(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107365
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】皮膚外用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/37 20060101AFI20220713BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
A61K8/37
A61Q17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002267
(22)【出願日】2021-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】000112266
【氏名又は名称】ピアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】榊 大武
(72)【発明者】
【氏名】篠原 誠治
(72)【発明者】
【氏名】硲 祥吾
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC371
4C083AC372
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC472
4C083AC542
4C083AC552
4C083AC852
4C083AD092
4C083AD111
4C083AD112
4C083AD172
4C083AD242
4C083AD352
4C083AD532
4C083BB46
4C083BB51
4C083CC19
4C083DD23
4C083EE03
4C083EE07
4C083EE17
(57)【要約】
【課題】 塗布後に良好な耐水性及び耐転着性を有する皮膚外用組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】 (A)少なくともメトキシケイヒ酸エステルを含有する紫外線吸収剤と、(B)グリセリン脂肪酸エステルと、(C)水と、を含み、前記(B)グリセリン脂肪酸エステルは、直鎖飽和脂肪酸、分岐鎖飽和脂肪酸、及び、脂肪族ジカルボン酸を含む脂肪酸と、グリセリンと、のエステル化反応生成物である、皮膚外用組成物を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくともメトキシケイヒ酸エステルを含有する紫外線吸収剤と、
(B)グリセリン脂肪酸エステルと、
(C)水と、を含み、
前記(B)グリセリン脂肪酸エステルは、
直鎖飽和脂肪酸、分岐鎖飽和脂肪酸、及び、脂肪族ジカルボン酸を含む脂肪酸と、
グリセリンと、のエステル化反応生成物である、皮膚外用組成物。
【請求項2】
(D)ジカルボン酸ポリグリセリンエステルをさらに含む、請求項1に記載の皮膚外用組成物。
【請求項3】
(E)総炭素数14以上20以下のジカルボン酸ジエステルをさらに含む、請求項1又は2に記載の皮膚外用組成物。
【請求項4】
日焼け防止用化粧料である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の皮膚外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、日焼け防止用化粧料などの皮膚外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線吸収剤を含む皮膚外用組成物が知られている。例えば、この種の皮膚外用組成物は、日焼け防止用化粧料などの用途で使用される。
【0003】
この種の皮膚外用組成物としては、例えば、
粉体を含有せず、
油溶性紫外線吸収剤と、
グリセリンと炭素数16~26の直鎖状飽和脂肪酸とのトリエステル、又はグリセリンと炭素数16~26の直鎖状飽和脂肪酸と炭素数12~28の脂肪族飽和二塩基酸とのオリゴマーエステルと、
アクリル酸系増粘剤と、
50質量%以上の水と、を含む皮膚外用組成物が知られている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載された皮膚外用組成物によれば、紫外線吸収剤のべたつきやぬるつき、及び、二次付着を抑えることができ、また、塗膜がよれず、均一に塗布することができる。特許文献1に記載された皮膚外用組成物は、安定性も良好である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の皮膚外用組成物は、塗布された後に耐転着性を有する(即ち、二次付着が抑制されている)ものの、塗布後の耐水性が良好でない。
そこで、塗布後に良好な耐転着性を有するだけでなく、良好な耐水性を有する皮膚外用組成物が要望されている。
【0007】
本発明は、上記問題点、要望点等に鑑み、塗布後に良好な耐水性及び耐転着性を有する皮膚外用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る皮膚外用組成物は、
