(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107325
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】ロープフック
(51)【国際特許分類】
B60P 7/06 20060101AFI20220713BHJP
B62D 33/023 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
B60P7/06 B
B62D33/023 E
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002199
(22)【出願日】2021-01-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000192914
【氏名又は名称】株式会社神菱
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】清原 敦
(72)【発明者】
【氏名】黒川 勝也
(72)【発明者】
【氏名】二星 勲生
(57)【要約】
【課題】フック部の高い接合強度を実現できるロープフックを提供することを課題とする。
【解決手段】ロープフックは、フック部とプレート部とを備えており、フック部はフック本体部と嵌合雄部とを有し、プレート部は嵌合雌部を有している。嵌合雌部は中央部とその外周に形成された延伸部を有し、嵌合雄部は嵌合雌部と嵌合し、嵌合雌部に固定される。また、嵌合雄部は、カシメのリベット部として機能し、嵌合雄部と嵌合雌部とがカシメ固定される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フック部とプレート部とを備え、
前記フック部はフック本体部と嵌合雄部とを有し、
前記プレート部は嵌合雌部を有し、
前記嵌合雌部は、中心部と前記中心部の外周に部分的に延伸して形成された延伸部を有し、
前記嵌合雄部は、前記嵌合雌部と嵌合して前記中心部及び前記延伸部を含む前記嵌合雌部と一体化して固定されることを特徴とするロープフック。
【請求項2】
前記嵌合雄部は、前記嵌合雌部と同一形状であることを特徴とする請求項1記載のロープフック。
【請求項3】
前記嵌合雄部が前記嵌合雌部にカシメ固定されることを特徴とする請求項1又は2記載のロープフック。
【請求項4】
前記嵌合雄部と前記嵌合雌部とが熱カシメにより固定されることを特徴とする請求項3記載のロープフック。
【請求項5】
前記嵌合雄部と前記嵌合雌部とがローリングカシメにより固定されることを特徴とする請求項3記載のロープフック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロープフックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の荷台に載置した積載物をロープにより固定するため、車両の荷台の側壁部には、ロープを係止するためのロープフックが設けられている。
例えば、ロープフックは、円柱状の金属棒を90度湾曲させた鉤状のフック部が略平面状の支持板に接合された構造を有する。フック部は支持板に溶接固定され、支持板は荷台の側壁部にネジ又は溶接により強固に固定される。
文献1は、荷台のトップレールに、棒状のフック部を鉛直方向に直接取付るロープフックを開示する。
文献2は、保持台にフック部が固定されたロープフックを開示し、保持台を荷台のリアゲート(側壁部)に取り付けるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5-72567号公報
【特許文献2】実開平4-86587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロープが引っ掛けられるフック部には、積載時のロープの締め付けだけでなく、運搬時の加減速や揺れによっても大きな張力(テンション)が加えられる。そのため、フック部には、上方に引き上げる張力のほか、荷台の側壁に沿ってフック部を回転する方向の張力も加えられる。これらの複雑な張力に抗して高い接合強度で固定し耐久性を確保するために、従来は小さくかつ湾曲したフック部と支持板との接合部を溶接する必要があった。しかし、フック部の溶接作業は難しく、熟練の作業者による高度な溶接技術が必要とされていた。
【0005】
本発明の課題は、耐久性のよいロープフックを容易に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかるロープフックは、
フック部とプレート部とを備え、
前記フック部はフック本体部と嵌合雄部とを有し、
前記プレート部は嵌合雌部を有し、
前記嵌合雌部は、中心部と前記中心部の外周に部分的に延伸して形成された延伸部を有し、
前記嵌合雄部は、前記嵌合雌部と嵌合して前記中心部及び前記延伸部を含む前記嵌合雌部と一体化して固定されることを特徴とする。
【0007】
また、本発明にかかるロープフックは、
前記嵌合雄部は、前記嵌合雌部と同一形状であることを特徴とする。
【0008】
このように、嵌合雄部と嵌合する嵌合雌部を上記形状とすることにより、フック部を強固に固定することができる。そのため、ロープにより回転等を含むテンションに十分に耐え得る強固な接合強度を実現できる。
【0009】
また、本発明にかかるロープフックは、
前記嵌合雄部が前記嵌合雌部にカシメ固定されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかるロープフックは、
前記嵌合雄部と前記嵌合雌部とが熱カシメにより固定されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかるロープフックは、
前記嵌合雄部と前記嵌合雌部とがローリングカシメにより固定されることを特徴とする。
【0012】
このように、嵌合雄部はカシメのリベット部として機能するものであり、フック部とプレート部との固定が容易であり、組立の作業負担が軽減する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐久性のよいロープフックを容易に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(a)は、荷物Bを積載したトラック(車両)100を示す斜視図、
図1(b)は、ロープフック1が取り付けられた荷台101の側壁102の拡大斜視図であり、
図1(c)は、側壁102に取り付けられたロープフック1の正面図である。
【
図2】
図2(a)は、ロープフック1の構成部品を示す斜視図、
図2(b)、(c)はフック部2及びプレート部3の部分拡大図である。
【
図3】
図3は、組立後のロープフック1の外観を示す図であり、
図3(a)は正面図、
図3(b)は背面図、
図3(c)は、
図3(a)のA-A線における断面図、
図3(d)は側面図、
図3(e)は、
図3(d)のB-B線断面図である。
【
図4】
図4は、種々のプレート部3の嵌合雌部7の形状を示す平面図である。
【
図5】
図5は、
図4(c)に示される嵌合雌部7が、熱膨張により変形した形状を示す。
【
図6】
図6は、嵌合雌部7の変形例を示す平面図である。
【
図7】
図7(a)、(b)は、嵌合雌部7の他の変形例を示す斜視図であり、
図7(c)、(d)は、その平面図及び側面図であり、
図7(e)は、嵌合雌部7のさらなる変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は、いずれも本発明の要旨の認定において限定的な解釈を与えるものではない。また、同一又は同種の部材については同じ参照符号を付して、説明を省略することがある。
【0016】
(実施形態1)
図1(a)は、荷物Bを積載したトラック(車両)100を示す斜視図である。
