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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107150
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】タイヤ加硫金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20220713BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20220713BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20220713BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29L30:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001905
(22)【出願日】2021-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安永 智一
【テーマコード(参考)】
4F202
4F203
【Fターム(参考)】
4F202AA45
4F202AH20
4F202CA21
4F202CB01
4F202CP01
4F202CU02
4F202CU07
4F203AA45
4F203AB03
4F203AH20
4F203AM32
4F203DA11
4F203DB01
4F203DC01
4F203DL10
4F203DL12
4F203DN26
(57)【要約】
【課題】肉薄のビードリングであっても、タイヤの内表面とブラダーとの間の空気を排出できるタイヤ加硫金型を提供する。
【解決手段】タイヤ加硫金型は、タイヤのトレッドを成形するトレッド型部と、タイヤのサイドウォールにタイヤ軸方向外側から接するサイド型部と、タイヤのビードにタイヤ軸方向外側から接するビードリングと、を備え、サイド型部は、ビードリングと隣接するタイヤ軸方向内側面で開口する排気孔を有し、ビードリングは、膨張されたブラダーに接するブラダー当接面からタイヤ軸方向外側へ向かって延びる直線状の第1の孔部と、第1の孔部と排気孔とを互いに連通させる連通経路と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのトレッドを成形するトレッド型部と、前記タイヤのサイドウォールにタイヤ軸方向外側から接するサイド型部と、前記タイヤのビードにタイヤ軸方向外側から接するビードリングと、を備え、
前記サイド型部は、前記ビードリングと隣接するタイヤ軸方向内側面で開口する排気孔を有し、
前記ビードリングは、膨張されたブラダーに接するブラダー当接面からタイヤ軸方向外側へ向かって延びる直線状の第1の孔部と、前記第1の孔部と前記排気孔とを互いに連通させる連通経路と、を備える、タイヤ加硫金型。
【請求項2】
前記第1の孔部は、前記ビードリングのタイヤ軸方向外側面で開口する開口部を有し、
前記連通経路は、前記開口部から前記ビードリングの外周側へ向かって延びる、前記ビードリングのタイヤ軸方向外側面に形成された溝で構成される、請求項1に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項3】
前記第1の孔部は、前記ビードリングの内部で終端する終端部を有し、
前記連通経路は、前記終端部から前記ビードリングの外周側へ向かって直線状に延びて前記ビードリングのタイヤ軸方向外側面で開口する第2の孔部で構成される、請求項1に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項4】
前記ビードリングは、本体部と、前記本体部の内周側且つタイヤ軸方向外側に嵌合されるリング部と、で構成され、
前記第1の孔部の終端部は、前記リング部のタイヤ軸方向内側面の外周側に形成された前記リング部の全周に亘って延びる空洞で構成される、請求項3に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項5】
前記ビードリングは、前記第1の孔部の終端部から前記第1の孔部と同じ方向に延びて前記ビードリングのタイヤ軸方向外側面で開口する第3の孔部と、前記第1の孔部の終端部から前記第2の孔部と同じ方向に延びて前記ビードリングの内周面で開口する第4の孔部と、前記第3及び第4の孔部を閉塞する栓と、を備える、請求項3に記載のタイヤ加硫金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤ加硫金型に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、加硫成型時にタイヤの内表面とブラダーとの間の空気を排出するためのベントホールを設けたビードリングが開示されている。このベントホールは、ブラダーの膨張により当該ブラダーと圧接しうるブラダー当接面上で一端が開口し、前記一端からタイヤ軸方向外側へ向かって延びている。ベントホールの他端は、ビードリングのタイヤ軸方向外側面上で開口している。