(A)少なくともメトキシケイヒ酸エステルを含有する紫外線吸収剤と、
(B)グリセリン脂肪酸エステルと、
(C)水と、を含み、
前記(B)グリセリン脂肪酸エステルは、
直鎖飽和脂肪酸、分岐鎖飽和脂肪酸、及び、脂肪族ジカルボン酸を含む脂肪酸と、
グリセリンと、のエステル化反応生成物であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る皮膚外用組成物は、(D)ジカルボン酸ポリグリセリンエステルをさらに含んでもよい。
【0010】
本発明に係る皮膚外用組成物は、(E)総炭素数14以上20以下のジカルボン酸ジエステルをさらに含んでもよい。
【0011】
本発明に係る皮膚外用組成物は、日焼け防止用化粧料であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の皮膚外用組成物によれば、塗布後に良好な耐水性及び耐転着性を発揮できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る皮膚外用組成物の一実施形態について以下に説明する。
【0014】
本実施形態の皮膚外用組成物は、
(A)少なくともメトキシケイヒ酸エステルを含有する紫外線吸収剤と、
(B)グリセリン脂肪酸エステルと、
(C)水と、を含み、
前記(B)グリセリン脂肪酸エステルは、
直鎖飽和脂肪酸、分岐鎖飽和脂肪酸、及び、脂肪族ジカルボン酸を含む脂肪酸と、
グリセリンと、のエステル化反応生成物である。
【0015】
本実施形態の皮膚外用組成物が上記の(A)、(B)、及び(C)を含むことによって、塗布後の耐水性及び耐転着性の両方を良好にすることができる。具体的には、本実施形態の皮膚外用組成物を皮膚に塗布した後、塗膜が水によって皮膚から取れにくく、また、塗膜が何かに接触したときに、塗膜が転着して取り除かれることが抑制される。
【0016】
(A)紫外線吸収剤(以下、単にA成分とも称する)は、少なくともメトキシケイヒ酸エステル(パラメトキシケイヒ酸エステル)を含有する。
メトキシケイヒ酸(ケイ皮酸)エステルとしては、メトキシケイヒ酸エチル、メトキシケイヒ酸プロピル、メトキシケイヒ酸ブチル、メトキシケイヒ酸ヘキシル、メトキシケイヒ酸n-オクチル、メトキシケイヒ酸2-エチルヘキシル、メトキシケイヒ酸デシルなどが挙げられる。
好ましくは、A成分の紫外線吸収剤は、メトキシケイヒ酸2-エチルヘキシル(パラメトキシケイヒ酸2-エチルヘキシル)を少なくとも含有する。
【0017】
(A)紫外線吸収剤は、さらに、メトキシケイヒ酸エステル以外の紫外線吸収剤を含んでもよい。
A成分の紫外線吸収剤に含まれ得る化合物(メトキシケイヒ酸エステル以外の化合物)としては、例えば、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸オクチル、サリチル酸トリエタノールアミン等のサリチル酸系化合物;パラアミノ安息香酸、エチルジヒドロキシプロピルパラアミノ安息香酸、グリセリルパラアミノ安息香酸、オクチルジメチルパラアミノ安息香酸、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸2-エチルへキシル等のパラアミノ安息香酸(PABA)系化合物;4-(2-β-グルコピラノシロキシ)プロポキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-硫酸、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-N-オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ジパラメトキシケイヒ酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、2,5-ジイソプロピルケイヒ酸メチル、2,4,6-トリス[4-(2-エチルへキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン、トリメトキシケイヒ酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル、パラメトキシケイヒ酸イソプロピル・ジイソプロピルケイヒ酸エステル混合物、p-メトキシハイドロケイヒ酸ジエタノールアミン塩等のケイヒ酸系化合物;2-フェニル-ベンズイミダゾール-5-硫酸、4-イソプロピルジベンゾイルメタン、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン等のベンゾイルメタン系化合物;などが挙げられる。
