IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イェダ  リサーチ  アンド  ディベロップメント  カンパニー  リミテッドの特許一覧

特開2022-106983CNSの疾患および傷害を処置するために全身性調節性T細胞のレベルまたは活性を低下させること
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106983
(43)【公開日】2022-07-20
(54)【発明の名称】CNSの疾患および傷害を処置するために全身性調節性T細胞のレベルまたは活性を低下させること
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220712BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220712BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220712BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220712BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20220712BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20220712BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20220712BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220712BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P27/02 ZNA
A61P25/28
A61P25/00
A61P25/14
A61P25/16
C07K16/28
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078512
(22)【出願日】2022-05-12
(62)【分割の表示】P 2018512191の分割
【原出願日】2017-09-08
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2016/001433
(32)【優先日】2016-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(31)【優先権主張番号】15/261,945
(32)【優先日】2016-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】516040109
【氏名又は名称】イェダ リサーチ アンド ディベロップメント カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】YEDA RESEARCH AND DEVELOPMENT CO.LTD.
【住所又は居所原語表記】at the Weizmann Institute of Science, P.O.Box 95, 7610002 Rehovot, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アイゼンバッハ-シュワルツ、ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】バルーク、クティ
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンツワイク、ネタ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】CNSの疾患、障害、状態または傷害の処置において使用するための、個体における全身の免疫抑制レベルの低下を引き起こす活性な作用物質を含む薬学的組成物を提供する。
【解決手段】薬学的組成物は、少なくとも1コースの治療を含む投与レジメンによって投与され、各コースの治療は、処置セッションの後に非処置のインターバルセッションを順に含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タウオパチーの処置において使用するための、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗
TIM-3抗体またはそれらの任意の組み合わせを含む薬学的組成物であって、
該薬学的組成物は、少なくとも2コースの治療を含む投与レジメンによって投与され、
各コースの治療は、該薬学的組成物が個体に投与される処置セッションの後に、該薬学的
組成物が該個体に投与されない非処置期間を順に含み、
該非処置期間は、該処置セッションより長く;
該処置セッション中の該薬学的組成物の投与が、反復投与である場合、該非処置期間は
、該処置セッション中の反復投与間の期間よりも長く;
該薬学的組成物の投与は、全身の免疫抑制レベルを一過性に低下させ、中枢神経系への
免疫細胞の選択的動員を促進する際に脈絡叢入口活性を高め、それにより、該個体を処置
する、薬学的組成物。
【請求項2】
網膜変性障害の処置において使用するための、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗
TIM-3抗体またはそれらの任意の組み合わせを含む薬学的組成物であって、
該薬学的組成物は、少なくとも2コースの治療を含む投与レジメンによって投与され、
各コースの治療は、該薬学的組成物が個体に投与される処置セッションの後に、該薬学的
組成物が該個体に投与されない非処置期間を順に含み、
該非処置期間は、該処置セッションより長く;
該処置セッション中の該薬学的組成物の投与が、反復投与である場合、該非処置期間は
、該処置セッション中の反復投与間の期間よりも長く;
該薬学的組成物の投与は、全身の免疫抑制レベルを一過性に低下させ、中枢神経系への
免疫細胞の選択的動員を促進する際に脈絡叢入口活性を高め、それにより、該個体を処置
する、薬学的組成物。
【請求項3】
前記処置セッション中の前記薬学的組成物の投与が、単回投与である、請求項1または
請求項2に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項4】
前記処置セッション中の前記薬学的組成物の投与が、反復投与である、請求項1または
請求項2に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項5】
前記反復投与が、1日に1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回また
は6日に1回行われる、請求項4に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項6】
前記反復投与が、1週間に1回または2週間に1回、3週間に1回または4週間に1回
行われる、請求項4に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項7】
前記処置セッションが、1日間~4週間である、請求項1~6のいずれか1項に記載の
使用のための薬学的組成物。
【請求項8】
前記処置セッションが、3日間~4週間である、請求項7に記載の使用のための薬学的
組成物。
【請求項9】
前記処置セッションが、1週間~4週間である、請求項8に記載の使用のための薬学的
組成物。
【請求項10】
前記非処置期間が、1週間~6ヶ月間である、請求項1~6のいずれか1項に記載の使
用のための薬学的組成物。
【請求項11】
前記非処置期間が、2週間~6ヶ月間である、請求項10に記載の使用のための薬学的
組成物。
【請求項12】
前記非処置期間が、3週間~6ヶ月間である、請求項11に記載の使用のための薬学的
組成物。
【請求項13】
前記非処置期間が、1ヶ月間~3ヶ月間である、請求項12に記載の使用のための薬学
的組成物。
【請求項14】
前記非処置期間が、1ヶ月間~2ヶ月間である、請求項13に記載の使用のための薬学
的組成物。
【請求項15】
前記抗PD-1抗体が、中和抗PD-1抗体であり、前記抗PD-L1抗体が、中和抗
PD-L1抗体であり、かつ/または前記抗TIM-3抗体が、中和抗TIM-3抗体で
ある、請求項1~14のいずれか1項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項16】
前記抗PD-1抗体が、ヒト中和抗PD-1抗体またはヒト化中和抗PD-1抗体であ
る、請求項1~14のいずれか1項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項17】
前記抗PD-L1抗体が、ヒト中和抗PD-L1抗体またはヒト化中和抗PD-L1抗
体である、請求項1~15のいずれか1項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項18】
前記抗TIM-3抗体が、ヒト中和抗TIM-3抗体またはヒト化中和抗TIM-3抗
体である、請求項1~16のいずれか1項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項19】
前記全身の免疫抑制レベルの一過性の低下が、IFNγ産生白血球の全身における存在
もしくは活性の増加および/またはIFNγサイトカインの全身における存在もしくは活
性の増加を伴う、請求項1~18のいずれか1項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項20】
前記全身の免疫抑制レベルの一過性の低下が、エフェクターT細胞の全身における存在
もしくは活性の増加を伴う、請求項1~19のいずれか1項に記載の使用のための薬学的
組成物。
【請求項21】
前記全身の免疫抑制レベルの一過性の低下が、調節性T細胞の全身における存在もしく
は活性の減少および/またはIL-10サイトカインの全身における存在の減少を伴う、
請求項1~20のいずれか1項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項22】
前記全身の免疫抑制レベルの一過性の低下が、全身における存在または骨髄由来サプレ
ッサー細胞(MDSC)の減少を伴う、請求項1~21のいずれか1項に記載の使用のた
めの薬学的組成物。
【請求項23】
前記全身の免疫抑制レベルの一過性の低下が、1つ以上の免疫チェックポイントによっ
て免疫系に課された制限の解除によって生じる、請求項1~22のいずれか1項に記載の
使用のための薬学的組成物。
【請求項24】
前記薬学的組成物の投与が、前記1つ以上の免疫チェックポイントを遮断し、それによ
って、前記全身の免疫抑制レベルの一過性の低下を引き起こす、請求項23に記載の使用
のための薬学的組成物。
【請求項25】
前記1つ以上の免疫チェックポイントが、PD1-PD-L1、PD1-PD-L2、
TIM-3-Gal9またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項24に記載の使用
のための薬学的組成物。
【請求項26】
前記処置セッション中の前記薬学的組成物の投与が、少なくともIFNγ産生白血球お
よび/またはIFNγサイトカインの全身における存在または活性が基準より高くなるま
で維持され、基準より高くなった時点で該投与は停止され、前記非処置期間が、IFNγ
産生白血球および/またはIFNγサイトカインの全身における存在または活性が基準よ
り高い限り維持され、
該基準は、
a)該投与前の前記個体から得られた最新の血液サンプルにおいて測定されたIFNγ産
生白血球および/またはIFNγサイトカインの全身における存在または活性のレベル;
または
b)タウオパチーに苦しんでいる個体の集団に特徴的なIFNγ産生白血球および/また
はIFNγサイトカインの全身における存在または活性のレベル
を含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項27】
可溶性アミロイドベータペプチドの脳内レベルが、前記個体において低下し、脳内のア
ミロイドベータ(Aβ)プラーク量が、該個体において減少するかまたは取り除かれ、海
馬グリオーシスが、該個体において低減し、炎症促進性サイトカインの脳内レベルが、該
個体において低下し、脳の炎症が、該個体において低減し、かつ/または認知機能が、該
個体において改善される、請求項1~26のいずれか1項に記載の使用のための薬学的組
成物。
【請求項28】
前記改善される認知機能が、学習、記憶、心象の創造、可塑性、思考、自覚、推理、空
間能力、発話および言語技能、言語習得、判断注意の能力またはそれらの任意の組み合わ
せである、請求項27に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項29】
前記免疫細胞が、単球、マクロファージまたはT細胞を含む、請求項1~28のいずれ
か1項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項30】
前記T細胞が、調節性T細胞を含む、29に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項31】
前記タウオパチーが、アルツハイマー病、嗜銀顆粒性疾患、慢性外傷性脳障害、大脳皮
質基底核変性症、拳闘家認知症、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、ハラーフォルデ
ン・シュパッツ病、ハンチントン病、神経節膠腫、神経節細胞腫、球状グリア細胞タウオ
パチー、鉛脳障害、リポフスチン沈着症、リティコ・ボディグ病(グアムのパーキンソン
・認知症複合)、髄膜血管腫症、17番染色体に連鎖するパーキンソニズム疾患、ピック
病、以前は神経原線維変化型認知症(NFT-認知症)として知られていた原発性加齢性
タウオパチー(PART)、脳炎後パーキンソニズム、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性
全脳炎または結節性硬化症である、請求項1~30のいずれか1項に記載の使用のための
薬学的組成物。
【請求項32】
前記網膜変性障害が、滲出型加齢黄斑変性症、非滲出型加齢黄斑変性症、網膜色素変性
症、コロイデレミア、錐体桿体網膜ジストロフィー、脳回転状萎縮、若年性網膜分離症、
卵黄様黄斑ジストロフィー(ベスト病)、無βリポタンパク質血症(バッセン・コーンツ
ヴァイク病)、バルデー・ビートル症候群、青錐体単色症、優性ドルーゼン、ゴールドマ
ン・ファーブル硝子体網膜性ジストロフィー(S錐体増強症候群)、カーンズ・セイヤー
症候群、ローレンス・ムーン症候群、レーバー先天性黒内障、レーバーレフサム病、小口
病、乳頭周囲(中心周囲)脈絡膜ジストロフィー、色素パターンジストロフィー、ソース
ビー黄斑ジストロフィー、シュタルガルト病、スティックラー症候群、アッシャー症候群
またはワーグナー硝子体網膜性ジストロフィーである、請求項2~30のいずれか1項に
記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項33】
タウオパチーの処置における、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗TIM-3抗体
またはそれらの任意の組み合わせの使用。
【請求項34】
タウオパチーを処置するための薬の製造における、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体
、抗TIM-3抗体またはそれらの任意の組み合わせの使用。
【請求項35】
前記抗PD-1抗体が、中和抗PD-1抗体であり、前記抗PD-L1抗体が、中和抗
PD-L1抗体であり、かつ/または前記抗TIM-3抗体が、中和抗TIM-3抗体で
ある、請求項33または請求項34に記載の使用。
【請求項36】
前記抗PD-1抗体が、ヒト中和抗PD-1抗体またはヒト化中和抗PD-1抗体であ
る、請求項33~35のいずれか1項に記載の使用。
【請求項37】
前記抗PD-L1抗体が、ヒト中和抗PD-L1抗体またはヒト化中和抗PD-L1抗
体である、請求項33~36のいずれか1項に記載の使用。
【請求項38】
前記抗TIM-3抗体が、ヒト中和抗TIM-3抗体またはヒト化中和抗TIM-3抗
体である、請求項33~37のいずれか1項に記載の使用。
【請求項39】
前記タウオパチーが、アルツハイマー病、嗜銀顆粒性疾患、慢性外傷性脳障害、大脳皮
質基底核変性症、拳闘家認知症、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、ハラーフォルデ
ン・シュパッツ病、ハンチントン病、神経節膠腫、神経節細胞腫、球状グリア細胞タウオ
パチー、鉛脳障害、リポフスチン沈着症、リティコ・ボディグ病(グアムのパーキンソン
・認知症複合)、髄膜血管腫症、17番染色体に連鎖するパーキンソニズム疾患、ピック
病、以前は神経原線維変化型認知症(NFT-認知症)として知られていた原発性加齢性
タウオパチー(PART)、脳炎後パーキンソニズム、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性
全脳炎または結節性硬化症である、請求項33~38のいずれか1項に記載の使用。
【請求項40】
網膜変性障害の処置における、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗TIM-3抗体
またはそれらの任意の組み合わせの使用。
【請求項41】
網膜変性障害を処置するための薬の製造における、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体
、抗TIM-3抗体またはそれらの任意の組み合わせの使用。
【請求項42】
前記抗PD-1抗体が、中和抗PD-1抗体であり、前記抗PD-L1抗体が、中和抗
PD-L1抗体であり、かつ/または前記抗TIM-3抗体が、中和抗TIM-3抗体で
ある、請求項40または請求項41に記載の使用。
【請求項43】
前記抗PD-1抗体が、ヒト中和抗PD-1抗体またはヒト化中和抗PD-1抗体であ
る、請求項40~42のいずれか1項に記載の使用。
【請求項44】
前記抗PD-L1抗体が、ヒト中和抗PD-L1抗体またはヒト化中和抗PD-L1抗
体である、請求項40~43のいずれか1項に記載の使用。
【請求項45】
前記抗TIM-3抗体が、ヒト中和抗TIM-3抗体またはヒト化中和抗TIM-3抗
体である、請求項40~44のいずれか1項に記載の使用。
【請求項46】
前記網膜変性障害が、滲出型加齢黄斑変性症、非滲出型加齢黄斑変性症、網膜色素変性
症、コロイデレミア、錐体桿体網膜ジストロフィー、脳回転状萎縮、若年性網膜分離症、
卵黄様黄斑ジストロフィー(ベスト病)、無βリポタンパク質血症(バッセン・コーンツ
ヴァイク病)、バルデー・ビートル症候群、青錐体単色症、優性ドルーゼン、ゴールドマ
ン・ファーブル硝子体網膜性ジストロフィー(S錐体増強症候群)、カーンズ・セイヤー
症候群、ローレンス・ムーン症候群、レーバー先天性黒内障、レーバーレフサム病、小口
病、乳頭周囲(中心周囲)脈絡膜ジストロフィー、色素パターンジストロフィー、ソース
ビー黄斑ジストロフィー、シュタルガルト病、スティックラー症候群、アッシャー症候群
またはワーグナー硝子体網膜性ジストロフィーである、請求項40~45のいずれか1項
に記載の使用。
【請求項47】
タウオパチーの処置を必要とする個体に対してタウオパチーを処置する方法であって、
該方法は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗TIM-3抗体またはそれらの任意の
組み合わせを含む組成物を該個体に投与する工程を含み、
該組成物は、少なくとも2コースの治療を含む投与レジメンによって投与され、各コー
スの治療は、該組成物が個体に投与される処置セッションの後に、該組成物が該個体に投
与されない非処置期間を順に含み、
該非処置期間は、該処置セッションより長く;
該処置セッション中の該組成物の投与が、反復投与である場合、該非処置期間は、該処
置セッション中の反復投与間の期間よりも長く;
該組成物の投与は、全身の免疫抑制レベルを一過性に低下させ、中枢神経系への免疫細
胞の選択的動員を促進する際に脈絡叢入口活性を高め、それにより、該個体を処置する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、概して、循環中の全身免疫抑制のレベルを一過性に低下させることによって
、中枢神経系(CNS)の疾患、障害、状態または損傷を処置するための方法および組成
物に関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの中枢神経系(CNS)の病態は、疾患の進行の一部である、共通の神経炎症
性の構成要素を共有する。これらの病態には、進行性の記憶喪失および認知機能喪失を特
徴とする加齢性の神経変性疾患であるアルツハイマー病(AD)があり、アルツハイマー
病では、アミロイド-ベータ(Aβ)ペプチド凝集物の蓄積が、CNSにおける炎症カス
ケードにおいて重要な役割を果たし、最終的には神経損傷および組織破壊に至ると示唆さ
れた(Akiyama et al,2000;Hardy & Selkoe,200
2;Vom Berg et al,2012)。神経変性疾患における慢性神経炎症反
応にもかかわらず、神経変性疾患における免疫抑制ベースの治療を研究した過去10年間
にわたる臨床研究および前臨床研究は、なぜ抗炎症薬が不十分であるかについての問題を
提起した(Breitner et al,2009;Group et al,200
7;Wyss-Coray & Rogers,2012)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは、ADおよび類似の疾患ならびにCNS損傷の既存の治療の欠点を克服す
る新規の解決策を提供する;この方法は、CNSの維持および修復における全身および中
枢の免疫系の種々の構成要素の役割の本発明者らのユニークな理解に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
1つの態様において、本発明は、自己免疫性神経炎症性疾患の再発寛解型多発性硬化症
(RRMS)を含まないCNSの疾患、障害、状態または損傷の処置において使用するた
めの、個体における全身免疫抑制のレベルの低下を引き起こす活性な作用物質を含む薬学
的組成物を提供し、ここで、前記薬学的組成物は、少なくとも2コースの治療を含む投与
レジメンによる投与のための薬学的組成物であり、治療の各コースは、処置セッションに
続く非処置のインターバルセッションを順に含む。
【0005】
別の態様において、本発明は、自己免疫性神経炎症性疾患の再発寛解型多発性硬化症(
RRMS)を含まない中枢神経系(CNS)の疾患、障害、状態または損傷を処置するた
めの方法を提供し、前記方法は、それを必要とする個体に、本発明にかかる全身免疫抑制
のレベルの低下を引き起こす活性な作用物質を含む薬学的組成物を投与する工程を含み、
ここで、前記薬学的組成物は、少なくとも2コースの治療を含む投与レジメンによって投
与され、治療の各コースは、処置セッションに続く非処置期間のインターバルセッション
を順に含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A-B】図1A~Bは、ADの5XFADトランスジェニックマウスモデル(AD-Tg)における疾患進行に沿った脈絡叢(CP)活性を示している。(A)同齢のWTコントロールに対する変化倍率(fold-change)として示されている、1、2、4および8月齢のAD-Tgマウスから単離されたCPにおける、RT-qPCRによって測定された遺伝子icam1、vcam1、cxcl10およびccl2のmRNA発現レベル(1群あたりn=6~8;各時点についてスチューデントt検定)。(B)上皮タイトジャンクション分子クローディン-1、Hoechst核染色およびインテグリンリガンドICAM-1を免疫染色した、8月齢のAD-Tgマウスおよび同齢のWTコントロールのCPの代表的な顕微鏡像(スケールバー、50μm)。すべてのパネルにおいて、エラーバーは、平均値±s.e.m.を表している;,P<0.05;**,P<0.01;***,P<0.001。
【0007】
図2A-C】図2A~Cは、(A)若年および高齢の非CNS罹患患者およびAD患者のヒト死後CPにおけるICAM-1免疫反応性の定量(1群あたりn=5;1元配置分散分析の後のNewman-Keuls post-hoc解析);(B)8月齢のAD-Tgマウスおよび同齢のWTコントロールのCPにおけるIFN-γを発現している免疫細胞(細胞内染色され、CD45で予めゲーティングされた)のフローサイトメトリー解析を示している。影付きヒストグラムは、アイソタイプコントロールを表している(1群あたりn=4~6;スチューデントt検定);および(C)同齢のWTコントロールと比較された、4および8月齢のAD-Tgマウスから単離されたCP組織における、RT-qPCRによって測定されたifn-γのmRNA発現レベル(1群あたりn=5~8;各時点についてスチューデントt検定)。すべてのパネルにおいて、エラーバーは、平均値±s.e.m.を表している;,P<0.05;**,P<0.01;***,P<0.001。
【0008】
図3A-B】図3A~Bは、(A)8月齢のAD-TgおよびWTコントロールマウスにおけるCD4Foxp3脾細胞の出現率(TCRβで予めゲーティングされた)の代表的なフローサイトメトリープロット;および(B)1、2、4および8月齢のAD-TgおよびWTコントロールマウス由来の脾細胞の定量的解析(1群あたりn=6~8;各時点についてスチューデントt検定)を示している。すべてのパネルにおいて、エラーバーは、平均値±s.e.m.を表している;,P<0.05;**,P<0.01;***,P<0.001。
【0009】
図4図4は、最後のDTx注射の1日後のAD-Tg/Foxp3-DTR+/ マウス由来の脾細胞のゲーティングストラテジーおよび代表的なフローサイトメトリープロットを示している。DTxを4日連続i.p.注射したところ、Foxp3細胞の約99%枯渇が達成された。
【0010】
図5A-G】図5A~Gは、AD-TgマウスにおけるTregの一過性の枯渇の効果を示している。(A)AD-Tg/Foxp3-DTR(DTR導入遺伝子を発現する)およびDTRを発現しないAD-Tg同腹仔(AD-Tg/Foxp3-DTR)コントロール群を4日連続DTxで処置した。最後のDTx注射の1日後のDTxで処置された6月齢のAD-Tgマウスにおける、RT-qPCRによって測定された遺伝子icam1、cxcl10およびccl2のCPにおけるmRNA発現レベル(1群あたりn=6~8;スチューデントt検定)。(B~D)最後のDTx注射の3週間後の、DTxで処置された6月齢のAD-Tgマウスおよびコントロールの脳実質(別個に切除された脈絡叢を除く)のフローサイトメトリー解析。DTxで処置されたAD-Tg/Foxp3-DTRマウスおよびAD-Tg/Foxp3-DTRコントロールのCD11bhigh/CD45highmo-MΦおよびCD4T細胞の数の増加を示す定量的フローサイトメトリー解析(B)、および代表的なフローサイトメトリープロット(C)、およびCD4Foxp3Treg出現率の定量的解析(D)(1群あたりn=3~7;スチューデントt検定)。(E)最後のDTx注射の3週間後の、DTxで処置された6月齢のAD-Tg AD-Tg/Foxp3-DTRおよびAD-Tg/Foxp3-DTR-コントロール)の脳実質におけるfoxp3およびil10のmRNA発現レベル(1群あたりn=6~8;スチューデントt検定)。(F)最後のDTx注射の3週間後の、DTxで処置された6月齢のAD-Tg/Foxp3-DTRおよびAD-Tg/Foxp3-DTRコントロールマウス由来の海馬切片において低減したアストログリオーシス(astrogliosis)を示しているGFAP免疫染色の定量的解析(スケールバー、50μm;1群あたりn=3~5;スチューデントt検定)。(G)最後のDTx注射の3週間後の、脳実質におけるil-12p40およびtnf-aのmRNA発現レベル(1群あたりn=6~8;スチューデントt検定)。すべてのパネルにおいて、エラーバーは、平均値±s.e.m.を表している;,P<0.05;**,P<0.01;***,P<0.001。
【0011】
図6A-E】図6A~Eは、Aβプラークの学習/記憶能力に対するTregの一過性の枯渇の効果を示している。最後のDTx注射の3週間後の、DTxで処置された5月齢のAD-Tg/Foxp3-DTRおよびAD-Tg/Foxp3-DTRコントロールマウスの脳の、AβプラークおよびHoechst核染色を免疫染色した(A)代表的な顕微鏡像および(B)定量的解析(スケールバー、250μm)。海馬歯状回(DG)および大脳皮質5層におけるAβプラークの平均面積および数を定量した(6μm脳切片において;1群あたりn=5~6;スチューデントt検定)。図6C~E)は、最後のDTx注射の3週間後の、DTxで処置された6月齢のAD-Tg/Foxp3-DTRおよびコントロールマウスのモーリス水迷路(MWM)試験の成績を示している。一過性のTreg枯渇の後、AD-Tgマウスは、AD-Tgコントロールと比べて、MWMの(C)習得期、(D)探索期および(E)逆転期において、より良好な空間学習/空間記憶の能力を示した(1群あたりn=7~9;個別の対比較のための2元配置反復測定分散分析に続くボンフェローニの事後解析;,習得、探索および逆転の全体についてP<0.05)。すべてのパネルにおいて、エラーバーは、平均値±s.e.m.を表している;,P<0.05;**,P<0.01;***,P<0.001。
【0012】
図7図7は、同齢のWTコントロールと比べたときの、6および12月齢のAPP/PS1 AD-Tgマウス(アルツハイマー病のマウスモデル(材料および方法を参照のこと))から単離されたCPにおける、RT-qPCRによって測定されたifn-γのmRNA発現レベルを示している(1群あたりn=5~8;スチューデントt検定)。エラーバーは、平均値±s.e.m.を表している;,P<0.05。
【0013】
図8A-I】図8A~Iは、AD-Tgマウスにおける毎週の酢酸グラチラマー(GA)の投与の治療効果を示している。(A)毎週のGA処置レジメンの模式図。マウス(5月齢)に、GA(100μg)を第1週において2回(1および4日目に)およびその後4週間の全期間にわたって1週間ごとに1回、s.c.注射した。それらのマウスを、最後の注射の1週間後(MWM)、1ヶ月後(RAWM)および2ヶ月後(RAWM、異なる実験空間設定を用いて)に認知能力について、ならびに海馬の炎症について調べた。図8B~Dは、処置されていないAD-Tgマウスおよび毎週GAで処置された6月齢のAD-Tgマウスの海馬における遺伝子のmRNA発現レベルを示しており、毎週GAで処置されたマウスにおける、(B)炎症促進性サイトカイン(例えば、TNF-α、IL-1βおよびIL-12p40)の低発現、(C)抗炎症性サイトカインIL-10およびTGF-βの増加、および(D)神経向性因子(neurotropic factors)IGF-1およびBDNFの増加を示している(1群あたりn=6~8;スチューデントt検定)。図8E~Gでは、AD-Tgマウス(5月齢)を毎週GAまたはビヒクル(PBS)で処置し、MWMタスクにおいて6月齢の同齢のWT同腹仔と比較した。処置されたマウスは、コントロールと比べて、MWMの習得期(E)、探索期(F)および逆転期(G)において、より良好な空間学習/空間記憶の成績を示した(1群あたりn=6~9;個別の対比較のための2元配置反復測定分散分析に続くボンフェローニのpost-hoc解析;WTマウス、黒丸;AD-Tgコントロール、白丸;処置されたAD-Tg、灰色丸)。図8H~Iは、最後のGA注射の1ヶ月後(H)または2ヶ月後(I)のRAWMタスクにおける同じマウスの認知能力を示している(1群あたりn=6~9;個別の対比較のための2元配置反復測定分散分析に続くボンフェローニのpost-hoc解析)。データは、少なくとも3回の独立した実験の代表である。すべてのパネルにおいて、エラーバーは、平均値±s.e.m.を表している;,P<0.05;**,P<0.01;***,P<0.001。
【0014】
図9A-H】図9A~Hは、AD-Tgマウスにおける毎週GAの投与のさらなる治療効果を示している。A~Bは、毎週GAまたはビヒクル(PBS)で処置され、投与レジメンの第1週の終わり(合計2回のGA注射の後)に調べられた、5XFAD AD-Tgマウスを示している。同齢のWTコントロールと比べたときの、処置された6月齢のAD-Tgマウスにおける、CD4Foxp3脾細胞の出現率(A)およびCPにおけるIFN-γを発現している免疫細胞(B;細胞内染色され、CD45で予めゲーティングされた)のフローサイトメトリー解析(1群あたりn=4~6;1元配置分散分析の後のNewman-Keuls post hoc解析)。(C)毎週GAまたはビヒクルで処置され、毎週GAレジメンの第1週または第4週の終わりに調べられた、4月齢のAD-TgマウスのCPにおける、RT-qPCRによって測定された遺伝子icam1、cxcl10およびccl2のmRNA発現レベル(1群あたりn=6~8;1元配置分散分析の後のNewman-Keuls post hoc解析)。図9D~Eは、毎週GA後の、6月齢のAD-Tg/CXCR1GFP/+BMキメラ由来の脳切片の代表的な像を示している。CXCR1GFP細胞は、毎週GAで処置されたAD-Tgマウスの第3脳室のCP(3V;i)、隣接する脳室腔(ii)、および側脳室のCP(LV;iii)に局在した(D;スケールバー、25μm)。共焦点のz軸スタックの代表的な正射影は、毎週GAで処置された7月齢のAD-Tg/CXCR1GFP/+マウスのCPにおいて、GFP細胞と骨髄マーカーCD68との共局在化を示しているが、コントロールのPBSで処置されたAD-Tg/CXCR1GFP/+マウスでは共局在を示さない(E;スケールバー、25μm)。(F)CXCR1GFP細胞は、GAで処置されたAD-Tg/CXCR1GFP/+マウスの脳においてAβプラークの近くに骨髄マーカーIBA-1と共局在し、骨髄マーカーIBA-1を共発現する(スケールバー、25μm)。図9G~Hは、毎週GAレジメンの第2週における、4月齢のWTマウス、処置されていないAD-TgマウスおよびAD-Tgマウスの海馬から単離された細胞の代表的なフローサイトメトリープロットを示している。CD11bhigh/CD45high mo-MΦをゲーティングし(G)、定量した(H;1群あたりn=4~5;一元配置分散分析の後のNewman-Keuls post hoc解析)。すべてのパネルにおいて、エラーバーは、平均値±s.e.m.を表している;,P<0.05;**,P<0.01;***,P<0.001。
【0015】
図10A-H】図10A~Hは、AD-Tgマウスにおけるp300阻害剤(C646)の投与の治療効果を示している。図10A~Bでは、高齢のマウス(18ヶ月)を1週間にわたってp300iまたはビヒクル(DMSO)で処置し、処置休止の1日後に調べた。p300i処置後の、脾臓におけるIFN-γを発現するCD4T細胞の出現率の上昇(A)およびCPにおけるIFN-γを発現する免疫細胞数の増加(B)を示す代表的なフローサイトメトリープロット。図10C~Eは、1週間にわたってp300iまたはビヒクル(DMSO)を投与され、その後、さらに3週間後に調べられた、10月齢のAD-Tgマウスの脳の代表的な顕微鏡像(C)およびその脳におけるAβプラーク量の定量的解析を示している。脳のAβプラークを免疫染色し、脳をHoechst核染色によって免疫染色した(1群あたりn=5;スケールバー、250μm)。海馬DG(D)および大脳皮質5層(E)における、Aβプラークの平均面積および平均プラーク数を定量した(6μm脳切片において;1群あたりn=5~6;スチューデントt検定)。(F)1または2セッションにおける、7月齢の種々の群のAD-Tgマウスへのp300i処置(またはビヒクルとしてのDMSO)投与レジメンの模式図。図10G~Hは、処置されていないAD-Tg群と比べたときの、大脳皮質(5層)のAβプラークのカバー率(percentage coverage)の平均変化(G)、ならびに大脳の可溶性Aβ1-40およびAβ1-42タンパク質の平均レベルの変化(H)を示している(非処置群のAβ1-40およびAβ1-42の平均レベル、それぞれ90.5±11.2および63.8±6.8pg/mg全部分(total portion);1群あたりn=5~6;一元配置分散分析の後のNewman-Keuls post hoc解析)。すべてのパネルにおいて、エラーバーは、平均値±s.e.m.を表している;,P<0.05;**,P<0.01;***,P<0.001。
【0016】
図11図11A~Dは、PD-1遮断が、AD-Tgマウスにおいて、脾臓内のIFN-γ産生CD4+T細胞のパーセンテージならびに脈絡叢でのIFN-γ発現を高めることを示している。10月齢のAD-Tgマウスに、250ugの抗PD-1またはコントロールIgGを1日目および4日目にi.p.注射し、7~10日目に全身免疫応答およびCP活性に対する効果について調べた。(A~B)抗PD-1またはIgGで処置されたAD-Tgマウスおよび処置されていないAD-TgおよびWTコントロールにおける、CD4IFN-γ脾細胞の出現率(細胞内染色され、CD45およびTCR-βで予めゲーティングされた)の代表的なフローサイトメトリープロット(A)および定量的解析(B)(1群あたりn=4~6;一元配置分散分析の後のNewman-Keuls post hoc解析;**,示されている処置群間においてP<0.01;エラーバーは、平均値±s.e.m.を表している)。(C)IgGで処置されたおよび処置されていないAD-Tgコントロールと比べたときの、PD-1で処置されたAD-TgマウスのCPにおける、RT-qPCRによって測定されたifn-gのmRNA発現レベル、(D)同じマウスのCPにおけるRNA-Seqにおいて濃縮されたGOアノテーションターム(1群あたりn=3~5;1元配置分散分析の後のNewman-Keuls post hoc解析;,P<0.05)(灰色のスケールは、P値の底10の対数に負号をつけたものに相当する)。
【0017】
図12A-B】図12A~Bは、PD-1遮断が、AD-Tgマウスにおける認知機能低下を緩和することを示している。10月齢のAD-Tgマウスに、1日目および4日目に、250μgの抗PD-1またはコントロールIgGをi.p.注射し、1または2ヶ月後に、病態に対する効果についてそれらのマウスを調べた。(A)は、抗PD-1またはIgGコントロールによる1回の処置セッション後のRAWMにおけるAD-Tgマウスの成績を示しており、(B)は、単一の抗PD-1処置セッション、または1ヶ月間のインターバルを伴う2セッションの成績に対する効果を示している。単一矢印は、処置の時点を示し、二重矢印は、認知試験の時点を示す。同齢のWTマウスおよび処置されていないAD-Tgマウスと比べたときの、RAWM学習および記憶タスクにおける1日あたりの平均エラー数によって評価される、抗PD-1およびIgGで処置されたマウスの認知能力(1群あたりn=6~8;個別の対比較のための二元配置反復測定分散分析に続くボンフェローニのpost hoc解析)。
