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特開2022-107431リニア運動システムの位置測定機構及びその測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107431
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】リニア運動システムの位置測定機構及びその測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/00 20060101AFI20220713BHJP
【FI】
G01B7/00 101H
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002380
(22)【出願日】2021-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】514150181
【氏名又は名称】大銀微系統股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HIWIN MIKROSYSTEM CORP.
【住所又は居所原語表記】No.6,Jingke Central Rd.,Nantun Dist.,Taichung City 408,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ティアプキン、ミハイル
(72)【発明者】
【氏名】トルスティク、オレグ
(72)【発明者】
【氏名】ボルコフ、セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】タイプキン、ゲンナディ
(72)【発明者】
【氏名】バルコボイ、アレクサンドル
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA02
2F063BA22
2F063CA09
2F063DA01
2F063DA05
2F063DB01
2F063DB04
2F063DC08
2F063DD06
2F063EA02
2F063GA52
2F063KA04
(57)【要約】
【課題】 本発明はリニア運動システムの位置測定機構及びその測定方法を得ることにある。
【解決手段】 本発明が開示するリニア運動システムの位置測定機構及びその測定方法は主に、2つのセンサをそれぞれ固定子の両側に設置し、運動部を双方向に運動可能としたほか、センサの数を増やさない前提において、センサ自身が測定した情報によってセンサの測定範囲を算出することができる。また、本発明はさらに、従来技術において用いられる正弦波状信号と余弦信号を結合した演算方式の代替として、2つのセンサがそれぞれ測定した測定区間を結合することによって位置フィードバックの精度を保証することができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、
前記ベース部に対して移動可能な、運動部と、
前記運動部中に設けられた、少なくとも1つの磁石アレイと、
磁石アレイの磁場を検出するため、ベース部に間隔を空けてそれぞれ設けられた、第1検出部及び第2検出部と、
前記運動部に設けられた信号ユニット、及び前記ベース部に設けられ且つ前記信号ユニットを検出するためのセンシング素子を有する、第3検出部と、
前記第1検出部及び前記第2検出部の検出信号をそれぞれ受信し、対応する前記磁石アレイのサブ周期をそれぞれ算出した後、前記センシング素子の検出情報と合わせて演算することにより、前記運動部の運動経路を取得し、アクチュエータにフィードバックして、前記運動部の運動パターンを調整する、処理部と、を含む位置測定機構。
【請求項2】
前記磁石アレイは複数の磁石を有し、磁性が同じである2つの磁石同士の最小距離が前記磁石アレイの磁気周期であり、且つ前記磁石アレイの長さを前記磁石アレイの磁気周期の整数倍とした、請求項1に記載の位置測定機構。
【請求項3】
前記磁石アレイの数は2つであり、互いに隣接するように前記運動部に配置され、隣接する2つの磁石アレイの距離は少なくとも2つの磁気周期である、請求項2に記載の位置測定機構。
【請求項4】
それぞれが前記第1検出部、前記第2検出部及び前記第3検出部を含む複数の測定モジュールをさらに含み、隣接する2つの測定モジュール同士の距離は前記磁石アレイの長さと等しい、請求項1に記載の位置測定機構。
【請求項5】
