(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010698
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】シャープペンシル
(51)【国際特許分類】
B43K 21/22 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
B43K21/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020111397
(22)【出願日】2020-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005511
【氏名又は名称】ぺんてる株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 好和
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353FA04
2C353FC13
2C353FE06
2C353FE15
(57)【要約】
【課題】 シャープペンシル用筆記芯を挿通させる筆記芯接続管を摺動可能に挿入するチャックセット収容筒が、筆記芯接菅の挿入部の外側を覆うように配置しているため、チャックセット収容筒を拡開させる構成となり、軸径を太くするか、筆記芯接続管の挿入部を細くする必要があり、デザインやシャープペンシル自体の把持のし易さの制約を受けたり、押圧操作部の操作による押圧力を、チャックセット収容筒や筆記芯接続菅の耐久性が問題となることがあった。
【解決手段】 筆記芯接続管のチャックセット収容筒の内孔への挿入部外面に、チャックセット収容筒の内孔に対して圧接される圧入突起部を有すると共に、当該圧入突起部の内径側に空間を形成するように、筆記芯接続管のチャックセット収容筒の内孔への挿入部外面に形成した複数の開口部を連通する連通孔を形成し、圧入突起部が形成されている部分を径方向に変位可能な両持ち梁部とし、チャックセット収容筒の内孔に対して筆記芯接続管を圧入状態としたシャープペンシル。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャープペンシル用筆記芯を把持して繰り出す機構であるチャック体を収容するチャックセット収容筒の内孔に、前記シャープペンシル用筆記芯を挿通させる筆記芯接続管を摺動可能に挿入してなるシャープペンシルにおいて、前記筆記芯接続管の前記チャックセット収容筒の内孔への挿入部外面に、前記チャックセット収容筒の内孔に対して圧接される圧入突起部を有すると共に、当該圧入突起部の内径側に空間を形成するように、前記筆記芯接続管の前記チャックセット収容筒の内孔への挿入部外面に形成した複数の開口部を連通する連通孔を形成し、前記圧入突起部が形成されている部分を径方向に変位可能な両持ち梁部とし、前記チャックセット収容筒の内孔に対して前記筆記芯接続管を圧入状態としたシャープペンシル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャープペンシル用筆記芯を把持して繰り出す機構であるチャック体を収容するチャックセット収容筒の内孔に、シャープペンシル用筆記芯を挿通させる筆記芯接続管を摺動可能に挿入してなるシャープペンシルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャープペンシル用筆記芯を把持して繰り出す機構であるチャック体を収容するチャックセット収容筒の内孔に、シャープペンシル用筆記芯を挿通させる筆記芯接続管を摺動可能に挿入してなるシャープペンシルにおいて、チャックセット収容筒が、筆記芯接続菅の挿入部の外側を覆うように配置されているものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているものでは、チャックセット収容筒(係止具23)が、筆記芯接続菅の挿入部の外側を覆うように配置され、筆記芯接続菅がチャックセット収容筒(係止具23)に挿入されて圧入状態となり、チャックセット収容筒(係止具23)を拡開させる方向に力がかかる構造関係になっていると共に、弾性変位部が片持ち梁で支えられた構造のため、梁の強度を上げたい場合、曲げ応力を下げるためチャックセット収容筒(係止具23)の弾性変位部の肉厚を厚くする必要があり、或いは、梁の強度を下げたい場合、曲げ応力を上げるためチャックセット収容筒(係止具23)の弾性変位部の肉厚を薄くする必要がある。