(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107444
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】抱き持ち具
(51)【国際特許分類】
A47D 13/02 20060101AFI20220713BHJP
A45F 3/04 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
A47D13/02
A45F3/04
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002399
(22)【出願日】2021-01-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】515212389
【氏名又は名称】一般社団法人Brain’s Consensus Communications
(74)【代理人】
【識別番号】100135781
【弁理士】
【氏名又は名称】西原 広徳
(72)【発明者】
【氏名】岡田 哲也
【テーマコード(参考)】
2E181
【Fターム(参考)】
2E181AA05
2E181BD03
(57)【要約】
【課題】人または物を抱えたヒトの姿勢を正しい姿勢に誘導し、抱きかかえ対象に対する力の伝達を補助する姿勢誘導抱き持ち具を提供することを目的とする。
【解決手段】第1誘導体は、利用者の左肩付近に装着される左肩装着部と、抱き持ち部の右側と接続する抱き持ち部右接続部と、少なくとも前記利用者の背面側を通り、前記左肩装着部と前記抱き持ち部右接続部とを接続し、前記抱き持ち部右接続部の方向へ引っ張る第1引張体と、を有し、第2誘導体は、前記利用者の右肩付近に装着される右肩装着部と、前記抱き持ち部の左側と接続する抱き持ち部左接続部と、少なくとも前記利用者の背面側を通り、前記右肩装着部と前記抱き持ち部左接続部とを接続し、前記抱き持ち部左接続部の方向へ引っ張る第2引張体と、を有する構成とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1誘導体と、第2誘導体と、前記第1誘導体および前記第2誘導体と接続し、利用者の腰から頭部の間かつ前方に配置された抱き持ち部とを備え、
前記第1誘導体は、前記利用者の左肩に装着される左肩装着部と、
前記抱き持ち部の右側と接続する抱き持ち部右接続部と、
少なくとも前記利用者の背面側を通り、前記左肩装着部と前記抱き持ち部右接続部とを接続し、前記抱き持ち部右接続部の方向へ引っ張る第1引張体と、を有し、
前記第2誘導体は、前記利用者の右肩に装着される右肩装着部と、
前記抱き持ち部の左側と接続する抱き持ち部左接続部と、
少なくとも前記利用者の背面側を通り、前記右肩装着部と前記抱き持ち部左接続部とを接続し、前記抱き持ち部左接続部の方向へ引っ張る第2引張体と、を有する
抱き持ち具。
【請求項2】
前記第1誘導体は、前記左肩装着部と前記第1引張体とを接続する第3引張体を有し、
前記第2誘導体は、前記右肩装着部と前記第2引張体とを接続する第4引張体を有し、
前記第1引張体は、
前記利用者の左脇に装着される左脇装着部を有し、
前記左肩装着部から前記利用者の前面、前記左脇装着部、および前記利用者の背面を経由して前記抱き持ち部右接続部に接続し、
前記第2引張体は、
前記利用者の右脇に装着される右脇装着部を有し、
前記右肩装着部から前記利用者の前面、前記右脇装着部、および前記利用者の背面を経由して前記抱き持ち部左接続部に接続し、
前記第3引張体は、
前記第1引張体と、前記使用者の背面の縦方向中心線より右側で接続し、
前記第4引張体は、
前記第2引張体と、前記使用者の背面の縦方向中心線より左側で接続する構成である
請求項1記載の抱き持ち具。
【請求項3】
前記第1引張体および第2引張体のそれぞれは、幅を有する紐状に形成され、
前記第1引張体は、
前記左脇装着部の前記幅よりも前記抱き持ち部右接続部の前記幅が大きく、
前記第2引張体は、
前記右脇装着部の前記幅よりも前記抱き持ち部左接続部の前記幅が大きい
請求項2記載の抱き持ち具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人または物を抱えるための抱き持ち具に関する。
【背景技術】
【0002】
人は、乳幼児や重いものを前方に抱きかかえて歩行しようとした際に、重心が前方に移動することから、姿勢が前のめりになりがちである。しかし、この前のめりの姿勢では、人は抱きかかえ対象に十分に力を伝達することができない。また、長時間前のめりの姿勢を維持すると、その姿勢の癖がついてしまうことで、スタイルや見た目が悪くなるといった美容面ばかりでなく、肩こりや腰痛などの身体の不調を引き起こす原因ともなり得る。
【0003】
