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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107074
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】速度型圧縮機及び冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/58 20060101AFI20220713BHJP
   F25B 1/053 20060101ALI20220713BHJP
   F04D 29/04 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
F04D29/58 M
F25B1/053 Z
F04D29/04 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019099312
(22)【出願日】2019-05-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、環境省「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】庄山 直芳
(72)【発明者】
【氏名】孫 洪志
(72)【発明者】
【氏名】松井 大
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AA14
3H130AB27
3H130AB47
3H130AC11
3H130BA33A
3H130BA33C
3H130BA33D
3H130BA33J
3H130BA66A
3H130BA66C
3H130BA66D
3H130BA66J
3H130DA02Z
3H130DA04X
3H130DC06Z
3H130DG01X
3H130EA02C
3H130EA02D
3H130EA06C
3H130EA06D
3H130EA06F
3H130EA07C
3H130EA07D
3H130EA07F
3H130EA07J
3H130EB02C
3H130EC08F
(57)【要約】
【課題】圧縮過程で発生する過熱度を圧縮過程において取り除くことができる。
【解決手段】圧縮機3は、回転体27と、冷媒流路40と、第一流路21と、第二流路22と、第三流路23とを備える。回転体27は、回転軸25及びインペラ26を含む。冷媒流路40は、回転体27の周囲に位置し、気相冷媒が流れる流路である。第一流路21は、回転軸25の内部に位置し、液相冷媒が流れる流路である。第二流路22は、回転体27の内部に位置し、第一流路21を通過した液相冷媒を冷媒流路40に導く流路である。第三流路23は、軸方向において回転軸25の外面に沿って延びており、第一流路21から第二流路22に液相冷媒を導く流路である。圧縮機3において、第一流路21及び第二流路22は、回転体27の軸方向においてそれぞれ異なる位置で第三流路23に接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸及びインペラを含む回転体と、
前記回転体の周囲に位置し、気相冷媒が流れる冷媒流路と、
前記回転軸の内部に位置し、液相冷媒が流れる第一流路と、
前記回転体の内部に位置し、前記第一流路を通過した前記液相冷媒を前記冷媒流路に導く第二流路と、
前記回転軸の軸方向において前記回転軸の外面に沿って延びており、前記第一流路から前記第二流路に前記液相冷媒を導く第三流路と、を備え、
前記第一流路及び前記第二流路は、前記回転体の軸方向においてそれぞれ異なる位置で前記第三流路に接続されている、
速度型圧縮機。
【請求項2】
前記第二流路は、前記インペラの内部に設けられている、請求項1に記載の速度型圧縮機。
【請求項3】
前記第一流路は、前記回転軸の軸方向に延びているアキシアル流路と、前記回転軸の半径方向に延びているラジアル流路とを含む、請求項1又は2に記載の速度型圧縮機。
【請求項4】
前記回転体は、前記回転体の軸方向において前記第三流路に接しており、前記回転軸と前記インペラとが締り嵌めされた嵌合部を有する、請求項3に記載の速度型圧縮機。
【請求項5】
前記第三流路に接して配置され、前記回転軸と前記インペラとの間の隙間をシールするシール部材をさらに備え、
前記第三流路は、前記嵌合部と前記シール部材との間に設けられている、
請求項4に記載の速度型圧縮機。
【請求項6】
前記シール部材は、弾性変形により前記回転軸と前記インペラとの間の隙間をシールする、請求項5に記載の速度型圧縮機。
【請求項7】
前記インペラは、前記回転体の軸方向に延びており、前記回転軸が配置された孔をなす内面を有し、
前記内面は、前記嵌合部をなす第一部位と、前記第一部位に接しており前記回転体の軸線に垂直な方向における前記弾性変形前の前記シール部材の最大寸法より大きい孔径を有する第二部位と、前記シール部材と前記第二部位との間に位置しており前記最大寸法以下の孔径を有する第三部位とを有し、
前記回転体の軸方向における第一部位の長さと前記第二部位の長さとの和は、前記回転体の軸方向における第二部位の長さと前記第三部位の長さとの和よりも長い、
請求項6に記載の速度型圧縮機。
【請求項8】
蒸発器と、
請求項1から7のいずれか1項に記載の速度型圧縮機と、
凝縮器と、を備えた、
