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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107245
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】車台のフレーム構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20220713BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20220713BHJP
   B62D 21/15 20060101ALI20220713BHJP
   B60R 19/24 20060101ALI20220713BHJP
   B60R 19/34 20060101ALI20220713BHJP
   B60R 19/04 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
B62D25/08 C
B62D25/20 C
B62D21/15 B
B60R19/24 M
B60R19/34
B60R19/04 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002079
(22)【出願日】2021-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】秋本 康雄
(72)【発明者】
【氏名】末廣 渉
(72)【発明者】
【氏名】荒木 謙志
(72)【発明者】
【氏名】門脇 駿輝
(72)【発明者】
【氏名】片村 弘基
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203AA13
3D203BA03
3D203BA06
3D203BA07
3D203BB16
3D203BB17
3D203BC34
3D203CA23
3D203CA34
3D203CA38
3D203CA40
3D203CA43
3D203CA45
3D203CA52
3D203CB19
3D203DA22
3D203DA83
(57)【要約】
【課題】車両の衝突時における衝撃吸収性能を維持しつつ、被衝突体に加わる局所的な荷重の発生を軽減させることができる車台のフレーム構造を提供する。
【解決手段】車両(1)のボデー(2)を支持する車台(3)のフレーム構造であって、車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ(11)と、サイドメンバの車両前後方向外側の端部(11a)に車幅方向に延びて設けられ、サイドメンバより車幅方向外側に延長された延長部(21a)を有するバンパフレーム(17)と、サイドメンバ間に設けられ、車幅方向に延びる第1クロスメンバ(13a)と、サイドメンバのバンパフレームと第1クロスメンバとの間に設けられ、ボデーを支持するマウントブラケット(15)と、サイドメンバのマウントブラケットが設けられる位置から車幅方向外方に向かって延び、バンパフレームの延長部の車両前後方向内側で対向する位置まで延設される延設部材(33)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のボデーを支持する車台のフレーム構造であって、
車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバと、
前記サイドメンバの車両前後方向外側の端部に車幅方向に延びて設けられ、前記サイドメンバより車幅方向外側に延長された延長部を有するバンパフレームと、
前記サイドメンバ間に設けられ、車幅方向に延びる第1クロスメンバと、
前記サイドメンバの前記バンパフレームと前記第1クロスメンバとの間に設けられ、前記ボデーを支持するマウントブラケットと、
前記サイドメンバの前記マウントブラケットが設けられる位置から車幅方向外方に向かって延び、前記バンパフレームの前記延長部の車両前後方向内側で対向する位置まで延設される延設部材と、を備える
ことを特徴とする車台のフレーム構造。
【請求項2】
前記サイドメンバの前記バンパフレームと前記第1クロスメンバとの間には、車両前後方向に所定以上の荷重が加わると座屈して衝撃を吸収する緩衝部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の車台のフレーム構造。
【請求項3】
