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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107306
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】RCS接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20220713BHJP
   E04B 1/30 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
E04B1/58 508P
E04B1/30 K
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002173
(22)【出願日】2021-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】草野 敏宏
(72)【発明者】
【氏名】天間 憲博
(72)【発明者】
【氏名】荒金 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑弥
(72)【発明者】
【氏名】岡田 郁秀
(72)【発明者】
【氏名】木戸 聰
(72)【発明者】
【氏名】山之内 尚人
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA14
2E125AB01
2E125AC04
2E125AC07
2E125AG43
2E125AG49
2E125CA05
(57)【要約】
【課題】寄筋の納まりを是正して、柱の断面の拡大を抑制でき、しかも、柱に対して付与される荷重を分散することができるRCS接合構造を提供する。
【解決手段】RCS接合構造1は、開口部16及び該開口部16から放射状に延び、各梁3と接合される各接合部17を有し、上下方向に沿って間隔を置いて一対設けられる外ダイアフラム13と、各外ダイアフラム13の開口部16の内壁面に沿って挿通され、内部に柱2が配置される管状部材19と、を備え、該管状部材19は、上下一対の外ダイアフラム13から上下方向に向かってそれぞれ突出されて構成される。これにより、柱2内の複数の主鉄筋50を、管状部材19内に周方向に沿って略同じ間隔で配筋することができ、寄筋を是正することができ、ひいては柱2の断面の拡大を抑制することができる。しかも、管状部材19により、柱2に対して付与される荷重を分散させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート造の柱に、複数の鉄骨造の梁を接合してなるRCS接合構造であって、
開口部、及び該開口部から放射状に延び、前記各梁のそれぞれと接合される各接合部を有し、上下方向に沿って間隔を置いて一対設けられる外ダイアフラムと、
該上下一対の外ダイアフラムの開口部の内壁面に沿って挿通され、内部に前記柱が配置される筒状の管状部材と、を備え、
該管状部材は、前記上下一対の外ダイアフラムから上下方向に向かってそれぞれ突出されて構成されることを特徴とするRCS接合構造。
【請求項2】
前記管状部材内には、前記柱内の上下方向に延びる複数の主鉄筋が、前記管状部材の内壁面に近接してその周方向に略同じ間隔で配置されて構成されることを特徴とする請求項1に記載のRCS接合構造。
【請求項3】
前記外ダイアフラムは、複数の同一形状の分割部材を互いに接合して構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のRCS接合構造。
【請求項4】
前記上下一対の外ダイアフラムの接合部を連結する連結板材を備えることを特徴とする請求項1~3いずれかに記載のRCS接合構造。
【請求項5】
前記梁は、H鋼にて構成され、
前記連結板材は、前記梁のウェブに連結プレートを介してボルト固定され、
