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  • 特開-サンプル水の採水方法及び採水装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107104
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】サンプル水の採水方法及び採水装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20220713BHJP
【FI】
G01N1/10 E
G01N1/10 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001805
(22)【出願日】2021-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹治 輝
(72)【発明者】
【氏名】野村 有宏
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA06
2G052AC27
2G052AD06
2G052AD22
2G052AD46
2G052BA17
2G052EB13
2G052FC07
2G052FC15
2G052GA09
2G052GA29
2G052JA11
(57)【要約】
【課題】蒸気発生装置において、発生する蒸気の清浄度を評価するためのサンプル水を採水する際、サンプル水の汚染を生じることなく、正確な水質を測定することができるサンプル水の採水方法及び採水装置を提供する。
【解決手段】蒸気発生装置50から発生する蒸気を、蒸気導入流路11から冷却器12内に取り込み、冷却により凝縮させて、検査用のサンプル水を採水するサンプル水の採水方法であって、サンプル水の採水速度が、10~200mL/分であり、サンプル水を、冷却器12と採水容器13とを、サンプル水が外部雰囲気に接触しないように接続するサンプル水供給流路14を経由して、採水容器13内に滴下させて採水するサンプル水の採水方法及び採水装置10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生装置から発生した蒸気を冷却器により凝縮させて、検査用のサンプル水を採水するサンプル水の採水方法であって、
前記サンプル水の採水速度が、10~200mL/分であり、
前記サンプル水を、外部雰囲気に接触させないように、採水容器内に滴下させて採水することを特徴とするサンプル水の採水方法。
【請求項2】
前記蒸気発生装置に供給する水が、精製水又は注射用水であることを特徴とする請求項1に記載のサンプル水の採水方法。
【請求項3】
前記サンプル水の採水の前に、前記冷却器による冷却を停止状態とし、
前記蒸気を、前記冷却器から前記採水容器まで供給して、採水経路を滅菌することを特徴とする請求項1又は2に記載のサンプル水の採水方法。
【請求項4】
前記サンプル水1000mL中の生菌数が10CFU未満であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のサンプル水の採水方法。
【請求項5】
蒸気発生装置から発生した蒸気を取り込む、蒸気導入流路と、
前記蒸気導入流路から導入された前記蒸気を凝縮してサンプル水とする冷却器と、
前記サンプル水を収容する採水容器と、
前記冷却器と前記採水容器とを、前記サンプル水が外部雰囲気に接触しないように接続するサンプル水供給流路と、
を有し、
前記蒸気導入流路は、その内径が1~10mmであることを特徴とするサンプル水の採水装置。
【請求項6】
前記採水容器が、気体排出流路を有し、
前記サンプル水供給流路及び前記気体排出流路が、それぞれ二方弁を有することを特徴とする請求項5に記載のサンプル水の採水装置。
【請求項7】
前記気体排出流路の長さが120~150cmであることを特徴とする請求項5又は6に記載のサンプル水の採水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気発生装置から発生する蒸気に対して、その検査用のサンプル水を採水する採水方法及び採水装置に係り、特に、精製水や注射用水等の純度の高い水を気化した蒸気の水質を測定するためのサンプル水の採水方法及び採水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療や食品製造のような分野において、使用する医療器具や機材、薬剤、試薬、原材料等には、大気中に浮遊する微生物や微粒子等が付着、混入し、汚染される場合があり、その場合、求める清浄性が保持できず、そのまま使用することができないという問題が生じる。
