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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107143
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】測温管及び測温方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 5/53 20220101AFI20220713BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
G01J5/02 L
F27D21/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001894
(22)【出願日】2021-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】591098798
【氏名又は名称】日本電極株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】戸田 晋次郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓永
(72)【発明者】
【氏名】蒲 雄一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 信元
【テーマコード(参考)】
2G066
4K056
【Fターム(参考)】
2G066AA13
2G066AC01
2G066BA57
2G066BB05
2G066BB15
4K056AA09
4K056FA13
(57)【要約】
【課題】熱処理装置の炉内温度を長期間に亘って確実に測定することのできる測温管を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくともその一部が炉内に配置される黒鉛管と、黒鉛管の一端を封止する第1のキャップ112と、黒鉛管の他端に設けられ、覗き窓となる開口を有する第2のキャップ122と、覗き窓を封止する透明板123と、を備える。放射温度計300は、透明板123を介して、炉内の測定位置に位置する第1のキャップ112を測温する。黒鉛管は、当該黒鉛管の内部に不活性ガスを吹き込むためのガス吹込み孔121aを備え、黒鉛管の内部は、不活性ガスが吹き込まれて正圧となっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射温度計により熱処理装置の炉内を測温するために当該熱処理装置の内部に挿入される測温管であって、
少なくともその一部が炉内に配置される黒鉛管と、
前記黒鉛管の一端を封止する第1のキャップと、
前記黒鉛管の他端に設けられ、覗き窓となる開口を有する第2のキャップと、
前記覗き窓を封止する透明板と、
を備え、
前記放射温度計は、前記透明板を介して、炉内の測定位置に位置する前記第1のキャップを測温し、
前記黒鉛管は、
当該黒鉛管の内部に不活性ガスを吹き込むためのガス吹込み孔を備え、
前記黒鉛管の内部は、前記不活性ガスが吹き込まれて正圧となっている、
測温管。
【請求項2】
前記黒鉛管は、少なくともその一部が炉内に配置される第1の黒鉛管と、炉外に配置される第2の黒鉛管とからなり、
前記第1のキャップは、前記第1の黒鉛管の一端を封止し、
前記第1の黒鉛管の他端と前記第2の黒鉛管の一端とが互いに接続され、
前記第2のキャップは、前記第2の黒鉛管の他端に設けられ、
前記第1のキャップと、前記第1の黒鉛管とは、互いに着脱可能であり、
前記第1の黒鉛管と、前記第2の黒鉛管とは、互いに着脱可能であり、
前記第2の黒鉛管と、前記第2のキャップとは、互いに着脱可能である、
請求項1に記載の測温管。
【請求項3】
放射温度計により熱処理装置の炉内を測温するために当該熱処理装置の内部に挿入される測温管であって、
少なくともその一部が炉内に配置される黒鉛管と、
前記黒鉛管の一端に接続される接続パイプと、
前記接続パイプに接続され、当該接続パイプから炉外へと延びる他の黒鉛管と、
前記他の黒鉛管の一端を封止する第1のキャップと、
前記黒鉛管の他端に設けられ、覗き窓となる開口を有する第2のキャップと、
前記覗き窓を封止する透明板と、
を備え、
前記放射温度計は、前記透明板を介して、炉内の測定位置に位置する前記接続パイプを測温し、
前記黒鉛管は、
当該黒鉛管の内部に不活性ガスを吹き込むためのガス吹込み孔を備え、
前記黒鉛管、前記接続パイプ及び前記他の黒鉛管の内部は、前記不活性ガスが吹き込まれて正圧となっている、
測温管。
【請求項4】
