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特開2022-107139多人数の検体を圧縮する医学検査方法と情報処理機器類
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107139
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】多人数の検体を圧縮する医学検査方法と情報処理機器類
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/80 20180101AFI20220713BHJP
【FI】
G16H50/80
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001880
(22)【出願日】2021-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】000160810
【氏名又は名称】久野 浩光
(72)【発明者】
【氏名】久野 浩光
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】医学検査における多数の検体を少数に圧縮して混合検体をつくり、この混合検体の検査結果から被検者一人ひとりを判定する検査方法、情報処理システム及び記録媒体を提供する。
【解決手段】情報処理システムにおいて、判定処理は、検査結果を入力しS10、初期設定を行うS11。検査結果が陰性だった容器へ分配した被検者全員を、判定1(陰性)とするS12。陽性だった容器個数が選数と同じ場合はS13Yは、判定されず残った1人を判定3(陽性)としS14を、異なる場合S13Nは、ステップ15ではまだ判定され残っている全員を判定2(再検査)とするS15。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(方法全体の概要版)
被検者総数以上となる数学組合せ総数を計画決定し、この組合せ総数の母数mと選数nから展開される組合せパターンを分配パターンとして各被検者に割当て、この分配パターンに従って各被検者の検体を容器m個中のn個に分配し、全ての被検者検体を分配パターン通りに分配して出来上がる混合検体を検査機にかけて、
この検査機の検査結果と分配パターンの情報と、(命題、陰性検体への分配者は陰性)と(命題、陽性検体への分配者中に陽性者が含まれる)から推論して、被検者一人ひとりが陽性か陰性か再検査か判定する、検査方法。
【請求項2】
(方法全体の具体版)
請求項1記載の検査方法の判定工程において、
陰性だった容器への分配者は陰性と判定し、
残る未判定者が1名の場合または陽性だった容器個数がn個だった場合は未判定者1名は陽性と判定し、
まだ残る未判定者は全員、再検査と判定する、検査方法。
【請求項3】
(混合検体の作成のみ)
被検者総数以上となる数学組合せ総数を計画決定し、この組合せ総数の母数mと選数nから展開される組合せパターンを分配パターンとして各被検者に割当て、この分配パターンに従って各被検者の検体を容器m個中のn個に分配し、全ての被検者検体を分配パターン通りに分配して混合検体を作成する、圧縮検体検査専用の混合検体作成方法。
【請求項4】
(判定工程のみ)
請求項3記載の混合検体を作成しないが、混合検体の検査結果の情報を受取り、この検査結果と分配パターンを基にして、
陰性だった容器への分配者は陰性と判定し、
残る未判定者が1名または陽性だった容器個数がn個だった場合は未判定者1名は陽性と判定し、
まだ残る未判定者は全員、再検査と判定する、検査方法。
【請求項5】
(情報処理システム)
被検者からの検体を検査機にかけた検査結果を基に判定作業を担う情報処理システムにおいて、
このシステムに用いるコンピュータのハード構成は一般的なCPU、メモリ、ハードディスク、入出力装置、モニターからなり、
コンピュータ担当者が被検者全員にデータ割当てできるように、数学組合せ関数の母数と選数を設計決定してコンピュータへ入力するステップ、
プログラムは、入力された母数と選数からそれぞれ異なる組合せパターンを展開して、この組合せパターンを分配パターンとして1人ひとりの被検者に割当てて、各被検者毎の分配パターンの情報をメモリにデータ保存するステップ、
