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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107167
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】砥石及び砥石の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24D 3/32 20060101AFI20220713BHJP
   B24D 5/02 20060101ALI20220713BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
B24D3/32
B24D5/02 Z
B24D3/00 340
B24D3/00 320A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001941
(22)【出願日】2021-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】595073432
【氏名又は名称】信濃電気製錬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100154391
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康義
(72)【発明者】
【氏名】西條 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大崎 浩美
【テーマコード(参考)】
3C063
【Fターム(参考)】
3C063AA02
3C063AB03
3C063BB01
3C063BB03
3C063BB04
3C063BB07
3C063BC03
3C063BC09
3C063BC10
3C063BD01
3C063BD20
3C063CC04
3C063EE40
(57)【要約】
【課題】円筒状金属部品等の被加工物を高精度かつ高効率に研削研磨することができ、大幅な工程改善、研磨精度向上による品質改善、または新規用途への展開が実現する砥石及びその砥石の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は砥粒、樹脂及び硬化触媒を含む砥粒組成物を硬化した硬化物からなる砥石であり、樹脂はレゾール型フェノール樹脂を50質量%以上含み、硬化触媒の配合量がフェノール樹脂100質量部に対し5~23質量部である。本発明の砥石の製造方法は、砥粒、樹脂及び硬化触媒を含む混合液を混合して砥粒組成物を作製する工程、砥粒組成物を型に流し込む工程、及び型に流し込んだ砥粒組成物を硬化させる工程を含み、砥粒組成物における樹脂はレゾール型フェノール樹脂を50質量%以上含み、砥粒組成物を硬化させる工程は、第一の加熱温度で所定時間加熱した後、第一の加熱温度よりも高温の第二の加熱温度で所定時間加熱する二段階加熱による硬化である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒、樹脂及び硬化触媒を含む砥粒組成物を硬化した硬化物からなる砥石であって、
前記樹脂は、レゾール型フェノール樹脂を50質量%以上含み、
前記硬化触媒の配合量が、フェノール樹脂100質量部に対し5~23質量部であることを特徴とする砥石。
【請求項2】
前記砥粒及び前記樹脂の合計100質量部に対する前記樹脂の配合量が10~40質量部である請求項1に記載の砥石。
【請求項3】
前記レゾール型フェノール樹脂の数平均分子量(Mn)が300~600である請求項1または2に記載の砥石。
【請求項4】
前記樹脂が弾性樹脂を含み、
前記弾性樹脂は、イソブレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロブレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム及びプロピレン・ブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂である請求項1~3のいずれか1項に記載の砥石。
【請求項5】
前記樹脂における前記弾性樹脂の割合が5~50質量%である請求項4に記載の砥石。
【請求項6】
前記砥粒組成物が気孔生成剤を含む請求項1~5のいずれか1項に記載の砥石。
【請求項7】
前記樹脂100質量部に対する前記気孔生成剤の配合量が1~40質量部である請求項6に記載の砥石。
【請求項8】
前記砥粒が、炭化ケイ素、アルミナ、酸化クロム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム及びジルコンサンドからなる群から選択される少なくとも1種のセラミックの砥粒である請求項1~7のいずれか1項に記載の砥石。