前記接合部は、前記梁のフランジに溶接接合されることを特徴とする請求項4に記載のRCS接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート造(RC造またはPCa造)の柱に、複数の鉄骨造(S造)の梁を接合してなるRCS接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に採用されているRCS接合構造は、図6に示すように、上下一対のフランジ6、6及びウェブ7を有するH鋼からなる梁3、3を、柱2に貫通させてその内部にて互いに直交させて溶接接合し、各梁3、3を避けるようにして柱2の4隅に上下方向に沿って延びる複数の主鉄筋50、50が配筋された構造となる。なお、隣接する梁3、3のウェブ7、7には、断面等辺L字状のふさぎ板26が溶接によりそれぞれ接合される。また、複数の主鉄筋50、50には、上下方向に間隔を置いて複数の帯鉄筋60、60が配筋される。しかしながら、この一般的なRCS接合構造では、各梁3、3を避けるようにして柱2の4隅に主鉄筋50、50が配筋される寄筋の納まりとなり、必要な鉄筋本数を配筋するために柱2の断面が大きくなり、改善する余地がある。
【0003】
また、他の従来技術としてのRCS接合構造として、4本のH鋼からなる梁を、互いに直交するように、柱に貫通させずに角筒状のふさぎ筒体(型枠)の外壁面に溶接して接合される構造がある。また、ふさぎ筒体内には、三角リブや斜めステフナ等が複数配置されて構成される。このRCS接合構造においても、上述した従来技術と同様に、三角リブや斜めステフナ等を避けるようにして主鉄筋が配筋されるために寄筋の納まりとなり、必要な鉄筋本数を配筋するために柱の断面が大きくなる。
【0004】
さらに他の従来技術としてのRCS接合構造として、4本のH鋼からなる梁を、互いに直交するように、柱に貫通させず角筒状のふさぎ筒体(型枠)の外壁面に溶接して接合される構造であって、該ふさぎ筒体内にダイアフラムを配置した構造がある。このRCS接合構造においても、上述した従来技術と同様に、ダイアフラムを避けるようにして主鉄筋が配筋されるために寄筋の納まりとなり、必要な鉄筋本数を配筋するために柱の断面が大きくなる。また、このRCS接合構造においては、柱として、ふさぎ筒体内にコンクリートを打設する際に、ダイアフラムの裏へ空気が溜まりやすく、内部空洞が発生すると強度的に好ましくない。
【0005】
なお、外ダイアフラムを用いた柱梁接合構造の従来技術として、特許文献1に記載の接合構造は、内部にコンクリートが充填された鋼管柱と、前記鋼管柱の外面に接して、主面が水平面となるように前記鋼管柱の外周を囲んで配置された、上ダイアフラム及び下ダイアフラムからなる一対の外ダイアフラムと、前記一対の外ダイアフラムに接続された、H形鋼からなる梁、又は、鉄筋コンクリートスラブと、を有する接合構造であって、前記鋼管柱は、内面に間隔をあけてスパイラル状に延在する複数本のリブを有し、外面にはスパイラル状に延在する1本の凸ビードを有する内面リブ付き鋼管からなり、前記凸ビードは、前記鋼管柱の外面の前記一対の外ダイアフラムが配置される位置で、その厚み以上の間隔で途切れており、前記一対の外ダイアフラムは、前記凸ビードが途切れた部位に嵌め込まれて配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-160754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の接合構造は、RCS接合構造ではなく、鉄筋コンクリート造の柱は採用されていないために、上述したような、寄筋の納まりにより、必要な鉄筋本数を配筋するために柱の断面が大きくなる、という問題を解決することはできない。また、RCS接合構造において、鉄筋コンクリート造の柱の外壁面に対して、各梁と接合されるダイアフラムからの荷重が集中することなく分散する構造が好ましい。要するに、鉄筋コンクリート造の柱の外壁面の一部に、ダイアフラムからの荷重が集中して付与されると、その柱の外壁面の一部に圧壊が生じ、強度的に好ましくない。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、寄筋の納まりを是正して、柱の断面の拡大を抑制でき、しかも、柱に対して付与される荷重を分散することができるRCS接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段として、請求項1の発明は、鉄筋コンクリート造の柱に、複数の鉄骨造の梁を接合してなるRCS接合構造であって、開口部、及び該開口部から放射状に延び、前記各梁のそれぞれと接合される各接合部を有し、上下方向に沿って間隔を置いて一対設けられる外ダイアフラムと、該上下一対の外ダイアフラムの開口部の内壁面に沿って挿通され、内部に前記柱が配置される筒状の管状部材と、を備え、該管状部材は、前記上下一対の外ダイアフラムから上下方向に向かってそれぞれ突出されて構成されることを特徴とするものである。