乳幼児の抱きかかえを補助するものとして、例えば乳児用抱っこ補助具が提案されている(特許文献1参照)。この乳児用抱っこ補助具は、抱きかかえ対象となる乳幼児を下から支えるように、使用者の肩から反対側の脇腹に通すような、たすき掛けの要領で装着する形態で、使用者の腕の負担を低減するよう設計されている。しかし、このような抱きかかえ補助ベルトは、利用者の姿勢を誘導するものではなく、力の伝達の補助や、乳幼児を抱きかかえることで発生する姿勢の悪化を正せるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、上述の問題に鑑みて、人または物を抱えたヒトの姿勢を正しい姿勢に誘導し、抱きかかえ対象に対する力の伝達を補助する姿勢誘導機能を有する抱き持ち具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1誘導体と、第2誘導体と、前記第1誘導体および前記第2誘導体と接続し、利用者の腰から頭部の間かつ前方に配置された抱き持ち部とを備え、前記第1誘導体は、前記利用者の左肩に装着される左肩装着部と、前記抱き持ち部の右側と接続する抱き持ち部右接続部と、少なくとも前記利用者の背面側を通り、前記左肩装着部と前記抱き持ち部右接続部とを接続し、前記抱き持ち部右接続部の方向へ引っ張る第1引張体と、を有し、前記第2誘導体は、前記利用者の右肩に装着される右肩装着部と、前記抱き持ち部の左側と接続する抱き持ち部左接続部と、少なくとも前記利用者の背面側を通り、前記右肩装着部と前記抱き持ち部左接続部とを接続し、前記抱き持ち部左接続部の方向へ引っ張る第2引張体と、を有する姿勢誘導抱き持ち具とした。
【発明の効果】
【0007】
この発明により、人または物を抱えた使用者の上半身を正しい姿勢に誘導することで、抱きかかえ対象物に対する力の伝達を補助することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】使用者が装着した際の本発明に係る姿勢誘導抱き持ち具の背面図。
【
図2】使用者が装着した際の本発明に係る姿勢誘導抱き持ち具の右背面斜視図。
【
図3】使用者が装着した際の本発明に係る姿勢誘導抱き持ち具の正面図。
【
図4】使用者が装着した際の本発明に係る姿勢誘導抱き持ち具の左正面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面と共に説明する。
図1は、使用者が装着した際の本発明に係る姿勢誘導機能を有する抱き持ち具(姿勢誘導抱き持ち具1)の背面図である。
図2は、使用者が装着した際の本発明に係る姿勢誘導抱き持ち具1の右背面斜視図である。
図3は、使用者が装着した際の本発明に係る姿勢誘導抱き持ち具1の正面図である。
図4は、使用者が装着した際の本発明に係る姿勢誘導抱き持ち具1の左正面斜視図である。
【0010】
姿勢誘導抱き持ち具1は、紐状、ベルト状または帯状の第1誘導体Aと、紐状、ベルト状または帯状の第2誘導体Bと、抱き持ち部Cとを有する。第1誘導体A、第2誘導体Bおよび抱き持ち部Cは、布製である。第1誘導体Aは、左肩装着部10Lと、抱き持ち部右接続部25Rと、左肩装着部10Lと抱き持ち部右接続部25Rを繋ぐ第1引張体12Lと、左肩装着部10Lと第1引張体12Lを繋ぐ第3引張体11Lで構成されている。第2誘導体Bは、右肩装着部10Rと、抱き持ち部左接続部25Lと、右肩装着部10Rと抱き持ち部左接続部25Lを繋ぐ第2引張体12Rと、右肩装着部10Rと第2引張体12Rを繋ぐ第4引張体11Rで構成されている。
【0011】
抱き持ち部Cは、使用者が姿勢誘導抱き持ち具1を装着した際に、使用者の腰前方から頭部までの間、たとえば腹部前方に配置され、使用者の前方に向かって凸の湾曲した形状を有する。すなわち、使用者のお腹と抱き持ち部Cによって、乳幼児などの抱き持ち対象を収める空間を形成する。以下、本実施例形態では抱き持ち対象が乳幼児である場合を例に挙げて説明する。抱き持ち部Cは、乳幼児を抱きかかえた際に、乳幼児の背もたれとなる背もたれ部20と、乳幼児の頭部を支える頭部支部21と、下方から乳幼児を支える下方支部22と、乳幼児の右脚部を挿通する右脚挿通穴23Lと、乳幼児の左脚部を挿通する左脚挿通穴23Rとを有する。
【0012】
使用者が姿勢誘導抱き持ち具1を装着した際に、左肩装着部10Lと右肩装着部10Rはそれぞれ利用者の左肩と右肩の上面に沿うように装着され、第1引張体12Lと第2引張体12Rは、それぞれ左肩装着部10Lと右肩装着部10Rに接続され、左肩装着部10Lと右肩装着部10Rとの接続部から利用者の前方の腕の付け根に沿ったあと脇の下から背中側を通り、抱き持ち部左接続部25Lと抱き持ち部右接続部25Rはそれぞれ抱き持ち部Cの左端部付近と右端部付近に接続される。ただし、本明細書において「肩」とは、腕の上端部から首元までの範囲を含む人体の部分のことをいう。
【0013】
左肩装着部10Lは、使用者の前方の左腕の付け根に沿って延びる第1引張体12Lと、使用者の背中に沿って左肩から右側腰部に向かって延びる第3引張体11Lの境界である。また、右肩装着部10Rは、使用者の前方の右腕の付け根に沿って延びる第2引張体12Rと、使用者の背中に沿って右肩から左側腰部に向かって延びる第4引張体11Rの境界である。
【0014】
左肩装着部10Lおよび、右肩装着部10Rの横幅は、1cm~7cmとすることができ、2cm~6cmが好適であり、3cm~5cmとすることがより好適である。左肩装着部10Lおよび、右肩装着部10Rの厚みは、横幅より薄い。これにより、引っ張られても横幅の分だけ力が分散されて痛くなく、かつ、利用者の身体にフィットしてごわつかず、目立たないようにできる。
【0015】
第1引張体12Lと第2引張体12Rと第3引張体11Lと第4引張体11Rは、紐状あるいはベルト状、帯状に形成されている。この第1引張体12Lと第2引張体12Rと第3引張体11Lと第4引張体11Rは、左肩装着部10Lおよび右肩装着部10Rと同じ素材で形成されている。
【0016】