【0018】
図13A-D】図13A~Dは、PD-1遮断がADの病態を緩和すること示している代表的な顕微鏡像(A)、ならびに10月齢において抗PD-1(図12A~B)に示されているような1または2セッション)またはIgGコントロールで処置され、その後、12月齢において調べられたAD-Tgマウスの脳におけるAβプラーク量およびアストログリオーシスの定量的解析(B、C、D)を示している。脳におけるAβプラーク(赤色)、GFAP(アストログリオーシス、緑色)を免疫染色し、Hoechst核染色によって染色した(1群あたりn=4~5;スケールバー、50μm)。Aβプラークの平均面積および平均プラーク数を、海馬歯状回(DG)および大脳皮質5層において定量し、GFAP免疫反応性を海馬において測定した(6μm脳切片において;1群あたりn=5~6;スチューデントt検定)。すべてのパネルにおいて、エラーバーは、平均値±s.e.m.を表している;,P<0.05;**,P<0.01;***,P<0.001。
【0019】
図14図14は、AD-Tgマウスの認知機能低下に対する抗PD-1抗体の異なる投与および投与頻度の効果を示しており、投与スキーム、ならびに7月齢において放射状アーム水迷路(RAWM)タスクを用いた空間学習および空間記憶の成績に対する抗PD-1抗体処置の効果を図示している。黒矢印は、処置の時点を示しており、イラストは、認知試験の時点を示している。
【0020】
図15図15A~Hは、AD-Tgマウスにおける認知機能低下に対する抗PD-1抗体の反復投与の効果を示している。5XFADマウスを、3月齢からPD-1特異的抗体またはIgGコントロールで処置し;処置を5月齢まで1ヶ月に1回続けた(合計3回の注射)。実験計画が(A)に示されている。黒矢印は、処置の時点を示し、イラストは、認知試験の時点を示している。(B)抗PD-1で処置された5XFADマウス(n=7)、コントロール抗体(IgG)で処置された5XFADマウス(n=9)および野生型(WT)(n=8)の5月齢におけるRAWMの成績。(C)抗PD-1で処置された5XFADマウス(n=7)、IgGで処置された5XFADマウス(n=9)および野生型(WT)(n=8)コントロールの6月齢におけるRAWMの成績。(2つの5XFAD処置群間の多重比較のために2元配置反復測定分散分析およびダネットのpost hoc検定)。(D)5および6ヶ月後における抗PD-1およびIgGで処置された群の成績の比較;各マウスに対してエラーの数を示している値は、2日目の試験の最後の測定から取られている。抗PD-1で処置された5XFADマウス(n=9)、IgGで処置された5XFADマウス(n=10)および野生型(WT)(n=6)コントロールの鉤状回におけるNeu-N+ニューロンの(E)代表的な免疫蛍光像および(F)定量的解析。(G)抗PD-1で処置された5XFADマウス(n=5)と比較されている、IgGで処置された5XFADマウス(n=8)において高いカスパーゼ-3活性を示している海馬ニューロンの代表的な免疫蛍光像。(H)海馬CA3領域における活性化されたカスパーゼ-3 Neu-N+免疫反応細胞の定量(1元配置分散分析およびフィッシャーの正確検定)。スケールバー、100μm(e,g)。データは、平均値±s.e.m.として表されている;P<0.05、**P<0.01、***P<0.001
【0021】
図16図16は、AD-Tgマウスの認知機能低下に対する抗TIM-3抗体の単回投与の効果を示しており、投与スキーム、ならびに7月齢において放射状アーム水迷路(RAWM)タスクを用いたときの空間学習および空間記憶の成績に対する抗TIM-3抗体の処置の効果を図示している。黒矢印は、処置の時点を示しており、イラストは、認知試験の時点を示している。
【0022】
図17図17A~Jは、AD-TgマウスにおけるPD-L1の遮断が認知機能低下を軽減することを示している。5XFADマウス(7月齢)をPD-1特異的抗体、PD-L1特異的抗体またはアイソタイプ一致コントロール抗体(IgG)で処置した。実験計画が(A)に示されている。黒矢印は、処置の時点を示し、イラストは、RAWMを用いた認知スコアリングの時点を示している。(B)0.1mg/マウス(n=8)、0.5mg/マウス(n=9)もしくは1.5mg/マウス(n=9)のいずれかの抗PD-L1特異的抗体の単回投与の注射、または1.5mg/マウスでのIgGコントロール(n=10)で処置された5XFADマウス(雄および雌の動物を、IgGコントロールを含むすべての群において等しい割合で使用した)のRAWMの成績。同齢の野生型(WT)同腹仔をさらなるコントロール群(n=10)として使用した。(C)0.5mgの抗PD-1特異的抗体(n=14)または0.5mgの抗PD-L1特異的抗体(n=7);IgGコントロール抗体(n=15)で処置された5XFADマウスおよびWTコントロール(n=19)のRAWMの成績の比較も試験した(各抗PD-1処置群とIgGで処置された群との間の多重比較について2元配置反復測定分散分析およびダネットのpost hoc検定)。示されている結果は、プールされた2つの実験の結果である。(D)Aβ(赤色)、GFAP(緑色)およびDAPI核染色を免疫染色した脳の代表的な免疫蛍光像(スケールバー、100μm)、ならびに(E、F)抗PD-1で処置された5XFADマウス(n=9)、抗PD-L1で処置された5XFADマウス(n=10)およびIgGで処置された(n=9)5XFADマウスにおけるAβの定量的解析。(G)処置の1ヶ月後に評価された、抗PD-1で処置された(n=8)、抗PD-L1で処置された5XFADマウス(n=10)、IgGで処置された(n=15)5XFADマウス、ならびにWT(n=6)におけるGFAP。プラーク面積およびプラーク数の平均値を、歯状回(DG)および大脳皮質(V層)において定量し(6μmの脳切片において)、海馬におけるGFAPの免疫反応性を測定した(1元配置分散分析およびフィッシャーの正確検定)。処置の1ヶ月後に評価された、抗PD-1で処置された5XFADマウス(n=6)、抗PD-L1で処置された5XFADマウス(n=8)およびIgGで処置された5XFADマウス(n=8)の脳における、(H)代表的な免疫蛍光像および(I)シナプトフィジンの定量的解析。シナプトフィジンの免疫反応性を海馬DGおよびCA3の領域において測定した(1元配置分散分析およびフィッシャーの正確検定)。(J)IgGコントロール(n=5)、抗PD-1(n=5)または抗PD-L1(n=5)による処置の1ヶ月後に5XFADマウスから単離された海馬組織においてRT-qPCRによって測定されたil-10発現に対するil-12p40のmRNA発現レベル(1元配置分散分析およびフィッシャーの正確検定)。(B~C、E~G、I~J)データは、平均値±s.e.m.として表されている;P<0.05、**P<0.01、***P<0.001
【0023】
図18図18A~Bは、PD-L1の発現が加齢に伴ってCPにおいて増加することを示しており、(A)は、RT-qPCRによって測定された、若齢マウス(左のバー)および高齢マウス(右のバー)のCPにおけるPDL1の発現を示しており;(B)は、若齢マウス(左の顕微鏡写真)および高齢マウス(右の顕微鏡写真)のCPにおけるPD-L1の上皮での発現の免疫組織化学的染色を示している。LV;側脳室。
【0024】
図19図19A~Bは、H&E染色に基づく組織学的解析を通じて、抗PD1mAb(n=10匹のラット;20個の眼)、IgG(n=10匹のラット;20個の眼)の腹腔内注射によって処置されたRCSラットまたは非処置の動物(n=4匹のラット;8個の眼)の個々の眼において測定された網膜全体にわたる外顆粒層(ONL)の厚さのプロットを示しており、(A)は、すべての動物を示しており、(B)は、応答者だけを示している。データは、平均値±標準誤差値として表されている;P<0.05;**P<0.01;***P<0.001。
【0025】
図20図20A~Bは、H&E染色に基づく組織学的解析を通じて、抗PD1mAb(n=6)もしくはIgG(n=5)の硝子体内注射によって処置されたRCSラットの個々の眼において測定された網膜全体にわたる外顆粒層(ONL)の厚さのプロットを示しており、(A)抗PD1mAb処置動物;および(B)IgG処置動物の、両方の眼(注射された眼および反対側の注射されていない眼)を示している。データは、平均値±標準誤差値として表されている;有意差を各個別のサンプリング時点ごとにスチューデントのT検定によって判定し、アステリスクでマークしている(P<0.05)。
【0026】
図21図21A~Eは、DM-hTauマウスにおけるPD-1/PD-L1軸の遮断が、脳への単球の動員を増強することを示している。0.5mgの抗PD-L1(n=10)またはIgG一致コントロール抗体(IgG)(n=17)で処置された10月齢のDM-hTAUマウスおよび同齢のWT同腹仔(n=13)を、処置の14日後にフローサイトメトリーを用いて調べた。CD44CD62LhighセントラルメモリーT(TCM)細胞に対する、(A)脾細胞に対するフローサイトメトリーのゲーティングストラテジー、および(B)FoxP3調節性T細胞の定量的解析、および(C)CD44CD62L-/lowエフェクターメモリーT(TEF)細胞、および(C)CD44CD62L-/lowエフェクターメモリーT(TEF)細胞。(D)脳のCD45lowCD11bおよびCD45highCD11b骨髄性細胞に対するフローサイトメトリーのゲーティングストラテジー。(E)同じマウス由来の脳を切除し、CD45highCD11b浸潤性骨髄性細胞の存在について解析した。IgGで処置されたDM-hTAUマウス(n=16)およびWT同腹仔(n=13)に対する、PD-L1遮断(n=10)の14日後の浸潤性骨髄性細胞の頻度の増加を示している、脳のCD45highCD11b細胞の定量的解析。2つの独立した実験の結果をプールする。データは、平均値±s.e.m.として示されている;P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【0027】
図22図22A~Gは、DM-hTauマウスにおけるPD-1/PD-L1軸の遮断が脳への単球の動員を増強することを示している。2つの変異(K257T/P301S;二重変異体、DM-hTAU)を有するヒト-タウ遺伝子を発現している雄マウス(コホートの平均月齢は8月齢)を抗PD-1特異的抗体、抗PD-L1特異的抗体またはアイソタイプ一致コントロール抗体(IgG)で処置した(0.5mg/マウスの1回のi.p.注射);実験計画が(A)に示されている。黒矢印は、処置の時点を示し、イラストは、認知試験の時点を示している。(B)T型迷路タスクを用いたときの空間記憶に対するPD-1/PD-L1遮断の効果。抗PD-1(n=10)または抗PD-L1(n=10)で処置されたDM-hTAUマウスは、IgGコントロール(n=16)よりも、新しいアームを好むことを示した(B~C)。同齢の野生型(WT)同腹仔(n=19)をさらなるコントロール群として使用した。2つの独立した実験の結果をプールする。(C)3つの処置群の異なるアームにおいて費やされた時間の代表的なヒートマッププロット。(D)抗PD-1(n=6)、抗PD-L1(n=4)またはIgGアイソタイプコントロール(n=6)で処置されたDM-hTAUマウスおよび同齢のWT同腹仔(n=5)のY型迷路認知タスクの成績。DM-TAU+IgG(n=6)、DM-hTAU+抗PD-1(n=6)、DM-hTAU+抗PD-L1(n=4)および非処置のWT同腹仔(n=5)の海馬における、処置の1ヶ月後に評価された、(E)代表的な免疫蛍光像および(F)GFAPの免疫反応性の定量的解析。IgGで処置されたコントロールに対する、DM-hTAU+IgG(n=11)、DM-TAU+抗PD-1(n=11)、DM-tau+抗PD-L1(n=4)および非処置のWT同腹仔(n=5)の脳におけるGFAPの免疫反応性(1元配置分散分析およびフィッシャーの正確検定)。スケールバー、100μm。(G)IgGコントロール(n=5)、抗PD-1(n=6)または抗PD-L1(n=4)による処置の1ヶ月後にDM-hTAUマウスから単離された海馬においてRT-qPCRによって測定されたtnf-a;il-6、およびil-10発現に対するil-12p40のmRNA発現レベル(一元配置分散分析およびフィッシャーの正確検定)。(b、d、f~g)データは、平均値±s.e.m.として表されている;P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【0028】
図23図23A~Gは、PD-1/PD-L1経路の遮断が、DM-tauマウスにおいて過剰リン酸化を減少させることを示している。抗PD-1、抗PD-L1もしくはアイソタイプ一致コントロール抗体またはアイソタイプ一致コントロール抗体(IgG)による処置の1ヶ月後の8月齢のDM-hTAUマウスの脳における神経原線維変化(NFT)の免疫染色(A~F)。AT-100およびAT-180の(A、D)代表的な免疫蛍光像および(B、C、E、F)定量的解析。AT-100およびAT-180の免疫反応性を、DM-hTAU+IgG(n=11)、DM-hTAU+抗PD-1(n=10)、DM-tau+抗PD-L1(n=4)の海馬CA1およびCA3領域において測定した(1元配置分散分析およびフィッシャーの正確検定)。スケールバー、100μm。(B~C、E~F)データは、平均値±s.e.m.として表されている。(G)2つの変異(K257T/P301S;二重変異体、DM-hTAU)を有するヒト-タウ遺伝子を発現している雄および雌マウス(すべての試験群の間で等しく分配されている)(コホートの平均月齢は9月齢)を、0.1mg/マウス(n=7)、0.5mg/マウス(n=10)もしくは1.5mg/マウス(n=9)の単回注射の抗PD-L1特異的抗体または1.5mg/マウスのIgGコントロール(n=10)で処置した。空間記憶に対するPD-L1遮断の効果を、T型迷路タスクを用いて測定した。同齢の野生型(WT)同腹仔をさらなるコントロール群として使用した(n=10)。(一元配置分散分析およびフィッシャーの正確検定);P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【0029】
図24図24A~Bは、PD-1の遮断が5XFADマウスにおいて海馬の神経発生を増強することを示しており、(A)は、ニューロンのマーカーであるNeuN(緑色)、DCX(赤色)およびhoechst核染色(青色)を免疫染色した傍矢状洞脳切片を示しており;(B)は、抗PD-1処置動物、IgG免疫コントロールおよび同齢の野生型コントロールにおける染色を定量しているグラフを示している。
【0030】
図25図25A~Bは、PD-1の遮断が5XFADマウスにおいて海馬のシナプス可塑性を増強することを示しており、(A)は、VgluT1(赤色)を免疫染色した傍矢状洞脳切片を示しており;(B)は、抗PD-1処置動物、IgG免疫コントロールおよび同齢の野生型コントロールにおける染色を定量しているグラフを示している。
【0031】
図26図26A~Bは、PD-1の遮断が5XFADマウスの鉤状回においてニューロンの喪失を減少させることを示しており、(A)は、ニューロンのマーカーであるNeuN(緑色)を免疫染色した傍矢状洞脳切片を示しており;(B)は、抗PD-1処置動物、IgG免疫コントロールおよび同齢の野生型コントロールにおける染色を定量しているグラフを示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
免疫チェックポイント機構は、活性化T細胞の応答性の細胞固有のダウンレギュレーシ
ョンおよび抑制性レセプターによるエフェクター機能を含み、全身の免疫ホメオスタシス
および自己免疫寛容を維持している(Joller et al,2012;Pardo
ll,2012)。近年、プログラム死-1(PD-1)経路(Francisco e
t al,2010)などのこれらの免疫チェックポイントの遮断が、注目すべき抗腫瘍
の有効性を示したことから、様々な悪性疾患と闘う際、免疫系の力の抑制を解くことの可
能性に脚光が当てられた。最近、アルツハイマー病の動物モデルに抗PD-1抗体を投与
することにより、Aβのクリアランス、認知機能低下の回復がもたらされ、その投与は、
神経炎症反応の消散に関連することが示された(WO2015/136541;Baru
ch et al.,2016)。したがって、全身免疫抑制は、ADの病態を退ける能
力を干渉するので、全身免疫系に対する制限(restrains)を解除することによ
って、ADの病態は、緩和され得る。
【0033】
いかなる理論にも限定されることを望むものではないが、免疫チェックポイントの遮断
は、末梢で開始して脳内で数多くの活性に至る免疫学的事象のカスケードを活性化する。
最初に、免疫応答によって、2次リンパ系器官(リンパ節、脾臓など)でのIFN-γの
利用可能性および末梢での循環単球の利用可能性が高まる。この免疫応答は、脳室におけ
る上皮層である脳の脈絡叢(CP)(血液脳脊髄液関門(B-CSF-B)を形成し、C
NSに侵入する白血球に対する選択的入口として働く)の免疫学的活性化に至る。白血球
に対するCP入口活性(gateway activity)に対する阻害性免疫チェッ
クポイントの遮断の作用は、IFN-γによって誘導されるCP上皮による白血球輸送分
子(接着分子およびケモカイン)の発現(この発現によって白血球の輸送が可能になる)
によって媒介される。この発現の増加は、単球由来マクロファージおよび免疫調節性細胞
を脳内の罹患部位に動員させる。重要なことに、この動員は、脳機能に対して幅広い作用
をもたらし、その作用としては、プラーク量の減少、免疫学的バランスの回復、局所炎症
の消散、グリオーシスの低減、シナプス喪失の減少、神経発生の増大、神経保護の増大お
よび神経生存の増大(これらは集合的に、神経保護、および/または認知機能低下の低減
をもたらす)が挙げられる。
【0034】
免疫チェックポイントは、シグナルを増加させる(共刺激分子)またはシグナルを低下
させる免疫系の分子である。4つの刺激性チェックポイント分子(CD27、CD40、
OX40、GITRおよびCD137)が、腫瘍壊死因子(TNF)レセプタースーパー
ファミリーのメンバーである。別の2つの刺激性チェックポイント分子(CD28自体お
よびICOS)は、B7-CD28スーパーファミリーに属する。多くのインヒビターチ
ェックポイント分子が公知であり、それらとしては、A2aR、B7-H3、B7-H4
、BTLA、CTLA-4、IDO、KIR、LAG-3、PD-1、TIM-3および
VISTAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本発明は、中枢神経系(CNS)の疾患、障害、状態または傷害を処置するための方法
を提供する。1つの実施形態において、中枢神経系(CNS)の疾患、障害、状態または
傷害を処置するための開示される方法は、自己免疫性神経炎症性疾患である再発寛解型多
発性硬化症(RRMS)を含まない。開示される方法は、全身の免疫抑制レベルの低下を
必要とする個体に、全身の免疫抑制レベルの低下を引き起こす活性な作用物質を投与する
工程を含み、前記活性な作用物質は、少なくとも2コースの治療を含む投与レジメンによ
って投与され、各コースの治療は、処置セッションの後に、非処置のインターバルセッシ
ョンを順に含む。
【0036】
別の態様において、本発明は、個体において全身免疫抑制のレベルの低下を引き起こす
活性な作用物質、または自己免疫性神経炎症性疾患の再発寛解型多発性硬化症(RRMS
)を含まないCNSの疾患、障害、状態または損傷の処置において使用するためのその活
性な作用物質を含む薬学的組成物に関し、ここで、前記薬学的組成物は、少なくとも2コ
ースの治療を含む投与レジメンによる投与のための薬学的組成物であり、治療の各コース
は、処置セッションに続く非処置のインターバルセッションを順に含む。
【0037】
ある特定の実施形態において、投与レジメンは、全身免疫抑制のレベルが一過性に低下
するように調整される。
【0038】
用語「処置する」は、本明細書中で使用されるとき、所望の生理学的効果を得る手段の
ことを指す。その効果は、ある疾患および/またはその疾患に帰する症状を部分的または
完全に治癒することに関して治療的な効果であり得る。この用語は、疾患の阻害、すなわ
ち、その発症の停止もしくは遅延;または疾患の回復、すなわち、疾患の後退のことを指
す。
【0039】
制御性T細胞またはエフェクターT細胞の「全身における存在」という用語は、本明細
書中で使用されるとき、制御性T細胞またはエフェクターT細胞が循環免疫系、すなわち
、血液、脾臓およびリンパ節に存在すること(それらのレベルまたは活性によって測定さ
れる)を指す。脾臓内の細胞集団のプロファイルが、血液中の細胞集団のプロファイルに
反映されることは、免疫学の分野において周知の事実である(Zhao et al,2
007)。
【0040】
本処置は、全身免疫抑制の上昇を示す患者とそのような上昇を示さない患者の両方に適
用できる。時折、本発明にかかる処置を必要とする個体は、ある特定の末梢免疫抑制レベ
ルを有し、その末梢免疫抑制は、循環中のTregの出現率または数の増加ならびに/あ
るいはそれらの機能活性の増大ならびに/またはIFNγ産生白血球の減少および/もし
くは刺激に応答した白血球の増殖の減少によって反映される。Tregの出現率または数
の増加は、全CD4細胞の総数または全CD4細胞のパーセンテージの増加であり得る。
例えば、アルツハイマー病の動物モデルでは、CD4細胞のうちFoxp3の出現率が野
生型マウスと比べて高いことが本発明に基づいて見出された。しかしながら、前記個体に
おいて、全身のTreg細胞のレベルが上昇していなかったか、それらの機能活性が高ま
っていなかったか、IFNγ産生白血球のレベルが低下していなかったか、または刺激に
応答した白血球の増殖が減少していなかったとしても、全身免疫抑制のレベルまたは活性
を低下させる本発明の方法は、自己免疫性神経炎症性疾患RRMSを含まないCNSの疾
患、障害、状態または損傷の処置において有効である。重要なことには、前記全身免疫抑
制は、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)などのTreg以外のさらなる免疫細胞型
も関係し得る(Gabrilovich & Nagaraj,2009)。
【0041】
全身免疫抑制のレベルは、当業者に周知の様々な方法によって検出され得る。例えば、
Tregのレベルは、Tregの細胞表面マーカーまたは細胞内の核マーカー(Chen
& Oppenheim,2011)、リンパ球のCD45、TCR-βまたはCD4
マーカーで免疫染色された、末梢血単核球またはTリンパ球のフローサイトメトリー解析
、およびそれらの細胞に特異的に結合した抗体の量を測定することによって測定され得る
。Tregの機能活性は、様々なアッセイによって測定され得る;例えば、チミジン取り
込みアッセイが通常使用され、このアッセイでは、抗CD3mAbによって刺激されるC
D4CD25T細胞(従来のT細胞)の増殖の抑制を、[H]チミジンの取り込み
またはCFSE(5-(および6)-カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイ
ミジルエステル(これは細胞に入り込むことができ;CFSEの蛍光強度の経時的な半減
として細胞分裂を測定する))の使用によって測定する。IFNγ産生白血球の数または
それらの活性もしくは増殖能は、当該分野で公知の方法を用いて当業者によって容易に評
価され得る;例えば、IFNγ産生白血球のレベルは、短時間のエキソビボ刺激およびゴ
ルジ停止後の末梢血単核球のフローサイトメトリー解析、ならびにIFNγ細胞内染色(
例えば、BD Biosciences Cytofix/cytopermTM固定/
透過処理キットを使用して)による免疫染色、これらの細胞の馴化培地(conditi
on media)を回収し、分泌されたサイトカインのレベルを、ELISAを用いて
定量すること、またはその馴化培地中の種々のサイトカインの比、例えば、IL2/IL
10、IL2/IL4、INFγ/TGFβなどを比較することによって、測定され得る
。ヒト末梢血中のMDSCのレベルは、当業者によって、例えば、報告されているように
(Kotsakis et al,2012)、DR/LIN/CD11b+、DR
/LIN/CD15+、DR/LIN/CD33+およびDR(-/low)/
CD14+細胞の出現率のフローサイトメトリー解析を用いることによって、容易に評価
され得る。
【0042】
ヒトにおいて、循環中のTregの総数が、健康なコントロール集団よりも10、20
、30、40、50、60、70、80、90もしくは100%またはそれ以上高いか、
全CD4+細胞のうちのTreg細胞のパーセンテージが、健康なコントロール集団より
も10、20、30、40、50、60、70、80、90もしくは100%またはそれ
以上上昇しているか、またはTregの機能活性が、健康なコントロール集団よりも10
、20、30、40、50、60、70、80、90もしくは100%またはそれ以上上
昇しているとき、末梢/全身免疫抑制は、増加していると見なされ得る。あるいは、IF
Nγ産生白血球またはそれらの活性のレベルが、健康なコントロール集団より10、20
、30、40、50、60、70、80、90または100%低下しているか;または刺
激に応答した白血球の増殖が、健康なコントロール集団より10、20、30、40、5
0、60、70、80、90または100%低下しているとき、末梢/全身免疫抑制は、
増加していると見なされ得る。
【0043】
ある作用物質をある個体に投与した際、この個体の循環中のTregの総数が、その作
用物質の投与前のレベルと比べて10、20、30、40、50、60、70、80、9
0または100%減少したとき、または全CD4+細胞のうちのTreg細胞のパーセン
テージが、健康なコントロール集団と比べて10、20、30、40、50、60、70
、80、90または100%低下したとき、またはTregの機能活性が、その作用物質
の投与前のレベルと比べて10、20、30、40、50、60、70、80、90また
は100%減少したとき、その作用物質は、全身免疫抑制のレベルの低下を引き起こす作
用物質であると見なされ得る。あるいは、ある作用物質をある個体に投与した際、IFN
γ産生白血球の総数またはそれらの活性が、10、20、30、40、50、60、70
、80、90もしくは100%またはそれ以上増加したとき;または刺激に応答した白血
球の増殖が、健康なコントロール集団よりも10、20、30、40、50、60、70
、80、90もしくは100%またはそれ以上増加したとき、その作用物質は、全身免疫
抑制のレベルの低下を引き起こす作用物質であると見なされ得る。
【0044】
ある特定の実施形態において、上記活性な作用物質は、1つ以上の免疫チェックポイン
トによって免疫系に課された制限の解除によって、例えば、1つ以上の免疫チェックポイ
ントの遮断によって、全身免疫抑制のレベルの低下を引き起こす。
【0045】
ある特定の実施形態において、全身免疫抑制のレベルの低下は、IFNγ産生白血球の
全身における存在または活性の増加を伴う。
【0046】
ある特定の実施形態において、活性な作用物質は、全身免疫抑制のレベルの低下を引き
起こし、それによって、エフェクターT細胞の全身における存在または活性の増加を引き
起こす。
【0047】
ある特定の実施形態において、全身の免疫抑制レベルの低下は、IFNγサイトカイン
の全身における存在または活性の増加を伴う。
【0048】
ある特定の実施形態において、全身の免疫抑制レベルの低下は、調節性T細胞の全身に
おける存在または活性の減少を伴う。
【0049】
ある特定の実施形態において、全身の免疫抑制レベルの低下は、IL-10サイトカイ
ンの全身における存在または活性の減少を伴う。
【0050】
ある特定の実施形態において、全身の免疫抑制レベルの低下は、骨髄由来サプレッサー
細胞(MDSC)の全身における存在または活性の減少を伴う。
【0051】
ある特定の実施形態において、活性な作用物質は、全身の免疫抑制レベルの低下を引き
起こし、それにより、エフェクターT細胞の全身における存在または活性の増加を引き起
こす。
【0052】
全身免疫抑制を解除するように操作され得るチェックポイントは、本明細書中で、免疫チ
ェックポイントレセプターとその天然のリガンドとの対またはそれらの2つのパートナー
のうちのいずれか1つとして言及される。例えば、PD-1は、2つの公知のリガンドを
有し、本明細書中で「PD-L1」および「PD-L2」と称され、B7H3は、そのリ
ガンドが特定されておらず、単に「B7H3」と称される。本発明に従って全身免疫抑制
を解除するように操作され得るチェックポイントとしては、PD-1-PD-L1、PD
-1-PD-L2、CD28-CD80、CD28-CD86、CTLA-4-CD80
、CTLA-4-CD86、ICOS-B7RP1、B7H3、B7H4、B7H7、B
7-CD28様分子、BTLA-HVEM、KIR-MHCクラスIまたはII、LAG
3-MHCクラスIまたはII、CD137-CD137L、OX40-OX40L、C
D27-CD70、CD40L-CD40、TIM3-GAL9、T細胞活性化のV-ド
メインIgサプレッサー(VISTA)、インターフェロン遺伝子の刺激物質(STIN
G)、T細胞免疫グロブリンおよび免疫受容体抑制性チロシンモチーフ(immunor
eceptor tyrosine-based inhibitory motif)
ドメイン(TIGIT)、糖質コルチコイド誘発性腫瘍壊死因子レセプター関連タンパク
質(GITR)、A2aR-アデノシン、およびインドールアミン-2,3-ジオキシゲ
ナーゼ(IDO)-L-トリプトファンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0053】
免疫チェックポイントを遮断することができる作用物質は、当該分野で公知であり(C
olombo & Piconese,2007)、これらの作用物質は、本発明に従っ
て使用され得る。下記の引用文献およびPardoll,2012の各々は、完全に本明
細書中に開示されたかのように参照により援用される。
【0054】
ある特定の実施形態において、本発明に従って使用され得る活性な作用物質は、抗体で
あり得る。本明細書中に開示されるような抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル
抗体、二量体、多量体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、組換え抗体、キメラ抗
体、二機能性抗体、Igレセプターのような細胞に会合した抗体、鎖状抗体、ダイアボデ
ィ、ミニボディ(minibody)またはナノボディ(nanobody)、およびそ
れらの一本鎖誘導体(そのフラグメントが所望の生物学的活性を示す限り)であり得る。
抗体は、VHおよびVLドメインならびに軽鎖定常ドメイン(CL)ならびに重鎖定常ド
メインであるCH1、CH2およびCH3を含む完全長の免疫グロブリン分子、または完
全長の免疫グロブリン分子の免疫学的に活性なフラグメント(例えば、単一ドメイン抗体
(sdAb)、一本鎖可変フラグメント(scFv)、Fabフラグメント、F(ab’
)2フラグメント、Fcフラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント)であり得
る。抗体は、任意の脊椎動物種(例えば、ヒト、ヤギ、ウマ、ロバ、マウス、ラット、ウ
サギまたはニワトリ)に由来し得、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、I
gDおよびIgA)、クラス(例えば、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM)
またはサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2
)であり得る。機能的に、本明細書中に開示される抗体は、生物学的活性を阻害する抗体
を意味するアンタゴニスト抗体であり得るか、または本明細書中に開示される抗体は、生
物学的活性を刺激する抗体を意味するアゴニスト抗体であり得る。同様に、本明細書中に
開示される抗体は、生物学的活性を阻止または中和し得る抗体を意味する中和抗体であり
得る。天然に存在する抗体、天然に存在しない抗体、および抗原性化合物に結合するそれ
らのフラグメントの構造についての一般的な開示として、例えば、Pluckthun
in The Pharmacology of Monoclonal Antibo
dies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Sp
ringer-Verlag,New York,pp.269-315(1994);
Borrabeck,Antibody Engineering,2d ed.(Ox
ford University Press 1995)(これらの各々の全体が参照
により本明細書に援用される)を参照のこと。
【0055】
本明細書中に開示される抗体は、抗PD-1、抗PD-L1、抗PD-L2、抗CTL
A-4、抗CD80、抗CD86、抗B7RP1、抗B7-H3、抗B7-H4、抗B7
-H7、抗BTLA、抗HVEM、抗CD-27、抗CD40、抗CD40L、抗CD7
0、抗CD80、抗CD86、抗CD137、抗CD137L、抗OX40、抗OX40
L、抗TIM-3、抗ガレクチン9、抗KIR、抗LAG-3、抗ICOS、抗VIST
A、抗STING、抗TIGIT、抗GITRまたはそれらの任意の組み合わせであり得
るが、これらに限定されない。本明細書中に開示される抗体は、例えば、約0.1mg/
kg~20mg/kg、0.1mg/kg~15mg/kg、0.1mg/kg~10m
g/kg、0.1mg/kg~5mg/kg、0.2mg/kg~20mg/kg、0.
2mg/kg~15mg/kg、0.2mg/kg~10mg/kg、0.2mg/kg
~6mg/kg、0.2mg/kg~5mg/kg、0.3mg/kg~20mg/kg
、0.3mg/kg~15mg/kg、0.3mg/kg~10mg/kg、0.3mg
/kg~5mg/kg、1mg/kg~20mg/kg、1mg/kg~15mg/kg
、1mg/kg~10mg/kg、1mg/kg~5mg/kg、1.5mg/kg~2
0mg/kg、1.5mg/kg~15mg/kg、1.5mg/kg~10mg/kg
、1.5mg/kg~6mg/kgまたは1.5mg/kg~5mg/kgという投与量
でヒトに投与され得る。
【0056】
PD-1およびCD279(表面抗原分類279)としても知られるプログラム細胞死
タンパク質1は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する細胞表面レセプターであり
、T細胞上およびプロB細胞上に発現される。PD-1は、2つのリガンドPD-L1お
よびPD-L2に結合する。免疫チェックポイントとして機能するとき、PD-1は、T
細胞の活性化を妨げることによる免疫系のダウンレギュレーションにおいて重要な役割を
果たし、そして自己免疫を低減させ、自己寛容を促進する。PD-1の阻害性の作用は、
リンパ節における抗原特異的T細胞のアポトーシス(プログラム細胞死)を促進しつつ、
同時に調節性T細胞(サプレッサーT細胞)のアポトーシスを減少させる、二重機構を通
じて達成される。したがって、PD-1の機能を阻害する化合物(例えば、PD-1イン
ヒビター、PD-L1インヒビターおよび/またはPD-L2インヒビター)は、免疫系
を活性化するのに役立つ。PD-1インヒビターの1クラスとしては、アンタゴニスト抗
PD-1抗体、アンタゴニスト抗PD-L1抗体およびアンタゴニスト抗PD-L2抗体
または中和抗PD-1抗体、中和抗PD-L1抗体および中和抗PD-L2抗体が挙げら
れる。多くのアンタゴニスト抗PD-1抗体、アンタゴニスト抗PD-L1抗体およびア
ンタゴニスト抗PD-L2抗体または中和抗PD-1抗体、中和抗PD-L1抗体および
中和抗PD-L2抗体が、当該分野で公知である。例えば、本発明に従って使用される抗
PD-1抗体は、Ohaegbulamら(Ohaegbulam et al,201
5)(この全内容が参照により本明細書中に援用される)に開示されている抗体から選択
され得る。ヒト抗PD-1抗体またはヒト化抗PD-1抗体の例としては、CD279(
ヒト抗PD1モノクローナル抗体、Bio X Cell)、MEDI0680(AMP
-514;ヒト化IgG4抗PD-1モノクローナル抗体;AstraZeneca)、
ニボルマブ(BMS-936558;ヒトIgG4抗PD1モノクローナル抗体;Bri
stol-Myers Squibb)、ペムブロリズマブ(ランブロリズマブ、MK-
3475;ヒト化IgG4抗PD1モノクローナル抗体;Merck)、ピジリズマブ(
Pidilizumab)(CT-011;ヒト化IgG1抗PD1モノクローナル抗体
;Medivation)およびTSR-042(ヒト化IgG4抗PD-1モノクロー
ナル抗体;Tesaro)が挙げられるがこれらに限定されない。ヒト抗PD-L1抗体
またはヒト化抗PD-L1抗体の例としては、アベルマブ(MSB0010718C;ヒ
トIgG1抗PD-L1モノクローナル抗体;Merck-Serono)、アテゾリズ
マブ(MPDL3280A、RG7446;ヒトIgG抗PD-L1モノクローナル抗体
;Hoffmann-La Roche)、BMS-936559(MDX-1105;
ヒトIgG4抗PD-L1モノクローナル抗体;Bristol-Myers Squi
bb)、デュルバルマブ(MEDI4736;ヒト化IgG1抗PD-L1モノクローナ
ル抗体;AstraZeneca)、KN035(抗PD-L1モノクローナル抗体;3
D Medicines)およびLY3300054(抗PD-L1モノクローナル抗体
;Eli Lilly)が挙げられるがこれらに限定されない。ヒト抗PD-L2抗体ま
たはヒト化抗PD-L2抗体の例としては、AMP-224(PD-L2のIgG2a
Fc融合タンパク質;AstraZeneca)が挙げられるがこれに限定されない。あ
る特定の実施形態において、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体および/または抗PD-
L2抗体は、例えば、約0.1mg/kg~20mg/kg、0.1mg/kg~15m
g/kg、0.1mg/kg~10mg/kg、0.1mg/kg~5mg/kg、0.