前記延設部材は、少なくとも前記バンパフレームが所定距離以上、車両前後方向内側に移動する際、前記バンパフレームを支持する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車台のフレーム構造。
【請求項4】
前記マウントブラケットは、前記ボデーに連結されるマウント部材が取り付けられるマウント支持部と、同マウント支持部の前後から互いに間隔を開けて下方に延び、前記サイドメンバの車幅方向外側の側面に接合される前壁部と後壁部とを有し、
前記延設部材は、前記前壁部と前記後壁部との間で前記サイドメンバから延びる
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の車台のフレーム構造。
【請求項5】
車両前後方向における前記第1クロスメンバと前記バンパフレームとの間の前記マウントブラケットが設けられる位置に設けられ、車幅方向に延びる第2クロスメンバを備える
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の車台のフレーム構造。
【請求項6】
前記サイドメンバの前記マウントブラケットが設けられる位置から下方に延びる柱部材と、
車両前後方向における前記第1クロスメンバと前記バンパフレームとの間の前記マウントブラケットが設けられる位置に設けられ、車幅方向に延びる第2クロスメンバと、を備え、
前記第2クロスメンバは、前記サイドメンバの下方に位置し、前記柱部材によって左右端部が支持されてなり、
前記柱部材が前記マウントブラケットの前記前壁部と前記後壁部の間で前記サイドメンバの側面に接合され、
前記延設部材は、前記マウントブラケットの前記前壁部と前記後壁部の間で前記柱部材を介して前記サイドメンバに接合されている
ことを特徴とする請求項4に記載の車台のフレーム構造。
【請求項7】
前記第2クロスメンバには、車幅方向中央に、車両前後方向に屈曲する力に対する剛性を低下させる剛性低下部が形成されてなる
ことを特徴とする請求項5または6に記載の車台のフレーム構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車台のフレーム構造に係り、特に衝突安全性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の前部には、前突時における衝撃を吸収する、車幅方向に延びるバンパフレームが配設されている。また、バンパフレームを支持するサイドメンバの緩衝部は、前突時に変形することで衝撃を吸収し、車室等への衝撃を緩和することが可能である。
そして、車両の前突には、車両同士が互いに正対し、全面で衝突する所謂フルオーバーラップや、左右一方側にのみ衝突するような所謂オフセット衝突等の複数の場合がある。特に、オフセット衝突の場合、バンパフレームの左右一端に局所的な荷重が生じるため、バンパフレーム及びサイドメンバの緩衝部は、想定以上に変形して充分に衝撃を吸収することができないことが考えられる。
【0003】
そこで、サイドメンバに配設されるクロスメンバから延び、バンパフレームの左右端部を支持するサイドステイを配設することで、バンパフレームの左右一端に局所的な荷重が生じる場合であっても、バンパフレーム及びサイドメンバの緩衝部が想定以上に変形することを抑制する技術が開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-203411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示される技術では、オフセット衝突をしたときの相手方の車両に与える荷重について鑑みると、サイドメンバやサイドステイに対応する位置の荷重が局所的に高くなる可能性があり、好ましいことではない。
一方、サイドメンバの緩衝部やサイドステイの剛性を低下させると、衝撃吸収性能を低下させる虞があるため、更なる改善の余地があった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両の衝突時における衝撃吸収性能を維持しつつ、相手方車両(被衝突体)に加わる局所的な荷重の発生を軽減させることができる車台のフレーム構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の車台のフレーム構造は、車両のボデーを支持する車台のフレーム構造であって、車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバと、前記サイドメンバの車両前後方向外側の端部に車幅方向に延びて設けられ、前記サイドメンバより車幅方向外側に延長された延長部を有するバンパフレームと、前記サイドメンバ間に設けられ、車幅方向に延びる第1クロスメンバと、前記サイドメンバの前記バンパフレームと前記第1クロスメンバとの間に設けられ、前記ボデーを支持するマウントブラケットと、前記サイドメンバの前記マウントブラケットが設けられる位置から車幅方向外方に向かって延び、前記バンパフレームの前記延長部の車両前後方向内側で対向する位置まで延設される延設部材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
