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特開2022-106995帯電した研磨剤を含有する研磨組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106995
(43)【公開日】2022-07-20
(54)【発明の名称】帯電した研磨剤を含有する研磨組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079100
(22)【出願日】2022-05-12
(62)【分割の表示】P 2018188440の分割
【原出願日】2018-10-03
(31)【優先権主張番号】15/725,855
(32)【優先日】2017-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514251329
【氏名又は名称】フジフイルム エレクトロニック マテリアルズ ユー.エス.エー., インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ミシュラ、アビューダヤ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特定の誘電体膜を他の誘電体膜に対して選択的及び優先的に研磨する研磨組成物及びこれを用いて半導体基材を研磨する方法を提供する。
【解決手段】これらの研磨組成物は、除去されるべき及び保存されるべきターゲット誘電体膜に基づいて、カチオン性又はアニオン性研磨剤を含む。研磨組成物は、新規な静電荷に基づく設計を用いており、研磨剤の電荷及び誘電体膜上の電荷とのその静電相互作用(引力又は反発力)に基づいて、様々な材料除去率及び研磨選択性を実現する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、これらの共形成物、又はこれらの混合物を含むカチオン性研磨剤;
b)酸又は塩基;及び
c)水;
を含み、pH2~7であり、ハロゲン化物塩及び界面活性剤を含まない研磨組成物であって、
前記研磨組成物が、ポリシリコンの第一の除去率、窒化ケイ素の第二の除去率を有し、前記第一の除去率の前記第二の除去率に対する比は、少なくとも10:1である、
研磨組成物。
【請求項2】
前記研磨組成物が、酸化ケイ素の第三の除去率を更に有し、前記第三の除去率の前記第二の除去率に対する比は、少なくとも2:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第一の除去率の前記第二の除去率に対する比は、少なくとも15:1である、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記カチオン性研磨剤が、コロイド状アルミナ、コロイド状シリカ、又はコロイド状チタニアを含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記カチオン性研磨剤が、カチオン性コロイド状シリカ、又は塩基固定化非イオン性シリカを含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記シリカが、テトラメチルオルトシリケートからゾルゲル反応によって作製される、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記カチオン性研磨剤が、式(I)の末端基を含み:
-O-X-(CH-Y (I)、
式中、mは、1~3の整数であり;nは、1~10の整数であり;Xは、Al、Si、Ti、又はZrであり;Yは、カチオン性のアミノ又はチオール基である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記カチオン性研磨剤が、前記研磨組成物中に、前記研磨組成物の総重量に対して0.01重量%~50重量%の量で存在する、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記酸が、ギ酸、酢酸、マロン酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、アジピン酸、コハク酸、乳酸、シュウ酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、2-ホスホノ-1,2,4-ブタントリカルボン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンホスホン酸、アミノ酢酸、過酢酸、酢酸カリウム、フェノキシ酢酸、グリシン、ビシン、ジグリコール酸、グリセリン酸、トリシン、アラニン、ヒスチジン、バリン、フェニルアラニン、プロリン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン、チロシン、安息香酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、ホスホン酸、塩酸、過ヨウ素酸、及びこれらの混合物から成る群より選択される、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記塩基が、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化リチウム、イミダゾール、トリアゾール、アミノトリアゾール、テトラゾール、ベンゾトリアゾール、トリトリアゾール、ピラゾール、イソチアゾール、及びこれらの混合物から成る群より選択される、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記酸又は塩基が、前記研磨組成物中に、前記研磨組成物の総重量に対して0.0001重量%~30重量%の量で存在する、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記カチオン性研磨剤が、1nm~5000nmの平均粒子サイズを有する、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記研磨組成物が、0mV~+100mVのゼータ電位を有する、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記研磨組成物が、0.01mS/cm~100mS/cmの導電性を有する、請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
窒化ケイ素及びポリシリコンを基材の表面に有する前記基材に、請求項1~請求項14のいずれか1項に記載の研磨組成物を適用すること;並びに
パッドを前記基材と接触させ、前記パッドを前記基材に対して動かすこと、
を含む方法。
【請求項16】
前記第一の除去率の前記第二の除去率に対する比が、少なくとも20:1である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記研磨組成物とポリシリコンとの間のゼータ電位差が、20mV以上であり、前記研磨組成物と窒化ケイ素との間のゼータ電位差が、20mV以下である、請求項15又は請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記方法が、前記基材上のポリシリコンのすべてを除去する、請求項15~請求項17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記基材上の窒化ケイ素の少なくとも一部を除去することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記基材が、金属、酸化金属、窒化金属、及び誘電体材料から成る群より選択される追加の材料をさらに含む、請求項15~請求項19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記研磨組成物によって処理された前記基材から半導体デバイスを製造することをさらに含む、請求項15~請求項20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
a)アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、これらの共形成物、又はこれらの混合物を含むカチオン性研磨剤;
b)酸又は塩基;及び
c)水;
を含み、pH2~7であり、ハロゲン化物塩及び界面活性剤を含まない研磨組成物であって、
前記カチオン性研磨剤は、前記研磨組成物の1重量%~5重量%であり、
前記研磨組成物が、ポリシリコンの第一の除去率、窒化ケイ素の第二の除去率を有し、前記第一の除去率の前記第二の除去率に対する比は、少なくとも2:1であり、
前記研磨組成物が、酸化ケイ素の第三の除去率を更に有し、前記第三の除去率の前記第二の除去率に対する比は、少なくとも2:1である、
研磨組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨組成物、及びこれを用いて半導体基材を研磨するための方法に関する。より詳細には、本発明は、化学機械研磨組成物、及び半導体基材から特定の誘電体層を選択的に除去するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業は、プロセス及び集積化の革新によるデバイスのさらなる小型軽量化によって、チップ性能の向上へと走り続けている。化学機械研磨/平坦化(CMP)は、トランジスタレベルでの多くの複雑な集積化スキームを可能とし、それによってチップ密度が高められることから、強力な技術である。当然のこととして、フロントエンド(FEOL)トランジスタ形成工程では、多くの新しいCMP工程及び必要条件が存在する。FEOL材料スタックは、典型的には、金属ゲート、及び誘電体材料の複数のスタックを含む。広く用いられている誘電体膜は、窒化ケイ素(SiN)、酸化ケイ素(SiO又はTEOS)、ポリシリコン(P-Si)、炭窒化ケイ素(SiCN)、スピンオンカーボン(SOC)カーボンハードマスク、及びlow-k/ウルトラlow k(SiCOH、SiOC)誘電体膜である。Intel Corporationによる45nmのhigh-k金属ゲート技術及び22nmのFinFET技術によるチップ製造の導入により、SiN、SiO、SiCN、及びP-Si膜が非常により多く用いられ始め、FEOLでの用途が増加している。加えて、バックエンド(BEOL)用途でも、従来のバリア材料(Ta/TaN;Ti/TiN)の抵抗率が先進のサブ10nm製造ノードまでスケールダウンされていないことから、半導体企業は、様々なBEOL材料スタックにSiN、SiO、及びP-Siなどの誘電体を用いている。FEOL及びBEOLの両方において、これらの誘電体膜は、エッチング停止層、キャップ材料、スペーサー材料、追加ライナー、拡散/パッシベーションバリア、ハードマスク、及び/又は停止層(stop-on layer)として用いられ得る。
【0003】
したがって、誘電体膜は、先進の半導体製造において非常により多く用いられている。CMPの観点から、誘電体を組込むこれらの集積のほとんどにおいて、これらの膜の2若しくは3つに対して作用/研磨(又は停止)可能である研磨組成物(スラリー)が必要とされる。例えば、SiNを除去することができるが、SiO/P-Siを除去することはできない(停止する)スラリー、又はSiOを除去することができるが、SiNを除去することはできない(停止する)スラリーを開発することが望ましい。複数の要件を有するそのようなシステムを設計するためには、従来の手法に、これらの誘電体膜の1又は複数の率を向上させる又は阻害することができる何らかの化学的促進剤又は阻害剤が追加されてきた。典型的な例は、セリア研磨剤を含有する配合物によるSiNの率をさらに阻害するアミノ酸を化学物質として用いた浅溝分離(STI)スラリーである。これらのSTIスラリーは、SiNよりも選択的にTEOSを研磨し、高いTEOSの率を示し、SiN膜で停止する(又はゼロに近い研磨率を有する)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
