50の
核酸塩基、12~40の核酸塩基、12~35の核酸塩基、12~30の核酸塩基、12
~25の核酸塩基、12~20の核酸塩基、又は12~15の核酸塩基を含む、項目82
~90のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[項目92] アンチセンスオリゴマーが、JAG1 RIC mRNA前駆体の転写産物
の標的部分に、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも9
5%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%相補的である、項目82~9
1のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[項目93] JAG1 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分は、SEQ ID
NO:437~439から選択される配列内にある、項目82~92のいずれか1項に記
載の医薬組成物。
[項目94] アンチセンスオリゴマーが、SEQ ID NO:3~436のいずれか1
つに対して、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、
95%、96%、97%、98%、又は99%配列同一性であるヌクレオチド配列を含む
、項目82~93のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[項目95] アンチセンスオリゴマーが、SEQ ID NO:3~436から選択され
るヌクレオチド配列を含む、項目82~93のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[項目96] 医薬組成物が、髄腔内注射、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下
注射、又は静脈内注射のために製剤される、項目82~95のいずれか1項に記載の医薬
組成物。
[項目97] ツベリンタンパク質の機能形態をコードする十分に処理されたJAG1
mRNAの転写産物を産生するために、保持されたイントロンの除去を促進するように不
足したJAG1 mRNAの転写産物の処理を誘発する方法であって、該方法は、
(a)アンチセンスオリゴマーを被験体の標的細胞と接触させる工程;
(b)アンチセンスオリゴマーを不足したJAG1 mRNAの転写産物にハイブリダ
イズする工程であって、不足したJAG1 mRNAの転写産物が、ツベリンタンパク質
の機能形態をコードすることができ、少なくとも1つの保持されたイントロンを含む、工
程;
(c)ツベリンタンパク質の機能形態をコードする十分に処理されたJAG1 mRN
Aの転写産物を産生するために、不足したJAG1 mRNAの転写産物から少なくとも
1つの保持されたイントロンを除去する工程;及び
(d)十分に処理されたJAG1 mRNAの転写産物からツベリンタンパク質の機能
形態を翻訳する工程を含む、方法。
[項目98] 保持されたイントロンが、保持されたイントロン全体である、項目97に
記載の方法。
[項目99] 不足したJAG1 mRNAの転写産物が、JAG1 RIC mRNA前
駆体の転写産物である、項目97又は98に記載の方法。
[項目100] JAG1タンパク質の量又は活性の不足によって引き起こされた疾病を
有する被験体を処置する方法であって、該方法は、
SEQ ID NO:3~436のいずれか1つに対して、少なくとも約80%、85%
、90%、91%、92% 、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は
99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むアンチセンスオリゴマーを被験体に
投与する工程を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の新規な特徴は、特に、添付の特許請求の範囲内に明記される。本発明の諸原則
が利用される例示の実施形態について説明する以下の詳細な記載と、添付の図面を参照す
ることで、本発明の特徴および利点についてのよりよい理解が得られるであろう。
【
図1】
図1は、例示的な保持されたイントロン含有(RIC)mRNA前駆体の転写産物の概略図を示す。5’スプライス部位コンセンサス配列は、-3eから-1eおよび+1から+6(「e」のついた数字はエクソンであり、付いていない数字はイントロンである)の、下線部の文字(文字はヌクレオチド、大文字はエクソン部分、小文字はイントロン部分)で示される。3’スプライス部位コンセンサス配列は、-15から-1および+1e(「e」のついた数字はエクソンであり、ついていない数字はイントロンである)の、下線部の文字(文字はヌクレオチド、大文字はエクソン部分、小文字はイントロン部分)で示される。ASOスクリーニングのイントロンの標的部位は、保持されたイントロンの5’スプライス部位(左の矢印)に対応するヌクレオチド+6から、保持されたイントロンの3’スプライス部位(右の矢印)に対応するヌクレオチド-16までを含む。実施形態では、ASOスクリーニングのイントロンの標的部位は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対応するヌクレオチド+6から+100、および保持されたイントロンの3’スプライス部位に対応するヌクレオチド-16から-100を含む。エクソンの標的部位は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接するエクソンの+2eから-4e、および保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接する+2eから-4eのヌクレオチドを含む。「n」または「N」はヌクレオチドを表し、「y」はピリミジンを表す。図示された配列は、哺乳動物のスプライス部位のコンセンサス配列を表し、個々のイントロンおよびエクソンはすべての位置でコンセンサス配列をマッチングする必要があるとは限らない。
【
図2A】
図2Aは、核内遺伝子出力の標的化増大(Targeted Augmentation of Nuclear Gene Output)(TANGO)の概略図を示す。
図2Aは、核と細胞質区画に分割された細胞を示す。核では、エクソン(長方形)およびイントロン(接続線)からなる標的遺伝子のmRNA前駆体の転写産物は、mRNAを生成するためにスプライシングを受け、このmRNAは細胞質に輸送され、標的タンパク質に翻訳される。この標的遺伝子については、イントロン1のスプライシングは非効率的であり、保持されたイントロン含有(RIC)mRNA前駆体は、主として核に蓄積し、細胞質に輸送された場合は標的タンパク質産生に至ることなく劣化する。
図2Bは、核と細胞質区画に分割された同様の細胞の例を示す。アンチセンスオリゴマー(ASO)での処置は、イントロン1のスプライシングを促進し、かつmRNAの増加をもたらし、これは順に、高位レベルの標的タンパク質に翻訳される。
【
図2B】
図2Bは、核内遺伝子出力の標的化増大(Targeted Augmentation of Nuclear Gene Output)(TANGO)の概略図を示す。
図2Aは、核と細胞質区画に分割された細胞を示す。核では、エクソン(長方形)およびイントロン(接続線)からなる標的遺伝子のmRNA前駆体の転写産物は、mRNAを生成するためにスプライシングを受け、このmRNAは細胞質に輸送され、標的タンパク質に翻訳される。この標的遺伝子については、イントロン1のスプライシングは非効率的であり、保持されたイントロン含有(RIC)mRNA前駆体は、主として核に蓄積し、細胞質に輸送された場合は標的タンパク質産生に至ることなく劣化する。
図2Bは、核と細胞質区画に分割された同様の細胞の例を示す。アンチセンスオリゴマー(ASO)での処置は、イントロン1のスプライシングを促進し、かつmRNAの増加をもたらし、これは順に、高位レベルの標的タンパク質に翻訳される。
【
図3】
図3は、イントロン13をもつJAG1遺伝子中のイントロン保持を詳細に示す。RNA配列決定(RNAseq)を用いた、JAG1遺伝子中のイントロン保持事象の特定は、UCSCゲノムブラウザで視覚化され示される。上部パネルは、THLE-3(ヒト肝上皮)細胞中に発現し、細胞質(上部)または核分画(底部)のいずれかに局在するJAG1転写産物に対応する読取密度を示す。このパネルの底部には、JAG1遺伝子のグラフ表現が、目盛に合わせて示される。読取密度は、ピークとして示される。最も高い読取密度は、エクソン(ブラックボックス)に相当し、一方、いずれの細胞分画においてもイントロンの大半(矢印頭部を有する線)については、読取は観察されない。細胞質分画と比較してより高い読取密度は、核分画のイントロン13、18、および23(矢印が示す部分)で検出され、これはイントロン13、18、および23のスプライシング効率が低く、結果としてイントロン保持をもたらすことを示している。保持されたイントロン含有mRNA前駆体の転写産物は、主として核に蓄積し、JAG1タンパク質に翻訳されない。THLE-3細胞のイントロン13についての読取密度は、生物情報学的な分析によって計算されるとおり12%のイントロン保持を示す下部パネルに詳細に示される。
【
図4】
図4はJAG1遺伝子IVS 13 ASOウォークを示す。2’-OMe ASO、PS骨格を使用して、5’スプライス部位のすぐ下流、または3’スプライス部位の上流の配列を標的とする、JAG1 IVS 13に対して行われたASOウォークのグラフ表現が示される。ASOは、一度に5つのヌクレオチドの位置を変えることにより、これらの領域をカバーするように設計された。JAG1エクソン-イントロン構造は目盛に合わせて示される。
【
図5】
図5は、放射性のRT-PCRによって評価されるJAG1イントロン13 ASOウォークを示す。上部では、エクソン13-イントロン13-エクソン14の概略図(縮尺通りではない)は、RT-PCRアッセイに使用したプライマーForward1(F1)およびReverse1(R1)を示す。中央のパネルでは、代表的なゲルが、ARPE-19細胞中60nMの濃度で、JAG1偽処理(neg、RNAiMAXのみ)、ASO処理されたSMN-対照、または、イントロン13を標的とする2’-O-Me ASOで処理されたSMN-対照、の放射性RT-PCR産物を示す。下部パネルでは、2つの独立した実験から得られたベータアクチンに正規化されたJAG1放射性RT-PCR産物に対応するバンドの定量化を、偽処理した産物に対する倍数変化として棒グラフにプロットする。Y軸上で1と標識された黒線は、1の比率(変化なし)を示す。
【
図6】
図6は、RT-qPCRによって評価されたJAG1イントロン13 ASOウォークを示す。左上では、RT-qPCRアッセイの概略図はプライマー認識部位を示す。
図3に示すような放射性RT-PCRによって評価された同じASOトランスフェクション実験を用いて得られたRT-qPCR増幅結果を、βアクチン(上の棒グラフ)またはRPL32(下の棒グラフ)に正規化した偽処理した産物に対してプロットし、放射性RT-PCRの結果を確認する。Y軸上で1と標識された黒線は、1の比率(変化なし)を示す。
【
図7】
図7は、イントロン18をもつJAG1遺伝子中のイントロン保持を詳細に示す。JAG1遺伝子中のイントロン保持は、実施例中に本明細書に述べられているように、RNA配列決定(RNAseq)によって特定され、UCSCゲノムブラウザ中で視覚化された。THLE-3細胞のイントロン18についての読取密度が下のパネルに詳細に示され、生物情報学的な分析によって計算されるとおり14%のイントロン保持を示す。
【
図8】
図8はJAG1遺伝子IVS 18 ASOウォークを示す。2’-OMe ASO、PS骨格を使用して、5’スプライス部位のすぐ下流、または3’スプライス部位の上流の配列を標的とするJAG1 IVS 18に対して行われたASOウォークが図示される。ASOは、一度に5つのヌクレオチドの位置を変えることにより、これらの領域をカバーするように設計された。JAG1エクソン-イントロン構造は目盛に合わせて示される。
【
図9】
図9は、放射性RT-PCRによって評価されるJAG1イントロン18 ASOウォークを示す。上部では、エクソン18からエクソン20の概略図(縮尺通りではない)が、RT-PCRアッセイに使用したプライマーForward1(F1)およびReverse1(R1)を示す。中央のパネルでは、代表的なゲルが、ARPE-19細胞中60nMの濃度で、実施例および
図6の記載で本明細書中に述べられたように、JAG1偽処理(neg、RNAiMAXのみ)、ASO処理されたSMN-対照、または、イントロン18を標的とする2’-O-Me ASOで処理されたSMN-対照、の放射性RT-PCR産物を示す。2つの独立した実験から得られたベータアクチンに正規化されたJAG1放射性RT-PCR産物に対応するバンドの定量化を、偽処理した産物に対する倍数変化として下の棒グラフにプロットする。Y軸上で1と標識された黒線は、1の比率(変化なし)を示す。
【
図10】
図10は、RT-qPCRによって評価されたJAG1イントロン18 ASOウォークを示す。左上では、RT-qPCRアッセイの概略図がプライマー認識部位を示す。
図7に示すような放射性RT-PCRによって評価された同じASOトランスフェクション実験を用いて得られたRT-qPCR増幅結果を、βアクチン(上の棒グラフ)またはRPL32(下の棒グラフ)に正規化した偽処理した産物に対してプロットし、放射性RT-PCRの結果を確認する。Y軸上で1と標識された黒線は、1の比率(変化なし)を示す。
【
図11】
図11は、イントロン23をもつJAG1遺伝子中のイントロン保持を詳細に示す。JAG1遺伝子中のイントロン保持は、実施例中および
図1の記載で本明細書に述べられているように、RNA配列決定(RNAseq)によって特定され、UCSCゲノムブラウザ中で視覚化された。THLE-3細胞のイントロン23についての読取密度が下のパネルに詳細に示され、生物情報学的な分析によって計算されるとおり17%のイントロン保持を示す。
【
図12】
図12はJAG1遺伝子IVS 23 ASOウォークを示す。2’-OMe ASO、PS骨格を使用して、5’スプライス部位のすぐ下流、または3’スプライス部位の上流の配列を標的とするJAG1 IVS 23に対して行われたASOウォークが図示される。ASOは、一度に5つのヌクレオチドの位置を変えることにより、これらの領域をカバーするように設計された。JAG1エクソン-イントロン構造は目盛に合わせて示される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
2つ以上のイントロンを有するタンパク質コード遺伝子の一次転写産物中の個々のイン
トロンは、異なる効率性をもつ一次転写産物からスプライシングされる。ほとんどの場合
、完全にスプライシングされたmRNAだけが、続く細胞質での翻訳のために核膜孔を通
じて輸送される。スプライシングされていない、または部分的にスプライシングされた転
写産物は、核内で検出可能である。完全にスプライシングされていない転写産物の核内蓄
積は、タンパク質に翻訳されうる細胞質中での有害な恐れのあるmRNAの蓄積を防止す
るメカニズムであると一般的に考えられる。いくつかの遺伝子については、最も効率性の
低いイントロンのスプライシングは、細胞質中での翻訳に先立つ、遺伝子発現における律
速的な転写後の工程である。
【0019】
かなりのレベルの部分的にスプライシングされたJAG1遺伝子の転写産物、これは衰
弱性の遺伝性疾患であるアラジール症候群において不足しているJAG1-タンパク質を
コードするものであるが、これがヒト細胞の核で発見されてきた。これらのJAG1mR
NA前駆体の種は少なくとも1つの保持されたイントロンを含む。本発明は、完全にスプ
ライシングされた成熟mRNAの定常状態での産生を増大させ、従って翻訳されたJAG
1-タンパク質レベルを増大させるために、遺伝子発現の核段階において律速的である、
1つ以上の保持されたJAG1イントロンのスプライシングをアップレギュレートするた
めの組成物と方法を提供する。これらの組成物および方法は、核に蓄積する保持されたイ
ントロン含有JAG1mRNA前駆体のイントロンスプライス部位において構成的スプラ
イシングを促進するアンチセンスオリゴマー(ASO)を活用する。したがって、実施形
態では、JAG1の不足に起因する疾患を治療するために、本発明の方法を用いて、JA
G1-タンパク質を増加させる。
【0020】
他の実施形態では、本発明の方法は、それを必要とする被験体の症状を治療するために
、JAG1-産生を増大させるために使用される。複数の実施形態では、被験体は、JA
G1が野性型に対して必ずしも不足していないが、それにも関わらずJAG1の増加が疾
患を緩和する症状を有している。複数の実施形態では、被験体は筋ジストロフィーを患っ
ている。複数の実施形態では、被験体はジストロフィン不足(dystrophin d
eficiency)を患っている。例えば、Vieira et al.、2015、
“Jagged 1 Rescues the Duchenne Muscular
Dystrophy Phenotype”、Cell 163:1204-1213
は、筋肉におけるJAG1発現の増加がジストロフィン不足表現型をこの疾患の2つの異
なる動物モデルにおいて救済できることを示唆する所見を記載している。
【0021】
<アラジール症候群>
動脈肝異形成症とも呼ばれるアラジール症候群(ALGS)は、常染色体優性の多系統
障害である(Turnpenny and Ellard、2012)。主な臨床的およ
び病理学的な所見は、肝内胆管の不足による肝臓病、心臓病、血管異常、骨格異常、眼の