前記第1検出部と前記第2検出部はそれぞれ8つの感磁素子を含み、各前記感磁素子はそれぞれ磁石アレイの磁気周期の四分の一の距離で左から右へ順に配列され、第1感磁素子と第5感磁素子が並列接続され、第2感磁素子と第6感磁素子が並列接続され、第3感磁素子と第7感磁素子が並列接続され、第4感磁素子と第8感磁素子が並列接続された、請求項1に記載の位置測定機構。
【請求項6】
前記アクチュエータは、前記ベース部に設けられた固定子に対して電流制御を行い、フィールドバスを用いてモーションコントローラに接続される、請求項2に記載の位置測定機構。
【請求項7】
前記第1検出部は前記固定子の左側に位置し、前記第2検出部は前記固定子の右側に位置し、
前記第1検出部と前記第2検出部の間の間隔距離は、前記磁気周期の整数倍であり、
前記磁石アレイの長さは、前記第1検出部と前記第2検出部の間の間隔距離よりも大きく、且つ前記磁石アレイの少なくとも4つの磁気周期であり、
前記第3検出部は、基準となる結合点を提供するものであり、前記第1検出部と前記第2検出部の信号を結合することができる、請求項6に記載の位置測定機構。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の前記第1検出部と前記第2検出部がそれぞれ測定範囲中で検出した信号を結合点で結合する、位置測定方法。
【請求項9】
前記測定範囲は、前記結合点によって前記第1検出部の第1測定区間と前記第2検出部の第2測定区間に区分され、前記第1測定区間と前記第2測定区間はそれぞれ前記運動部の作動方向に沿って配置され、且つ互いに近接している、請求項8に記載の位置測定方法。
【請求項10】
前記運動部が右から左へ運動して移動する場合、前記測定範囲の始点は、前記第1検出部が検出した信号の振幅が所定の高閾値よりも小さく、且つ前記第1検出部が検出した信号のサブ周期位置が180°に等しいと定義され、前記測定範囲の終点は、前記第2検出部が検出した信号の振幅が所定の低閾値を上回り、且つ前記第2検出部が検出した信号のサブ周期位置が180°に等しいと定義され、
前記運動部が左から右へ運動して移動する場合、前記測定範囲の始点は、前記第1検出部が検出した信号の振幅が低閾値よりも大きく、且つ前記第1検出部が検出した信号のサブ周期位置が180°に等しいと定義され、前記測定範囲の終点は、前記第2検出部が検出した信号の振幅が低閾値よりも小さく、且つ前記第2検出部が検出した信号のサブ周期位置が180°に等しいと定義される、請求項9に記載の位置測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置測定技術に関し、特にリニア運動システムの位置測定機構及びその測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
不連続な固定子の永久磁石式リニアモータ(Doubly Salient Permanent Magnet -Linear Synchronous Motor、DSPM-LSM)は、複数の異なる位相のコイルをそれぞれ有する複数の固定子と、磁石アレイを有する1つ以上のキャリアと、を主に含み、各キャリアの移動経路に沿った位置フィードバックによって、各キャリアの作動が制御、校正される。これらは既に特許文献1~5、及び非特許文献1、2などの文献において開示されている。
【0003】
高精度の測定結果を求めない前提では、測定システムにホールセンサを採用することができ、これにより複雑性や位置フィードバック測定システムのコストを低減することができる。そのうち、DSPM-LSMの磁石アレイを測定スケールとすることができるが、各ホールセンサが測定可能な距離は1つの磁石アレイの長さよりも小さいため、キャリアの全移動範囲における位置フィードバック情報を提供可能にするには、ホールセンサがキャリアの移動方向に沿って配列され、且つ隣接するセンサの測定範囲が重なり合っている必要がある。
【0004】
特許文献2に開示されている基準点からの距離を求めるためのリニアスケールは、主に磁性体が生成する磁束密度の変化を利用し、且つセンサが検出した正弦波信号と余弦波信号を演算するものであるが、この方法は磁束(Magnet Flux)の端効果(End-Effects)によって精度が低減してしまう。精度の問題を改善するために、特許文献2及び特許文献6では、磁石アレイ中の最初と最後の磁石の移動位置の方向を少し傾斜させることも開示されている。
【0005】
