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  • 特開-エマルジョンタイプ塗料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010728
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】エマルジョンタイプ塗料
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20220107BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20220107BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20220107BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220107BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20220107BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20220107BHJP
   B01J 23/72 20060101ALI20220107BHJP
   B01J 23/50 20060101ALI20220107BHJP
   B01J 35/08 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/02
C09D7/62
C09D7/61
B01J35/02 J ZAB
B01J23/42 M
B01J23/72 M
B01J23/50 M
B01J35/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020111431
(22)【出願日】2020-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】515037575
【氏名又は名称】株式会社オプティマス
(74)【代理人】
【識別番号】100174816
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 貴久
(72)【発明者】
【氏名】高尾 一美
(72)【発明者】
【氏名】南 英彦
【テーマコード(参考)】
4G169
4J038
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA48A
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC32A
4G169BC32B
4G169BC35A
4G169BC35B
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CA07
4G169CA08
4G169CA10
4G169CA11
4G169CA17
4G169DA03
4G169EA04X
4G169EA04Y
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169HA02
4G169HA13
4G169HB01
4G169HC02
4G169HD10
4G169HE07
4G169HE12
4J038CD101
4J038CF021
4J038CF031
4J038CG001
4J038DG001
4J038EA011
4J038HA066
4J038HA226
4J038HA286
4J038KA21
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA05
4J038PB05
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC04
4J038PC06
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】 光触媒微粒子を含む塗料により形成された塗膜は、光が照射されることによって酸化還元反応が起こり、ウイルスや細菌に作用し、ウイルスや細菌の働きを抑制(不活化)することが知られている。しかしながら、可視光領域の光では、十分な光触媒効果を発揮することができなかった。
【解決手段】 表面に光触媒微粒子が固着している中空バルーンAと、表面に光触媒以外の微粒子が固着している中空バルーンBと、白金、銀、銅、白金化合物、銀化合物、銅化合物から選択される1種以上と、酸化亜鉛微粒子と、有機系樹脂と、水とを含んでおり、前記中空バルーンAは、前記中空バルーンBより比重が小さいことを特徴とする。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に光触媒微粒子が固着している中空バルーンAと、
