(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107300
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】搬送装置および荷電粒子線装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/20 20060101AFI20220713BHJP
【FI】
H01J37/20 B
H01J37/20 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002166
(22)【出願日】2021-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100161540
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 良伸
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 修一
【テーマコード(参考)】
5C001
【Fターム(参考)】
5C001AA02
5C001AA03
5C001AA07
5C001CC03
5C001DD02
(57)【要約】
【課題】試料ドリフトを低減できる搬送装置を提供する。
【解決手段】第2搬送装置100は、荷電粒子線装置において、試料ホルダーにカートリッジを受け渡す搬送装置であって、カートリッジ6を着脱可能な取付け部112と、取付け部112を支持するシャフト部102と、シャフト部102と取付け部112とを接続する弾性部材140と、取付け部112を移動させる移動機構150と、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線装置において、試料ホルダーにカートリッジを受け渡す搬送装置であって、
前記カートリッジを着脱可能な取付け部と、
前記取付け部を支持するシャフト部と、
前記シャフト部と前記取付け部とを接続する弾性部材と、
前記取付け部を移動させる移動機構と、
を含む、搬送装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記取付け部が固定される軸部材と、
前記軸部材の直線運動をガイドする軸受けと、
を含み、
前記弾性部材は、前記軸部材に接続され、
前記軸受けは、前記シャフト部に固定されている、搬送装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記カートリッジを前記取付け部に固定するチャック装置を含み、
前記チャック装置は、
前記カートリッジを固定するレバーと、
前記レバーに接続された操作シャフトと、
を含み、
前記操作シャフトが前記シャフト部の中心軸に沿って移動することによって、前記レバーが前記カートリッジを前記取付け部に固定する状態と、前記レバーが前記カートリッジを開放する状態と、を切り替える、搬送装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記レバーが前記操作シャフトの第1部分に接触しているときに、前記レバーは、前記カートリッジを固定し、
前記レバーが前記操作シャフトの第2部分に接触しているときに、前記レバーは、前記カートリッジを開放し、
前記第1部分の前記中心軸に沿った長さおよび前記第2部分の前記中心軸に沿った長さは、前記弾性部材の最大弾性変形量よりも大きい、搬送装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の搬送装置を含む、荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項5において、
試料ホルダーが配置される試料室と、
前記試料室に接続された試料交換室と、
を含み、
前記搬送装置は、前記試料室と前記試料交換室との間において、前記カートリッジを搬送する、荷電粒子線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置および荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透過電子顕微鏡などの荷電粒子線装置において、試料を保持するカートリッジを試料室に搬送する搬送装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、試料交換室と試料室との間において、カートリッジを搬送する搬送ロッドを備えた荷電粒子線装置が開示されている。搬送ロッドは、カートリッジを、試料室に配置された試料ホルダーの試料保持部に搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