荷物Bはトラック100の荷台101上に、ロープフック1に掛け回されたロープRにより固定される。
図1(a)に示すように、ロープフック1は、荷台101の周縁部に設けられた側壁102に取付られている。図示されるように、ロープフック1は、左右の側壁102に限定されず、背面部の側壁102にも取付可能である。
【0017】
図1(b)は、荷台101の側壁102の拡大斜視図であり、
図1(c)は、側壁102に取り付けられたロープフック1の正面図である。図示するように、ロープフック1は側壁102に固定され、取付られている。
【0018】
ロープフック1は、後述するように、鉤形状(L字形状)の棒状のフック本体部2aを有するフック部2と、フック部2を保持するプレート部(保持部)3を備えている。フック部2は、接合部4においてプレート部3と接合される。
【0019】
ロープフック1のプレート部3は、例えば複数の固定部Jにおいて、ネジ、カシメ(加締)又はスポット溶接等により側壁102に、強固に(不動に)固定することができる。なお、「カシメ」とは、工具等で外力を加えることで強固に結合させることをいう。
なお、ロープフック1にロープRを掛ける際の妨げとならないよう、固定部Jは突出することなく平坦であることが好ましい。そのため、好適にはスポット溶接により、ロープフック1を側壁102に固定する。
【0020】
フック本体部2aの断面は、例えば円形であり、円柱状の棒を有限の角度、例えば直角に屈曲した形状を有する。
【0021】
トラック100の荷台101に荷物Bを積載し、ロープRを用いて固定する場合、フック部2のフック本体部2aの任意の位置にロープRが掛け回され得る。
ロープRはフック本体部2aの周囲に掛け回され、荷物Bの締め付け作業時には、フック本体部2aの表面に接しながら摺るように移動するため、ロープRへの負担の低減のため、フック本体部2aは上記のように、一般的には断面が円形である。
ただし、フック本体部2aの断面は円形に限定するものではなく、楕円や面取りを施した矩形であってもよい。また、フック本体部2aは、例えば屈曲部近傍とその他の位置とで、形状を変化させてもよい。
【0022】
ロープRによりフック部2に加えられる張力は、荷物Bの固定作業(ロープ掛け作業)中だけでなく、走行中においても、加速や減速、振動等によっても発生する。また、その張力は、フック部2を上方に引き上げる方向だけでなく、
図1中の矢印Fに示すように、トラック100の前後方向(前進後退方向)にも働く。
従って、フック部2のアーム部(腕部)であるフック本体部2aに引っ掛けられたロープRから力が加えられると、(
図1(c)に示すように)接合部4においてフック部2を回転する方向に力(回転力)Tが加えられる場合がある。この場合、フック部2は、接合部4において、プレート部3に対して回転する方向にテンションが加わることになる。
【0023】
プレート部3は、複数の固定部Jにおいて側壁102に固定されるため、回転力Tに対して高い抵抗力を容易に得ることができる。一方、フック部2は、フック本体2aの根元の接合部4において、プレート部3に一箇所で固定されるため、回転力Tに対して高い抵抗力を実現することは容易ではない。
【0024】
図2は、非限定的なロープフック1の例を示す。
図2(a)は、ロープフック1の構成部品を示す斜視図である。なお、
図2(a)は、各構成部品の分解図であり、
図2(b)、(c)はフック部2及びプレート部3の部分拡大図である。
図3は、組立後のロープフック1の外観を示す図であり、
図3(a)は正面図、
図3(b)は背面図、
図3(c)は、
図3(a)のA-A線における断面図、
図3(d)は側面図、
図3(e)は
図3(d)のB-B線断面図である。
【0025】
ロープフック1は、例えば、鉄やステンレス等の金属(合金)製であり、フック部2及びプレート部3を構成部材として備える。
フック部2は、フック本体部2aと、その端部に設けられた嵌合雄部(根部)6とを備える。
【0026】
嵌合雄部6は嵌合雌部7にカシメ固定可能であり、嵌合雄部6はカシメのリベット部として機能する。ロープフック1が組み立てられた状態では、嵌合雄部6はフック本体部2aのプレート部3側に設けられ、プレート部3の接合部4を構成することになる。
嵌合雄部6がリベット部として機能するとは、嵌合雄部6が塑性変形し嵌合雌部7と嵌合されることを意味し、嵌合雄部6がリベットの構成要素であることを意味し、リベットの胴部(軸部)に相当する。
【0027】
図2に示すように、嵌合雌部7の断面形状は、ギヤ形状(歯車形状)をなす。嵌合雄部6は嵌合雌部7に嵌合するように構成されている。
【0028】
図2(b)は、嵌合雄部6の形状の例を示す部分拡大図であり、プレート部3に面する側から見た平面図である。
図2(c)は、嵌合雌部7の形状の例を示す部分拡大図であり、
図2(b)の嵌合雄部6に対応する嵌合雌部7の形状を示す。
嵌合雌部7は中心部7a(中心貫通部)と中心部の外周に部分的に延伸して形成された延伸部7b(延伸凹部)を有する。嵌合雄部6は嵌合雌部7と嵌合可能な形状である。
図2(b)に示すように嵌合雄部6の断面形状は、嵌合雌部7の中心部7aに挿通可能な形状であり、例えば円形状である。嵌合雄部6の断面形状を円形状とした場合、嵌合雄部6を備えたフック部2の製造を容易にすることができる。
なお、嵌合雌部7の延伸部7bはプレート部3の本体に対しては相対的に凹むことになり、凹形状となり、プレート部3の凹部として形成される。
【0029】
このように、嵌合雌部7の形状(断面形状)は、中心部7a(例えば凸集合である円形状)から突出する延伸部7bを有する形状であり、非凸集合である。嵌合雄部6は、嵌合雌部7と嵌合可能な形状であり、好適には円形状に構成される。
ここで、「非凸集合」及び「凸集合」は、学術用語であり正確な定義の説明は割愛するが、「非凸集合」とは、例えばギヤ形状、星形や勾玉の様に、一部が突出又は凹んだ形状を一般的に表す数学用語である。これに対して、正方形、円は、ともに凸集合であり、後述するように、熱膨張により正方形は円形に近づくが、非凸集合のように凸部又は凹部を有する形状は、熱膨張により円形に近づく可能性は限りなく小さい。
【0030】
図2(c)に示す例においては、嵌合雌部7は円形の中心部7aと、中心部7aから外方に伸びるように、中心部7aの外周に形成された複数の延伸部7bとを有する。放射状に伸びる延伸部7bは、例えば、扇形の一部により構成されており、延伸部7bの内周側より外周側の方が周辺長が長い。
一方、上述のように、嵌合雌部7と嵌合する嵌合雄部6は、嵌合雌部7の中心部7aと同様に円形であり、嵌合雄部6の中心部7aに挿通可能である。
すなわち、嵌合雄部6は嵌合雌部7の中心部7aに挿通し、嵌合雄部6の外壁面が中心部7aの内壁面と接するよう構成されている。
【0031】
なお、後述するように、延伸部7bの形状は扇形の一部に限定するものではなく矩形であってもよく、また、中央部7aは円形に限定するものではない。
【0032】
なお、嵌合雄部6の形状は、嵌合雌部7に挿通され嵌合可能であれば、嵌合雌部7の中心部7aと同一形状(円形)に限定されるものではなく、例えば、中心部7aの周りに延伸部7bを含む形状(嵌合雌部7と嵌合する形状)であってもよい。嵌合雄部6の形状を嵌合雌部7と嵌合する形状とした場合、カシメ工程の際に、嵌合雄部6の回転が制限されるため、プレート部3とフック部2との位置関係を確定することが容易となる。
【0033】
図2(c)では、4つの延伸部7bを備えた構成を示すが、これに限定するものではない。1以上の延伸部7b、例えば3つの延伸部7bを備えてもよい。嵌合雄部6を嵌合雌部7に均等の力で加締められるよう、好適には、4つの延伸部延伸部7bは等角度間隔に配置され得る。
【0034】
なお、フック部2、プレート部3は既知の金属加工技術を用いて製造することができる。特徴的な形状を有するプレート部3についても、例えば金属製板をプレス加工し、嵌合雌部7を削り加工し開口することで製造できる。
【0035】
