(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107112
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】光送信器及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/01 20060101AFI20220713BHJP
H04B 10/516 20130101ALI20220713BHJP
H04B 10/077 20130101ALI20220713BHJP
【FI】
G02F1/01 B
H04B10/516
H04B10/077 190
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001828
(22)【出願日】2021-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】武馬 和哉
【テーマコード(参考)】
2K102
5K102
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102BA02
2K102BA03
2K102BA14
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA00
2K102DA04
2K102DB04
2K102DB05
2K102EA02
2K102EA17
2K102EA26
2K102EB22
5K102AA51
5K102AH02
5K102MA01
5K102MB04
5K102MB09
5K102MC11
5K102MD01
5K102MD03
5K102MH02
5K102MH13
5K102MH22
5K102PB01
5K102PH01
5K102PH31
5K102PH42
(57)【要約】
【課題】光変調部のゲインを安定させやすくすることができる光送信器及びその制御方法を提供する。
【解決手段】光送信器は、入力光を変調し、信号光を出力する光変調部と、前記光変調部に印加されるバイアス電圧を制御するバイアス制御部と、前記光変調部から出力された前記信号光を減衰させて出力する減衰部と、前記減衰部から出力された前記信号光に含まれる正転側信号光を検出する正転側モニタと、前記減衰部から出力された前記信号光に含まれる反転側信号光を検出する反転側モニタと、前記正転側モニタから出力される正転側信号の第1ディザと、前記反転側モニタから出力される反転側信号の第2ディザと、の和に基づいて前記バイアス制御部を制御する制御部と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力光を変調し、信号光を出力する光変調部と、
前記光変調部に印加されるバイアス電圧を制御するバイアス制御部と、
前記光変調部から出力された前記信号光を減衰させて出力する減衰部と、
前記減衰部から出力された前記信号光に含まれる正転側信号光を検出する正転側モニタと、
前記減衰部から出力された前記信号光に含まれる反転側信号光を検出する反転側モニタと、
前記正転側モニタから出力される正転側信号の第1ディザと、前記反転側モニタから出力される反転側信号の第2ディザと、の和に基づいて前記バイアス制御部を制御する制御部と、
を有することを特徴とする光送信器。
【請求項2】
前記減衰部は、
前記信号光を正転させ、かつ減衰させて出力する第1減衰器と、
前記信号光を反転させ、かつ減衰させて出力する第2減衰器と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の光送信器。
【請求項3】
光送信を停止する第1動作モードと、
光送信を実施する第2動作モードと、
を有し、
前記第1動作モードの期間と、前記第2動作モードの期間と、前記第1動作モードから前記第2動作モードへの遷移期間と、のいずれにおいても、前記制御部は、前記第1ディザと前記第2ディザとの和に基づいて前記バイアス制御部を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の光送信器。
【請求項4】
入力光を変調し、信号光を出力する光変調部と、
前記光変調部に印加されるバイアス電圧を制御するバイアス制御部と、
前記光変調部から出力された前記信号光を減衰させて出力する減衰部と、
を有する光送信器の制御方法であって、
前記光送信器は、更に、
前記減衰部から出力された前記信号光に含まれる正転側信号光を検出する正転側モニタと、
前記減衰部から出力された前記信号光に含まれる反転側信号光を検出する反転側モニタと、
を有し、