【0003】
ところで、ビードリングの内周側には、タイヤ加硫装置の中心機構が配置される。中心機構は、ブラダーやブラダーに加熱加圧媒体を給排するための配管を備える。中心機構は所定のサイズを有しているため、それに応じてビードリングの内径が規定される。その結果、タイヤの内径(リム径に相当)が小さい場合は、タイヤ径方向の厚みを小さくした肉薄のビードリングが用いられる。
【0004】
特許文献1のベントホールは、ビードリングのタイヤ軸方向外側面上で他端が開口しているが、肉薄のビードリングの場合、前記他端が、ビードリングに隣接するサイド型部のタイヤ軸方向内側面で塞がれることとなり、排気を行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-75428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、肉薄のビードリングであっても、タイヤの内表面とブラダーとの間の空気を排出できるタイヤ加硫金型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の空気入りタイヤ加硫金型は、タイヤのトレッドを成形するトレッド型部と、前記タイヤのサイドウォールにタイヤ軸方向外側から接するサイド型部と、前記タイヤのビードにタイヤ軸方向外側から接するビードリングと、を備え、
前記サイド型部は、前記ビードリングと隣接するタイヤ軸方向内側面で開口する排気孔を有し、
前記ビードリングは、膨張されたブラダーに接するブラダー当接面からタイヤ軸方向外側へ向かって延びる直線状の第1の孔部と、前記第1の孔部と前記排気孔とを互いに連通させる連通経路と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るタイヤ加硫金型の一例を概略的に示す縦断面図
図2】下側ビードリングの平面図
図3図1の要部拡大図
図4】第2実施形態に係る下側ビードリングの断面図
図5】第3実施形態に係る下側ビードリングの断面図
図6】第4実施形態に係る下側ビードリングの断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、タイヤ加硫金型における一実施形態について、図1図3を参照しながら説明する。なお、各図(図4図6も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0010】
各図において、タイヤ軸方向D1とは、タイヤTの回転中心であるタイヤ回転軸と平行な方向であり、タイヤ径方向D2とは、タイヤTの直径方向であり、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸周りの方向である。また、タイヤ赤道面S1とは、タイヤ回転軸に直交する面であって、タイヤTのタイヤ軸方向D1の中心に位置する面のことであり、タイヤ子午面とは、タイヤ回転軸を含む面であり、タイヤ赤道面S1と直交する面である。
【0011】
なお、タイヤ軸方向D1において、内側とは、タイヤ赤道面S1に近い側のことであり、外側とは、タイヤ赤道面S1から遠い側のことである。また、タイヤ径方向D2において、内側とは、タイヤ回転軸に近い側のことであり、外側とは、タイヤ回転軸から遠い側のことである。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、タイヤ子午線断面に沿ったタイヤ加硫金型10(以下、単に「金型10」と呼ぶ場合がある)の断面を示す。この金型10は型閉め状態にある。タイヤTは、タイヤ軸方向D1を上下に向けてセットされる。図1において、右方向はタイヤ径方向外側、左方向はタイヤ径方向内側である。
【0013】
金型10は、タイヤTのトレッドを成形するトレッド型部11と、タイヤTの一対のサイドウォールにタイヤ軸方向外側からそれぞれ接する下側サイド型部12及び上側サイド型部13と、タイヤTの一対のビードにタイヤ軸方向外側からそれぞれ接する下側ビードリング14及び上側ビードリング15とを備える。図示を省略しているが、トレッド型部11の内面には、タイヤTのトレッド面にトレッドパターンを形成するための凹凸部が設けられている。下側ビードリング14及び上側ビードリング15は、タイヤ軸方向D1に互いに離間して配置されている。
【0014】
金型10の内周側、より具体的に下側ビードリング14及び上側ビードリング15の内周側には、タイヤ加硫装置の中心機構20が配置されている。中心機構20は、タイヤTを拡張変形するためのブラダー21と呼ばれるゴムバッグを備える。また、中心機構20は、スチームや窒素ガスなどの加熱加圧媒体をブラダーに給排するための配管(図示していない)を備える。中心機構20は所定のサイズを有しているため、それに応じて下側ビードリング14の内径及び上側ビードリング15の内径が規定される。
【0015】