【請求項9】
レーザー回折散乱法により測定した前記砥粒の体積平均一次粒子径が5~27μmである請求項1~8のいずれか1項に記載の砥石。
【請求項10】
スーパーフィシャル15Yスケールで測定したロックウェル硬度が-60~0である請求項1~9のいずれか1項に記載の砥石。
【請求項11】
センタレス研磨及び円筒研削最終仕上げ用砥石である請求項1~10のいずれか1項に記載の砥石。
【請求項12】
砥粒、樹脂及び硬化触媒を含む混合液を混合して砥粒組成物を作製する工程、
前記砥粒組成物を型に流し込む工程、及び
前記型に流し込んだ砥粒組成物を硬化させる工程を含み、
前記砥粒組成物における前記樹脂はレゾール型フェノール樹脂を50質量%以上含み、
前記砥粒組成物を硬化させる工程は、第一の加熱温度で所定時間加熱した後、前記第一の加熱温度よりも高温の第二の加熱温度で所定時間加熱する二段階加熱による硬化である砥石の製造方法。
【請求項13】
前記第一の加熱温度が30℃以上であり、前記第二の加熱温度が60℃以上である請求項12に記載の砥石の製造方法。
【請求項14】
前記所定の加熱時間が1~10時間である請求項12または13に記載の砥石の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥石及び砥石の製造方法に関し、特にセンタレス研磨、円筒研削でワーク(工作物)を仕上げ研磨するための回転砥石及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車部品や搬送用ロールなどの円筒状ワークを研削研磨するためには、センタレス研磨や、円筒研削が用いられる。これらの研削研磨には砥粒を樹脂等で固定した回転砥石が用いられ、これを回転させて、被加工物に接触させることで任意の表面状態に加工する。
【0003】
回転砥石に固定する砥粒には、例えば、ダイヤモンド、炭化ケイ素、アルミナ等が挙げられ、砥粒を固定する結合剤には、一般砥石としてはレジンボンド、ビトリファイドが挙げられ、弾性砥石としてはポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、ゴム等が挙げられる。レジンボンドやビトリファイドを結合剤とした砥石は非常に硬く、研削力に優れるため、粗研削から中仕上げまでに広く用いられている。一方、ポリビニルアセタール樹脂やポリウレタン樹脂などの弾性素材を結合剤に用いた弾性砥石は、弾性の効果により、被加工物の表面粗さが細かく高精度に加工することに優れており、スクラッチ等の不具合の発生も少ないという特徴がある。
【0004】
回転砥石には、通常、上述の通り砥粒を結合剤で固定した砥石が用いられる。例えば、結合剤としてフェノール樹脂を用いたレジンボンド砥石が従来技術として知られている(例えば、非特許文献1)。フェノール樹脂には、ノボラック型とレゾール型とがあり、ノボラック型フェノール樹脂が砥石の主結合剤として用いられている。一方、レゾール型フェノール樹脂は砥粒の湿潤剤として用いられている。
【0005】
また、弾性砥石としては、砥石の結合剤が低弾性率のビスフェノールA系エポキシ樹脂で構成されると共に、その砥石内に樹脂結合剤よりも低弾性率の有機質中空体が分散させられている砥石が報告されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
回転砥石は、その目的により用いる砥石を選択するが、近年、多くの研磨用途で被加工物表面の高精度化が進み、研削力と仕上がり表面の高精度化とが両立できる回転砥石が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005―246569号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】日本セラミックス協会編,「セラミック工学ハンドブック(第2版)」,p1322~1325(2002年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、レジンボンドやビトリファイドを結合剤として使用した砥石は、その硬さゆえ、最終仕上げでは被加工物の表面が粗くなってしまい、スクラッチなどの不具合も発生させやすい。また、従来の弾性砥石などのワーク面粗度を緻密に仕上げる研磨物だと、研削力が弱いため耐摩耗性が低く、切り込み量に対して実際の研削量が小さい。このため、センタレス研磨機や円筒研削機など機械設定でワーク径を管理する場合、研削量のコントロールが難しく扱いづらい問題がある。さらには、研削時間が掛かるため作業効率が悪化してしまう問題や砥石ライフが短いため交換頻度が高くなりコストがかかるという問題もある。
【0010】