フック部2の嵌合雄部6は、プレート3の嵌合雌部7に挿入し、熱カシメにより固定される。この熱カシメの工程において、フック部2の嵌合雄部6の端部は、プレート3の嵌合雌部7を介して電極により機械的に加圧される。さらに電極から電流を流されることにより電気抵抗によるジュール熱を発生させ加熱され、嵌合雄部6が嵌合雌部7の形状に合致するように塑性変形し、加締られることができる。2つの電極により嵌合雄部6を挟み込むようにして電流を流すことで、主に嵌合雄部6に集中して電流を流すことができ、主に嵌合雄部6からジュール熱を発生させることができる。
【0036】
すなわち、リベット部である嵌合雄部6は、加圧と加熱の効果により、嵌合雌部7の径方向外側へと広がるように塑性変形され(又、部分的には溶着の効果も得られ)、その結果、フック部2とプレート部3とが接合され、接合部4において互いに強固に固定される。
【0037】
なお、フック部2をプレート部3に固定するために、嵌合雄部6を塑性変形するカシメ工程において、特に熱カシメを好適に使用できるが熱カシメに限定されず、ローリングカシメ等のカシメ技術を用いてもよい。
【0038】
例えば、
図2(b)に示す例においては、嵌合雄部6が円形であり、ローリングカシメの使用にも適している。この場合、嵌合雄部6を嵌合雌部7に挿通させ、その先端を回転するカシメ具により直接押圧し、外向きに塑性変形させてもよい。
【0039】
図3(a)、(b)に示すように、嵌合雄部6の両側において嵌合雄部6が塑性変形し、円板形状の第1の係止部(フランジ部)5及び第2の係止部(フランジ部)8が形成される。第1の係止部5及び第2の係止部8は、嵌合雌部7及び嵌合雄部6(接合部4)を覆うように形成される。
図3(c)、(d)に示すように、接合部4において、第1の係止部5及び第2の係止部8とによりプレート3が挟み込まれるように固定される。
【0040】
なお、フック本体部2aに予めフランジ部として第2の係止部8を設けてもよい。フック本体部2aの固定位置を確定することができる。
【0041】
なお、
図3(c)に示すように、プレート部3は第1の係止部5を収容することができる凹部9を有してもよい。凹部9の深さDは、第1の係止部5の肉厚t以上に設定される。そのため、第1の係止部5が、プレート部3の表面Sから突出するを防止することができ、第1の係止部5が、プレート部3と荷台の側壁102との固定を阻害することが防止される。
【0042】
図3(e)は、カシメにより塑性変形した嵌合雄部6の断面形状を示す。嵌合雌部7の内側壁面に沿って嵌合雄部6が塑性変形し、嵌合雄部6は、中心部6a(中心突出部)と延伸部6b(延伸凸部)とを有する形状となる。すなわち、嵌合雄部6は嵌合雌部7の全体と一体化し、嵌合雄部6の断面形状は嵌合雌部7の断面形状と同一形状となる。
【0043】
図4は、種々のプレート部3の嵌合雌部7の形状を示す平面図である。
図4(a)は嵌合雌部7がギヤ形状、
図4(b)は嵌合雌部7が円形状、
図4(c)は嵌合雌部7が矩形状(正方形)の例を示す。
図4(a)に示す例は、
図2(a)、(c)に示す例と同じである。
【0044】
図1(c)に示すように、ロープRからの張力Fにより、ロープフック1のフック部2の根元である接合部4(嵌合雄部6)には回転力Tが付加されることがある。
図4(a)に示す例においては、嵌合雌部7がギヤ形状であり、カシメにより塑性変形した嵌合雄部6は嵌合雌部7と互いに噛み合うように固定され、嵌合雄部6と嵌合雌部7とは幾何学的に相対的な回転が不可能な形状となる。
そのため、回転力Tが付加されても、嵌合雄部6の回転が効果的に阻害され、回転力Tに対する抵抗力が高い。
その結果、フック部2とプレート部3とをカシメにより強固に固定することができ、ロープRの張力に対して十分な耐久力を得ることができる。
【0045】
一方、
図4(b)に示す例においては、嵌合雌部7は通常のリベットと同様に円形であり、嵌合雄部6も嵌合雌部7に対応して円形であるため、嵌合雄部6と嵌合雌部7とは幾何学的には相対的に回転可能な形状である。そのため、回転力Tに対する抵抗力が低く、
図4(a)と比較して耐久性が劣る。
【0046】
図4(c)に示す例においては、嵌合雌部7は矩形であり、カシメにより嵌合雄部6が径外方向に塑性変形することで、嵌合雌部7に追随して矩形に塑性変形することが期待される。その結果、カシメ工程の後には、嵌合雄部6と嵌合雌部7とは幾何学的には相対的に回転不可能な形状となり、
図4(b)に示す例と比較して、回転力Tに対する抵抗力を高くすることができる。
【0047】
図5は、
図4(c)示す嵌合雌部7が、熱膨張により変形した形状を示す。
図5に示すように、カシメ工程で温度が上昇した場合、熱膨張により嵌合雌部7の形状が円形に近づく。その結果、フック部2をプレート部3に接合した状態では、接合部4の嵌合雄部6及び嵌合雌部7の形状(断面形状)は、円形に近い形状となり、熱膨張の影響は回転力Tに対する抵抗力を低減させる。従って、
図4(c)の形状から期待される回転力Tに対する抵抗力が十分に得られなくなる。
また、嵌合雄部6の形状を矩形にした場合も、カシメ工程における熱膨張により接合部4の嵌合雄部6及び嵌合雌部7の形状(断面形状)は、円形に近い形状となる。
【0048】
このように正方形のような正多角形が熱膨張すると、円形に近づく。しかし、円や正多角形の一部が突出、又は窪んだ形状(非凸集合)の場合、熱膨張しても円形に近づくことはない。
図4(a)に示す例においては、カシメ工程、特に熱カシメ工程における嵌合雌部7の熱膨張によっても、円形とならずギア形状を維持できるため、回転力Tに対して最も高い抵抗力を得ることができる。水平方向Fに対して要求強度を十分に満足することが確認された。
一方、
図4(c)に示す例は、
図4(b)に示す例と比較して回転力Tに対する抵抗は強化される。しかし、上記のようにカシメ工程において変形する場合があり、
図4(a)に示す例と比較すると回転力Tに対する抵抗は劣る。
【0049】
一般にカシメ固定は、溶接と比較して回転力に対しする抵抗力に乏しい。そのため、回転力が加えられるロープフック1のフック部2とプレート部3との固定には不向きであった。しかし、本発明のように嵌合雌部7と嵌合雄部6とを構成することにより、フック部2とプレート部3との固定にカシメ固定を採用できるようになり、さらに十分高い固定強度を実現できる。そのためロープフック1の製造工程において、フック部2とプレート部3とをカシメ固定可能とすることで、作業者の負担が軽減され、作業効率も向上する。
【0050】
(実施形態2)
嵌合雌部7の中心部7aと延伸部7bの形状は、
図2(c)に示す例に限定するものではない。
図6は、嵌合雌部7の形状の変形例を示す平面図である。
図6(a)の平面図は、円形の中心部7aの外周に設けられた延伸部7bの数が3、4、5であり、延伸部7bの形状が扇形の一部からなる形状(単に『扇形状』と称す。)又は矩形の一部からなる形状(単に『矩形状』と称す。)の例を示す。
このように、延伸部7bの形状が扇形状に限定するものではなく、例えば、矩形状であってもよい。換言すれば、
図6中の点線で示すように、嵌合雌部7の外周形状が円に接してもよく、矩形(正多角形)に接してもよい。また、延伸部7bの数は4に限定するものではない。
また、複数の延伸部7bを、扇形状の延伸部7bと、矩形状の延伸部7bとの組み合わせから構成されてもよい。
【0051】
なお、対応する嵌合雄部6の形状は、嵌合雌部7の中心部7aと同一形状又は円形状としてもよい。カシメ工程において嵌合雄部6が塑性変形し、嵌合雌部7の中心部7a及び延伸部7bと嵌合することになる。
【0052】
なお、嵌合雄部6の形状を、中心部7aの外周に延伸部7bを有する嵌合雌部7と同一形状としてもよい。例えば、嵌合雄部6の延伸部6bは、扇形状又は矩形状であってもよく。また、嵌合雌部7の延伸部7bを扇形状とし、対応する嵌合雄部6の延伸部6bを扇形状又は矩形状としてもよい。ただし、嵌合雄部6を上記のように円形状とすることで、嵌合雄部6の製造コストを低減できる。