特許文献3は、先に測定した隣接するセンサ間のオフセット値を各センサの位置関係と合わせて利用し、単一の処理ユニットによって演算するものである。従って、センサ、サーボドライバ及び処理ユニットの間を特別なデジタルネットワークによって配列する必要があるが、温度によって変形やオフセット量の変化が生じるため、システムの長時間再現性(Long Time Repeatability)の低下を招いてしまう。
【0006】
特許文献7は、位置フィードバックと隣接するモジュールのオフセット量を合わせて利用し、測定スケールの精度を校正する方法を開示しており、そのうち、離散配置リニアモータシステムは複数のモジュールによって構成され、各モジュールはいずれも単一のセンサ、固定子及び駆動ユニットを含み、且つ複数の制御ユニットを利用してモジュールを制御し、位置情報を送るというものである。この方法は単一のセンサのみを利用しているため、キャリアを単一の作動方向のみ有効にさせてしまう。つまり、キャリアが反対方向へ運動するとき、モジュールがキャリアの位置を取得するのが遅くなり、DSPM-LSMの作用力を顕著に減少させてしまう。
【0007】
特許文献8は、電磁伝送において使用するインクリメンタル式マルチ位置検出システムを開示しており、それは主に、走行レール上に固定距離で配列された、走行レール上の伝送部材の位置を検出するための複数の磁気センサを含み、センサは単一の処理ユニットに接続され、同時に、センサが検出した位置フィードバックと合わせるため、当該案ではセンサの数と使用機能を増やすことが提案されているが、この方法はシステムのモジュール化の可能性を下げてしまっている。工業的利用において、DSPM-LSMのモジュール化はシステム中の各部材の保守性や代替可能性を高める故に、従来技術が未だ完成に至っていないことは明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3015933号明細書
【特許文献2】米国特許第8497643号明細書
【特許文献3】米国特許第8796959号明細書
【特許文献4】欧州特許第2182627号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2019/0190366号明細書
【特許文献6】米国特許第6713902号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2013/0229134号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2013/0037384号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「Novel force ripple reduction method for a moving-magnet linear synchronous motor with a segmented stator」
【非特許文献2】「Cogging Force Verification by Deforming the Shape of the Outlet Edge at the Armature of a Stationary Discontinuous Armature PM-LSM」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これに鑑み、本発明は、2つのセンサをそれぞれ固定子の両側に設置し、運動部を双方向に運動可能としたほか、センサの数を増やさない前提において、センサ自身が測定した情報によってセンサの測定範囲を算出することができる、リニア運動システムの位置測定機構及びその測定方法を提供することを主な目的としている。
【0011】
本発明の別の目的は、従来技術において用いられる正弦波状信号と余弦信号を結合した演算方式の代替として、2つのセンサがそれぞれ測定した測定区間を結合することによって位置フィードバックの精度を保証することができる、リニア運動システムの位置測定機構及びその測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するために、本発明が提供する位置測定機構は、ベース部と、ベース部に対して移動可能な、運動部と、運動部中に設けられた、少なくとも1つの磁石アレイと、ベース部に間隔を空けてそれぞれ設けられた、磁性体アレイの磁場を検出するための、第1検出部及び第2検出部と、運動部に設けられた信号ユニット、及びベース部に設けられ且つ信号ユニットを検出するためのセンシング素子を有する、第3検出部と、第1検出部及び第2検出部の検出信号をそれぞれ受信し、対応する磁石アレイのサブ周期をそれぞれ算出した後、センシング素子の検出情報と合わせて演算することにより、運動部の運動経路を取得し、アクチュエータにフィードバックして、運動部の運動パターンを調整する、処理部と、を含む。
