(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107299
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】試料ホルダーおよび荷電粒子線装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/20 20060101AFI20220713BHJP
H01J 37/26 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
H01J37/20 A
H01J37/26
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002165
(22)【出願日】2021-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100161540
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 良伸
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 修一
【テーマコード(参考)】
5C001
5C033
【Fターム(参考)】
5C001AA01
5C001AA05
5C001CC03
5C033SS02
(57)【要約】
【課題】カートリッジを搬送する際に、試料台が破損することを防ぐことができる試料ホルダーを提供する。
【解決手段】荷電粒子線装置用の試料ホルダーであって、試料を保持する試料台160を有するカートリッジ150と、カートリッジ150を取付け可能な取付け部112を有するホルダーベース110と、を含み、カートリッジ150は、試料台160を傾斜させる傾斜機構170と、カートリッジ150が取付け部112から取り外された状態において、試料台160に接触して試料台160の傾斜を制限するロックレバー180と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線装置用の試料ホルダーであって、
試料を保持する試料台を有するカートリッジと、
前記カートリッジを取付け可能な取付け部を有するホルダーベースと、
を含み、
前記カートリッジは、
前記試料台を傾斜させる傾斜機構と、
前記カートリッジが前記取付け部から取り外された状態において、前記試料台に接触して前記試料台の傾斜を制限するロックレバーと、
を有する、試料ホルダー。
【請求項2】
請求項1において、
前記ロックレバーに接続された弾性部材を含み、
前記カートリッジが前記取付け部から取り外された状態では、前記ロックレバーは、前記弾性部材によって付勢されて前記試料台に接触し、
前記カートリッジが前記取付け部に取り付けられた状態では、前記ロックレバーは、前記取付け部に設けられたブロックに当たって、前記試料台と離間する、試料ホルダー。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記傾斜機構は、
前記試料台に接続された傾斜アームと、
前記傾斜アームに接続された傾斜レバーと、
を有し、
前記ホルダーベースは、前記カートリッジが前記取付け部に取り付けられた状態で、前記傾斜レバーに接触するシャフトを有し、
前記傾斜レバーが前記シャフトに接触して前記試料台が傾斜することによって、前記試料台と前記ロックレバーが離間する、試料ホルダー。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の試料ホルダーを含む、荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記試料ホルダーの前記取付け部が配置される試料室と、
前記試料室に接続された試料交換室と、
前記試料室と前記試料交換室との間において、前記カートリッジを搬送する搬送ロッドと、
を含む、荷電粒子線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料ホルダーおよび荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透過電子顕微鏡などの荷電粒子線装置において、試料を保持するカートリッジを自動で試料室に搬送する自動搬送装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、試料交換室と試料室との間において、カートリッジを搬送する搬送ロッドを備えた荷電粒子線装置が開示されている。試料室は、対物レンズを構成するポールピースの上極と下極の間の空間であり、搬送ロッドは、カートリッジを上極と下極の隙間を通して試料室に搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体材料などの結晶性の試料を観察する場合、一般的に、電子線の入射方向に、結晶の方位を合わせて観察を行う。そのため、結晶性の試料を観察するためのカートリッジは、試料台を傾斜させる傾斜機構を有している。
