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特開2022-107219固化改良地盤の造成出来形の評価方法及び評価システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107219
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】固化改良地盤の造成出来形の評価方法及び評価システム
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20220713BHJP
   E02D 1/08 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
E02D3/12 102
E02D1/08
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002026
(22)【出願日】2021-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】000182030
【氏名又は名称】若築建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】水野 健太
【テーマコード(参考)】
2D040
2D043
【Fターム(参考)】
2D040AB03
2D040BA01
2D040CB03
2D040GA02
2D043AC05
2D043BA01
2D043BB04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】固化改良地盤の造成出来形の評価を高精度かつ効率的に行うことができる固化改良地盤の造成出来形の評価方法及び評価システムを提供する。
【解決手段】固化改良地盤の造成出来形の評価方法は、固化改良地盤にコーンを貫入したときに前記コーンに設けられるカメラにより固化改良地盤の着色前画像(造成後映像P3)を撮像する貫入工程(手順3)と、固化改良地盤からのコーンの引き上げ時にコーンに設けられる試薬散布部から試薬を固化改良地盤に散布してカメラにより固化改良地盤の着色後画像(造成後映像P4)を撮像する引き上げ工程(手順4)と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
深層混合処理工法における固化改良地盤の造成出来形の評価方法であって、
前記固化改良地盤にコーンを貫入したときに前記コーンに設けられるカメラにより前記固化改良地盤の着色前画像を撮像する貫入工程と、
前記固化改良地盤からの前記コーンの引き上げ時に前記コーンに設けられる試薬散布部から試薬を前記固化改良地盤に散布して前記カメラにより前記固化改良地盤の着色後画像を撮像する引き上げ工程と、
を含む評価方法。
【請求項2】
改良前地盤に前記コーンを貫入し、地盤性状に関する三成分を計測する事前貫入工程と、
前記事前貫入工程にて地盤に貫入された前記コーンを前記改良前地盤から引き上げる事前引き上げ工程と、
をさらに含み、
前記貫入工程において前記三成分を計測する、
請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
前記事前貫入工程において、前記カメラにより前記改良前地盤の着色前画像を撮像する、
請求項2に記載の評価方法。
【請求項4】
前記事前引き上げ工程において、前記試薬散布部により試薬を散布して前記カメラにより前記改良前地盤の着色後画像を撮像する、
請求項2または3に記載の評価方法。
【請求項5】
前記固化改良地盤の前記着色前画像と前記着色後画像を比較して出来形を評価する評価工程をさらに含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載の評価方法。
【請求項6】
前記評価工程において、前記改良前地盤の前記着色前画像と、前記固化改良地盤の前記着色前画像または前記着色後画像とを比較して出来形を評価する、
請求項5に記載の評価方法。
【請求項7】
前記評価工程において、前記改良前地盤の前記着色前画像と前記着色後画像とを比較して出来形を評価する、
請求項5または6に記載の評価方法。
【請求項8】
前記深層混合処理工法が高圧噴射攪拌式であり、
前記造成出来形は、所定の設計改良径よりも大径で形成され、