切削性を保持したまま、高精度に研磨することができれば、これらの問題を解決し、生産性の大幅な向上に加え、これまで仕上げることのできなかったワークを高精度に仕上げることができる可能性がある。しかし、従来の砥石では、レジンボンドやビトリファイド等の一般砥石と高弾性砥石の両方のメリットを合わせ持った性能を有することが難しかった。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従来よりも研磨機による研削研磨の仕上げを高精度にでき、加えて従来よりも高効率に研削研磨ができる砥石及びその砥石の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、硬化触媒にて硬化反応させる成形方法を用い、さらに中間体(半硬化物)を成形させ次に完全成形させる2段階で成形させることで従来の成形時間を大幅に短縮させることができ、かつ均一な硬化反応をさせることでクラックの発生しない成形体を得られること、また、本発明品で被加工物を研削研磨することにより、円筒状の被加工物を高精度に高効率で研削研磨できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、下記の砥石及び砥石の製造方法を提供する。
[1]砥粒、樹脂及び硬化触媒を含む砥粒組成物を硬化した硬化物からなる砥石であって、
前記樹脂は、レゾール型フェノール樹脂を50質量%以上含み、
前記硬化触媒の配合量が、フェノール樹脂100質量部に対し5~23質量部であることを特徴とする砥石。
[2]前記砥粒及び前記樹脂の合計100質量部に対する前記樹脂の配合量が10~40質量部である[1]に記載の砥石。
[3]前記レゾール型フェノール樹脂の数平均分子量(Mn)が300~600である[1]または[2]に記載の砥石。
[4]前記樹脂が弾性樹脂を含み、
前記弾性樹脂は、イソブレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロブレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム及びプロピレン・ブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂である[1]~[3]のいずれか1つに記載の砥石。
[5]前記樹脂における前記弾性樹脂の割合が5~50質量%である[4]に記載の砥石。
[6]前記砥粒組成物が気孔生成剤を含む[1]~[5]のいずれか1つに記載の砥石。
[7]前記樹脂100質量部に対する前記気孔生成剤の配合量が1~40質量部である[6]に記載の砥石。
[8]前記砥粒が、炭化ケイ素、アルミナ、酸化クロム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム及びジルコンサンドからなる群から選択される少なくとも1種のセラミックの砥粒である[1]~[7]のいずれか1つに記載の砥石。
[9]レーザー回折散乱法により測定した前記砥粒の体積平均一次粒子径が5~27μmである[1]~[8]のいずれか1つに記載の砥石。
[10]スーパーフィシャル15Yスケールで測定したロックウェル硬度が-60~0である[1]~[9]のいずれか1つに記載の砥石。
[11]センタレス研磨及び円筒研削最終仕上げ用砥石である[1]~[10]のいずれか1つに記載の砥石。
[12]砥粒、樹脂及び硬化触媒を含む混合液を混合して砥粒組成物を作製する工程、
前記砥粒組成物を型に流し込む工程、及び
前記型に流し込んだ砥粒組成物を硬化させる工程を含み、
前記砥粒組成物における前記樹脂はレゾール型フェノール樹脂を50質量%以上含み、
前記砥粒組成物を硬化させる工程は、第一の加熱温度で所定時間加熱した後、前記第一の加熱温度よりも高温の第二の加熱温度で所定時間加熱する二段階加熱による硬化である砥石の製造方法。
[13]前記第一の加熱温度が30℃以上であり、前記第二の加熱温度が60℃以上である[12]に記載の砥石の製造方法。
[14]前記所定の加熱時間が1~10時間である[12]または[13]に記載の砥石の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の砥石を使用すれば、円筒状金属部品等の被加工物を高精度かつ高効率に研削研磨することができ、大幅な工程改善、研磨精度向上による品質改善、または新規用途への展開が実現する。また、本発明の砥石の製造方法によれば、硬度、弾性、消耗度、切削性、被加工物の仕上がり表面粗さ等がより改善された砥石を効率よく得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について、本発明の実施形態を例に挙げて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0016】
<砥石>
本発明の砥石は、砥粒、樹脂及び硬化触媒を含む砥粒組成物を硬化した硬化物からなる。そして、上記樹脂はレゾール型フェノール樹脂を50質量%以上含む。