他にも、(A)紫外線吸収剤に含まれ得る化合物としては、例えば、オクトクリレン、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル、1-(3,4-ジメトキシフェニル)-4,4-ジメチル-1,3-ペンタンジオン、シノキサート、メチル-O-アミノベンゾエート、3-(4-メチルベンジリデン)カンフル、オクチルトリアゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルエステル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールなどが挙げられる。
これらの化合物は、1種が単独で、又は2種以上が組み合わされて用いられ得る。
【0018】
A成分は、メトキシケイヒ酸エステルと、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビス2-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、及び、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタンからなる群より選択される少なくとも1種とを含有してもよい。
【0019】
A成分としては、1種が単独で用いられてもよく、複数種が組み合わされて用いられてもよい。A成分としては、市販されている製品を用いることができる。
【0020】
本実施形態の皮膚外用組成物において、A成分の総量の濃度は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、A成分の総量の濃度は、25質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよい。
A成分の総量の濃度が5質量%以上であることによって、皮膚への紫外線の悪影響(日焼けなど)をより十分に防止できる。また、A成分の総量の濃度が25質量%以下であることによって、皮膚外用組成物を皮膚に塗布したときの使用感をより良好にできる。
【0021】
本実施形態の皮膚外用組成物は、A成分としてのメトキシケイヒ酸エステルを3質量%以上10質量%以下含んでもよい。また、本実施形態の皮膚外用組成物は、メトキシケイヒ酸エステル以外の紫外線吸収剤を0.1質量%以上10質量%以下さらに含んでもよい。
【0022】
(B)グリセリン脂肪酸エステル(以下、単にB成分とも称する)は、直鎖飽和脂肪酸、分岐鎖飽和脂肪酸、及び、脂肪族ジカルボン酸を含む脂肪酸と、グリセリンと、のエステル化反応生成物である。換言すると、B成分は、グリセリンのトリエステル体であり、1モルのグリセリンに対して、平均して各1モルの直鎖飽和脂肪酸、分岐鎖飽和脂肪酸、及び、脂肪族ジカルボン酸がエステル化反応した化合物である。
【0023】
B成分を生成するための上記の直鎖飽和脂肪酸は、総炭素数が12以上26以下のモノカルボン酸であり、直鎖状の飽和炭化水素部分と、カルボキシ基とを含む化合物である。
上記の直鎖飽和脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及び、ベヘン酸からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、ステアリン酸及びベヘン酸のうち少なくとも一方がより好ましく、ベヘン酸がさらに好ましい。
【0024】
B成分を生成するための上記の分岐鎖飽和脂肪酸は、総炭素数が12以上26以下のモノカルボン酸であり、分岐鎖状の飽和炭化水素部分と、カルボキシ基とを含む化合物である。
上記の分岐鎖飽和脂肪酸としては、例えば、イソパルミチン酸(2-ヘキシルデカン酸)、又は、イソステアリン酸(2-ヘプチルウンデカン酸又は2-イソヘプチルイソウンデカン酸など)の少なくとも一方が好ましく、イソパルミチン酸がより好ましい。
【0025】
B成分を生成するための上記の脂肪族ジカルボン酸は、総炭素数が12以上28以下のジカルボン酸であり、直鎖状の飽和炭化水素部分と、該飽和炭化水素部分の両末端にそれぞれ結合したカルボキシ基とを含む化合物である。
上記の脂肪族ジカルボン酸としては、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、及び、ドコサン二酸からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、及び、ドコサン二酸からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、エイコサン二酸がさらに好ましい。
【0026】
好ましいB成分としては、トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリルが挙げられる。
【0027】
B成分としては、総炭素数20以上24以下の直鎖飽和脂肪酸、総炭素数16以上20以下の分岐鎖飽和脂肪酸、及び、総炭素数18以上22以下の脂肪族ジカルボン酸を含む脂肪酸と、グリセリンと、のエステル化反応生成物が好ましい。これにより、塗布後における良好な耐水性及び耐転着性をより十分に発揮できる。
【0028】