表面に光触媒以外の微粒子が固着している中空バルーンBと、
白金、銀、銅、白金化合物、銀化合物、銅化合物から選択される1種以上と、
酸化亜鉛微粒子と、有機系樹脂と、水とを含んでおり、
前記中空バルーンAは、前記中空バルーンBより比重が小さいことを特徴とするエマルジョンタイプ塗料。
【請求項2】
前記酸化亜鉛微粒子は、前記有機系樹脂100重量部に対して、1重量部~10重量部であることを特徴とする請求項1に記載のエマルジョンタイプ塗料。
【請求項3】
前記酸化亜鉛微粒子の平均粒子径は、30nm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエマルジョンタイプ塗料。
【請求項4】
前記光触媒微粒子は、平均粒子径が20nm~300nmの酸化チタンであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のエマルジョンタイプ塗料。
【請求項5】
前記光触媒以外の微粒子は、炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のエマルジョンタイプ塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒微粒子を含むエマルジョンタイプ塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒微粒子を含む塗料により形成された塗膜は、光が照射されることによって酸化還元反応が起こり、塗膜表面に付着した有機物等を分解する機能を有している。また、酸化還元反応において発生した活性種がウイルスや細菌に作用し、ウイルスや細菌の働きを抑制(不活化)する。具体的には、光触媒微粒子が光を吸収すると電子が励起され、励起電子と正孔とが生じる。励起電子及び正孔は、空気中の水分や酸素と反応し、水酸ラジカルを生じさせる。水酸ラジカルは、高い酸化分解力を有しており、抗菌、抗ウイルス効果を発揮する。
【0003】
このような光触媒微粒子を含む塗料としては、光触媒微粒子が熱融着によって表面に固着された中空バルーンA、光触媒以外の微粒子が熱融着によって表面に固着された中空バルーンB、有機系樹脂、コロイダルシリカ及び水から構成されるエマルジョンタイプ塗料(特許文献1)が知られている。なお、特許文献1のエマルジョンタイプ塗料に使用される中空バルーンAは比重が軽いため、塗膜表面に浮き出てくる。そのため、中空バルーンAに固着された光触媒微粒子も塗膜表面に位置することになる。したがって、太陽光が光触媒微粒子に照射されやすくなっており、効率よく光触媒効果を発揮することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-148026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のエマルジョンタイプ塗料は、建築物等の外壁に使用する塗料であり、太陽光(紫外光)によって光触媒効果を発揮する塗料である。つまり、屋内において使用される照明器具の光(可視光)では、十分な光触媒効果を得ることができなかった。
【0006】
本発明は、かかる従来発明における課題に鑑みてされたものであり、本発明の目的は、可視光であっても、十分な光触媒効果を発揮する塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも以下のような構成を備え、もしくは手順を実行する。
【0008】
本発明のエマルジョンタイプ塗料は、表面に光触媒微粒子が固着している中空バルーンAと、表面に光触媒以外の微粒子が固着している中空バルーンBと、白金、銀、銅、白金化合物、銀化合物、銅化合物から選択される1種以上と、酸化亜鉛微粒子と、有機系樹脂と、水とを含んでおり、前記中空バルーンAは、前記中空バルーンBより比重が小さいことを特徴とする。
かかる構成により、照明器具から照射される光(可視光)でも十分な光触媒効果を発揮することができる。
【0009】
また、好ましくは、前記酸化亜鉛微粒子は、前記有機系樹脂100重量部に対して、1重量部~10重量部であることを特徴とする。
かかる構成により、より確実に光触媒効果を向上させることができる。
【0010】
また、好ましくは、前記酸化亜鉛微粒子の平均粒子径は、30nm以下であることを特徴とする。
かかる構成により、より確実に光触媒効果を向上させることができる。
【0011】
また、好ましくは、前記光触媒微粒子は、平均粒子径が20nm~300nmの酸化チタンであることを特徴とする。
かかる構成により、より確実に光触媒効果を向上させることができる。
【0012】