前記コーンの貫入位置は前記設計改良径の位置である、
請求項1~7のいずれか1項に記載の評価方法。
【請求項9】
前記深層混合処理工法が機械攪拌式であり、
前記コーンの貫入位置は改良中間部である、
請求項1~7のいずれか1項に記載の評価方法。
【請求項10】
深層混合処理工法における固化改良地盤の造成出来形の評価システムであって、
カメラと試薬散布部とを有するコーンと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記固化改良地盤に前記コーンを貫入し、引き抜く動作を制御するコーン制御部と、
前記固化改良地盤からの前記コーンの引き上げ時に試薬を前記固化改良地盤に散布するよう前記試薬散布部を制御する試薬制御部と、
前記固化改良地盤に前記コーンを貫入したときに前記固化改良地盤の着色前画像を撮像し、前記固化改良地盤からの前記コーンの引き上げ時に前記試薬散布部から試薬を前記固化改良地盤に散布した後に前記固化改良地盤の着色後画像を撮像するよう、前記カメラを制御する撮像制御部と、
を有する、
評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固化改良地盤の造成出来形の評価方法及び評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
深層混合処理工法における固化改良地盤の造成出来形を造成直後に確認できる効率的な調査方法が求められている。例えば特許文献1には、高圧噴射攪拌式の深層混合処理工法において、注入ロッドの貫入位置から径方向外側の改良端部の位置にカメラ付きコーンを貫入して、カメラの撮像画像に基づき改良地盤の造成径を確認する評価方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4886921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1などに記載される従来の評価方法では、固化改良地盤の造成出来形の評価を高精度かつ効率的に行う点で改善の余地がある。
【0005】
本開示は、固化改良地盤の造成出来形の評価を高精度かつ効率的に行うことができる固化改良地盤の造成出来形の評価方法及び評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の一観点に係る固化改良地盤の造成出来形の評価方法は、深層混合処理工法における固化改良地盤の造成出来形の評価方法であって、前記固化改良地盤にコーンを貫入したときに前記コーンに設けられるカメラにより前記固化改良地盤の着色前画像を撮像する貫入工程と、前記固化改良地盤からの前記コーンの引き上げ時に前記コーンに設けられる試薬散布部から試薬を前記固化改良地盤に散布して前記カメラにより前記固化改良地盤の着色後画像を撮像する引き上げ工程と、を含む。
【0007】
同様に、本発明の実施形態の一観点に係る固化改良地盤の造成出来形の評価システムは、深層混合処理工法における固化改良地盤の造成出来形の評価システムであって、カメラと試薬散布部とを有するコーンと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、改良地盤に前記コーンを貫入し、引き抜く動作を制御するコーン制御部と、前記コーンの引き上げ時に試薬を前記固化改良地盤に散布するよう前記試薬散布部を制御する試薬制御部と、前記改良地盤に前記コーンを貫入したときに前記固化改良地盤の着色前画像を撮像し、前記コーンの引き上げ時に前記試薬散布部から試薬を前記固化改良地盤に散布した後に前記固化改良地盤の着色後画像を撮像するよう、前記カメラを制御する撮像制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、固化改良地盤の造成出来形の評価を高精度かつ効率的に行うことができる固化改良地盤の造成出来形の評価方法及び評価システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る固化改良地盤の造成出来形の評価システムの概略構成を示す図
図2】実施形態における固化改良地盤の造成出来形の評価方法の手順を示す図
図3】本実施形態における試薬散布前後の改良地盤の撮像方法を説明する模式図
図4】地盤改良前後の三成分の計測データの一例を示す図
図5】手順1~4の各段階の地盤画像の一例を示す図
