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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107315
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】クリップ
(51)【国際特許分類】
   F16B 19/10 20060101AFI20220713BHJP
【FI】
F16B19/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002187
(22)【出願日】2021-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】特許業務法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 正起
(72)【発明者】
【氏名】山口 淳史
【テーマコード(参考)】
3J036
【Fターム(参考)】
3J036AA03
3J036AA05
3J036BB02
3J036DA06
3J036DB05
(57)【要約】
【課題】取付孔からの取り外し作業を容易に行うことが可能なクリップを提供する。
【解決手段】本発明のクリップ1は、第1係合部15、第2係合部16、第1操作部17及び第2操作部18等を備えている。第1係合部15及び第2係合部16は、係合状態と非係合状態とに変形可能である。第1操作部17は第1係合部15と接続しており、第2操作部18は第2係合部16と接続している。第1操作部17は、第2操作部18に接近することにより、第1係合部15を係合状態から非係合状態に変形させる。第2操作部18は、第1操作部17に接近することにより、第2係合部16を係合状態から非係合状態に変形させる。第1操作部17には、第2操作部18を係止することにより、第1係合部15を非係合状態に保持するとともに第2係合部16を非係合状態に保持する保持部25が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付孔が形成された第1部材に対し、前記取付孔に向かって延びる取付部を有する第2部材の取り付けを行うクリップであって、
前記取付孔に進入可能なクリップ本体と、
前記クリップ本体の内部に形成され、前記取付部が進入可能な進入部と、
前記進入部の内部に前記取付部を着脱可能に装着する装着部と、
前記クリップ本体に対して弾性変形可能に設けられた第1係合部と、
前記クリップ本体に対して弾性変形可能に設けられ、前記進入部を挟んで前記第1係合部の反対側に位置する第2係合部と、
前記第1係合部と接続し、前記第1係合部及び前記取付孔から離隔するように延在する第1操作部と、
前記第2係合部と接続し、前記第2係合部及び前記取付孔から離隔するように延在する第2操作部とを備え、
前記第1係合部及び前記第2係合部は、前記取付孔の外周縁に係合する係合状態と、前記取付孔の前記外周縁との係合を解消する非係合状態とに変形可能であり、
前記第1操作部は、前記第2操作部に接近することにより、前記第1係合部を前記係合状態から前記非係合状態に変形させ、
前記第2操作部は、前記第1操作部に接近することにより、前記第2係合部を前記係合状態から前記非係合状態に変形させ、
前記第1操作部には、前記第2操作部を係止することにより、前記第1係合部を前記非係合状態に保持するとともに前記第2係合部を前記非係合状態に保持する保持部が形成されていることを特徴とするクリップ。
【請求項2】
前記第1操作部は、前記第1係合部と接続する根元部位と、前記第1操作部における延在方向において前記根元部位の反対側に位置する先端部位とを有し、
前記保持部は、前記延在方向において、前記先端部位よりも前記根元部位に近接して配置されている請求項1記載のクリップ。
【請求項3】
前記保持部は、前記第1操作部から略直角に延びて前記第2係合部を係止する係止辺を有する略直角三角形をなしている請求項1又は2記載のクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来のクリップが開示されている。このクリップは、第1部材に第2部材の取り付けを行う。第1部材には取付孔が形成されている。第2部材は、取付孔に向かって延びる取付部を有している。
【0003】
クリップは、クリップ本体と、第1係合部と、第2係合部とを備えている。クリップ本体は、矩形の略箱状をなしており、取付孔に進入可能となっている。また、クリップ本体の内部には、取付部が進入可能な進入部が形成されている。
【0004】