また、好ましくは、前記光触媒以外の微粒子は、炭酸カルシウムであることを特徴とする。
かかる構成により、エマルジョンタイプ塗料に悪影響を与えずに光触媒から発生した水酸ラジカルによる樹脂層の劣化をより確実に抑えることができる。光触媒から発生した水酸ラジカルは、エマルジョンタイプ塗料に含まれている樹脂も分解・劣化させるおそれがある。そのため、中空バルーンBに固着している光触媒微粒以外の微粒子によって樹脂層をより確実に保護している。なお、種々の実験により、炭酸カルシウムが好適であった。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、照明器具から照射される光(可視光)でも十分な光触媒効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るエマルジョンタイプ塗料を下地に塗布した際の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、あくまで、本発明を実施するための具体的な一例を挙げるものであって、本発明を限定的に解釈させるものではない。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係るエマルジョンタイプ塗料10を下地20に塗布した際の断面図である。エマルジョンタイプ塗料10は、光触媒微粒子が固着された中空バルーンA30と、光触媒以外の微粒子が固着された中空バルーンB40と、白金、銀、銅、白金化合物、銀化合物、銅化合物から選択される1種以上と、酸化亜鉛微粒子と、有機系樹脂と、水とを含んでいる。なお、図1には、エマルジョンタイプ塗料10、下地20、中空バルーンA30、中空バルーンB40を記載している。
【0017】
本発明の実施形態に係るエマルジョンタイプ塗料10は、水に有機系樹脂が分散したものである。有機系樹脂成分が微細粒子の状態で均一に分散して浮遊しており、乳濁液と呼ばれるものである。有機系樹脂としては、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂等である。なお、アクリルウレタン樹脂が特に好ましい。
【0018】
なお、エマルジョンタイプ塗料10は、塗布した後、徐々に水分が蒸発し、残った樹脂成分が固化する塗料である。したがって、本発明の実施形態に係るエマルジョンタイプ塗料10を塗布すると塗布層は、表面側には水リッチ状態の水リッチ層50となり、深層部においては、樹脂リッチ状態の樹脂リッチ層60となり、2層に分かれた状態になる。なお、塗布する箇所が水平の床面でも、垂直の壁面でも変わりなく、2層に分かれた状態になる。
【0019】
エマルジョンタイプ塗料10の粘度は、3Pa・s~30Pa・sの範囲であり、より好ましくは、5Pa・s~15Pa・sの範囲である。
【0020】
下地20は、例えば、建築物の内装面である。内装面としては、コンクリート、モルタル、石膏ボード、金属、木材、ガラス、タイル、プラスチック等である。なお、内装面に限らず、建築物の外壁等に使用しても構わない。
【0021】
中空バルーンA30は、樹脂製のものであって、内部に真空又は真空に近い状態の気泡を有しているものである。樹脂としては、熱可塑性樹脂を使用している。なお、熱可塑性樹脂としては、アクリル系の樹脂が好ましく、特にアクリロニトリルが好ましい。
【0022】
中空バルーンA30の製造方法としては、熱可塑性樹脂を粒状に分散させた状態で加熱して、膨張させることによって製造する。中空バルーンA30のサイズとしては、10μm~100μmの範囲であり、30μm~60μmの範囲が好ましい。なお、中空バルーンA30の厚みは、1μm~10μmである。
【0023】
中空バルーンA30の比重は、0.14~0.16の範囲である。ただし、中空バルーンA30の比重は、中空バルーンB40の比重より軽くする必要がある。中空バルーンA30の比重を中空バルーンB40の比重より軽くすることによって、中空バルーンA30を塗膜表面に位置させるためである。なお、中空バル―ンA30の表面には、光触媒微粒子が固着されており、中空バルーンB40の表面には光触媒微粒子以外の微粒子が固着されている。そのため、それらが固着された状態において中空バルーンA30の比重が中空バルーンB40の比重より軽くする必要がある。
【0024】
中空バルーンA30には、光触媒微粒子が固着している。なお、光触媒微粒子には、白金、銀、銅、白金化合物、銀化合物、銅化合物から選択される1種以上が担持されている。
【0025】
中空バルーンA30に光触媒微粒子を固着する方法としては、熱による熱融着法を用いている。具体的には、中空バルーンA30の表面に粘着性が出る程度まで溶融し、その状態で光触媒微粒子を中空バルーンA30に接着させる。その後、冷却することで光触媒微粒子を中空バルーンA30に固着させる。熱融着法を用いることで、強固に固着することができるが、熱融着法以外の方法を用いても構わない。例えば、接着剤を用いて固着させても構わない。
