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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107282
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20220713BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
H05K3/46 Z
H05K3/46 Q
H05K3/46 N
H05K1/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002139
(22)【出願日】2021-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 大介
(72)【発明者】
【氏名】竹中 芳紀
【テーマコード(参考)】
5E316
5E338
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA15
5E316AA23
5E316AA35
5E316AA43
5E316BB02
5E316BB04
5E316BB06
5E316BB15
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC13
5E316CC32
5E316CC37
5E316DD17
5E316DD25
5E316DD33
5E316EE31
5E316FF04
5E316FF07
5E316FF15
5E316FF45
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG28
5E316HH03
5E316JJ02
5E338AA03
5E338AA16
5E338BB75
5E338CC01
5E338CD12
5E338EE11
(57)【要約】
【課題】信号の伝送品質が優れた配線基板の提供。
【解決手段】実施形態の配線基板は、コア基板100と、コア基板100上に形成され、交互に積層された絶縁層11、111及び導体層12、112を有するビルドアップ部と、を有し、第1面Fa及び第1面Faと反対側の第2面Fbを備える。導体層12、112の少なくとも1つは、同一の導体層112内に第1配線T1と第1配線T1が有する導体厚よりも小さい導体厚を有する第2配線T2とを有しており、第2配線T2が有する配線パターンのライン幅の最小値は、第1配線T2が有する配線パターンのライン幅の最小値よりも小さい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア基板と、前記コア基板上に形成され、交互に積層された絶縁層及び導体層を有するビルドアップ部と、を有し、第1面及び前記第1面と反対側の第2面を備える配線基板であって、
前記導体層の少なくとも1つは、同一の前記導体層内に第1配線と前記第1配線が有する導体厚よりも小さい導体厚を有する第2配線とを有しており、
前記第2配線が有する配線パターンのライン幅の最小値は、前記第1配線が有する配線パターンのライン幅の最小値よりも小さい。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1配線及び前記第2配線を有する前記導体層は、周波数1GHzにおいて誘電正接が0.005以下且つ比誘電率が3.5以下である絶縁層上に形成されている。
【請求項3】
請求項2記載の配線基板であって、前記第1配線及び前記第2配線を有する前記導体層が接する絶縁層は全て、周波数1GHzにおいて誘電正接が0.005以下且つ比誘電率が3.5以下である。
【請求項4】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1配線及び前記第2配線を有する前記導体層上面の算術平均粗さRaは0.3μmより小さい。
【請求項5】
請求項1記載の配線基板であって、前記第2配線の有する前記ライン幅の最小値は6μm以下であり、且つ、ライン間スペースの最小値は6μm以下である。
【請求項6】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1配線の導体厚は10μm以上且つ35μm以下であり、前記第2配線の導体厚は10μm未満である。
【請求項7】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1面は、それぞれ複数の部品実装パッドを含む複数の部品搭載領域を有し、
前記第1配線及び/又は前記第2配線は、前記複数の部品搭載領域の内、異なる部品搭載領域内に含まれる部品実装パッドを接続している。
【請求項8】
請求項7記載の配線基板であって、前記第1配線及び前記第2配線が、前記部品実装パッドを有する導体層から1層前記コア基板側の導体層に形成されている。