プログラムは、各被検者と分配パターンの情報をプリントアウト印刷やネット回線送信で検体混合作業者へ伝達するステップ、
コンピュータ担当者がコンピュータへ入力する「混合検体の検査結果」を、プログラムは受取るステップ、
プログラムは検査結果の因果関係と、分配パターンの相関関係を辿って、陰性だった容器への分配者は陰性と判定し、残る未判定者が1名の場合または陽性だった容器個数がn個だった場合は未判定者1名は陽性と判定し、まだ残る未判定者は全員、再検査と判定するステップ、
を含む情報処理システム。
【請求項6】
(プログラムか記録媒体)
被検者からの検体を検査機にかけた検査結果を基に判定作業を担うシステム用情報処理プログラムにおいて、
コンピュータ担当者が被検者全員にデータ割当てできるように、数学組合せ関数の母数と選数を設計決定してコンピュータへ入力する数値を、プログラムは受取るステップ、
プログラムは、入力された母数と選数からそれぞれ異なる組合せパターンを展開して、この組合せパターンを分配パターンとして1人ひとりの被検者に割当てて、各被検者毎の分配パターンの情報をメモリにデータ保存するステップ、
プログラムは、各被検者と分配パターンの情報をプリントアウト印刷やネット回線送信で検体混合作業者へ伝達するステップ、
コンピュータ担当者がコンピュータへ入力する「混合検体の検査結果」を、プログラムは受取るステップ、
プログラムは検査結果の因果関係と、分配パターンの相関関係を辿って、陰性だった容器への分配者は陰性と判定し、残る未判定者が1名の場合または陽性だった容器個数がn個だった場合は未判定者1名は陽性と判定し、まだ残る未判定者は全員、再検査と判定するステップ、
を含む情報処理プログラムまたはこのプログラムを記録した記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学検査における多数の検体を少数に圧縮して混合検体をつくり、この混合検体の検査結果から被検者一人ひとりを判定する方法の発明である。コロナ(COVIT-19)の感染検査を、大規模かつ低コストで行う目的で創作したものである。
ただし陽性率が5%以下の集団への適用が望ましい。また検査する病気はコロナに限定されず、他の病気などでも適用可能である。適用できる疾病は、「容易に検体提出できる事」、「容易に検体混合できる事」、「検体混合しても検出できる事」の各条件が満たされる病気である。適用できる検体は、唾液、汗、尿、頭髪フケ、耳垢など無害な排泄物類である。適用疾病を例示すれば、唾液にウイルスが出るインフルエンザなどの伝染病、飲酒検査、麻薬検査、ヒ素放射能など公害被害検査である。検査対象者は、人以外にペット家畜でも適用可能である。
本発明にはコンピュータを用いる。概略説明部分では文字短縮のため、パソコンと記載する。パソコンを操作する担当者を、パソコン担当と記載する。他の作業担当者も、作業担当と記載する。
【0002】
本発明は、医学検査とパソコンと数学組合せ関数の用語を使う。組合せ関数は、ギャンブル確率分野、アルゴリズム分野などで利用されるため、表記方法も用語も乱立ぎみである。勝手ながら本明細書における定義での造語で記載させていただく。図4に対称関係にある用語の表をまとめた。
組合せ関数とは、数学上の組合せを意味する。集合m個からn個を選び出す場合は以下の式で算出される。そしてこの公式において、分子、分母とも掛け合せる項の個数は同数とする。
組合せ総数の公式C(m,n)=m×(m-1)×(m-2)×…/n×(n-1)×(n-2)×…
組合せに関して、集合mを母数とし、nを選数とし、個々の組合せを組合せパターンとし、組合せ全種類の個数を組合せ総数と呼ぶこととする。さらに組合せデータをゼロイチの2値で表したものを組合せ2値パターンとし、10進数番号で表現したものを組合せ番号パターンとする。数学用語でない場合の「くみあわせ」は「組み合わせ」と記載する。
被検者とは、検査対象となる人をさす。検出対象物が検出されたか否かを、陽性、陰性で総称する。検出対象が菌や麻薬や有害物の有無の場合もある。
発明名称に「圧縮」という表現を用いた理由は、産業上の利用可能性の項にて説明する。
【背景技術】
【0003】
2020年初期から、新型コロナの伝染病が広まり、世界的パンデミックが起きた。コロナウイルスによる感染症である為、感染者との濃厚接触者をPCR検査することが、感染を抑える為の有効策であった。また感染者との接触に関わらず、集団全員にPCR検査することも有効な予防策であった。