【0026】
光触媒微粒子は、光の照射を受けることによって、酸化触媒としての機能を発揮するものであり、酸化チタンが好ましく、特に、アナターセ型結晶の酸化チタンが好ましい。光触媒微粒子の平均粒子径としては、2nm~500nmの範囲であり、より好ましくは、20nm~300nmの範囲である。また光触媒微粒子の固着量は、中空バルーンA30の重量を1とすると、0.1~0.4の範囲である。
【0027】
光触媒微粒子には、白金、銀、銅、白金化合物、銀化合物、銅化合物から選択される1種以上の金属が担持されている。なお、銀、又は、銀化合物を単独で使用した場合、より光触媒効果が向上するため好ましい。また、光触媒微粒子に担持されているが、これは、光触媒微粒子に担持される金属が引き寄せられるため起こる。そのため、本発明のエマルジョンタイプ塗料10を製造する際に白金、銀、銅、白金化合物、銀化合物、銅化合物から選択される1種以上を添加・混合すれば担持される。混合するものとしては、塩化白金酸水溶液、硝酸銀水溶液、リン酸カルシウム系銀イオン水溶液、塩化銅水溶液等であり、特に、リン酸カルシウム系銀イオン水溶液が好ましい。添加量としては、銀イオン量が1%~20%のリン酸カルシウム系銀イオン水溶液を0.5重量%~5重量%の範囲で添加する。より好ましくは、銀イオン濃度が4%のリン酸カルシウム系銀イオン水溶液を1重量%~5重量%の範囲であり、特に、銀イオン濃度が4%のリン酸カルシウム系銀イオン水溶液を1重量%するのがより好ましい。なお、光触媒微粒に担持される金属の粒子径は、0.2nm~2nmのものであり、いわゆるナノ粒子である。
【0028】
また、白金、銀、銅は殺菌効果を有しているため、接触による殺菌効果も期待できる。
【0029】
中空バルーンB40は、樹脂製のものであって、内部に真空又は真空に近い状態の気泡を有しているものである。なお、樹脂としては、熱可塑性樹脂を使用している。なお、熱可塑性樹脂としては、アクリル系の樹脂が好ましく、特にアクリロニトリルが好ましい。
【0030】
中空バルーンB40の製造方法としては、熱可塑性樹脂を粒状に分散させた状態で加熱して、膨張させることによって製造する。中空バルーンB40のサイズとしては、10μm~100μmの範囲であり、30μm~60μmの範囲が好ましい。なお、中空バルーンB40の厚みは、1μm~10μmである。
【0031】
中空バルーンB40の比重は、0.18~0.2の範囲である。中空バルーンB40の比重は、中空バルーンA30の比重より重い必要がある。なお、中空バル―ンA30の表面には、光触媒微粒子が固着されており、中空バルーンB40の表面には光触媒微粒子以外の微粒子が固着されている。そのため、それらが固着された状態において中空バルーンB40の比重が中空バルーンA30の比重がより重くする必要がある。
【0032】
中空バルーンB40には、光触媒以外の微粒子が固着している。なお、光触媒以外の微粒子は、熱融着法によって中空バルーンB40に固着している。熱融着法を用いることで、強固に固着することができるが、熱融着法以外の方法を用いても構わない。例えば、接着剤を用いて、固着させても構わない。
【0033】
光触媒以外の微粒子は、熱に強く、反応性の低いものを使用する。具体的には、炭酸カルシウム粉末、タルク、硫酸バリウム、水酸化アルミ、石粉、シリカ粉末等である。特に、取り扱いの点から炭酸カルシウムが好ましい。また、炭酸カルシウム粉末、タルク、硫酸バリウム、水酸化アルミで実験を行ったところ、炭酸カルシウムは特に目立った欠点が生じなかった。一方、タルクでは、粘度向上という問題を生じ、硫酸バリウムでは、ハードケーキ沈降という問題が生じ、水酸化アルミではゲル化するという問題が生じた。なお、光触媒以外の微粒子が中空バルーンB40に固着していると光触媒から発生した水酸ラジカルによる樹脂層の劣化を抑えることができる。これは、光触媒以外の微粒子が一種のシールドの役目を有しているためである。
【0034】
光触媒以外の微粒子の平均粒子径は、2nm~500nmの範囲である。また、光触媒以外の微粒子の重量は、中空バルーンBの重量を1とすると、0.1~0.4の範囲である。
【0035】
本発明の実施形態に係るエマルジョンタイプ塗料10には、酸化亜鉛微粒子が含まれている。酸化亜鉛微粒子が塗膜表面に配置されることにより、可視光であっても十分な光触媒効果を発揮することができる。
【0036】
酸化亜鉛微粒子は、平均粒子径が100nm以下であり、好ましくは、平均粒子径が30nm以下である。平均粒子径が30nm以下であると、塗料が乾燥する際、表面に位置するようになり、光触媒効果を十分に発揮できると考えられる。これは、塗料が乾燥する際、水の蒸発に伴って移動するためと考えられる。なお、平均粒子径が30nmを超えると、光触媒効果が低下する。