【請求項9】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1配線及び前記第2配線は、前記第1配線及び前記第2配線を有する導体層に対して前記コア基板側の絶縁層に埋め込まれている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コア基板の上下両面に複数の配線層(導体層)及び絶縁層がビルドアップ法により積層された配線基板が開示されている。配線基板におけるコア基板近傍の配線層はライン/スペース(L/S)=20μm/20μm程度に形成され、15~20μm程度の厚さを有している。配線基板の表層部の一方には、ライン/スペース(L/S)=10μm/10μm以下に形成され、1~5μm程度の厚さを有する微細配線層が形成されている。配線基板における単一の配線層内では配線層の厚さ(導体厚)は等しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-41630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている配線基板では、同一(単一)の配線層内において導体厚が均一であることから、単一の配線層内に複数の配線パターンが形成される場合に、複数の配線パターンのそれぞれにおける特性インピーダンスは主に配線幅に依存すると考えられる。特性インピーダンスがそれぞれ異なる複数の配線パターンを同一の配線層内に形成し難いと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板は、コア基板と、前記コア基板上に形成され、交互に積層された絶縁層及び導体層を有するビルドアップ部と、を有し、第1面及び前記第1面と反対側の第2面を備えている。前記導体層の少なくとも1つは、同一の前記導体層内に第1配線と前記第1配線が有する導体厚よりも小さい導体厚を有する第2配線とを有しており、前記第2配線が有する配線パターンのライン幅の最小値は、前記第1配線が有する配線パターンのライン幅の最小値よりも小さい。
【0006】
本発明の実施形態によれば、導体厚及び配線幅の異なる配線パターンが同一の導体層内に形成されていることで、伝送される信号に対してより適切な特性インピーダンスを有する複数の配線パターンが設けられ、信号の伝送品質が優れた配線基板が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
図2】本発明の一実施形態の配線基板の一例である図1における面Gの平面図。
図3】本発明の一実施形態の配線基板の一例である図1におけるIII部の拡大図。
図4】本発明の一実施形態の配線基板の他の例を示す断面図。
図5A】一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図5B】一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図5C】一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図5D】一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図5E】一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図5F】一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図5G】一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図5H】一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図5I】一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態の配線基板が図面を参照しながら説明される。なお、以下、参照される図面においては、各構成要素の正確な比率を示すことは意図されておらず、本発明の特徴が理解され易いように描かれている。図1には、一実施形態の配線基板が有し得る構造の一例として、配線基板1の断面図が示されている。
【0009】
図1に示されるように、配線基板1は、絶縁層(コア絶縁層)101と、コア絶縁層101の両面に形成された導体層(コア導体層)102を含むコア基板100を有している。コア基板100の両面上には、それぞれ、絶縁層及び導体層が交互に積層されている。図示の例では、コア基板100の一方の面F1上には、絶縁層11、111及び導体層12、112が積層された第1ビルドアップ部10が形成されている。また、コア基板100の他方の面F2上には、絶縁層21及び導体層22が積層された第2ビルドアップ部20が形成されている。
【0010】
なお、本実施形態の配線基板の説明においては、コア絶縁層101から遠い側を、「上」、「上側」、「外側」、又は「外」と称し、コア絶縁層101に近い側を、「下」、「下側」、「内側」、又は「内」と称する。また、各絶縁層及び導体層において、コア基板100と反対側を向く表面は「上面」とも称され、コア基板100側を向く表面は「下面」とも称される。従って、例えば第1ビルドアップ部10及び第2ビルドアップ部20の説明では、コア基板100から遠い側が「上側」、「上方」、「上層側」、「外側」、又は単に「上」もしくは「外」とも称され、コア基板100に近い側が「下側」、「下方」、「下層側」、「内側」、又は単に「下」もしくは「内」とも称される。