第1係合部及び第2係合部は、それぞれクリップ本体に弾性変形可能に設けられている。第2係合部は、進入部を挟んで第1係合部の反対側に位置している。第1係合部及び第2係合部は、弾性変形することにより、係合状態と非係合状態とに変形可能である。第1係合部及び第2係合部は、係合状態に変形することにより、取付孔の外周縁に係合する。一方、第1係合部及び第2係合部は、非係合状態に変形することにより、取付孔の外周縁との係合を解消する。ここで、第1係合部及び第2係合部は、第1部材に対する第2部材の取り付け作業や取付孔からのクリップの取り外し作業が行われていない状態では、係合状態を維持するようになっている。
【0005】
また、第1係合部及び第2係合部には、進入部の内部に突出する装着部がそれぞれ形成されている。各装着部は、進入部の内部に取付部を着脱可能に装着する。
【0006】
このクリップによって第1部材に対する第2部材の取付作業を行うに当たっては、作業者は、まず初めにクリップ本体の進入部に第2部材の取付部を進入させる。これにより、各装着部が取付部に係合し、進入部の内部に取付部が装着される。この結果、第2部材にクリップが取り付けられる。そして、この状態でクリップ本体を第1部材の取付孔に進入させる。これにより、係合状態にある第1係合部及び第2係合部が取付孔の外周面に係合し、クリップが係合孔に取り付けられる。こうして、クリップを介して第1部材に第2部材が取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-128017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この種のクリップでは、進入部の内部から取付部を脱出させることにより、クリップから第2部材を取り外すことが可能である。これにより、クリップを係合孔に取り付けた状態のまま、第1部材から第2部材が取り外される。そして、係合孔からクリップを取り外すに当たっては、作業者は、第1係合部及び第2係合部を弾性変形させて非係合状態に変形させる。そして、作業者は、第1係合部及び第2係合部を非係合状態に維持した状態で、挿通孔からクリップ本体を脱出させる。こうして、係合孔からクリップが取り外される。
【0009】
しかし、第1部材の形状や第1部材における取付孔の位置等によっては、作業者が第1係合部及び第2係合部に触れ難い場合があり得る。また、一般的に作業者は手袋を装着して取り外し作業を行うものの、この手袋によって繊細な作業が行い難い。
【0010】
このため、上記従来のクリップでは、作業者が第1係合部及び第2係合部を弾性変形させ難く、また、第1係合部及び第2係合部を非係合状態に維持し難い。そして、このように、第1係合部及び第2係合部を弾性変形させ難いことから、このクリップでは、第1係合部及び第2係合部を弾性変形させる際に、誤ってクリップを取付孔から第1部材の内部に落下させてしまうおそれもある。これらのため、このクリップでは、取付孔からの取り外し作業を行い難い。
【0011】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、取付孔からの取り外し作業を容易に行うことが可能なクリップを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のクリップは、取付孔が形成された第1部材に対し、前記取付孔に向かって延びる取付部を有する第2部材の取り付けを行うクリップであって、
前記取付孔に進入可能なクリップ本体と、
前記クリップ本体の内部に形成され、前記取付部が進入可能な進入部と、
前記進入部の内部に前記取付部を着脱可能に装着する装着部と、
前記クリップ本体に対して弾性変形可能に設けられた第1係合部と、
前記クリップ本体に対して弾性変形可能に設けられ、前記進入部を挟んで前記第1係合部の反対側に位置する第2係合部と、
前記第1係合部と接続し、前記第1係合部及び前記取付孔から離隔するように延在する第1操作部と、
前記第2係合部と接続し、前記第2係合部及び前記取付孔から離隔するように延在する第2操作部とを備え、
前記第1係合部及び前記第2係合部は、前記取付孔の外周縁に係合する係合状態と、前記取付孔の前記外周縁との係合を解消する非係合状態とに変形可能であり、
前記第1操作部は、前記第2操作部に接近することにより、前記第1係合部を前記係合状態から前記非係合状態に変形させ、
前記第2操作部は、前記第1操作部に接近することにより、前記第2係合部を前記係合状態から前記非係合状態に変形させ、