測温管を用いて熱処理装置の炉内を測温する測温方法であって、
前記熱処理装置の内部に前記測温管を挿入し、前記測温管に設けられた測温対象部材を炉内の測定位置に位置させる工程と、
前記測温管の内部が正圧となるように、前記測温管の内部に不活性ガスを吹き込む工程と、
前記測温管の他端に設けられた透明板を介して、放射温度計により前記測温対象部材の温度を測定する工程と、
を備える測温方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理装置の炉内を測温するのに用いられる測温管及びこの測温管を用いた測温方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素材料やセラミックス系材料などの熱処理に用いられる熱処理装置としては、抵抗炉、誘導炉、アーク炉、プラズマ炉などの高温加熱炉が知られている。一般に、材料の熱処理温度が2000℃以上となる場合には、放射温度計、輝度温度計、二色温度計などの非接触式温度計によって、炉内温度の測定が行われている。例えば、抵抗炉の一種であるタンマン炉の炉内温度を測定する場合、炉心内部に通じる覗き窓を設けることにより、この覗き窓を介して、放射温度計で炉内温度を測定することが出来る。
【0003】
タンマン炉は比較的小規模な熱処理装置であるが、大量生産を行うような比較的大規模な熱処理装置としては、間接通電方式のアチソン炉や直接通電方式のLWG炉が知られている。また、連続熱処理炉としては、特許文献1に示すような横型のものや特許文献2、3に示すような縦型のものが提案されている。これらの熱処理装置においても、炉殻に覗き窓を設けることにより、放射温度計を用いて温度を測定することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/043402号
【特許文献2】特開2002-167208号公報
【特許文献3】特開2002-173309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、放射温度計を用いる場合には、光路における放射線の吸収や散乱などの影響がなく、また放射温度計の視野に測定対象物以外のものが入らないようにする必要がある。実験装置や試験プラントなどに用いられる比較的小規模の熱処理装置であれば、炉内を真空状態にする、もしくは炉内雰囲気を不活性雰囲気にするといった炉内管理も容易であり、また覗き窓から測定対象物までの距離が短いため、熱処理により材料や炉壁から発生したガスによる放射線の吸収や散乱といった問題が生じにくい。
【0006】
しかしながら、大量生産を行うような比較的大規模な熱処理装置においては、炉内雰囲気の制御が困難であり、また覗き窓から測定対象物までの光路が長い。そのため、炉内で発生したガスによる放射線の吸収や散乱などの影響を十分に抑制することができず、放射温度計を用いた温度測定が上手くいかないおそれがあった。特に、アチソン炉の場合には、コークスブリーズなどのパッキングコークスを介して通電する方式であることから、そもそも覗き窓を設けることが難しい。
【0007】
本発明は、上記課題を解決すべく、熱処理装置の炉内を測温するのに用いられる測温管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の測温管は、次のような構成を備える。
(1)放射温度計により熱処理装置の炉内を測温するために当該熱処理装置の内部に挿入される測温管である。
(2)少なくともその一部が炉内に配置される黒鉛管と、前記黒鉛管の一端を封止する第1のキャップと、前記黒鉛管の他端に設けられ、覗き窓となる開口を有する第2のキャップと、前記覗き窓を封止する透明板と、を備える。
(3)前記放射温度計は、前記透明板を介して、炉内の測定位置に位置する前記第1のキャップを測温する。
(4)前記黒鉛管は、当該黒鉛管の内部に不活性ガスを吹き込むためのガス吹込み孔を備え、前記黒鉛管の内部は、前記不活性ガスが吹き込まれて正圧となっている。
【0009】
本発明の測温管は、更に次のような構成を備えても良い。
(1)前記黒鉛管は、少なくともその一部が炉内に配置される第1の黒鉛管と、炉外に配置される第2の黒鉛管とからなり、前記第1のキャップは、前記第1の黒鉛管の一端を封止し、前記第1の黒鉛管の他端と前記第2の黒鉛管の一端とが互いに接続され、前記第2のキャップは、前記第2の黒鉛管の他端に設けられ、前記第1のキャップと、前記第1の黒鉛管とは、互いに着脱可能であり、前記第1の黒鉛管と、前記第2の黒鉛管とは、互いに着脱可能であり、前記第2の黒鉛管と、前記第2のキャップとは、互いに着脱可能である。
【0010】
また、本発明の測温管は、次のような構成を備える。
