(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107318
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】医療用針
(51)【国際特許分類】
A61M 5/158 20060101AFI20220713BHJP
A61M 5/32 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
A61M5/158 500Z
A61M5/32 540
A61M5/158 500H
A61M5/158 500B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002192
(22)【出願日】2021-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中神 裕之
(72)【発明者】
【氏名】増谷 明子
(72)【発明者】
【氏名】安積 信也
(72)【発明者】
【氏名】三宅 貴子
(72)【発明者】
【氏名】中川 直己
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066FF04
4C066KK05
4C066PP01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】針ハブの強度と成形精度とを両立できるようにして、信頼性が高い医療用針を提供する。
【解決手段】先端側に針本体102が接続され、基端側にチューブ151が接続されるハブ101と、前記ハブ101を収容するハウジング103と、前記ハブ101を軸方向に付勢し、前記針本体102が前記ハウジング103から露出した第1の位置から前記針本体102が前記ハウジング103内に収容された第2の位置に移動させる付勢部104とを備え、前記ハウジング103は、基端に設けられた切欠を有する、穿刺器具。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に針本体が接続され、基端側にチューブが接続されるハブと、
前記ハブを収容するハウジングと、
前記ハブを軸方向に付勢し、前記針本体が前記ハウジングから露出した第1の位置から前記針本体が前記ハウジング内に収容された第2の位置に移動させる付勢部とを備え、
前記ハウジングは、基端に設けられた切欠を有する、穿刺器具。
【請求項2】
先端側に針本体が接続され、基端側にチューブが接続されるハブと、
前記ハブを収容するハウジングと、
前記ハブを付勢して、前記針本体が前記ハウジングから露出した第1の位置から前記針本体が前記ハウジング内に収容された第2の位置に移動させる付勢部とを備え、
前記ハブが前記第1の位置にある場合に、前記ハブの基端は前記ハウジングの基端から突出する、穿刺器具。
【請求項3】
ハブと、
前記ハブの先端側に取り付けられた針本体と、
前記ハブを収容するハウジングと、
前記ハブを付勢する付勢部とを備え、
前記ハブは、前記針本体が挿入される針挿入孔を有する第1の部分と、前記第1の部分よりも基端側に設けられ、前記ハウジングと解除可能に係合する係合部を含む第2の部分とを有し、
前記第1の部分と前記第2の部分とは、結合されて一体となっている、穿刺器具。
【請求項4】
前記第2の部分は、先端側に設けられた連結凹部を有し、
前記第1の部分は、基端側に設けられ、前記連結凹部に収容される連結凸部を有し、前記連結凸部を除く部分の外径が、前記第2の部分の前記連結凹部が設けられた部分の外径と等しい、請求項3に記載の穿刺器具。
【請求項5】
前記第1の部分は、前記第2の部分よりも成形性が高い樹脂により形成され、
前記第2の部分は前記第1の部分よりも強度が高い樹脂により成形されている、請求項3又は4に記載の穿刺器具。
【請求項6】
穿刺器具のハブの製造方法であって、
針本体が挿入される針挿入孔を有する第1の部分を成形する工程と、
前記第1の部分と、付勢部の付勢力に逆らってハウジングと解除可能に係合する係合部を有する第2の部分とを結合する工程とを備え、
前記ハブは、前記穿刺器具の使用終了時まで、前記付勢部の付勢力に逆らって前記針本体が前記ハウジングから露出した第1の位置に保持される、ハブの製造方法。
【請求項7】
前記結合する工程において、予め成形された前記第1の部分にインサート成形により前記第2の部分を結合する、請求項6に記載のハブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は穿刺器具に関し、特にプロテクタを有する穿刺器具に関する。
【背景技術】
【0002】