【0011】
第1ビルドアップ部10上には、ソルダーレジスト層110が形成されている。第2ビルドアップ部20上には、ソルダーレジスト層210が形成されている。ソルダーレジスト層110には開口110aが形成され、開口110aからは第1ビルドアップ部10における最も外側の導体層12が有する導体パッド12pが露出している。ソルダーレジスト層210には開口210aが形成され、開口210aからは第2ビルドアップ部20における最も外側の導体層22が有する導体パッド22pが露出している。
【0012】
導体層12(導体パッド12p)及びソルダーレジスト層110それぞれの露出面によって構成される、第1ビルドアップ部10の最も外側の表面は、第1面Faと称される。ソルダーレジスト層210及び導体層22(導体パッド22p)それぞれの露出面によって構成される、第2ビルドアップ部20の最も外側の表面は、第2面Fbと称される。すなわち、配線基板1は、配線基板1の厚さ方向と直交する方向に広がる2つの表面として第1面Fa、及び第1面Faの反対面である第2面Fbを有している。
【0013】
コア基板100の絶縁層101には、コア基板100における一方の面F1を構成する導体層102と他方の面F2を構成する導体層102とを接続するスルーホール導体103が形成されている。絶縁層11、111、21のそれぞれには、絶縁層11、111、21それぞれを挟む導体層同士を接続するビア導体13、23が形成されている。
【0014】
導体層102、12、112、22、ビア導体13、23、スルーホール導体103は、銅又はニッケルなどの任意の金属を用いて形成され、例えば、銅箔などの金属箔、及び/又は、めっき若しくはスパッタリングなどで形成される金属膜によって構成される。導体層102、12、112、22、ビア導体13、23、スルーホール導体103は、図1では単層構造で示されているが、2つ以上の金属層を有する多層構造を有し得る。例えば、絶縁層101の表面上に形成されている導体層102は、金属箔、無電解めっき膜、及び電解めっき膜を含む3層構造を有し得る。また、導体層12、112、22、ビア導体13、23、並びにスルーホール導体103は、例えば、無電解めっき膜及び電解めっき膜を含む2層構造を有し得る。
【0015】
絶縁層101、11、111、21は、それぞれ、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)又はフェノール樹脂などの絶縁性樹脂を用いて形成される。各絶縁層は、ガラス繊維などの補強材(芯材)及び/又はシリカ、アルミナなどの無機フィラーを含んでいてもよい。ソルダーレジスト層110、210は、例えば、感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などを用いて形成されている。
【0016】
配線基板1が有する各導体層は、所定の導体パターンを有するようにパターニングされている。図示の例では、第1面Faに露出する導体パッド12pは、配線基板1の使用時において配線基板1に実装される複数の部品E1、E2、E3を載置し得るように、複数形成されている。すなわち、導体パッド12pは外部の部品が配線基板1に搭載される際の接続部として使用される部品実装パッドであり、配線基板1の第1面Faは複数の部品が搭載され得る複数の部品搭載領域E1a、E2a、E3aを含む部品実装面であり得る。部品実装パッド(導体パッド)12pには、例えば、はんだなどの接合材(図示せず)を介して部品E1、E2、E3の電極E11、E21、E31が電気的及び機械的に接続され得る。
【0017】
配線基板1に搭載され得る部品E1、E2、E3としては、例えば、半導体集積回路装置やトランジスタなどの能動部品のような電子部品が例示される。図示される例において、部品E1、E2は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの集積回路、又は、MPU(Micro Processor Unit)などの処理装置であり、部品E3はHBM(High Bandwidth Memory)などのメモリ素子であり得る。すなわち、配線基板1は、その使用においてMCM(Multi Chip Module)の形態を有し得る。
【0018】
これら複数の部品E1、E2、E3同士は、導体パッド12p、及び、配線基板1を構成する導体層12、112、102、22の一部を介して互いに接続され得る。詳しくは図2をも参照して後述するように、本実施形態では、部品E1及び部品E2、並びに、部品E2及び部品E3は、導体パッド12p、ビア導体13、及び導体層112を構成する配線の一部を介して互いに電気的に接続され得る。
【0019】
図1の例の配線基板1における第1面Faに対して反対側の面である第2面Fbは、外部の配線基板、例えば任意の電気機器のマザーボードなどの外部要素に配線基板1自体が実装される場合に、外部要素に接続される接続面であり得る。また、第2面Fbは、第1面Faと同様に、半導体集積回路装置のような電子部品が実装される部品実装面であってもよい。第2面Fbを構成する導体パッド22pは、これらに限定されない任意の基板、電気部品、又は機構部品などと接続され得る。