これにより、サイドメンバにおけるバンパフレームから第1クロスメンバまでの箇所に形成され、所定の荷重が加わると車両前後方向につぶれる緩衝部に、マウントブラケットを設け、該マウントブラケットから車幅方向外方に延び、バンパフレームの車両前後方向内側に位置する延設部材を備えることで、マウントブラケットによって延設部材を強固に支持しつつ、緩衝部の変形による延設部材の移動を適度に許容することが可能とされる。
【0009】
その他の態様として、前記サイドメンバの前記バンパフレームと前記第1クロスメンバとの間には、車両前後方向に所定以上の荷重が加わると座屈して衝撃を吸収する緩衝部を有するのが好ましい。
これにより、サイドメンバのバンパフレームと第1クロスメンバとの間に車両前後方向に所定以上の荷重が加わると座屈して衝撃を吸収する緩衝部を形成することで、例えばフルオーバーラップ衝突のようなバンパフレーム全体で衝撃を受ける際には、延設部材がバンパフレームを支持するので、左右の緩衝部に均等に荷重が加わるようにして緩衝部を左右で同等につぶすことができ、オフセット衝突のようなバンパフレームの車幅方向一方で偏って衝撃を受ける際には、延設部材がバンパフレームを支持するようにして、緩衝部に相当する位置における局所的な剛性の上昇を低下させることが可能とされる。
【0010】
その他の態様として、前記延設部材は、少なくとも前記バンパフレームが所定距離以上、車両前後方向内側に移動する際、前記バンパフレームを支持するのが好ましい。
これにより、少なくともバンパフレームが所定距離以上、車両前後方向内側に移動する際にバンパフレームを延設部材によって支持することで、バンパフレームが所定距離以上移動するような比較的大きな衝突の際にバンパフレームを延設部材によって支持することが可能とされる。
【0011】
その他の態様として、前記マウントブラケットは、前記ボデーに連結されるマウント部材が取り付けられるマウント支持部と、同マウント支持部の前後から互いに間隔を開けて下方に延び、前記サイドメンバの車幅方向外側の側面に接合される前壁部と後壁部とを有し、前記延設部材は、前記前壁部と前記後壁部との間で前記サイドメンバから延びるのが好ましい。
【0012】
これにより、サイドメンバの車幅方向外側の側面に接合される前壁部と後壁部との間で延設部材が延びるようにすることで、サイドメンバにおける柱部材が延びる部分の強度を高めることが可能とされる。
その他の態様として、車両前後方向における前記第1クロスメンバと前記バンパフレームとの間の前記マウントブラケットが設けられる位置に設けられ、車幅方向に延びる第2クロスメンバを備えるのが好ましい。
【0013】
これにより、第1クロスメンバとバンパフレームとの間に位置し、車幅方向に延びる第2クロスメンバを備えることで、第2クロスメンバが車両前後方向内側に押圧される力を利用して延設部材を車両前後方向外側に押圧することが可能とされる。
その他の態様として、前記サイドメンバの前記マウントブラケットが設けられる位置から下方に延びる柱部材と、車両前後方向における前記第1クロスメンバと前記バンパフレームとの間の前記マウントブラケットが設けられる位置に設けられ、車幅方向に延びる第2クロスメンバと、を備え、前記第2クロスメンバは、前記サイドメンバの下方に位置し、前記柱部材によって左右端部が支持されてなり、前記柱部材が前記マウントブラケットの前記前壁部と前記後壁部の間で前記サイドメンバの側面に接合され、前記延設部材は、前記マウントブラケットの前記前壁部と前記後壁部の間で前記柱部材を介して前記サイドメンバに接合されているのが好ましい。
【0014】
これにより、第2クロスメンバを、サイドメンバの下方に位置させ、サイドメンバのマウントブラケットが設けられる位置から下方に延びる柱部材によって左右端部を支持し、柱部材を、マウントブラケットの前壁部と後壁部の間でサイドメンバの側面に接合し、延設部材を、マウントブラケットの前壁部と後壁部の間で柱部材を介してサイドメンバに接合することで、第2クロスメンバの揺動を許容しつつ、緩衝部がつぶれる際に柱部材を軸にして、第2クロスメンバに加わる力を延設部材に伝達させることが可能とされる。