【0013】
1つの実施例中、本発明は、それぞれが第1検出部、第2検出部及び第3検出部を含む複数の測定モジュールをさらに含み、隣接する2つの測定モジュール同士の距離は磁石アレイの長さと等しい。そのうち、固定子電流の電流転流法を簡略化するため、隣接する2つの測定モジュール同士の距離は磁石アレイの長さと等しい。
【0014】
そのうち、アクチュエータは、ベース部に設けられた固定子に対して電流制御を行うものであり、フィールドバスを用いてモーションコントローラに接続されており、検出部が検出した情報をすべて単一の装置で処理することができるので、運動経路上に沿ったキャリア位置の識別難易度が低減される。
【0015】
本発明の別の目的は、第1検出部と第2検出部がそれぞれ測定範囲中で検出した信号を結合点で結合する、位置測定方法を提供することである。
【0016】
測定範囲の適切な位置を推定するために、本発明は、第1検出部と第2検出部が検出したサブ周期と信号振幅を利用して確認を行う。
【0017】
そのうち、測定範囲は、結合点によって第1検出部の第1測定区間と第2検出部の第2測定区間に区分され、第1測定区間と第2測定区間はそれぞれ運動部の作動方向に沿って配置され、且つ互いに近接している。
【0018】
運動部が右から左へ運動して移動する場合、測定範囲の始点は、第1検出部が検出した信号の振幅が所定の高閾値よりも小さく、且つ第1検出部が検出した信号のサブ周期位置が180°に等しいと定義される。測定範囲の終点は、第2検出部が検出した信号の振幅が所定の低閾値を上回り、且つ第2検出部が検出した信号のサブ周期位置が180°に等しいと定義される。
【0019】
運動部が左から右へ運動して移動する場合、測定範囲の始点は、第1検出部が検出した信号の振幅が低閾値よりも大きく、且つ第1検出部が検出した信号のサブ周期位置が180°に等しいと定義される。測定範囲の終点は、第2検出部が検出した信号の振幅が低閾値よりも小さく、且つ第2検出部が検出した信号のサブ周期位置が180°に等しいと定義される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の好ましい実施例の概念図である。
図2】本発明の別の実施例の概念図であり、測定モジュールの数が2つであることを示している。
図3】本発明の好ましい実施例において、第1検出部と第2検出部がそれぞれ8つの感磁素子を含む概念図である。
図4】本発明の好ましい実施例において、第1検出部が信号を検出する概念図である。
図5A】本発明の好ましい実施例の底面図である。
図5B】本発明の好ましい実施例の側面図である。
図6】本発明の好ましい実施例の信号処理概念図であり、図中、キャリアは現位置まで左から右へ移動している。
図7】本発明の実施例における測定機構の概念図であり、各部材の長さ、距離及び位置関係を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施例を図に基づいて説明する。
【実施例0022】
本発明の好ましい実施例中で提供するリニア運動システムの測定機構(10)では、不連続な固定子の永久磁石式リニアモータ(DSPM-LSM)を例としており、測定機構(10)は、ベース部(20)、運動部(30)及び測定モジュール(40)を含む。
【0023】
図1に示す通り、ベース部(20)は、所定の長さを有するベース部(20)(図示しない)であり、ベース部(20)には少なくとも1つの固定子(21)がベース部(20)の長軸方向に沿って延在するように設けられている。
【0024】
運動部(30)は、ベース部(20)の片側に位置し且つ片側が固定子(21)と隔たれたキャリア(31)と、キャリア(31)に複数の磁石(321)が順に設けられた一次元磁石アレイ(32)を有しており、一次側となる固定子(21)と磁石アレイ(32)の間の磁場相互作用により、運動部(30)をベース(20)の長軸方向に沿って移動させることができるが、固定子(21)を一次側とし、運動部(30)を二次側とする技術内容については公知技術の範疇に属し、本発明が属する技術分野の当業者に既知のものであるため、ここでの説明は省略する。
【0025】
測定モジュール(40)は、第1検出部(41)、第2検出部(42)、第3検出部(43)及び処理部(44)を有する。
【0026】
