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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107004
(43)【公開日】2022-07-20
(54)【発明の名称】経口投与用プロトン結合ポリマー
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/785 20060101AFI20220712BHJP
   A61P 3/12 20060101ALI20220712BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220712BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20220712BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220712BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20220712BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20220712BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20220712BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220712BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
A61K31/785
A61P3/12
A61K9/08
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/28
A61K9/06
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079329
(22)【出願日】2022-05-13
(62)【分割の表示】P 2020147224の分割
【原出願日】2014-06-05
(31)【優先権主張番号】61/831,445
(32)【優先日】2013-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515338461
【氏名又は名称】トリシダ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Tricida, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ゲリット・クラーナー
(72)【発明者】
【氏名】エリック・エフ・コナー
(72)【発明者】
【氏名】ランディ・ケイ・バー
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ジェイ・ケイド
(72)【発明者】
【氏名】ポール・エイチ・キールステッド
(72)【発明者】
【氏名】ジェリー・エム・バイス
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ジェイ・コープ
(72)【発明者】
【氏名】カルペシュ・エヌ・ビヤニ
(72)【発明者】
【氏名】ソン・エイチ・グエン
(72)【発明者】
【氏名】スコット・エム・タバックマン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ヒトを含む動物における消化管からのプロトンおよび/または塩化物イオンの除去が生理学的利益を提供する疾患または他の代謝状態の処置に、例えば、血清炭酸水素濃度および血液pHの正常化のために使用し得る、医薬組成物を提供する。
【解決手段】式1に対応するアミン残基を含むプロトン結合性架橋アミンポリマーを含む、医薬組成物であって、架橋アミンポリマーが(i)pH1.2で35mM NaClおよび63mM HClを含み、37℃の水性人工胃液緩衝液で少なくとも5mmol/gの平衡プロトン結合能および少なくとも5mmol/gの塩化物イオン結合能および(ii)脱イオン水中約2またはそれ未満の平衡膨潤比を有する、医薬組成物である。

〔R、RおよびRは独立して水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルである。ただし、R、RおよびRの少なくとも1個が水素以外である。〕
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書または図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2013年6月5日出願の米国仮出願番号61/831,445の利益を請求し、その内容全体を引用により本明細書に包含させる。
【0002】
本発明は、一般に代謝性アシドーシスの処置に使用し得る経口投与用プロトン結合ポリマーに関する。
【0003】
代謝性アシドーシスは、種々の疾患状態において、非揮発性酸類が体内に蓄積し、プロトン(H)の純増または炭酸水素(HCO )の喪失を生じる代謝過程および食餌過程に起因する。代謝性アシドーシスは、体が代謝過程および食餌過程からの酸を蓄積し、過剰な酸が腎臓によって完全に除去されないときに生じる。慢性腎疾患は、濾過した炭酸水素(HCO )の再吸収、アンモニアの合成(ammoniagenesis)および滴定酸類の排泄の能力が失われる結果、腎臓の水素イオン排泄能力が低下するため、しばしば代謝性アシドーシスを伴う。診療ガイドラインは、非透析依存性慢性腎疾患(CKD)の患者において、血清炭酸水素レベルが22mEq/L未満となったときに、代謝性アシドーシスの合併症の予防または処置のためにアルカリ療法を開始することを推奨する。(Clinical practice guidelines for nutrition in chronic renal failure, K/DOQI, National Kidney Foundation, Am. J. Kidney Dis. 2000; 35:S1-140; Raphael, KL, Zhang, Y, Wei, G, et al. 2013, Serum bicarbonate and mortality in adults in NHANES III, Nephrol. Dial. Transplant 28: 1207-1213)。これらの合併症は、小児における栄養障害および発育遅延、骨疾患増悪、筋肉分解増加、アルブミン合成減少および炎症増加を含む。(Leman, J, Litzow, JR, Lennon, EJ. 1966. The effects of chronic acid loads in normal man: further evidence for the participation of bone mineral in the defense against chronic metabolic acidosis, J. Clin. Invest. 45: 1608-1614; Franch HA, Mitch WE, 1998, Catabolism in uremia: the impact of metabolic acidosis, J. Am. Soc. Nephrol. 9: S78-81; Ballmer, PE, McNurlan, MA, Hulter, HN, et al., 1995, Chronic metabolic acidosis decreases albumin synthesis and induces negative nitrogen balance in humans, J. Clin. Invest. 95: 39-45; Farwell, WR, Taylor, EN, 2010, Serum anion gap, bicarbonate and biomarkers of inflammation in healthy individuals in a national survey, CMAJ 182:137-141)。推定糸球体濾過速度が30ml/分/1.73mを下回ったとき、患者の大部分が顕性の代謝性アシドーシスを呈する。(KDOQI bone guidelines: American Journal of Kidney Diseases (2003) 42:S1-S201. (suppl); Widmer B, Gerhardt RE, Harrington JT, Cohen JJ, Serum electrolyte and acid base composition: The influence of graded degrees of chronic renal failure, Arch Intern Med139:1099-1102, 1979; Dobre M, Yang, W, Chen J, et. al., Association of serum bicarbonate with risk of renal and cardiovascular outcomes in CKD: a report from the chronic renal insufficiency cohort (CRIC) study. Am. J. Kidney Dis. 62: 670-678, 2013; Yaqoob, MM. Acidosis and progression of chronic kidney disease. Curr. Opin. Nephrol. Hypertens. 19: 489-492, 2010)。
【0004】
代謝性アシドーシスは、病因と関係なく、細胞外液炭酸水素を低下させ、ゆえに、細胞外pHを低下させる。血清pHと血清炭酸水素の相関は、ヘンダーソン・ハッセルバルヒ式
pH=pK’+log[HCO ]/[(0.03×Paco)]
〔式中、0.03はCOの物理的溶解度係数であり、[HCO ]およびPaCOは、それぞれ炭酸水素濃度および二酸化炭素分圧である。〕
により示される。
【0005】
代謝性アシドーシスの決定に使用できるいくつかの臨床検査がある。検査は、基本的に静脈血または動脈血を含む種々の生体サンプルにおける炭酸水素(HCO )またはプロトン(H)濃度を測定する。
【0006】
アシドーシスの決定のための最も有用な測定は、静脈血漿炭酸水素(または総二酸化炭素[tCO])、血清電解質類Cl、KおよびNaの測定およびアニオンギャップの決定に依存する。臨床検査室において、静脈血漿または血清電解質の測定は、tCOの推定を含む。この測定値は、循環COの合計[すなわち、炭酸水素(HCO )、炭酸(HCO)および溶解CO(0.03×Pco)により表される総CO]を反映する。tCOはまた、ヘンダーソン・ハッセルバルヒ式:tCO=HCO +0.03PCO(式中、PCOは測定したCO分圧である)の単純化かつ標準化形態を使用して、HCO とも関連付けできる。HCO 濃度がtCOの90%より大きく、少量のHCOが存在するため、静脈tCOは、しばしば、血中の静脈HCO 濃度の合理的近似として使用される。特に慢性腎疾患中、異常血漿HCO 値24~26mEq/L未満が、一般に代謝性アシドーシスを示す。
【0007】
血清Cl濃度の変化は、特に血清Na濃度の変化とバランスを欠くとき、酸塩基障害の可能性に対するさらなる考察をもたらし得る。これが生じたとき、血清Cl濃度の変化は、典型的に血清炭酸水素の相反的変化と関係する。それゆえに、正常アニオンギャップの代謝性アシドーシスにおいて、血清Clは105mEq/Lを超えて増加し、血清炭酸水素は24~26mEq/L未満に低下する。
【0008】
アニオンギャップ[血清Na-(Cl+HCO )として定義]の計算値は、代謝性アシドーシス診断の重要な側面である。代謝性アシドーシスは、正常または高アニオンギャップを伴い、存在し得る。しかしながら、高アニオンギャップは、一般に、血清HCO の変化と無関係に、代謝性アシドーシスの存在を示す。20mEq/Lを超えるアニオンギャップ(正常アニオンギャップは8~12mEq/L)は、代謝性アシドーシスの典型的特性である。
【0009】
動脈血ガスは、酸塩基障害のタイプの同定におよび混合性失調が存在するか否かの決定に使用される。一般に、動脈血ガス測定の結果は、病歴、理学検査および上に挙げた常用の検査値を用いて調整しなければならない。動脈血ガスは、動脈性二酸化炭素圧(PCO)、酸性度(pH)および酸素圧(P)を測定する。HCO 濃度をpHおよびPacoから計算する。代謝性アシドーシスの特徴は、7.35未満のpH、35mmHg未満のPCOおよび22mEq/L未満のHCO である。P値(正常80~95mmHg)は、代謝性アシドーシスの診断には使用されないが、原因の決定の助けとなり得る。酸塩基失調は、第一に呼吸器性または代謝性と分類される。呼吸器性失調は、COの異常肺排出が原因であり、細胞外液のCO(二酸化炭素)過剰(アシドーシス)または欠乏(アルカローシス)を生じる。呼吸器性酸塩基障害において、血清炭酸水素(HCO )の変化が、Pcoの変化の最初の直接的結果であり、Pcoの増加がHCO 増加に至る。(Adrogue HJ, Madias NE, 2003, Respiratory acidosis, respiratory alkalosis, and mixed disorders, in Johnson RJ, Feehally J (eds): Comprehensive Clinical Nephrology. London, CV Mosby, pp. 167-182)。代謝性失調は、細胞外液における非揮発性酸類または塩基類の過剰な取り込み、または代謝性産生または喪失が原因であるものである。これらの変化は、炭酸水素アニオン(HCO )の血中濃度の変化により反映され、この場合への適合は、緩衝化(即時型)、呼吸器(数時間~数日)および腎臓(数日)機構の両者を含み得る。(DuBose TD, MacDonald GA: renal tubular acidosis, 2002, in DuBose TD, Hamm LL (eds): Acid-base and electrolyte disorders: A companion to Brenners and Rector's the Kidney, Philadelphia, WB Saunders, pp. 189-206)。
【0010】
血中の全体的水素イオン濃度は、2成分の量、すなわち血清HCO 含量(腎臓により制御)およびPCO含量(肺により制御)により規定され、次のとおり表される。
[H]∝(PCO/[HCO ])
【0011】
全体的水素イオン濃度増加の結果は、主要細胞外緩衝剤である炭酸水素の減少である。正常血pHは7.38~7.42であり、42~38nmol/Lの水素イオン(H)濃度に対応する(Goldberg M: Approach to Acid-Base Disorders. 2005. In Greenberg A, Cheung AK (eds) Primer on Kidney Diseases, National Kidney Foundation, Philadelphia, Elsevier-Saunders, pp. 104-109.)。炭酸水素(HCO )は、体内のpH失調に対する緩衝剤として作用するアニオンであり、血漿炭酸水素の正常レベルは22~26mEq/Lの範囲である(Szerlip HM: Metabolic Acidosis, 2005, in Greenberg A, Cheung AK (eds) Primer on Kidney Diseases, National Kidney Foundation, Philadelphia, Elsevier-Saunders, pp. 74-89.)。アシドーシスは、血液pHの減少を起こし(酸血症)、水素イオン(H)蓄積を反映し、炭酸水素イオン(HCO )によるその結果的緩衝化が、血清炭酸水素の減少を起こす過程である。代謝性アシドーシスは次のとおり示すことができる。
【化1】
(Clinical practice guidelines for nutrition in chronic renal failure. K/DOQI, National Kidney Foundation. Am. J. Kidney Dis. 2000; 35:S1-140)。この平衡方程式を使用して、1個のHCO の喪失は1個のHの付加と等価であり、逆に、1個のHCO の獲得は1個のHの喪失と等価である。それゆえに、血液pHの変化、特にHの増加(pH低下、アシドーシス)は血清HCO の増加により、または、等しく、血清Hの減少により矯正できる。
【0012】
細胞外pHを正常範囲に維持するために、日々、産生される酸は体外に排泄されなければならない。体内の酸産生は、食餌による炭水化物、脂肪およびアミノ酸類の代謝の結果である。これらの代謝基質の完全酸化は、水とCOを生じる。この酸化により産生される二酸化炭素(~20,000mmol/日)は、効率的に肺から吐き出され、酸塩基バランスの揮発性酸成分を代表する。
【0013】
対照的に、非揮発性酸類(~50~100mEq/日)は、硫酸およびリン酸含有アミノ酸類および核酸類の代謝により産生される。さらなる非揮発性酸類(乳酸、酪酸、酢酸、他の有機酸類)は、脂肪および炭水化物の不完全酸化により、そして結腸内における常在細菌が基質を小有機酸類に変換し、これが血流に吸収されるという、結腸内の炭水化物代謝により生じる。アシドーシスに対する短鎖脂肪酸類の影響は、例えば長鎖脂肪酸類への、同化作用、または水とCOへの異化作用によりある程度最小化される。
【0014】
腎臓は、全体的炭酸水素枯渇を阻止するための濾過HCO の再利用および尿中への非揮発性酸類の排出の2機構により血中のpHバランスを維持する。両機構とも炭酸水素枯渇およびアシドーシスの阻止のために必要である。
【0015】
第一の機構において、腎臓は、糸球体により濾過されるHCO を再利用する。この再生利用は近位尿細管で起こり、~4500mEq/日の再利用HCO を構成する。この機構は、HCO が尿中に失われることを阻止し、そうして代謝性アシドーシスを阻止する。第二の機構において、腎臓は、タンパク質、脂肪および炭水化物の代謝および酸化を経て、非揮発性酸1日産生量に釣り合うための十分なHを排泄する。この酸負荷の排泄は、Hイオンの能動分泌およびアンモニア生成を含む、腎臓内の2個の異なる経路により達成される。これら2個の相互接続した過程の最終結果は、正常代謝により産生される非揮発性酸の50~100mEq/日の排出である。
【0016】
それゆえに、正常腎機能が酸塩基バランスの維持に必要である。慢性腎疾患中、HCO の濾過および再生利用が障害され、アンモニアの産生および分泌が阻害される。これらの欠損が急激に慢性代謝性アシドーシスをもたらし、これは、それ自体、末期腎疾患への強力な前駆症状である。代謝による酸産生の継続を伴う酸排出減少は、血中のH/HCO バランスを乱し、血液pHがpH=7.38~7.42の正常値を下回るようになる。
【0017】
アルカリ療法による代謝性アシドーシスの処置は、通常血漿pHを7.20より高く上げ、それを維持するように適用される。重炭酸ナトリウム(NaHCO)は、代謝性アシドーシスの矯正に最も一般に使用される薬剤である。NaHCOは、pHを7.20より高く上げるために適切に血清HCO レベルを上昇するように静脈内投与できる。さらなる矯正は個々の状況により、基礎にある過程が処置可能であるかまたは患者が無症候性であるならば、適用されないかもしれない。代謝性アシドーシスのある種の形態のときにこれは特にあてはまる。例えば、有機酸類、乳酸およびケトン類の蓄積に二次的な高アニオンギャップ(AG)アシドーシスにおいて、同起源アニオン類は最終的にHCO に代謝される。基礎疾患が処置されたとき、血清pHは矯正され、それゆえに、pHが7.20をはるかに超えて高く上昇するようにアルカリを提供するとき、これらの患者において、正常範囲を超えて(>26mEq/L)炭酸水素が上昇することを回避する注意が必要である。
【0018】
クエン酸は、肝臓で代謝され、クエン酸1モルあたり3モルの炭酸水素を形成するため、カリウム塩またはナトリウム塩として経口でまたはIVで与えるべき適切なアルカリ療法剤である。IVで投与されるクエン酸カリウムは、腎機能障害の存在下では注意深く使用し、高カリウム血症を避けるために密接にモニターしなければならない。
【0019】
静脈内重炭酸ナトリウム(NaHCO)溶液は、代謝性アシドーシスが重篤であるならばまたは外因性アルカリ投与なしでは矯正されそうにないならば、投与できる。経口アルカリ投与は、慢性代謝性アシドーシスのヒトにおいて好ましい治療経路である。経口治療のための最も一般的なアルカリ形態は、1gのNaHCOが11.9mEqのHCO に相当するNaHCO錠剤である。しかしながら、NaHCOの経口形態は医療用に承認されておらず、静脈内重炭酸ナトリウム溶液の添付文書には次の禁忌、警告および注意が含まれる(NDC 0409-3486-16についてのHospiraラベル)。
禁忌:重炭酸ナトリウム注射、USPは、嘔吐または連続的消化器吸引により塩化物を喪失している患者および低クロール血性アルカローシスを生じることが知られる利尿剤を投与されている患者には禁忌である。
警告:ナトリウムイオンを含む溶液は、使用するにしても、うっ血性心不全、重度腎不全およびナトリウム滞留による浮腫が存在する病態の患者においては、高度の注意を払い使用すべきである。腎機能が低下した患者においては、ナトリウムイオン含有溶液の投与はナトリウム滞留を生じ得る。これらの溶液の静脈内投与は、液体および/または溶質過負荷の原因となり、血清電解質濃度希釈、水分過剰、うっ血状態または肺浮腫をもたらし得る。
注意:[...]炭酸水素と共に与えられるナトリウムの大負荷の可能性は、うっ血性心不全または他の浮腫性またはナトリウム滞留状態の患者ならびに乏尿または無尿の患者における重炭酸ナトリウムの使用において注意を発揮することを必要とする。
【0020】
酸塩基障害は慢性腎疾患および心不全患者に一般的である。慢性腎疾患(CKD)は、健常成人で産生される約1mmol/kg体重の水素イオンの腎排泄を徐々に障害する(Yaqoob, MM. 2010, Acidosis and progression of chronic kidney disease, Curr. Opin. Nephrol. Hyperten. 19:489-492.)。体内の酸の蓄積(H)または塩基の枯渇(HCO )に起因する代謝性アシドーシスは、特に糸球体濾過速度(GFR、腎機能の指標)が30ml/分/1.73m未満に落ちたときの、CKDを有する患者で一般的である。代謝性アシドーシスは、タンパク質および筋肉代謝、骨代謝および腎性骨異栄養症の発症に対して著明な長期作用を有する。さらに、代謝性アシドーシスは、多様な傍分泌および内分泌機能に影響し、さらに炎症性メディエーター増加、レプチン減少、インスリン抵抗性ならびに副腎皮質ステロイドおよび副甲状腺ホルモン産生増加のような長期結果を伴う(Mitch WE, 1997, Influence of metabolic acidosis on nutrition, Am. J. Kidney Dis. 29:46-48.)。CKD患者での代謝性アシドーシス持続の正味の影響は、ホルモンおよび細胞異常による骨および筋量喪失、負の窒素バランスならびに慢性腎不全の加速である(De Brito-Ashurst I, Varagunam M, Raftery MJ, et al, 2009, Bicarbonate supplementation slows progression of CKD and improves nutritional status, J. Am. Soc. Nephrol. 20: 2075-2084)。逆に、CKD患者におけるアルカリ療法で潜在的懸念事項は、高血圧の発症または増悪、血管石灰化の促進および存在する心不全の代償不全をもたらすナトリウム摂取と関係する細胞外液体積の拡大である。中程度(正常の20~25%のGFR)のCKD患者は、濾過炭酸水素の再利用が不可能であり、プロトンおよびアンモニウムカチオンが排泄されるため、最初に正常アニオンギャップを伴う高塩素血症性アシドーシスを発症する。CKDの進行期へと進行するに連れて、アニオンギャップが増加し、非排泄プロトンと結合していたアニオン類を排泄する腎臓の能力の継続している低下を反映する。これらの患者における血清炭酸水素が、約20mmol/Lの最大高アニオンギャップを伴い15mmol/Lを下回ることは稀である。CKDで蓄積している非代謝可能アニオン類は、骨からのアルカリ塩類により緩衝化される(Lemann J Jr, Bushinsky DA, Hamm LL Bone buffering of acid and base in humans. Am. J. Physiol Renal Physiol. 2003 Nov, 285(5):F811-32)。
【0021】
慢性腎疾患を有する患者の大部分が、根底に腎機能の悪化に至る糖尿病(糖尿病性腎症)および高血圧を有する。高血圧を有する患者のほとんど全てで、高ナトリウム摂取が高血圧を悪化させる。したがって、腎臓、心不全、糖尿病および高血圧治療指針は、これらの患者におけるナトリウム摂取を1日あたり1.5gまたは65mEq未満に厳格に制限する(HFSA 2010 guidelines, Lindenfeld 2010, J Cardiac Failure V16 No 6 P475)。慢性抗高血圧治療は、しばしばナトリウム排泄を誘発するか(利尿剤)または腎臓がナトリウムおよび水を排泄する能力を修飾する(例えば、レニンアンギオテンシンアルドステロン系を阻害する“RAASi”剤)。しかしながら、腎機能が悪化するに連れて、尿細管が応答できなくなるため、利尿剤の効果が減少する。RAASi剤は、腎臓カリウム排泄を阻止するため、命に関わる高カリウム血症を誘発する。さらなるナトリウム負荷を考えると、1日あたりの推奨総ナトリウム摂取量をしばしば超える量のナトリウム含有塩基で代謝性アシドーシス患者を慢性的に処置することは合理的施術ではない。その結果、経口重炭酸ナトリウムは、一般にはこれらの糖尿病性腎症患者に長期にわたっては処方されない。重炭酸カリウムもまた、CKDを有する患者が容易にカリウムを排泄できず、重度高カリウム血症に至るため、許容されない。
【0022】
これらの欠点にも関わらず、経口重炭酸ナトリウムの役割は、非高血圧CKD患者の小亜集団で研究されている。Kidney Research National Dialogueの一部として、アルカリ療法は、CKDの進行を減速するならびに代謝性アシドーシスを補正する可能性を有するとして同定された。40歳後の糸球体濾過速度(GFR)の年間加齢性低下は、正常個体で0.75~1.0ml/分/1.73mである。急速な進行のCKD患者において、年間>4ml/分/1.73mの急な低下が見られ得る。
【0023】
一つの成績調査において、De Brito-Ashurstらは、炭酸水素補給が、CKDにおける腎機能を保存することを示した(De Brito-Ashurst I, Varagunam M, Raftery MJ, et al, 2009, Bicarbonate supplementation slows progression of CKD and improves nutritional status, J. Am. Soc. Nephrol. 20: 2075-2084)。この研究は、CKD(クレアチニンクリアランス[CrCl]15~30ml/分/1.73m)および血清炭酸水素16~20mmol/Lを有する134名の成人患者を無作為に経口重炭酸ナトリウム補給または標準治療に2年間割り振った。この研究での炭酸水素の平均投与量は1.82g/日であり、これは1日あたり22mEqの炭酸水素を提供する。主要エンドポイントはCrCl低下速度、CrClが急速に低下した(>3ml/分/1.73m/年)および末期腎疾患(“ESRD”)(CrCl<10ml/分)の患者の割合であった。対照群と比較して、CrClの減少は炭酸水素補給で減速した(炭酸水素を受けている患者で1.88ml/分/1.73mの減少に対し対照群で5.93ml/分/1.73mの減少;P<0.0001)。炭酸水素を補給された患者が急速な進行を経験する可能性は有意に低かった(9%対45%;相対リスク0.15;95%信頼区間0.06~0.40;P<0.0001)。同様に、炭酸水素を補給された患者がESRDを発症する数は少なかった(6.5%対33%;相対リスク0.13;95%信頼区間0.04~0.40;P<0.001)。
【0024】