前記第1操作部には、前記第2操作部を係止することにより、前記第1係合部を前記非係合状態に保持するとともに前記第2係合部を前記非係合状態に保持する保持部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明のクリップでは、第1操作部によって第1係合部を係合状態から非係合状態に変形させることが可能であるとともに、第2操作部によって第2係合部を係合状態から非係合状態に変形させることが可能である。これにより、このクリップでは、作業者は、第1係合部及び第2係合部を弾性変形させるに当たって、第1係合部及び第2係合部を直接操作する必要がない。このため、第1係合部及び第2係合部に触れ難い個所で係合孔にクリップが取り付けられている場合の他、作業者が手袋を装着している場合であっても、第1係合部及び第2係合部を弾性変形させて非係合状態に変形させ易い。
【0014】
また、このクリップでは、第1操作部に保持部が形成されている。そして、この保持部に第2操作部を係止することにより、このクリップでは、第1係合部を非係合状態に保持することができるとともに第2係合部を非係合状態に保持することができる。こうして、このクリップによれば、第1係合部及び第2係合部を非係合状態に容易に維持させることができる。
【0015】
したがって、本発明のクリップによれば、取付孔からの取り外し作業を容易に行うことができる。
【0016】
第1操作部は、第1係合部と接続する根元部位と、第1操作部における延在方向において根元部位の反対側に位置する先端部位とを有し得る。そして、保持部は、延在方向において、先端部位よりも根元部位に近接して配置されていることが好ましい。
【0017】
この場合には、保持部が先端部位に近接して配置されている場合に比べて、第1操作部を第2操作部にさほど大きく接近させず、また、第2操作部を第1操作部にさほど大きく接近させずとも、保持部が第2操作部を係止できる。これにより、このクリップでは、第1係合部及び第2係合部を非係合状態により容易に保持させることができるため、取付孔からの取り外し作業をより容易に行うことができる。
【0018】
保持部は、第1操作部から略直角に延びて第2係合部を係止する係止辺を有する略直角三角形をなしていることが好ましい。この場合には、保持部の形成を容易化できるとともに、係止辺によって保持部が第2操作部を好適に係止できる。なお、略直角とは、第1操作部に対して係止辺が直角に延びている場合の他、製造時の公差に起因する誤差を含む概念である。また、略直角三角形とは、保持部が完全な直角三角形をなしている場合の他、製造時の公差や面取り加工による変形を含む概念である。
【発明の効果】
【0019】
本発明のクリップによれば、取付孔からの取り外し作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施例のクリップによって、第1部材に第2部材が取り付けられた状態を示す断面図である。
図2図2は、実施例のクリップを示す斜視図である。
図3図3は、実施例のクリップを示す斜視図である。
図4図4は、実施例のクリップが取付孔に取り付けられた状態を示す図1の要部拡大断面図である。
図5図5は、実施例のクリップを取付孔から取り外す状態を示す図4と同様の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1に示すように、実施例のクリップ1は、車両100に採用されている。このクリップ1は、車両100のボディパネル3に対し、装飾部品5の取り付けを行う。ボディパネル3は、本発明における「第1部材」の一例である。また、装飾部品5は、本発明における「第2部材」の一例である。
【0023】
本実施例では、図1に示す実線矢印によって車両100及びクリップ1の前後方向を規定している他、車両100及びクリップ1の幅方向である左右方向を規定している。また、図2では、図1に対応して車両100及びクリップ1の前後方向及び左右方向を規定している他、車両100及びクリップ1の上下方向を規定している。そして、図3以降では、図1及び図2に対応して車両100及びクリップ1の前後方向、左右方向及び上下方向を規定している。これらの前後方向、左右方向及び上下方向は、互いに直交する関係にある。
【0024】
また、本実施例において、車両100及びクリップ1の前後方向、より具体的には、車両100及びクリップ1において、後方から前方に向かう方向は、ボディパネル3に対するクリップ1及び装飾部品5の取付方向に相当する。一方、車両100及びクリップ1において、前方から後方に向かう方向は、ボディパネル3に対するクリップ1及び装飾部品5の取り外し方向に相当する。なお、取付方向及び取り外し方向は、ボディパネル3に対するクリップ1及び装飾部品5の位置に応じて、車両100の左右方向や上下方向等に変更される。
【0025】
図1に示すボディパネル3は、金属の板材によって形成されている。詳細な図示を省略するものの、ボディパネル3は、アウタパネルとインナパネルとによって構成されている。また、ボディパネル3には、取付孔3aが形成されている。取付孔3aは、ボディパネル3を前後に貫通している。また、図4及び図5に示すように、取付孔3aの直径は、第3長さL3となっている。
