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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107136
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】クリップ
(51)【国際特許分類】
   F16B 19/10 20060101AFI20220713BHJP
   F16B 5/04 20060101ALI20220713BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
F16B19/10 B
F16B5/04 A
B60J5/00 501B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001873
(22)【出願日】2021-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】服部 豊和
【テーマコード(参考)】
3J001
3J036
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001HA02
3J001HA07
3J001JD04
3J001KA05
3J001KB01
3J036AA03
3J036BA01
3J036CA06
3J036DA04
3J036DA06
3J036DB06
3J036FA04
(57)【要約】
【課題】簡単な構成であって確実に第1取付部材および第2取付部材を固定できるクリップの提供にある。
【解決手段】グロメット部材11と、ピン部材12とを有し、第1取付部材13および第2取付部材14を互いに重畳した状態で固定するクリップ10である。グロメット部材11は、第1取付部材13および第2取付部材14にそれぞれ設けた貫通孔15、16に挿通可能な軸部20と、貫通孔15、16よりも大きい外径を有するフランジ部21と、軸部20のフランジ部21側の端面から軸部20の軸部外周面23へ貫通する複数のガイド孔30と、を有する。ピン部材12は、頭部40と、ガイド孔30に対応して挿入可能であって変形可能な脚部41と、を有する。軸部20の軸部外周面23よりも径方向の外側へ突出され、変形された状態の脚部41と軸部20の軸部外周面23とを係止する係止機構を有した。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グロメット部材と、ピン部材とを有し、
第1取付部材および第2取付部材を互いに重畳した状態で固定するクリップであって、
前記グロメット部材は、
前記第1取付部材および前記第2取付部材にそれぞれ設けた貫通孔に挿通可能な軸部と、
前記軸部の端部において前記第1取付部材および前記第2取付部材の前記貫通孔よりも大きい外径を有するフランジ部と、
前記軸部における前記フランジ部側の端面から前記軸部の軸部外周面へ貫通する複数のガイド孔と、を有し、
前記ピン部材は、
頭部と、
前記頭部に設けられ、前記ガイド孔に挿入可能であって変形可能な脚部と、を有し、
前記軸部外周面よりも径方向の外側へ突出され、変形された状態の前記脚部と前記軸部外周面とを係止する係止機構を有することを特徴とするクリップ。
【請求項2】
前記ガイド孔は軸方向から径方向へカーブするように形成されていることを特徴とする請求項1記載のクリップ。
【請求項3】
前記係止機構は、前記脚部に設けられ、前記軸部外周面の前記ガイド孔の開口から突出して前記軸部外周面に係止される係止爪であることを特徴とする請求項1又は2記載のクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
クリップの従来技術としては、例えば、特許文献1に開示された再利用可能な圧入式リテーナーが知られている。特許文献1に開示された圧入式リテーナーでは、スリーブが第2の構成要素のアクセス開口に圧入されると、第2の構成要素の下面が窓開口部を外方に突出しているウイング部をニップル内に係合する。それにより、ウイング部はニップル内の軸方向通路の内部に向かって径方向内方に付勢される。挿入の完了時、ウイング部は位置合わせされた窓開口部を通って外方にはね返る。それにより、第2の構成要素はウイング部とラジアルベース部との間にクランプされる。
【0003】