高リン酸塩血症は、CKDを有する患者で、特に進行型または末期腎疾患の患者で、一般的な併存症である。塩酸セベラマーが、血清リン酸塩濃度を減少させるイオン交換樹脂として一般に使用されている。しかしながら、この薬剤の報告されている欠点は、明らかに小腸におけるリン酸塩結合の過程でのHClの正味の吸収による代謝性アシドーシスを含む。血液透析または腹膜透析を受けているCKDおよび過リン酸塩血症を有する患者でのいくつかの試験で、塩酸セベラマーの使用により血清炭酸水素濃度が低下することが判明した(Brezina, 2004 Kidney Int. V66 S90 (2004) S39-S45; Fan, 2009 Nephrol Dial Transplant (2009) 24:3794)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】Clinical practice guidelines for nutrition in chronic renal failure, K/DOQI, National Kidney Foundation, Am. J. Kidney Dis. 2000; 35:S1-140
【非特許文献2】Raphael, KL, Zhang, Y, Wei, G, et al. 2013, Serum bicarbonate and mortality in adults in NHANES III, Nephrol. Dial. Transplant 28: 1207-1213
【非特許文献3】Leman, J, Litzow, JR, Lennon, EJ. 1966. The effects of chronic acid loads in normal man: further evidence for the participation of bone mineral in the defense against chronic metabolic acidosis, J. Clin. Invest. 45: 1608-1614
【非特許文献4】Franch HA, Mitch WE, 1998, Catabolism in uremia: the impact of metabolic acidosis, J. Am. Soc. Nephrol. 9: S78-81
【非特許文献5】Ballmer, PE, McNurlan, MA, Hulter, HN, et al., 1995, Chronic metabolic acidosis decreases albumin synthesis and induces negative nitrogen balance in humans, J. Clin. Invest. 95: 39-45
【非特許文献6】Farwell, WR, Taylor, EN, 2010, Serum anion gap, bicarbonate and biomarkers of inflammation in healthy individuals in a national survey, CMAJ 182:137-141
【非特許文献7】KDOQI bone guidelines: American Journal of Kidney Diseases (2003) 42:S1-S201. (suppl)
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【発明の概要】
【0026】
本発明の種々の面において、それゆえに、ヒトを含む動物を処置するための組成物および方法およびこのような組成物の製造法が説明され得る。組成物は、架橋アミンポリマー類を含み、例えば、消化管からのプロトンおよび/または塩化物イオンの除去が生理学的利益を提供する疾患または他の代謝状態を処置するために使用し得る。例えば、ここに記載するポリマー類を使用して、ヒトを含む動物における酸塩基関連疾患を制御し得る。一つのこのような態様において、ここに記載するポリマー類を使用して、ヒトを含む動物における血清炭酸水素濃度および血液pHを正常化し得る。さらなる例として、ここに記載するポリマー類をアシドーシスの処置に使用し得る。この不均衡を説明するいくつかの異なる生理的状態があり、その各々をHClと結合し、除去するポリマーで処置できる。
【0027】
酸の純増に起因する代謝性アシドーシスは、ケトアシドーシス、L-乳酸アシドーシス、D-乳酸アシドーシスおよびサリチル酸中毒のような内因性水素イオン産生増加を含む。メタノール、エチレングリコールおよびパラアルデヒドのような摂取された毒物の代謝も水素イオン濃度を増加できる。尿毒症性アシドーシスおよび遠位(I型)腎尿細管アシドーシスのような水素イオン腎排泄減少は、代謝性アシドーシスに至る体内の酸の純増の他の原因である。炭酸水素の喪失による代謝性アシドーシスは、近位(II型)腎尿細管アシドーシスの特徴である。さらに、急性または慢性下痢における炭酸水素の消化器喪失も代謝性アシドーシスに至る。原発性または二次性低アルドステロン症は、高カリウム血症および代謝性アシドーシスの原因となる一般的障害であり、IV型腎尿細管アシドーシスの分類の基礎をなす。低レニン性低アルドステロン症は、この障害で最も頻繁に見られる変種である。
【0028】
代謝性アシドーシスを述べる他の方法は、アニオンギャップの点からである。高アニオンギャップアシドーシスの原因は糖尿病性ケトアシドーシス、L-乳酸アシドーシス、D-乳酸アシドーシス、アルコール性ケトアシドーシス、飢餓ケトアシドーシス、進行型腎不全(CKDステージ4~5)に伴う尿毒症性アシドーシス、サリチル酸中毒およびメタノール、エチレン、プロピレングリコールおよびパラアルデヒドを含む摂取による選択的毒物曝露を含む。正常アニオンギャップアシドーシスの原因は早期腎不全(CKD段階1~3)、急性または慢性下痢による炭酸水素の消化器喪失、遠位(I型)腎尿細管アシドーシス、近位(II型)腎尿細管アシドーシス、IV型腎尿細管アシドーシス、大容量静脈内液体投与と関係する希釈性アシドーシスおよび尿におけるケトン類喪失が原因の糖尿病性ケトアシドーシスの処置を含む。
【0029】
乳酸アシドーシスに関して、低酸素性乳酸アシドーシスは酸素バランスと酸素供給の不均衡が原因であり、組織虚血、発作、激しい運動、ショック、心停止、心拍出量低下およびうっ血性心不全、重度貧血、重度低酸素血症および一酸化炭素中毒、ビタミン欠乏および敗血症と関係する。他のタイプの乳酸アシドーシスにおいて、酸素送達は正常であるが、しばしば細胞ミトコンドリア欠損の結果、酸化的リン酸化が障害される。これは、一般に代謝先天性異常によりまたは薬物もしくは毒物の摂取により見られる。経管栄養のためのまたは手術中の洗浄剤としての代替糖類(例えば、フルクトース、ソルビトール)の使用も、乳酸アシドーシスを誘発する代謝に至り得る。
【0030】
腎尿細管アシドーシスには、各々異なる病因があり、数サブタイプがある3個の大分類がある。遠位(I型)腎尿細管アシドーシスは、遺伝性およびゲノム変化、特にHCO /Cl交換体(AE1)またはH/ATPaseにおける変異が原因であり得る。後天性遠位(I型)腎尿細管アシドーシスの例は、副甲状腺機能亢進、シェーグレン症候群、海綿腎、クリオグロブリン血症、全身性エリテマトーデス、腎臓移植片拒絶、慢性尿細管間質性疾患およびアンホテリシンB、リチウム、イホスファミド、フォスカーネット、トルエンおよびバナジウムを含む種々の薬物への曝露を含む。高カリウム血症を伴う遠位(IV型)腎尿細管アシドーシスの特異的分類が、ループス腎炎、閉塞性腎症、鎌状赤血球貧血および電位欠損に見られる。遺伝性例は、偽低アルドステロン症I型および偽低アルドステロン症II型(ゴードン病)であり、ある種の薬物(アミロライド、トリアムテレン、トリメトプリムおよびペンタミジン)への曝露も、高カリウム血症を伴う遠位(IV型)腎尿細管アシドーシスに至り得る。近位(II型)腎尿細管アシドーシスは遺伝性または後天性原因であり得る。遺伝性原因はウィルソン病およびロウ症候群を含む。後天性原因はシスチン症、ガラクトース血症、多発性骨髄腫、軽鎖疾患、アミロイド症、ビタミンD欠乏、鉛および水銀摂取およびイホスファミド、シドフォビル、アミノグリコシド類およびアセタゾラミドを含むある種の薬物への曝露を含む。炭酸水素再吸収における孤立型欠損は近位(II型)腎尿細管アシドーシスの原因の可能性があり、このような欠損の例は、炭酸脱水酵素阻害剤、アセタゾラミド、トピラメート、スルファミロンへの曝露および炭酸脱水酵素欠乏を含む。複合近位および遠位腎尿細管アシドーシス(III型)は稀であり、近位炭酸水素再吸収および遠位プロトン分泌の両者における欠損が原因である。シストリック炭酸脱水酵素の遺伝子における変異ならびにイホスファミドを含むある種の薬物が欠損を起こし得る。高カリウム血症を伴うIV型腎尿細管アシドーシスは代謝性アシドーシスの原因である。このタイプのアシドーシスの根底にある主病因は、アルドステロン欠乏;原発性副腎不全が原因の低アルドステロン症、一般に高齢個体に見られる低レニン性低アルドステロン症(IV型RTA)の症候群、アジソン病およびミネラルコルチコイド耐性による偽低アルドステロン症I型である。鎮痛薬腎症、慢性腎盂腎炎、閉塞性腎症および鎌状赤血球疾患による慢性間質性腎炎も高カリウム血症を伴うアシドーシスを生じさせ得る。最後に、アミロライド、スピロノラクトン、トリアムテレン、トリメトプリム、ヘパリン治療、NSAIDs、アンギオテンシン受容体ブロッカーおよびアンギオテンシン変換酵素阻害剤のような薬物も、高カリウム血症を伴う代謝性アシドーシスを誘発できる。
【0031】
代謝性アシドーシスの上記原因および病因の全てが、消化管におけるHClと結合し、除去するように設計したポリマーで処置可能である。
【0032】
処置法は、一般に、ヒトのような動物の消化管からプロトンおよび塩化物イオンを除去する能力を有する架橋アミンポリマーの治療有効量の投与を含む。一般に、このような架橋アミンポリマー類は、相対的に低い膨潤、相対的に高いプロトンおよび塩化物イオン結合および/または相対的に低いリン酸、クエン酸、短鎖脂肪酸類および胆汁酸類のような干渉アニオン類の結合のような2個またはそれ以上の特徴を有する。下記実施例および態様において、特に断らない限り、架橋アミンポリマー類は遊離アミン形態で使用し、アニオン類と結合するために、アミン類のプロトン化を必要とする。そのようなものとして、アッセイの多くがアニオン結合を報告し、必須の低アミン四級化度のために、アニオン結合はプロトン結合の量に近似すると推定される。例えば、一つの態様において、架橋アミンポリマーは次の特徴の少なくとも2個を有する。(i)人工胃液(“SGF”)で少なくとも約5mmol/gのプロトン結合能および塩化物結合能;(ii)約5未満の膨潤比;(iii)人工小腸無機緩衝液(“SIB”)中、それぞれ少なくとも約0.35:1の塩化物対リン酸イオン結合比;(iv)人工小腸有機および無機緩衝液(“SOB”)における塩化物への他のアニオン類を超える選択性、(v)約80~120ミクロンの平均粒子径、(vi)塩化物滞留アッセイに付したとき、HCl結合の約50%を超えて滞留(“CRA”、下に定義)、(vii)ポリマーの主治療作用を構成するプロトン結合を確実にするために、四級化アミンアッセイ(“QAA”)で測定して、ヒトを含む動物への投与前に四級化アミン基が約40%を超えない;(viii)“SOB”において塩化物対干渉アニオン結合比それぞれ少なくとも約0.35:1;(ix)窒素原子あたり50~170ダルトンの分子量および/または(x)25~90%の重量パーセント範囲のクロスリンカー。例えば、一つのこのような態様において、架橋アミンポリマーは、本段落に定義した特徴“(i)”~“(x)”の2個の特徴を有する。さらなる例として、一つのこのような態様において、架橋アミンポリマーは、本段落に定義した特徴“(i)”~“(x)”の少なくとも3個の特徴を有する。さらなる例として、一つのこのような態様において、架橋アミンポリマーは、本段落に定義した特徴“(i)”~“(x)”の少なくとも4個の特徴を有する。さらなる例として、一つのこのような態様において、架橋アミンポリマーは、本段落に定義した特徴“(i)”~“(x)”の少なくとも5個の特徴を有する。さらなる例として、一つのこのような態様において、架橋アミンポリマーは、本段落に定義した特徴“(i)”~“(x)”の少なくとも6個の特徴を有する。さらなる例として、一つのこのような態様において、架橋アミンポリマーは、本段落に定義した特徴“(i)”~“(x)”の少なくとも7個の特徴を有する。さらなる例として、一つのこのような態様において、架橋アミンポリマーは、本段落に定義した特徴“(i)”~“(x)”の少なくとも8個の特徴を有する。
【0033】
一つの態様において、架橋アミンポリマーは、架橋アミンポリマーおよび所望によりインビボで架橋アミンポリマーのプロトンおよび/または塩化物結合特徴を顕著に妨害しない薬学的に許容される担体、希釈剤または添加物、またはこれらの組み合わせを含む医薬組成物として投与する。所望により、医薬組成物はまた付加的治療剤も含んでよい。
【0034】
ある態様において、医薬組成物は、(i)人工小腸無機緩衝液(“SIB”)においてそれぞれ少なくとも0.35:1の塩化物対リン酸イオン結合比および(ii)約5を超えない膨潤比を有する架橋アミンポリマーを含む。
【0035】
ある態様において、医薬組成物は、(i)人工小腸有機および無機緩衝液(“SOB”)における塩化物への他のアニオン類を超える選択性および(ii)約5を超えない膨潤比を有する架橋アミンポリマーを含む。
【0036】
ある態様において、医薬組成物は、(i)人工胃液において少なくとも5mmol/gのプロトン結合能および塩化物結合能;および(ii)約2を超えない膨潤比を有する架橋アミンポリマーを含む。
【0037】
ある態様において、医薬組成物は、(i)人工胃液において少なくとも5mmol/gのプロトン結合能および塩化物結合能;(ii)5未満の膨潤比および(iii)人工小腸無機緩衝液(“SIB”)においてそれぞれ少なくとも0.35:1の塩化物対リン酸イオン結合比を有する架橋アミンポリマーを含む。
【0038】
ある態様において、医薬組成物は、(i)人工胃液において少なくとも5mmol/gのプロトン結合能および塩化物結合能;(ii)5未満の膨潤比および(iii)人工小腸有機および無機緩衝液(“SOB”)における塩化物への他のアニオン類を超える選択性を有する架橋アミンポリマーを含む。
【0039】
ある態様において、医薬組成物は、i)人工有機/無機緩衝液(SOB)における>2mmol/gの塩化物結合能およびii)塩化物滞留アッセイ(CRA)で評価したとき、結合塩化物の>50%滞留を有する架橋アミンポリマーを含む。
【0040】
ある態様において、医薬組成物は、i)人工胃液(SGF)における>5mmol/gの塩化物結合能およびii)四級化アミンアッセイ(QAA)で測定して40%を超えない四級化アミン基を有する架橋アミンポリマーを含む。
【0041】
ある態様において、医薬組成物は、式1
【化2】
〔式中、R、RおよびRは独立して水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルである。ただし、R、RおよびRの少なくとも1個が水素以外である。〕
に対応するアミン残基を含む架橋アミンポリマーを含み、架橋アミンポリマーは(i)pH1.2で35mM NaClおよび63mM HClを含み、37℃の水性人工胃液緩衝液(“SGF”)で少なくとも5mmol/gの平衡プロトン結合能および少なくとも5mmol/gの塩化物イオン結合能および(ii)脱イオン水中約2またはそれ未満の平衡膨潤比を有する。
【0042】
ある態様において、医薬組成物は、式1
【化3】
〔式中、R、RおよびRは独立して水素、ヒドロカルビル置換ヒドロカルビルである。ただし、R、RおよびRの少なくとも1個が水素以外である。〕
に対応するアミン残基を含む架橋アミンポリマーを含み、架橋アミンポリマーは脱イオン水中約5またはそれ未満の平衡膨潤比を有し、架橋アミンポリマーは干渉イオン緩衝液中、37℃で塩化物イオン対干渉イオンのそれぞれ少なくとも0.35:1のモル比で結合し、ここで(i)干渉イオンはリン酸イオンであり、干渉イオン緩衝液はpH5.5の36mM 塩化物および20mM リン酸の緩衝液であるかまたは(ii)干渉イオンはリン酸、クエン酸およびタウロコール酸イオンであり、干渉イオン緩衝液は36mM 塩化物、7mM リン酸、1.5mM クエン酸および5mM タウロコール酸を含むpH6.2の緩衝液である。つまり、干渉イオン緩衝液が36mM 塩化物および20mM リン酸のpH5.5の緩衝液である態様において、塩化物対干渉イオンの比は塩化物対リン酸イオンの比であり、干渉イオン緩衝液が36mM 塩化物、7mM リン酸、1.5mM クエン酸および5mM タウロコール酸を含むpH6.2の緩衝液である態様において、塩化物対干渉イオンの比は塩化物イオン対リン酸、クエン酸およびタウロコール酸イオンの合わせた(総)量の比である。
【0043】
ある態様において、架橋アミンポリマーは、式2
【化4】
〔式中、
mおよびnは独立して非負整数であり;
10、R20、R30およびR40は独立して水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルであり、

【化5】
であり、
はヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルであり;
各X11は独立して水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヒドロキシル、アミノ、ボロン酸またはハロであり;
zは非負数である。〕
に対応するアミンの重合に由来する。
【0044】
本開示のさらなる面は、相対的に低い膨潤、相対的に高いプロトンおよび塩化物イオン結合および/または相対的に低い干渉イオンによる妨害の1個以上の特徴を提供するための、プロトン結合中間体と多官能性クロスリンカーを架橋させる方法である。プロトン結合中間体は、例えば、(i)置換重合、(ii)付加重合または(iii)中間体の重合後架橋により製造し、アミン基含有オリゴマーまたはポリマーである。
【0045】
他の面および特性は明らかであり、一部、以後に示す。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】経口摂取/胃(図1A)、上部GI管(図1B)から下部GI管/結腸(図1C)へと個体の消化管を通るときの、ポリマーの作用機序を模式的に記すフローチャート。
図2】ここに開示するポリマー類のSIB中の膨潤比対塩化物:リン酸結合比の相関を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0047】
略語および定義
下記定義および方法は本発明を良好に定義するためおよび本発明の実施に際しての当業者の指針のために提供する。特に断らない限り、用語は関連分野の当業者による慣用の用法に従い解釈すべきである。
【0048】
用語“アクリルアミド”は、構造式HC=CH-C(O)NR-*(式中、*は本基の分子の残りへの結合点を示し、Rは水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルである)の基を示す。
【0049】
用語“アクリリック”は、構造式HC=CH-C(O)O-*(式中、*は本基の分子の残りへの結合点を示す)の基を示す。
【0050】
用語“脂環式”、“アリシクロ”または“アリシクリル”は、3~8個の炭素原子の飽和単環基を示し、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどを含む。
【0051】
用語“脂肪族”は、例えば、1~約20個の炭素原子または、具体的態様において、1~約12個の炭素原子、1~約10個の炭素原子、1~約8個の炭素原子または1~約4個の炭素原子を有する飽和および非芳香族不飽和ヒドロカルビル基を示す。脂肪族基は、例えば、アルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソ-アミル、ヘキシルなどおよび同等な鎖長のアルケニル基を含む。
【0052】
用語“アルカノール”は、少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されているアルキル基を示す。ある態様において、アルカノール基は1~6個の炭素原子を含み、そのうち1個が酸素原子に結合している“低級アルカノール”基である。他の態様において、低級アルカノール基は1~3個の炭素原子を含む。
【0053】
用語“アルケニル基”は、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分枝鎖炭素基を包含する。用語“アルケニル基”は共役および非共役炭素-炭素二重結合またはこれらの組み合わせを包含し得る。アルケニル基、例えば、それに縛られないが、2~約20個の炭素原子または特定の態様において、2~約12個の炭素原子を包含できる。ある態様において、アルケニル基は、2~約4個の炭素原子を有する“低級アルケニル”基である。アルケニル基の例は、エテニル、プロペニル、アリル、ビニル、ブテニルおよび4-メチルブテニルを含むが、これらに限定されない。用語“アルケニル基”および“低級アルケニル基”は、“cis”または“trans”配向を、または代替的に、“E”または“Z”配向を有する基を包含する。
【0054】
ここで単独でまたは“ハロアルキル基”、“アミノアルキル基”および“アルキルアミノ基”のような他の用語内で使用する用語“アルキル基”は、例えば、1~約20個の炭素原子または、具体的態様において、1~約12個の炭素原子を有する、飽和直鎖または分枝鎖炭素基を含む。他の態様において、アルキル基は、1~約6個の炭素原子を有する“低級アルキル”基である。このような基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソ-アミル、ヘキシルなどを含むが、これらに限定されない。さらに具体的な態様において、低級アルキル基は1~4個の炭素原子を有する。
【0055】
用語“アルキルアミノ基”は、アミノ基の窒素原子を介して分子の残りに結合し、ここで、アルキルアミノ基の窒素原子が1個または2個のアルキル基で置換されている、アミノ基をいう。ある態様において、アルキルアミノ基は、窒素原子に結合した1個または2個の、1~6個の炭素原子のアルキル基を有する“低級アルキルアミノ”基をいう。他の態様において、低級アルキルアミノ基は1~3個の炭素原子である。適当な“アルキルアミノ”基はモノまたはジアルキルアミノ、例えばN-メチルアミノ、N-エチルアミノ、N,N-ジメチルアミノ、N,N-ジエチルアミノ、ペンタメチレンアミンなどである。
【0056】
用語“アリル”は、構造式HC=CH-CH-*(式中、*は本基の分子の残りへの結合点を示し、結合点はヘテロ原子または芳香族基にである)を有する基をいう。
【0057】
用語“アリルアミン”は、構造式HC=CH-CHN(X)(X)(式中、XおよびXは独立して水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルであるかまたはXおよびXは、一体となって置換または非置換脂環基、アリール基またはヘテロ環式基を形成し、各々該用語に関連して定義したとおりであり、典型的に環内に3~8個の原子を有する。)を有する基をいう。
【0058】
単独でまたは他の基の一部として使用する用語“アミン”または“アミノ”は、式-N(X)(X)(式中、XおよびXは独立して水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルであり、ヘテロアリールまたはヘテロシクロであるかまたはXおよびXは、一体となって置換または非置換脂環基、アリール基またはヘテロ環式基を形成し、各々該用語に関連して定義したとおりであり、典型的に環内に3~8個の原子を有する。)の基をいう。
【0059】
用語“アミノアルキル基”は、1~約10個の炭素原子を有し、このいずれか1個が1個以上のアミノ基で置換されていてよく、アミン基の窒素原子以外の原子を介して分子の残りに結合している直鎖または分枝鎖アルキル基をいう。ある態様において、アミノアルキル基は、1~6個の炭素原子および1個以上のアミノ基を有する“低級アミノアルキル”基である。このような基の例はアミノメチル、アミノエチル、アミノプロピル、アミノブチルおよびアミノヘキシルを含む。
【0060】
用語“芳香族基”または“アリール基”は、1個以上の環を有する芳香族基をいい、ここで、このような環垂れ下がって一体となって結合してよくまたは縮合していてよい。具体的態様において、芳香族基は単環、二環または三環である。単環式芳香族基は5~10個の炭素原子、典型的に5~7個の炭素原子、より典型的に5~6個の炭素原子を環内に含む。典型的多環式芳香族基は、二環または三環を有する。二環を有する多環式芳香族基は、典型的に8~12個の炭素原子、好ましくは8~10個の炭素原子を環内に含む。芳香族基の例は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニル、フェナントリル、アントリルまたはアセナフチルを含むが、これらに限定されない。
【0061】
用語“ビーズ”は、実質的に球形である架橋ポリマーをいうために使用する。
【0062】
ここでポリマーと1個以上のイオン、すなわち、カチオン(例えば“プロトン結合”ポリマー)とアニオンと関連して使用する用語“結合”は、“イオン結合”ポリマーでありおよび/またはそれがイオンと結合するとき、ポリマーがイオンの溶液または体からの除去を行うのに十分な時間使用されるインビトロまたはインビボ条件下にイオンの少なくも一部が結合したままである十分な結合強度を有して、一般に必ずしも非共有結合方式ではないと考えられる。
【0063】
用語“塩化物滞留アッセイ”または“CRA”は、塩化物および他のアニオン類の遊離アミン試験ポリマー類ならびに遊離アミンセベラマーおよびビキサロマー対照ポリマー類による滞留を、典型的に結腸管腔の競合アニオン濃度に曝すことにより評価する、アッセイを意味する。これらの条件下でポリマー類から遊離されるアニオン類およびポリマー類により保持されるアニオン類を測定する。滞留アッセイの第一工程は、本明細書の他所に記載する特異的有機/無機緩衝液アッセイ(SOBスクリーニング)の実施である。ポリマーを含まない空チューブを含ませ、滞留スクリーニングの間同一の方法で処理する。ポリマーおよびSOBマトリクスをアッセイチューブから廃棄する代わりに、内容物を20マイクロメーター孔サイズフリットを備えた固相抽出(SPE)チューブに移す。過剰なSOBマトリクスを、SPEチューブの下部に陰圧を適用するかまたは上部に陽圧を適用することにより除去する。SOBアッセイチューブを脱イオン水で2回濯ぎ、内容物をSPEチューブに移して、できるかぎり多量のポリマーを回収することを確実にする。滞留アッセイマトリクスを次いでSPEチューブに添加する。滞留アッセイマトリクスは50mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、100mM 酢酸ナトリウム、5mM リン酸ナトリウム、15mM 硫酸を含み、pH6.2に調節されている。競合する可能性のあるアニオン類の濃度は、典型的後期結腸管腔濃度を反映する(Wrong, O et al. [1965] Clinical Science 28, 357-375)。塩化物滞留の測定が目的であるため、塩化物を取り除き、水およびCOへの変換により不安定であるため炭酸水素を取り除く。滞留緩衝液を添加して、最終ポリマー濃度2.5mg/mlを達成する(SOBアッセイチューブへの最初の秤量からポリマーの喪失がないと仮定)。SPEチューブにふたをして密閉し、37℃で約40時間インキュベートする。600マイクロリットルサンプルを除き、濾過し、必要に応じて希釈し、SOBについて上に記載したとおりアニオン含量をアッセイする。各試験ポリマーについて、滞留マトリクス中のポリマーから遊離された塩化物、クエン酸およびタウロコール酸を次の式を使用して計算する。
【数1】
〔式中、[イオン]retは48時間インキュベーション終了時の滞留マトリクスにおけるイオンの濃度に対応し、[イオン]retブランクはブランクSPEチューブから滞留マトリクスへの特定のイオンの値に対応し、希釈係数は必要に応じた希釈係数であり、2.5はポリマー濃度(mg/ml)である。〕過剰な滞留マトリクスを、SPEチューブの下部に陰圧を適用するかまたは上部に陽圧を適用することにより除去する。SPEカラムを10mlの脱イオン水で短く洗浄し、過剰の水を除去する。ポリマー類に結合したままであるイオン類を0.2M NaOHのSPEチューブへの添加により溶出し、最終ポリマー濃度2.5mg/mlを達成し(SOBアッセイチューブへの最初の秤量からポリマーの喪失がないと仮定)、16~20時間、37℃でインキュベートする。600マイクロリットルサンプルを除き、濾過し、必要に応じて希釈し、SOBについて上に記載したとおりアニオン含量をアッセイする。各試験ポリマーについて、滞留マトリクス中のポリマーから遊離された塩化物、リン酸、クエン酸およびタウロコール酸を次の式を使用して計算する。
【数2】