医療の現場においては、皮膚に穿刺する鋭利な針先を有する種々の穿刺器具が用いられている。例えば、血管内に薬剤を入れたり、血液を抜き出したりする医療用針は、鋭利な針先を有する針本体と、針本体の基端に設けられた針ハブとを有している。穿刺器具の先端は非常に鋭利であるため、誤って触ると怪我をしてしまう。また、使用後の穿刺器具の場合には、感染症に罹患するリスクもある。このため、穿刺器具による怪我を防ぐために針先を覆う種々のプロテクタが検討されている。
【0003】
中でも、針本体を針ハブと共に基端側に設けられたプロテクタ内に引き込んで収容するタイプの穿刺器具は、針本体にプロテクタを被せるタイプのものより操作が簡単でより事故が生じにくい。さらに、針本体が取り付けられた針ハブを基端側に付勢するための付勢手段と、ロック機構とを設け、ロックを解除することにより、針本体が自動的にプロテクタ内に引き込まれるタイプの穿刺器具は、操作がさらに簡単であり、安全性が高い(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、針本体が自動的にプロテクタ内に引き込まれるタイプの穿刺器具は、内部にバネ等の付勢部材が配されるため大型化してしまう問題がある。そこで、ハウジングや針ハブ自体を小型化する検討を行ったところ、チューブの先端部に塗布された溶剤又は接着剤が針ハブの基端部だけでなくプロテクタの基端部にもついてしまい、針ハブとプロテクタとが接続されてしまって、ロックを解除しても収納動作が生じない可能性があることが新たに判明した。
【0006】
また、針本体が自動的にプロテクタ内に引き込まれるタイプの穿刺器具は、使用されるまで針ハブに付勢力が加えられた状態が続く。このため、針ハブは、長期の負荷に耐えて変形しない強度を必要とする。一方、高強度の樹脂は成形性が悪いという問題を有しており、高強度の樹脂により形成した針ハブは、針本体を取り付ける取り付け孔の軸が曲がってしまうおそれがあることが新たに判明した。
【0007】
本開示の課題は、上記の穿刺器具の生産性を低下させる原因となる問題の少なくとも1つを解決し、穿刺器具の生産性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の穿刺器具の第1の態様は、先端側に針本体が接続され、基端側にチューブが接続されるハブと、ハブを収容するハウジングと、ハブを軸方向に付勢し、針本体がハウジングから露出した第1の位置から針本体がハウジング内に収容された第2の位置に移動させる付勢部とを備え、ハウジングは、基端に設けられた切欠を有する。
【0009】
穿刺器具の第1の態様によれば、基端部に設けられた切欠により、チューブに塗布された接着剤等がハウジングに接触してしまう事態を低減することができる。
【0010】
本開示の穿刺器具の第2の態様は、先端側に針本体が接続され、基端側にチューブが接続されるハブと、ハブを収容するハウジングと、ハブを付勢して、針本体がハウジングから露出した第1の位置から針本体がハウジング内に収容された第2の位置に移動させる付勢部とを備え、ハブが第1の位置にある場合に、ハブの基端はハウジングの基端から突出している。
【0011】
穿刺器具の第2の態様によれば、第1の位置に保持されたハブの基端がハウジングの基端から突出しているため、チューブをハブに接着させるための溶剤等がハウジングに付着しにくい。このため、ハブとハウジングとが溶着等されてしまう不良の発生を抑えることができる。
【0012】
本開示の穿刺器具の第3の態様は、ハブと、ハブの先端側に取り付けられた針本体と、ハブを収容するハウジングと、ハブを軸方向に付勢部とを備え、ハブは、針本体が挿入される針挿入孔を有する第1の部分と、第1の部分よりも基端側に設けられ、ハウジングと解除可能に係合する係合部を含む第2の部分とを有し、第1の部分と第2の部分とは、結合されて一体となっている。
【0013】
穿刺器具の第3の態様によれば、ハブの第1の部分と第2の部分とを異なる材料により形成することができ、ハブの強度を確保しつつハブの形状を安定させることができ生産性を向上させることができる。形状が安定することにより、穿刺器具の信頼性も向上する。
【0014】
医療用針の穿刺器具の第3の態様において、第2の部分は、先端側に設けられた連結凹部を有し、第1の部分は、基端側に設けられ、連結凹部に収容される連結凸部を有し、連結凸部を除く部分の外径が、第2の部分の連結凹部が設けられた部分の外径と等しくすることができる。このような構成とすることにより、第1の部分と第2の部分とを段差無く連結することができ、付勢部の設計が容易となる。また、医療用針の先端側の部分を細くすることが容易となり、穿刺器具の操作性も向上させることができる。
【0015】
穿刺器具の第3の態様において、第1の部分は第2の部分よりも成形性が高い材料により成形されており、第2の部分は第1の部分よりも強度が高い材料により成形されているようにできる。このような構成とすることにより、強度と生産性との両立が容易に実現できる。
【0016】