【0020】
実施形態の配線基板を構成する複数の導体層のうちの任意の導体層は、同一の導体層内に導体厚の異なる配線パターンを有し得る。図示される例の配線基板1においては、第1ビルドアップ部10を構成する導体層12、112のうち、第1面Faを構成する導体層12の直下の(1層内側の、すなわち1層コア基板100側の)導体層112は、導体厚のそれぞれ異なる複数の配線パターンを含んでいる。
【0021】
導体層112には、比較的導体厚の大きい第1配線T1と、第1配線T1が有する導体厚と比較して小さい導体厚を有する第2配線T2と、が形成されている。これらの導体厚の異なる複数の配線パターンによって、それぞれ異なる電気信号が伝送され得る。具体的には、続く図2をも参照した説明において明らかになるように、本実施例では、第1配線T1は部品E1と部品E2との間の信号を伝送し得る配線であり、第2配線T2は部品E2と部品E3との間の信号を伝送し得る配線である。単一の配線層112内において、導体厚の異なる複数の配線が形成されていることで、導体層112によって伝送される複数の信号のそれぞれは、より適切な特性インピーダンスを有する配線によって伝送され得る。
【0022】
図2は、第1配線T1、及び、第2配線T2を有する導体層112が露出した状態における配線基板1の上面図であり、図1において示される面Gの平面図である。すなわち、図2は、第1ビルドアップ部10における最も外側の絶縁層11から上側の構成要素(絶縁層11、導体層12、及びソルダーレジスト層110)を取り除いた状態で、配線基板1を平面視した平面図である。なお、「平面視」は、対象物を配線基板1の厚さ方向と平行な視線で見ることを意味している。図1は、図2に示されるI-I線に沿った断面を示している。
【0023】
第1配線T1は、図2に示されるように、比較的ライン幅及びライン間距離が大きい配線パターンとして形成されている。第2配線T2は、そのライン幅及びライン間距離が、第1配線T1が有するライン幅及びライン間距離より小さい配線パターンとして形成されている。図示の例では、第1配線T1は、その両端にランド部La、Lbを有しており、第2配線T2は、その両端にランド部la、lbを有している。
【0024】
例えば、第1配線T1のライン幅T1Lは、その最小値として10μm以上の値を有し、ライン間距離T1Sの最小値は10μm以上である。例えば、第2配線T2のライン幅T2Lの最小値が6μm以下であり、ライン間距離T2Sの最小値は6μm以下である。すなわち、第1配線T1は、導体厚が比較的大きく、且つ、ライン/スペースが比較的大きい配線層として構成され、第2配線T2は、導体厚が比較的小さく、且つ、ライン/スペースが比較的小さい微細な配線層として構成されている。
【0025】
上述のように、同一の導体層内で導体厚及びL/S(ライン/スペース)の異なるパターンが形成されていることで、配線基板内で伝送される信号の伝送品質が向上することがある。具体的には、導体厚、及び、L/Sの調整により、第1配線T1及び第2配線T2それぞれが有する特性インピーダンスがより望ましい値に調整され得る。単一の導体層において伝送される複数の電気信号に対して、それぞれ適切な特性インピーダンスを有する配線が提供され得る。換言すれば、同一の導体層内で配線の厚さ(導体厚)が均一である場合と比較して、配線設計の自由度が向上し得る。
【0026】
再び図1が参照される。第1及び第2配線T1、T2がそれぞれ両端に備えているランド部La、Lb、la、lbは、直上の絶縁層11を貫通するビア導体13を介して、部品実装パッド12pに接続されている。図示される例において、ランド部La、Lbは第1配線T1の導体厚と等しい導体厚を有し、ランド部la、lbは第2配線T2の導体厚と等しい導体厚を有している。ランド部Laは部品E1が載置され得る部品実装パッド12pに接続され、ランド部Lbは部品E2が載置され得る部品実装パッド12pに接続されている。ランド部laは部品E2が載置され得る部品実装パッド12pに接続され、ランド部lbは部品E3が載置され得る部品実装パッド12pに接続されている。すなわち、第1配線T1及び第2配線T2は、複数の部品搭載領域E1a、E2a、E3aの内、異なる部品搭載領域内に含まれる部品実装パッド12pを接続している。
【0027】
上記の接続構造を有する第1配線T1は部品E1と部品E2とを接続するブリッジ配線の一部を構成し、第2配線T2は部品E2と部品E3とを接続するブリッジ配線の一部を構成する。比較的大きい導体厚及びL/Sを有する第1配線T1は、例えばマイクロプロセッサである部品E1と部品E2との間での信号を伝送する配線を構成する。比較的小さい導体厚及びL/Sを有する第2配線T2は、例えばメモリ素子である部品E3とマイクロプロセッサである部品E2との間での信号を伝送するバスラインであり得る。
【0028】
図3には、図1において一点鎖線で囲まれる領域IIIの拡大図が示されている。図示されるように、第1配線T1及び第2配線T2を有する導体層112は下側の絶縁層111内に埋没する埋め込み配線の形態を有している。第1配線T1の導体厚T1tは、例えば10μm以上、且つ、35μm以下であり、第2配線T2の導体厚T2tは、例えば10μm未満である。なお、図示される拡大図においては、導体層12、112が、無電解めっき膜層12a、112a及び電解めっき膜層12b、112bの2層構造で構成される例が示されている。