例えば、チャックセット収容筒(係止具23)の弾性変位部の肉厚を厚くした場合、チャックセット収容筒を拡開させる構造に加えて、径方向に肉厚を厚くする必要があり、つまり、軸径を太くしなくてはならず、そのため、デザインやシャープペンシル自体の把持のし易さなど太さの制約を受けてしまう問題があり、また、チャックセット収容筒(係止具23)の弾性変位部の肉厚を薄くした場合、押圧操作部の操作による押圧力に対して、薄くした箇所の梁の強度が下がってしまうため、押圧操作部によるシャープペンシル用筆記芯を把持して繰り出す操作を繰り返し行うと、チャックセット収容筒(係止具23)の弾性変位部の耐久性が問題となることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、シャープペンシル用筆記芯を把持して繰り出す機構であるチャック体を収容するチャックセット収容筒の内孔に、シャープペンシル用筆記芯を挿通させる筆記芯接続管を摺動可能に挿入してなるシャープペンシルにおいて、筆記芯接続管のチャックセット収容筒の内孔への挿入部外面に、チャックセット収容筒の内孔に対して圧接される圧入突起部を有すると共に、当該圧入突起部の内径側に空間を形成するように、筆記芯接続管のチャックセット収容筒の内孔への挿入部外面に形成した複数の開口部を連通する連通孔を形成し、圧入突起部が形成されている部分を径方向に変位可能な両持ち梁部とし、チャックセット収容筒の内孔に対して筆記芯接続管を圧入状態としたシャープペンシルを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、筆記芯接続管のチャックセット収容筒の内孔への挿入部外面に、チャックセット収容筒の内孔に対して圧接される圧入突起部を有すると共に、当該圧入突起部の内径側に空間を形成するように、筆記芯接続管のチャックセット収容筒の内孔への挿入部外面に形成した複数の開口部を連通する連通孔を形成し、圧入突起部が形成されている部分を径方向に変位可能な両持ち梁部とし、チャックセット収容筒の内孔に対して筆記芯接続管を圧入状態とした両持ち梁で支えた構造としたことによって、従来の片持ち梁で支えた構造より、同じ梁の強度でも曲げモーメントを小さくすることができるので、押圧操作部によるシャープペンシル用筆記芯を把持して繰り出す操作を繰り返し行っても該部(圧入突起部が形成されている部分)の応力やひずみを抑えることができるため、破損が極力抑制された耐久性の高いものとすることができる。
また、本発明は、曲げモーメントを小さくすることができるので、梁の強度を維持したまま肉厚を薄くすることが可能となり、軸筒を細くした場合でも、デザインやシャープペンシル自体の把持のし易さなど太さの制約を受けずに、耐久性が十分高いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図5】本実施例のチャック体9の外観斜視図である。
【
図6】本実施例のチャック体9の外観斜視図である。
【
図7】本実施例のチャックリング11の半断面側面図である。
【
図8】本実施例のチャックセット収容筒14の半断面側面図である。
【
図9】本実施例の筆記芯接続菅16の半断面側面図である。
【
図10】本実施例の筆記芯接続菅16の半断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のシャープペンシルは、筆記具後端にある押圧操作部を押圧操作すると、チャックセットとチャックセット収容筒と筆記芯接続菅が一体となって前進する。軸筒先端に配置された先部材内の段部にチャックセット収容筒の前端が当接する。この時、チャック体は、シャープペンシル用筆記芯を把持した状態で、チャックセットと筆記芯接続管も一緒に前進をやめて停止している。更に、押圧すると、チャックセット収容筒の内孔に対して、筆記芯接続菅の圧入突起部が内径方向に変位する際、圧入突起部が形成されている部分が連通孔へたわみながら摺動し始め、前進する筆記芯接続菅の前端がチャック体の後端と当接する。この時、くさび効果がなくなり、チャック体が解放され、チャック体のシャープペンシル用筆記芯の把持が解除される。しかし、シャープペンシル用筆記芯は、芯把持弾性部材によって、シャープペンシル用筆記芯が把持されたままの状態を維持している。