【0015】
その他の態様として、前記第2クロスメンバには、車幅方向中央に、車両前後方向に屈曲する力に対する剛性を低下させる剛性低下部が形成されてなるのが好ましい。
これにより、第2クロスメンバの車幅方向中央に、車両前後方向に屈曲する力に対する剛性を低下させる剛性低下部を形成することで、衝突時に第2クロスメンバの剛性低下部が車両前後方向中央側に押圧される力を利用して、補強部によってバンパフレームを外方に押圧することが可能とされる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の車台のフレーム構造によれば、サイドメンバのバンパフレームから第1クロスメンバまでの箇所に形成され、所定の荷重が加わると車両前後方向につぶれる緩衝部に、マウントブラケットを設け、該マウントブラケットから車幅方向外方に延び、バンパフレームの車両前後方向内側に位置する延設部材を備えたので、マウントブラケットによって延設部材を強固に支持しつつ、緩衝部の変形による延設部材の移動を適度に許容することができる。また、延設部材は、緩衝部がつぶれる際、バンパフレームを押圧するようにしたので、例えばフルオーバーラップ衝突のようなバンパフレーム全体で衝撃を受ける際には、バンパフレームを支持して緩衝部を左右で同等につぶすことができ、オフセット衝突のようなバンパフレームの車幅方向一方で偏って衝撃を受ける際には、延設部材がバンパフレームを支持するようにして、緩衝部に相当する位置における局所的な剛性の上昇を低下させることができる。
【0017】
これにより、車両の衝突時における衝撃吸収性能を維持しつつ、被衝突体に加わる局所的な荷重の発生を軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】車両の車台の前部の後方斜視図である。
図2】車台の前部の側視図である。
図3】車台の前部の下視図である。
図4図1中の範囲Aの拡大図である。
図5】車両の前方から他車両がフルオーバーラップ衝突した場合の車台の前部の変形を説明する説明図である。
図6】車両の前方から他車両がオフセット衝突した場合の車台の前部の変形を説明する説明図である。
図7】車両の前方から他車両がオフセット衝突した場合の車台の前部の変形を説明する説明図である。
図8】車両の前方から他車両がオフセット衝突した場合の車台の前部の変形を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
図1を参照すると、車両1の車台3の前部の後方斜視図が示されている。車両1は、フレーム構造の車台3を有する自動車である。すなわち、車両1は車台3に、キャビン2を含むボデー、図示しないアッパボディやエンジン等を搭載することで構成される。
車台3は、複数のフレーム部材を組み合わせることで形成される、車両1の骨格である。具体的には、車台3は、サイドメンバ11、サスペンションフレーム13、マウントブラケット15、バンパフレーム17及びロアクロスメンバ(第2クロスメンバ)19を備えている。
【0020】
サイドメンバ11は、左右一対に配設される、車両前後方向に延びる例えば鉄製の角柱部材である。このサイドメンバ11は、車両1の上下方向中央より下側に位置してなる。また、左右一対のサイドメンバ11は、サスペンションフレーム13やロアクロスメンバ19等の車幅方向に延びてなる複数のクロスメンバ部材によって互いに固定され、相対的な揺動が抑制されてなる。
【0021】
サスペンションフレーム13は、サイドメンバ11間に設けられ、車幅方向に延びる前側クロスメンバ部材(第1クロスメンバ)13a及び後側クロスメンバ部材13bを含むフレームである。このサスペンションフレーム13は、図示しないロアアームが設けられることで、駆動軸を支持しつつ地面から車両1に伝達する振動や衝撃を緩和することができる。
【0022】
図2を参照すると、車台3の前部の側視図が示されている。また、図3を参照すると、車台3の前部の下視図が示されている。サイドメンバ11の前部には、エクステンション(緩衝部)12が形成されている。このエクステンション12は、サイドメンバ11における前端11aからサスペンションフレーム13の前側クロスメンバ部材13aの前端までの範囲に形成されており、車両前後方向に所定以上の荷重が加わると座屈して衝撃を吸収するよう形成されてなる。