図6】機械攪拌式の深層混合処理工法の概略を説明する模式図
図7】機械撹拌式の深層混合処理工法における撹拌不足時の造成後映像の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0011】
図1を参照して、実施形態に係る、深層混合処理工法における固化改良地盤の造成出来形の評価システム1(以下では単に「評価システム1」とも表記する)の構成について説明する。図1は、実施形態に係る固化改良地盤11の造成出来形の評価システム1の概略構成を示す図である。
【0012】
図1に示すように、評価システム1は、コーン2と、制御装置6とを備える。評価システム1は、深層混合処理工法における固化改良地盤11の所定位置にデータ取得用のコーン2を貫入して必要なデータを取得し、取得したデータに基づき固化改良地盤11の造成出来形を評価する。ここで「出来形」とは、工事の目標物のできあがった部分や、工事施工が完了した部分のことを言い、本実施形態では固化改良地盤11のことを指す。
【0013】
図1では、深層混合処理工法のうち高圧噴射攪拌式の場合を例示する。高圧噴射攪拌式では、地盤10において改良したい範囲の中心にロッド貫入穴12を開け、ロッド貫入穴12に貫入された注入ロッド(図示せず)から水平方向、かつ、ロッド貫入孔12を中心とする径方向外側に向けてセメントスラリーを超高圧、大流量で噴射して、周囲の土砂を切削しながら混合撹拌することで固化改良地盤11を生成する。したがって、この固化改良地盤11は、理想的にはロッド貫入孔12を軸心とする略円柱状に形成される。
【0014】
このような改良地盤11の所望の略円柱形状の軸心から外周面までの距離を、本実施形態では「設計改良径」とよび、図1ではその位置を符号13で示す。なお、一般的な高圧噴射攪拌式の工法では、この設計改良径の条件を満たす改良地盤11をより確実に形成できるように、実際に形成される改良地盤11は設計改良径より径方向外側まではみ出るように形成される場合が多い。すなわち、所定の設計改良径よりも大径で造成出来形が形成される。このため図1の例では、設計改良径の位置13は、改良地盤11の外周側端部よりも軸心(ロッド貫入孔12)側に入った位置となっている。
【0015】
高圧噴射攪拌式では、ロッド貫入穴12の位置から径方向外側に所定の設計改良径をとる位置13、すなわち所望の円柱形状の外周の位置にまで固化改良地盤11が存在するか否かを判定することで、固化改良地盤11の造成出来形を評価することができる。例えば、設計改良径の位置13に固化改良地盤11が生成されている場合、固化改良地盤11が所望の範囲の全域に問題なく生成されており、出来形が満足できるものであると評価できる。一方、設計改良径の位置13にて固化改良地盤11が生成されていない、または、一部のみに生成されている場合、固化改良地盤11が所望の範囲の全域に行き渡っておらず、出来形に問題があると評価できる。
【0016】
本実施形態の評価システム1では、高圧噴射攪拌式の深層混合処理工法の出来形を評価する場合には、図1に示すように、ロッド貫入孔12から径方向外側に所定の設計改良径だけ離れた位置13(以下では「コーン貫入位置13」ともいう)にて、コーン2を地盤10に貫入して評価用のデータを取得する。
【0017】
コーン2は、例えば図1に示すように略円柱形状に形成され、先端部が尖って地盤10に貫入しやすく形成されている。コーン2は、カメラ3と、試薬散布部4と、駆動装置5とを有する。コーン2は、例えば、既存の三成分静的コーンに、カメラ3及び試薬散布部4の機能を追加することで実現できる。三成分静的コーンとは、地盤性状を調査するための三成分コーン貫入試験(Cone Penetration Test:CPT)に用いられる装置であり、地盤に貫入中の各位置において地盤性状に関する三成分(貫入抵抗、周面摩擦、間隙水圧)を計測する装置である。
【0018】
カメラ3は、コーン2の貫入中に固化改良地盤11(または改良前地盤10)を撮像する。
【0019】
試薬散布部4は、コーン2の貫入中に固化改良地盤11(または改良前地盤10)へ試薬7(図3参照)を散布する。試薬7は、アルカリ性の物質を変色させる機能を有するものであり、例えばフェノールフタレイン水溶液である。試薬散布部4は、例えばコーン2の外部に試薬7を貯留するタンクを有し、ノズルなどの散布装置を用いて、コーン2の周面に開口される開口部からタンクに貯留されている試薬7を外部に散布する。試薬7を貯留するタンクは、例えば地表の駆動装置5や制御装置4の近傍に配置され、試薬7を供給可能なチューブなどを介してコーン2内部の試薬散布部4と接続されている。なお、試薬7を貯留するタンクがコーン2の内部に設けられる構成でもよい。