【0006】
カートリッジの試料台が傾斜している場合、カートリッジを試料室に搬送するときに、試料台が荷電粒子線装置の他の部材に衝突して、試料台が破損するおそれがある。例えば、ポールピースの上極と下極の隙間は、数mm程度と狭い。そのため、カートリッジの試料台の傾斜角度が大きい場合、カートリッジを上極と下極の隙間を通すときに試料台がポールピースに接触してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る試料ホルダーの一態様は、
荷電粒子線装置用の試料ホルダーであって、
試料を保持する試料台を有するカートリッジと、
前記カートリッジを取付け可能な取付け部を有するホルダーベースと、
を含み、
前記カートリッジは、
前記試料台を傾斜させる傾斜機構と、
前記カートリッジが前記取付け部から取り外された状態において、前記試料台に接触して前記試料台の傾斜を制限するロックレバーと、
を有する。
【0008】
このような試料ホルダーでは、カートリッジを搬送する際に試料台の傾斜を制限できるため、試料台が荷電粒子線装置の他の部材に衝突することを防ぐことができる。
【0009】
本発明に係る荷電粒子線装置の一態様は、
上記試料ホルダーを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る試料ホルダーを模式的に示す平面図。
【
図2】実施形態に係る試料ホルダーを模式的に示す平面図。
【
図6】実施形態に係る試料ホルダーを含む電子顕微鏡の構成を示す図。
【
図7】実施形態に係る試料ホルダーを含む電子顕微鏡の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0012】
1. 試料ホルダー
まず、本発明の一実施形態に係る試料ホルダーについて図面を参照しながら説明する。
図1および
図2は、本発明の一実施形態に係る試料ホルダー100を模式的に示す平面図である。なお、
図1は、カートリッジ150がホルダーベース110の取付け部112から取り外された状態を示し、
図2は、カートリッジ150がホルダーベース110の取付け部112に取り付けられた状態を示している。
【0013】
試料ホルダー100は、透過電子顕微鏡用の試料ホルダーである。試料ホルダー100は、
図1および
図2に示すように、ホルダーベース110と、カートリッジ150と、を含む。
【0014】
ホルダーベース110は、シャフト部102と、取付け部112と、ブロック120と、ブロック122と、を有している。
【0015】
シャフト部102は、棒状の部材である。シャフト部102は、試料ホルダー100の柄となる部分である。シャフト部102には、Oリング104が装着されている。Oリング104は、シャフト部102の外周面に設けられた溝に装着されている。Oリング104によって、試料ホルダー100を電子顕微鏡に挿入した際に、試料室を気密にできる。図示はしないが、シャフト部102の後端には、ユーザーが試料ホルダー100を把持するための把持部が設けられている。
【0016】
取付け部112は、シャフト部102の先端に設けられている。取付け部112は、カートリッジ150を取付け可能に構成されている。取付け部112は、カートリッジ150を載置するための載置面114を有している。取付け部112は、板バネ116を有し、載置面114に載置されたカートリッジ150は、板バネ116によってブロック120およびブロック122に押し当てられる。これにより、カートリッジ150が固定される。
【0017】
ブロック120およびブロック122は、カートリッジ150が載置面114に載置されたときに、カートリッジ150に接する部材である。ブロック120およびブロック122は、カートリッジ150を取付け部112に取り付ける際に、カートリッジ150を案内するガイドとして機能する。
【0018】
ホルダーベース110は、カートリッジ150の傾斜機構170を動作させるためのシャフト130を有している。シャフト130は、図示はしないが、シャフト部102内に設けられた送りねじなどを介してモーターなどの駆動部に接続されている。
【0019】
カートリッジ150は、
図1に示すように、シャフト部102の中心軸Lに対して、斜め方向Cから取付け部112に取付けられる。具体的には、取付け部112を静止させた状態で、カートリッジ150を斜め方向Cに移動させることで、カートリッジ150が取付け部112に差し込まれ、カートリッジ150が取付け部112に固定される。
【0020】
なお、取付け部112にカートリッジ150を取り付ける手法は特に限定されない。すなわち、取付け部112の構成は、上記の例に限定されず、カートリッジ150が着脱可能に構成されていればよい。
【0021】
カートリッジ150は、試料を保持する。カートリッジ150は、フレーム152と、試料台160と、傾斜機構170と、ロックレバー180と、を有している。