【0023】
図4を参照すると、図1中の範囲Aの拡大図が示されている。マウントブラケット15は、上側に車両1のキャビン(ボデー)2がマウント部材16を介して載置されるフレームである。また、マウントブラケット15は、左右一対のサイドメンバ11の車幅方向外側であって、サイドメンバ11の前端11aから前側クロスメンバ部材13aの前端までの間、すなわちエクステンション12に配設されてなる。
【0024】
このマウントブラケット15は、平板部材を折り曲げることで、キャビン2に連結されるマウント部材16が取り付けられるマウント支持部15a並びにマウント支持部15aの前端部及び後端部から互いに間隔を開けて下方に延び、サイドメンバ11の車幅方向外側の側面に接合される前壁部15b及び後壁部15cが形成されている。これにより、マウントブラケット15は、車幅方向外側及び下側に開放する箱状に形成されてなる。
【0025】
バンパフレーム17は、下側緩衝部材21、上側緩衝部材23及び固定ブラケット25を有し、車台3の前端に位置してなる。このバンパフレーム17は、車両1の前端に設けられる図示しない樹脂バンパによって前側が覆われる。
下側緩衝部材21は、車幅方向に延び、サイドメンバ11の前端11aに例えばボルトによって固定される緩衝部材である。この下側緩衝部材21は、サイドメンバ11の前端11aに固定された位置から車幅方向外側に延長されてなる端部(延長部)21aが後方に向かって傾斜するよう屈曲してなる。上側緩衝部材23は、車幅方向に延び、下側緩衝部材21の上側に位置する緩衝部材である。この上側緩衝部材23は、車幅方向外側の端部が後方に向かって傾斜するよう屈曲してなる。また、上側緩衝部材23は、車両上下方向に延びてなる複数の固定ブラケット35によって下側緩衝部材21に固定されてなる。
【0026】
したがって、バンパフレーム17は、例えば車両1の前突事故のように車両前方から後方に向かって荷重が加わる場合、サイドメンバ11の前方及びその上方から後方に加わる荷重をバンパフレーム17全体で受けることができる。
ロアクロスメンバ19は、サイドメンバ11の下方であってサスペンションフレーム13とバンパフレーム17との間に位置し、車幅方向に延びてなるフレーム部材である。このロアクロスメンバ19が設けられることで、車台3は、サイドメンバ11に設けられる図示しない複数のクロスメンバ部材と同様に、左右一対のサイドメンバ11の相対的な揺動を抑制して車台の剛性を高めることができる。また、ロアクロスメンバ19には、車幅方向中央に、上下方向に延びてなる変形孔(剛性低下部)19aが設けられてなる。
【0027】
ここで、ロアクロスメンバ19の左右端部近傍には、柱部材31、延設部材33及びガイド部材35が配設されている。
柱部材31は、左右それぞれのサイドメンバ11における、マウントブラケット15の前壁部15bと後壁部15cとの間の位置から下方に延びてなる骨格部材である。この柱部材31は、下端がロアクロスメンバ19の左右両端に例えば溶接されている。したがって、ロアクロスメンバ19は、柱部材31によって左右両端で吊り下げられるよう、マウントブラケット15の下方に支持されてなる。
【0028】
図4によると、延設部材33は、マウントブラケット15の前壁部15bと後壁部15cとの間に位置し、柱部材31の上端を介してサイドメンバ11のエクステンション12に接合され、左右方向外方に延びてなる、左右一対の部材である。
この延設部材33は、バンパフレーム17の車両前後方向後方(車両前後方向内側)、詳しくは、下側緩衝部材21の後方であって、ガイド部材35の所定距離後方に離間して位置してなる。また、延設部材33は、車両上下方向から視て、ロアクロスメンバ19に対して相対的に例えば30°車両前方側に傾いて延び、サイドメンバ11から一定距離離間した部分からはロアクロスメンバ19に対して相対的に例えば10°車両前方側に傾いて延びるよう形成されてなる。
【0029】
これにより、マウントブラケット15は、延設部材33を強固に支持しつつ、延設部材33がマウントブラケット15に設けられることによりマウントブラケット15もまた剛性を高めることができる。そして、延設部材33は、マウントブラケット15の車両前後方向前側に位置してなるので、後述する他車両100が車両前後方向前方から車両1に衝突する際に、マウントブラケット15より先に他車両100からの荷重を延設部材33が受けるようにしてマウントブラケット15に加わる荷重を軽減することができる。さらには、マウントブラケット15は、エクステンション12に配設されているため、エクステンション12の変形による延設部材33の移動を適度に許容することができる。