冷凍サイクル装置。
【請求項9】
前記蒸発器は、内部に液相冷媒を貯留し、
前記凝縮器は、内部に液相冷媒を貯留し、
前記冷凍サイクル装置は、前記蒸発器に貯留された前記液相冷媒、又は、前記凝縮器に貯留された前記液相冷媒を前記速度型圧縮機に導く冷媒供給路をさらに備えた、
請求項8に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、速度型圧縮機及び冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の冷凍サイクル装置として、2段の圧縮機を備え、1段目の圧縮機から吐出された気相冷媒が2段目の圧縮機に吸入される前に冷却されるように構成された冷凍サイクル装置が知られている。
【0003】
図5に示すように、特許文献1に記載された空気調和装置500は、蒸発器510、遠心圧縮機531、蒸気冷却器533、ルーツ式圧縮機532及び凝縮器520を備えている。遠心圧縮機531が前段に設けられ、ルーツ式圧縮機532が後段に設けられている。蒸発器510は、飽和状態の気相冷媒を生成する。気相冷媒は、遠心圧縮機531に吸入され、圧縮される。遠心圧縮機531で圧縮された気相冷媒がルーツ式圧縮機532でさらに圧縮される。遠心圧縮機531とルーツ式圧縮機532との間に配置された蒸気冷却器533において、気相冷媒が冷却される。
【0004】
蒸気冷却器533は、遠心圧縮機531とルーツ式圧縮機532との間に設けられている。蒸気冷却器533において、気相冷媒に対して水が直接噴霧される。あるいは、蒸気冷却器533において、空気などの冷却媒体と気相冷媒との間で間接的に熱交換が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-122012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された技術によれば、蒸気冷却器533において、ルーツ式圧縮機532に吸入されるべき冷媒の過熱度が低減されうる。しかし、遠心圧縮機531の圧縮過程で発生する過熱度、及び、ルーツ式圧縮機532の圧縮過程で発生する過熱度を圧縮過程において取り除くことができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、
回転軸及びインペラを含む回転体と、
前記回転体の周囲に位置し、気相冷媒が流れる冷媒流路と、
前記回転軸の内部に位置し、液相冷媒が流れる第一流路と、
前記回転体の内部に位置し、前記第一流路を通過した前記液相冷媒を前記冷媒流路に導く第二流路と、
前記回転軸の軸方向において前記回転軸の外面に沿って延びており、前記第一流路から前記第二流路に前記液相冷媒を導く第三流路と、を備え、
前記第一流路及び前記第二流路は、前記回転体の軸方向においてそれぞれ異なる位置で前記第三流路に接続されている、
速度型圧縮機を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、圧縮過程で発生する過熱度を圧縮過程において取り除くことができる。これにより、冷凍サイクル装置の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の速度型圧縮機の一例を示す断面図である。
図2図2は、図1に示す速度型圧縮機の一部を示す断面図である。
図3図3は、回転体を作製する工程の一例を示す図である。
図4図4は、本開示の冷凍サイクル装置の一例を示す断面図である。
図5図5は、従来の空気調和装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見)
特許文献1に記載された空気調和装置によれば、蒸気冷却器533において、ルーツ式圧縮機532に吸入される冷媒の過熱度が低減されうる。しかし、遠心圧縮機531の圧縮過程で発生する過熱度、及び、ルーツ式圧縮機532の圧縮過程で発生する過熱度を圧縮過程において取り除くことができない。冷媒の過熱度が増加すると冷媒のエンタルピーも上昇する。
【0011】
圧縮機における理想的な圧縮過程は、完全に断熱された等エントロピー線に沿っている。冷媒のp-h線図において、冷媒のエンタルピーが増えるにつれて、等エントロピー線の傾きが緩やかになり、より大きい圧縮動力が要求される。冷媒の過熱度が増加するにつれて、単位質量の冷媒の圧力を所定圧力まで上げるために、より大きい圧縮動力が必要とされる。言い換えれば、圧縮機の負荷が増加し、圧縮機の消費電力が増加する。
【0012】
そこで、圧縮機の圧縮過程において気相冷媒を圧縮し、その気相冷媒の流れに液相冷媒を供給することによって気相冷媒を冷却することが考えられる。この場合、回転軸及びインペラを含む回転体の内部に液相冷媒の流路を設け、回転体の回転に伴い発生する遠心力を利用して気相冷媒の流れに液相冷媒を供給することが考えられる。本発明者らは、さらに検討を進め、回転体の内部に設けられた流路が所定の関係にあることが液相冷媒を所望の状態で供給する観点から有利であることを新たに見出した。本発明者らは、この新たな知見に基づき本開示の速度型圧縮機を案出した。
【0013】
(本開示に係る一態様の概要)
本開示の第1態様に係る速度型圧縮機は、
回転軸及びインペラを含む回転体と、
前記回転体の周囲に位置し、気相冷媒が流れる冷媒流路と、
前記回転軸の内部に位置し、液相冷媒が流れる第一流路と、