また、別の従来技術としては、例えば、特許文献2に開示された止め具が知られている。特許文献2の止め具は、合成樹脂製のピンと合成樹脂製のグロメットと金属製の挟持体の3部品から成り、ピンは、頭部と軸部とを備え、グロメットは、フランジ部と胴部とを備え、挟持体は、挟持面とガイド面とを備える。ピンの軸部には、挟持体を回転可能に軸支して挟持体の先端部を外方へ突出させることのできる空所を形成し、グロメットは、合成樹脂製グロメットのフランジ部と金属製挟持体の挾持面間で挟持されるので、合成樹脂と金属から得られる強い挾持力をもって、強固に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2014-513255号公報
【特許文献2】特開2005-337312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の圧入式リテーナーは、クリップ部材およびスリーブの構造が共に複雑であるという問題がある。また、クリップ部材のウイング部は、窓開放部を径方向外側へはね返る構造であるため、固定状態ではウイング部が径方向の外側へさらに拡がり易く、ウイング部が外側へ拡がり過ぎると、クリップ部材をスリーブから取り外し難くなる。また、特許文献2の止め具は、合成樹脂製のピンと合成樹脂製のグロメットと金属製の挟持体の3部品から成ることから部品点数が多くなり、止め具の構造が複雑となり、小型化が困難となる。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、グロメット部材およびピン部材が共に簡単な構造であって確実に第1取付部材および第2取付部材を固定できるクリップの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、グロメット部材と、ピン部材とを有し、第1取付部材および第2取付部材を互いに重畳した状態で固定するクリップであって、前記グロメット部材は、前記第1取付部材および前記第2取付部材にそれぞれ設けた貫通孔に挿通可能な軸部と、前記軸部の端部において前記第1取付部材および前記第2取付部材の前記貫通孔よりも大きい外径を有するフランジ部と、前記軸部における前記フランジ部側の端面から前記軸部の軸部外周面へ貫通する複数のガイド孔と、を有し、前記ピン部材は、頭部と、前記頭部に設けられ、前記ガイド孔に挿入可能であって変形可能な脚部と、を有し、前記軸部外周面よりも径方向の外側へ突出され、変形された状態の前記脚部と前記軸部外周面とを係止する係止機構を有することを特徴とする。
【0008】
本発明では、第1取付部材および第2取付部材を重畳した状態で、グロメット部材の軸部を第1取付部材および第2取付部材を挿入しておき、ピン部材の脚部をグロメット部材のガイド孔に挿入する。脚部はガイド孔に挿入されることで変形しつつ、脚部の先端部は軸部外周面から突出する。係止機構が脚部と軸部とを係止することで、変形された脚部が軸部外周面から突出した状態を維持することができ、軸部外周面から突出した脚部は、グロメット部材とともに第1取付部材および第2取付部材を固定することができる。したがって、グロメット部材およびピン部材の2部材のみで第1取付部材および第2取付部材を固定することができる、また、ピン部材の脚部の変形を維持させて第1取付部材および第2取付部材を固定する構成であることから、ピン部材の脚部は簡単な構造で済み、グロメット部材もガイド孔を備えた軸部とフランジ部を有する簡単な構造とすることができる。
【0009】
また、上記のクリップにおいて、前記ガイド孔は軸方向から径方向へカーブするように形成されている構成としてもよい。
この場合、ガイド孔が軸方向から径方向へカーブしているので、脚部はガイド孔に挿入されるとき、ガイド孔に沿って無理なく変形できる。また、ピン部材をグロメット部材から取り外すとき、脚部はガイド孔から抜き出し易く、ピン部材のグロメット部材からの取り外しの作業性を向上させることができる。
【0010】
また、上記のクリップにおいて、前記係止機構は、前記脚部に設けられ、前記軸部外周面の前記ガイド孔の開口から突出して前記軸部外周面に係止される係止爪である構成としてもよい。