第1検出部(41)及び第2検出部(42)は、ベース部(20)に設けられ、且つそれぞれ固定子(21)の対応するベース部(20)の長軸方向における両端に位置し、これにより、固定子(21)を第1検出部(41)と第2検出部(42)の間に介在させており、図3に示す通り、第1検出部(41)と第2検出部(42)は、それぞれ磁石アレイ(32)の磁場変化を検出するための8つの感磁素子(Hall sensors,H1~H8)を含む。
【0027】
第3検出部(43)は、キャリア(31)に設けられた、特定の物理信号を生成するための信号ユニット(431)と、ベース部(20)に固定接続された、信号ユニット(431)が生成する信号を検出するためのセンシング素子(432)を含む。
【0028】
処理部(44)は、第1検出部(41)、第2検出部(42)及びセンシング素子(432)の検出情報を受信し、演算して運動部(30)の位置情報を取得した後、アクチュエータ(50)にフィードバックし、アクチュエータ(50)により固定子(21)に対する給電制御を行うものである。
【0029】
さらに、運動部(30)の移動ストロークが、単一の固定子を一次側としたときに作用可能な範囲を超える場合には、ベース部(20)が有する固定子の数を複数にしてもよく、図2で示した2つの固定子の例のように、2つの固定子(21)をベース部(20)に長軸方向と同軸で固定接続し、同時に測定モジュール(40)の数は固定子を増やした数に準拠させて同じく2つに増やすが、ここで、測定モジュールを増やすことに信号ユニットを増やすことは含まれず、信号ユニットの数はキャリア(31)の数と同じであり、単一とする。本実施例中、隣接する2つの測定モジュール(40)同士の距離は磁石アレイの長さと等しい。
【実施例0030】
図2に示す通り、本発明の別の実施例と好ましい実施例との違いは、測定モジュール(40)の数が2つであり、2つの測定モジュール(40)がキャリア(31)の運動方向に沿って配列され、運動経路に沿って位置フィードバックを提供することにあり、制御の便をはかるために、2つの測定モジュール(40)を互いに接続し、且つフィールドバス(fieldbus,61)によりモーションコントローラ(60)と接続してもよく、これにより、複数のキャリアの移動制御を処理するのに役立つであろう。
【0031】
図3に示す通り、第1検出部(41)又は第2検出部(42)がそれぞれ含む8つの感磁素子(Hall sensors,H1~H8)は、いずれも左から右へ順に配列され、各感磁素子(H1~H8)はそれぞれ測定軸に沿ってτ/4で変位(shifted on τ/4 along a measuring axis)させるが、図7に示す通り、τは磁石アレイ(32)の磁気周期(period of magnet array)、即ち同じ磁性の磁石(321)間の距離であり、第1検出部(41)と第2検出部(42)の長さはそれぞれ2つの磁気周期(τ)に相当する。さらに、第1感磁素子(H1)と第5感磁素子(H5)、第2感磁素子(H2)と第6感磁素子(H6)、第3感磁素子(H3)と第7感磁素子(H7)、第4感磁素子(H4)と第8感磁素子(H8)をそれぞれ並列接続して4組とし、これにより、平均フィードバック誤差を最適化して位置フィードバックの正確性及び感度を高め、4組に並列接続された感磁素子(H1~H8)が出力する信号は、それぞれCos+、Sin+、Cos-、Sin-の正弦及び余弦の差動信号であり、例えばUCos+=Ucos(α)、USin+=Usin(α)、UCos-=-Ucos(α)、USin-=-Usin(α)などであるが、そのうち、αは処理部(44)が公式α=atan2((UCos+ - UCos-)/(USin+ - USin-))に従って算出したサブ周期(sub-period)位置(角度)である。
【0032】
図5Aに示す通り、X軸方向での相対的な位置で言えば、第1検出部(41)は固定子(21)の左側に位置し、第2検出部(42)は固定子(21)の右側に位置しており、Y軸方向で言えば、第1検出部(41)と第2検出部(42)は、図5Aに示されるように、磁石アレイ(32)の磁石に対して中央に位置し得るだけでなく、Y軸方向に沿って磁石アレイ(32)の片側(図示しない)にも変位し得る。第3検出部(43)は、磁石アレイ(32)の片側に対応している。
【0033】