誘電体(SiN、TEOS、P-Si)膜が、固体面ではあるが、静電荷を有することは注目に値する。電荷(正、負、又はゼロ)は、ゼータ電位として現れ、pHと共に変動する。同様に、コロイド状分散体としての研磨剤(例えばシリカ)は、pHと共に変動するそれ自体の電荷及びゼータ電位値を有する。さらに、これらの研磨剤は、負のゼータ電位(例:アニオン性シリカ)又は正のゼータ電位(例:カチオン性シリカ)を示すために、表面修飾され得る。したがって、研磨剤及び誘電体膜の両方が、静電荷を有しており、研磨剤及び誘電体膜が特定のpHで異なる電荷(正対負)を有する場合は、これら二者の間で引力が生じ、結果としてこのことが、その特定の研磨剤を用いることによるその特定の膜の高い除去率に繋がる。反対に、研磨剤及び誘電体膜が類似の電荷(両方が正又は両方が負)を有する場合は、これら二者の間で反発力が生じ、その特定の研磨剤を用いることによる低い(例:ゼロに近い)除去率、及びその誘電体膜での停止に繋がる。したがって、静電引力及び反発力は、表面電荷(数ある中でも)によって、すなわち液体スラリー/研磨剤のゼータ電位及び固体誘電体表面のゼータ電位によって引き起こされる。本開示は、窒化ケイ素、酸化ケイ素、ポリシリコン、窒化炭化ケイ素、及びlow/ウルトラlow k誘電体膜などの複数の誘電体膜を有する基材を選択的及び優先的に研磨するための帯電した研磨剤を含有する研磨組成物(スラリー)の設計を教示する。このCMPスラリーの設計は、主として、研磨剤と誘電体膜との間の静電引力及び/又は静電反発力の利用に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
全体として、本開示は、複数の誘電体膜を有する基材において、ある誘電体膜を他の誘電体膜に対して選択的及び優先的に研磨することができる水性研磨組成物に関する。より詳細には、本開示は、研磨剤の表面電荷と誘電体膜の表面電荷とに基づいて選択的に材料を除去するための研磨組成物(スラリー)の設計について考察する。研磨剤の表面電荷が誘電体膜の表面電荷と同じ極性を有する場合、これら2つの材料は反発し、それによって、誘電体膜の除去率(RR)は低下する。反対に、研磨剤の表面電荷が誘電体膜の表面電荷とは逆の極性を有する場合、これら2つの材料間には引力が生じ、この誘電体膜のRRは上昇する。表面電荷に基づく引力/反発力及びこれらの力に応じたRRというこの概念を、図1に示す。図1から分かるように、帯電した研磨剤(例:アニオン性又はカチオン性シリカ)を用いることで、ある誘電体材料を別の誘電体材料に対して選択的に除去するためのシステムの設計に役立てることができる。例えば、図1において、ケース1は、アニオン性シリカ(負のゼータ電位を有する負に帯電したシリカ)を用いることで、研磨組成物が、SiN誘電体(正のゼータ電位を有する)を高いRRで選択的に研磨することができ、同時に、SiO/low-k/P-Si誘電体材料(負のゼータ電位を有する)の研磨は、非常に低い除去率であることを示している。反対に、図1において、ケースIIは、カチオン性シリカ(正のゼータ電位を有する正に帯電したシリカ)を用いることで、研磨組成物が、SiO/low-k/P-Si誘電体材料を高いRRで(引力に起因する)選択的に研磨することができ、同時に、SiN誘電体の研磨は、非常に低いRRであることを示している。ある実施形態では、この電荷に基づく設計概念は、酸性のpH2~7の範囲で適用可能であり得る。
【0006】
研磨剤の電荷に基づいた誘電体研磨のためのスラリー設計の概念を、さらに、図1の表にまとめる。図1の表から分かるように、アニオン性研磨剤(ケースI)を用いることで、SiN膜を、他の誘電体に対して選択的及び優先的に研磨することができ、一方カチオン性研磨剤(ケースII)を用いることで、SiO/low-k/P-Si誘電体膜を、SiN膜に対して選択的及び優先的に研磨することができる。
【0007】
したがって、1つの態様では、本開示は、研磨組成物を提供する。組成物は、アニオン性研磨剤、酸/塩基pH調節剤、及び水を含む。研磨組成物は、pHが約2~約7である。この実施形態では、アニオン性研磨剤を用いることによって、研磨組成物は、SiNを、SiO/low-k/P-Si膜に対して選択的及び優先的に研磨することができる(図1:ケースI)。例えば、研磨組成物は、窒化ケイ素の第一の除去率、ポリシリコンの第二の除去率を示すことができ、第一の率の第二の率に対する比は、少なくとも約2:1である。
【0008】
別の態様では、本開示は、(a)窒化ケイ素及びポリシリコンを基材の表面に有する基材に研磨組成物を適用すること、並びに(b)パッドを基材と接触させ、パッドを基材に対して動かすことを含む研磨方法を提供する。組成物は、アニオン性研磨剤、酸/塩基pH調節剤、及び水を含む。研磨組成物は、pH約2~約7である。方法は、第一の率で窒化ケイ素の少なくとも一部を除去することができ、方法は、第二の率でポリシリコンの少なくとも一部を除去し、第一の率の第二の率に対する比は、少なくとも約2:1である。
【0009】
別の態様では、本開示は、SiN誘電体膜に対してSiO/low-k/P-Si膜を高い選択性及び高い研磨率で研磨する研磨組成物及び研磨方法を提供する。研磨組成物は、カチオン性研磨剤、酸/塩基pH調節剤、及び水を含む。研磨組成物は、pH約2~約7である。この実施形態では、カチオン性研磨剤を用いることにより、研磨組成物は、SiNに対してSiO/low-k/P-Si膜を選択的及び優先的に研磨することができる(図1:ケースII)。ある実施形態では、カチオン性研磨剤は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、これらの共形成物、又はこれらの混合物を含んでよい。ある実施形態では、カチオン性研磨剤は、約1nm~約5000nmの平均粒子サイズを有するセリアを含んでよい。ある実施形態では、カチオン性研磨剤を含有する研磨組成物は、ハロゲン化物塩を実質的に含まない。
【0010】
なお別の態様では、本開示は、(a)窒化ケイ素、並びに酸化ケイ素及びポリシリコンのうちの少なくとも一方を基材の表面に有する基材に、カチオン性研磨剤、酸又は塩基、及び水を含み、pH約2~約7である有する研磨組成物を適用すること、並びに(b)パッドを基材と接触させ、パッドを基材に対して動かすことを含む研磨方法を提供する。方法は、第一の率で酸化ケイ素及びポリシリコンのうちの少なくとも一方の少なくとも一部を除去し、方法は、第二の率で窒化ケイ素の少なくとも一部を除去し、第一の率の第二の率に対する比は、少なくとも約2:1である。
【0011】
なお別の態様では、本開示は、組成物の使用可能期間及び/又は有効期限に関して、長い保存期間を有するアニオン性/カチオン性研磨剤を含有する研磨組成物を提供する。特に、アニオン性/カチオン性研磨剤を含有する研磨組成物のゼータ電位によって測定されるコロイド状分散体の安定性は、通常の/非イオン性コロイド状シリカを有する組成物と比較され、対比される。一般的に、通常の/非イオン性コロイド状シリカは、誘電体膜を研磨するための酸性pHの系での使用には(単独では)適さない。したがって、アニオン性/カチオン性研磨剤を含有する研磨組成物は、酸性pHの系における帯電した研磨剤のより優れた組成物安定性に起因して、複数の誘電体を含む基材の研磨での使用において、非イオン性シリカよりもはるかに優れている。
【0012】
なお別の態様では、本開示の組成物は、使用時点(POU)で(すなわち、研磨ツールを開始する前に)、CMP性能を変化させることなく希釈することができる。例えば、濃縮研磨組成物は、POUの2×であってよい。CMPが、水で2×物を希釈してPOUでの1×配合スラリーの成分濃度にすることによって行われる場合、濃縮配合物(2×)対希釈配合物(1×)で性能は悪化しない。類似の方法を用いて、より濃縮された研磨組成物(3×、5×、10×など)を作製することができる。
【0013】
実施形態は、以下の特徴の1以上を含んでよい。
【0014】
ある実施形態では、カチオン性研磨剤を含有する組成物は、酸化ケイ素又はポリシリコンの第一の除去率、窒化ケイ素の第二の除去率を有してよく、第一の率の第二の率に対する比は、少なくとも約2:1である(例えば、少なくとも約8:1)。
【0015】
ある実施形態では、アニオン性研磨剤を含有する組成物は、窒化ケイ素の第一の除去率、ポリシリコンの第二の除去率を有してよく、第一の率の第二の率に対する比は、少なくとも約2:1である(例えば、少なくとも約8:1)。
【0016】
ある実施形態では、カチオン性又はアニオン性研磨剤は、セリア、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、これらの共形成物、又はこれらの混合物を含んでよい。ある実施形態では、カチオン性又はアニオン性研磨剤は、コロイド状アルミナ、コロイド状シリカ、コロイド状セリア、又はコロイド状チタニアを含んでよい。ある実施形態では、カチオン性研磨剤は、カチオン性コロイド状シリカ、又は塩基固定化非イオン性シリカを含んでよい。ある実施形態では、アニオン性研磨剤は、アニオン性コロイド状シリカ、又は酸固定化非イオン性シリカを含んでよい。ある実施形態では、シリカは、テトラメチルオルトシリケートからゾルゲル反応によって作製することができる。ある実施形態では、カチオン性研磨剤は、式(I)の末端基を含んでよく:
-O-X-(CH-Y (I)、
式中、mは1~3の整数であり;nは1~10の整数であり;Xは、Al、Si、Ti又はZrであり;Yは、カチオン性のアミノ基又はチオール基である。ある実施形態では、アニオン性研磨剤は、式(I)の末端基を含んでよく:
-O-X-(CH-Y (I)、
式中、mは1~3の整数であり;nは1~10の整数であり;Xは、Ce、Al、Si、Ti、又はZrであり;Yは酸基である。ある実施形態では、カチオン性又はアニオン性研磨剤は、組成物中に、組成物の総重量に対して約0.01重量%~約50重量%の量で存在してよい。
【0017】
ある実施形態では、酸は、ギ酸、酢酸、マロン酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、アジピン酸、コハク酸、乳酸、シュウ酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、2-ホスホノ-1,2,4-ブタントリカルボン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンホスホン酸、アミノ酢酸、過酢酸、酢酸カリウム、フェノキシ酢酸、グリシン、ビシン、ジグリコール酸、グリセリン酸、トリシン、アラニン、ヒスチジン、バリン、フェニルアラニン、プロリン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン、チロシン、安息香酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、ホスホン酸、塩酸、過ヨウ素酸、及びこれらの混合物から成る群より選択されてよい。ある実施形態では、塩基は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化リチウム、イミダゾール、トリアゾール、アミノトリアゾール、テトラゾール、ベンゾトリアゾール、トリトリアゾール、ピラゾール、イソチアゾール、及びこれらの混合物から成る群より選択されてよい。ある実施形態では、酸又は塩基は、組成物中に、組成物の総重量に対して約0.0001重量%~約30重量%の量で存在してよい。
【0018】
ある実施形態では、カチオン性又はアニオン性研磨剤は、約1nm~約5000nmの平均粒子サイズを有する。
【0019】