特徴、顔の特徴、腎臓の異常、成長遅延、および膵臓機能不全である。ALGSの臨床的
所見は、肝臓、心臓、脊椎、眼、または顔の異常を含む5つの臨床的特徴のうち3つの存
在が胆管の不足とともに存在することに基づく、「古典的な」ALGSの臨床的診断を伴
って変動し得る(Lu et al.、 2003、72、1065~1070; Pe
nton et al.、Seminars Cell&Dev.Biol.2012、
23、450-457)。報告されている1:70,000のALGSの罹患率は、その
状態のばらつきおよび浸透率の低下のために過小評価されていると考えられる。
【0022】
Notchシグナルに関する遺伝子の突然変異はALGSを引き起こすと報告されてき
た。JAG1はJAG1タンパク質、Notch膜貫通型受容体のための細胞表面リガン
ドをコードする。JAG1遺伝子のヒトのゲノムの配列は、例えば、Jurkiewic
z, D., et al., 2014, “Spectrum of JAG1 g
ene mutations in Polish patients with Al
agille syndrome,” J. Appl. Genetics 55:3
29-336、およびthe amino acid sequence at Uni
ProtKB: P78504-1, Oda,T., et al., 1997,
“Identification and cloning of the human
homolog (JAG1) of the rat Jagged1 gene
from the Alagille syndrome critical regi
on at 20p12,” Genomics 43 (3): 376-379によ
り記載されたNCBI Gene ID 182に開示され、その全てが参照によって本
明細書に組込まれる。JAG1の正準のmRNA配列はNCBI参照配列:Duryag
ina R, et al., 2013, “Overexpression of
Jagged-1 and its intracellular domain in
human mesenchymal stromal cells differe
ntially affect the interaction with hema
topoietic stem and progenitor cells,” St
em Cells Dev. 22 (20), 2736-2750に記載されたNM
_000214.2で開示されており、この両方が参照によって本明細書に組込まれた。
NotchへのJAG1リガンドの結合は、細胞運命の決定および分化に関与する遺伝子
の転写をもたらすシグナルカスケードを誘発する。JAG1中の突然変異はALGS1型
、すなわち最も蔓延している疾病型を引き起こし、その一方でNOTCH2中の突然変異
はALGS2型を引き起こす。
【0023】
JAG1遺伝子は、26のエクソンから成り、染色体20p11.2-20p12に位
置する。ALGSの中のJAG1突然変異は全タンパク質に広げられ、かつ、およそ60
%という高いデノボ突然変異率である。突然変異の80%はフレームシフト変異、ナンセ
ンス変異、およびスプライス部位の変異を含み;全体の遺伝子欠失が、突然変異の7%を
占め、かつ、ミスセンス変異は12%に相当する(Lu et al、2003)。全体
の遺伝子欠失は、短縮型変異(truncating mutations)およびミス
センス変異で見られる表現型に類似した表現型をもたらすので、大多数の場合、ハプロ不
全は疾患の原因である可能性の高いメカニズムである(Lu et al., 2003
; Turnpenny and Ellard,2012)。
【0024】
肝臓病を含む古典的なALGS表現型に関連した突然変異は機能的なハプロ不全を表し
、その結果、JAG1の細胞表面濃度は野生型レベルの50%であった(Lu et a
l.、2003)。対照的に、JAG1-G274Dタンパク質の発現を結果としてもた
らすJAG1ミスセンス変異が、2つのタンパク質集団を産生し、1つの集団がグリコシ
ル化欠損を示し、したがって細胞表面への輸送を妨げると報告されてきた。JAG1-G
274D突然変異は、肝臓疾患の非存在下での心臓特異的表現型と関連し、突然変異のキ
ャリアは、細胞表面上のJAG1の正常濃度の50%超だが100%未満であった。した
がって、発達中の肝臓は、発達中の心臓より少ないJAG1を必要とし得る(Lu et
al.、2003)。
【0025】
<筋肉修復>
上記のように、JAG1がジストロフィン不足表現型を2つの動物モデルにおいて救済
する可能性が記載されている(Vieira, et al., 2015)。デュシェ
ンヌ型筋ジストロフィー(DMD)およびベッカー筋ジストロフィー(BMD)を含む筋
ジストロフィー中の筋肉ジストロフィンの不足は、進行性の筋肉変性および萎縮を引き起
こす。DMDでは、呼吸不全または心不全により最終的に死亡する。これらの疾患ではJ
AG1は不足していないが、JAG1のレベルが増大すると、筋細胞増殖および修復を刺
激しうる。複数の実施形態では、本発明の方法および組成物は、その必要のある被験体の
筋肉修復を刺激するようJAG1産生を増加させるために使用される。複数の実施形態で
は、被験体は筋ジストロフィーを患っている。複数の実施形態では、筋ジストロフィーは
DMD、BMD、または、肢帯、先天性、顔面肩甲上腕型、筋緊張性、眼咽頭筋、遠位、
またはエメリー・ドレイフス型の筋ジストロフィーである。複数の実施形態では、被験体
はジストロフィン不足を患っている。実施形態では、ジストロフィン不足はDMDまたは
BMDである。複数の実施形態では、被験体は、(DYSF遺伝子によってコードされた
)ジスフェリン、(EMD遺伝子によってコードされた)エメリン、DUX4、(DMP
K遺伝子によってコードされた)筋緊張性ジストロフィープロテインキナーゼ(MDPK
)またはジストロフィアミオトニカプロテインキナーゼ(DMK)とも呼ばれるミオトニ
ンプロテインキナーゼ(MT-PK)、(CNBP遺伝子によってコードされた)細胞核
酸結合タンパク質、または、(PABPN1遺伝子によってコードされた)ポリアデニル
化結合核タンパク質1(PABPN1)とも呼ばれるポリアデニル化結合タンパク質2(
PANP-2)、における不足によって引き起こされる筋ジストロフィーを有している。
【0026】
<保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)>
複数の実施形態では、本明細書において示された方法は、細胞核中で、JAG1遺伝子
から転写され、JAG1-タンパク質をコードする、保持されたイントロン含有mRNA
前駆体(RICmRNA前駆体)の存在を活用する。成熟し、完全にスプライシングされ
たJAG1 mRNAを産出するための、特定のJAG1 RIC mRNA前駆体の種
のスプライシングは、保持されたイントロンのスプライシングアウトを刺激するASOを
用いて誘導される。結果としてもたらされる成熟JAG1mRNAは、細胞質に輸送され
翻訳され、それによって被験体の細胞中のJAG1-タンパク質量を増加させ、アラジー
ル症候群の症状を緩和する。この方法は以下でさらに詳述されるが、核内遺伝子出力の標
的化増大(TANGO)として知られる。
【0027】
JAG1核の転写産物
本明細書の実施例に記載されるように、JAG1遺伝子はイントロン保持事象について
分析され、イントロン13、18および23の保持が観察された。UCSCゲノムブラウ
ザによって視覚化されたRNA配列決定(RNAseq)は、THLE-3(ヒト肝上皮
)細胞に発現したJAG1転写産物を示し、細胞質または核分画のいずれかに局在した。
どちらの分画においても、読み取りは大多数のイントロンにおいて観察されなかった。し
かしながら、細胞質分画と比較してより高い読取密度が、核分画のイントロン13、18
および23において検出され、これはイントロン13、18および23のスプライシング
効率が低く、結果としてイントロン保持をもたらすことを示している。保持されたイント
ロン含有mRNA前駆体の転写産物は、主として核に蓄積し、JAG1タンパク質に翻訳
されない。イントロン13、18および23についての読取密度は、それぞれ、12%、
14%および17%のイントロン保持を示した。
【0028】
表1は、JAG1 RICmRNA前駆体の領域を標的化することによってJAG1タ
ンパク質の産生を増加させるのに有用な、配列IDごとのJAG1 RICmRNA前駆
体転写産物の標的配列、および、配列IDごとのASOの、非限定的なリストを提供する
。複数の実施形態では、この目的に有用な他のASOは、例えば、本明細書に記載の方法
を用いて特定される。
【0029】
【0030】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるASOは、JAG1ゲノム配列から転
写されたRIC mRNA前駆体を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保
持されたイントロンを含むJAG1ゲノム配列からのRIC mRNA前駆体の転写産物
を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、SEQ ID NO:1のRIC
mRNA前駆体の転写産物を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持され
たイントロンを含むSEQ ID NO:1のRIC mRNA前駆体の転写産物を標的
とする。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるASOは、JAG1のRIC
mRNA前駆体の配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、13、18、
23またはその組み合わせで保持されたイントロンを含むJAG1のRICmRNA前駆
体の転写産物を標的とし、ここにおいて、イントロンの番号付けは、NM_000214
におけるmRNA配列に一致する。
【0031】
いくつかの実施形態では、ASOは、SEQ ID NO:2で示されるJAG1のR
IC mRNA前駆体の配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持さ
れたイントロン13、保持されたイントロン18、保持されたイントロン23、またはそ
れらの組み合わせを含む、SEQ ID NO: 2に係るJAG1のRICmRNA前
駆体の配列を標的とする。いくつかの実施形態では、本明細書中に開示されるASOは、
SEQ ID NOs:437-439を標的とする。いくつかの実施形態では、ASO
は、SEQ ID NO:3-436のいずれか1つにかかる配列を有する。
【0032】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン18を含むJAG1のRI
CmRNA前駆体のエクソン18またはエクソン19を標的とし、ここにおいて、イント
ロンの番号付けは、NM_000214におけるmRNA配列に一致する。いくつかの実
施形態では、ASOは、保持されたイントロン18を含むJAG1のRIC mRNA前
駆体の5’スプライス部位よりも上流(または5’)のエクソン18配列を標的とする。
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン18を含むJAG1のRIC
mRNA前駆体の5’スプライス部位よりも、約4から約99ヌクレオチド上流(また
は5’)の、エクソン18配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持
されたイントロン18を含むJAG1のRIC mRNA前駆体の3’スプライス部位よ
りも下流(または3’)のエクソン19配列を標的とする。いくつかの実施形態では、A
SOは、保持されたイントロン18を含むJAG1のRIC mRNA前駆体の3’スプ
ライス部位よりも約2から約7ヌクレオチド下流(または3’)の、エクソン19配列を
標的とする。
【0033】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン18を含むJAG1のRI
CmRNA前駆体中のイントロン18を標的とし、ここにおいてイントロンの番号付けは
NM_000214におけるmRNA配列に相当する。いくつかの実施形態では、ASO
は、保持されたイントロン18を含むJAG1のRIC mRNA前駆体の5’スプライ
ス部位よりも下流(または3’)のイントロン18配列を標的とする。いくつかの実施形
態では、ASOは、保持されたイントロン18を含むJAG1のRIC mRNA前駆体
の5’スプライス部位よりも約16から約239ヌクレオチド下流(または3’)の、イ
ントロン18配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイント
ロン18を含むJAG1のRIC mRNA前駆体の3’スプライス部位よりも上流(ま
たは5’)のイントロン18配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保
持されたイントロン18を含むJAG1のRIC mRNA前駆体の3’スプライス部位
よりも約16から約253ヌクレオチド上流(または5’)の、イントロン18配列を標
的とする。
【0034】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン13を含むJAG1のRI
CmRNA前駆体のエクソン13またはエクソン14を標的とし、ここにおいて、イント
ロンの番号付けは、NM_000214におけるmRNA配列に一致する。いくつかの実
施形態では、ASOは、保持されたイントロン13を含むJAG1のRIC mRNA前
駆体の5’スプライス部位よりも上流(または5’)のエクソン13配列を標的とする。
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン13を含むJAG1のRIC
mRNA前駆体の5’スプライス部位よりも約14から約131ヌクレオチド上流(ま
たは5’)の、エクソン13配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保
持されたイントロン13を含むJAG1のRIC mRNA前駆体の3’スプライス部位
よりも下流(または3’)のエクソン14配列を標的とする。いくつかの実施形態では、
ASOは、保持されたイントロン13を含むJAG1のRIC mRNA前駆体の3’ス
プライス部位よりも約2から約147ヌクレオチド下流(または3’)の、エクソン14
配列を標的とする。
【0035】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン13を含むJAG1のRI
CmRNA前駆体中のイントロン13を標的とし、ここにおいてイントロンの番号付けは
NM_000214におけるmRNA配列に相当する。いくつかの実施形態では、ASO
は、保持されたイントロン13を含むJAG1のRIC mRNA前駆体の5’スプライ
ス部位よりも下流(または3’)のイントロン13配列を標的とする。いくつかの実施形
態では、ASOは、保持されたイントロン13を含むJAG1のRIC mRNA前駆体
の5’スプライス部位よりも約16から約440ヌクレオチド下流(または3’)の、イ
ントロン13配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイント
ロン13を含むJAG1のRIC mRNA前駆体の3’スプライス部位よりも上流(ま
たは5’)のイントロン13配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保
持されたイントロン13を含むJAG1のRIC mRNA前駆体の3’スプライス部位
よりも約16から約441ヌクレオチド上流(または5’)の、イントロン13配列を標
的とする。
【0036】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン23を含むJAG1のRI
CmRNA前駆体のエクソン23またはエクソン24を標的とし、ここにおいて、イント
ロンの番号付けは、NM_000214におけるmRNA配列に一致する。いくつかの実
施形態では、ASOは、保持されたイントロン23を含むJAG1のRIC mRNA前
駆体の5’スプライス部位よりも上流(または5’)のエクソン23配列を標的とする。
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン23を含むJAG1のRIC
mRNA前駆体の5’スプライス部位よりも、約4から約216ヌクレオチド上流(ま
たは5’)の、エクソン23配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保
持されたイントロン23を含むJAG1のRIC mRNA前駆体の3’スプライス部位
よりも下流(または3’)のエクソン24配列を標的とする。いくつかの実施形態では、
ASOは、保持されたイントロン23を含むJAG1のRIC mRNA前駆体の3’ス
プライス部位よりも約2から約114ヌクレオチド下流(または3’)の、エクソン24
配列を標的とする。
【0037】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン23を含むJAG1のRI
CmRNA前駆体中のイントロン23を標的とし、ここにおいてイントロンの番号付けは
NM_000214におけるmRNA配列に相当する。いくつかの実施形態では、ASO
は、保持されたイントロン23を含むJAG1のRIC mRNA前駆体の5’スプライ
ス部位よりも下流(または3’)のイントロン23配列を標的とする。いくつかの実施形