B成分としては、1種が単独で用いられてもよく、複数種が組み合わされて用いられてもよい。B成分としては、市販されている製品を用いることができる。
市販されているB成分としては、例えば、トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリルとして、製品名「ノムコートSG」日清オイリオ社製、などが挙げられる。
【0029】
本実施形態の皮膚外用組成物において、B成分の総量の濃度は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、B成分の総量の濃度は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
B成分の総量の濃度が0.1質量%以上であることによって、皮膚外用組成物をより増粘させることができ、塗布後の耐水性及び耐転着性をより良好にできる。また、B成分の総量の濃度が5質量%以下であることによって、皮膚外用組成物を皮膚に塗布したときの使用感をより良好にできる。
【0030】
本実施形態の皮膚外用組成物は、(D)ジカルボン酸ポリグリセリンエステル、又は、(E)総炭素数14以上20以下のジカルボン酸ジエステルの少なくとも一方をさらに含むことが好ましい。
【0031】
(D)ジカルボン酸ポリグリセリンエステル(以下、単にD成分ともいう)は、複数のグリセリン分子が脱水縮合したポリグリセリンと、ジカルボン酸とのエステル化反応生成物である。
【0032】
本実施形態の皮膚外用組成物がD成分をさらに含むことによって、塗布後における良好な耐水性及び耐転着性をより十分に発揮できる。
【0033】
D成分を生成するための上記のポリグリセリンは、グリセリンの結合数が6以上20以下のポリグリセリンであってもよく、グリセリンの結合数が8以上12以下のポリグリセリンであってもよい。
上記のポリグリセリンは、グリセリンの結合数(脱水縮合数)が異なる複数種のポリグリセリンの混合物であってもよい。具体的には、上記のポリグリセリンでは、グリセリンの平均結合数(モル換算)が、6以上20以下であってもよく、8以上12以下であってもよい。
【0034】
D成分を生成するための上記のジカルボン酸は、総炭素数が12以上28以下のジカルボン酸であり、直鎖状の飽和炭化水素部分と、該飽和炭化水素部分の両末端にそれぞれ結合したカルボキシ基とを含む化合物である。
【0035】
D成分を生成するためのジカルボン酸としては、例えば、ドデカン二酸(炭素数12)、テトラデカン二酸(炭素数14)、ヘキサデカン二酸(炭素数16)、オクタデカン二酸(炭素数18)、エイコサン二酸(炭素数20)、又は、ドコサン二酸(炭素数22)などが挙げられる。
D成分を生成するためのジカルボン酸は、1種を単独で含んでもよく、総炭素数の異なる複数種を含んでもよい。
【0036】
D成分を生成するためのジカルボン酸としては、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、及び、エイコサン二酸からなる群より選択される少なくとも2種が好ましく、テトラデカン二酸及びエイコサン二酸がより好ましい。
【0037】
D成分としては、グリセリン分子の結合数が8以上12以下のポリグリセリンと、総炭素数が互いに異なる複数種のジカルボン酸とのエステル反応生成物が好ましい。D成分は、より好ましくは、グリセリン分子の結合数が8以上12以下のポリグリセリンと、総炭素数が12以上16以下のジカルボン酸及び総炭素数が18以上22以下のジカルボン酸と、のエステル化反応生成物である。
【0038】
D成分として例示される反応生成物は、(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ジグリセリル、(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)トリグリセリル、(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)テトラグリセリル、(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ペンタグリセリル、(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ヘキサグリセリル、(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ヘプタグリセリル、(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)オクタグリセリル、(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ノナグリセリル、(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)デカグリセリル、(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ウンデカグリセリル及び(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ドデカグリセリルなどである。