【0003】
そのため、これらの器具等は、清浄性を確保する必要があり、必要に応じて適切な滅菌処理が行われる。このような分野における滅菌処理としては、高温高圧の飽和水蒸気による滅菌(高圧蒸気滅菌)処理が、よく行われている方法であり、この滅菌処理は最も普遍的かつ用途の広い方法の一つである。
【0004】
このような高圧蒸気滅菌を行うために、清浄度の高い蒸気(ピュアスチーム)を生成するための蒸気発生装置も種々検討され、改良が行われている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-124692号公報
【特許文献2】特開2014-185904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、これらの蒸気発生装置において、その発生した蒸気の質(清浄度)を確認することはあまり行われていない。しかし、最近、発生した蒸気の清浄度を確認することが必要になる場合が増えつつある。このような蒸気の質(清浄度)を確認するためには、例えば、発生した蒸気を一旦冷却して凝縮、液化させて凝縮水とし、得られた凝縮水の水質を測定することで、その蒸気の清浄度を評価することが考えられる。
【0007】
しかしながら、このような蒸気発生装置から得られる蒸気を液化して得られる凝縮水の量は、冷却器の大きさ、能力に依存し、一般にこの種の用途では、その量はかなり少ない。そのため、凝縮水は連続的に得られずに、採水容器内に、一滴一滴、滴下させながら得られ、水質検査に使用するための凝縮水(サンプル水)として十分な量を得るためには、例えば、30分以上の時間をかけて得る必要がある。
【0008】
このとき、凝縮水の採水を開放系で行い、大気と接触させた状態で行ってしまうと、その採水時間が上記のように長く必要であることから、大気中に存在する微生物や微粒子等が、凝縮水中に混入してしまうおそれがある。
【0009】
このような微生物や微粒子等の混入は、その蒸気の使用用途によっては、その清浄度等が問題にならない場合もあるが、上記したような、清浄度の高い蒸気(ピュアスチーム)のように、蒸気発生装置に供給される供給水が精製水や注射用水のような場合、そのまま評価できなくなる問題がある。
【0010】
すなわち、精製水や注射用水から生成される蒸気(ピュアスチーム)は不純物の含有量が極めて少なく、清浄度が高いため、その特性評価において、凝縮、液化の操作中での微生物や微粒子の混入は、その特性評価を誤らせる原因の一つとなってしまう。
【0011】
そこで、本発明は、蒸気発生装置において、発生する蒸気の清浄度を評価するためのサンプル水を採水する際、サンプル水の汚染を生じることなく、正確な水質を測定することができるサンプル水の採水方法及び採水装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のサンプル水の採水方法は、蒸気発生装置から発生する蒸気を冷却により凝縮させて、検査用のサンプル水を採水するサンプル水の採水方法であって、前記サンプル水の採水速度が、10~200mL/分であり、前記サンプル水を、外部雰囲気に接触させないように、採水容器内に滴下させて採水することを特徴とする。
【0013】
本発明のサンプル水の採水装置は、蒸気発生装置から発生した蒸気を取り込む、蒸気導入流路と、前記蒸気導入流路から導入された前記蒸気を凝縮してサンプル水とする冷却器と、前記サンプル水を収容する採水容器と、前記冷却器と前記採水容器とを、前記サンプル水が外部雰囲気に接触しないように接続するサンプル水供給流路と、を有し、前記蒸気導入流路は、その内径が1~20mmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のサンプル水の採水方法及び採水装置によれば、サンプル水を汚染されることなく採水でき、蒸気の特性評価を正確に行うことができる。
【0015】
また、本発明のサンプル水の採水方法及び採水装置によれば、サンプル水を採水する前には、生成した蒸気をそのまま採水装置の滅菌処理に用いることができ、採水装置側に起因する汚染を生じさせることなく、蒸気をサンプル水へと変換できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るサンプル水の採水装置の概略構成を示した図である。