態では、ASOは、保持されたイントロン23を含むJAG1のRIC mRNA前駆体
の5’スプライス部位よりも約6から約121ヌクレオチド下流(または3’)の、イン
トロン23配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロ
ン23を含むJAG1のRIC mRNA前駆体の3’スプライス部位よりも上流(また
は5’)のイントロン23配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持
されたイントロン23を含むJAG1のRIC mRNA前駆体の3’スプライス部位よ
りも約16から約121ヌクレオチド上流(または5’)の、イントロン23配列を標的
とする。
【0038】
イントロンの番号付けは異なるJAG1アイソフォーム配列に関して変化しうると解さ
れる。当業者であれば、本明細書で提供されるイントロン配列に基づき、またはNM_0
00214.2におけるmRNA配列に関して得られるイントロン番号を使用することで
、任意のJAG1アイソフォームにおける対応するイントロンの番号を判定することがで
きる。当業者はさらに、本明細書で提供されるイントロン配列に基づき、またはNM_0
00214.2におけるmRNA配列に関して得られるイントロン番号を使用することで
、本発明の方法を使用して標的化のための任意のJAG1アイソフォームにおける隣接す
るエクソンの配列を判定することができる。複数の実施形態では、本発明の組成物および
方法が、任意の既知のJAG1アイソフォームの発現を増加させるために使用される。
【0039】
JAG1タンパク質発現
上述されるように、ALGSにおけるJAG1突然変異は全タンパク質に拡大し、かつ
、およそ60%の高いデノボ突然変異率がある。特徴となる突然変異のうち、80%はフ
レームシフト変異、ナンセンス変異、およびスプライス部位の変異を含み;全体の遺伝子
欠失は、突然変異の7%を占め、かつ、ミスセンス変異は12%に相当する(Lu et
al.,2003)。
【0040】
複数の実施形態では、本明細書において記載される方法が、機能的JAG1タンパク質
の産生を増大させるために使用される。本明細書において使用されるように、「機能的」
という用語は、例えばアラジール症候群または筋ジストロフィーなどの、処置される疾病
の1つ以上の症状を除去するのに必要なJAG1タンパク質の活性または機能の量を指す
。実施形態では、部分的機能的JAG1タンパク質の産生を増大させるために、前記方法
が使用される。本明細書において使用されるように、「部分的機能的」という用語は、疾
患または疾病の1つ以上の症状を除去または予防するために必要なJAG1タンパク質の
活性または機能の任意の量を指す。いくつかの実施形態では、部分的機能的タンパク質ま
たはRNAは、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも4
0%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少
なくとも80%、85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の、完全な機能的
タンパク質またはRNAに比してより小さな活性を持つだろう。
【0041】
複数の実施形態では、該方法は、JAG1-タンパク質をコードするRIC mRNA
前駆体を有する被験体の細胞によって、JAG1-タンパク質の発現を増大させる方法で
あり、ここで、被験体は、JAG1タンパク質の活性量の不足に起因するアラジール症候
群を有し、そのJAG1タンパク質の量の不足は、JAG1-タンパク質のハプロ不全に
よって引き起こされる。そのような実施形態では、被験体は、機能的JAG1タンパク質
をコードする第1の対立遺伝子と、JAG1タンパク質を産生しない第2の対立遺伝子と
を有する。別のそのような実施形態では、被験体は、機能的JAG1タンパク質をコード
する第1の対立遺伝子と、非機能的JAG1タンパク質をコードする第2の対立遺伝子を
有する。別のそのような実施形態では、被験体は、機能的JAG1タンパク質をコードす
る第1の対立遺伝子と、部分的機能的JAG1タンパク質をコードする第2の対立遺伝子
を有する。これらの実施形態のいずれの場合でも、アンチセンスオリゴマーは、第1の対
立遺伝子(機能的JAG1タンパク質をコードする)から転写されたRIC mRNA前
駆体の標的部位に結合し、それによって、RIC mRNA前駆体からの保持されたイン
トロンの構成的スプライシングを誘導し、かつ、機能的JAG1タンパク質をコードする
成熟mRNA量の増加と、被検体の細胞中のJAG1タンパク質発現の増大をもたらす。
【0042】
実施形態では、被験体は、機能的JAG1タンパク質をコードする第1の対立遺伝子と
、部分的機能的JAG1タンパク質をコードする第2の対立遺伝子を有し、第1の対立遺
伝子(機能的JAG1タンパク質をコードする)から転写されたRIC mRNA前駆体
の標的部分、あるいは第2の対立遺伝子(部分的機能的JAG1タンパク質をコードする
)から転写されたRIC mRNA前駆体の標的部分に、アンチセンスオリゴマーが結合
し、それによって、RIC mRNA前駆体からの保持されたイントロンの構成的スプラ
イシングを誘発し、JAG1タンパク質をコードする成熟mRNAレベルの増加と、被験
体の細胞中の機能的あるいは部分的機能的JAG1タンパク質発現の増加をもたらす。
【0043】
関連する実施形態では、該方法は、タンパク質または機能的RNAの発現を増加させる
ためにASOを用いる方法である。実施形態では、ASOは、JAG1タンパク質をコー
ドするRIC mRNA前駆体を有する被験体の細胞中のJAG1タンパク質発現を増加
させるために使用され、該被験体は、JAG1タンパク質の量または機能の不足、例えば
アラジール症候群を有する。
【0044】
実施形態では、疾患または疾病の原因となる、タンパク質をコードするRIC mRN
A前駆体の転写産物は、本明細書に記載されるASOによって標的化される。いくつかの
実施形態では、疾患の原因ではない、タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の
転写産物は、ASOによって標的化される。例えば、特定の経路における第1のタンパク
質の突然変異または不足の結果として生じる疾患は、第2のタンパク質をコードするRI
C mRNA前駆体を標的とすることによって改善され得、それによって第2のタンパク
質産生は増加する。いくつかの実施形態では、第2のタンパク質の活性は、第1のタンパ
ク質の突然変異または不足(それは疾患または疾病の原因である)を補うことができる。
実施形態では、第1のタンパク質は筋ジストロフィーにおいて不足しているタンパク質で
あり、第2のタンパク質はJAG1である。実施形態では、第1のタンパク質はジストロ
フィンであり、第2のタンパク質はJAG1である。
【0045】
実施形態では、被験体は、
【0046】
a.
i)JAG1タンパク質が、野生型対立遺伝子からの産生と比較して、減少したレベ
ルで産生され、
ii)JAG1タンパク質が、同等の野生型タンパク質と比較して機能が低下した形
態で産生され、あるいは
iii)JAG1タンパク質あるいは機能的RNAが産生されない、第1の変異対立
遺伝子;および
b.
i)JAG1タンパク質が、野生型対立遺伝子からの産生と比較して、減少したレベ
ルで産生され、
ii)JAG1タンパク質が、同等の野生型タンパク質と比較して機能が低下した形
態で産生され、あるいは
iii)JAG1タンパク質が産生されない、第2の変異対立遺伝子、を有し、
ここで、RIC mRNA前駆体は、第1の対立遺伝子および/または第2の対立遺伝
子から転写される。これらの実施形態では、ASOは、第1の対立遺伝子または第2の対
立遺伝子から転写されたRIC mRNA前駆体の標的部分に結合することで、RIC
mRNA前駆体からの保持されたイントロンの構成的スプライシングを誘発し、JAG1
タンパク質をコードするmRNAレベルの増加と、被験体の細胞中の標的タンパク質また
は機能的RNAの発現の増加を引き起こす。これらの実施形態では、RIC mRNA前
駆体からの保持されたイントロンの構成的スプライシングの結果として生じる、発現レベ
ルの増加を有する標的タンパク質あるいは機能的RNAは、同等の野性型タンパク質と比
較して機能性の低い形態(部分的機能的)、あるいは同等の野性型タンパク質と比較して
完全な機能性を有する形態(完全機能的)、のいずれかであり得る。
【0047】
実施形態では、JAG1タンパク質をコードするmRNAのレベルは、例えば、アンチ
センスオリゴマーで処置されない、あるいはJAG1 RIC mRNA前駆体の標的部
分と結合しないアンチセンスオリゴマーで処置された、対照細胞内で産生されたJAG1
をコードするmRNAの量と比較した場合、1.1から10倍に増加する。
【0048】
実施形態では、JAG1タンパク質の量あるいは活性の不足に起因する疾病は、ASO
が標的とされる保持されたイントロンの選択的スプライシングあるいは異常スプライシン
グに起因する疾病ではない。実施形態では、JAG1タンパク質の量あるいは活性の不足
に起因する疾病は、JAG1タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体内の保持さ
れたイントロンの選択的スプライシングあるいは異常スプライシングに起因する疾病では
ない。実施形態では、選択的スプライシングあるいは異常スプライシングが、遺伝子から
転写されたmRNA前駆体に生じうる。しかしながら、本発明の組成物および方法は、こ
の選択的スプライシングあるいは異常スプライシングを予防しないし、修正しない。
【0049】
実施形態では、本発明の方法を使用して処置された被験体は、1つの対立遺伝子から部
分的機能的JAG1タンパク質を発現し、該部分的機能的JAG1タンパク質は、フレー
ムシフト変異、ナンセンス変異、ミスセンス変異、あるいは部分的な遺伝子欠失に起因す
る。実施形態では、本発明の方法を使用して処置された被験体は、1つの対立遺伝子から
非機能的JAG1タンパク質を発現し、該非機能的JAG1タンパク質は、1つの対立遺
伝子におけるフレームシフト変異、ナンセンス変異、ミスセンス変異、あるいは部分的な
遺伝子欠失に起因する。実施形態では、本発明の方法を使用して処置された被験体は、1
つの対立遺伝子にJAG1全遺伝子欠失を有する。
【0050】
実施形態では、被験体は、G274D、L37S、R184H、P163L、P871
R、C234Y、C664S、P810L、またはR937Qから選択されたJAG1ミ
スセンス変異を有する。実施形態では、被験体はJAG1欠失突然変異1485-148
6delCTを有する。実施形態では、被験体はJAG1重複突然変異414-415d
upGTを有する。実施形態では、当技術分野において既知の、および、例えば先に参照
したLu,et al.,2003,Penton,et al.,2012の文献に記
載された任意のJAG1突然変異を有する被験体が、本発明の方法および組成物を用いて
処置される。
【0051】
JAG1タンパク質発現を増加させるためのTANGOの使用
前述したように、実施形態では、核内遺伝子出力の標的とされた増強(TANGO)は
、JAG1タンパク質の発現を増加させるために、本発明の方法において使用される。こ
れらの実施形態では、JAG1タンパク質をコードする保持されたイントロン含有mRN
A前駆体(RIC mRNA前駆体)は、細胞の核内にある。PC-2タンパク質をコー
ドする、保持されたイントロン、5’スプライス部位に隣接するエクソン、および3’ス
プライス部位に隣接するエクソンを含むJAG1 RIC mRNA前駆体を有する細胞
を、RIC mRNA前駆体の標的部分に対して相補的なアンチセンスオリゴマー(AS
O)と接触させる。RIC mRNA前駆体の標的部分へのASOのハイブリダイゼーシ
ョンは、保持されたイントロンのスプライス部位(5’スプライス部位あるいは3’スプ
ライス部位)のスプライシングを増強し、その後の標的タンパク質産生を増加させる。
【0052】
用語「mRNA前駆体」および「mRNA前駆体の転写産物」は、交換可能に使用され
、少なくとも1つのイントロンを含むmRNA前駆体種を指すこともある。実施形態では
、mRNA前駆体またはmRNA前駆体の転写産物は、5’-7-メチルグアノシンキャ
ップ、および/またはポリA末端を含む。実施形態では、mRNA前駆体またはmRNA
前駆体の転写産物は、5’-7-メチルグアノシンキャップおよびポリA末端の両方を含
む。いくつかの実施形態では、mRNA前駆体の転写産物は、5’-7-メチルグアノシ
ンキャップ、および/またはポリA末端を含まない。タンパク質に翻訳されない場合(あ
るいは核から細胞質へと輸送された場合)、mRNA前駆体の転写産物は非生産的メッセ
ンジャーRNA(mRNA)分子である。
【0053】
本明細書において使用されるように、「保持されたイントロン含有mRNA前駆体」(
「RIC mRNA前駆体」)は、少なくとも1つの保持されたイントロンを含むmRN
A前駆体の転写産物である。RIC mRNA前駆体は、保持されたイントロン、保持さ
れたイントロンの5’スプライス部位に隣接するエクソン、保持されたイントロンの3’
スプライス部位に隣接するエクソンを含み、標的タンパク質をコードする。「標的タンパ
ク質をコードするRIC mRNA前駆体」は、完全にスプライシングされた場合に、標
的タンパク質をコードすると解される。「保持されたイントロン」は、同じ遺伝子によっ
てコードされた、隣接するイントロン等の1つ以上の他のイントロンが、同じmRNA前
駆体の転写産物からスプライシングアウトされた場合に、mRNA前駆体の転写産物に存
在するイントロンである。いくつかの実施形態では、保持されたイントロンは、標的タン
パク質をコードするRIC mRNA前駆体において最も豊富なイントロンである。実施
形態では、保持されたイントロンは、細胞内の標的タンパク質をコードする遺伝子から転
写されたRIC mRNA前駆体の集団において最も豊富なイントロンであり、該RIC
mRNA前駆体の集団は2つ以上の保持されたイントロンを含む。実施形態では、標的
タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の集団において最も豊富なイントロンに
標的とされたアンチセンスオリゴマーは、アンチセンスオリゴマーが標的とされた、ある
いは結合する保持されたイントロンを含む集団内の、2つ以上の保持されたイントロンの
スプライシングアウトを誘発する。実施形態では、標的タンパク質をコードする成熟mR
NAは、それによって産生される。「成熟mRNA」および「完全にスプライシングされ
たmRNA」の用語は、標的タンパク質をコードする完全に処理されたmRNA(例えば
、核から細胞質へと輸送され、標的タンパク質に翻訳されたmRNA)、あるいは完全に
処理された機能的RNAを記載するように、本明細書において交換可能に使用される。用
語「生産的mRNA」もまた、標的タンパク質をコードする完全に処理されたmRNAに
ついて記載するように使用することができる。実施形態では、標的領域は、JAG1タン
パク質をコードするRIC mRNA前駆体の集団において最も豊富なイントロンである
保持されたイントロンにある。実施形態では、JAG1タンパク質をコードするRIC
mRNA前駆体の集団において最も保持されたイントロンは、イントロン23である。
【0054】
実施形態では、保持されたイントロンは、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少
なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少
なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、あるいは少なくとも約5
0%の、保定の保持率に基づき、保持されたイントロンとして特定されたイントロンであ
る。実施形態では、保持されたイントロンは、約5%から約100%、約5%から約95
%、約5%から約90%、約5%から約85%、約5%から約80%、約5%から約75
%、約5%から約70%、約5%から約65%、約5%から約60%、約5%から約65
%、約5%から約60%、約5%から約55%、約5%から約50%、約5%から約45
%、約5%から約40%、約5%から約35%、約5%から約30%、約5%から約25
%、約5%から約20%、約5%から約15%、約10%から約100%、約10%から
約95%、約10%から約90%、約10%から約85%、約10%から約80%、約1
0%から約75%、約10%から約70%、約10%から約65%、約10%から約60
%、約10%から約65%、約10%から約60%、約10%から約55%、約10%か
ら約50%、約10%から約45%、約10%から約40%、約10%から約35%、約
10%から約30%、約10%から約25%、約10%から約20%、約15%から約1
00%、約15%から約95%、約15%から約90%、約15%から約85%、約15
%から約80%、約15%から約75%、約15%から約70%、約15%から約65%
、約15%から約60%、約15%から約65%、約15%から約60%、約15%から
約55%、約15%から約50%、約15%から約45%、約15%から約40%、約1
5%から約35%、約15%から約30%、約15%から約25%、約20%から約10
0%、約20%から約95%、約20%から約90%、約20%から約85%、約20%
から約80%、約20%から約75%、約20%から約70%、約20%から約65%、
約20%から約60%、約20%から約65%、約20%から約60%、約20%から約
55%、約20%から約50%、約20%から約45%、約20%から約40%、約20