2mg/kg~20mg/kg、0.2mg/kg~15mg/kg、0.2mg/kg
~10mg/kg、0.2mg/kg~6mg/kg、0.2mg/kg~5mg/kg
、0.3mg/kg~20mg/kg、0.3mg/kg~15mg/kg、0.3mg
/kg~10mg/kg、0.3mg/kg~5mg/kg、1mg/kg~20mg/
kg、1mg/kg~15mg/kg、1mg/kg~10mg/kg、1mg/kg~
5mg/kg、1.5mg/kg~20mg/kg、1.5mg/kg~15mg/kg
、1.5mg/kg~10mg/kg、1.5mg/kg~6mg/kgまたは1.5m
g/kg~5mg/kgという投与量でヒトに投与され得る。
【0057】
ある特定の実施形態において、ピジリズマブは、0.2~6mg/kgまたは1.5~
6mg/kgという投与量でヒトに投与され得;ペムブロリズマブは、1~10mg/k
gという投与量でヒトに投与され得;ニボルマブは、0.3~20mg/kg、0.3~
10mg/kg、1~10mg/kgまたは1もしくは3mg/kgという投与量でヒト
に投与され得;BMS-936559は、0.3~10mg/kgという投与量でヒトに
投与され得;アテゾリズマブは、1~20mg/kgという投与量でヒトに投与され得;
デュルバルマブは、0.1~15mg/kgという投与量でヒトに投与され得;アベルマ
ブは、1~20mg/kgという投与量でヒトに投与され得る。
【0058】
T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン-3(TIM-3)は、マクロファージの
活性化をダウンレギュレートすることおよび慢性免疫状態において生じるCD8+T細胞
の枯渇において重要な役割を果たすことによって、リンパ球の活性を阻害する免疫チェッ
クポイントとして作用するTh1特異的細胞表面タンパク質である。TIM-3は、その
リガンドであるガレクチン-9(Gal9)との相互作用の際に細胞死を引き起こすこと
によって、Th1/Tc1機能の負の制御因子として作用する。したがって、TIM-3
の機能を阻害する化合物(例えば、TIM-3インヒビターおよび/またはGal9イン
ヒビター)は、免疫系を活性化するのに役立つ。TIM-3インヒビターの1クラスとし
ては、TIM-3および/またはGal-9に対するアンタゴニスト抗体または中和抗体
が挙げられる。多くのアンタゴニスト抗TIM-3抗体およびアンタゴニスト抗Gal9
抗体または中和抗TIM-3抗体および中和抗Gal9抗体が、当該分野で公知である。
ヒト抗TIM-3抗体またはヒト化抗TIM-3抗体の例としては、AF2365(ヒト
IgG抗TIM-3モノクローナル抗体;R&D Systems)、CD366(ヒト
IgG1抗TIM-3モノクローナル抗体;BioLegend)、F38-2E2(ヒ
トIgG1抗TIM-3モノクローナル抗体;R&D Systems)、L3D(ヒト
IgG1抗TIM-3モノクローナル抗体;CN102492038B)、MAB236
5(ヒトIgG2a抗TIM-3モノクローナル抗体;R&D Systems)、MA
B23651(ヒトIgG1抗TIM-3モノクローナル抗体;R&D Systems
)およびTSR-022(ヒト化IgG4抗TIM-3モノクローナル抗体;Tesar
o)が挙げられるがこれらに限定されない。ある特定の実施形態において、抗TIM-3
抗体および/または抗Gal9抗体は、例えば、約0.1mg/kg~20mg/kg、
0.1mg/kg~15mg/kg、0.1mg/kg~10mg/kg、0.1mg/
kg~5mg/kg、0.2mg/kg~20mg/kg、0.2mg/kg~15mg
/kg、0.2mg/kg~10mg/kg、0.2mg/kg~6mg/kg、0.2
mg/kg~5mg/kg、0.3mg/kg~20mg/kg、0.3mg/kg~1
5mg/kg、0.3mg/kg~10mg/kg、0.3mg/kg~5mg/kg、
1mg/kg~20mg/kg、1mg/kg~15mg/kg、1mg/kg~10m
g/kg、1mg/kg~5mg/kg、1.5mg/kg~20mg/kg、1.5m
g/kg~15mg/kg、1.5mg/kg~10mg/kg、1.5mg/kg~6
mg/kgまたは1.5mg/kg~5mg/kgという投与量でヒトに投与され得る。
【0059】
表面抗原分類152(CD152)としても知られる細胞傷害性Tリンパ球関連タンパ
ク質4(CTLA-4)は、免疫応答をダウンレギュレートする免疫チェックポイントと
して機能するタンパク質レセプターである。CTLA-4は、Tregでは構成的に発現
されるが、従来のT細胞では活性化後においてのみアップレギュレートされる。CTLA
-4は、抗原提示細胞の表面上のCD80またはCD86に結合したとき、「オフ」スイ
ッチとして作用する。したがって、CTLA-4の機能を阻害する化合物(例えば、CT
LA-4インヒビター、CD80インヒビターおよび/またはCD86インヒビター)は
、免疫系を活性化するのに役立つ。CTLA-4インヒビターの1クラスとしては、CT
LA-4、CD80および/またはCD86に対するアンタゴニスト抗体または中和抗体
が挙げられる。多くのアンタゴニスト抗CTLA-4抗体、アンタゴニスト抗CD80抗
体およびアンタゴニスト抗CD86抗体または中和抗CTLA-4抗体、中和抗CD80
抗体および中和抗CD86抗体が、当該分野で公知である。ヒト抗CTLA-4抗体また
はヒト化抗CTLA-4抗体の例としては、イピリムマブ(Ipilimumab)(ヒ
トIgG1抗CTLA-4モノクローナル抗体;Bristol-Myers Squi
bb)およびトレメリムマブ(Tremelimumab)(ヒトIgG2抗CTLA-
4モノクローナル抗体;Pfizer)が挙げられるがこれらに限定されない。ある特定
の実施形態において、抗CTLA-4抗体、抗CB80抗体および/または抗CD86抗
体は、例えば、約0.1mg/kg~20mg/kg、0.1mg/kg~15mg/k
g、0.1mg/kg~10mg/kg、0.1mg/kg~5mg/kg、0.2mg
/kg~20mg/kg、0.2mg/kg~15mg/kg、0.2mg/kg~10
mg/kg、0.2mg/kg~6mg/kg、0.2mg/kg~5mg/kg、0.
3mg/kg~20mg/kg、0.3mg/kg~15mg/kg、0.3mg/kg
~10mg/kg、0.3mg/kg~5mg/kg、1mg/kg~20mg/kg、
1mg/kg~15mg/kg、1mg/kg~10mg/kg、1mg/kg~5mg
/kg、1.5mg/kg~20mg/kg、1.5mg/kg~15mg/kg、1.
5mg/kg~10mg/kg、1.5mg/kg~6mg/kgまたは1.5mg/k
g~5mg/kgという投与量でヒトに投与され得る。
【0060】
キラー細胞免疫グロブリン様レセプター(KIR)は、ナチュラルキラー(NK)細胞
および少数のT細胞の原形質膜上に発現されるI型膜貫通糖タンパク質のファミリーであ
る。それらは、すべての有核細胞型上に発現される主要組織適合(MHC)クラスI分子
と相互作用することによってこれらの細胞の殺滅機能を制御する。したがって、KIRは
、リンパ球活性のインヒビターである。したがって、KIRの機能を阻害する化合物(例
えば、KIRインヒビター)は、免疫系を活性化するのに役立つ。KIRインヒビターの
1クラスとしては、KIRに対するアンタゴニスト抗体または中和抗体が挙げられる。多
くのアンタゴニストまたは中和抗KIR抗体が、当該分野で公知である。ヒト抗KIR抗
体またはヒト化抗KIR抗体の例としては、リリルマブ(Lirilumab)(BMS
-986015;ヒト抗KIRモノクローナル抗体;Bristol-Myers Sq
uibb)が挙げられるがこれに限定されない。ある特定の実施形態において、抗KIR
抗体は、例えば、約0.1mg/kg~20mg/kg、0.1mg/kg~15mg/
kg、0.1mg/kg~10mg/kg、0.1mg/kg~5mg/kg、0.2m
g/kg~20mg/kg、0.2mg/kg~15mg/kg、0.2mg/kg~1
0mg/kg、0.2mg/kg~6mg/kg、0.2mg/kg~5mg/kg、0
.3mg/kg~20mg/kg、0.3mg/kg~15mg/kg、0.3mg/k
g~10mg/kg、0.3mg/kg~5mg/kg、1mg/kg~20mg/kg
、1mg/kg~15mg/kg、1mg/kg~10mg/kg、1mg/kg~5m
g/kg、1.5mg/kg~20mg/kg、1.5mg/kg~15mg/kg、1
.5mg/kg~10mg/kg、1.5mg/kg~6mg/kgまたは1.5mg/
kg~5mg/kgという投与量でヒトに投与され得る。
【0061】
表面抗原分類223(CD223)としても知られるリンパ球活性化遺伝子3(LAG
-3)は、T細胞の機能に対して多様な生物学的作用を有する細胞表面分子である。LA
G-3は、Tregに対する作用による免疫応答を抑制することによって、ならびにCD
8+T細胞に対する直接的な作用によって、リンパ球の活性を阻害する免疫チェックポイ
ントである。したがって、LAG-3の機能を阻害する化合物(例えば、LAG-3イン
ヒビター)は、免疫系を活性化するのに役立つ。LAG-3インヒビターの1クラスとし
ては、LAG-3に対するアンタゴニスト抗体または中和抗体が挙げられる。多くのアン
タゴニスト抗LAG-3抗体または中和抗LAG-3抗体が、当該分野で公知である。ヒ
ト抗LAG-3抗体またはヒト化抗LAG-3抗体の例としては、BMS-986016
(ヒト抗LAG-3モノクローナル抗体;Bristol-Myers Squibb)
が挙げられるがこれに限定されない。ある特定の実施形態において、抗LAG-3抗体は
、例えば、約0.1mg/kg~20mg/kg、0.1mg/kg~15mg/kg、
0.1mg/kg~10mg/kg、0.1mg/kg~5mg/kg、0.2mg/k
g~20mg/kg、0.2mg/kg~15mg/kg、0.2mg/kg~10mg
/kg、0.2mg/kg~6mg/kg、0.2mg/kg~5mg/kg、0.3m
g/kg~20mg/kg、0.3mg/kg~15mg/kg、0.3mg/kg~1
0mg/kg、0.3mg/kg~5mg/kg、1mg/kg~20mg/kg、1m
g/kg~15mg/kg、1mg/kg~10mg/kg、1mg/kg~5mg/k
g、1.5mg/kg~20mg/kg、1.5mg/kg~15mg/kg、1.5m
g/kg~10mg/kg、1.5mg/kg~6mg/kgまたは1.5mg/kg~
5mg/kgという投与量でヒトに投与され得る。
【0062】
Cluster of differentiation 134(CD134)とし
ても知られるOX40は、レセプターのTNFRスーパーファミリーのメンバーである。
OX40は、エフェクターT細胞およびメモリーT細胞の拡大を促進するが、しかしなが
ら、調節性T細胞の分化および活性を抑制する能力ならびにサイトカイン産生の制御でも
有名である。OX40は、T細胞レセプターとの会合の後に一過性に発現されると、炎症
病変内のごく最近、抗原によって活性化されたT細胞上でのみアップレギュレートされる
。そのリガンドは、Cluster of differentiation 252(
CD252)としても知られるOX40Lである。したがって、OX40の機能を活性化
または刺激する化合物(例えば、OX40アクチベーターおよび/またはOX40Lアク
チベーター)は、免疫系を活性化するのに役立つ。OX40アクチベーターの1クラスと
しては、OX40およびOX40Lに対するアゴニスト抗体が挙げられる。OX40およ
び/またはOX40Lに対する多くのアゴニスト抗体が、当該分野で公知である。ヒト抗
OX40抗体またはヒト化抗OX40抗体の例としては、GSK3174998;ヒト化
IgG1抗OX40モノクローナル抗体;GlaxoSmithKline)、MEDI
0562(ヒト化抗OX40モノクローナル抗体;MedImmune)およびMEDI
6383(ヒトOX40融合タンパク質;MedImmune)が挙げられるがこれらに
限定されない。他の抗OX40抗体としては、MEDI6469(9B12;マウス抗O
X40モノクローナル抗体;MedImmune)が挙げられるがこれに限定されない。
ある特定の実施形態において、抗OX40抗体および/または抗OX40L抗体は、例え
ば、約0.1mg/kg~20mg/kg、0.1mg/kg~15mg/kg、0.1
mg/kg~10mg/kg、0.1mg/kg~5mg/kg、0.2mg/kg~2
0mg/kg、0.2mg/kg~15mg/kg、0.2mg/kg~10mg/kg
、0.2mg/kg~6mg/kg、0.2mg/kg~5mg/kg、0.3mg/k
g~20mg/kg、0.3mg/kg~15mg/kg、0.3mg/kg~10mg
/kg、0.3mg/kg~5mg/kg、1mg/kg~20mg/kg、1mg/k
g~15mg/kg、1mg/kg~10mg/kg、1mg/kg~5mg/kg、1
.5mg/kg~20mg/kg、1.5mg/kg~15mg/kg、1.5mg/k
g~10mg/kg、1.5mg/kg~6mg/kgまたは1.5mg/kg~5mg
/kgという投与量でヒトに投与され得る。
【0063】
抗GITR抗体は、調節性T細胞(Treg)の表面上に恒常的に発現され、それらの
活性化後にエフェクターT細胞の表面上に発現される、糖質コルチコイド誘発性腫瘍壊死
因子レセプター関連タンパク質(GITR)を標的化する。抗GITR抗体は、複数のタ
イプのT細胞上に見られるGITRとそのリガンドとの相互作用を阻止し、それにより、
腫瘍抗原特異的Tエフェクター細胞の活性化を誘導し、かつ不適切に活性化された調節性
T細胞によって誘導される抑制を無効にする。したがって、GITRの機能を活性化また
は刺激する化合物(例えば、GITRアクチベーター)は、免疫系を活性化するのに役立
つ。GITRアクチベーターの1クラスとしては、GITRに対するアゴニスト抗体が挙
げられる。GITRに対する多くのアゴニスト抗体が、当該分野で公知である。ヒト抗T
IGR抗体またはヒト化抗TIGR抗体の例としては、GWN323(ヒト化抗GITR
モノクローナル抗体;Novartis)およびTRX518(ヒト化抗GITRモノク
ローナル抗体;GITR,Inc.)が挙げられるがこれらに限定されない。ある特定の
実施形態において、抗GITR抗体は、例えば、約0.1mg/kg~20mg/kg、
0.1mg/kg~15mg/kg、0.1mg/kg~10mg/kg、0.1mg/
kg~5mg/kg、0.2mg/kg~20mg/kg、0.2mg/kg~15mg
/kg、0.2mg/kg~10mg/kg、0.2mg/kg~6mg/kg、0.2
mg/kg~5mg/kg、0.3mg/kg~20mg/kg、0.3mg/kg~1
5mg/kg、0.3mg/kg~10mg/kg、0.3mg/kg~5mg/kg、
1mg/kg~20mg/kg、1mg/kg~15mg/kg、1mg/kg~10m
g/kg、1mg/kg~5mg/kg、1.5mg/kg~20mg/kg、1.5m
g/kg~15mg/kg、1.5mg/kg~10mg/kg、1.5mg/kg~6
mg/kgまたは1.5mg/kg~5mg/kgという投与量でヒトに投与され得る。
【0064】
CD27は、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリーのメンバーである。CD27
の活性は、リンパ球上および樹状細胞上の、そのリガンドであるCD70の一過性の利用
可能性によって支配される。CD27の活性化は、B細胞の活性化および免疫グロブリン
の合成の制御において重要な役割を果たし、ナイーブT細胞の抗原特異的拡大を支持し、
T細胞免疫の発生および長期間の維持に必要であり、B細胞のメモリマーカーである。C
D27は、NF-κBおよびMAPK8/JNKの活性化をもたらすシグナルを伝達する
。したがって、CD27の機能を活性化または刺激する化合物(例えば、CD27アクチ
ベーターおよび/またはCD70アクチベーター)は、免疫系を活性化するのに役立つ。
CD27アクチベーターの1クラスとしては、CD27および/またはCD70に対する
アゴニスト抗体が挙げられる。CD27および/またはCD70に対する多くのアゴニス
ト抗体が、当該分野で公知である。ヒト抗CD27抗体またはヒト化抗CD27抗体の例
としては、バルリルマブ(Varlilumab)(CDX-1127;ヒト抗CD27
モノクローナル抗体;Celldex Therapeutics)が挙げられるがこれ
に限定されない。ある特定の実施形態において、抗CD27抗体および/または抗CD7
0抗体は、例えば、約0.1mg/kg~20mg/kg、0.1mg/kg~15mg
/kg、0.1mg/kg~10mg/kg、0.1mg/kg~5mg/kg、0.2
mg/kg~20mg/kg、0.2mg/kg~15mg/kg、0.2mg/kg~
10mg/kg、0.2mg/kg~6mg/kg、0.2mg/kg~5mg/kg、
0.3mg/kg~20mg/kg、0.3mg/kg~15mg/kg、0.3mg/
kg~10mg/kg、0.3mg/kg~5mg/kg、1mg/kg~20mg/k
g、1mg/kg~15mg/kg、1mg/kg~10mg/kg、1mg/kg~5
mg/kg、1.5mg/kg~20mg/kg、1.5mg/kg~15mg/kg、
1.5mg/kg~10mg/kg、1.5mg/kg~6mg/kgまたは1.5mg
/kg~5mg/kgという投与量でヒトに投与され得る。
【0065】
Cluster of differentiation 278(CD278)とし
ても知られる誘導性T細胞共刺激分子(ICOS)は、活性化T細胞上に発現されるCD
28スーパーファミリー共刺激細胞表面レセプターである。これは、T細胞機能のアクチ
ベーターである。したがって、ICOSの機能を活性化または刺激する化合物(例えば、
ICOSアクチベーターまたはB7RP1アクチベーター)は、免疫系を活性化するのに
役立つ。ICOSアクチベーターの1クラスとしては、ICOSおよび/またはB7RP
1に対するアゴニスト抗体が挙げられる。多くのアゴニスト抗ICOS抗体およびアゴニ
スト抗B7RP1抗体が、当該分野で公知である。ある特定の実施形態において、抗IC
OS抗体および/または抗B7RP1抗体は、例えば、約0.1mg/kg~20mg/
kg、0.1mg/kg~15mg/kg、0.1mg/kg~10mg/kg、0.1
mg/kg~5mg/kg、0.2mg/kg~20mg/kg、0.2mg/kg~1
5mg/kg、0.2mg/kg~10mg/kg、0.2mg/kg~6mg/kg、
0.2mg/kg~5mg/kg、0.3mg/kg~20mg/kg、0.3mg/k
g~15mg/kg、0.3mg/kg~10mg/kg、0.3mg/kg~5mg/
kg、1mg/kg~20mg/kg、1mg/kg~15mg/kg、1mg/kg~
10mg/kg、1mg/kg~5mg/kg、1.5mg/kg~20mg/kg、1
.5mg/kg~15mg/kg、1.5mg/kg~10mg/kg、1.5mg/k
g~6mg/kgまたは1.5mg/kg~5mg/kgという投与量でヒトに投与され
得る。
【0066】
ある特定の実施形態において、抗体の組み合わせ(例えば:タンパク質CD20に対す
るキメラモノクローナル抗体であるリツキシマブ(商品名Rituxan、MabThe
raおよびZytux)と併用されるCT-011(例えば、各々3mg/kg);イピ
リムマブ;例えば、3mg/kg)と併用されるニボルマブ(例えば、1mg/kg);
またはHLA-A0201拘束性マルチペプチドワクチン(Weber et al,
2013)と併用されるニボルマブ(例えば、1~10mg/kg)であるがこれらに限
定されない)が使用され得る。
【0067】
ある特定の実施形態において、本発明に従って使用され得る活性な作用物質は、抗体模
倣物であり得る。抗体模倣物は、抗体のように抗原に特異的に結合し得るが、構造的には
抗体と関係がない。抗体模倣物は、通常、約3kDa~20kDaのモル質量を有する人
工ペプチドまたは人工タンパク質である。この実施形態の態様において、本明細書中に開
示される抗体模倣物は、アフィボディ(affibody)分子;アフィリン(affi
lin);アフィマー(affimer);アフィチン(affitin);アルファボ
ディ;アンチカリン(anticalin);アビマー(avimer);DARPin
;フィノマー(fynomer);Kunitzドメインペプチド;またはモノボディで
あり得る。抗体模倣物の非限定的な例を表1に示す。
【表1】
【0068】
ある特定の実施形態において、本発明に従って使用され得る活性な作用物質は、アプタ
マーであり得る。アプタマーは、特異的な標的分子に結合するオリゴヌクレオチド分子ま
たはペプチド分子である。この実施形態の態様において、本明細書中に開示されるアプタ
マーは、DNAアプタマー、RNAアプタマー、XNAアプタマーまたはペプチドアプタ
マーであり得る。
【0069】
ある特定の実施形態において、本明細書中に開示される抗体は、アジュバントと併用さ
れ得る。アジュバントは、免疫応答を高めるまたは多様化する任意の物質または物質の混
合物である。アジュバントは、防御的な免疫化のために必要な免疫化の回数または抗原の
量を減少させるように働き得る。非限定的なアジュバントとしては、例えば、リポソーム
、油相が挙げられ、それらには、フロイントタイプのアジュバント、例えば、フロイント
完全アジュバント(FCA);フロイント不完全アジュバント(FIA);サポゲニング
リコシド(例えば、サポニン);カーボポール;N-アセチルムラミル-L-アラニル-
D-イソグルタミン(通常、ムラミルジペプチドまたは「MDP」として公知);および
リポ多糖(LPS)が含まれるが、これらに限定されない。そのようなアジュバントは、
通常、水相とのエマルジョンの形態で、またはより一般的には水不溶性無機塩とともに使
用される。これらの無機塩としては、水酸化アルミニウム、硫酸亜鉛、コロイド状水酸化
鉄、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウムが挙げられる。この実施形態の態様において
、本明細書中に開示される抗体は、例えば、抗OX40抗体およびTLR9リガンド、例
えば、CpG(Marabelle et al,2013)と組み合わせて、抗CTL
A-4抗体と併用され得る。
【0070】
ある特定の実施形態において、本発明に従って使用され得る活性な作用物質は、小分子
であり得る。この実施形態の態様において、本明細書中に開示される小分子は、(a)p
300インヒビター(Liu et al,2013)、例えば、ゲムシタビン(低用量
)またはC646もしくはそのアナログ、すなわち、式Iの化合物:
【化1】
(式中、Rは、H、-CO、-CONR、-SOHまたは-SONR
から選択され;Rは、H、-COまたはハロゲン、好ましくはClから選
択され;Rは、ハロゲン、好ましくはF、-NO、-CN、-CO、好ましく
は、COCHもしくはCOCHCH、または-CHOHから選択され;R
およびRは、各々独立して、Hまたは-C-Cアルキル、好ましくは、メチルであ
り;Rは、Hまたは-C-Cアルキル、好ましくは、H、メチルまたはエチルであ
り;Rは、Hまたは-C-Cアルキル、好ましくは、Hまたはメチルである);(
b)スニチニブ(Sunitinib);(c)ポリオキソメタレート-1(POM-1
)(Ghiringhelli et al,2012);(d)α,β-メチレンアデ
ノシン5’-二リン酸(APCP);(e)三酸化ヒ素(As);(f)GX15
-070(Obatoclax);(g)レチノイン酸アンタゴニスト、例えば、Ro4
1-5253(合成レチノイドおよび選択的小分子アンタゴニスト)またはLE-135
;(h)SIRPα(CD47)アンタゴニスト、例えば、唯一の作用物質としてのまた
は抗CD47抗体と組み合わされるCV1-hIgG4(SIRPαバリアント);(i
)CCR4アンタゴニスト、例えば、唯一の作用物質としてのまたは抗CCR4抗体と組
み合わされるAF399/420/18025;(j)アデノシンレセプターアンタゴニ
スト;(k)アデノシンA1レセプターアンタゴニスト;アデノシンA2aレセプター;
(m)アデノシンA2bレセプターアンタゴニスト;(n)A3レセプターアンタゴニス
ト;(o)インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼのアンタゴニスト;または(p
)HIF-1制御因子であり得る。
【0071】
ある特定の実施形態において、上記作用物質は、その式が表2に列挙されるp300イ
ンヒビター、すなわち、C646(4-(4-((5-(4,5-ジメチル-2-ニトロ
フェニル)フラン-2-イル)メチレン)-3-メチル-5-オキソ-4,5-ジヒドロ
-1H-ピラゾール-1-イル)安息香酸)、C146(4-ヒドロキシ-3-(((2
-(3-ヨードフェニル)ベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)イミノ)メチル)安息
香酸)またはC375(2-クロロ-4-(5-((2,4-ジオキソ-3-(2-オキ
ソ-2-(p-トリルアミノ)エチル)チアゾリジン-5-イリデン)メチル)フラン-
2-イル)安息香酸)である。特に、p300インヒビターは、C646である。
【表2】
【0072】
アデノシンレセプターアンタゴニストは、CGS15943(9-クロロ-2-(2-フ
ラニル)-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-c]キナゾリン-5-アミン)であり得
る;アデノシンA1レセプターアンタゴニストは、PSB36(1-ブチル-8-(ヘキ
サヒドロ-2,5-メタノペンタレン-3a(1H)-イル)-3,7-ジヒドロ-3-
(3-ヒドロキシプロピル)-1H-プリン-2,6-ジオン)であり得る;アデノシン
A2aレセプターアンタゴニストは、SCH58261(5-アミノ-7-(2-フェニ
ルエチル)-2-(2-フリル)-ピラゾロ(4,3-e)-1,2,4-トリアゾロ(
1,5-c)ピリミジン)、SYN115(4-ヒドロキシ-N-[4-メトキシ-7-
(4-モルホリニル)-2-ベンゾチアゾリル]-4-メチル-1-ピペリジンカルボキ
サミド)、FSPTP(SCH58261(5-アミノ-7-[2-(4-フルオロスル
ホニル)フェニルエチル]-2-(2-フリル)-ピラゾロ[4,3-ε]1,2,4-
トリアゾロ[1,5-c]ピリミジンとも呼ばれる)、SCH442416(2-(2-
フラニル)-7-[3-(4-メトキシフェニル)プロピル]-7H-ピラゾロ[4,3
-e][1,2,4]トリアゾロ[1,5-c]ピリミジン-5-アミン)またはZM2
41385(トザデナント(tozadenant)(4-ヒドロキシ-N-(4-メト
キシ-7-モルホリノベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-4-メチルピペリジン-1
-カルボキサミドとも呼ばれる)であり得る;アデノシンA2bレセプターアンタゴニス
トは、PSB603(8-{4-[4-(4-クロロフェニル)ピペラジン-1-スルホ
ニル]フェニル}-1-プロピル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H-プリン-2,
6-ジオン(Nakatsukasa et al,2011))であり得;A3レセプ
ターアンタゴニストは、MRS3777(2-フェノキシ-6-(シクロヘキシルアミノ
)プリンヘミオキサレート)であり得る。
【0073】
ある特定の実施形態において、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ経路の小
分子インヒビターは、インドキシモド(NSC-721782/NLG-9189(1-
メチル-D-トリプトファン),NewLink Genetics)、INCB024
360((4E)-4-[(3-クロロ-4-フルオロアニリノ)-ニトロソメチリデン
]-1,2,5-オキサジアゾール-3-アミン,Incyte)またはNLG-919
(1-シクロヘキシル-2-(5H-イミダゾ[5,1-a]イソインドール-5-イル
)エタノール),NewLink Genetics)であり得る。
【0074】
HIF-1制御因子は、Zheng et al.(Zheng et al,201
5)に記載されている(5-[N-メチル-N-プロパルギルアミノメチル]-8-ヒド
ロキシキノリン)であるM30であり得る。
【0075】
ある特定の実施形態において、本発明に従って使用され得る活性な作用物質は、本明細
書中に開示される抗体と本明細書中に開示される小分子との任意の組み合わせであり得る
。この実施形態の態様において、活性な作用物質は、本明細書中に開示される抗体と本明
細書中に開示される小分子との任意の組み合わせであり得る。
【0076】
ある特定の実施形態において、本発明に従って使用され得る活性な作用物質は、(a)
ニーム葉の糖タンパク質(NLGP;(Roy et al,2013));および/ま
たは(b)sCTLA-4(CTLA-4の可溶性アイソフォーム)(Ward et
al,2013)からなる群より選択されるタンパク質であり得る。
【0077】
ある特定の実施形態において、本発明に従って使用され得る活性な作用物質は、サイレ
ンシング分子であり得る。この実施形態の態様において、サイレンシング分子は、miR
-126アンチセンス(Qin et al,2013)および抗ガレクチン-1(Ga
l-1;(Dalotto-Moreno et al,2013))からなる群より選
択される。
【0078】
ある特定の実施形態において、本発明に従って使用され得る活性な作用物質は、OK-
432(Streptococcus pyogenesの凍結乾燥調製物)(Hira
yama et al,2013)であり得る。
【0079】
ある特定の実施形態において、本発明に従って使用され得る活性な作用物質は、IL-
12と抗CTLA-4との組み合わせであり得る。
【0080】
ある特定の実施形態において、上記作用物質は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌を標
的とすることによりTregの免疫調節を促進する広範囲の抗生物質、例えば、グラム陽
性菌を標的とし、Tregのレベル/活性を減少させると示されているバンコマイシン(
Brestoff & Artis,2013;Smith et al,2013)に
由来し得る。
【0081】
ある特定の実施形態において、本発明に従って使用され得る活性な作用物質は、本明細
書中に開示される抗体、本明細書中に開示される抗体模倣物、本明細書中に開示されるア
プタマー、本明細書中に開示される小分子、本明細書中に開示されるニーム葉の糖タンパ
ク質、本明細書中に開示されるsCTLA-4、本明細書中に開示されるサイレンシング
分子、本明細書中に開示されるOK-432および/または本明細書中に開示されるIL
-12と抗CTLA-4との組み合わせの任意の組み合わせであり得る。
【0082】
上で述べたように、上記活性な作用物質は、少なくとも2コースの治療を含む投与レジ
メンによって投与され、治療の各コースは、処置セッションに続く非処置のインターバル
セッションを順に含む。
【0083】
用語「処置セッション」は、本明細書中で用語「処置期間」または「処置の期間」と交
換可能に使用され、本明細書中に開示される1つ以上の活性な作用物質が、処置されてい
る個体に投与されるセッションのことを指す。下記でさらに詳細に論じられるように、処
置セッションは、単回投与の事象であり得るか、またはある期間にわたって行われる複数
回投与レジメンであり得る。処置セッションでは、本明細書中に開示される活性な作用物
質の治療有効量が、その処置セッション全体にわたって一貫して維持される。
【0084】
用語「非処置セッション」は、本明細書中で用語「非処置期間」、「非処置の期間」、
「インターバルセッション」または「非処置のインターバルセッション」と交換可能に使
用され、本明細書中に開示される活性な作用物質が、処置されている個体に投与されない
期間のことを指す。非処置セッション中の活性な作用物質の投与の休止は、処置されてい
る個体における本明細書中に開示される活性な作用物質のレベルを治療レベル未満まで低
下させる。本明細書中に開示されるように、「非処置セッション」は、処置セッション中
のある期間にわたって行われる複数回投与レジメンを構成する投与事象の間に介在する期
間と同じ事象ではない。処置セッション中の本明細書中に開示される1つ以上の活性な作
用物質の投与が、反復投与である場合、非処置セッションは、処置セッション中のこれら
の反復投与間の介在期間より長い。
【0085】
その投与レジメンは、いくつかの方法で決定され得る。例えば、免疫抑制のレベルは、I
FNγ産生白血球のレベルもしくは活性または刺激に応答した白血球の増殖速度を個別に
モニターし、モニタリングの結果から決定される、処置セッション、投与頻度およびイン
ターバルセッションを経験的かつ個人的に調節することによって、処置されている各患者
に対して所望のレベルに調整され得る(個別化医療)。
【0086】
したがって、処置セッションは、個体への活性な作用物質または薬学的組成物の投与を
含み得、処置セッションは、少なくともIFNγ産生白血球の全身における存在もしくは
レベルまたは刺激に応答した白血球の増殖速度が基準より高くなるまで維持され、その投
与は、インターバルセッション中は休止され、インターバルセッションは、そのレベルが
基準より高い限り維持され、その基準は、(a)前記投与前の前記個体から得られた最新
の血液サンプルにおいて測定された、IFNγ産生白血球の全身における存在もしくは活
性のレベルまたは刺激に応答した白血球の増殖速度;あるいは(b)CNSの疾患、障害
、状態または損傷に苦しんでいる個体の集団に特徴的な、IFNγ産生白血球の全身にお
ける存在もしくは活性のレベルまたは刺激に応答した白血球の増殖速度から選択される。
【0087】
処置セッションおよび非処置セッション、あるいはインターバルセッションの長さは、
ある特定の患者集団を対象にした臨床試験において医師によって決定され得、個人ベース
で免疫抑制レベルをモニタリングする必要なく、この患者集団に一貫して適用され得る。
【0088】
ある特定の実施形態において、処置セッションは、個体への活性な作用物質の投与を含
み、処置セッションは、少なくとも、活性な作用物質の全身における存在が治療レベルに
達するまで維持され、投与は、インターバルセッション中は休止され、インターバルセッ
ションは、そのレベルが前記治療レベルの約95%、90%、80%、70%、60%ま
たは50%より高い限り維持される。用語「治療レベル」は、本明細書中で使用されると
き、癌治療などの公知の治療において免疫チェックポイントを遮断するために使用される
薬物の一般に認められている全身レベルのことを指す(上記を参照のこと)。
【0089】
ある特定の実施形態において、処置セッションは、活性な作用物質を個体に投与する工
程を含み、処置セッションは、少なくとも、活性な作用物質の全身における存在または活
性が治療レベルに達するまで維持され、治療レベルに達した時点で投与が停止され、非処
置期間は、活性な作用物質の全身における存在または活性が治療レベル閾値より高く維持