(砥粒)
砥粒は、被加工物を削りとる作用を有する物質であり、砥石の中で切れ刃の役目をする。砥粒には適切な粒度、高い硬度、化学耐久性等が要求される。
【0017】
砥粒のレーザー回折・散乱法により測定した体積平均一次粒子径は、センタレス研磨または、円筒研削の仕上がり精度を高める観点から、好ましくは5~27μm、より好ましくは6~22μmである。
【0018】
砥粒は、レジンボンドの砥石に用いられる砥粒であれば、特に限定されない。砥粒としては、例えば、炭化ケイ素、アルミナ、酸化クロム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、ジルコンサンド等が挙げられ、これらを単独又は二種以上を併せて用いることができる。なかでも炭化ケイ素やアルミナは、硬度が高く、他の材質に比べて切削能力に優れているため好ましい。
【0019】
砥粒にかかる研磨荷重が分散することによる仕上がり粗さや砥石の目詰まりのしやすさ、砥石の硬さと砥粒の自己脱落の生じやすさの観点から、砥粒組成物における砥粒の配合量は、砥粒及び樹脂の配合量の合計100質量部に対して、好ましくは60~90質量部であり、より好ましくは65~80質量部である。
【0020】
(樹脂)
上述したように樹脂はレゾール型フェノール樹脂を50質量%以上含む。すなわち、本発明の砥石はレゾール型フェノール樹脂を主結合剤として用いる。砥石において樹脂は砥粒を保持する役目をする。また、切れ刃の弾性的挙動、砥石全体としての衝撃吸収度等は樹脂に起因する。さらに、樹脂は、砥石の切れ味及び減耗に大きな影響を与える。
【0021】
砥石の切れ味及び減耗の観点から、砥粒組成物における樹脂の配合量は、砥粒及び樹脂の配合量の合計100質量部に対して、好ましくは10~40質量部であり、より好ましくは20~35質量部である。
【0022】
(レゾール型フェノール樹脂)
レゾール型フェノール樹脂は、自己硬化性を持ち、加熱によって硬化し硬化物となる。また、レゾール型フェノール樹脂は、機械的衝撃及び熱的衝撃に強い。レゾール型フェノール樹脂は、例えば、フェノール類とアルデヒド類とを塩基性触媒の存在下で反応させることにより合成される。一般的に、上記反応後、減圧脱水が行われる。
レゾール型フェノール樹脂の合成に用いるフェノール類には、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、キシレノール、アルキルフェノール類、カテコール、レゾルシン等が挙げられ、これらを単独又は二種以上を併せて用いることができる。
レゾール型フェノール樹脂の合成に用いるアルデヒド類には、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド化合物、及びこれらのアルデヒド化合物の発生源となる物質、あるいはこれらのアルデヒド化合物の溶液等が挙げられ、これらを単独又は二種以上を併せて用いることができる。
レゾール型フェノール樹脂の合成に用いる塩基性触媒には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物、炭酸ナトリウム、アンモニア水、トリエチルアミン、ヘキサメチレンテトラミン等のアミン類、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛等の二価金属塩等が挙げられ、これらを単独又は二種以上を併せて用いることができる。
【0023】
レゾール型フェノール樹脂を加熱すると、ヒドロキシメチル基とフェノール核とによる縮合反応が進行して、レゾール型フェノール樹脂は、三次元網目構造の不融不溶の固体となる。
【0024】
上述したように、一般に、砥石の主結合剤として用いるフェノール樹脂はノボラック型である。ノボラック型フェノール樹脂は、それ自身、熱可塑性樹脂であり、成形条件の幅が広く、寸法安定性もよい。また、ノボラック型フェノール樹脂は、レゾール型フェノール樹脂に比べて保存性もよい。しかし、被加工物の仕上がり表面粗を高精度に加工できるようにするためには、砥石にある程度の弾性性能を付与することが好ましい。さらに、従来のノボラック型フェノールに弾性体を混合する方法もあるが、それでは砥石自体に弾性があるわけではなく、部分的に硬度が異なり仕上がり面粗さに影響する。なにより原料組成物の粘度が高粘度化しやすく製造しづらい。本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、レゾール型フェノール樹脂に弾性樹脂を用いることで、レジン砥石の強度と切削性に加え弾性砥石の高精度な仕上がりを両立させた砥石を安定して製造することができることを見出した。
【0025】
レゾール型フェノール樹脂に弾性樹脂を用いても安定して砥石を製造することができるという観点から、レゾール型フェノール樹脂は、室温25℃において液状であることが好ましい。