図2図1のサンプル水の採水装置を用いた、サンプル水の採水方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係るサンプル水の採水方法及び採水装置について、図1及び図2を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
[サンプル水の採水装置]
図1に示したように、本実施形態のサンプル水の採水装置10は、蒸気発生装置50から発生した蒸気を取り込む、蒸気導入流路11と、蒸気導入流路11から導入された蒸気を凝縮してサンプル水とする冷却器12と、サンプル水を収容する採水容器13と、冷却器12と採水容器13とを、サンプル水が外部雰囲気に接触しないように接続するサンプル水供給流路14と、を有して構成される。
【0019】
蒸気導入流路11は、蒸気発生装置50から発生した蒸気を冷却器12内へ導入するための流路である。この蒸気導入流路11は、発生した蒸気をそのまま冷却器12内へ導入できればよく、加熱蒸気の温度に耐性を有する耐熱性の材料で構成されていれば、特に限定されるものではない。この蒸気導入流路11は、通常、蒸気発生装置50から発生した蒸気を使用場所へ移送する配管に替えて、又は、その配管から分岐させて、装置内に導入するようにすればよい。
【0020】
蒸気導入流路11を構成する耐熱性の材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フッ素系樹脂、ナイロン、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の耐熱性樹脂、ステンレス、チタン等の金属、硼珪酸ガラス、合成石英等の耐熱ガラス等が挙げられる。なお、この蒸気導入流路11においては、加熱蒸気を蒸気としてそのまま冷却器12へ移送できるように、この流路が接触している外気により温度低下の影響を受けにくい材料であることが好ましく、なかでもフッ素系樹脂がより好ましい。
また、この蒸気導入流路11等は、蒸気の凝縮を防ぐため、必要に応じ、その周囲にリボンヒーター等のヒーターを設け、加温できるようにしてもよい。
【0021】
なお、この蒸気導入流路11は、その内径が20mm以下であることが好ましく、1~10mmであることがより好ましい。
【0022】
このように内径の比較的小さい装置においては、得られるサンプル水の採水速度も小さくなる。そのため、採水時間が長くなるが、本実施形態では、後述するようにサンプル水の汚染防止を効果的に発揮できるものとなる。
【0023】
冷却器12は、蒸気導入流路11から導入された蒸気を冷却により、凝縮、液化させてサンプル水とするものであり、このような作用を有する公知の冷却器であれば、特に限定されることなく使用できる。この冷却器12としては、例えば、水冷式や空冷式等の冷却器を使用でき、水冷式であることが好ましい。
【0024】
図1には、水冷式の冷却器の例を示したが、この冷却器12は、冷却流路12aを有する。この冷却流路12aは、冷却器12に接続された蒸気導入流路11と後述するサンプル水供給流路14の間に介在し、それらの流路を繋ぐものである。
【0025】
また、冷却管12は、その冷却流路12aの外周に、冷却水を流通させることができるように、冷却水流路が形成された二重管構造となっている。冷却器12には、ここで用いられる冷却水を冷却水流路に導入する冷却水入口12bと、冷却水を排出する冷却水出口12cが設けられている。
【0026】
採水容器13は、冷却器12で凝縮、液化したサンプル水を収容するための容器である。この採水容器13は、サンプル水を安定して収容できるものであれば特に限定されるものではない。採水容器の容量としては、必要以上に大きいと、採水に時間がかかるか、分析に必要な量を採水しても、瓶が満水にならないので、採水後にガス排出流路からの外部雰囲気の混入の恐れがある。したがって、具体的には、30~2000mLの容量が好ましく、50~1000mLがより好ましい。
【0027】
なお、得られたサンプル水を外部雰囲気と接触させないようにするために、密閉可能な容器であることが好ましく、後述するサンプル水供給流路14の他に、サンプル水が供給される際に、採水容器13内の気体が排出できるように、ガス排出流路15を設けることが好ましい。このガス排出流路15は、採水容器13内に外部雰囲気が入り込まないように、50cm以上の長さとすることが好ましく、120~150cmがより好ましい。