【0053】
また、中心部7aの形状は円形に限定するものではない。
図6(b)の平面図は、中心部7aの形状が円ではなく、矩形(好適には正多角形)であり、延伸部7bの形状が扇形の一部又は矩形の例を示す。すなわち、中心部7aの外周が矩形に接する形状であってもよい。
【0054】
さらに
図7に示すように、プレート部3の嵌合雌部7の形状を凹凸を有する形状としてもよい。
図7(a)は、フック本体部3a側から見たプレート部3の部分斜視図、
図7(b)は、第1の係止部5側(又は荷台101の側壁102側)から見たプレート部3の部分斜視図であり、
図7(c)は嵌合雌部7近傍の平面図であり、
図7(d)は嵌合雌部7近傍の側面図であり、
図7(e)はさらに変形されたプレート部3の拡大斜視図である。
図7に示すように、嵌合雌部7の中央部には中心貫通部71が設けられており、中心貫通部71の外周方向に伸びる箇所には、
図7(a)に示すように、プレート部3の嵌合雌部7の一方の側には、上記延伸部7bに相当する4つの延伸凹部72a及び延伸凸部73aが設けられている。また、
図7(b)に示すように、嵌合雌部7の他方の側には、上記延伸部7bに相当する4つの延伸凹部72b及び延伸凸部73bが設けられている。
延伸凹部72a、72bはプレート部3の表面より凹み、延伸凸部73a、73bはプレート部3の表面より突出している。延伸凹部72a、72b及び延伸凸部73a、73bは、例えばプレス加工により設けることができる。
【0055】
対応する嵌合雄部6の断面形状は中心貫通部71と同形に設定することができる。例えば、中心貫通部71が円形の場合、嵌合雄部6は、断面が円形の円柱状である。
カシメ工程において、嵌合雄部6は、プレート部3の嵌合雌部7の中心貫通部71に挿通され、その後嵌合雄部6は、加圧され塑性変形し、延伸凹部72a、72b、及び延伸凸部73a、73bに挟まれた空間に拡張し、フック本体部3aがプレート部3と嵌合し、接合される。
【0056】
なお、延伸凹部72a、72b及び延伸凸部73a、73bの数は、4に限定するものではなく例えば2、3等であってもよい。延伸凹部72a、72b及び延伸凸部73a、73bの形状は、扇形状あってもよく、矩形であってもよい。
【0057】
また、
図7(e)は嵌合雌部7の、更なる変形例を示す。
図7(e)に示すようにプレート部3の嵌合雌部7の一方の側に延伸凹部72cのみを設け他方の側に延伸凹部72cのみを設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係るロープフックは、従来よりも簡単な作業でフック部とプレート部と強固に接合固定することができる。荷台に限定されることなく、ロープを引っかけるフックが必要なあらゆる構造に適用でき、よって、産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0059】
1 ロープフック
2 フック部
2a フック本体部
3 プレート部(保持部)
4 接合部
5 第1の係止部(第1のフランジ部)
6 嵌合雄部(根部)
6a 中心部(中心突出部)
6b 延伸部(延伸突出部)
7 嵌合雌部(開口部)
7a 中心部(中心貫通部)
7b 延伸部(延伸凹部)
8 第2の係止部(第2のフランジ部)
9 凹部
71 中心貫通部
72 延伸凹部
73 延伸凸部
100 トラック(車両)
101 荷台
102 側壁
B 荷物
J 固定部
R ロープ
【手続補正書】
【提出日】2021-07-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台の側壁に固定して取り付けられるロープフック(1)であって、
円柱状の中実の金属棒を湾曲させたL字形状のフック部(2)と、前記フック部(2)が接合されたプレート部(3)とを備え、
前記プレート部(3)は、前記プレート部(3)と前記フック部(2)との接合部(4)に深さDの凹部が形成され、
前記接合部(4)において、円形の中心部(7a)から放射状に伸びる延伸部(7b)を有する嵌合雌部(7)に、前記フック部(2)の一端である中実な嵌合雄部(6)が塑性変形することで一体化して固定され、
前記嵌合雌部(7)における両側に前記嵌合雄部(6)の塑性変形により形成されたフランジ状の第1の係止部(5)及び第2の係止部(8)を有し、
前記第1の係止部(5)は、前記前記プレート部(3)の凹部に収容され、
前記第1の係止部(5)及び前記第2の係止部(8)は前記プレート部(3)を峡持し、
前記延伸部(7b)は、扇形の一部から構成され、前記延伸部(7b)の外周側の長さは前記中心部(7a)で切り取られた内周側の長さより長く、前記嵌合雌部(7)が全体としてギア形状であることを特徴とする、ロープフック(1)。
【請求項2】
前記凹部の深さDが、前記第1の係止部(5)の肉厚t以上であることを特徴とする請求項1記載のロープフック(1)。
【請求項3】
車両上に取り付け可能なロープフック(1)であって、
フック部(2)とプレート部(3)とを備え、
前記フック部(2)はL字形状の棒状のフック本体部(2a)と嵌合雄部(6)とを有し、
前記プレート部(3)は嵌合雌部(7)を有し、
前記嵌合雌部(7)の一方の側には延伸凹部(72a)及び延伸凸部(73a)が設けられていると共に前記嵌合雌部(7)の他方の側には延伸凹部(72b)及び延伸凸部(73b)が設けられ、
前記嵌合雄部(6)は、前記形状に塑性変形することにより前記嵌合雌部(7)と嵌合して前記中心部(7a)及び前記延伸部(7b)を含む前記嵌合雌部と一体化して固定されることを特徴とするロープフック(1)。
【請求項4】
前記一方の側に設けられた延伸凹部(72a)及び延伸凸部(73a)と、前記他方の側に設けられた延伸凹部(72b)及び延伸凸部(73b)とが、それぞれ相対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項3記載のロープフック(1)。
【請求項5】
前記嵌合雄部(6)は、前記嵌合雌部(7)と同一形状であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のロープフック。
【請求項6】
前記嵌合雄部(6)が前記嵌合雌部(7)にカシメ固定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項又は2記載のロープフック。
【請求項7】
前記嵌合雄部(6)と前記嵌合雌部(7)とが熱カシメにより固定されることを特徴とする請求項6記載のロープフック。
【請求項8】
前記嵌合雄部(6)と前記嵌合雌部(7)とがローリングカシメにより固定されることを特徴とする請求項6記載のロープフック。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロープフックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の荷台に載置した積載物をロープにより固定するため、車両の荷台の側壁部には、ロープを係止するためのロープフックが設けられている。
例えば、ロープフックは、円柱状の金属棒を90度湾曲させた鉤形状(L字形状)のフック部が略平面状の支持板に接合された構造を有する。フック部は支持板に溶接固定され、支持板は荷台の側壁部にネジ又は溶接により強固に固定される。
文献1は、荷台のトップレールに、棒状のフック部を鉛直方向に直接取付るロープフックを開示する。
文献2は、保持台にフック部が固定されたロープフックを開示し、保持台を荷台のリアゲート(側壁部)に取り付けるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5-72567号公報