ある実施形態では、カチオン性研磨剤を含有する研磨組成物は、約0mV~約+100mVのゼータ電位を有してよい。ある実施形態では、アニオン性研磨剤を含有する研磨組成物は、約0mV~約-100mVのゼータ電位を有してよい。
【0020】
ある実施形態では、研磨組成物は、約0.01mS/cm~約100mS/cmの導電率を有してよい。
【0021】
ある実施形態では、カチオン性研磨剤を含有する研磨組成物と酸化ケイ素又はポリシリコンとの間のゼータ電位差は、20mV超であり、カチオン性研磨剤を含有する研磨組成物と窒化ケイ素との間のゼータ電位差は、20mV未満である。ある実施形態では、アニオン性研磨剤を含有する研磨組成物と窒化ケイ素との間のゼータ電位差は、約20mV以上であり、アニオン性研磨剤を含有する研磨組成物とポリシリコンとの間のゼータ電位差は、約20mV以下である。
【0022】
ある実施形態では、カチオン性研磨剤を含有する研磨組成物を用いる研磨方法は、基材上の酸化ケイ素及びポリシリコンのうちの少なくとも一方を実質的にすべて除去する。このような実施形態では、研磨方法は、さらに、基材上の窒化ケイ素の少なくとも一部(例えば、実質的にすべて)を除去する工程も含んでよい。
【0023】
ある実施形態では、アニオン性研磨剤を含有する研磨組成物を用いる研磨方法は、基材上の窒化ケイ素を実質的にすべて除去する。このような実施形態では、研磨方法は、さらに、基材上のポリシリコンの少なくとも一部(例えば、実質的にすべて)を除去する工程も含んでよい。
【0024】
ある実施形態では、基材は、さらに、金属、酸化金属、窒化金属、及び誘電体材料から成る群より選択される追加の材料を含んでもよい。ある実施形態では、研磨方法は、さらに、研磨組成物によって処理された基材から半導体デバイスを製造することも含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、様々な誘電体を選択的に研磨するための研磨剤の電荷に基づく設計概念を概略的に示す。ケースI(左側)は、アニオン性研磨剤を用いてSiNを選択的に研磨し、TEOS(SiO膜)/low-k/P-Si誘電体膜で停止する例を詳細に示す。ケースII(右側)は、カチオン性研磨剤を用いてTEOS(SiO膜)/low-k/P-Si誘電体膜を選択的に研磨し、SiN膜で停止する例を示す。図1の下にある表は、研磨組成物の設計及び用途の種類に対して適している帯電した研磨剤(アニオン性/カチオン性)の種類をまとめたものである。
図2図2は、pH2~11の範囲における様々な誘電体膜(SiN、SiO(TEOS)、及びP-Si)及びシリカの種類(通常/非イオン性コロイド状シリカ(S)、カチオン性シリカ(C)、及びアニオン性シリカ(A))のゼータ電位を示す。さらに、図2は、pH2~7の範囲において、ゼータ電位に従って、CシリカはSiN膜とは反発し、SiO(TEOS)及びP-Si膜とは引き合い、一方Aシリカは、SiN膜とは引き合い、SiO(TEOS)及びP-Si膜とは反発することも示している。
図3図3は、実施例1(図1に示されるケースI)で得られたデータに基づくアニオン性研磨剤を用いた電荷に基づく設計概念を示す。図3に基づくと、CMPスラリー配合物にアニオン性研磨剤が用いられた場合、研磨剤上の負電荷がSiN膜上の正電荷に引き寄せられ(ゼータ電位参照)、SiN膜の高いCMP除去率(RR)が得られるものと考えられる。反対に、SiO(TEOS)膜は、負電荷(アニオン性研磨剤と同様)を有し、研磨剤と反発するため、アニオン性研磨剤を含有するCMP配合物が、SiO(TEOS)膜で停止するか、又はSiO(TEOS)膜の非常に低いCMP RRを示すことになるものと考えられる。
図4図4は、実施例2で得られたデータに基づいたケースIの別のシナリオを示す。図4に基づくと、アニオン性研磨剤を用いることで、異なる電荷間の引力に起因して、SiN膜の高いCMP除去率(RR)が得られるものと考えられる。反対に、アニオン性研磨剤及びP-Si膜は類似の負電荷を有することから、これらは互いに反発し、したがって、アニオン性研磨剤を含有する研磨組成物は、P-Si膜の非常に低いCMP RRを与える(又はP-Si膜で停止する)ものと考えられる。
図5図5は、実施例3(図1に示されるケースII)で得られたデータに基づくカチオン性研磨剤を用いた電荷に基づく設計概念の1つのシナリオを示す。酸性pHの系でのCMPスラリー配合物にカチオン性研磨剤が用いられた場合、研磨剤上の正電荷がSiO(TEOS)膜上の負電荷に引き寄せられ(ゼータ電位参照)、SiO(TEOS)膜の高いCMP除去率(RR)が得られるものと考えられる。反対に、SiN膜は、正電荷(カチオン性研磨剤と同様)を有し、カチオン性研磨剤と反発するため、カチオン性研磨剤を含有するCMP配合物が、SiN膜で停止するか、又はSiN膜の非常に低いCMP RRを示すことになるものと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は、研磨組成物、さらにはそれを用いて基材を研磨する方法を提供する。研磨組成物は、全体として、(a)カチオン性又はアニオン性研磨剤、(b)pH調節剤としての酸及び/又は塩基、及び(c)水を含む。研磨組成物は、約2~約7のpHを有してよい。本開示の研磨組成物は、「帯電した」研磨剤と固体誘電体膜表面上の電荷との特有の静電荷相互作用により、誘電体(窒化ケイ素(SiN)、酸化ケイ素(TEOS:テトラエチルオルトシリケート)、ポリシリコン(P-Si)、及びlow-k/ウルトラlow k(SiCOH)誘電体)膜を選択的及び優先的に研磨又は除去することができる。有利なCMP材料除去率(RR)を得るためのこの特有な研磨剤及び誘電体膜の電荷相互作用に基づいた研磨組成物(スラリー)設計は、本開示の主題である。そのような研磨組成物は、上記で述べた誘電体膜に加えて、コバルト、銅、タングステン、タンタル、チタン、ルテニウム、アルミニウム、及びこれらの窒化物及び酸化物などの金属を含む材料/膜スタックを研磨するために用いることもできる。
【0027】
本開示の研磨組成物は、概して、アニオン性(負に帯電した)研磨剤又はカチオン性(正に帯電した)研磨剤のいずれかである帯電した研磨剤を含む。一般的に、帯電した研磨剤を含有する研磨組成物(例えば、コロイド状分散体)は、ゼータ電位プロットで見られる静電荷を有する。界面動電位と称される場合もあるゼータ電位は、固液界面での帯電挙動を表す。言い換えると、固液界面での界面電荷分布が、ゼータ電位と称される。
【0028】
アニオン性研磨剤は、負電荷が付与されたコロイド状研磨剤であり、ゼータ電位プロットにおいて負の電位値(単位はmV)を示し、一方カチオン性研磨剤は、正のゼータ電位値を示す(図2;pH2~6参照)。典型的には、非イオン性の/従来のコロイド状シリカ分散体(図2のコロイド状シリカ(S))は、そのゼータ電位が小さいことに起因して、酸性pHの系では多少不安定である。
【0029】
一般的に、ゼータ電位は、研磨剤分散体、さらには研磨剤を含有するCMP研磨組成物(スラリー)分散体の分散安定性の良好な指標である。加えて、SiO膜、SiN膜、及びP-Si膜などの薄膜もゼータ電位を有する(図2参照)。ゼータ電位は、分散媒体と分散粒子に伴われる流体の固定相との間の電位差を測定するものである(界面二重層中におけるすべり面の位置と界面から離れたバルク流体中のある点の電位差と称される場合もある)。ゼータ電位は、mVで表され、粒子の電気泳動移動度を測定する。分散体(研磨剤含有コロイド状分散体又は研磨剤を含有する研磨分散体)のゼータ電位は、Colloidal Dynamics製のAcoustoSizer IIツール、又はMalvern Instruments製のMalvernツールなどの市販のツールによって測定することができる。AcoustoSizerは、音波技術に基づくものであるが、Malvernツールは、動的光散乱原理に基づいている。同様に、誘電体膜又は研磨パッドなどの固体表面のゼータ電位(ZP)は、Anton PaarからのSurPASSツールを用いて測定することができる。例えば、図2に示されるSiN、SiO(TEOS)、及びP-Si誘電体膜のZPは、販売業者Anton PaarからのSurPASS 3ツールを用いて測定したものである。
【0030】
ゼータ電位は、粒子間の静電反発力を示すことから、コロイド状分散体の安定性を測定するのに特に有用である。静電安定化分散系におけるゼータ電位の絶対値が大きいほど、反発力が大きく、コロイド状分散体の安定性も高い。反発力が小さいと(ゼータ電位値が小さい)、粒子は互いに引き寄せ合う傾向にあり、したがって、集塊/凝集/塊形成を起こし、分散体の不安定性に繋がる。コロイド化学の原理に従う一般的ガイドラインは、以下の通りである:
【0031】
【表1】

【0032】
ゼータ電位は、粒子の表面電荷及び分散媒体のpHに関連する。セリア、アルミナ、シリカ、チタニア、及びジルコニアなどの研磨剤粒子は、コロイド状分散状態において表面電荷を有する。この表面電荷はpHに応じて変化し、表面電荷のこの変化が間接的に現れるのがゼータ電位値である。ゼータ電位(ZP)がpHと共に変化するに従って、系のZPがゼロとなる特定のpH値が存在し得る。ゼロゼータ電位(特定のpHにおいて)のこの状態は、等電点(IEP)と称される。IEPでの分散系は一般的に非常に不安定であり、IEPのpHでの粒子は凝集する可能性があり、それによって、粒子サイズが増加し得る。非イオン性コロイド状シリカは、酸性条件下で2つのIEP(約pH2及び約pH4)を有することから(図2;コロイド状シリカ(S)参照)、酸性pHの系では不安定である。したがって、非イオン性コロイド状シリカを2~5の範囲の作業pHを有する研磨組成物(スラリー)に用いることは、研磨剤が不安定であり(ZPが0~±10であるため;図2参照)、凝集/ゲル化を起こして、これらのCMPスラリーの粒子サイズが増加することから、技術的に非常に困難である。CMPスラリーの粒子サイズのこの増加は、研磨の過程でウェハ上に傷や欠陥をもたらし、ウェハ及びダイス全体にわたって一定ではないCMP材料除去率(RR)を引き起こし、したがって、最終的にはデバイスの不良という結果になることから有害である。したがって、安定な研磨剤を含有するCMPスラリーを配合することができるように、酸性pHの系において安定である研磨剤(シリカなど)を有することが望ましい。さらに、誘電体を研磨するために用いられるほとんどのFEOLスラリーは、pHが酸性の範囲で用いられ、このことから、酸性pHで安定なコロイド状研磨剤分散体を有することの必要性が再度強調される。したがって、研磨剤粒子の安定性を高めるために、研磨剤上に負/正電荷を付与し、それによってその絶対ゼータ電位値を上昇させてその粒子を酸性pHの系で安定にするために、研磨剤の表面をアニオン性基又はカチオン性基で修飾することができる。例えば、pH2~5の範囲で>+30mVのZPを有し、したがってこのpH範囲において安定なコロイド状分散体(図2:カチオン性シリカ(C))であるカチオン性シリカ(Cシリカ)が得られるように、非イオン性シリカ(図2;コロイド状シリカ(S))の末端シラノール(Si-O-H)基の一部を末端カチオン性基で修飾することができる。非イオン性シリカのアニオン性基による類似の修飾では、2~8の全pH範囲内で約-50mVのZPを有するアニオン性シリカ(Aシリカ)を得ることができる(図2:アニオン性シリカ(A))。
【0033】
本発明の開示では、修飾されたカチオン性/アニオン性シリカのゼータ電位(ZP)及び3つの広く普及している誘電体膜SiN、SiO(TEOS)、及びP-SiのZPを注意深く分析した。これらの材料の6つすべて(3種類のシリカ及び3種類の膜)のZPを、図2に示す。理論に束縛されるものではないが、本発明は、2~7の酸性pH範囲において、これら6つの材料のZPの変動、及びある帯電した研磨剤とある種類の膜との間の静電反発力/引力に基づいて、様々な選択的FEOL誘電体CMPスラリーを配合することができることを主張するものである。加えて、以下の実施例1~3に示される誘電体に対するCMP研磨データは、研磨組成物が、半導体基材上の誘電体膜の研磨を、研磨剤粒子の電荷及び除去されるべき膜の電荷に基づいて優先的及び選択的に行うことができるという仮説を裏付けている。本開示は、研磨剤及び誘電体膜のゼータ電位の変動(値、極性)(図2参照)を活用するものであり、望ましいCMP研磨性能を得るために、静電荷相互作用を利用するものである。