請求項1の発明では、上下一対の外ダイアフラムの開口部内に挿通された管状部材内に柱が配置されるために、柱内の上下方向に延びる複数の鉄筋を、その管状部材内でその周方向に沿って略同じ間隔でそれぞれ配筋することができ、寄筋を是正することができる。その結果、柱の断面の拡大を抑制することができる。また、請求項1の発明では、上下一対の外ダイアフラムの開口部内に挿通される管状部材を備えており、該管状部材は、上下一対の外ダイアフラムから上下方向に向かってそれぞれ突出される。これにより、鉄筋コンクリート造の柱の外壁面に対して、外ダイアフラムからの荷重を分散させることができ、柱の外壁面の一部に圧壊が生じるのを抑制することができる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載した発明において、前記管状部材内には、前記柱内の上下方向に延びる複数の主鉄筋が、前記管状部材の内壁面に近接してその周方向に略同じ間隔で配置されて構成されることを特徴とするものである。
請求項2の発明では、寄筋の納まりとすることなく、必要数の鉄筋を適宜位置に配筋することができ、柱の断面の拡大を抑制することができる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した発明において、前記外ダイアフラムは、複数の同一形状の分割部材を互いに接合して構成されることを特徴とするものである。
なお、外ダイアフラムを、一枚の板材から開口部を切り抜いて形成すると、その切り抜いた部分は廃棄処理となる。その結果、外ダイアフラムでは、その開口部の体積が全接合部の体積よりも大きいために、使用する部位の体積よりも廃棄する部位の体積の方が大きくなり、素材からの生産性が非常に悪い。この事情に鑑みて、請求項3の発明では、複数の同一形状の分割部材を互いに接合して外ダイアフラムを構成するので、素材から廃棄処理する部分を極力抑えることができ、コスト面等の生産効率性を高くすることができる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1~3いずれかに記載した発明において、前記上下一対の外ダイアフラムの接合部を連結する連結板材を備えることを特徴とするものである。
なお、例えばH鋼からなる梁と上下一対の外ダイアフラムとを接合する際には、梁の長手方向端部であって、外ダイアフラムの接合部との接合範囲においては、上下一対のフランジを設けずにウェブのみが延びる部位を形成する必要がある。そして、梁のフランジの長手方向端面と、外ダイアフラムの接合部の端面とを当接させてその箇所を溶接接合し、梁のウェブの上面(フランジは形成されていない範囲)に上側の外ダイアフラムの接合部の下面を当接させて、またウェブの下面(フランジは形成されていない範囲)に下側の外ダイアフラムの接合部の上面を当接させて、それぞれの箇所を溶接により接合しなければならず、その作業が煩雑な作業になる。この事情に鑑みて、請求項3の発明では、連結板材を備えることにより、上下一対の外ダイアフラムと、梁の長手方向端部との接合が容易となる。
【0013】
請求項5の発明は、請求項4に記載した発明において、前記梁は、H鋼にて構成され、前記連結板材は、前記梁のウェブに連結プレートを介してボルト固定され、前記接合部は、前記梁のフランジに溶接接合されることを特徴とするものである。
請求項5の発明では、特に、連結板材を、梁のウェブに連結プレートを介してボルト固定できるので、施工現場での、管状部材を含む上下一対の外ダイアフラムと、梁の長手方向端部との接合を容易にすることができ、施工期間を短縮することができる。
【0014】
なお、上述した請求項1~5の発明に係る構成要件に加えて、管状部材内に、上下方向に沿って延びる平面視十字状の補強ウェブが配置してもよい。これにより、当該RCS接合構造を補強することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るRCS接合構造よれば、寄筋の納まりを是正して、柱の断面の拡大を抑制することができ、しかも、柱に対して付与される荷重を分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施形態に係るRCS接合構造を示す概略斜視図である。
図2図2は、図1のRCS接合構造の縦断面図である。