〔式中、[イオン]eluは、16~20時間インキュベーション後の0.2M NaOH溶出マトリクス中のイオンの濃度であり、[イオン]eluブランクは、ブランクSPEチューブからの溶出マトリクスにおける特定のイオンの値に対応し、希釈係数は必要に応じた希釈係数であり、2.5はポリマー濃度(mg/ml)である。〕
【0064】
用語“架橋密度”は、反復単位を含むアミンのポリマーの残りへの平均結合数を意味する。結合数は2、3、4およびそれ以上であり得る。直鎖、非架橋ポリマー類の反復単位は、2結合を介して取り込まれる。不溶性ゲルを形成するために、結合数は2より大きくなければならない。セベラマーのような低架橋密度物質は、反復単位間に平均約2.1結合を有する。ビキサロマーのようなより架橋の系は、アミン含有反復単位間に平均約4.6結合を有する。“架橋密度”は、使用する出発物質の比に基づき半定量的指標を表す。異なる架橋および重合法を考慮しないという事実の限界を含む。例えば、小分子アミン系は、クロスリンカーがポリマー主鎖を形成するためのモノマーとしても働くために高量のクロスリンカーを必要とし、ラジカル重合については、ポリマー鎖は架橋反応と無関係に形成される。これにより、ラジカル重合架橋物質と比較して、置換重合/小分子アミンについてこの定義の下では本質的に高い架橋密度が導かれ得る。
【0065】
単独でまたは他の用語内で使用される用語“クロスリンカー”は、記載するモノマーのいずれかまたは式1に記載するような無限のポリマーネットワークと、1回を超えて反応できるヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビル、直鎖または分枝鎖分子をいう。クロスリンカー内の反応性基はアルキルハライド、エポキシド、ホスゲン、無水物、カルバメート、カーボネート、イソシアネート、チオイソシアネート、エステル類、活性化エステル類、カルボン酸類および誘導体、スルホネート類および誘導体、アシルハライド類、アジリジン類、アルファ,ベータ-不飽和カルボニル類、ケトン類、アルデヒド類、ペンタフルオロアリール基、ビニル、アリル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、アクリロニトリル類およびこれらの組み合わせを含み得るが、これらに限定されない。一つの例示的態様において、クロスリンカーの反応性基はアルキルハライド、エポキシド、無水物、イソシアネート類、アリル、ビニル、アクリルアミドおよびこれらの組み合わせを含む。一つのこのような態様において、クロスリンカーの反応性基はアルキルハライド、エポキシドまたはアリルである。
【0066】
用語“ジアリルアミン”は、2個のアリル基を有するアミノ基をいう。
【0067】
用語“エーテル性”は、構造式*-HC-O-CH-*(式中、*は分子の残りへの結合点を示し、xは独立して0、1、2または3である)により示される、2個の別々の炭素原子に結合した酸素を有する基をいう。
【0068】
用語“ゲル”は、不規則な形を有する架橋ポリマーを記載するために使用する。
【0069】
用語“ハロ”は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子のようなハロゲン類を意味する。
【0070】
用語“ハロアルキル基”は、アルキル炭素原子の任意の1個以上が上に定義したハロで置換されている基を包含する。具体的に包含されるのは、モノハロアルキル、ジハロアルキルおよびペルハロアルキルを含むポリハロアルキル基である。モノハロアルキル基は、例えば、ヨード原子、ブロモ原子、クロロ原子またはフルオロ原子を基内に含み得る。ジハロおよびポリハロアルキル基は、2個以上の同じハロ原子または異なるハロ基の組み合わせを有し得る。“低級ハロアルキル基”は、1~6個の炭素原子を有する基を含む。ある態様において、低級ハロアルキル基は1~3個の炭素原子を有する。ハロアルキル基の例はフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ジフルオロクロロメチル、ジクロロフルオロメチル、ジフルオロエチル、ジフルオロプロピル、ジクロロエチルおよびジクロロプロピルを含む。
【0071】
用語“ヘテロ脂肪族”は、ハロゲン、酸素、窒素、硫黄、リンまたはホウ素のような1個以上のヘテロ原子を含む、飽和でも不飽和でもよい(しかし芳香族ではない)、1~25個の炭素原子、典型的に1~12個の炭素原子、より典型的に1~10個の炭素原子、最も典型的に1~8個の炭素原子、ある態様において、1~4個の炭素原子の鎖をいう。ヘテロ原子は、原子鎖(例えば、炭素原子が原子鎖の一員である-CH(OH)-CH(NH)-)に結合したペンダント(または側鎖)基の一部であってよく、または鎖原子(例えば、-ROR-または-RNHR-(式中、各Rは脂肪族である))の一つであってよい。ヘテロ脂肪族はヘテロアルキルおよびヘテロシクロを含むが、ヘテロアリールを含まない。
【0072】
用語“ヘテロアルキル”は、完全に飽和されたヘテロ脂肪族基をいう。
【0073】
用語“ヘテロアリール”は、特に断らない限り、5~10個の環原子の単環式または二環式芳香族ラジカルを意味し、ここで1個以上の(一つの態様において、1個、2個または3個)の環原子がN、OまたはSから選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子は炭素である。代表例は、ピロリル、チエニル、チアゾリル、イミダゾリル、フラニル、インドリル、イソインドリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キノリニル、イソキノリニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル、テトラゾリルなどを含むが、これらに限定されない。ここに定義するとおり、用語“ヘテロアリール”および“アリール”相互排他的である。“ヘテロアリーレン”は二価ヘテロアリール基を意味する。
【0074】
用語“ヘテロ原子”は、炭素および水素以外の原子を意味する。典型的に、しかし排他的ではなく、ヘテロ原子はハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、窒素原子、ホウ素原子および酸素原子からなる群から選択される。1個を超えるヘテロ原子を含む基は異なるヘテロ原子を含んでよい。
【0075】
用語“ヘテロシクロ”、“ヘテロ環”または“ヘテロシクリル”は、4~8個の環原子の飽和または不飽和基を意味し、ここで、1個または2個の環原子がN、O、B、PおよびS(O)(式中、nは0~2の整数である)のようなヘテロ原子であり、残りの環原子は炭素である。さらに、ヘテロシクリル環の1個または2個の環炭素原子は、所望により-C(O)-基に置き換わってよい。より具体的に、用語ヘテロシクリルは、ピロリジノ、ピペリジノ、ホモピペリジノ、2-オキソピロリジニル、2-オキソピペリジニル、モルホリノ、ピペラジノ、テトラヒドロ-ピラニル、チオモルホリノなどを含むが、これらに限定されない。ヘテロシクリル環が不飽和であるならば、環が芳香族ではない限り、1個または2個の環二重結合を含んでよい。ヘテロシクリル基が少なくとも1個の窒素原子を含むとき、ヘテロシクロアミノとも呼び、ヘテロシクリル基の下位群である。
【0076】
用語“炭化水素基”または“ヒドロカルビル基”は、1~25個の炭素原子、典型的に1~12個の炭素原子、より典型的に1~10個の炭素原子および最も典型的に1~8個の炭素原子の鎖を意味する。炭化水素基は、直鎖または分枝鎖構造を有し得る。典型的炭化水素基は1個または2個の分枝、典型的に1個の分枝を有する。典型的に、炭化水素基は飽和である。不飽和炭化水素基は1個以上の二重結合、1個以上の三重結合またはこれらの組み合わせを有してよい。典型的不飽和炭化水素基は1個または2個の二重結合または1個の三重結合を有し、より典型的に不飽和炭化水素基は1個の二重結合を有する。
【0077】
“イニシエーター”は、重合を開始させる試薬をいうために使用する用語である。
【0078】
用語“窒素あたりの分子量”または“MW/N”は、窒素原子あたりのポリマーの計算分子量を表す。これは、架橋ポリマー内の1個のアミン官能基に対する平均分子量を表す。ポリマーサンプルの質量を、サンプルに存在する窒素のモルで除することにより計算する。“MW/N”は理論容量力の逆関数であり、計算は、クロスリンカーおよびモノマーの完全な反応を仮定して、供給比に基づき計算する。窒素あたりの分子量が低いほど、架橋ポリマーの理論容量力は高い。
【0079】
“所望により”または“場合により”は、その後に記載されている事象または状況が起こるかもしれないが必ずしもそうではないことを意味し、この記載は、事象または状況が起こる場合およびそれがおこらない場合を含む。例えば、“アルキル基で場合により置換されていてよいヘテロシクリル基”は、アルキルが存在してもよいが、必ずしもそうではないことを意味し、この記載は、ヘテロシクリル基がアルキル基で置換されている態様およびヘテロシクリル基がアルキルで置換されていない態様を含む。
【0080】
担体、希釈剤または添加物と関連して使用する“薬学的に許容される”は、一般に安全、非毒性であり、生物学的にも他の点でも獣医学的使用および/またはヒト医薬使用に望ましくないものではない、医薬組成物の製造に有用である、担体、希釈剤または添加物がそれぞれを意味する。
【0081】
用語“重合後架橋”は、架橋の量が増加したビーズまたはゲルを作るために、既に形成されたビーズまたはゲルにさらなる架橋を導入する、既に形成されたビーズまたはゲルへの反応をいう用語である。
【0082】
用語“重合後修飾”は、反応または処理がさらなる官能基を導入する、既に形成されたビーズまたはゲルへの修飾をいう用語である。この官能基は、既に形成されたビーズに共有結合または非供給結合により結合できる。
【0083】
用語“四級化アミンアッセイ”(“QAA”)は、ある架橋ポリマーサンプルに存在する四級アミン類の量を推定する方法をいう。このアッセイは、pH11.5で架橋アミンポリマーの塩化物結合を測定する。このpHで、一級、二級および三級アミン類は実質的にプロトン化されず、実質的に塩化物結合に貢献しない。それゆえに、これらの条件下で見られるすべての結合は、永久的に荷電された四級アミン類の存在に起因し得る。QAAアッセイに使用する試験溶液は、pH11.5の100mM 塩化ナトリウムである。塩化物イオンの濃度は、架橋アミンポリマー類の総結合能の評価に使用するSGFアッセイに順ずる。存在する総アミン類のパーセンテージとしての四級アミン含量を次のとおり計算する。
【数3】
【0084】
QAAアッセイを実施するために、試験する遊離アミンポリマーを、10mLのQAA緩衝液中2.5mg/mlの濃度(例えば25mg乾燥質量)で調製する。混合物を、回転式ミキサー(rotisserie mixer)で撹拌しながら37℃で~16時間インキュベートする。インキュベーションおよび混合後、600マイクロリットルの上清を取り、800マイクロリットル、0.45マイクロメーター孔サイズ、96ウェルポリプロピレンフィルタープレートを使用して濾過する。フィルタープレートおよび底に取り付けた収集プレートに整列したサンプルを用いて、ユニットを1000×gで1分遠心してサンプルを濾過する。収集プレートに濾過後、各濾液を適当に希釈して、塩化物含量を測定する。濾液中の塩化物含量の分析に使用するIC方法(例えばICS-2100イオンクロマトグラフィー、Thermo Fisher Scientific)は15mM KOH移動相、注入量5マイクロリットル、3分のランタイム、洗浄/濯ぎ容積1000マイクロリットルおよび流速1.25mL/分からなる。ポリマーに結合した塩化物を決定するため、次の計算を行う。
【数4】
〔式中、ClstartはQAA緩衝液中の塩化物の出発濃度に対応し、Cleqは試験ポリマーに曝露後の濾液中で測定される塩化物の平衡値に対応し、そして2.5はポリマー濃度(mg/ml)である。〕。
【0085】
“人工胃液”または“SGF”アッセイは、次のような胃液の内容物を模倣する規定された緩衝液を使用する試験ポリマーに対する総塩化物結合能を決定するための試験をいう。人工胃液(SGF)は35mM NaCl、63mM HCl、pH1.2からなる。本アッセイを実施するために、試験する遊離アミンポリマーを10mLのSGF緩衝液中2.5mg/mlの濃度(25mg乾燥質量)で調製する。混合物を、37℃で一夜、~12~16時間、回転式ミキサーで撹拌しながらインキュベートする。インキュベーションおよび混合後、ポリマーを含むチューブを2分、500~1000×gで遠心して試験サンプルをペレット化する。約750マイクロリットルの上清を取り、96ウェル2mL収集プレート上に取り付けられた適切なフィルター、例えば0.45マイクロメーター孔サイズシリンジフィルターまたは800マイクロリットル、1マイクロメーター孔サイズ、96ウェル、ガラスフィルタープレートを使用して濾過する。後者の配置で、遊離アミンセベラマー、遊離アミンビキサロマーの標準対照およびブランク緩衝液を含む、全アッセイ工程を通して処理される対照チューブを含む、SGF緩衝液で試験する複数サンプル試験を分析用に調製できる。フィルタープレートおよび底に取り付けた収集プレートに整列したサンプルを用いて、ユニットを1000×gで1分遠心してサンプルを濾過する。小サンプルセットの場合、シリンジフィルターをフィルタープレートの代わりに使用してよく、15mL容器に~2~4mLの濾液を回収する。濾過後、各濾液を水で4倍希釈し、濾液の塩化物含量をイオンクロマトグラフィー(IC)で測定する。IC方法(例えばDionex ICS-2100, Thermo Scientific)はAS11カラムおよび15mM KOH移動相、注入量5マイクロリットル、3分のランタイム、洗浄/濯ぎ容積1000マイクロリットルおよび流速1.25mL/分からなる。ポリマーに結合した塩化物を決定するため、次の計算を行う。
【数5】
mmol塩化物/gポリマーとして表される結合能:式中、ClstartはSGF緩衝液中の塩化物の出発濃度に対応し、Cleqは試験ポリマーに曝露後の希釈測定濾液中の塩化物の平衡値に対応し、4は希釈係数であり、そして2.5はポリマー濃度(mg/ml)である。
【0086】
“人工小腸無機緩衝液”または“SIB”は、選択的特異的干渉緩衝液アッセイ(SIB)における遊離アミン試験ポリマー類の塩化物およびリン酸結合能を決定するための試験である。遊離アミン試験ポリマー類の塩化物およびリン酸結合能は、遊離アミンセベラマーおよびビキサロマー対照ポリマー類の塩化物およびリン酸結合能と共に、次のような選択的特異的干渉緩衝液アッセイ(SIB)を使用して決定した。SIBアッセイに使用する緩衝液は、pH5.5に緩衝化された36mM NaCl、20mM NaHPO、50mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)を含む。SIB緩衝液は、ヒト十二指腸および上部消化管に存在する濃度の塩化物、リン酸およびpHを含み(Stevens T, Conwell DL, Zuccaro G, Van Lente F, Khandwala F, Purich E, et al. Electrolyte composition of endoscopically collected duodenal drainage fluid after synthetic porcine secretin stimulation in healthy subjects. Gastrointestinal endoscopy. 2004;60(3):351-5, Fordtran J, Locklear T. Ionic constituents and osmolality of gastric and small-intestinal fluids after eating. Digest Dis Sci. 1966;11(7):503-21)、ポリマーにより結合されるリン酸と比較した塩化物結合の選択性の有効な指標である。本アッセイを実施するために、試験する遊離アミンポリマーを、10mLのSIB緩衝液中2.5mg/mlの濃度(25mg乾燥質量)で調製する。混合物を、回転式ミキサーで撹拌しながら37℃で1時間インキュベートする。インキュベーションおよび混合後、ポリマーを含むチューブを2分、1000×gで遠心して、試験サンプルをペレット化する。750マイクロリットルの上清を取り、96ウェル2mL収集プレート上に取り付けた800マイクロリットル、1マイクロメーター孔サイズ、96ウェル、ガラスフィルタープレートを使用して濾過し、この配置で、遊離アミンセベラマー、遊離アミンビキサロマーの標準対照およびブランク緩衝液を含む、全アッセイ工程を通して処理される対照チューブを含む、SIB緩衝液中で試験する複数サンプル試験を分析用に調製できる。フィルタープレートおよび底に取り付けた収集プレートに整列したサンプルを用いて、ユニットを1000×gで1分遠心してサンプルを濾過する。小サンプルセットの場合、シリンジフィルター(0.45マイクロメートル)をフィルタープレートの代わりに使用してよく、15mLバイアルに~2~4mLの濾液を回収する。収集プレートに濾過後、各濾液を希釈して、塩化物またはリン酸含量を測定する。塩化物およびリン酸の測定のために、分析下にある濾液を水で4倍希釈する。濾液の塩化物およびリン酸含量をイオンクロマトグラフィー(IC)で測定する。IC方法(例えばDionex ICS-2100, Thermo Scientific)はAS24Aカラム、45mM KOH移動相、注入量5マイクロリットル、約10分のランタイム、洗浄/濯ぎ容積1000マイクロリットルおよび流速0.3mL/分からなる。ポリマーに結合した塩化物を決定するため、次の計算を行う。
【数6】
〔式中、ClstartはSIB緩衝液中の塩化物の出発濃度に対応し、Clfinalは試験ポリマーに曝露後の測定希釈濾液中の塩化物の最終値に対応し、4は希釈係数であり、そして2.5はポリマー濃度(mg/ml)である。〕。ポリマーに結合したリン酸を決定するために、次の計算を行う。
【数7】
〔式中、PstartはSIB緩衝液中のリン酸の出発濃度に対応し、Pfinalは試験ポリマーに曝露後の測定希釈濾液中のリン酸の最終値に対応し、4は希釈係数であり、そして2.5はポリマー濃度(mg/ml)である。〕。
【0087】
“人工小腸有機および無機緩衝液”または“SOB”は、消化管に一般に見られる特異的有機および無機干渉物質の存在下に測定する、塩化物結合能を決定するための試験である。遊離アミン試験ポリマー類および遊離アミンセベラマーおよびビキサロマー対照ポリマー類の塩化物結合能ならびに他のアニオン類への結合能を、次のように消化管に一般に見られる特異的有機干渉物質の存在下に測定した。GI管腔の条件を模倣するために、胆汁酸、脂肪酸、リン酸、酢酸およびクエン酸のような他の競合する可能性のあるアニオン類の存在下に塩化物に曝露されたときの、遊離アミンポリマー類の塩化物結合能を決定するために、SOBスクリーニングを使用する。SOBアッセイに使用する試験緩衝液は、pH6.2に緩衝化された50mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、50mM 酢酸ナトリウム、36mM 塩化ナトリウム、7mM リン酸ナトリウム、1.5mM クエン酸ナトリウム、30mM オレイン酸および5mM タウロコール酸ナトリウムを含む。競合する可能性のあるアニオン類の濃度は、GI管の種々の点で見られる典型的消化器管腔濃度を反映し、pHは十二指腸および大腸の両者で遭遇するpH値を表す平均値である。使用する塩化物濃度はSIBスクリーニングで使用するものと同じである。本アッセイを実施するために、試験する遊離アミンポリマーを、液密スクリューキャップを備えた16×100mmガラス管に正確に測り入れる。適切な量のSOB緩衝液を試験管に添加して、最終ポリマー濃度2.5mg/mlを達成する。混合物を、回転式ミキサーで撹拌しながら37℃で2時間インキュベートする。インキュベーションおよび混合後、600マイクロリットルの上清を取り、96ウェルガラスフィルタープレートを使用して濾過する。フィルタープレートおよび底に取り付けた収集プレートに整列したサンプルを用いて、ユニットを1000×gで1分遠心してサンプルを濾過する。小サンプルセットの場合、シリンジフィルターをフィルタープレートの代わりに使用してよく、15mLバイアルに~2~4mLの濾液を回収する。収集プレートに濾過後、各濾液を適当に希釈して、アニオン含量を測定する。IC方法(例えばDionex ICS-2100, Thermo Scientific)は、AS24Aカラム、KOH勾配20mM~100mM、注入量5マイクロリットル、約30分のランタイム、洗浄/濯ぎ容積1000マイクロリットルおよび流速0.3mL/分からなる。この方法は塩化物、リン酸およびタウロコール酸の定量に適する。他の適切な方法に置き換えてよい。ポリマーに結合したイオンを決定するために、次の計算を行う
【数8】
〔式中、[イオン]startは、SOB緩衝液中のイオンの出発濃度に対応し、[イオン]finalは、試験ポリマー曝露後の測定濾液中の特定のイオンの最終値であり、希釈係数は希釈係数であり、そして2.5はポリマー濃度(mg/ml)である。〕。
【0088】
ここで使用する用語“置換ヒドロカルビル”、“置換アルキル”、“置換アルケニル”、“置換アリール”、“置換ヘテロシクロ”または“置換ヘテロアリール”は、炭素鎖原子が窒素、酸素、ケイ素、リン、ホウ素、硫黄またはハロゲン原子のようなヘテロ原子で置換されている基を含む、少なくとも1個の炭素および水素以外の原子で置換されたヒドロカルビル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロシクロ基またはヘテロアリール基をいう。これらの置換基はハロゲン、ヘテロシクロ、アルコキシ、アルケンオキシ、アルキンオキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、ケト、アシル、アシルオキシ、ニトロ、アミノ、アミド、ニトロ、シアノ、チオール、ケタール類、アセタール類、エステル類およびエーテル類を含む。
【0089】
“膨潤比”または単に“膨潤”は、ポリマー分割量の重量で除したある量のポリマーにより吸収される水の量をいう。膨潤比は膨潤=(膨潤ポリマーg-乾燥ポリマーg)/乾燥ポリマーgとして表される。任意のあるポリマーの膨潤比を決定するために使用する方法は、次のものを含む。
a. 50~100mgの乾燥(5重量%未満の水含量)ポリマーを、既知重量(チューブ重量=重量A)の11mL密封可能試験管(スクリューキャップ付き)に入れる。
b. 脱イオン水(10mL)をポリマー含有チューブに添加する。チューブを密封し、16時間(一夜)、室温で倒置させる。インキュベーション後、チューブを3000×gで3分遠心し、上清を真空吸引により注意深く取る。極めて緩い沈降物を形成するポリマー類については、さらに1工程の遠心を行う。
c. 工程(b)後、膨潤ポリマー+チューブの重量(重量B)を記録する。
d. -40℃で30分凍結する。48時間凍結乾燥する。乾燥ポリマーおよび試験管を秤量する(重量Cとして記録)。
e. [(重量B-重量A)-(重量C-重量A)]/(重量C-重量A)として定義されるポリマー1gあたり吸収された水を計算する。
【0090】
“標的イオン”は、ポリマーが結合するイオンであり、通常ポリマーにより結合される主要イオンまたはポリマーへの結合がポリマーの治療効果を生じると考えられるイオン(例えばHClの正味の除去を生じるプロトンおよび塩化物結合)をいう。
【0091】
用語“理論容量”は、mmol/gで表される、“SGF”アッセイにおける塩酸の計算された、予測される結合である。理論容量は、それぞれの供給比に基づき、モノマーおよびクロスリンカーからのアミン類100%が、架橋ポリマーに取り込まれるとの仮定に基づく。理論容量は、それゆえに、ポリマー中のアミン官能基の濃度(mmol/g)に等しい。理論容量は、各アミンが各アニオン類およびカチオン類への結合に利用可能であると仮定され、形成されるアミンのタイプについて調節されない(例えばプロトン結合に利用可能ではない四級アミン類の容量を減じない)。
【0092】
“治療有効量”は、患者に疾患の処置のために投与されたとき、このような疾患の処置を実施するのに十分である、プロトン結合架橋アミンポリマーの量をいう。“治療有効量”を構成する量はポリマー、処置する哺乳動物の疾患の重症度および年齢、体重などにより変わる。
【0093】
疾患を“処置する”または“処置”は、(i)疾患の阻止、すなわち、疾患またはその臨床症状の進行の停止または減少;または(ii)疾患の軽減、すなわち、疾患またはその臨床症状の退行誘発を含む。疾患の阻止は、例えば、予防を含む。
【0094】
用語“トリアリルアミン”は、3個のアリル基を有するアミノ基をいう。
【0095】
用語“ビニル”は、構造式RC=CH-*(式中、*は本基の分子の残りへの結合点を示し、結合点がヘテロ原子またはアリールであり、XおよびYが、X+Y=2であるように独立して0、1または2であり、Rがヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルである)を有する基をいう。
【0096】
用語“クロスリンカー重量パーセント”は、クロスリンカーに由来する、ポリマーサンプルの質量により計算したパーセンテージを表す。クロスリンカー重量パーセントは重合の供給比を生して計算し、モノマーおよびクロスリンカーの完全変換を仮定する。クロスリンカーに起因する質量は、反応後の無限のポリマーネットワークにおける分子量の予測される増加に等しい(例えば1,3,-ジクロロプロパンは113amuであるが、脱離基としての塩素原子がポリマーネットワークに取り込まれないため、42amuしかDCPとの架橋後にポリマーネットワークに付加されない)。
【0097】
本発明の要素またはその好ましい態様を紹介するとき、単数表現は1個以上の要素があることを意味する。用語“含む”、“包含する”および“有する”は包括的であることを意図し、排他的ではない(すなわち、記載した要素に加えて他の要素が存在し得る)。
【0098】
態様
先に記したように、本開示の種々の面の中で、遊離アミン基を含む、非吸収性、架橋ポリマーを含む組成物を使用する処置法を特に述べ得る。一つの態様において、架橋アミンポリマー類は、治療的または予防的利益を達成するために、該架橋アミンポリマーの治療有効量(すなわち、有効量)の投与により、例えばヒトを含む動物の消化管から臨床的に有意な量のプロトンおよび塩化物イオンを除去する能力を有する。
【0099】
ここに開示する架橋アミンポリマー類の治療的有効量は、少なくとも一部、処置する疾患、架橋遊離アミンポリマーの能力および意図する効果による。一つの態様において、架橋遊離アミンポリマーの1日投与量は、長期間にわたり血清炭酸水素レベルの低下速度を遅延させるのに十分である。他の態様において、架橋遊離アミンポリマーの1日投与量は、長期間にわたり血清炭酸水素レベルを維持するのに十分である。他の態様において、架橋遊離アミンポリマーの1日投与量は、長期間にわたり血清炭酸水素レベルを増加させるのに十分である。例えば、一つの態様において、1日投与量は、長期間にわたり少なくとも約20mEq/Lの血清炭酸水素レベルを達成するまたは維持するのに十分である。さらなる例として、一つのこのような態様において、1日投与量は、長期間にわたり少なくとも約21mEq/Lの血清炭酸水素レベルを達成するのにまたは維持するのに十分である。さらなる例として、一つのこのような態様において、1日投与量は、長期間にわたり少なくとも約22mEq/Lの血清炭酸水素レベルを達成するまたは維持するのに十分である。さらに他の態様において、1日投与量は、長期間にわたり少なくとも少なくとも約24mEq/Lの血清炭酸水素レベルを達成するまたは維持するのに十分である。前記態様の各々において、長期間は少なくとも一ヶ月、例えば、少なくとも二ヶ月、少なくとも三ヶ月またはさらに少なくとも数ヶ月の期間である。
【0100】
一般に、治療的および/または予防的使用のための架橋アミンポリマー類の投与量レベルは約0.5g/日~約20g/日の範囲であり得る。患者のコンプライアンスを促すために、一般に投与量が約1g/日~約10g/日の範囲であることが好ましい。例えば、一つのこのような態様において、投与量は約2g/日~約7g/日である。さらなる例として、一つのこのような態様において、投与量は約3g/日~約6g/日である。さらなる例として、一つのこのような態様において、投与量は約4g/日~約5g/日である。所望により、1日投与量を一投与量として(すなわち、1日1回)または1日の間の複数投与量に分割して(例えば、2回、3回またはそれ以上の投与量)投与し得る。一般に、治療的および/または予防的使用のための架橋アミンポリマー類を固定した1日投与量でまたは処置を必要とする患者の血清炭酸水素値またはアシドーシスの他の指標に基づきタイトレートして投与し得る。タイトレーションは処置の開始時にまたは処置の間、必要に応じて行ってよく、出発および維持投与量レベルは、根底の疾患の重症度により患者毎に異なり得る。