本開示の穿刺器具の製造方法の一態様は、穿刺器具のハブの製造方法であって、針本体が挿入される針挿入孔を有する第1の部分を成形する工程と、第1の部分と、付勢部の付勢力に逆らってハウジングと解除可能に係合する係合部を有する第2の部分とを結合する工程とを備え、ハブは、穿刺器具の使用終了時まで、付勢部の付勢力に逆らって針本体がハウジングから露出した第1の位置に保持される。穿刺器具の製造方法の一態様によれば、ハブの強度を確保しつつ精度良く成形を行うことができ、生産性を向上させることができる。
【0017】
穿刺器具の製造方法の一態様は、結合する工程において、予め成形された第1の部分にインサート成形により第2の部分を結合することができる。このような構成とすることにより、製造が容易となると共に、第1の部分と第2の部分との結合部分の信頼性も向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示の穿刺器具によれば、穿刺器具の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態に係る医療用針を示す分解斜視図である。
【
図2】ハブがハウジング内の第1の位置に保持された状態を示す断面図である。
【
図3】ハブがハウジング内の第2の位置に保持された状態を示す断面図である。
【
図7】ハウジングの基端部を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
一実施形態に係る穿刺器具は、医療用針であり、
図1~
図3は、一実施形態に係る医療用針100を示している。本実施形態の医療用針100は、ハブ101と、ハブ101の先端に取り付けられた針本体102と、ハブ101を収容するハウジング103と、ハブ101を基端側に付勢する付勢手段であるスプリング104とを有している。
【0021】
ハブ101は、
図4~
図6に示すように、先端側に設けられた第1の部分110と、第1の部分よりも基端側に設けられた第2の部分120とを含む。第1の部分110は、軸方向に貫通する、針本体102が挿入される針挿入孔111を有している。針挿入孔111の先端部には、針挿入孔111に挿入された針本体102を固定する接着剤142を充填する接着剤充填凹部111Aが設けられている。針挿入孔111の基端部には、針本体102が通過できない細径部111Bが設けられている。細径部111Bを設けることにより、針本体102を針挿入孔111に挿入した際に、針本体102が第1の部分110の基端側へ抜けないようにでき、組立が容易となる。
【0022】
第1の部分110の基端側には、他の部分よりも径が細い連結凸部112が設けられている。第2の部分120の先端側には、連結凸部112を受け入れる連結凹部122が設けられている。第1の部分110の連結凸部112が、第2の部分120の連結凹部122に挿入されて、第1の部分110と第2の部分120とは、一体に結合されている。
【0023】
第2の部分120の基端側には、チューブ151が接続されるチューブ接続部123が設けられている。第2の部分120のチューブ接続部123と連結凹部122との間は、第2の部分120を軸方向に貫通する液通路121により接続されている。このため、チューブ接続部123に接続されたチューブ151と、第1の部分110の針挿入孔111に挿入されて固定された針本体102とを連通させることができる。
【0024】
第2の部分120は、両側方に拡がるハブアーム125を有している。ハブアーム125は、ハブ101をハウジングに解除可能に係合させる係合部として機能する。ハブアーム125は、係合凸部126を有しており、係合凸部126をハウジング103に設けられたアーム係合孔133に挿入することにより、ハブ101をハウジング103に係合させて、ハブ101をハウジング103内の第1の位置に保持することができる。
【0025】
第2の部分120のハブアーム125よりも先端側には、ハブ側フランジ127が設けられている。第2の部分120のハブアーム125よりも先端側の部分は、ハブ側フランジ127を除いて、ハブアーム125よりも基端側の部分よりも外径が小さい。また、第1の部分110を連結凹部122に連結した場合、第1の部分110を含むハブ101におけるハブ側フランジ127よりも先端側の部分は、スプリング104の内径よりも小さいほぼ一定の外径を有する、スプリング保持部115を構成する。
【0026】