第1引張体12Lは、左肩固定部13Lと、左脇装着部17Lと、第3引張体11Lと接続する右側引張体接続部18Rとを有する。第1引張体12Lは、左肩装着部10Lから使用者の前方の左腕の付け根に沿って延びて左肩固定部13Lを形成し、左脇装着部17Lを経由して使用者の背面に回り、抱き持ち部右接続部25Rに固定される。第1引張体12Lと抱き持ち部右接続部25Rとの固定方法は、面ファスナー(マジックテープ(登録商標))やボタンといった種々の固定方法を使用できる。
【0017】
第3引張体11Lは、左肩装着部10Lから使用者の背面に延び、右側引張体接続部18Rと固定される。右側引張体接続部18Rは、使用者の背面の縦方向中心線より右側に配置される。第3引張体11Lと右側引張体接続部18Rとの固定方法は、面ファスナーやボタンといった種々の固定方法を使用できる。
【0018】
第2引張体12Rは、右肩固定部13Rと、右脇装着部17Rと、第4引張体11Rと接続する左側引張体接続部18Lとを有する。第2引張体12Rは、右肩装着部10Rから使用者の前方の右腕の付け根に沿って延びて右肩固定部13Rを形成し、右脇装着部17Rを経由して使用者の背面に回り、抱き持ち部左接続部25Lに固定される。第2引張体12Rと抱き持ち部左接続部25Lとの固定方法は、面ファスナーやボタンといった種々の固定方法を使用できる。
【0019】
第4引張体11Rは、右肩装着部10Rから使用者の背面に延び、左側引張体接続部18Lと固定される。左側引張体接続部18Lは、使用者の背面の縦方向中心線より左側に配置される。第4引張体11Rと左側引張体接続部18Lとの固定方法は、面ファスナーやボタンといった種々の固定方法を使用できる。
【0020】
第1引張体12Lの横幅は、左脇装着部17Lにおける横幅よりも、右側引張体接続部18Rおよび抱き持ち部右接続部25Rにおける幅が広く設定される。同様に、第2引張体12Rの横幅は、右脇装着部17Rにおける横幅よりも、左側引張体接続部18Lおよび抱き持ち部左接続部25Lにおける幅が広く設定される。
【0021】
第1引張体12L、第2引張体12R、第3引張体11L、および第4引張体11Rの横幅は、1cm~7cmとすることができ、2cm~6cmとすることができ、3cm~5cmとすることが好適である。これにより、利用者の身体にフィットしてごわつかず、目立たないようにできる。
【0022】
第3引張体11Lと第4引張体11Rは、使用者の背中側の中央部で互いにクロスするよう交差し、交差部14を形成する。第3引張体11Lと第4引張体11Rは、交差部14において前後で重なるものの、互いに固定されていないことが好ましい。第1引張体12Lと第2引張体12Rは、互いにクロスするよう交差し、交差部16を形成する。第1引張体12Lと第2引張体12Rは、交差部16において前後で重なるものの、互いに固定されていないことが好ましい。ただし、交差部16は、交差部14よりも下方に位置し、交差部14と交差部16とは、所定の間隔を隔てて配置される。すなわち、交差部14と交差部16との間には、隙間が形成される。また、第1引張体12Lと第4引張体11Rは、互いにクロスするよう交差し、同様に第2引張体12Rと第3引張体11Lは、互いにクロスするように交差する。すなわち、第4引張体11Rの一部(先端部または下端部)が第1引張体12Lに重なり、第3引張体11Lの一部(先端部または下端部)が第2引張体12Rに重なる。第1引張体12L、第3引張体11L、第2引張体12R、および第4引張体11Rの、使用者の背面における重なり順は、特に限定されないが、第3引張体11Lおよび第4引張体11Rが、第1引張体12Lおよび第2引張体12Rよりも下側になるよう重なることが好ましい。
【0023】
使用者は、抱き持ち部左接続部25L、抱き持ち部右接続部25R、右側引張体接続部18R、および左側引張体接続部18Lをあらかじめ固定し、抱き持ち部Cが使用者自身の前方となるように、第1引張体12Lと第3引張体11Lとで形成された環状部に左腕を通し、第2引張体12Rと第4引張体11Rとで形成された環状部に右腕を通すことで、姿勢誘導抱き持ち具1を装着する。
すなわち、使用者の左肩は、左肩装着部10Lが装着され、抱き持ち対象が抱き持ち部Cに配置されると、各図の矢印の方向に向かって力がかかり、第1引張体12Lおよび第3引張体11Lによって、上下の2方向から背中側および右腰方向へ引っ張られる。同様に、使用者の右肩は、右肩装着部10Rが装着され、抱き持ち対象が抱き持ち部Cに配置されると、各図の矢印の方向に向かって力がかかり、第2引張体12Rおよび第4引張体11Rによって、上下の2方向から背中側、左腰方向へ引っ張られ、引っ張られた状態で抱き持ち部左接続部25Lによって固定される。ただし、第1誘導体A、第2誘導体Bおよび抱き持ち部Cのそれぞれは、抱き持ち対象の重みによって寸法が変化しないように(伸びないように)されている。したがって、使用者が姿勢誘導抱き持ち具1を装着すると、抱き持ち対象の重みによって、左右の肩が開き、胸を張り、使用者の背筋が伸びるように、使用者が上半身を起こしたような姿勢に誘導される。
【0024】
以上の構成により、姿勢誘導抱き持ち具1は、力の伝達を補助するだけでなく、人または物を抱えた使用者の上半身を正しい姿勢に誘導することができる。詳述すると、左右の肩甲骨を対側の下半身に向かって引っ張ることができる。このため、抱き持ち対象によって重心が前方にあるにもかかわらず、左右の肩甲骨を背中側で互いに引っ張り合わせることができる。こうすることで、背骨に集中している神経に刺激を与え、本来の機能を十分に果たしていなかった部位(省エネモードとなっていた部位)が機能し、その部位の出力が上がったり、力を発揮しやすくなる。したがって、調子が悪く力を入れなければならなかった動作について、調子が良くなって、無駄な力を入れずにその動作を行うことができる。また神経から筋肉へ送る信号の出力が上がり、筋力も増加する。そうして、抱き持ち対象により大きな力を伝達することができる。また、抱きかかえた際の姿勢が正されるため、腰部に負担をかけずに抱き持ち対象を抱きかかえることができる。また、姿勢誘導抱き持ち具1により、抱かれる乳幼児の重みが母親の上半身を正しい姿勢に誘導し、母親の健康を守ることができる。