【0101】
図1A~1Cに模式的に記すように、かつ一つの態様によって、本開示の非吸収性、遊離アミンポリマーを経口で摂取し、哺乳動物における代謝性アシドーシス(血清炭酸水素の増加および血液pHの正常化によるものを含む)を、消化(“GI”)管におけるHClを結合し、糞便を経てHClを排出することにより処置するために使用する。遊離アミンポリマーは、臨床上意味のある血清炭酸水素の3mEq/Lの上昇を可能にするためにHClの十分量と長期にわたり結合することを標的としたコンプライアンスを高める投与量で、経口で(図1A)投与する。胃において(図1B)、遊離アミンはHの結合によりプロトン化される。次いで、ポリマーの正電荷がClと結合するために利用可能となり、架橋および親水性/疎水性特性を介する結合部位への接近の制御により、他の大型有機アニオン類(例えば、XおよびYとして表される、アセテート、プロピオネート、ブチレートなど)は、仮に結合しても、低い程度である。正味の影響は、それゆえにHClの結合である。下部GI管/結腸において(図1C)、Clは遊離されず、HClは通常の腸運動および糞便排泄により体から除去され、血清の正味のアルカリ化に至る。この形態で結合したClは、Cl/HCO アンチポーター系を介する交換に利用可能ではない。
【0102】
一つの態様において、ポリマーは、効果(正味のHCl結合および排泄)を最大化し、同時にGI副作用を最小化するように設計される(低膨潤粒子設計および粒子径分布を介する)。最適化HCl結合は、能力(アミン結合部位数)、選択性(結腸における他のアニオン類、特に有機アニオン類に優先した塩化物の結合)および滞留(結腸および腸でCl/HCO 交換体[アンチポーター]の活性を避けるために下部GI管で相当量の塩化物を遊離しない;塩化物がポリマーに強く結合していなければ、Cl/HCO 交換体は腸管腔から塩化物イオンを取り込み、血清からの炭酸水素の相互交換を仲介し、こうして血清炭酸水素を有効に低下させる)の注意深いバランスにより達成し得る。
【0103】
塩化物を置換する競合アニオン類は、次の機構により正味の炭酸水素を低下させる。第一に、GI管腔、特に結腸管腔におけるポリマーからの塩化物の置換が、血清における炭酸水素との容易な交換のために提供される。結腸は、分泌炭酸水素の代わりに管腔側から塩化物を移動するアニオン交換体(塩化物/炭酸水素アンチポーター)を有する。遊離塩化物がGI管においてポリマーから遊離されたら、それは炭酸水素の代わりとなり、これはその後便で除かれ、総細胞外炭酸水素の減少を起こす(Davis, 1983; D'Agostino, 1953)。ポリマーの結合塩化物の代わりとしての短鎖脂肪酸類(SCFA)の結合は、細胞外HCO 貯蔵の枯渇に至る。短鎖脂肪酸類は、正常消化過程により異化されない複合炭水化物の細菌代謝の産物である(Chemlarova, 2007)。結腸に到達した短鎖脂肪酸類は吸収され、種々の組織に分配され、一般的代謝運命はHOおよびCOの産生であり、これは炭酸水素等価物に変換される。それゆえに、プロトン電荷を中和するためのポリマーへのSCFAの結合は、全体的炭酸水素貯蔵および緩衝化能に有害であり、ポリマーにおけるSCFA交換を制限する化学的および物理的特性の設計を必要とする。最後に、ポリマーへのリン酸結合は、リン酸がアンモニア生成および/または水素イオン分泌が慢性腎疾患において損なわれている状態における緩衝化能のさらなる源を代表するため、同様に制限すべきである。
【0104】
プロトンの各結合について、アニオンは好ましくは中性ポリマーとしてヒト身体から離れることを探索した正電荷として結合する。イオンの“結合”は最小結合を超え、すなわち、少なくとも約0.2mmolのイオン/ポリマーgm、ある態様において少なくとも約1mmolのイオン/ポリマーgm、ある態様において少なくとも約1.5mmolのイオン/ポリマーgm、およびある態様において少なくとも約3mmolのイオン/ポリマーgmである。一つの態様において、ポリマー類は、プロトン結合の高い能力と同時に、アニオン類の選択性を特徴とし、塩化物への選択性は、リン酸、クエン酸、酢酸、胆汁酸類および脂肪酸類を含むが、これらに限定されない干渉アニオン類の結合の減少により達成される。例えば、ある態様において、本開示のポリマー類は、約5mmol/gm未満、約4mmol/gm未満、約3mmol/gm未満、約2mmol/gm未満またはさらに約1mmol/gm未満の結合能でリン酸と結合する。ある態様において、本発明のポリマー類は、胆汁酸および脂肪酸類にある態様において約5mmol/g未満、約4mmol/g未満、約3mmol/g未満、約2mmol/gm未満、約1mmol/gm未満、ある態様において約0.5mmol/gm未満、ある態様において約0.3mmol/gm未満およびある態様において約0.1mmol/gm未満の結合能で結合する。
【0105】
ポリマーの有効性は、動物モデルまたはヒトボランティアおよび患者において確立し得る。さらに、インビトロ、エクスビボおよびインビボ法がHCl結合の確立に有用である。インビトロ結合溶液を使用して、種々のpHでプロトン、塩化物および他のイオンへの結合能を測定できる。ヒトボランティアまたはモデル動物からの消化器管腔内容物のようなエクスビボ抽出物を類似の目的で使用できる。あるイオンを他のものより優先的に結合および/または保持する選択性もこのようなインビトロおよびエクスビボ溶液で証明され得る。代謝性アシドーシスのインビボモデルを使用して、酸/塩基バランスの正常化におけるポリマーの有効性を試験できる - 例えばカゼイン含有固形飼料を与えた5/6腎摘出ラット(Phisitkul S, Hacker C, Simoni J, Tran RM, Wesson DE. Dietary protein causes a decline in the glomerular filtration rate of the remnant kidney mediated by metabolic acidosis and endothelin receptors. Kidney international. 2008;73(2):192-9に記載のとおり)。
【0106】
一つの態様において、本明細書に記載するポリマー類を、ヒトを含む動物に、1日1回、2回または3回投与で与え(最も好ましくは1日投与量を5g超えずまたは1日あたりそれ未満である)、代謝性アシドーシスを処置し、これらの1日投与量で臨床的に有意かつ持続性の約3mEq/Lの血清炭酸水素の増加を達成する。ポリマーの経口投与により達成されるHCl結合の量はポリマー結合能により決定され、これは、一般に1gのポリマーあたり5~25mEqのHClの範囲である。さらに、ポリマーは、好ましくはプロトン結合と均衡するために結合するアニオンの観点で選択的であり、塩化物が好ましいアニオンである。プロトン正電荷を中和するために結合する塩化物以外のアニオン類は、リン酸、短鎖脂肪酸類、長鎖脂肪酸類、胆汁酸類または他の有機または無機アニオン類を含む。塩化物以外のこれらのアニオン類の結合は、細胞内および細胞外区画における全体的炭酸水素貯蔵に影響する。
【0107】
一つの態様において、HCl重合体結合剤の作用機序は次のものを含む。胃またはGI管の他の場所において、遊離アミンポリマーは、プロトン(H)の結合によりプロトン化される。次いで、この結合の結果として形成された正電荷が塩化物アニオン結合に利用可能となる。胃から出た後、ポリマーは、各々異なる有機および無機アニオン類を補完する、十二指腸、空腸、回腸および結腸の順番で連続的に種々のGI管環境に遭遇する。ポリマーの物理的および化学的特性は、アニオン類のこの収集物に対してプロトン化結合部位の接近を制御するよう設計される。物理的バリアは、リン酸、胆汁酸および脂肪酸結合を制限するための架橋(アニオン結合を阻止するためのサイズ排除)および化学基(一般に結腸に存在するアセテート、プロピオネート、ブチレートまたは他の短鎖脂肪酸類のような大型、有機イオンの撃退ため)およびこれら二つの特性の組み合わせを含む。ビーズ架橋およびアミン結合部位の化学的性質を目的に合わせることにより、塩化物は、他のアニオン類との交換および下部GI管での遊離が減少または排除されるように、密接に結合できる。理論に縛られないが、塩化物より大きいイオンおよび/または水和半径を有するアニオン類は、HCl結合ポリマーにこれらの特性を取り込むことにより除外できまたは結合を減少できる。例えば、塩化物のイオン半径は、水和形態または非水和形態のいずれでも、GI管管腔で一般に遭遇するリン酸および他のアニオン類の対応する値より小さい(Supramolecular Chemistry, Steed, JW (2009) John Wiley and Sons, page 226; Kielland, J (1937), J. Am. Chem. Soc. 59:1675-1678)。小さいイオンと選択的に結合するために、ポリマー類は、典型的に、ポリマー結合部位への優先的接近をさせるために、高架橋密度を示す。高架橋密度物質は、しかしながら、典型的に低膨潤比により特徴付けられる。膨潤比は、次の組成および方法変動に影響される:1)アミンモノマー(またはポリマー)とクロスリンカーのモル比、2)架橋反応におけるモノマー+クロスリンカー対溶媒比、3)ポリマーの正味の電荷(生理学的pHおよびそれを使用する環境の張性で)、4)主鎖ポリマーの親水性/疎水性バランスおよび/または5)既存物質の後架橋。
【0108】
一般に、本開示の架橋アミンポリマーは、典型的に低膨潤比により特徴付けられる。一つの態様において、SIBにおける相対的塩化物結合対リン酸結合比は、本開示の架橋ポリマー類の塩化物対大型アニオン類の選択性の指標である。SIB中の本開示のあるポリマー類の膨潤比対塩化物:リン酸結合比の相関のグラフを図2に示す。例えば、一つの態様において、本開示のポリマーは、SIBにおける塩化物対リン酸結合比≧0.35および膨潤比≦2g水/g乾燥ポリマーを有する。さらなる例として、一つの態様において、本開示のポリマーはSIBにおける塩化物対リン酸結合比≧0.5および膨潤比≦2g水/g乾燥ポリマーを有する。さらなる例として、一つの態様において、本開示のポリマーは、SIBにおける塩化物対リン酸結合比≧1および膨潤比≦2g水/g乾燥ポリマーを有する。さらなる例として、一つの態様において、本開示のポリマーは、SIBにおける塩化物対リン酸結合比≧2および膨潤比≦2g水/g乾燥ポリマーを有する。さらなる例として、一つの態様において、本開示のポリマーはSIBにおける塩化物対リン酸結合比≧0.35および膨潤比≦1g水/g乾燥ポリマーを有する。さらなる例として、一つの態様において、本開示のポリマーはSIBにおける塩化物対リン酸結合比≧0.5および膨潤比≦1g水/g乾燥ポリマーを有する。さらなる例として、一つの態様において、本開示のポリマーはSIBにおける塩化物対リン酸結合比≧1および膨潤比≦1g水/g乾燥ポリマーを有する。さらなる例として、一つの態様において、本開示のポリマーはSIBにおける塩化物対リン酸結合比≧2および膨潤比≦1g水/g乾燥ポリマーを有する。
【0109】
ある態様において、SIBにおける本開示の架橋アミンポリマー対塩化物:リン酸結合比を図2に示す。例えば、一つの態様において、本開示のポリマーはSGFにおける塩化物結合能≧10mmol/gおよび膨潤比≦2g水/g乾燥ポリマーを有する。さらなる例として、一つの態様において、本開示のポリマーはSGFにおける塩化物結合能≧12mmol/gおよび膨潤比≦2g水/g乾燥ポリマーを有する。さらなる例として、一つの態様において、本開示のポリマーはSGFにおける塩化物結合能≧14mmol/gおよび膨潤比≦2g水/g乾燥ポリマーを有する。さらなる例として、一つの態様において、本開示のポリマーはSGFにおける塩化物結合能≧10mmol/gおよび膨潤比≦1.5g水/g乾燥ポリマーを有する。さらなる例として、一つの態様において、本開示のポリマーはSGFにおける塩化物結合能≧12mmol/gおよび膨潤比≦1.5g水/g乾燥ポリマーを有する。さらなる例として、一つの態様において、本開示のポリマーはSGFにおける塩化物結合能≧14mmol/gおよび膨潤比≦1.5g水/g乾燥ポリマーを有する。
【0110】
ある態様において、本開示のポリマー類の理論的塩化物結合能は、約1mmol/g~約25mmol/gの範囲であり得る。一つの態様において、本ポリマーの理論的塩化物結合能は約3mmol/g~約25mmol/gである。他の態様において、本ポリマーの理論的塩化物結合能は約6mmol/g~約20mmol/gである。他の態様において、本ポリマーの理論的塩化物結合能は約9mmol/g~約17mmol/gである。
【0111】
ある態様において、本開示のポリマー類の窒素あたりの分子量は約40~約1000ダルトンの範囲であり得る。一つの態様において、本ポリマーの窒素あたりの分子量は約40~約500ダルトンである。他の態様において、本ポリマーの窒素あたりの分子量は約50~約170ダルトンである。他の態様において、本ポリマーの窒素あたりの分子量は約60~約110ダルトンである。
【0112】
ある態様において、クロスリンカー重量%範囲は、架橋アミンポリマーの約10~90重量%である。例えば、ある態様において、クロスリンカー重量%範囲は、架橋アミンポリマーの約15~90重量%またはさらに架橋アミンポリマーの約25~90重量%である。
【0113】
架橋アミンポリマー類は、例えば、(i)少なくとも1個がアミン基を含む多官能性反応材の置換重合、(2)少なくとも1個のアミン基または窒素含有基を含むモノマーのラジカル重合および(3)アミン含有中間体と、所望によりアミン基を含んでよい多官能性クロスリンカーとの架橋を含む、広範な化学を使用して製造し得る。得られた架橋ポリマー類は、それゆえに、例えば、架橋ホモポリマー類または架橋コポリマー類であり得る。さらなる例として、得られた架橋ポリマー類は、典型的に同一のまたは多様な長さの反復リンカー(または介在)単位により離された、遊離アミン基を含む反復単位を含む。ある態様において、ポリマー類は、1個のアミン基と1個の介在リンカー単位を含む反復単位を有する。他の態様において、複数アミン含有反復単位が1個以上のリンカー単位により離されている。さらに、多官能性クロスリンカーはHCl結合官能基、例えばアミン類を含んでよく(“能動的クロスリンカー”)またはアミン類のようなHCl結合官能基を欠いてよい(“受動的クロスリンカー”)。
【0114】
ある態様において、アミン含有モノマーを重合し、ポリマーを同時に置換重合反応で架橋する。同時的重合および架橋反応におけるアミン反応体(モノマー)は、置換重合のために1回を超えて反応できる。一つのこのような態様において、アミンモノマーは、置換重合反応に参加するために少なくとも2個の反応性アミン基を有する直鎖状アミンである。他の態様において、アミンモノマーは、置換重合反応に参加するために、少なくとも2個の反応性アミン基を有する分枝鎖アミンである。同時的置換重合および架橋のためのクロスリンカー典型的には、アルキル塩化物およびアルキルエポキシド類のような少なくとも2個のアミン反応性基を有する。ポリマーに取り込まれるために、一級アミン類はクロスリンカーと少なくとも1回反応し、恐らく3回まで反応してよく、二級アミン類はクロスリンカーと2回まで反応でき、三級アミン類はクロスリンカーと1回しか反応できない。しかしながら、一般にかつ本開示の一つの面によって、相当数の四級窒素/アミン類の形成は、四級アミン類がプロトンと結合できないため、一般に好ましくない。
【0115】
ここに記載する置換重合反応で使用し得るアミン類の例は、1,3-ビス[ビス(2-アミノエチル)アミノ]プロパン、3-アミノ-1-{[2-(ビス{2-[ビス(3-アミノプロピル)アミノ]エチル}アミノ)エチル](3-アミノプロピル)アミノ}プロパン、2-[ビス(2-アミノエチル)アミノ]エタナミン、トリス(3-アミノプロピル)アミン、1,4-ビス[ビス(3-アミノプロピル)アミノ]ブタン、1,2-エタンジアミン、2-アミノ-1-(2-アミノエチルアミノ)エタン、1,2-ビス(2-アミノエチルアミノ)エタン、1,3-プロパンジアミン、3,3’-ジアミノジプロピルアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N-メチル-1,3-ジアミノプロパン、3,3’-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、1,3-ジアミノペンタン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、1,2-ジアミノプロパン、1,10-ジアミノデカン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノオクタン、1,7-ジアミノヘプタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,5-ジアミノペンタン、3-ブロモプロピルアミンヒドロブロマイド、N,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N-イソプロピル-1,3-ジアミノプロパン、N,N’-ビス(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ブタンジアミン四塩酸塩、1,3-ジアミノ-2-プロパノール、N-エチルエチレンジアミン、2,2’-ジアミノ-N-メチルジエチルアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N-イソプロピルエチレンジアミン、N-メチルエチレンジアミン、N,N’-ジ-tert-ブチルエチレンジアミン、N,N’-ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N-ブチルエチレンジアミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、1,4,7,10,13,16-ヘキサアザシクロオクタデカン、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン、1,4,7-トリアザシクロノナン、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、ピペラジン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、N-(3-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、2-メチルピペラジン、ホモピペラジン、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン、1,4,8,12-テトラアザシクロペンタデカン、2-(アミノメチル)ピペリジン、3-(メチルアミノ)ピロリジンを含む。
【0116】
置換重合反応および後重合架橋反応に使用し得る架橋剤の例は、1個以上の多官能性架橋剤、例えばジハロアルカン類、ハロアルキルオキシラン類、アルキルオキシランスルホネート類、ジ(ハロアルキル)アミン類、トリ(ハロアルキル)アミン類、ジエポキシド類、トリエポキシド類、テトラエポキシド類、ビス(ハロメチル)ベンゼン類、トリ(ハロメチル)ベンゼン類、テトラ(ハロメチル)ベンゼン類、エピハロヒドリン類、例えばエピクロロヒドリンおよびエピブロモヒドリン、ポリ(エピクロロヒドリン)、(ヨードメチル)オキシラン、トシル酸グリシジル、グリシジル3-ニトロベンゼンスルホネート、4-トシルオキシ-1,2-エポキシブタン、ブロモ-1,2-エポキシブタン、1,2-ジブロモエタン、1,3-ジクロロプロパン、1,2-ジクロロエタン、1-ブロモ-2-クロロエタン、1,3-ジブロモプロパン、ビス(2-クロロエチル)アミン、トリス(2-クロロエチル)アミンおよびビス(2-クロロエチル)メチルアミン、1,3-ブタジエンジエポキシド、1,5-ヘキサジエンジエポキシド、ジグリシジルエーテル、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、1,2,9,10-ジエポキシデカン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2-エタンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、1,3-ジグリシジルグリセリルエーテル、N,N-ジグリシジルアニリン、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ビス(グリシジルオキシ)ベンゼン、レソルシノールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、1,3-ビス-(2,3-エポキシプロピルオキシ)-2-(2,3-ジヒドロキシプロピルオキシ)プロパン、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、2,2’-ビス(グリシジルオキシ)ジフェニルメタン、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4-ビス(2’,3’-エポキシプロピル)ペルフルオロ-n-ブタン、2,6-ジ(オキシラン-2-イルメチル)-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロピロロ[3,4-f]イソインドール-1,3,5,7-テトラオン、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、エチル5-ヒドロキシ-6,8-ジ(オキシラン-2-イルメチル)-4-オキソ-4-h-クロメン-2-カルボキシレート、ビス[4-(2,3-エポキシ-プロピルチオ)フェニル]-スルフィド、1,3-ビス(3-グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、9,9-ビス[4-(グリシジルオキシ)フェニル]フッ素、トリエポキシイソシアヌレート、グリセロールトリグリシジルエーテル、N,N-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、イソシアヌル酸(S,S,S)-トリグリシジルエステル、イソシアヌル酸(R,R,R)-トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールプロポキシレートトリグリシジルエーテル、トリフェニロールメタントリグリシジルエーテル、3,7,14-トリス[[3-(エポキシプロポキシ)プロピル]ジメチルシリルオキシ]-1,3,5,7,9,11,14-ヘプタシクロペンチルトリシクロ[7,3,3,15、11]ヘプタシロキサン、4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)、ビス(ハロメチル)ベンゼン、ビス(ハロメチル)ビフェニルおよびビス(ハロメチル)ナフタレン、トルエンジイソシアネート、塩化アクリル、メチルアクリレート、エチレンビスアクリルアミド、ピロメリット酸無水物、二塩化スクシニル、コハク酸ジメチル、3-クロロ-1-(3-クロロプロピルアミノ-2-プロパノール、1,2-ビス(3-クロロプロピルアミノ)エタン、ビス(3-クロロプロピル)アミン、1,3-ジクロロ-2-プロパノール、1,3-ジクロロプロパン、1-クロロ-2,3-エポキシプロパン、トリス[(2-オキシラニル)メチル]アミンを含むが、これらに限定されない。
【0117】
ラジカル重合のために、アミンモノマーは、典型的に単官能性ビニル、アリルまたはアクリルアミド(例えば、アリルアミン)であり、クロスリンカーは2個以上のビニル、アリルまたはアクリルアミド官能基を有する(例えば、ジアリルアミン)。同時発生的重合および架橋は、単および多官能性アリルアミン類の混合物の急激に開始された重合により生じる。得られたポリマーネットワークは、それ故に炭素主鎖を介して架橋する。各架橋反応は炭素-炭素結合を形成する(炭素-ヘテロ原子結合が架橋中に形成される置換反応とは逆)。同時的重合および架橋中、モノマー類のアミン官能基は架橋反応を受けず、最終ポリマーに残る(すなわち、一級アミン類は一級のまま、二級アミン類は二級のまま、そして三級アミン類は三級のまま)。
【0118】
ポリマー類の製造がラジカル重合を含む態様において、カチオン性およびラジカルイニシエーターを含む広範なイニシエーターを使用し得る。使用し得る適当なイニシエーターのいくつかの例は、遊離ラジカルペルオキシおよびアゾタイプ化合物、例えばアゾジイソブチロニトリル、アゾジイソバレロニトリル、ジメチルアゾジイソブチレート、2,2’アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)、1,1’-アゾビス(l-シクロヘキサンカルボニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビス(イソブチルアミド)二水和物、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、VAZO 67、シアノペンタン酸、ペルオキシピバレート類、ドデシルベンゼンペルオキシド、過酸化ベンゾイル、ジ-t-ブチルヒドロペルオキシド、t-ブチルペルアセテート、アセチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、ジメチルビス(ブチルペルオキシ)ヘキサンを含む。
【0119】
ある態様において、架橋アミンポリマーは、式1
【化6】
〔式中、R、RおよびRは独立して水素、ヒドロカルビル置換ヒドロカルビルである。ただし、R、RおよびRの少なくとも1個は水素以外である。〕
に対応するアミン残基を含む。言い方を変えれば、R、RおよびRの少なくとも1個はヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルであり、R、RおよびRの残りは独立して水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルである。一つの態様において、例えば、R、RおよびRは独立して水素、アリール、脂肪族、ヘテロアリールまたはヘテロ脂肪族であるが、しかしながら、R、RおよびRの各々は水素ではない。さらなる例として、一つのこのような態様において、R、RおよびRは独立して水素、飽和炭化水素、不飽和脂肪族、不飽和ヘテロ脂肪族、ヘテロアルキル、ヘテロ環、アリールまたはヘテロアリールであるが、しかしながら、R、RおよびRの各々は水素ではない。さらなる例として、一つのこのような態様において、R、RおよびRは独立して水素、アルキル、アルケニル、アリル、ビニル、アリール、アミノアルキル、アルカノール、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、エーテル、ヘテロアリールまたはヘテロ環であるが、しかしながら、R、RおよびRの各々は水素ではない。さらなる例として、一つのこのような態様において、R、RおよびRは独立して水素、アルキル、アミノアルキル、アルカノール、アリール、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、エーテル、ヘテロアリールまたはヘテロ環であるが、しかしながら、R、RおよびRの各々は水素ではない。さらなる例として、一つのこのような態様において、RおよびR(それらが結合している窒素原子と一体となって)は共に環構造の一部をなし、したがって式1で示されるモノマーは窒素含有ヘテロ環(例えば、ピペリジン)であり、Rは水素またはヘテロ脂肪族である。さらなる例として、一つの態様において、R、RおよびRは独立して水素、脂肪族またはヘテロ脂肪族であるが、しかしながら、R、RおよびRの少なくとも1個は水素以外である。さらなる例として、一つの態様において、R、RおよびRは独立して水素、アリルまたはアミノアルキルである。
【0120】
一つの態様において、架橋アミンポリマーは、R、RおよびRが独立して水素、ヘテロアリール、アリール、脂肪族またはヘテロ脂肪族であるが、しかしながら、R、RおよびRの少なくとも1個がアリールまたはヘテロアリールである式1に対応するアミン残基を含む。例えば、この態様においてRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一体となって、飽和または不飽和窒素含有ヘテロ環式環を形成する。さらなる例として、RおよびRは、それらが結合している窒素原子と一体となって、ピロリジノ、ピロール、ピラゾリジン、ピラゾール、イミダゾリジン、イミダゾール、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン、ジアジンまたはトリアジン環構造の一部を構成し得る。さらなる例として、RおよびRは、それらが結合している窒素原子と一体となって、ピペリジン環構造の一部を構成し得る。