【0029】
前述したように、第1及び第2配線T1、T2は、異なる電子部品間で伝送される信号用の配線であり、その信号は高周波信号であり得る。従って、第1及び第2配線T1、T2を有する導体層112が埋め込まれている絶縁層111は高周波特性に優れていることが好ましい。
【0030】
配線に接する絶縁層が、比較的高い値の誘電率、誘電正接を有する場合、配線で伝送される高周波信号の誘電損失(伝送損失)が比較的大きい。誘電損失は、信号の周波数が高ければ大きくなる傾向にあり、特に、マイクロ波、ミリ波領域の高周波信号が伝送される場合には、誘電損失が顕著になり得る。従って、導体層112が埋め込まれている絶縁層111は、比較的、誘電率及び誘電正接の小さい材料が使用されることが好ましく、周波数1GHzにおける比誘電率が3.5以下、且つ、誘電正接が0.005以下であることが好ましい。
【0031】
上述の、絶縁層の比誘電率及び誘電正接について、導体層112直上の絶縁層11も同様に周波数1GHzにおける比誘電率が3.5以下、且つ、誘電正接が0.005以下であることがさらに好ましい。導体層112が接する絶縁層が全て高周波特性に優れたものであることで、導体層112はさらに優れた信号伝送品質を有し得る。
【0032】
電気信号の伝送においては、配線表面の表面粗度が高い場合、伝送信号の表皮効果に起因する損失が大きくなることで、信号の伝送品質が損なわれる。従って、導体層112の上面が比較的低い値の表面粗度を有することで、導体層112で伝送される信号の散乱損失が低減される場合がある。この観点から、導体層112の上面は、比較的低い表面粗度を有するように形成されている。具体的には、導体層112上面の算術平均粗さ(基準線から変化する高さの絶対値の算術平均)Raが0.3μm未満とされている。導体層112上面の算術平均粗さRaは0.15μm以下であることがより好ましい。
【0033】
配線基板1では、第1ビルドアップ部10を構成する導体層の内、最も外側の導体層12から1層内側の導体層112が埋め込み配線とされ、導体厚の異なる第1配線T1及び第2配線T2を有している。しかしながら、このような形態の導体層は配線基板内に複数層形成されてもよい。図4には、第2ビルドアップ部20における、第1ビルドアップ部10における導体層112の階数と同じ階数の導体層22が埋め込み配線とされている例の、配線基板1aが示されている。なお「階数」は、第1ビルドアップ部10及び第2ビルドアップ部20それぞれにおいて積層されている複数の導体層12、112、22にコア基板100側から1ずつ増加する数を1から順に付与したときに各導体層12、112、22に付与される数である。第2ビルドアップ部20の、第1ビルドアップ部10と同じ階数に埋め込み配線が形成されることに因って、配線基板の厚さ方向における対称性が向上し、配線基板の反りが抑制されることがある。
【0034】
図5A図5Iを参照して、図1に示される配線基板1が製造される場合を例に、製造方法が説明される。先ず、図5Aに示されるように、コア基板100が用意される。コア基板100の用意では、例えば、コア絶縁層101を含む両面銅張積層板が用意される。そしてサブトラクティブ法などによって所定の導体パターンを含む導体層102を絶縁層101の両面に形成すると共に、スルーホール導体103を絶縁層101内に形成することによってコア基板100が用意される。
【0035】
次いで、図5Bに示されるように、コア基板100の一方の面F1上に絶縁層11が形成され、その絶縁層11上に導体層12が積層される。コア基板100の他方の面F2上には絶縁層21が形成され、その絶縁層21上に導体層22が積層される。例えば各絶縁層11、21は、フィルム状の絶縁性樹脂を、コア基板100上に熱圧着することによって形成される。導体層12、22は、絶縁層11、21に例えばレーザー光によって形成され得る開口13a、23aを充填するビア導体13、23と同時に、セミアディティブ法などの任意の導体パターンの形成方法を用いて形成される。
【0036】
続いて、5Cに示されるように、コア基板100の一方の面F1側において絶縁層111が積層され、他方の面F2側では絶縁層21が導体層22上に積層される。絶縁層111には、レーザー加工により貫通孔13gが形成される。貫通孔13gは絶縁層111を貫通するビア導体13(図1参照)が形成されるべき位置に形成される。貫通孔13gの形成には、10μm程度の比較的長い波長の炭酸ガスレーザーが用いられ得る。なお、絶縁層111及び絶縁層21の積層後、貫通孔13gの形成前に、コア基板100の他方の面F2側では、露出する絶縁層21の表面が、例えばPETフィルムなどのマスクを用いて適宜保護され得る。
【0037】