【0028】
サンプル水供給流路14は、冷却器12と採水容器13とを、サンプル水が外部雰囲気に接触しないように接続するものである。このサンプル水供給流路14により、冷却器12で得られるサンプル水を、外部雰囲気に曝すことなく採水容器13内へ供給することができる。
【0029】
このサンプル水供給流路14は、冷却器12と採水容器13とを直接繋ぐ流路を形成でき、凝縮して得られたサンプル水を、外部雰囲気と接触させることなく、安定して流通できるものであればよい。このようなサンプル水供給流路14は、公知の配管を特に限定されずに使用でき、例えば、樹脂製、金属製、ガラス製等の材料で形成されたものが挙げられる。長さは作業のしやすい長さが好ましく、具体的には3~4m程度が好ましい。形状としては、直管でもよいし、自由に曲げられるチューブであってもよい。
【0030】
なお、本実施形態において用いられる蒸気発生装置50は、水を気化して水蒸気とする公知の蒸気発生装置であればどのようなものでもよいが、蒸気とするために供給する水が、精製水、注射用水等の清浄化処理を行った純度の高い水であり、清浄度の高い蒸気(ピュアスチーム)を生成できるものが好ましい。
【0031】
このような純度の高い水を用いる場合、本実施形態の採水装置によれば、外部雰囲気中の微生物や微粒子等により汚染されるおそれを非常に小さくでき、蒸気発生装置50で生成した蒸気の質(清浄度)を正確に評価することが可能である。
【0032】
また、サンプル水供給流路13と気体排出流路15には、その流路のサンプル水又は気体の流通を制御する二方弁等のバルブを設けることが好ましい。このようなバルブを設けることにより、サンプル水を採水するときにはバルブを共に開き、サンプル水を採水した後にはバルブを共に閉めることで、サンプル水を、外部雰囲気(例えば、大気等)と接触させることなく、かつ、簡易な操作で採水できる。
【0033】
なお、本明細書において、精製水は、常水を蒸留、イオン交換、逆浸透、限外ろ過又はそれらの組み合わせにより精製したものを意味し、注射用水は精製水を滅菌し、発熱性物質(エンドトキシン)試験に適合したものを意味する。これら精製水及び注射用水は、例えば、日本薬局方で定義されたものを例示できる。
【0034】
精製水や注射用水を精製するより具体的な方法としては、例えば、水道水等を原水とし、これを逆浸透膜(RO)、イオン交換樹脂塔や電気式脱イオン装置(EDI)等のイオン交換装置、限外ろ過膜(UF)等の水処理装置を適宜組み合わせて通水させる、公知の精製処理により製造されたものを例示できる。
【0035】
[サンプル水の採水方法]
次に、本実施形態におけるサンプル水の採水方法について説明する。この採水方法では、図1に示したサンプル水の採水装置10を用いる場合を例に、図1を参照しながら説明する。
【0036】
本実施形態のサンプル水の採水方法は、蒸気発生装置50から発生した蒸気を冷却器12の内部で冷却して凝縮させて、検査用のサンプル水を採水するサンプル水の採水方法であって、このとき、サンプル水の採水速度が、10~200mL/分であり、サンプル水を、外部雰囲気に接触させないように、採水容器13内に滴下させて採水する。以下、各操作について詳細に説明する。
【0037】
まず、本実施形態のサンプル水の採水方法では、蒸気発生装置50から発生した蒸気を冷却器12の内部に導入するが、この導入は、蒸気発生装置50と冷却器12とを接続する蒸気導入流路11により行われる。この蒸気導入流路11により、蒸気発生装置50で発生した蒸気は、そのまま冷却器12の内部に導入される。
【0038】
なお、ここで用いる蒸気は、精製水や注射用水を気化したものであればよく、110℃以上に加熱された蒸気が好ましく、滅菌処理に用いられるもの(例えば、その温度が110~140℃で必要に応じて加圧された飽和水蒸気)であることがより好ましい。この滅菌用の蒸気としては、典型的には、133℃、0.2MPaの飽和水蒸気が挙げられる。温度が高くなるほど、滅菌処理に要する時間を短くすることができる。
【0039】
冷却器12の内部に導入された蒸気は、冷却器12により冷却されることで、凝縮、液化してサンプル水となる。この冷却は、冷却器12に冷却水を流通させた状態で、蒸気導入流路11と接続された冷却管12a内に蒸気を導入することで行う。導入された蒸気は、冷却管12a内で冷却され、凝縮、液化し、その液化により得られたサンプル水を冷却管12aに接続されたサンプル水供給管14へと流通させる。