前記回転体の内部に位置し、前記第一流路を通過した前記液相冷媒を前記冷媒流路に導く第二流路と、
前記回転軸の軸方向において前記回転軸の外面に沿って延びており、前記第一流路から前記第二流路に前記液相冷媒を導く第三流路と、を備え、
前記第一流路及び前記第二流路は、前記回転体の軸方向においてそれぞれ異なる位置で前記第三流路に接続されている。
【0014】
第1態様によれば、液相冷媒は、遠心力によって加圧され、第一流路、第三流路、及び第二流路をこの順番に通過して、圧縮機の内部の冷媒流路に向かって供給される。冷媒流路において液相冷媒が気相冷媒に接触すると、液相冷媒と気相冷媒との間で熱交換が起こり、液相冷媒の顕熱又は蒸発潜熱によって過熱状態の気相冷媒が連続的に冷却される。これにより、圧縮過程での冷媒の過熱度の増加に起因する冷媒のエンタルピーの増加が連続的に抑制される。圧縮機が必要とする圧縮動力は、完全に断熱された等エントロピー圧縮に必要とされる圧縮動力未満まで低減されうる。冷媒の圧力を所定圧力まで上昇させるために圧縮機がなすべき仕事を大幅に低減できる。つまり、圧縮機の消費電力を大幅に節約できる。加えて、第一流路及び前記第二流路は、回転体の軸方向においてそれぞれ異なる位置で第三流路に接続されているので、第一流路を通過した液相冷媒は、第三流路においてその圧力が均された後に第二流路に導かれやすい。このため、第二流路に導かれる液相冷媒の圧力がばらつくことを抑制しやすく、気相冷媒の流れに液相冷媒を所望の状態で供給しやすい。
【0015】
本開示の第2態様において、例えば、第1態様に係る速度型圧縮機では、前記第二流路は、前記インペラの内部に設けられていてもよい。第2態様によれば、第二流路の長さを長くしやすく、第二流路における液相冷媒に作用する遠心力を大きくしやすい。また、インペラの内部に設けられた液相冷媒の流路と、回転軸の内部に位置する液相冷媒の流路との位置合わせに求められる精度を低くできる。
【0016】
本開示の第3態様において、例えば、第1態様又は第2態様に係る速度型圧縮機では、前記第一流路は、前記回転軸の軸方向に延びているアキシアル流路と、前記回転軸の半径方向に延びているラジアル流路とを含んでいてもよい。第3態様によれば、ラジアル流路における液相冷媒に遠心力が作用し、第一流路から第三流路に確実に液相冷媒を導くことができる。
【0017】
本開示の第4態様において、例えば、第3態様に係る速度型圧縮機では、前記回転体は、前記回転体の軸方向において前記第三流路に接しており、前記回転軸と前記インペラとが締り嵌めされた嵌合部を有してもよい。第4態様によれば、嵌合部により、第三流路に導かれた液相冷媒が漏れにくい。
【0018】
本開示の第5態様において、例えば、第4態様に係る速度型圧縮機は、前記第三流路に接して配置され、前記回転軸と前記インペラとの間の隙間をシールするシール部材をさらに備えてもよい。前記第三流路は、前記嵌合部と前記シール部材との間に設けられていてもよい。第5態様によれば、嵌合部及びシール部材により、第三流路に導かれた液相冷媒が漏れにくい。回転軸とインペラとを締り嵌めするときに、インペラが回転軸に対して傾くことを抑制しやすい。なぜなら、シール部材によってシールされる隙間をなす回転軸とインペラとの位置関係が回転軸とインペラとの締り嵌めによって定まる回転軸とインペラとの位置関係に合わせて調整されるからである。
【0019】
本開示の第6態様において、例えば、第5態様に係る速度型圧縮機では、前記シール部材は、弾性変形により前記回転軸と前記インペラとの間の隙間をシールしてもよい。第6態様によれば、回転軸とインペラとを締り嵌めするときに、インペラが回転軸に対して傾くことをより確実に抑制しやすい。なぜなら、シール部材によってシールされる隙間をなす回転軸とインペラとの位置関係は、シール部材の弾性変形により、回転軸とインペラとの締り嵌めによって定まる回転軸とインペラとの位置関係に合わせて調整されるからである。
【0020】
本開示の第7態様において、例えば、第6態様に係る速度型圧縮機では、前記インペラは、前記回転体の軸方向に延びており、前記回転軸が配置された孔をなす内面を有していてもよい。前記内面は、前記嵌合部をなす第一部位と、前記第一部位に接しており前記回転体の軸線に垂直な方向における前記弾性変形前の前記シール部材の最大寸法より大きい孔径を有する第二部位と、前記シール部材と前記第二部位との間に位置しており前記最大寸法以下の孔径を有する第三部位とを有していてもよい。前記回転体の軸方向における第一部位の長さと前記第二部位の長さとの和は、前記回転体の軸方向における第二部位の長さと前記第三部位の長さとの和よりも長くてもよい。第7態様によれば、回転軸とインペラとを締り嵌めするときに、インペラが回転軸に対して傾くことをより確実に抑制しやすい。例えば、回転軸においてシール部材によってシールされる部位が回転軸において嵌合部をなす部位の前方に位置するようにインペラの孔に回転軸を挿入するときに、第一部位に回転軸が接触した後に、シール部材が第三部位に接触する。その後、回転軸において嵌合部をなす部位の全体が第一部位に接触する。このため、最初に、第一部位と回転軸との接触により、回転軸とインペラとの位置決めがなされる。その結果、インペラが回転軸に対して傾くことをより確実に抑制しやすい。また、回転軸及びインペラの軸方向の位置関係を所望の位置関係に調整しやすい。
【0021】
本開示の第8態様に係る冷凍サイクル装置は、