図3図3(a)は、複数の分割部材を互いに接合させて構成した外ダイアフラムの平面図であり、(b)は、分割部材の平面図である。
図4図4は、管状部材内に設けた十字状の補強ウェブを示す平面図である。
図5図5は、本実施形態に係るRCS接合構造の施工方法を段階的に示す図である。
図6図6は、従来のRCS接合構造を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図1図5に基づいて詳細に説明する。
本実施形態に係るRCS接合構造1は、鉄筋コンクリート造(RC造またはPCa造)の柱2に、複数の鉄骨造(S造)の梁3を接合する際に適用される。なお、図1に示すように、本実施形態では、柱2の断面形状は、略矩形状に形成される。梁3には、上下一対のフランジ6、6と、該フランジ6、6間に立設されるウェブ7とからなるH鋼が採用される。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係るRCS接合構造1には、上下方向に間隔を置いて位置する上下一対の外ダイアフラム13、13が採用される。外ダイアフラム13は、鋼板にて構成される。外ダイアフラム13は、柱2が挿通される開口部16と、該開口部16から放射状に延びる複数の接合部17と、を備えている。
【0019】
開口部16は、柱2の断面形状に対応して平面視略矩形状に形成される。接合部17は、本実施形態では、開口部16の各内壁面から互いに直交する4方向に延びている。接合部17は、開口部16から外方に向かってその幅長が次第に小さくなる台形状に形成されている。すなわち、外ダイアフラム13は、中央に開口部16を有し、その外形が各接合部17の形成により平面視八角形状に形成される。なお、図3に示すように、外ダイアフラム13を、複数の同一形状の分割部材18、18を互いに接合することで構成してもよい。本実施形態では、分割部材18は4枚用意される。分割部材18は、大略、台形状部18aと三角形状部18bとを接続した形状に形成されている。
【0020】
そして、外ダイアフラム13を、中央に開口部16が形成されるようにして、その周りに4枚の分割部材18、18を、その台形状部18aの対応する一辺と三角形状部18bの対応する一辺とを当接させて溶接により接合することで構成している。このようにして、複数の同一形状の分割部材18、18を互いに接合して外ダイアフラム13を構成するので、外ダイアフラム13に対して、素材から廃棄処理する部分を極力抑えることができ、コスト面等の生産効率性を高くすることができる。
【0021】
なお、後で詳述するが、施工現場において、上側の外ダイアフラム13の各接合部17の先端面が、各梁3の長手方向端面における上側のフランジ6に当接されてその箇所が溶接により接合される。上側の外ダイアフラム13の各接合部17の上面と、各梁3の上側のフランジ6の上面とは面一となる。一方、下側の外ダイアフラム13の各接合部17の先端面が、各梁3の長手方向端面における下側のフランジ6に当接されてその箇所が溶接により接合される。下側の外ダイアフラム13の各接合部17の下面と、各梁3の下側のフランジ6の下面とは面一となる。
【0022】
上下一対の外ダイアフラム13、13の開口部16、16内には、その内壁面に沿って管状部材19が挿通される。管状部材19は、一定の壁厚を有し、その外形が外ダイアフラム13の開口部13の開口形状に対応して略矩形状に形成される。管状部材19の内側開口も略矩形状に形成される。上下一対の外ダイアフラム13、13の開口部16、16内に管状部材19が一体的に接合される。管状部材19の長さは、上側の外ダイアフラム13の上面と、下側の外ダイアフラムの下面との間の距離よりも大きく設定される。その結果、管状部材19の上端は、上側の外ダイアフラム13の上面から上方に向かって若干突出される。一方、管状部材19の下端も、下側の外ダイアフラム13の下面から下方に向かって若干突出される。なお、管状部材19の上端の、上側の外ダイアフラム13の上面からの突出量と、管状部材19の下端の、下側の外ダイアフラム13の下面からの突出量とは略同じである。当該管状部材19内に鉄筋コンクリート造の柱2が配置される。
【0023】