しかしながらPCR検査機1台で一度に検査できる検体数は限られ、試薬も必要になるし、検査結果が得られるまでの所要時間もかかる。検査機器を増設するにしても検査担当の増員も必要になる。それゆえ百人、千人単位の集団検査は負担が多いので、ほとんど行われなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-068508号、ウイルス潜伏
【特許文献2】特開2007-285749号、インフルエンザ
【特許文献3】特開2012-014320号、感染検査システム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
検査人数を増やすうえで問題になるのは、検査作業の総合的な負担増である。本発明の目的は、集団検査における、総合的負担の軽減である。
発明者は、複数人数分の検体をひとまとめに混ぜ合せれば、検査所の負担は減らせる、と着想した。でもそうすると、検体をまとめた集団の検体検査結果が陽性の場合、誰が陽性者かわからなくなる。そこで「検体提出容器」を多数用意し、なおかつ各々の被検者が異なる組み合せの「検体提出容器」に検体を分配すればよい、と考えた。そうすれば検査結果から、陽性の被検者を辿れる。
コロナ検査の場合、初期には鼻奥の粘膜から調べたが、唾液からでも検査できるようになった。またPCR検査機の検出感度は高いので、数人分を混ぜた検体であっても検出可能である。PCR検査機器の原理は、ポリメラーゼ連鎖反応によって、ウイルスの遺伝子を増幅させるものである。ゆえに反応時間を延長し続ければ、かなり薄い唾液濃度からでも陽性者検出は可能と見込まれる。卑近な類例としては、各国、各機関が、下水からPCR検査機でウイルス検出している。生活排水で希釈されても検出できる事は実証されているのである。
【0006】
従来の検査方法を検索しても、複数の検体を混ぜ合せる先願は見当たらなかった。そうゆう発想をする事さえ、タブー禁忌が阻んでいた。なぜなら医学検査は、高感度ゆえ、検査者自身の呼気飛沫や指付着物が検体に混ざり込まないように、細心の注意が強いられる作業だったからである。
本発明課題は、多人数の検体を、複数人数分を混ぜ合せつつも、検査結果から陽性者を個人絞り込みできるようにする事である。さらに細かく記載すると以下の通りになる。
課題A、「各被検者の検体を分配する容器番号の組合せパターンを、各被検者ごとに異ならせる事」
課題B、「検体分配作業者へ分配パターン(組合せパターン)を伝達する事」
課題C、「混合検体の検査結果を基にして、被検者個々人の陽性、陰性、再検査を判定する事」
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の本質は、簡単な推理ゲームのような、単純な論理である。しかしながら緻密に誤解なく解説するには、狭義の用語での長い解説が必要になる。そこでまず、単純な概念を5行で図解説明する。
図1は、集団検査に関わる関係者同士の、情報や物のやりとりの概念図である。最左が被検者の欄であり、3人が異なる分配パターンで容器に検体を分配する様子を矢印と雫マークで表現している。真下の容器に検体が溜まってるが、2番3番容器だけ黒い。それゆえ「2番3番に検体提出した人がクロだ」と推理できて、三番被検者三田さんがクロだと個人判定できる。このような検査をコロナPCR検査に適用するという話である。
あらためて本発明の課題の解決手段を説明する。課題Aを解決するために「数学の組合せ論」の概念を用いる。公式および関連用語は、技術分野の項に記載し、図4にもまとめた。ここからは単純な具体例で説明する。
4個から2個を選び出す場合は、母数4、選数2、組合せ総数6、計算式は以下の通りである。
組合せ総数 C(m,n)=4×3/2×1=6
【0008】
組合せパターンを番号で表現した組合せ番号パターンをすべて羅列すると(1番と2番)(1番と3番)(1番と4番)(2番と3番)(2番と4番)(3番と4番)である。ここで組合せとは、「選ばれた」か「選ばれない」か2種なので、「ゼロとイチを並べた表現」に変換することもできる。「2値表現」のルールは、「1は選出」、「0は不選出」として意味付けし、何番なのかは、第何桁かで表現する規則とする。組合せ番号パターンを、組合せ2値パターンに変換すると、(0011)(0101)(1001)(0110)(1010)(1100)になる。ただし、あくまで「2値表現」であって、「2進数」ではない。