蒸発器と、
第1態様から第7態様のいずれか1つの態様に係る速度型圧縮機と、
凝縮器と、を備える。
【0022】
第8態様によれば、速度型圧縮機の消費電力を大幅に節約でき、冷凍サイクル装置の効率が向上する。
【0023】
本開示の第9態様において、第8態様に係る冷凍サイクル装置では、前記蒸発器は、内部に液相冷媒を貯留してもよく、前記凝縮器は、内部に液相冷媒を貯留してもよい。前記冷凍サイクル装置は、前記蒸発器に貯留された前記液相冷媒、又は、前記凝縮器に貯留された前記液相冷媒を前記速度型圧縮機に導く冷媒供給路をさらに備えてもよい。第9態様によれば、速度型圧縮機の第一流路に液相冷媒を確実に供給できる。
【0024】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本開示が限定されるものではない。
【0025】
図1は、本開示の圧縮機の一例を示している。圧縮機3は、速度型圧縮機である。圧縮機3は、回転体27と、冷媒流路40と、第一流路21と、第二流路22と、第三流路23とを備えている。回転体27は、回転軸25及びインペラ26を含む。冷媒流路40は、回転体27の周囲に位置し、気相冷媒が流れる流路である。第一流路21は、回転軸25の内部に位置し、液相冷媒が流れる流路である。第二流路22は、回転体27の内部に位置し、第一流路21を通過した液相冷媒を冷媒流路40に導く流路である。第三流路23は、回転軸25の軸方向において回転軸25の外面に沿って延びており、第一流路21から第二流路22に液相冷媒を導く流路である。圧縮機3において、第一流路21及び第二流路22は、回転体27の軸方向においてそれぞれ異なる位置で第三流路23に接続されている。
【0026】
速度型圧縮機は、気相冷媒に運動量を与え、その後、減速させることによって気相冷媒の圧力を上昇させる圧縮機である。速度型圧縮機として、遠心圧縮機、斜流圧縮機、軸流圧縮機などが挙げられる。速度型圧縮機は、ターボ圧縮機とも呼ばれる。圧縮機3は、回転数を変化させるための可変速機構を備えていてもよい。可変速機構の例は、圧縮機3のモータを駆動するインバータである。圧縮機3の吐出口における冷媒の温度は、例えば100~150℃の範囲にある。
【0027】
図1に示す通り、圧縮機3は、例えば、遠心圧縮機である。圧縮機3は、例えば、ハウジング35及びシュラウド37をさらに備えている。回転体27は、ハウジング35及びシュラウド37によって囲まれた空間に配置されている。ハウジング35の内部には、回転体27を回転させるためのモータ(図示省略)が配置されていてもよい。圧縮機3は、多段圧縮機であってもよい。
【0028】
回転体27において、インペラ26は、回転軸25に取り付けられており、回転軸25とともに高速で回転する。回転軸25及びインペラ26の回転数は、例えば、5000~100000rpmの範囲にある。回転軸25は、S45CHなどの強度の高い鉄系材料で作製されうる。インペラ26は、例えば、アルミニウム、ジュラルミン、鉄、セラミックなどの材料で作製されうる。
【0029】
インペラ26は、例えば、ハブ26h及び複数のブレード26bを有する。ハブ26hは、回転軸25に取り付けらている部分である。回転軸25の中心軸Oを含む断面において、ハブ26hは、末広がりの輪郭を有している。複数のブレード26bは、回転軸25の周方向に沿ってハブ26hの表面に配置されている。
【0030】
インペラ26の周囲の空間には、冷媒流路40、ディフューザ41、及び渦巻室42が含まれる。冷媒流路40は、回転体27の周囲に位置し、圧縮されるべき気相冷媒が流れる流路である。冷媒流路40は、吸入流路40a及び複数の翼間流路40bを含む。吸入流路40aは、気相冷媒の流れ方向において、ブレード26bの上流端26tよりも上流側に位置している。翼間流路40bは、回転軸25の周方向において互いに隣り合うブレード26bの間に位置している。インペラ26が回転すると、複数の翼間流路40bのそれぞれを流れる気相冷媒に回転方向の速度が与えられる。
【0031】
ディフューザ41は、インペラ26によって回転方向に加速された気相冷媒を渦巻室42に導くための流路である。ディフューザ41の流路断面積は、冷媒流路40から渦巻室42に向かって拡大している。この構造は、インペラ26によって加速された気相冷媒の流速を減速させ、気相冷媒の圧力を上昇させる。ディフューザ41は、例えば、半径方向に延びる流路によって構成されたベーンレスディフューザである。冷媒の圧力を効果的に上昇させるために、ディフューザ41は、複数のベーン及びそれらによって仕切られた複数の流路を有するベーンドディフューザであってもよい。
【0032】
渦巻室42は、ディフューザ41を通過した気相冷媒が集められる渦巻状の空間である。圧縮された気相冷媒は、渦巻室42を経由して、圧縮機3の外部へと導かれる。渦巻室42の断面積が円周方向に沿って拡大しており、これにより、渦巻室42における気相冷媒の流速及び角運動量が一定に保たれる。
【0033】
シュラウド37は、インペラ26を覆って、冷媒流路40、ディフューザ41及び渦巻室42を規定している。シュラウド37は、鉄系材料又はアルミニウム系材料によって作製されている。鉄系材料として、FC250、FCD400、SS400などが挙げられる。アルミニウム系材料として、ACD12などが挙げられる。
【0034】