【0025】
また、姿勢誘導抱き持ち具1は、使用者の肩甲骨を左右でクロスして下半身方向に引っ張りながら引き合わせる形態である。この構成により、左右の肩甲骨を後方へそらして胸を左右方向に張るようにする姿勢誘導と、背中の上方と上半身下方とを引き合わせるようにして胸を上下方向に張るようにする姿勢誘導の両方を同時に実行することができ、効果的に姿勢を伸ばして正しい姿勢とすることができる。
【0026】
また、左肩装着部10Lから抱き持ち部右接続部25Rに向けて引っ張られ、同じ強さで右肩装着部10Rから抱き持ち部左接続部25Lに向けて引っ張られることにより、利用者の胸を左右に広げ、かつ、胸を前上方へ張るように反らすことができる。
【0027】
第1引張体12Lと第2引張体12Rが交差している交差部16と、第3引張体11Lと第4引張体11Rが交差している交差部14は、両方とも固定されていないため、それぞれが自由に移動・伸縮できる。これにより、第1引張体12Lおよび第3引張体11Lによって左肩を右腰から引っ張ることができ、第2引張体12Rおよび第4引張体11Rによって右肩を左腰から引っ張ることができる。交差部14および交差部16で固定すると背中中心から引っ張ることになるが、そうではなく肩を反対側の腰から引っ張ることで、効果的に姿勢を正し、身体のバランスを整えることができる。
【0028】
使用者は、姿勢誘導抱き持ち具1によって、身体全体を正しい姿勢にすることで、身体のバランスが保たれ、余計な力を使うことなく身体を支えることや、動かすことができる。これにより姿勢誘導抱き持ち具1は、重心が前方にあることから使用者の身体の使い方が偏って発生する頭痛や肩こりなどの症状を解消、軽減することもできる。
【0029】
姿勢誘導抱き持ち具1は、使用者の左肩を、第1引張体12Lおよび第3引張体11Lによって上下方向それぞれから同時に右腰方向に引っ張る形態であり、使用者の右肩を、第2引張体12Rおよび第4引張体11Rによって上下方向それぞれから同時に左腰方向に引っ張る構成である。この構成により、引張体が左右それぞれ1本のときと比較して、抱き持ち対象によって肩にかかる力が分散され、より楽に抱き持ち対象を抱きかかえることができる。さらに、肩を引っ張る力が上下方向からかかることにより、左右の肩固定部13R、13Lによってバランスよく肩が引っ張られ、より正しい姿勢誘導を行うことができる。
【0030】
第1引張体12Lは、左脇装着部17Lにおける横幅よりも、右側引張体接続部18Rおよび抱き持ち部右接続部25Rにおける横幅の方が広く設定され、同様に、第2引張体12Rは、右脇装着部17Rにおける横幅よりも、左側引張体接続部18Lおよび抱き持ち部左接続部25Lにおける横幅が広く設定される。この構成により、抱き持ち部Cを脱落することなく強固に保持することができる。
【0031】
第1引張体12L、第3引張体11L、第2引張体12R、および第4引張体11Rは互いにクロスするように重なり、使用者の背面における重なり順が、第3引張体11Lおよび第4引張体11Rが第1引張体12Lおよび第2引張体12Rよりも下側になるよう重なる構成である。この構成により、各引張体固定部18R、18Lが外れにくく、姿勢誘導抱き持ち具1および抱き持ち部Cの脱落を防止することができる。
【0032】
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
例えば、左肩装着部10L、左肩固定部13L、および左脇装着部17Lすべてを有する円環形状の左肩固定装着部と、左肩固定装着部から延びて抱き持ち部右接続部25Rと接続する1本の第1引張体12Lを備え、反対側には同様に右肩装着部10R、右肩固定部13R、および右脇装着部17Rすべてを有する円環形状の右肩固定装着部と、右肩固定装着部から延びて抱き持ち部左接続部25Lと接続する1本の第2引張体12Rを備えることで、左右の引張体を各1本ずつの構成としてもよい。このような構成であっても、実施例と同様の効果を得ることができる。
【0033】
実施例では、抱き持ち部右接続部25R、抱き持ち部左接続部25L、右側引張体接続部18R、および左側引張体接続部18Lは面ファスナーまたはボタン等で構成され、使用者が装着前に固定できる形態としたが、各接続部は製造段階で縫い付けられる、もしくは一体に形成されている構成であってもよい。
【0034】
実施例では抱き持ち対象を乳幼児としたときの例を説明したが、この例に限定されない。例えば、リュックといった内容物によって重量が変化する物でもよく、引っ越し用の段ボールといった通常持ち運ぶには腰に大きな負担がかかる物であってもよい。また、抱き持ち部Cが有する背もたれ部20、頭部支部21、下方支部22、右脚挿通穴23L、および左脚挿通穴23Rといった形状は、抱き持ち対象の大きさおよび形状に応じて、適宜変更してもよい。このようにすることで、姿勢誘導抱き持ち具1にて持ち上げられる荷物によって使用者の健康が守られることとなる。また、年寄であっても姿勢誘導抱き持ち具1によって重い荷物を運ぶことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明は、人または物を抱える抱き持ち具に利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1…姿勢誘導抱き持ち具