【0026】
レゾール型フェノール樹脂の数平均分子量(Mn)は、砥石の摩耗性に関わる樹脂の強度の観点から、好ましくは300~600、より好ましくは350~500である。なお、数平均分子量(Mn)はゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)(分子量測定装置:昭和電工(株)製、型番:RI-71)により、ポリスチレン換算で算出された値である。なお、溶媒には50mM塩化リチウム、2mM塩酸(添加ジメチルホルムアルデヒド)を使用し、カラム温度は23℃とした。
【0027】
砥粒組成物の樹脂全体におけるレゾール型フェノール樹脂の配合量は、50質量%以上である。レゾール型フェノール樹脂の配合量が50質量%未満であると、砥石が機械的衝撃及び熱的衝撃に対して弱くなる場合がある。砥石の硬さや切削性、生産効率の観点から、砥粒組成物の樹脂全体におけるレゾール型フェノール樹脂の配合量は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。
【0028】
(弾性樹脂)
砥石には樹脂として、レゾール型フェノール樹脂のほかにさらに弾性樹脂を含むことができる。フェノール樹脂を主体とする砥石は高強度で耐摩耗性と切削性に優れるが、高硬度のため高精度仕上がりには不向きである。このため、砥石の弾性を確保してより高精度研削仕上げを行うために、レゾール型フェノール樹脂に弾性樹脂を混合する。これにより、砥石の衝撃吸収度をさらに高くすることができる。弾性樹脂とは、その硬化物がレゾール型フェノール樹脂の硬化物に比べてゴム弾性を示す樹脂である。砥粒組成物が弾性樹脂を含むことにより砥石の弾性を向上させることができる。なお、弾性樹脂は、硬化したフェノール樹脂マトリックス中に微細な粒子となって均一に分散することが好ましい。
【0029】
弾性樹脂は、その硬化物がレゾール型フェノール樹脂の硬化物に比べてゴム弾性を示す樹脂であれば、特に限定されない。具体的には、弾性樹脂には、例えば、イソブレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロブレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、アクリルゴム(ACM)、エピクロルヒドリンゴム(CO)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、プロピレン・ブタジエンゴム(PBR)等が挙げられる。これらの弾性樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中で、レゾール型フェノール樹脂との分散性、得られる砥石の硬度、弾性、消耗度、切削性、被加工物の仕上がり表面粗さ等の観点から、弾性樹脂としてプロピレン・ブタジエンゴムを用いることが好ましい。
【0030】
レゾール型フェノール樹脂に弾性樹脂を均一に分散させるという観点から、弾性樹脂は溶媒に乳化もしくは分散した状態で配合されることが好ましい。
【0031】
弾性樹脂を配合する場合、切れ刃の弾性的挙動及び砥石の衝撃吸収度の観点から、砥粒組成物の樹脂全体における弾性樹脂の配合量は、好ましくは5~50質量%であり、より好ましくは10~40質量%である。
【0032】
(硬化触媒)
砥粒組成物は、硬化触媒をさらに含有する。硬化触媒を含有することで、従来技術と比較して硬化時間を大幅に短縮させると同時に、均一に硬化させることができるので、クラックの発生が抑制された成形体を得ることができる。硬化触媒としては、酸性触媒及び塩基性触媒が挙げられ、酸性触媒が好ましい。例えば、酸性触媒として芳香族スルホン酸、塩酸、過塩素酸、硫酸などが挙げられる。これらの酸性触媒の中で、芳香族スルホン酸が好ましい。芳香族スルホン酸の具体例としては、例えば、トルエンスルホン酸水和物、キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等を使用することができる。塩基性触媒として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、第1級アミン、第2級アミンなどが挙げられる。これらの中で、水酸化ナトリウムが好ましい。硬化触媒の配合量は、フェノール樹脂100質量部に対し5~23質量部であり、好ましくは10~20質量部であり、より好ましくは13~17質量部である。硬化触媒の配合量が5質量部未満であると、硬化の促進が鈍く、触媒無添加時とあまりかわらない恐れがあり、硬化触媒の配合量が23質量部よりも多いと、硬化が急激に促進され、膨張など成形異常となる恐れがある。
【0033】
(気孔生成剤)