%から約35%、約20%から約30%、約25%から約100%、約25%から約95
%、約25%から約90%、約25%から約85%、約25%から約80%、約25%か
ら約75%、約25%から約70%、約25%から約65%、約25%から約60%、約
25%から約65%、約25%から約60%、約25%から約55%、約25%から約5
0%、約25%から約45%、約25%から約40%、あるいは約25%から約35%の
、保定の保持率に基づき、保持されたイントロンとして特定されたイントロンである。保
持されたイントロンを特定する手助けとして、ENCODEデータ(例えば、Tilgn
er,et al.,2012,「Deep sequencing of subce
llular RNA fractions shows splicing to b
e predominantly co-transcriptional in th
e human genome but inefficient for lncRN
As」 Genome Research 22(9):1616-25に記載)を用い
ることができる。
【0055】
本明細書において使用されるように、用語「含む(comprise)」、あるいは「
含む(comprises)」または「含む(comprising)」等の変化形は、
列挙された特徴(例えば、アンチセンスオリゴマーの場合、定義された核酸塩基配列)を
含むが、他のいかなる特徴をも除外しないことを示すと解されるべきである。したがって
、本明細書において使用されるように、用語「含む(comprising)」は包含的
で、追加の列挙されていない特徴(例えば、アンチセンスオリゴマーの場合、追加の列挙
されていない核酸塩基の存在)を除外しない。
【0056】
本明細書において提供される組成物および方法のいずれかの実施形態において、「含む
(comprising)」は「から本質的に成る(consisting essen
tially)」または「から成る(consisting of)」と置換可能である
。「から本質的に成る(consisting essentially)」という句は
、特定された特徴(例えば核酸塩基配列)と共に、請求される本発明の性質または機能に
実質的に影響しない特徴も必要とするために本明細書で使用される。本明細書で使用され
るように、用語「成る(consisting)」は、列挙された特徴(例えば核酸塩基
配列)単独の存在を示すために使用される(その結果、特定された核酸塩基配列から成る
アンチセンスオリゴマーの場合には、追加の列挙されていない核酸塩基の存在は除外され
る)。
【0057】
実施形態では、標的領域は、JAG1タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体
の集団において2番目に豊富に存在するイントロンである保持されたイントロンにある。
例えば、2番目に豊富な保持されたイントロンは、最も豊富な保持されたイントロンより
もむしろ標的とされ得る。その要因は、2番目に豊富な保持されたイントロンのヌクレオ
チド配列の独自性、特定のヌクレオチド配列を標的とするASO設計の容易さ、および/
またはASOによりイントロンを標的とすることから生じるタンパク質産生量の増加であ
る。実施形態では、保持されたイントロンは、細胞内の標的タンパク質をコードする遺伝
子から転写されたRIC mRNA前駆体集団において2番目に豊富なイントロンであり
、そのRIC mRNA前駆体集団は、2つ以上の保持されたイントロンを含む。実施形
態では、標的タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体集団における2番目に豊富
なイントロンを標的とするアンチセンスオリゴマーは、アンチセンスオリゴマーが標的と
する、または結合する保持されたイントロンを含む集団において、2つ以上の保持された
イントロンのスプライシングアウトを誘発する。それによって、実施形態では、標的タン
パク質をコードする完全にスプライシングされた(成熟)RNAが産生される。実施形態
では、JAG1タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体集団に2番目に豊富に保
持されたイントロンは、イントロン18である。実施形態では、JAG1タンパク質をコ
ードするRIC mRNA前駆体集団に2番目に豊富に保持されたイントロンは、イント
ロン13である。
【0058】
実施形態では、ASOは、RIC mRNA前駆体の保持されていないイントロン内に
ある標的領域に相補的である。実施形態では、RIC mRNA前駆体の標的部分は:保
持されていないイントロンの5’スプライス部位に対する+6から+100の領域;また
は保持されていないイントロンの3’スプライス部位に対する-16から-100の領域
内にある。実施形態では、RIC mRNA前駆体の標的部位は、保持されていないイン
トロンの5’スプライス部位に対する+100の領域から、保持されていないイントロン
の3’スプライス部位に対する-100の領域内にある。領域または配列の場所を特定す
るために使用されるように、「内(within)」は、列挙される位置で残基を含むよ
うに理解される。例えば、+6から+100の領域は、+6および+100の位置で残基
を含む。それによって、実施形態では、標的タンパク質をコードする完全にスプライシン
グされた(成熟)RNAが産生される。
【0059】
実施形態では、RIC mRNA前駆体の保持されたイントロンは、非効率的にスプラ
イシングされたイントロンである。本明細書で使用されるように、「非効率的にスプライ
シングされた」は、RIC mRNA前駆体における別のスプライス部位でのスプライシ
ングの頻度と比較して、保持されたイントロンに隣接するスプライス部位(5’スプライ
ス部位または3’スプライス部位)でのスプライシングの頻度が比較的低いことを指し得
る。用語「非効率的にスプライシングされた」はまた、スプライス部位でのスプライシン
グの相対速度または動態(kinetics)を指し得る。この「非効率的にスプライシ
ングされた」イントロンは、RIC mRNA前駆体における別のイントロンと比較して
、より遅い速度でスプライシングあるいは除去され得る。
【0060】
実施形態では、5’スプライス部位に隣接するエクソンの-3eから-1e、および保
持されたイントロンの+1から+6の9-ヌクレオチド配列は、対応する野生型配列と同
一である。実施形態では、保持されたイントロンの-15から-1および3’スプライス
部位に隣接するエクソンの+1eの16ヌクレオチド配列は、対応する野生型配列と同一
である。本明細書に使用されるように、「野生型配列」は、生体および科学の情報のNC
BIリポジトリ(National Center for Biotechnolog
y Information, National Library of Medic
ine,8600 Rockville Pike,Bethesda,MD USA
20894によって運営される)に寄託された公開された参照ゲノムにおけるJAG1遺
伝子に対するヌクレオチド配列を指す。本明細書で使用されるように、「野生型配列」は
、NCBI Gene ID182で得られる標準配列を指す。さらに本明細書で使用さ
れるように、「e」で示されたヌクレオチド位置は、ヌクレオチドがエクソン(例えば、
5’スプライス部位に隣接するエクソン、または3’スプライス部位に隣接するエクソン
)の配列中に存在することを示す。
【0061】
該方法は、細胞を、JAG1タンパク質をコードするmRNA前駆体の一部に相補的で
あるASOと接触させる工程であって、結果としてJAG1の発現が増加する工程を含む
。本明細書で使用されるように、細胞に「接触させる」または投与することは、ASOと
細胞が相互作用するように、ASOを細胞に即座に近接させる方法を指す。ASOと接触
させられる細胞は、ASOを細胞へと取り込む又は輸送する。該方法は、疾病または疾患
に関係する又は疾病または疾患に関連する細胞を、本明細書に記載されるASOのいずれ
かと接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、ASOは、ASOを細胞型に対し
て標的とする、ASOと疾病または疾患に関係する又は疾病または疾患に関連する細胞と
の間の接触を増強する、またはASOの取り込みを増強するために、さらに修飾され得る
かまたは別の分子に結合され得る(例えば、共有結合される)。
【0062】
本明細書で使用されるように、用語「タンパク質産生を増加させる」または「標的タン
パク質の発現を増加させる」は、細胞中のmRNAから翻訳されるタンパク質の量を増加
させることを意味する。「標的タンパク質」は、発現/産生の増加が望まれるタンパク質
で有り得る。
【0063】
実施形態では、JAG1 RIC mRNA前駆体を発現する細胞をJAG1 RIC
mRNA前駆体の転写産物の標的部分に相補的であるASOに接触させる工程は、結果
として、mRNA前駆体によってコードされたJAG1タンパク質(例えば標的タンパク
質)の量の測定可能な増加をもたらす。タンパク質の産生を測定または検出する方法は、
当業者に明白となり、あらゆる既知の方法、例えば、ウェスタンブロッティング、フロー
サイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡検査法、およびELISAを含む。
【0064】
実施形態では、細胞をJAG1 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分に相補
的であるASOと接触させる工程は、結果として、ASOの欠如/処置の欠如下における
細胞によって産生されたタンパク質の量と比較して、少なくとも10、20、30、40
、50、60、80、100、150、200、250、300、350、400、45
0、500、または1000%の、産生されたJAG1タンパク質の量の増加をもたらす
。実施形態では、アンチセンスオリゴマーが接触させられた細胞によって産生されたJA
G1タンパク質の合計量は、対照化合物によって産生された標的タンパク質の量と比較し
て、約1.1倍から約10倍、約1.5倍から約10倍、約2倍から約10倍、約3倍か
ら約10倍、約4倍から約10倍、約1.1倍から約5倍、約1.1倍から約6倍、約1
.1倍から約7倍、約1.1倍から約8倍、約1.1倍から約9倍、約2倍から約5倍、
約2倍から約6倍、約2倍から約7倍、約2倍から約8倍、約2倍から約9倍、約3倍か
ら約6倍、約3倍から約7倍、約3倍から約8倍、約3倍から約9倍、約4倍から約7倍
、4倍から約8倍、約4倍から約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、
少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、
少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍に増加する。対照化合
物は、例えば、RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的でないオリゴヌクレオチドで
有り得る。
【0065】
幾つかの実施形態では、細胞をJAG1 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部
分に相補的であるASOと接触させる工程は、結果として、標的タンパク質をコードする
成熟mRNAを含む、JAG1をコードするmRNA量の増加をもたらす。幾つかの実施
形態では、JAG1タンパク質をコードするmRNA、またはJAG1タンパク質をコー
ドする成熟mRNAの量は、ASOの欠如/処置の欠如下における細胞によって産生され
たタンパク質の量と比較して、少なくとも10、20、30、40、50、60、80、
100、150、200、250、300、350、400、450、500、または1
000%増加する。実施形態では、アンチセンスオリゴマーが接触させられた細胞におい
て産生されたJAG1タンパク質をコードするmRNA、またはJAG1タンパク質をコ
ードする成熟mRNAの合計量は、処置されていない細胞、例えば処置されていない細胞
あるいは対照化合物で処置された細胞内で産生された成熟RNAの量と比較して、約1.
1倍から約10倍、約1.5倍から約10倍、約2倍から約10倍、約3倍から約10倍
、約4倍から約10倍、約1.1倍から約5倍、約1.1倍から約6倍、約1.1倍から
約7倍、約1.1倍から約8倍、約1.1倍から約9倍、約2倍から約5倍、約2倍から
約6倍、約2倍から約7倍、約2倍から約8倍、約2倍から約9倍、約3倍から約6倍、
約3倍から約7倍、約3倍から約8倍、約3倍から約9倍、約4倍から約7倍、約4倍か
ら約8倍、約4倍から約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくと
も約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくと
も約4倍、少なくとも約5倍、あるいは少なくとも約10倍に増加する。対照化合物は、
例えば、JAG1 RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的でないオリゴヌクレオチ
ドで有り得る。
【0066】
RIC mRNA前駆体からの保持されたイントロンの構成的スプライシング
本明細書で提供される方法およびアンチセンスオリゴヌクレオチド組成物は、JAG1
タンパク質をコードするmRNA、またはJAG1タンパク質をコードする成熟mRNA
のレベルを増加させることによって、例えば、JAG1タンパク質の量または活性の不足
がもたらすアラジール症候群を有する被験体において細胞内のJAG1タンパク質の発現
を増加させることに有用である。特に、本明細書に記載されるような方法および組成物は
、JAG1タンパク質をコードするJAG1 RIC mRNA前駆体の転写産物からの
保持されたイントロンの構成的スプライシングを誘発し、それによって、JAG1タンパ
ク質をコードするmRNA、またはJAG1タンパク質をコードする成熟mRNAのレベ
ルが増加し、JAG1タンパク質の発現が増加する。
【0067】
RIC mRNA前駆体からの保持されたイントロンの構成的スプライシングは、保持
されたイントロンをRIC mRNA前駆体から正しく除去し、ここで保持されたイント
ロンは、野生型スプライス配列を有する。構成的スプライシングは、本明細書で使用され
るように、遺伝子または対立遺伝子から転写されたmRNA前駆体の選択的スプライシン
グまたは異常スプライシングを引き起こす突然変異を有する遺伝子または対立遺伝子から
転写されたRIC mRNA前駆体からの保持されたイントロンのスプライシングを包含
しない。例えば、本明細書で提供される方法およびアンチセンスオリゴヌクレオチドを使
用して誘発された、保持されたイントロンの構成的スプライシングは、mRNA前駆体に
おける異常スプライシングを訂正しない、またはmRNA前駆体の選択的スプライシング
に影響せず、結果的に標的タンパク質または機能的RNAの発現が増加する。
【0068】
実施形態では、構成的スプライシングは、保持されたイントロンをJAG1 RIC
mRNA前駆体から正しく除去し、ここでJAG1 RIC mRNA前駆体は、野生型
の遺伝子または対立遺伝子、あるいは多形性の遺伝子または対立遺伝子から転写され、完
全に機能的な標的タンパク質または機能的RNAをコードし、遺伝子または対立遺伝子は
、保持されたイントロンの選択的スプライシングまたは異常スプライシングを引き起こす
突然変異を有さない。
【0069】
幾つかの実施形態では、JAG1タンパク質をコードするJAG1 RIC mRNA
前駆体からの保持されたイントロンの構成的スプライシングは、JAG1タンパク質をコ
ードするJAG1 RIC mRNA前駆体から、保持されたイントロンを正しく除去し
、ここでJAG1 RIC mRNA前駆体は、野生型対立遺伝子からの産生と比較して
減少したレベルで標的遺伝子あるいは機能的RNAを産生する遺伝子または対立遺伝子か
ら転写され、および遺伝子または対立遺伝子は、保持されたイントロンの選択的スプライ
シングまたは異常スプライシングを引き起こす突然変異を有さない。これらの実施形態で
は、構成的にスプライシングされた保持されたイントロンの正しい除去は、結果として、
同等の野生型タンパク質または機能的RNAと比較したときに機能的である標的タンパク
質または機能的RNAの産生をもたらす。
【0070】
他の実施形態では、構成的スプライシングは、保持されたイントロンをJAG1 RI
C mRNA前駆体から正しく除去し、ここでJAG1 RIC mRNA前駆体は、同
等の野生型タンパク質または機能的RNAと比較して、機能の低下した形態で産生された
標的タンパク質または機能的RNAをコードする遺伝子または対立遺伝子から転写され、
遺伝子または対立遺伝子は、保持されたイントロンの選択的スプライシングまたは異常ス
プライシングを引き起こす突然変異を有さない。これらの実施形態では、構成的にスプラ
イシングされた保持されたイントロンの正しい除去は、結果として、部分的に機能的な標
的タンパク質、または同等の野生型タンパク質または機能的RNAと比較したときに部分
的に機能的である機能的RNAの産生をもたらす。
【0071】
構成的スプライシングによる保持されたイントロンの「正しい除去」は、エクソンのい
かなる部分も除去することのない、全イントロンの除去を指す。
【0072】
実施形態では、本明細書に記載されるような、または本明細書に記載される方法に使用
されるアンチセンスオリゴマーは、JAG1遺伝子から転写されたmRNA前駆体の選択
的スプライシングまたは異常スプライシングを調節することによって、JAG1タンパク
質をコードするmRNAの量、またはJAG1タンパク質の量を増加させない。選択的ス