【0039】
D成分としては、市販されている製品を用いることができる。市販されているD成分としては、例えば、(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)デカグリセリル[(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル-10]として、製品名「Neosolue-AquaS」(日本精化社製)などが挙げられる。
【0040】
本実施形態の皮膚外用組成物において、D成分の総量の濃度は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。また、D成分の総量の濃度は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。
D成分の濃度が0.1質量%以上であることによって、より良好な耐水性、及び、より良好な耐転着性を発揮できる。また、D成分の濃度が1.0質量%以下であることによって、塗布時の使用感をより良好にできる。
【0041】
(E)総炭素数14以上20以下のジカルボン酸ジエステル(以下、単にE成分ともいう)は、2分子の1価アルコールが、1分子のジカルボン酸における2つのカルボキシ基にそれぞれエステル結合したジエステル化合物である。
【0042】
本実施形態の皮膚外用組成物がE成分をさらに含むことによって、良好な光耐久性をさらに有することができる。
【0043】
E成分を生成するためのジカルボン酸としては、E成分の総炭素数が14以上20以下になる限り特に限定されないが、例えば、コハク酸(炭素数4)、アジピン酸(炭素数6)、スベリン酸(炭素数8)、アゼライン酸(炭素数9)、セバシン酸(炭素数10)、ドデカン二酸(炭素数12)などが挙げられる。
【0044】
E成分を生成するための1価アルコールとしては、E成分の総炭素数が14以上20以下になる限り特に限定されないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール(例えば2-エチルヘキシルアルコール)、デシルアルコール、又は、ドデシルアルコールなどが挙げられる。これらの1価アルコールにおけるアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。また、これら1価アルコールにおけるヒドロキシ基は、アルキル基の末端の炭素に結合していてもよく、末端の炭素以外の炭素に結合していてもよい。
【0045】
E成分としては、炭素数2以上8以下(好ましくは2以上6以下)の1価アルコールが、炭素数4以上12以下(好ましくは8以上12以下)のジカルボン酸にエステル結合したジエステル化合物が好ましい。これにより、より良好な光耐久性を発揮できる。
【0046】
E成分としては、好ましくは、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、及び、コハク酸ジ2-エチルヘキシルからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0047】
E成分としては、1種が単独で用いられてもよく、複数種が組み合わされて用いられてもよい。E成分としては、市販されている製品を用いることができる。
【0048】
本実施形態の皮膚外用組成物において、E成分の総量の濃度は、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、E成分の総量の濃度は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
E成分の濃度が1質量%以上であることによって、塗布された皮膚外用組成物がより良好な光耐久性を発揮できる。また、E成分の濃度が10質量%以下であることによって、塗布時の使用感をより良好にできる。
【0049】
上記A成分(紫外線吸収剤)と上記B成分(グリセリン脂肪酸エステル)との質量比、詳しくは、上記A成分に対する上記B成分の質量比[B/A]は、0.2以下であることが好ましく、0.05以上0.10以下であることがより好ましい。これにより、皮膚外用組成物は、良好な耐水性と、良好な耐転着性と、のびが良くべたつきが少ないという使用感とを兼ね備えることができる。
【0050】
上記A成分(紫外線吸収剤)と上記D成分(ジカルボン酸ポリグリセリンエステル)との質量比、詳しくは、上記A成分に対する上記D成分の質量比[D/A]は、0.01以上0.20以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましく、0.05以下であることがさらに好ましい。これにより、皮膚外用組成物は、良好な耐水性と、良好な耐転着性と、のびが良くべたつきが少ないという使用感とを兼ね備えることができる。
【0051】