砥粒組成物は、さらに気孔生成剤を含むことができる。気孔生成剤は、砥石に気孔を形成するために添加するものであり、気孔を有することで砥石の弾性を高めると共に、研削中に発生する研削屑の排出を促して目詰まりを抑制する。また、気孔は、砥石の研削抵抗を軽減し、研削焼けを防止する。気孔生成剤としては、デンプン粉や発泡剤が好ましい。デンプン粉には、例えばコーンスターチ、馬鈴薯、米粉があげられ、これらを単独又は二種類以上を併せて用いることができる。発泡剤には炭化水素やその誘導体が用いられる。例えば、イソブタン、ノルマルペンタン等が挙げられ、これらを単独又は二種類併せて用いる。
【0034】
気孔生成剤によって砥石中に形成される気孔の大きさは、気孔生成剤の粒子径や発泡した気泡径によって調整できる。気孔径が大きいほど、砥石の弾性と研磨屑の排出性を高めることができるが、大きすぎると砥石のワークへの接触面積が小さくなり切削性が低下する。そのため、気孔生成剤のレーザー回折・散乱法により測定した体積平均一次粒子径は、好ましくは2~100μmであり、より好ましくは5~40μmである。
【0035】
気孔生成剤を配合する場合、砥粒の脱落量及び研削性の観点から、気孔生成剤の配合量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは1~40質量部であり、より好ましくは2~30質量部であり、さらに好ましくは2.5~10質量部である。気孔生成剤を添加しない場合でも、成形時に自然に生成される空隙によって砥石に気孔が形成するが、安定的に目詰まりの抑制を促すために、気孔生成剤を配合した方が好ましい。
【0036】
(ロックウェル硬度)
スーパーフィシャル15Yスケールで測定した砥石のロックウェル硬度は、-60~0であることが好ましく、-50~-10であることがより好ましい。スーパーフィシャル15Yスケールで測定したロックウェル硬度とは、JIS K7202-2「ロックウェル硬さ」測定に準じた方法により測定した値である。例えば、(株)マツザワ製ロックウェル硬度計を用い、直径1/2インチ(約12.7mm)の鋼球が先端に付いた圧子を砥石に接触させ基準荷重15kg・fを加えた際に生じた凹み深さから換算して、スーパーフィシャル15Yスケールでロックウェル硬さを測定することができる。ロックウェル硬度の値が、プラス側に大きいほど砥石は硬く、マイナス側が大きいほど砥石は柔らかいことを意味する。
【0037】
<砥石の製造方法>
また、本発明では、砥粒、樹脂及び硬化触媒を含む混合液を混合して砥粒組成物を作製する工程、砥粒組成物を型に流し込む工程、及び型に流し込んだ砥粒組成物を硬化させる工程を含む砥石の製造方法を提供する。以下、各工程について詳しく説明する。
【0038】
[砥粒組成物を作製する工程]
この工程では、砥粒、樹脂及び硬化触媒を含む混合液を混合して砥粒組成物を作製する。砥粒、樹脂及び硬化触媒に加えて、気孔生成剤をさらに混合して砥粒組成物を作製してもよい。樹脂は、レゾール型フェノール樹脂を50質量%以上含み、好ましくは60質量%以上含み、より好ましくは70質量%以上含む。レゾール型フェノール樹脂は、そのまま用いてもよいし、水溶液の状態で用いてもよいし、アルコール等の水以外の溶媒で溶解された状態で用いてもよい。
【0039】
砥粒及び樹脂の混合は、ゲージ圧が-0.095MPa以下の減圧下で行うことが好ましい。このようにすれば、砥粒及び樹脂の混合時に砥粒組成物内に気泡が発生する。そして、発生した気泡が砥粒組成物に残ることで、砥粒組成物に大きな気孔が形成されることを抑制することができ、砥石に均一な気泡を形成することができる。
【0040】
[砥粒組成物を型に流し込む工程]
この工程では、砥粒組成物を型に流し込む。砥粒組成物内の気泡が型に流し込んだ後も砥粒組成物に残るように砥粒組成物を型に流し込むことが好ましい。
【0041】
[砥粒組成物を硬化させる工程]
一般的なレゾール型フェノール樹脂の成形方法では、型に流し込んだ砥粒組成物を硬化させる。具体的には、型に流し込んだ砥粒組成物を加熱することにより硬化させる。このとき、硬化反応を十分に進行させるために、加熱温度は60℃以上が好ましく、70~90℃がより好ましい。ただし、本発明はその他原料や溶媒が含まれており、従来の成形方法通りの加熱方法だと成形体が膨張しやすく正常な成形体が得られない。そこで、まず低温加熱により中間体(半硬化物)を作製した後に、所定の成形温度で加熱することで安定的に成形することができる。具体的には、第一の加熱温度とそれよりも高い温度である第二の加熱温度の二段階の加熱により成形体を得る方法である。第一の加熱温度は、好ましくは30℃以上であり、より好ましくは40~50℃であり、所定の加熱時間、加熱して中間体(半硬化物)を得る。その後、第二の加熱温度は、好ましくは60℃以上であり、より好ましくは70~90℃であり、所定の加熱時間、加熱し成形体を得る。上記所定の加熱時間は、例えば1時間以上であり、1~10時間が好ましい。これにより、砥粒組成物の硬化時間を従来の硬化時間より1/2~1/3短縮することができる。また均一な硬化反応物が得られることができるため、クラックの発生を改善することができる。