【0040】
この冷却では、冷却水を冷却水入口12bから冷却水流路に導入し、冷却器12の冷却流路12aの周囲は冷却水で満たされる。そして、冷却流路12aの内部を流通する蒸気は、この冷却流路12a内で冷却され、凝縮、液化する。それに伴い、熱交換により冷却水の温度は上昇するが、冷却水入口12bから冷却水が常時供給され、温められた冷却水は冷却水出口12bから排出され、冷却流路12aで蒸気を効率的に凝縮、液化できるようになっている。
【0041】
液化、凝縮により得られたサンプル水は、上記のようにサンプル水供給管14を流通して、採水容器13内へ収容される。このとき、サンプル水供給管14は、冷却管12aから採水容器13までの間を、サンプル水が外部雰囲気と接触しないように接続しており、サンプル水が外部雰囲気中の微生物や微粒子等により汚染されるおそれがない。
【0042】
なお、上記したように蒸気発生装置50から供給される蒸気の発生量が、50~360kg/h程度、サンプル水の採水速度が10~200mL/分のような場合、サンプル水供給管14から採水容器13内に供給されるサンプル水は少量であり、滴(しずく)として滴下させながら得られる。
【0043】
採水容器13には、ガス排出流路15が設けられているが、サンプル水供給流路14から供給されるサンプル水量に応じて、採水容器13内の気体がガス排出流路15を経由して外部雰囲気に排出される。そのため採水容器13内の圧力が上昇し続けていくことはない。
【0044】
なお、このサンプル水の採水方法において、常に蒸気発生装置50側から蒸気が供給されるため、採水容器13内に外部雰囲気が混入するおそれは少ないが、蒸気の液化による体積減少により、外部雰囲気を引き込む可能性がないわけではない。しかし、本実施形態では、ガス排出流路15を設けているため、そのような場合でも、採水容器13内にまで外部雰囲気が入り込むことを防止できる。
【0045】
このような効果、作用を確実に行うために、ガス排出流路15の長さを50cm以上とすることが好ましく、120~150cmとすることがより好ましい。また、この影響を防ぐため採水容器には、採水容器の容量に対して80~90%採水することが好ましい。
【0046】
本実施形態においては、例えば、サンプル水1Lを採水する場合、30~90分程度の時間がかかることが想定されるが、得られるサンプル水が外部雰囲気と接触するおそれがないため、外部からの汚染がなく、蒸気の質(清浄度)を評価するサンプル水を採水する方法として好適なものである。
【0047】
採水操作が終わった後は、採水容器13において、サンプル水供給流路14及びガス排出流路15を固定している蓋を、採水容器13を密閉可能な蓋と交換すればよい。なお、この蓋の交換の際に、サンプル水が外部雰囲気と接触する可能性はあるが、短時間で、接触する量も少ないため、サンプル水の水質に影響するものではなく問題ない。
【0048】
また、サンプル水供給流路14及びガス排出流路15のそれぞれに二方弁(バルブ)を取り付けておき、サンプル水の採水操作時には共に流通可能(バルブを開)にしておき、採水操作の終了時に共に流通を停止(バルブを閉)とすることで、蓋の交換をすることなく、採水容器13を密閉状態とすることもできる。この場合、さらにサンプル水が外部雰囲気と接触しないようにでき、確実に汚染を防止することができる。
【0049】
上記説明したように、本実施形態においては、清浄度の高い蒸気に対し汚染を抑制しつつ検査用のサンプル水を得ることができるが、このサンプル水としては、微生物が含まれていないことが好ましく。このようなサンプル水としては、例えば、サンプル水1000mL中の生菌数が10CFU未満であることが好ましく、1CFU未満であることがより好ましい。
【0050】
また、サンプル水の採水方法の前に、蒸気発生装置50から生成した蒸気を用いて、サンプル水の採水装置内の滅菌処理を行ってもよい。
この場合、サンプル水の採水の前に、蒸気発生装置50とサンプル水の採水装置10とを接続し、冷却器12による冷却を停止状態としておく。すなわち、冷却器12への冷却水の供給を停止しておく。
【0051】
この状態で、蒸気発生装置50から蒸気を、蒸気導入流路11、冷却管12a、サンプル水供給流路14を経由して採水ボトル15内にまで供給する。さらに、採水ボトル15内から、蒸気をガス排出流路15から外部雰囲気中に放出するようにする。このような操作を、サンプル水を採水する前に行っておくことで、採水装置内の滅菌処理を行うことができる。