【0026】
図1に示すように、装飾部品5は樹脂製である。装飾部品5は、本体部5aと取付部5bとを有している。本体部5aは、ボディパネル3に対する装飾の目的に応じて、形状が設計されている。本体部5aは、表面51と裏面53とを有している。表面51は、装飾部品5の意匠面を構成している。表面51には、ボディパネル3に対する装飾の目的に応じて、メッキ処理や塗装等が施されている。一方、裏面53は、表面51の反対側に位置している。
【0027】
取付部5bは、本体部5aの裏面53に一体に形成されている。取付部5bは、裏面53から前方、すなわち、ボディパネル3に向かって直線状に延びている。取付部5bの前端側には、係止孔55が形成されている。係止孔55は、取付部5bの延在方向に直交する方向、つまり、左右方向に取付部5bを貫通している。
【0028】
クリップ1は樹脂製であり、弾性変形可能となっている。図2及び図3に示すように、クリップ1は、クリップ本体11と、進入部12と、第1装着爪13と、第2装着爪14と、第1係合部15と、第2係合部16と、第1操作部17と、第2操作部18とを備えている。第1装着爪13及び第2装着爪14は、本発明における「装着部」の一例である。
【0029】
クリップ本体11は、後方から前方に向かうにつれて次第に左右方向に小さくなる略三角形状をなしている。クリップ本体11は、ボディパネル3の取付孔3aに進入可能となっている。なお、クリップ本体11の形状は、取付孔3aの形状に応じて適宜設計可能である。
【0030】
進入部12は、クリップ本体11の内部に形成されている。進入部12は、クリップ本体11の後端に開口しており、クリップ本体11の内部を前後方向に延びている。ここで、進入部12は、クリップ本体11の前端には開口していない。つまり、進入部12は、クリップ本体11に対して、クリップ本体11の後端から前方に向かって凹設されている。進入部12には、取付部5bの前端側が進入可能となっている。
【0031】
第1装着爪13及び第2装着爪14は、クリップ本体11に一体に形成されており、進入部12の内部に位置している。より具体的には、第1装着爪13及び第2装着爪14は、進入部12の後端に位置している。第1装着爪13と第2装着爪14とは、互いに対向した状態で配置されている。第1装着爪13は、第2装着爪14に向かって突出する略直角三角形の形状をなしており、取付部5bの係止孔55と係合可能となっている。第2装着爪14は、第1装着爪13と対称の形状をなしている。なお、係止孔55と係合可能であれば、第1装着爪13及び第2装着爪14の形状は適宜設計可能である。
【0032】
これらの第1装着爪13及び第2装着爪14は、進入部12に取付部5bを着脱可能に装着する。具体的には、図4に示すように、第1装着爪13及び第2装着爪14は、進入部12に取付部5bが進入した際に係止孔55と係合する。これにより、進入部12内に取付部5bを保持して進入部12から取付部5bが脱出することを禁止する。一方、第1装着爪13及び第2装着爪14は、係止孔55との係合を解除することにより、進入部12から取付部5bが脱出することを許容する。
【0033】
図2及び図3に示すように、第1係合部15は、クリップ本体11の右後部に一体に形成されている。一方、第2係合部16は、クリップ本体11の左後部に一体に形成されている。つまり、第2係合部16は、進入部12を挟んで第1係合部15の反対側に位置している。
【0034】
また、第1係合部15とクリップ本体11との間には、クリップ本体11から第1係合部15を右方に離隔させる第1溝部21が形成されている。そして、第2係合部16とクリップ本体11との間には、クリップ本体11から第2係合部16を左方に離隔させる第2溝部22が形成されている。これらの第1溝部21と第2溝部22とについても、進入部12を挟んでそれぞれ配置されている。第1溝部21と第2溝部22とは左右対称の形状であり、クリップ本体11の後端に開口しつつ、クリップ本体11の前方に向かって延びている。
【0035】
第1係合部15は、第1変形部位15aと、第1係合爪15bと、第1接続部位15cと、第1突出片15dとを有している。同様に、第2係合部16は、第2変形部位16aと、第2係合爪16bと、第2接続部位16cと、第2突出片16dとを有している。ここで、第1係合部15と第2係合部16とは左右対称の形状である。このため、第1変形部位15aと第2変形部位16aとは左右対称の形状であり、第1係合爪15bと第2係合爪16bとは左右対称の形状であり、第1接続部位15cと第2接続部位16cとは左右対称の形状であり、第1突出片15dと第2突出片16dとは左右対称の形状である。以下、第1係合部15を基に、第1変形部位15a等の構成を説明する。