A…第1誘導体
B…第2誘導体
C…抱き持ち部
10L…左肩装着部
10R…右肩装着部
11L…第3引張体
11R…第4引張体
12L…第1引張体
12R…第2引張体
17L…右脇装着部
17R…左脇装着部
25R…抱き持ち部右接続部
25L…抱き持ち部左接続部
【手続補正書】
【提出日】2021-05-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1誘導体と、第2誘導体と、前記第1誘導体および前記第2誘導体と接続し、利用者の腰から頭部の間かつ前方に配置された抱き持ち部とを備え、
前記第1誘導体は、前記利用者の左肩に装着される左肩装着部と、
前記抱き持ち部の右側と接続する抱き持ち部右接続部と、
少なくとも前記利用者の背面側を通り、前記左肩装着部と前記抱き持ち部右接続部とを接続し、前記抱き持ち部右接続部の方向へ引っ張る第1引張体と、
前記左肩装着部と前記第1引張体とを接続する第3引張体を有し、
前記第2誘導体は、前記利用者の右肩に装着される右肩装着部と、
前記抱き持ち部の左側と接続する抱き持ち部左接続部と、
少なくとも前記利用者の背面側を通り、前記右肩装着部と前記抱き持ち部左接続部とを接続し、前記抱き持ち部左接続部の方向へ引っ張る第2引張体と、
前記右肩装着部と前記第2引張体とを接続する第4引張体を有し、
前記第1引張体は、
前記利用者の左脇に装着される左脇装着部を有し、
前記左肩装着部から前記利用者の前面、前記左脇装着部、および前記利用者の背面を経由して前記抱き持ち部右接続部に接続し、
前記第2引張体は、
前記利用者の右脇に装着される右脇装着部を有し、
前記右肩装着部から前記利用者の前面、前記右脇装着部、および前記利用者の背面を経由して前記抱き持ち部左接続部に接続し、
前記第3引張体は、
前記第1引張体と、前記利用者の背面の縦方向中心線より右側で接続し、
前記第4引張体は、
前記第2引張体と、前記利用者の背面の縦方向中心線より左側で接続する構成である
抱き持ち具。
【請求項2】
前記第1引張体と前記第2引張体とが前記利用者の背面で互いにクロスするよう交差し、かつ互いに固定されない第1交差部と、
前記第3引張体と前記第4引張体とが前記利用者の背面で互いにクロスするよう交差し、かつ互いに固定されない第2交差部を有する
請求項1記載の抱き持ち具。
【請求項3】
前記第1引張体および前記第2引張体のそれぞれは、幅を有する紐状に形成され、
前記第1引張体は、
前記左脇装着部の前記幅よりも前記抱き持ち部右接続部の前記幅が大きく、
前記第2引張体は、
前記右脇装着部の前記幅よりも前記抱き持ち部左接続部の前記幅が大きい
請求項1または2記載の抱き持ち具。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人または物を抱えるための抱き持ち具に関する。
【背景技術】
【0002】
人は、乳幼児や重いものを前方に抱きかかえて歩行しようとした際に、重心が前方に移動することから、姿勢が前のめりになりがちである。しかし、この前のめりの姿勢では、人は抱きかかえ対象に十分に力を伝達することができない。また、長時間前のめりの姿勢を維持すると、その姿勢の癖がついてしまうことで、スタイルや見た目が悪くなるといった美容面ばかりでなく、肩こりや腰痛などの身体の不調を引き起こす原因ともなり得る。
【0003】
乳幼児の抱きかかえを補助するものとして、例えば乳児用抱っこ補助具が提案されている(特許文献1参照)。この乳児用抱っこ補助具は、抱きかかえ対象となる乳幼児を下から支えるように、使用者の肩から反対側の脇腹に通すような、たすき掛けの要領で装着する形態で、使用者の腕の負担を低減するよう設計されている。しかし、このような抱きかかえ補助ベルトは、利用者の姿勢を誘導するものではなく、力の伝達の補助や、乳幼児を抱きかかえることで発生する姿勢の悪化を正せるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、上述の問題に鑑みて、人または物を抱えたヒトの姿勢を正しい姿勢に誘導し、抱きかかえ対象に対する力の伝達を補助する姿勢誘導機能を有する抱き持ち具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1誘導体と、第2誘導体と、前記第1誘導体および前記第2誘導体と接続し、利用者の腰から頭部の間かつ前方に配置された抱き持ち部とを備え、前記第1誘導体は、前記利用者の左肩に装着される左肩装着部と、前記抱き持ち部の右側と接続する抱き持ち部右接続部と、少なくとも前記利用者の背面側を通り、前記左肩装着部と前記抱き持ち部右接続部とを接続し、前記抱き持ち部右接続部の方向へ引っ張る第1引張体と、前記左肩装着部と前記第1引張体とを接続する第3引張体を有し、前記第2誘導体は、前記利用者の右肩に装着される右肩装着部と、前記抱き持ち部の左側と接続する抱き持ち部左接続部と、少なくとも前記利用者の背面側を通り、前記右肩装着部と前記抱き持ち部左接続部とを接続し、前記抱き持ち部左接続部の方向へ引っ張る第2引張体と、前記右肩装着部と前記第2引張体とを接続する第4引張体を有し、前記第1引張体は、前記利用者の左脇に装着される左脇装着部を有し、前記左肩装着部から前記利用者の前面、前記左脇装着部、および前記利用者の背面を経由して前記抱き持ち部右接続部に接続し、前記第2引張体は、前記利用者の右脇に装着される右脇装着部を有し、前記右肩装着部から前記利用者の前面、前記右脇装着部、および前記利用者の背面を経由して前記抱き持ち部左接続部に接続し、前記第3引張体は、前記第1引張体と、前記利用者の背面の縦方向中心線より右側で接続し、前記第4引張体は、前記第2引張体と、前記利用者の背面の縦方向中心線より左側で接続する構成である抱き持ち具とした。