金型10は、セットされたタイヤTの外表面に接する成形面10aを備える。図示を省略しているが、成形面10aには、金型10の内部と外部とを連通させる多数の排気孔(ベントホール)が設けられている。排気孔は、トレッド型部11の内面、サイド型部12,13の内面、及び、ビードリング14,15の内面に設けられている。加硫成形時には、その排気孔を通じてタイヤTと成形面10aとの間の空気が排出される。また、金型10の外部には図示しない吸引機が設置されており、排気孔内の空間を吸引可能に構成されている。
【0016】
図2は、下側ビードリング14の平面図である。図3は、図1の要部拡大図であり、下側ビードリング14に関して図2のA-A矢視断面に相当する。
【0017】
下側サイド型部12は、下側ビードリング14と隣接するタイヤ軸方向内側面12a及びタイヤ径方向内側面12bを有する。また、下側サイド型部12は、タイヤ軸方向内側面12aで開口する排気孔3を有する。排気孔3は、タイヤ軸方向内側面12aのうち外周側で開口している。排気孔3の図示されていない方の端部は、金型10の外部に通じ、吸引機に接続されている。
【0018】
下側ビードリング14は、ビードのビードヒールに接するビードヒール成形面14aと、膨張されたブラダー21に接するブラダー当接面14bと、タイヤ径方向外側を向いた外周面14cと、タイヤ径方向内側を向いた内周面14dと、タイヤ軸方向外側を向いた外側面14eと、を有する。下側ビードリング14の内面は、タイヤTの外表面のプロファイルに沿って下側サイド型部12の内面と滑らかに連なっている。
【0019】
また、外周面14cと外側面14eからなる角部14fは、面取り状の斜面により形成されている。下側サイド型部12に下側ビードリング14を嵌合すると、外周面14cがタイヤ径方向内側面12bに密着し、外側面14eがタイヤ軸方向内側面12aに密着するとともに、タイヤ周方向に沿って延びた周隙間14gが角部14fに面して設けられる。下側サイド型部12の排気孔3は、周隙間14gに接続されている。
【0020】
下側ビードリング14は、ブラダー当接面14bに設けた入口4aから、角部14fに設けた出口4bに至る排気経路4を有する。出口4bは、下側サイド型部12の排気孔3に連通している。図2に示すように、排気経路4はタイヤ周方向の複数箇所(本実施形態では12箇所)に設けられている。
【0021】
排気経路4は、ブラダー当接面14bからタイヤ軸方向外側へ向かって延びる直線状の第1の孔部41と、第1の孔部41と排気孔3とを互いに連通させる連通経路42と、を備える。
【0022】
第1の孔部41は、断面円形状の円孔により形成されている。第1の孔部41は、ブラダー当接面14bで開口して入口4aを形成する。また、第1の孔部41は、外側面14eで開口する開口部41aを有する。開口部41aは、下側サイド型部12のタイヤ軸方向内側面12aに隣接している。
【0023】
第1の孔部41は、ブラダー当接面14bに対して略法線方向に設けられている。第1の孔部41は、入口4aからタイヤ軸方向外側へ向かってブラダー当接面14bの法線方向に延びてもよいが、ブラダー当接面14bの法線方向に対してタイヤ径方向外側に傾斜して延びるのが好ましい。ブラダー当接面14bの法線方向と第1の孔部41の延びる方向とがなす角度θは、15°以下が好ましく、本実施形態では5°である。
【0024】
連通経路42は、第1の孔部41の開口部41aから下側ビードリング14の外周側へ向かって延びる、外側面14eに形成された溝43で構成される。溝43は、タイヤ径方向D2に沿って延び、角部14fに開口している。溝43の開口部が出口4bとなる。
【0025】
出口4bは角部14fに設定されており、排気経路4(連通経路42)は周隙間14gに連通している。また、下側サイド型部12には、周隙間14gに通じる排気孔3が設けられている。このような周隙間14gを介在させることにより、排気経路4と排気孔3がタイヤ周方向に位置ずれしていても、互いが適切に連通される。したがって、図3では、排気経路4と排気孔3とが同一断面上に現れているが、これに限定されるものではない。
【0026】
本実施形態で用いられる下側ビードリング14は、厚みが比較的小さい肉薄のビードリングであり、第1の孔部41の開口部41aは、下側サイド型部12のタイヤ軸方向内側面12aによって塞がれる位置にあるが、開口部41aから延びる連通経路42(溝43)を設けることで、第1の孔部41と排気孔3は互いに連通される。これにより、肉薄のビードリングであっても、タイヤTの内表面とブラダー21との間の空気を排気経路4及び排気孔3を通じて外部へ排出することができる。さらに、排気孔3に接続された吸引機を用いることで優れた排気性能を発揮することができる。
【0027】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態に係る下側ビードリング14の断面図であり、下側ビードリング14に関して図2のA-A矢視断面に相当する。第2実施形態は、下側ビードリング14以外の構成は第1実施形態と同じであるため詳細な説明は省略する。
【0028】