図4に示す通り、キャリア(31)が現位置(P1)まで左から右へ移動する運動過程において、第1検出部(41)が検出した信号中、正弦(411)振幅(412)と余弦(413)信号もこれに伴って変化し、そのうち、振幅(412)の変化は、磁石アレイ(32)が各感磁素子(H1~H8)のすべてをカバーしていないときに生じ、すなわち、キャリア(31)が第1検出部(41)の測定範囲を出入りするときに、振幅(412)が減少する状況が生じ、サブ周期(α1、414)が1つ目の周期と最後の周期において顕著な干渉を受けるが、そのうち、振幅(A1、412)は下記式により推計する。
【0034】
【数1】
式中、Aは振幅であり、Cos+、Sin+、Cos-、Sin-はそれぞれ正弦及び余弦の差動信号である。
【0035】
同様に、第2検出部(42)が出力する検出信号中の正弦振幅及び余弦信号にも第1検出部(41)と同じ状況が生じる。
【0036】
図7に示す通り、固定子(21)を第1検出部(41)と第2検出部(42)の間の空間に介在させるパターン中、固定子(21)の長さ(L21)は第1検出部(41)と第2検出部(42)の間の間隔距離(L40)よりも小さい。間隔距離(L40)の長さは磁気周期(τ)の整数倍であり、且つ少なくとも4つの磁気周期(τ)の長さを有している必要があり、これにより、図6に示すような第1検出部(41)と第2検出部(42)の検出重複領域(401)が提供され、2つの検出部の信号を結合するときには、信頼度の低い周期(402a、402b)信号が排除される。測定スケールの長さ(L1)は磁気周期(τ)の整数倍であり、下記公式1により確定する。
【0037】
【数2】
式中、nは0を含む自然数である(公式1)。
【0038】
本実施例中、磁石アレイ(32)の長さは、測定スケールの長さ(L1)に等しい。
【0039】
図6に示す通り、第3検出部(43)は、第1検出部(41)と第2検出部(42)の信号結合点として、ユニーク且つ独特な結合点(433)を提供するため、重複領域(401)中に位置しており、結合点(433)の正確性を確保するため、図7に示す通り、信号ユニット(431)の長さ(L431)を2つの磁気周期(τ)よりも小さくし、且つ信号ユニット(431)の信号(435)と第1検出部(41)のサブ周期(414)の180度の位置で確定する必要があり、さらに信頼度の低い周期(402a、402b)の影響を回避するため、第3検出部(43)の設置位置が限定されるが、例を挙げると、感磁素子(H1~H8)の長さが2つの磁気周期(τ)である場合、信号ユニット(431)は、第1検出部(41)と第2検出部(42)の重複領域(401)中の第3及び第4重複周期に位置することができる。
【0040】
図6に示す通り、第3検出部(43)は、重複領域(401)中でユニーク且つ独特な零点(434)を生成するためのものであり、零点(434)の位置は、信号ユニット(431)と第1検出部(41)のサブ周期(414)により画定されるが、そのうち、第1検出部のサブ周期(414)は閾値(α10)に等しく、例を挙げると、図6中に示されている閾値(α10)は零であるため、信号ユニットの長さ(L431)は公式2を満たす必要がある。
【0041】
【数3】
【0042】
図7に示す通り、センシング素子(432)変位距離(Ls)(図示しない)は、1つの磁気周期(τ)よりも小さい。その位置は、下記公式により確定され、第1検出部の最初のサブ周期(414)の間隔長さ(L13)に対応しており、間隔長さ(L13)は:
【0043】
【数4】
【0044】
信号ユニット(431)の設定する変位距離(Lf)(図示しない)は、自身の長さ(L431)の半分であり、磁石アレイ(32)の最初の磁気周期(τ)との間の距離(L211)は、下記公式4により確定する。
【0045】
【数5】
【0046】
例を挙げると、図6中、センシング素子(432)の変位距離(Ls)は1/4磁気周期(τ)であり、信号ユニット(431)の変位距離(Lf)はほぼ0に近い。
【0047】
また、本発明は、運動部(30)の差動パターンに基づき測定モジュール(40)の測定範囲(403)を算出することもでき、そのうち、図6中、キャリア(31)が左から右へ運動して移動する場合には、下記公式5に基づき測定モジュール(40)の測定範囲(403)の始点(241)及び終点(242)を定義するが、そのうち、Alowthは低閾値(249)であり、例えばAlowthは規定振幅の25%とし、Ahighthは高閾値(248)であり、例えばAhighthは規定振幅の75%とする。これにより、処理部(44)が第1検出部(41)の振幅(A1、412)とサブ周期(α1、414)、及び第2検出部(42)の振幅(A2、421)とサブ周期(α2、422)を算出する。つまり、第1検出部(41)の振幅(A1、412)は低閾値(249)よりも大きく、第1検出部(41)のサブ周期(α1、414)の位置は180°に等しく、第2検出部(42)の振幅(A2、421)は高閾値(248)よりも低く、第2検出部(42)のサブ周期(α2、422)の位置は180°である。