【0034】
本開示の文脈において、帯電した研磨剤とは、表面修飾された研磨剤、したがって、正電荷(カチオン性研磨剤)又は負電荷(アニオン性研磨剤)のいずれかを有する研磨剤を意味する。例えば、非イオン性コロイド状シリカの末端シラノール(Si-O-H)基の一部を、シランカップリング剤によって修飾することができる。シランカップリング剤は、典型的には以下の式であり:
(RO-)Si-(CH-アニオン性/カチオン性基; 1
式中、Rは、アルキル(メチル(CH)又はエチル(CHCH)など)であり;nはカップリング剤中のCH基の数であり(典型的には、nは1~10の値を有する);アニオン性/カチオン性基は、帯電したシリカの種類に応じた(アニオン性対カチオン性)末端基を意味する。このシランカップリング剤は、加水分解縮合反応によって非イオン性シリカと反応させて、帯電した/修飾されたシリカを得ることができる。この反応は、以下のように示される:
Si-O-H/SiO + (RO-)Si-(CH-アニオン性/カチオン性基 → 帯電したシリカ 2
【0035】
反応2の帯電したシリカは、シリカ(SiO)、ある程度の残留シラノール基(Si-OH)、及びシランカップリング剤のカチオン性/アニオン性基((-O-)Si-(CH-アニオン性/カチオン性)をシリカと結合させているある程度のシロキサン(-Si-O-Si-O-)を含有する。非イオン性シリカがこれらのシランカップリング剤で修飾されると、修飾されたシリカのゼータ電位が変化し、これらの「帯電した」分散体は、ここで、酸性pHの系において安定となる。
【0036】
いくつかの場合では、アニオン性シリカを形成するために適切なシランカップリング剤は、メルカプトアルキルトリメトキシシラン(例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランであり得る。そのような実施形態では、上記で示したシランカップリング反応(反応2参照)が完了した後、末端-SH(チオール)基を、過酸化水素(又は別の酸化剤)を用いて酸化して、修飾されたアニオン性シリカ上に末端-SOH基を形成することができる。
【0037】
修飾前(非イオン性シリカ(S))及び修飾後(カチオン性(C)及びアニオン性(A)シリカ)のシリカのゼータ電位を図2に示す。負のゼータ電位は、分散体中において粒子表面が負に帯電(アニオン性)していることを示し、カチオン性研磨剤の場合はその逆である(正に帯電)。非イオン性研磨剤は、研磨剤粒子の一部にアニオン性/カチオン性基を結合させることによって帯電した研磨剤へと修飾される。シランカップリング剤との化学結合によって帯電した研磨剤を作製するためのこの修飾は、上記で示される。しかし、シリカ粒子上に自己組織化された複数の単層を物理的に形成すること、又はシリカ粒子の表面上にアニオン性/カチオン性基を物理的に吸着させることなどの他の方法を用いて、帯電した研磨剤を得ることもできる。さらに、「非イオン性シリカ」から修飾される「アニオン性シリカ」は、アンモニウム、ナトリウム、カリウム、又はアルミニウムのカチオンなどのカチオン性種を導入することによって行われてもよい。これは、水ガラスシリカ(ケイ酸ナトリウム(水ガラス)原材料から作られた無機シリカ)の場合に特に当てはまり、この場合、粒子の表面にアルミニウム(Al)を組込むことにより、-Al-OH基が形成される。この結果、pH2~6の系において非常に高度に負に帯電した表面(アニオン性シリカ)が得られる。反対に、水ガラスシリカからのカチオン性ゾルの場合、表面は、酸化アルミニウム(Al)で被覆されてよい。これにより、特にpH4よりも低い酸性pH値において、シリカの表面上の電荷が正となる(カチオン性シリカ)。
【0038】
本開示の研磨組成物に用いられるシリカ(カチオン性又はアニオン性)は、CMP産業で用いられる4つの最も普及したシリカ作製方法のうちのいずれか1つから作製されてよく:1)前駆体/出発物質としてのテトラメチルオルトシリケート(TMOS:Si(OCH)のゾルゲル反応(加水分解縮合を含む)によって得られる有機シリカ、2)前駆体/出発物質としてのテトラエチルオルトシリケート(TEOS:Si(OCHCH)のゾルゲル反応(加水分解縮合を含む)によって得られる有機シリカ、3)前駆体/出発物質としてのケイ酸ナトリウム(例:水ガラス/ケイ酸ナトリウム:NaSiO)の希釈、イオン交換、種結晶成長、及び濃縮反応によって得られる無機シリカ、並びに4)前駆体/出発物質としてのテトラクロロシラン(SiCl)の気相燃焼反応によって得られる無機シリカである。4つのシリカ作製方法の中でも、本開示で用いられる帯電した研磨剤のために最も好ましい方法は、TMOSから得られる有機シリカである(上記方法1)。
【0039】
帯電した研磨剤(すなわち、カチオン性又はアニオン性研磨剤)は、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、これらの共形成物、又はこれらの混合物などの酸化物を含んでよい。ある実施形態では、カチオン性又はアニオン性研磨剤は、コロイド状アルミナ、コロイド状シリカ、又はコロイド状チタニアなどのコロイド状酸化物を含んでよい。
【0040】
ある実施形態では、カチオン性研磨剤は、カチオン性コロイド状シリカ、又は塩基固定化非イオン性シリカ(例えば、塩基性基を含むように物理的又は化学的に修飾された非イオン性シリカ)を含んでよい。ある実施形態では、カチオン性研磨剤は、式(I)の末端基を含んでよく:
-O-X-(CH-Y (I)、
式中、mは1~3の整数であり;nは1~10の整数であり;Xは、Ce、Al、Si、Ti、又はZrであり;Yはカチオン性のアミノ基又はチオール基である。ある実施形態では、カチオン性研磨剤は、約1nm以上(例えば、約10nm以上、約100nm以上、約200nm以上、約300nm以上、約400nm以上、又は約500nm以上)から約1000nm以下(例えば、約900nm以下、約800nm以下、又は約700nm以下)の平均粒子サイズを有するセリアを含んでよい。
【0041】
ある実施形態では、アニオン性研磨剤は、アニオン性コロイド状シリカ、又は酸固定化非イオン性シリカ(例えば、酸性基を含むように物理的又は化学的に修飾された非イオン性シリカ)を含んでよい。ある実施形態では、アニオン性研磨剤は、式(I)の末端基を含んでよく:
-O-X-(CH-Y (I)、
式中、mは1~3の整数であり;nは1~10の整数であり;Xは、Ce、Al、Si、Ti、又はZrであり;Yは酸基である。
【0042】
本明細書で述べる「アニオン性基」は、スルホン酸、リン酸、若しくはカルボン酸などの酸、又はこれらの酸のいずれかのアニオン性塩であってよい。「カチオン性基」は、典型的には、アミノ基(-NH)、チオール(-SH)基、金属塩(Na、K、又はAl塩など)、又ははこれらの塩基若しくは関連する塩基のいずれかのカチオン性塩である。例えば、末端-NH基を有する(CHO)Si(CH-NHなどのシランカップリング剤を用いて、末端-NH塩基の基を有するカチオン性シリカを得ることができ、これは、塩基固定化非イオン性シリカと称される場合が多い。市販の帯電した研磨剤は、以下の販売業者から入手可能であり、ベルギーのSolvayからの帯電したセリア、ドイツのEvonik Industriesからの帯電したアルミナ、並びに日本の扶桑化学工業株式会社及び米国イリノイ州のNalco Companyからの帯電したシリカである。本開示において、「帯電した研磨剤」とは、負又は正に帯電した研磨剤を意味し、例えば、対応する販売業者からの上述した市販の帯電した研磨剤が挙げられる。帯電した研磨剤としてはまた、アニオン性/カチオン性基によって化学修飾された(酸固定化など)インハウスの研磨剤、in-situ電荷修飾された研磨剤、複数の単層形成若しくは物理的表面吸着によって物理的に修飾された研磨剤、又は所望される電荷を付与するために適切な他のいずれかの方法によって修飾された研磨剤も挙げられる。これらの帯電した研磨剤を、1以上の他の化学物質と共に組み合わせて用いることで、様々な誘電体膜除去率を有する研磨組成物を得ることができる。
【0043】
本発明では、帯電した研磨剤及び/又はこれらの研磨剤を含有する研磨組成物は、約0mV~約±100mVの範囲内のゼータ電位を有することが好ましい(例えば、約±5mV~約±90mV及び約±10mV~約±80mV)。たとえば、カチオン性研磨剤及びこれらの研磨剤を含有する研磨組成物は、pH2~7(例えば、2~6)の系において、0~+100mVの範囲内のゼータ電位(例えば、正のゼータ電位)を有し得るものであり(例えば、約1~約+100mV、約+5mV~約+90mV、約+10mV~約+80mV、約+20mV~約+70mV、又は約+30mV~約+50mV)、一方、アニオン性研磨剤及びこれらの研磨剤を含有する研磨組成物は、pH2~7(例えば、2~6)の系において、0~-100mVの範囲内のゼータ電位(例えば、負のゼータ電位)を有し得る(例えば、約-1~約-100mV、約-5mV~約-90mV、約-10mV~約-80mV、約-20mV~約-70mV、約-30mV~約-60mV、又は約-40mV~約-50mV)。これは、図2に示される。
【0044】
本明細書で述べる研磨組成物の電荷は、その電気伝導性によって測定することもできる。例えば、研磨組成物は、センチメートルあたり約0.01~約100ミリジーメンス(mS/cm)の範囲内、若しくはその間のいずれかのサブ範囲内、約0.1~約10mS/cm、若しくはその間のいずれかのサブ範囲内、又は約0.5~約5mS/cm、若しくはその間のいずれかのサブ範囲内の導電性を有し得る。
【0045】
帯電した研磨剤(カチオン性又はアニオン性)は、研磨組成物中に、組成物の総重量に対して約0.01重量%~約50重量%、若しくはその間のいずれかのサブ範囲内、又は組成物の総重量に対して約0.05重量%~約40重量%、若しくはその間のいずれかのサブ範囲内の量で存在してよい。例えば、カチオン性又はアニオン性研磨剤は、研磨組成物の総重量に対して、約0.01重量%以上(例えば、約0.1重量%以上、約0.5重量%以上、約1重量%以上、又は約5重量%以上)から約50重量%以下(例えば、約40重量%以下、約30重量%以下、約25重量%以下、約20重量%以下、約10重量%以下、又は約5重量%以下)の量で存在してよい。
【0046】
本開示の研磨組成物は、帯電した研磨剤に加えて、pHを研磨組成物の作業pHに調節するためのpH調節剤(例えば、酸、塩基、又は両方)も含有してよい。pHを調節するための適切な酸としては(限定されないが)、ギ酸、酢酸、マロン酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、アジピン酸、コハク酸、乳酸、シュウ酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、2-ホスホノ-1,2,4-ブタントリカルボン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンホスホン酸、アミノ酢酸、過酢酸、酢酸カリウム、フェノキシ酢酸、グリシン、ビシン、ジグリコール酸、グリセリン酸、トリシン、アラニン、ヒスチジン、バリン、フェニルアラニン、プロリン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン、チロシン、又は安息香酸などのカルボン酸、及び硝酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、ホスホン酸、塩酸、過ヨウ素酸、などの無機酸又はこれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。pHを調節するための適切な塩基としては(限定されないが)、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化リチウム、及びイミダゾール、トリアゾール、アミノトリアゾール、テトラゾール、ベンゾトリアゾール、トリトリアゾール、ピラゾール、又はイソチアゾールなどのいずれかのアゾール含有塩基、並びにこれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0047】