【0030】
ガイド部材35は、バンパフレーム17の下側緩衝部材21における、延設部材33の前方に対応する位置、すなわち下側緩衝部材21の端部21aに配設されてなる平板部材である。このガイド部材35は、後述する車両1の前突が生じて後方に所定距離移動した際に、延設部材33と接触すると、延設部材33が下側緩衝部材21に刺さることを抑制しつつ、延設部材33を後方に押圧することができる。
【0031】
次に、車両1の前方から他車両(被衝突体)100が衝突した場合の車台3の前部の変形及び作用効果について説明する。以降、図5に示すようにバンパフレーム17の左右方向全体に他車両100が衝突するような場合を「フルオーバーラップ衝突」といい、図6~8のようにバンパフレーム17の左右方向中央から左側にかけて他車両100が衝突するような場合を「オフセット衝突」という。
【0032】
図5を参照すると、車両1の前方から他車両100がフルオーバーラップ衝突した場合の車台3の前部の変形を説明する説明図が示されている。車両1の前方に他車両100がフルオーバーラップ衝突し、バンパフレーム17の車幅方向に均一に荷重が加わる場合、緩衝範囲Cは、車両前後方向に縮むように潰れる。ここで、緩衝範囲Cは、車台3におけるサイドメンバ11の前端11aからサスペンションフレーム13の前側クロスメンバ部材13aまでの部分に該当する。すなわち、緩衝範囲Cには、エクステンション12が含まれてなる。
【0033】
バンパフレーム17の前部に他車両100が衝突し、所定の荷重が左右のエクステンション12に加わると、左右のエクステンション12が後方に向かってつぶれる。
これにより、フルオーバーラップ衝突では、車両1は、バンパフレーム17によって車幅方向全面で他車両100と衝突するため、車両1側の剛性が局所的に高くなることを抑制し、ひいては他車両100に局所的に高い荷重が加わることを抑制することができる。
【0034】
また、延設部材33は、バンパフレーム17の左右両側を支持するので、エクステンション12がつぶれる際、バンパフレーム17を押圧して左右に均等に荷重が加わるようにし、エクステンション12を左右で同等につぶすことができる。
特に、ロアクロスメンバ19は、柱部材31によって支持されているため、柱部材31の上端を軸にして後方に移動するよう揺動することが可能なので、ロアクロスメンバ19によって緩衝部Cの剛性が高められることを軽減しつつ、衝撃を吸収することができる。さらに、延設部材33は、ロアクロスメンバ19より剛性が低いため、前側クロスメンバ部材13aがつぶれる際に延設部材33によって緩衝部Cの剛性が高められることを良好に軽減しつつ、衝撃を吸収することができる。
【0035】
図6~8を参照すると、車両1の前方から他車両100がオフセット衝突した場合の車台3の前部の変形を説明する説明図が示されている。車両1の前方から他車両100がオフセット衝突し、バンパフレーム17の車幅方向中央から左側に、荷重を後方に加える場合、緩衝範囲Cのうちの左右方向中央より左側は、図6~8の順に示すよう車両前後方向に縮むようにして潰れる。
【0036】
具体的には、まず、前側収縮部12bが主につぶれる(図6参照)。このとき、延設部材33は、車両前後方向後方に所定距離移動したバンパフレーム17に配設されたガイド部材35と接触し、後方に押圧される。これにより、延設部材33は、エクステンション12がつぶれる際、延設部材33がバンパフレーム17を支持するように押圧することで、エクステンション12に相当する位置における局所的な剛性の上昇を低下させることができる。
【0037】
また、このように延設部材33が後方に押圧されると、ロアクロスメンバ19には、柱部材31を軸にして変形孔19a近傍を前方に押圧する回転方向の力が生じる。したがって、他車両100が車両1を後方に押圧する力を利用して、ロアクロスメンバ19の変形孔19a近傍を前方に移動させることができるので、早期にロアクロスメンバ19の車幅方向中央を、バンパフレーム17を介して他車両100に接触させることができる。
【0038】
また、車両1の前方から他車両100がオフセット衝突した場合には、ロアクロスメンバ19が変形孔19a近傍で湾曲することで、エクステンション12による衝撃の吸収のみならず、ロアクロスメンバ19を湾曲させる際に衝撃を吸収することによっても衝撃を吸収することができる。またさらに、ロアクロスメンバ19は、変形孔19aが形成されているため、変形孔19a近傍で湾曲することができるので、例えば変形孔19aが設けられていないロアクロスメンバが用いられている場合と比較して早期に他車両100に接触することができる。