(1)放射温度計により熱処理装置の炉内を測温するために当該熱処理装置の内部に挿入される測温管である。
(2)少なくともその一部が炉内に配置される黒鉛管と、前記黒鉛管の一端に接続される接続パイプと、前記接続パイプに接続され、当該接続パイプから炉外へと延びる他の黒鉛管と、前記他の黒鉛管の一端を封止する第1のキャップと、前記黒鉛管の他端に設けられ、覗き窓となる開口を有する第2のキャップと、前記覗き窓を封止する透明板と、を備える。
(3)前記放射温度計は、前記透明板を介して、炉内の測定位置に位置する前記接続パイプを測温する。
(4)前記黒鉛管は、当該黒鉛管の内部に不活性ガスを吹き込むためのガス吹込み孔を備え、前記黒鉛管、前記接続パイプ及び前記他の黒鉛管の内部は、前記不活性ガスが吹き込まれて正圧となっている。
【0011】
本発明の測温方法は、次のような構成を備える。
(1)測温管を用いて熱処理装置の炉内を測温する測温方法である。
(2)前記熱処理装置の内部に前記測温管を挿入し、前記測温管の一端を封止するキャップを炉内の測定位置に位置させる工程。
(3)前記測温管の内部が正圧となるように、前記測温管の内部に不活性ガスを吹き込む工程。
(4)前記測温管の他端に設けられた透明板を介して、放射温度計により前記キャップの温度を測定する工程。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱処理装置の炉内温度を長期間に亘って確実に測定することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係る測温管を示す断面図。
図2】他の実施形態に係る測温管を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[1.第1の実施形態]
[構成]
[測温管]
図1を参照しつつ、測温管100について説明する。測温管100は、第1の黒鉛管111と、第1の黒鉛管111の一端に設けられる第1のキャップ112と、第1の黒鉛管111の他端に一端が接続される第2の黒鉛管121と、第2の黒鉛管121の他端に設けられる第2のキャップ122と、を備える。
【0015】
第1の黒鉛管111は、例えば人造黒鉛製の材料を円筒状に加工したものである。第1の黒鉛管111の両端の外側にはネジ溝が切られ、一端が第1のキャップ112の内側に切られたネジ溝と、他端が第2の黒鉛管121の一端の内側に切られたネジ溝と、それぞれ噛み合って互いに着脱可能に固定される。第1のキャップ112は、例えば人造黒鉛製の材料からなり、第1の黒鉛管111の一端を封止するための底面を有する円筒状で、内側には第1の黒鉛管111の一端に切られたネジ溝に噛み合うネジ溝が切られている。
【0016】
第2の黒鉛管121は、第1の黒鉛管111と同様に、例えば人造黒鉛製の材料を円筒状に加工したものである。第2の黒鉛管121の一端の内側には、第1の黒鉛管111の他端に切られたネジ溝に噛み合うネジ溝が切られている。一方で、第2の黒鉛管121の他端には、内側でなく外側にネジ溝が切られている。このネジ溝は、第2のキャップ122の内側に切られたネジ溝と噛み合って互いに着脱可能に固定される。
【0017】
第2のキャップ122は、例えば人造黒鉛製の材料からなり、底面を有する円筒状で、内側には第2の黒鉛管121の他端に切られたネジ溝に噛み合うネジ溝が切られている。第2のキャップ122の底面には、当該底面と同心円に開口した覗き窓が設けられる。この覗き窓は、石英ガラスなどの透明板123により内側から封止されている。換言すると、透明板123は、第2のキャップ122の内側に嵌め込まれ、第2のキャップ122と第2の黒鉛管121との間に挟持される。また、第2の黒鉛管121及び第2のキャップ122の近傍には図示しない冷却装置が設けられ、この冷却装置内部を循環する冷却水によって、第2の黒鉛管121及び第2のキャップ122は常時冷却されている。
【0018】
第2の黒鉛管121の側面には、ガス吹込み孔121aが開口している。このガス吹込み孔121aを介して、外部から第2の黒鉛管121及び第1の黒鉛管111内部にアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガスが吹き込まれる。この不活性ガスにより、第2の黒鉛管121及び第1の黒鉛管111内部には、常に圧力が加えられている。第2の黒鉛管121及び第1の黒鉛管111内部に吹き込まれたガスは、測温管100における接合部の僅かな隙間から、また、黒鉛材料が有する無数の細孔を介して、測温管100外部に漏出しているものと考えられる。
【0019】
[熱処理装置]