【発明の効果】
【0007】
この発明により、人または物を抱えた使用者の上半身を正しい姿勢に誘導することで、抱きかかえ対象物に対する力の伝達を補助することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】使用者が装着した際の本発明に係る姿勢誘導抱き持ち具の背面図。
【
図2】使用者が装着した際の本発明に係る姿勢誘導抱き持ち具の右背面斜視図。
【
図3】使用者が装着した際の本発明に係る姿勢誘導抱き持ち具の正面図。
【
図4】使用者が装着した際の本発明に係る姿勢誘導抱き持ち具の左正面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面と共に説明する。
図1は、使用者が装着した際の本発明に係る姿勢誘導機能を有する抱き持ち具(姿勢誘導抱き持ち具1)の背面図である。
図2は、使用者が装着した際の本発明に係る姿勢誘導抱き持ち具1の右背面斜視図である。
図3は、使用者が装着した際の本発明に係る姿勢誘導抱き持ち具1の正面図である。
図4は、使用者が装着した際の本発明に係る姿勢誘導抱き持ち具1の左正面斜視図である。
【0010】
姿勢誘導抱き持ち具1は、紐状、ベルト状または帯状の第1誘導体Aと、紐状、ベルト状または帯状の第2誘導体Bと、抱き持ち部Cとを有する。第1誘導体A、第2誘導体Bおよび抱き持ち部Cは、布製である。第1誘導体Aは、左肩装着部10Lと、抱き持ち部右接続部25Rと、左肩装着部10Lと抱き持ち部右接続部25Rを繋ぐ第1引張体12Lと、左肩装着部10Lと第1引張体12Lを繋ぐ第3引張体11Lで構成されている。第2誘導体Bは、右肩装着部10Rと、抱き持ち部左接続部25Lと、右肩装着部10Rと抱き持ち部左接続部25Lを繋ぐ第2引張体12Rと、右肩装着部10Rと第2引張体12Rを繋ぐ第4引張体11Rで構成されている。
【0011】
抱き持ち部Cは、使用者が姿勢誘導抱き持ち具1を装着した際に、使用者の腰前方から頭部までの間、たとえば腹部前方に配置され、使用者の前方に向かって凸の湾曲した形状を有する。すなわち、使用者のお腹と抱き持ち部Cによって、乳幼児などの抱き持ち対象を収める空間を形成する。以下、本実施例形態では抱き持ち対象が乳幼児である場合を例に挙げて説明する。抱き持ち部Cは、乳幼児を抱きかかえた際に、乳幼児の背もたれとなる背もたれ部20と、乳幼児の頭部を支える頭部支部21と、下方から乳幼児を支える下方支部22と、乳幼児の右脚部を挿通する右脚挿通穴23Lと、乳幼児の左脚部を挿通する左脚挿通穴23Rとを有する。
【0012】
使用者が姿勢誘導抱き持ち具1を装着した際に、左肩装着部10Lと右肩装着部10Rはそれぞれ利用者の左肩と右肩の上面に沿うように装着され、第1引張体12Lと第2引張体12Rは、それぞれ左肩装着部10Lと右肩装着部10Rに接続され、左肩装着部10Lと右肩装着部10Rとの接続部から利用者の前方の腕の付け根に沿ったあと脇の下から背中側を通り、抱き持ち部左接続部25Lと抱き持ち部右接続部25Rはそれぞれ抱き持ち部Cの左端部付近と右端部付近に接続される。ただし、本明細書において「肩」とは、腕の上端部から首元までの範囲を含む人体の部分のことをいう。
【0013】
左肩装着部10Lは、使用者の前方の左腕の付け根に沿って延びる第1引張体12Lと、使用者の背中に沿って左肩から右側腰部に向かって延びる第3引張体11Lの境界である。また、右肩装着部10Rは、使用者の前方の右腕の付け根に沿って延びる第2引張体12Rと、使用者の背中に沿って右肩から左側腰部に向かって延びる第4引張体11Rの境界である。
【0014】
左肩装着部10Lおよび、右肩装着部10Rの横幅は、1cm~7cmとすることができ、2cm~6cmが好適であり、3cm~5cmとすることがより好適である。左肩装着部10Lおよび、右肩装着部10Rの厚みは、横幅より薄い。これにより、引っ張られても横幅の分だけ力が分散されて痛くなく、かつ、利用者の身体にフィットしてごわつかず、目立たないようにできる。
【0015】
第1引張体12Lと第2引張体12Rと第3引張体11Lと第4引張体11Rは、紐状あるいはベルト状、帯状に形成されている。この第1引張体12Lと第2引張体12Rと第3引張体11Lと第4引張体11Rは、左肩装着部10Lおよび右肩装着部10Rと同じ素材で形成されている。
【0016】
第1引張体12Lは、左肩固定部13Lと、左脇装着部17Lと、第3引張体11Lと接続する右側引張体接続部18Rとを有する。第1引張体12Lは、左肩装着部10Lから使用者の前方の左腕の付け根に沿って延びて左肩固定部13Lを形成し、左脇装着部17Lを経由して使用者の背面に回り、抱き持ち部右接続部25Rに固定される。第1引張体12Lと抱き持ち部右接続部25Rとの固定方法は、面ファスナー(マジックテープ(登録商標))やボタンといった種々の固定方法を使用できる。
【0017】
第3引張体11Lは、左肩装着部10Lから使用者の背面に延び、右側引張体接続部18Rと固定される。右側引張体接続部18Rは、使用者の背面の縦方向中心線より右側に配置される。第3引張体11Lと右側引張体接続部18Rとの固定方法は、面ファスナーやボタンといった種々の固定方法を使用できる。