前記正転側モニタから出力される正転側信号の第1ディザと、前記反転側モニタから出力される反転側信号の第2ディザと、の和に基づいて前記バイアス制御部を制御する工程を有することを特徴とする光送信器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光送信器及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光トランシーバ等に用いられる光送信器は光変調器を含んでおり、光変調器に対する自動バイアス制御(auto bias control:ABC)が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-288509号公報
【特許文献2】特開2012-128165号公報
【特許文献3】米国特許第8041228号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の光送信器では、光変調器のゲインを安定させにくいことがある。
【0005】
本開示の目的は、光変調部のゲインを安定させやすくすることができる光送信器及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態によれば、入力光を変調し、信号光を出力する光変調部と、前記光変調部に印加されるバイアス電圧を制御するバイアス制御部と、前記光変調部から出力された前記信号光を減衰させて出力する減衰部と、前記減衰部から出力された前記信号光に含まれる正転側信号光を検出する正転側モニタと、前記減衰部から出力された前記信号光に含まれる反転側信号光を検出する反転側モニタと、前記正転側モニタから出力される正転側信号の第1ディザと、前記反転側モニタから出力される反転側信号の第2ディザと、の和に基づいて前記バイアス制御部を制御する制御部と、を有する光送信器が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、光変調部のゲインを安定させやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】参考例に係る光送信器を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る光送信器を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る光送信器の動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0010】
(参考例)
まず、参考例について説明する。
図1は、参考例に係る光送信器を示すブロック図である。
【0011】
図1に示すように、参考例に係る光送信器900は、光変調部910と、バイアス制御部920と、減衰部930と、同相モニタ941と、逆相モニタ942と、制御部950とを有する。
【0012】
光変調部910は、光源960から出力された連続(continuous wave:CW)光を入力光として変調し、信号光として出力する。バイアス制御部920は、制御部950による制御に基づいて、入力データ信号(電気信号)にバイアス電圧を加算して駆動信号を生成し、光変調部910を駆動する。減衰部930は、光変調部910から出力された信号光を減衰して出力する。同相モニタ941は、減衰部930から出力された正転側信号光のモニタを行って、モニタ値である電気の正転側信号を出力する。逆相モニタ942は、光変調部10から出力された反転側信号光のモニタを行って、モニタ値である電気の反転側信号を出力する。同相モニタ941及び逆相モニタ942は、例えばフォトダイオード(PD)である。
【0013】
光送信器900は、Tx_Disable及びTx_Enableの二つの動作モードを有する。Tx_Disableの動作モードでは、光源960がオフとされ、減衰部930が閉状態とされ、制御部950は逆相モニタ942からの出力信号に基づいてバイアス制御部920を制御する。また、Tx_Enableの動作モードでは、光源960がオンとされ、減衰部930が開状態とされ、制御部950は同相モニタ941からの出力信号に基づいてバイアス制御部920を制御する。
【0014】
このように、光送信器900では、Tx_Disable及びTx_Enableの二つの動作モードの間で、異なる出力信号に基づいて光変調部910のバイアス電圧が制御される。このため、ゲインを安定させにくいことがある。また、光送信器900では、逆相モニタ942によるバイアスずれが発生することがある。その場合、Tx_DisableからTx_Enableへと動作モードが遷移した時に、Tx_Enableの初期において、バイアス電圧が安定しにくく、安定するまでの待機時間が長くなることがある。
【0015】
本願発明者は、このような光送信器900の特性を考慮し、光変調器のゲインを安定させるべく鋭意検討を行った結果、下記の実施形態に想到した。
【0016】
(実施形態)