押圧操作をやめると、チャックセットとチャックセット収容筒と筆記芯接続管が一体となって後退し始めるが、チャック体の弾撥部材の弾性荷重より、芯把持弾性部材の弾性的に把持している力が大きいので、シャープペンシル用筆記芯は、そのままの状態を維持している。更に、チャックセットとチャックセット収容筒と筆記芯接続管が一体となって後退すると、チャック体の後端と筆記芯接続管の前端との当接がなくなり、チャック体の後端と筆記芯接続管との間に隙間ができる。そうすると、再び、くさび効果が発生し、チャック体がシャープペンシル用筆記芯を把持することができる。そして、チャックセットとチャックセット収容筒と筆記芯接続管が筆記を開始する時の元の位置に戻る。押圧操作を繰り返すとシャープペンシル用筆記芯が順次繰り出される。
【0009】
また、本発明のシャープペンシルは、軸筒先端に、前後動可能に配置されたスライダー内に芯把持弾性部材を内蔵することによって、繰り出されたシャープペンシル用筆記芯を芯把持弾性部材が把持して、シャープペンシル用筆記芯の前進に伴ってスライダーも前進して軸筒先端より突出するため、シャープペンシル用筆記芯の破損を防止することができるものである。また、スライダーの先端角部を尖った部分の無い曲面状に形成することによってスライダーの先端からシャープペンシル用筆記芯が突出した状態でなくても、紙面とスライダーの先端角部が接触しても両者の摩擦抵抗は極小となって滑らかな筆記が可能となっている。
【0010】
本発明では、チャック体後端と筆記芯接続管の前端との間に隙間を設け、チャック体が後方移動できる範囲を存在させている。チャック体後端と筆記芯接続管の前端とが当接していると、チャック体が後方へ付勢する力が働かなくなるので、くさび効果がなくなり、筆圧に耐えてシャープペンシル用筆記芯を把持することができない。チャック体とチャックリングとボールとからなるチャックセットは、シャープペンシル用筆記芯を把持するチャック体が後方に移動するときに、内孔が後方に向かってテーパー形状に縮径しているチャックリングに沿ってボールが回転して後方移動することによってチャック体を閉じてくさび効果にてシャープペンシル用筆記芯を把持する力を得るが、ボールが回転することにより後方移動の摩擦抵抗を小さくすることができるので、チャック体を後方に付勢するチャック体の弾撥部材の弾性荷重が小さくても、くさび効果を発生させることができ、筆記による筆圧に耐えることができる。
【0011】
更に、チャック体を後方に付勢する弾撥部材の弾性荷重より芯把持弾性部材のシャープペンシル用筆記芯を弾性的に保持する耐保持荷重を大きく、芯把持弾性部材のシャープペンシル用筆記芯を弾性的に保持する耐保持荷重よりスライダーを前方に付勢する弾撥部材の弾性荷重を大きくすることによって、シャープペンシル用筆記芯が筆圧を受けている状態ではチャック体が閉じてシャープペンシル用筆記芯を把持して後方移動を規制し、筆圧が解除された際には芯把持弾性部材がシャープペンシル用筆記芯を弾性的に保持した状態で前進してシャープペンシル用筆記芯を前進させると共にチャック体が前進してチャック体の芯把持状態が解除されるような機能を備え、筆記をしながらシャープペンシル用筆記芯が順次繰り出される、所謂、連続筆記が可能となる。
【0012】
シャープペンシル用筆記芯を前進させるチャックセットは、チャック体と、チャックリングと、両者の間に介在するボールとを有し、チャック体は、シャープペンシル用筆記芯を把持可能な芯把持部を備えた弾性板部を有しており、チャック体が後方に位置する時には、チャックリング内孔の小径部分にボールが位置することによってチャック体の弾性板部が閉じてシャープペンシル用筆記芯を把持し、それ以上のシャープペンシル用筆記芯の後方移動を規制すると共に、チャックリングに対して相対的にチャック体が前進することによってボールがチャックリングの大径側に移動してチャック体のシャープペンシル用筆記芯の把持を解除する機能を備えている。
【0013】