ある実施形態では、pH調節剤(例えば、酸、塩基、又は両方)は、本明細書で述べる研磨組成物の総重量に対して、約0.0001重量%以上(例えば、約0.001重量%以上、約0.01重量%以上、約0.1重量%以上、約0.5重量%以上、約1重量%以上、約5重量%以上、又は約10重量%以上)から約30重量%以下(例えば、約25重量%以下、約20重量%以下、約15重量%以下、約10重量%以下、約5重量%以下、又は約1重量%以下)の量で存在してよい。
【0048】
ある実施形態では、本明細書で述べる研磨組成物は、水などの液体媒体を含んでよい。ある実施形態では、水は、本明細書で述べる研磨組成物の約20重量%以上(例えば、約30重量%以上、約40重量%以上、約50重量%以上、約60重量%以上、約70重量%以上、約80重量%以上、約90重量%以上、又は約95重量%以上)から約99重量%以下(例えば、約98重量%以下、約97重量%以下、約96重量%以下、又は約95重量%以下)の量であってよい。
【0049】
ある実施形態では、本明細書で述べるカチオン性又はアニオン性研磨剤を含有する研磨組成物は、ハロゲン化塩、ポリマー(例えば、カチオン性又はアニオン性ポリマー)、界面活性剤、可塑剤、酸化剤、腐食防止剤(例えば、アゾール又は非アゾール腐食防止剤)、及び/又は非イオン性研磨剤などの1以上の特定の成分を実質的に含んでいなくてもよい。研磨組成物から除外されてよいハロゲン化塩としては、ハロゲン化アルカリ金属(例えば、ハロゲン化ナトリウム又はハロゲン化カリウム)又はハロゲン化アンモニウム(例えば、塩化アンモニウム)が挙げられ、塩化物、臭化物、又はヨウ化物であってもよい。本明細書で用いられる場合、研磨組成物に「実質的に含まれない」成分とは、研磨組成物に意図的に添加されない成分を意味する。ある実施形態では、本明細書で述べる研磨組成物は、研磨組成物に実質的に含まれない上記成分の1又は複数を、約1000ppm以下(例えば、約500ppm以下、約250ppm以下、約100ppm以下、約50ppm以下、約10ppm以下、又は約1ppm以下)で有し得る。ある実施形態では、記載した研磨組成物は、上記成分の1又は複数をまったく含まなくてよい。
【0050】
本開示の組成物のpHは、約2~約7、又はその間のいずれかのサブ範囲内であってよい。pHは、約3~約6、若しくはその間のいずれかのサブ範囲内、又は約3.4~約5.75、若しくはその間のいずれかのサブ範囲内であってもよい。例えば、pHは、約2以上(例えば、約2.5以上、約3以上、約3.5以上、約4以上、約4.5以上、又は約5以上)から約7以下(例えば、約6.5以下、約6以下、約5.5以下、約5以下、約4.5以下、又は約4以下)であってよい。pHは、Thermo Fisher Scientificなどの企業から入手可能であるpHメーターを用いて測定することができる。
【0051】
ある実施形態では、本明細書で述べる帯電した(カチオン性又はアニオン性)研磨剤は、約1nmから5000nm(例えば、約1nm~1000nm、約1nm~500nm、及び約1nm~150nm)又はそのいずれかのサブ範囲内の平均粒子サイズを有してよい。例えば、帯電した研磨剤は、約1nm以上(例:約5nm以上、約10nm以上、約50nm以上、約100nm以上、約200nm以上、約300nm以上、約400nm以上、又は約500nm以上)から約5000nm以下(例えば、約2500nm以下、約1000nm以下、約750nm以下、約500nm以下、約250nm以下、又は約100nm以下)の平均粒子サイズを有してよい。理論に束縛されるものではないが、より小さい粒子サイズを有するアニオン性研磨剤は、より低い(TEOS)RRを優先的に得られるという利点を有し、したがって、より低いTEOS率が必要とされる系(アニオン性シリカ系)においてSiOに対する全体としての選択性が改善されるものと考えられる。反対に、より大きい粒子サイズを有するカチオン性研磨剤は、より高いSiO(TEOS)RRを優先的に得られるという利点を有し、したがって、より高いSiO率が必要とされる系(カチオン性シリカ系)においてSiOに対する全体としての選択性が改善されるものと考えられる。さらに、高いSiN膜率が必要とされるアニオン性シリカ系の場合、より小さい粒子は、より高い全体としての表面積を有し、したがって、表面積の増加と共にシリカ上の活性結合部位も増加するために、SiN膜除去率が高まることから、より小さい粒子サイズが、より高いSiN除去率を与えるものと考えられる。本明細書で用いられる場合、本開示で用いられる「粒子サイズ」は、動的光散乱技術によって特定される平均粒子サイズ(MPS)である。例えば、MPSは、Malvern Instruments Ltd.から市販されている動的光散乱ツールを用いることによって測定されてよい。
【0052】
上記考察及び以下の例において、本開示の組成物は、最も普及している誘電体膜、すなわち、SiN膜、SiO(TEOS)膜、及びP-Si膜の研磨と組み合わせて考察される。しかし、本発明の組成物は、炭化ケイ素(SiC)、炭窒化ケイ素(SiC)、炭化酸化ケイ素(SiC)、スピンオンカーボン(C)、カーボンのみ(C)、及び水素化炭化ケイ素(SiC)の研磨に用いられてもよい。さらに、研磨される誘電体材料は、low-k誘電体(SiC)及びウルトラlow k(ULK)誘電体(SiC)材料であってもよい。low-k及びULK誘電体材料のいくつかの一般的な例は、それぞれ、Applied MaterialsからのBlack Diamond I及びIIである。
【0053】
ある実施形態では、本明細書で述べるCMP研磨組成物又はスラリーは、様々な密度及び厚さのレベルで金属及び誘電体膜という異種の組み合わせを有するパターン形成されたウェハの研磨に用いることができる。CMP組成物の最終的な目標は、パターン形成されたウェハ上のすべての凸部及び凹部を平らにし、平坦化することである。したがって、本開示の研磨組成物は、誘電体膜の研磨に用いられる場合、パターン形成されたウェハ上の金属、酸化金属、又は窒化金属膜も研磨することができる。研磨され得る金属の一般的な例としては、銅、ルテニウム、コバルト、アルミニウム、タンタル、チタン、及びタングステンが挙げられる。同様に、研磨され得る酸化金属の一般的な例としては、酸化ハフニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化タングステン、及び酸化イットリウムが挙げられる。研磨され得る窒化金属の一般的な例としては、窒化タンタル、窒化チタン、窒化タングステン、及び窒化コバルトが挙げられる。したがって、本開示の研磨組成物は、集積化の必要によって、多くの誘電体膜及び金属/酸化金属/窒化金属膜を、パターン形成されたウェハの研磨中のいずれの時点で研磨してもよい。
【0054】
全般に、本開示は、本明細書で述べる研磨組成物の1又は複数を用いる方法にも言及する。
【0055】
ある実施形態では、本開示は、カチオン性研磨剤を含有する研磨組成物を用いた研磨方法を特徴とする。そのような実施形態では、方法は、(a)窒化ケイ素、並びに酸化ケイ素及びポリシリコンのうちの少なくとも1つを基材の表面に有する基材に、カチオン性研磨剤、酸又は塩基、及び水を含み、約2~約7のpHを有する研磨組成物を適用すること、並びに(b)パッドを基材と接触させ、パッドを基材に対して動かすことを含み得る。基材は、パターン形成されたウェハなどの半導体基材であってよい。そのような実施形態では、方法は、第一の率で、酸化ケイ素及びポリシリコンのうちの少なくとも1つの少なくとも一部を除去することができ、方法は、第二の率で、窒化ケイ素の少なくとも一部を除去することができ、第一の率の第二の率に対する比は、少なくとも約2:1である。ある実施形態では、第一の率の第二の率に対する比は、約3:1以上(例えば、約4:1以上、約5:1以上、約6:1以上、約7:1以上、約8:1以上、約9:1以上、約10:1以上、約15:1以上、約20:1以上、又は約50:1以上)又は約200:1以下(又は約100:1以下)であってよい。
【0056】
ある実施形態では、カチオン性研磨剤を含有する研磨組成物と酸化ケイ素又はポリシリコンとの間のゼータ電位差は、約20mV以上(例えば、約30mV以上、約40mV以上、約50mV以上、約60mV以上、約70mV以上、約80mV以上、約90mV以上、又は約100mV以上)、及び約200mV以下(例えば、約150mV以下)である。ある実施形態では、カチオン性研磨剤を含有する研磨組成物と窒化ケイ素との間のゼータ電位差は、約20mV以下(例:約15mV以下、約10mV以下、約5mV以下、又は約1mV以下)、又は約0mVである。理論に束縛されるものではないが、カチオン性研磨剤を含有する研磨組成物が、酸化ケイ素又はポリシリコンに対して相対的に大きいゼータ電位差を有し、窒化ケイ素に対して相対的に小さいゼータ電位差を有する場合、研磨組成物は、実質的な量で窒化ケイ素を除去することなく(すなわち、SiNで停止する)、酸化ケイ素又はポリシリコンを選択的に除去することができるものと考えられる。
【0057】
ある実施形態では、カチオン性研磨剤を含有する研磨組成物を用いる研磨方法は、基材上の酸化ケイ素の実質的にすべて、及び/又はポリシリコンの実質的にすべてを除去することができる。ある実施形態では、そのような研磨方法は、さらに、基材上の窒化ケイ素の少なくとも一部(例えば、実質的にすべて)を除去する工程を含んでよい(例えば、アニオン性研磨剤を含有する研磨組成物を用いることによって)。
【0058】
ある実施形態では、本開示は、アニオン性研磨剤を含有する研磨組成物を用いる研磨方法を特徴とする。そのような実施形態では、方法は、(a)窒化ケイ素及びポリシリコンを基材の表面に有する基材に、アニオン性研磨剤、酸又は塩基、及び水を含み、約2~約7のpHを有する研磨組成物を適用すること、並びに(b)パッドを基材と接触させ、パッドを基材に対して動かすことを含み得る。基材は、パターン形成されたウェハなどの半導体基材であってよい。そのような実施形態では、方法は、第一の率で、窒化ケイ素の少なくとも一部を除去することができ、方法は、第二の率で、ポリシリコンの少なくとも一部を除去し、第一の率の第二の率に対する比は、少なくとも約2:1である。ある実施形態では、第一の率の第二の率に対する比は、約3:1以上(例えば、約4:1以上、約5:1以上、約6:1以上、約7:1以上、約8:1以上、約9:1以上、約10:1以上、約15:1以上、約20:1以上、又は約50:1以上)又は約200:1以下(又は約100:1以下)であってよい。
【0059】
ある実施形態では、アニオン性研磨剤を含有する研磨組成物と窒化ケイ素との間のゼータ電位差は、約20mV以上(例えば、約30mV以上、約40mV以上、約50mV以上、約60mV以上、約70mV以上、約80mV以上、約90mV以上、又は約100mV以上)、及び約200mV以下(例えば、約150mV以下)である。ある実施形態では、アニオン性研磨剤を含有する研磨組成物とポリシリコンとの間のゼータ電位差は、最大で約20mV(例えば、最大で約15mV、最大で約10mV、最大で約5mV、又は最大で約1mV)、又は約0mVである。理論に束縛されるものではないが、アニオン性研磨剤を含有する研磨組成物が、窒化ケイ素に対して相対的に大きいゼータ電位差を有し、ポリシリコンに対して相対的に小さいゼータ電位差を有する場合、研磨組成物は、実質的な量でポリシリコンを除去することなく(すなわち、ポリシリコンで停止する)、窒化ケイ素を選択的に除去することができるものと考えられる。