プライシングまたは異常スプライシングの調節は、RNA種の配列および長さを解析する
既知の方法を使用して、例えばRT-PCRによって、および本明細書および文献中で別
記される方法を使用して測定することができる。実施形態では、選択的スプライシングま
たは異常スプライシングの調節は、対象となるスプライシングされた種の量の、少なくと
も10%または1.1倍の増加または減少に基づいて判定される。実施形態では、調節は
、本発明の方法においてJAG1タンパク質をコードするmRNAの増加の判定に関して
本明細書に記載されるように、少なくとも10%から100%または1.1倍から10倍
のレベルでの増加または減少に基づいて判定される。
【0073】
実施形態では、該方法は、JAG1 RIC mRNA前駆体が、野生型JAG1 m
RNA前駆体の部分的スプライシングによって生成された方法である。実施形態では、該
方法は、JAG1 RIC mRNA前駆体が、全長の野生型JAG1 mRNA前駆体
の部分的スプライシングによって生成された方法である。実施形態では、JAG1 RI
C mRNA前駆体は、全長のJAG1 mRNA前駆体の部分的スプライシングによっ
て生成された。これらの実施形態では、全長のJAG1 mRNA前駆体は、野生型スプ
ライス部位配列を有する保持されたイントロンのスプライシングと比較して、保持された
イントロンの正しいスプライシングを損なわない保持されたイントロンのスプライス部位
に多型を有し得る。
【0074】
実施形態では、JAG1タンパク質をコードするmRNAは、全長の成熟mRNAまた
は野生型成熟mRNAである。これらの実施形態では、全長の成熟mRNAは、野生型成
熟mRNAによってコードされたJAG1タンパク質の活性と比較して、成熟mRNAに
よってコードされた標的タンパク質または機能的RNAの活性に影響しない多型を有し得
る。
【0075】
<アンチセンスオリゴマー>
本開示の一態様は、JAG1 RIC mRNA前駆体の標的部分に結合することによ
ってスプライシングを増強するアンチセンスオリゴマーを含む組成物である。本明細書で
使用されるように、用語「ASO」および「アンチセンスオリゴマー」は、交換可能に使
用され、ワトソン・クリック塩基対またはゆらぎ塩基対(G-U)によって標的核酸(例
えば、JAG1 RIC mRNA前駆体)配列にハイブリダイズする、核酸塩基を含む
、ポリヌクレオチドなどのオリゴマーを指す。ASOは、標的配列に相補的な又はほぼ相
補的(例えば、標的配列に結合し、スプライス部位でスプライシングを増強させるのに十
分な相補性)である正確な配列を有し得る。ASOは、標的核酸(例えば、mRNA前駆
体の転写産物の標的部分)に結合し(ハイブリダイズし)、生理学的条件下でハイブリダ
イズされたままであるように設計されている。典型的に、ASOは、意図した(標的とさ
れた)核酸配列以外の部位にハイブリダイズする場合、標的核酸でない限られた数の配列
に(標的核酸以外の少数の部位に)ハイブリダイズする。ASOの設計は、mRNA前駆
体の転写産物の標的部分の核酸配列、或いはゲノムまたは細胞のmRNA前駆体またはト
ランスクリプトームにおける他の場所での十分に類似した核酸配列の発生を考慮に入れる
ことができ、その結果、ASOが他の部位に結合し「オフターゲット」効果を引き起こす
可能性は限定される。例えば、発明の名称「Reducing Nonsense-Me
diated mRNA Decay」のWO2015/035091として公開された
PCT国際出願番号PCT/US2014/054151におけるものなどの、当業者に
既知のアンチセンスオリゴマーは、本明細書に記載される方法を実施するために使用され
得る。
【0076】
幾つかの実施形態では、ASOは、標的核酸またはRIC mRNA前駆体の標的部分
に「特異的にハイブリダイズする」または「特異的である」。典型的に、そのようなハイ
ブリダイゼーションは、37℃より実質的に高い融解温度(Tm)で、好ましくは少なく
とも50℃で、および典型的に60℃からおよそ90℃の間で生じる。そのようなハイブ
リダイゼーションは、好ましくは、厳しいハイブリダイゼーション条件に対応している。
与えられたイオン強度およびpHで、Tmは、標的配列の50%が相補的オリゴヌクレオ
チドにハイブリダイズする温度である。
【0077】
オリゴヌクレオチドなどのオリゴマーは、ハイブリダイゼーションが2つの一本鎖ポリ
ヌクレオチド間の逆平行構成で生じるときに、互いに「相補的」である。二本鎖ポリヌク
レオチドは、ハイブリダイゼーションが第1のポリヌクレオチドの鎖の1つと第2のポリ
ヌクレオチドの鎖の1つとの間に生じる場合に、別のポリヌクレオチドに「相補的」であ
り得る。相補性(1つのポリヌクレオチドが別のポリヌクレオチドと相補的である程度)
は、一般に容認された塩基対合則に従って、互いに水素結合を形成すると予期される対向
する鎖における塩基の割合(例えばパーセンテージ)の点から数量化できる。アンチセン
スオリゴマー(ASO)の配列は、ハイブリダイズするその標的核酸の配列に100%相
補的である必要はない。特定の実施形態では、ASOは、標的とされる標的核酸配列内の
標的部位に対する、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくと
も85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%
、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列相補性を含むことができる。例えば
、オリゴマー化合物の20の核酸塩基のうちの18が標的部位に相補的であり、それ故、
特異的にハイブリダイズするASOは、90パーセントの相補性を表わす。この例におい
て、残りの相補的でない核酸塩基は、ともにクラスター化され得るか、または相補的な核
酸塩基と分散され(interspersed)、互いに又は相補的な核酸塩基に隣接し
ている必要はない。ASOの標的核酸の領域とのパーセント相補性は、BLASTプログ
ラム(基礎的なローカルアライメント検索ツール)および当該技術分野で既知のPowe
rBLASTプログラム(Altschul et al., J. Mol. Bio
l., 1990, 215, 403-410; Zhang and Madden
, Genome Res., 1997, 7, 649-656)を慣例的に使用し
て判定され得る。
【0078】
ASOは、標的配列におけるすべての核酸塩基にハイブリダイズする必要はなく、それ
がハイブリダイズする核酸塩基は、隣接しているか又は隣接していないかもしれない。A
SOは、mRNA前駆体の転写産物の1つ以上のセグメントにわたってハイブリダイズし
得、その結果、介在する又は隣接するセグメントは、ハイブリダイゼーション事象に関係
しない(例えば、ループ構造またはヘアピン構造が形成され得る)。特定の実施形態では
、ASOは、標的mRNA前駆体の転写産物において隣接していない核酸塩基にハイブリ
ダイズする。例えば、ASOは、ASOがハイブリダイズしない1つ以上の核酸塩基によ
って分離される、mRNA前駆体の転写産物における核酸塩基にハイブリダイズすること
ができる。
【0079】
本明細書に記載されるASOは、RIC mRNA前駆体の標的部分に存在する核酸塩
基に相補的である核酸塩基を含む。用語「ASO」は、オリゴヌクレオチド、および標的
mRNA上の相補的な核酸塩基にハイブリダイズすることができる核酸塩基を含むが、ペ
プチド核酸(PNA)などの糖部を含まない、他のオリゴマー分子を具体化する。ASO
は、自然発生のヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、修飾されたヌクレオチド、または
それらの2つ又は3つの任意の組み合わせを含み得る。用語「自然発生のヌクレオチド」
は、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを含む。用語「修飾されたヌクレ
オチド」は、修飾された又は置換された糖類及び/又は修飾された骨格を有するヌクレオ
チドを含む。幾つかの実施形態では、ASOのヌクレオチドのすべてが、修飾されたヌク
レオチドである。本明細書に記載される方法および組成物と適合性のあるASOの化学修
飾およびASOの成分は、当業者に明白であり、例えば、米国特許第8,258,109
号 B2、米国特許第5,656,612号、米国特許公開番号2012/019072
8、およびDias and Stein,Mol. Cancer Ther.200
2,347-355で見られ得、それら全体が引用によって本明細書に組み込まれる。
【0080】
ASOの核酸塩基は、アデニン、グアニン、シトシン、チミンおよびウラシルなどの自
然発生の未修飾の核酸塩基、または標的mRNA前駆体上に存在する核酸塩基との水素結
合が可能であるように未修飾の核酸塩基に十分に類似している合成または修飾された核酸
塩基であり得る。修飾された核酸塩基の例としては、限定されないが、ヒポキサンチン、
キサンチン、7-メチルグアニン、5,6-ジヒドロウラシル、5-メチルシトシン、お
よび5-ヒドロキシメチルシトシンが挙げられる。
【0081】
本明細書に記載されるASOはまた、オリゴマーの成分に結合する骨格構造を含む。用
語「骨格構造」および「オリゴマー結合」は、交換可能に使用され、ASOの単量体間の
結合を指し得る。自然発生のオリゴヌクレオチドでは、骨格は、オリゴマーの糖部を結合
する3’-5’ホスホジエステル結合を含む。本明細書に記載されるASOの骨格構造ま
たはオリゴマー結合は、(限定されないが)ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート
、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホ
ラニラデート(phosphoraniladate)、ホスホラミデート(phosp
horamidate)などを含む。例えば、LaPlanche et al., N
ucleic Acids Res. 14:9081 (1986); Stec e
t al., J. Am. Chem. Soc. 106:6077 (1984)
, Stein et al., Nucleic Acids Res. 16:32
09 (1988), Zon et al., Anti Cancer Drug
Design 6:539 (1991); Zon et al., Oligonu
cleotides and Analogues: A Practical App
roach, pp. 87-108 (F. Eckstein, Ed., Oxf
ord University Press, Oxford England (19
91)); Stec et al., 米国特許第5,151,510号; Uhlm
ann and Peyman, Chemical Reviews 90:543
(1990)を参照。幾つかの実施形態では、ASOの骨格構造は、亜リン酸を含有して
いないが、例えば、ペプチド核酸(PNA)、またはカルバミン酸塩、アミド、および直
鎖および環式の炭化水素基を含む連結基において、ペプチド結合を含有している。幾つか
の実施形態では、骨格修飾は、ホスホロチオエート結合である。幾つかの実施形態では、
骨格修飾は、ホスホラミデート結合である。
【0082】
実施形態では、ASO骨格のリンヌクレオチド間の結合の各々での立体化学は、ランダ
ムである。実施形態では、ASO骨格のリンヌクレオチド間の結合の各々での立体化学は
、制御され、ランダムではない。例えば、引用によって本明細書に組み込まれた米国特許
公開番号2014/0194610、「Methods for the Synthe
sis of Functionalized Nucleic Acids」は、核酸
オリゴマーにおいて各リン原子でキラリティーの対掌性(handedness)を独立
して選択する方法について記載している。実施形態では、限定されないが、本明細書で表
1に明記されるASOのいずれかを含む、本発明の方法に使用されるASOは、ランダム
でないリンヌクレオチド間の結合を有するASOを含む。実施形態では、本発明の方法に
使用される組成物は、純粋なジアステレオマーASOを含む。実施形態では、本発明の方
法に使用される組成物は、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92
%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96
%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、約100%、約9
0%~約100%、約91%~約100%、約92%~約100%、約93%~約100
%、約94%~約100%、約95%~約100%、約96%~約100%、約97%~
約100%、約98%~約100%、または約99%~約100%のジアステレオマー純
度を有するASOを含む。
【0083】
実施形態では、ASOは、そのリンヌクレオチド間の結合でRpおよびSpの構成のラ
ンダムでない混合物を有している。例えば、RpとSpの混合物が、アンチセンスオリゴ
ヌクレオチドにおいて、優れた活性とヌクレアーゼ安定性との間のバランスを達成する必
要があることが示唆されてきた(Wan, et al., 2014,「Synthe
sis, biophysical properties and biologic
al activity of second generation antisen
se oligonucleotides containing chiral ph
osphorothioate linkages,」Nucleic Acids R
esearch 42(22): 13456-13468、引用によって本明細書に組
み込まれる)。実施形態では、限定されないが、本明細書で表1に明記されるASOのい
ずれかを含む、本発明の方法に使用されるASOは、約5-100%のRp、少なくとも
約5%のRp、少なくとも約10%のRp、少なくとも約15%のRp、少なくとも約2
0%のRp、少なくとも約25%のRp、少なくとも約30%のRp、少なくとも約35
%のRp、少なくとも約40%のRp、少なくとも約45%のRp、少なくとも約50%
のRp、少なくとも約55%のRp、少なくとも約60%のRp、少なくとも約65%の
Rp、少なくとも約70%のRp、少なくとも約75%のRp、少なくとも約80%のR
p、少なくとも約85%のRp、少なくとも約90%のRp、または少なくとも約95%
のRpと、残りのsp、或いは、約100%のRpを含む。実施形態では、限定されない
が、本明細書で表1に明記されるASOのいずれかを含む、本発明の方法に使用されるA
SOは、約10%~約100のRp、約15%~約100%のRp、約20%~約100
%のRp、約25%~約100%のRp、約30%~約100%のRp、約35%~約1
00%のRp、約40%~約100%のRp、約45%~約100%のRp、約50%~
約100%のRp、約55%~約100%のRp、約60%~約100%のRp、約65
%~約100%のRp、約70%~約100%のRp、約75%~約100%のRp、約
80%~約100%のRp、約85%~約100%のRp、約90%~約100%のRp
、約95%~約100%のRp、約20%~約80%のRp、約25%~約75%のRp
、約30%~約70%のRp、約40%~約60%のRp、または約45%~約55%R
pと、残りのSpを含む。
【0084】
実施形態では、限定されないが、本明細書で表1に明記されるASOのいずれかを含む
、本発明の方法に使用されるASOは、約5-100%のSp、少なくとも約5%のSp
、少なくとも約10%のSp、少なくとも約15%のSp、少なくとも約20%のSp、
少なくとも約25%のSp、少なくとも約30%のSp、少なくとも約35%のSp、少
なくとも約40%のSp、少なくとも約45%のSp、少なくとも約50%のSp、少な
くとも約55%のSp、少なくとも約60%のSp、少なくとも約65%のSp、少なく
とも約70%のSp、少なくとも約75%のSp、少なくとも約80%のSp、少なくと
も約85%のSp、少なくとも約90%のSp、または少なくとも約95%のSpと、残
りのRp、あるいは約100%のSpを含む。実施形態では、限定されないが、本明細書
で表1に明記されるASOのいずれかを含む、本発明の方法に使用されるASOは、約1
0%~約100%のSp、約15%~約100%のSp、約20%~約100%のSp、
約25%~約100%のSp、約30%~約100%のSp、約35%~約100%のS
p、約40%~約100%のSp、約45%~約100%のSp、約50%~約100%
のSp、約55%~約100%のSp、約60%~約100%のSp、約65%~約10
0%のSp、約70%~約100%のSp、約75%~約100%のSp、約80%~約
100%のSp、約85%~約100%のSp、約90%~約100%のSp、または約
95%~約100%のSp、約20%~約80%のSp、約25%~約75%のSp、約
30%~約70%のSp、約40%~約60%のSp、または約45%~約55%のSp
と、残りのRpを含む。
【0085】
本明細書に記載されるASOのいずれかは、自然発生のヌクレオチド中に存在するよう
な、リボースまたはデオキシリボースを含む糖部、あるいはモルホリン環を含む、修飾さ
れた糖部または糖アナログを含有し得る。修飾された糖部の限定しない例は、2’-O-
メチル(2’-O-Me)、2’-O-メトキシエチル(2’MOE)、2’-O-アミ
ノエチル、2’F;N3’->P5’ホスホラミデート、2’ジメチルアミノオキシエト
キシ、2’ジメチルアミノエトキシエトキシ、2’-グアニジニウム(guanidin
idium)、2’-O-グアニジニウムエチル、カルバミン酸塩修飾した糖、および二