チャック体は、後部にシャープペンシル用筆記芯が1本分挿通される挿通管部分を有し、前部に挿通管部分と接続された板バネ部と先端部分に芯把持部とを有し、板バネ部のたわみによる変位によってシャープペンシル用筆記芯を把持と解除する機能を備えている。或いは、シャープペンシル用筆記芯の表示直径が0.3、0.2やそれ以下の場合、挿通管部分を形成する金型のコアピンの径を小さくする必要があり、金型の耐久性を向上させるため、一本のシャープペンシル用筆記芯が挿通される筒状の部材の先端側部分を縦に2分割された部分を形成させる。つまり、同じ形状のものを二枚貝の様に芯把持部の面を向かい合わせた状態でシャープペンシル用筆記芯を挟み込むようにして重ね合わせて用いても良い。
なお、シャープペンシル用筆記芯の表示直径は、日本工業規格JIS S 6013:2015に準拠している。
【0014】
チャック体は、射出成形品であり、ポリフェニレンサルファイド樹脂にガラス繊維を分散配合することによって、樹脂(プラスチック)単体では得られない高強度、高靭性を持たせている。使用する樹脂は、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体樹脂、ポリオキシメチレン樹脂(別称ポリアセタール樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。ガラス繊維の他に、真鍮(黄銅)、金、銀、ステンレス、炭素鋼、ニッケルクロム鋼、タングステン、鉄、銅、白金などの金属粉を分散配合して形成しても良く、また、樹脂や金属を切削加工してチャック体を形成しても良い。
【0015】
チャックリングは、ステンレス鋼により形成しているが、真鍮や鉄などの金属でも良く、ポリオキシメチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂により成形しても良く、また、ガラス繊維強化樹脂など、使用する材質は特に限定されない。ボールは、超硬により形成しているが、高炭素鋼クロム軸受鋼やステンレス鋼といった金属材料や、ポリオキシメチレン樹脂により成形しても良く、またガラス繊維強化樹脂など、使用する材質は特に限定されない。
【0016】
チャックセット収容筒は、チャックセットを内孔に配置し、弾撥部材にて後方付勢されていると共に、押圧操作部の押圧操作によってチャックリングが前進するようにチャックリングと係合している。そして、チャックセット収容筒の内孔後部には筆記芯接続管の挿入部が、その外面に形成した圧入突起部をチャックセット収容筒の後部内壁に摺動可能な圧入状態で挿入されており、筆記芯接続管の挿入部がチャックセット収容筒内孔を前進してチャック体の後部を押してチャック体をチャックセット収容筒やチャックリングに対して相対的に前進させる。前述の通り、チャック体がシャープペンシル用筆記芯を把持している後方位置から前進することによって、ボールがチャックリングの大径側に移動してチャック体のシャープペンシル用筆記芯の把持状態を解除する。
チャックセット収容筒は、射出成形品であり、ポリカーボネート樹脂でできている。使用する樹脂は、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などが挙げられる。また、樹脂や金属を切削加工してチャックセット収容筒を形成しても良く、部品点数を低減させコストを抑えるためにチャックセット収容筒とチャックリングとが一体で形成しても良く、押圧操作部の押圧操作によってシャープペンシル用筆記芯を把持繰り出す機能を備えていれば良い。
【0017】
筆記芯接続菅は、チャックセット収容筒の内孔への挿入部外面に、チャックセット収容筒の内孔に対して圧接される圧入突起部を有すると共に、当該圧入突起部の内径側に空間を形成するように、筆記芯接続管のチャックセット収容筒の内孔への挿入部外面に形成した複数の開口部を連通する連通孔を形成し、圧入突起部が形成されている部分を径方向に変位可能な両持ち梁部とし、従来の片持ち梁で支えた構造より、同じ梁の強度でも曲げモーメントを小さくすることができるので、押圧操作部によるシャープペンシル用筆記芯を把持して繰り出す操作を繰り返し行っても該部(圧入突起部が形成されている部分)の応力やひずみを抑えることができるため、破損が極力抑制された耐久性の高いものとすることができる。
【0018】