次いで、図5Dに示されるように、例えば、比較的波長が短く、絶縁層の加工において比較的優れた直進性を有するエキシマレーザーなどを利用した加工によって、溝T1g、Lag、Lbgが形成される。溝T1gは、上述した第1配線T1が有するべき配線パターンに従って形成され、溝Lag、Lbgは第1配線T1のランド部La、Lbが形成されるべき位置に従って形成される。溝T1g、Lag、Lbgは、第1配線T1が有するべき厚さ(例えば10.0μm以上の深さ)を有するように形成される。
【0038】
次いで、図5Eに示されるように、溝T2g、lag、lbgが形成される。これらの溝T2g、lag、lbgは、上述の第2配線T2が有する厚さ(例えば10.0μm以下の深さ)を有するように形成される。溝T2gは上述した第2配線T2が有するべきパターンに従って、例えば、上述の溝T1g、Lag、Lbgの形成と同様に、エキシマレーザーを用いる加工によって形成され得る。溝lag、lbgは第2配線T2のランド部la、lbが形成されるべき位置に従って形成される。
【0039】
なお、図5C図5Eを参照して説明された、貫通孔13gの形成、溝T1g、Lag、Lbgの形成、及び溝T2g、lag、lbgの形成の順序は、任意に変更され得る。例えば、貫通孔13g、溝T1g、Lag、Lbgの形成に先行して、溝T2g、lag、lbgが形成されてもよい。
【0040】
次いで、図5Fに示されるように、絶縁層111の上側の面全体(貫通孔13gの内部、溝T1g、T2g、Lag、Lbg、lag、lbgの内部、及び、絶縁層111の最も外側の面)を被覆するように導体層112pが形成される。例えば、絶縁層111の上側の面全体に、無電解めっき又はスパッタリングなどによって金属膜が形成され、次いで、この金属膜をシード層として電解めっきを施すことより、導体層112pが形成される。
【0041】
次いで、図5Gに示されるように、導体層112pの厚さ方向における一部が研磨により除去される。絶縁層111が露出した状態となり、第1配線T1及び第2配線T2を有する導体層112の形成が完了する。導体層112pの研磨は、例えば化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)により実施され、導体層112の上面は、例えば算術平均粗さRaが0.3μm未満とされ得る。
【0042】
次いで、図5Hに示されるように、コア基板100の他方の面F2側で導体層22が形成される。続いて、コア基板100の一方の面F1側において、上述した、コア基板100上への絶縁層11及び導体層12の形成と同様の方法によって、導体層112の上側に、絶縁層11及び導体層12が形成される。コア基板100の一方の面F1側のビルドアップ層10の形成が完了する。コア基板100の他方の面F2側では、1層の絶縁層21と導体層22が交互に積層される。他方の面F2側での第2ビルドアップ部20の形成が完了する。第1ビルドアップ部10の最外の導体層12は、導体パッド12pを含むパターンに、形成され、第2ビルドアップ部20の最外の導体層22は、導体パッド22pを含むパターンに形成される。
【0043】
次いで、図5Iに示されるように、第1ビルドアップ部10上にソルダーレジスト層110が形成され、第2ビルドアップ部20上にソルダーレジスト層210が形成される。例えば、スプレーコーティング、カーテンコーティング、又はフィルム貼り付けなどによって、感光性を有するエポキシ樹脂膜が形成され、露光及び現像により開口110a、210aが形成される。ソルダーレジスト層110、210の開口110a、210aからは導体パッド12p、22pが露出する。
【0044】
以上の工程により、配線基板1の形成が完了する。開口110a、210aの形成後、露出する導体パッド12p、22pの表面には、保護膜(図示せず)が形成されてもよい。例えば、Ni/Au、Ni/Pd/Au、又はSnなどからなる保護膜がめっき法により形成され得る。有機材の吹き付けによりOSP膜が形成されてもよい。
【0045】
実施形態の配線基板は、各図面に例示される構造、並びに、本明細書において例示される構造、形状、及び材料を備えるものに限定されない。例えば、異なる導体厚の配線を有する導体層は、配線基板を構成する導体層の内の任意の単数又は複数の導体層であり得る。実施形態の説明では、2つの厚さの異なる配線(第1配線、第2配線)が例示されたが、第1配線及び第2配線と導体厚及びL/Sの異なる第3配線が同一の導体層内に形成されてもよい。第1ビルドアップ部及び第2ビルドアップ部は任意の層数の絶縁層及び導体層を有し得る。コア基板の両面に形成される第1ビルドアップ部が有する絶縁層及び導体層の層数は、第2ビルドアップ部が有する絶縁層及び導体層の層数と異なっていてよい。
【符号の説明】
【0046】
1、1a 配線基板
10 第1ビルドアップ部
20 第2ビルドアップ部
101、11、111、21 絶縁層
102、12、112、22 導体層
100 コア基板
103 スルーホール導体
13、23 ビア導体
110、210 ソルダーレジスト層
12p 導体パッド(部品実装パッド)
22p 導体パッド
E1、E2、E3 部品
E1a、E2a、E3a 部品搭載領域
E11、E21、E31 電極
T1 第1配線
T2 第2配線
La、Lb、la、lb ランド部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I