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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107453
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】タイヤ製造装置及びタイヤ製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/30 20060101AFI20220713BHJP
【FI】
B29D30/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002415
(22)【出願日】2021-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】山本 大造
【テーマコード(参考)】
4F215
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215VA02
4F215VD10
4F215VD22
4F215VK03
4F215VL06
4F215VL11
4F215VM06
4F215VP10
4F215VP28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】効率の良いタイヤ製造装置及びタイヤ製造方法を提供する。
【解決手段】タイヤ製造装置10は、成型ドラムD1、D2と、成型ドラム上でのインナーライナー層の成型のために成型ドラムが移動する第1移動部11と、インナーライナー層の上にプライ層を成型するために成型ドラムが移動する第2移動部12と、インナーライナー層の上に積層されたプライ層の上から押圧してカーカスバンドとするステッチャーポジション15と、成型ドラムから、カーカスバンドを後工程へ搬送する搬送装置18へ、カーカスバンドを受け渡す受け渡しポジション16とを有し、ステッチャーポジションと受け渡しポジションとが隣接している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成型ドラムと、
前記成型ドラム上でのインナーライナー層の成型のために前記成型ドラムが移動する第1移動部と、
前記インナーライナー層の上にプライ層を成型するために前記成型ドラムが移動する第2移動部と、
インナーライナー層の上に積層されたプライ層の上から押圧してカーカスバンドとするステッチャーポジションと、
カーカスバンドを後工程へ搬送する搬送装置へ前記成型ドラムからカーカスバンドを受け渡す受け渡しポジションと、
を有するタイヤ製造装置において、
前記ステッチャーポジションと前記受け渡しポジションとが隣接していることを特徴とする、タイヤ製造装置。
【請求項2】
前記第1移動部、前記第2移動部、前記ステッチャーポジション、前記受け渡しポジションの順に並んだ、請求項1に記載のタイヤ製造装置。
【請求項3】
前記成型ドラムが、前記ステッチャーポジションから前記受け渡しポジションまでの範囲を移動可能であり、
プライ層を押圧する複数のローラを有するステッチャー装置が設けられ、
前記ステッチャー装置が、前記ステッチャーポジションに対して進退可能である、請求項1又は2に記載のタイヤ製造装置。
【請求項4】
前記第1移動部に、インナーライナー層に含まれるタイヤ構成部材の材料であるゴムの供給装置が設けられ、
前記供給装置は回転する前記成型ドラムへ長尺ゴム部材を螺旋巻きすることによりタイヤ構成部材を成型する、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ製造装置。
【請求項5】
第1移動部で成型ドラムを移動させながら前記成型ドラム上にインナーライナー層を成型するステップと、
第2移動部で前記成型ドラムを移動させながら前記成型ドラム上の前記インナーライナー層の上にプライ層を成型するステップと、
ステッチャーポジションにおいてインナーライナー層の上に積層されたプライ層の上から押圧してカーカスバンドとするステップと、
受け渡しポジションにおいてカーカスバンドを後工程へ搬送する搬送装置へカーカスバンドを受け渡すステップと、
を有するタイヤ製造方法において、
前記ステッチャーポジションから、隣接する前記受け渡しポジションへ、カーカスバンドが移送されることを特徴とする、タイヤ製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ製造装置及びタイヤ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、空気入りタイヤの製造においては、カーカスバンドとベルトバンドが別々に成型された後、それらが組み合わせられてタイヤとして成型される。カーカスバンドは、インナーライナー、チェーファー、サイドウォール等からなるインナーライナー層と、スキージ、1又は複数のカーカスプライ等からなるプライ層とからなる。
【0003】
特許文献1に記載のように、カーカスバンドの製造においては、まず、成型ドラム上にサイドウォール、チェーファー及びインナーライナーが積層されてインナーライナー層が成型され、そのインナーライナー層の上にスキージ及びカーカスプライが積層されてプライ層が成型される。その後、プライ層を上からローラで押圧するステッチャーと呼ばれる工程を経て、カーカスバンドとして完成する。
【0004】
カーカスバンドは次の工程へ送られ、そこでベルト及びトレッドからなるベルトバンド等と一体化されて、加硫成型前の生タイヤとなる。
【0005】
ところで、従来のカーカスバンドの製造装置では、特許文献1に記載のように、インナーライナー層を成型するために成型ドラムが移動する第1移動部と、プライ層を成型するために成型ドラムが移動する第2移動部とが隣接して設けられていた。そして、第2移動部の、第1移動部とは反対側の端部に、ステッチャー装置が設けられていた。また、第1移動部の、第2移動部とは反対側の端部が、カーカスバンドを次の工程へ送るために搬送装置へ受け渡す受け渡しポジションとなっていた。