【0022】
試料台160は、試料を保持する。試料台160には、貫通孔が形成されており、貫通孔上に試料が固定される。試料は、例えば、Cリングや板バネを用いて試料台160に固定される。
【0023】
試料台160は、カートリッジ150のフレーム152に、不図示の軸部材で接続されている。フレーム152は、枠状の部材である。軸部材は、試料台160を軸Aまわりに回転可能に支持している。そのため、試料台160は、軸Aを傾斜軸(回転軸)として、傾斜可能(回転可能)である。カートリッジ150が取付け部112に取り付けられたときに、軸Aは、ホルダーベース110のシャフト部102の中心軸Lに対して垂直である。
【0024】
傾斜機構170は、傾斜アーム172と、傾斜レバー174と、を有している。傾斜アーム172は、試料台160に接続されている。傾斜アーム172は、傾斜レバー174に接続されている。カートリッジ150が取付け部112に取付けられた状態では、傾斜レバー174にシャフト130の先端が接している。シャフト130が伸縮することによって、傾斜レバー174が回転し、傾斜アーム172に接続された試料台160が軸Aまわりに傾斜する(
図5参照)。
【0025】
ロックレバー180は、カートリッジ150が取付け部112から取り外された状態において、試料台160の傾斜を制限する。ロックレバー180は、例えば、L字状である。ロックレバー180は、第1棒状部材181と、第2棒状部材182と、を有している。第1棒状部材181および第2棒状部材182は、軸部材184から互いに直交する方向に延びている。ロックレバー180は、軸部材184を回転軸として、回転可能である。
【0026】
第2棒状部材182には、弾性部材186が接している。弾性部材186は、一端が第2棒状部材182に接し、他端がフレーム152に固定されている。弾性部材186は、例えば、板バネである。
図1および
図2に示す例では、弾性部材186は、ロックレバー180が反時計回りに回転するように付勢する。
【0027】
図1に示すように、カートリッジ150が取付け部112から取り外された状態では、ロックレバー180は、試料台160に接して、試料台160の傾斜を制限する。カートリッジ150が取付け部112に取り付けられた状態では、
図2に示すように、ロックレバー180は、試料台160と離間する。これにより、試料台160は傾斜可能となる。
【0028】
2. 動作
2.1. カートリッジの取付け
2.1.1. ロックレバーの動作
まず、カートリッジ150を、取付け部112に取り付けるときのロックレバー180の動作について説明する。
図3は、ロックレバー180の動作を説明するための図である。
【0029】
図1に示すように、カートリッジ150が取付け部112から取り外された状態では、ロックレバー180は、試料台160に接して、試料台160の傾斜を制限する。具体的には、第2棒状部材182が弾性部材186によって付勢されて、第1棒状部材181が試料台160に接する。
図1に示す例では、第1棒状部材181は、試料台160の下に配置されている。これにより、試料台160の傾斜が制限されて、試料台160が水平に固定される。
【0030】
ロックレバー180によって試料台160が水平に固定された状態で、カートリッジ150を取付け部112に突入させる。具体的には、カートリッジ150を、シャフト部102の中心軸Lに対して斜め方向Cに移動させる。カートリッジ150は、取付け部112の載置面114上を斜め方向Cにスライドする。
【0031】
このとき、試料台160が水平に固定されているため、カートリッジ150を取付け部112に突入させても、試料台160が、取付け部112のフレーム113や、載置面114に衝突しない。
【0032】
図3に示すように、カートリッジ150は、ブロック120とブロック122との間を通る。カートリッジ150は、ブロック120およびブロック122にガイドされて、斜め方向Cに移動する。
【0033】
カートリッジ150を斜め方向Cに移動させると、第2棒状部材182がブロック120に接触する。さらに、カートリッジ150を斜め方向Cに移動させると、第2棒状部材182はブロック120に接触しているため、ロックレバー180は軸部材184を回転軸として時計回りに回転する。これにより、第1棒状部材181は、試料台160と離間する。この結果、試料台160の傾斜の制限が解除されて、試料台160は傾斜可能となる。
【0034】
さらに、カートリッジ150を斜め方向Cに移動させると、
図2に示すように、カートリッジ150が取付け部112に固定される。
図2に示す状態では、第1棒状部材181は、試料台160と離間しており、試料台160は傾斜可能である。このように、カートリッジ150を斜め方向Cに移動させることで、ロックレバー180による試料台160の傾斜の制限が解除され、カートリッジ150を取付け部112に取り付けることができる。
【0035】
以上の工程により、カートリッジ150を取付け部112に取り付けることができる。