上記A成分(紫外線吸収剤)と上記E成分(総炭素数14以上20以下のジカルボン酸ジエステル)との質量比、詳しくは、上記A成分に対する上記E成分の質量比[E/A]は、0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.2以上であることがさらに好ましい。また、質量比[E/A]は、0.5以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましい。
【0052】
本実施形態の皮膚外用組成物は、(C)水を30質量%以上90質量%以下含んでもよい。本実施形態の皮膚外用組成物は、水を50質量%以上含んでもよい。
本実施形態の皮膚外用組成物は、通常、上記の紫外線吸収剤などを含む油相が、水相中に分散した、いわゆる水中油型の乳化状態である。
【0053】
上記の皮膚外用組成物は、上記の成分の他に、粉体、増粘剤、油分、酸化防止剤、防腐剤などをさらに含んでもよい。これら成分は、使用感、耐転着性、耐水性などのさらなる向上を目的として配合され得る。
粉体としては、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンAlなどが挙げられる。
上記の皮膚外用組成物は、皮膚に清涼感を与える目的等で、エタノール、メンタンジオールなどを含んでもよい。
上記の皮膚外用組成物は、皮膚に保湿効果を与える目的等で、カルボキシメチルキトサンミリスタミドを含んでもよい。
【0054】
本実施形態の皮膚外用組成物の性状は、特に限定されないが、例えば液状である。本実施形態の皮膚外用組成物は、固形状であってもよい。
【0055】
本実施形態の皮膚外用組成物は、一般的な方法によって製造できる。
例えば、配合する各成分を混合し、撹拌することによって上記皮膚外用組成物を製造できる。撹拌するための装置としては、一般的なものを使用できる。必要に応じて、加温しつつ撹拌してもよい。
【0056】
上記の皮膚外用組成物は、通常、皮膚に塗布されて使用される。上記の皮膚外用組成物は、例えば、顔の皮膚、首の皮膚、四肢の皮膚、頭皮、毛髪、また、鼻孔・唇・耳・生殖器・肛門などにおける粘膜に塗布されて使用されてもよい。また、上記の皮膚外用組成物は、入浴剤の用途で使用されてもよく、皮膚貼付剤の用途で使用されてもよい。
【0057】
上記の皮膚外用組成物は、例えば、日焼け防止用化粧料の用途、日焼け防止効果を有するメイクアップ化粧料の用途、日焼け防止効果を有するスキンケア化粧料の用途などで使用されてもよい。
【0058】
本実施形態の皮膚外用組成物は、薬機法上の化粧料、医薬部外品、医薬品等の分類には拘束されない。
【0059】
本発明の皮膚外用組成物は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の実施形態に限定されるものではない。また、本発明では、一般の皮膚外用組成物などにおいて採用される種々の形態を、本発明の効果を損ねない範囲で採用することができる。
【実施例0060】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
皮膚外用組成物を製造するための各原料について以下に説明する。
<主な原料>
(A)分子中にベンゼン環構造を有する紫外線吸収剤
(A-1)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(市販品)
(A-2)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(市販品)
(A-3)ビス2-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(市販品)
(B)グリセリン脂肪酸エステル
(B-1)トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリル
製品名「ノムコートSG」日清オイリオ社製
(C)水(精製水)
(D)ジカルボン酸ポリグリセリンエステル
(D-1)(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル-10
製品名「Neosolue-AquaS」日本精化社製
[固形分60質量%/グリセリン40質量%]
*固形分が希釈された状態であるため、下記の表においては固形分の質量を示す
(D’)(D)の類似原料
(D’2)PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン
製品名「WILBRIDE(ウィルブライド)S-753」日油社製
(D’3)シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコールシクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール
製品名「Neosolue-Aqulio」日本精化社製
(E)総炭素数14以上20以下のジカルボン酸ジエステル