搬送ロッドを用いて、カートリッジを試料ホルダーに受け渡す際には、試料ホルダーに力が加わる。これにより、試料ホルダーが変形し、試料にドリフトが発生してしまう場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る搬送装置の一態様は、
荷電粒子線装置において、試料ホルダーにカートリッジを受け渡す搬送装置であって、
前記カートリッジを着脱可能な取付け部と、
前記取付け部を支持するシャフト部と、
前記シャフト部と前記取付け部とを接続する弾性部材と、
前記取付け部を移動させる移動機構と、
を含む。
【0007】
このような搬送装置では、カートリッジを試料ホルダーに受け渡す際に、弾性部材が弾性変形することによって、試料ホルダーに加わる力を低減できる。これにより、試料のドリフトを低減できる。
【0008】
本発明に係る荷電粒子線装置の一態様は、
上記の試料ホルダーを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る搬送装置を含む電子顕微鏡の構成を示す図。
【
図2】実施形態に係る搬送装置を含む電子顕微鏡の構成を示す図。
【
図3】実施形態に係る搬送装置を模式的に示す平面図。
【
図4】実施形態に係る搬送装置を模式的に示す平面図。
【
図5】実施形態に係る搬送装置の動作を説明するための図。
【
図6】実施形態に係る搬送装置の動作を説明するための図。
【
図9】実施形態に係る電子顕微鏡の動作を説明するための図。
【
図10】実施形態に係る電子顕微鏡の動作を説明するための図。
【
図11】実施形態に係る電子顕微鏡の動作を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0011】
以下では、本発明に係る荷電粒子線装置として、電子線を用いる電子顕微鏡を例に挙げて説明するが、本発明に係る荷電粒子線装置は、電子線以外の荷電粒子線(イオンビームなど)を用いる装置であってもよい。
【0012】
1. 電子顕微鏡
1.1. 電子顕微鏡の構成
まず、本発明の一実施形態に係る搬送装置を含む電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。
図1および
図2は、本発明の一実施形態に係る第2搬送装置100を含む電子顕微鏡1の構成を示す図である。なお、
図1は、
図2のI-I線断面図である。
【0013】
電子顕微鏡1は、
図1に示すように、第2搬送装置100を含む。電子顕微鏡1は、さらに、試料容器2と、試料室10と、試料ホルダー20と、試料交換室30と、第1搬送装置40と、真空排気装置60と、制御部70と、を含む。電子顕微鏡1は、例えば、透過電子顕微鏡である。
【0014】
試料室10は、鏡筒12に設けられている。鏡筒12内には、図示はしないが、電子源、電子源から放出された電子線を試料に照射するための照射光学系、および試料を透過した電子線で透過電子顕微鏡像を結像するための結像系が配置されている。また、電子顕微鏡1は、図示はしないが、結像系で結像された像を検出するための検出器や、試料から放出されたX線を検出するための検出器などを備えている。
【0015】
試料室10は、不図示の対物レンズのポールピースの上極と下極との間の空間を含む。試料室10は、真空排気装置によって真空排気されている。試料室10には、試料ホルダー20の取付け部22が配置されており、取付け部22にカートリッジ6が取り付けられる。
【0016】
試料ホルダー20は、ゴニオメーターステージ24によって位置決めされる。ゴニオメーターステージ24は、試料ホルダー20に保持された試料を傾斜させることができる。例えば、電子顕微鏡1では、互いに直交する2軸に関して試料を傾斜させることができる。
【0017】
試料ホルダー20は、カートリッジ6が取り付けられる取付け部22を有している。カートリッジ6には試料が固定されている。カートリッジ6が取付け部22に取り付けられることで、電子顕微鏡1において、試料を観察することができる。
【0018】
試料交換室30は、試料室10に接続されている。試料交換室30と試料室10との間には、仕切り弁32が設けられている。
【0019】
試料交換室30には、試料容器2が接続される。図示の例では、試料容器2が接続部材36を介して、試料交換室30に接続されている。試料容器2は、接続部材36に対して
着脱可能である。試料交換室30と試料容器2との間には、仕切り弁34が設けられている。試料交換室30および試料容器2は、真空排気装置60によって真空排気される。
【0020】
接続部材36に試料容器2が接続された状態において、接続部材36と試料容器2との間には、真空シール38が配置される。真空シール38は、例えば、Oリングである。真空シール38によって、試料交換室30に試料容器2が接続された場合に、試料交換室30内および試料容器2内を気密にできる。
【0021】