【特許文献2】実開平4-86587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロープが引っ掛けられるフック部には、積載時のロープの締め付けだけでなく、運搬時の加減速や揺れによっても大きな張力(テンション)が加えられる。そのため、フック部には、上方に引き上げる張力のほか、荷台の側壁に沿ってフック部を回転する方向の張力も加えられる。これらの複雑な張力に抗して高い接合強度で固定し耐久性を確保するために、従来は小さくかつ湾曲したフック部と支持板との接合部を溶接する必要があった。しかし、フック部の溶接作業は難しく、熟練の作業者による高度な溶接技術が必要とされていた。
【0005】
本発明の課題は、耐久性のよいロープフックを容易に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかるロープフックの一態様は、
荷台の側壁に固定して取り付けられるロープフック(1)であって、
円柱状の中実の金属棒を湾曲させたL字形状のフック部(2)と、前記フック部(2)が接合されたプレート部(3)とを備え、
前記プレート部(3)は、前記プレート部(3)と前記フック部(2)との接合部(4)に深さDの凹部が形成され、
前記接合部(4)において、円形の中心部(7a)から放射状に伸びる延伸部(7b)を有する嵌合雌部(7)に、前記フック部(2)の一端である中実な嵌合雄部(6)が塑性変形することで一体化して固定され、
前記嵌合雌部(7)における両側に前記嵌合雄部(6)の塑性変形により形成されたフランジ状の第1の係止部(5)及び第2の係止部(8)を有し、
前記第1の係止部(5)は、前記前記プレート部(3)の凹部に収容され、
前記第1の係止部(5)及び前記第2の係止部(8)は前記プレート部(3)を峡持し、
前記延伸部(7b)は、扇形の一部から構成され、前記延伸部(7b)の外周側の長さは前記中心部(7a)で切り取られた内周側の長さより長く、前記嵌合雌部(7)が全体としてギア形状であることを特徴とする。
上記構成によれば、棒状(円柱状)のフック部を塑性変形する際に変形時の加圧で穴が膨張してもフックへの水平方向への荷重に耐えうる形状(ギア形状)であるためにロープにより回転等を含むテンションが加わっても十分に耐え得る強固な接合強度を従来よりも簡単な作業で容易に実現することができる。
【0007】
また、本発明にかかるロープフックは、
前記凹部の深さDが、前記第1の係止部(5)の肉厚t以上であることを特徴とする。
【0008】
このように、前記凹部の深さDが、第1の係止部5の肉厚t以上であることで第1の係止部5が、プレート部3の表面Sから突出することを防止することができ、第1の係止部5が、プレート部3と荷台の側壁102との固定を阻害することが防止される。
【0009】
本発明にかかるロープフックの別の態様は、
車両上に取り付け可能なロープフック(1)であって、
フック部(2)とプレート部(3)とを備え、
前記フック部(2)はL字形状の棒状のフック本体部(2a)と嵌合雄部(6)とを有し、
前記プレート部(3)は嵌合雌部(7)を有し、
前記嵌合雌部(7)の一方の側には延伸凹部(72a)及び延伸凸部(73a)が設けられていると共に前記嵌合雌部(7)の他方の側には延伸凹部(72b)及び延伸凸部(73b)が設けられ、
前記嵌合雄部(6)は、前記形状に塑性変形することにより前記嵌合雌部(7)と嵌合して前記中心部(7a)及び前記延伸部(7b)を含む前記嵌合雌部と一体化して固定されることを特徴とする。
上記構成において、前記一方の側に設けられた延伸凹部(72a)及び延伸凸部(73a)と、前記他方の側に設けられた延伸凹部(72b)及び延伸凸部(73b)とが、それぞれ相対向する位置に設けられていてもよい。
【0010】
また、本発明にかかる上記いずれかの構成のロープフックは、前記嵌合雄部が前記嵌合雌部にカシメ固定されることを特徴とする。また、本発明にかかるロープフックは、前記嵌合雄部と前記嵌合雌部とが熱カシメにより固定されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる上記いずれかの構成のロープフックは、前記嵌合雄部と前記嵌合雌部とがローリングカシメにより固定されることを特徴とする。
【0012】
このように、嵌合雄部はカシメのリベット部として機能するものであり、フック部とプレート部との固定が容易であり、組立の作業負担が軽減する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐久性のよいロープフックを容易に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(a)は、荷物Bを積載したトラック(車両)100を示す斜視図、
図1(b)は、ロープフック1が取り付けられた荷台101の側壁102の拡大斜視図であり、
図1(c)は、側壁102に取り付けられたロープフック1の正面図である。
【
図2】
図2(a)は、ロープフック1の構成部品を示す斜視図、
図2(b)、(c)はフック部2及びプレート部3の部分拡大図である。
【
図3】
図3は、組立後のロープフック1の外観を示す図であり、
図3(a)は正面図、
図3(b)は背面図、
図3(c)は、
図3(a)のA-A線における断面図、
図3(d)は側面図、
図3(e)は、
図3(d)のB-B線断面図である。
【
図4】
図4は、種々のプレート部3の嵌合雌部7の形状を示す平面図である。
【
図5】
図5は、
図4(c)に示される嵌合雌部7が、熱膨張により変形した形状を示す。
【
図6】
図6は、嵌合雌部7の変形例を示す平面図である。
【
図7】
図7(a)、(b)は、嵌合雌部7の他の変形例を示す斜視図であり、
図7(c)、(d)は、その平面図及び側面図であり、
図7(e)は、嵌合雌部7のさらなる変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は、いずれも本発明の要旨の認定において限定的な解釈を与えるものではない。また、同一又は同種の部材については同じ参照符号を付して、説明を省略することがある。
【0016】
(実施形態1)
図1(a)は、荷物Bを積載したトラック(車両)100を示す斜視図である。
荷物Bはトラック100の荷台101上に、ロープフック1に掛け回されたロープRにより固定される。
図1(a)に示すように、ロープフック1は、荷台101の周縁部に設けられた側壁102に取付られている。図示されるように、ロープフック1は、左右の側壁102に限定されず、背面部の側壁102にも取付可能である。
【0017】
図1(b)は、荷台101の側壁102の拡大斜視図であり、
図1(c)は、側壁102に取り付けられたロープフック1の正面図である。図示するように、ロープフック1は側壁102に固定され、取付られている。
【0018】
ロープフック1は、後述するように、鉤形状(L字形状)の棒状のフック本体部2aを有するフック部2と、フック部2を保持するプレート部(保持部)3を備えている。フック部2は、接合部4においてプレート部3と接合される。
【0019】
ロープフック1のプレート部3は、例えば複数の固定部Jにおいて、ネジ、カシメ(加締)又はスポット溶接等により側壁102に、強固に(不動に)固定することができる。なお、「カシメ」とは、工具等で外力を加えることで強固に結合させることをいう。
なお、ロープフック1にロープRを掛ける際の妨げとならないよう、固定部Jは突出することなく平坦であることが好ましい。そのため、好適にはスポット溶接により、ロープフック1を側壁102に固定する。
【0020】
フック本体部2aの断面は、例えば円形であり、円柱状の棒を有限の角度、例えば直角に屈曲した形状を有する。
【0021】
トラック100の荷台101に荷物Bを積載し、ロープRを用いて固定する場合、フック部2のフック本体部2aの任意の位置にロープRが掛け回され得る。
ロープRはフック本体部2aの周囲に掛け回され、荷物Bの締め付け作業時には、フック本体部2aの表面に接しながら摺るように移動するため、ロープRへの負担の低減のため、フック本体部2aは上記のように、一般的には断面が円形である。