【0036】
2.1.2. 傾斜機構の動作
次に、カートリッジ150を、取付け部112に取り付けるときの傾斜機構170の動作について説明する。
図4および
図5は、傾斜機構170の動作を説明するための図である。
【0037】
図4に示すように、第2棒状部材182がブロック120に当たる前の状態では、第1棒状部材181が試料台160に接しており、試料台160が水平に固定されている。このとき、シャフト130は、傾斜レバー174に接していない。
【0038】
図5は、
図4に示す状態から、さらに、カートリッジ150を斜め方向Cに移動させた
状態を示している。
図5に示すように、第2棒状部材182がブロック120に接触すると同時に、傾斜レバー174がシャフト130に接触する。これにより、シャフト130が傾斜レバー174を押し、傾斜レバー174が回転して、試料台160が傾斜する。
図5に示す例では、傾斜レバー174の突起部175が、シャフト130の先端のボール132に接触している。
【0039】
このように、傾斜レバー174がシャフト130に接触して試料台160が傾斜することによって、ロックレバー180を回転させて、試料台160を傾斜可能とするときに、ロックレバー180(第1棒状部材181)が試料台160に接触しない。すなわち、試料台160の傾斜の制限を解除するためにロックレバー180を移動させるときに、ロックレバー180は、試料台160に接触しない。したがって、ロックレバー180と試料台160との間の摩擦によって生じるかじりを防ぐことができる。
【0040】
2.2. カートリッジの取り外し
2.2.1. ロックレバーの動作
カートリッジ150を取付け部112から取り外す場合、ロックレバー180は、カートリッジ150を取付け部112に取り付けるときと逆の動作を行う。
【0041】
具体的には、
図2に示すカートリッジ150が取付け部112に取り付けられている状態から、カートリッジ150を斜め方向Cとは反対方向に移動させる。これにより、第2棒状部材182は、ブロック120から離間する。そのため、ロックレバー180は、弾性部材186によって付勢されて、反時計まわりに回転し、
図2に示すように、第1棒状部材181が試料台160に接触する。この結果、試料台160の傾斜が制限され、試料台160が水平に固定される。
【0042】
さらに、カートリッジ150を斜め方向Cとは反対方向に移動させると、
図1に示すように、試料台160が水平に固定された状態で、カートリッジ150が取付け部112から取り外される。
【0043】
2.2.2. 傾斜機構の動作
カートリッジ150を取付け部112から取り外す場合、傾斜機構170は、カートリッジ150を取付け部112に取り付けるときと逆の動作を行う。
【0044】
具体的には、
図5に示すように、カートリッジ150が取付け部112に取り付けられた状態から、カートリッジ150を斜め方向Cとは反対方向に移動させる。これにより、ロックレバー180が反時計回りに回転する。このとき、傾斜レバー174はシャフト130に接触しており、試料台160が傾斜している。そのため、ロックレバー180は、試料台160に接触せずに試料台160の下に移動できる。
【0045】
さらに、カートリッジ150を斜め方向Cとは反対方向に移動させると、
図4に示すように、シャフト130と傾斜レバー174が離間し、試料台160が水平になる。これにより、試料台160がロックレバー180(第1棒状部材181)に接触し、試料台160の傾斜が制限される。
【0046】
3. 作用効果
試料ホルダー100は、試料を保持する試料台160を有するカートリッジ150と、カートリッジ150を取付け可能な取付け部112を有するホルダーベース110と、を含む。また、カートリッジ150は、試料台160を傾斜させる傾斜機構170と、カートリッジ150が取付け部112から取り外された状態において、試料台160に接触して試料台160の傾斜を制限するロックレバー180と、を有している。
【0047】
そのため、試料ホルダー100では、カートリッジ150を搬送する際に、試料台160の傾斜を制限できる。したがって、試料台160が傾斜して試料台160がポールピースや、取付け部112のフレーム152など、電子顕微鏡を構成する他の部材に衝突することを防ぐことができる。これにより、試料台160の破損を防ぐことができる。
【0048】
試料ホルダー100は、ロックレバー180に接続された弾性部材186を含み、カートリッジ150が取付け部112から取り外された状態では、ロックレバー180は、弾性部材186によって付勢されて試料台160に接触し、カートリッジ150が取付け部112に取り付けられた状態では、ロックレバー180は、取付け部112に設けられたブロック120に当たって、試料台160と離間する。そのため、試料ホルダー100では、カートリッジ150が取付け部112から取り外された状態では、試料台160に接触して試料台160の傾斜を制限することができ、カートリッジ150が取付け部112に取り付けられた状態では、試料台160と離間して、試料台160を傾斜可能とすることができる。