【0060】
ある実施形態では、アニオン性研磨剤を含有する研磨組成物を用いる研磨方法は、基材上の窒化ケイ素の実質的にすべてを除去することができる。ある実施形態では、そのような研磨方法は、さらに、基材上のポリシリコンの少なくとも一部(例えば、実質的にすべて)を除去する工程を含んでよい(例えば、カチオン性研磨剤を含有する研磨組成物を用いることによって)。
【0061】
ある実施形態では、カチオン性研磨剤又はアニオン性研磨剤を含有する研磨組成物を用いる研磨方法は、さらに、本明細書で述べる研磨組成物によって処理された基材から、1以上の追加工程によって半導体デバイスを製造することも含んでよい。
【0062】
本明細書で引用されるすべての刊行物(例:特許、特許出願公開、及び論文)の内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【実施例0063】
本開示の研磨組成物及び方法の能力をさらに説明するために、例が提供される。提供される例は、本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、本開示の範囲を限定するとして解釈されるべきではない。
【0064】
[例及び図の概略]
図1及び図2は、誘電体の選択的研磨のための帯電した研磨剤を用いる全体としての概念を説明するものである。図3(実施例1:高SiN/SiO選択性のためのアニオン性シリカ)、図4(実施例2:高SiN/P-Si選択性のためのアニオン性シリカ)、及び図5(実施例3:高SiO/SiN選択性のためのカチオン性シリカ)は、実際の実験結果が、上記の概念と一致するものであることを示している。
【0065】
図1は、ケースIにおいて、アニオン性シリカが用いられた場合、シリカの表面電荷、及びその結果としてスラリーの電荷が負であることを示している。図1はまた、試験した3つの誘電体膜(すなわち、SiN、SiO、及びP-Si膜)の表面電荷も示す。ケースIで分かるように、SiN膜は正の電荷を含み、SiO膜は負の電荷を含む。P-Si膜はSiO膜よりも非常に多い負の電荷を含む。言い換えると、SiN、SiO、及びP-Si膜は、以下の負電荷スケール、P-Si>>SiO>>SiN、に従う。膜のこの静電荷は、pH値に対するゼータ電位として図2にもさらに示される。したがって、ケースIの場合、静電引力及び/又は反発力(引力は、シリカと膜が引き寄せ合うことで、高い除去率(RR)が得られることを意味し;反対に、反発力は、シリカと膜とが反発し合うことで、その膜に対する低いRRが得られることを意味する)に基づいて、アニオン性シリカ(A)は高いSiNのRRを与え、SiO及びP-Si膜に対しては低いRRを与えるという仮説が立てられる。図3及び4から、この仮説が実験的に確認されたことが分かる。
【0066】
反対に、ケースIIの場合、カチオン性シリカ(C)の例が示され、ここで、シリカ、及び結果としてのそのシリカを含有するCMPスラリーは、正の表面電荷/ゼータ電位を有する。図2は、pH2~11の範囲におけるカチオン性シリカ、並びにSiN、SiO、及びP-Si膜のゼータ電位/表面電荷を示す。図1に示されるケースIIでは、カチオン性シリカ(C)は、SiO及び/又はP-Si膜に対しては高いRRが得られ、SiN膜に対しては低いRRが得られるという仮説が立てられる。図5から、この仮説が実験的に確認されたことが分かる。
【0067】
[実施例1:高SiN/SiO選択性のためのアニオン性シリカ]
この実施例は、高いSiN除去率(RR)及び低いSiO除去率という結果が得られたCMPスラリー組成物におけるアニオン性シリカ(負に帯電したシリカ)の使用を実証するものである。
【0068】
この実施例では、研磨組成物又はスラリーは、1重量%のアニオン性シリカ研磨剤、pH調節剤としての酸及び塩基、並びに液体キャリアとしての水を含んでいた。アニオン性シリカ研磨剤は、日本の扶桑化学工業株式会社から購入した。アニオン性研磨剤を含有するCMPスラリーを、pH調節剤でpH調節して、酸性の約2~6.5のpH範囲でのpH値約0.5のpH間隔でスラリーを得た。試験したすべての配合物において、Applied Materials Mirra CMPポリッシャーを、下向き荷重2psi及び流速175mL/分で用いて、8インチの窒化ケイ素及び酸化ケイ素ブランケットウェハを研磨した。SiN及びSiO膜に対する除去率として表される研磨の結果を、テーブル1にまとめる。
【0069】
テーブル1.SiN及びSiO膜に対するアニオン性研磨剤含有スラリーのRR及び選択性。このデータをグラフで表したものが図3である。
【表2】

【0070】
アニオン性シリカのゼータ電位(ZP)は、Colloidal Dynamics製のAcoustoSizer IIを用いて測定し、SiN膜及びTEOS膜のZPは、Anton Paar製のSurPASS 3によって測定した。結果をテーブル2にまとめる。テーブル2はまた、SiN膜とアニオン性シリカとの間、及びSiO膜とアニオン性シリカとの間での電荷の差(ZP差の絶対値)の詳細も示す。
【0071】
テーブル2.アニオン性シリカとSiN膜及びTEOS膜とのゼータ電位及び電荷の差の値(mV)。このデータをグラフで表したものが図2である。
【表3】

【0072】
テーブル2に示されるように、CMP組成物のpH値が2~6である場合、SiN膜は正に帯電しており(すなわち、そのZPは正である)、一方アニオン性シリカは負に帯電している(すなわち、そのZPは負である)。その結果、SiNとアニオン性シリカとの間に引力が発生し、そのことが、テーブル1及び図3から分かるように、SiN膜に対する高いRRをもたらすものと考えられる。反対に、SiO膜及びアニオン性シリカは、いずれも負に帯電している(すなわち、それらのZPは負である)。その結果、SiOとアニオン性シリカとの間に反発力が発生し、テーブル1及び図3から分かるように、SiO膜に対する低いRRをもたらすものと考えられる。実際、テーブル1に示されるように、アニオン性シリカ研磨剤を含有するCMP組成物は、高いSiN除去率、低いSiO除去率、及び比較的高いSiN/SiO除去選択性(すなわち、SiOよりも優先的にSiNを除去する)を示した。
【0073】
特に、テーブル2は、pHが2~4の範囲内である場合に、SiN膜とアニオン性シリカとの間の電荷の差が最大であることを示している。このpH範囲内では、SiNのRRは、最も高く(817A/分~491A/分;テーブル1参照)、このことは、より大きい電荷の差に起因して、正に帯電したSiN膜と負に帯電したアニオン性シリカとの間の引力がより強くなっており、それによって、SiN膜に対するより高いRRにつながっていることを示している。反対に、テーブル2は、pHが4~6の範囲内である場合に、SiO膜とアニオン性シリカとの間(両方共に負に帯電している)の電荷の差が最小であることを示している。このpH範囲では、SiO膜とアニオン性シリカとは互いに最も強く反発し、したがって、最も低いSiO膜のRRを与える(5A/分~12A/分;テーブル1参照)。
【0074】
実施例1で述べたCMPスラリー組成物は、パターン形成されたウェハ上において、SiN膜とSiO膜との間の高い選択性比が所望される集積に用いられ得る。本産業界では、これらは通常、リバースSTI(Reverse-STI)(浅溝分離)選択的スキーム(selectivity schemes)と称され、この場合、SiN膜を高いRRで除去し、SiO膜の除去はゼロまでの非常に低いRRで最小限に抑えることが望ましい。
【0075】
[実施例2:高SiN/P-Si選択性のためのアニオン性シリカ]
この実施例は、高いSiN除去率及び低いP-Si(ポリシリコン)除去率という結果が得られたCMPスラリー組成物におけるアニオン性シリカ(負に帯電したシリカ)の使用を実証するものである。
【0076】
この実施例では、研磨組成物は、1重量%のアニオン性シリカ研磨剤、pH調節剤としての酸及び塩基、並びに液体キャリアとしての水を含んでいた。アニオン性シリカ研磨剤は、日本の扶桑化学工業株式会社から購入した。アニオン性研磨剤を含有するCMPスラリーを、pH調節剤でpH調節して、約2~6.5の酸性pH範囲内での約0.5pH値のpH間隔でスラリーを得た。試験したすべての配合物において、Applied Materials Mirra CMPポリッシャーを、下向き荷重2psi及び流速175mL/分で用いて、8インチの窒化ケイ素及びP-Siブランケットウェハを研磨した。SiN及びP-Si膜に対する除去率として表される研磨の結果を、テーブル3にまとめる。
【0077】
テーブル3.SiN及びP-Si膜に対するアニオン性研磨剤含有スラリーのRR及び選択性。このデータをグラフで表したものが図4である。
【表4】

【0078】
アニオン性シリカのゼータ電位(ZP)は、Colloidal Dynamics製のAcoustoSizer IIを用いることによって測定し、SiN膜及びP-Si膜のZPは、Anton Paar製のSurPASS 3によって測定した。結果をテーブル4にまとめる。テーブル4はまた、SiN膜とアニオン性シリカとの間、及びP-Si膜とアニオン性シリカとの間での電荷の差(ZP差の絶対値)の詳細も示す。
【0079】
テーブル4.アニオン性シリカとSiN膜及びP-Si膜とのゼータ電位及び電荷の差値(mV)。このデータをグラフで表したものが図2である。
【表5】

【0080】
テーブル3に示されるように、CMP組成物のpH値が2~7の範囲内である場合、SiN膜は正に帯電しており、一方アニオン性シリカは負に帯電している。その結果、SiN膜とアニオン性シリカとの間に引力が発生し、そのことが、テーブル3及び図4から分かるように、SiN膜に対する高いRRをもたらすものと考えられる。反対に、P-Si膜及びアニオン性シリカはいずれも負に帯電している(すなわち、それらのZPは負である)。その結果、P-Si膜とアニオン性シリカとの間に反発力が発生し、そのことが、テーブル3及び図4から分かるように、P-Si膜に対する低いRRをもたらすものと考えられる。実際、テーブル3に示されるように、アニオン性シリカ研磨剤を含有するCMP組成物は、高いSiN除去率、低いP-Si除去率、及び比較的高いSiN/P-Si除去選択性(すなわち、P-Siよりも優先的にSiNを除去する)を示した。
【0081】
SiN/P-Si選択性(すなわち、2~8)は、SiN/SiO選択性(すなわち、4~45)よりも多少低い。このより低いSiN/P-Si選択性は、pH3~5の範囲での僅かにより高いP-SiのRR(SiOのRRと比較した場合)に起因し得る。TEOS膜の表面化学は、P-Si膜の表面化学と僅かに異なっているものと考えられる。SiO膜は、その表面に末端シラノール基(Si-OH)を有するが、P-Si膜は、その表面に末端ヒドリド基(Si-H)を有する。したがって、アニオン性シリカも表面シラノール基(Si-OH)を有することから、SiO膜と研磨組成物中のアニオン性シリカとの間の反発力の方が顕著であるものと考えられる。したがって、アニオン性シリカのシラノール基上の負電荷が、SiO膜の表面シラノール基(Si-OH)上の負電荷と反発し、それによって、相対的に強い反発力が発生し、SiOのRRが低下するものと考えられる。反対に、P-Si膜のヒドリド基(Si-H)からの水素は、負に帯電しておらず、したがって、SiO膜の場合ほどに強くはアニオン性シリカと反発せず、それによって、TEOS膜と比較した場合に、より高いP-Si膜のRRが得られる。結果として、これらの膜の研磨にアニオン性シリカ含有CMP組成物を用いた場合、SiN/P-Si選択性は、SiN/SiO選択性よりも低くなるものと考えられ、このことは、上記で述べた実験によって確認されている。
【0082】