次に、実施形態に係る光送信器ついて説明する。
図2は、実施形態に係る光送信器を示すブロック図である。
【0017】
図2に示すように、実施形態に係る光送信器100は、光変調部10と、バイアス制御部20と、減衰部30と、正転側モニタ41と、反転側モニタ42と、制御部50とを有する。
【0018】
光変調部10は、光源60から出力されたCW光を入力光として変調し、信号光として出力する。光変調部10は、例えばマッハツェンダー(Mach-Zehnder:MZ)変調器を含む。光変調部10は、印加されるバイアス電圧を用いて動作する。光変調部10は、入力部から二分岐された一方の光導波路16Aに設けられた位相シフタ11Aと、他方の光導波路16Bに設けられた位相シフタ11Bとを有する。光変調部10は、更に、光導波路16Aから二分岐された一方の光導波路17Aに設けられた位相シフタ12A及び位相変調器13Aと、他方の光導波路17Bに設けられた位相シフタ12B及び位相変調器13Bとを有する。光変調部10は、更に、光導波路16Bから二分岐された一方の光導波路17Cに設けられた位相シフタ12C及び位相変調器13Cと、他方の光導波路17Dに設けられた位相シフタ12D及び位相変調器13Dとを有する。光導波路17Aと光導波路17Bとが光導波路18Aに結合され、光導波路17Cと光導波路17Dとが光導波路18Bに結合され、光導波路18Aと光導波路18Bとが一つの光導波路(出力部)に結合されている。
【0019】
バイアス制御部20は、制御部50による制御に基づいて、デジタルシグナルプロセッサ(digital signal processor:DSP)等から出力された入力データ信号(電気信号)にバイアス電圧を加算して駆動信号を生成し、光変調部10を駆動する。つまり、バイアス制御部20は、光変調部10に印加されるバイアス電圧を制御する。
【0020】
減衰部30は、光変調部10から出力された信号光を減衰して出力する。減衰部30は、正転側可変光減衰器(variable optical attenuator:VOA)31と、反転側VOA32とを含む。正転側VOA31は光変調部10から出力された信号光を正転させ、かつ減衰させて出力する。反転側VOA32は光変調部10から出力された信号光を反転させ、かつ減衰させて出力する。減衰部30から出力される信号光には、正転側信号光及び反転側信号光が含まれる。正転側信号光及び反転側信号光はディザを含む。正転側VOAは第1減衰器の一例であり、反転側VOA32は第2減衰器の一例である。
【0021】
正転側モニタ41は、減衰部30から出力された正転側信号光のモニタを行って、モニタ値である電気の正転側信号を出力する。反転側モニタ42は、減衰部30から出力された反転側信号光のモニタを行って、モニタ値である電気の反転側信号を出力する。正転側モニタ41及び反転側モニタ42は、例えばPDである。電気の正転側信号及び電気の反転側信号もディザを含む。
【0022】
制御部50は、正転側モニタ41から出力される正転側信号の第1ディザと、反転側モニタ42から出力される反転側信号の第2ディザとの和に基づいてバイアス制御部20を制御する。例えば、第1ディザと第2ディザとの和は、予め定められた範囲内にあり、好ましくは第1ディザと第2ディザとの和は実質的に一定である。制御部50は、例えばディザを重畳したバイアス電圧を生成するようにバイアス制御部20を制御する。
【0023】
ここで、光送信器100の動作について説明する。この動作は、主として制御部50により実行される光送信器100の制御方法の一例である。
図3は、実施形態に係る光送信器100の動作を示すタイムチャートである。光送信器100は、Tx_Disable及びTx_Enableの二つの動作モードを有する。Tx_Disableは光送信が停止される動作モードであり、Tx_Disableの動作モードにおいて光源60はオフとされる。一方、Tx_Enableは光送信が実施される動作モードであり、Tx_Enableの動作モードにおいて光源60はオンとされる。制御部50は、Tx_Disable及びTx_Enableのいずれにおいても、ディザを重畳したバイアス電圧を生成するようにバイアス制御部20を制御する。Tx_Disableは第1動作モードの一例であり、Tx_Enableは第2動作モードの一例である。
【0024】
光送信器100がTx_Disableの動作モードにある時、制御部50はTx_Disable状態にあり、光変調部10は第1ゲインで制御される。また、減衰部30は閉(CLOSE)状態とされる。このため、反転側モニタ42から出力される反転側信号の第2ディザは、正転側モニタ41から出力される正転側信号の第1ディザより大きなものとなる。
【0025】