ハウジング35は、圧縮機3の各種部品を収容するケーシングの役割を担っている。ハウジング35とシュラウド37とが組み合わされることによって、渦巻室42が形成されている。ハウジング35は、上記した鉄系材料又はアルミニウム系材料によって作製されうる。ディフューザがベーンドディフューザであるとき、複数のベーンも上記した鉄系材料又はアルミニウム系材料によって作製されうる。
【0035】
ハウジング35の内部には、例えば、軸受18及びシール24が配置されている。軸受18は、回転軸25を回転可能に支持している。軸受18は、滑り軸受であってもよく、転がり軸受であってもよい。軸受18が滑り軸受であるとき、潤滑剤として、冷凍サイクル装置の冷媒を使用できる。軸受18は、直接又は軸受箱(図示省略)を介してハウジング35に接続されている。シール24は、軸受18の潤滑剤がインペラ26に向かって流れることを阻止する。シール24は、例えば、ラビリンスシールである。
【0036】
圧縮機3の作動して回転体27が回転すると、圧縮機3の外部から第一流路21に液相冷媒が供給される。液相冷媒は、遠心力によって加圧され、第一流路21、第三流路23及び第二流路22をこの順番で通過して、圧縮機3の内部の冷媒流路40に向かって噴射される。冷媒流路40において液相冷媒が気相冷媒に接触すると、液相冷媒と気相冷媒との間で熱交換が起こり、液相冷媒の顕熱又は蒸発潜熱によって過熱状態の気相冷媒が連続的に冷却される。これにより、圧縮過程での冷媒の過熱度の増加に起因する冷媒のエンタルピーの増加が連続的に抑制される。圧縮機3が必要とする圧縮動力は、完全に断熱された等エントロピー圧縮に必要とされる圧縮動力未満まで低減されうる。冷媒の圧力を所定圧力まで上昇させるために圧縮機3がなすべき仕事を大幅に低減できる。つまり、圧縮機3の消費電力を大幅に節約できる。
【0037】
図1に示す通り、第一流路21は、典型的には、アキシアル流路21aと、ラジアル流路21bとを含む。アキシアル流路21aは、回転軸25の軸方向に延びている。ラジアル流路21bは、アキシアル流路21aから分岐して、回転軸25の半径方向に延びている。
【0038】
アキシアル流路21aは、回転軸25の端面25cに位置している流入口21eを有する。端面25cは、例えば、インペラ26が位置している側とは反対側に位置している端面である。流入口21eからアキシアル流路21aに液相冷媒が導入される。このような構成によれば、液相冷媒を第一流路21にスムーズに送り込むことが可能である。第一流路21は、例えば、回転軸25の中心軸Oを含んでいる。回転軸25の横断面において、アキシアル流路21aは、例えば、円形の断面形状を有する。回転軸25の横断面において、アキシアル流路21aの中心が中心軸Oに一致している。ただし、アキシアル流路21aの中心が回転軸25の中心軸Oからオフセットしていてもよい。
【0039】
図1に示す通り、ハウジング35は、接続口29を有する。接続口29には、第一流路21に液相冷媒を導くための流路が接続される。ハウジング35の内部には接続口29に連通しているバッファ室35hが設けられており、バッファ室35hに液相冷媒が供給される。回転軸25の端面25cは、バッファ室35hに面している。つまり、アキシアル流路21aは、バッファ室35hに向かって開口している。このような構成によれば、バッファ室35hを介して、液相冷媒を第一流路21にスムーズに送り込むことが可能である。
【0040】
アキシアル流路21aの流入口21eの位置は、回転軸25の端面25cに限定されない。回転軸25の側面に流入口21eが設けられていてもよい。その場合、バッファ室35hは、ハウジング35の内部において、回転軸25の側面を取り囲んでいてもよい。
【0041】
ラジアル流路21bの中の液相冷媒には遠心力が働き、液相冷媒は、第三流路23に導かれる。第三流路23は、例えば、回転軸25の外面に沿って環状に形成されている。第三流路23は、例えば、回転軸25の外面と、回転軸25が配置された孔をなすインペラ26の内面との間に設けらている。第三流路23は、例えば、インペラ26と回転軸25とが隙間嵌めされることによって形成されうる。第三流路23は、回転軸25の周方向に配置された複数の流路によって構成されていてもよい。
【0042】
第三流路23を通過した液相冷媒は第二流路22に導かれる。第二流路22の中の液相冷媒には遠心力が働き、冷媒流路40に噴射され、冷媒流路40を流れる気相冷媒に混合される。第二流路22は、例えば、インペラ26の内部に設けられている。この場合、第二流路22の長さが長くなりやすく、第二流路22における液相冷媒に作用する遠心力を大きくしやすい。加えて、回転軸25及びインペラ26を組み立てて回転体27を作製する場合に、第一流路21と第二流路22との位置合わせに高い精度が求められない。これにより、回転体27の作製が容易である。第二流路22は、回転軸25に取り付けられ、冷媒流路40に接するインペラ26以外の部材の内部に設けられていてもよい。
【0043】
圧縮機3は、例えば、回転軸25の周りに複数の第二流路22を備える。このような構成によれば、回転軸25の周方向において、気相冷媒を均一に冷却しやすい。ただし、圧縮機3は1つの第二流路22を有していてもよい。第二流路22は、インペラ26の半径方向に延びていてもよく、半径方向に対して傾斜した方向に延びていてもよい。
【0044】