他方、特定の誘電体膜率選択性のための帯電研磨剤含有CMP組成物設計の全体としての概念は、依然として適用可能である。上記で示されるように、正のZPを有するSiN膜は、アニオン性シリカとの引力に起因して非常に高いRRを示し、負のZPを有するP-Si膜は、アニオン性シリカとの反発力に起因して低いRRを示す。したがって、アニオン性研磨剤含有CMP組成物は、高いSiN除去率及び低いP-Si除去率が必要とされる半導体集積スキームで用いられ得る。FEOLチップアセンブリにおける多くの集積では、金属、酸化金属、窒化金属、及び誘電体膜などのさらなる導電体及び/又は誘電体を有するパターン形成されたウェハ上において、そのような選択性が必要である。アニオン性研磨剤含有CMP組成物を用いた2~8のSiN/P-Si選択性は、SiN/SiO選択性ほど高くはないものの、SiN膜及びP-Si膜を有するパターン形成されたウェハの、SiN膜を除去してP-Si膜で停止することが目標である研磨での使用において、依然として非常に魅力的である。
【0083】
[実施例3:高SiO/SiN選択性のためのカチオン性シリカ研磨剤]
この実施例は、高いSiO除去率及び低いSiN除去率という結果が得られたCMPスラリー組成物におけるカチオン性シリカ(正に帯電したシリカ)の使用を実証するものである。
【0084】
この例では、研磨組成物は、1重量%のカチオン性シリカ研磨剤、pH調節剤としての酸及び塩基、並びに液体キャリアとしての水を含んでいた。カチオン性シリカ研磨剤は、日本の扶桑化学工業株式会社から購入した。カチオン性研磨剤を含有するCMPスラリーを、pH調節剤でpH調節して、pH約2~7の範囲でpH値約0.5のpH間隔でスラリーを得た。試験したすべての配合物において、Applied Materials Mirra CMPポリッシャーを、下向き荷重2psi及び流速175mL/分で用いて、8インチの窒化ケイ素及び酸化ケイ素ブランケットウェハを研磨した。SiO及びSiN膜に対する除去率として表される研磨の結果を、テーブル5にまとめる。
【0085】
テーブル5.SiO及びSiN膜に対するカチオン性研磨剤含有スラリーのRR及び選択性。このデータをグラフで表したものが図5である。
【表6】

【0086】
カチオン性シリカのゼータ電位(ZP)は、Colloidal Dynamics製のAcoustoSizer IIを用いることによって測定し、SiN膜及びSiO膜のZPは、Anton Paar製のSurPASS 3によって測定した。結果をテーブル6にまとめる。テーブル6はまた、SiO膜とカチオン性シリカとの間、及びSiN膜とカチオン性シリカとの間での電荷の差(ZP差の絶対値)の詳細も示す。
【0087】
テーブル6.カチオン性シリカとTEOS膜及びSiN膜とのゼータ電位及び電荷の差の値(mV)。このデータをグラフで表したものが図2である。
【表7】

【0088】
テーブル6に示されるように、CMP組成物のpH値が2~7の範囲内である場合、SiO膜は、負に帯電しており、カチオン性シリカは正に帯電している。その結果、SiO膜とカチオン性シリカとの間に引力が発生し、そのことが、テーブル5及び図5から分かるように、SiO膜に対する高いRRをもたらすものと考えられる。反対に、SiN膜及びカチオン性シリカは正に帯電している(すなわち、それらのZPは正である)。その結果、SiN膜とカチオン性シリカとの間に反発力が発生し、そのことが、テーブル5及び図5から分かるように、SiN膜に対する低いRRをもたらすものと考えられる。実際、テーブル5に示されるように、カチオン性シリカ研磨剤を含有するCMP組成物は、高いSiO除去率、低いSiN除去率、及び比較的高いSiO/SiN除去選択性(すなわち、SiNよりも優先的にSiOを除去する)を示した。
【0089】
特に、テーブル6は、CMP組成物のpHが4~5である場合に、SiO膜とカチオン性シリカとの間の電荷の差が最大であることを示している。その結果、このpH範囲では、SiOのRRが最も高く(962A/分~1015A/分;テーブル5参照)、このことは、より大きい電荷の差に起因して、負に帯電したSiO膜と正に帯電したカチオン性シリカとの間の引力がより強くなっており、それによって、SiO膜に対するより高いRRにつながっていることを示している。反対に、テーブル6は、pHが2、3、及び4である場合に、SiN膜とカチオン性シリカとの間(両方共に正に帯電している)の電荷の差が最小であることを示している。このpH範囲内では、SiN膜とカチオン性シリカとは互いに最も強く反発し、したがって、最も低いSiN膜のRRを与える(すなわち、それぞれ、97A/分、85A/分、及び98A/分;テーブル5参照)。加えて、pH5及び6においてSiN膜とカチオン性シリカとの間の電荷の差が相対的に大きいことにより(それぞれ、10及び6mVの電荷の差;テーブル6参照)、SiN膜とカチオン性シリカとの反発は小さくなり、SiNのRRは相対的に高い(すなわち、それぞれ、261A/分及び244A/分)。このことは、帯電研磨剤含有CMP組成物を用いて所望のRR及び選択性を達成する設計と一致している。
【0090】
カチオン性研磨剤を含有する実施例3で考察したCMPスラリー組成物は、パターン形成されたウェハ上において、SiO膜とSiN膜との間の高い選択性比が所望される集積に用いることができる。本産業界では、これらは通常、浅溝分離(STI)プロセスと称され、この場合、酸化ケイ素膜(誘電体)が、導電性金属ワイヤ(銅、タングステン、又は他の金属/酸化金属など)を分離しており、CMPプロセスの目的は、パターン形成されたウェハ上においてSiO膜を除去し、SiN膜で停止することである。SiN膜と比較したSiO膜の高選択性CMP組成物がCMPプロセスの過程で必要とされる他の多くのFEOL及び/又はBEOL集積スキームが存在し、カチオン性研磨剤含有CMP組成物は、そのようなスキームにおいて、パターン形成されたウェハ上の不均一材料の研磨に用いることができる。
【0091】
本開示を1又は複数の例示的な実施形態を参照して記載してきたが、当業者であれば、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示の要素に対して様々な変更が行われてよく、均等物による置き換えが行われてもよいことは理解される。本明細書で述べる好ましい実施形態の変型例は、当業者であれば、上述の記述を読むことによって明らかとなるであろう。加えて、本開示の範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料を本開示の教示事項に適合させるために多くの改変が行われてもよい。したがって、本開示は、考慮される最良のモードとしての開示される特定の実施形態に限定されることを意図するものではなく、本開示は、添付の請求項の範囲内に入るすべての実施形態を含むことを意図している。さらに、本発明者らは、当業者であれば、本明細書で具体的に述べたものとは異なる他の形態で本開示を実践するために、適宜変型例を用いるものと考えている。これには、適用される法律によって許容されるところに従い、本明細書に添付の請求項に列挙される主題のすべての改変及び均等物が含まれる。
本開示は、以下の実施形態を含む。
<1> a)アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、これらの共形成物、又はこれらの混合物を含むカチオン性研磨剤;
b)酸又は塩基;及び
c)水;
を含み、pH2~7であり、実質的にハロゲン化物塩を含まない研磨組成物。
<2> 前記研磨組成物が、酸化ケイ素の第一の除去率、窒化ケイ素の第二の除去率を有し、前記第一の率の前記第二の率に対する比は、少なくとも2:1である、前記<1>に記載の組成物。
<3> 前記研磨組成物が、ポリシリコンの第一の除去率、窒化ケイ素の第二の除去率を有し、前記第一の率の前記第二の率に対する比は、少なくとも2:1である、前記<1>に記載の組成物。
<4> 前記カチオン性研磨剤が、コロイド状アルミナ、コロイド状シリカ、又はコロイド状チタニアを含む、前記<1>に記載の組成物。
<5> 前記カチオン性研磨剤が、カチオン性コロイド状シリカ、又は塩基固定化非イオン性シリカを含む、前記<1>に記載の組成物。
<6> 前記シリカが、テトラメチルオルトシリケートからゾルゲル反応によって作製される、前記<5>に記載の組成物。
<7> 前記カチオン性研磨剤が、式(I)の末端基を含み:
-Om-X-(CH2)n-Y (I)、
式中、mは、1~3の整数であり;nは、1~10の整数であり;Xは、Al、Si、Ti、又はZrであり;Yは、カチオン性のアミノ又はチオール基である、前記<1>に記載の組成物。
<8> 前記カチオン性研磨剤が、前記研磨組成物中に、前記研磨組成物の総重量に対して0.01重量%~50重量%の量で存在する、前記<1>に記載の組成物。
<9> 前記酸が、ギ酸、酢酸、マロン酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、アジピン酸、コハク酸、乳酸、シュウ酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、2-ホスホノ-1,2,4-ブタントリカルボン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンホスホン酸、アミノ酢酸、過酢酸、酢酸カリウム、フェノキシ酢酸、グリシン、ビシン、ジグリコール酸、グリセリン酸、トリシン、アラニン、ヒスチジン、バリン、フェニルアラニン、プロリン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン、チロシン、安息香酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、ホスホン酸、塩酸、過ヨウ素酸、及びこれらの混合物から成る群より選択される、前記<1>に記載の組成物。
<10> 前記塩基が、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化リチウム、イミダゾール、トリアゾール、アミノトリアゾール、テトラゾール、ベンゾトリアゾール、トリトリアゾール、ピラゾール、イソチアゾール、及びこれらの混合物から成る群より選択される、前記<1>に記載の組成物。
<11> 前記酸又は塩基が、前記研磨組成物中に、前記研磨組成物の総重量に対して0.0001重量%~30重量%の量で存在する、前記<1>に記載の組成物。
<12> 前記カチオン性研磨剤が、1nm~5000nmの平均粒子サイズを有する、前記<1>に記載の組成物。
<13> 前記研磨組成物が、0mV~+100mVのゼータ電位を有する、前記<1>に記載の組成物。
<14> 前記研磨組成物が、0.01mS/cm~100mS/cmの導電性を有する、前記<1>に記載の組成物。
<15> a)1nm~5000nmの平均粒子サイズを有するセリアを含むカチオン性研磨剤;
b)酸又は塩基;及び
c)水;
を含み、pH2~7であり、実質的にハロゲン化物塩を含まない研磨組成物。
<16> 窒化ケイ素、並びに酸化ケイ素及びポリシリコンのうちの少なくとも1つを基材の表面に有する前記基材に、カチオン性研磨剤、酸又は塩基、及び水を含み、約2~約7のpHを有する研磨組成物を適用すること;並びに
パッドを前記基材と接触させ、前記パッドを前記基材に対して動かすこと、
を含む方法であって、前記方法は、第一の率で酸化ケイ素及びポリシリコンのうちの少なくとも一方の少なくとも一部を除去し、前記方法は、第二の率で窒化ケイ素の少なくとも一部を除去し、前記第一の率の前記第二の率に対する比は、少なくとも2:1である、方法。
<17> 前記第一の率の前記第二の率に対する比が、少なくとも10:1である、前記<16>に記載の方法。
<18> 前記研磨組成物と酸化ケイ素又はポリシリコンとの間のゼータ電位差が、20mV以上であり、前記研磨組成物と窒化ケイ素との間のゼータ電位差が、20mV以下である、前記<16>に記載の方法。