光送信器100がTx_Enableの動作モードにある時、制御部50はTx_Enable状態にあり、光変調部10は第2ゲインで制御される。また、減衰部30は開(OPEN)状態とされる。このため、正転側モニタ41から出力される正転側信号の第1ディザは、反転側モニタ42から出力される反転側信号の第2ディザより大きなものとなる。
【0026】
また、Tx_DisableからTx_Enableへと動作モードが切り替えられる際には、一定の遷移期間が生じる。この遷移期間では、制御部50も遷移状態となり、光変調部10はTx_Disableの解除と同時に停止する。制御部50は遷移期間中においても、第1ディザと第2ディザとの和に基づいてバイアス制御部20を制御する。また、減衰部30は閉状態から開状態へと遷移していき、これに伴って、第2ディザは徐々に減少し、第1ディザは徐々に増加する。そして、減衰部30が開状態となると、光変調部10の動作が開始され、光変調部10のゲインが第2ゲインに安定すると、Tx_Enableの動作モードとなる。
【0027】
制御部50は、Tx_Disableにおいても、Tx_Enableにおいても、これらの間の遷移期間中においても、第1ディザと第2ディザとの和に基づいてバイアス制御部20を制御する。上記のように、第1ディザ及び第2ディザは変化するものの、第1ディザと第2ディザとの和は実質的に一定であり、予め定められた範囲内にある。従って、本実施形態によれば、第1ゲインと第2ゲインとを一致させやすく、光変調部10のゲインを安定させやすくすることができる。
【0028】
また、第1ディザと第2ディザとの和に基づいてバイアス制御部20が連続して制御されるため、バイアスずれが生じにくく、光変調部10の動作が開始されてから、短時間で光変調部10のゲインが第2ゲインに安定する。このため、ゲインが安定するまでの待機時間を短縮することができる。
【0029】
光送信器100は、例えば光トランシーバに用いることができる。
【0030】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0031】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0032】
(付記1)
入力光を変調し、信号光を出力する光変調部と、
前記光変調部に印加されるバイアス電圧を制御するバイアス制御部と、
前記光変調部から出力された前記信号光を減衰させて出力する減衰部と、
前記減衰部から出力された前記信号光に含まれる正転側信号光を検出する正転側モニタと、
前記減衰部から出力された前記信号光に含まれる反転側信号光を検出する反転側モニタと、
前記正転側モニタから出力される正転側信号の第1ディザと、前記反転側モニタから出力される反転側信号の第2ディザと、の和に基づいて前記バイアス制御部を制御する制御部と、
を有することを特徴とする光送信器。
(付記2)
前記減衰部は、
前記信号光を正転させ、かつ減衰させて出力する第1減衰器と、
前記信号光を反転させ、かつ減衰させて出力する第2減衰器と、
を有することを特徴とする付記1に記載の光送信器。
(付記3)
光送信を停止する第1動作モードと、
光送信を実施する第2動作モードと、
を有し、
前記第1動作モードの期間と、前記第2動作モードの期間と、前記第1動作モードから前記第2動作モードへの遷移期間と、のいずれにおいても、前記制御部は、前記第1ディザと前記第2ディザとの和に基づいて前記バイアス制御部を制御することを特徴とする付記1又は2に記載の光送信器。
(付記4)
前記第1ディザと前記第2ディザとの和が、予め定められた範囲内にあることを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の光送信器。
(付記5)
前記制御部は、ディザを重畳したバイアス電圧を生成するように前記バイアス制御部を制御することを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の光送信器。
(付記6)
入力光を変調し、信号光を出力する光変調部と、
前記光変調部に印加されるバイアス電圧を制御するバイアス制御部と、
前記光変調部から出力された前記信号光を減衰させて出力する減衰部と、
を有する光送信器の制御方法であって、
前記光送信器は、更に、
前記減衰部から出力された前記信号光に含まれる正転側信号光を検出する正転側モニタと、
前記減衰部から出力された前記信号光に含まれる反転側信号光を検出する反転側モニタと、
を有し、
前記正転側モニタから出力される正転側信号の第1ディザと、前記反転側モニタから出力される反転側信号の第2ディザと、の和に基づいて前記バイアス制御部を制御する工程を有することを特徴とする光送信器の制御方法。
【符号の説明】
【0033】
10:光変調部
20:バイアス制御部
30:減衰部
31:正転側VOA
32:反転側VOA
41:正転側モニタ
42:反転側モニタ
50:制御部
60:光源
100:光送信器