筆記芯接続菅が有する圧入突起部の内径側に空間を形成して、圧入突起部を径方向に変位可能な両持ち梁部分とする、筆記芯接続菅の連通孔は、筆記芯接続菅の内孔と挿通しないように配置している。筆記芯接続菅の連通孔と筆記芯接続菅の内孔とを挿通させると、射出成形する金型の構造上、内孔を形成する金型のコアピンと連通孔を形成するキャビティ入れ子とを樹脂が漏れないように金型の接合状態を厳密に調整しないと出来上がった成形品に「バリ」と呼ばれる樹脂のはみ出し部分ができてしまうとか、寸法が設計と合わないなどの不具合が発生するが、筆記芯接続菅の連通孔が筆記芯接続菅の内孔と挿通していなければ、かような厳密な調整も不要となり、金型の調整やメンテナンスが簡易となるので、維持費を抑えることができ、コストダウンの効果もある。
【0019】
筆記芯接続菅は、筆記芯収容管の前部に圧入固定されている。その筆記芯接続菅は、射出成形品であり、ポリオキシメチレン樹脂でできている。使用する樹脂は、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂などが挙げられる。また、樹脂や金属を切削加工して筆記芯接続菅を形成しても良く、チャックセット収容筒の内孔への挿入部外面に形成した複数の開口部を連通する連通孔を形成し、圧入突起部が形成されている部分を径方向に変位可能な両持ち梁部とし、チャックセット収容筒の内孔に対して筆記芯接続管を圧入状態としてあれば良く、或いは、部品点数を低減させコストを抑えるために、筆記芯接続菅と筆記芯収容管を一体で形成しても良い。
【0020】
筆記芯収容管は、射出成形品であり、パイプ状のポリプロピレン樹脂でできている。使用する樹脂は、ポリオキシメチレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。また、樹脂や金属を切削加工して筆記芯収容管を形成しても良い。
【0021】
先部材は、内部に先部材リングを圧入固定すると共に、前後摺動可能なスライダーを弾撥部材により前方に付勢して収容し、軸筒本体の前軸にネジ螺合により着脱可能に連結されているが、中に溜まったシャープペンシル用筆記芯のカスや破損したシャープペンシル用筆記芯を取り除くなどメンテンナンスをするためであり、着脱可能の構成であれば良い。
【0022】
弾撥部材は、先部材リングの内段部とスライダーとの間に張設されている。先部材内には、チャックセット収容筒を囲繞する弾撥部材とチャックセット収容筒の先端面に形成される接触部が接触する内段部が形成されており、チャックリングを摺動可能とする内径部を有しているが、スライダーを前方に付勢する構成であれば良い。
【0023】
芯把持弾性部材は、弾撥部材にて軸筒に対して前方付勢されたスライダーに内蔵されて、チャック体が前方に運び把持を解除した状態のシャープペンシル用筆記芯を、内孔にて弾性的に把持して、シャープペンシル用筆記芯の位置を維持している。
芯把持弾性部材は、圧縮成形品(コンプレッション成形)であり、シリコンゴムでできている。使用する材料は、天然ゴム、合成天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、二トリルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、熱可塑性エラストマー樹脂などが挙げられる。
芯把持弾性部材のシャープペンシル用筆記芯が挿通される内孔の径は、シャープペンシル用筆記芯の外径よりやや小さい径に形成されており、シャープペンシル用筆記芯より硬度が低く、外力が加わると容易に変形するくらい軟らかいため、シャープペンシル用筆記芯が挿通されると変形し、シャープペンシル用筆記芯が自重で落下しない程度に弾性的に把持しているが、2色成形などを用いてスライダーと芯把持弾性部材を一体に形成しても良い。
【0024】
スライダーは、弾撥部材にて軸筒に対して前方付勢されていて、芯把持弾性部材を内蔵している。
シャープペンシル用筆記芯が筆圧を受けている状態ではチャック体が閉じてシャープペンシル用筆記芯を把持して後方移動を規制し、筆圧が解除された際には芯把持弾性部材がシャープペンシル用筆記芯を弾性的に把持した状態でスライダーが前進してシャープペンシル用筆記芯を前進させると共にシャープペンシル用筆記芯を把持しているチャック体がシャープペンシル用筆記芯に引っ張られて前進して、チャックリングのチャック体閉鎖位置から外れてチャック体が開きチャック体の芯把持状態が解除されるような機能を備えている。
【0025】