されている限り、維持される。この実施形態の態様において、治療レベル閾値は、例えば
、治療レベルの少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも4
0%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少
なくとも90%であるレベルである。用語「治療レベル」は、本明細書中で使用されると
き、癌治療などの公知の治療において(上記を参照のこと)免疫チェックポイントを遮断
するために使用される薬物の一般に認められている全身レベルのことを指す。この実施形
態の態様において、活性な作用物質は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L
2抗体、抗CTLA-4抗体、抗B7RP1抗体、抗B7-H3抗体、抗B7-H4抗体
、抗B7-H7抗体、抗BTLA抗体、抗HVEM抗体、抗CD-27抗体、抗CD40
抗体、抗CD40L抗体、抗CD70抗体、抗CD80抗体、抗CD86抗体、抗CD1
37抗体、抗CD137L抗体、抗OX40抗体、抗OX40L抗体、抗TIM-3抗体
、抗ガレクチン9抗体、抗KIR抗体、抗LAG-3抗体、抗ICOS抗体、抗VIST
A抗体、抗STING、抗TIGIT、抗GITRまたはそれらの任意の組み合わせであ
る。
【0090】
ある特定の実施形態において、処置セッションは、活性な作用物質を個体に投与する工
程を含み、処置セッションは、少なくとも、活性な作用物質の全身における存在または活
性が治療レベルに達するまで維持され、治療レベルに達した時点で投与が停止され、非処
置期間は、認知に対する有益な効果が処置開始前のレベルより高く維持されている限り、
維持される。この実施形態の態様において、認知に対する有益な効果は、維持され、例え
ば、処置開始前の認知レベルよりも少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも3
0%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少
なくとも80%、少なくとも90%高いという改善を示すものである。この実施形態の態
様において、活性な作用物質は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体
、抗CTLA-4抗体、抗B7RP1抗体、抗B7-H3抗体、抗B7-H4抗体、抗B
7-H7抗体、抗BTLA抗体、抗HVEM抗体、抗CD-27抗体、抗CD40抗体、
抗CD40L抗体、抗CD70抗体、抗CD80抗体、抗CD86抗体、抗CD137抗
体、抗CD137L抗体、抗OX40抗体、抗OX40L抗体、抗TIM-3抗体、抗ガ
レクチン9抗体、抗KIR抗体、抗LAG-3抗体、抗ICOS抗体、抗VISTA抗体
、抗STING、抗TIGIT、抗GITRまたはそれらの任意の組み合わせである。
【0091】
ある特定の実施形態において、処置セッションは、活性な作用物質を個体に投与する工
程を含み、処置セッションは、少なくとも、活性な作用物質の全身における存在または活
性が治療レベルに達するまで維持され、治療レベルに達した時点で投与が停止され、非処
置期間は、視覚に対する有益な効果が処置開始前のレベルより高く維持されている限り、
維持される。この実施形態の態様において、視覚に対する有益な効果は、維持され、例え
ば、処置開始前の視覚レベルよりも少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも3
0%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少
なくとも80%、少なくとも90%高いという改善を示すものである。この実施形態の態
様において、活性な作用物質は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体
、抗CTLA-4抗体、抗B7RP1抗体、抗B7-H3抗体、抗B7-H4抗体、抗B
7-H7抗体、抗BTLA抗体、抗HVEM抗体、抗CD-27抗体、抗CD40抗体、
抗CD40L抗体、抗CD70抗体、抗CD80抗体、抗CD86抗体、抗CD137抗
体、抗CD137L抗体、抗OX40抗体、抗OX40L抗体、抗TIM-3抗体、抗ガ
レクチン9抗体、抗KIR抗体、抗LAG-3抗体、抗ICOS抗体、抗VISTA抗体
、抗STING、抗TIGIT、抗GITRまたはそれらの任意の組み合わせである。
【0092】
ある特定の実施形態において、処置セッションは、単回投与であり得るか、または指示
された期間中に行われる複数回の投与を含み得る。この実施形態の態様において、処置セ
ッションは、例えば、1日間~4週間、2日間~4週間、3日間~4週間、4日間~4週
間、5日間~4週間、6日間~4週間、1週間~4週間、10日間~4週間、2週間~4
週間、17日間~4週間または3週間~4週間の期間中に行われる複数回の投与であり得
る。例えば、2回目の投与は、1回目の投与の1、2、3、4、5または6日後に行われ
る。別の例として、処置セッションは、3回の投与を含み得、そのすべてが、1週間以内
に行われ、例えば、直前の投与の1、2または3日後に行われる。別の例として、処置セ
ッションは、3回の投与を含み得、そのすべてが、2週間以内に行われ、例えば、直前の
投与の1、2、3、4または5日後に行われる。別の例として、処置セッションは、4回
の投与を含み得、そのすべてが、2週間以内に行われ、例えば、直前の投与の1、2、3
または4日後に行われる。別の例として、処置セッションは、4回の投与を含み得、その
すべてが、3週間以内に行われ、例えば、直前の投与の1、2、3、4、5または6日後
に行われる。別の例として、処置セッションは、5回の投与を含み得、そのすべてが、3
週間以内に行われ、例えば、直前の投与の1、2、3、4または5日後に行われる。
【0093】
ある特定の実施形態において、非処置のインターバルセッションは、1週間~6ヶ月間
、例えば、2週間~4週間、3週間~4週間、2週間~6週間、3週間~6週間、4週間
~6週間、5週間~6週間、2週間~2ヶ月間、3週間~2ヶ月間、4週間~2ヶ月間、
5週間~2ヶ月間、6週間~2ヶ月間、7週間~2ヶ月間、2ヶ月間~3ヶ月間、2ヶ月
間~4ヶ月間、3ヶ月間~4ヶ月間、3ヶ月間~5ヶ月間、3ヶ月間~5ヶ月間、4ヶ月
間~5ヶ月間、1週間~6ヶ月間、2週間~6ヶ月間、3週間~6ヶ月間、4週間~6ヶ
月間、6週間~6ヶ月間、2ヶ月間~6ヶ月間、3ヶ月間~6ヶ月間、4ヶ月間~6ヶ月
間または5ヶ月間~6ヶ月間であり得る。ある特定の実施形態において、非処置のインタ
ーバルセッションは、1~2ヶ月間の長さ、1~3ヶ月間の長さまたは2~3ヶ月間の長
さであり得る。
【0094】
処置セッションにおいて、活性な作用物質または薬学的組成物の投与は、単回投与また
は反復投与であり得、例えば、活性な作用物質または薬学的組成物は、1回だけ投与され
、次いで、そのすぐ後にインターバルが続き得るか、または活性な作用物質もしくは薬学
的組成物は、毎日、または2、3、4、5もしくは6日ごとに1回、または1週間に1回
、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回投与され得る。これら
の頻度は、いずれの活性な作用物質にも当てはめることができ、当該分野において通常使
用される慣習に基づき得、最終的には、臨床試験における医師によって決定され得る。あ
るいは、処置セッションにおける反復投与の頻度は、活性な作用物質の性質に応じて適合
され得、ここで、例えば、ある小分子は、毎日投与され得、ある抗体は、3日ごとに1回
投与され得る。ある作用物質が、処置セッション中に比較的低頻度で、例えば、1ヶ月の
処置セッション中に1週間に1回または6ヶ月の処置セッション中に1ヶ月に1回、投与
されるとき、この処置セッションの後に、処置セッション中の反復投与間の期間より長い
(すなわち、この例ではそれぞれ1週間または1ヶ月より長い)長さの非処置インターバ
ルセッションが続くことが理解されるべきである。この例における処置セッション中の投
与間の1週間または1ヶ月という休止は、インターバルセッションと見なされない。
【0095】
処置セッションおよび非処置セッション、あるいはインターバルセッションの長さは、
例えば、活性な作用物質を3日ごとに1回投与するという頻度が、6または9日間の処置
セッションおよびそれに応じて開始されるインターバルセッションをもたらし得るような
投与の頻度に調整され得る。
【0096】
処置セッションが、単回投与からなる場合、投与レジメンは、非処置インターバルの長
さによって決定され、その単回投与の後、次の単回投与の処置セッション前に、7、8、
9、10、14、18、21、24または28日またはそれより長い非処置インターバル
が続く。特に、投与レジメンは、2、3または4週間の非処置インターバルが間に挿入さ
れた単回投与からなる。さらに、投与レジメンは、2~4週間、2~3週間または3~4
週間の非処置のインターバルが間に挿入された単回投与からなり得る。
【0097】
処置セッションが、複数回投与からなる場合、投与レジメンは、非処置インターバルの
長さによって決定され、1週間以内に行われる複数回投与の後、次の複数回投与の処置セ
ッションの前に、7、10、14、18、21、24または28日またはそれより長い非
処置インターバルが続く。特に、投与レジメンは、2または3または4週間の非処置のイ
ンターバルが間に挿入された、1週間以内に行われる複数回投与からなり得る。さらに、
投与レジメンは、2~4週間、2~3週間または3~4週間の非処置のインターバルが間
に挿入された、1週間以内に行われる複数回投与からなり得る。
【0098】
別の例として、投与レジメンは、2週間以内に行われる複数回投与に続いて、次の複数
回投与の処置セッションの前に、2週間、3週間または1、2、3もしくは4ヶ月あるい
はそれより長い非処置のインターバルを含み得る。特に、投与レジメンは、1、2、3ま
たは4ヶ月の非処置のインターバルが間に挿入された、2週間以内に行われる複数回投与
からなり得る。さらに、投与レジメンは、1~2ヶ月、1~3ヶ月、1~4ヶ月、2~3
ヶ月、2~4ヶ月または3~4ヶ月の非処置のインターバルが間に挿入された、2週間以
内に行われる複数回投与からなり得る。
【0099】
別の例として、投与レジメンは、3週間以内に行われる複数回投与に続いて、次の複数
回投与の処置セッションの前に1、2、3、4、5もしくは6ヶ月またはそれより長い非
処置を含み得る。特に、投与レジメンは、1、2、3、4、5または6ヶ月の非処置のイ
ンターバルが間に挿入された、3週間以内に行われる複数回投与からなり得る。さらに、
投与レジメンは、1~2ヶ月、1~3ヶ月、1~4ヶ月、1~5ヶ月、1~6ヶ月、2~
3ヶ月、2~4ヶ月、2~5ヶ月、2~6ヶ月、3~4ヶ月、3~5ヶ月、3~6ヶ月、
4~5ヶ月、4~6ヶ月または5~6ヶ月の非処置のインターバルが間に挿入された、3
週間以内に行われる複数回投与からなり得る。
【0100】
当然のことながら、ある特定のレジメンから開始され、別のもので置き換えられる、自
在な投与レジメンが想定される。例えば、各1つの処置セッションが3日空けた2回の単
回投与を含み、処置セッション間に例えば1週間のインターバルを含む処置セッションは
、適切であると考えられるとき、例えば、2、3または4週間のインターバルによって分
断された単回投与の処置セッションを含む投与レジメンによって置き換えられ得る。別の
例として、各1つの処置セッションが7日空けた2回の単回投与を含み、処置セッション
間に例えば2週間のインターバルを含む処置セッションは、適切であると考えられるとき
、例えば、2、3、4、5または6週間のインターバルによって分断された単回投与の処
置セッションを含む投与レジメンによって置き換えられ得る。別の例として、各1つの処
置セッションが3日空けた3回の単回投与を含み、処置セッション間に例えば2週間のイ
ンターバルを含む処置セッションは、適切であると考えられるとき、例えば、2、3、4
、5または6週間のインターバルによって分断された単回投与の処置セッションを含む投
与レジメンによって置き換えられ得る。
【0101】
いずれの場合も、投与レジメン、すなわち、処置セッションおよびインターバルセッシ
ョンの長さは、免疫抑制レベルの低下が、例えば、その個体における制御性T細胞の全身
における存在もしくは活性のレベルの低下またはIFNγ産生白血球の全身における存在
もしくは活性のレベルの上昇によって測定されるとき、一過性であるように調整される。
【0102】
本発明にかかる方法、活性な作用物質または薬学的組成物は、障害または状態であるC
NSの疾患、障害または状態を処置するためのものであり得る。この実施形態の態様にお
いて、神経変性疾患、障害または状態は、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、パー
キンソン病 ハンチントン病、一次性進行型多発性硬化症;二次性進行型多発性硬化症、
大脳皮質基底核変性症、レット症候群、タウオパチー、網膜変性障害;前部虚血性視神経
症;緑内障;ブドウ膜炎;うつ病;外傷関連ストレス障害または外傷後ストレス障害、前
頭側頭型認知症、レヴィー小体型認知症、軽度認識障害、後部皮質萎縮症、原発性進行性
失語または進行性核上性麻痺である。ある特定の実施形態において、CNSの状態は、加
齢性認知症である。この実施形態の特定の態様において、CNSの状態は、アルツハイマ
ー病、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病 ハンチントン病である。
【0103】
タウオパチーは、ヒトの脳における神経原線維タングルまたはグリア線維タングル(g
liofibrillary tangle)としてのタウタンパク質の病理学的な凝集
を特徴とする臨床的、形態学的および生化学的に不均一なクラスの神経変性疾患である。
タウは、微小管に結合してその重合を促進する微小管結合タンパク質(MAP)である。
タウは、軸索輸送およびニューロンの完全性の維持において重要な役割を果たすが、樹状
突起では生理学的役割を有し、グリア細胞では低レベルで発現される。タウオパチーでは
、タングルは、タウを不溶型で凝集させるタウの過剰リン酸化によって形成される。タウ
オパチーの非限定的な例としては、アルツハイマー病、嗜銀顆粒性疾患、慢性外傷性脳障
害、大脳皮質基底核変性症、拳闘家認知症(dementia pugilistica
)、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、ハラーフォルデン・シュパッツ病、ハンチン
トン病、神経節膠腫、神経節細胞腫、球状グリア細胞タウオパチー、鉛脳障害、リポフス
チン沈着症、リティコ・ボディグ病(グアムのパーキンソン・認知症複合)、髄膜血管腫
症、17番染色体に連鎖するパーキンソニズム疾患、ピック病、以前は神経原線維変化型
認知症(NFT-認知症)として知られていた原発性加齢性タウオパチー(PART)、
脳炎後パーキンソニズム、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性全脳炎および結節性硬化症が
挙げられる。
【0104】
網膜変性障害は、光受容体細胞の死滅に起因して網膜の変質をもたらす障害である。網
膜変性にはいくつかの原因があり、それらとしては、動脈もしくは静脈閉塞、糖尿病性網
膜症、水晶体後線維増殖症/未熟児網膜症または疾患(通常、遺伝性)が挙げられる。症
状としては、視力の悪化、夜盲、網膜剥離、光感受性、グレア感度、トンネル視、深視力
の喪失、コントラストの喪失、夜盲、中心視覚の喪失、周辺視の喪失および完全視力喪失
が挙げられるがこれらに限定されない。網膜変性障害としては、加齢性黄斑変性症(滲出
型および非滲出型)、網膜色素変性症、コロイデレミア、錐体桿体網膜ジストロフィー、
脳回転状萎縮、若年性網膜分離症、卵黄様黄斑ジストロフィー(ベスト病)、無βリポタ
ンパク質血症(バッセン・コーンツヴァイク病)、バルデー・ビートル症候群、青錐体単
色症、優性ドルーゼン、ゴールドマン・ファーブル硝子体網膜性ジストロフィー(S錐体
増強症候群)、カーンズ・セイヤー症候群、ローレンス・ムーン症候群、レーバー先天性
黒内障、レーバーレフサム病(Leber’s Refsum disease)、小口
病、乳頭周囲(中心周囲)脈絡膜ジストロフィー、色素パターンジストロフィー(Pig
ment Pattern Dystrophy)、ソースビー黄斑ジストロフィー(S
orsby Macular Dystrophy)、シュタルガルト病、スティックラ
ー症候群、アッシャー症候群およびワーグナー硝子体網膜性ジストロフィーが挙げられる
がこれらに限定されない。
【0105】
ある特定の実施形態において、ICOS-B7RP1、T細胞活性化のVドメインIg
抑制因子(VISTA)、B7-CD28様分子、CD40L-CD40、CD28-C
D80、CD28-CD86、B7H3、B7H4、B7H7、BTLA-HVEM、C
D137-CD137L、OX40L、CD27-CD70、STING、TIGITお
よびA2aR-アデノシンおよびインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO
)-L-トリプトファンから選択される免疫チェックポイントの1つを遮断する上に記載
された活性な作用物質(例えば、免疫チェックポイントの2つのパートナーのうちの1つ
に対する抗体)の各1つは、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病
ハンチントン病、一次性進行型多発性硬化症;二次性進行型多発性硬化症、大脳皮質基底
核変性症、レット症候群、加齢性黄斑変性症および網膜色素変性症からなる群より選択さ
れる網膜変性障害;前部虚血性視神経症;緑内障;ブドウ膜炎;うつ病;外傷関連ストレ
スまたは外傷後ストレス障害、前頭側頭型認知症;レヴィー小体型認知症、軽度認識障害
、後部皮質萎縮、原発性進行性失語または進行性核上性麻痺から選択される神経変性疾患
、障害または状態のいずれか1つの処置において使用するためのものである。これらの活
性な作用物質のいずれか1つの使用を含むこれらの疾患のいずれか1つの処置は、上に記
載されたレジメント(regiment)に従って行われ得る。
【0106】
本発明にかかる方法、活性な作用物質および薬学的組成物はさらに、脊髄損傷、閉鎖性
頭部損傷、鈍的外傷、鋭的外傷、出血性脳卒中、虚血性脳卒中、脳虚血、視神経損傷、心
筋梗塞、有機リン中毒、および腫瘍切除術が原因の損傷から選択されるCNSの損傷を処
置するためのものであり得る。
【0107】
ある特定の実施形態において、ICOS-B7RP1、T細胞活性化のVドメインIg
抑制因子(VISTA)、B7-CD28様分子、CD40L-CD40、CD28-C
D80、CD28-CD86、B7H3、B7H4、B7H7、BTLA-HVEM、C
D137-CD137L、OX40L、CD27-CD70、STING、TIGITお
よびA2aR-アデノシンおよびインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO
)-L-トリプトファンから選択される免疫チェックポイントの1つを遮断する上に記載
された活性な作用物質(例えば、免疫チェックポイントの2つのパートナーのうちの1つ
に対する抗体)の各1つは、脊髄損傷、閉鎖性頭部損傷、鈍的外傷、鋭的外傷、出血性脳
卒中、虚血性脳卒中、脳虚血、視神経損傷、心筋梗塞、有機リン中毒、および腫瘍切除術
が原因の損傷から選択されるCNSの損傷の処置において使用するためのものである。こ
れらの活性な作用物質のいずれか1つの使用を含むこれらの損傷のいずれか1つの処置は
、上に記載されたレジメンに従って行われ得る。
【0108】
上で述べたように、本発明者らは、本発明が、アルツハイマー病を模倣するマウスにお
いて認知機能を改善することを見出した。したがって、上記方法、活性な作用物質および
薬学的組成物は、CNSの運動機能および/または認知機能の改善において使用するため
、例えば、診断された疾患を有しない個体ならびに神経変性疾患に罹患している人々にお
いて生じ得る、加齢関連の認知機能喪失の軽減において使用するためのものであり得る。
さらに、上記方法、活性な作用物質および薬学的組成物は、急性ストレスまたは外傷エピ
ソードに起因する認知機能喪失の軽減において使用するためのものであり得る。本明細書
中の上記で述べられた認知機能は、学習、記憶またはその両方を含み得る。
【0109】
アルツハイマー病を模倣するマウス(5XFAD AD-Tgマウス)における認知機
能の改善が観察され、その改善が、疾患発現の様々な段階において本発明者らによって特
徴付けられたこと;疾患の病態の初期と後期の両方の進行段階が、処置によって緩和され
得ることは、強調されるべきである。5XFAD AD-Tgマウスは、2.5月齢にお
いて大脳プラークの病態を示し始め、5月齢において失認を示し始める(Oakley
et al,2006)。注目すべきは、下記の実施例2において、本発明者らは、6月
齢の5XFADマウスにおいて治療効果を報告し、実施例5では、このモデルにおいてア
ミロイドベータプラークの沈着および失認が極めて進行した段階である11および12月
齢の5XFADマウスにおいて治療効果を特徴付ける。ゆえに、提案される発明は、様々
な疾患進行の段階(例えば、ステージ1-軽度/初期(2~4年続く);ステージ2-中
等度/中期(2~10年続く);およびステージ3-重度/後期(1~3+年続く))の
患者にとって妥当であり得ると予想される。
【0110】
用語「CNS機能」は、本明細書中で使用されるとき、とりわけ、知覚情報の受け取り
および処理、思考、学習、記銘、言語の認知、生成および理解、運動機能および聴覚的お
よび視覚的応答の制御、バランスおよび平衡の維持、運動協調、知覚情報の伝導、ならび
に呼吸、心拍および消化のような自律神経機能の制御のことを指す。
【0111】
用語「認知」、「認知機能」および「認知能力」は、本明細書中で交換可能に使用され
、学習、記憶、心象の創造、思考、自覚、推理、空間能力、発話および言語技能、言語習
得、ならびに判断注意の能力を含むがこれらに限定されない任意の心理過程または心理状
態に関する。認知は、脳の複数の領域(例えば、海馬、皮質および他の脳構造)において
形成される。しかしながら、長期記憶は皮質の少なくとも一部に保存されると仮定され、
知覚情報は、島皮質の中に存在する特定の皮質構造である味覚野によって獲得され、整理
統合され、読みだされることが知られている。
【0112】
ヒトでは、認知機能は、任意の公知の方法によって測定され得、その方法は、例えば、
臨床全般印象変化尺度(CIBIC-plusスケール);ミニメンタルステート検査(
MMSE);神経精神症状評価(NPI);臨床的認知症尺度(CDR);ケンブリッジ
神経心理学的検査バッテリー(CANTAB)またはサンド老年者臨床評価(SCAG)
であるが、これらに限定されない。認知機能は、イメージング技術(例えば、ポジトロン
放出断層撮影法(PET)、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)、単一光子放射型コンピ
ュータ断層撮影法(SPECT)または脳機能を測定することが可能な他の任意のイメー
ジング技術)を用いても間接的に測定され得る。
【0113】
患者における認知に影響する1つ以上のプロセスの改善は、前記患者における認知機能
の改善を意味するので、ある特定の実施形態において、認知の改善は、学習、可塑性およ
び/または長期記憶の改善を含む。用語「改善する」および「高める」は、交換可能に使
用され得る。
【0114】
用語「学習」は、新しい知識、行動、技能、価値もしくは好みの獲得もしくは増加、ま
たは既存の知識、行動、技能、価値もしくは好みの改変および強化に関する。
【0115】
用語「可塑性」は、脳が学習によって変化する能力およびすでに獲得している記憶を変
更する能力に関連する、シナプス可塑性、脳可塑性または神経可塑性に関する。可塑性を
反映する1つの測定可能なパラメータは、記憶の消去である。
【0116】
用語「記憶」は、情報がコード化され、保存され、検索されるプロセスに関する。記憶
は、3つの識別可能なカテゴリー:感覚記憶、短期記憶および長期記憶を有する。
【0117】
用語「長期記憶」は、長時間または無期限にわたって情報を維持する能力である。長期
記憶は、2つの主要な部分:明確な記憶(陳述記憶)および暗黙の記憶(非陳述記憶)を
含む。長期記憶は、記憶を最初に獲得した後に記憶痕跡を安定させるプロセスの1カテゴ
リーである記憶固定によって達成される。固定は、2つの特定のプロセス、すなわち、学
習後の最初の数時間以内に行われるシナプス固定(synaptic consolid
ation)、および海馬依存性の記憶が数週間から数年間にわたって海馬から独立する
ようになるシステム固定(system consolidation)に分類される。
【0118】
本発明の薬学的組成物の種々の特徴を説明する上記の実施形態は、本発明の方法にも関
連する。なぜなら、本方法は、同じ薬学的組成物を使用するからである。
【0119】
さらに別の態様において、本発明は、アルツハイマー病と診断された患者においてAβ
プラーク量を減少させるための方法を提供し、その方法は、1つ以上の免疫チェックポイ
ントによって免疫系に課された制限の解除によって全身免疫抑制のレベルの低下を引き起
こす上記の本明細書中で定義されたような活性な作用物質または薬学的組成物を前記患者
に投与する工程を含む。
【0120】
なおも別の態様において、本発明は、アルツハイマー病と診断された患者において海馬
グリオーシスを低減するための方法を提供し、その方法は、1つ以上の免疫チェックポイ
ントによって免疫系に課された制限の解除によって全身免疫抑制のレベルの低下を引き起
こす上記の本明細書中で定義されたような活性な作用物質または薬学的組成物を前記患者
に投与する工程を含む。
【0121】
本発明に従って使用するための薬学的組成物は、1つ以上の生理的に許容され得る担体
または賦形剤を使用して、従来の様式で製剤化され得る。それらの担体は、その組成物の
他の成分と適合しかつそのレシピエントにとって有害でないという意味において、「許容
され得る」ものでなければならない。
【0122】
以下の担体、投与様式、剤形などの例証は、使用される可能性のある公知のものとして
列挙され、それらから本発明とともに使用するための担体、投与様式、剤形などが選択さ
れ得る。しかしながら、当業者は、まず、任意の所与の製剤および選択された投与様式が
、所望の結果を達成するかを判定するために試験されるべきであることを理解するだろう
【0123】
投与方法としては、非経口的、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、粘膜(例えば
、経口、鼻腔内、頬側、膣、直腸、眼内)、鞘内(intrathecal)、局所的お
よび皮内経路が挙げられるが、これらに限定されない。投与は、全身投与または局所投与
であり得る。
【0124】
用語「担体」とは、活性な作用物質とともに投与される、希釈剤、アジュバント、賦形
剤またはビヒクルのことを指す。薬学的組成物中の担体は、結合剤(例えば、微結晶性セ
ルロース、ポリビニルピロリドン(ポリビドンまたはポビドン)、トラガカントゴム、ゼ
ラチン、デンプン、ラクトースまたはラクトース一水和物);崩壊剤(例えば、アルギン
酸、トウモロコシデンプンなど);潤滑剤または界面活性物質(例えば、ステアリン酸マ
グネシウムまたはラウリル硫酸ナトリウム);および流動促進剤(例えば、コロイド状二
酸化ケイ素)を含み得る。
【0125】
経口投与の場合、薬学的調製物は、液体の形態、例えば、液剤、シロップ剤もしくは懸
濁剤として存在し得るか、または使用前に水もしくは他の好適なビヒクルで再構成するた
めの薬物製品として提供され得る。そのような液体調製物は、薬学的に許容され得る添加
物(例えば、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または可食の
硬化脂肪);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例えば、ア
ーモンドオイル、油性エステルまたは分画された植物油);および保存剤(例えば、メチ
ルもしくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸))を用いて、従来
の手段によって調製され得る。薬学的組成物は、薬学的に許容され得る賦形剤(例えば、
結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロ
キシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロースま
たはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまた
はシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウ
ム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム))とともに従来の手段によって
調製される、例えば、錠剤またはカプセル剤の形態をとり得る。錠剤は、当該分野で周知
の方法によってコーティングされてもよい。
【0126】
経口投与用の調製物は、活性な化合物の制御放出をもたらすように適切に製剤化され得
る。
【0127】
頬側投与の場合、組成物は、従来の様式で製剤化される錠剤または舐剤の形態をとり得
る。
【0128】
組成物は、注射、例えば、ボーラス注射または持続注入による非経口投与用に製剤化さ
れ得る。注射用の製剤は、単位剤形で、例えばアンプル内に、または保存剤が加えられた
複数回用量の容器内に、提供され得る。組成物は、油性または水性ビヒクルにおける懸濁
液、溶液またはエマルジョンのような形態をとることがあり、懸濁化剤、安定化剤および
/または分散剤などの製剤化剤(formulatory agents)を含むことが
ある。あるいは、活性成分は、使用する前に、好適なビヒクル、例えば、滅菌されたパイ
ロジェンフリー水で構成するための粉末の形態であり得る。
【0129】
組成物は、例えば、従来の坐剤用基剤(例えば、カカオバターまたは他のグリセリド)
を含む、直腸組成物(例えば、坐剤または停留浣腸)にも製剤化され得る。
【0130】
吸入による投与の場合、本発明に従って使用するための組成物は、好適な噴射剤、例え
ば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエ
タン、二酸化炭素または他の好適なガスを使用して、加圧パックまたは噴霧器からエアロ
ゾルスプレーを提供する形態で好都合に送達される。加圧エアロゾルの場合、投与量の単
位は、一定量を送達するバルブを提供することによって決定され得る。化合物と好適な粉
末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプン)との粉末混合物を含む、吸入器または注入
器において使用するための、例えばゼラチンでできた、カプセルおよびカートリッジが製
剤化され得る。
【0131】
ヒトにおいて使用するために使用される活性成分の用量の決定は、当該分野で通常用い
られる慣習に基づき、臨床試験では最終的に医師が決定する。ヒトに投与する場合の近似
の等価用量の予測値は、公知の式を用いて(例えば、Reagan-Show et a
l.(2007)Dose translation from animal to
human studies revisited.The FASEB Journa
l 22:659-661)、下記の本明細書中に開示されるインビボの実験的証拠に基
づいて計算され得る。このパラダイムによると、成人の等価用量(mg/kg体重)は、
マウスに投与される用量(mg/kg体重)に0.081を掛けた値に等しい。
【0132】
本明細書の態様は、以下のようにも説明され得る:
1.中枢神経系の疾患、障害、状態または傷害の処置を必要とする個体に対してそれらを
処置する処置する方法であって、その方法は、1つ以上の免疫チェックポイントによって
免疫系に課された制限の解除によって全身の免疫抑制レベルの低下を引き起こす活性な作
用物質を含む組成物をその個体に投与する工程を含み、その組成物は、少なくとも1コー
スの治療を含む投与レジメンによって投与され、各コースの治療は、その組成物が個体に
投与される処置セッションの後に、組成物が個体に投与されない非処置セッションを順に
含み、その非処置期間は、処置セッションより長く;処置セッション中の組成物の投与が
、反復投与である場合、非処置期間は、処置セッション中の反復投与間の期間よりも長く
;その組成物の投与は、全身の免疫抑制レベルを一過性に低下させ、中枢神経系への免疫
細胞の選択的動員を促進する際に脈絡叢入口活性を高め、それにより、その個体を処置す
る、方法。
2.中枢神経系の疾患、障害、状態または傷害の処置の処置において使用するための、活
性な作用物質またはその活性な作用物質を含む薬学的組成物であって、その活性な作用物
質は、1つ以上の免疫チェックポイントによって免疫系に課された制限の解除によって全
身の免疫抑制レベルの低下を引き起こし、その活性な作用物質または薬学的(pharm
aceutica)組成物は、少なくとも1コースの治療を含む投与レジメンによって投
与され、各コースの治療は、その組成物が個体に投与される処置セッションの後に、組成
物が個体に投与されない非処置セッションを順に含み、その非処置期間は、処置セッショ
ンより長く;処置セッション中の組成物の投与が、反復投与である場合、非処置期間は、
処置セッション中の反復投与間の期間よりも長く;その組成物の投与は、全身の免疫抑制
レベルを一過性に低下させ、中枢神経系への免疫細胞の選択的動員を促進する際に脈絡叢
入口活性を高め、それにより、その個体を処置する、活性な作用物質またはその活性な作
用物質を含む薬学的組成物。
3.中枢神経系の疾患、障害、状態または傷害の処置における、1つ以上の免疫チェック
ポイントによって免疫系に課された制限の解除によって全身の免疫抑制レベルの低下を引
き起こす活性な作用物質の使用。
4.中枢神経系の疾患、障害、状態または傷害を処置するための薬の製造における、1つ
以上の免疫チェックポイントによって免疫系に課された制限の解除によって全身の免疫抑
制レベルの低下を引き起こす活性な作用物質の使用。
5.前記活性な作用物質が、抗体、抗体模倣物、アプタマー、小分子、ニーム葉の糖タン
パク質、sCTLA-4、サイレンシング分子、OK-432、IL-12と抗CTLA
-4との組み合わせ、またはそれらの任意の組み合わせである、実施形態1に記載の方法
、実施形態2に記載の活性な作用物質もしくは薬学的組成物、または実施形態3もしくは
4に記載の使用。
6.前記抗体が、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体である、実施形態5に記
載の方法、実施形態5に記載の活性な作用物質もしくは薬学的組成物、または実施形態5
に記載の使用。
7.前記抗体が、二量体、多量体、多重特異性抗体、組換え抗体、キメラ抗体、二機能性
抗体、Igレセプターのような細胞に会合した抗体、鎖状抗体、ダイアボディ、ミニボデ
ィまたはナノボディである、実施形態5もしくは6に記載の方法、実施形態5もしくは5
に記載の活性な作用物質または薬学的組成物、または実施形態5もしくは6に記載の使用