図1を参照しつつ、測温管100によって炉内を測温される熱処理装置200について説明する。熱処理装置200においては、炉殻210及びこの炉殻210の内側に設けられた耐火レンガなどの耐火物によりなる炉壁220により、熱処理中高温となる炉内を覆っている。すなわち、炉内とは、熱処理装置200における、炉壁220の内部空間を指す。炉殻210及び炉壁220には、測温管100が挿入される開口が設けられている。この開口と当該開口に挿入された測温管100との隙間には、例えば耐火繊維や耐火キャスタブルなどの耐火材230が埋め込まれ、これにより測温管100を固定している。
【0020】
炉内には、熱処理対象物240が存在している。この熱処理対象物240の外側であって、任意の距離をとった位置に、炉内温度を測定するための測定位置が設定されている。測温管100が熱処理装置200に挿入されると、第1のキャップ112がこの測定位置に位置する。
【0021】
炉内、すなわち炉壁220の内側は、カーボンブラックなどの断熱材が充填されている。また、炉内に配置された熱処理対象物240の周囲には、コークスブリーズなどの充填材が充填されている。すなわち、炉壁220に挿入された測温管100は断熱材に埋没し、熱処理対象物240は、充填材に埋没している。
【0022】
[放射温度計]
第2のキャップ122の覗き窓に対向する位置には、放射温度計300が設けられる。放射温度計300は、この覗き窓を介して、測温管100が炉内に挿入された状態における第1のキャップ112の温度を測定している。すなわち、放射温度計300は、直接炉内温度を測るのではなく、第1のキャップ112の位置の炉内温度を測定する。換言すると、第1のキャップ112は、本実施形態における測温対象部材である。
【0023】
[作用]
測温管100及び放射温度計300により、熱処理装置200の炉内温度を測定する方法について説明する。炉内温度を測定する際には、測温管100の第1のキャップ112側が、熱処理装置200の炉殻210及び炉壁220に設けられた開口から熱処理装置200の内部空間に挿入される。これにより、第1のキャップ112を炉内の測定位置に位置させる。第1のキャップ112が測定位置でずれないように、測温管100は耐火材230により炉殻210及び炉壁220の開口に固定される。この時、第1のキャップ112は炉内に、第1の黒鉛管111はその一部が炉内に、第2の黒鉛管121及び第2のキャップ122は炉外に配置されている。
【0024】
熱処理装置200に対して測温管100が固定された状態で、ガス吹込み孔121aから測温管100内部に不活性ガスが吹き込まれる。この状態で、第2のキャップ122の覗き窓に対向するように、放射温度計300が設けられる。放射温度計300は、覗き窓に設けられた透明板123を介して、第1のキャップ112の温度を測定する。これにより、熱処理装置200の炉内温度を直接測定することが出来る。
【0025】
[効果]
(1)本実施形態の測温管100の第2の黒鉛管121の側面には、ガス吹込み孔121aが開口しており、このガス吹込み孔121aを介して、測温管100内部には不活性ガスが吹き込まれている。これにより、測温管100内部は常時正圧となり、測温管100内部に炉内発生ガスが侵入することを妨げるので、放射温度計300の光路における放射線の吸収や散乱などの影響を抑えることが出来る。従って、確実に炉内温度を測定することが出来る。
【0026】
また、炉内に存在する酸素や熱処理により材料や炉壁から発生したガスにより、測温管100の酸化消耗は避けられないが、測温管100の結合部や測温管100に存在する無数の細孔からはこの不活性ガスが漏れ出ているため、例えば2000℃以上となるような炉内においても測温管100の酸化消耗の進行を遅らせることが出来る。従って、長期間に亘って炉内温度を測定することが出来る。
【0027】
(2)測温管100は、炉内に配置される部分と炉外に配置される部分とで、その周囲温度の違いにより、酸化消耗の度合いが異なっている。すなわち、少なくともその一部が炉内に配置される第1の黒鉛管111及び第1のキャップ112は、繰り返し高温に晒されるので、炉外に配置される第2の黒鉛管121及び第2のキャップ122に比べると、多数回の使用により劣化や酸化消耗が進行してくる。そこで、本実施形態の測温管100の第1の黒鉛管111、第1のキャップ112、第2の黒鉛管121及び第2のキャップ122は、互いに着脱可能に固定されるようにした。これにより、劣化や酸化消耗が進行した部材のみを交換することが出来るので、経済的である。
【0028】
(3)第2の黒鉛管121及び第2のキャップ122は、図示しない冷却装置により冷却される。これにより、第2の黒鉛管121及び第2のキャップ122の酸化消耗を防ぐことに加え、放射温度計300への放熱及び輻射熱を防いで放射温度計300が故障するリスクを低減することが出来る。