【0020】
駆動装置5は、コーン2を上下方向に移動させ、コーン2が改良地盤11に貫入される動作、または、地盤11に貫入されたコーン2を上方に引き抜く動作を実施する。駆動装置5は例えば地表のコーン貫入位置13の直上に設置される。
【0021】
なお、特に本実施形態では、試薬散布部4は、コーン2の貫入方向(図1では下方)に対してカメラ3よりも後方(図1では上方)に配置される。この構成により、コーン2の引き抜き時に試薬散布部4から試薬7を散布すれば、試薬7によって着色された後の改良地盤11の画像をカメラ3により撮像できる。一方、先にコーン2を地盤10に貫入する際に、試薬散布部4を作動させずにカメラ3で撮像すれば、試薬7によって着色される前の改良地盤11の画像を撮像できる。したがって、貫入時に着色前の画像を撮像し、引き抜き時に着色後の画像を撮像できるので、同一のコーン貫入位置13にコーン2を貫入して引き抜くだけで、試薬による着色前後の同一位置の地盤の画像を撮像することができる。このように、コーン2の貫入と引き抜きという一往復の動作だけで2種類の画像を取得でき、効率的に評価を行うことができる。
【0022】
制御装置6は、コーン2に設けられているカメラ3、試薬散布部4、駆動装置5の動作を制御する。また、制御装置6は、カメラ3から取得した画像などの各情報に基づき、固化改良地盤11の出来形を評価する。制御装置6は、これらの機能に関し、コーン制御部61、試薬制御部62、撮像制御部63、評価部64を有する。
【0023】
コーン制御部61は、駆動装置5を制御して、改良地盤11にコーン2を貫入し、引き抜く動作を制御する。
【0024】
試薬制御部62は、試薬散布部4による改良地盤11(または改良前地盤10)への試薬の散布タイミングを制御する。より詳細には、試薬制御部62は、コーン2の引き上げ時に、試薬を改良地盤11(または改良前地盤10)に散布してセメントミルクを含む部分を変色させるよう試薬散布部4を制御する。
【0025】
撮像制御部63は、カメラ3による改良地盤11(または改良前地盤10)の撮像タイミングを制御する。より詳細には、撮像制御部63は、改良地盤11にコーン2を貫入したときに、固化改良地盤11の着色前画像(以下では「造成後映像P3」ともいう)を撮像し、改良地盤11からのコーン2の引き上げ時に、試薬散布部4から試薬を改良地盤11に散布して変色させた後の固化改良地盤11の着色後画像(以下では「造成後映像P4」ともいう)を撮像するよう、カメラ3を制御する。また、撮像制御部63は、改良前地盤10にコーン2を貫入したときに、改良前地盤10の着色前画像(以下では「改良前映像P1」ともいう)を撮像し、改良前地盤10からのコーン2の引き上げ時に、試薬散布部4から試薬を改良地盤11に散布した後の改良前地盤10の着色後画像(以下では「改良前映像P2」ともいう)を撮像するよう、カメラ3を制御する。
【0026】
評価部64は、カメラ3により撮像された固化改良地盤11の着色前画像(造成後映像P3)及び着色後画像(造成後映像P4)などの情報に基づき、改良地盤11の出来形を評価する。また、評価部64は、改良前地盤10の着色前画像(改良前映像P1)または着色後画像(改良前映像P2)も利用して、改良地盤11の出来形を評価することもできる。さらに、評価部64は、改良前地盤10と改良地盤11の三成分(貫入抵抗、周面摩擦、間隙水圧)データを比較して、改良地盤11の出来形を評価することもできる。
【0027】
制御装置6は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)、入力デバイスであるキーボード及びマウス等の入力装置、ディスプレイ等の出力装置、ネットワークカード等のデータ送受信デバイスである通信モジュール、補助記憶装置、などを含むコンピュータシステムとして構成することができる。
【0028】