【0042】
砥粒組成物を硬化させる工程の後、型から取出して、未反応物を取り除くために、又は気孔生成剤にデンプン粉を用いた場合はその除去のために洗浄し、乾燥することが好ましい。乾燥後、さらに熱処理を施すことがより好ましい。熱処理の条件としては、例えば、110℃~200℃の熱処理温度と10~30時間の熱処理時間が挙げられる。200℃以下の熱処理温度、及び30時間以下の熱処理時間であれば、砥石の弾性が低下する恐れがない。
【0043】
[寸法出し加工工程]
砥粒組成物を硬化させる工程の後に寸法出し加工工程を実施してもよい。上記熱処理を施した後、寸法出し加工によって所望のサイズに加工された砥石を得ることができる。砥石の形状は、円盤状でもボード状でもよく、その他の形状でもよく、装着研磨機の条件によって任意に選ばれる。
【0044】
<センタレス研磨及び円筒研削用砥石>
本発明の砥石は、センタレス研磨及び円筒研削最終仕上げ用砥石として用いることができる。具体的には、本発明の砥石を、円筒状金属部品の最終仕上げに用いることができる。
【0045】
例えば、具体例として、このような本発明の砥石を用いたショックアブソーバであれば、ショックアブソーバの接触面を高精度に仕上げすることができ、品質の可能である。さらに、粗~中間仕上げを従来砥石研削、最終仕上げをバフやエッチングを行っている場合。全て砥石研磨で完結でき、行程の簡略化や作業性が向上できる。
【0046】
また、本発明の砥石を、バーチカル研削でチタンやステンレスなどの圧延ロール、グラビア製版ロールの表面を平坦化するための砥石として用いてもよい。
【0047】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例0048】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例及び比較例に制限されるものではない。
【0049】
<評価方法>
(樹脂の数平均分子量(Mn))
レゾール型フェノール樹脂の重量数平均分子量(Mn)はゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)(分子量測定装置:昭和電工(株)製、型番:RI-71)により、ポリスチレン換算で算出された値である。なお、溶媒には50mM塩化リチウム、2mM塩酸(添加ジメチルホルムアルデヒド)を使用し、カラム温度は23℃とした。
【0050】
(ロックウェル硬度)
(株)マツザワ製ロックウェル硬度計を用い、直径1/2インチ(約12.7mm)の鋼球が先端に付いた圧子を砥石に接触させ基準荷重15kg・fを加えた際に生じた凹み深さから換算して、スーパーフィシャル15Yスケールでロックウェル硬さを測定した。
【0051】
[実施例1]
レゾール型フェノール樹脂(有効分70重量%、数平均分子量(Mn)400、残部水、未反応フェノール、ホルムアルデヒド)3.7kgに、気孔生成剤としてコーンスターチ(体積平均一次粒子径:16μm)を0.1kg混合し、さらに炭化ケイ素から成る砥粒(GC#1000、体積平均一次粒子径11μm)6kgを加えて混合した。最後に硬化触媒としてトルエンスルホン酸-水和物(純度99%以上)を、硬化触媒の配合量がフェノール樹脂100質量部に対し15質量部になるように添加して均一なスラリー(砥粒組成物)を調製した。なお、レゾール型フェノール樹脂と砥粒との混合比率(質量比)は30:70であった。樹脂100質量部に対する気孔生成剤の配合量は3.9質量部であった。また、これらの混合調製は、ゲージ圧が-0.09MPaの減圧下で行った。
【0052】
調製したスラリーを型枠に注入して、第一の加熱温度40℃で1時間保持し中間体を得た。さらに第二の加熱温度80℃で1時間熱硬化反応を進行させて砥粒組成物を硬化し、硬化物を得た。得られた硬化物を型枠から取り出して水洗し、未反応物を除去した。その後、水洗した硬化物を80℃で40時間乾燥して、さらに150℃で10時間の熱処理を行った。熱処理後の硬化物を所望の形状に加工して研磨砥石を完成させた。本方法を用いて同条件で砥石を5個作製した。
【0053】
作製した研磨砥石を外観検査し、クラックの発生を確認した。その結果、クラックの発生した個体は確認されず、硬化触媒の添加によってクラック発生の抑制が確認された。
【0054】
作製した研磨1個砥石を用いて、φ30の耐熱鋼シャフトの外周を円筒研削した。切込量は1.0mm/sec。砥石送り速度は100mm/30sec。砥石回転数1800rpmで実施し、研磨後のワークの光沢度と表面粗さを測定した。外観検査と研磨評価の結果を表1に示す。研磨性能は汎用レジボンド砥石と比較して、優れた鏡面と表面粗さが得られた。また、硬化触媒を用いて合成した場合でも、研磨性能への悪影響は確認されなかった。
【0055】
[実施例2]