上下一対の外ダイアフラム13、13の接合部17、17は、立設される連結板材20により連結される。言い換えれば、上下一対の外ダイアフラム13、13の接合部17、17間に連結板材20が配置される。該連結板材20は、側面視略矩形状に形成される。該連結板材20は、上下一対の接合部17、17において、開口部16、16内を延びる管状部材19の外壁面から外縁に至る全域に配置されている。該連結板材20は、上下一対の接合部17、17の幅方向(梁3の長手方向に対して直交する方向)略中央に配置されている。連結板材20の梁3側の端面は、上下一対の外ダイアフラム13、13の接合部17、17の端面と面一となる。また、連結板材20の柱2側の端面は、上下一対の外ダイアフラム13、13の開口部16、16内に挿通される管状部材19の外壁面と当接される。
【0024】
そして、連結板材20の上面が、上側の外ダイアフラム13の接合部17の下面に溶接により接合される。一方、連結板材20の下面が、下側の外ダイアフラム13の接合部17の上面に溶接により接合される。また、連結板材20の柱2側の端面が管状部材19の外壁面に溶接により接合される。その後施工現場にて、連結板材20の梁3側の端面が、梁3の長手方向端面におけるウェブ7と当接されて、当該連結板材20と、梁3のウェブ7とが連結プレート23を介してボルト固定される。
【0025】
なお、図4に示すように、上下一対の外ダイアフラム13、13の開口部16、16内に挿通された管状部材19内に、上下方向に沿って延びる平面視十字状の補強ウェブ30を配置するようにしてもよい。具体的には、補強ウェブ30の4箇所の先端面が、上下一対のダイアフラム13、13の開口部16、16内に挿通される管状部材19の内壁面にそれぞれ当接されて、その箇所が溶接により接合される。これにより、本実施形態に係るRCS接合構造1を補強することができる。
【0026】
次に、本実施形態に係るRCS接合構造1の施工方法を、図5を参照しながら説明する。
まず、予め、鉄骨等の製造工場にて、各連結板材20を含む上下一対の外ダイアフラム13、13と、管状部材19とを一体的に接合してなるものが製造される。詳しくは、上述したように、上下一対の外ダイアフラム13、13の開口部16、16内に管状部材19を挿通して、上下一対の外ダイアフラム13、13と管状部材19とを溶接により接合する。このとき、管状部材19の上端が、上側の外ダイアフラム13の上面から上方に向かって若干突出される。一方、管状部材19の下端も、下側の外ダイアフラム13の下面から下方に向かって若干突出される。また、上下一対の外ダイアフラム13、13の各接合部17、17に連結板材20を溶接によりそれぞれ接合することで、上下一対の接合部17、17を連結板材20により連結する。この際、連結板材20の柱2側の端面は、管状部材19の外壁面に溶接により接合される。
【0027】
続いて、各連結板材20を含む上下一対の外ダイアフラム13、13と、管状部材19とを接合してユニット化されてなるものを施工現場(施設)に持ち込む。なお、本実施形態に係るRCS接合構造1は、施工現場(施設)として、例えば、物流倉庫等の物流施設や、製造ライン等が備えられる生産工場等の生産施設、デパートやショッピングセンター等の商業施設等に採用される。
【0028】
そして、施工現場では、図5(a)を参照して、上下方向に延びる複数の主鉄筋50が、コンクリート打設後の柱2内でその外壁面に近接する位置にその周方向に等間隔で複数設置できるように、複数の主鉄筋50を柱2の設置箇所において適宜位置にそれぞれ配置する。続いて、図5(b)を参照して、複数の主鉄筋50の周りに柱用型枠51を設置する。このとき、各主鉄筋50は、柱用型枠51の上端から上方に向かって突出された状態となる。続いて、図5(c)を参照して、柱用型枠51内にコンクリートを打設して柱2を構築して、その後、柱用型枠51を取り除く。続いて、図5(d)を参照して、柱2に、各連結板材20を含む上下一対の外ダイアフラム13、13と、管状部材19とを接合してユニット化されてなるものを組み付け、柱梁接合部建方を施工する。
【0029】
すなわち、柱2においてその各主鉄筋50の周りの上面に、連結板材20を含む上下一対の外ダイアフラム13、13及び管状部材19を接合してユニット化されてなるものを下側の外ダイアフラム13が当接するように載せる。すると、柱2の上面から突出された複数の主鉄筋50が、上下一対の外ダイアフラム13、13の開口部16、16内に挿通された管状部材19の内壁面に近接して、その周方向に沿って略同じ間隔で配置され、管状部材19の上端から上方に向かって突出された状態となる。なお、管状部材19内に、上下方向に沿って延びる平面視十字状の補強ウェブ30を配置した実施形態(図4参照)を採用すると、これらを柱2の上面に載せた際、補強ウェブ30によりその安定性が増す。