【0121】
一つの態様において、架橋アミンポリマーは、R、RおよびRが独立して水素、脂肪族またはヘテロ脂肪族であるが、しかしながら、R、RおよびRの少なくとも1個が水素以外である式1に対応するアミン残基を含む。例えば、この態様においてR、RおよびRは独立して水素、アルキル、アルケニル、アリル、ビニル、アミノアルキル、アルカノール、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、エーテルまたはヘテロ環であってよいが、しかしながら、R、RおよびRの少なくとも1個は水素以外である。さらなる例として、一つのこのような態様において、RおよびRは、それらが結合している窒素原子と一体となって、飽和または不飽和窒素含有ヘテロ環式環を形成する。さらなる例として、一つのこのような態様において、RおよびRは、それらが結合している窒素原子と一体となって、ピロリジノ、ピロール、ピラゾリジン、ピラゾール、イミダゾリジン、イミダゾール、ピペリジン、ピペラジンまたはジアジン環構造の一部を構成し得る。さらなる例として、一つのこのような態様において、RおよびRは、それらが結合している窒素原子と一体となって、ピペリジン環構造の一部を構成し得る。さらなる例として、一つのこのような態様において、式1に対応するアミンは非環式であり、R、RおよびRの少なくとも1個は脂肪族またはヘテロ脂肪族である。さらなる例として、一つのこのような態様において、R、RおよびRは独立して水素、アルキル、アリル、ビニル、脂環、アミノアルキル、アルカノールまたはヘテロ環である。ただしR、RおよびRの少なくとも1個は水素以外である。
【0122】
一つの態様において、架橋アミンポリマーは式1に対応するアミン残基を含み、架橋アミンポリマーを、R、RおよびRは独立して水素、アルキル、アミノアルキルまたはアルカノールである。ただしR、RおよびRの少なくとも1個は水素以外である式1に対応するアミンと多官能性クロスリンカーの置換重合により製造する(所望によりアミン基も含む)。
【0123】
ある態様において、式1に対応するアミン残基を含む架橋アミンポリマーaおよび架橋アミンポリマーを、式1a
【化7】
〔式中、RおよびRは独立して水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルである。〕
に対応するアミンのラジカル重合により製造する。一つの態様において、例えば、RおよびRは独立して水素、飽和炭化水素、不飽和脂肪族、アリール、ヘテロアリール、不飽和ヘテロ脂肪族、ヘテロ環式またはヘテロアルキルである。さらなる例として、一つのこのような態様において、RおよびRは独立して水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールである。さらなる例として、一つのこのような態様において、RおよびRは独立して水素、アルキル、アルケニル、アリル、ビニル、アリール、アミノアルキル、アルカノール、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、エーテル、ヘテロアリールまたはヘテロ環である。さらなる例として、一つのこのような態様において、RおよびRは独立して水素、アルキル、アリル、アミノアルキル、アルカノール、アリール、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、エーテルまたはヘテロ環である。さらなる例として、一つのこのような態様において、RおよびR(それらが結合している窒素原子と一体となって)は共に環構造の一部をなし、したがって式1aで示されるモノマー窒素含有ヘテロ環(例えば、ピペリジン)である。さらなる例として、一つの態様において、RおよびRは独立して水素、脂肪族またはヘテロ脂肪族である。さらなる例として、一つの態様において、RおよびRは独立して水素、アリルまたはアミノアルキルである。
【0124】
ある態様において、架橋アミンポリマーは式1bに対応するアミン残基を含み、架橋アミンポリマーを、式1b
【化8】
〔式中、RおよびRは独立して水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルであり、Rは脂肪族であり、R61およびR62は独立して水素、脂肪族またはヘテロ脂肪族である。〕
に対応するアミンと多官能性クロスリンカー(所望によりアミン基も含む)の置換重合により製造する。一つの態様において、例えば、RおよびRは独立して水素、飽和炭化水素、不飽和脂肪族、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアルキルまたは不飽和ヘテロ脂肪族である。さらなる例として、一つのこのような態様において、RおよびRは独立して水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールである。さらなる例として、一つのこのような態様において、RおよびRは独立して水素、アルキル、アルケニル、アリル、ビニル、アリール、アミノアルキル、アルカノール、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、エーテル、ヘテロアリールまたはヘテロ環である。さらなる例として、一つのこのような態様において、RおよびRは独立して水素、アルキル、アルケニル、アミノアルキル、アルカノール、アリール、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、エーテル、ヘテロアリールまたはヘテロ環である。さらなる例として、一つのこのような態様において、RおよびR(それらが結合している窒素原子と一体となって)は共に環構造の一部をなし、したがって式1aで示されるモノマー窒素含有ヘテロ環(例えば、ピペリジン)である。さらなる例として、一つの態様において、RおよびRは独立して水素、脂肪族またはヘテロ脂肪族である。さらなる例として、一つの態様において、RおよびRは独立して水素、アリルまたはアミノアルキルである。さらなる例として、本段落に記載する態様の各々において、Rはメチレン、エチレンまたはプロピレンであってよく、R61およびR62は独立して水素、アリルまたはアミノアルキルであってよい。
【0125】
ある態様において、架橋アミンポリマーは式1c
【化9】
〔式中、Rは水素、脂肪族またはヘテロ脂肪族であり、Rは脂肪族またはヘテロ脂肪族である。〕
に対応するアミン残基を含む。例えば、一つのこのような態様において、例えば、Rは水素であり、Rは脂肪族またはヘテロ脂肪族である。さらなる例として、一つのこのような態様において、RおよびRは独立して脂肪族またはヘテロ脂肪族である。さらなる例として、一つのこのような態様において、RおよびRの少なくとも1個はアリル基を含む。さらなる例として、一つのこのような態様において、RおよびRの少なくとも1個はアミノアルキル基を含む。さらなる例として、一つのこのような態様において、RおよびRの各々はアリル基を含む。さらなる例として、一つのこのような態様において、RおよびRの各々はアミノアルキル基を含む。さらなる例として、一つのこのような態様において、Rはアリル基を含み、Rはアミノアルキル基を含む。
【0126】
ある態様において、架橋アミンポリマーは、式2
【化10】
〔式中、
mおよびnは独立して非負整数であり;
10、R20、R30およびR40は独立して水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルであり;

【化11】
であり、
はヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルであり;
各X11は独立して水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヒドロキシル、アミノ、ボロン酸またはハロであり;
zは非負数である。〕
に対応するアミンを含む。
【0127】
一つの態様において、架橋アミンポリマーは式2に対応するアミン残基を含み、架橋アミンポリマーは、(i)式2に対応するアミンと多官能性クロスリンカー(所望によりアミン基も含む)の置換重合または(2)式2に対応し、mおよびzが独立して0、1、2または3であり、nが0または1であるアミンのラジカル重合により製造する。
【0128】
一つの態様において、架橋アミンポリマーは式2に対応するアミン残基を含み、架橋アミンポリマーは、(i)式2に対応するアミンと多官能性クロスリンカー(所望によりアミン基も含む)の置換重合または(2)式2に対応し、R10、R20、R30およびR40が独立して水素、脂肪族、アリール、ヘテロ脂肪族またはヘテロアリールであるアミンのラジカル重合により製造する。さらなる例として、一つのこのような態様において、R10、R20、R30およびR40は独立して水素、脂肪族またはヘテロ脂肪族である。さらなる例として、一つのこのような態様において、R10、R20、R30およびR40は独立して水素、アルキル、アリル、ビニルまたはアミノアルキルである。さらなる例として、一つのこのような態様において、R10、R20、R30およびR40は独立して水素、アルキル、アリル、ビニル、-(CH)NH、-(CH)N[(CH)NH)](式中、dおよびeは独立して2~4である)である。本段落の前記例示的態様の各々において、mおよびzは独立して0、1、2または3であってよく、nは0または1である。
【0129】
一つの態様において、架橋アミンポリマーは式2に対応するアミン残基を含み、架橋アミンポリマーは(i)式2に対応するアミンと多官能性クロスリンカー(所望によりアミン基も含む)の置換重合または(2)式2に対応し、Xが脂肪族またはヘテロ脂肪族であるアミンのラジカル重合により製造する。例えば、一つのこのような態様において、Xは脂肪族またはヘテロ脂肪族であり、R10、R20、R30およびR40は独立して水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族である。さらなる例として、一つのこのような態様において、Xはアルキルまたはアミノアルキルであり、R10、R20、R30およびR40は独立して水素、脂肪族またはヘテロ脂肪族である。さらなる例として、一つのこのような態様において、Xはアルキルまたはアミノアルキルであり、R10、R20、R30およびR40は独立して水素、アルキル、アリル、ビニルまたはアミノアルキルである。本段落の前記例示的態様の各々において、mおよびzは独立して0、1、2または3であってよく、nは0または1である。
【0130】
一つの態様において、架橋アミンポリマーは式2に対応するアミン残基を含み、架橋アミンポリマーは、(i)式2に対応するアミンと多官能性クロスリンカー(所望によりアミン基も含む)の置換重合または(2)式2に対応し、mが正の整数であるアミンのラジカル重合により製造する。例えば、一つのこのような態様において、mは正の整数であり、zは0であり、R20は水素、脂肪族またはヘテロ脂肪族である。さらなる例として、一つのこのような態様において、mは正の整数(例えば、1~3)であり、zは正の整数(例えば、1~2)であり、X11は水素、脂肪族またはヘテロ脂肪族であり、R20は水素、脂肪族またはヘテロ脂肪族である。さらなる例として、一つのこのような態様において、mは正の整数であり、zは0、1または2であり、X11は水素、アルキル、アルケニルまたはアミノアルキルであり、R20は水素、アルキル、アルケニルまたはアミノアルキルである。
【0131】
一つの態様において、架橋アミンポリマーは式2に対応するアミン残基を含み、架橋アミンポリマーは、(i)式2に対応するアミンと多官能性クロスリンカー(所望によりアミン基も含む)の置換重合または(2)式2に対応し、nが正の整数であり、R30が水素、脂肪族またはヘテロ脂肪族であるアミンのラジカル重合により製造する。さらなる例として、一つのこのような態様において、nは0または1であり、R30は水素、アルキル、アルケニルまたはアミノアルキルである。
【0132】
一つの態様において、架橋アミンポリマーは式2に対応するアミン残基を含み、架橋アミンポリマーは(i)式2に対応するアミンと多官能性クロスリンカー(所望によりアミン基も含む)の置換重合または(2)式2に対応し、mおよびnが独立して負整数であり、Xが脂肪族またはヘテロ脂肪族であるアミンのラジカル重合により製造する。例えば、一つのこのような態様において、mは0~2であり、nは0または1であり、Xは脂肪族またはヘテロ脂肪族であり、R10、R20、R30およびR40は独立して水素、脂肪族またはヘテロ脂肪族である。さらなる例として、一つのこのような態様において、mは0~2であり、nは0または1であり、Xはアルキルまたはアミノアルキルであり、R10、R20、R30およびR40は独立して水素、脂肪族またはヘテロ脂肪族である。さらなる例として、一つのこのような態様において、mは0~2であり、nは0または1であり、Xはアルキルまたはアミノアルキルであり、R10、R20、R30およびR40は独立して水素、アルキル、アルケニルまたはアミノアルキルである。
【0133】
ある態様において、架橋アミンポリマーは式2aに対応するアミン残基を含み、架橋アミンポリマーは式2a
【化12】
〔式中、
mおよびnは独立して非負整数であり;
各R11は独立して水素、ヒドロカルビル、ヘテロ脂肪族またはヘテロアリールであり;
21およびR31は独立して水素またはヘテロ脂肪族であり;
41は水素、置換ヒドロカルビルまたはヒドロカルビルであり;

【化13】
であり、
はアルキルまたは置換ヒドロカルビルであり;
各X12は独立して水素、ヒドロキシ、アミノ、アミノアルキル、ボロン酸またはハロであり;
zは非負数である。〕
に対応するアミンと多官能性クロスリンカー(所望によりアミン基も含む)の置換重合により製造する。
【0134】
一つの態様において、架橋アミンポリマーは式2aに対応するアミン残基を含み、架橋アミンポリマーを式1に対応するアミンと多官能性クロスリンカーの置換重合により製造する(所望によりアミン基も含む)。例えば、一つのこのような態様において、mおよびzは独立して0、1、2または3であり、nは0または1である。
【0135】
一つの態様において、架橋アミンポリマーは式2aに対応するアミン残基を含み、架橋アミンポリマーは式2aに対応し、各R11が独立して水素、脂肪族、アミノアルキル、ハロアルキルまたはヘテロアリールであり、R21およびR31が独立して水素またはヘテロ脂肪族であり、R41が水素、脂肪族、アリール、ヘテロ脂肪族またはヘテロアリールであるアミンと多官能性クロスリンカー(所望によりアミン基も含む)の置換重合により製造する。例えば、一つのこのような態様において、各R11は水素、脂肪族、アミノアルキルまたはハロアルキルであり、R21およびR31は独立して水素またはヘテロ脂肪族であり、R41は水素、アルキルアミノ、アミノアルキル、脂肪族またはヘテロ脂肪族である。さらなる例として、一つのこのような態様において、各R11は水素、脂肪族、アミノアルキルまたはハロアルキルであり、R21およびR31は水素またはアミノアルキルであり、R41は水素、脂肪族またはヘテロ脂肪族である。さらなる例として、一つのこのような態様において、各R11およびR41は独立して水素、アルキルまたはアミノアルキルであり、R21およびR31は独立して水素またはヘテロ脂肪族である。さらなる例として、一つのこのような態様において、各R11およびR41は独立して水素、アルキル、-(CH)NH、-(CH)N[(CH)NH)](式中、dおよびeは独立して2~4である)であり、R21およびR31は独立して水素またはヘテロ脂肪族である。本段落の前記例示的態様の各々において、mおよびzは独立して0、1、2または3であってよく、nは0または1である。
【0136】
式2aに対応する反復単位を含むポリマー類の合成のためのアミン類の例は、表1に示すアミン類を含むが、これらに限定されない。
【表1】
【表2】
【0137】
式2aに対応するアミン類の残基を含むポリマー類の合成のためのクロスリンカーの例は、表2に示すクロスリンカーを含むが、これらに限定されない。
【表3】
【0138】
ある態様において、架橋アミンポリマーは式2bに対応するアミン残基を含み、架橋アミンポリマーは、式2b
【化14】
〔式中、
mおよびnは独立して非負整数であり;
各R12は独立して水素、置換ヒドロカルビルまたはヒドロカルビルであり;
22およびR32は独立して水素、置換ヒドロカルビルまたはヒドロカルビルであり;
42は水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルであり;

【化15】
であり、
はアルキル、アミノアルキルまたはアルカノールであり;
各X13は独立して水素、ヒドロキシ、脂環式、アミノ、アミノアルキル、ハロゲン、アルキル、ヘテロアリール、ボロン酸またはアリールであり;
zは非負数であり、そして
式2bに対応するアミンは少なくとも1個のアリル基を含む。〕
に対応するアミンのラジカル重合により製造する。
【0139】
一つの態様において、架橋アミンポリマーは式2bに対応するアミン残基を含み、架橋アミンポリマーは、式2bに対応し、mおよびzが独立して0、1、2または3であり、nが0または1であるアミンの重合により製造する。
【0140】
一つの態様において、架橋アミンポリマーは式2bに対応するアミン残基を含み、架橋アミンポリマーは式1に対応し、そして(i)R12またはR42は独立して少なくとも1個のアリル基またはビニル基を含み、(ii)mは正の整数であり、R22は少なくとも1個のアリル基またはビニル基を含みおよび/または(iii)nは正の整数であり、R32は少なくとも1個のアリル基を含むアミンのラジカル重合により製造する。例えば、一つのこのような態様において、mおよびzは独立して0、1、2または3であり、nは0または1である。例えば、一つのこのような態様において、R12またはR42は、組み合わせて、少なくとも2個のアリル基またはビニル基を含む。さらなる例として、一つのこのような態様において、mは正の整数であり、R12、R22およびR42は、組み合わせて、少なくとも2個のアリル基またはビニル基を含む。さらなる例として、一つのこのような態様において、nは正の整数であり、R12、R32およびR42は、組み合わせて、少なくとも2個のアリル基またはビニル基を含む。さらなる例として、一つのこのような態様において、mは正の整数であり、nは正の整数であり、R12、R22、R32およびR42は、組み合わせて、少なくとも2個のアリル基またはビニル基を含む。
【0141】
一つの態様において、架橋アミンポリマーは式2bに対応するアミン残基を含み、架橋アミンポリマーは、式2bに対応し、各R12が独立して水素、アミノアルキル、アリルまたはビニルであり、R22およびR32が独立して水素、アルキル、アミノアルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルカノール、ヘテロアリール、脂環式ヘテロ環式またはアリールであり、R42が水素または置換ヒドロカルビルであるアミンのラジカル重合により製造する。例えば、一つのこのような態様において、各R12はアミノアルキル、アリルまたはビニルであり、R22およびR32は独立して水素、アルキル、アミノアルキル、ハロアルキル、アルケニルまたはアルカノールであり、R42は水素または置換ヒドロカルビルである。さらなる例として、一つのこのような態様において、各R12およびR42は独立して水素、アルキル、アリル、ビニル、-(CH)NHまたは-(CH)N[(CH)NH](式中、dおよびeは独立して2~4である)であり、R22およびR32は独立して水素またはヘテロ脂肪族である。
【0142】
式2bにより示されるポリマー類の合成のためのアミン類およびクロスリンカー(またはその塩、例えばその塩酸塩、リン酸塩、硫酸塩または臭化水素酸塩)の例は、表3に示すものを含むが、これらに限定されない。
【表4】
【0143】
ある態様において、架橋アミンポリマーは、式1、1a、1b、1c、2、2aおよび2bのいずれかに示すモノマー類または式3に記載する反復単位と架橋部位として働き得る外部クロスリンカーまたは既存のポリマー官能性からなる直鎖ポリマーを利用する、得られたポリマー類の反応により由来する。式3は、X15がランダム、交互またはブロックコポリマーであるコポリマーまたはターポリマーの反復単位であり得る。式3
【化16】
〔式中、
15、R16およびR17は独立して水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヒドロキシル、アミノ、ボロン酸またはハロであり;
15
【化17】
であり、
はヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、オキソ(-O-)またはアミノであり、
zは非負数である。〕
の反復単位はまた、一次分枝点はポリマーの主鎖の任意の原子由来であり得る分枝または超分枝したポリマーの反復単位である。
【0144】
一つの態様において、R15、R16およびR17は独立して水素、アリールまたはヘテロアリールであり、Xはヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、オキソまたはアミノであり、mおよびzは非負整数である。他の態様において、R15、R16およびR17は独立して脂肪族またはヘテロ脂肪族である、Xはヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、オキソ(-O-)またはアミノであり、mおよびzは非負整数である。他の態様において、R15、R16およびR17は独立して不飽和脂肪族または不飽和ヘテロ脂肪族、X5はヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、オキソまたはアミノであり、zは非負整数である。他の態様において、R15、R16およびR17は独立してアルキルまたはヘテロアルキルであり、Xはヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、オキソまたはアミノであり、zは非負整数である。他の態様において、R15、R16およびR17は独立してルキルアミノ、アミノアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ボロン酸、ハロ、ハロアルキル、アルカノールまたはエーテルであり、Xはヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、オキソまたはアミノであり、zは非負整数である。他の態様において、R15、R16およびR17は独立して水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヒドロキシル、アミノ、ボロン酸またはハロであり、Xはオキソ、アミノ、アルキルアミノ、エーテル、アルカノールまたはハロアルキルであり、zは非負整数である。
【0145】
ラジカル重合反応に使用し得る架橋剤の例は、1個以上の多官能性架橋剤、例えば1,4-ビス(アリルアミノ)ブタン、1,2-ビス(アリルアミノ)エタン、2-(アリルアミノ)-1-[2-(アリルアミノ)エチルアミノ]エタン、1,3-ビス(アリルアミノ)プロパン、1,3-ビス(アリルアミノ)-2-プロパノール、トリアリルアミン、ジアリルアミン、ジビニルベンゼン、1,7-オクタジエン、1,6-ヘプタジエン、1,8-ノナジエン、1,9-デカジエン、1,4-ジビニルオキシブタン、1,6-ヘキサメチレンビスアクリルアミド、エチレンビスアクリルアミド、N,N’-ビス(ビニルスルホニルアセチル)エチレンジアミン、1,3-ビス(ビニルスルホニル)2-プロパノール、ビニルスルホン、N,N’-メチレンビスアクリルアミドポリビニルエーテル、ポリアリルエーテル、ジビニルベンゼン、1,4-ジビニルオキシブタンおよびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0146】
式1~3におけるモノマー類およびポリマー類由来の架橋ポリマー類は、溶液またはバルクでまたは分散媒体中で合成できる。本開示のポリマー類の合成に適する溶媒の例は、水、低沸点アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘプタン、クロロベンゼン、トルエンを含むが、これらに限定されない。
【0147】
別のポリマー処理は、孤立重合反応、一連の反応を経る個々の出発物質モノマー類の段階的付加、モノマー類のブロックの段階的付加、組み合わせまたは任意の他の重合法、例えばリビング重合、直接的重合、間接的重合、縮合、ラジカル、エマルジョン、沈殿法、スプレー乾燥重合またはあるバルク架橋反応法およびサイズ減少工程、例えば粉砕、圧縮、押し出しの使用を含み得る。処理は、バッチ、半連続的および連続的処理として実施できる。分散媒体中での処理のために、連続相は非極性溶媒、例えばトルエン、ベンゼン、炭化水素、ハロゲン化溶媒、超臨界二酸化炭素であり得る。直接的懸濁反応を用いて、水を使用でき、塩を懸濁液の特性の調整に使用できる。
【0148】
式1~3に示す出発分子を1個以上の本発明の他のモノマー類、オリゴマー類または他の重合可能基と共重合させ得る。このようなコポリマー構築物は、ブロックまたはブロック様ポリマー類、グラフトコポリマー類およびランダムコポリマー類を含み得るが、これらに限定されない。式1~3により示されるモノマー類の取り込みは、1%~99%の範囲であり得る。ある態様において、コモノマーの取り込みは20%~80%である。
【0149】
単独でまたは組み合わせて使用し得るコモノマー類の非限定的例は、スチレン、アリルアミン塩酸塩、置換アリルアミン塩酸塩、置換スチレン、アルキルアクリレート、置換アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、置換アルキルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミド、N,N-ジアルキルアクリルアミド、N,N-ジアルキルメタクリルアミド、イソプレン、ブタジエン、エチレン、ビニルアセテート、N-ビニルアミド、マレイン酸誘導体、ビニルエーテル、アリル、メタリルモノマー類およびこれらの組み合わせを含む。これらのモノマー類の官能化版もまた使用してよい。本発明で使用し得るさらなる特異的モノマー類またはコモノマー類は、2-プロペン-1-イルアミン、1-(アリルアミノ)-2-アミノエタン、1-[N-アリル(2-アミノエチル)アミノ]-2-アミノエタン、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート(全異性体)、ブチルメタクリレート(全異性体)、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソボロニルメタクリレート、メタクリリック酸、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、メタクリロニトリル、aメチルスチレン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート(全異性体)、ブチルアクリレート(全異性体)、2-エチルヘキシルアクリレート、イソボロニルアクリレート、アクリリック酸、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、アクリロニトリル、スチレン、グリシジルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート(全異性体)、ヒドロキシブチルメタクリレート(全異性体)、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチレングリコールメタクリレート、イタコン酸無水物、イタコン酸、グリシジルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート(全異性体)、ヒドロキシブチルアクリレート(全異性体)、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルアクリレート、トリエチレングリコールアクリレート、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリルアミド、N-N-ブチルメタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-エチロールメタクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-Nブチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-エチロールアクリルアミド、4-アクリロイルモルホリン、ビニル安息香酸(全異性体)、ジエチルアミノスチレン(全異性体)、a-メチルビニル安息香酸(全異性体)、ジエチルアミノa-メチルスチレン(全異性体)、p-ビニルベンゼンスルホン酸、p-ビニルベンゼンスルホンナトリウム塩、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、トリエトキシシリルプロピルメタクリレート、トリブトキシシリルプロピルメタクリレート、ジメトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジエトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジブトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジイソプロポキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジメトキシシリルプロピルメタクリレート、ジエトキシシリルプロピルメタクリレート、ジブトキシシリルプロピルメタクリレート、ジイソプロポキシシリルプロピルメタクリレート、トリメトキシシリルプロピルアクリレート、トリエトキシシリルプロピルアクリレート、トリブトキシシリルプロピルアクリレート、ジメトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジエトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジブトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジイソプロポキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジメトキシシリルプロピルアクリレート、ジエトキシシリルプロピルアクリレート、ジブトキシシリルプロピルアクリレート、ジイソプロポキシシリルプロピルアクリレート、マレイン無水物、N-フェニルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、アリルアミン、メタリルアミン、アリルアルコール、メチル-ビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、エチレン、ビニルアセテートおよびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0150】