(E-1)セバシン酸ジイソプロピル(市販品)
(E-2)セバシン酸ジエチル(市販品)
(E-3)コハク酸ジ2-エチルヘキシル(市販品)
(E’)(E)の類似原料
(E’4)イソノナン酸イソトリデシル(市販品)
(E’5)安息香酸アルキル(C12-15)(市販品)
(E’6)アジピン酸ジイソプロピル(市販品)
(E’7)リンゴ酸ジステアリル(市販品)
(E’8)ラウリン酸メチルヘプチル(市販品)
(E’9)アジピン酸ジ2エチルヘキシル(市販品)
(E’10)セバシン酸ジ2エチルヘキシル(市販品)
<その他の主な原料>
・増粘剤1
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))コポリマー
製品名「Pemulen TR-1」日本ルーブリゾール社製
・増粘剤2
(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー
製品名「SIMULGEL FL」SEPPIC社製
*固形分が希釈された状態であるため、下記の表においては固形分の質量を示す
【0062】
(実施例1~30、比較例1)
上述した各原料などを以下の各表に示す配合量で混合することによって、各実施例及び各比較例の皮膚外用組成物を製造した。各皮膚外用組成物の配合組成を表1~表5においてそれぞれ示す。
皮膚外用組成物の製造では、以下の各表において示す水性成分Iをホモミキサー(回転数5,000rpm)で撹拌しつつ80℃に加熱した。次に、油性成分IIを加えて、80℃で撹拌した。その後、3分間ホモミキサー(回転数5,000rpm)で撹拌した。続いて、pH調整成分IIIを加え、ホモミキサー(回転数5,000rpm)で1分間撹拌した。最後に、室温まで冷却した。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
<SPF測定方法>
各実施例および各比較例の皮膚外用組成物をPMMA板(ポリメチルメタクリレート板)に塗布し、乾燥させた。その後、PMMA板上のランダムに選んだ10箇所をSPFアナライザー(Labsphere UV-2000S、Labsphere社製)によって測定し、SPF値を測定した。
【0069】
<耐水性の評価>
上記と同様にして皮膚外用組成物が塗布されたPMMA板を水に浸漬した。この状態で、プロペラによって水流を発生させ、40分間経過させた。水に浸漬する前、及び、水に浸漬した後の各SPF値から、耐水性に関わる値を算出し、耐水性を評価した。
詳しくは、
[(水に浸漬した後のSPF値)/(水に浸漬する前のSPF値)]×100[%]
によって、耐水性を数値で表した。この数値が高いほど、耐水性が高いことを示す。
【0070】
<耐転着性の評価>
各皮膚外用組成物が塗布されたPMMA板に紙を乗せ、450gの荷重を10分間与え続けた。紙を乗せる前、及び、紙を乗せて荷重を加えた後の各透過率(350nm波長)を測定した。2つの測定値(透過率値)の変化量から、耐転着性を評価した。
詳しくは、
紙を乗せた後の透過率-紙を乗せる前の透過率
という計算式によって、耐転着性を数値で表した。この数値が小さいほど、耐転着性が高い(即ち、転着抑制能が高い)ことを示す。
【0071】
<光耐久性の評価>
各皮膚外用組成物が塗布されたPMMA板に対して、ソーラーシミュレーター(Solrabox 1500e 日本分光社製)を用いて、照度750W/m2の光を3時間照射した。照射前と照射後の各SPF値を上記の方法と同様にして測定した。そして、SPF値の変化率によって光耐久性を数値で表した。
詳しくは、下記の計算式によって、光耐久性を数値で表した。この数値が高いほど、光耐久性が高いことを示す。
(照射後のSPF値/照射前のSPF値)×100[%]
【0072】
各皮膚外用組成物について、上記の耐水性、耐転着性、及び、光耐久性を評価した結果を、それぞれ表1~表5に示す。
【0073】
上記の結果から把握されるように、A成分とB成分と水とを組み合わせた実施例の皮膚外用組成物は、耐水性及び耐転着性の両方において良好であった。
B成分の油相増粘効果によって流動性が低下し、耐水性及び耐転着性が発揮されたと考えられる。
一方、B成分を含まない皮膚外用組成物は、耐水性及び耐転着性の両方において良好でなかった。
また、実施例の皮膚外用組成物が、さらにD成分を含むことによって、耐水性及び耐転着性がより良好となり、光耐久性が向上した。D成分は界面活性能を有し、また、被膜形成能を有することから、紫外線吸収剤を含む被膜膜の均一性を良好にできると考えられる。これにより、耐水性及び耐転着性をより良好にし、光耐久性をより良好にしたと考えられる。
また、実施例の皮膚外用組成物が、さらにE成分を含むことによって、良好な光耐久性を有することができた。
本発明の皮膚外用組成物は、例えば、肌の日焼けを防止するため、肌の乾燥を予防軽減するため、化粧下地にするために、皮膚に適用されて使用される。本発明の皮膚外用組成物は、例えば直接角質層に塗布され、化粧料等の用途で好適に使用される。