<19> 前記カチオン性研磨剤が、セリア、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、これらの共形成物、又はこれらの混合物を含む、前記<16>に記載の方法。
<20> 前記方法が、前記基材上の酸化ケイ素及びポリシリコンのうちの少なくとも一方の実質的にすべてを除去する、前記<16>に記載の方法。
<21> 前記基材上の窒化ケイ素の少なくとも一部を除去することをさらに含む、前記<20>に記載の方法。
<22> 前記基材が、金属、酸化金属、窒化金属、及び誘電体材料から成る群より選択される追加の材料をさらに含む、前記<16>に記載の方法。
<23> 前記研磨組成物によって処理された前記基材から半導体デバイスを製造することをさらに含む、前記<16>に記載の方法。
<24> a)アニオン性研磨剤;
b)酸又は塩基;及び
c)水;
を含み、pH2~7であり、窒化ケイ素の第一の除去率、ポリシリコンの第二の除去率を示し、前記第一の率の前記第二の率に対する比は、少なくとも2:1である、研磨組成物。
<25> 前記第一の率の前記第二の率に対する比が、少なくとも8:1である、前記<24>に記載の組成物。
<26> 前記アニオン性研磨剤が、セリア、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、これらの共形成物、又はこれらの混合物を含む、前記<24>に記載の組成物。
<27> 前記アニオン性研磨剤が、コロイド状アルミナ、コロイド状シリカ、又はコロイド状チタニアを含む、前記<24>に記載の組成物。
<28> 前記アニオン性研磨剤が、アニオン性コロイド状シリカ、又は酸固定化非イオン性シリカを含む、前記<24>に記載の組成物。
<29> 前記シリカが、テトラメチルオルトシリケートからゾルゲル反応によって作製される、前記<28>に記載の組成物。
<30> 前記アニオン性研磨剤が、式(I)の末端基を含み:
-Om-X-(CH2)n-Y (I)、
式中、mは、1~3の整数であり;nは、1~10の整数であり;Xは、Ce、Al、Si、Ti、又はZrであり;Yは、酸基である、前記<24>に記載の組成物。
<31> 前記アニオン性研磨剤が、前記研磨組成物中に、前記研磨組成物の総重量に対して0.01重量%~50重量%の量で存在する、前記<24>に記載の組成物。
<32> 前記酸が、ギ酸、酢酸、マロン酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、アジピン酸、コハク酸、乳酸、シュウ酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、2-ホスホノ-1,2,4-ブタントリカルボン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンホスホン酸、アミノ酢酸、過酢酸、酢酸カリウム、フェノキシ酢酸、グリシン、ビシン、ジグリコール酸、グリセリン酸、トリシン、アラニン、ヒスチジン、バリン、フェニルアラニン、プロリン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン、チロシン、安息香酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、ホスホン酸、塩酸、過ヨウ素酸、及びこれらの混合物から成る群より選択される、前記<24>に記載の組成物。
<33> 前記塩基が、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化リチウム、イミダゾール、トリアゾール、アミノトリアゾール、テトラゾール、ベンゾトリアゾール、トリトリアゾール、ピラゾール、イソチアゾール、及びこれらの混合物から成る群より選択される、前記<24>に記載の組成物。
<34> 前記酸又は塩基が、前記研磨組成物中に、前記研磨組成物の総重量に対して0.0001重量%~30重量%の量で存在する、前記<24>に記載の組成物。
<35> 前記アニオン性研磨剤が、1nm~5000nmの平均粒子サイズを有する、前記<24>に記載の組成物。
<36> 前記研磨組成物が、0mV~-100mVの範囲内のゼータ電位を有する、前記<24>に記載の組成物。
<37> 前記組成物が、0.01mS/cm~100mS/cmの範囲内の導電性を有する、前記<29>に記載の組成物。
<38> 窒化ケイ素及びポリシリコンを基材の表面に有する前記基材に、アニオン性研磨剤、酸又は塩基、及び水を含み、2~7のpHを有する研磨組成物を適用すること;並びに
パッドを前記基材と接触させ、前記パッドを前記基材に対して動かすこと
を含む方法であって、前記方法は、第一の率で窒化ケイ素の少なくとも一部を除去し、前記方法は、第二の率でポリシリコンの少なくとも一部を除去し、前記第一の率の前記第二の率に対する比は、少なくとも2:1である、方法。
<39> 前記第一の率の前記第二の率に対する比が、少なくとも8:1である、前記<38>に記載の方法。
<40> 前記研磨組成物と窒化ケイ素との間のゼータ電位差が、20mV以上であり、前記研磨組成物とポリシリコンとの間のゼータ電位差が、20mV以下である、前記<38>に記載の方法。
<41> 前記方法が、前記基材上の窒化ケイ素を実質的にすべて除去する、前記<38>に記載の方法。
<42> 前記基材上のポリシリコンの少なくとも一部を除去することをさらに含む、前記<38>に記載の方法。
<43> 前記基材が、金属、酸化金属、窒化金属、及び誘電体材料から成る群より選択される追加の材料をさらに含む、前記<38>に記載の方法。
<44> 前記研磨組成物によって処理された前記基材から半導体デバイスを製造することをさらに含む、前記<38>に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-05-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)アニオン性シリカ研磨剤、ここで、前記アニオン性シリカ研磨剤が、テトラメチルオルトシリケート又はテトラエチルオルトシリケートからゾルゲル反応によって作製され、1nm~5000nmの平均粒子サイズを有し、式(I)の末端基を含み:
-O -Si-(CH -Y (I)、
式中、mは、1~3の整数であり;nは、1~10の整数であり;Yは、酸基である
b)酸塩基、又はこれらの混合物;及び
c)水;
を含み、pH2~7であり、-1mV~-100mVの範囲内のゼータ電位を有する、研磨組成物。
【請求項2】
化ケイ素の第一の除去率、及びポリシリコンの第二の除去率を示し、前記第一の除去率の前記第二の除去率に対する比は、少なくとも2:1である、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項3】
窒化ケイ素の第一の除去率、及びポリシリコンの第二の除去率を示し、前記第一の除去率の前記第二の除去率に対する比が、少なくとも8:1である、請求項に記載の研磨組成物。
【請求項4】
前記酸基が、カルボン酸基又はスルホン酸基である、請求項1~3のいずれか一項に記載の研磨組成物。
【請求項5】
前記アニオン性シリカ研磨剤が、アニオン性コロイド状シリカ、又は酸固定化非イオン性シリカを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の研磨組成物。
【請求項6】
前記アニオン性シリカ研磨剤が、前記研磨組成物中に、前記研磨組成物の総重量に対して0.01重量%~50重量%の量で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の研磨組成物。
【請求項7】
前記酸が、ギ酸、酢酸、マロン酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、アジピン酸、コハク酸、乳酸、シュウ酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、2-ホスホノ-1,2,4-ブタントリカルボン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンホスホン酸、アミノ酢酸、過酢酸、酢酸カリウム、フェノキシ酢酸、グリシン、ビシン、ジグリコール酸、グリセリン酸、トリシン、アラニン、ヒスチジン、バリン、フェニルアラニン、プロリン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン、チロシン、安息香酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、ホスホン酸、塩酸、過ヨウ素酸、及びこれらの混合物から成る群より選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の研磨組成物。
【請求項8】
前記塩基が、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化リチウム、イミダゾール、トリアゾール、アミノトリアゾール、テトラゾール、ベンゾトリアゾール、トリトリアゾール、ピラゾール、イソチアゾール、及びこれらの混合物から成る群より選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の研磨組成物。
【請求項9】
前記酸又は塩基が、前記研磨組成物中に、前記研磨組成物の総重量に対して0.0001重量%~30重量%の量で存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載の研磨組成物。
【請求項10】
前記研磨組成物が、-5mV~-100mVの範囲内のゼータ電位を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の研磨組成物。
【請求項11】
前記研磨組成物が、0.01mS/cm~100mS/cmの範囲内の導電性を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の研磨組成物。
【請求項12】
窒化ケイ素及びポリシリコンを基材の表面に有する前記基材に、請求項1又は4~11のいずれか一項に記載の研磨組成物を適用すること;並びに
パッドを前記基材と接触させ、前記パッドを前記基材に対して動かすこと
を含む方法であって、前記方法は、第一の除去率で窒化ケイ素の少なくとも一部を除去し、前記方法は、第二の除去率でポリシリコンの少なくとも一部を除去し、前記第一の除去率の前記第二の除去率に対する比は、少なくとも2:1である、方法。
【請求項13】
前記方法は、第一の除去率で窒化ケイ素の少なくとも一部を除去し、前記方法は、第二の除去率でポリシリコンの少なくとも一部を除去し、前記第一の除去率の前記第二の除去率に対する比が、少なくとも8:1である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記研磨組成物と窒化ケイ素との間のゼータ電位差が、20mV以上であり、前記研磨組成物とポリシリコンとの間のゼータ電位差が、20mV以下である、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、前記基材上の窒化ケイ素をすべて除去する、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記基材上のポリシリコンの少なくとも一部を除去することをさらに含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記基材が、金属、酸化金属、窒化金属、及び誘電体材料から成る群より選択される追加の材料をさらに含む、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記研磨組成物によって処理された前記基材から半導体デバイスを製造することをさらに含む、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。