8.前記抗体が、ヒト抗体またはヒト化抗体である、実施形態5~7のいずれか1つに記
載の方法、実施形態5~7に記載の活性な作用物質もしくは薬学的組成物、または実施形
態5~7のいずれか1つに記載の使用。
9.前記抗体が、アンタゴニスト抗体またはアゴニスト抗体である、実施形態5~8のい
ずれか1つに記載の方法、実施形態5~8に記載の活性な作用物質もしくは薬学的組成物
、または実施形態5~8のいずれか1つに記載の使用。
10.前記抗体が、中和抗体である、実施形態5~9のいずれか1つに記載の方法、実施
形態5~9に記載の活性な作用物質もしくは薬学的組成物、または実施形態5~9のいず
れか1つに記載の使用。
11.前記抗体が、完全長の免疫グロブリン分子または免疫学的に活性なフラグメントで
ある、実施形態5~10のいずれか1つに記載の方法、実施形態5~10に記載の活性な
作用物質もしくは薬学的組成物、または実施形態5~10のいずれか1つに記載の使用。
12.前記免疫学的に活性なフラグメントが、単一ドメイン抗体(sdAb)、一本鎖可
変フラグメント(scFv)、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fc
フラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメントである、実施形態11に記載の方法
、実施形態11に記載の活性な作用物質または薬学的組成物、または実施形態11に記載
の使用。
13.前記抗体が、抗PD-1、抗PD-L1、抗PD-L2、抗CTLA-4、抗CD
80、抗CD86、抗B7RP1、抗B7-H3、抗B7-H4、抗B7-H7、抗BT
LA、抗HVEM、抗CD-27、抗CD40、抗CD40L、抗CD70、抗CD80
、抗CD86、抗CD137、抗CD137L、抗OX40、抗OX40L、抗TIM-
3、抗ガレクチン9、抗KIR、抗LAG-3、抗ICOS、抗VISTA、抗STIN
G、抗TIGIT、抗GITRまたはそれらの任意の組み合わせである、実施形態5~1
2のいずれか1つに記載の方法、実施形態3もしくは4に記載の活性な作用物質もしくは
薬学的組成物、または実施形態4~11のいずれか1つに記載の使用。
14.前記抗体模倣物が、アフィボディ分子、アフィリン、アフィマー、アフィチン、ア
ルファボディ、アンチカリン、アビマー、DARPin、フィノマー、Kunitzドメ
インペプチドまたはモノボディである、実施形態5に記載の方法、実施形態5に記載の活
性な作用物質もしくは薬学的組成物、または実施形態5に記載の使用。
15.前記アプタマーが、DNAアプタマー、RNAアプタマー、XNAアプタマーまた
はペプチドアプタマーである、実施形態5に記載の方法、実施形態5に記載の活性な作用
物質もしくは薬学的組成物、または実施形態4に記載の使用。
16.前記小分子が、p300インヒビター、スニチニブ、ポリオキソメタレート-1、
α,β-メチレンアデノシン5’-二リン酸、三酸化ヒ素、GX15-070、レチノイ
ン酸アンタゴニスト、CCR4アンタゴニスト、アデノシンレセプターアンタゴニスト、
アデノシンA1レセプターアンタゴニスト;アデノシンA2aレセプター、アデノシンA
2bレセプターアンタゴニスト、A3レセプターアンタゴニスト、インドールアミン-2
,3-ジオキシゲナーゼのアンタゴニストまたはHIF-1制御因子である、実施形態5
に記載の方法、実施形態5に記載の活性な作用物質もしくは薬学的組成物、または実施形
態5に記載の使用。
17.前記処置セッション中の前記組成物の投与が、単回投与である、実施形態1~16
のいずれか1つに記載の方法、実施形態2~16のいずれか1つに記載の活性な作用物質
もしくは薬学的組成物、または実施形態3~16のいずれか1つに記載の使用。
18.前記処置セッション中の前記組成物の投与が、反復投与である、実施形態1~16
のいずれか1つに記載の方法、実施形態2~16のいずれか1つに記載の活性な作用物質
もしくは薬学的組成物、または実施形態3~16のいずれか1つに記載の使用。
19.前記反復投与が、1日に1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回
または6日に1回、行われる、実施形態18に記載の方法、実施形態18に記載の活性な
作用物質もしくは薬学的組成物、または実施形態18に記載の使用。
20.前記反復投与が、1週間に1回または2週間に1回、3週間に1回または4週間に
1回、行われる、実施形態18に記載の方法、実施形態18に記載の活性な作用物質もし
くは薬学的組成物、または実施形態18に記載の使用。
21.前記処置セッションが、1日間~4週間である、実施形態1~20のいずれか1つ
に記載の方法、実施形態2~20のいずれか1つに記載の活性な作用物質もしくは薬学的
組成物、または実施形態3~20のいずれか1つに記載の使用。
22.前記処置セッションが、3日間~4週間である、実施形態21に記載の方法、実施
形態21に記載の活性な作用物質もしくは薬学的組成物、または実施形態21に記載の使
用。
23.前記処置セッションが、1週間~4週間である、実施形態22に記載の方法、実施
形態22に記載の活性な作用物質もしくは薬学的組成物、または実施形態22に記載の使
用。
24.前記非処置期間が、1週間~6ヶ月間である、実施形態1~23のいずれか1つに
記載の方法、実施形態2~23のいずれか1つに記載の活性な作用物質もしくは薬学的組
成物、または実施形態3~23のいずれか1つに記載の使用。
25.前記非処置期間が、2週間~6ヶ月間である、実施形態24に記載の方法、実施形
態24に記載の活性な作用物質もしくは薬学的組成物、または実施形態24に記載の使用

26.前記非処置期間が、3週間~6ヶ月間である、実施形態25に記載の方法、実施形
態25に記載の活性な作用物質もしくは薬学的組成物、または実施形態25に記載の使用

27.前記非処置期間が、1ヶ月間~3ヶ月間である、実施形態26に記載の方法、実施
形態26に記載の活性な作用物質もしくは薬学的組成物、または実施形態26に記載の使
用。
28.前記非処置期間が、1ヶ月間~2ヶ月間である、実施形態27に記載の方法、実施
形態27に記載の活性な作用物質もしくは薬学的組成物、または実施形態27に記載の使
用。
29.前記全身の免疫抑制レベルの一過性の低下が、IFNγ産生白血球の全身における
存在もしくは活性の増加および/またはIFNγサイトカインの全身における存在もしく
は活性の増加を伴う、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法、実施形態2~28
のいずれか1つに記載の活性な作用物質もしくは薬学的組成物、または実施形態3~28
のいずれか1つに記載の使用。
30.前記全身の免疫抑制レベルの一過性の低下が、エフェクターT細胞の全身における
存在もしくは活性の増加を伴う、実施形態1~29のいずれか1つに記載の方法、実施形
態2~29のいずれか1つに記載の活性な作用物質もしくは薬学的組成物、または実施形
態3~29のいずれか1つに記載の使用。
31.前記全身の免疫抑制レベルの一過性の低下が、調節性T細胞の全身における存在も
しくは活性の減少および/またはIL-10サイトカインの全身における存在の減少を伴
う、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法、実施形態2~30のいずれか1つに
記載の活性な作用物質もしくは薬学的組成物、または実施形態3~30のいずれか1つに
記載の使用。
32.前記全身の免疫抑制レベルの一過性の低下が、全身における存在または骨髄由来サ
プレッサー細胞(MDSC)の減少を伴う、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方
法、実施形態2~31のいずれか1つに記載の活性な作用物質もしくは薬学的組成物、ま
たは実施形態3~31のいずれか1つに記載の使用。
33.前記全身の免疫抑制レベルの一過性の低下が、1つ以上の免疫チェックポイントに
よって免疫系に課された制限の解除によって生じる、実施形態1~32のいずれか1つに
記載の方法、実施形態2~32のいずれか1つに記載の活性な作用物質もしくは薬学的組
成物、または実施形態3~32のいずれか1つに記載の使用。
34.前記組成物の投与が、前記1つ以上の免疫チェックポイントを遮断し、それによっ
て、前記全身の免疫抑制レベルの一過性の低下を引き起こす、実施形態33に記載の方法
、実施形態33に記載の活性な作用物質もしくは薬学的組成物、または実施形態33に記
載の使用。
35.前記1つ以上の免疫チェックポイントが、PD-1-PD-L1、PD-1-PD
-L2、CD28-CD80、CD28-CD86、CTLA-4-CD80、CTLA
-4-CD86、ICOS-B7RP1、B7H3、B7H4、B7H7、B7-CD2
8様分子、BTLA-HVEM、KIR-MHCクラスIもしくはII、LAG3-MH
CクラスIもしくはII、CD137-CD137L、OX40-OX40L、CD27
-CD70、CD40L-CD40、TIM3-GAL9、T細胞活性化のV-ドメイン
Igサプレッサー(VISTA)、インターフェロン遺伝子の刺激物質(STING)、
T細胞免疫グロブリンおよび免疫受容抑制性チロシンモチーフドメイン(TIGIT)、
糖質コルチコイド誘発性腫瘍壊死因子レセプター関連タンパク質(GITR)、A2aR
-アデノシン、またはインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)-L-ト
リプトファンを含む、実施形態34に記載の方法、実施形態34に記載の活性な作用物質
もしくは薬学的組成物、または実施形態34に記載の使用。
36.前記処置セッション中の前記組成物の投与が、少なくともIFNγ産生白血球およ
び/またはIFNγサイトカインの全身における存在または活性が基準より高くなるまで
維持され、基準より高くなった時点でその投与は停止され、前記非処置期間が、IFNγ
産生白血球および/またはIFNγサイトカインの全身における存在または活性が基準よ
り高い限り維持され、その基準は、a)投与前の前記個体から得られた最新の血液サンプ
ルにおいて測定されたIFNγ産生白血球および/またはIFNγサイトカインの全身に
おける存在または活性のレベル;またはb)中枢神経系の疾患、障害、状態または傷害に
苦しんでいる個体の集団に特徴的なIFNγ産生白血球および/またはIFNγサイトカ
インの全身における存在または活性のレベルを含む、実施形態1~35のいずれか1つに
記載の方法、実施形態2~35のいずれか1つに記載の活性な作用物質もしくは薬学的組
成物、または実施形態3~35のいずれか1つに記載の使用。
37.可溶性アミロイドベータペプチドの脳内レベルが、前記個体において低下し、脳内
のアミロイドベータ(Aβ)プラーク量が、その個体において減少するかまたは取り除か
れ、海馬グリオーシスが、その個体において低減し、炎症促進性サイトカインの脳内レベ
ルが、その個体において低下し、脳の炎症が、その個体において低減し、かつ/または認
知機能が、その個体において改善される、実施形態1~36のいずれか1つに記載の方法
、実施形態2~36のいずれか1つに記載の活性な作用物質もしくは薬学的組成物、また
は実施形態3~36のいずれか1つに記載の使用。
38.前記改善された認知機能が、学習、記憶、心象の創造、可塑性、思考、自覚、推理
、空間能力、発話および言語技能、言語習得、判断注意の能力またはそれらの任意の組み
合わせである、実施形態37に記載の方法、実施形態37に記載の活性な作用物質もしく
は薬学的組成物、または実施形態37に記載の使用。
39.前記免疫細胞が、単球、マクロファージまたはT細胞を含む、実施形態1~38の
いずれか1つに記載の方法、実施形態2~38のいずれか1つに記載の活性な作用物質も
しくは薬学的組成物、または実施形態3~38のいずれか1つに記載の使用。
40.前記T細胞が、調節性T細胞を含む、実施形態39に記載の方法、実施形態39に
記載の活性な作用物質もしくは薬学的組成物、または実施形態39に記載の使用。
41.前記中枢神経系の疾患、障害、状態または傷害が、アルツハイマー病、筋萎縮性側
索硬化症、パーキンソン病 ハンチントン病、一次性進行型多発性硬化症、二次性進行型
多発性硬化症、大脳皮質基底核変性症、レット症候群、前部虚血性視神経症、緑内障、ブ
ドウ膜炎、うつ病、外傷関連ストレス障害または外傷後ストレス障害、前頭側頭型認知症
、レヴィー小体型認知症、軽度認識障害、後部皮質萎縮症、原発性進行性失語または進行
性核上性麻痺である、実施形態1~40のいずれか1つに記載の方法、実施形態2~40
のいずれか1つに記載の活性な作用物質もしくは薬学的組成物、または実施形態3~40
のいずれか1つに記載の使用。
42.前記中枢神経系の疾患、障害、状態または傷害が、タウオパチーである、実施形態
1~40のいずれか1つに記載の方法、実施形態2~40のいずれか1つに記載の活性な
作用物質もしくは薬学的組成物、または実施形態1~40のいずれか1つに記載の使用。
43.前記タウオパチーが、アルツハイマー病、嗜銀顆粒性疾患、慢性外傷性脳障害、大
脳皮質基底核変性症、拳闘家認知症、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、ハラーフォ
ルデン・シュパッツ病、ハンチントン病、神経節膠腫、神経節細胞腫、球状グリア細胞タ
ウオパチー、鉛脳障害、リポフスチン沈着症、リティコ・ボディグ病(グアムのパーキン
ソン・認知症複合)、髄膜血管腫症、17番染色体に連鎖するパーキンソニズム疾患、ピ
ック病、以前は神経原線維変化型認知症(NFT-認知症)として知られていた原発性加
齢性タウオパチー(PART)、脳炎後パーキンソニズム、進行性核上性麻痺、亜急性硬
化性全脳炎または結節性硬化症である、実施形態42に記載の方法、実施形態42に記載
の活性な作用物質もしくは薬学的組成物、または実施形態42に記載の使用。
44.前記中枢神経系の疾患、障害、状態または傷害が、網膜変性障害である、実施形態
1~40のいずれか1つに記載の方法、実施形態2~40のいずれか1つに記載の活性な
作用物質もしくは薬学的組成物、または実施形態3~40のいずれか1つに記載の使用。
45.前記網膜変性障害が、滲出型(wet)加齢黄斑変性症、非滲出型(dry)加齢
黄斑変性症、網膜色素変性症、コロイデレミア、錐体桿体網膜ジストロフィー、脳回転状
萎縮、若年性網膜分離症、卵黄様黄斑ジストロフィー(ベスト病)、無βリポタンパク質
血症(バッセン・コーンツヴァイク病)、バルデー・ビートル症候群、青錐体単色症、優
性ドルーゼン、ゴールドマン・ファーブル硝子体網膜性ジストロフィー(S錐体増強症候
群)、カーンズ・セイヤー症候群、ローレンス・ムーン症候群、レーバー先天性黒内障、
レーバーレフサム病、小口病、乳頭周囲(中心周囲)脈絡膜ジストロフィー、色素パター
ンジストロフィー、ソースビー黄斑ジストロフィー、シュタルガルト病、スティックラー
症候群、アッシャー症候群またはワーグナー硝子体網膜性ジストロフィーである、実施形
態44に記載の方法、実施形態44に記載の活性な作用物質もしくは薬学的組成物、また
は実施形態44に記載の使用。
【実施例0133】
以下の非限定的な実施例は、企図されている代表的な実施形態のより完全な理解を促す
ために、単に例証的な目的で提供される。これらの実施例は、本明細書中に開示される活
性な作用物質、薬学的組成物または方法および使用に関する実施形態を含む、本明細書に
記載されているいずれの実施形態も限定すると解釈されるべきでない。
(材料および方法)
【0134】
(動物)
家族性AD変異型のヒトAPP(Swedish変異、K670N/M671L;Flo
rida変異、I716V;およびLondon変異、V717I)およびPS1(M1
46L/L286V)導入遺伝子をニューロン特異的マウスThy-1プロモーター(O
akley et al,2006)の転写制御下で共過剰発現する5XFADトランス
ジェニックマウス(Tg6799)、ならびにADダブルトランスジェニックB6.Cg
-Tg(APPswe、PSEN1dE9)85Dbo/Jマウス(Borchelt
et al,1997)をThe Jackson Laboratoryから購入した
。先に記載されたように(Oakley et al,2006)、テイルDNAのPC
R解析によって、ジェノタイピングを行った。ヘテロ接合性変異cxcr1GFP/+
マウス(Jung et al,2000)(CXCR1ケモカインレセプターの対立
遺伝子の1つがGFPをコードする遺伝子で置換されたB6.129P-cx3cr1
m1Litt/J)をBMキメラのドナーとして使用した。Foxp3Tregの条件
的枯渇を可能にするために、Foxp3.LuciDTRマウス(Suffner et
al,2010)を5XFADマウスと交配させた。Animal Breeding
Center of the Weizmann Institute of Sci
enceが動物を飼育し、維持した。本明細書中で詳述されるすべての実験が、Weiz
mann Institute of ScienceのInstitutional
Animal Care and Use Committee(IACUC)によって
策定された規則に従った。
【0135】
(RNA精製、cDNA合成および定量的リアルタイムPCR解析)
海馬の歯状回(DG)の全RNAを、TRI試薬(Molecular Researc
h Center)を用いて抽出し、RNeasy Kit(Qiagen)を用いて溶
解産物から精製した。脈絡叢の全RNAを、RNA MicroPrep Kit(Zy
mo Research)を用いて抽出した。High Capacity cDNA
Reverse Transcription Kit(Applied Biosys
tems)を用いて、mRNA(1μg)をcDNAに変換した。特定のmRNAの発現
を、蛍光ベースの定量的リアルタイムPCR(RT-qPCR)を用いてアッセイした。
RT-qPCR反応は、Fast-SYBR PCR Master Mix(Appl
ied Biosystems)を用いて行った。定量反応は、検量線法を用いて各サン
プルに対して3つ組で行った。ペプチジルプロリルイソメラーゼA(ppia)を参照(
ハウスキーピング)遺伝子として選択した。増幅サイクルは、95℃5秒、60℃20秒
および72℃15秒であった。アッセイの終わりに、融解曲線を構築することにより、そ
の反応の特異性を評価した。ifn-γおよびppia遺伝子の解析のために、cDNA
を、製造者のプロトコル(PreAmp Master Mix Kit;Applie
d Biosystems)に従って、非ランダムPCRプライマーを用いて14PCR
サイクルで事前に増幅することによって、その後のリアルタイムPCR解析の感度を高め
た。mRNA発現を、製造者の指示書(Applied Biosystems)に従っ
て、TaqMan RT-qPCRを用いて測定した。すべてのRT-qPCR反応を、
StepOneソフトウェアV2.2.2(Applied Biosystems)を
用いて行い、解析した。以下のTaqMan Assays-on-DemandTM
ローブを使用した:Mm02342430_g1(ppia)およびMm0116813
4_m1(ifn-γ)。
【0136】
他のすべての遺伝子について調べるため、以下のプライマーを使用した:
【0137】
ppia
forward 5’-AGCATACAGGTCCTGGCATCTTGT-3’(配
列番号33)および
reverse 5’-CAAAGACCACATGCTTGCCATCCA-3’(配
列番号34);
【0138】
icam1
forward 5’-AGATCACATTCACGGTGCTGGCTA-3’(配
列番号35)および
reverse 5’-AGCTTTGGGATGGTAGCTGGAAGA-3’(配
列番号36);
【0139】
vcam1
forward 5’-TGTGAAGGGATTAACGAGGCTGGA-3’(配
列番号37)および
reverse 5’-CCATGTTTCGGGCACATTTCCACA-3’(配
列番号38);
【0140】
cxcl10
forward 5’-AACTGCATCCATATCGATGAC-3’(配列番号
39)および
reverse 5’-GTGGCAATGATCTCAACAC-3’(配列番号40
);
【0141】
ccl2
forward 5’-CATCCACGTGTTGGCTCA-3’(配列番号41)
および
reverse 5’-GATCATCTTGCTGGTGAATGAGT-3’(配列
番号42);
【0142】
tnf-γ
forward 5’-GCCTCTTCTCATTCCTGCTT-3’(配列番号4
3)
reverse CTCCTCCACTTGGTGGTTTG-3’(配列番号44);
【0143】
il-1β
forward 5’-CCAAAAGATGAAGGGCTGCTT-3’(配列番号
45)および
reverse 5’-TGCTGCTGCGAGATTTGAAG-3’(配列番号4
6);
【0144】
il-12p40
forward 5’-GAAGTTCAACATCAAGAGCA-3’(配列番号4
7)および
reverse 5’-CATAGTCCCTTTGGTCCAG-3’(配列番号48
);
【0145】
il-10
forward 5’-TGAATTCCCTGGGTGAGAAGCTGA-3’(配
列番号49)および
reverse 5’-TGGCCTTGTAGACACCTTGGTCTT-3’(配
列番号50);
【0146】
tgfβ2
forward 5’-AATTGCTGCCTTCGCCCTCTTTAC-3’(配
列番号51)および
reverse 5’-TGTACAGGCTGAGGACTTTGGTGT-3’(配
列番号52);
【0147】
igf-1
forward 5’-CCGGACCAGAGACCCTTTG(配列番号53)およ

reverse 5’-CCTGTGGGCTTGTTGAAGTAAAA-3’(配列
番号54);
【0148】
bdnf
forward 5’-GATGCTCAGCAGTCAAGTGCCTTT-3’(配
列番号55)および
reverse 5’-GACATGTTTGCGGCATCCAGGTAA-3’(配
列番号56);
【0149】
(免疫組織化学)
パラフィン包埋切片にしたマウス(6μm厚)およびヒト(10μm厚)脳において、組
織の処理および免疫組織化学を行った。ヒトICAM-1染色の場合、1次マウス抗IC
AM(1:20 Abcam;ab2213)抗体を使用した。スライドを、3%H2O
2とともに10分間インキュベートし、2次ビオチンコンジュゲート抗マウス抗体を使用
した後、Vectastain ABCキット(Vector Laboratorie
s)を用いてビオチン/アビジン増幅を行った。続いて、3,3’-ジアミノベンジジン
(DAB基質)(Zytomedキット)を適用し;スライドを脱水し、キシレンベース
のマウント液を用いてマウントした。組織染色の場合、マウスをPBSで経心的に灌流し
た後、組織切除および固定を行った。解剖顕微鏡(Stemi DV4;Zeiss)下
で、脳の側脳室、第3脳室および第4脳室からCP組織を単離した。ホールマウントCP
染色の場合、組織を2.5%パラホルムアルデヒド(PFA)で4℃にて1時間固定し、
続いて、0.05%アジ化ナトリウムを含むPBSに移した。染色の前に、解剖した組織
をPBSで洗浄し、室温で1時間ブロッキングした(20%ウマ血清、0.3%Trit
on X-100およびPBS)。1次抗体(2%ウマ血清および0.3%Triton
X-100を含むPBS中)または二次抗体によるホールマウント染色を室温で1時間
行った。各工程の後、PBSで3回洗浄した。組織をスライドに載せ、Immu-mou
nt(9990402、Thermo Scientific製)を用いてマウントし、
カバーガラスで覆った。切片にした脳の染色の場合、先に記載されたような(Baruc
h et al,2013;Kunis et al,2013)2つの異なる組織調製
プロトコル(パラフィン包埋切片またはミクロトームで切片にした浮遊切片)を適用した
。以下の1次抗体を使用した:マウス抗Aβ(1:300,Covance,#SIG-
39320);ウサギ抗GFP(1:100,MBL,#598);ラット抗CD68(
1:300,eBioscience,#14-0681);ラット抗ICAM-1(1
:200,Abcam,#AB2213);ヤギ抗GFP(1:100,Abcam,#
ab6658);ウサギ抗IBA-1(1:300,Wako,#019-19741)
;ヤギ抗IL-10(1:20,R&D systems,#AF519);ラット抗F
oxp3(1:20,eBioscience,#13-5773-80);ウサギ抗C
D3(1:500,Dako,#IS503);;マウス抗ZO-1、マウス抗E-カヘ
ドリン(Cahedrin)およびウサギ抗クローディン-1(すべて1:100,In
vitrogen,#33-9100,#33-4000,#51-9000);ウサギ
抗GFAP(1:200,Dako,#Z0334)。二次抗体には、Cy2/Cy3/
Cy5コンジュゲートロバ抗マウス/ヤギ/ウサギ/ラット抗体(1:200;すべてJ
ackson Immunoresearch製)が含まれた。スライドをHoechs
t核染色(1:4000;Invitrogen Probes)に1分間曝露した。免
疫染色手順では、2つのネガティブコントロールを日常的に使用し、アイソタイプコント
ロール抗体で染色した後、二次抗体で染色するか、または二次抗体のみで染色した。Fo
xp3細胞内染色の場合、パラフィン包埋スライドからの抗原回復を、Retreiva
gen Kit(#550524,#550527;BD PharmingenTM
を用いて行った。顕微鏡解析は、蛍光顕微鏡(E800;Nikon)またはレーザー走
査型共焦点顕微鏡(Carl Zeiss,Inc.)を用いて行った。蛍光顕微鏡には
、デジタルカメラ(DXM 1200F;Nikon)、および20×NA0.50また
は40×NA0.75対物レンズ(Plan Fluor;Nikon)が備え付けられ
ていた。共焦点顕微鏡には、LSM510レーザー走査能(3つのレーザー:Ar488
、HeNe543およびHeNe633)が備わっていた。後固定した組織に対して、取
得ソフトウェア(NIS-Elements,F3[Nikon]またはLSM[Car
l Zeiss,Inc.])を用いて、記録を行った。染色強度の定量の場合、細胞お
よびバックグラウンドの全染色を、ImageJソフトウェア(NIH)を用いて測定し
、特定の染色の強度を、先に記載されたように(Burgess et al,2010
)計算した。Photoshop CS6 13.0(Adobe)を用いて像を切り取
り、マージし、最適化し、Illustrator CS5 15.1(Adobe)を
用いて並べた。
【0150】
(ヒトCPのパラフィン包埋切片)
若年および高齢の死後の非CNS疾患個体ならびにAD患者のヒト脳切片を、適切な同意
および倫理委員会の承認(TW220)を得て、Oxford Brain Bank(
かつてはThomas Willis Oxford Brain Collectio
n(TWOBC)として知られた)から入手した。これらの切片が関わる実験は、Wei
zmann Institute of Science Bioethics Com
mitteeによって承認された。
【0151】
(フローサイトメトリー、サンプル調製および解析)
マウスをPBSで経心的に灌流し、組織を先に記載されたように(Baruch et
al,2013)処理した。脳を解剖し、解剖顕微鏡(Stemi DV4;Zeiss
)下にてPBS中で種々の脳領域を取り出し、gentleMACSTM分離機(dis
sociator)(Miltenyi Biotec)を用いて組織を分離させた。脈
絡叢組織を、脳の側脳室、第3脳室および第4脳室から単離し、400U/mlコラゲナ
ーゼIV型(Worthington Biochemical Corporatio
n)を含むPBS(Ca2+/Mg2+を含む)中、37℃で45分間インキュベートし
、次いで、手作業でピペッティングすることによってホモゲナイズした。脾臓をシリンジ
のプランジャーですりつぶし、ACK(塩化アンモニウムカリウム)溶解緩衝液で処理し
て、赤血球を除去した。すべての場合において、製造者のプロトコルに従ってサンプルを
染色した。すべてのサンプルを70μmナイロンメッシュで濾過し、抗Fc CD16/
32(1:100;BD Biosciences)でブロッキングした。IFN-γの
細胞内染色の場合、細胞をパラ-メトキシアンフェタミン(10ng/ml;Sigma
-Aldrich)およびイオノマイシン(250ng/ml;Sigma-Aldri
ch)とともに6時間インキュベートし、最後の4時間にわたって、ブレフェルジン-A
(10μg/ml;Sigma-Aldrich)を加えた。サイトカインの細胞内標識
を、BD Cytofix/CytopermTMPlus固定/透過処理キット(ca
t.no.555028)を用いて行った。Treg染色の場合、eBioscienc
e FoxP3染色緩衝液セット(cat.no.00-5523-00)を使用した。
以下の蛍光色素で標識されたモノクローナル抗体を、BD Pharmingen、Bi
oLegend、R&D SystemsまたはeBiosciencesから購入し、
製造者のプロトコルに従って使用した:PEまたはAlexa Fluor 450コン
ジュゲート抗CD4;PEコンジュゲート抗CD25;PerCP-Cy5.5コンジュ
ゲート抗CD45;FITCコンジュゲート抗TCRβ;APCコンジュゲート抗IFN
-γ;APCコンジュゲート抗FoxP3;Brilliant-violetコンジュ
ゲート抗CD45。細胞を、FlowJoソフトウェアを用いてLSRII血球計算器(
BD Biosciences)において解析した。各実験において、各組織に対する妥
当なネガティブコントロール群、ポジティブコントロールおよび単一染色サンプルを用い
て、目的の集団を特定し、他の集団を排除した。
【0152】
(BMキメラの調製)
BMキメラを、先に記載されたように(Shechter et al,2009;Sh
echter et al,2013)調製した。手短に言えば、同性のレシピエントマ
ウスを、頭部を遮蔽しながら致死性の全身照射(950rad)にさらした(Shech
ter et al,2009)。次いで、それらのマウスの静脈内に、CXCR1
FP/+ドナー由来の5×10個のBM細胞を注射した。BM移植後、マウスを8~1
0週間放置することにより、造血系の再構成を可能にした後、実験で使用した。血液サン
プルのFACS解析によって、キメラ化のパーセンテージを、循環単球(CD11b
のうちのGFP発現細胞のパーセンテージに従って測定した。この頭部遮蔽モデルでは、
60%のキメラ化の平均値が達成され、CNSに浸潤するGFP骨髄性細胞が、単球由
来のマクロファージであってミクログリアではないCD45high/CD11bhig
(Shechter et al,2013)であると立証された。
【0153】
(モーリス水迷路)
プール(直径1.1m)内の水面の1.5cm下に配置された隠れたプラットフォームを
探す方法を習得させるために、マウスに、4日連続して、1日あたり3回の試行を行わせ
た。水の温度は、21~22℃で維持した。水を粉乳で不透明にした。試験室内において
、水没したプラットフォームの位置の特定を助けるためにマウスにとって利用可能な手が
かりは遠位の視覚的形状および物体だけであった。逃避潜時、すなわち、プラットフォー
ムを探してその上に上がるのに要した時間を最大60秒間、記録した。各マウスをプラッ
トフォーム上に15秒間とどまらせ、次いで、迷路から取り出してホームケージに戻した
。マウスが、60秒以内にプラットフォームを探せなかった場合、そのマウスを手作業で
プラットフォーム上に置き、15秒後にホームケージに戻した。各マウスに対する試行の
間のインターバルは、10分間であった。5日目に、プラットフォームを除去し、マウス
に、利用可能な逃避場所なしで60秒間続く1回の試行を行わせた。6および7日目に、
プラットフォームを、元の訓練の四半分と反対の四半分に置き、1日あたり3セッション
でマウスを再訓練した。Etho Vision V7.1自動追跡システム(Nold
us Information Technology)を用いて、データを記録した。
統計解析を、分散分析(ANOVA)およびボンフェローニのpost-hocテストを
用いて行った。すべてのMWM試験を、消灯期の間の午前10時~午後5時に行った。
【0154】
(放射状アーム水迷路)
先に詳細に記載された(Alamed et al,2006)放射状アーム水迷路(R
AWM)を用いることにより、空間学習および空間記憶を試験した。簡潔には、6本のス
テンレス鋼挿入物をタンク内に置き、中央の開けた領域から放射状に伸びる6本の水泳ア
ームを形成させた。逃避プラットフォームを、1本のアーム(ゴールアーム)の末端の、
直径1.1mのプール内の水面の1.5cm下に配置した。水の温度を21~22℃で維
持した。水を粉乳で不透明にした。試験室内において、水没したプラットフォームの位置
の特定を助けるためにマウスにとって利用可能な手がかりは遠位の視覚的形状および物体
だけであった。ゴールアームの位置は、所与のマウスにおいて一定のままであった。1日
目に、マウスを15回の試行(3時間超、間隔をあける)で訓練し、試行は、見えるプラ
ットフォームと隠れたプラットフォームとを交互に用い、最後の4回の試行は、隠れたプ
ラットフォームだけを用いた。2日目に、隠れたプラットフォームを用いる15回の試行
でマウスを訓練した。間違ったアームに進入したとき、または15秒以内にアームの選択
をしなかったときは、エラーとしてスコア付けした。各試行におけるマウスのアーム進入
エラーの回数または逃避潜時をカウントすることによって、空間学習および空間記憶を測
定した。3回連続した試行の訓練ブロックについて、訓練データをエラーまたは逃避潜時
の平均値として解析した。
【0155】
(GAの投与)
各マウスの皮下に(s.c.)、200μlのPBSに溶解された100μgの総用量の
GA(バッチno.P53640;Teva Pharmaceutical Indu
stries,Petah Tiqva,Israel)を注射した。毎週のGAレジメ
ン(Butovsky et al,2006)または毎日のGA投与(図8および図1
6)に従って、マウスに注射した。各実験に対して示されているように、最後のGA注射
の1週間後または処置の1ヶ月後に、マウスを安楽死させた。
【0156】
(Tregの条件的除去)
ジフテリア毒素(DTx;8ng/g体重;Sigma)を、4日連続して、Foxp3
.LuciDTRマウスの腹腔内に(i.p.)毎日注射した(Suffner et
al,2010)。DTxの効率を血液および脾臓における免疫細胞のフローサイトメト
リー解析によって確認したところ、GFPを発現しているFoxP3CD4Treg
細胞のほぼ完全な(>99%)枯渇が達成された(図4)。
【0157】
(P300の阻害)
マウスにおけるp300の阻害を、先の記載(Liu et al,2013)と同様に
行った。p300i(C646;Tocris Bioscience)をDMSOに溶
解し、1週間にわたって毎日i.p.注射した(8.9mgkg-1-1、i.p.)