ただし、フック本体部2aの断面は円形に限定するものではなく、楕円や面取りを施した矩形であってもよい。また、フック本体部2aは、例えば屈曲部近傍とその他の位置とで、形状を変化させてもよい。
【0022】
ロープRによりフック部2に加えられる張力は、荷物Bの固定作業(ロープ掛け作業)中だけでなく、走行中においても、加速や減速、振動等によっても発生する。また、その張力は、フック部2を上方に引き上げる方向だけでなく、
図1中の矢印Fに示すように、トラック100の前後方向(前進後退方向)にも働く。
従って、フック部2のアーム部(腕部)であるフック本体部2aに引っ掛けられたロープRから力が加えられると、(
図1(c)に示すように)接合部4においてフック部2を回転する方向に力(回転力)Tが加えられる場合がある。この場合、フック部2は、接合部4において、プレート部3に対して回転する方向にテンションが加わることになる。
【0023】
プレート部3は、複数の固定部Jにおいて側壁102に固定されるため、回転力Tに対して高い抵抗力を容易に得ることができる。一方、フック部2は、フック本体2aの根元の接合部4において、プレート部3に一箇所で固定されるため、回転力Tに対して高い抵抗力を実現することは容易ではない。
【0024】
図2は、非限定的なロープフック1の例を示す。
図2(a)は、ロープフック1の構成部品を示す斜視図である。なお、
図2(a)は、各構成部品の分解図であり、
図2(b)、(c)はフック部2及びプレート部3の部分拡大図である。
図3は、組立後のロープフック1の外観を示す図であり、
図3(a)は正面図、
図3(b)は背面図、
図3(c)は、
図3(a)のA-A線における断面図、
図3(d)は側面図、
図3(e)は
図3(d)のB-B線断面図である。
【0025】
ロープフック1は、例えば、鉄やステンレス等の金属(合金)製であり、フック部2及びプレート部3を構成部材として備える。
フック部2は、フック本体部2aと、その端部に設けられた嵌合雄部(根部)6とを備える。
【0026】
嵌合雄部6は嵌合雌部7にカシメ固定可能であり、嵌合雄部6はカシメのリベット部として機能する。ロープフック1が組み立てられた状態では、嵌合雄部6はフック本体部2aのプレート部3側に設けられ、プレート部3の接合部4を構成することになる。
嵌合雄部6がリベット部として機能するとは、嵌合雄部6が塑性変形し嵌合雌部7と嵌合されることを意味し、嵌合雄部6がリベットの構成要素であることを意味し、リベットの胴部(軸部)に相当する。
【0027】
図2に示すように、嵌合雌部7の断面形状は、
ギア形状(歯車形状)をなす。嵌合雄部6は嵌合雌部7に嵌合するように構成されている。
【0028】
図2(b)は、嵌合雄部6の形状の例を示す部分拡大図であり、プレート部3に面する側から見た平面図である。
図2(c)は、嵌合雌部7の形状の例を示す部分拡大図であり、
図2(b)の嵌合雄部6に対応する嵌合雌部7の形状を示す。
嵌合雌部7は中心部7a(中心貫通部)と中心部の外周に部分的に延伸して形成された延伸部7b(延伸凹部)を有する。嵌合雄部6は嵌合雌部7と嵌合可能な形状である。
図2(b)に示すように嵌合雄部6の断面形状は、嵌合雌部7の中心部7aに挿通可能な形状であり、例えば円形状である。嵌合雄部6の断面形状を円形状とした場合、嵌合雄部6を備えたフック部2の製造を容易にすることができる。
なお、嵌合雌部7の延伸部7bは
嵌合雌部の中心部7aと共にプレート部3の本体に対しては相対的に凹むことになり、凹形状となり、プレート部3の凹部として形成される。
【0029】
このように、嵌合雌部7の形状(断面形状)は、中心部7a(例えば凸集合である円形状)から突出する延伸部7bを有する形状であり、非凸集合である。嵌合雄部6は、嵌合雌部7と嵌合可能な形状であり、好適には円形状に構成される。
ここで、「非凸集合」及び「凸集合」は、学術用語であり正確な定義の説明は割愛するが、「非凸集合」とは、例えばギア形状、星形や勾玉の様に、一部が突出又は凹んだ形状を一般的に表す数学用語である。これに対して、正方形、円は、ともに凸集合であり、後述するように、熱膨張により正方形は円形に近づくが、非凸集合のように凸部又は凹部を有する形状は、熱膨張により円形に近づく可能性は限りなく小さい。
【0030】
図2(c)に示す例においては、嵌合雌部7は円形の中心部7aと、中心部7aから外方に伸びるように、中心部7aの外周に形成された複数の延伸部7bとを有する。放射状に伸びる延伸部7bは、例えば、扇形の一部により構成されており、延伸部7bの内周側より外周側の方が周辺長が長い。
一方、上述のように、嵌合雌部7と嵌合する嵌合雄部6は、嵌合雌部7の中心部7aと同様に円形であり、嵌合雄部6の中心部7aに挿通可能である。
すなわち、嵌合雄部6は嵌合雌部7の中心部7aに挿通し、嵌合雄部6の外壁面が中心部7aの内壁面と接するよう構成されている。
【0031】
なお、後述するように、延伸部7bの形状は扇形の一部に限定するものではなく矩形であってもよく、また、中央部7aは円形に限定するものではない。
【0032】
なお、嵌合雄部6の形状は、嵌合雌部7に挿通され嵌合可能であれば、嵌合雌部7の中心部7aと同一形状(円形)に限定されるものではなく、例えば、中心部7aの周りに延伸部7bを含む形状(嵌合雌部7と嵌合する形状)であってもよい。嵌合雄部6の形状を嵌合雌部7と嵌合する形状とした場合、カシメ工程の際に、嵌合雄部6の回転が制限されるため、プレート部3とフック部2との位置関係を確定することが容易となる。
【0033】
図2(c)では、4つの延伸部7bを備えた構成を示すが、これに限定するものではない。1以上の延伸部7b、例えば3つの延伸部7bを備えてもよい。嵌合雄部6を嵌合雌部7に均等の力で加締められるよう、好適には、4つの延伸部延伸部7bは等角度間隔に配置され得る。
【0034】
なお、フック部2、プレート部3は既知の金属加工技術を用いて製造することができる。特徴的な形状を有するプレート部3についても、例えば金属製板をプレス加工し、嵌合雌部7を削り加工し開口することで製造できる。
【0035】
フック部2の嵌合雄部6は、プレート部3の嵌合雌部7に挿入し、熱カシメにより固定される。この熱カシメの工程において、フック部2の嵌合雄部6の端部は、プレート部3の嵌合雌部7を介して電極により機械的に加圧される。さらに電極から電流を流されることにより電気抵抗によるジュール熱を発生させ加熱され、嵌合雄部6が嵌合雌部7の形状に合致するように塑性変形し、加締られることができる。2つの電極により嵌合雄部6を挟み込むようにして電流を流すことで、主に嵌合雄部6に集中して電流を流すことができ、主に嵌合雄部6からジュール熱を発生させることができる。
【0036】
すなわち、リベット部である嵌合雄部6は、加圧と加熱の効果により、嵌合雌部7の径方向外側へと広がるように塑性変形され(又、部分的には溶着の効果も得られ)、その結果、フック部2とプレート部3とが接合され、接合部4において互いに強固に固定される。
【0037】
なお、フック部2をプレート部3に固定するために、嵌合雄部6を塑性変形するカシメ工程において、特に熱カシメを好適に使用できるが熱カシメに限定されず、ローリングカシメ等のカシメ技術を用いてもよい。
【0038】
例えば、
図2(b)に示す例においては、嵌合雄部6が円形であり、ローリングカシメの使用にも適している。この場合、嵌合雄部6を嵌合雌部7に挿通させ、その先端を回転するカシメ具により直接押圧し、外向きに塑性変形させてもよい。
【0039】
図3(a)、(b)に示すように、嵌合雄部6の両側において嵌合雄部6が塑性変形し、円板形状の第1の係止部(フランジ部)5及び第2の係止部(フランジ部)8が形成される。第1の係止部5及び第2の係止部8は、嵌合雌部7及び嵌合雄部6(接合部4)を覆うように形成される。