【0036】
第1変形部位15aは、第1係合部15における前部に位置しており、クリップ本体11と接続している。第1変形部位15aは、クリップ本体11に比べて左右方向に薄い形状となっている。
【0037】
第1係合爪15bは、第1変形部位15aの後端と一体をなしている。第1係合爪15bは、第1変形部位15aから後方に離隔するにつれて、次第に右方に突出する略三角形状をなしている。
【0038】
第1接続部位15cは、第1変形部位15aの後端と一体をなしており、後方に向かって延びている。第1突出片15dは、第1接続部位15cに一体に形成されている。第1突出片15dは、第1接続部位15cから右方に向かって板状に延びている。ここで、第1突出片15dは、第1係合爪15bよりも右方に長く延びている。なお、第1突出片15dの形状は適宜設計可能である。
【0039】
第1係合部15及び第2係合部16は、第1変形部位15a及び第2変形部位16aがそれぞれ弾性変形することにより、図1図2及び図4に示す係合状態と、図3及び図5に示す非係合状態とに変形可能となっている。
【0040】
具体的には、第1係合部15は、第1変形部位15aが第1溝部21を狭めるように左方に弾性変形することにより、係合状態から非係合状態に変形する。反対に、第1係合部15は、第1変形部位15aが第1溝部21を広げるように右方に弾性変形することにより、非係合状態から係合状態に変形する。また、第2係合部16は、第2変形部位16aが第2溝部22を狭めるように右方に弾性変形することにより、係合状態から非係合状態に変形する。反対に、第2係合部16は、第2変形部位16aが第2溝部22を広げるように左方に弾性変形することにより、非係合状態から係合状態に変形する。
【0041】
そして、このクリップ1では、第1係合部15と第2係合部16とが係合状態となることにより、図4に示すように、第1係合爪15bと第2係合爪16bとの左右方向の間隔は、第1長さL1となる。この第1長さL1は、取付孔の直径である第3長さL3よりも長くなっている。一方、第1係合部15と第2係合部16とが非係合状態となることにより、図5に示すように第1係合爪15bと第2係合爪16bとの左右方向の間隔は、第2間隔W2となる。この第2長さL2は、第1長さL1及び第3長さL3よりも短くなっている。
【0042】
図2及び図3に示すように、前後方向に直線状に延びている。第1操作部17は、第1根元部位17aと、第1先端部位17bとを有している。第1根元部位17aは本発明における「根元部位」の一例であり、第1先端部位17bは本発明における「先端部位」の一例である。第1根元部位17aは、第1操作部17における前端側に位置しており、第1係合部15の第1接続部位15cと接続している。これにより、第1操作部17は、第1係合部15と一体をなしており、第1係合部15から後方に離隔するように延びている。一方、第1先端部位17bは、第1操作部17における後端側に位置している。つまり、第1先端部位17bは、第1係合部15から後方に最も離隔している。
【0043】
また、第1操作部17には、保持部25が形成されている。保持部25は、係止辺25aと接続辺25bとを有している。係止辺25aは、第1操作部17から下方に向かって略直角に延びている。接続辺25bは、係止辺25aの下端、すなわち係止辺25aにおける第1操作部17とは反対側で係止辺25aと接続している。接続辺25bは、係止辺25aから後方に離隔するにつれて、徐々に第1操作部17に接近するように傾斜して延びており、自己の後端で第1操作部17と接続している。これらの係止辺25a及び接続辺25bにより、保持部25は、第1操作部17から下方に突出する略直角三角形の形状をなしている。
【0044】
ここで、保持部25は、第1操作部17における延在方向において、第1先端部位17bよりも第1根元部位17aに近接して配置されている。より具体的には、第1操作部17には、中点Cが規定されている。この中点Cは、第1操作部17における延在方向の中央、つまり前後方向の中央に位置している。そして、保持部25は、中点Cよりも第1根元部位17aに近い位置に配置されている。
【0045】
第2操作部18は、第1操作部17と平行で前後方向に直線状に延びている。第2操作部18における前後方向の長さは、第1操作部17の前後方向の長さと等しくなっている。ここで、第1操作部17及び第2操作部18における前後方向の長さは、クリップ本体11における前後方向の長さよりも長くなっている。なお、第1操作部17及び第2操作部18における前後方向の長さは適宜設計可能である。
【0046】