【0018】
第2引張体12Rは、右肩固定部13Rと、右脇装着部17Rと、第4引張体11Rと接続する左側引張体接続部18Lとを有する。第2引張体12Rは、右肩装着部10Rから使用者の前方の右腕の付け根に沿って延びて右肩固定部13Rを形成し、右脇装着部17Rを経由して使用者の背面に回り、抱き持ち部左接続部25Lに固定される。第2引張体12Rと抱き持ち部左接続部25Lとの固定方法は、面ファスナーやボタンといった種々の固定方法を使用できる。
【0019】
第4引張体11Rは、右肩装着部10Rから使用者の背面に延び、左側引張体接続部18Lと固定される。左側引張体接続部18Lは、使用者の背面の縦方向中心線より左側に配置される。第4引張体11Rと左側引張体接続部18Lとの固定方法は、面ファスナーやボタンといった種々の固定方法を使用できる。
【0020】
第1引張体12Lの横幅は、左脇装着部17Lにおける横幅よりも、右側引張体接続部18Rおよび抱き持ち部右接続部25Rにおける幅が広く設定される。同様に、第2引張体12Rの横幅は、右脇装着部17Rにおける横幅よりも、左側引張体接続部18Lおよび抱き持ち部左接続部25Lにおける幅が広く設定される。
【0021】
第1引張体12L、第2引張体12R、第3引張体11L、および第4引張体11Rの横幅は、1cm~7cmとすることができ、2cm~6cmとすることができ、3cm~5cmとすることが好適である。これにより、利用者の身体にフィットしてごわつかず、目立たないようにできる。
【0022】
第3引張体11Lと第4引張体11Rは、使用者の背中側の中央部で互いにクロスするよう交差し、交差部14を形成する。第3引張体11Lと第4引張体11Rは、交差部14において前後で重なるものの、互いに固定されていないことが好ましい。第1引張体12Lと第2引張体12Rは、互いにクロスするよう交差し、交差部16を形成する。第1引張体12Lと第2引張体12Rは、交差部16において前後で重なるものの、互いに固定されていないことが好ましい。ただし、交差部16は、交差部14よりも下方に位置し、交差部14と交差部16とは、所定の間隔を隔てて配置される。すなわち、交差部14と交差部16との間には、隙間が形成される。また、第1引張体12Lと第4引張体11Rは、互いにクロスするよう交差し、同様に第2引張体12Rと第3引張体11Lは、互いにクロスするように交差する。すなわち、第4引張体11Rの一部(先端部または下端部)が第1引張体12Lに重なり、第3引張体11Lの一部(先端部または下端部)が第2引張体12Rに重なる。第1引張体12L、第3引張体11L、第2引張体12R、および第4引張体11Rの、使用者の背面における重なり順は、特に限定されないが、第3引張体11Lおよび第4引張体11Rが、第1引張体12Lおよび第2引張体12Rよりも下側になるよう重なることが好ましい。
【0023】
使用者は、抱き持ち部左接続部25L、抱き持ち部右接続部25R、右側引張体接続部18R、および左側引張体接続部18Lをあらかじめ固定し、抱き持ち部Cが使用者自身の前方となるように、第1引張体12Lと第3引張体11Lとで形成された環状部に左腕を通し、第2引張体12Rと第4引張体11Rとで形成された環状部に右腕を通すことで、姿勢誘導抱き持ち具1を装着する。
すなわち、使用者の左肩は、左肩装着部10Lが装着され、抱き持ち対象が抱き持ち部Cに配置されると、各図の矢印の方向に向かって力がかかり、第1引張体12Lおよび第3引張体11Lによって、上下の2方向から背中側および右腰方向へ引っ張られる。同様に、使用者の右肩は、右肩装着部10Rが装着され、抱き持ち対象が抱き持ち部Cに配置されると、各図の矢印の方向に向かって力がかかり、第2引張体12Rおよび第4引張体11Rによって、上下の2方向から背中側、左腰方向へ引っ張られ、引っ張られた状態で抱き持ち部左接続部25Lによって固定される。ただし、第1誘導体A、第2誘導体Bおよび抱き持ち部Cのそれぞれは、抱き持ち対象の重みによって寸法が変化しないように(伸びないように)されている。したがって、使用者が姿勢誘導抱き持ち具1を装着すると、抱き持ち対象の重みによって、左右の肩が開き、胸を張り、使用者の背筋が伸びるように、使用者が上半身を起こしたような姿勢に誘導される。
【0024】
以上の構成により、姿勢誘導抱き持ち具1は、力の伝達を補助するだけでなく、人または物を抱えた使用者の上半身を正しい姿勢に誘導することができる。詳述すると、左右の肩甲骨を対側の下半身に向かって引っ張ることができる。このため、抱き持ち対象によって重心が前方にあるにもかかわらず、左右の肩甲骨を背中側で互いに引っ張り合わせることができる。こうすることで、背骨に集中している神経に刺激を与え、本来の機能を十分に果たしていなかった部位(省エネモードとなっていた部位)が機能し、その部位の出力が上がったり、力を発揮しやすくなる。したがって、調子が悪く力を入れなければならなかった動作について、調子が良くなって、無駄な力を入れずにその動作を行うことができる。また神経から筋肉へ送る信号の出力が上がり、筋力も増加する。そうして、抱き持ち対象により大きな力を伝達することができる。また、抱きかかえた際の姿勢が正されるため、腰部に負担をかけずに抱き持ち対象を抱きかかえることができる。また、姿勢誘導抱き持ち具1により、抱かれる乳幼児の重みが母親の上半身を正しい姿勢に誘導し、母親の健康を守ることができる。
【0025】