環式修飾した糖などの、2’置換基が挙げられる。幾つかの実施形態では、糖部修飾は、
2’-O-Me、2’F、および2’MOEから選択される。幾つかの実施形態では、糖
部修飾は、ロックド核酸(LNA)におけるような追加の架橋結合である。幾つかの実施
形態では、糖アナログは、ホスホロジアミデートモルホリノ(PMO)などのモルホリン
環を含有している。幾つかの実施形態では、糖部は、リボフラノシルまたは2’デオキシ
リボフラノシルの修飾を含む。幾つかの実施形態では、糖部は、2’4’抑制された(c
onstrained)2’O-メチルオキシエチル(cMOE)修飾を含む。幾つかの
実施形態では、糖部は、cEt 2’,4抑制された2’-OエチルBNA修飾を含む。
幾つかの実施形態では、糖部は、トリシクロDNA(tcDNA)修飾を含む。幾つかの
実施形態では、糖部は、エチレン核酸(ENA)修飾を含む。幾つかの実施形態では、糖
部は、MCE修飾を含む。修飾は当該技術分野で既知であり、文献、例えば、Jarve
r, et al., 2014,「A Chemical View of Olig
onucleotides for Exon Skipping and Relat
ed Drug Applications,」Nucleic Acid Thera
peutics 24(1): 37-47に記載され、これは、この目的のための引用
によって本明細書に組み込まれる。
【0086】
幾つかの例では、ASOの各単量体は、同じ方法で修飾され、例えば、ASOの骨格の
各結合はホスホロチオエート結合を含み、または各リボース糖部は2’O-メチル修飾を
含む。ASOの単量体成分の各々の上に存在する、そのような修飾は、「均一な修飾」と
呼ばれる。幾つかの例では、異なる修飾の組み合わせが望まれ得、例えば、ASOは、ホ
スホロジアミデート結合とモルホリン環を含む糖部(モルホリノ)との組み合わせを含み
得る。ASOへの異なる修飾の組み合わせは、「混合修飾」または「混合化学作用」と呼
ばれる。
【0087】
幾つかの実施形態では、ASOは、1つ以上の骨格修飾を含む。幾つかの実施形態では
、ASOは、1つ以上の糖部修飾を含む。幾つかの実施形態では、ASOは、1つ以上の
骨格修飾および1つ以上の糖部修飾を含む。幾つかの実施形態では、ASOは、2’MO
E修飾およびホスホロチオエート骨格を含む。幾つかの実施形態では、ASOは、ホスホ
ロジアミデートモルホリノ(PMO)を含む。幾つかの実施形態では、ASOは、ペプチ
ド核酸(PNA)を含む。本明細書に記載されるASOのいずれか又はASOの成分(例
えば、核酸塩基、糖部、骨格)は、ASOの望ましい特性または活性を達成するために或
いはASOの望ましくない特性または活性を減少させるために修飾されてもよい。例えば
、ASOまたはASOの1つ以上の成分は、mRNA前駆体の転写産物上の標的配列への
結合親和性を増強する;非標的配列への結合を減少させる;細胞のヌクレアーゼ(つまり
、RNase H)による分解を減少させる;細胞及び/又は細胞の核へのASOの取り
込みを改善する;ASOの薬物動態(pharmacokinetics)または薬力(
pharmacodynamics)を変更する;およびASOの半減期を調節するため
に修飾され得る。
【0088】
幾つかの実施形態では、ASOは、2’-O-(2-メトキシエチル)(MOE)ホス
ホロチオエート修飾されたヌクレオチドで構成される。そのようなヌクレオチドで構成さ
れたASOは、特に、本明細書で開示される方法によく適しており、そのような修飾を有
しているオリゴマーは、ヌクレアーゼ分解に対する著しく増強された耐性および増加した
バイオアベイラビリティを有すると示されており、これによって、例えば、本明細書に記
載される幾つかの実施形態における経口送達に適するようになる。例えば、Geary
et al., J Pharmacol Exp Ther. 2001; 296(
3):890-7; Geary et al., J Pharmacol Exp
Ther. 2001; 296(3):898-904を参照。
【0089】
ASOを合成する方法は当業者に既知である。代替的に又は加えて、ASOは商用源か
ら得てもよい。
【0090】
他に明記されない限り、一本鎖核酸(例えば、mRNA前駆体の転写産物、オリゴヌク
レオチド、ASOなど)配列の左端は、5’末端であり、一本鎖または二本鎖の核酸配列
の左方向は、5’方向と呼ばれる。同様に、核酸配列(一本鎖または二本鎖)の右端また
は右方向は、3’末端または3’方向である。一般に、核酸中の基準点に対する5’にあ
る領域または配列は、「上流」として言及され、核酸中の基準点に対する3’にある領域
または配列は、「下流」として言及される。一般に、mRNAの5’方向または5’末端
は、開始コドン(initiation or start codon)が位置する場
所であり、一方で、3’末端または3’方向は、終止コドンが位置する場所である。幾つ
かの態様では、核酸中の基準点の上流にあるヌクレオチドは、負の数によって指定され、
基準点の下流にあるヌクレオチドは、正の数によって指定され得る。例えば、基準点(例
えば、mRNA中のエクソンエクソン連結)は「ゼロ」部位として指定され得、基準点に
直接隣接し且つその上流にあるヌクレオチドは、「マイナス1」、例えば「-1」と指定
され、一方で、基準点に直接隣接し且つその下流にあるヌクレオチドは、「プラス1」、
例えば「+1」と指定される。
【0091】
他の実施形態では、ASOは、JAG1 RIC mRNA前駆体において保持された
イントロンの5’スプライス部位の下流(3’の方向)であるJAG1 RIC mRN
A前駆体の標的部分(例えば5’スプライス部位に対して、正の数で示された方向)に対
して相補的である(及び、標的部分に結合する)(
図1)。幾つかの実施形態では、AS
Oは、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対する領域+6から+500、+6
から+400、+6から+300、+6から+200、または+6から+100内にある
JAG1 RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的である。幾つかの実施形態では、
ASOは、5’スプライス部位に対して、+1から+5までのヌクレオチド(5’スプラ
イス部位の下流に位置付けられた最初の5つのヌクレオチド)に対して相補的ではない。
幾つかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対する
ヌクレオチド+6と+50の間の領域内にあるJAG1 RIC mRNA前駆体の標的
部分に相補的であり得る。幾つかの態様では、ASOは、保持されたイントロンの5’ス
プライス部位に対する領域+6から+90、+6から+80、+6から+70、+6から
+60、+6から+50、+6から+40、+6から+30、または+6から+20内に
ある標的部分に相補的である。
【0092】
幾つかの実施形態では、ASOは、JAG1 RIC mRNA前駆体において保持さ
れたイントロンの3’スプライス部位の上流(5’の方向(relative))にある
JAG1 RIC mRNA前駆体の標的領域(例えば負の数で指定された方向)に対し
て相補的である(
図1)。幾つかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの3
’スプライス部位に対する領域-16から-500、-16から-400、-16から-
300、-16から-200、または-16から-100内にあるJAG1 RIC m
RNA前駆体の標的部分に相補的である。幾つかの実施形態では、ASOは、3’スプラ
イス部位に対して、-1から-15までのヌクレオチド(3’スプライス部位の上流に位
置付けられた最初の15のヌクレオチド)には相補的ではない。幾つかの実施形態では、
ASOは、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対する領域-16から-50内
にあるJAG1 RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的である。幾つかの態様では
、ASOは、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対する領域-16から-90
、-16から-80、-16から-70、-16から-60、-16から-50、-16
から-40、または-16から-30内にある、標的部分に相補的である。
【0093】
実施形態において、JAG1 RIC mRNA前駆体の標的部分は、保持されたイン
トロンの5’スプライス部位に対する+6から、保持されたイントロンの3’スプライス
部位に対する-16までの領域内に存在する。
【0094】
幾つかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接
しているエクソン内(上流)にあるJAG1 RIC mRNA前駆体の標的部分に相補
的である(
図1)。幾つかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの5’スプ
ライス部位に隣接しているエクソンにおける領域+2eから-4e内にあるJAG1 R
IC mRNA前駆体の標的部分に相補的である。幾つかの実施形態では、ASOは、保
持されたイントロンの5’スプライス部位に対するヌクレオチド-1eから-3eに相補
的ではない。幾つかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの5’スプライス
部位に対する領域-4eから-100e、-4eから-90e、-4eから-80e、-
4eから-70e、-4eから-60e、-4eから-50e、-4eから-40e、-
4eから-30e、または-4eから-20e内にある、JAG1 RIC mRNA前
駆体の標的部分に相補的である。
【0095】
幾つかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接
しているエクソン内(下流)にあるJAG1 RIC mRNA前駆体の標的部分に相補
的である(
図1)。幾つかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの3’スプ
ライス部位に隣接しているエクソンにおける+2eから-4eの領域内にあるJAG1
RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的である。幾つかの実施形態では、ASOは、
保持されたイントロンの3’スプライス部位に対するヌクレオチド+1eに相補的ではな
い。幾つかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対
して+2eから+100e、+2eから+90e、+2eから+80e、+2eから+7
0e、+2eから+60e、+2eから+50e、+2eから+40e、+2eから+3
0e、または+2eから+20eの領域内にある、JAG1 RIC mRNA前駆体の
標的部分に相補的である。ASOは、スプライシングの特異的結合および効果的な増強作
用に適する任意の長さでもよい。幾つかの実施形態では、ASOは8から50の核酸塩基
から成る。例えば、ASOは、長さが8、9、10、11、12、13、14、15、1
6、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29
、30、31、32、33、34、35、45または50の核酸塩基であってもよい。幾
つかの実施形態では、ASOは50よりも多い核酸塩基から成る。幾つかの実施形態では
、ASOは、8~50の核酸塩基、8~40の核酸塩基、8~35の核酸塩基、8~30
の核酸塩基、8~25の核酸塩基、8~20の核酸塩基、8~15の核酸塩基、9~50
の核酸塩基、9~40の核酸塩基、9~35の核酸塩基、9~30の核酸塩基、9~25
の核酸塩基、9~20の核酸塩基、9~15の核酸塩基、10~50の核酸塩基、10~
40の核酸塩基、10~35の核酸塩基、10~30の核酸塩基、10~25の核酸塩基
、10~20の核酸塩基、10~15の核酸塩基、11~50の核酸塩基、11~40の
核酸塩基、11~35の核酸塩基、11~30の核酸塩基、11~25の核酸塩基、11
~20の核酸塩基、11~15の核酸塩基、12~50の核酸塩基、12~40の核酸塩
基、12~35の核酸塩基、12~30の核酸塩基、12~25の核酸塩基、12~20
の核酸塩基、12~15の核酸塩基、13~50の核酸塩基、13~40の核酸塩基、1
3~35の核酸塩基、13~30の核酸塩基、13~25の核酸塩基、13~20の核酸
塩基、14~50の核酸塩基、14~40の核酸塩基、14~35の核酸塩基、14~3
0の核酸塩基、14~25の核酸塩基、14~20の核酸塩基、15~50の核酸塩基、
15~40の核酸塩基、15~35の核酸塩基、15~30の核酸塩基、15~25の核
酸塩基、15~20の核酸塩基、20~50の核酸塩基、20~40の核酸塩基、20~
35の核酸塩基、20~30の核酸塩基、20~25の核酸塩基、25~50の核酸塩基
、25~40の核酸塩基、25~35の核酸塩基、または25~30の核酸塩基の長さで
ある。幾つかの実施形態では、ASOは長さが30のヌクレオチドである。幾つかの実施
形態では、ASOは長さが29のヌクレオチドである。幾つかの実施形態では、ASOは
長さが28のヌクレオチドである。幾つかの実施形態では、ASOは長さが27のヌクレ
オチドである。幾つかの実施形態では、ASOは長さが26のヌクレオチドである。幾つ
かの実施形態では、ASOは長さが25のヌクレオチドである。幾つかの実施形態では、
ASOは長さが24のヌクレオチドである。幾つかの実施形態では、ASOは長さが23
のヌクレオチドである。幾つかの実施形態では、ASOは長さが22のヌクレオチドであ
る。幾つかの実施形態では、ASOは長さが21のヌクレオチドである。幾つかの実施形
態では、ASOは長さが20のヌクレオチドである。幾つかの実施形態では、ASOは長
さが19のヌクレオチドである。幾つかの実施形態では、ASOは長さが18のヌクレオ
チドである。幾つかの実施形態では、ASOは長さが17のヌクレオチドである。幾つか
の実施形態では、ASOは長さが16のヌクレオチドである。幾つかの実施形態では、A
SOは長さが15のヌクレオチドである。幾つかの実施形態では、ASOは長さが14の
ヌクレオチドである。幾つかの実施形態では、ASOは長さが13のヌクレオチドである
。幾つかの実施形態では、ASOは長さが12のヌクレオチドである。幾つかの実施形態
では、ASOは長さが11のヌクレオチドである。幾つかの実施形態では、ASOは長さ
が10のヌクレオチドである。
【0096】
幾つかの実施形態では、異なる化学的性質を有するが、RIC mRNA前駆体の同じ
標的部分に相補的である2つ以上のASOが使用される。幾つかの実施形態では、RIC
mRNA前駆体の異なる標的部分に相補的である2つ以上のASOが使用される。
【0097】
実施形態では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ以上の部分または抱
合体、例えば、オリゴヌクレオチドの活性または細胞取り込みを増強する標的部分または
他の抱合体に化学的に連結される。そのような部分には、限定されないが、例えば、コレ
ステロール部分、コレステリル部分、例えばドデカンジオールまたはウンデシル残基など
の脂肪族鎖、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖、または、アダマンタン酢酸と
して、脂質部分が含まれる。親油性部分を含むオリゴヌクレオチドおよび調製方法は、公
開された文献に記載されている。実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、限
定されないが、脱塩基ヌクレオチド、ポリエーテル、ポリアミン、ポリアミド、ペプチド
、炭水化物、例えばN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N-Ac-グルコサ
ミン(GluNAc)、またはマンノース(例えばマンノース6-リン酸)、脂質、また
はポリ炭化水素化合物を含む部分と抱合する。当該技術分野で理解され且つ文献に記載さ
れるように、例えばリンカーを用いて、抱合体は、糖、塩基またはリン酸基上のいくつか
の位置のうちのいずれかでアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む任意のヌクレオチドの
1つ以上に連結することができる。リンカーは二価または三価の分枝リンカーを含み得る
。実施形態では、抱合体はアンチセンスオリゴヌクレオチドの3’末端に付けられている
。オリゴヌクレオチド抱合体を調製する方法は、例えば、米国特許第8,450,467
号「Carbohydrate conjugates as delivery ag
ents for oligonucleotides」に記載され、これは参照により
本明細書に組み込まれる。
【0098】
幾つかの実施形態では、ASOによって標的とされる核酸は、真核細胞などの細胞内に
発現したJAG1 RIC mRNA前駆体である。幾つかの実施形態では、用語「細胞
」は、細胞の集団を指すこともある。幾つかの実施形態では、細胞は被験体内に存在する
。幾つかの実施形態では、細胞は被験体から単離されている。幾つかの実施形態では、細
胞はエクスビボである。幾つかの実施形態では、細胞は疾患関連細胞もしくは疾患関連細
胞、または細胞株である。幾つかの実施形態では、細胞はインビトロである(例えば細胞
培養液中にある)。
【0099】
<医薬組成物>
記載された組成物のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含み、上記方法のいずれかにお