第2操作部18は、第2根元部位18aと、第2先端部位18bとを有している。第2根元部位18aは、第2操作部18における前端側に位置しており、第2係合部16の第2接続部位16cと接続している。これにより、第2操作部18は、第2係合部16と一体をなしており、第2係合部16から後方に離隔するように延びている。一方、第2先端部位18bは、第2操作部18における後端側に位置している。つまり、第2先端部位18bは、第2係合部16から後方に最も離隔している。ここで、第1操作部17とは異なり、第2操作部18には保持部25は形成されていない。
【0047】
第1操作部17及び第2操作部18は、それぞれ第1係合部15及び第2係合部16を係合状態と非係合状態とに変形させる。具体的には、図3及び図5に示すように、第1操作部17を左方に押圧して第2操作部18に接近させることにより、第1根元部位17a、第1接続部位15c及び第1係合爪15bを通じて、第1変形部位15aが第1溝部21を狭めるように左方に弾性変形する。また、第2操作部18を右方に押圧して第1操作部17に接近させることにより、第2根元部位18a、第2接続部位16c及び第2係合爪16bを通じて、第2変形部位16aが第2溝部22を狭めるように右方に弾性変形する。この結果、第1係合部15及び第2係合部16は、係合状態から非係合状態に変形する。
【0048】
このように、第1操作部17と第2操作部18とが互いに接近することにより、保持部25の係止辺25aが第2操作部18の上方から第2操作部18に係合する。これにより、第1操作部17と第2操作部18とは、互いに交差した状態となる。そして、このように、係止辺25aが第2操作部18に係合することにより、第1操作部17と第2操作部18とは交差しつつ接近した状態が保持されるため、第1操作部17は左方に押圧される状態が維持されるとともに、第2操作部18は右方に押圧される状態が維持される。この結果、第1係合部15は非係合状態で保持されるとともに、第2係合部16は非係合状態で保持される。
【0049】
一方、図1図2及び図4に示すように、係止辺25aと第2操作部18との係合を解除することにより、第1操作部17及び第2操作部18に対する押圧が解除される。このため、第1操作部17が第2操作部18から離隔するとともに、第2操作部18が第1操作部17から離隔する。この結果、第1変形部位15aが第1溝部21を広げるように右方に弾性変形し、第2変形部位16aが第2溝部22を広げるように左方に弾性変形する。こうして、第1係合部15及び第2係合部16は、非係合状態から係合状態に変形する。
【0050】
そして、このクリップ1では、第1係合爪15b及び第2係合爪16bに対する取付孔3aの内壁からの押圧の他、第1操作部17及び第2操作部18に対する押圧がない状態(以下、これらの状態を自然状態という。)では、第1係合部15及び第2係合部16は、係合状態を維持するようになっている。
【0051】
以上のように構成されたこのクリップ1では、以下の方法によって、ボディパネル3にする装飾部品5の取り付けを行う。まず初めに、ボディパネル3にする装飾部品5の取り付け作業を行う作業者(図示略)は、装飾部品5とクリップ1との取り付けを行う。具体的には、図1及び図4に示すように、クリップ1の進入部12に対し、装飾部品5の取付部5bを進入させる。これにより、クリップ1では、第1装着爪13及び第2装着爪14が進入部12に進入する取付部5bによって、互いに遠ざかるように弾性変形する。そして、第1装着爪13及び第2装着爪14は、取付部5bの係止孔55に対向することにより、係止孔55に係合する。これにより、取付部5bが進入部12に装着されて、装飾部品5とクリップ1との取り付けが完了する。この際、クリップ1は自然状態であり、第1係合部15及び第2係合部16は、係合状態となっている。
【0052】
次に、作業者は、図4の白色矢印で示すように、装飾部品5及びクリップ1を取付方向でボディパネル3接近させて、クリップ本体11を取付孔3aの内部に進入させる。すなわち、装飾部品5及びクリップ1をボディパネル3の後方からボディパネル3に接近させて、クリップ本体11を後方から取付孔3aの内部に進入させる。ここで、第1係合部15と第1係合部15が係合状態にあるときには、第1係合爪15bと第2係合爪16bとの左右方向の間隔が第1長さL1であり、取付孔の直径である第3長さL3よりも長い関係にある。このため、取付方向でクリップ本体11が取付孔3aの内部に進入する過程において、第1係合爪15b及び第2係合爪16bは、取付孔3aの内壁から押圧される。これにより、第1変形部位15a及び第2変形部位16aが、第1溝部21及び第2溝部22をそれぞれ狭めるように弾性変形することで、第1係合部15及び第2係合部16は非係合状態に変形する。
【0053】