レゾール型フェノール樹脂(有効分70重量%、数平均分子量(Mn)400、残部水、未反応フェノール、ホルムアルデヒド)3kgに、エマルジョン型プロピレン・ブタジエンゴム(PBR樹脂 日本エイアンドエル(株)製、有効分40質量%、残部水)1.3kg、気孔生成剤としてコーンスターチ(体積平均一次粒子径:16μm)を0.1kg混合し、さらに炭化ケイ素から成る砥粒(GC#1000、体積平均一次粒子径11μm)6kgを加えて混合した。最後に硬化触媒としてトルエンスルホン酸-水和物(純度99%以上)を、硬化触媒の配合量がフェノール樹脂100質量部に対し15質量部になるように添加して均一なスラリー(砥粒組成物)を調製した。なお、レゾール型フェノール樹脂及びプロピレン・ブタジエンゴムの合計と砥粒との混合比率(質量比)は30:70であった。レゾール型フェノール樹脂とプロピレン・ブタジエンゴムとの混合比率(質量比)は80:20であった。樹脂100質量部に対する気孔生成剤の配合量は3.8質量部であった。また、これらの混合調製は、ゲージ圧が-0.09MPaの減圧下で行った。
【0056】
調製したスラリーを型枠に注入して、第一の加熱温度40℃で1時間保持し中間体を得た。さらに第二の加熱温度80℃で1時間熱硬化反応を進行させて塗料組成物を硬化し、硬化物を得た。得られた硬化物を型枠から取り出して水洗し、未反応物を除去した。その後、水洗した硬化物を80℃で40時間乾燥し、さらに150℃で10時間の熱処理を行った。熱処理後の硬化物を所望の形状に加工して研磨砥石を完成させた。本方法を用いて同条件で砥石を5個作製した。
【0057】
作製した研磨砥石を外観検査し、クラックの発生を確認した。その結果、クラックの発生した個体は確認されず、硬化触媒の添加によってクラック発生の抑制が確認された。
【0058】
作製した研磨1個砥石を用いて、実施例1と同様の外観検査と研磨テストを実施した。その結果を表1に示す。弾性樹脂の配合により実施例1より、研磨後のワークの光沢度が上がり、鏡面精度がさらに高まる結果が得られた。
【0059】
[比較例1]
レゾール型フェノール樹脂(有効分70重量%、数平均分子量(Mn)400、残部水、未反応フェノール、ホルムアルデヒド)3kgに、エマルジョン型プロピレン・ブタジエンゴム(PBR樹脂 日本エイアンドエル(株)製、有効分40質量%、残部水)1.3kg、気孔生成剤としてコーンスターチ(体積平均一次粒子径:16μm)を0.1kg混合し、さらに炭化ケイ素から成る砥粒(GC#1000、体積平均一次粒子径11μm)6kgを加えて混合し、均一なスラリー(砥粒組成物)を調製した。なお、これらの混合調製は、ゲージ圧が-0.09MPaの減圧下で行った。
【0060】
調製したスラリーを型枠に注入して、第一の加熱温度で加熱せず、第二の加熱温度80℃で24時間保持し、熱硬化反応を進行させて砥粒組成物を硬化し、硬化物を得た。得られた硬化物を型枠から取り出して水洗し、未反応物を除去した。その後、水洗した硬化物を80℃で40時間乾燥し、さらに150℃で10時間の熱処理を行った。熱処理後の硬化物を所望の形状に加工して研磨砥石を完成させた。本方法を用いて同条件で砥石を5個作製した。
【0061】
作製した研磨砥石を外観検査し、クラックの発生を確認した。その結果、5個中2個の砥石で微細なクラックを確認した。
【0062】
[比較例2]
比較例2では、硬化触媒の配合量をフェノール樹脂100質量部に対し25質量部とした以外は、実施例2と同様の方法で研磨砥石を作製した。
【0063】
作製した研磨砥石について、評価結果を表1に示す。比較例2では、第二の加熱温度80℃で砥粒組成物の熱硬化反応を進行させている間に原料組成物が膨張してしまった。このため、硬化状態は悪くなり、成形不可となり研磨砥石を作製することができなかった。
【0064】
[比較例3]
比較例3では、硬化触媒の配合量をフェノール樹脂100質量部に対し3質量部とした以外は、実施例2と同様の方法で研磨砥石を作製した。
【0065】
作製した研磨砥石について、評価結果を表1に示す。第二の加熱温度80℃1時間の熱硬化反応の進行では硬化が完了せず、砥粒組成物の硬化に10時間以上を要した。また、作製した研磨砥石を外観検査した結果、5個中1個の個体にクラックを確認した。触媒による硬化時間の短縮とクラック発生率の低減効果が得られない結果となった。
【0066】
[比較例4]
比較例4では、レゾール型フェノール樹脂とプロピレン・ブタジエンゴムとの混合比率(質量比)を45:55とした以外は、実施例2と同様の方法で研磨砥石を作製した。
【0067】
作製した研磨砥石について、砥粒組成物を硬化させる工程で原料組成物が膨張してしまった。このため、硬化状態が悪くなり、正常な成形体を得ることができなかった。弾性樹脂の配合比率が多いと硬化状態に悪影響を及ぼし正常な成形体が得られないことが確認された。
【0068】
【表1】