また、姿勢誘導抱き持ち具1は、使用者の肩甲骨を左右でクロスして下半身方向に引っ張りながら引き合わせる形態である。この構成により、左右の肩甲骨を後方へそらして胸を左右方向に張るようにする姿勢誘導と、背中の上方と上半身下方とを引き合わせるようにして胸を上下方向に張るようにする姿勢誘導の両方を同時に実行することができ、効果的に姿勢を伸ばして正しい姿勢とすることができる。
【0026】
また、左肩装着部10Lから抱き持ち部右接続部25Rに向けて引っ張られ、同じ強さで右肩装着部10Rから抱き持ち部左接続部25Lに向けて引っ張られることにより、利用者の胸を左右に広げ、かつ、胸を前上方へ張るように反らすことができる。
【0027】
第1引張体12Lと第2引張体12Rが交差している交差部16と、第3引張体11Lと第4引張体11Rが交差している交差部14は、両方とも固定されていないため、それぞれが自由に移動・伸縮できる。これにより、第1引張体12Lおよび第3引張体11Lによって左肩を右腰から引っ張ることができ、第2引張体12Rおよび第4引張体11Rによって右肩を左腰から引っ張ることができる。交差部14および交差部16で固定すると背中中心から引っ張ることになるが、そうではなく肩を反対側の腰から引っ張ることで、効果的に姿勢を正し、身体のバランスを整えることができる。
【0028】
使用者は、姿勢誘導抱き持ち具1によって、身体全体を正しい姿勢にすることで、身体のバランスが保たれ、余計な力を使うことなく身体を支えることや、動かすことができる。これにより姿勢誘導抱き持ち具1は、重心が前方にあることから使用者の身体の使い方が偏って発生する頭痛や肩こりなどの症状を解消、軽減することもできる。
【0029】
姿勢誘導抱き持ち具1は、使用者の左肩を、第1引張体12Lおよび第3引張体11Lによって上下方向それぞれから同時に右腰方向に引っ張る形態であり、使用者の右肩を、第2引張体12Rおよび第4引張体11Rによって上下方向それぞれから同時に左腰方向に引っ張る構成である。この構成により、引張体が左右それぞれ1本のときと比較して、抱き持ち対象によって肩にかかる力が分散され、より楽に抱き持ち対象を抱きかかえることができる。さらに、肩を引っ張る力が上下方向からかかることにより、左右の肩固定部13R、13Lによってバランスよく肩が引っ張られ、より正しい姿勢誘導を行うことができる。
【0030】
第1引張体12Lは、左脇装着部17Lにおける横幅よりも、右側引張体接続部18Rおよび抱き持ち部右接続部25Rにおける横幅の方が広く設定され、同様に、第2引張体12Rは、右脇装着部17Rにおける横幅よりも、左側引張体接続部18Lおよび抱き持ち部左接続部25Lにおける横幅が広く設定される。この構成により、抱き持ち部Cを脱落することなく強固に保持することができる。
【0031】
第1引張体12L、第3引張体11L、第2引張体12R、および第4引張体11Rは互いにクロスするように重なり、使用者の背面における重なり順が、第3引張体11Lおよび第4引張体11Rが第1引張体12Lおよび第2引張体12Rよりも下側になるよう重なる構成である。この構成により、各引張体接続部18R、18Lが外れにくく、姿勢誘導抱き持ち具1および抱き持ち部Cの脱落を防止することができる。
【0032】
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
例えば、左肩装着部10L、左肩固定部13L、および左脇装着部17Lすべてを有する円環形状の左肩固定装着部と、左肩固定装着部から延びて抱き持ち部右接続部25Rと接続する1本の第1引張体12Lを備え、反対側には同様に右肩装着部10R、右肩固定部13R、および右脇装着部17Rすべてを有する円環形状の右肩固定装着部と、右肩固定装着部から延びて抱き持ち部左接続部25Lと接続する1本の第2引張体12Rを備えることで、左右の引張体を各1本ずつの構成としてもよい。このような構成であっても、実施例と同様の効果を得ることができる。
【0033】
実施例では、抱き持ち部右接続部25R、抱き持ち部左接続部25L、右側引張体接続部18R、および左側引張体接続部18Lは面ファスナーまたはボタン等で構成され、使用者が装着前に固定できる形態としたが、各接続部は製造段階で縫い付けられる、もしくは一体に形成されている構成であってもよい。
【0034】
実施例では抱き持ち対象を乳幼児としたときの例を説明したが、この例に限定されない。例えば、リュックといった内容物によって重量が変化する物でもよく、引っ越し用の段ボールといった通常持ち運ぶには腰に大きな負担がかかる物であってもよい。また、抱き持ち部Cが有する背もたれ部20、頭部支部21、下方支部22、右脚挿通穴23L、および左脚挿通穴23Rといった形状は、抱き持ち対象の大きさおよび形状に応じて、適宜変更してもよい。このようにすることで、姿勢誘導抱き持ち具1にて持ち上げられる荷物によって使用者の健康が守られることとなる。また、年寄であっても姿勢誘導抱き持ち具1によって重い荷物を運ぶことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明は、人または物を抱える抱き持ち具に利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1…姿勢誘導抱き持ち具
A…第1誘導体
B…第2誘導体
C…抱き持ち部
10L…左肩装着部
10R…右肩装着部
11L…第3引張体
11R…第4引張体
12L…第1引張体
12R…第2引張体
17L…右脇装着部
17R…左脇装着部
25R…抱き持ち部右接続部
25L…抱き持ち部左接続部