そして、取付方向でクリップ本体11が取付孔3aを通過することにより、第1係合爪15b及び第2係合爪16bに対する取付孔3aの内壁からの押圧が解除される。この結果、第1係合部15及び第2係合部16は、係合状態に復帰、すなわち非係合状態から係合状態に変形する。これにより、第1係合爪15b及び第2係合爪16bにおける左右方向の間隔が第1長さL1となることで、第1係合爪15b及び第2係合爪16bが取付孔3aの外周縁に係合する。こうして、取付孔3aからのクリップ本体11の抜け止めが行われる。
【0054】
また、第1係合爪15b及び第2係合爪16bが取付孔3aの外周縁に係合することにより、クリップ1では、第1突出片15d及び第2突出片16dが、それぞれボディパネル3の後方からボディパネル3に当接する。これにより、第1突出片15d及び第2突出片16dが後方側から取付孔3aを覆うことにより、取付孔3aとクリップ1との隙間からボディパネル3の内側に水等が進入することが防止される。こうして、クリップ1を通じたボディパネル3に対する装飾部品5の取り付けが完了する。
【0055】
ここで、このように、このクリップ1によってボディパネル3に取り付けられた装飾部品5は、ボディパネル3からの取り外しも可能である。この場合、ボディパネル3から装飾部品5を取り外す作業を行う作業者(図示略)は、第1係合爪15b及び第2係合爪16bが取付孔3aの外周縁に係合した状態において、ボディパネル3と装飾部品5とが離隔するように、装飾部品5に対して取り外し方向、つまり、ボディパネル3の後方に向けて荷重を付加する。これにより、進入部12の内部では、取り外し方向に移動する取付部5bによって、第1装着爪13及び第2装着爪14が再び互いに遠ざかるように弾性変形する。このため、図5に示すように、第1装着爪13及び第2装着爪14と、係止孔55との係合が解除され、進入部12から取付部5bが脱出する。こうして、クリップ1と装飾部品5とが分離され、ボディパネル3から装飾部品5を取り外すことが可能となる。
【0056】
次に、ボディパネル3からのクリップ1の取り外し作業を行う。この際、作業者は、第1操作部17を左方に押圧して第2操作部18に接近させるとともに、第2操作部18を右方に押圧して第1操作部17に接近させる。そして、保持部25の係止辺25aに第2操作部18を係合させる。これにより、クリップ1では、第1係合部15及び第2係合部16が係合状態から非係合状態に変形するとともに、非係合状態で保持される。
【0057】
このように、第1係合部15及び第2係合部16が非係合状態となることにより、第1係合爪15bと第2係合爪16bとの左右方向の間隔が第2長さL2となり、取付孔の直径よりも短くなる。このため、第1係合部15及び第2係合部16と、取付孔3aの外周縁との係合が解除される。この結果、取り外し方向で取付孔3aからクリップ本体11を引き抜くことが可能となる。そして、図5の白色矢印で示すように、取り外し方向で取付孔3aからクリップ本体11を引き抜き、取付孔3a、ひいてはボディパネル3からクリップ1を分離させることで、ボディパネル3からのクリップ1の取り外し作業が完了する。
【0058】
このように、このクリップ1では、第1操作部17によって第1係合部15を係合状態から非係合状態に変形させることが可能であるとともに、第2操作部18によって第2係合部16を係合状態から非係合状態に変形させることが可能である。これにより、このクリップで1は、作業者は、第1係合部15及び第2係合部16を弾性変形させるに当たって、第1係合部15及び第2係合部16を直接操作する必要がない。特に、このクリップ1において、第1操作部17及び第2操作部18は、クリップ本体11よりも長く形成されており、第1操作部17及び第2操作部18が前後方向に十分な長さで形成されている。このため、第1係合部15及び第2係合部16に触れ難い個所で取付孔3aにクリップ1が取り付けられていたり、作業者が手袋を装着していたりしても、このクリップ1では、第1係合部15及び第2係合部16を弾性変形させて非係合状態に変形させ易くなっている。
【0059】
また、このクリップ1では、第1操作部17に保持部25が形成されている。そして、この保持部25の係止辺25aに第2操作部18を係止することにより、このクリップ1では、第1係合部15を非係合状態に保持することができるとともに、第2係合部16を非係合状態に保持することができる。この際にも、このクリップ1では、第1操作部17及び第2操作部18が前後方向に十分な長さで形成されているため、係止辺25aに第2操作部18を係止し易くなっている。こうして、このクリップ1によれば、第1係合部15及び第2係合部16を非係合状態に容易に維持させることができる。また、第1操作部17及び第2操作部18が前後方向に十分な長さで形成されているため、作業者は、第1操作部17及び第2操作部18を掴みやすくなっている。