第1の孔部41は、ブラダー当接面14bで開口して入口4aを形成する。また、第1の孔部41は、ブラダー当接面14bからタイヤ軸方向外側へ向かって直線状に延びて、下側ビードリング14の内部の終端部41eで終端している。
【0029】
第1の孔部41は、ブラダー当接面14bに対して略法線方向に設けられている。第1の孔部41は、入口4aからタイヤ軸方向外側へ向かってブラダー当接面14bの法線方向に延びているが、これに限定されない。第1実施形態のように、第1の孔部41は、ブラダー当接面14bの法線方向に対してタイヤ径方向外側に傾斜して延びていてもよい。
【0030】
連通経路42は、第1の孔部41の終端部41eから下側ビードリング14の外周側へ向かって直線状に延びて、外側面14e(角部14f)で開口する第2の孔部44で構成される。第2の孔部44の開口部が出口4bとなる。
【0031】
第1の孔部41及び第2の孔部44は、それぞれ断面円形状の円孔により形成されている。第2実施形態では、第2の孔部44が第1の孔部41よりも大径に形成されているが、これに限られない。また、第2実施形態では、第1の孔部41と第2の孔部44とがなす角が鈍角であるが、これに限られない。
【0032】
以上のように、第1実施形態及び第2実施形態に係るタイヤ加硫金型10は、
タイヤTのトレッドを成形するトレッド型部11と、タイヤTのサイドウォールにタイヤ軸方向外側から接するサイド型部12と、タイヤTのビードにタイヤ軸方向外側から接するビードリング14と、を備え、
サイド型部12は、ビードリング14と隣接するタイヤ軸方向内側面12aで開口する排気孔3を有し、
ビードリング14は、膨張されたブラダー21に接するブラダー当接面14bからタイヤ軸方向外側へ向かって延びる直線状の第1の孔部41と、第1の孔部41と排気孔3とを互いに連通させる連通経路42と、を備えるものである。
【0033】
この構成によれば、連通経路42によって第1の孔部41と排気孔3は互いに連通される。これにより、肉薄のビードリング14であっても、タイヤTの内表面とブラダー21との間の空気を第1の孔部41、連通経路42、及び排気孔3を通じて外部へ排出することができる。
【0034】
また、第1実施形態に係るタイヤ加硫金型10においては、第1の孔部41は、ビードリング14のタイヤ軸方向外側面14eで開口する開口部41aを有し、
連通経路42は、開口部41aからビードリング14の外周側へ向かって延びる、ビードリング14のタイヤ軸方向外側面14eに形成された溝43で構成される。
【0035】
この構成によれば、例えば第1の孔部41をドリル等によって一つの貫通孔として形成し、その後、第1の孔部41の開口部41aからビードリング14の外周へ向かって外側面14eに溝43を形成することで、第1の孔部41と連通経路42からなる排気経路4を容易に形成できる。
【0036】
また、第2実施形態に係るタイヤ加硫金型10においては、第1の孔部41は、ビードリング14の内部で終端する終端部41eを有し、
連通経路42は、終端部41eからビードリング14の外周側へ向かって直線状に延びてビードリング14のタイヤ軸方向外側面14eで開口する第2の孔部44で構成される。
【0037】
この構成によれば、第1の孔部41と第2の孔部44からなる排気経路4が連続した一つの孔で構成され、さらに排気経路4の長さを短くできるため、排気性能に優れる。
【0038】
なお、タイヤ加硫金型10は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、タイヤ加硫金型10は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記した複数の実施形態の各構成や各方法等を任意に採用して組み合わせてもよく、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0039】
<第3実施形態>
図5は、第3実施形態に係る下側ビードリング14の断面図であり、下側ビードリング14に関して図2のA-A矢視断面に相当する。第3実施形態は、下側ビードリング14以外の構成は第1実施形態と同じであるため詳細な説明は省略する。
【0040】
下側ビードリング14は、本体部141とリング部142とで構成されている。リング部142は、下側ビードリング14の内周面14dと外側面14eからなる角部が分割されたものである。すなわち、リング部142は、本体部141の内周側且つタイヤ軸方向外側に嵌合される。
【0041】
下側ビードリング14は、タイヤ径方向D2及びタイヤ周方向に沿って延びる第1分割面143と、タイヤ軸方向D1及びタイヤ周方向に沿って延びる第2分割面144と、を有する。第1分割面143と第2分割面144により、下側ビードリング14は、本体部141とリング部142に分割される。本体部141とリング部142はネジ等により連結される。
【0042】
リング部142は、第1分割面143と第2分割面144からなる角部が断面矩形状に切り欠かれている。これにより、リング部142を本体部141に嵌合した状態では、リング部142のタイヤ軸方向内側面の外周側にリング部142の全周に亘って延びる空洞145が設けられる。