試料容器2は、試料を収容するための容器である。図示の例では、試料容器2には、マガジン4が収容されている。マガジン4には、複数のカートリッジ6を取付け可能である。なお、ここでは、試料容器2内にカートリッジ6が取り付けられたマガジン4を収容する場合について説明するが、試料容器2内にカートリッジ6を、直接、収容してもよい。
【0022】
第1搬送装置40は、試料容器2と試料交換室30との間において、マガジン4を搬送する。第1搬送装置40は、チャック装置42と、チャック装置42を移動させる移動機構44と、を有している。チャック装置42は、マガジン4を掴む。移動機構44は、チャック装置42を上下方向に移動させる。移動機構44は、チャック装置42が先端に取り付けられたシャフト部45を移動させることによって、チャック装置42を移動させる。移動機構44は、モーターや、エアーシリンダーなどの動力によってチャック装置42を移動させる。
【0023】
第2搬送装置100は、試料交換室30と試料室10との間において、カートリッジ6を搬送する。第2搬送装置100は、試料ホルダー20にカートリッジ6を受け渡す。
【0024】
第2搬送装置100は、第1搬送装置40が掴んだマガジン4からカートリッジ6を取り出す。第2搬送装置100は、取り出したカートリッジ6を試料交換室30から試料室10に搬送し、試料ホルダー20の取付け部22に取り付ける。
【0025】
第2搬送装置100は、シャフト部102と、チャック装置120と、チャック装置120を移動させる移動機構150と、を有している。
【0026】
移動機構150は、チャック装置120が先端に取り付けられたシャフト部102を移動させることによって、チャック装置120を移動させる。移動機構150は、チャック装置120を水平方向に移動させる。移動機構150は、モーターや、エアーシリンダーなどの動力によってチャック装置120を移動させる。
【0027】
第2搬送装置100は、
図2に示すように、カートリッジ6を試料ホルダー20の中心軸に対して、斜め方向Cに移動させることによって、カートリッジ6を試料ホルダー20の取付け部22に取り付ける。
【0028】
真空排気装置60は、排気管62を介して、試料容器2を真空排気する。排気管62には、電磁弁64が設けられている。真空排気装置60は、さらに、試料交換室30を真空排気する。真空排気装置60は、排気管66を介して、試料交換室30を真空排気する。排気管66には、電磁弁68が設けられている。真空排気装置60で真空排気されることによって、試料交換室30は真空状態に維持される。
【0029】
制御部70は、仕切り弁32、仕切り弁34、第1搬送装置40、第2搬送装置100、電磁弁64、および電磁弁68を制御する。制御部70は、例えば、CPU(Central Processing Unit)および記憶装置(RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)など)を含む。制御部70では、CPUで記憶装置に記憶されたプログ
ラムを実行することにより、各種制御処理を行う。
【0030】
1.2. 第2搬送装置
図3および
図4は、本発明の一実施形態に係る第2搬送装置100を模式的に示す平面図である。なお、
図4では、第2搬送装置100が、カートリッジ6を掴んでいる状態、すなわち、カートリッジ6が取付け部112に取り付けられた状態を示している。
【0031】
第2搬送装置100は、
図3および
図4に示すように、シャフト部102と、取付け部112と、チャック装置120と、軸部材130と、軸受け132と、弾性部材140と、を含む。
【0032】
シャフト部102は、棒状の部材である。シャフト部102は、取付け部112を支持している。移動機構150でシャフト部102を移動させることによって、取付け部112を移動させることができる。
【0033】
取付け部112は、シャフト部102の先端に設けられている。取付け部112は、軸部材130に固定されている。取付け部112には、カートリッジ6を取付け可能である。取付け部112は、カートリッジ6を載置するための載置面114を有している。
【0034】
チャック装置120は、取付け部112に設けられている。チャック装置120は、カートリッジ6を取付け部112に固定することができる。チャック装置120は、レバー122と、操作シャフト124と、を含む。
【0035】
レバー122は、取付け部112に設けられている。レバー122の先端部121はフック状になっており、先端部121がカートリッジ6の切り欠き8に係合することによって、カートリッジ6が固定される。レバー122の後端部123は、操作シャフト124に接している。図示の例では、後端部123は、操作シャフト124に接するボールである。レバー122は、後端部123が操作シャフト124に押し当てられるように、不図示のバネによって付勢されている。図示の例では、レバー122は、バネによって、時計回りに回転するように付勢されている。
【0036】