【0060】
これらのため、たとえ作業者が手袋を装着しており、繊細な作業が行い難い場合であっても、第1係合部15及び第2係合部16を非係合状態とする際や、ボディパネル3からクリップ1を取り外し方向に移動させる際に、誤ってクリップ1を取付孔3aからボディパネル3内部、すなわち、アウタパネルとインナパネルとの間に落下させてしまう事態が生じ難い。
【0061】
したがって、実施例のクリップ1によれば、取付孔3aからの取り外し作業を容易に行うことができる。
【0062】
特に、このクリップ1では、ボディパネル3から装飾部品5の取り外しを行うに当たり、まず、進入部12から取付部5bを脱出させて、クリップ1と装飾部品5とを分離させる。これにより、クリップ1が装飾部品5に取り付けられた状態のまま、装飾部品5とともに取付孔3aからクリップ本体11を取り外し方向に引き抜く場合に比べて、ボディパネル3における取付孔3aの周辺に作用する負荷を低減することが可能となっている。このため、このクリップ1では、取付孔3aからの取り外し作業を行う際に、ボディパネル3を変形させ難くなっている。
【0063】
また、クリップ1では、保持部25が第1操作部17の延在方向において、第1先端部位17b及び中点Cよりも第1根元部位17aに近接して配置されている。このため、保持部25が第1先端部位17bに近接して配置されている場合に比べて、第1操作部17を第2操作部18にさほど大きく接近させず、また、第2操作部18を第1操作部17にさほど大きく接近させずとも、保持部25の係止辺25aが第2操作部18を係止可能となっている。これにより、このクリップ1では、第1係合部15及び第2係合部16を非係合状態により容易に保持させることが可能となっているため、この点においても、取付孔3aからクリップ1の取り外し作業を容易に行うことが可能となっている。
【0064】
また、保持部25は、係止辺25aと接続辺25bとを有する略直角三角形をなしている。このため、このクリップ1では、保持部25の形成が容易化されているとともに、係止辺25aによって保持部25が第2操作部18を好適に係止可能となっている。
【0065】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0066】
例えば、実施例のクリップ1では、第1係合部15が第1突出片15dを有しているとともに、第2係合部16が第2突出片16dを有している。しかし、これに限らず、第1突出片15dを省略して第1係合部15を構成するとともに、第2突出片16dを省略して第2係合部16を構成しても良い。
【0067】
また、保持部25の形状は適宜設計可能であり、第1操作部17に対して略矩形状に保持部25を凹設しても良い。
【0068】
さらに、第1操作部17において、保持部25を形成する位置は適宜設計可能であり、第1操作部17の延在方向において、第1根元部位17a及び中点Cよりも第1先端部位17bに近接した位置に保持部25を形成しても良い。
【0069】
また、実施例のクリップ1では、第1操作部17と第2操作部18とが平行で前後方向に直線状に延びている。しかし、これに限らず、第1操作部17及び第2操作部18は、後方に向かうにつれて互いに左右方向に離隔するように延びていても良い。
【0070】
さらに、実施例のクリップ1は、1つでボディパネル3に対する装飾部品5の取り付けを行っているが、これに限らず、装飾部品5の大きさや重量等に応じて、複数のクリップ1によって、ボディパネル3に装飾部品5の取り付けを行っても良い。
【0071】
また、本発明における「第1部材」として、例えば樹脂製のインスツルメントパネル等を採用しても良い。さらに、本発明における「第2部材」として、ランプやスピーカ等の機能部品等を採用しても良い。また、第2部材は、樹脂製に限らず金属製等であっても良い。また、装飾部品5において、本体部5aと取付部5bとが異なる材質で形成されていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、乗用自動車や産業車両等の車両に利用可能である他、住宅等の建物に利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1…クリップ
3…ボディパネル(第1部材)
3a…取付孔
5…装飾部品(第2部材)
5b…取付部
11…クリップ本体
12…進入部
13…第1装着爪(装着部)
14…第2装着爪(装着部)
15…第1係合部
16…第2係合部
17…第1操作部
17a…第1根元部位(根元部位)
17b…第1先端部位(先端部位)
18…第2操作部
25…保持部
25a…係止辺
図1
図2
図3
図4
図5