この場合、ピン部材の脚部をグロメット部材のガイド孔に挿入し、脚部に設けた係止爪が軸部外周面のガイド孔の開口から突出すると軸部外周面に係止されるので、脚部の変形を復元しようとする力によって脚部が抜け出すことはない。また、係止爪をガイド孔へ押し込むことでピン部材をグロメット部材から簡単に取り外すことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、グロメット部材およびピン部材が共に簡単な構造であって確実に第1取付部材および第2取付部材を固定できるクリップを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る樹脂製クリップの斜視図である。
図2】第1の実施形態に係る樹脂製クリップの側面図である。
図3】第1の実施形態に係る樹脂製クリップの平面図である。
図4】グロメット部材にピン部材を装着する前の状態の樹脂製クリップの縦断面図である。
図5】グロメット部材にピン部材を装着した状態の樹脂製クリップの縦断面図である。
図6】第2の実施形態に係る樹脂製クリップの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態に係るクリップについて図面を参照して説明する。本実施形態のクリップは、例えば、自動車の内装パネルをボディー固定するための樹脂製のクリップ(以下、「樹脂製クリップ」と表記する)である。
【0014】
図1図3に示すように、樹脂製クリップ10は、グロメット部材11とピン部材12とを有する。グロメット部材11およびピン部材12は、例えば、ポリアセタール(POM)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂の射出成形品である。グロメット部材11およびピン部材12は互いに着脱可能である。樹脂製クリップ10は、図4図5に示す第1取付部材13と第2取付部材14とを固定する。
【0015】
第1取付部材13は、例えば、自動車のドアパネルであり、第2取付部材14は、例えば、ドアパネルに固定されるドアカバーである。第1取付部材13には第1貫通孔15が形成されており、第2取付部材14には第2貫通孔16が形成されている。第1貫通孔15および第2貫通孔16の孔径は同じである。第1貫通孔15および第2貫通孔16がほぼ同軸となるように、第2取付部材14が第1取付部材13に重畳された状態で樹脂製クリップ10は第1取付部材13と第2取付部材14とを固定する。具体的には、第1貫通孔15および第2貫通孔16に挿通されたグロメット部材11にピン部材12が装着されることにより、第1取付部材13および第2取付部材14が互いに固定される。
【0016】
図1図2に示すように、グロメット部材11は、円柱状の軸部20および軸部20の一方の端部に設けられたフランジ部21を有する。軸部20およびフランジ部21は一体形成されている。軸部20の外径は、軸部20が第1貫通孔15および第2貫通孔16に挿通できるように、第1貫通孔15および第2貫通孔16より小さく設定されている。軸部20の他方の端部である先端部には半球状の面が形成された半球面22が備えられている。軸部20において半球面22を除く面は一定の外径の軸部外周面23である。軸部20の先端部に半球面22が備えられていることにより、軸部20は第1貫通孔15および第2貫通孔16に挿通され易い。なお、軸部20の先端部は必ずしも半球面22を備えなくてもよい。
【0017】
フランジ部21は、軸部20一方の端部において径方向外側へ張り出して形成されている。フランジ部21の外径は、軸部20の外径より大きく設定されており、また、第1貫通孔15および第2貫通孔16よりも大きく設定されている。したがって、フランジ部21のフランジ部外周面24は軸部20の軸部外周面23よりも径方向の外側に位置する。
【0018】
軸部20のフランジ部21側である一方の端部には軸方向に窪む凹部25が形成されている。凹部25はフランジ部21の一部を含むように形成されている。凹部25はフランジ部21の内周面26と主に軸部20に形成された底面27とにより形成されている。凹部25が形成されているので、フランジ部21は凹部25を囲繞する環状の端面28を有する。内周面26の軸方向の長さである凹部25の深さは、フランジ部21のフランジ部外周面24の軸方向の長さよりも小さく設定されている。底面27とフランジ部21の端面28は互いに平行である。底面27は軸部20のフランジ部側の端面に相当する。
【0019】