【0048】
【数6】
【0049】
キャリア(31)が右から左へ運動して移動する場合には、下記公式6に基づき測定モジュール(40)の測定範囲(403)の始点(241)及び終点(242)を定義する。つまり、第1検出部(41)の振幅(A1、412)は高閾値(248)よりも小さく、第1検出部(41)のサブ周期(α1、414)の位置は180°に等しく、第2検出部(42)の振幅(A2、421)は低閾値(249)を上回り、第2検出部(42)のサブ周期(α2、422)の位置は180°である。
【0050】
【数7】
【0051】
さらに、キャリア(31)が測定範囲(403)に進入するとき、処理部(44)が演算した運動部(30)の位置情報をアクチュエータ(50)にフィードバックし、且つアクチュエータ(50)を利用して固定子(21)を制御することで電流転流を行う。本実施例では、図7に示す通り、第1検出部(41)と固定子(21)の間の間隔距離(L25)を調整して、第1検出部(41)の各感磁素子(H1~H8)と固定子(21)のコイルを同じ位相にすることで、固定子(21)の給電制御方法を簡略化している。
【0052】
測定範囲(403)はさらに、結合点(433)を基準として第1測定範囲(217)と第2測定範囲(227)に区分されており、そのうち、キャリア(31)が結合点(433)の左側にあるときは、第1測定範囲(217)中に位置しており、第1検出部(41)のサブ周期(414)を利用して運動部(30)の位置を算出し、フィードバックする。キャリア(31)が結合点(433)の右側にあるときは、第2測定範囲(227)中に位置しており、第2検出部(42)のサブ周期(422)を利用して運動部(30)の位置を算出し、フィードバックする。
【0053】
図7中、隣接する2つの測定モジュール(40)に重複領域を持たせるため、各測定モジュール(40)の第1検出部(41)同士の間隔距離(L11)は、磁石アレイ(32)の長さ(L1)と等しくさせている。
【0054】
また、図7に示すような2つの磁石アレイ(32)を例にすると、2つの磁石アレイ(32)はキャリア(31)に長軸方向と同軸で固定接続されており、算出される始点(241)と終点(242)の正確性を確保するため、隣接する2つの磁石アレイ(32)の最小距離(L1010)は第1検出部(41)の長さ(L2)と等しく、且つ2つの磁気周期(τ)に相当するようにしている。本実施例では、隣接する2つの磁石アレイ(32)の間に少なくとも1つのスペーサ(111、112)が設置されており、それ自身の長さにより最小距離(L1010)が提供されている。
【符号の説明】
【0055】
10 リニア運動システムの測定機構
111、112 スペーサ
20 ベース部
21 固定子
217 第1測定範囲
227 第2測定範囲
241 始点
242 終点
248 高閾値
249 低閾値
30 運動部
31 キャリア
32 磁石アレイ
321 磁石
40 測定モジュール
401 重複領域
402a、402b 信頼度の低い周期
403 測定範囲
41 第1検出部
411 正弦
412、421 振幅
413 余弦
414、422 サブ周期
42 第2検出部
H1~H8 感磁素子
43 第3検出部
431 信号ユニット
432 センシング素子
433 結合点
434 零点
435 信号
44 処理部
50 アクチュエータ
60 モーションコントローラ
61 フィールドバス
τ 磁気周期
α サブ周期(図示しない)
α10 サブ周期閾値
A1、A2 振幅
α1、α2 サブ周期
L1 測定スケールの長さ
L2 検出部の長さ
L21 固定子の長さ
L11、L40、L211、L25 間隔距離
L1010 最小距離
L13 間隔長さ
L431 信号ユニットの長さ
P1 現位置
Ls、Lf 変位距離(図示しない)
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-04-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、
前記ベース部に対して移動可能な、運動部と、
前記運動部中に設けられた、少なくとも1つの磁石アレイと、
磁石アレイの磁場を検出するため、ベース部に間隔を空けてそれぞれ設けられた、第1検出部及び第2検出部と、