【0029】
(4)耐火材230として、例えば、アルミナキャスタブルなどの絶縁性の材料を使用すれば、本実施形態の測温管100は、炉殻210及び炉壁220から絶縁されることとなる。すなわち、測温管100は、熱処理装置200から絶縁されている。これにより、予期せぬ迂回電流や漏電を防止し、熱処理装置200の操業安定性並びに安全性を確保することが出来る。
【0030】
(5)放射温度計300は、測温管100とは別部材であるため、熱処理に伴う測温管100または熱処理装置200の膨張などにより、測定位置に対する放射温度計300の光路がずれても、容易に修正することが出来る。
【0031】
[2.他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。具体的には、次のような他の実施形態も包含する。
【0032】
(1)第1の実施形態の測温管100は、図1に示すように、水平方向に配置されているが、これに限られない。例えば、図2に示すように、熱処理装置200に対して斜め上方から挿入されるように角度をつけて配置しても良い。以下では、第1の実施形態との違いについてのみ説明する。なお、図2の熱処理装置200は、横型のアチソン炉を例とした。そのため、図2の熱処理装置200は、炉殻210や炉壁220、耐火材230を備えず、例えばレンガなどの耐火物からなる容器である。この容器にコークスなどの充填材が充填され、その中に測温管100の一部及び熱処理対象240が埋没している。
【0033】
本実施形態においては、測定位置までの距離が長いため、第1の測温管111が複数設けられている。複数の第1の測温管111は、ネジ溝などにより互いに着脱可能に固定されている。第1のキャップ112は設けられず、代わりにV字型の接続パイプ132が接続される。接続パイプ132は、例えば人造黒鉛性の材料を加工してなる。接続パイプ132の他端は、上方に延伸して炉外へと突出する第3の黒鉛管131に接続されている。第3の黒鉛管131は、第1の黒鉛管111及び第2の黒鉛管121と同様に多孔質である。なお、本実施形態の第3の黒鉛管131は、第1の測温管111と同様に、複数の第3の黒鉛管131により構成される。第3の黒鉛管の他端は開口しており、従ってガス吹込み孔121aから吹き込まれた不活性ガスは、第1の第1の測温管111及び接続パイプ132を介して、第3の黒鉛管131の他端の開口から炉外へと抜けていく。第1の実施形態の第1の測温管111の一端に設けられた第1のキャップ112に開口を設けると、この開口から炉内発生ガスが流入するおそれがあったが、本実施形態ではそのようなおそれがないため、このような形態となっている。また、ガスの通り道を作ることにより、炉内発生ガスが測温管100内部に侵入しても、不活性ガスと共に第3の黒鉛管131の他端の開口から炉外へと抜くことが出来る。なお、第1の実施形態と同様に、第3の黒鉛管131の他端の開口をキャップにより封止しても良い。
【0034】
本実施形態においては、放射温度計300が測温管100の接続パイプ132を測温することにより、炉内を測温することが出来る。換言すると、接続パイプ132は、本実施形態における測温対象部材である。本実施形態は、第1の実施形態の測温管100を横型の熱処理装置200に適用した例である。
【0035】
(2)第1の実施形態の放射温度計300の代わりに、二色温度計などの他の非接触式の温度計を用いても良い。
【0036】
(3)第1の実施形態の測温管100の各構成は、ネジ溝により着脱可能としたが、一部をはめ込み式としても良い。この場合でも、一部を着脱可能とすることが出来る。
【0037】
(4)第1の実施形態においては、第1のキャップ112により測温管100の一端を封止したが、炉内発生ガスの流入を防ぐように不活性ガスの流入量を増加させるなどの処置を講じるのであれば、第1のキャップ112に開口を設けることも可能である。
【0038】
(5)第1の実施形態の測温管100の測定対象である熱処理装置200は、縦型に限らず、横型であっても良い。また、第1の実施形態の測温管100を、V字型の接続パイプ132及び第3の黒鉛管131を用いることなく、熱処理装置200に対して斜めに挿入して測温しても良い。
【符号の説明】
【0039】
100 測温管
111 第1の黒鉛管
112 第1のキャップ
121 第2の黒鉛管
122 第2のキャップ
121a ガス吹込み孔
123 透明板
131 第3の黒鉛管
132 接続パイプ
200 熱処理装置
210 炉殻
220 炉壁
230 耐火材
240 熱処理対象品
300 放射温度計
図1
図2