【0039】
その後も他車両100が車両1に向かって進行すると、ロアクロスメンバ19が変形孔19aで湾曲する(図7、8参照)。このように変形孔19aで湾曲したロアクロスメンバ19は、変形孔19a近傍部分が他車両100によって後方に押圧される。このとき、延設部材33には、柱部材31を軸にして左端を前方に押圧する回転方向の力が生じる。
これにより、左側のロアクロスメンバ19は、変形孔19a近傍部分が他車両100によって後方に押圧されるにしたがい、てこの原理のように延設部材33を車両前方に向けて押圧することができるので、バンパフレーム17の左側を他車両100に押圧することができる。
【0040】
したがって、オフセット衝突によって、右側のエクステンション12がつぶれず、左側のエクステンション12だけでは衝撃の吸収が足りず、緩衝性がフルオーバーラップ衝突と比較して低くなるような場合であっても、ロアクロスメンバ19が湾曲するように変形することや、延設部材33がバンパフレーム17の左側を他車両100に押圧することで、緩衝範囲Cの左側の剛性を高めて、フルオーバーラップ衝突と同等の緩衝性を確保することができる。
【0041】
特に、他車両100が車両1を後方に押圧する力を利用して、ロアクロスメンバ19や延設部材33を介してバンパフレーム17の車幅方向中央や左端を車両前方に押圧することで、バンパフレーム17全体における剛性を均一化することができ、ひいては他車両100に加わる局所的な荷重の発生を軽減させることができる。
以上説明したように、本発明に係る車台のフレーム構造では、車両1のボデーの一部であるキャビン2を支持する車台のフレーム構造であって、車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ11と、サイドメンバ11の車両前後方向外側、すなわちサイドメンバ11の前側の前端11aに車幅方向に延びて設けられ、サイドメンバ11より車幅方向外側に延長された端部21aを有するバンパフレーム17と、サイドメンバ11間に設けられ、車幅方向に延びる前側クロスメンバ部材13aと、を備える。
【0042】
また、本発明に係る車台のフレーム構造では、サイドメンバ11のバンパフレーム17と前側クロスメンバ部材13aとの間に設けられ、キャビン2を支持するマウントブラケット15と、サイドメンバ11のマウントブラケット15が設けられる位置から車幅方向外方に向かって延び、バンパフレーム17の端部21aの車両前後方向内側で対向する位置まで延設される延設部材33と、を備える。
【0043】
従って、サイドメンバ11のバンパフレーム17から前側クロスメンバ部材13aまでの箇所に形成され、所定の荷重が加わると車両前後方向につぶれるエクステンション12に、マウントブラケット15を設け、該マウントブラケット15から車幅方向外方に延び、バンパフレーム17の車両前後方向後側に位置する延設部材33を備えるようにしたので、マウントブラケット15によって延設部材33を強固に支持しつつ、エクステンション12の変形による延設部材33の移動を適度に許容することができる。また、延設部材33がマウントブラケット15に設けられることで、マウントブラケット15もまた剛性を高めることができる。
【0044】
またさらに、延設部材33は、サイドメンバ11のマウントブラケット15の箇所から車幅方向外方に向かって延び、バンパフレーム17の端部21aの車両前後方向内側で対向する位置まで延設されてなる、すなわち、マウントブラケット15の車両前後方向前側に位置してなるので、他車両100が車両前後方向外方から車両1に衝突する際に、マウントブラケット15より先に他車両100からの荷重を延設部材33が受けるようにしてマウントブラケット15に加わる荷重を軽減することができる。
【0045】
そして、サイドメンバ11のバンパフレーム11と前側クロスメンバ部材13との間には、車両前後方向に所定以上の荷重が加わると座屈して衝撃を吸収するエクステンション12を有するようにしたので、例えばフルオーバーラップ衝突のようなバンパフレーム17全体で衝撃を受ける際には、バンパフレーム17を支持して左右のエクステンション12に均等に荷重が加わるようにし、エクステンション12を左右で同等につぶすことができ、オフセット衝突のようなバンパフレーム17の車幅方向一方で偏って衝撃を受ける際には、延設部材33がバンパフレーム17を支持するようにして、エクステンション12に相当する位置における局所的な剛性の上昇を低下させることができる。