図1に示す制御装置6の各機能は、CPU、RAM等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPUの制御のもとで通信モジュール、入力装置、出力装置を動作させるとともに、RAMや補助記憶装置におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。すなわち、本実施形態に係る評価システム1の改良地盤の評価作業のための制御プログラムをコンピュータ上で実行させることで、制御装置6は、図1のコーン制御部61と、試薬制御部62と、撮像制御部63と、評価部64として機能する。
【0029】
なお、制御装置6は、図1に示す機能の一部のみを実施する構成でもよい。例えば評価部64の機能は制御装置6自体が備えず、外部装置が撮像画像に基づき出来形の評価を行う構成でもよい。
【0030】
図2を参照して、実施形態に係る、深層混合処理工法における固化改良地盤11の造成出来形の評価方法について説明する。図2は、実施形態における固化改良地盤11の造成出来形の評価方法の手順を示す図である。
【0031】
図2に示すように、本実施形態の評価方法は7段階の手順で行われる。以下手順1~手順7の内容を説明する。
【0032】
手順1(事前貫入工程):改良前地盤10の貫入試験を実施する。この試験は、深層混合処理工法の施工前に行う。コーン2の貫入位置は、図1に示したように深層混合処理工法の高圧噴射攪拌式が正常に実施された場合の改良地盤11の設計改良径の位置13に相当する位置である。駆動装置5によりコーン2を地盤10に貫入しながら、改良前地盤10の三成分データ(貫入抵抗、周面摩擦、間隙水圧)と、カメラ3により撮像される原地盤(改良前地盤)10の映像データ(改良前映像P1)とを連続的に取得する。なお手順1では試薬散布部4による試薬の噴霧は行われない。手順1の処理は、制御装置6のコーン制御部61と撮像制御部63とにより実施される。
【0033】
手順2(事前引き上げ工程):引き続き、改良前地盤10の貫入試験において、貫入したコーン2を低速で引上げる。このとき、コーン2の試薬散布部4から試薬を連続的に噴霧し、試薬散布部4より下方に設置されるカメラ3により撮像される試薬散布後の原地盤(改良前地盤)10の映像データ(改良前映像P2)を連続的に取得する。手順2の処理は、制御装置6のコーン制御部61と、試薬制御部62と、撮像制御部63とにより実施される。
【0034】
手順3(貫入工程):改良地盤11の貫入試験を実施する。この試験は、深層混合処理工法の施工直後(改良地盤11の硬化前、例えば造成終了後概ね3時間以内)に実施される。コーン2の貫入位置は、手順1と同一の設計改良径の位置13の位置が好ましい。コーン2を地盤10に貫入しながら、改良地盤11の三成分データ(貫入抵抗、周面摩擦、間隙水圧)と、カメラ3により撮像される着色前改良地盤11(セメントミルクと原地盤の撹拌状態)の映像データ(造成後映像P3)と、を連続的に取得する。なお手順3では試薬散布部4による試薬の噴霧は行われない。手順3の処理は、制御装置6のコーン制御部61と撮像制御部63とにより実施される。
【0035】
手順4(引き上げ工程):引き続き、改良地盤11の貫入試験において、貫入したコーン2を低速で引上げる。このとき、手順2と同様に、コーン2の試薬散布部4から試薬を連続的に噴霧し、試薬散布部4より下方に設置されるカメラ3により撮像される試薬散布後の改良地盤(着色されたセメント成分)の映像データ(造成後映像P4)を連続的に取得する。手順4の処理は、制御装置6のコーン制御部61と、試薬制御部62と、撮像制御部63とにより実施される。
【0036】
図3は、本実施形態における試薬散布前後の改良地盤11の撮像方法を説明する模式図である。図3(A)は貫入時の撮像を示し、図3(B)は引き上げ時の撮像を示す。図3(A)に示すように、貫入時にはコーン2が下方に移動しながらカメラ3で改良地盤11の各深度位置の画像を撮像する。このとき試薬散布部4は作動しておらず試薬は散布されていない。図3(A)は、上述の手順3に対応し、撮影対象を改良地盤11から改良前地盤10に置き換えれば手順1にも対応する。図3(A)に示す方法によって、試薬散布前の未着色の地盤を撮像することができる。
【0037】
一方、図3(B)に示すように、引き上げ時にはコーン2が上方に移動しながら、試薬散布部4から試薬7が改良地盤11の表面に噴霧される。試薬散布部4はカメラ3の上方に配置されるため、カメラ3が対向する改良地盤11の表面にはすべて試薬7が散布された状態となる。図3(B)は、上述の手順4に対応し、撮影対象を改良地盤11から改良前地盤10に置き換えれば手順2にも対応する。図3(B)に示す方法によって、試薬散布後の着色後の地盤を撮像することができる。