図3(c)、(d)に示すように、接合部4において、第1の係止部5及び第2の係止部8とによりプレート
部3が挟み込まれるように固定される。
【0040】
なお、フック本体部2aに予めフランジ部として第2の係止部8を設けてもよい。フック本体部2aの固定位置を確定することができる。
【0041】
なお、
図3(c)に示すように、プレート部3は第1の係止部5を収容することができる凹部9を有してもよい。凹部9の深さDは、第1の係止部5の肉厚t以上に設定される。そのため、第1の係止部5が、プレート部3の表面Sから突出するを防止することができ、第1の係止部5が、プレート部3と荷台の側壁102との固定を阻害することが防止される。
【0042】
図3(e)は、カシメにより塑性変形した嵌合雄部6の断面形状を示す。嵌合雌部7の内側壁面に沿って嵌合雄部6が塑性変形し、嵌合雄部6は、中心部6a(中心突出部)と延伸部6b(延伸凸部)とを有する形状となる。すなわち、嵌合雄部6は嵌合雌部7の全体と一体化し、嵌合雄部6の断面形状は嵌合雌部7の断面形状と同一形状となる。
【0043】
図4は、種々のプレート部3の嵌合雌部7の形状を示す平面図である。
図4(a)は嵌合雌部7が
ギア形状、
図4(b)は嵌合雌部7が円形状、
図4(c)は嵌合雌部7が矩形状(正方形)の例を示す。
図4(a)に示す例は、
図2(a)、(c)に示す例と同じである。
【0044】
図1(c)に示すように、ロープRからの張力Fにより、ロープフック1のフック部2の根元である接合部4(嵌合雄部6)には回転力Tが付加されることがある。
図4(a)に示す例においては、嵌合雌部7が
ギア形状であり、カシメにより塑性変形した嵌合雄部6は嵌合雌部7と互いに噛み合うように固定され、嵌合雄部6と嵌合雌部7とは幾何学的に相対的な回転が不可能な形状となる。
そのため、回転力Tが付加されても、嵌合雄部6の回転が効果的に阻害され、回転力Tに対する抵抗力が高い。
その結果、フック部2とプレート部3とをカシメにより強固に固定することができ、ロープRの張力に対して十分な耐久力を得ることができる。
【0045】
一方、
図4(b)に示す例においては、嵌合雌部7は通常のリベットと同様に円形であり、嵌合雄部6も嵌合雌部7に対応して円形であるため、嵌合雄部6と嵌合雌部7とは幾何学的には相対的に回転可能な形状である。そのため、回転力Tに対する抵抗力が低く、
図4(a)と比較して耐久性が劣る。
【0046】
図4(c)に示す例においては、嵌合雌部7は矩形であり、カシメにより嵌合雄部6が径外方向に塑性変形することで、嵌合雌部7に追随して矩形に塑性変形することが期待される。その結果、カシメ工程の後には、嵌合雄部6と嵌合雌部7とは幾何学的には相対的に回転不可能な形状となり、
図4(b)に示す例と比較して、回転力Tに対する抵抗力を高くすることができる。
【0047】
図5は、
図4(c)示す嵌合雌部7が、熱膨張により変形した形状を示す。
図5に示すように、カシメ工程で温度が上昇した場合、熱膨張により嵌合雌部7の形状が円形に近づく。その結果、フック部2をプレート部3に接合した状態では、接合部4の嵌合雄部6及び嵌合雌部7の形状(断面形状)は、円形に近い形状となり、熱膨張の影響は回転力Tに対する抵抗力を低減させる。従って、
図4(c)の形状から期待される回転力Tに対する抵抗力が十分に得られなくなる。
また、嵌合雄部6の形状を矩形にした場合も、カシメ工程における熱膨張により接合部4の嵌合雄部6及び嵌合雌部7の形状(断面形状)は、円形に近い形状となる。
【0048】
このように正方形のような正多角形が熱膨張すると、円形に近づく。しかし、円や正多角形の一部が突出、又は窪んだ形状(非凸集合)の場合、熱膨張しても円形に近づくことはない。
図4(a)に示す例においては、カシメ工程、特に熱カシメ工程における嵌合雌部7の熱膨張によっても、円形とならずギア形状を維持できるため、回転力Tに対して最も高い抵抗力を得ることができる。水平方向Fに対して要求強度を十分に満足することが確認された。
一方、
図4(c)に示す例は、
図4(b)に示す例と比較して回転力Tに対する抵抗は強化される。しかし、上記のようにカシメ工程において変形する場合があり、
図4(a)に示す例と比較すると回転力Tに対する抵抗は劣る。
【0049】
一般にカシメ固定は、溶接と比較して回転力に対しする抵抗力に乏しい。そのため、回転力が加えられるロープフック1のフック部2とプレート部3との固定には不向きであった。しかし、本発明のように嵌合雌部7と嵌合雄部6とを構成することにより、フック部2とプレート部3との固定にカシメ固定を採用できるようになり、さらに十分高い固定強度を実現できる。そのためロープフック1の製造工程において、フック部2とプレート部3とをカシメ固定可能とすることで、作業者の負担が軽減され、作業効率も向上する。
【0050】
(実施形態2)
嵌合雌部7の中心部7aと延伸部7bの形状は、
図2(c)に示す例に限定するものではない。
図6は、嵌合雌部7の形状の変形例を示す平面図である。
図6(a)の平面図は、円形の中心部7aの外周に設けられた延伸部7bの数が3、4、5であり、延伸部7bの形状が扇形の一部からなる形状(単に『扇形状』と称す。)又は矩形の一部からなる形状(単に『矩形状』と称す。)の例を示す。
このように、延伸部7bの形状が扇形状に限定するものではなく、例えば、矩形状であってもよい。換言すれば、
図6中の点線で示すように、嵌合雌部7の外周形状が円に接してもよく、矩形(正多角形)に接してもよい。また、延伸部7bの数は4に限定するものではない。
また、複数の延伸部7bを、扇形状の延伸部7bと、矩形状の延伸部7bとの組み合わせから構成されてもよい。
【0051】
なお、対応する嵌合雄部6の形状は、嵌合雌部7の中心部7aと同一形状又は円形状としてもよい。カシメ工程において嵌合雄部6が塑性変形し、嵌合雌部7の中心部7a及び延伸部7bと嵌合することになる。
【0052】
なお、嵌合雄部6の形状を、中心部7aの外周に延伸部7bを有する嵌合雌部7と同一形状としてもよい。例えば、嵌合雄部6の延伸部6bは、扇形状又は矩形状であってもよく。また、嵌合雌部7の延伸部7bを扇形状とし、対応する嵌合雄部6の延伸部6bを扇形状又は矩形状としてもよい。ただし、嵌合雄部6を上記のように円形状とすることで、嵌合雄部6の製造コストを低減できる。
【0053】
また、中心部7aの形状は円形に限定するものではない。
図6(b)の平面図は、中心部7aの形状が円ではなく、矩形(好適には正多角形)であり、延伸部7bの形状が扇形の一部又は矩形の例を示す。すなわち、中心部7aの外周が矩形に接する形状であってもよい。
【0054】
さらに
図7に示すように、プレート部3の嵌合雌部7の形状を凹凸を有する形状としてもよい。
図7(a)は、フック本体部3a側から見たプレート部3の部分斜視図、
図7(b)は、第1の係止部5側(又は荷台101の側壁102側)から見たプレート部3の部分斜視図であり、
図7(c)は嵌合雌部7近傍の平面図であり、
図7(d)は嵌合雌部7近傍の側面図であり、
図7(e)はさらに変形されたプレート部3の拡大斜視図である。
図7に示すように、嵌合雌部7の中央部には中心貫通部71が設けられており、中心貫通部71の外周方向に伸びる箇所には、
図7(a)に示すように、プレート部3の嵌合雌部7の一方の側には、上記延伸部7bに相当する4つの延伸凹部72a及び延伸凸部73aが設けられている。また、
図7(b)に示すように、嵌合雌部7の他方の側には、上記延伸部7bに相当する4つの延伸凹部72b及び延伸凸部73bが設けられている。
延伸凹部72a、72bはプレート部3の表面より凹み、延伸凸部73a、73bはプレート部3の表面より突出している。延伸凹部72a、72b及び延伸凸部73a、73bは、例えばプレス加工により設けることができる。
【0055】
対応する嵌合雄部6の断面形状は中心貫通部71と同形に設定することができる。例えば、中心貫通部71が円形の場合、嵌合雄部6は、断面が円形の円柱状である。