ハウジング103は、先端側に設けられ、ハブアーム125が通過できず、スプリング保持部115は通過できる小径部131と、小径部131よりも基端側に設けられ、ハブアーム125が通過できる拡幅部132とを有している。小径部131と拡幅部132との間には、ハブアーム125の係合凸部126が挿入されるアーム係合孔133が設けられている。ハウジング103の外面には、両側方に拡がるハウジングアーム135が設けられている。ハウジングアーム135の先端部には、ハウジングアーム135を内側方向に押圧した際に、アーム係合孔133に挿入される押圧凸部136が設けられている。押圧凸部136がアーム係合孔133に挿入されることにより、ハブアーム125の係合凸部126はアーム係合孔133から押し出され、ハブアーム125とハウジング103との係合が解除される。従って、ハウジングアーム135は、ハブアーム125の係合を解除する解除ボタンとして機能する。
【0027】
小径部131の先端には、ハウジング側フランジ139が設けられており、ハウジング側フランジ139とハブ側フランジ127との間にスプリング104を挟み込むことができる。スプリング104が挟み込まれた状態で、ハブアーム125の係合凸部126をアーム係合孔133に挿入して係合させることにより、ハブ101は、スプリング104により基端側に付勢された状態で、
図2に示すハウジング103内の第1の位置に保持される。第1の位置において、針本体102は、ハウジング103の先端部から突出している。また、第1の位置において、ハブ101の基端は、ハウジング103の基端から基端側に突出している。
【0028】
ハウジングアーム135を内側に押圧することにより、ハブアーム125とハウジング103との係合が解除され、スプリング104の付勢力が開放される。これにより、ハブ101は、
図3に示す基端側の第2の位置へ移動する。第2の位置において、針本体102は、ハウジング103内に収容される。
【0029】
本実施形態のような形態の場合、スプリング104によりハブ101に加えられる付勢力の影響を特に大きく受けるのは、スプリング104と当接するハブ側フランジ127と、ハウジング103と係合するハブアーム125である。少なくともこれらの部分は、付勢力による変形及び破損を防ぐために、高い強度が求められる。特に、一端に自由端を有し、他端に固定端を有する可撓片形状であるハブアーム125はバネ付勢による負荷が常時かかるため、負荷による変形が懸念される。負荷により変形が生じた場合、意図せず付勢状態を開放してしまうといった問題が生じる。一方、ハブ側フランジ127よりも先端側の部分には、スプリング104による付勢力の影響をほとんど受けないため、ハブ側フランジ127及びハブアーム125と同等の強度を必要としない。一方、針挿入孔111の部分は、針本体102をまっすぐに固定できるようにハブ101の他の部分よりも高い成形精度が求められる。
【0030】
本実施形態のハブ101は、針挿入孔111を含む第1の部分110と、ハブ側フランジ127及びハブアーム125を含む第2の部分120とが結合されて一体となっている。このため、第1の部分110を高い成形精度を実現できる第1の樹脂により成形し、第2の部分120を高い強度を実現できる第2の樹脂により成形することができる。これにより、必要とする強度と成形精度とを両立させたハブを容易に実現することができる。また、針本体102の太さ及び長さに合わせて針挿入孔111の内径が異なる複数種類の第1の部分110を形成すれば、第2の部分120は共通にすることもできるので、製造コスト及び生産管理の面からの利点もある。
【0031】
長期に亘るスプリング104による付勢力の影響を最も大きく受けるのは、ハブアーム125の部分である。また、高い成形精度が求められるのは、針本体102を固定する針挿入孔111の部分である。このため、少なくとも針挿入孔111が設けられた部分を第1の部分110とし、少なくともハブアーム125が設けられた部分を第2の部分120とすればよい。ハブ側フランジ127にも大きな力が加わるため、ハブ側フランジ127を設ける場合には、ハブ側フランジ127が設けられた部分も第2の部分120とすることが好ましい。但し、ハブ側フランジ127は、必要に応じて設ければよく、ハブアーム125とハブ側フランジ127とを一体として、ハブアーム125の付け根の部分が、スプリング104と当接する構成とすることもできる。また、針挿入孔111の部分とハブ側フランジ127とハブアーム125とをそれぞれ別の部材としてもよい。
【0032】
本実施形態は、第1の部分110に設けられた連結凸部112が、第2の部分120に設けられた連結凹部122に内嵌する構成とした。このような構成とすることにより第1の部分110と第2の部分120との連結部の強度を確保しつつ、第1の部分110と第2の部分120との連結部に拡径部が生じないようにすることが容易となる。第1の部分110と第2の部分120との連結部に拡径部が生じないようにして、スプリング保持部115を定径のストレート部分とすることにより、スプリング104の取り付けが容易となる。また、スプリング保持部115を収容するハウジング103の小径部131の外径を小さくすることもできる。ハウジング103の先端部の外径を小さくすれば穿刺操作の際に邪魔にならず、医療用針の操作性が向上する。