シャープペンシル用筆記芯の表示直径が0.3、0.2やそれ以下の場合、スライダーは、その前方にステンレス製のパイプを、内部に芯把持弾性部材を、それぞれ圧入固定し、芯把持弾性部材はその外周面全体をスライダーの内径部に圧入固定しており、より詳細には、シャープペンシル用筆記芯を保持する芯把持部が内部に形成されている部分である芯把持弾性部材の前方外周面をスライダーに圧入することで、芯把持弾性部の内径を縮径している。そうすることで、芯把持弾性部材を成形する際に芯把持部を形成する為の金型のコアピンの径を実際に使用する際の芯把持部の内径より大きくすることができ、コアピンの強度が増し安定した生産を行うことができる。更に、芯把持弾性部材の後方外周部もスライダーに圧入固定することで、スライダーから芯把持弾性部材が容易に抜けないようにしている。また、スライダーを、シャープペンシル用筆記芯をパイプから突出させず、シャープペンシル用筆記芯がパイプでガイドされた状態での筆記が可能であり、筆記時における筆圧の変化があった際や、シャープペンシル用筆記芯が紙面へひっかかった際にもシャープペンシル用筆記芯の外周面をパイプが覆っているので、シャープペンシル用筆記芯の折損を防止することができる。
【0026】
シャープペンシル用筆記芯の表示直径が0.5、0.7、0.9やそれ以上の場合、スライダーの先端が太くなるので筆跡を見やすくするため、スライダーの先端をテーパー形状としても良い。
【0027】
なお、スライダーの材質においては、真鍮に限らず、ステンレス、鉄、銅といった金属や、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの樹脂材料でも可能であり、また加工方法では、金属を切削加工して形成する他に、射出成形による成形品としても良く、部品点数を削減し、コストを抑えるために、2色成形などを用いてスライダーと芯把持弾性部材を一体に形成しても良い。
【0028】
スライダーの先端角部を曲面状に形成している表面の算術平均高さ(Sa)は、紙面との接触抵抗を抑えるため、0.1(μm)以上30(μm)以下が良い。接触抵抗を抑えるためには、算術平均高さを極力0(ゼロ)にすることが好ましいが、0.1(μm)未満に抑えようとすると表面処理の費用やパイプまたはチップ同士の接触によるキズを抑える必要があるなど製造コストが掛かるためであり、一方、30(μm)より大きいと、紙面との接触抵抗が大きくなり、筆記時に引っ掛かりを感じてしまうためである。
なお、スライダーの先端角部の表面の算術平均高さ(Sa)は、国際規格ISO 25178に準拠して測定し、形状解析レーザ顕微鏡(VK-X250;(株)キーエンス社製)を用いて、任意の20(μm)×20(μm)の範囲を3か所以上測定し、平均値から算出した。また、算術平均高さ(Sa)とは、粗さ曲線の算術平均高さRaを面に拡張したパラメータに相当し、任意の範囲の表面の平均面に対して、各点の高さの差の絶対値の平均を表すパラメータである。
【0029】
更に、スライダーには、その中間鍔部の根元から、後端部周辺に掛け、円周上軸線方向に複数箇所の嵌合突起部が設けてあり、シャープペンシルそのものをペンケースなどに入れて持ち運ぶ際には、先部材の内部に圧入固定されている先部材リングとこの嵌合突起部が嵌合することで、スライダーの前進を抑制することができるため、不意のシャープペンシル用筆記芯の突出を防止することができる。再度使用する際は、押圧操作部を押圧してチャックセットによりスライダーの後端を押し、嵌合部突起と先部材リングとの嵌合を解除することで、スライダーが前進し、筆記可能となる。なお、スライダーに設けた嵌合突起部の代わりにOリングなどの弾性部材を用いても良く、先部材リングと嵌合を保持、解除が可能な構成であれば良い。
【0030】
軸筒の把持部は、外観形状が12角形の多角柱で形成され、その外周面には、円周方向に等間隔、軸線方向に前方から後方に向かって徐々に間隔を広げて複数形成された孔部が配されており、把持部の内側には前方から後方に向かって筒状に形成された弾性部材と弾性部材の外径から把持部の外径に向かって突出する弾性把持部からなる弾性把持部材が配されている。この弾性把持部材から突出している弾性把持部は把持部に複数形成された孔部と同一の箇所に形成され、把持部と弾性把持部材とを組み合わせることで、把持部の孔部から弾性把持部を若干突出する。これにより、把持部を手で把持した際に、弾性把持部を突出することで、軸線方向への滑り止め効果を高めることができる。なお、弾性把持部材は、射出成形品であり、ウレタン系熱可塑性樹脂、シリコン樹脂、天然ゴム、合成天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、二トリルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴムなどの熱可塑性エラストマー樹脂やゴム材料を使用することができ、軸筒を把持する際に、滑り止めの機能を備えていれば適宜の材料を採用して良い。