【0030】
続いて、図5(e)に示すように、上下一対の外ダイアフラム13、13及び管状部材19を接合してユニット化されてなるものに対して、4本のH鋼からなる梁3をそれぞれ組み付ける鉄骨建方を施工する。すなわち、上下一対のダイアフラム13、13間の連結板材20に各梁3のウェブ7の長手方向端部を、連結プレート23を介してそれぞれボルト固定する。また、上下一対の外ダイアフラム13、13の各接合部17、17の先端面と、各梁3の上下一対のフランジ6の長手方向端面とを溶接によりそれぞれ接合する。その結果、本実施形態に係るRCS接合構造1の施工が完了する。
【0031】
続いて、図5(f)を参照して、各梁3、3に掛け渡すように、各梁3、3の上側のフランジ6、6上に、複数(図では4枚)の床版(型枠)53、53を互いに若干の隙間をあけるようにして敷き込む。続いて、図5(g)を参照して、コンクリート(図5(c)に示す柱2を構築したコンクリートと同様)を、上下一対の外ダイアフラム13、13の開口部16、16内に挿通された管状部材19内に、各床板53の上面から若干上方に至る位置まで打設する(図の符号54Aはコンクリート層を示す)。続いて、図5(h)を参照して、管状部材19の周り、隣接する床版53の間(各梁3の上側のフランジ6上)、及び各床版53上に、管状部材19内に打設したコンクリート層54Aの上面と略面一となるまでコンクリートを打設する(図の符号54Bはコンクリート層を示す)。なお、管状部材19内に打設されるコンクリート強度(コンクリート層54A)と、各床版53上に打設されるコンクリート強度(コンクリート層54B)とは相違している。
【0032】
このとき、柱2内の複数の主鉄筋50は、床面(コンクリート層54の上面)から上方に向かって突設された状態であり、また、柱2内の複数の主鉄筋50は、上下一対の外ダイアフラム13、13の開口部16、16に挿通された管状部材19の内壁面に近接して、周方向に沿って略同じ間隔で配置されている。なお、本実施形態では、施工現場にて、柱用型枠51内にコンクリートを打設して柱2を構築している(RC造)が、製造工場にて、予め、複数の主鉄筋50を含むコンクリートを打設してなる柱2を製造して(PCa造)、これを施工現場に持ち込むようにしてもよい。なお、施工現場にて、予め、複数の主鉄筋50を含むコンクリートを打設してなる柱2を製造して、設置箇所に配置する場合もある(PCa造)。当然であるが、製造工場や施工現場にて、予め、柱2を製造する場合でも、上下方向に延びる複数の主鉄筋50が、柱2内でその外壁面に近接する位置にその周方向に沿って略同じ間隔で配置される。
【0033】
以上説明した、本実施形態に係るRCS接合構造1では、上下一対の外ダイアフラム13、13の開口部16、16内に挿通された管状部材19内に柱2が配置され、柱2内の上下方向に延びる複数の主鉄筋50を、寄筋の納まりとならず、管状部材19内の内壁面に近接して、周方向に沿って略同じ間隔でそれぞれ配筋することができる。その結果、柱2の断面の拡大を抑制することができる。また、本実施形態に係るRCS接合構造1では、上下一対の外ダイアフラム13、13の開口部16、16内に挿通される管状部材19を備え、該管状部材19は、上下一対の外ダイアフラム13,13から上下方向に向かってそれぞれ突出される。これにより、各外ダイアフラム13、13からの荷重が、管状部材19の壁部全体を介して、鉄筋コンクリート造の柱2の外壁面に伝達されるので、柱2の外壁面に対して、各外ダイアフラム13、13からの荷重を分散させることができ、柱2の外壁面の一部に圧壊が生じるのを抑制することができる。
【0034】
さらに、本実施形態に係るRCS接合構造1では、上下一対の外ダイアフラム13、13の各接合部17、17をそれぞれ連結する連結板材20を有するので、上下一対の外ダイアフラム13、13と梁3の長手方向端部との接合が容易となる。さらに、本実施形態に係るRCS接合構造1では、連結板材20が、梁3のウェブ7に連結プレート23を介してボルト固定されるので、上下一対の外ダイアフラム13、13と梁3の長手方向端部との接合がさらに容易となる。
【符号の説明】
【0035】
1 RCS接合構造,2 柱,3 梁,6 フランジ,7 ウェブ,13 外ダイアフラム,16 開口部,17 接合部,18 分割部材,19 管状部材,20 連結板材,23 連結プレート,50 主鉄筋
図1
図2
図3
図4
図5
図6