予め形成した架橋ポリマーへのさらなる修飾は、アミンモノマー類、さらなるクロスリンカーおよびポリマー類を含むが、これらに限定されないモディファイヤーの天下により達成できる。修飾は共有結合または非共有結合法により達成できる。これらの修飾は、予め形成した架橋ポリマーの表面へ偏った修飾を含み、予め形成したポリマー物質全体に均等にまたは不均等に分散する。さらに、修飾を、予め形成したポリマー中のハロアルキル基およびアリル基のような残りの反応性基と生じる反応を含むが、これに限定されず、予め形成した架橋ポリマーの物理的特性を変えるために行い得る。予め形成した架橋ポリマーへの反応および修飾は、酸塩基反応、求核性置換反応、マイケル反応、非共有結合静電相互作用、疎水性相互作用、物理的相互作用(架橋)およびラジカル反応を含むが、これらに限定されない。
【0151】
実施例においてさらに詳述するように、架橋および/またはもつれが増加したポリマー類が、架橋および/またはもつれが少ないものより膨潤が少なく、なお同時に架橋および/またはもつれが少ないポリマー類と同程度に高いまたはそれ以上の標的イオン(例えば、塩化物)に対する結合能を有し、リン酸のような干渉イオンの結合は有意に減少していることが判明した。選択性効果は、2個の異なる方法で導入した。1)塩化物特異性のために全体的能力を犠牲にした。塩化物結合部位(例えばエピクロロヒドリン)を含まないクロスリンカーは架橋を増加させるが、全体的能力は、ポリマーに取り込まれるクロスリンカーの量に比例して減少する。2)全体的能力を塩化物特異性のために保持する。塩化物結合部位(例えばジアリルアミン類)を含むクロスリンカーは架橋を増加させるが、全体的能力は同程度のままであるかまたはわずかな量だけ減少する。
【0152】
ここに記載するポリマー類は、正電荷とその後のアニオン結合の形成のためにイオン結合特性、一般にプロトン結合を示す。好ましい態様において、ポリマー類は塩化物結合特性を示す。イオン(例えば、塩化物)結合能は、イオン結合剤がある溶液中で結合できる特定のイオンの量の指標である。例えば、イオン結合ポリマー類の結合能は、インビトロで、例えば、水中または食塩水溶液中または消化器管腔条件を代表するカチオン類およびアニオン類を含む溶液/マトリクス中、またはインビボで、例えば、イオン(例えば、炭酸水素またはクエン酸)尿排泄から、またはエクスビボで、例えば吸引液、例えば、実験動物、患者またはボランティアから得たチャイム/消化器管腔内容物を使用して測定できる。測定は、標的イオンのみを含むまたはポリマーへの結合について標的イオンと競合する他の競合溶質を少なくとも含まない、溶液で行い得る。これらの場合、非干渉緩衝液を使用する(例えばさらなる塩化ナトリウムを添加したまたは添加していない塩酸の溶液)。あるいは、測定を、樹脂との結合について標的イオンと競合する他の競合溶質、例えば、他のイオンまたは代謝物を含む干渉緩衝液中で行い得る。
【0153】
ある態様において、ポリマーは塩酸と結合する。例えば、代謝性アシドーシスの処置における、インビボ使用のために、ポリマーが高プロトンおよび塩化物結合能を有することが望まれる。結合能のインビトロ測定は必ずしもインビボ結合能に翻訳されない。それゆえに、インビトロ能およびインビボ能の両者の点で結合能を定義することが有用である。
【0154】
本HCl中の発明のポリマー類のインビトロ塩化物結合能は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15mmol/gより大きい可能性がある。ある態様において、標的イオンについての本発明のポリマー類のインビトロ塩化物結合能は約5.0mmol/gを超え、好ましくは約7.0mmol/gを超え、よりさらに好ましくは約9.0mmol/gを超え、よりさらに好ましくは約10.0mmol/gを超える。ある態様において、塩化物結合能は約5.0mmol/g~約25mmol/g、好ましくは約7.5mmol/g~約20mmol/g、よりさらに好ましくは約10mmol/g~約15mmol/gの範囲であり得る。塩化物結合能を決定するために数種の方法が当分野で知られる。
【0155】
インビボ最大結合能(すなわちヒトのGI管で遭遇する可能性のある条件での最大量の[プロトンおよび]塩化物結合)を、人工胃液アッセイ(“SGF”)での12~16時間塩化物結合により評価でき、モノマー類およびクロスリンカーがいかに良く取り込まれたかの構造的指標である。SGF値は、ポリマー類の理論的最大結合能の実験的確認であり、出発物質の化学量論に基づき計算した能力と同範囲に入る。
【0156】
プロトン結合と均衡するために、塩化物は、その除去が血清炭酸水素に負の影響を有しないため、結合させるべき最適なアニオンである。プロトン正電荷を中和するために結合する塩化物以外のアニオン類はリン酸、短鎖脂肪酸類、長鎖脂肪酸類、胆汁酸類または他の有機または無機アニオン類を含む。塩化物以外のこれらのアニオン類の結合は、細胞内および細胞外区画における全体的炭酸水素貯蔵に影響する。
【0157】
塩化物結合についてのポリマーの選択性を、インビトロで、GI管腔で遭遇する種々の条件、アニオン類およびアニオン濃度を模倣した条件を使用して評価できる。塩化物結合を、リン酸単独で(例えばSIB[人工腸緩衝液])またはGI管に見られる広範なアニオン類(例えば、SOB)に対して比較し得る。
【0158】
ある態様において、37℃でポリマーを試験緩衝液に曝露1時間後のSIBアッセイにおける塩化物結合は、ポリマー1gあたり約2.0mmolを超え、好ましくはポリマー1gあたり約2.5mmolを超え、より好ましくはポリマー1gあたり約3.0mmolを超え、よりさらに好ましくはポリマー1gあたり約3.5mmolを超え、最も好ましくはポリマー1gあたり約4.0mmolを超える。
【0159】
ある態様において、37℃でポリマーを試験緩衝液に曝露2時間後のSOBアッセイにおける塩化物結合は、ポリマー1gあたり約1.0mmolを超え、好ましくはポリマー1gあたり約2.0mmolを超え、より好ましくはポリマー1gあたり約3.0mmolを超え、よりさらに好ましくはポリマー1gあたり約3.5mmolを超え、最も好ましくはポリマー1gあたり約4.0mmolを超える。
【0160】
ある態様において、37℃でポリマーを試験緩衝液に曝露8時間後のSOBアッセイにおける塩化物結合は、ポリマー1gあたり約0.5mmolを超え、好ましくはポリマー1gあたり約1mmolを超え、より好ましくはポリマー1gあたり約2.0mmolを超え、よりさらに好ましくはポリマー1gあたり約3.0mmolを超え、最も好ましくはポリマー1gあたり約4.0mmolを超える。37℃で48時間曝露後のSOBにおける塩化物結合は、GI管を通過する際にポリマーが塩化物を保持する能力の指標一つである。
【0161】
(プロトンおよび)塩化物滞留を測定する他の方法は、最初にポリマーをSOBに曝露し、ポリマーを単離し、次いでポリマーを、例えば“塩化物滞留アッセイ”(CRA)緩衝液を使用して結腸管腔に典型的である条件に曝す。ある態様において、37℃でSOBに2時間曝露し、次いで37℃でCRAに48時間曝露した後、ポリマーに結合し続けている塩化物の量は、ポリマー1gあたり約0.2mmolを超え、好ましくはポリマー1gあたり約0.5mmolを超え、より好ましくはポリマー1gあたり約1.0mmolを超え、よりさらに好ましくはポリマー1gあたり約2.0mmolを超え、最も好ましくはポリマー1gあたり約3.0mmolを超える。
【0162】
ある態様において、本開示のポリマー類のインビボ結合性能を、腎機能が正常なヒトを含む動物に投与後の尿中の酸レベルの変化の測定により評価できる。代謝平衡に到達するのに十分な時間を考慮して、投与したポリマーの活性による身体からのさらなるHCl(またはHCl等価物)の除去は、尿中の炭酸水素、滴定酸、クエン酸または尿中の酸排泄の他の指標の変化に反映される。
【0163】
プロトンと結合するために、ポリマー類のアミン成分は一級、二級または三級アミン類であってよいが、四級アミン類ではない。四級アミン類は全生理学的条件で実質的に荷電したままであり、それゆえにアニオンが結合する前にプロトンと結合しない。四級アミン類のパーセンテージは、タイトレーションおよび逆タイトレーション法を含む、多くの方法で測定できる。他の単純であるが、正確な方法は、低および高pHでのアニオン(例えば塩化物)結合の比較である。低pHでの塩化物結合(例えばSGF緩衝液条件;pH1.2)は四級アミン類と他のアミン類を区別しないが、高pHでの塩化物結合アッセイ(例えばQAA緩衝液条件;pH11.5)は区別する。この高pHで、一級、二級および三級アミン類は実質的にプロトン化されず、塩化物結合に貢献しない。それゆえにこれらの条件下で観察されるあらゆる結合が永久荷電四級アミン類の存在に起因し得る。低pH(例えばSGF条件)対高pH(例えばQAA条件)での塩化物結合の比較は、四級化の程度の指標であり、延長線上で考えると、塩化物と共に結合するプロトンの量の指標である。本開示のポリマー類は、40%、30%、20%、10%、最も好ましくは5%を超える四級アミン類を含まない。
【0164】
本開示のポリマー類の膨潤比は、架橋の程度の、延長線上で考えると、ポリマー類の相対的孔サイズおよび塩化物より大きい(または水和比が大きい)アニオン類の到達性の実験的確認である。ある態様において、膨潤を脱イオン水中で測定し、乾燥ポリマー1gあたりの水のgの観点で表す。本開示のポリマー類は、脱イオン水中≦5g/g、≦4g/g、≦3g/g、≦2g/gまたは≦1g/gの膨潤比を有する。
【0165】
ポリマーがGI管腔で経験する種々の条件を通過する際に、塩化物を保持する(そしてそれを遊離して、他のアニオン類と交換させない)能力は、相対的インビボ有効性の予測因子でありそうな重要な特徴である。塩化物滞留アッセイ(CRA)を使用して、塩化物滞留を評価できる。SOB(人工腸有機/無機緩衝液)スクリーニングを最初に実施して、塩化物および他のアニオン類をポリマー類に結合させ、ポリマー類を単離し、結腸管腔を模倣する条件(例えば滞留アッセイマトリクス)に40時間曝露する。ポリマー類を再び単離し、ポリマーに結合し続けているアニオン類を水酸化ナトリウムで溶出し、測定する。本開示のポリマー類は、記載した塩化物滞留アッセイに付した後、結合した塩化物を50%、60%、70%、80%を超えてまたは最も好ましくは90%を超えて保持する。
【0166】
不均一重合法を使用して、ポリマー粒子は球形ビーズとして得られ、その直径は、5~1000ミクロン範囲、好ましくは10~500ミクロン、最も好ましくは40~180ミクロンに制御される。
【0167】
一般に、本開示の医薬組成物は、ここに記載するプロトン結合性の架橋アミンポリマーを含む。好ましくは、架橋アミンポリマーを含む医薬組成物は経口投与用に製剤する。ポリマーが投与される医薬の形は、散剤、錠剤、丸剤、ロゼンジ、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁液剤、シロップ剤、軟または硬ゼラチンカプセル剤などを含む。一つの態様において、医薬組成物は架橋アミンポリマーしか含まない。あるいは、医薬組成物は、架橋アミンポリマーに加えて担体、希釈剤または添加物を含み得る。これらの製剤に使用し得る担体、添加物および希釈剤ならびにその他の例は、食物、飲料、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート類、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル類、ヒドロキシ安息香酸プロピル類およびタルクを含む。医薬組成物に有用な医薬添加物は、さらに結合剤、例えば微結晶セルロース、コロイド状シリカおよびこれらの組み合わせ(Prosolv 90)、カーボポール、ボピドンおよびキサンタンガム;風味剤、例えばスクロース、マンニトール、キシリトール、マルトデキストリン、フルクトースまたはソルビトール;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウムおよび植物ベースの脂肪酸類;および所望により、崩壊剤、例えばクロスカルメロースナトリウム、ゲランガム、セルロースの低置換ヒドロキシプロピルエーテル、デンプングリコール酸ナトリウムを含む。他の添加剤は可塑剤、色素、タルクなどを含み得る。このような添加剤および他の適当な成分は当分野で周知である;例えば、Gennaro A R (ed), Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th Edition参照。
【0168】
一つの態様において、本開示の架橋アミンポリマーを含む医薬組成物は、相対的に少量のナトリウムを含む。例えば、一つのこのような態様において、医薬組成物は、1投与量あたり1g未満のナトリウムを含む。さらなる例として、一つのこのような態様において、医薬組成物は1投与量あたり0.5g未満のナトリウムを含む。さらなる例として、一つのこのような態様において、医薬組成物は1投与量あたり0.1g未満のナトリウム。さらなる例として、一つのこのような態様において、医薬組成物は無ナトリウムである。
【0169】
一つの態様において、新規慢性代謝性アシドーシス剤の1日投与量はコンプライアンスを高め(1日約5gまたはそれ未満)、これらの1日投与量で臨床的に有意かつ持続性の約3mEq/Lの血清炭酸水素の増加を達成する。ポリマーの非吸収性の性質ならびにナトリウム負荷および/またはこのような経口剤での他の有害なイオンの導入の欠如により、血圧/高血圧の悪化なしにおよび/または液体滞留増加および液体過負荷の原因とならずに、初めて安全な、代謝性アシドーシスの長期処置を可能とした。他の利益は、腎疾患の進行および生涯の腎代替療法(週3回の透析を含む末期腎疾患“ESRD”)または腎移植が必要となるまでの時間のさらなる遅延である。両者とも、世界中で顕著な死亡率、低クオリティ・オブ・ライフおよび医療制度への顕著な負担と関係する。米国単独で、年間400,000名のESRD患者の約20%が死亡し、100,000名の新規患者が透析を開始する。
【0170】
一つの態様において、医薬組成物は、HClに結合することにより哺乳動物の血清炭酸水素を増加し、血液pHを正常化する、代謝性アシドーシスの処置用無ナトリウム、非吸収性、架橋、アミンポリマーを含む。一つの好ましい態様は、少なくとも1.6mEq/L、より好ましくは少なくとも2mEq/L、最も好ましくは3mEq/L以上の臨床上意味のある血清炭酸水素の増加を起こすために十分な量での、胃/上部GI管におけるポリマーのH結合、続くCl結合を含む。HCl結合の量は、ポリマーの能力(1gのポリマーあたり5~20mEqのHClのHCl結合能の標的範囲)および選択性により決定される。胃では、遊離アミンはH結合によりプロトン化される。ポリマー上で、その場で形成された正電荷が、その後Clへの結合に利用可能となり、架橋(サイズ排除、メッシュサイズ)および化学基(目的に合わせた親水性/疎水性を経る大型、有機イオン(例えば一般に結腸に存在するアセテート、プロピオネートおよびブチレートまたは他の短鎖脂肪酸類)、リン酸、胆汁酸および脂肪酸類の撃退)による結合部位への接近の制御により、塩化物以外のアニオン類が、仮に結合するとしても、わずかしか結合しない。ビーズ架橋およびアミン結合部位の化学的性質を目的に合わせることにより、塩化物は、下部GI管で遊離されないことを確実にするように密接に結合できる。HClは通常の腸運動/糞便により体から除去され、正味のHCl結合に至る。他の態様において、ポリマーは、ある四級化/プロトン化アミン基と予め形成されたもの由来であり、塩化物結合がクエン酸または炭酸とのイオン交換を介して達成され、そこでポリマー上の最大90%のカチオン性結合部位が、対イオンとしてクエン酸および/または炭酸が予め組み込まれている。
【0171】
一つの態様において、哺乳動物において血清炭酸水素を増加させ、血液pHを正常化する代謝性アシドーシスの処置のための無ナトリウム、非吸収性、アミンポリマーの重要な特性は、糖尿病性腎疾患患者では特に懸念される、血圧を上げずまたは高血圧を悪化させないことである。ナトリウムを導入しないことによるさらなる利益は、心不全患者では特に懸念される、液体過負荷の原因となる液体滞留の関連する増加がないことである。有害な対イオン類を導入することなく、安全かつ有効に代謝性アシドーシスを処置するポリマーの能力は、まだ透析していない慢性腎疾患患者で特に懸念される、腎疾患の進行を可能にする。透析の開始は少なくとも3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月または12ヶ月遅延される。
【0172】
代謝性アシドーシスの処置のための無ナトリウム、非吸収性、アミンポリマーのさらに他の態様において、ポリマーは、(i)GI管からの受動的または能動的吸収を避けるほど十分に大きいおよび(ii)散剤、サシェ剤および/または咀嚼錠剤/平均粒子径40~180ミクロンの投与形態として摂取されたとき、ザラザラした舌ざわりまたは不快な食感の原因とならないほど十分小さい好ましい粒子径範囲を有する架橋ビーズである。好ましくは、所望の粒子径形態学は、不均一重合反応、例えば懸濁液またはエマルジョン重合により達成される。患者における大量のポリマーゲルがGI管を移動することにしばしば関連するGI副作用を最小化するために、ポリマーの低膨潤比が好ましい(水中、それ自体の重量の0.5~5倍)。さらに他の態様において、ポリマーは、分子実体を有し、これはポリマーにまたはそれ自体に永久に/共有結合性におよび/または一過性に結合し、結腸および腸におけるCl/HCO 交換体(アンチポーター)を遮断する。アンチポーター遮断の正味の影響は、腸管腔からのCl取り込みおよび血清からの炭酸水素の関連する交換の減少であり、そうして有効に血清炭酸水素を減少させる。
【0173】
一つの態様において、架橋アミンポリマーを、処置する状態によって、他の活性剤と共投与し得る。この共投与は、同じ投与形態での2剤の同時投与、別々の投与形態での同時の投与および別々の投与を含み得る。例えば、代謝性アシドーシスの処置のために、架橋アミンポリマーを、高血圧、糖尿病、肥満、心不全および慢性腎疾患の合併症を含むが、これらに限定されない基礎をなす併存症の処置に必要である一般的処置剤と共投与し得る。これらの薬物および架橋アミンポリマーを、なんら臨床的に顕著な薬物間相互作用相互作用を示さない限り、同じ投与形態に一緒に製剤し、同時に投与できる。あるいは、これらの処置剤および架橋アミンポリマーを別々にまたは、一方の投与の後他方を投与する逐次的に投与してよい。
【0174】
1~104と番号付けした下記のさらなる態様において、本発明は次のものを含む。
【0175】
態様1. 式1
【化18】
〔式中、R、RおよびRは独立して水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルである。ただし、R、RおよびRの少なくとも1個が水素以外である。〕
に対応するアミン残基を含むプロトン結合性架橋アミンポリマーを含む、医薬組成物であって、架橋アミンポリマーが(i)pH1.2で35mM NaClおよび63mM HClを含み、37℃の水性人工胃液緩衝液(“SGF”)で少なくとも5mmol/gの平衡プロトン結合能および少なくとも5mmol/gの塩化物イオン結合能および(ii)脱イオン水中約2またはそれ未満の平衡膨潤比を有する、医薬組成物。
【0176】
態様2. 式1
【化19】
〔式中、R、RおよびRは独立して水素、ヒドロカルビル置換ヒドロカルビルである。ただし、R、RおよびRの少なくとも1個が水素以外である。〕
に対応するアミン残基を含むプロトン結合性架橋アミンポリマーを含む、医薬組成物であって、架橋アミンポリマーが脱イオン水中約5またはそれ未満の平衡膨潤比を有し、架橋アミンポリマーは干渉イオン緩衝液中、37℃で塩化物イオン対干渉イオンのそれぞれ少なくとも0.35:1のモル比で結合し、ここで(i)干渉イオンはリン酸イオンであり、干渉イオン緩衝液はpH5.5の36mM 塩化物および20mM リン酸の緩衝液であるかまたは(ii)干渉イオンがリン酸、クエン酸およびタウロコール酸イオン(複合量)であり、干渉イオン緩衝液が36mM 塩化物、7mM リン酸、1.5mM クエン酸および5mM タウロコール酸を含む、pH6.2の緩衝液である、医薬組成物。
【0177】
態様3. 架橋アミンポリマーがpH1.2および37℃で35mM NaClおよび63mM HClを含む水性人工胃液緩衝液(“SGF”)中、少なくとも7.5mmol/gの平衡塩化物結合能を有する、態様1に記載の医薬組成物。
【0178】
態様4. 架橋アミンポリマーがpH1.2および37℃で35mM NaClおよび63mM HClを含む水性人工胃液緩衝液(“SGF”)中、少なくとも10mmol/gの平衡塩化物結合能を有する、態様1に記載の医薬組成物。
【0179】
態様5. 架橋アミンポリマーが干渉イオン緩衝液中の干渉アニオン類のいずれか一つよりも塩化物により結合し、干渉イオンがリン酸、クエン酸およびタウロコール酸イオンおよび干渉イオン緩衝液が36mM 塩化物、7mM リン酸、1.5mM クエン酸および5mM タウロコール酸を含む、pH6.2の緩衝液である、態様2に記載の医薬組成物。
【0180】
態様6. 架橋アミンポリマーにより結合される干渉イオン緩衝液中の塩化物および干渉イオンの複合量の少なくとも66%が塩化物アニオン類であり、干渉イオンがリン酸、クエン酸およびタウロコール酸および干渉イオン緩衝液が36mM 塩化物、7mM リン酸、1.5mM クエン酸および5mM タウロコール酸を含む、pH6.2の緩衝液である、態様2に記載の医薬組成物。
【0181】
態様7. 架橋アミンポリマーにより結合される干渉イオン緩衝液中の塩化物および干渉イオンの複合量の少なくとも90%が塩化物アニオン類であり、干渉イオンがリン酸、クエン酸およびタウロコール酸および干渉イオン緩衝液が36mM 塩化物、7mM リン酸、1.5mM クエン酸および5mM タウロコール酸を含む、pH6.2の緩衝液である、態様2に記載の医薬組成物。
【0182】
態様8. 架橋アミンポリマーが脱イオン水中約4またはそれ未満の平衡膨潤比を有する、態様2に記載の医薬組成物。
【0183】
態様9. 架橋アミンポリマーが脱イオン水中約3またはそれ未満の平衡膨潤比を有する、態様2に記載の医薬組成物。
【0184】
態様10. 架橋アミンポリマーが脱イオン水中約2またはそれ未満の平衡膨潤比を有する、態様2に記載の医薬組成物。
【0185】
態様11. R、RおよびRが独立して水素、アルキル、アルケニル、アリル、ビニル、アリール、アミノアルキル、アルカノール、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、エーテル、ヘテロアリールまたはヘテロ環から選択されるが、しかしながら、R、RおよびRの各々が水素ではない、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0186】
態様12. R、RおよびRが独立して水素、脂肪族またはヘテロ脂肪族であるが、しかしながら、R、RおよびRの少なくとも1個は水素以外である、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0187】
態様13. 架橋アミンポリマーを、アミンと、所望によりアミン基も含んでよい多官能性クロスリンカーの置換重合により製造する、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0188】
態様14. 架橋アミンポリマーが式1aに対応するアミン残基を含み、架橋アミンポリマーを式1a
【化20】
〔式中、式中、RおよびRは独立して水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルである。〕
に対応するアミンのラジカル重合により製造する、態様1~12のいずれかに記載の医薬組成物。
【0189】
態様15. RおよびRが独立して水素、アルキル、アルケニル、アリル、ビニル、アリール、アミノアルキル、アルカノール、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、エーテル、ヘテロアリールまたはヘテロ環である、態様14に記載の医薬組成物。
【0190】
態様16. RおよびRが独立して水素、脂肪族またはヘテロ脂肪族である、態様14に記載の医薬組成物。
【0191】
態様17. 架橋アミンポリマーが式1bに対応するアミン残基を含み、架橋アミンポリマーを式1b
【化21】
〔式中、RおよびRは独立して水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルであり、Rは脂肪族であり、R61およびR62は独立して水素、脂肪族またはヘテロ脂肪族である。〕
に対応するアミンと多官能性クロスリンカーの置換重合により製造する、態様1~12に記載の医薬組成物。
【0192】
態様18. RおよびRが独立して水素、飽和炭化水素、不飽和脂肪族、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアルキルまたは不飽和ヘテロ脂肪族である、態様17に記載の医薬組成物。
【0193】
態様19. RおよびRが独立して水素、アルキル、アルケニル、アリル、ビニル、アリール、アミノアルキル、アルカノール、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、エーテル、ヘテロアリールまたはヘテロ環である、態様17に記載の医薬組成物。
【0194】
態様20. RおよびRが独立して水素、アリルまたはアミノアルキルである、態様17に記載の医薬組成物。
【0195】
態様21. 架橋アミンポリマーが式1c
【化22】
〔式中、Rは水素、脂肪族またはヘテロ脂肪族であり、Rは脂肪族またはヘテロ脂肪族である。〕
に対応するアミン残基を含む、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0196】
態様22. 架橋アミンポリマーが式2
【化23】
〔式中、
mおよびnは独立して非負整数であり;
10、R20、R30およびR40は独立して水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルであり;

【化24】
であり、
はヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルであり;