。ビヒクルで処置されるマウスにはDMSOを同様に注射した。
【0158】
(ATRA処置)
マウスへのオールトランスレチノイン酸(ATRA)投与を、先の記載(Walsh e
t al,2014)と同様に行った。ATRA(Sigma)をDMSOに溶解し、1
週間にわたって1日おきにi.p.注射した(8mgkg-1-1)。ビヒクルで処置
されるマウスにはDMSOを同様に注射した。
【0159】
(可溶性Aβ(sAβ)タンパク質の単離および定量)
組織の均質化およびsAβタンパク質の抽出を、先に記載されたように(Schmidt
et al,2005)行った。簡潔には、大脳実質を解剖し、急凍し、ホモゲナイズ
するまで-80℃で維持した。タンパク質をサンプルから連続的に抽出することにより、
異なる溶解度のタンパク質を含む別個の画分を得た。サンプルを、250mMのスクロー
ス、20mMのTris塩基、1mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)および1m
Mのエチレングリコール四酢酸(pH7.4)を含む10体積の氷冷組織均質化緩衝液中
で、Dounceホモジナイザーにおいてすりガラス乳棒を用いてホモゲナイズした。6
ストロークの後、ホモジネートを100mM NaCl溶液中の0.4%ジエチルアミン
(DEA)と1:1混合した後、さらに6ストローク行い、次いで、4℃にて135,0
00gで45分間遠心した。上清(細胞外およびサイトゾルのタンパク質を含むDEA可
溶性画分)を回収し、10%の0.5M Tris-HCl(pH6.8)で中和した。
Aβ1-40およびAβ1-42を、商業的に入手可能なキット(それぞれBioleg
end;#SIG-38954および#SIG-38956)を製造者の指示書に従って
使用して、可溶性画分から酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって個別に測定し
た。
【0160】
(Aβプラークの定量)
各脳から、目的の領域(歯状回または大脳皮質)全体にわたる4つの異なる所定の深さか
ら、6μmの冠状切片を回収し、マウス1匹あたり8枚の切片を免疫染色した。陽染され
たピクセルのヒストグラムベースの区分けを、Image-Pro Plusソフトウェ
ア(Media Cybernetics,Bethesda,MD,USA)を用いて
行った。歯状回の領域または皮質V層において、区分けのアルゴリズムを各像に手作業で
適用し、全Aβ免疫染色によって占有された領域のパーセンテージを測定した。プラーク
の数を同じ6μm脳冠状切片から定量し、脳領域1つあたりのプラークの平均数として提
示する。定量の前に、切片をコード化して実験群の同一性を隠し、群の同一性について盲
検の観察者がプラーク量を定量した。
【0161】
(統計解析)
各実験セットを解析するために用いられた具体的な試験を図の説明文に示す。2群間を比
較するために両側スチューデントt検定を用いてデータを解析し、いくつかの群を比較す
るために1元配置分散分析を使用し、続いて帰無仮説が棄却された後(P<0.05)、
群の対ごとの比較のためにNewman-Keulsのpost-hocテストを用いた
。行動試験のデータは、2元配置反復測定分散分析を用いて解析し、追跡の対ごとの比較
のために、ボンフェローニのpost-hocテストを用いた。サンプルサイズは、文献
および過去の経験に基づいて適切な統計的検出力によって選択し、マウスを齢、性別およ
び遺伝子型に従って実験群に割り当てた。研究者は、実験中および結果の評価中、群の同
一性について盲検であった。すべての選択規準および除外規準は、IACUCガイドライ
ンに従って予め決められていた。結果は、平均値±s.e.m.として示される。グラフ
において、y軸のエラーバーは、s.e.m.を表す。統計的計算は、GraphPad
Prismソフトウェア(GraphPad Software,San Diego
,CA)を用いて行った。
実施例1.ADのマウスモデルにおける疾患進行に沿った脈絡叢(CP)ゲートウェイ
活性(gateway activity)
【0162】
本発明者らは、最初に、ADの5XFADトランスジェニックマウスモデル(AD-T
g)において疾患進行に沿ったCP活性を調べた;これらのマウスは、家族性ADに関連
する5つの変異を共発現し、2月齢という早さで大脳のAβ病態およびグリオーシスを発
症する(Oakley et al,2006)。本発明者らは、疾患の病態の進行段階
に沿って、AD-TgマウスのCPが、同齢の野生型(WT)コントロールと比べて、有
意に低いレベルの白血球ホーミングならびにicam1、vcam1、cxcl10およ
びccl2を含む輸送決定因子(trafficking determinants)
を示すこと(図1A)を見出した(これらの輸送決定因子は、急性CNS損傷に応答して
CPによってアップレギュレートされると示され、白血球の経上皮遊走に必要である(K
unis et al,2013;Shechter et al,2013))。イン
テグリンリガンドであるICAM-1の免疫組織化学的染色によって、AD-Tgマウス
のCP上皮によるその発現の低下が確認された(図1b)。さらに、ヒト死後脳における
ICAM-1の染色は、CP上皮においてその加齢関連の減少を示し、これは、本発明者
らの以前の知見(Baruch et al,2014)と一致し、この作用の定量的評
価によって、CNS疾患を有しない高齢個体と比べてAD患者においてさらに減少するこ
とが明らかになった(図2A)。CPによる白血球の輸送決定因子の誘導は、上皮のイン
ターフェロン(IFN)γシグナル伝達に依存するので(Kunis et al,20
13)、本発明者らは、次に、観察された作用が、CPにおけるIFN-γの利用可能性
の喪失を反映し得るかを試験した。細胞内染色のフローサイトメトリーを用いて5XFA
D AD-TgマウスのCPを調べることにより、このコンパートメントにおける有意に
少ない数のIFNγ産生細胞が明らかになり(図2B)、定量的リアルタイムPCR(R
T-qPCR)解析から、AD-TgマウスのCPにおいて、同齢のWTコントロールと
比べてより低いifn-γのmRNA発現レベルが確かめられた(図2C)。
実施例2.Treg媒介性全身免疫抑制とCPゲートウェイ活性とADの病態との間の機
能的関係性
【0163】
制御性T細胞(Treg)は、全身のエフェクター免疫応答の抑制において中心的役割
を果たす(Sakaguchi et al,2008)。本発明者らは、Treg媒介
性の全身免疫抑制が、CPにおけるIFN-γの利用可能性に影響すると想定したので、
ADの病態へのTregの関与に注目した。AD患者ではTregレベルおよび抑制活性
が高いという以前の報告と一致して(Rosenkranz et al,2007;S
aresella et al,2010;Torres et al,2013)、5
XFAD AD-Tgマウスの脾細胞におけるFoxp3Tregの出現率を同齢のW
T同腹仔と比べて評価することにより、疾患進行に沿ってそれらの高いレベルが明らかに
なった(図3A、B)。Treg媒介性の全身免疫抑制とCPゲートウェイ活性とADの
病態との間の機能的関係性を研究するために、本発明者らは、5XFAD AD-Tgマ
ウスをFoxp3-ジフテリア毒素レセプター(DTR)マウスと交雑して、AD-T
g/DTRマウスにおいてジフテリア毒素(DTx)の投与によってFoxp3Tr
egの一過性の条件的インビボ枯渇を可能にした(図4)。Tregの一過性の枯渇は、
DTxで処置されたAD-Tg/DTR同腹仔と比べて、AD-Tg/DTRマウス
のCPによる白血球輸送分子のmRNA発現を増加させた(図5A)。脳実質に対する一
過性のTreg枯渇の長期効果の解析(3週間後)から、浸潤性mo-MΦに相当する(
Shechter et al,2013)CD45high/CD11bhigh骨髄
性細胞およびCD4T細胞の数の増加を含む免疫細胞の脳内蓄積が明らかになった(図
5B)。さらに、Tregの短期および一過性の枯渇は、フローサイトメトリーによって
評価されたとき、脳内に蓄積したCD4T細胞の中でもFoxp3Tregの顕著な
富化をもたらした(図5C、D)。海馬のRT-qPCR解析は、foxp3およびil
10 mRNAの高発現を示した(図5E)。
【0164】
本発明者らは、次に、脳の病態の部位に免疫調節性細胞が蓄積する前のTregの短期
枯渇が、脳機能に対する長期効果をもたらすかを調べた。本発明者らは、海馬グリオーシ
スの低減(図5F)、および炎症促進性サイトカイン(例えば、il-12p40および
tnf-α)の低いmRNA発現レベル(図5G)を観察した。さらに、5XFAD A
D-Tgマウスにおいて頑強なAβプラーク病態を示す2つの脳領域である海馬歯状回お
よび大脳皮質(5層)(Oakley et al,2006)における大脳のAβプラ
ーク量は減少した(図6A、B)。モーリス水迷路(MWM)試験を用いて認知機能に対
する効果を評価することにより、DTxで処置されたAD-Tg/DTR同齢マウスと
比べて、Treg枯渇後のAD-Tg/DTRマウスにおいて空間学習および空間記憶
の有意な改善が明らかになり、WTマウスと同様の成績に達した(図6C~E)。まとめ
ると、これらのデータは、AD-TgマウスにおいてTreg媒介性の全身免疫抑制を一
過性に中断することにより、炎症を消散させる細胞(mo-MΦおよびTregを含む)
の脳内蓄積がもたらされ、その中断の後、神経炎症反応の消散、Aβのクリアランスおよ
び認知機能低下の回復が続くことを実証した。
実施例3.コポリマ-1の毎週投与は、Treg媒介性の全身免疫抑制を減少させ、C
Pゲートウェイ活性を改善し、ADの病態を緩和する。
【0165】
全身免疫抑制とCP機能とADの病態との間の逆相関の原因となる性質をさらに裏付け
るために、本発明者らは次に、免疫調節性化合物であるグラチラマー酢酸塩(GA;コポ
リマ-1またはCopaxone(登録商標)としても知られる)を利用した。酢酸グラ
チラマーは、毎週投与レジメンでADのAPP/PS1マウスモデルにおいて治療効果を
有すると見出された(Butovsky et al,2006);この効果は、疾患病
態の大脳部位へのmo-MΦの動員と機能的に関連した(Butovsky et al
,2007)。ここでは、まず本発明者らは、5XFAD AD-Tgマウスにおける本
発明者らの知見と同様に、APP/PS1 AD-TgマウスにおけるCPもIFN-γ
発現レベルに関して不足しているかを調べた。本発明者らは、APP/PS1 AD-T
gマウスにおいて、CPにおけるIFN-γレベルが、同齢のWTコントロールと比べて
低下していることを見出した(図7)。これらの結果は、APP/PS1マウスにおける
毎週GAの治療効果(Butovsky et al,2006)が、5XFAD AD
-Tgマウスにおいて再現され得るかを試験するように促し、ならびにもしそうであれば
、それが全身のTregおよびmo-MΦ輸送に対するCPの活性化に影響し得るかを試
験するように促した。ゆえに、本発明者らは、4週間にわたって、5XFAD AD-T
gマウスをGAの毎週投与レジメンで処置した(以後、「毎週GA」;図8Aに模式的に
示される)。本発明者らは、毎週GAで処置された5XFAD AD-Tgマウスが、神
経炎症の低減(図8B~D)および認知能力の改善を示し、それは処置後最大2ヶ月続く
図8E~I)ことを見出した。全身免疫およびCPに対する毎週GAの効果をフローサ
イトメトリーによって調べたとき、本発明者らは、脾細胞のFoxp3Tregレベル
の低下(図9A)、および処置された5XFAD AD-TgマウスのCPにおいて、W
Tコントロールで観察されたレベルと同様のレベルに達するIFN-γ産生細胞の増加(
図9B)を見出した。毎週GAで処置されたマウスのCPにおける高レベルのIFN-γ
発現細胞は、白血球輸送分子の上皮発現のアップレギュレートを伴った(図9C)。
【0166】
CNSへの浸潤性mo-MΦの進入を検出するために、本発明者らは、循環中の(緑色
蛍光タンパク質(GFP)で標識された)骨髄性細胞の可視化を可能にする5XFAD
AD-Tg/CXCR1GFP/+骨髄(BM)キメラマウス(頭部保護を用いて作
製された)を使用した(Shechter et al,2009;Shechter
et al,2013)。本発明者らは、毎週GA処置の後に、ビヒクルで処置されたA
D-Tg/CXCR1GFP/+コントロールと比べて、CPおよび隣接する脳室腔へ
のGFPmo-MΦのホーミングが増加することを見出した(図9D~E)。脳実質の
免疫組織化学から、大脳のプラーク形成部位におけるGFPmo-MΦ蓄積の存在が明
らかになり(図9F)、AD-Tg非キメラマウスにおける海馬のフローサイトメトリー
解析による浸潤性の骨髄性細胞の定量から、CD11bhighCD45high発現細
胞の数の増加が示された(図9G、H)。まとめると、これらの結果は、ADの病態の部
位へのmo-MΦの動員と全身のTregレベルの低下とCPのIFN-γ依存的活性化
との間の機能的関連を裏付けた。
実施例4.小分子ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤を用いたTreg活性の
干渉
【0167】
Treg媒介性の全身免疫抑制が、ADの病態と闘う能力を干渉することを示唆した上
記の知見は、癌免疫療法(免疫系が効果的な抗腫瘍応答を開始する能力をTregが妨害
する)におけるこれらの細胞に起因する機能を連想させる(Bos & Rudensk
y,2012;Nishikawa & Sakaguchi,2010)。ゆえに、本
発明者らは、Foxp3Treg細胞の活性を直接干渉する処置が、ADにおいて有益
であるだろうと考えた。本発明者らは、Tregの機能を制御するヒストンアセチルトラ
ンスフェラーゼであるp300の非ペプチド阻害剤である(Liu et al,201
3)p300i(C646(Bowers et al,2010))を試験した;この
阻害剤は、保護的なTエフェクター細胞応答をインタクトなまま放置しつつ、Treg抑
制活性に影響すると示された(Liu et al,2013)。本発明者らは、p30
0iで処置されたマウスが、ビヒクル(DMSO)で処置されたコントロールと比べて、
高レベルの全身性IFN-γ発現細胞を脾臓(図10A)ならびにCP(図10B)にお
いて示すことを見出した。本発明者らは、次に、AD-Tgマウスを1週間にわたってp
300iまたはビヒクルで処置し、3週間後に大脳のAβプラーク量についてそれらの動
物を調べた。免疫組織化学的解析から、p300iで処置されたAD-Tgマウスにおい
て、大脳のAβプラーク量の有意な減少が明らかになった(図10C~E)。本発明者ら
は、1コースの処置後のプラークの病態に対する効果が、3週間を超えて継続し得るかを
試験し、およびもしそうであれば、さらなるコースの処置が長期間の効果に寄与し得るか
も試験した。ゆえに、本発明者らは、単一コースのp300i処置を受けたAD-Tgマ
ウスを、間に1ヶ月のインターバルを含む2コースの処置をこの期間中に受けた同齢群と
比較し、2ヶ月後に調べた(図10Fに模式的に示される)。本発明者らは、大脳のプラ
ーク量の減少が、単一コースの処置の2ヶ月後でさえ明らかであったが、間に1ヶ月のイ
ンターバルを含む2コースの処置を受けたマウスにおいてより強力であったことを見出し
た(図10G)。ADにおけるシナプス可塑性および記憶の障害は、可溶性Aβ1-40
/Aβ1-42(sAβ)レベルの大脳レベルの上昇に関連するので(Shankar
et al,2008)、本発明者らは、単一または反復サイクルのp300i処置後の
sAβレベルも測定した。また、本発明者らは、1コースと2コース(間に1ヶ月のイン
ターバルを含む)の両方が、大脳のsAβの減少において効果的であるが、sAP1-4
に対する効果に関して、この効果が反復コースの後により強いことを見出した(図10
H)。これらの結果は、短期の単一コースの処置が効果的であるが、本発明者らの毎週G
A処置後の知見と同様に、反復コースの処置が長期間の治療効果を維持するために有益で
あり得ることを示唆した。
実施例5.アルツハイマー病におけるPD-1免疫チェックポイント遮断の治療的可能
【0168】
本発明者らは、まず、PD-1阻害経路を標的化することによって、家族性ADに関連
する5つの変異を共発現する5XFAD ADトランスジェニック(AD-Tg)マウス
(Oakley et al,2006)におけるIFN-γ関連の全身免疫が影響され
得るかを試験した。大脳の病態が進行した時点である10月齢のAD-Tgマウスに、P
D-1に対する遮断抗体(抗PD-1)またはIgGコントロール抗体の腹腔内(i.p
.)注射を2回、1および4日目に投与し、次いで、7日目に調べた。フローサイトメト
リー解析から、PD-1経路の遮断によって、IFN-γ産生CD4T脾細胞の高い出
現率がもたらされることが明らかになった(図11A、B)。
【表3】
【0169】
本発明者らは、次に、この全身免疫応答がCP活性に影響するかを調べた。CPのゲノ
ムワイドRNA配列決定(示さず;完全解析は、実施例5の表題を有する本発明者らによ
る報告に開示され、要請があれば本発明者らから入手することができる)は、IFN-γ
に対する応答に関連する発現プロファイルを示し(図11Dおよび表3)、リアルタイム
定量的PCR(RT-qPCR)は、IgGで処置されたまたは処置されていないAD-
Tgコントロールと比べたとき、CPにおけるIFN-γのmRNAレベルの上昇を立証
した(図11C)。これらの知見から、PD-1遮断後の全身性のおよびCP組織特異的
なIFN-γ免疫応答が確かめられ、次に疾患病態に対する効果を試験するように促され
た。
【0170】
ADの病態に対するPD-1遮断の機能的影響を調べるために、本発明者らは、10月
齢のAD-Tgマウスを抗PD-1抗体またはIgGコントロール抗体で処置し、放射状
アーム水迷路(RAWM)タスクを用いて空間学習および空間記憶の能力に対する効果を
評価した。
【0171】
抗PD1で処置されたAD-Tgマウスは、処置(3日間のインターバルを含む2回の
i.p.注射)の1ヶ月後に、IgGで処置されたまたは処置されていない同齢のコント
ロールと比べて認知機能の有意な改善を示し、同齢のWTマウスと同様の認知レベルに達
した(図12A)。本発明者らは、次に、AD-Tgマウスの認知能力に対するPD-1
遮断の恩恵が1ヶ月を超えて継続するか、およびさらなる治療セッションが有益であるか
を試験した。本発明者らは、AD-Tgマウスを10月齢において(「1セッション」)
または10月齢と11月齢の両方において(「2セッション」)抗PD-1で処置し、1
2月齢において認知能力に対する結果を調べた(図12Bに模式的に示す)。コントロー
ル群には、WTマウス、処置されていないAD-Tgマウス、および2セッションのIg
G処置を受けたAD-Tgマウスが含まれた。本発明者らは、単一セッションの抗PD-
1投与が、処置の1ヶ月後に空間学習および空間記憶に対して有益な効果を及ぼすが(図
12A)、単一セッションの処置を受け、2ヶ月後に試験されたマウスでは有意な効果を
検出できなかった(図12B)ことを見出した。対照的に、2セッションの抗PD-1を
1ヶ月のインターバルで受けたAD-Tgマウスは、2ヶ月の時間枠の終わりに、WTマ
ウスと同様の認知能力を示した(図12B)。
【0172】
本発明者らは、PD-1遮断が、大脳のAβプラーク量およびグリオーシスによって現れ
るADの病態に影響するかを調べた。抗PD-1またはIgGを1または2セッションで
受けたAD-Tgマウスの脳を、Aβおよびグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)に
対する免疫組織化学によって調べた。本発明者らは、大脳のAβプラーク量が、海馬歯状
回(図13A、B)、および大脳皮質(5層)(図13A、C)において減少することを
見出した(これらの2つの脳領域は、5XFADマウスにおいて確固としたAβプラーク
の病態を示す(Oakley et al,2006))。Aβクリアランスに対する効
果は、単一セッションの抗PD-1投与後に明らかであり、2セッション後にさらに強か
った。GFAP免疫染色の定量的解析は、IgGで処置されたコントロールと比べて、1
セッションのPD-1遮断で処置されたAD-Tgマウスと2セッションのPD-1遮断
で処置されたAD-Tgマウスの両方において、海馬アストログリオーシスの低減を示し
た(図13A、D)。
投与量および投与頻度の影響を調べるために、雌5XFAD ADトランスジェニック
マウス(6ヶ月の平均コホート齢)を、抗PD-1特異的抗体(IgG2a抗マウスPD
-1)またはIgGコントロール(ラットIgG2a)で処置した。抗PD-1で処置さ
れたマウスには、実験の1日目に500ugの抗体の注射を1回行うか、または250u
gの注射を2回、注射の間に3日間のインターバルを空けて行った。同齢の野生型(WT
)マウスをさらなるコントロール群として用いた。抗PD-1で処置された5XFADマ
ウス(1回の注射(n=7)または2回の注射(n=11))、IgG2aで処置された
5XFADマウス(n=10)およびWT(n=14)コントロールの空間学習および空
間記憶の成績に対する処置の効果を、7月齢において放射状アーム水迷路(RAWM)タ
スクを用いて評価した(図14)。黒矢印は、処置の時点を示し、イラストは、認知試験
の時点を示している。反復測定の結果を、2元配置分散分析およびダネットの事後検定を
用いて解析した。エラーバーは、平均値±s.e.m.を表している;P<0.05、
**P<0.01、***P<0.001、抗PD-1処置(1回の注射)対IgG処置
コントロール。処置(3日間のインターバルを含む2回のi.p.注射)の1ヶ月後に、
抗PD1で処置されたAD-Tgマウスは、IgGで処置されたまたは処置されていない
同齢のコントロールと比べて、認知機能の有意な改善を示し、同齢のWTマウスと同様の
認知レベルに達した(図14)。
【0173】
最後に、雄5XFAD ADトランスジェニックマウスを、反復処置セッションにおいて
1ヶ月に1回、抗PD-1特異的抗体(IgG2a抗マウスPD-1)またはIgGコン
トロール(ラットIgG2a)で処置した。1回目の注射は、3月齢において、2回目の
注射は、4月齢において、および3回目の注射は、5月齢において行った。投与量は、実
験計画のスキーム(図15A)に示されている。同齢の野生型(WT)マウスをさらなる
コントロール群として用いた。空間学習および空間記憶の成績に対する処置の効果を、2
つの異なる時点、すなわち5月齢(図15B)および6月齢(図15C)において、放射
状アーム水迷路(RAWM)タスクを用いて評価した。黒矢印は、処置の時点を示し、イ
ラストは、認知試験の時点を示す。抗PD-1で処置された5XFADマウス(n=7)
、IgG2aで処置された5XFADマウス(n=9)およびWT(n=8)コントロー
ルのRAWMの成績である。反復測定は2元配置分散分析およびDunnetのpost
-testで解析を行った。エラーバーは、平均値±s.e.m.を表している;P<
0.05、**P<0.01、***P<0.001、抗PD-1で処置されたマウス対
IgGで処置されたコントロール。5月齢において、コントロールIgGで処置されたマ
ウスは、空間学習/記憶の技能を完全に失っていなかったので、2日目の最後の試験にお
いていくらかの学習を示した(図15B)のに対して、6月齢では、疾患の進行が観察さ
れ、機能の成績がさらに低下した(図15C、D)。図15Dは、IgGで処置された5
~6月齢のマウスにおける低下を示しているが、抗PD-1抗体で処置された群は、学習
能力を保持した。これらの知見は、PD-1遮断による反復セッションの処置が、疾患の
進行段階の5XFADマウスに対して行われたときに疾患進行を逆転させることだけでな
く、認知機能低下前の若齢において処置を開始したときに疾患の発症を遅延させることも
できたことを実証する(図15B~D)。
【0174】
ADでは、ニューロンの喪失およびシナプス不全が空間学習/記憶の技能の障害と最も
密接に相関すると報告された。5XFADトランスジェニックマウスは、著しいニューロ
ンの喪失を示すADの数少ない動物モデルの1つであり、その著しいニューロンの喪失は
、6月齢のこれらのマウスにおいて明らかになっている。ゆえに、本発明者らは、最後の
行動試験の後に、上に記載された実験に従ってマウスにおけるニューロンの生存を評価し
た(図15A~D)。本発明者らは、このADのマウスモデルにおいてニューロンの喪失
を実証するために以前使用された鉤状回に焦点を当てて、これらのマウスの脳におけるニ
ューロンの生存を解析した。免疫組織化学的解析から、IgGで処置された群と比べて、
抗PD-1抗体で処置された5XFADマウスの鉤状回において、より多数のNeu-N
細胞が明らかになった(図15E、F)。
【0175】
ADにおけるニューロン喪失の基礎をなす分子機構は、ニューロンのカスパーゼ-3の
活性化と関係している。ゆえに、本発明者らは、抗PD-1で処置した後のニューロンの
レスキューが、Neu-N細胞における活性化されたカスパーゼ-3のレベルの低下と
関連するかを評価した。本発明者らは、抗PD-1抗体で処置されたマウスが、IgGで
処置された群と比べて、Neu-Nニューロンにおいて、活性化されたカスパーゼ-3
の免疫反応性の減少を示したことを見出し(図15G、H)、さらに、ニューロンの生存
に対する抗PD-1抗体処置の効果を実証した。
実施例6.アルツハイマー病におけるTIM-3免疫チェックポイント遮断の治療的可
能性
【0176】
ADの病態に対するTIM-3遮断の機能的影響を調べるために、本発明者らは、6月
齢の雌5XFAD AD-Tgマウスを抗TIM-3特異的抗体(抗マウスTIM-3)
またはIgGコントロール(ラットIgG2a抗体)で処置した。投与量は、実験計画の
スキームに示されている(図16)。この処置は、抗体の2回のi.p.注射(それぞれ
250μg、注射の間に3日間の間隔を空ける)という一貫したものだった。同齢の野生
型(WT)マウスをさらなるコントロール群として使用した。抗TIM-3で処置された
5XFADマウス(n=9)、IgGで処置された(n=6)5XFADマウスおよびW
T(n=7)コントロールの空間学習および空間記憶の成績に対する処置の効果を、7月
齢において放射状アーム水迷路(RAWM)タスクを用いて評価した(図16)。黒矢印
は、処置の時点を示し、イラストは、認知試験の時点を示している。反復測定の結果を、
2元配置分散分析およびダネットの事後検定を用いて解析した。エラーバーは、平均値±
s.e.m.を表している;P<0.05、**P<0.01、***P<0.001
、抗TIM-3処置 対 IgG処置コントロール。処置の1ヶ月後、抗TIM-3で処
置されたAD-Tgマウスは、IgGで処置された5XFADマウスまたは同齢のWTコ
ントロールと比べて、認知能力の有意な改善を示した(図16)。
実施例7.アルツハイマー病におけるPD-L1免疫チェックポイント遮断の治療的可
能性および抗PD-1処置との比較
【0177】
PD-1は、数多くの免疫細胞、とりわけエフェクターCD4T細胞によって発現され
る阻害性レセプターであり、それに対して、そのリガンドであるPD-L1は、樹状細胞
、上皮細胞および調節性T細胞によって発現される。したがって、本発明者らは、PD-
L1の遮断が、PD-1の遮断の効果と同様の効果を及ぼし得るかを調べた(図17A
。この目的のために、まず、6月齢の5XFADマウスを、単回投与の抗PD-L1抗体
(マウス1匹あたり0.1mg、0.5mgまたは1.5mg)を腹腔内に注射して処置
した。1ヶ月後の7月齢においてRAWMを用いてマウスを評価した。0.1mgの抗P
D-L1は、IgGアイソタイプコントロールによる処置と比べて、認知能力に対してい
かなる効果も及ぼさなかったが、0.5mgと1.5mgの両方の用量は、RAWMタス
クの成績に対して同様の有益な効果を及ぼした(図17B)。次に、本発明者らは、認知
能力および続いて大脳の病態に対する0.5mgの抗PD-1抗体の単回注射の効果を0
.5mgの抗PD-L1抗体の単回注射の効果と比較した(図17C~J)。RAWMタ
スクを用いて、本発明者らは、抗PD-L1抗体による処置が、5XFADマウスにおけ
る機能的認知の結果の改善において抗PD-1抗体と同程度に効果的であることを見出し
た(図17C)。行動試験後のこれらのマウスの脳の免疫組織化学的解析は、IgGで処
置された群と比べて抗PD-1処置群または抗PD-L1処置群の両方において、海馬(
HC)および皮質におけるプラーク量(プラークの数およびプラークが覆う面積によって
測定した)、ならびにグリオーシス(グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)の免疫反
応性によって測定した)の同様の減少を明らかにした(図17D)。本発明者らは、抗P
D-1または抗PD-L1抗体で処置されたマウスの脳において、シナプス前活性のマー
カーであるシナプトフィジンに特異的な、より高レベルの免疫反応性も観察したことから
、より良好なシナプスの保存が示唆された(図17H、I)。本発明者らは、処置された
5XFADマウスの海馬におけるil-12p40およびil-10のレベルをリアルタ
イム(RT)-qPCRによって解析した。結果は、IgGで処置された5XFAD動物
と比べたときのil-12p40/il-10比の低下によって明らかになるように、抗
PD-1または抗PD-L1で処置されたマウスの海馬において抗炎症活性に対する偏り
を示した(図17J)。抗PD-1および抗PD-L1に対するアイソタイプ一致コント
ロール抗体が、それぞれIgG2aおよびIgG2bであることに注意すべきである。し
かしながら、本発明者らのすべての行動研究において、それらは、同様の結果をもたらし
たので、これらの2つのコントロール群は、本明細書中に提示される最終的な解析におい
て組み合わされた。
【0178】
PD-L1は、活性化された免疫細胞(例えば、T細胞、B細胞、マクロファージ、樹
状細胞およびミクログリア)ならびに非免疫細胞(例えば、内皮細胞および上皮細胞)に
よって発現される。したがって、本発明者らは、CP上皮によるPD-L1の発現が、C
P内のPD-L1を発現している上皮細胞とのコミュニケーションにおいて、PD-1を
発現するIFN-γ産生T細胞の活性を低下させることによってCNSへの白血球の輸送
のダウンレギュレーションに寄与し得ると予想した。免疫組織化学的解析は、若齢マウス
よりも高齢マウスにおいて、CP上皮が有意に高いレベルのPD-L1を発現したことを
示す(図18)。
実施例8.アルツハイマー病における免疫チェックポイント遮断の治療的可能性
【0179】
免疫チェックポイントの遮断が、ADの病態を弱め得るかを試験するために、AD-T
gマウスを6~10月齢において以下の抗チェックポイント抗体のうちの1つで処置する
:抗ICOS、抗B7RP1、抗VISTA、抗CD40、抗CD40L、抗CD80、
抗CD86、抗B7-H3、抗B7-H4、B7-H7、抗BTLA、抗HVEM、抗C
D137、抗CD137L、抗OX40L、抗CD-27、抗CD70、抗STING、
抗TIGIT、または抗GITR抗体。いくつかのマウスを、ポジティブコントロールと
して抗PD-1抗体で、ネガティブコントロールとしてIgGコントロールで、または抗
PD1と上で述べた他の抗チェックポイント抗体のうちの1つとの併用で処置する。放射
状アーム水迷路(RAWM)タスクを用いて空間学習および空間記憶の能力に対する処置
の効果、Aβの免疫組織化学によるAβプラーク量およびグリア線維性酸性タンパク質(
GFAP)の免疫組織化学による海馬アストログリオーシスを、処置の1ヶ月後に測定す
る。
【0180】
抗体で処置されたマウスは、IgGで処置されたおよび処置されていないAD-Tgマ
ウスと比較して有意な認知機能改善、ならびに大脳のプラーク量の有意な減少を示すと予
想される。
実施例9.アルツハイマー病におけるCTLA-4免疫チェックポイント遮断との併用
でのPD-1の治療的可能性
【0181】
10月齢の5XFADアルツハイマー病(AD)トランスジェニック(Tg)マウスに
、250μgの抗PD1抗体(RMP1-14;#BE0146;Bioxcell L
ifesciences Pvt.LTD.)および250μgの抗CTLA-4抗体(
InVivoMAb抗mCD152;#BE0131;Bioxcell Lifesc
iences Pvt.LTD.)またはコントロールIgG抗体(IgG2a、#BE
0089またはポリクローナルシリアンハムスターIgG、#BE0087;Bioxc
ell Lifesciences Pvt.LTD.)を実験の1日目および4日目に
i.p.注射し、3週間後に、上に記載されたような放射状アーム水迷路(RAWM)空
間学習および空間記憶タスクによって認知能力について調べる。
【0182】
一部のマウスには、3週間のインターバルセッションとともに、さらなる処置セッショ
ンを行う。コントロール群は、IgGで処置されるかまたは処置されず、すべての群のマ
ウスを3週間後に認知能力について試験する。
【0183】
抗体の組み合わせで処置されたマウスは、IgGで処置されたマウスおよび非処置のA
D-Tgマウスと比較して有意な認知の改善を示し、大脳のプラーク量の有意な減少を示
すと予想される。
実施例10.PTSD病態における免疫チェックポイント遮断アプローチの治療的可能
【0184】
ひどくストレスの多い状態または慢性ストレスは、心的外傷後ストレス障害(PTSD
)およびうつ病をもたらし得る。本発明者らは、マウスが、過剰に用心深い(hyper
vigilant)行動、注意障害、リスク評価の増加および睡眠不足を示す生理学的P
TSD様動物モデル(Lebow et al,2012)を採用した。PTSD誘導の
この実験モデルでは、マウスを、逆転した昼/夜サイクルに10日間慣らし、「PTSD
誘導」と称される2エピソードの電気ショック(外傷およびトリガー)を与え、外傷後の
種々の時点において評価する。外傷性事象の後、マウスに、免疫チェックポイントを遮断
する前記化合物を注射する。以下のレジメンのうちの1つに従って、マウスを処置する:
【0185】
マウスを、以下の抗チェックポイント抗体のうちの1つで処置する:抗ICOS、抗B
7RP1、抗VISTA、抗CD40、抗CD40L、抗CD80、抗CD86、抗B7
-H3、抗B7-H4、B7-H7、抗BTLA、抗HVEM、抗CD137、抗CD1
37L、抗OX40L、抗CD-27、抗CD70、抗STING、抗GITRもしくは
抗TIGIT抗体のみまたは抗CTLA-4抗体との併用。いくつかのマウスを、ポジテ
ィブコントロールとして抗PD-1抗体で、ネガティブコントロールとしてIgGコント
ロールで、または抗PD1と上で述べた他の抗チェックポイント抗体のうちの1つとの併
用で処置する。
【0186】
いくつかのマウスに、適切なインターバルセッションを含むさらなる処置セッションを
行う。
【0187】
(Lebow et al,2012)に記載されている暗い/明るい迷路または他の
行動タスクにおいて探索およびリスク評価に費やした時間によって評価されるとき、処置
を受けたマウスは、この実験モデルにおいてPTSDに関連する不安行動を示さないと予
想される。
実施例11.パーキンソン病の病態における免疫チェックポイント遮断アプローチの治
療的可能性
【0188】
パーキンソン病(PD)トランスジェニック(Tg)マウスまたはPDのMPTP誘発
マウスモデルをこれらの実験において使用する。それらのマウスを、以下のレジメンのう
ちの1つに従って、疾患の進行段階において処置する:
【0189】
PD-Tgマウスを以下の抗チェックポイント抗体のうちの1つで処置する:抗ICO
S、抗B7RP1、抗VISTA、抗CD40、抗CD40L、抗CD80、抗CD86
、抗B7-H3、抗B7-H4、B7-H7、抗BTLA、抗HVEM、抗CD137、
抗CD137L、抗OX40L、抗CD-27、抗CD70、抗STING、抗GITR
もしくは抗TIGIT抗体のみまたは抗CTLA-4抗体との併用。いくつかのマウスを
、ポジティブコントロールとして抗PD-1抗体で、ネガティブコントロールとしてIg
Gコントロールで、または抗PD1と上で述べた他の抗チェックポイント抗体のうちの1
つとの併用で処置する。
【0190】
運動神経機能を、例えば、回転するロッド上にマウスが留まる能力を評価するロータロ
ッド能力試験を用いて、評価する。
【0191】
1処置セッションで処置されたPD-Tgマウスは、IgGで処置されたもしくはビヒ
クルで処置されたコントロール群または処置されていない群と比べて、有意に改善された
運動能力を示すと予想される。2コースの治療を受け、適切なインターバルセッション後
に調べられたPD-Tgマウスは、長期間の治療効果を示すと予想される。この治療効果
を維持するために、マウスを、各処置セッション間に適切な非処置のインターバルセッシ
ョンを含む有効な処置セッションに供する。
実施例12.ハンチントン病の病態におけるCTLA-4と組み合わせたPD-1の免
疫チェックポイント遮断の治療的可能性
【0192】
これらの実験において用いられるモデルは、ハンチントン病(HD)R6/2トランス
ジェニックマウス(Tg)試験システムであり得る。R6/2トランスジェニックマウス
は、疾患の進行段階において、複数のCAGリピートマウスの挿入を含む変異したヒトハ
ンチンチン遺伝子を過剰発現する。これらのマウスは、5~6週齢という早さで進行性の
行動運動障害を示し始め、10~13週において成熟前に死亡する。これらの症状には、
低体重、抱き締め行動(clasping)、振戦および痙攣が含まれる。
【0193】
45日齢になったとき、以下のレジメンのうちの1つに従って、マウスを処置する:
【0194】
マウスを以下の抗チェックポイント抗体のうちの1つで処置する:抗ICOS、抗B7
RP1、抗VISTA、抗CD40、抗CD40L、抗CD80、抗CD86、抗B7-
H3、抗B7-H4、B7-H7、抗BTLA、抗HVEM、抗CD137、抗CD13
7L、抗OX40L、抗CD-27、抗CD70、抗STING、抗TIGITもしくは
抗GITR抗体のみまたは抗CTLA-4抗体との併用。いくつかのマウスを、ポジティ
ブコントロールとして抗PD-1抗体で、ネガティブコントロールとしてIgGコントロ
ールで、または抗PD1と上で述べた他の抗チェックポイント抗体のうちの1つとの併用
で処置する。
【0195】
運動神経機能を、例えば、回転するロッド上にマウスが留まる能力を評価するロータロ
ッド能力試験を用いて、評価する。
【0196】
1処置セッションで処置されたHD-Tgマウスは、IgGで処置されたもしくはビヒ
クルで処置されたコントロール群または処置されていない群と比べて、有意に改善された
運動能力を示すと予想される。2コースの治療を受け受け、適切なインターバルセッショ
ン後に調べられたHD-Tgマウスは、長期間の治療効果を示すと予想される。この治療
効果を維持するために、マウスを、各処置セッション間に適切な非処置のインターバルセ
ッションを含む有効な処置セッションに供する。
実施例13.萎縮性側索硬化症の病態における免疫チェックポイント遮断アプローチの
治療的可能性
【0197】
この実験において用いられるモデルは、Gly93→Ala(G93A)遺伝子を含む
欠損ヒト変異体SOD1対立遺伝子を過剰発現するトランスジェニックマウス(B6SJ
L-TgN(SOD1-G93A)1Gur(本明細書中の「ALSマウス」)であり得
る。このモデルは、運動ニューロン疾患を発症するので、ALSを試験するために認めら
れた動物モデルである。
【0198】
75日齢になったとき、以下のレジメンのうちの1つに従って、それらのマウスを処置
する:
【0199】
マウスを以下の抗チェックポイント抗体のうちの1つで処置する:抗ICOS、抗B7
RP1、抗VISTA、抗CD40、抗CD40L、抗CD80、抗CD86、抗B7-
H3、抗B7-H4、B7-H7、抗BTLA、抗HVEM、抗CD137、抗CD13
7L、抗OX40L、抗CD-27、抗CD70、抗STING、抗GITRもしくは抗
TIGIT抗体のみまたは抗CTLA-4抗体との併用。いくつかのマウスを、ポジティ
ブコントロールとして抗PD-1抗体で、ネガティブコントロールとしてIgGコントロ
ールで、または抗PD1と上で述べた他の抗チェックポイント抗体のうちの1つとの併用
で処置する。
【0200】
運動神経機能を、例えば、回転するロッド上にマウスが留まる能力を評価するロータロ
ッド能力試験を用いて、評価するか、またはマウスに、下端に小さいループを有する鉛直
方向のワイヤ(直径2mm)を掴ませて、しがみつかせる。鉛直方向のワイヤは、マウス
がワイヤに掴まるために前肢と後肢の両方を使用させる。そのワイヤを24rpmの鉛直
方向の円運動(円の半径は10cm)で維持する。マウスがワイヤを放さずにいることが
できる時間をタイマーで記録する。
【0201】
1処置セッションで処置されたALSマウスは、IgGで処置されたもしくはビヒクル
で処置されたコントロール群または処置されていない群と比べて、運動能力の有意な改善
を示すと予想される。2コースの治療を受け受け、適切なインターバルセッション後に調
べられたALSマウスは、長期間の治療効果を示すと予想される。この治療効果を維持す
るために、マウスを、各処置セッション間に適切な非処置のインターバルセッションを含
む有効な処置セッションに供する。
実施例14.最小および最大用量範囲を決定する用量効果実験ならびに処置レジメンお
よびその持続性の治療効果を明らかにする実験
【0202】
本発明者らは、PD-1遮断を利用する単回処置セッションが、プラーク量の有意な減
少、および処置(試験された最後の時点)後少なくとも2ヶ月間続く認知機能の改善をも
たらすことをすでに示した。ここで、本発明者らは、5XFAD ADトランスジェニッ
クマウスに投与されるさらなる2用量を用いる用量反応研究を説明する。読み取る情報は
、投与の1、2および3ヶ月後のアミロイドプラークの量であり得る。研究群は、1)非
処置の5XFADマウス;2)500μgのコントロール抗PD-1(RMP1-14;
#BE0146;Bioxcell Lifesciences Pvt.LTD.)の
1回の注射を受ける5XFADマウス;3)250μgのコントロール抗PD-1(RM
P1-14;#BE0146;Bioxcell Lifesciences Pvt.