上記の通り、第一流路21及び第二流路22は、回転体27の軸方向においてそれぞれ異なる位置で第三流路23に接続されている。このため、第一流路21を通過した液相冷媒は、第三流路23において回転軸25の軸方向に流れて、第二流路22に入る。これにより、第一流路21を通過した液相冷媒が、第三流路23においてその圧力が均された後に第二流路22に導かれやすい。このため、第二流路22に導かれる液相冷媒の圧力がばらつくことを抑制しやすく、気相冷媒の流れに液相冷媒を所望の状態で供給しやすい。例えば、圧縮機3が回転軸25の周りに複数の第二流路22を備える場合に、複数の第二流路22に導かれる液相冷媒の圧力がばらつくことを抑制しやすい。
【0045】
図2は、圧縮機3の一部を示す。図2に示す通り、第二流路22は、例えば、回転軸25の中心軸Oに垂直な方向に延びている。第二流路22は、回転軸25の中心軸Oに対して傾いて延びていてもよい。第二流路22は、例えば、冷媒流路40に面している流出口22bを有する。流出口22bは、例えば、翼間流路40bに開口している。一方、流出口22bは、気相冷媒の流れ方向において、ブレード26bの上流端26tよりも上流側に位置していてもよい。このような構成によれば、圧縮過程の気相冷媒から効率的に熱を奪うことが可能である。
【0046】
流出口22bは、例えば、インペラ26のハブ26hの表面に位置している。第二流路22は、例えば、回転軸25の半径方向にハブ26hを貫通している。
【0047】
第二流路22は、例えば、冷媒流路40における気相冷媒の流れ方向において、第一流路21の出口よりも下流に位置している。このような構成によれば、第二流路22が長くなりやすく、第二流路22の中の液相冷媒に作用する遠心力が大きくなりやすい。これにより、液相冷媒を所望の流量で冷媒流路40に供給しやすい。第二流路22は、冷媒流路40における気相冷媒の流れ方向において、第一流路21の出口よりも上流に位置していてもよい。
【0048】
第二流路22の流路断面積は、例えば、アキシアル流路21aの流路断面積よりも小さい。このような構成によれば、冷媒流路40に供給される液相冷媒を微細化しやすい。
【0049】
回転軸25の周方向において、第二流路22の流出口22bは、例えば、等角度間隔で並んでいる。第二流路22の流出口22bは、例えば、周方向において隣り合うブレード26bとブレード26bとの間に位置している。例えば、各流出口22bから均一な流量にて液相冷媒が各翼間流路40bに噴射される。このような構成によれば、回転軸25の周方向において、気相冷媒をより均一に冷却しやすい。流出口22bの数は、翼間流路40bの数と異なっていてもよく、翼間流路40bの数に等しくてもよい。第二流路22の流出口23bが翼間流路40bに一対一で対応していてもよい。
【0050】
複数のブレード26bが複数のフルブレードと複数のスプリッタブレードとを含む場合、回転軸25の周方向において、周方向において隣り合うフルブレードとフルブレードとの間に流出口22bが位置していてもよい。あるいは、周方向において隣り合うフルブレードとスプリッタブレードとの間に流出口22bが位置していてもよい。スプリッタブレードは、フルブレードよりも短いブレードである。複数のフルブレード及び複数のスプリッタブレードは、回転軸25の周方向に沿ってハブ26hの表面に交互に配置されうる。
【0051】
本開示の圧縮機3の構造は、多段圧縮機の各圧縮段に適用可能である。各圧縮段において、所望の効果が得られる。例えば、圧縮機3が複数のインペラを含む多段圧縮機である場合、複数のインペラのそれぞれに第二流路22が設けられ、各段の冷媒流路に液相冷媒が供給されうる。
【0052】
図2に示す通り、回転体27は、例えば、嵌合部55を有する。嵌合部55は、回転体27の軸方向において第三流路23に接している。加えて、嵌合部55において、回転軸25とインペラ26とが締り嵌めされている。この場合、嵌合部55により、第三流路23に導かれた液相冷媒が漏れにくい。
【0053】
図2に示す通り、圧縮機3は、例えば、シール部材28をさらに備えている。シール部材28は、第三流路23に接して配置されており、回転軸25とインペラ26との間の隙間をシールする。第三流路23は、例えば、嵌合部55とシール部材28との間に設けられている。このような構成によれば、嵌合部55及びシール部材28により、第三流路23に導かれた液相冷媒が漏れにくい。加えて、回転軸25とインペラ26とを締り嵌めするときに、インペラ26が回転軸25に対して傾くことを抑制しやすい。なぜなら、シール部材28によってシールされる隙間をなす回転軸25とインペラ26との位置関係が回転軸25とインペラ26との締り嵌めによって定まる回転軸25とインペラ26との位置関係に合わせて調整されるからである。なお、回転体27は、回転体27の軸方向における第三流路23の両端に嵌合部55を有していてもよい。
【0054】
シール部材28は、回転軸25とインペラ26との間の隙間をシールする限り特定のシール部材に限定されない。シール部材28は、例えば、弾性変形により回転軸25とインペラ26との間の隙間をシールする。この場合、回転軸25とインペラ26とを締り嵌めするときに、インペラ26が回転軸25に対して傾くことをより確実に抑制しやすい。なぜなら、シール部材28によってシールされる隙間をなす回転軸25とインペラ26との位置関係は、シール部材28の弾性変形により、締り嵌めによって定まる回転軸25とインペラ26との位置関係に合わせて調整されるからである。