いて使用するための医薬組成物または医薬製剤は、医薬品産業において周知の従来技術に
従って調製することができ、且つ公開文献においても記載されている。実施形態において
、被験体を処置するための医薬組成物または医薬製剤は、上記のような任意のアンチセン
スオリゴマー、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物、またはエステルの
有効量、および薬学的に許容可能な希釈剤を含む。医薬製剤のアンチセンスオリゴマーは
さらに、薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤または担体を含み得る。
【0100】
薬学的に許容可能な塩は、過度の毒性反応、刺激反応、アレルギー反応等を持たないヒ
トおよび下等動物の組織に接する使用に適しており、かつ適切なベネフィット・リスク比
に相応している(例えば、S. M. Berge, et al., J. Pharmac
eutical Sciences, 66: 1-19 (1977)を参照、この目的の
ために参照によって本明細書に組み込まれる)。塩は、化合物の最終的な分離および精製
中にインサイチュで、または遊離基機能を適切な有機酸と反応させることによって別々に
調製されうる。薬学的に許容可能で無毒な酸付加塩の例は、塩化水素、臭化水素酸、リン
酸、硫酸、および過塩素酸などの無機酸か、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエ
ン酸、コハク酸もしくはマロン酸などの有機酸か、またはイオン交換などの他の文書で立
証された方法を用いることによって形成されたアミノ基の塩である。他の薬学的に許容可
能な塩は、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼ
ンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸
塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エ
タンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グル
コン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ
-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リ
ンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸
塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペ
クチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル
酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸、チオシアン酸塩
、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などを含む。代表的なアルカリ
またはアルカリ土類金属の塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネ
シウムなどを含む。さらに薬学的に許容可能な塩は、適切な場合、ハロゲン化物、水酸化
物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルのスルホン酸塩、およびア
リールスルホン酸塩などの対イオンを使用して形成された、無毒なアンモニウム、第四級
アンモニウム、およびアミンのカチオンを含む。
【0101】
実施形態において、組成物は、限定されないが、錠剤、カプセル、ゲルカプセル、液体
シロップ、ソフトゲル、坐剤、および浣腸剤などの多くの考えられる剤形のいずれかへと
製剤される。実施形態において、組成物は、水性培地、非水性培地、または混合培地状の
懸濁液として製剤化される。水性懸濁液は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリ
ウム(ソルビトールおよび/またはデキストラン)を含む懸濁液の粘度を増加させる物質
をさらに含むこともある。その懸濁液は、安定化剤も含むこともある。実施形態において
、本発明の医薬製剤または医薬組成物は、限定されないが、溶液、エマルジョン、マイク
ロエマルジョン、発泡体またはリポソーム含有製剤(例えばカチオンリポソームまたは非
カチオンリポソーム)を含む。
【0102】
本発明の医薬組成物または医薬製剤は、必要に応じて当業者に周知されるように、また
は公開文献において記載されているように、1つ以上の透過促進剤、担体、賦形剤、また
は他の活性成分もしくは非活性成分を含むこともある。実施形態において、リポソームは
立体的に安定したリポソーム、例えば1つ以上の特定の脂質を含むリポソームも含む。こ
れらの特定の脂質は、循環寿命が増強されたリポソームを結果としてもたらす。実施形態
において、立体的に安定したリポソームは、1つ以上の糖脂質を含むか、またはポリエチ
レングリコール(PEG)部分などの1つ以上の親油性ポリマーを用いて誘導体化される
。実施形態において、界面活性剤は医薬製剤または医薬組成物中に含まれる。薬物製品、
製剤およびエマルジョンにおける界面活性剤の使用は、当技術分野においてよく知られて
いる。実施形態では、本発明は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの効率的な送達を達成
する、例えば、細胞膜にわたる拡散を助ける及び/又は脂溶性薬物の浸透性を増強するた
めに、浸透促進剤を利用する。実施形態では、浸透促進剤は、界面活性剤、脂肪酸、胆汁
酸塩、キレート剤、または非キレート性の非界面活性剤である。
【0103】
実施形態において、医薬製剤は複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。実施形
態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは他の薬物または治療剤と組み合わせて投
与される。実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、当技術分野において
知られている任意の方法によって、血液脳関門を介する主題のアンチセンスオリゴヌクレ
オチドの浸透を促進することができる1つ以上の薬剤と共に投与される。例えば、筋組織
内の運動ニューロンへアデノウイルスベクターを投与することによる薬剤の送達は、引用
によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,632,427号「Adenovira
l-vector-mediated gene transfer into medul
lary motor neurons」に記載されている。脳、例えば、線条体、視床、
海馬、または黒質への直接のベクターの送達は、例えば、引用によって本明細書に組み込
まれる米国特許第6,756,523号「Adenovirus vectors for
the transfer of foreign genes into cells of
the central nervous system particularly in
brain」に記載される。
【0104】
実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、望ましい薬理学的性質または
薬力学的性質を提供する薬剤に結合されるか抱合される。実施形態において、アンチセン
スオリゴヌクレオチドは、血液脳関門を介する浸透または輸送を促進すると当技術分野に
おいて知られている物質、例えばトランスフェリン受容体の抗体に結合される。実施形態
において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、アンチセンス化合物をより効果
的にするために、または血液脳関門を介する輸送を増加させるためにウイルスベクターに
結合される。実施形態において、浸透性の血液脳関門の破壊は、砂糖、例えばメソエリス
リトール、キシリトール、D(+)ガラクトース、D(+)ラクトース、D(+)キシロ
ース、ズルシトール、ミオ-イノシトール、L(-)フルクトース、D(-)マンニトー
ル、D(+)グルコース、D(+)アラビノース、D(-)アラビノース、セロビオース
、D(+)マルトース、D(+)ラフィノース、L(+)ラムノース、D(+)メリビオ
ース、D(-)リボース、アドニトール、D(+)アラビトール、L(-)アラビトール
、D(+)フコース、L(-)フコース、D(-)リキソース、L(+)リキソース、お
よびL(-)リキソース、またはアミノ酸、例えばグルタミン、リジン、アルギニン、ア
スパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、ロイ
シン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、チロシン、バリ
ン、およびタウリンを注入することにより促進される。血液脳関門の浸透性を増強するた
めの方法および物質は、例えば、米国特許第4,866,042号「Method fo
r the delivery of genetic material across t
he blood brain barrier」、米国特許第6,294,520号「M
aterial for passage through the blood-brai
n barrier」、および米国特許第6,936,589号「Parenteral
delivery systems」に記載されており、各々は引用によって本明細書に
組み込まれる。
【0105】
実施形態では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ以上の部分または抱
合体、例えば、オリゴヌクレオチドの活性または細胞取り込みを増強する標的部分または
他の抱合体に化学的に連結される。そのような部分には、限定されないが、例えば、コレ
ステロール部分、コレステリル部分、例えばドデカンジオールまたはウンデシル残基など
の脂肪族鎖、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖、または、アダマンタン酢酸と
して、脂質部分が含まれる。親油性部分を含むオリゴヌクレオチドおよび調製方法は、公
開された文献に記載されている。実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは
、限定されないが、脱塩基ヌクレオチド、ポリエーテル、ポリアミン、ポリアミド、ペプ
チド、炭水化物、例えばN-アセチルガラクトサミン(GluNAc)、N-Acグルコ
サミン(GalNAc)、もしくはマンノース(例えばマンノース-6-リン酸)、脂質
、またはポリ炭化水素化合物を含む部分で抱合される。抱合体は、当該技術分野で理解さ
れ文献に記載されるように、例えばリンカーを用いて、糖、塩基またはリン酸基上のいく
つかの位置のうちのいずれかでアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む任意のヌクレオチ
ドの1つ以上に連結されうる。リンカーは二価または三価の分枝リンカーを含みうる。実
施形態では、抱合体はアンチセンスオリゴヌクレオチドの3’末端に結合している。オリ
ゴヌクレオチド抱合体を調製する方法は、例えば、米国特許第8,450,467号「C
arbohydrate conjugates as delivery agents
for oligonucleotides」に記載され、参照により本明細書に組み込
まれる。
【0106】
被験体の処置本明細書に提供される組成物のうちのいずれかが個体に投与されうる。「
個体」は、「被験体」または「患者」と互換的に使用されてもよい。個体は、哺乳動物、
例えば、ヒト、またはヒト以外の霊長類、げっ歯類、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ロ
バ、ヤギ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、またはヒツジなどの動物であってもよい。実施形態
では、個体はヒトである。実施形態では、個体は胎児、胚、または小児である。他の実施
形態では、個体は植物などの別の真核生物かもしれない。いくつかの実施形態では、本明
細書で提供される化合物は細胞にエクスビボで投与される。
【0107】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される組成物は、疾病または障害を処置する
方法として個体に投与される。いくつかの実施形態では、個体は、本明細書に記述された
いずれかの疾病などの遺伝病を有する。いくつかの実施形態では、個体は、本明細書に記
述されたいずれかの疾病などの疾病を有するリスクがある。いくつかの実施形態では、個
体は、不十分な量のタンパク質または不十分な活性のタンパク質により引き起こされる疾
病または障害を有するリスクが増大している。個体が、不十分な量のタンパク質または不
十分な活性のタンパク質により引き起こされる疾病または障害を有するリスクが増大して
いる場合、方法は防止的または予防的な処置を含む。例えば、個体は、その疾病の家族歴
のために、そのような疾病または障害を有するリスクが増大している場合がある。典型的
には、そのような疾病または障害を有するリスクが増大している個体は、予防的処置(例
えば、疾病または障害の発症または悪化を予防するかまたは遅らせることによる)から利
益を受ける。
【0108】
本発明のASOの投与に適切な経路は、ASOの送達が所望される細胞型に応じて変わ
りうる。多数の組織および器官はアラジール症候群によって影響を受け、肝臓が最も著し
く影響を受ける組織である。本発明のASOは、患者に非経口的に投与されることもある
。実施形態では、本発明のASOは、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、または静脈内
注射によって患者に投与さる。実施形態では、送達は心臓または肝臓に対して行なわれる
。実施形態では、胎児は、例えばASO組成物を胎児に対して直接または間接的(例えば
母を介して)に投与することにより、子宮内で処置される。
【0109】
筋ジストロフィーの被験体の処置において、本発明の組成物は、直接投与(例えば注射
により局所的に、もしくは処置部位における局所投与)、もしくは全身的な(例えば非経
口的もしくは経口的な)、鼻腔内な、経口的な投与を含む任意の適切な手段か、または吸
入、腸内、局所的、子宮内、膣、舌下、直腸、筋肉内、胸膜内、脳室内、腹腔内、眼、静
脈内、もしくは皮下の手段により筋細胞に提供されてもよい。
【0110】
スプライシングを増強する追加のASOを識別する方法本発明の範囲内にはまた、特に
標的イントロンにおけるJAG1 RICのmRNA前駆体のスプライシングを増強する
追加のASOを識別する(判定する)方法がある。mRNA前駆体の標的領域内で様々な
ヌクレオチドを特異的にハイブリダイズさせるASOは、標的イントロンのスプライシン
グの速度および/または程度を改善するASOを識別する(判定する)ためにスクリーニ
ングされてもよい。いくつかの実施形態では、ASOはスプライシング抑制因子/サイレ
ンサーの結合部位でブロックまたは妨害することもある。当該技術分野において既知の任
意の方法は、イントロンの標的領域にハイブリダイズされた時に所望の効果(例えばスプ
ライシング、タンパク質または機能性RNAの生産の向上)をもたらすASOを識別する
(判定する)ために使用されてもよい。これらの方法はまた、保持されたイントロンに隣
接するエクソン中、または保持されていないイントロン中の標的領域へ結合することによ
り、保持されたイントロンのスプライシングを増強するASOを識別するために使用する
ことができる。使用されうる方法の一例が下記に提供される。
【0111】
mRNA前駆体の標的領域にハイブリダイズするように設計されたASOを用いて、A
SO「ウォーク」(walk)と呼ばれる1ラウンドのスクリーニングを行うこともある
。例えば、ASOウォークに使用されるASOは、保持されたイントロンの5’スプライ
ス部位の上流のおよそ100ヌクレオチド(例えば、標的とされた/保持されたイントロ
ンの上流に位置するエクソンの配列の一部)から標的とされた/保持されたイントロンの
5’スプライス部位の下流のおよそ100ヌクレオチドまで、および/または、保持され
たイントロンの3’スプライス部位の上流のおよそ100ヌクレオチドから標的とされた
/保持されたイントロンの3’スプライス部位の下流のおよそ100ヌクレオチド(例え
ば、標的とされた/保持されたイントロンの下流に位置するエクソンの配列の一部)まで
、5ヌクレオチドごとに敷き詰められうる。例えば、長さが15ヌクレオチドの第1のA
SOは、標的とされた/保持されたイントロンの5’スプライス部位に対するヌクレオチ
ド+6から+20まで特異的にハイブリダイズするように設計されうる。第2のASOは
、標的とされた/保持されたイントロンの5’スプライス部位に対するヌクレオチド+1
1から+25まで特異的にハイブリダイズするように設計されている。ASOは、mRN
A前駆体の標的領域に及ぶように設計されている。実施形態では、ASOは、より密に、
例えば、1、2、3、または4ヌクレオチドごとに敷き詰められうる。さらに、ASOは
、5’スプライス部位の下流の100ヌクレオチドから3’スプライス部位の上流の10
0ヌクレオチドまで敷き詰められうる。
【0112】
1つ以上のASO、または1つの対照ASO(標的領域にハイブリダイズするとは予期
されていない配列である、スクランブル配列を有するASO)は、例えばトランスフェク