【0043】
第1の孔部41は、ブラダー当接面14bからタイヤ軸方向外側へ向かって直線状に延びて第1分割面143に達し、空洞145に開口している。また、第2の孔部44は、空洞145から下側ビードリング14の外周側へ向かって直線状に延びている。よって、空洞145は、第1の孔部41の終端部41eとも言える。
【0044】
第1の孔部41と第2の孔部44は、空洞145に連通しており、このような空洞145を介在させることにより、第1の孔部41と第2の孔部44がタイヤ周方向に位置ずれしていても、互いに適切に連通される。そのため、第1の孔部41や第2の孔部44の加工が容易である。なお、図5では、第1の孔部41と第2の孔部44とが同一断面上に現れているが、これに限定されるものではない。
【0045】
以上のように、第3実施形態に係るタイヤ加硫金型10においては、ビードリング14は、本体部141と、本体部141の内周側且つタイヤ軸方向外側に嵌合されるリング部142と、で構成され、第1の孔部41の終端部41eは、リング部142のタイヤ軸方向内側面の外周側に形成されたリング部142の全周に亘って延びる空洞145で構成される。
【0046】
この構成によれば、第1の孔部41と第2の孔部44がタイヤ周方向に位置ずれしていても、互いに適切に連通されるため、第1の孔部41や第2の孔部44の加工が容易である。
【0047】
<第4実施形態>
図6は、第4実施形態に係る下側ビードリング14の断面図であり、下側ビードリング14に関して図2のA-A矢視断面に相当する。第4実施形態は、下側ビードリング14以外の構成は第1実施形態と同じであるため詳細な説明は省略する。
【0048】
下側ビードリング14は、第1の孔部41の終端部41eから第1の孔部41と同じ方向に延びて外側面14eで開口する第3の孔部45と、第1の孔部41の終端部41eから第2の孔部44と同じ方向に延びて内周面14dで開口する第4の孔部46と、第3及び第4の孔部45,46を閉塞する栓47と、を備える。
【0049】
第1の孔部41と第3の孔部45は、ドリルによって一つの貫通孔として形成される。また、第2の孔部44と第4の孔部46は、第1の孔部41と第3の孔部45を構成する貫通孔に交差するように、ドリルによって一つの貫通孔として形成される。これらの二つの貫通孔の交差部が第1の孔部41の終端部41eとも言える。
【0050】
第3の孔部45の開口部はザグリ加工されており、このザグリ加工された開口部に栓47が脱着可能に装着される。同様に、第4の孔部46の開口部はザグリ加工されており、このザグリ加工された開口部に栓47が脱着可能に装着される。
【0051】
以上のように、第4実施形態に係るタイヤ加硫金型10においては、ビードリング14は、第1の孔部41の終端部41eから第1の孔部41と同じ方向に延びてビードリング14のタイヤ軸方向外側面14eで開口する第3の孔部45と、第1の孔部41の終端部41eから第2の孔部44と同じ方向に延びてビードリング14の内周面14dで開口する第4の孔部46と、第3及び第4の孔部45,46を閉塞する栓47と、を備える、という構成である。
【0052】
この構成によれば、第1の孔部41及び第2の孔部44を清掃する際、栓47を外すことで第1の孔部41及び第2の孔部44を容易に清掃することができる。
【0053】
(1)上記の如き排気経路4は、下側ビードリング14及び上側ビードリング15の少なくとも一方が有していればよい。したがって、前述の実施形態では、上記の如き排気経路4が下側ビードリング14に設けられている例を示したが、これに代えて、または加えて、上側ビードリング15に設けることが可能である。
【0054】
(2)前述の実施形態では、トレッド型部11と一対のサイド型部12,13とを備えた金型構造を例示したが、これに限定されず、例えばトレッド型部の中央部で上下に二分割された金型構造であってもよい。
【0055】
(3)前述したタイヤ加硫金型は、ビードリングやサイド型部に設けられる排気経路や排気孔を上記の如く構成したこと以外は、通常のタイヤ加硫金型と同等であり、従来公知の形状や材質、機構などが何れも本発明に採用することができる。
【符号の説明】
【0056】
3…排気孔、4…排気経路、4a…入口、4b…出口、10…タイヤ加硫金型、11…トレッド型部、12…下側サイド型部、12a…タイヤ軸方向内側面、13…上側サイド型部、14…下側ビードリング、14a…ビードヒール成形面、14b…ブラダー当接面、14c…外周面、14d…内周面、14e…外側面、14f…角部、14g…周隙間、15…上側ビードリング、20…中心機構、21…ブラダー、41…第1の孔部、41a…開口部、41e…終端部、42…連通経路、43…溝、44…第2の孔部、45…第3の孔部、46…第4の孔部、47…栓、141…本体部、142…リング部、145…空洞、D1…タイヤ軸方向、D2…タイヤ径方向、T…タイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6