LTD.)の1回の注射を受ける5XFADマウス;4)100μgのコントロール抗P
D-1(RMP1-14;#BE0146;Bioxcell Lifescience
s Pvt.LTD.)の1回の注射を受ける5XFADマウス;および5)500μg
のコントロールIgG(IgG2a;#BE0089;Bioxcell Lifesc
iences Pvt.LTD.)の1回の注射を受ける5XFADマウスを含み得る。
それらのマウスのすべてを実験の開始時に処置し、各群のマウスを、処置開始の1ヶ月後
、2ヶ月後および3ヶ月後の間隔で屠殺し、脳を調べる。
【0203】
抗PD-1抗体で処置されたマウスは、非処置のAD-Tgマウスまたはコントロール
IgGで処置されたマウスと比較して、脳内のアミロイドベータプラーク量の有意な減少
を示すと予想される。
【0204】
最初の処置の1ヶ月後の抗PD-1によるさらなる処置セッションは、5XFAD A
D-Tgマウスにおいて認知能力の改善に対して効果を維持すると本発明者らによって見
出された(実施例5)。これらの知見は、長期間にわたって有効であるために、処置セッ
ションの反復が必要であることを示唆している。ここで、本発明者らは、治療の持続性の
効果を維持するために反復注射を用いる研究を説明する。
【0205】
5XFAD AD-Tgマウスに、先の研究結果に従って決定される投与量で薬物を注
射する。マウスに注射し、研究期間中および研究期間後に放射状アーム水迷路の学習およ
び記憶タスクを用いて認知能力をモニターする。アミロイドプラークの量について脳の組
織学的検査も行う。
【0206】
異なるマウス群に、2、3または4週間の間隔の非処置を用いて、単回の注射(または
実施例5に記載されたように3日空けて2回の注射)を繰り返し注射する(表4)。それ
らのマウスを、最初の処置の1、2または3ヶ月後に、上に記載されたようにモニターす
る。
【表4】
実施例15.RCSラットにおける抗PD-1モノクローナル抗体の全身投与は網膜変
性を減弱する
【0207】
この実験の目的は、抗PD1抗体の全身投与が、網膜変性疾患の動物モデルにおいて、
外顆粒層の変性を減弱するかを判定することであった。
【0208】
非滲出型AMDおよび網膜色素変性症ならびに他の網膜変性疾患および網膜変性状態の
一般に認められた動物モデルであるRCSラットは、3月齢までに網膜変性および完全失
明をもたらす、MerTKタンパク質をコードする遺伝子に欠失変異を有する。網膜の外
顆粒層(ONL)の厚さの有意かつ急速な悪化が、4週齢から観察される。ゆえに、この
モデルにおけるONLの厚さの保存は、科学文献では、視力の保存と直接相関すると考え
られている。
【0209】
4週齢のRCSラットの腹腔内に(IP)、抗PD1モノクローナル抗体(動物1匹あ
たり合計760μg;n=10)または同じ濃度の好適なIgGコントロール(IgG2
a)(n=10)を注射した。さらなる群のRCSラットを処置せず放置した(n=4)
。6週齢である処置の2週間後に、動物を屠殺し、眼を切除し、それぞれ眼の網膜のON
L層の厚さを、H&E染色を用いる組織学的解析によって測定した。網膜の長さ全体にわ
たってONLの厚さを測定し、データを水平方向にプロットして、網膜の任意の領域にお
ける処置の効果の確認を可能にするマップを作成することによって、処置の有効性を判定
した。
【0210】
各個別の眼が独立したデータセットとして機能する、処置されたすべての動物のONL
厚さの平均を解析したところ、6週齢(処置の2週間後)において、視神経乳頭のすぐ近
くの網膜の中央領域におけるONLが、IgG処置と非処置コントロールの両方と比べて
、抗PD1処置動物において有意に厚かったことが示された(図19A)。
【0211】
処置応答性動物のみにおいて、その効果の大きさを評価するために、動物を「陽性応答
動物」として定義するための閾値を、IgGコントロール群の網膜中央の厚さの平均値よ
り2標準誤差高い値に等しい値として設定した。この設定された閾値に基づくと、抗PD
1群における解析された20個のうち13個の眼(65%)が、陽性応答者として特徴づ
けられた。それに対して、IgG処置群では、解析された20個のうちたった1個(5%
)の眼しか、陽性反応者として特徴づけられなかった;有意差(カイ二乗=15.82、
P=0.00007)。この処置群の抗PD1に正に反応するこの13個の眼だけに注目
すると、網膜の中央領域の厚さが、コントロール眼のそれの1.5~2倍であることが示
された。さらに、網膜中央のさらに広い領域が、コントロール群と比べて有意に厚かった
図19B)。興味深いことに、この抗体は、全身投与されたので、両眼に対して同様の
レベルで到達し、作用すると予想されるが、個々の動物の2つの眼の間に処置に対する応
答性の違いが、抗PD-1で処置された動物のうち4匹において観察された。
実施例16.RCSラットの硝子体に直接、抗PD-1モノクローナル抗体を局所投与
すると網膜変性が減弱する
【0212】
この実験の目的は、抗PD1抗体を眼の硝子体に直接局所投与することが、網膜変性疾
患の動物モデルにおいて、外顆粒層の変性を減弱するかを判定することであった。
【0213】
4週齢のRCSラットに、抗PD1モノクローナル抗体(n=6)または好適なIgG
コントロール(動物1匹あたり50μg)を注射した。各動物の片眼の硝子体に直接注射
を行い、反対側の眼は、処置せず放置した。6週齢である処置の2週間後に、動物を屠殺
し、眼を切除し、それぞれ眼の網膜のONL層の厚さを、H&E染色を用いる組織学的解
析によって測定した。網膜の長さ全体にわたってONLの厚さを測定し、データを水平方
向にプロットして、網膜の任意の領域における処置の効果の確認を可能にするマップを作
成することによって、処置の有効性を判定した。
【0214】
処置の2週間後に動物のONL厚さの平均を解析したところ、抗PD1で処置された群
において、処置された眼の網膜のいくつかの区分において、処置されていない反対側の眼
と比べてONLが有意に厚かったことが示された(図20A)。このような効果は、Ig
Gで処置された動物では見られなかった(図20B)。
実施例17.PD-1またはPD-L1モノクローナル抗体の硝子体内注射による局所
的なPD-1の遮断は網膜変性を減弱する
【0215】
抗PD-L1モノクローナル抗体もしくは抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L
1と抗PD-1モノクローナル抗体との併用、または抗原特異的可変領域を有しない好適
なIgGフラグメントを、4週齢のRCSラットの硝子体に直接注射する。その後の8週
間にわたって、視覚的刺激に応答する動物の視覚機能の評価を行う。重要なことには、各
動物の片方の眼だけが処置を受けるのに対して、反対側の眼は、処置されず放置され、さ
らなるコントロールとして働く。さらに、この実験全体にわたって、各処置群からの指定
の群のRCSラットを、ニューロンの生存および局所免疫応答に関する網膜に対する処置
の効果、ならびに白血球輸送分子および免疫チェックポイントリガンドの発現に関する網
膜上皮細胞に対する効果の定量化および定性化(qualifying)を目指す解析に
供する。硝子体内注射によるPD-1/PD-L1経路の局所的な遮断は、網膜変性の減
弱、免疫の調節および視覚機能の保存をもたらすと予想される。
実施例18.タウの病態のマウスモデルにおけるPD-1/PD-L1経路の標的化は
脳実質への単球由来マクロファージの動員を増強する
【0216】
免疫チェックポイント遮断を用いる処置は、全身の免疫細胞を直接標的化するので、本
発明者らは、その有効性が、ADに関連する特異的な神経病理学的特徴に限定されないだ
ろうと仮定した。PD-1/PD-L1経路処置を標的化することが、異なる疾患病因を
刺激するADの他のモデルにおいて有効であり得るかを試験するために、本発明者らは、
前頭側頭型認知症に関連するヒト-タウ遺伝子の2つの変異(K257T/P301S;
二重変異体、DM-hTAU)を発現するADのマウスモデルを使用した。これらのマウ
スは、アルツハイマー病(AD)および他の神経変性疾患を含む広範囲のタウオパチーに
特徴的な神経原線維変化(NTF)の病態を発症する。これらのマウスにおける病理学的
特徴としては、失認、神経炎症、グリア細胞の活性化、および脳内のタウタンパク質のリ
ン酸化が挙げられる。
【0217】
本発明者らは、以前に、5XFADマウスにおいて全身免疫抑制とADの病態との間の
逆の機能的関連性を実証した。さらに、ADの5XFADマウスモデルとJ20マウスモ
デルの両方において、疾患の進行がCPにおけるIFN-γの利用可能性の喪失を伴うこ
とが見出された。このIFN-γの減少は、5XFADマウスにおいてFoxP3調節性
T細胞の増加を伴い、抗PD-1抗体で処置すると、CPにおいてIFN-γシグナル伝
達が回復し、脳実質への単球由来マクロファージの動員が回復した(Baruch et
al,2016)。ここで、本発明者らはまず、PD-L1に対する抗体の投与が、D
M-hTAUマウスにおいて、全身のエフェクターメモリーT細胞または調節性細胞のレ
ベルに影響し得るかを、抗体投与の2週間後の脾臓において測定して、試験した。本発明
者らは、このマウスモデルにおいて、処置の非存在下では、同齢の野生型マウスと比べた
とき、FoxP3調節性T細胞が全身において増加することおよびエフェクターメモリー
T細胞(CD44CD-62Llow)の全身レベルが低下することも見出した(図2
1A~C)。抗PD-L1抗体の投与は、フローサイトメトリー解析によって評価したと
き、IgGで処置されたマウスと比べて、サプレッサー細胞のレベルを低下させなかった
が、エフェクターメモリーT細胞のレベルを増加させた(図21A~C)。本発明者らは
、同じマウスの脳をさらに解析して、単球由来マクロファージのレベルを測定した。本発
明者らは、IgGアイソタイプコントロールで処置されたマウスと比べたときの、抗PD
-L1抗体で処置されたDM-hTAUマウスの脳における単球由来マクロファージの有
意な増加を見出した(図21D、E)。これらの知見は、末梢の免疫抑制がこのマウスモ
デルにおいて生じ、その末梢における免疫抑制の低減が、疾患を緩和する白血球が罹患し
ている脳に侵入するのを促進するという本発明者らの仮説を支持する。これらの結果は、
免疫チェックポイントの遮断が、さらなる病因を特徴とするADに適用できるかもしれな
いという本発明者らの主張を補強する。
実施例19.タウの病態のマウスモデルにおけるPD-1/PD-L1軸の遮断は認知
障害および大脳の病態を緩和する
【0218】
本発明者らが5XFADマウスにおいて観察したような全身の免疫チェックポイント経
路を標的化することによって脳実質への単球の輸送が増加するという本発明者らの知見は
、タウマウスモデルにおける認知機能に対するPD-1またはPD-L1の標的化の効果
を試験するように促した。本発明者らは、8月齢のDM-hTAUマウスを、5XFAD
マウスにおいて使用したのと同じ0.5mgという用量を用いて抗PD-1または抗PD
-L1で処置した(図22A);無関係の抗原に対するアイソタイプ一致抗体をネガティ
ブコントロールとして使用した(IgG処置コントロール)。同齢の野生型マウスを、こ
の研究において使用された試験における正常な学習/記憶の成績に対するさらなるコント
ロールとして評価した。このADのマウスモデルでは、短期の空間記憶を測定するT型迷
路およびY型迷路の試験を通常使用する。抗PD-1または抗PD-L1抗体を投与され
た2つの群が、抗体の単回注射の1ヶ月後に、T型迷路アッセイにおいて、IgGで処置
されたコントロール群と比べて、新規アームを好むことが多かった(図22B、C)。さ
らに、両方の処置群が、Y型迷路試験において、IgGで処置されたコントロール群と比
べて認知能力の改善を示した(図22D)。
【0219】
グリオーシスに対する上記処置の効果は、抗PD-1/PD-L1処置群の海馬におけ
るGFAPの免疫反応性の減少を明らかにした(図22E、F)。本発明者らはさらに、
グリオーシスに対するPD-1/PD-L1軸の遮断の有益な効果が、炎症性サイトカイ
ン環境の変化に関連し得るかを試験した。この目的のために、本発明者らは、CNSの炎
症性の環境が処置の結果(reult)として歪められたかを判定するために、定量的R
T-qPCRを用いて、様々なサイトカインのレベルをモニターした。本発明者らは、抗
PD-1と抗PD-L1の両方が、海馬において、抗炎症性サイトカインil-10に対
する炎症促進性サイトカインil-12p40の発現レベルを低下させたことを見出した
。さらに、両方の処置が、炎症促進性サイトカインtnfαおよびil-6のレベルを低
下させた(図22G)。
【0220】
タウの病態の動物モデルにおける神経炎症は、過剰リン酸化および疾患進行を増強する
と示された。ゆえに、本発明者らは、タウの過剰リン酸化に対する抗PD-1および抗P
D-L1の効果を試験した。DM-hTAUマウス由来の脳切片の免疫組織化学的解析か
ら、抗PD-1および抗PD-L1による遮断の後、IgGアイソタイプコントロール群
と比べて、海馬CA1およびCA3領域におけるAT-100(ホスホ-Tau Thr
212、Ser214)およびAT-180(ホスホ-Tau Thr231)エピトー
プの免疫反応性の低下が明らかになった(図23A~F)。
【0221】
癌免疫療法において、抗PD-L1抗体は、抗PD-1よりも高用量で使用されるので
、最後に、本発明者らは、抗PD-L1抗体の用量の増加が優れた効果を及ぼし得るかを
試験した。ゆえに、本発明者らは、9月齢の雌と雄(群(agroups)の間で等しく
分配される)の両方のDM-hTAUマウスの短期記憶に対する様々な用量の効果を試験
するさらなる研究を行った。単回注射の1.5mg/マウスのコントロール抗体に対して
、0.1、0.5または1.5mg/マウスでの単回注射の抗PD-L1でマウスを処置
した。WT同腹仔マウスを、インタクトな認知能力に対するコントロールとして使用した
。0.5または1.5mg/マウスで処置されたマウスは、WTマウスの成績とほぼ等し
い成績を示した;1.5mg/マウスという抗PD-L1の用量は、わずかにより有効で
あったが、用量間の差は有意ではなかった(図23G)。
【0222】
まとめると、これらの結果は、アミロイドベータの病態の動物モデルで見られる広範な
効果と同様に、全身の免疫の活性化が、タウの動物モデルにおいて疾患の病態に関連する
脳における重要なプロセスを修正することを示唆している。
実施例20.PD-1の遮断は5XFADマウスにおいて海馬の神経発生を増強する
【0223】
ダブルコルチン(DCX)は、ニューロンの前駆体細胞および未熟なニューロンによっ
て発現される微小管結合タンパク質である。成体のニューロン組織では、DCXは、ほぼ
もっぱら発生中のニューロンによって発現されるので、神経発生のマーカーとして使用さ
れる。雌5XFADマウス(コホートの平均月齢は6月齢)を抗PD-1特異的抗体(I
gG2a抗マウスPD-1;n=17)またはIgGコントロール(ラットIgG2a;
n=7)で処置し、1ヶ月後に屠殺した。同齢の野生型(WT;n=9)マウスをさらな
るコントロール群として使用した。代表的な動物由来の傍矢状洞の脳切片を調製し、歯状
回の顆粒層を標識した(図24A)。脳切片をニューロンのマーカーであるNeuN(緑
色)、DCX(赤色)およびhoechst核染色(青色)について免疫染色した。DC
X+細胞を、6m厚の脳切片から二重盲検で定量した(図24B)。反復測定の結果を、
1元配置分散分析およびダネットの事後検定を用いて解析した。エラーバーは、平均値±
s.e.m.を表している;P<0.05、**P<0.01、***P<0.001
。結果は、PD-1/PD-L1経路の全身における遮断が、海馬の神経発生を支持する
ように脳の環境を調節する防御免疫の活性(これは、行動障害および認知障害に対する有
益な効果と以前に繰り返し相関した病態に対する効果である)を引き起こすことを示して
いる。
実施例21.PD-1遮断は5XFADマウスにおいて海馬のシナプス可塑性を高める
【0224】
グルタミン酸作動性ニューロンによって発現される小胞グルタミン酸トランスポーター
1(VGLUT1)は、シナプス小胞内へのグルタミン酸の取り込みを媒介し、海馬のシ
ナプス可塑性および海馬依存性の空間学習に寄与すると示された。雌5XFADマウス(
コホートの平均月齢は6月齢)を抗PD-1特異的抗体(IgG2a抗マウスPD-1;
n=17)またはIgGコントロール(ラットIgG2a;n=7)で処置し、1ヶ月後
に屠殺した。同齢の野生型(WT;n=9)マウスをさらなるコントロール群として使用
した。代表的な動物由来の傍矢状洞の脳切片を調製し、鉤状回の領域を標識した(図25
A)。脳切片をVgluT1について免疫染色した。蛍光(Florescence)強
度を、ImageJソフトウェアを用いて6m厚の脳切片から二重盲検で定量した(図2
5B)。反復測定の結果を、1元配置分散分析およびダネットの事後検定を用いて解析し
た。エラーバーは、平均値±s.e.m.を表している;P<0.05、**P<0.
01、***P<0.001。結果は、PD-1/PD-L1経路の全身における遮断が
、末梢において防御免疫の活性を引き起こすことならびにシナプス可塑性を支持するよう
におよび認知機能を保存するように脳環境を調節することを示している。
実施例22.PD-1の遮断は5XFADマウスの鉤状回におけるニューロンの喪失を
減少させる
【0225】
5XFADトランスジェニックマウスモデルは、ヒト患者におけるADの進行によく似
た著しいニューロンの喪失を示す、数少ないアミロイド動物モデルの1つである。5XF
ADマウスにおけるニューロンの喪失を、鉤状回および皮層第5層において特徴づけた。
雌5XFADマウス(コホートの平均月齢は6月齢)を抗PD-1特異的抗体(IgG2
a抗マウスPD-1;n=17)またはIgGコントロール(ラットIgG2a;n=7
)で処置し、1ヶ月後に屠殺した。同齢の野生型(WT;n=9)マウスをさらなるコン
トロール群として使用した。代表的な動物由来の傍矢状の脳切片を調製し、鉤状回の領域
を標識した(図26A)。脳切片をNeuNについて免疫染色し、ニューロン(緑色)を
標識した。鉤状回のニューロンを、ImageJソフトウェアを用いて6m厚の脳切片か
ら二重盲検で定量した(図26B)。反復測定の結果を、1元配置分散分析およびダネッ
トの事後検定を用いて解析した。エラーバーは、平均値±s.e.m.を表している;
P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。結果は、PD-1/PD-L
1経路の全身における遮断が、ニューロンの生存およびレスキューの支持を許容するよう
になるように脳環境を調節する防御免疫の活性を引き起こし、最終的にはより良好な認知
能力に寄与することを示している。
【0226】
最後に、本明細書の態様は、特定の実施形態に言及することによって強調されたが、当
業者は、開示されたこれらの実施形態が、本明細書中に開示される主題の原理を単に例証
していることを容易に認識するだろうということが理解されるべきである。ゆえに、開示
される主題は、そのように明確に述べられていない限り、本明細書中に記載される特定の
化合物、組成物、物品、装置、方法論、プロトコルおよび/または試薬などに決して限定
されないことが理解されるべきである。さらに、当業者は、ある特定の変更、改変、並べ
替え、変更、追加、削除およびそれらのサブコンビネーションが、本明細書の精神から逸
脱することなく本明細書中の教示に従って行われ得ることを認識するだろう。ゆえに、以
下の添付の請求項および今後導入される請求項が、それらの真の精神および範囲内にある
ような変更、改変、並べ替え、変更、追加、削除およびサブコンビネーションのすべてを
含むと解釈されると意図される。
【0227】
本発明を実施するための、本発明者らに知られている最良の形式を含む、本発明のある
特定の実施形態が、本明細書中に記載されている。当然のことながら、前述の説明を読む
と、当業者には、これらの記載された実施形態に対するバリエーションが明らかになるだ
ろう。本発明者らは、当業者がそのようなバリエーションを必要に応じて使用すると予想
し、本発明者らは、本明細書中に具体的に記載されたものとは別の方法で本発明が実施さ
れると意図している。したがって、本発明は、適用法で認められているように、添付され
る請求項に列挙される主題の改変および等価物のすべてを含む。さらに、別段本明細書中
に示されないかまたは文脈によって別段明らかに矛盾しない限り、上に記載された実施形
態の可能なすべてのバリエーションにおけるそれらの任意の組み合わせが、本発明によっ
て包含される。
【0228】
本発明の代替の実施形態、エレメントまたは工程のグループ化は、限定として解釈され
るべきでない。各群のメンバーは、個別に、または本明細書中に開示される他の群のメン
バーとの任意の組み合わせで、言及され得、特許請求され得る。ある群の1つ以上のメン
バーは、便利さおよび/または特許性の理由で、1つの群に含められ得るかまたは1つの
群から削除され得ることが予想される。そのような何らかの包含または削除が生じた場合
、本明細書は、修正されたそのグループを含むと見なし、したがって、添付の請求項にお
いて使用されるすべてのマーカッシュ群の記載を満たすものと見なす。
【0229】
別段示されない限り、本明細書および請求項において使用される特徴、項目、数量、パ
ラメータ、特性、期間などを表すすべての数字は、すべての場合において用語「約」によ
って修飾されていると理解されるべきである。本明細書中で使用されるとき、用語「約」
は、そのように形容される特徴、項目、数量、パラメータ、特性または期間が、述べられ
ている特徴、項目、数量、パラメータ、特性または期間の値よりプラスまたはマイナス1
0パーセント上および下の範囲を包含することを意味する。したがって、それとは反対の
ことが示されない限り、本明細書および添付の請求項に示される数値パラメータは、ばら
つき得る近似値である。例えば、質量分析の機器は、所与の被検体の質量を測定する際に
わずかにばらつき得るので、イオンの質量またはイオンの質量/電荷比の文脈における用
語「約」は、+/-0.50原子質量単位のことを指す。最低限でも、また、均等論の適
用を請求項の範囲に限定するものではなく、各数値の表示は、少なくとも、報告されてい
る有効数字の数を考慮して、通常の丸め法を適用することによって、解釈されるべきであ
る。
【0230】
ある実施形態またはある実施形態の態様を言及する際の用語「~し得る(may)」ま
たは「~し得る(can)」の使用は、その用語に「~しないかもしれない」または「~
できない」という代替の意味も保持させている。したがって、本明細書が、ある実施形態
またはある実施形態の態様が、本発明の主題の一部として含められ得ることを開示する場
合、その消極的な限定または排他的な条件は、ある実施形態またはある実施形態の態様が
、本発明の主題の一部として含められないかもしれないかまたは含められることができな
いことを意味するとも明示的に意味される。同様に、ある実施形態またはある実施形態の
態様を言及する際の用語「必要に応じて」の使用は、そのような実施形態または実施形態
の態様が、本発明の主題の一部として含められ得るか、または本発明の主題の一部として
含められないかもしれないことを意味する。そのような消極的な限定または排他的な条件
が適用されるか否かは、その消極的な限定または排他的な条件が、特許請求される主題に
列挙されているか否かに基づく。
【0231】
本発明の広範な範囲を示す数値範囲および数値は、近似値であるが、特定の例において
示されている数値範囲および数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いず
れの数値範囲または数値も、本質的には、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差に必
然的に起因するある特定の誤差を含む。本明細書中の値の数値範囲の列挙は、単に、その
範囲内に入る各別個の数値に個別に言及する簡潔な方法の役割をすると意図されている。
本明細書中で別段示されない限り、数値範囲の各個別の値は、それが本明細書中に個別に
列挙されたかのように、本明細書に組み込まれる。
【0232】
本発明を説明している文脈(特に、以下の請求項の文脈)において使用される用語「a
」、「an」、「the」および同様の言及は、本明細書中に別段示されないかまたは文
脈に明らかに矛盾しない限り、単数と複数の両方を包含すると解釈されるべきである。さ
らに、特定のエレメントに対する順序を表す表示(例えば、「第1」、「第2」、「第3
」など)は、それらのエレメントを区別するために使用されるのであって、別段具体的に
述べられない限り、そのようなエレメントの必要な数または限定される数を示さないかま
たは暗示せず、そのようなエレメントの特定の位置または順序を示さない。本明細書中に
記載されるすべての方法が、本明細書中に別段示されないかまたは別段文脈に明らかに矛
盾しない限り、任意の好適な順序で行われ得る。いずれのおよびすべての例、または本明
細書中に提供される例示的な言語(例えば、「例えば(such as)」)の使用は、
単に本発明をより良く明らかにすると意図され、別の方法で特許請求される本発明の範囲
を限定しない。本明細書中のどの言語も、本発明の実施に不可欠な、特許請求されていな
い任意のエレメントを示していると解釈されるべきでない。
【0233】
請求項において使用されるとき、出願されたとおりであるか補正によって追加されたも
のであるかに関わらず、「~を含む(comprising)」というオープンエンドの
移行語(ならびに含む(including)、含む(containing)および有
するのようなその等価なオープンエンドの移行句)は、単独でまたは列挙されていない主
題と組み合わせて、明示的に列挙されているエレメント、限定、工程および/または特徴
をすべて包含する;挙げられているエレメント、限定および/または特徴は、必須である
が、他の挙げられていないエレメント、限定および/または特徴を追加してもよく、なお
も請求項の範囲内である構成をなしている。本明細書中に開示される具体的な実施形態は
、「~を含む(comprising)」の代わりにまたは補正としてクローズドエンド
の移行句である「~からなる」もしくは「本質的に~からなる」を用いて請求項において
さらに限定され得る。請求項において使用されるとき、出願されたとおりであるか補正に
よって追加されたものであるかに関わらず、「~からなる」というクローズドエンドの移
行句は、請求項に明示的に列挙されていないあらゆるエレメント、限定、工程または特徴
を排除する。「本質的に~からなる」というクローズドエンドの移行句は、請求項の範囲
を、明示的に列挙されたエレメント、限定、工程および/または特徴、ならびに特許請求
される主題の基本的および新規な特徴に実質的に影響を与えない他のあらゆるエレメント
、限定、工程および/または特徴に限定する。したがって、「~を含む」というオープン
エンドの移行句の意味は、具体的に列挙されているエレメント、限定、工程および/また
は特徴ならびにあらゆる随意のさらなる特定されていないものをすべて包含すると定義さ
れる。「~からなる」というクローズドエンドの移行句の意味は、請求項に具体的に列挙
されているエレメント、限定、工程および/または特徴のみを含むと定義されるのに対し
て、「本質的に~からなる」というクローズドエンドの移行句の意味は、請求項に具体的
に列挙されているエレメント、限定、工程および/または特徴ならびに特許請求されてい
る主題の基本的および新規な特徴に実質的に影響を与えないエレメント、限定、工程およ
び/または特徴のみを含むと定義される。ゆえに、「~を含む」というオープンエンドの
移行句(およびその等価なオープンエンドの移行句)は、その意味の範囲内で限定的な事
例として、「~からなる」または「本質的に~からなる」というクローズドエンドの移行
句によって特定される特許請求されている主題を含む。したがって、句「~を含む」を用
いて本明細書に記載されるかまたはそのように特許請求される実施形態は、句「本質的に
~からなる」および「~からなる」に対して本明細書中で明示的にまたは本質的に明白に
記載され、可能にされ、かつ支持される。
【0234】
本明細書において参照および特定されるすべての特許、特許公開公報および他の刊行物
は、それらの全体が、例えば、本発明に関して使用され得るそのような刊行物に記載され
ている組成物および方法論を記載および開示するために、個々にかつ明確に参照により本
明細書中に援用される。これらの刊行物は単に、本願の出願日より前のそれらの開示のた
めに提供されている。この点において、本発明者らが、先行発明を理由にまたは他のあら
ゆる理由のために、そのような開示に先行する権利がないということを自認するものとし
て解釈されるべきものは何もない。これらの文献の日付に関するすべての記載または内容
に関する表現は、本出願人に利用可能な情報に基づくものであり、これらの文献の日付ま
たは内容の正確性に関するいかなる承認も構成するものではない。
【0235】
最後に、本明細書中で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明するためのもので
あって、本発明の範囲を限定する意図はなく、本発明の範囲は、請求項によってのみ定義
される。したがって、本発明は、正確に示されるおよび記載されるものに限定されない。
【0236】
(参考文献)
Akiyama H, Barger S, Barnum S, Bradt B, Bauer J, Cole G M, Cooper N R, Eikelenbo
om P, Emmerling M, Fiebich B L, Finch C E, Frautschy S, Griffin W S, Hampel H, H
ull M, Landreth G, Lue L, Mrak R, Mackenzie I R, McGeer P L, O'Banion M K, Pacht
er J, Pasinetti G, Plata-Salaman C, Rogers J, Rydel R, Shen Y, Streit W, Strohme
yer R, Tooyoma I, Van Muiswinkel F L, Veerhuis R, Walker D, Webster S, Wegrzynia
k B, Wenk G, Wyss-Coray T (2000) Inflammation and Alzheimer's disease.Neurobiolo
gy of aging21: 383-421
Alamed J, Wilcock D M, Diamond D M, Gordon M N, Morgan D (2006) Two-day radial-a
rm water maze learning and memory task; robust resolution of amyloid-related mem
ory deficits in transgenic mice.Nature protocols 1: 1671-1679
Bai A, Lu N, Guo Y, Liu Z, Chen J, Peng Z (2009) All-trans retinoic acid down-re
gulates inflammatory responses by shifting the Treg/Th17 profile in human ulcera
tive and murine colitis.Journal of leukocyte biology 86: 959-969
Baruch K, Deczkowska A, David E, Castellano J M, Miller O, Kertser A, Berkutzki
T, Barnett-Itzhaki Z, Bezalel D, Wyss-Coray T, Amit I, Schwartz M (2014) Aging.