課題Aは、容器総数を母数とし、検体分配数を選数に置換えて、組合せパターンをすべて羅列させれば解決する。すべての組合せ2値パターンの作成は、パソコン処理で実現できる。パソコン上で桁数がmの2進数をカウントアップさせつつ、「1」がn個の条件を満たすものだけを組合せ2値パターンとして、データ保存してゆき、カウント限界まで実行すれば、組合せ総数の個数の組合せ2値パターンが出来上がる。
【0009】
課題Bは、分配パターン(組合せパターンと同意)を各被検者へ伝達すれば解決する。伝達する表現形式は、「2値パターン」よりも「番号パターン」のほうが、判り易い。分配2値パターンを分配番号パターンに変換してから、各被検者へ伝達すれば解決する。これもパソコンでの簡単なプログラミングで実現できる。分配2値パターンの下桁からサーチしていって、「1」ならばその桁数を10進数の番号に変換してまとめれば、分配番号パターンに変換できる。このデータ処理を全ての分配2値パターン毎にプログラム実行させていけば、組合せ総数個の分配番号パターンが作成される。
分配番号パターンを作成したら、検体分配票としてプリントアウトし、会場担当を介して、各被検者へ渡せば、課題Bは解決する。検体分配票は図8に示した。
母数4、選数2の条件で分配2値パターンをプログラミングで作成したものが図5である。2値表現かつ「1」が2個の最初の数字は(0011)であり、順次(0101)(0110)(1001)となる。この分配2値パターンは、前々段落の分配2値パターンと異なるが、一方のパターン群を左右上下逆にすれば、同一パターン群となる。この数学的小発見は、組合せパターンの合理的並べ方が1種類のみである事を意味する。「大番号上桁移行」で組合せパターン作成する並べ方の組合せパターン全羅列は、「2進数方式」の左右逆かつ上下逆の羅列と同一になる。
「混合検体作成作業」を行なう者が被検者自身ではなく、会場担当や検査機担当の場合ならば、分配パターン情報の伝達先は、それら作業担当となる。会場担当が混合検体を作る場合の検査概念図は図2に示した。検査機担当が混合検体を作る場合の検査概念図は図3に示した。
【0010】
課題Cは、混合検体の検査結果(陰性、陽性)と、その検体へ分配した被検者の相関関係を辿れば解決できる。
命題E、混合検体が陰性ならば、その容器へ検体分配した被検者全員は陰性である。
命題F、混合検体の陽性数が選数と同数ならば、その陽性の容器の分配パターンで提出した1人のみ陽性で、その他全員は陰性である。
命題G、混合検体の陽性数が選数を超すならば、陰性の容器へ検体分配した被検者全員は陰性であり、その他全員は再検査者である。
命題H、混合検体の陽性数が選数を超すならば、陽性の容器群の範囲内で検体分配した被検者全員は再検査であり、その他全員は陰性である。
これら命題E~Hを活用すれば、被検者の一人ひとりが陽性か陰性か再検査かを判定できる。図1で解析、判定の経緯を説明する。図1左欄の一丸印は、一番市川さんが容器(1)、容器に検体を入れている意味である。雫のマークは検体提出を表している。その真下に並んでいるのが容器であり、検体は容器内に溜まっていく。二重丸の二番似鳥さんの検体提出は容器(1)と容器(3)。三角三番三田さんの検体提出は容器(2)、容器(4)である。ちなみに図での丸数字は、明細書では小カッコ数字で表している。
【0011】
容器には複数の被検者の検体が混合して溜まる。この混合検体を検査した結果を色で表している。白色は陰性を表すとし、容器(1)、容器(4)は陰性とする。黒は陽性であり、容器(2)、容器(3)は陽性である。陽性の検体の個数と、検体提出回数が共に2個の状況なので、命題Fに当てはまる。陽性となった容器(2)、容器(3)に分配したのは三番三田さんなので、三田さんだけ陽性であり、その他3人は陰性と判定できる。このような解析手段で、課題Cは解決できる。
命題G、命題Hは、ウラ、オモテの関係である。陰性者を探し出した後で残りを再検査とするか、再検査を探し出した後で残りを陰性者とするか、である。下位概念で考えると異なるプロセスに見えて、上位概念で観れば同一の解析方法である。「各者の分配パターンと検査結果の相関関係を辿って、白黒判定する」という単純明快な解析方法である。