【0031】
本発明のシャープペンシル用筆記芯を把持して繰り出す構造は、後端ノック式シャープペンシルを採用しているが、チャックリングとチャック体との間にボールを用いた、所謂、ボールチャック構造であれば良く、付随する操作部の機構としては、サイドノック式シャープペンシル、サイドスライド式シャープペンシル、中折れノック式シャープペンシルなどの機構を有するシャープペンシルにも採用することができる。
そして、チャックセット収容筒の内孔に対して筆記芯接続管を圧入状態とした両持ち梁で支えた構造としたことによって、従来の片持ち梁で支えた構造より、同じ梁の強度でも曲げモーメントを小さくすることができるので、梁の強度を維持したまま肉厚を薄くすることが可能となり、軸筒を細くした場合でも、デザインやシャープペンシル自体の把持のし易さなど太さの制約を受けずに、耐久性が十分高いものとすることができるので、軸径の細い手帳用シャープペンシルや、径の太さが制限される多芯筆記具のシャープペンシルユニットに用いても良い。
【実施例0032】
図面に基づき一例について説明する。
尚、以下の説明では、後述の先部材1側を前方と言い、押圧操作部2側を後方と言う(
図1を参照)。
【0033】
図1~
図3に示した通り、軸筒3は、先部材1と、その先部材1の後方に配置された軸筒本体4とから構成されており、軸筒本体4は前軸5と後軸6から構成されていて、クリップ7が後軸6に係合されている。そして、軸筒3内に収容される筆記芯収容管8に取り付けた押圧操作部2を軸筒3の後端より突出配置している。また、本実施例では、前軸5はその前端部にチャック体9を配し、シャープペンシル用筆記芯Lを把持可能な芯把持部9aを備えた弾性板部9bを有している。
【0034】
チャックセット10は、チャック体9とチャックリング11との間に介在するボール12を有していて、チャック体9の弾撥部材13によって、チャック体9が後方に付勢されている(
図2、
図3参照)。
【0035】
チャックセット収容筒14は、チャックセット10を内孔14aに配置すると共に弾撥部材15にて後方付勢されていて、そのチャックリング11を押圧操作部2の押圧操作によって前進するよう係合している。筆記芯収容管8は、筆記芯収容管8の前部に有するチャックセット収容筒14の内孔14aへの筆記芯接続菅材16の挿入部16aが形成され、該挿入部16aの外面に圧入突起部16bと圧入突起部が形成されている部分16cを形成し、筆記芯接続菅16の外面に複数の外口へ連通する連通孔16dを設けると共に、圧入突起部16bの内径側に空間を形成させ、更に、その連通孔16dは、筆記芯接続菅16の内孔16eと挿通せず、又、圧入突起部16bが形成されている部分を板状に形成したことにより、圧入突起部16bが外力によって径方向に変位する際、圧入突起部が形成されている部分16cが連通孔16dへたわむようなしている。(
図2、
図4、
図5を参照)
【0036】
チャックセット収容筒14について詳述する(
図2、
図4、
図5を参照)。
本実施例のチャックセット収容筒14は、前軸5内に配置され、内孔にチャック体9と弾撥部材13を囲繞すると共に、内孔の前方部分にチャックリング11を圧入状態で固定し、内孔の後部から筆記芯接続菅16の挿入部16aが挿入され、該部に形成した圧入突起部16bが、チャックセット収容筒14の内壁に衝接している。チャックセット収容筒14の前端部は、前軸5内の前部より挿入されている先部材1内に達しており先部材1の内段部1aとチャックセット収容筒14の前端部との間に配置された弾撥部材15によって後方に付勢されている。
【0037】
図2及び
図5に示した通り、チャックセット収容筒14の外観は、全体が円筒形状になっており、チャックセット収容筒14の先端部分は、弾撥部材15の内径よりも小さい第1外径部14bを形成し、第1外径部14bの外径と弾撥部材15の内径との間に隙間を設けていて、弾撥部材15の内径と同径の第2外径部14cが形成されており、第1外径部14bと第2外径部14cがテーパー部でつながっていて、外鍔部14dと弾撥部材15の後端が当接し、チャックセット収容筒14が後方に付勢されている。これによって、押圧操作の際にチャックセット収容筒14が前進すると同時に弾撥部材15が圧縮される時に、第1外径部14bの外径と弾撥部材15の内径との間に隙間を設けているおかげで、不快な擦れる音を軽減することができる。