【0038】
図2に戻り手順5以降の説明を続ける。
【0039】
手順5:第1のデータ分析が行われる。手順1にて取得した改良前地盤10の三成分データ(図2中の「三成分[1]」)と、手順3にて取得した改良地盤11の三成分データ(図2中の「三成分[3]」)とを比較する。具体的には、三成分[1]と[3]の貫入抵抗同士を比較し、周面摩擦同士を比較し、間隙水圧同士を比較する。手順5の処理は、制御装置6の評価部64により実施される。
【0040】
手順6:第2のデータ分析が行われる。手順1、手順2、手順3、手順4にてそれぞれ取得した計4段階の画像P1~P4を比較する。具体的には、造成後映像P3と造成後映像P4とを比較し、改良前映像P1と、造成後映像P3またはP4とを比較し、改良前映像P1と改良前映像P2とを比較する。手順6の処理は、制御装置6の評価部64により実施される。
【0041】
手順7(評価工程):手順5の第1のデータ分析の結果と、手順6の第2のデータ分析の結果とに基づき、改良地盤11の出来形の評価が行われる。
【0042】
地盤改良が所定の設計改良径13の範囲まで問題なく行われていると判断するための三成分に基づく判断基準(判断基準1)は、本実施形態では下記の3つの条件をすべて満たすことである。下記の(1-1)、(1-2)、(1-3)の3条件は、改良地盤11が高濃度泥水状であることの特徴を示す。
(1-1)貫入抵抗値qcについて、qc_改良後がqc_改良前よりも低下し、かつ概ね一様な深度分布傾向を示していること。
(1-2)周面摩擦fsについて、砂質土と粘性土で明確な違いがあるfs_改良前と比較し、fs_改良後はqt_改良後と相似形の深度分布を示していること。
(1-3)間隙水圧uについて、u_改良後が泥水圧分布を示していること。
【0043】
図4は、地盤改良前後の三成分の計測データの一例を示す図である。図4(A)の横軸は貫入抵抗qc(MN/m)を示し、図4(B)の横軸は周面摩擦fs(kN/m)を示し、図4(C)の横軸は間隙水圧u(kN/m)を示す。各図の縦軸は標高(m)、すなわちコーン2を挿入する孔の深度を示す。また、各図では、地盤改良前のグラフが点線で示され、地盤改良後のグラフが太い実線で示される。
【0044】
図4の例では、図4(A)より、貫入抵抗値qcについて、qc_改良後(太い実線)がqc_改良前(点線)よりも低下し、かつ概ね一様な深度分布傾向を示していることがわかる。また、図4(B)より、周面摩擦fsについて、砂質土と粘性土で明確な違いがあるfs_改良前(点線)と比較し、fs_改良後(太い実線)は、(A)のqt_改良後と相似形の深度分布を示していることがわかる。さらに、図4(C)より、間隙水圧uについて、u_改良後(太い実線)が泥水圧分布を示していること、すなわち略線形の深度分布傾向を示すことがわかる。したがって、図4の例では、上記の三成分に基づく判断基準(判断基準1)を満たすと評価できる。
【0045】
また、手順7において、地盤改良が所定の設計改良径13の範囲まで問題なく行われていると判断するための地盤画像P1~P4に基づく判断基準(判断基準2)は、下記の(2-1)、(2-2)、(2-3)の3つの条件をすべて満たすことである。
(2-1)造成後映像P3と造成後映像P4との比較により、改良地盤11に試薬7による着色反応があること。
(2-2)改良前映像P1と、造成後映像P3またはP4との比較により、造成後(地盤改良後)に泥水状態であること。
(2-3)改良前映像P1と改良前映像P2との比較により、改良前地盤10に試薬7による着色反応が無く、アルカリ性地盤ではないこと。
【0046】
図5は、手順1~4の各段階の地盤画像の一例を示す図である。図5(A)は改良前映像P1の一例である。改良前映像P1は地盤改良前の元の地盤10、すなわちセメントミルクが混合されていない地盤が写されているので、図5(A)に示すように、全体的に茶色などの暗い色となる。また、画像中の黒色の部分は地盤10内に存在する空隙である。なお、改良前地盤10がアルカリ性ではない場合には、改良前映像P2も図5(A)と同様の画像となる。
【0047】
図5(B)は造成後映像P3の一例である。造成後映像P3は、改良地盤11、すなわち改良前地盤10にセメントミルクが撹拌されたものが写されているので、図5(B)に示すように、全体的に灰色や灰白色などの明るい色となる。また、地盤が撹拌されたことにより、図5(A)の改良前地盤10と比較して空隙の数が減少している。