ここでいう陽性、陰性とは、検査内容に応じて、保菌の有無や、アルコール有無や、ヒ素有無などの判定用語に代わるものである。
また課題Bでいう伝達するとは、情報をプリント印刷して渡す形態のみならず、ネット送信形態も含む。さらに分配パターン表現形式は、解読補足文章を加えれば分配2値パターンでもよい。
補足説明させて頂くと、現代社会の会社形態、業務形態の変化は激しい。それゆえ図1に表した担当者はそれぞれ別の会社が分担する業態も考えられる。さらにはパソコン作業の前半、後半を別会社が分担することも出来る。そうなると課題Cこそが本発明の最重要課題ということになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の検体圧縮する検査方法は、検体数を大幅に減らせるので、検査負担を大幅に減らす効果がある。具体例として検体混合容器20個、検体分配数4回とすれば、最大4845人まで検査できる。検体が20個ならば、検査機1~3台で対処でき、短時間で結果が出せる。その検査実行データを図7に示す。データ表が大きいので、縦軸横軸とも破断線で省略している。だが以下の計算式が示すように、この条件でこの人数の検査を行えるのである。
C(20,4)=20×19×18×17/4×3×2×1=4845
従来と比較すると、1人ひとりの検体を単独で検査する場合は、検体は4845個である。検査機3台でも、数ヵ月かかる。短時間で処理しようとするなら、検査機を百数十台用意しなければならない。試薬、担当者、作業場所なども比例して増やす必要があり、検査する側の負担は膨大になる。これを比較すれば、本発明の効果は大きい。もちろん容器数や分配数を増やせば、受入れ人数はもっと増やせる。分配数5なら15504人、分配数6なら38760人である。
【0013】
ただし本発明には制約条件や短所がある。制約条件とは、「容易に検体提出できる事」、「容易に検体混合できる事」、「検体混合しても検出できる事」「計画以外の検体が混入してはならない事」である。
本発明の短所とは、陽性率が多い集団に検査すると、再検査が多く出てしまう事である。ただ事前に検査した統計値を参照したり、集団検査を実施してゆけば、対象集団の陽性率は確度良く推測できる。それゆえ事前に、陽性率が低い集団か、見極めてから検査を実施すれば、短所弊害は避けれる。
本発明はパンデミック予防効果を持っている。目先の効果以上の意義がある。今回のコロナのような感染症は、災害の性質としては火災に似ている。火災は火元から延焼し拡がっていく。発見、対処が早いほど楽に効率的な対処ができるし、被害少なく済む。逆に発見、対処が遅れるほど、非効率な対処を強いられ、被害は深刻さを増す。2020年、コロナパンデミックが起きた。交通手段が世界的になった現代では、かえって昔よりも速く広範囲にパンデミックに成ることが実証されてしまった。医学がどれだけ進歩しても、新たな感染病は必ず発生する。
けれども本発明の検査方法は軽い負担で検査できるので、感染が蔓延する前段階で大規模検査を行える。早期に大規模検査を行えば感染症を封じ込められる可能性が高まる。それゆえ本発明はパンデミック予防効果がある。
本発明の検査方法で、図1に示した被検者自身が混合検体を作成していく形態は、検査負担をより軽減する効果がある。混合検体を作る作業は、それなりに煩雑かつ注意深さを要する。しかしながら被検者がセルフで容器に自分の唾液を滴下していく形態ならば、被検者にとってもさほどの負担にならない。そして検査を実施する側の各担当者への負担はとても少なくて済む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】検査Aの概念図である。検体混合作業は、被検者がセルフで行う。
図2】検査Bの概念図である。検体混合作業は、作業担当。
図3】検査Cの概念図である。検体混合作業は、検査機担当。
図4】用語解説と対称関係図である。
図5】検査実行データ(少数)図である。
図6】検査実行データ(中数)図である。
図7】検査実行データ(多数)図である。
図8】分配票の図である。
図9】分配パターン羅列処理(概要)フロチャート図である。
図10】分配パターン羅列処理(詳細)フロチャート図である。
図11】判定処理(概要)フロチャート図である。
図12】判定処理(詳細)フロチャート図である。
図13】コンピュータシステム図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0015】