操作シャフト124は、レバー122を操作するための部材である。操作シャフト124は、先端がレバー122に接している。操作シャフト124は、軸部材130内およびシャフト部102内を通っている。操作シャフト124は、軸部材130内およびシャフト部102内を移動可能である。操作シャフト124の中心軸は、例えば、シャフト部102の中心軸Lと平行である。操作シャフト124は、不図示の駆動部に接続されている。駆動部は、例えば、エアーシリンダーの動力で、操作シャフト124を、シャフト部102の中心軸Lに沿って移動させる。操作シャフト124を中心軸Lに沿って移動させることによって、カートリッジ6を開放した状態と、カートリッジ6を固定した状態と、を切り替えることができる。チャック装置120の動作の詳細については後述する。
【0037】
弾性部材140は、シャフト部102と取付け部112とを接続している。弾性部材140の一端は、軸部材130に固定され、弾性部材140の他端は、シャフト部102に固定されている。
【0038】
図示の例では、シャフト部102には、弾性部材140および操作シャフト124を収容する空間が設けられており、当該空間は、径の大きい部分と、径の小さい部分と、を有している。弾性部材140は、径の大きい部分に収容されている。径の大きい部分と径の小さい部分との境界には突出部103が形成され、突出部103で弾性部材140が止まっている。弾性部材140は、軸部材130と突出部103に挟まれている。
【0039】
弾性部材140は、例えば、圧縮ばねである。弾性部材140は、圧縮されることで、圧縮方向の力を緩和する。弾性部材140は、中心軸Lに沿って弾性変形する。第2搬送装置100では、カートリッジ6を試料ホルダー20に受け渡す際に、弾性部材140が弾性変形することによって、試料ホルダー20に加わる力を低減できる。
【0040】
なお、弾性部材140は、弾性変形することによってシャフト部102に加わる力を低減できれば、バネに限定されず、バネ以外の弾性体であってもよい。
【0041】
軸部材130の先端には、取付け部112が接続されている。軸部材130の後端には、弾性部材140が固定されている。このように、取付け部112は、軸部材130および弾性部材140を介して、シャフト部102に接続されている。軸部材130は、例えば、筒状であり、軸部材130内を操作シャフト124が通っている。
【0042】
軸受け132は、軸部材130の直線運動をガイドする。軸受け132および軸部材130は、例えば、ボールスプラインを構成している。すなわち、軸部材130は、ボールスプラインのスプライン軸であり、軸受け132は、ボールスプラインの外筒である。例えば、軸部材130の外周面には、中心軸に沿って溝が設けられており、軸受け132に組み込まれたリテーナが保持する不図示のボールが当該溝を転がることで、軸部材130の回転を抑制しつつ、軸部材130を直線運動させることができる。
【0043】
カートリッジ6は、試料を保持する。カートリッジ6は、試料台7を有している。試料台7は、試料が固定される。試料台7には、貫通孔が形成されており、貫通孔上に試料が固定される。試料は、例えば、Cリングや板バネを用いて試料台7に固定される。試料台7は、傾斜可能であってもよい。カートリッジ6には、チャック装置120の先端部121に係合する切り欠き8が設けられている。
【0044】
2. 動作
2.1. 搬送装置の動作
図5および
図6は、第2搬送装置100の動作を説明するための図である。
図5は、チャック装置120がカートリッジ6を取付け部112に固定している状態を図示している。
図6は、チャック装置120がカートリッジ6を開放している状態を図示している。
【0045】
操作シャフト124は、第1部分124aと、第2部分124bと、を有している。第2部分124bは、操作シャフト124の切り欠き部分である。第1部分124aは、切り欠きが無い部分である。図示の例では、第2部分124bは、第1部分124aよりも操作シャフト124の先端に位置している。
【0046】
操作シャフト124を、シャフト部102の中心軸Lに沿って移動させることによって、レバー122の後端部123が操作シャフト124に接する位置が変わり、レバー122を動作させることができる。
【0047】
図5に示すように、レバー122が第1部分124aに接している状態では、チャック装置120がカートリッジ6を固定する。具体的には、レバー122の先端部121がカートリッジ6の切り欠き8に係合することで、カートリッジ6が取付け部112に固定される。
【0048】
図6に示すように、レバー122が第2部分124bに接している状態では、チャック装置120がカートリッジ6を開放する。具体的には、レバー122の先端部121とカートリッジ6の切り欠き8との係合が解除されることで、カートリッジ6が開放される。
【0049】