【0046】
そして、延設部材33は、少なくともバンパフレーム17が所定距離以上、車両前後方向後側に移動する際、バンパフレーム17を支持するようにしたので、バンパフレーム17が所定距離以上移動するような比較的大きな衝突の際にバンパフレーム17を延設部材33によって支持することができる。
そして、マウントブラケット15は、キャビン2に連結されるマウント部材16が取り付けられるマウント支持部15aと、同マウント支持部15aの前後から互いに間隔を開けて下方に延び、サイドメンバ11の車幅方向外側の側面に接合される前壁部15bと後壁部15cとを有し、延設部材33は、前壁部15bと後壁部15cとの間でサイドメンバ11から延びるようにしたので、サイドメンバ11における柱部材31が延びる部分の強度を高めることができる。
【0047】
そして、車両前後方向における前側クロスメンバ部材13aとバンパフレーム17との間のマウントブラケット15が設けられるに位置に設けられ、車幅方向に延びるロアクロスメンバ19を備えたので、ロアクロスメンバ19が車両前後方向後側に押圧される力を利用して延設部材33を車両前後方向前側に押圧することができる。
そして、サイドメンバ11のマウントブラケット15が設けられる位置から下方に延びる柱部材31を備え、ロアクロスメンバ19は、サイドメンバ11の下方に位置し、柱部材31によって左右端部が支持されてなり、柱部材31がマウントブラケット15の前壁部15bと後壁部15cの間でサイドメンバ11の側面に接合され、延設部材33は、マウントブラケット15の前壁部15bと後壁部15cの間で柱部材31を介してサイドメンバ11に接合されているので、ロアクロスメンバ19の揺動を許容しつつ、エクステンション12がつぶれる際に柱部材31を軸にして、ロアクロスメンバ19に加わる力を延設部材33に伝達させることができる。
【0048】
そして、柱部材31は、マウントブラケット15の後側から下方に延びてなるので、サイドメンバ11における柱部材31が取り付く部分の強度を高めることができる。
そして、ロアクロスメンバ19には、車幅方向中央に、車両前後方向に屈曲する力に対する剛性を低下させる変形孔19aが形成されてなるので、衝突時にロアクロスメンバ19の変形孔19aが車両前後方向中央側に押圧される力を利用して、補強部によってバンパフレーム17を外方に押圧することができる。
【0049】
以上で本発明に係る車台のフレーム構造の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、本実施形態では、車両1の前部にエクステンション12、バンパフレーム17、ロアクロスメンバ19等を配設するようにし、他車両100が車両1の前方から衝突する場合について説明したが、車両1の後部を同様の構成とし、他車両100が車両1の後方から衝突する場合に備えるようにしてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、ロアクロスメンバ19がサイドメンバ11の下方に位置し、サイドメンバ11のエクステンション12から下方に延びる柱部材31によって左右端部が支持され、延設部材33が該柱部材31及びマウントブラケット15を介してロアクロスメンバ19に固定されるようにしたが、ロアクロスメンバ19を左右のサイドメンバ11の車幅方向後側に、柱部材31を介さずに固定するようにしてもよい。この場合、延設部材33は、マウントブラケット15のみを介してロアクロスメンバ19に固定すればよい。
【0051】
また、本実施形態では、下側緩衝部材21の後方であってガイド部材35の所定距離後方に離間するようにしたが、下側緩衝部材21の端部21aに接触するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 車両
2 キャビン(ボデー)
3 車台
11 サイドメンバ
11a 前端(端部)
12 エクステンション(緩衝部)
13a 前側クロスメンバ部材(第1クロスメンバ)
15 マウントブラケット
15a マウント支持部
15b 前壁部
15c 後壁部
16 マウント部材
17 バンパフレーム
19 ロアクロスメンバ(第2クロスメンバ)
19a 変形孔(剛性低下部)
19b 後端(内側端)
21a 端部(延長部)
31 柱部材
33 延設部材
41 外側部材
43 内側部材
100 他車両(被衝突体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8