軸部20には、底面27から軸部外周面23へ貫通するガイド孔30が形成されている。本実施形態では、4本のガイド孔30が軸部20に形成されている。図3に示すように、底面27においては4本の溝部32を有する十文字状の十字溝31が形成されている。ガイド孔30は各溝部32の径方向の外側先端から軸方向へ向かいつつ径方向外側へ向きを変えて軸部外周面23に達するように形成されている。つまり、ガイド孔30は軸方向から径方向へカーブするように形成されている。具体的には、ガイド孔30を形成する孔壁30A、30Bは曲面により形成されている。なお、本実施形態は、孔壁30A、30Bの双方を曲面としたが、曲面が必要なのは孔壁30Aのみで、孔壁30Bは必ずしも曲面である必要は無い。
【0020】
図3に示すように、グロメット部材11の平面視では、4本のガイド孔30の軸心Pからの距離は等しく、4本のガイド孔30は90度の角度を互いに保つ。ガイド孔30の断面は四角形である。なお、ガイド孔30の断面は四角形に限定されず、例えば、円形や楕円形であってもよい。十字溝31はガイド孔30と連通し、十字溝31の中心には溝底部33が形成されている。
【0021】
軸部20の軸部外周面23には4本のガイド孔30による四角形の開口34がそれぞれ形成されている。図3に示すように、開口34は、軸部外周面23において軸心Pから等距離であって90度の角度を保つ位置に形成されている。軸方向における開口34とフランジ部21との間の距離は、第1取付部材13と第2取付部材14とを重畳したときの厚みとほぼ同じである。
【0022】
次に、ピン部材12について説明すると、ピン部材12は、円板状の頭部40と、頭部40に設けられた4本の脚部41と、を有している。頭部40は、第1面42と、第1面42の反対側の面である第2面43と、頭部外周面44と、を有している。第1面42は平坦な面であり、本実施形態では特に何も設けられていない。第2面43は第1面42と同様に平坦面であるが、脚部41が突出して形成される脚部突出面である。本実施形態では、第1面42と第2面43は互いに平行である。頭部40の厚みはグロメット部材11の凹部25の深さと同じであり、頭部40の外径はフランジ部21の内周面26よりも僅かに小さい。したがって、ピン部材12をグロメット部材11に装着すると頭部40は凹部25に収容される。
【0023】
脚部41は、第2面43から軸方向に突出するように設けられている。脚部41の断面は四角形であり、ガイド孔30の断面と対応する形状である。脚部41はガイド孔30に挿通されるときガイド孔30のカーブに合わせて弾性変形が可能である。脚部41は、ピン部材12がグロメット部材11に装着された状態では、脚部41の先端部が開口34から十分に突出するように、脚部41の長さが設定されている。脚部41の詳細については、次に説明するが、脚部41において開口34から突出する先端部は、フランジ部21とともに第1取付部材13および第2取付部材14を固定する。
【0024】
脚部41は、頭部40と一体形成されている脚部本体45と、脚部本体45の先端部に一体形成されている係止爪46と、を備えている。脚部本体45は略四角柱であり、係止爪46は先端から脚部本体45へ向かうにつれて厚みが大きくなるテーパ面47と、テーパ面47と脚部本体45の間に形成された係止面48と、を備えている。
【0025】
テーパ面47は脚部41において径方向内側に形成されている。テーパ面47が形成されていることにより、脚部41の先端部が楔状となり、脚部41はグロメット部材11のガイド孔30において案内され易い。係止面48はテーパ面47と脚部本体45の径方向内側面とを接続する面であり、脚部41の突出方向と交差する面である。このように、テーパ面47および係止面48は、ガイド孔30の開口34から突出して軸部外周面23に係止される係止爪46を形成する。
【0026】
次に、本実施形態の樹脂製クリップ10による第1取付部材13および第2取付部材14の固定について説明する。まず、作業者は、第1取付部材13の第1貫通孔15と第2取付部材14の第2貫通孔16が同じ位置となるように、第1取付部材13に第2取付部材14を予め重畳させておく。
【0027】
次に、作業者は、グロメット部材11の軸部20を第1貫通孔15および第2貫通孔16に挿通させ、フランジ部21を第2取付部材14に当接させる。次に、作業者は、ピン部材12の脚部41をガイド孔30へ挿通するように、ピン部材12の脚部41を十字溝31へ押し込む。脚部41が十字溝31を通じてガイド孔30に挿通されると、脚部41はガイド孔30に案内され、カーブするガイド孔30に沿って円弧状に弾性変形する。ピン部材12の頭部40が凹部25に収容されるまで、ピン部材12が押し込まれると、脚部41の先端部が軸部20における開口34から突出する。