外鍔部14dの後方には縮径部14eが形成されており、その後方には第3外径部14fが形成されている、所謂、逃がしを設けることによって、外鍔部14dの後端と前軸5の前端が隙間なく面同士が当接することが可能となり、押圧操作の際にチャック体がシャープペンシル用筆記芯を把持したまま移動する距離のバラつき抑えることができる。つまり、押圧操作時や筆記時における、シャープペンシル用筆記芯が繰り出される長さのバラつきを抑えることができる。
第3外径部14fの後方には、第3外径部14fの外径よりも小さい第4外径部14gが形成されており、第3外径部14fと第4外径部14gとをなだらかなテーパーでつないでいることによって、組み立てする際に前軸5内に挿入しやすく、且つ、押圧操作の際に前軸5とチャックセット収容筒14との摺動抵抗を極力抑えることができる。
【0038】
図2、
図5、
図6に示した通り、チャックセット収容筒14の内孔の先端部分は、前方に向かって次第に拡径するテーパー形状となっており、その後方にあるチャックセット収容筒14の第1内径部14hとチャックリング11の小開口孔部11cの外径とを圧入し、テーパー形状の後端部分に周状の内方突起14iがあって、チャックリング11が位置決めされ、これを固定している。この時、チャック体9がボール12を介して後方付勢している弾撥部材13の前端と内方突起14iが当接している
【0039】
図2、
図3、
図7、
図8に示した通り、軸筒本体4内部には、前方にチャックセット10を有する。そのチャックセット10には、外周上にチャックセット収容筒14が配してあり、そのチャックセット収容筒14には前方に向けて拡径するテーパー部11aを形成するチャックリング11が圧入固定されており、チャックリング11の内部には、芯把持部11bを有し、その芯把持部11bが形成された面に平面部9cを設けたチャック体9のその平面部9cを相対するように向かい合わせるようにした2片のチャック体9が配され、チャックリング11のテーパー部11aとチャック体9に形成されたボール摺動受部9dとの間にボール12が配置されている。チャック体9は、分割された芯把持部11bが形成された部分のそれぞれに配置(本例では2つ)されていることから、2つのボール12はその径方向で対向した位置に配置される。
【0040】
また、
図3、
図6に示した通り、チャックリング11の前方端面は軸芯方向に折れ曲がって形成されており、メンテナンスなどで先部材1を軸筒3から外す際に、チャック体9及びボール12がチャックセット10から前方に脱落しないようにされている。
【0041】
図9と
図10に示した通り、筆記芯接続菅16は、その前端部にはチャックセット収容筒14の内孔への挿入部16aが形成され該挿入部16aの外面に圧入突起部16bと圧入突起部が形成されている部分16cを形成し、筆記芯接続菅16の外面に複数の外口へ連通する連通孔16dを設けると共に、圧入突起部16bの内径側に空間を形成させ、その連通孔16dは、筆記芯接続菅16の内孔16eと挿通せず、又、圧入突起部が形成されている部分16cを板状に形成したことにより、圧入突起部16bが外力によって径方向に変位する際、圧入突起部が形成されている部分16cが連通孔16dへたわむようなしている。
【0042】
図1と
図4に示した通り、筆記芯収容管8は、外周面の中間部に鍔部8aを形成し、その鍔部8aの前方には軸筒内孔に形成した内段部との間に弾撥部材18を配置して後方に付勢され、鍔部8aが後軸6の前端面に衝接して、軸筒後端からの抜け止めがなされている。筆記芯収容管8の後端には消しゴム19が挿入固定されており、その外周には押圧操作部2が嵌合されており、内側にはシャープペンシル用筆記芯Lが挿入できる内孔8bが形成されていて、その前端に筆記芯接続菅16が圧入固定されている。
本実施例のシャープペンシル用筆記芯を把持して繰り出す構造は、文字や図画を書く筆記用途の他に、アイシャドウやアイライナーなどを把持して繰り出す方式の化粧料用塗布具として用いる事も可能である。