【0049】
試料ホルダー100では、傾斜機構170は、試料台160に接続された傾斜アーム172と、傾斜アーム172に接続された傾斜レバー174と、を有し、ホルダーベース110は、カートリッジ150が取付け部112に取り付けられた状態で、傾斜レバー174に接触するシャフト130を有し、傾斜レバー174がシャフト130に接触して試料台160が傾斜することによって、試料台160とロックレバー180が離間する。
【0050】
そのため、試料ホルダー100では、ロックレバー180が回転する際に、ロックレバー180は試料台160に接触しない。したがって、ロックレバー180と試料台160との間の摩擦によって生じるかじりを防ぐことができる。
【0051】
4. 電子顕微鏡
4.1. 電子顕微鏡の構成
次に、試料ホルダー100を含む電子顕微鏡について説明する。
図6および
図7は、試料ホルダー100を含む電子顕微鏡1の構成を示す図である。なお、
図6は、
図7のVI-VI線断面図である。
図7では、便宜上、試料ホルダー100、第2搬送ロッド50、および鏡筒12のみを図示している。
【0052】
電子顕微鏡1は、
図6に示すように、試料室10と、試料交換室20と、搬送装置30と、真空排気装置60と、制御部70と、試料ホルダー100と、を含む。電子顕微鏡1は、例えば、透過電子顕微鏡である。
【0053】
試料室10は、鏡筒12内の空間である。鏡筒12内には、図示はしないが、電子源、電子源から放出された電子線を試料に照射するための照射光学系、および試料を透過した電子線で透過電子顕微鏡像を結像するための結像系が配置されている。また、電子顕微鏡1は、図示はしないが、結像系で結像された像を検出するための検出器や、試料から放出されたX線を検出するための検出器などを備えている。
【0054】
試料室10は、不図示の対物レンズのポールピースの上極と下極との間の空間である。試料室10は、真空排気装置によって真空排気されている。試料室10には、ホルダーベース110の取付け部112が配置される。試料ホルダー100に保持された試料は、試料室10において電子線が照射される。
【0055】
試料ホルダー100は、ゴニオメーターステージ14によって位置決めされる。ゴニオメーターステージ14は、試料ホルダー100をシャフト部102の中心軸Lまわりに回
転させることで試料を傾斜させることができる。また、試料台160を軸Aまわりに回転させることで試料を傾斜させることができる。このように、電子顕微鏡1では、互いに直交する2軸に関して試料を傾斜させることができる。
【0056】
試料交換室20は、試料室10に接続されている。試料交換室20と試料室10との間には、仕切り弁22が設けられている。
【0057】
試料交換室20に設けられた接続部材26には、試料容器2が着脱可能である。試料交換室20と試料容器2との間には、仕切り弁24が設けられている。試料容器2には、複数のカートリッジ150が取り付けられたマガジン4を収容することができる。試料交換室20および試料容器2は、真空排気装置60によって真空排気される。
【0058】
搬送装置30は、第1搬送ロッド40と、第2搬送ロッド50と、を有している。第1搬送ロッド40は、試料容器2と試料交換室20との間において、カートリッジ150を搬送する。ここでは、第1搬送ロッド40は、マガジン4を搬送することで、カートリッジ150を搬送している。第1搬送ロッド40は、先端部でマガジン4を掴み、掴んだマガジン4を上方向に移動させて、マガジン4を試料容器2から試料交換室20に搬送する。
【0059】
第2搬送ロッド50は、試料交換室20と試料室10との間において、カートリッジ150を搬送する。第2搬送ロッド50は、第1搬送ロッド40が掴んだマガジン4からカートリッジ150を取り出す。第2搬送ロッド50は、取り出したカートリッジ150を試料交換室20から試料室10に搬送し、取付け部112に取り付ける。
【0060】
第2搬送ロッド50は、
図7に示すように、カートリッジ150を、試料ホルダー100の中心軸Lに対して、斜め方向Cに移動させることによって、カートリッジ150を取付け部112に取り付ける。
【0061】
真空排気装置60は、排気管62を介して、試料容器2を真空排気する。排気管62には、電磁弁64が設けられている。真空排気装置60は、さらに、試料交換室20を真空排気する。真空排気装置60は、排気管66を介して、試料交換室20を真空排気する。排気管66には、電磁弁68が設けられている。
【0062】
制御部70は、仕切り弁22、仕切り弁24、搬送装置30、電磁弁64、および電磁弁68を制御する。制御部70は、例えば、CPU(Central Processing Unit)および記憶装置(RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)など)を含む。制御部70では、CPUで記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、各種制御処理を行う。