各X11は独立して水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヒドロキシまたはアミノであり;
zは非負数である。〕
に対応するアミンを含む、態様1~12に記載の医薬組成物。
【0197】
態様23. R10、R20、R30およびR40が独立して水素、脂肪族、アリール、ヘテロ脂肪族またはヘテロアリールであり、mおよびzが独立して0~3であり、nが0または1である、態様22に記載の医薬組成物。
【0198】
態様24. Xが脂肪族またはヘテロ脂肪族である、態様22または23に記載の医薬組成物。
【0199】
態様25. mが1~3であり、X11が水素、脂肪族またはヘテロ脂肪族である、態様22、23または24に記載の医薬組成物。
【0200】
態様26. 架橋アミンポリマーが式2a
【化25】
〔式中、
mおよびnは独立して非負整数であり;
各R11は独立して水素、ヒドロカルビル、ヘテロ脂肪族またはヘテロアリールであり;
21およびR31は独立して水素またはヘテロ脂肪族であり;
41は水素、置換ヒドロカルビルまたはヒドロカルビルであり;

【化26】
であり、
はアルキルまたは置換ヒドロカルビルであり;
各X12は独立して水素、ヒドロキシ、アミノ、アミノアルキル、ボロン酸またはハロであり;
zは非負数である。〕
に対応するアミン残基を含む、態様1~12のいずれかに記載の医薬組成物。
【0201】
態様27. mおよびzが独立して0~3であり、nが0または1である、態様26に記載の医薬組成物。
【0202】
態様28. R11が独立して水素、脂肪族、アミノアルキル、ハロアルキルまたはヘテロアリールであり、R21およびR31が独立して水素またはヘテロ脂肪族であり、R41が水素、脂肪族、アリール、ヘテロ脂肪族またはヘテロアリールである、態様26または27に記載の医薬組成物。
【0203】
態様29. 各R11が水素、脂肪族、アミノアルキルまたはハロアルキルであり、R21およびR31が水素またはアミノアルキルであり、R41が水素、脂肪族またはヘテロ脂肪族である、態様26または27に記載の医薬組成物。
【0204】
態様30. 架橋アミンポリマーが式2b
【化27】
〔式中、
mおよびnは独立して非負整数であり;
各R12は独立して水素、置換ヒドロカルビルまたはヒドロカルビルであり;
22およびR32は独立して水素、置換ヒドロカルビルまたはヒドロカルビルであり;
42は水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルであり;

【化28】
であり、
はアルキル、アミノアルキルまたはアルカノールであり;
各X13は独立して水素、ヒドロキシ、脂環式、アミノ、アミノアルキル、ハロゲン、アルキル、ヘテロアリール、ボロン酸またはアリールである;
zは非負数であり;そして
式2bに対応するアミンは少なくとも1個のアリル基を含む。〕
に対応するアミン残基を含む、態様1~12に記載の医薬組成物。
【0205】
態様31. mおよびzが独立して0~3であり、nが0または1である、態様30に記載の医薬組成物。
【0206】
態様32. R12またはR42が独立して少なくとも1個のアリル基またはビニル基を含む、態様30または31に記載の医薬組成物。
【0207】
態様33. (i)mが正の整数であり、R12、R22およびR42が、組み合わせて、少なくとも2個のアリル基またはビニル基を含むかまたは(ii)nが正の整数であり、R12、R32およびR42が、組み合わせて、少なくとも2個のアリル基またはビニル基を含む、態様30または31に記載の医薬組成物。
【0208】
態様34. 架橋アミンポリマーが表1に示すアミン残基を含む、態様30または31に記載の医薬組成物。
【0209】
態様35. 架橋アミンポリマーが表2に示す架橋剤と架橋されている、態様30、31または34に記載の医薬組成物。
【0210】
態様36. 架橋アミンポリマーが式3
【化29】
〔式中、
15、R16およびR17は独立して水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヒドロキシル、アミノ、ボロン酸またはハロであり;
15
【化30】
であり、
はヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、オキソ(-O-)またはアミノであり;
zは非負数である。〕
に対応する反復単位を含む、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0211】
態様37. R15、R16およびR17が独立して脂肪族またはヘテロ脂肪族である、態様36に記載の医薬組成物。
【0212】
態様38. Xがオキソ、アミノ、アルキルアミノ、エーテル、アルカノールまたはハロアルキルである、態様36または37に記載の医薬組成物。
【0213】
態様39. 架橋アミンポリマーを、(i)少なくとも1個がアミン基を含む多官能性反応材の置換重合、(2)少なくとも1個のアミン基または窒素含有基を含むモノマーのラジカル重合または(3)アミン含有中間体と、所望によりアミン基を含んでよい架橋剤の架橋により製造する、態様1~12のいずれかに記載の医薬組成物。
【0214】
態様40. 架橋アミンポリマーが架橋ホモポリマーまたは架橋コポリマーである、態様39に記載の医薬組成物。
【0215】
態様41. 架橋アミンポリマーが、同一のまたは多様な長さの反復リンカー単位で離された遊離アミン基を含む、態様39に記載の医薬組成物。
【0216】
態様42. 架橋アミンポリマーをアミン含有モノマーと架橋剤の置換重合反応による重合により製造する、態様39に記載の医薬組成物。
【0217】
態様43. アミン含有モノマーが置換重合反応に参加するための少なくとも2個の反応性アミン基を有する直鎖状アミンである、態様42に記載の医薬組成物。
【0218】
態様44. アミン含有モノマーが1,3-ビス[ビス(2-アミノエチル)アミノ]プロパン、3-アミノ-1-{[2-(ビス{2-[ビス(3-アミノプロピル)アミノ]エチル}アミノ)エチル](3-アミノプロピル)アミノ}プロパン、2-[ビス(2-アミノエチル)アミノ]エタナミン、トリス(3-アミノプロピル)アミン、1,4-ビス[ビス(3-アミノプロピル)アミノ]ブタン、1,2-エタンジアミン、2-アミノ-1-(2-アミノエチルアミノ)エタン、1,2-ビス(2-アミノエチルアミノ)エタン、1,3-プロパンジアミン、3,3’-ジアミノジプロピルアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N-メチル-1,3-ジアミノプロパン、3,3’-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、1,3-ジアミノペンタン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、1,2-ジアミノプロパン、1,10-ジアミノデカン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノオクタン、1,7-ジアミノヘプタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,5-ジアミノペンタン、3-ブロモプロピルアミンヒドロブロマイド、N,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N-イソプロピル-1,3-ジアミノプロパン、N,N’-ビス(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ブタンジアミン四塩酸塩、1,3-ジアミノ-2-プロパノール、N-エチルエチレンジアミン、2,2’-ジアミノ-N-メチルジエチルアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N-イソプロピルエチレンジアミン、N-メチルエチレンジアミン、N,N’-ジ-tert-ブチルエチレンジアミン、N,N’-ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N-ブチルエチレンジアミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、1,4,7,10,13,16-ヘキサアザシクロオクタデカン、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン、1,4,7-トリアザシクロノナン、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、ピペラジン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、N-(3-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、2-メチルピペラジン、ホモピペラジン、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン、1,4,8,12-テトラアザシクロペンタデカン、2-(アミノメチル)ピペリジンまたは3-(メチルアミノ)ピロリジノである、態様42または43に記載の医薬組成物。
【0219】
態様45. 架橋剤がジハロアルカン類、ハロアルキルオキシラン類、アルキルオキシランスルホネート類、ジ(ハロアルキル)アミン類、トリ(ハロアルキル)アミン類、ジエポキシド類、トリエポキシド類、テトラエポキシド類、ビス(ハロメチル)ベンゼン類、トリ(ハロメチル)ベンゼン類、テトラ(ハロメチル)ベンゼン類、エピハロヒドリン類、例えばエピクロロヒドリンおよびエピブロモヒドリンポリ(エピクロロヒドリン)、(ヨードメチル)オキシラン、トシル酸グリシジル、グリシジル3-ニトロベンゼンスルホネート、4-トシルオキシ-1,2-エポキシブタン、ブロモ-1,2-エポキシブタン、1,2-ジブロモエタン、1,3-ジクロロプロパン、1,2-ジクロロエタン、1-ブロモ-2-クロロエタン、1,3-ジブロモプロパン、ビス(2-クロロエチル)アミン、トリス(2-クロロエチル)アミンおよびビス(2-クロロエチル)メチルアミン、1,3-ブタジエンジエポキシド、1,5-ヘキサジエンジエポキシド、ジグリシジルエーテル、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、1,2,9,10-ジエポキシデカン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2-エタンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、1,3-ジグリシジルグリセリルエーテル、N,N-ジグリシジルアニリン、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ビス(グリシジルオキシ)ベンゼン、レソルシノールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、1,3-ビス-(2,3-エポキシプロピルオキシ)-2-(2,3-ジヒドロキシプロピルオキシ)プロパン、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、2,2’-ビス(グリシジルオキシ)ジフェニルメタン、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4-ビス(2’,3’エポキシプロピル)ペルフルオロ-n-ブタン、2,6-ジ(オキシラン-2-イルメチル)-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロピロロ[3,4-f]イソインドール-1,3,5,7-テトラオン、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、エチル5-ヒドロキシ-6,8-ジ(オキシラン-2-イルメチル)-4-オキソ-4-h-クロメン-2-カルボキシレート、ビス[4-(2,3-エポキシ-プロピルチオ)フェニル]-スルフィド、1,3-ビス(3-グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、9,9-ビス[4-(グリシジルオキシ)フェニル]フッ素、トリエポキシイソシアヌレート、グリセロールトリグリシジルエーテル、N,N-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、イソシアヌル酸(S,S,S)-トリグリシジルエステル、イソシアヌル酸(R,R,R)-トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールプロポキシレートトリグリシジルエーテル、トリフェニロールメタントリグリシジルエーテル、3,7,14-トリス[[3-(エポキシプロポキシ)プロピル]ジメチルシリルオキシ]-1,3,5,7,9,11,14-ヘプタシクロペンチルトリシクロ[7,3,3,15、11]ヘプタシロキサン、4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)、ビス(ハロメチル)ベンゼン、ビス(ハロメチル)ビフェニルおよびビス(ハロメチル)ナフタレン、トルエンジイソシアネート、塩化アクリル、メチルアクリレート、エチレンビスアクリルアミド、ピロメリット酸無水物、二塩化スクシニル、コハク酸ジメチル、3-クロロ-1-(3-クロロプロピルアミノ-2-プロパノール、1,2-ビス(3-クロロプロピルアミノ)エタン、ビス(3-クロロプロピル)アミン、1,3-ジクロロ-2-プロパノール、1,3-ジクロロプロパン、1-クロロ-2,3-エポキシプロパン、トリス[(2-オキシラニル)メチル]アミンおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、態様39、41、43および44のいずれかに記載の医薬組成物。
【0220】
態様46. 架橋アミンポリマーの製造が少なくとも1個のアミン基または窒素含有基を含むアミンモノマーのラジカル重合を含む、態様39に記載の医薬組成物。
【0221】
態様47. 架橋アミンポリマーが脱イオン水中約1.5またはそれ未満の平衡膨潤比を有する、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0222】
態様48. 架橋アミンポリマーが脱イオン水中約1またはそれ未満の平衡膨潤比を有する、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0223】
態様49. 架橋アミンポリマーが、pH5.5に緩衝化された37℃の36mM NaCl、20mM NaHPOおよび50mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)を含む水性人工小腸無機緩衝液(“SIB”)中、少なくともそれぞれ0.5:1の塩化物イオン対リン酸イオン結合モル比を有する、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0224】
態様50. 架橋アミンポリマーが、pH5.5に緩衝化された37℃の36mM NaCl、20mM NaHPOおよび50mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)を含む水性人工小腸無機緩衝液(“SIB”)中、少なくともそれぞれ1:1の塩化物イオン対リン酸イオン結合モル比を有する、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0225】
態様51. 架橋アミンポリマーが、pH5.5に緩衝化された37℃の36mM NaCl、20mM NaHPOおよび50mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MESを含む水性人工小腸無機緩衝液(“SIB”)中、少なくともそれぞれ2:1の塩化物イオン対リン酸イオン結合モル比を有する、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0226】
態様52. 架橋アミンポリマーがpH1.2および37℃で35mM NaClおよび63mM HClを含む水性人工胃液緩衝液(“SGF”)中少なくとも10mmol/gのプロトン結合能および少なくとも10mmol/gの塩化物イオン結合能を有する、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0227】
態様53. 架橋アミンポリマーがpH1.2および37℃で35mM NaClおよび63mM HClを含む水性人工胃液緩衝液(“SGF”)中少なくとも12mmol/gの平衡プロトン結合能および少なくとも12mmol/gの塩化物イオン結合能を有する、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0228】
態様54. 架橋アミンポリマーがpH1.2および37℃で35mM NaClおよび63mM HClを含む水性人工胃液緩衝液(“SGF”)中少なくとも14mmol/gの平衡プロトン結合能および少なくとも14mmol/gの塩化物イオン結合能を有する、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0229】
態様55. 架橋アミンポリマーがpH6.2に緩衝化された37℃の50mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、50mM 酢酸ナトリウム、36mM 塩化ナトリウム、7mM リン酸ナトリウム、1.5mM クエン酸ナトリウム、30mM オレイン酸および5mM タウロコール酸ナトリウムを含む水性人工小腸有機および無機緩衝液(“SOB”)中少なくとも1mmol/gの塩化物結合能を有する、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0230】
態様56. 架橋アミンポリマーがpH6.2に緩衝化された37℃の50mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、50mM 酢酸ナトリウム、36mM 塩化ナトリウム、7mM リン酸ナトリウム、1.5mM クエン酸ナトリウム、30mM オレイン酸および5mM タウロコール酸ナトリウムを含む水性人工小腸有機および無機緩衝液(“SOB”)中少なくとも2mmol/gの塩化物結合能を有する、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0231】
態様57. 架橋アミンポリマーがpH6.2に緩衝化された37℃の50mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、50mM 酢酸ナトリウム、36mM 塩化ナトリウム、7mM リン酸ナトリウム、1.5mM クエン酸ナトリウム、30mM オレイン酸および5mM タウロコール酸ナトリウムを含む水性人工小腸有機および無機緩衝液(“SOB”)中少なくとも3mmol/gの塩化物結合能を有する、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0232】
態様58. 架橋アミンポリマーがpH6.2に緩衝化された37℃の50mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、50mM 酢酸ナトリウム、36mM 塩化ナトリウム、7mM リン酸ナトリウム、1.5mM クエン酸ナトリウム、30mM オレイン酸および5mM タウロコール酸ナトリウムを含む水性人工小腸有機および無機緩衝液(“SOB”)中少なくとも4mmol/gの塩化物結合能を有する、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0233】
態様59. 架橋アミンポリマーがpH6.2に緩衝化された37℃の50mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、50mM 酢酸ナトリウム、36mM 塩化ナトリウム、7mM リン酸ナトリウム、1.5mM クエン酸ナトリウム、30mM オレイン酸および5mM タウロコール酸ナトリウムを含む水性人工小腸有機および無機緩衝液(“SOB”)中少なくとも5mmol/gの塩化物結合能を有する、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0234】
態様60. 四級化アミン類のパーセンテージが40%未満である、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0235】
態様61. 四級化アミン類のパーセンテージが30%未満である、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0236】
態様62. 四級化アミン類のパーセンテージが20%未満である、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0237】
態様63. 四級化アミン類のパーセンテージが10%未満である、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0238】
態様64. 四級化アミン類のパーセンテージが5%未満である、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0239】
態様65. 架橋アミンポリマーがゲルまたは40~180マイクロメートルの平均粒子径を有するビーズである、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0240】
態様66. 架橋アミンポリマーがゲルまたは60~160マイクロメートルの平均粒子径を有するビーズである、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0241】
態様67. 架橋アミンポリマーがゲルまたは80~140マイクロメートルの平均粒子径を有するビーズである、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0242】
態様68. 粒子の約0.5体積パーセント未満が約10マイクロメートル未満の直径を有する、態様65~67に記載の医薬組成物。
【0243】
態様69. 粒子の約5体積パーセント未満が約20マイクロメートル未満の直径を有する、態様65~67に記載の医薬組成物。
【0244】
態様70. 粒子の約0.5体積パーセント未満が約20マイクロメートル未満の直径を有する、態様65~67に記載の医薬組成物。
【0245】
態様71. 粒子の約5体積パーセント未満が約30マイクロメートル未満の直径を有する、態様65~67に記載の医薬組成物。
【0246】
態様72. 投与単位形態である、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0247】
態様73. 投与単位形態がカプセル剤、錠剤またはサシェ剤投与形態である、態様72に記載の医薬組成物。
【0248】
態様74. 医薬組成物が薬学的に許容される担体、添加物または希釈剤を含む、上記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
【0249】
態様75. 上記態様のいずれかに記載の医薬組成物の経口投与によりHClを除去することによる、ヒトを含む動物における酸/塩基障害の処置法。
【0250】
態様76. 酸/塩基障害が代謝性アシドーシスである、態様75に記載の処置法。
【0251】
態様77. pHを制御または正常化する、態様75に記載の処置法。
【0252】
態様78. 血清炭酸水素を制御または正常化する、態様75に記載の処置法。
【0253】
態様79. 1日あたり1g未満のナトリウムまたはカリウムを投与する、態様75に記載の処置法。
【0254】
態様80. 1日あたり0.5g未満のナトリウムまたはカリウムを投与する、態様75に記載の処置法。
【0255】
態様81. 1日あたり0.1g未満のナトリウムまたはカリウムを投与する、態様75に記載の処置法。
【0256】
態様82. ナトリウムまたはカリウムが投与されない、態様75に記載の処置法。
【0257】
態様83. 投与される1日投与量が20g未満である、態様75に記載の処置法。
【0258】
態様84. 投与される1日投与量が15g未満である、態様75に記載の処置法。
【0259】
態様85. 投与される1日投与量が10g未満である、態様75に記載の処置法。
【0260】
態様86. 投与される1日投与量が5g未満である、態様75に記載の処置法。
【0261】
態様87. 投与される1日投与量が4g未満である、態様75に記載の処置法。
【0262】
態様88. 投与される1日投与量が3g未満である、態様75に記載の処置法。
【0263】
態様89. 1日投与量を1日1回で投与する、態様75に記載の処置法。
【0264】
態様90. 1日投与量を1日2回で投与する、態様75に記載の処置法。
【0265】
態様91. 1日投与量を1日3回で投与する、態様75に記載の処置法。
【0266】
態様92. 代謝性アシドーシスが急性代謝性アシドーシスである、態様75に記載の処置法。
【0267】
態様93. 投与が長期にわたる、態様75に記載の処置法。
【0268】
態様94. 1日投与量が≧1.6mEq/Lの持続性血清炭酸水素増加をもたらす、態様75に記載の処置法。
【0269】
態様95. 1日投与量が≧2mEq/Lの持続性血清炭酸水素増加をもたらす、態様75に記載の処置法。
【0270】
態様96. 1日投与量が≧3mEq/Lの持続性血清炭酸水素増加をもたらす、態様75に記載の処置法。
【0271】
態様97. 1日投与量が≧5mEq/Lの持続性血清炭酸水素増加をもたらす、態様75に記載の処置法。
【0272】
態様98. 1日投与量が≧10mEq/Lの持続性血清炭酸水素増加をもたらす、態様75に記載の処置法。
【0273】
態様99. 1日あたり10gまたはそれ未満の1日投与量が≧3mEq/Lの血清炭酸水素増加をもたらす、態様75に記載の処置法。
【0274】
態様100. 1日あたり5gまたはそれ未満の1日投与量が≧3mEq/Lの血清炭酸水素増加をもたらす、態様75に記載の処置法。
【0275】
態様101. 投与量を処置を必要とする患者の血清炭酸水素値またはアシドーシスの他の指標に基づきタイトレートする、態様83~99のいずれかに記載の処置法。
【0276】
態様102. 架橋アミンポリマーがGI管を通して≧1mmol/g塩化物を保持する、態様1~74のいずれかに記載の医薬組成物。
【0277】
態様103. 架橋アミンポリマーがGI管を通して≧2mmol/g塩化物を保持する、態様1~74のいずれかに記載の医薬組成物。
【0278】
態様104. 架橋アミンポリマーがGI管を通して≧4mmol/g塩化物を保持する、態様1~74のいずれかに記載の医薬組成物。
【0279】
態様105. 架橋アミンポリマーがGI管を通して≧8mmol/g塩化物を保持する、態様1~74のいずれかに記載の医薬組成物。
【0280】
態様106. 医薬組成物の投与量が処置を必要とする患者の血清炭酸水素値またはアシドーシスの他の指標に基づきタイトレートされる、態様1~74のいずれかに記載の医薬組成物。
【0281】
態様107. 脂肪族基がアルキルまたはアルケニルである、態様1~74のいずれかに記載の医薬組成物または態様75~101のいずれかに記載の方法。
【0282】
態様108. ヘテロ脂肪族基がヘテロアルキル基またはヘテロアルケニル基である、態様1~74のいずれかに記載の医薬組成物または態様75~101のいずれかに記載の方法。
【0283】
本発明を詳細に記載してきたが、添付する特許請求の範囲に定義した本発明の範囲から逸脱することなく修飾および変更が可能であることは認識される。さらに、本明細書における全ての例は非限定的例として提供されることは認識されるべきである。
【実施例0284】
次の非限定的実施例を、本発明をさらに説明するために提供する。当業者には当然であるが、下記実施例に記載した技術は、発明者らが本発明の実施に際して十分に機能することを発見した方法を表すものであり、したがって、その実施態様の例を構成すると考えられるものであると認識されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に鑑みて、開示した具体的態様に多くの変更をなすことができ、なお本発明の精神および範囲から逸脱することなく同様のまたは類似する結果を得ることができることを認識すべきである。
【0285】
I. 対照ポリマー類の製造および合成
A. 遊離アミンセベラマー