【0048】
図5(C)は造成後映像P4の一例である。造成後映像P4は、改良地盤11に試薬7が塗布されて変色した部分Aが写されているので、図5(C)に示すように、図5(B)と比較して赤色などの変色部分Aが含まれる画像となる。
【0049】
図5の例では、図5(B)の造成後映像P3と図5(C)の造成後映像P4との比較により、造成後画像P4に試薬による変色領域Aが含まれるため、改良地盤11に試薬による着色反応があり、条件(2-1)を満たすことが示される。着色反応が有ることを確認できると、改良地盤11が撮像位置でセメントミルクを混合していることを判別できる。このように造成後映像P3、P4を比較することによって、着色反応の有無に着目して改良地盤11のセメントミルクの部分をより明確に識別することが可能となり、改良地盤11の出来形の評価を精度良くできる。
【0050】
また、図5の例では、図5(A)の改良前映像P1と、図5(B)の造成後映像P3または図5(C)の造成後画像P4との比較により、造成後画像P3、P4の改良地盤11の灰白色や、変色領域Aの赤色が元の改良前地盤10には無く、地盤改良の撹拌によって発生したものと判定できるので、造成後(地盤改良後)に泥水状態であることが示される。このように改良前映像P1と造成後画像P3、P4とを比較することによって、改良前地盤10との相対的な変化を識別することが可能となり、改良地盤11による改質部分の抽出を精度よくできる。これにより、地盤画像に基づく改良地盤11の出来形の評価をさらに精度良くできる。
【0051】
さらに、図5(A)の改良前映像P1と改良前映像P2との比較により、改良前映像P1と改良前映像P2との間に有意差が無い場合には、改良前地盤10に試薬による着色反応が無く、アルカリ性地盤ではないことが示される。このように改良前映像P1と改良前映像P2とを比較することによって、改良前地盤10の地質のアルカリ性有無を判別可能となり、改良地盤11による改質部分の抽出精度をさらに向上できる。これにより、地盤画像に基づく改良地盤11の出来形の評価の精度をさらに改善できる。
【0052】
以上より、図5の例では、地盤画像に基づく判断基準(判断基準2)を満たすと評価できる。
【0053】
図2に戻り、手順7では、上記の判断基準1、2の両方を満たすときに、出来形を満足すると判断することができる。手順7の処理は、制御装置6の評価部64により実施される。
【0054】
なお、手順6の画像比較と、手順7の判断基準2は、一部のみを実施する構成でもよい。少なくとも手順6にて造成後映像P3と造成後映像P4との比較を行い、手順7にて条件(2-1)を満たすことを確認すればよい。または、手順6にてさらに改良前映像P1と、造成後映像P3またはP4との比較を行い、手順7にて条件(2-2)を満たすことも確認する構成、すなわち改良前映像P2による評価を省略する構成でもよい。
【0055】
なお、上記実施形態では高圧噴射撹拌式の深層混合処理工法の場合を例示して説明したが、本実施形態の評価システム1及び評価方法は、機械撹拌式の深層混合処理工法にも適用できる。
【0056】
図6は、機械攪拌式の深層混合処理工法の概略を説明する模式図である。図6では、作業領域を平面視で示している。図6に示すように、機械攪拌式では、撹拌翼14の回転によって原位置土と改良材とを混合撹拌し、地中に円柱状の改良地盤11を造成する工法である。なお、図6では、2つの撹拌翼14を用いる二軸式が例示されている。
【0057】
図6に示す機械撹拌式の深層混合処理工法においても、地盤改良前後の作業領域(図中に符号11で示す部分)にコーン2を貫入して必要なデータを取得し、取得したデータに基づき固化改良地盤11の造成出来形を評価することができる。
【0058】
なお、図6に示す機械撹拌式の深層混合処理工法では、物理的な要素である撹拌翼14によって撹拌が行われるため、高圧噴射攪拌式とは異なり、改良地盤11の外縁位置までは確実に撹拌が行われる。このため、機械撹拌式では、固化改良地盤11の造成出来形を評価するためのコーン2の貫入位置が、高圧噴射攪拌式の場合の設計改良径の位置13とは異なる。例えば図6に示すように、撹拌翼14の回転中心から改良地盤11の外縁との間の設計改良径の中間位置13A(改良中間部)にて、固化改良地盤11が存在するか否かを判定することで、固化改良地盤11の全体の品質を評価でき、これにより固化改良地盤11の造成出来形を評価することができる。