【0063】
4.2. 動作
4.2.1. カートリッジの取付け
電子顕微鏡1では、自動で、試料容器2に収容されたカートリッジ150を、試料室10に搬送して取付け部112に取り付けることができる。
【0064】
マガジン4に装着されたカートリッジ150は、試料容器2に収容される。カートリッジ150を収容した試料容器2は、接続部材26に取り付けられる。このとき、仕切り弁24は、閉じられている。そして、ユーザーは、カートリッジ150を導入する指示を制御部70に入力する。
【0065】
制御部70は、カートリッジ150を導入する指示を受け付けると、電磁弁64を開き
、試料容器2内を真空排気する。制御部70は、試料容器2内が所定の圧力以下になると、仕切り弁24を開く。
【0066】
制御部70は、第1搬送ロッド40に、試料容器2内のマガジン4を掴ませて、マガジン4を試料交換室20に搬送させる。制御部70は、マガジン4を試料交換室20に搬送させた後、仕切り弁24を閉じ、仕切り弁22を開く。
【0067】
制御部70は、第2搬送ロッド50に、第1搬送ロッド40が掴んだマガジン4から指定されたカートリッジ150を掴ませて、カートリッジ150を試料室10に搬送させる。このとき、カートリッジ150は、対物レンズのポールピースの上極と下極の隙間を通って、試料室10に搬送される。
【0068】
制御部70は、第2搬送ロッド50に、カートリッジ150を斜め方向Cに移動させ、カートリッジ150を取付け部112に取り付ける。カートリッジ150を取付け部112に取り付けるときのロックレバー180および傾斜機構170の動作は、上述した「2.1. カートリッジの取付け」に記載した通りである。
【0069】
制御部70は、カートリッジ150を取付け部112に取り付けた後、第2搬送ロッド50を試料交換室20内に戻し、仕切り弁22を閉じる。
【0070】
以上の処理により、カートリッジ150を取付け部112に取り付けることができる。これにより、カートリッジ150に保持された試料を電子顕微鏡1で観察することができる。
【0071】
4.2.2. カートリッジの取り外し
電子顕微鏡1では、自動で、カートリッジ150を取付け部112から取り外し、試料交換室20に搬送することができる。
【0072】
制御部70は、仕切り弁22を開き、第2搬送ロッド50を試料室10に移動させる。制御部70は、第2搬送ロッド50に、取付け部112に取り付けられたカートリッジ150を掴ませて、斜め方向Cとは反対方向にカートリッジ150を移動させる。これにより、取付け部112からカートリッジ150が取り外される。カートリッジ150を取付け部112から取り外すときのロックレバー180および傾斜機構170の動作は、上述した「2.2. カートリッジの取り外し」に記載した通りである。
【0073】
制御部70は、第2搬送ロッド50に、カートリッジ150を試料交換室20に搬送させる。このとき、カートリッジ150は、対物レンズのポールピースの上極と下極の隙間を通って、試料交換室20に搬送される。制御部70は、試料交換室20にカートリッジ150を搬送させた後、仕切り弁22を閉じる。次に、制御部70は、第2搬送ロッド50に、カートリッジ150を、第1搬送ロッド40が掴んだマガジン4に装着させる。
【0074】
以上の処理により、カートリッジ150を取付け部112から取り外すことができる。
【0075】
5. 変形例
上述した実施形態では、本発明に係る荷電粒子線装置が電子線を用いて試料の観察や分析を行う電子顕微鏡を例に挙げて説明したが、本発明に係る荷電粒子線装置は、電子線以外の荷電粒子線(イオンビーム等)を用いて試料の観察や分析を行う装置であってもよい。例えば、本発明に係る荷電粒子線装置は、走査透過電子顕微鏡、走査電子顕微鏡、オージェ電子分光装置、集束イオンビーム装置などであってもよい。
【0076】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0077】
1…電子顕微鏡、2…試料容器、4…マガジン、10…試料室、12…鏡筒、14…ゴニオメーターステージ、20…試料交換室、22…仕切り弁、24…仕切り弁、26…接続部材、30…搬送装置、40…第1搬送ロッド、50…第2搬送ロッド、60…真空排気装置、62…排気管、64…電磁弁、66…排気管、68…電磁弁、70…制御部、100…試料ホルダー、102…シャフト部、104…Oリング、110…ホルダーベース、112…取付け部、113…フレーム、114…載置面、116…板バネ、120…ブロック、122…ブロック、130…シャフト、132…ボール、150…カートリッジ、152…フレーム、160…試料台、170…傾斜機構、172…傾斜アーム、174…傾斜レバー、175…突起部、180…ロックレバー、181…第1棒状部材、182…第2棒状部材、184…軸部材、186…弾性部材