【0055】
シール部材28は、例えば、Oリング等のリング状の部材であってもよい。この場合、回転体27には、シール部材28を収容するための環状溝が形成されうる。
【0056】
図2に示す通り、インペラ26は、回転体27の軸方向に延びている内面50を有する。内面50は、孔をなしており、その孔には回転軸25が配置されている。内面50は、第一部位51と、第二部位52と、第三部位53とを有する。第一部位51は、嵌合部55をなす。第二部位52は、第一部位51に接しており、回転体27の軸線に垂直な方向における弾性変形前のシール部材28の最大寸法より大きいの孔径を有する。第三部位53は、シール部材28と第二部位52との間に位置している。加えて、第三部位53は、回転体27の軸線に垂直な方向における弾性変形前のシール部材28の最大寸法以下の孔径を有する。
【0057】
図3は、回転体27を作製する工程の一例を示す。図2に示す通り、回転体27の軸方向における第一部位51の長さL1と第二部位52の長さL2との和(L1+L2)は、回転体27の軸方向における第二部位52の長さL2と第三部位53の長さL3との和(L2+L3)よりも長い。このような構成によれば、回転軸25とインペラ26との締まり嵌めのために、回転軸25とインペラ26とを相対的に移動させたときに、第一部位51に回転軸25が接触した後に、シール部材28が第三部位53に接触する。その後、回転軸25において嵌合部55をなす部位の全体が第一部位51に接触する。このため、最初に、第一部位51と回転軸25との接触により、回転軸25とインペラ26との位置決めがなされる。その結果、インペラ26が回転軸25に対して傾くことをより確実に抑制しやすい。また、回転軸25及びインペラ26の軸方向の位置関係を所望の位置関係に調整しやすい。回転軸25とインペラ26との締まり嵌めは、例えば、焼き嵌めにより実現されうる。
【0058】
圧縮機3を用いて、例えば、冷凍サイクル装置を提供できる。図4は、冷凍サイクル装置の一例の構成を示す。冷凍サイクル装置100は、蒸発器2と、圧縮機3と、凝縮器4とを備えている。圧縮機3は、例えば、吸入配管6によって蒸発器2に接続され、吐出配管8によって凝縮器4に接続されている。例えば、蒸発器2の出口と圧縮機3の吸入口とに吸入配管6が接続されている。また、圧縮機3の吐出口と凝縮器4の入口とに吐出配管8が接続されている。凝縮器4は、例えば、戻し経路9によって蒸発器2に接続されている。蒸発器2、圧縮機3、及び凝縮器4がこの順番で環状に接続されて冷媒回路10が形成されている。
【0059】
蒸発器2において冷媒が蒸発し、気相冷媒が生成される。蒸発器2で生成された気相冷媒は、吸入配管6を通じて、圧縮機3に吸入されて圧縮される。圧縮された気相冷媒は、吐出配管8を通じて、凝縮器4に供給される。凝縮器4において気相冷媒が冷却されて液相冷媒が生成される。液相冷媒は、戻し経路9を通じて、凝縮器4から蒸発器2に送られる。
【0060】
冷凍サイクル装置100の冷媒として、フロン系冷媒、低GWP(Global Warming Potential)冷媒、及び自然冷媒を用いることができる。フロン系冷媒としては、HCFC(hydrochlorofluorocarbon)、HFC(hydrofluorocarbon)などが挙げられる。低GWP冷媒としては、HFO-1234yfなどが挙げられる。自然冷媒としては、CO2、水などが挙げられる。
【0061】
冷凍サイクル装置100には、例えば、常温(日本工業規格:20℃±15℃/JIS Z8703)での飽和蒸気圧が負圧(絶対圧で大気圧よりも低い圧力)の物質を主成分として含む冷媒が充填されている。このような冷媒としては、水を主成分として含む冷媒が挙げられる。「主成分」とは、質量比で最も多く含まれた成分を意味する。
【0062】
冷媒として水を用いた場合、冷凍サイクルにおける圧力比が拡大し、冷媒の過熱度が過大になりがちである。冷凍サイクル装置100では、圧縮機3の内部の冷媒流路40に向かって液相冷媒が噴射され、圧縮過程での冷媒の過熱度の増加に起因する冷媒のエンタルピーの増加が連続的に抑制される。これにより、冷媒の圧力を所定圧力まで上昇させるために圧縮機3がなすべき仕事を大幅に低減できる。つまり、圧縮機3の消費電力を大幅に節約できる。
【0063】
冷凍サイクル装置100は、例えば、さらに、吸熱回路12及び放熱回路14を備えている。
【0064】
吸熱回路12は、蒸発器2で冷却された液相冷媒を使用するための回路であり、ポンプ、室内熱交換器などの必要な機器を有している。吸熱回路12の一部は蒸発器2の内部に位置している。蒸発器2の内部において、吸熱回路12の一部は、液相冷媒の液面よりも上に位置していてもよいし、液相冷媒の液面よりも下に位置していてもよい。吸熱回路12には、水、ブラインなどの熱媒体が充填されている。
【0065】
蒸発器2に貯留された液相冷媒は、吸熱回路12を構成する配管等の部材に接触する。これにより、液相冷媒と吸熱回路12の内部の熱媒体との間で熱交換が行われ、液相冷媒が蒸発する。吸熱回路12の内部の熱媒体は、液相冷媒の蒸発潜熱によって冷却される。例えば、冷凍サイクル装置100が室内の冷房を行う空気調和装置である場合、吸熱回路12の熱媒体によって室内の空気が冷却される。室内熱交換器は、例えば、フィンチューブ熱交換器である。
【0066】