【0028】
脚部41の先端部における係止爪46が開口34から突出すると、弾性変形から復元しようとする力によって係止爪46が開口縁から半球面22側へ移動し、軸部外周面23に係止される。係止爪46が軸部20の軸部外周面23に係止されると、ピン部材12のグロメット部材11への押し込みを解除しても、脚部41は弾性変形を復元する力によって十字溝31へ向けてガイド孔30から抜け出すことはない。
【0029】
開口34から突出している脚部41における係止爪46を含む部位は、フランジ部21とともに第1取付部材13および第2取付部材14を固定する。つまり、開口34から突出している脚部41の一部は、第1取付部材13および第2取付部材14の軸部20から抜け出しを防止する。このように、脚部41の係止爪46が開口34から飛び出すまでピン部材12をグロメット部材11に押し込むことで、第1取付部材13および第2取付部材14は固定される。樹脂製クリップ10による第1取付部材13および第2取付部材14の固定作業は終了である。
【0030】
樹脂製クリップ10が第1取付部材13および第2取付部材14を固定している状態から、樹脂製クリップ10を取り外す場合について説明する。作業者は、ピン部材12をグロメット部材11から取り外すため、各脚部41における係止爪46の軸部外周面23との係止を解除する。
【0031】
係止爪46の軸部外周面23との係止が解除されると、脚部41の弾性変形を復元しようとする力は、ガイド孔30から脚部41が抜け出すことを助長する。したがって、係止爪46の軸部外周面23との係止を解除することで、脚部41は十字溝31側から抜き出し易くなり、作業者はピン部材12の頭部40をグロメット部材11から引き離すことでピン部材12を取り外すことができる。
【0032】
本実施形態では、第1取付部材13側に作業者の手が入ることができる状態でのピン部材12の取り外しを説明した。例えば、第1取付部材13側の空間に作業者の手が入ることができない場合には、第2取付部材14側において治具等を用いてピン部材を引っ張り、係止爪46を変形させてピン部材12を抜き出してもよい。再び、第1取付部材13と第2取付部材14を固定する場合には、作業者は、新しい樹脂製クリップ10を用いればよい。
【0033】
本実施形態の樹脂製クリップ10は以下の効果を奏する。
(1)第1取付部材13および第2取付部材14を重畳した状態で、グロメット部材11の軸部20を第1取付部材13の第1貫通孔15および第2取付部材14の第2貫通孔16に挿入する。そして、ピン部材12の脚部41をグロメット部材11のガイド孔30に挿入する。脚部41はガイド孔30に挿入されることで変形しつつ、脚部41の先端部は軸部外周面23から突出する。係止機構としての係止爪46が脚部41と軸部20とを係止することで、変形された脚部41が軸部外周面23から突出した状態を維持することができる。また、軸部外周面23から突出した脚部41は、グロメット部材11とともに第1取付部材13および第2取付部材14を固定することができる。したがって、グロメット部材11およびピン部材12の2部材のみで第1取付部材13および第2取付部材14を固定することができる。また、樹脂製クリップ10は、ピン部材12の脚部41の変形を維持させて第1取付部材13および第2取付部材14を固定する構成である。このことから、ピン部材12の脚部41は簡単な構造で済み、グロメット部材11もガイド孔30を備えた軸部20とフランジ部21とを有する簡単な構造とすることができる。
【0034】
(2)ガイド孔30は軸部20において軸方向から径方向へカーブするように形成されている。このため、脚部41はガイド孔30に挿入されるとき、ガイド孔30に沿って無理なく変形できる。また、ピン部材12をグロメット部材11から取り外すとき、脚部41はガイド孔30から抜き出し易く、ピン部材12のグロメット部材11からの取り外しの作業性を向上させることができる。
【0035】