【0033】
なお、第1の部分110の基端部が第2の部分120の先端部に外嵌する構成とすることもできる。また、第1の部分110と第2の部分120との連結部に拡径部が生じるような連結機構であってもかまわない。さらに、第1の部分110の基端部と第2の部分120の先端部とが別の連結部材を介して連結される構成とすることもできる。
【0034】
第1の部分110と第2の部分120とを連結して一体に結合する方法は特に限定されないが、例えば、予め第1の部分110を成形した後、第2の部分120を成形して一体化するインサート成形中でも二色成形と呼ばれる手法を用いることができる。また、第1の部分110と第2の部分120とを別個に形成した後、接着剤により結合したり、熱又は超音波等による溶着により結合したりすることもできる。中でもインサート成形は、ハブ101の成形が容易となると共に、第1の部分110と第2の部分120との結合部の信頼性も高くできるので好ましい。
【0035】
本実施形態において、ハブが2つの部分から形成されている例を示したが、3つ以上の部分により形成することもできる。
【0036】
本実施形態の医療用針100は、ハウジング103の先端部に設けられた小径部131に取り付けられたウイング141を有している。小径部131から両側方に拡がるウイング141を設けることにより、医療用針100を患者の皮膚の上に安定して固定することが可能となる。ウイング141は、手で折り曲げることができるような軟質の樹脂により形成することが好ましい。具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂又はシリコーン樹脂等により形成することができる。ウイング141は必要に応じて設ければよく、設けなくてもよい。
【0037】
本実施形態において、ハウジング103の拡幅部132と、ウイング141とは一致して横方向に拡がっており、ハブアーム125及びハウジングアーム135もウイング141と一致した横方向に拡がっている。これにより、医療用針100を患者の皮膚の上に固定した際に、医療用針100の高さを低く抑えることができ、医療用針100の操作性及び安定性が向上する。但し、ハブアーム125は別の方向に広がっていてもよいし、ハブアームの数が一つであってもよい。
【0038】
本実施形態において、ハブ101とハウジング103との係合を解除する解除ボタンとしてハウジングアーム135を設ける例を示したが、ハブ101とハウジング103との係合を解除できれば、他の構成を採用することもできる。例えば、ハブアーム125を直接押圧するようにしてもよい。
【0039】
本実施形態において、ハブアーム125に設けられた係合凸部126が、アーム係合孔133に挿入されることにより、ハブ101がハウジング103と係合して、第1の位置に保持される例を示した。しかし、ハブ101とハウジング103とを解除可能に係合させることができれば、他の構成を採用することもできる。また、ハブアーム125は先端側に向かって延びる形状としたが、ハブアーム125は基端側に向かって延びる形状とすることもできる。
【0040】
本実施形態において、ハウジング103の基端側には、ハブ101を第2の位置に保持するための基端側保持孔138が設けられている。基端側保持孔138は、ハウジング103の基端部におけるハブアーム125が拡がる方向と交差する両側面に設けられている。ハブ101が第2の位置に移動すると、ハブアーム125の係合凸部126が、基端側保持孔138に挿入された状態となり、ハブ101は前後方向にそれ以上移動しない。基端側保持孔138を設けることにより、ハブ101がハウジング103から抜け落ちてしまわないようにすることができ、安全性をさらに向上させることができる。
【0041】
図7に示すように、本実施形態において、ハウジング103の基端には切欠137が設けられている。切欠137は、基端側保持孔138が設けられた基端部の両側面を残すように、ハウジング103のハブアーム125が拡がる幅方向に沿った両面が切り欠かれて形成されている。このため、切欠137の部分において、ハウジング103内の第1の位置に保持されたハブ101の基端部を、ハブアーム125が拡がる幅方向と交差する縦方向から把持することができる。
【0042】
ハブ101にチューブ151が接続された状態で、ハブ101をハウジング103に挿入して組み付けることは非常に困難である。このため、通常はハブ101をハウジング103に組み付けた後で、チューブ151をハブ101の基端に設けられたチューブ接続部123に接続する。チューブ151をチューブ接続部123に接続する際に、ハブ101がしっかりと固定されていないと、軸がぶれてしまいチューブ151を接続できないおそれがある。
【0043】