図1図5を参照として実施例1を説明する。課題解決手段の項でも軽く説明したが、あらためて図1の見方を説明する。図1は、集団検査に関わる関係者同士の、情報や物のやりとりの概念図である。各関係者の情報を縦線で区切っている。縦軸は時間軸で、上端が検査スタートであり、下端が終了である。図内の説明文には、主語、客体が省略されているが、矢印基点が主語者になり、矢印の先が客体相手となる。
被検者人数を6人と計画したならば、組合せ公式から組合せ総数6となる母数と選数を逆算し、母数4、選数2が導かれる。容器総数に母数4を代入し、容器は4個と決定される。検体の分配数に選数2を代入し、分配数2つと決定される。
パソコン担当は、会場担当へ容器総数は4個と伝える。会場担当は、会場に容器4個に番号を付して並べる。
パソコン担当は、母数4、選数2の条件をパソコンプログラムに入力して、すべての組合せパターンを作成させる。この組合せパターンを、分配パターンとして転用する事が、本発明要旨のひとつである。分配パターン作成フロチャートは図9図10に示す。6種類の分配パターンは、図5に示すように被検者一番から六番まで割当てられる。
【0016】
パソコン担当は、各被検者ごとの分配パターンを文章化して、プリントアウト印刷し、各被検者へ渡す。文章化の例は、図8に示す通りである。
一番市川さんの分配パターンは(0011)であり、検体分配先は容器番号(1)(2)である事を意味している。各被検者は自分に割当てられた分配パターンの通りの容器へ検体分配していく。図1の一重丸は市川さんを表し、会場へ伸びている矢印は検体分配を意味している。同様にして二番似鳥さん容器(1)(3)へ検体分配。三番三田さん容器(2)(3)へ検体分配である。
被検者全員の検体分配が終わったら、会場担当は容器内の混合検体を検査機担当へ送り届ける。
検査機担当は、混合検体を容器番号に沿って検査機にかける。そして検査機の結果が出たら、検査機担当はパソコン担当へ混合検体の検査結果を伝える。
【0017】
パソコン担当は、パソコンプログラムに混合検体検査結果を入力して、判定プログラムを実行させる。混合検体検査結果は、(0110)であり、陽性の個数は選数2と同一である。検査結果は、パソコン担当が後から入力する数値なので、図5では斜め数字で表記した。この条件の場合、陽性者は1人と断定される。因果の命題(陰性への分配者は陰性)なので、個人判定欄には1(陰性)が入る。そのようなチェックをした後で、まだ個人判定欄に0が残っていたら3(陽性)を入れて、検査作業は終了である。個人判定の欄での数値の意味は、0初期値、1陰性、2再検査、3陰性、である。図5の個人判定の数値は太字表記しており、プログラム処理経過を矢印で示している。
この判定過程を図解的に表現したものが、図5の右欄である。最右欄の黒丸は陽性、白丸は陰性を表しており、丸数字は容器番号であり、分配した被検者と分配された容器を線で結んで表示している。因果の命題(陰性への分配者は陰性)なので、(1)への線はすべて陰性者であり、これら線は消していい。また陰性者から出ている線も消していい。同じく(4)に繋がる線と、陰性者からの線も消す。図5では、線を消す代わりに、残る線を太く示した。すると三番三田さんが陽性者だと判る。
【実施例0018】
つぎに人数と容器を増やした例を図6を参照として説明する。被検者番号は十番まで増え、容器番号も(5)まで増える。分配パターンは図6の通りである。ここで混合検体の検査結果は(01110)とする。陽性の混合検体は3個である。つまり選数2よりも多いという事であり、(陽性個数が選数と異なる場合)の判定作業をする。容器(1)(5)が陰性なので、容器(1)(5)へ分配した被検者を辿って、陰性と判定し、個人判定欄に「1」を入れる。その後、個人判定欄をサーチチェックして、まだ「0」の被検者がいたら、再検査であり「2」を入れる。これで判定終了である。
この判定の経緯を図6右側欄で図解する。まず容器1は白丸で陰性である。それゆえ容器1へ分配した者全員は陰性、という事になる。容器1への分配線は(因果無きもの)として消していい線となる。さらに容器1へ分配した者(一、二、四、七)からの分配線は、消していい線となる。
同様にして容器(5)につながる分配線も消し、容器(5)分配者(七~十)からの分配線も消していい線となる。消されずに残る分配線を太い線で表している。容器(2)(3)(4)と被検者(三、五、六)を太線が結んでいる。