【0052】
この滅菌処理は、特に、他の装置、手段を設けることなく、蒸気発生手段50の蒸気をそのまま滅菌処理に使用でき、簡易な装置構成で、かつ、簡便な操作により、確実に採水装置の滅菌処理を行うことができ好ましい。また、この滅菌処理により、外部要因の汚染を排除できる点でより好ましい採水方法である。
【0053】
この滅菌処理を行う場合、蒸気と接触する流路、採水容器等は、その蒸気の温度に耐性を有する耐熱材料で形成しておくことが必要である。また、この場合、蒸気として採水容器内まで滅菌できるように、蒸気が凝縮、液化しないような温度管理をすることが好ましい。
【0054】
なお、ガス排出流路15においては、一部液化しても特に問題とならない。また、採水容器内において、一部液化した場合、採水容器内全ての面において滅菌処理が行われるようにする。例えば、液化した凝縮水が同一部分に溜まらないようにしたり、液化した凝縮水を排出する排出機構(ドレーン)を設けたりして、採水容器内の全ての面が蒸気と接触するような構成、操作を行う。
【0055】
この滅菌処理を行った後は、冷却器12の冷却水入口12bから冷却水を供給し、冷却水出口12cから冷却水を排出するようにして、上記で説明した、検査用のサンプル水を採水する操作を行う。
【実施例0056】
以下、本発明について、さらに実施例により説明する。
【0057】
(実施例1)
本実施例で用いるサンプル水の採水装置として、図1に記載したサンプル水の採水装置10を用意した。
【0058】
なお、ここで用いるサンプル水の採水装置を構成する装置及び部品は、具体的には以下の通りである。
・蒸気導入流路11:パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)製、内径8mm、長さ300cm
・冷却器12:ステンレス製(野村マイクロ・サイエンス株式会社製、商品名:ミニコンデンサCX-5)
・採水容器13:耐熱ガラス製、容量1000mL
・サンプル水供給流路14:PFA製、内径4mm、長さ300cm
・ガス排出流路15:PFA製、内径4mm、長さ150cm
【0059】
また、蒸気発生装置50としては、滅菌用ピュア蒸気発生装置 NK-120(野村マイクロ・サイエンス株式会社製、商品名)を用いた。この蒸気発生装置50の蒸気発生量は50kg/hである。
【0060】
このサンプル水の採水装置10を用い、蒸気発生装置50から冷却器12内に蒸気を導入し、冷却器12内で蒸気を凝縮、液化させてサンプル水とし、これを採水容器13内に滴下して、1000mLのサンプル水を20分かけて採水した(採水速度50mL/分)。このとき、冷却器12に供給する冷却水としては、13℃の水道水を用いた。
【0061】
(比較例1)
実施例1で用いたサンプル水の採水装置10と基本構成は同一であるが、採水容器13とサンプル水供給流路14とを接続せずに、採水容器13が大気に対して開放された状態でサンプル水を採水するような装置構成とした。
【0062】
サンプル水の採水操作は、実施例1と同様にして行い、1000mLのサンプル水を20分かけて採水した。
【0063】
実施例1及び比較例1のそれぞれにおいて、同じ操作を4回行い、得られたサンプル水に対し、以下のように、生菌数と微粒子数とを測定して、その結果を表1及び表2にそれぞれ示した。
【0064】
[生菌数]
得られたサンプル水の生菌数を、メンブランフィルター法により、R2Aカンテン培地で、30℃、7日間培養し、サンプル水1000mL当たりの生菌数(CFU)として求めた。
【0065】
[微粒子水]
得られたサンプル水中の不溶性微粒子数を、パーティクルカウンター(リオン株式会社製、商品名:KL-04A)で測定した。微粒子数は、その粒子径が10μm以上の場合と25μm以上の場合のそれぞれについて測定し、サンプル水1mLあたりの個数で示した。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
以上より、本実施形態のサンプル水の採水方法及び採水装置によれば、蒸気をサンプル水として採水する際、外部雰囲気中に含有される浮遊菌や浮遊微粒子が混入し、汚染されるようなことがなく、評価対象の蒸気の質(清浄度)を、正確に、かつ、簡便な操作により行うことができる。
【符号の説明】
【0069】
10…サンプル水の採水装置、11…蒸気導入流路、12…冷却器、13…採水容器、14…サンプル水供給流路、15…ガス排出流路
図1
図2