図5に示すように、レバー122の後端部123が操作シャフト124の第1部分124aに接している状態から、操作シャフト124を第1方向Aに移動させると、レバー122の後端部123は、第2部分124bに接する。これにより、レバー122が時計回りに回転し、
図6に示すように、レバー122が切り欠き8から離れる。この結果、カートリッジ6が開放される。
【0050】
また、
図6に示すように、レバー122の後端部123が操作シャフト124の第2部分124bに接している状態から、操作シャフト124を第2方向Bに移動させると、レバー122の後端部123は、第1部分124aに接する。これにより、レバー122が反時計まわりに回転し、
図5に示すように、レバー122の先端部121が切り欠き8に係合する。この結果、カートリッジ6が取付け部112に固定される。
【0051】
図7および
図8は、弾性部材140の機能を説明するための図である。
図7は、チャック装置120がカートリッジ6を取付け部112に固定している状態を図示している。
図8は、チャック装置120がカートリッジ6を開放している状態を図示している。
【0052】
図7に示すように、操作シャフト124の第1部分124aは中心軸Lに沿って長さL1を有し、第2部分124bは中心軸Lに沿って長さL2を有している。弾性部材140の中心軸Lに沿った最大の弾性変形量は、第1部分124aの長さL1および第2部分124bの長さL2よりも小さい。
【0053】
そのため、
図5に示すチャック装置120がカートリッジ6を取付け部112に固定している状態において、弾性部材140が弾性変形しても、
図7に示すように、チャック装置120がカートリッジ6を固定している状態を維持できる。同様に、
図6に示すチャック装置120がカートリッジ6を開放している状態において、弾性部材140が弾性変形しても、
図8に示すように、チャック装置120がカートリッジ6を開放している状態を維持できる。
【0054】
2.2. 電子顕微鏡の動作
2.2.1. カートリッジの取り付け
電子顕微鏡1では、自動で、試料容器2に収容されたカートリッジ6を、試料室10に搬送して取付け部112に取り付けることができる。
図9~
図11は、電子顕微鏡1の動作を説明するための図である。
【0055】
図9に示すように、マガジン4に装着されたカートリッジ6は、試料容器2に収容される。カートリッジ6を収容した試料容器2は、接続部材36に取り付けられる。このとき、仕切り弁34は、閉じられている。そして、ユーザーは、カートリッジ6を導入する指示を制御部70に入力する。
【0056】
制御部70は、カートリッジ6を導入する指示を受け付けると、電磁弁64を開き、試料容器2内を真空排気する。制御部70は、試料容器2内が所定の圧力以下になると、仕切り弁34を開く。
【0057】
制御部70は、
図10に示すように、第1搬送装置40に、試料容器2内のマガジン4を掴ませて、マガジン4を試料交換室30に搬送させる。制御部70は、
図11に示すように、第1搬送装置40にマガジン4を試料交換室30に搬送させた後、仕切り弁34を閉じ、仕切り弁32を開く。
【0058】
制御部70は、
図1に示すように、第2搬送装置100に、第1搬送装置40が掴んだ
マガジン4から指定されたカートリッジ6を掴ませて、カートリッジ6を試料室10に搬送させる。このとき、チャック装置120によってカートリッジ6が固定される。カートリッジ6は、対物レンズのポールピースの上極と下極の隙間を通って、試料室10に搬送される。
【0059】
制御部70は、
図2に示すように、第2搬送装置100に、カートリッジ6を斜め方向Cに移動させ、カートリッジ6を試料ホルダー20に受け渡す。具体的には、第2搬送装置100がカートリッジ6を試料ホルダー20の取付け部22に押し込んだ後、チャック装置120がカートリッジ6の固定を解除する。これにより、カートリッジ6を試料ホルダー20に受け渡すことができる。
【0060】
カートリッジ6を試料ホルダー20に受け渡す際には、カートリッジ6は、試料ホルダー20の取付け部22に押し込まれる。そのため、試料ホルダー20に力が加わるが、第2搬送装置100の弾性部材140が弾性変形することによって、試料ホルダー20に加わる力を低減できる。したがって、試料ホルダー20における試料のドリフトを低減できる。また、第2搬送装置100では、弾性部材140が弾性変形しても、チャック装置120がカートリッジ6を固定している状態を維持できる。
【0061】
制御部70は、カートリッジ6を試料ホルダー20に受け渡した後、チャック装置120を試料交換室30内に戻し、仕切り弁32を閉じる。
【0062】
以上の処理により、カートリッジ6を試料ホルダー20に受け渡すことができる。これにより、カートリッジ6に保持された試料を電子顕微鏡1で観察することができる。
【0063】
2.2.2. カートリッジの取り外し
電子顕微鏡1では、自動で、カートリッジ6を試料ホルダー20の取付け部22から取り外し、試料交換室30に搬送することができる。