どの被検者(三、五、六)にも2本の太線がつながっているので、「陽性」と断定出来ない。それゆえ被検者(三、五、六)は再検査となる。この判定経緯は、大きな意味を含んでいる。(陽性個数が選数を超す場合)は関わる被検者は再検査となり、陽性確定には至らない、という事である。ただ発明要旨から逸れるので、詳しい解説は略す。
【0019】
以上で集団検査全体の「方法」の説明を終え、ここから「コンピュータシステム」による分配パターン羅列処理の説明をする。
コンピュータのハード構成は、図13に示すように一般的なCPU、メモリ、ハードディスク、入出力装置、モニターからなるとする。被検者10人、容器5個、分配2(選数2)の条件は同じままである。
コンピュータ内には、あらかじめ集団検査する被検者リストと分配パターンのデータをメモリ保持しているとする。コンピュータ担当は検査機担当から、混合検体の検査結果データを伝達され、そのデータをコンピュータ入力する。
分配パターン羅列処理工程は、図9のフロチャートで示す。
ステップ1(S1)、初期設定。
ステップ2(S2)、2進数Xをカウントアップしつつ、数字1の個数をかぞえる。
ステップ3(S3)、Xの中に数字1が2個の場合は分配パターンとしてデータ保存し、そうでない場合はステップ1へ戻る。
ステップ4(S4)、C(m,n)の個数になるまで、分配パターンを作成する。
ステップ5(S5)、分配パターンを分配票としてプリントアウト印刷し、終了する。
【0020】
より詳細なフロチャートが図10である。変数を説明するとaは作成した分配パターンの個数、bはプログラム処理上の読取り桁数、dは数字1の個数、mは母数、nは選数、C(m,n)はそのまま組合せ関数公式にmとnを代入した計算数値である。
すべての分配パターンを作成し終えたら、パソコン担当はパソコン操作をして、全被検者名と分配パターンをプリントアウト印刷し、検体分配作業者へ渡す。検体分配作業は、被検者がセルフで行う形態や、会場担当やパソコン担当や検査機担当が請負う形態でもよい。
検体分配作業者は、各被検者の検体を、割当てられてる分配パターンの指示通りの番号の容器へ分配していく。全被検者分の検体を分配したら、混合検体の出来上がりである。検体分配作業者は、混合検体を検査機担当へ渡すこととなる。
【0021】
つぎに「コンピュータシステム」による判定工程を、図11のフロチャートを参照として説明する。
ステップ10、検査結果を入力する。
ステップ11、初期設定。
ステップ12、検査結果が陰性だった容器へ分配した被検者全員を、判定1(陰性)とする。
ステップ13、陽性だった容器個数が選数と同じ場合はステップ13を、異なる場合はステップ14を実行。
ステップ14、まだ判定され残っている1人を判定3(陽性)とする。
ステップ15、まだ判定され残っている全員を判定2(再検査)とする。
この判定工程のプログラムを、実施例1(被検者6名)で実行させると、図5の個人判定欄のようになる。矢印左のゼロは初期値であり、ステップ11条件に合う被検者は「1」になる。その後、ステップ13によって三田さんは「3」(陽性)になっている。
図6の実施例2でプログラム実行させると、ステップ11条件に合う被検者は「1」になる。その後、ステップ14によって被検者(三,五,六番)は「2」(再検査)になっている。
【0022】
より詳細なフロチャートが図12である。変数を説明するとaはプログラム処理上の読取り列、bはプログラム処理上の読取り桁数、dは検査結果が陽性の容器をカウントする変数である。
判定工程プログラムを終了させたら、パソコン担当は個人判定の結果を各被検者へと伝えて、集団検査が完了する。
前述のプログラムを記録媒体に読込ませ、その記録媒体を任意のパソコンに接続してプログラムを読み込ませれば、そのパソコンで本発明の検査方法(専用の混合検体から個人判定する)を実行できるパソコンとなる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、特殊な発明である。本発明は、前半工程と後半工程から成るが、どちらか一方の工程だけであっても、産業上の利用可能性がある発明である。類似した特殊性の発明としては、鍵と錠や画像データ圧縮ソフトや暗号通信方法がある。鍵と錠は別の物品のようでいて、同一方式で完全一致してこそ成り立つ。また片方単体では用を成さないし、偶然的に構成される事も有り得ない。カギには、機械式、電子式、カード型、シリンダ型など多種多様であるが、そのカギで開閉する錠と一体の存在であるし、発明の要旨も同じである。一つの発明概念であって、表裏不可分である。