ションによって、標的mRNA前駆体(例えば、本明細書で別記されるRIC mRNA
前駆体)を発現する疾患関連の細胞株へと送達される。ASOの各々のスプライシングを
誘発する効果は、本明細書で記載されるように、当該技術分野で既知の方法、例えば、ス
プライスジャンクションに及ぶプライマーを使用する逆転写酵素(RT)-PCRによっ
て評価されうる(「イントロン保持事象の特定」を参照)。対照ASO処理された細胞と
比較して、ASO処理された細胞におけるスプライスジャンクションに及ぶプライマーを
使用して生成されたRT-PCR産物が減少または欠如しているということは、標的イン
トロンのスプライシングが増強されたことを示している。いくつかの実施形態では、スプ
ライシング効率、スプライシングされていないmRNA前駆体に対するスプライシングさ
れたmRNA前駆体の比率、スプライシングの速度、またはスプライシングの程度は、本
明細書に記載のASOを使用して改善されうる。標的mRNA前駆体によってコード化さ
れるタンパク質または機能性RNAの量も、各ASOが所望の効果(例えば、タンパク質
産生の増強)を達成したかどうかを判定するために評価されうる。ウェスタンブロッティ
ング、フローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡検査法、およびELISAなどの、タンパ
ク質産生を評価および/または定量するための当該技術分野で既知の方法も使用すること
ができる。
【0113】
ASO「ミクロウォーク」(micro-walk)と呼ばれる第2ラウンドのスクリ
ーニングは、mRNA前駆体の標的領域にハイブリダイズするように設計されたASOを
使用して実行されうる。ASOミクロウォークに使用されるASOは、ASOでハイブリ
ダイズされたときに結果的にスプライシングを増強させるmRNA前駆体のヌクレオチド
酸配列をさらに改良する(refine)ために、1ヌクレオチドごとに敷き詰められる
。
【0114】
標的イントロンのスプライシングを促進するASOによって画定される領域は、1-n
tステップで間隔を置かれたASO、ならびに典型的には18-25ntであるより長い
ASOを含む、ASO「ミクロウォーク」によって、より詳細に調査される。
【0115】
上記にASOウォークに関して記載されたように、1つ以上のASO、または対照AS
O(標的領域にハイブリダイズすると予期されていない配列である、スクランブル配列を
有するASO)を、例えばトランスフェクションによって、標的mRNA前駆体を発現す
る疾患関連細胞株へと送達することによって、ASOミクロウォークが実行される。AS
Oの各々のスプライシングを誘発する効果は、本明細書で記載されるように、当該技術分
野で既知の方法、例えば、スプライスジャンクションに及ぶプライマーを使用する逆転写
酵素(RT)-PCRによって評価されうる(「イントロン保持事象の特定」を参照)。
対照ASO処理された細胞と比較して、ASO処理された細胞におけるスプライスジャン
クションに及ぶプライマーを使用して生成されたRT-PCR産物が減少または欠如して
いるということは、標的イントロンのスプライシングが増強されたことを示している。い
くつかの実施形態では、スプライシング効率、スプライシングされていないmRNA前駆
体に対するスプライシングされたmRNA前駆体の比率、スプライシングの速度、または
スプライシングの程度は、本明細書に記載のASOを使用して改善されうる。標的mRN
A前駆体によってコード化されるタンパク質または機能性RNAの量も、各ASOが所望
の効果(例えば、タンパク質産生の増強)を達成したかどうかを判定するために評価され
うる。ウェスタンブロッティング、フローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡検査法、およ
びELISAなどの、タンパク質産生を評価および/または定量するための当該技術分野
で既知の方法も使用することができる。
【0116】
mRNA前駆体の領域にハイブリダイズされたときに、結果的にスプライシングを増強
させ、タンパク質産生を増加させるASOは、動物モデル、例えば、全長ヒト遺伝子がノ
ックインされたトランスジェニックマウスモデルまたは疾患のヒト化マウスモデルを使用
して、インビボで試験されうる。ASOの投与に適した経路は、ASOの送達が望まれる
疾患及び/又は細胞型に応じて変化しうる。ASOは、例えば、腹腔内注射、筋肉注射、
皮下注射、または静脈注射によって投与されうる。投与後に、モデル動物の細胞、組織、
及び/又は臓器は、当該技術分野に既知の方法および本明細書に記載される方法によって
、例えば、スプライシング(効率、速度、程度)およびタンパク質産生を評価することに
より、ASO処置の効果を判定するために評価されうる。動物モデルはまた、疾患または
疾患重症度の表現型または行動的徴候でありうる。
【0117】
本発明の好ましい実施形態が本明細書中に示され記述された一方、そのような実施形態
が一例としてしか提供されていないことは当業者にとって明白だろう。多くの変更、変化
、および置換が、本発明から逸脱することなく、当業者に想到されるであろう。本明細書
に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、本発明の実施において利用されることも
あることを理解されたい。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義するものであり、
この特許請求の範囲内の方法および構造およびそれらの同等物がそれによって包含される
ことが意図されている。
【実施例0118】
本発明は、以下の実施例によってより具体的に例証されるだろう。しかしながら、本発
明がいかなる方法においてもこれらの実施例によって限定されないことが理解されるべき
である。
【0119】
<実施例1:次世代配列決定を用いたRNAseqによるJAG1転写産物のイントロン
保持事象の特定>
イントロン保持事象を特定するために次世代配列決定を使用して、全トランスクリプト
ームショットガン配列決定を実行し、JAG1遺伝子によって生成された転写産物のスナ
ップショットを明らかにした。この目的のために、THLE-3(ヒトの肝臓上皮)細胞
の核および細胞質の分画からのpolyA+RNAを単離し、Illumina’s T
ruSeq Stranded mRNA library Prep Kitを使用してc
DNAライブラリを構築した。ライブラリに対してペア-エンド配列決定(pair-e
nd sequence)を行い、結果として、ヒトゲノム(2009年2月、GRCh
37/hg19アセンブリ)にマッピングされた100ヌクレオチドの読み取りをもたら
した。JAG1に対する配列決定の結果を、
図3に示す。簡潔に言うと、
図3は、UCS
C Genome Informatics Group (Center for Biom
olecular Science & Engineering, University
of California, Santa Cruz, 1156 High Stree
t, Santa Cruz, CA 95064)によって操作され、かつ、例えばRos
enbloom, et al., 2015,”The UCSC Genome Brow
ser database: 2015年アップデート,”Nucleic Acids R
esearch 43, Database Issue (doi: 10.1093/n
ar/gku1177)に記載された、UCSCのゲノムブラウザを使用して視覚化され
マッピングされた読み取りを示し、読み取りの範囲および数はピーク信号によって推論さ
れうる。ピークの高さは、特定の領域における読み取り密度によって与えられた発現のレ
ベルを示している。ピークがJAG1エクソン領域およびイントロン領域に適合されるよ
うに、(読み取りシグナルの下の)UCSCゲノムブラウザによってJAG1の模式図(
縮尺通りに描かれている)が提供される。この表示に基づいて、THLE-3細胞の核分
画における高い読み取り密度を持つが、(
図3の下のダイアグラムにおけるイントロン1
3に関して、
図7の下のダイアグラムにおけるイントロン18に関して、および
図11の
下のダイアグラムにおけるイントロン23に関して示されるように、)これらの細胞の細
胞質分画中では、読み取りが非常に低いか全くない3つのイントロン(矢印により示され
た13、18および23)を識別した。このことは、これらのイントロンが保持されるこ
と、およびイントロン-13、イントロン-18およびイントロン-23含有転写産物は
細胞核中に残存し、かつそれらが細胞質へと運び出されないため、これらの保持されたJ
AG1 RIC mRNA前駆体は非生産的であることが示唆されることを示す。
【0120】
<実施例2:JAG1のイントロン13を標的とするASOウォークの設計>
ASOウォークを、本明細書中に記載された方法を使用して、イントロン13を標的と
するよう設計した(
図4;表2)。ヌクレオチド+6から+69に及ぶイントロン13の
5’スプライス部位のすぐ下流の領域、およびヌクレオチド-16から-68に及ぶイン
トロン13の3’スプライス部位のすぐ上流の領域を、(1ASO、JAG1-IVS1
3+52を例外として、)2’-O-Me RNA、PS骨格、5ヌクレオチド間隔でシ
フトされた18-mer ASOを用いて標的とした(
図4;表2)。
【0121】
<実施例3:JAG1イントロン13のASO標的化によるスプライシング効率の改善が
転写レベルを増加させる>
ASOを使用してJAG1イントロン13のスプライシング効率を改善することによっ
て、JAG1発現の増加を達成することができるかどうかを判定するために、本明細書に
記載される方法を使用した(
図5)。この目的のために、ARPE-19細胞を偽トラン
スフェクトしたか、あるいはRNAiMAX(RiM)(Invitrogen)の送達
試薬を独立して使用して、
図4および表2に記載される標的ASOの各々、または非標的
化SMN-ASO対照でトランスフェクトした。48時間(
図5に示されるように)60
nMのASOを使用して、実験を行った。放射性RT-PCRの結果は、いくつかの標的
ASO(+6、SEQ ID NO:135;+11、SEQ ID NO:136;+21
、SEQ ID NO:138;+26、SEQ ID NO:139;+31、SEQ I
D NO:140;+36、SEQ ID NO:141;+52;-16、SEQ ID
NO:301;-36、SEQ ID NO:297;-41、SEQ ID NO:296
;-46、SEQ ID NO:295;および- 51、SEQ ID NO:294)が
、疑似トランスフェクトされた、または非標的化のASO(
図5)と比べて、JAG1転
写産物のレベルを増大させることを示した。標的ASOでトランスフェクトされた細胞か
らのJAG1 PCR産物に対応するバンドの強度をβアクチンに正規化し、偽処理され
た細胞からの正規化されたJAG1 PCR産物に対してプロットした。この分析の結果
は、そのいくつかの標的ASOが、PKD1転写産物レベルを2から6倍増大させること
を示している(
図5)。これらの結果は、JAG1転写産物の他の部分にプライマーを使
用してRT-qPCRによって確認され、
図6における倍率変化プロットにより証明され
たJAG1アップレギュレーションの同じ傾向を示す(上部がベータアクチンに正規化さ
れたもの、下部がRPL32に正規化されたもの)。要するに、これらの結果によって、
ASOを使用してJAG1遺伝子における律速のイントロンのスプライシング効率を改善
することが、遺伝子発現の増加につながることが確認される。
【0122】
<実施例4:JAG1のイントロン18を標的とするASOウォークの設計>
ASOウォークを、本明細書中に記載された方法を使用して、イントロン18を標的と
するよう設計した(
図8;表2)。イントロン18のヌクレオチド+15から+67に及
ぶ5’スプライス部位のすぐ下流の領域、およびイントロン18のヌクレオチド-16か
ら-68に及ぶ3’スプライス部位のすぐ上流の領域を、2’-O-Me RNA、PS
骨格、5ヌクレオチド間隔でシフトされた18-mer ASOを用いて標的とした(図
8;表2)。
【0123】
<実施例5:JAG1イントロン18のASO標的化によるスプライシング効率の改善が
転写レベルを増加させる>
ASOを使用してJAG1イントロン18のスプライシング効率を改善することにより
、JAG1の発現の増加を達成しうるかどうかを判断するために、本明細書に記載された
方法を使用した(
図9)。この目的のために、独立してRNAiMAX(RiM)(In
vitrogen)の送達試薬を使用して、ARPE-19細胞を偽トランスフェクトし
たか、
図8および表2に記載される標的ASOの各々でトランスフェクトしたか、または
非標的化SMN-ASO対照でトランスフェクトした。48時間(
図5に示されるように
)60nMのASOを使用して、実験を行った。放射性RT-PCRの結果は、いくつか
の標的ASO(+15;+20;および-26、SEQ ID NO:107)が、疑似ト
ランスフェクトされたか、非標的のASOと比較してJAG1転写産物レベルを増大させ
たことを示す(
図9)。標的ASOでトランスフェクトされた細胞からのJAG1 PC
R産物に対応するバンドの強度をβアクチンに正規化し、偽処理された細胞からの正規化
されたJAG1 PCR産物に対してプロットした。この分析の結果は、その3つの標的
ASOが、JAG1転写産物レベルを少なくとも1.5倍増大させることを示している(
図9)。これらの結果は、JAG1転写産物の他の部分にプライマーを使用するRT-q
PCRによって確認され、
図10における倍率変化プロットにより証明されたJAG1ア
ップレギュレーションの同じ傾向を示す(上部はベータアクチンに正規化されたもの、下
部はRPL32に正規化されたもの)。要するに、これらの結果によって、ASOを使用
してJAG1遺伝子における律速のイントロンのスプライシング効率を改善することが、
遺伝子発現の増加につながることが確認される。
【0124】
第2の方法は、ASOを用いてJAG1標的遺伝子イントロンのスプライシング効率の
増大を達成することができるかどうかを判定するために使用されうる。簡潔に言えば、ヒ
トの網膜の上皮細胞であるARPE-19細胞(American Type Cultu
re Collection (ATCC), USA)、またはヒトの肝細胞腫細胞株で
あるHuh-7(NIBIOHN(日本))、またはヒトの神経芽細胞腫細胞株であるS
K-N-AS(ATCC)は、疑似トランスフェクトされるか、または表1および2に記
載の標的ASOでトランスフェクトされる。細胞を、供給業者の仕様書に従って、Lip
ofectamine RNAiMaxトランスフェクション試薬(Thermo Fis
her)を用いてトランスフェクトする。ASOを96ウェル組織培養プレートに蒔き、
Opti-MEMで希釈したRNAiMaxと組み合わせる。トリプシンを用いて細胞を
剥離し、完全培地中で再懸濁し、約25,000個の細胞をASOトランスフェクション
混合物に加える。トランスフェクション実験は3通りのプレート複製において実行される
。最終的なASO濃度は80nMである。供給業者の仕様書に従って、培地をトランスフ
ェクションの6時間後に交換し、細胞を、DNAse(Thermo Fisher)を
補充したCells-to-Ct RT試薬を用いて24時間で回収する。供給業者の仕
様書に従い、cDNAをCells-to-Ct RT試薬(Thermo Fisher
)で生成する。対象のイントロンでスプライシングする量を定量化するために、対応する
エクソン-エクソン連結(Thermo Fisher)に及ぶプローブでTaqman
アッセイを用いて、定量的PCRを実施する。Taqmanアッセイを、QuantSt
udio 7Flex Real-Time PCRシステム(Thermo Fisher
)上の供給業者の仕様書に従い実行する。標的遺伝子アッセイ値を、RPL32(ΔCt
)およびプレート適合偽トランスフェクションサンプル(ΔΔCt)に対して正規化し、
模擬モックの定量(2^-(ΔΔCt)に対して倍数変化を生成する。
【0125】
<実施例6:JAG1のイントロン23を標的とするASOウォークの設計>
ASOウォークを、本明細書中に記載された方法を使用して、イントロン23を標的と
するよう設計した(
図12;表2)。イントロン23のヌクレオチド+6から+58に及
ぶ5’スプライス部位のすぐ下流の領域、およびイントロン23のヌクレオチド-16か
ら-68に及ぶ3’スプライス部位のすぐ上流の領域を、2’-O-Me RNA、PS
骨格、5ヌクレオチド間隔でシフトされた18-mer ASOを用いて標的とした(図
12;表2)。
【0126】
被験体の細胞により標的タンパク質または機能RNAの発現を増加させることによって必要としている被験体のアラジール症候群を処置する方法であって、該細胞は、保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)を有し、該RIC mRNA前駆体は、保持されたイントロン、5’スプライス部位に隣接しているエクソン、および3’スプライス部位に隣接しているエクソンを含み、ここでRIC mRNA前駆体は、
標的タンパク質または機能RNAをコードし、該方法は、被験体の細胞を、標的タンパク質または機能RNAをコードするRIC mRNA前駆体の標的部分に相補的なアンチセ
ンスオリゴマー(ASO)と接触させる工程を含み、それによって、保持されたイントロンは、標的タンパク質または機能RNAをコードするRIC mRNA前駆体から構成的
にスプライシングされ、それにより、被験体の細胞内で、標的タンパク質または機能RNAをコードするmRNAのレベルを増加させ、標的タンパク質または機能RNAの発現を増加させる、方法。