(3)係止爪46は、脚部41に設けられ、軸部外周面23のガイド孔30の開口34から突出して軸部20の軸部外周面23に係止される係止機構に相当する。ピン部材12の脚部41をグロメット部材11のガイド孔30に挿入し、脚部41に設けた係止爪46が軸部外周面23のガイド孔30の開口34から突出すると、軸部外周面23に係止される。このため、脚部41の変形を復元しようとする力によって脚部41がガイド孔30から抜け出すことはない。また、軸部20の軸部外周面23に係止された状態の係止爪46をガイド孔30へ押し込むことでピン部材12をグロメット部材11から簡単に取り外すことができる。
【0036】
(4)グロメット部材11はピン部材12が装着されても殆ど変形することがないので、例えば、ピン部材の装着時に変形するグロメット部材と比較すると、耐久性が高く、繰り返し使用することも可能である。また、第1取付部材13と第2取付部材14との固定を解除するとき、殆ど変形しないグロメット部材11は、ピン部材の装着時に変形するグロメット部材と比較すると、グロメット部材11を第1取付部材13および第2取付部材14から取り外し易い。したがって、樹脂製クリップ10の取り外し作業の作業性を向上することができる。
【0037】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る樹脂クリップについて説明する。本実施形態の樹脂クリップは、グロメット部材に形成するガイド孔の形状が相違する。本実施形態では、第1の実施形態と共通する構成については第1の実施形態の説明を援用し、共通の符号を用いる。
【0038】
図6に示すように、樹脂製クリップ50は、グロメット部材51とピン部材12を有する。グロメット部材51の軸部20には、ガイド孔52が形成されている。ガイド孔52は十字溝31から軸方向および径方向外側へ向けてカーブせず軸部外周面23に達するように形成されている。つまり、ガイド孔52は、軸部20の軸心P付近から軸部外周面23に向けて直線的に形成されており、軸心Pに対して傾斜している。したがって、ガイド孔52を形成する孔壁52A、52Bは平面によって形成されている。軸部外周面23に開口53が形成されている。本実施形態の開口53は第1の実施形態の開口34よりも大きい。
【0039】
本実施形態では、ガイド孔52がカーブせず直線的に形成されているが、脚部41をガイド孔52に挿通することにより変形させ、脚部41の先端部を開口53から突出させた状態で軸部外周面23に係止することができる。なお、ガイド孔52の断面は四角形であるが、四角形に限定されず、例えば、円形や楕円形であってもよい。
【0040】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0041】
○ 上記の実施形態では、係止機構として脚部に設けた係止爪を例示したが、これに限らない。係止機構は、脚部の先端部を軸部のガイド孔から突出した状態を保つことができる構成であればよく、例えば、脚部に横溝を設けて軸部におけるガイド孔の開口の縁部が横溝に係止されるようにした係止機構であってもよい。
○ 上記の実施形態では、ピン部材の脚部を4本としたが、これに限定されない。ピン部材の脚部の数は複数であればよく、脚部を2~4本とすることが実用的で好ましい。
○ 上記の実施形態では、グロメット部材に凹部や十字溝を設けるようにしたが、凹部および十字溝は、必須の構成ではなく、例えば、凹部および十字溝を備えないグロメット部材であってもよい。
○ 上記の実施形態では、自動車に用いる第1取付部材と第2取付部材を固定するクリップを例示したが、クリップは自動車以外で用いる第1取付部材と第2取付部材を固定してもよい。
○ 上記の実施形態では、クリップとしての樹脂製クリップを例示して説明したが、クリップは必ずしも樹脂製に限定されない。クリップの材料は、例えば、金属であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
10、50 樹脂製クリップ
11、51 グロメット部材
12 ピン部材
13 第1取付部材
14 第2取付部材
15 第1貫通孔
16 第2貫通孔
20 軸部
21 フランジ部
23 軸部外周面
24 フランジ部外周面
25 凹部
27 底面
30 ガイド孔
31 十字溝
32 溝部
33 溝底部
34 開口
40 頭部
41 脚部
46 係止爪(係止機構)
P 軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6