カシメ工程において、嵌合雄部6は、プレート部3の嵌合雌部7の中心貫通部71に挿通され、その後嵌合雄部6は、加圧され塑性変形し、延伸凹部72a、72b、及び延伸凸部73a、73bに挟まれた空間に拡張し、フック本体部3aがプレート部3と嵌合し、接合される。
【0056】
なお、延伸凹部72a、72b及び延伸凸部73a、73bの数は、4に限定するものではなく例えば2、3等であってもよい。延伸凹部72a、72b及び延伸凸部73a、73bの形状は、扇形状あってもよく、矩形であってもよい。
【0057】
また、
図7(e)は嵌合雌部7の、更なる変形例を示す。
図7(e)に示すようにプレート部3の嵌合雌部7の一方の側に延伸凹部72cのみを設け他方の側に延伸凹部72cのみを設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係るロープフックは、従来よりも簡単な作業でフック部とプレート部と強固に接合固定することができる。荷台に限定されることなく、ロープを引っかけるフックが必要なあらゆる構造に適用でき、よって、産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0059】
1 ロープフック
2 フック部
2a フック本体部
3 プレート部(保持部)
4 接合部
5 第1の係止部(第1のフランジ部)
6 嵌合雄部(根部)
6a 中心部(中心突出部)
6b 延伸部(延伸突出部)
7 嵌合雌部(開口部)
7a 中心部(中心貫通部)
7b 延伸部(延伸凹部)
8 第2の係止部(第2のフランジ部)
9 凹部
71 中心貫通部
72 延伸凹部
73 延伸凸部
100 トラック(車両)
101 荷台
102 側壁
B 荷物
J 固定部
R ロープ
【手続補正書】
【提出日】2021-10-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台の側壁に固定して取り付けられるロープフック(1)であって、
円柱状の中実の金属棒を湾曲させたL字形状のフック部(2)と、前記フック部(2)が接合されたプレート部(3)とを備え、
前記プレート部(3)は、前記プレート部(3)と前記フック部(2)との接合部(4)に深さDの凹部が形成され、
前記接合部(4)において、円形の中心部(7a)から放射状に伸びる延伸部(7b)を有する嵌合雌部(7)に、前記フック部(2)の一端である中実な嵌合雄部(6)が塑性変形することで一体化して固定され、
前記嵌合雌部(7)における両側に前記嵌合雄部(6)の塑性変形により形成されたフランジ状の第1の係止部(5)及び第2の係止部(8)を有し、
前記第1の係止部(5)は、前記プレート部(3)の凹部に収容され、
前記第1の係止部(5)及び前記第2の係止部(8)は前記プレート部(3)を峡持し、
前記延伸部(7b)は、扇形の一部から構成され、前記延伸部(7b)の外周側の長さは前記中心部(7a)で切り取られた内周側の長さより長く、前記嵌合雌部(7)が全体としてギア形状であることを特徴とする、ロープフック(1)。
【請求項2】
前記凹部の深さDが、前記第1の係止部(5)の肉厚t以上であることを特徴とする請求項1記載のロープフック(1)。
【請求項3】
車両上に取り付け可能なロープフック(1)であって、
フック部(2)とプレート部(3)とを備え、
前記フック部(2)はL字形状の棒状のフック本体部(2a)と嵌合雄部(6)とを有し、
前記プレート部(3)は嵌合雌部(7)を有し、
前記嵌合雌部(7)の一方の側には延伸凹部(72a)及び延伸凸部(73a)が設けられていると共に前記嵌合雌部(7)の他方の側には延伸凹部(72b)及び延伸凸部(73b)が設けられ、
前記嵌合雄部(6)は、前記嵌合雌部(7)の形状に塑性変形することにより前記嵌合雌部(7)と嵌合して前記プレート部と前記フック部との接合部(4)における前記嵌合雌部(7)の円形の中心部(7a)及び前記円形の中心部(7a)から放射状に伸びる延伸部(7b)を含む前記嵌合雌部と一体化して固定されることを特徴とするロープフック(1)。
【請求項4】
前記一方の側に設けられた延伸凹部(72a)及び延伸凸部(73a)と、前記他方の側に設けられた延伸凹部(72b)及び延伸凸部(73b)とが、それぞれ相対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項3記載のロープフック(1)。
【請求項5】
前記嵌合雄部(6)は、前記嵌合雌部(7)と同一形状であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のロープフック。
【請求項6】
前記嵌合雄部(6)が前記嵌合雌部(7)にカシメ固定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項又は2記載のロープフック。
【請求項7】
前記嵌合雄部(6)と前記嵌合雌部(7)とが熱カシメにより固定されることを特徴とする請求項6記載のロープフック。
【請求項8】
前記嵌合雄部(6)と前記嵌合雌部(7)とがローリングカシメにより固定されることを特徴とする請求項6記載のロープフック。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明にかかるロープフックの一態様は、
荷台の側壁に固定して取り付けられるロープフック(1)であって、
円柱状の中実の金属棒を湾曲させたL字形状のフック部(2)と、前記フック部(2)が接合されたプレート部(3)とを備え、
前記プレート部(3)は、前記プレート部(3)と前記フック部(2)との接合部(4)に深さDの凹部が形成され、
前記接合部(4)において、円形の中心部(7a)から放射状に伸びる延伸部(7b)を有する嵌合雌部(7)に、前記フック部(2)の一端である中実な嵌合雄部(6)が塑性変形することで一体化して固定され、
前記嵌合雌部(7)における両側に前記嵌合雄部(6)の塑性変形により形成されたフランジ状の第1の係止部(5)及び第2の係止部(8)を有し、
前記第1の係止部(5)は、前記プレート部(3)の凹部に収容され、
前記第1の係止部(5)及び前記第2の係止部(8)は前記プレート部(3)を峡持し、
前記延伸部(7b)は、扇形の一部から構成され、前記延伸部(7b)の外周側の長さは前記中心部(7a)で切り取られた内周側の長さより長く、前記嵌合雌部(7)が全体としてギア形状であることを特徴とする。
上記構成によれば、棒状(円柱状)のフック部を塑性変形する際に変形時の加圧で穴が膨張してもフックへの水平方向への荷重に耐えうる形状(ギア形状)であるためにロープにより回転等を含むテンションが加わっても十分に耐え得る強固な接合強度を従来よりも簡単な作業で容易に実現することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明にかかるロープフックの別の態様は、
車両上に取り付け可能なロープフック(1)であって、
フック部(2)とプレート部(3)とを備え、
前記フック部(2)はL字形状の棒状のフック本体部(2a)と嵌合雄部(6)とを有し、
前記プレート部(3)は嵌合雌部(7)を有し、
前記嵌合雌部(7)の一方の側には延伸凹部(72a)及び延伸凸部(73a)が設けられていると共に前記嵌合雌部(7)の他方の側には延伸凹部(72b)及び延伸凸部(73b)が設けられ、
前記嵌合雄部(6)は、前記嵌合雌部(7)の形状に塑性変形することにより前記嵌合雌部(7)と嵌合して前記プレート部と前記フック部との接合部(4)における前記嵌合雌部(7)の円形の中心部(7a)及び前記円形の中心部(7a)から放射状に伸びる延伸部(7b)を含む前記嵌合雌部と一体化して固定されることを特徴とする。
上記構成において、前記一方の側に設けられた延伸凹部(72a)及び延伸凸部(73a)と、前記他方の側に設けられた延伸凹部(72b)及び延伸凸部(73b)とが、それぞれ相対向する位置に設けられていてもよい。