【0037】
酸化亜鉛微粒子の添加量は、有機系樹脂100重量部に対して、1重量部~10重量部である。1重量部未満の場合、十分な光触媒効果を得られず、10重量部を超えて添加すると、塗料中に十分に分散されず、凝集等を起こす。また、10重量部を超えて添加すると、形成した塗膜が劣化しやすくなる。
【0038】
なお、本発明の趣旨を逸脱しない限り、他の成分を添加しても良い。例えば、乳化剤や分散剤、着色用の顔料等を混合しても構わない。
【0039】
本発明の実施形態に係るエマルジョンタイプ塗料10の塗膜の形成方法は、例えば、刷毛、ローラー、エアースプレー等、一般に用いられている方法を使用することができる。なお、これらの塗布方法は、塗装対象物や用途に応じて適時選択すれば良い。
【実施例0040】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
まず、酸化亜鉛微粒子の添加量の変化による脱臭効果及び耐候性について検討するため、実施例1~6の塗料を調整した。なお、調整方法は、各組成物を混合して調整した。各々の塗料を鉄板(1m×1m)の上に400μm程度の厚みで塗布した。
【0042】
<実施例1~6>
有機系樹脂(アクリル樹脂):100重量部
中空バルーンA(アクリロニトリル 粒径10~50μm)の表面に、光触媒微粒子(酸化チタン)を熱融着したもの:10重量部(光触媒微粒子は3重量部)
中空バルーンB(アクリロニトリル 粒径10~50μm)の表面に、光触媒微粒子以外の微粒子(炭酸カルシウム)を熱融着したもの:10重量部(炭酸カルシウムは3重量部)
リン酸亜鉛カルシウム系銀イオン水溶液(銀イオン量4%):2重量部(富士ケミカル株式会社 抗菌剤バクテライト 品番MP-102SVC13を調整)
酸化亜鉛微粒子(平均粒子径10nm):0.1~15重量部
乳化剤:2重量部
水:100重量部
【0043】
実施例1~6について脱臭効果と塗膜劣化について性能評価を行った結果を表1に示す。なお、脱臭効果は、各塗料を塗布した鉄板を部屋(広さ6畳、太陽光が当たらず、20Wの白色蛍光灯を24時間点灯)に設置し、アンモニア100ppmを入れ、時間経過によるアンモニアの臭いの減少で評価した。〇はすぐに臭いがなくなり、△は2日目で臭いがなくなり、×は1週間で臭いがなくなった。
耐候性については、曝露時間2500時間行っても問題ないものについては〇、曝露時間250時間の時点において、わずかにチョーキングが起こり、曝露時間1250時間の時点でチョーキングが起こったものついては△と評価した。なお、表1に示す曝露時間2500時間は、屋外曝露で約10年に相当する。
【0044】
<表1>
【0045】
表1の結果より、酸化亜鉛微粒子の添加量が1重量部未満である場合、十分な光触媒効果を発揮できず、10重量部を超えた場合、耐候性が悪くなることが確認できた。
【0046】
次に、酸化亜鉛微粒子の平均粒子径の影響について検討するため、実施例7~11の塗料を調整した。なお、調整方法は、各組成物を混合して調整した。各々の塗料を鉄板(1m×1m)の上に400μm程度の厚みで塗布した。
【0047】
<実施例7~11>
有機系樹脂(アクリル樹脂):100重量部
中空バルーンA(アクリロニトリル 粒径10~50μm)の表面に、光触媒微粒子(酸化チタン)を熱融着したもの:10重量部(光触媒微粒子は3重量部)
中空バルーンB(アクリロニトリル 粒径10~50μm)の表面に、光触媒微粒子以外の微粒子(炭酸カルシウム)を熱融着したもの:10重量部(炭酸カルシウムは3重量部)
リン酸亜鉛カルシウム系銀イオン水溶液(銀イオン量4%):2重量部(富士ケミカル株式会社 抗菌剤バクテライト 品番MP-102SVC13を調整)
酸化亜鉛微粒子(平均粒子径5~100nm):5重量部
乳化剤:2重量部
水:100重量部
【0048】
実施例7~11について脱臭効果と塗膜劣化について性能評価を行った結果を表2に示す。なお、脱臭効果及び耐候性についての条件等は上記同様である。
【0049】
<表2>
【0050】
表2の結果より、酸化亜鉛微粒子の平均粒子径が30nmを超えた場合、光触媒効果が低下することが確認できた。30nmを超えた場合、酸化亜鉛微粒子の重量が重くなり、塗膜表面に位置できないためと考えられる。
【0051】
次に、光触媒微粒子に担持する金属(白金、銀、銅)の影響を検討するため、実施例4(上記参照)、実施例12、実施例13の塗料を調整した。また、酸化亜鉛微粒子を入れなかった場合の影響を検討するため比較例1の塗料を調整した。また、光触媒微粒子に担持する金属(白金、銀、銅)を添加しなかった場合の影響について検討するため、比較例2及び比較例3の塗料を調整した。なお、調整方法は、各組成物を混合して調整した。各々の塗料を鉄板(1m×1m)の上に400μm程度の厚みで塗布した。