画像データ圧縮ソフトや暗号通信方法も同様である。画像データ圧縮ソフトと画像データ解凍ソフト、暗号化の方法と暗号解読方法はひと組になって、ひとつの発明となる。本発明も同様で、検体圧縮工程と解凍判定工程がひと組となっていて、ひとつの発明である。
本発明のさらなる特殊性は、片方単体でも、産業上の利用可能性がある事である。医学検査業界は工程ごとに別業者が分業し合う業界である。「混合検体作成工程」と「判定工程」をそれぞれ別業者が行い得る点である。その意味において本発明の「混合検体作成工程」と「判定工程」は同一発明であるし、それぞれ単独で権利保護されるべき発明である。
「混合検体作成者」について補足説明する。混合検体を作る役割りは誰しも行い得る。検査人数や当業者の都合によりけり、である。混合検体作成を担当する者は、各被検者、会場担当、検査機担当それぞれの他、検査機自体が自動的に混合検体を作成するロボット化の構成も、将来的に考え得るものである。また混合検体を検査機にかける前に、攪拌するなどの処置は当然行ないうる事である。
【符号の説明】
【0024】
1、容器(混合検体を作る為の受皿)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2021-02-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
課題Cは、混合検体の検査結果(陰性、陽性)と、その検体へ分配した被検者の相関関係を辿れば解決できる。
命題E、混合検体が陰性ならば、その容器へ検体分配した被検者全員は陰性である。
命題F、混合検体の陽性数が選数と同数ならば、その陽性の容器の分配パターンで提出した1人のみ陽性で、その他全員は陰性である。
命題G、混合検体の陽性数が選数を超すならば、陰性の容器へ検体分配した被検者全員は陰性であり、その他全員は再検査者である。
命題H、混合検体の陽性数が選数を超すならば、陽性の容器群の範囲内で検体分配した被検者全員は再検査であり、その他全員は陰性である。
これら命題E~Hを活用すれば、被検者の一人ひとりが陽性か陰性が再検査かを判定できる。図1で解析、判定の経緯を説明する。図1左欄の一丸印は、一番市川さんが容器(1)、容器(2)に検体を入れている意味である。雫のマークは検体提出を表している。その真下に並んでいるのが容器であり、検体は容器内に溜まっていく。二重丸の二番似鳥さんの検体提出は容器(1)と容器(3)。三角三番三田さんの検体提出は容器(2)、容器(3)である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
図1図5を参照として実施例1を説明する。課題解決手段の項でも軽く説明したが、あらためて図1の見方を説明する。図1は、集団検査に関わる関係者同士の、情報や物のやりとりの概念図である。各関係者の情報を縦線で区切っている。縦軸は時間軸で、上端か検査スタートであり、下端が完了である。図内の説明文には、主語、客体が省略されているが、矢印基点が主語者になり、矢印の先が客体相手となる。
被検者人数を6人と計画したならば、組合せ公式から組合せ総数6となる母数と選数を逆算し、母数4、選数2が導かれる。容器総数に母数4を代入し、容器は4個と決定される。検体の分配数に選数2を代入し、分配数2つと決定される。
パソコン担当は、会場担当へ容器総数は4個と伝える。会場担当は、会場に容器4個に番号を付して並べる。
パソコン担当は、母数4、選数2の条件をパソコンプログラムに入力して、すべての組合せパターンを作成させる。この組合せパターンを、分配パターンとして転用する事が、本発明要旨のひとつである。分配パターン作成フロチャートは図9図10に示す。6種類の分配パターンは、図5に示すように被検者一番から六番まで割当てられる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図10
【補正方法】変更
【補正の内容】
図10
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図12
【補正方法】変更
【補正の内容】
図12