Aging-induced type I interferon response at the choroid plexus negatively affect
s brain function.Science 346: 89-93
Baruch K, Kertser A, Porat Z, Schwartz M (2015) Cerebral nitric oxide represses
choroid plexus NFkappaB-dependent gateway activity for leukocyte trafficking.The
EMBO journal
Baruch K, Ron-Harel N, Gal H, Deczkowska A, Shifrut E, Ndifon W, Mirlas-Neisberg
N, Cardon M, Vaknin I, Cahalon L, Berkutzki T, Mattson M P, Gomez-Pinilla F, Fr
iedman N, Schwartz M (2013) CNS-specific immunity at the choroid plexus shifts t
oward destructive Th2 inflammation in brain aging. Proceedings of the National A
cademy of Sciences of the United States of America 110: 2264-2269
Baruch, A. Deczkowska, N. Rosenzweig, A. Tsitsou-Kampeli, A. M. Sharif, O. Matco
vitch-Natan, A. Kertser, E. David, I. Amit, M. Schwartz (2016) PD-1 immune check
point blockade reduces pathology and improves memory in mouse models of Alzheime
r’s disease, Nat. Med. 22, 135-137
Borchelt D R, Ratovitski T, van Lare J, Lee M K, Gonzales V, Jenkins N A, Copela
nd N G, Price D L, Sisodia S S (1997) Accelerated amyloid deposition in the brai
ns of transgenic mice coexpressing mutant presenilin 1 and amyloid precursor pro
teins.Neuron 19: 939-945
Bos P D, Rudensky A Y (2012) Treg cells in cancer: a case of multiple personalit
y disorder.Science translational medicine 4: 164fs144
Bowers E M, Yan G, Mukherjee C, Orry A, Wang L, Holbert M A, Crump N T, Hazzalin
C A, Liszczak G, Yuan H, Larocca C, Saldanha S A, Abagyan R, Sun Y, Meyers D J,
Marmorstein R, Mahadevan L C, Alani R M, Cole P A (2010) Virtual ligand screeni
ng of the p300/CBP histone acetyltransferase: identification of a selective smal
l molecule inhibitor.Chemistry & biology 17: 471-482
Breitner J C, Haneuse S J, Walker R, Dublin S, Crane P K, Gray S L, Larson E B (
2009) Risk of dementia and AD with prior exposure to NSAIDs in an elderly commun
ity-based cohort.Neurology 72: 1899-1905
Brestoff J R, Artis D (2013) Commensal bacteria at the interface of host metabol
ism and the immune system.Nature immunology 14: 676-684
Burgess A, Vigneron S, Brioudes E, Labbe J C, Lorca T, Castro A (2010) Loss of h
uman Greatwall results in G2 arrest and multiple mitotic defects due to deregula
tion of the cyclin B-Cdc2/PP2A balance.Proceedings of the National Academy of Sc
iences of the United States of America 107: 12564-12569
Butovsky O, Koronyo-Hamaoui M, Kunis G, Ophir E, Landa G, Cohen H, Schwartz M (2
006) Glatiramer acetate fights against Alzheimer's disease by inducing dendritic
-like microglia expressing insulin-like growth factor 1. Proceedings of the Nati
onal Academy of Sciences of the United States of America 103: 11784-11789
Butovsky O, Kunis G, Koronyo-Hamaoui M, Schwartz M (2007) Selective ablation of
bone marrow-derived dendritic cells increases amyloid plaques in a mouse Alzheim
er's disease model.The European journal of neuroscience 26: 413-416
Chen X, Oppenheim J J (2011) Resolving the identity myth: key markers of functio
nal CD4+FoxP3+ regulatory T cells. International immunopharmacology 11: 1489-149
6
Colombo M P, Piconese S (2007) Regulatory-T-cell inhibition versus depletion: th
e right choice in cancer immunotherapy. Nature reviews Cancer 7: 880-887
Coyne G O, Gulley J L (2014) Adding fuel to the fire: Immunogenic intensificatio
n. Human vaccines & immunotherapeutics 10: 3306-3312
Dalotto-Moreno T, Croci D O, Cerliani J P, Martinez-Allo V C, Dergan-Dylon S, Me
ndez-Huergo S P, Stupirski J C, Mazal D, Osinaga E, Toscano M A, Sundblad V, Rab
inovich G A, Salatino M (2013) Targeting galectin-1 overcomes breast cancer-asso
ciated immunosuppression and prevents metastatic disease. Cancer research 73: 11
07-1117
Duraiswamy J, Freeman G J, Coukos G (2014) Dual blockade of PD-1 and CTLA-4 comb
ined with tumor vaccine effectively restores T-cell rejection function in tumors
-response. Cancer research 74: 633-634; discussion 635
Francisco L M, Sage P T, Sharpe A H (2010) The PD-1 pathway in tolerance and aut
oimmunity.Immunological reviews 236: 219-242
Gabrilovich D I, Nagaraj S (2009) Myeloid-derived suppressor cells as regulators
of the immune system. Nature reviews Immunology 9: 162-174
Galvin K C, Dyck L, Marshall N A, Stefanska A M, Walsh K P, Moran B, Higgins S C
, Dungan L S, Mills K H (2013) Blocking retinoic acid receptor-alpha enhances th
e efficacy of a dendritic cell vaccine against tumours by suppressing the induct
ion of regulatory T cells. Cancer immunology, immunotherapy: CII 62: 1273-1282
Ghiringhelli F, Bruchard M, Chalmin F, Rebe C (2012) Production of adenosine by
ectonucleotidases: a key factor in tumor immunoescape. Journal of biomedicine &
biotechnology 2012: 473712
Group A R, Lyketsos C G, Breitner J C, Green R C, Martin B K, Meinert C, Piantad
osi S, Sabbagh M (2007) Naproxen and celecoxib do not prevent A D in early resul
ts from a randomized controlled trial. Neurology 68: 1800-1808
Hardy J, Selkoe D J (2002) The amyloid hypothesis of Alzheimer's disease: progre
ss and problems on the road to therapeutics. Science 297: 353-356
He F, Balling R (2013) The role of regulatory T cells in neurodegenerative disea
ses. Wiley interdisciplinary reviews Systems biology and medicine 5: 153-180
Hirayama M, Nishikawa H, Nagata Y, Tsuji T, Kato T, Kageyama S, Ueda S, Sugiyama
D, Hori S, Sakaguchi S, Ritter G, Old L J, Gnjatic S, Shiku H (2013) Overcoming
regulatory T-cell suppression by a lyophilized preparation of Streptococcus pyo
genes. European journal of immunology 43: 989-1000
Hong J, Li N, Zhang X, Zheng B, Zhang J Z (2005) Induction of CD4+CD25+ regulato
ry T cells by copolymer-I through activation of transcription factor Foxp3. Proc
eedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 102:
6449-6454
Joller N, Peters A, Anderson A C, Kuchroo V K (2012) Immune checkpoints in centr
al nervous system autoimmunity. Immunological reviews 248: 122-139
Ju Y, Shang X, Liu Z, Zhang J, Li Y, Shen Y, Liu Y, Liu C, Liu B, Xu L, Wang Y,
Zhang B, Zou J (2014) The Tim-3/galectin-9 pathway involves in the homeostasis o
f hepatic Tregs in a mouse model of concanavalin A-induced hepatitis. Molecular
immunology 58: 85-91
Jung S, Aliberti J, Graemmel P, Sunshine M J, Kreutzberg G W, Sher A, Littman D
R (2000) Analysis of fractalkine receptor CX(3)CR1 function by targeted deletion
and green fluorescent protein reporter gene insertion. Molecular and cellular b
iology 20: 4106-4114
Kim J M, Rasmussen J P, Rudensky A Y (2007) Regulatory T cells prevent catastrop
hic autoimmunity throughout the lifespan of mice. Nature immunology 8: 191-197
Kim P S, Jochems C, Grenga I, Donahue R N, Tsang K Y, Gulley J L, Schlom J, Fars
aci B (2014) Pan-Bcl-2 inhibitor, GX15-070 (obatoclax), decreases human T regula
tory lymphocytes while preserving effector T lymphocytes: a rationale for its us
e in combination immunotherapy. Journal of immunology 192: 2622-2633
Kotsakis A, Harasymczuk M, Schilling B, Georgoulias V, Argiris A, Whiteside T L
(2012) Myeloid-derived suppressor cell measurements in fresh and cryopreserved b
lood samples. Journal of immunological methods 381: 14-22
Kunis G, Baruch K, Miller O, Schwartz M (2015) Immunization with a Myelin-Derive
d Antigen Activates the Brain's Choroid Plexus for Recruitment of Immunoregulato
ry Cells to the CNS and Attenuates Disease Progression in a Mouse Model of ALS.
The Journal of neuroscience: the official journal of the Society for Neuroscienc
e 35: 6381-6393
Kunis G, Baruch K, Rosenzweig N, Kertser A, Miller O, Berkutzki T, Schwartz M (2
013) IFN-gamma-dependent activation of the brain's choroid plexus for CNS immune
surveillance and repair. Brain: a journal of neurology 136: 3427-3440
Lebow M, Neufeld-Cohen A, Kuperman Y, Tsoory M, Gil S, Chen A (2012) Susceptibil
ity to PTSD-like behavior is mediated by corticotropin-releasing factor receptor
type 2 levels in the bed nucleus of the stria terminalis. J Neurosci 32: 6906-6
916
Lesokhin A M, Callahan M K, Postow M A, Wolchok J D (2015) On being less toleran
t: enhanced cancer immunosurveillance enabled by targeting checkpoints and agoni
sts of T cell activation. Science translational medicine 7: 280sr281
Liu Y, Wang L, Predina J, Han R, Beier U H, Wang L C, Kapoor V, Bhatti T R, Akim
ova T, Singhal S, Brindle P K, Cole P A, Albelda S M, Hancock W W (2013) Inhibit
ion of p300 impairs Foxp3(+) T regulatory cell function and promotes antitumor i
mmunity. Nature medicine 19: 1173-1177
Marabelle A, Kohrt H, Sagiv-Barfi I, Ajami B, Axtell R C, Zhou G, Rajapaksa R, G
reen M R, Torchia J, Brody J, Luong R, Rosenblum M D, Steinman L, Levitsky H I,
Tse V, Levy R (2013) Depleting tumor-specific Tregs at a single site eradicates
disseminated tumors. The Journal of clinical investigation 123: 2447-2463
Mellman I, Coukos G, Dranoff G (2011) Cancer immunotherapy comes of age. Nature
480: 480-489
Michaud J P, Bellavance M A, Prefontaine P, Rivest S (2013) Real-time in vivo im
aging reveals the ability of monocytes to clear vascular amyloid beta. Cell repo
rts 5: 646-653
Nishikawa H, Sakaguchi S (2010) Regulatory T cells in tumor immunity. Internatio
nal journal of cancer Journal international du cancer 127: 759-767
Oakley H, Cole S L, Logan S, Maus E, Shao P, Craft J, Guillozet-Bongaarts A, Ohn
o M, Disterhoft J, Van Eldik L, Berry R, Vassar R (2006) Intraneuronal beta-amyl
oid aggregates, neurodegeneration, and neuron loss in transgenic mice with five
familial Alzheimer's disease mutations: potential factors in amyloid plaque form
ation. The Journal of neuroscience: the official journal of the Society for Neur
oscience 26: 10129-10140
Ohaegbulam K C, Assal A, Lazar-Molnar E, Yao Y, Zang X (2015) Human cancer immun
otherapy with antibodies to the PD-1 and PD-L1 pathway. Trends in molecular medi
cine 21: 24-33
Pardoll D M (2012) The blockade of immune checkpoints in cancer immunotherapy. N
ature reviews Cancer 12: 252-264
Peng W, Liu C, Xu C, Lou Y, Chen J, Yang Y, Yagita H, Overwijk W W, Lizee G, Rad
vanyi L, Hwu P (2012) PD-1 blockade enhances T-cell migration to tumors by eleva
ting IFN-gamma inducible chemokines. Cancer research 72: 5209-5218
Pere H, Montier Y, Bayry J, Quintin-Colonna F, Merillon N, Dransart E, Badoual C
, Gey A, Ravel P, Marcheteau E, Batteux F, Sandoval F, Adotevi O, Chiu C, Garcia
S, Tanchot C, Lone Y C, Ferreira L C, Nelson B H, Hanahan D, Fridman W H, Johan
nes L, Tartour E (2011) A CCR4 antagonist combined with vaccines induces antigen
-specific CD8+ T cells and tumor immunity against self antigens. Blood 118: 4853
-4862
Postow M A, Callahan M K, Wolchok J D (2015) Immune Checkpoint Blockade in Cance
r Therapy. Journal of clinical oncology: official journal of the American Societ
y of Clinical Oncology
Qin A, Wen Z, Zhou Y, Li Y, Li Y, Luo J, Ren T, Xu L (2013) MicroRNA-126 regulat
es the induction and function of CD4(+) Foxp3(+) regulatory T cells through PI3K
/AKT pathway. Journal of cellular and molecular medicine 17: 252-264
Rosenkranz D, Weyer S, Tolosa E, Gaenslen A, Berg D, Leyhe T, Gasser T, Stoltze
L (2007) Higher frequency of regulatory T cells in the elderly and increased sup
pressive activity in neurodegeneration. Journal of neuroimmunology 188: 117-127
Roy S, Barik S, Banerjee S, Bhuniya A, Pal S, Basu P, Biswas J, Goswami S, Chakr
aborty T, Bose A, Baral R (2013) Neem leaf glycoprotein overcomes indoleamine 2,
3 dioxygenase mediated tolerance in dendritic cells by attenuating hyperactive r
egulatory T cells in cervical cancer stage IIIB patients. Human immunology 74: 1
015-1023
Sakaguchi S, Yamaguchi T, Nomura T, Ono M (2008) Regulatory T cells and immune t
olerance. Cell 133: 775-787
Saresella M, Calabrese E, Marventano I, Piancone F, Gatti A, Calvo M G, Nemni R,
Clerici M (2010) PD1 negative and PD1 positive CD4+ T regulatory cells in mild
cognitive impairment and Alzheimer's disease. Journal of Alzheimer's disease JAD
21: 927-938
Schmidt S D, Nixon R A, Mathews P M (2005) ELISA method for measurement of amylo
id-beta levels. Methods in molecular biology 299: 279-297
Schreiber R D, Old L J, Smyth M J (2011) Cancer immunoediting: integrating immun
ity's roles in cancer suppression and promotion. Science 331: 1565-1570
Schwartz M, Baruch K (2014a) Breaking peripheral immune tolerance to CNS antigen
s in neurodegenerative diseases: boosting autoimmunity to fight-off chronic neur
oinflammation. Journal of autoimmunity 54: 8-14
Schwartz M, Baruch K (2014b) The resolution of neuroinflammation in neurodegener
ation: leukocyte recruitment via the choroid plexus. The EMBO journal 33: 7-22
Shankar G M, Li S, Mehta T H, Garcia-Munoz A, Shepardson N E, Smith I, Brett F M
, Farrell M A, Rowan M J, Lemere C A, Regan C M, Walsh D M, Sabatini B L, Selkoe
D J (2008) Amyloid-beta protein dimers isolated directly from Alzheimer's brain
s impair synaptic plasticity and memory. Nature medicine 14: 837-842
Shechter R, London A, Varol C, Raposo C, Cusimano M, Yovel G, Rolls A, Mack M, P
luchino S, Martino G, Jung S, Schwartz M (2009) Infiltrating blood-derived macro
phages are vital cells playing an anti-inflammatory role in recovery from spinal
cord injury in mice. PLoS medicine 6: e1000113
Shechter R, Miller O, Yovel G, Rosenzweig N, London A, Ruckh J, Kim K W, Klein E
, Kalchenko V, Bendel P, Lira S A, Jung S, Schwartz M (2013) Recruitment of bene
ficial M2 macrophages to injured spinal cord is orchestrated by remote brain cho
roid plexus. Immunity 38: 555-569
Shevchenko I, Karakhanova S, Soltek S, Link J, Bayry J, Werner J, Umansky V, Baz
hin A V (2013) Low-dose gemcitabine depletes regulatory T cells and improves sur
vival in the orthotopic Panc02 model of pancreatic cancer. International journal
of cancer Journal international du cancer 133: 98-107
Simpson T R, Li F, Montalvo-Ortiz W, Sepulveda M A, Bergerhoff K, Arce F, Roddie
C, Henry J Y, Yagita H, Wolchok J D, Peggs K S, Ravetch J V, Allison J P, Queza
da S A (2013) Fc-dependent depletion of tumor-infiltrating regulatory T cells co
-defines the efficacy of anti-CTLA-4 therapy against melanoma. The Journal of ex
perimental medicine 210: 1695-1710
Smith P M, Howitt M R, Panikov N, Michaud M, Gallini C A, Bohlooly Y M, Glickman
J N, Garrett W S (2013) The microbial metabolites, short-chain fatty acids, reg
ulate colonic Treg cell homeostasis. Science 341: 569-573
Suffner J, Hochweller K, Kuhnle M C, Li X, Kroczek R A, Garbi N, Hammerling G J
(2010) Dendritic cells support homeostatic expansion of Foxp3+ regulatory T cell
s in Foxp3.LuciDTR mice. Journal of immunology 184: 1810-1820
Terme M, Colussi O, Marcheteau E, Tanchot C, Tartour E, Taieb J (2012) Modulatio
n of immunity by antiangiogenic molecules in cancer. Clinical & developmental im
munology 2012: 492920
Thomas-Schoemann A, Batteux F, Mongaret C, Nicco C, Chereau C, Annereau M, Dauph
in A, Goldwasser F, Weill B, Lemare F, Alexandre J (2012) Arsenic trioxide exert
s antitumor activity through regulatory T cell depletion mediated by oxidative s
tress in a murine model of colon cancer. Journal of immunology 189: 5171-5177
Torres K C, Araujo Pereira P, Lima G S, Bozzi I C, Rezende V B, Bicalho M A, Mor
aes E N, Miranda D M, Romano-Silva M A (2013) Increased frequency of T cells exp
ressing IL-10 in Alzheimer disease but not in late-onset depression patients. Pr
ogress in neuro-psychopharmacology & biological psychiatry 47: 40-45
Vom Berg J, Prokop S, Miller K R, Obst J, Kalin R E, Lopategui-Cabezas I, Wegner
A, Mair F, Schipke C G, Peters O, Winter Y, Becher B, Heppner F L (2012) Inhibi
tion of IL-12/IL-23 signaling reduces Alzheimer's disease-like pathology and cog
nitive decline. Nature medicine 18: 1812-1819
Voo K S, Boyer L, Harline M L, Vien L T, Facchinetti V, Arima K, Kwak L W, Liu Y
J (2013) Antibodies targeting human OX40 expand effector T cells and block indu
cible and natural regulatory T cell function. Journal of immunology 191: 3641-36
50
Walsh J T, Zheng J, Smirnov I, Lorenz U, Tung K, Kipnis J (2014) Regulatory T ce
lls in central nervous system injury: a double-edged sword. Journal of immunolog
y 193: 5013-5022
Ward F J, Dahal L N, Wijesekera S K, Abdul-Jawad S K, Kaewarpai T, Xu H, Vickers
M A, Barker R N (2013) The soluble isoform of CTLA-4 as a regulator of T-cell r
esponses. European journal of immunology 43: 1274-1285
Weber J S, Kudchadkar R R, Yu B, Gallenstein D, Horak C E, Inzunza H D, Zhao X,
Martinez A J, Wang W, Gibney G, Kroeger J, Eysmans C, Sarnaik A A, Chen Y A (201
3) Safety, efficacy, and biomarkers of nivolumab with vaccine in ipilimumab-refr
actory or -naive melanoma. Journal of clinical oncology: official journal of the
American Society of Clinical Oncology 31: 4311-4318
Weber M S, Hohlfeld R, Zamvil S S (2007) Mechanism of action of glatiramer aceta
te in treatment of multiple sclerosis. Neurotherapeutics: the journal of the Ame
rican Society for Experimental Neuro Therapeutics 4: 647-653
Weiskopf K, Ring A M, Schnorr P J, Volkmer J P, Volkmer A K, Weissman I L, Garci
a K C (2013) Improving macrophage responses to therapeutic antibodies by molecul
ar engineering of SIRPalpha variants. Oncoimmunology 2: e25773
Wyss-Coray T, Rogers J (2012) Inflammation in Alzheimer disease-a brief review o
f the basic science and clinical literature. Cold Spring Harbor perspectives in
medicine 2: a006346
Zeng J, See A P, Phallen J, Jackson C M, Belcaid Z, Ruzevick J, Durham N, Meyer
C, Harris T J, Albesiano E, Pradilla G, Ford E, Wong J, Hammers H J, Mathios D,
Tyler B, Brem H, Tran P T, Pardoll D, Drake C G, Lim M (2013) Anti-PD-1 blockade
and stereotactic radiation produce long-term survival in mice with intracranial
gliomas. International journal of radiation oncology, biology, physics 86: 343-
349
Zhao L, Sun L, Wang H, Ma H, Liu G, Zhao Y (2007) Changes of CD4+CD25+Foxp3+ reg
ulatory T cells in aged Balb/c mice. Journal of leukocyte biology 81: 1386-1394
Zheng H, Fridkin M, Youdim M (2015) New approaches to treating Alzheimer's disea
se. Perspectives in medicinal chemistry 7: 1-8
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図8I
図9A-B】
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図9H
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G-H】
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A-B】
図13A
図13B
図13C
図13D
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
図15G
図15H
図16
図17A
図17B
図17C
図17D
図17E
図17F
図17G
図17H
図17I
図17J
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A
図20B
図21A
図21B
図21C
図21D
図21E
図22A
図22B
図22C
図22D
図22E
図22F
図22G
図23A
図23B
図23C
図23D
図23E
図23F
図23G
図24A
図24B
図25A
図25B
図26A
図26B
【配列表】
2022106983000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-06-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピック病、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、球状グリア細胞タウオパチー、前頭側頭葉変性症、嗜銀顆粒性疾患及び以前は神経原線維変化型認知症(NFT-認知症)として知られていた原発性加齢性タウオパチー(PART)から選択されるタウオパチーの処置において使用するための、中和抗PD-1抗体、中和抗PD-L1抗体、中和抗TIM-3抗体並びにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される活性な作用物質含有する薬学的組成物であって、
前記薬学的組成物は、少なくとも2コースの治療を含む投与レジメンによって投与され、
各コースの治療は、該薬学的組成物が個体に投与される処置セッションの後に、該薬学的組成物が該個体に投与されない非処置セッションを順に含み、
前記処置セッションの間の該薬学的組成物の投与は、単回投与であり、
前記非処置セッションは、1週間~6ヶ月間、2週間~6ヶ月間、3週間~6ヶ月間、1ヶ月間~3ヶ月間、1ヶ月間~2ヶ月間及び6ヶ月の期間から選択され、
該薬学的組成物の投与、全身の免疫抑制レベルを一過性に低下させ、中枢神経系への免疫細胞の選択的動員を促進するうえで脈絡叢入口活性を増加させ、それにより、該個体を処置する、薬学的組成物。
【請求項2】
前記非処置セッションが、1週間~6ヶ月間である、請求項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項3】
前記非処置セッションが、2週間~6ヶ月間である、請求項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項4】
前記非処置セッションが、3週間~6ヶ月間である、請求項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項5】
前記非処置セッションが、1ヶ月間~3ヶ月間である、請求項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項6】
前記非処置セッションが、1ヶ月間~2ヶ月間である、請求項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項7】
前記中和抗PD-1抗体が、ヒト中和抗PD-1抗体またはヒト化中和抗PD-1抗体であり、前記中和抗PD-L1抗体が、ヒト中和抗PD-L1抗体またはヒト化中和抗PD-L1抗体であり、前記中和抗TIM-3抗体が、ヒト中和抗TIM-3抗体またはヒト化中和抗TIM-3抗体である、請求項1~のいずれか1項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項8】
前記投与レジメンが、IFNγ産生白血球の全身における存在もしくは活性の増加および/またはIFNγサイトカインの全身における存在もしくは活性の増加をもたらす、請求項1~のいずれか1項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項9】
前記投与レジメンが、エフェクターT細胞の全身における存在もしくは活性の増加をもたらす、請求項1~のいずれか1項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項10】
前記投与レジメンが、制御性T細胞の全身における存在もしくは活性の減少および/またはIL-10サイトカインの全身における存在の減少をもたらす、請求項1~のいずれか1項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項11】
前記投与レジメンが、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)の全身における存在または活性の減少をもたらす、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項12】
前記処置セッション中の前記薬学的組成物の投与が、少なくともIFNγ産生白血球および/またはIFNγサイトカインの全身における存在または活性が基準より高くなるまで維持され、基準より高くなった時点で該投与は停止され、前記非処置セッションが、IFNγ産生白血球および/またはIFNγサイトカインの全身における存在または活性が基準より高い限り維持され、
前記基準は、
a)該投与前の前記個体から得られた最新の血液サンプルにおいて測定されたIFNγ産生白血球および/またはIFNγサイトカインの全身における存在または活性のレベル;または
b)タウオパチーに苦しんでいる個体の集団に特徴的なIFNγ産生白血球および/またはIFNγサイトカインの全身における存在または活性のレベルを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項13】
可溶性アミロイドベータペプチドの脳内レベルが、前記個体において低下し、脳内のアミロイドベータ(Aβ)プラーク量が、該個体において減少するかまたは取り除かれ、海馬グリオーシスが、該個体において低減し、炎症促進性サイトカインの脳内レベルが、該個体において低下し、脳の炎症が、該個体において低減し、かつ/または認知機能が、該個体において改善される、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項14】
前記改善される認知機能が、学習、記憶、心象の創造、可塑性、思考、自覚、推理、空間能力、発話および言語技能、言語習得、判断注意の能力またはそれらの任意の組み合わせである、請求項13に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項15】
前記免疫細胞が、単球、マクロファージまたはT細胞を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項16】
前記T細胞が、制御性T細胞を含む、請求項15に記載の使用のための薬学的組成物。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピック病、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、球状グリア細胞タウオパチー、前頭側頭葉変性症、嗜銀顆粒性疾患、慢性外傷性脳障害及び以前は神経原線維変化型認知症(NFT-認知症)として知られていた原発性加齢性タウオパチー(PART)から選択されるタウオパチーの処置において使用するための、中和抗PD-1抗体、中和抗PD-L1抗体、中和抗TIM-3抗体並びにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される活性な作用物質含有する薬学的組成物であって、
前記薬学的組成物は、少なくとも2コースの治療を含む投与レジメンによって投与され、
各コースの治療は、該薬学的組成物が個体に投与される処置セッションの後に、該薬学的組成物が該個体に投与されない非処置セッションを順に含み、
前記処置セッションの間の該薬学的組成物の投与は、単回投与であり、
前記非処置セッションは、1週間~6ヶ月間、2週間~6ヶ月間、3週間~6ヶ月間、1ヶ月間~3ヶ月間、1ヶ月間~2ヶ月間及び6ヶ月の期間から選択され、
該薬学的組成物の投与、全身の免疫抑制レベルを一過性に低下させ、中枢神経系への免疫細胞の選択的動員を促進するうえで脈絡叢入口活性を増加させ、それにより、該個体を処置する、薬学的組成物。
【請求項2】
前記非処置セッションが、1週間~6ヶ月間である、請求項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項3】
前記非処置セッションが、2週間~6ヶ月間である、請求項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項4】
前記非処置セッションが、3週間~6ヶ月間である、請求項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項5】
前記非処置セッションが、1ヶ月間~3ヶ月間である、請求項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項6】
前記非処置セッションが、1ヶ月間~2ヶ月間である、請求項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項7】
前記中和抗PD-1抗体が、ヒト中和抗PD-1抗体またはヒト化中和抗PD-1抗体であり、前記中和抗PD-L1抗体が、ヒト中和抗PD-L1抗体またはヒト化中和抗PD-L1抗体であり、前記中和抗TIM-3抗体が、ヒト中和抗TIM-3抗体またはヒト化中和抗TIM-3抗体である、請求項1~のいずれか1項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項8】
前記投与レジメンが、IFNγ産生白血球の全身における存在もしくは活性の増加および/またはIFNγサイトカインの全身における存在もしくは活性の増加をもたらす、請求項1~のいずれか1項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項9】
前記投与レジメンが、エフェクターT細胞の全身における存在もしくは活性の増加をもたらす、請求項1~のいずれか1項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項10】
前記投与レジメンが、制御性T細胞の全身における存在もしくは活性の減少および/またはIL-10サイトカインの全身における存在の減少をもたらす、請求項1~のいずれか1項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項11】
前記投与レジメンが、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)の全身における存在または活性の減少をもたらす、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項12】
前記処置セッション中の前記薬学的組成物の投与が、少なくともIFNγ産生白血球および/またはIFNγサイトカインの全身における存在または活性が基準より高くなるまで維持され、基準より高くなった時点で該投与は停止され、前記非処置セッションが、IFNγ産生白血球および/またはIFNγサイトカインの全身における存在または活性が基準より高い限り維持され、
前記基準は、
a)該投与前の前記個体から得られた最新の血液サンプルにおいて測定されたIFNγ産生白血球および/またはIFNγサイトカインの全身における存在または活性のレベル;または
b)タウオパチーに苦しんでいる個体の集団に特徴的なIFNγ産生白血球および/またはIFNγサイトカインの全身における存在または活性のレベルを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項13】
可溶性アミロイドベータペプチドの脳内レベルが、前記個体において低下し、脳内のアミロイドベータ(Aβ)プラーク量が、該個体において減少するかまたは取り除かれ、海馬グリオーシスが、該個体において低減し、炎症促進性サイトカインの脳内レベルが、該個体において低下し、脳の炎症が、該個体において低減し、かつ/または認知機能が、該個体において改善される、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項14】
前記改善される認知機能が、学習、記憶、心象の創造、可塑性、思考、自覚、推理、空間能力、発話および言語技能、言語習得、判断注意の能力またはそれらの任意の組み合わせである、請求項13に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項15】
前記免疫細胞が、単球、マクロファージまたはT細胞を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項16】
前記T細胞が、制御性T細胞を含む、請求項15に記載の使用のための薬学的組成物。