【0052】
<実施例12>
有機系樹脂(アクリル樹脂):100重量部
中空バルーンA(アクリロニトリル 粒径10~50μm)の表面に、光触媒微粒子(酸化チタン)を熱融着したもの:10重量部(光触媒微粒子は3重量部)
中空バルーンB(アクリロニトリル 粒径10~50μm)の表面に、光触媒微粒子以外の微粒子(炭酸カルシウム)を熱融着したもの:10重量部(炭酸カルシウムは3重量部)
塩化白金酸水溶液:(白金濃度4%):2重量部
酸化亜鉛微粒子(平均粒子径10nm):5重量部
乳化剤:2重量部
水:100重量部
【0053】
<実施例13>
有機系樹脂(アクリル樹脂):100重量部
中空バルーンA(アクリロニトリル 粒径10~50μm)の表面に、光触媒微粒子(酸化チタン)を熱融着したもの:10重量部(光触媒微粒子は3重量部)
中空バルーンB(アクリロニトリル 粒径10~50μm)の表面に、光触媒微粒子以外の微粒子(炭酸カルシウム)を熱融着したもの:10重量部(炭酸カルシウムは3重量部)
塩化銅水溶液(銅イオン濃度4%):2重量部
酸化亜鉛微粒子(平均粒子径10nm):5重量部
乳化剤:2重量部
水:100重量部
【0054】
<比較例1>
有機系樹脂(アクリル樹脂):100重量部
中空バルーンA(アクリロニトリル 粒径10~50μm)の表面に、光触媒微粒子(酸化チタン)を熱融着したもの:10重量部(光触媒微粒子は3重量部)
中空バルーンB(アクリロニトリル 粒径10~50μm)の表面に、光触媒微粒子以外の微粒子(炭酸カルシウム)を熱融着したもの:10重量部(炭酸カルシウムは3重量部)
リン酸亜鉛カルシウム系銀イオン水溶液(銀イオン量4%):2重量部(富士ケミカル株式会社 抗菌剤バクテライト 品番MP-102SVC13を調整)
乳化剤:2重量部
水:100重量部
【0055】
<比較例2>
有機系樹脂(アクリル樹脂):100重量部
中空バルーンA(アクリロニトリル 粒径10~50μm)の表面に、光触媒微粒子(酸化チタン)を熱融着したもの:10重量部(光触媒微粒子は3重量部)
中空バルーンB(アクリロニトリル 粒径10~50μm)の表面に、光触媒微粒子以外の微粒子(炭酸カルシウム)を熱融着したもの:10重量部(炭酸カルシウムは3重量部)
酸化亜鉛微粒子(平均粒子径10nm):5重量部
乳化剤:2重量部
水:100重量部
【0056】
<比較例3>
有機系樹脂(アクリル樹脂):100重量部
中空バルーンA(アクリロニトリル 粒径10~50μm)の表面に、光触媒微粒子(酸化チタン)を熱融着したもの:10重量部(光触媒微粒子は3重量部)
中空バルーンB(アクリロニトリル 粒径10~50μm)の表面に、光触媒微粒子以外の微粒子(炭酸カルシウム)を熱融着したもの:10重量部(炭酸カルシウムは3重量部)
塩化銅水溶液(銅イオン濃度4%):2重量部
乳化剤:2重量部
水:100重量部
【0057】
実施例3、12、13及び比較例1、2、3について脱臭効果と塗膜劣化について性能評価を行った結果を表3に示す。なお、脱臭効果及び耐候性についての条件等は上記同様である。
【0058】
<表3>
【0059】
表3の結果より、光触媒微粒子に担持する金属(白金、銀、銅)としては、どの金属を選択しても大きな差異を確認することができなかった。また、光触媒微粒子に担持する金属(白金、銀、銅)又は酸化亜鉛微粒子のどちらか片方だけでは、十分な光触媒効果を発揮できないことが確認できた。
【0060】
次に、抗ウイルス試験について検討した結果を表4に示す。なお、抗ウイルス試験は実施例1についてのみ行った。実験条件としては、実施例1の塗料を50mm×50mmのガラス上に厚さ400μm程度の厚みで塗布し、塗膜を形成した。当該塗膜上に試験ウイルス液(A型インフルエンザウイルス、ATCC VR-1679 濃度2.5×10pfl/ml)を0.4ml塗布し、25℃で24時間静置(接触)させた。その後、プラーク法にて測定し、抗ウイルス活性値を求めた。
【0061】
<表4>
【0062】
表4の結果より、抗ウイルス活性値が4.1であるため、十分な抗ウイルス効果を有していると言える。なお、SIAAマーク登録基準では、抗ウイルス活性値≧2.0となっている。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係るエマルジョンタイプ塗料10は、照明器具から照射される光(可視光)でも十分な光触媒効果を発揮することができる。そのため、病院・ホテル・オフィス等の内装面に使用すると特に有用である。
【符号の説明】
【0064】
10 エマルジョンタイプ塗料
20 下地
30 中空バルーンA
40 中空バルーンB
50 水リッチ層
60 樹脂リッチ層

図1