【0059】
また、機械撹拌式の深層混合処理工法では、土壌撹拌後の改良地盤11の性状が高圧噴射攪拌式と相違する可能性がある。このため、評価部64による上記の条件(2-1)における造成後映像P3と造成後映像P4との比較の着眼点を変更してもよい。
【0060】
高圧噴射攪拌式の場合は、撹拌不足があると、改良地盤11の設計改良径の位置13では撹拌自体が行われないため、造成後映像P4にはセメントミルクが含まれず、試薬7による変色も発生しない。すなわち、造成後映像P4は造成後映像P3とほとんど差異が無くなると考えられる。
【0061】
一方、機械撹拌式の場合は、少なくとも撹拌翼14の範囲内では撹拌が行われるので、撹拌不足があっても、コーン貫入位置13Aでは造成後映像P4に変色領域Aが含まれると考えられる。すなわち、機械攪拌式では撹拌不足がある場合でも、高圧噴射攪拌式とは異なり、造成後映像P4と造成後映像P3との間に差異が生じる場合が考えられる。このため機械攪拌式では、造成後映像P3と造成後映像P4との比較手法を高圧噴射攪拌式のものとは異ならせるのが好ましい。
【0062】
図7は、機械撹拌式の深層混合処理工法における撹拌不足時の造成後映像P4の一例を示す図である。機械攪拌式の場合、撹拌不足があると、土壌内に粘土ダマBが生じ、造成後映像P4では粘土ダマBの部分では着色反応を示さないと考えられる。また、上述のように撹拌自体は行われるため、良好に撹拌が行われた部分は試薬7塗布によって変色され、造成後映像P4では変色領域Aも含まれる。一方、撹拌がきちんと行なわれた場合には、着色反応の無い粘土ダマBの部分は縮小すると考えられる。
【0063】
したがって、機械撹拌式では、例えば図7に示す造成後映像P4における変色領域Aの占有率に基づき出来形を評価する構成とすることができる。例えば、造成後映像P4の変色領域Aの占有率が所定値以上の場合に、固化改良地盤11の全体で撹拌が良好に行われていると判断することができ、この場合に、地盤画像に基づく判断基準(判断基準2)を満たすと評価する構成とすることができる。
【0064】
本実施形態に係る固化改良地盤11の造成出来形の評価方法は、固化改良地盤11にコーン2を貫入したときにコーン2に設けられるカメラ3により固化改良地盤11の着色前画像(造成後映像P3)を撮像する貫入工程(手順3)と、固化改良地盤11からのコーン2の引き上げ時にコーン2に設けられる試薬散布部4から試薬7を固化改良地盤11に散布してカメラ3により固化改良地盤11の着色後画像(造成後映像P4)を撮像する引き上げ工程(手順4)と、を含む。
【0065】
この構成により、コーン2の貫入時に着色前画像を撮像し、貫入したコーン2を引き抜く時に着色後画像を撮像できるので、同一のコーン貫入位置13、13Aにコーン2を貫入して引き抜くだけで、試薬7による着色前後の同一位置の地盤の画像を撮像することができる。このように、コーン2の貫入と引き抜きという一往復の動作だけで2種類の画像を取得でき、効率的に評価を行うことができる。また、上述のように、固化改良地盤11の着色前後の地盤の画像、すなわち造成後映像P3と造成後映像P4とを比較することによって、着色反応の有無に着目して改良地盤11のセメントミルクの部分をより明確に識別することが可能となり、改良地盤11の出来形の評価を精度良くできる。したがって、本実施形態に係る固化改良地盤11の造成出来形の評価方法は、固化改良地盤11の造成出来形の評価を高精度かつ効率的に行うことができる。
【0066】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 評価システム
2 コーン
3 カメラ
4 試薬散布部
5 駆動装置
6 制御装置
61 コーン制御部
62 試薬制御部
63 撮像制御部
64 評価部
7 試薬
10 改良前地盤
11 固化改良地盤
13、13A コーン貫入位置
P1 改良前映像(改良前地盤の着色前画像)
P2 改良前映像(改良前地盤の着色後画像)
P3 造成後映像(固化改良地盤の着色前画像)
P4 造成後映像(固化改良地盤の着色後画像)
手順1 事前貫入工程
手順2 事前引き上げ工程
手順3 貫入工程
手順4 引き上げ工程
手順7 評価工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7