前記運動部に設けられた信号ユニット、及び前記ベース部に設けられ且つ前記信号ユニットを検出するためのセンシング素子を有する、第3検出部と、
前記第1検出部及び前記第2検出部の検出信号をそれぞれ受信し、対応する前記磁石アレイのサブ周期をそれぞれ算出した後、前記センシング素子の検出情報と合わせて演算することにより、前記運動部の運動経路を取得し、アクチュエータにフィードバックして、前記運動部の運動パターンを調整する、処理部と、を含み、
前記第1検出部と前記第2検出部がそれぞれ測定範囲中で検出した信号を結合点で結合し、
前記運動部が右から左へ運動して移動する場合、前記測定範囲の始点は、前記第1検出部が検出した信号の振幅が所定の高閾値よりも小さく、且つ前記第1検出部が検出した信号のサブ周期位置が180°に等しいと定義され、前記測定範囲の終点は、前記第2検出部が検出した信号の振幅が所定の低閾値を上回り、且つ前記第2検出部が検出した信号のサブ周期位置が180°に等しいと定義され、
前記運動部が左から右へ運動して移動する場合、前記測定範囲の始点は、前記第1検出部が検出した信号の振幅が低閾値よりも大きく、且つ前記第1検出部が検出した信号のサブ周期位置が180°に等しいと定義され、前記測定範囲の終点は、前記第2検出部が検出した信号の振幅が低閾値よりも小さく、且つ前記第2検出部が検出した信号のサブ周期位置が180°に等しいと定義される、位置測定機構。
【請求項2】
前記磁石アレイは複数の磁石を有し、磁性が同じである2つの磁石同士の最小距離が前記磁石アレイの磁気周期であり、且つ前記磁石アレイの長さを前記磁石アレイの磁気周期の整数倍とした、請求項1に記載の位置測定機構。
【請求項3】
前記磁石アレイの数は2つであり、互いに隣接するように前記運動部に配置され、隣接する2つの磁石アレイの距離は少なくとも2つの磁気周期である、請求項2に記載の位置測定機構。
【請求項4】
それぞれが前記第1検出部、前記第2検出部及び前記第3検出部を含む複数の測定モジュールをさらに含み、隣接する2つの測定モジュール同士の距離は前記磁石アレイの長さと等しい、請求項1に記載の位置測定機構。
【請求項5】
前記第1検出部と前記第2検出部はそれぞれ8つの感磁素子を含み、各前記感磁素子はそれぞれ磁石アレイの磁気周期の四分の一の距離で左から右へ順に配列され、第1感磁素子と第5感磁素子が並列接続され、第2感磁素子と第6感磁素子が並列接続され、第3感磁素子と第7感磁素子が並列接続され、第4感磁素子と第8感磁素子が並列接続された、請求項1に記載の位置測定機構。
【請求項6】
前記アクチュエータは、前記ベース部に設けられた固定子に対して電流制御を行い、フィールドバスを用いてモーションコントローラに接続される、請求項2に記載の位置測定機構。
【請求項7】
前記第1検出部は前記固定子の左側に位置し、前記第2検出部は前記固定子の右側に位置し、
前記第1検出部と前記第2検出部の間の間隔距離は、前記磁気周期の整数倍であり、
前記磁石アレイの長さは、前記第1検出部と前記第2検出部の間の間隔距離よりも大きく、且つ前記磁石アレイの少なくとも4つの磁気周期であり、
前記第3検出部は、基準となる結合点を提供するものであり、前記第1検出部と前記第2検出部の信号を結合することができる、請求項6に記載の位置測定機構。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の前記第1検出部と前記第2検出部がそれぞれ測定範囲中で検出した信号を結合点で結合し、
前記運動部が右から左へ運動して移動する場合、前記測定範囲の始点は、前記第1検出部が検出した信号の振幅が所定の高閾値よりも小さく、且つ前記第1検出部が検出した信号のサブ周期位置が180°に等しいと定義され、前記測定範囲の終点は、前記第2検出部が検出した信号の振幅が所定の低閾値を上回り、且つ前記第2検出部が検出した信号のサブ周期位置が180°に等しいと定義され、
前記運動部が左から右へ運動して移動する場合、前記測定範囲の始点は、前記第1検出部が検出した信号の振幅が低閾値よりも大きく、且つ前記第1検出部が検出した信号のサブ周期位置が180°に等しいと定義され、前記測定範囲の終点は、前記第2検出部が検出した信号の振幅が低閾値よりも小さく、且つ前記第2検出部が検出した信号のサブ周期位置が180°に等しいと定義される、位置測定方法。
【請求項9】
前記測定範囲は、前記結合点によって前記第1検出部の第1測定区間と前記第2検出部の第2測定区間に区分され、前記第1測定区間と前記第2測定区間はそれぞれ前記運動部の作動方向に沿って配置され、且つ互いに近接している、請求項8に記載の位置測定方法。