本実施形態においては、第1の位置に保持されたハブ101の基端部を切欠137において自動組立機が把持するようにできる。このため、チューブ151をチューブ接続部123に接続する際にハブ101が軸ぶれを起こさないようにしっかりと位置を固定することができ、生産性を向上させることができる。
【0044】
チューブ151とチューブ接続部123とは、チューブ151が外れないように溶着又は接着される。この際にチューブ151に塗布された溶剤又は接着剤がハブ101とハウジング103との間に付着すると、ハブ101とハウジング103とが溶着又は接着されてしまい、不良品が発生してしまう。ハウジング103の基端に切欠137が設けられていることにより、チューブに塗布された接着剤等がハウジングに接触してしまう事態を低減することができる。また、本実施形態においては、第1の位置においてハブ101の基端はハウジングの基端よりも基端側に突出している。このため、チューブ151をチューブ接続部123に接続する際に、溶剤又は接着剤がハブ101とハウジング103との間に付着する可能性を非常に小さくすることができる。切欠137を設けるだけ又はハブ101を基端側へ突出させるだけでも接着剤等の付着を生じにくくする効果が得られ、両方の構成を備える場合にはさらに効果を大きくできる。
【0045】
なお、強度が異なる複数の部分を一体化させたハブ101を用いる場合に限らず、ハウジング内に収容された状態のハブにチューブを接続して組み立てる種々の穿刺器具において、ハウジングに切欠を設ける構成及びハブの基端をハウジングから突出させる構成は有用である。
【0046】
第1の位置においてハブ101のハウジング103から突出する部分の長さを十分に長くすれば、切欠137を設けなくても、チューブ151をチューブ接続部123に接続する際に、ハブ101を把持することができる。しかし、切欠137を設ける構成の方が、ハブ101の長さを短くすることができる。また、ハブ101が第2の位置に保持された際にハブアーム125がハウジング103から露出する部分を小さくできる。このため、ハブアーム125に指等が触れて、係合凸部126と基端側保持孔138との係合が意図せずに解除される事態を生じにくくできる。また、本実施形態においては、切欠137の幅wを小さくし、ハウジング103の基端側保持孔138が設けられた部分に幅方向に沿った面が残存するようにしている。このため、基端側保持孔138と係合したハブアーム125の露出部分をさらに小さくでき、意図しない係合の解除がより生じにくくなっている。
【0047】
スプリング104は、金属製の圧縮コイルばねとすることができるが、樹脂製とすることもできる。また、スプリング104に限らずハブ101を付勢できればよく、付勢手段として板バネやゴム等を用いることもできる。
【0048】
ハウジング103は、通常用いられている、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、又は塩化ビニル樹脂等により形成することができる。針本体102は、ステンレス等からなる金属針とすることができる。針本体102の太さや長さは特に限定されないが、針本体102が23Gよりもゲージ数が大きい細い針の場合には、付勢力によるハブ101の変形が生じやすくなるため、本開示の構成は特に有用である。
【0049】
チューブ151は、塩化ビニル樹脂又はウレタン樹脂等からなる通常の医療用チューブとすることができる。チューブ151は、チューブ接続部123に接着又は融着等して取り付けることができる。本実施形態においては。チューブ接続部123をチューブ151が内嵌する形状としたが、チューブ151が外嵌する形状とすることもできる。
【0050】
本実施形態において、強度が異なる複数の部分を連結して一体に結合したハブは、基端部にチューブが直接取り付けられた医療用針に限らず、基端部にルアーコネクタ等が設けられた構成の医療用針においても有用である。また、医療用針に限らず、鋭利な針先が固定されたハブが付勢力によりハウジング内に収容される種々の穿刺器具において有用であり、例えば微量の血液の採取に用いるランセット等を同様の構成とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本開示の穿刺器具は、生産性が高く有用である。
【符号の説明】
【0052】
100 医療用針
101 ハブ
102 針本体
103 ハウジング
104 スプリング
110 第1の部分
111 針挿入孔
111A 接着剤充填凹部
111B 細径部
112 連結凸部
115 スプリング保持部
120 第2の部分
121 液通路
122 連結凹部
123 チューブ接続部
125 ハブアーム
126 係合凸部
127 ハブ側フランジ
131 小径部
132 拡幅部
133 アーム係合孔
135 ハウジングアーム
136 押圧凸部
137 切欠
138 基端側保持孔
139 ハウジング側フランジ
141 ウイング
142 接着剤
151 チューブ