レンベラは業者から購入した。サシェ剤84包(すなわち201.4gm)のレンベラ(炭酸セベラマー)を5Lプラスチックビーカーに入れた。4リットルのMilli-Q水をビーカーに添加し、内容物を磁気撹拌プレートおよび撹拌子を使用して30分撹拌した。次いで内容物をP8 Whatman濾紙を備えたフィルターフリットに移し、過剰の上清を負の真空の適用により除去した。水添加、撹拌、濾過および上清除去の工程を計3回繰り返した。最終水洗浄後、3リットルの1M水酸化ナトリウムをビーカーに添加し、30分撹拌した。次いで、過剰の水酸化ナトリウムを除去するために真空濾過を行った。水酸化ナトリウム添加、撹拌および真空濾過の工程を水酸化ナトリウム洗浄について計2回繰り返した。ポリマーをMilli-Q水で洗浄して、過剰の水酸化ナトリウムを除去した。濾液のpHをpH試験紙を使用して測定し、濾液のpHが7以下になるまでポリマーを水で洗浄した。湿ポリマーをガラストレイに移し、-40℃で1時間凍結させ、3~5日凍結乾燥して、ポリマーを乾燥させた。ポリマーの乾燥減量をA&D MX-50湿度計(標準モード、130℃まで傾斜および維持)を使用して測定した。
【0286】
B. ビキサロマー
キックリン(ビキサロマー)カプセルを業者から購入し、遊離アミンポリマーをさらに精製することなくカプセルから直接取り出した。さらなるビキサロマー対照物質を、キックリン添付文書(処方情報)の情報およびUS7,459,502の手順に従い製造した。下記の7個の実施例において比較物質として使用したビキサロマー対照物質を、エピクロロヒドリン(“ECH”)対1,4-ビス[ビス(3-アミノプロピル)アミノ]ブタン(“C4A3BTA”)モル比2.35対1で製造し、本品は、キックリン添付文書に記載された2.4:1~2:1の許容範囲に入り、上記膨潤およびSGFアッセイで測定して、キックリンと同等な性能を有するポリマーが製造された。水性貯蔵液を、C4A3BTA(25.06g)、HCl(15.58g濃HCl)およびCalimulse EM-99(分枝ドデシルベンゼンスルホネート、1.39g)を水(17.99g)に溶解することにより製造した。オーバーヘッドスターラー、ディーン・スターク装置および凝縮器および窒素入口を備えた、4個の側方バッフルを有する3首丸底フラスコに水性貯蔵液およびトルエンを入れた。反応混合物を不活性雰囲気下撹拌し、80℃に加熱した。ECH(17.47g)を、トルエン中40重量%溶液として導入し、これは1時間にわたり半連続的にシリンジポンプから添加した。反応混合物を30~45分、80℃で撹拌し、その後、浴温度を最終脱水工程のために110℃に上げた。24mLの水が回収されたとき、フラスコを室温まで冷却し、トルエンを濾過により除去した。得られたポリマービーズを、トルエン(100mL、3回)、27wt%HCl(50mL、3回)、水(100mL、3回)、10:9:1水:メタノール:NaOHの溶液(100mL、2回)、水(100mL、5回)、メタノール(50mL、3回)、20wt%NaOH(300mL、2回)および洗浄後の溶液のpHが7となるまで水での洗浄により精製した。ビーズを次いで凍結乾燥機で48時間乾燥させた。膨潤およびSGFアッセイを使用して、合成ポリマー類の性能の対照としてカプセルから“そのまま”使用した市販キックリンと比較して、合成ビキサロマーポリマーの性能等価性を決定した。
【0287】
II. 化学実施例
次の化学実施例を、使用した重合の機構に基づき、5個のカテゴリーで示す。
(a)置換重合(縮合/段階成長)ゲル
(b)置換重合(縮合/段階成長)ビーズ
(c)ラジカル重合(付加/連鎖成長)ゲル
(d)ラジカル重合(付加/連鎖成長)ビーズ
(e)後重合架橋
いずれの場合も、一般的重合法を記載し、具体例一般法内で変更した合成パラメータの表の該当箇所に挙げる。得られたポリマー類の物理化学的性能特徴(SGFおよび膨潤)の表も提供する。
【0288】
A. 小分子アミン類の置換重合
撹拌下、アミンモノマー、クロスリンカー、溶媒および塩基または酸を反応容器に仕込んだ。混合後、溶液を加熱し、撹拌した。反応が完了した後、反応物を冷却した。ゲルを微粉末まで機械的に粉砕し、精製し、一定重量となるまで乾燥した。本実施例に記載するポリマー類の合成に適するアミン類およびクロスリンカーの例は、表4に示すアミン類とクロスリンカーの組み合わせを含むが、これらに限定されない。表5は、表4に示すポリマー例の重要な物理化学的特性(すなわちSGF結合および膨潤比)を示す。
【0289】
1. C2PW+DCPゲルのための具体的方法
2-[ビス(2-アミノエチル)アミノ]エタナミン(“C2PW”)(1.00g)、水(1.00g)および水酸化ナトリウム(1.64g)を、撹拌子を備えた20mLシンチレーションバイアルに仕込んだ。激しい撹拌下、1回用量の1,3-ジクロロプロパン(“DCP”)(2.32g)を添加した。混合後、溶液を80℃に加熱し、16時間激しく撹拌した。反応物を25℃に冷却し、10mLの水を添加してゲルを固化した。ゲルを微粉末まで機械的に粉砕した。得られた溶液を遠心分離し、水相を傾捨した。得られた粉砕ポリマーゲルを、メタノール(100mL、2回)、水(100mL)、1M HCl(100mL、2回)、水(100mL)、1M NaOH(100mL、3回)および最後に洗浄後の溶液のpHが7となるまで水で洗浄して精製した。このポリマーは、表4および表5にポリマー番号37として示す。
【0290】
2. EDA3+BCPAゲルのための具体的方法
1,2-ビス(2-アミノエチルアミノ)エタン(“EDA3”)(0.11g)、水(0.50g)、ビス(3-クロロプロピル)アミン(“BCPA”)(0.50g)および水酸化ナトリウム(0.19g)を、撹拌子を備えた20mLシンチレーションバイアルに仕込んだ。混合後、溶液を80℃に加熱し、16時間激しく撹拌した。反応物を25℃に冷却し、10mLの水を添加してゲルを固化した。ゲルを微粉末まで機械的に粉砕した。得られた溶液を遠心分離し、水相を傾捨した。得られた粉砕ポリマーゲルを、メタノール(100mL、2回)、水(100mL)、1M HCl(100mL、2回)、水(100mL)、1M NaOH(100mL、3回)および最後に洗浄後の溶液のpHが7となるまで水で洗浄して精製した。このポリマーは、表4および表5にポリマー番号54として示す。
【0291】
3. C2PW+TGAゲルのための具体的方法
C2PW(0.50g)および水(0.75g)を、撹拌子を備えた20mLシンチレーションバイアルに仕込んだ。激しい撹拌下、1回用量のトリス[(2-オキシラニル)メチル]アミン(“TGA”)(0.79g)を添加した。混合後、溶液を80℃に加熱し、16時間激しく撹拌した。反応物を25℃に冷却し、10mLの水を添加してゲルを固化した。ゲルを微粉末まで機械的に粉砕した。得られた溶液を遠心分離し、水相を傾捨した。得られた粉砕ポリマーゲルを、メタノール(100mL、2回)、水(100mL)、1M HCl(100mL、2回)、水(100mL)、1M NaOH(100mL、3回)および最後に洗浄後の溶液のpHが7となるまで水で洗浄して精製した。このポリマーは、表4および表5にポリマー番号71として示す。
【0292】
【表5】
【表6】
【表7】
【0293】
【表8】
【表9】
【表10】
【0294】
B. 小分子アミン類の置換重合により形成されるビーズについての一般的重合法
水性貯蔵液をアミンモノマーおよび界面活性剤を水に溶解することにより製造した。いくつかの例では、HClを水性貯蔵液に添加した。オーバーヘッドスターラーを備えたリアクターに水性貯蔵液および有機溶媒を仕込んだ。クロスリンカーを二つの方法のうち一つにより導入した。第一の方法において、クロスリンカーを、有機溶媒と混合する前に水溶液の一部として導入した。第二の方法において、水性貯蔵液および有機溶媒を仕込んだリアクターの加熱を開始した後、クロスリンカーを、数時間にわたり半連続的にシリンジポンプにより導入した。反応が完了した後、有機溶媒を除去し、ビーズを、ビーズを種々の溶媒で洗浄することにより精製した。ビーズを、凍結乾燥機で一定重量になるまで乾燥させた。この方法を直鎖および分枝鎖アミン類およびアミンのようなHCl結合官能基を伴うまたは伴わないクロスリンカー(それぞれ“能動的”および“受動的”クロスリンカー)に適用する。本実施例に記載するポリマー類の合成に適するアミン類およびクロスリンカーの例は、表6に示すアミン類とクロスリンカーの組み合わせを含むが、これらに限定されない。表7は、表6に示すポリマー例の重要な物理化学的特性(すなわちSGF結合および膨潤比)を示す。
【0295】
1. C4A3BTA+ECHビーズについての具体的方法
水性貯蔵液を1,4-ビス[ビス(3-アミノプロピル)アミノ]ブタン(“C4A3BTA”)(10.02g)、HCl(6.25g濃HCl)およびCalimulse EM-99(分枝ドデシルベンゼンスルホネート、0.56g)を水(7.18g)に溶解することにより製造した。オーバーヘッドスターラーおよび凝縮器を備えた丸底フラスコに、水性貯蔵液およびトルエンを仕込んだ。反応混合物を不活性雰囲気下撹拌し、80℃に加熱した。エピクロロヒドリン(“ECH”)(21.37g)をトルエン中40重量%溶液として導入し、これは1時間にわたり半連続的にシリンジポンプにより添加した。反応混合物を16時間、80℃で撹拌し、その後反応混合物を室温に冷却し、リアクターから取り出した。トルエンを傾捨により除去し、得られたポリマービーズメタノール(100mL、2回)、水(100mL)、1M HCl(100mL、2回)、水(100mL)、1M NaOH(100mL、3回)および洗浄後の溶液のpHが7になるまで水での洗浄により精製した。このポリマーは、表6および表7にポリマー番号21として示す。
【表11】
【表12】
【0296】
【表13】
【表14】
【0297】
C. ラジカル重合(付加/連鎖成長)により形成されたゲルについての一般的重合法
モノアリルアミン塩酸塩、マルチアリルアミンクロスリンカーおよびラジカルイニシエーターの水溶液を反応容器に入れた。反応混合物を加熱し、その後容器を室温まで冷却した。得られたポリマーゲルを水で膨潤させ、微粉末まで粉砕した。得られたゲルを洗浄により精製し、一定重量まで乾燥させた。本実施例に記載するポリマー類の合成に適するアミン類の例は、表8に示すアミン類を含むが、これらに限定されない。表9は、表8に示すポリマー例の重要な物理化学的特性(すなわちSGF結合および膨潤比)を示す。
【0298】
1. AAH+TAAゲルについての具体的方法
磁気撹拌子および窒素入口を備えた並列リアクター中の丸底フラスコに電荷d with水(2.14g)、アリルアミン塩酸塩(1-(アリルアミノ)-2-アミノエタン、“AAH”)(0.55g)、トリアリルアミン(“TAA”)(0.71g)、濃HCl(0.15g)およびV-50(2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩)(0.068g)を仕込んだ。反応混合物に15分窒素を通気し、不活性雰囲気下80℃に加熱した。16時間後、容器を室温に冷却し、リアクターから取り出した。ポリマーゲルを水で膨潤させ、機械的に粉砕した。得られた微粉末をメタノール(100mL、2回)、水(100mL)、1M HCl(100mL、2回)、水(100mL)、1M NaOH(100mL、3回)および洗浄後の溶液のpHが7になるまで水で洗浄することにより精製した。ゲルを凍結乾燥機で48時間乾燥させた。このポリマーは、表8および表9にポリマー番号10として示す。
【0299】
2. AAH+DAEDA1ゲルについての具体的方法
磁気撹拌子および窒素入口を備えた並列レアクター中の丸底フラスコに水(2.53g)、アリルアミン塩酸塩(1-(アリルアミノ)-2-アミノエタン、“AAH”)(0.54g)、1,2-ビス(アリルアミノ)エタン(“DAEDA1”)(0.86g)およびV-50(2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩)(0.067g)を仕込んだ。反応混合物に15分窒素を通気し、不活性雰囲気下80℃に加熱した。16時間後、容器を室温に冷却し、リアクターから取り出した。ポリマーゲルを水で膨潤させ、機械的に粉砕した。得られた微粉末をメタノール(100mL、2回)、水(100mL)、1M HCl(100mL、2回)、水(100mL)、1M NaOH(100mL、3回)および洗浄後の溶液のpHが7になるまで水で洗浄することにより精製した。ゲルを凍結乾燥機で48時間乾燥させた。このポリマーは、表8および表9にポリマー番号2として示す。
【表15】
【0300】
【表16】
【0301】
D. ラジカル重合(付加/連鎖成長)により形成されたビーズについての一般的重合法
水性貯蔵液をモノアリルアミンおよびマルチアリルアミンクロスリンカーを水に溶解することにより製造した。撹拌子を備えたリアクターに水性貯蔵液および疎水性有機懸濁溶媒に溶解した界面活性剤を仕込んだ。ラジカルイニシエーターの溶液を調製した。2個の混合物に個々に窒素を通気させた。イニシエーター溶液を反応混合物に添加し、その後16時間まで加熱した。重合反応動態により、必要であれば反応混合物に2回目のイニシエーターを添加する。反応混合物はまたより濃縮された反応混合物を生成させるためおよび低活性モノマー類とクロスリンカーを重合させるために脱水工程も含み得る。容器を室温に冷却後、有機相を除去し、ビーズを精製し、乾燥させた。本実施例に記載するポリマー類の合成に適するアミン類およびクロスリンカーの例は、表10、パート1に示すアミン類とクロスリンカーの組み合わせを含むが、これらに限定されない。これらのビーズを、続いて下記Eおよび表10、パート2に記載するように、後重合架橋に付した。
【0302】
1. AAH+DAEDA1ビーズについての具体的方法
水性貯蔵液をアリルアミン塩酸塩(1-(アリルアミノ)-2-アミノエタン、“AAH”)(10.94g)および1,2-ビス(アリルアミノ)エタン(“DAEDA1”)(6.23g)を水(38.89g)に溶解することにより調製した。オーバーヘッドスターラー、ディーン・スターク装置および凝縮器および窒素入口を備えた、4個の側方バッフルを有する3首丸底フラスコに水性貯蔵液および74:26 クロロベンゼン/ヘプタン溶液(311.11g)に溶解した界面活性剤(Calimulse EM-99、分枝ドデシルベンゼンスルホネート、3.14g)を仕込んだ。別の容器に、V-50(1.98g)の水(12.75g)溶液を調製した。2個の混合物に個々に窒素を通気させた。不活性雰囲気下、イニシエーター溶液を反応混合物に添加し、67℃で16時間加熱した。2回目のイニシエーター溶液(14.73g)および反応混合物を脱気し、合わせて、最終脱水工程のために115℃に温度を上げた。容器を室温に冷却後、有機相を傾捨により除去し、ビーズをメタノール(100mL、2回)、水(100mL)、2M NaOH(100mL)および水(100mL、2回)での洗浄により精製した。ビーズを凍結乾燥機で48時間乾燥させた。このポリマーは、表10_1に示し、表10パート2 のポリマー類29~31を生じる重合後架橋のための原料ビーズであった。
【0303】
E. ポリアミンビーズまたはゲルの後重合架橋の一般法
架橋ポリアミンビーズまたはゲルを、直鎖ポリアミン類の架橋、ラジカル重合および架橋または置換反応を経る小分子アミン架橋により得ることができる。
【0304】
ポリアミンビーズ合成の一般例のように、水中の直鎖ポリアミン塩酸塩(および所望により水酸化ナトリウム)および水可溶性クロスリンカーの貯蔵液を調製した。不活性雰囲気下、オーバーヘッドスターラーを備えたフラスコに水性および有機貯蔵液の各々を添加した。撹拌開始後、反応物を16時間まで加熱した。所望により脱水法/工程を追加して、反応混合物を濃縮してよい。疎水性有機溶媒を傾捨により除去し、ビーズを、不純物を除去するために選択した溶媒で洗浄することにより精製した。得られたポリアミンビーズをNaOHでの洗浄により脱プロトン化した。ビーズを、生じる流水が中性pHに近づくように水で洗浄し、乾燥させた。
【0305】
得られた乾燥ポリアミンビーズをリアクターに入れ、溶媒をゲルに添加した。クロスリンカーを得られたスラリーに天下した。混合物を完了に達するのに必要な時間加熱した。反応混合物を冷却し、ビーズを洗浄により精製し、水が除去されなくなり、重量が一定となるまで乾燥させた。本実施例に記載する後重合架橋の例は、表10、パート2に示すクロスリンカーを含むが、これらに限定されない。表11は、表10、パート2に示すポリマー例の重要な物理化学的特性(すなわちSGF結合および膨潤比)を示す。
【0306】
1. PAAHビーズのDCPでの後架橋
水性貯蔵液を、ポリアリルアミン塩酸塩(平均Mw~15,000(GPC対PEG標準))(25g))および水酸化ナトリウム(6.0g)を水(75.5g)に溶解することにより調製した。溶液を少なくとも10分撹拌した。トルエン(316g)および界面活性剤(SPAN 80(モノオレイン酸ソルビタン))(3.2g)を含む貯蔵液も調製した。オーバーヘッドスターラー、ディーン・スターク装置および凝縮器を備えた、4個の側方バッフルを有する3首丸底フラスコにトルエン溶液を仕込んだ。ジクロロプロパノール(1,3-ジクロロ-2-プロパノール、“(DC2POH”)(3.45g)を水性貯蔵液に室温で添加し、1分撹拌した。この溶液を3首丸底フラスコ機構に添加した。反応混合物を不活性雰囲気下撹拌した。反応物を50℃で14時間加熱した。この後、反応混合物を80℃に加熱し、その後反応混合物を最終脱水工程のために115℃に加熱した。全ての水が反応物(75g)から除かれたら、反応物を室温に冷却した。トルエンを傾捨により除去し、得られたポリマービーズをメタノール(100mL、2回)、水(100mL)、1M HCl(100mL、2回)、水(100mL)、1M NaOH(100mL、2回)および洗浄後の溶液のpHが7になるまで水での洗浄により精製した。ビーズを凍結乾燥機で48時間乾燥させた。
【0307】
0.40gの上で得られたPAAHビーズを、バイアル中、2.8mLのメタノールおよび1,3-ジクロロプロパン(“DCP”)(0.51g)と混合した。ビーズをスパーテルで混合して、均等に分散した湿塊を得て、バイアルを密閉し、75℃で一夜加熱した。冷却したビーズをメタノール(45mL、2回)、水(45mL)、1M HCl(45mL、2回)、水(45mL)、1M NaOH(45mL、3回)および洗浄後の溶液のpHが7になるまで水での洗浄により精製した。ゲルを凍結乾燥機で48時間乾燥させた。このポリマーは、表10、パート2および表11にポリマー番号4として示す。
【0308】
1. PAAHビーズのDCPを用いる後架橋
水性貯蔵液をアリルアミン塩酸塩(10.71g)および1,3-ビス(アリルアミノ)プロパン(“DAPDA”)(6.50g)を水(27.88g)に溶解することにより調製した。オーバーヘッドスターラー、ディーン・スターク装置および凝縮器および窒素入口を備えた、4個の側方バッフルを有する3首丸底フラスコに水性貯蔵液および74:26 クロロベンゼン/ヘプタン溶液(311.11g)に溶解した界面活性剤(Calimulse EM-99、分枝ドデシルベンゼンスルホネート、3.14g)を仕込んだ。別の容器に、V-50(1.94g)の水(11.00g)溶液を調製した。2個の混合物に個々に窒素を通気させた。不活性雰囲気下、イニシエーター溶液を反応混合物に添加し、67℃で16時間加熱した。2回目のイニシエーター溶液(12.94g)および反応混合物を脱気し、合わせて、最終脱水工程のために115℃に温度を上げた。容器を室温に冷却後、有機相を傾捨により除去し、ビーズをメタノール(100mL、2回)、水(100mL)、2M NaOH(100mL)および水(100mL、2回)での洗浄により精製した。ビーズを凍結乾燥機で48時間乾燥させた。
【0309】
1,3-ジクロロプロパン(“DCP”)(0.18g)を、MeOH(2.80g)および0.40gの上で得られたPAAHビーズを仕込んだバイアルに添加した。ビーズをスパーテルで混合して、均等に分散した湿塊を得て、バイアルを密閉し、75℃で一夜加熱した。冷却したビーズをメタノール(45mL、2回)、水(45mL)、1M HCl(45mL、2回)、水(45mL)、1M NaOH(45mL、2回)および洗浄後の溶液のpHが7になるまで水での洗浄により精製した。ゲルを凍結乾燥機で48時間乾燥させた。このポリマーは、表10、パート2および表11にポリマー番号10として示す。
【0310】
【表17】
【表18】
【表19】
【0311】
【表20】
【表21】
【0312】
【表22】
【表23】
【0313】
II. 性能例
次の実施例は、性能評価スクリーニングおよびリン酸を超える塩化物結合選択性を測定するアッセイ(SIBアッセイ)、無機および有機干渉物質存在下塩化物結合選択性を測定するアッセイ(SOBアッセイ)、総四級アミン類を測定するアッセイ(QAAアッセイ)、SOB結合動力学および塩化物滞留を測定するアッセイ(CRAアッセイ)における選りすぐりの合成した本開示のポリマー類ならびに市販の参照ポリマー類の評価の結果を提供する。これらのアッセイは上に定義されている。
【0314】
A. 性能例
次の表12は、上記のとおり製造した参考ビキサロマー、ECHモル当量含量を増加させた別のC4A3BTA/ECHポリマーおよび遊離アミンセベラマーの3個の選択したポリマー類の相対的性能のアッセイを示す。本実施例でのデータを得るために使用したアッセイは他の箇所に記載する。
【0315】
モノマーとしてC4A3BTAおよびクロスリンカーとしてECHから、クロスリンカーモル当量2.35で製造したビキサロマー参照架橋アミンポリマーは、SGFで膨潤比2.3g水/g乾燥ポリマーおよび結合能12.8mmol/gを有することが示された。このポリマーは、SIBで1.7mmol/g塩化物および5.2mmol/gリン酸を結合し、SOBで0.8mmol/g塩化物、1.4mmol/gリン酸、0.5mmol/gクエン酸および0.6mmol/gタウロコール酸を結合した。
【0316】
比較として、モノマーとしてC4A3BTAおよびクロスリンカーとしてECHからクロスリンカーモル当量5.3で製造した架橋アミンポリマーは、SGFで膨潤比0.9g水/g乾燥ポリマーおよび結合能11mmol/gを有することが示された。このポリマーは、SIBで1.6mmol/g塩化物および3.2mmol/gリンを結合し、SOBで3mmol/g塩化物、0.5mmol/gリン酸、0mmol/gクエン酸および0mmol/gタウロコール酸を結合した。
【0317】
遊離アミンセベラマーポリマー(他の場所に記載するとおりに製造)は、SGFで膨潤比6.5g水/g乾燥ポリマーおよび結合能12.1mmol/gを有することが示された。このポリマーは、SIBで1.1mmol/g塩化物および6.1mmol/gリン酸を結合し、SOBで0.2mmol/g塩化物、0.8mmol/gリン酸、0.4mmol/gクエン酸および1.8mmol/gタウロコール酸を結合した。
【0318】
表13は、膨潤比が2以下である本開示のポリマー類の例を含む。表14は、膨潤比が2を超えるが、5以下である本開示のポリマー類の例を含む。
【0319】
【表24】
【0320】
【表25】
【表26】
【0321】
【表27】
【表28】
【0322】
【表29】
【表30】
【0323】
【表31】
【表32】
【0324】
【表33】
【表34】
【0325】
III. スクリーニング例
次の例は、合成したポリマー類を、上に定義したスクリーニングのいくつかにより特徴づけし得る手段を説明する。
【0326】
A. 四級化アミンアッセイ
QAAアッセイを選択したポリマー類で実施した。塩化物塩として得て、その後本実験のために硝酸塩に変換した完全に四級化されたアミン類を含む、市販の架橋ポリスチレンビーズである対照物質Dowex 1x8のQAAアッセイデータを表15に示す。遊離アミン形態として得て、本実験にそのまま使用した三級アミン類を含む市販の架橋アクリリックビーズであるAmberlite IRA67のデータを表15の最初の二列に示す。そこに証明されるとおり、完全に四級化されたDowex 1x8は、予想どおり、ここで試験した酸性および塩基性pH条件下、等量の塩化物、具体的には1.8mmolCl/gを結合した。さらに、三級アミン類しか含まないAmberlite IRA67は、用いた酸性アッセイ条件下で5.9mmol Cl/gを結合したが、成分アミン類がほとんど脱プロトン化されているここで試験した塩基性条件下でこの量の≦1.7%と結合した。表15はまた、種々のモル等量の架橋剤でECHと架橋したC4A3BTAを含む物質により結合する塩化物の量も示す。これらの物質は、ここで試験した酸性条件下、塩化物結合>9mmol Cl/g、しばしば>10mmol Cl/gおよび低架橋条件下、13.4mmol Cl/gを示す。これらの同じ物質が、ここで試験した塩基性pH条件下、塩化物結合<0.8mmol Cl/g、しばしば<0.5mmol Cl/gおよび低架橋条件下、0.3mmol Cl/gを示す。用いたアッセイ条件下、3.3モル等量のECHと架橋したC4A3BTAは1.9%アミン四級化を示し、4.3モル等量のECHと架橋したC4A3BTAは2.2%アミン四級化を示し、5.3モル等量のECHと架橋したC4A3BTAは6.2%アミン四級化を示し、6.3モル等量のECHと架橋したC4A3BTAは4.5%アミン四級化を示し、そして7.3モル等量のECHと架橋したC4A3BTAは8.7%アミン四級化を示す。
【0327】
B. SOB結合動力学
選択したポリマー類を、SOB速度実験で試験し、アニオン結合を2時間、24時間および48時間のインキュベーションで評価した。データを表16に記載する。モノマーとしてC4A3BTAおよびクロスリンカーとしてECHからクロスリンカー対モノマー比2.35で製造したビキサロマー参考ポリマーは、0.8mmol/g塩化物および1.5mmol/gリン酸の結合を2時間で示した。同じ緩衝液で48時間インキュベーション後、塩化物およびリン酸結合はそれぞれ0.4および1.0mmol/gに減少し、タウロコール酸結合は2時間の0.6mmol/gから48時間の1.0mmol/gに増加した。クエン酸結合に変化はなく、このサンプルは2時間および48時間に0.5mmol/gクエン酸と結合した。
【0328】
表16に示すとおり、モノマーとしてC4A3BTAおよびECHから、高いクロスリンカー対モノマー比4.3で製造したポリマーは、3.0mmol/g塩化物および0.2mmol/gリン酸の結合を2時間で示した。同じ緩衝液で48時間インキュベーション後、塩化物結合は1.9mmol/gに減少し、リン酸結合は0.9mmol/gに減少した。タウロコール酸結合は2時間の0.2mmol/gから48時間の0.4mmol/gに増加した。クエン酸結合は2時間および48時間で0.0mmol/gクエン酸であった。
【0329】
表16に示すとおり、モノマーとしてC4A3BTAおよびECHから、さらに高いクロスリンカー対モノマー比7.3で製造したポリマーは、1.6mmol/g塩化物および0.6mmol/gリン酸の結合を2時間で示した。同じ緩衝液で48時間インキュベーション後、塩化物結合は1.2mmol/gに減少し、リン酸結合は1.0mmol/gに増加した。タウロコール酸結合は2時間および48時間で0.0mmol/gであった。クエン酸結合は2時間の0.0mmol/gから48時間の0.3mmol/gに増加した。
【0330】
C. 塩化物滞留アッセイ
選択したポリマー類を、塩化物滞留アッセイ(CRA)を少して、塩化物と結合し、保持する能力について評価した。表17に示すとおり、モノマーとしてC4A3BTおよびクロスリンカーとしてECHから、クロスリンカー対モノマー比2.35で製造したビキサロマー参照ポリマーは、SOB緩衝液で最初に0.86mmol/g塩化物と結合した。ポリマーサンプルを次いで滞留緩衝液(50mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、100mM 酢酸ナトリウム、5mM リン酸ナトリウム、15mM 硫酸、pH6.2に調節)で約40時間、37℃インキュベートし、16~20時間、抽出溶液(0.2 M水酸化ナトリウム)で37℃でインキュベーションした。0.2 M水酸化ナトリウムで抽出後、サンプルは、SOBで結合していた0.1mmol/g塩化物イオンしか保持せず、残りの塩化物が滞留緩衝液インキュベーションおよび水洗浄工程中に遊離したことを意味した。
【0331】
表17に示すとおり、同じ塩化物滞留アッセイで、モノマーとしてC4A3BTAおよびクロスリンカーとしてECHから、クロスリンカー対モノマー比5.3で製造した他のポリマーは、SOB緩衝液で最初に3.1mmol/g塩化物と結合した。0.2 M水酸化ナトリウム抽出により、サンプルが1.0mmol/g塩化物を保持し、残りの2.1mmol/g塩化物が滞留緩衝液インキュベーションおよび水洗浄工程中に遊離した。
【表35】
【0332】
【表36】
【0333】
【表37】
図1
図2