放熱回路14は、凝縮器4の内部の冷媒から熱を奪うために使用される回路であり、ポンプ、冷却塔などの必要な機器を有している。放熱回路14の一部は凝縮器4の内部に位置している。詳細には、凝縮器4の内部において、放熱回路14の一部は、液相冷媒の液面よりも上に位置している。放熱回路14には、水、ブラインなどの熱媒体が充填されている。冷凍サイクル装置100が室内の冷房を行う空気調和装置である場合、凝縮器4は室外に配置され、放熱回路14の熱媒体によって凝縮器4の冷媒が冷却される。
【0067】
圧縮機3から吐出された高温の気相冷媒は、凝縮器4の内部において、放熱回路14を構成する配管等の部材に接触する。これにより、気相冷媒と放熱回路14の内部の熱媒体との間で熱交換が行われ、気相冷媒が凝縮する。放熱回路14の内部の熱媒体は、気相冷媒の凝縮潜熱によって加熱される。気相冷媒によって加熱された熱媒体は、例えば、放熱回路14の冷却塔(図示せず)において外気又は冷却水によって冷却される。
【0068】
蒸発器2は、例えば、断熱性及び耐圧性を有する容器によって構成されている。蒸発器2は、液相冷媒を貯留するとともに、液相冷媒を内部で蒸発させる。蒸発器2の内部の液相冷媒は、蒸発器2の外部からもたらされた熱を吸収し、蒸発する。すなわち、吸熱回路12から熱を吸収することによって加熱された液相冷媒が蒸発器2の中で蒸発する。本実施形態において、蒸発器2に貯留された液相冷媒は、吸熱回路12を循環する熱媒体と間接的に接触する。つまり、蒸発器2に貯留された液相冷媒の一部は、吸熱回路12の熱媒体によって加熱され、飽和状態の液相冷媒を加熱するために使用される。蒸発器2に貯留された液相冷媒の温度、及び、蒸発器2で生成された気相冷媒の温度は、例えば5℃である。
【0069】
本実施形態において、蒸発器2は、シェルチューブ熱交換器等の間接接触型の熱交換器である。ただし、蒸発器2は、噴霧式又は充填材式の熱交換器のような直接接触型の熱交換器であってもよい。つまり、吸熱回路12に液相冷媒を循環させることによって、液相冷媒を加熱してもよい。さらに、吸熱回路12が省略されていてもよい。
【0070】
圧縮機3は、蒸発器2で生成された気相冷媒を吸入して圧縮する。
【0071】
凝縮器4は、例えば、断熱性及び耐圧性を有する容器によって構成されている。凝縮器4は、圧縮機3で圧縮された気相冷媒を凝縮させるとともに、気相冷媒を凝縮させることによって生じた液相冷媒を貯留する。本実施形態では、外部環境に熱を放出することによって冷却された熱媒体に気相冷媒が間接的に接触して凝縮する。つまり、気相冷媒は、放熱回路14の熱媒体によって冷却され、凝縮する。凝縮器4に導入される気相冷媒の温度は、例えば、100~150℃の範囲にある。凝縮器4に貯留された液相冷媒の温度は、
例えば35℃である。
【0072】
凝縮器4は、シェルチューブ熱交換器等の間接接触型の熱交換器である。ただし、凝縮器4は、噴霧式又は充填材式の熱交換器のような直接接触型の熱交換器であってもよい。つまり、放熱回路14に液相冷媒を循環させることによって、液相冷媒を冷却してもよい。さらに、放熱回路14が省略されていてもよい。
【0073】
吸入配管6は、蒸発器2から圧縮機3に気相冷媒を導くための流路である。吸入配管6を介して、蒸発器2の出口が圧縮機3の吸入口に接続されている。
【0074】
吐出配管8は、圧縮機3から凝縮器4に圧縮された気相冷媒を導くための流路である。吐出配管8を介して、圧縮機3の吐出口が凝縮器4の入口に接続されている。
【0075】
戻し経路9は、凝縮器4から蒸発器2に液相冷媒を導くための流路である。戻し経路9によって、蒸発器2と凝縮器4とが接続されている。戻し経路9にポンプ、流量調整弁などが配置されていてもよい。戻し経路9は、少なくとも1つの配管によって構成されうる。
【0076】
図1に示す通り、冷凍サイクル装置は、例えば、冷媒供給路11をさらに備えている。冷媒供給路11は、例えば、蒸発器2に貯留された液相冷媒を圧縮機3に導く。冷媒供給路11は、凝縮器4に貯留された液相冷媒を圧縮機3に導くように構成されていてもよい。このような構成によれば、第一流路21に液相冷媒を確実に供給できる。図1に示す通り、冷媒供給路11は、例えば、接続口29に接続されている。冷媒供給路11は、少なくとも1つの配管によって構成されうる。冷媒供給路11が蒸発器2に貯留された液相冷媒を圧縮機3に導く場合、冷媒供給路11の入口は、例えば、蒸発器2において、蒸発器2に貯留された液相冷媒の液面よりも下に位置している。冷媒供給路11が凝縮器4に貯留された液相冷媒を圧縮機3に導く場合、冷媒供給路11の入口は、例えば、凝縮器4において、凝縮器4に貯留された液相冷媒の液面よりも下に位置している。
【0077】
冷媒供給路11には、必要に応じて、弁及びポンプの少なくとも1つが配置されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本開示に係る圧縮機を備えた冷凍サイクル装置は、空気調和装置、チラー、及び蓄熱装置に有用であり、家庭用及び業務用の空気調和装置に特に有用である。
【符号の説明】
【0079】
2 蒸発器
3 圧縮機
4 凝縮器
21 第一流路
22 第二流路
23 第三流路
25 回転軸
26 インペラ
27 回転体
28 シール部材
40 冷媒流路
50 内面
51 第一部位
52 第二部位
53 第三部位
55 嵌合部
100 冷凍サイクル装置
図1
図2
図3
図4
図5