【0064】
制御部70は、
図1に示すように、仕切り弁32を開き、第2搬送装置100のチャック装置120を試料室10に移動させる。制御部70は、チャック装置120を試料ホルダー20の取付け部22に移動させ、チャック装置120で固定する。制御部70は、移動機構150に斜め方向Cとは反対方向にカートリッジ6を移動させる。これにより、試料ホルダー20の取付け部22からカートリッジ6が取り外される。
【0065】
制御部70は、第2搬送装置100に、カートリッジ6を試料交換室30に搬送させる。制御部70は、試料交換室30にカートリッジ6を搬送させた後、仕切り弁32を閉じる。次に、制御部70は、
図11に示すように、第2搬送装置100にカートリッジ6を、第1搬送装置40が掴んだマガジン4に装着させる。
【0066】
以上の処理により、カートリッジ6を試料交換室30に搬送することができる。
【0067】
3. 作用効果
第2搬送装置100は、カートリッジ6を着脱可能な取付け部112と、取付け部112を支持するシャフト部102と、シャフト部102と取付け部112とを接続する弾性部材140と、を含む。そのため、第2搬送装置100では、カートリッジ6を試料ホルダー20に受け渡す際に、弾性部材140が弾性変形することによって、試料ホルダー20に加わる力を低減できる。したがって、第2搬送装置100では、試料ホルダー20に力が加わって、試料ホルダー20が変形することによって生じる試料のドリフトを低減できる。
【0068】
第2搬送装置100は、取付け部112が固定される軸部材130と、軸部材130の直線運動をガイドする軸受け132と、を含み、弾性部材140は、軸部材130に接続され、軸受け132は、シャフト部102に固定されている。そのため、第2搬送装置100では、取付け部112が固定される軸部材130を直線運動させることができ、弾性部材140によってシャフト部102に加わる力を、効率よく低減できる。
【0069】
第2搬送装置100では、カートリッジ6を取付け部112に固定するチャック装置120を含み、チャック装置120は、カートリッジ6を固定するレバー122と、レバー122に接続された操作シャフト124と、を含み、操作シャフト124がシャフト部102の中心軸Lに沿って移動することによって、レバー122がカートリッジ6を取付け部112に固定する状態と、レバー122がカートリッジ6を開放する状態と、を切り替える。そのため、第2搬送装置100では、カートリッジ6を取付け部112に固定することができる。
【0070】
第2搬送装置100では、レバー122が操作シャフト124の第1部分124aに接触しているときに、レバー122は、カートリッジ6を固定し、レバー122が操作シャフト124の第2部分124bに接触しているときに、レバー122は、カートリッジ6を開放する。また、第1部分124aの中心軸Lに沿った長さL1および第2部分124bの中心軸Lに沿った長さL2は、弾性部材140の最大弾性変形量(弾性部材140が中心軸Lに沿って弾性的に変形できる変形量の最大値)よりも大きい。そのため、チャック装置120がカートリッジ6を取付け部112に固定している状態において、弾性部材140が弾性変形しても、チャック装置120がカートリッジ6を固定している状態を維持できる。同様に、チャック装置120がカートリッジ6を開放している状態において、弾性部材140が弾性変形しても、チャック装置120がカートリッジ6を開放している状態を維持できる。
【0071】
4. 変形例
上述した実施形態では、本発明に係る荷電粒子線装置が電子線を用いて試料の観察や分析を行う電子顕微鏡を例に挙げて説明したが、本発明に係る荷電粒子線装置は、電子線以外の荷電粒子線(イオンビーム等)を用いて試料の観察や分析を行う装置であってもよい。例えば、本発明に係る荷電粒子線装置は、走査透過電子顕微鏡、走査電子顕微鏡、オージェ電子分光装置、集束イオンビーム装置などであってもよい。
【0072】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0073】
1…電子顕微鏡、2…試料容器、4…マガジン、6…カートリッジ、7…試料台、8…切り欠き、10…試料室、12…鏡筒、20…試料ホルダー、22…取付け部、24…ゴニオメーターステージ、30…試料交換室、32…仕切り弁、34…仕切り弁、36…接続部材、38…真空シール、40…第1搬送装置、42…チャック装置、44…移動機構、45…シャフト部、60…真空排気装置、62…排気管、64…電磁弁、66…排気管、68…電磁弁、70…制御部、100…第2搬送装置、102…シャフト部、103…突出部、112…取付け部、114…載置面、120…チャック装置、121…先端部、122…レバー、123…後端部、124…操作シャフト、124a…第1部分、124b
…第2部分、130…軸部材、132…軸受け、140…弾性部材、150…移動機構