【0006】
そして、1つの成型ドラムが、第1移動部、第2移動部、ステッチャー装置の場所、及び受け渡しポジションの順で移動して、カーカスバンドの成型及び後工程への搬出が行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2006/048924号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、第1移動部でのインナーライナー層の成型には時間がかかる。特に、押し出し機から押し出される長尺状のゴムストリップを成型ドラムに螺旋状に巻き付けてタイヤ構成部材を成型する場合に、インナーライナー層の成型に時間がかかることがある。特に、サイドウォールで体積の大きなものをゴムストリップから成型する場合や、インナーライナー層として特に薄いものをゴムストリップから成型する場合に、インナーライナー層の成型に時間がかかりやすい。
【0009】
そのため、インナーライナー層の成型中にステッチャー装置でのカーカスバンドの成型が早く終わった場合でも、インナーライナー層の成型が終わるまでそのカーカスバンドを受け渡しポジションまで送れず、効率が悪かった。
【0010】
そこで本発明は、効率の良いタイヤ製造装置及びタイヤ製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態のタイヤ製造装置は、成型ドラムと、前記成型ドラム上でのインナーライナー層の成型のために前記成型ドラムが移動する第1移動部と、前記インナーライナー層の上にプライ層を成型するために前記成型ドラムが移動する第2移動部と、インナーライナー層の上に積層されたプライ層の上から押圧してカーカスバンドとするステッチャーポジションと、カーカスバンドを後工程へ搬送する搬送装置へ前記成型ドラムからカーカスバンドを受け渡す受け渡しポジションと、を有するタイヤ製造装置において、前記ステッチャーポジションと前記受け渡しポジションとが隣接していることを特徴とする。
【0012】
また、実施形態のタイヤ製造方法は、第1移動部で成型ドラムを移動させながら前記成型ドラム上にインナーライナー層を成型するステップと、第2移動部で前記成型ドラムを移動させながら前記成型ドラム上の前記インナーライナー層の上にプライ層を成型するステップと、ステッチャーポジションにおいてインナーライナー層の上に積層されたプライ層の上から押圧してカーカスバンドとするステップと、受け渡しポジションにおいてカーカスバンドを後工程へ搬送する搬送装置へカーカスバンドを受け渡すステップと、を有するタイヤ製造方法において、前記ステッチャーポジションから、隣接する前記受け渡しポジションへ、カーカスバンドが移送されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
実施形態のタイヤ製造装置及びタイヤ製造方法によれば、効率良く空気入りタイヤを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】タイヤ製造装置の平面図。
図2】成型ドラムの正面図。
図3】ステッチャー装置の左側面図。
図4】タイヤ製造方法のタイムチャート
図5】ステッチャーが行われているときのタイヤ製造装置の平面図。
図6】ステッチャー装置が待機ポジションに後退したときのタイヤ製造装置の平面図。
図7】成型ドラムが受け渡しポジションにあるときのタイヤ製造装置の平面図。
図8】2つの成型ドラムがターンテーブルに載ったときのタイヤ製造装置の平面図。
図9】変更例1のタイヤ製造装置の平面図。
図10】変更例2のタイヤ製造装置の平面図。
図11】搬送装置が受け渡しポジションへ移動したときの、変更例2のタイヤ製造装置の平面図。
図12】インナーライナー層成型ドラムが搬送装置に侵入したときの、変更例2のタイヤ製造装置の平面図。
図13】インナーライナー層成型ドラムがステッチャー装置に侵入したときの、変更例2のタイヤ製造装置の平面図。
図14】タイヤの各構成部材を分解して示す略示断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施形態について図面に基づき説明する。なお、以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更されたものについては、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0016】
図14に、空気入りタイヤの構成部材を分解して示す。図14に示すように、空気入りタイヤの構成部材として、インナーライナー1a、チェーファー1b及びサイドウォール1cがある。製造されるタイヤの種類によっては、インナーライナー1aとチェーファー1bとが積層されたものがインナーライナー層と呼ばれる場合がある。しかし、本実施形態では、インナーライナー1a、チェーファー1b及びサイドウォール1cが積層されたものをインナーライナー層1と呼ぶこととし、タイヤ製造過程においてインナーライナー1a、チェーファー1b及びサイドウォール1cが積層されて1つのインナーライナー層1として成型されるものとする。
【0017】
また、タイヤ製造過程においてインナーライナー層1の外径側に設けられる構成部材として、1又は複数(図の場合は2)のカーカスプライ2a及びスキージ2bがある。カーカスプライ2a及びスキージ2bは、タイヤ製造過程においてプライ層2として成型される。タイヤ製造過程においては、インナーライナー層1とプライ層2が組み合わさってカーカスバンドとなる。
【0018】
また、タイヤ製造過程においてカーカスバンドの外径側に設けられる構成部材として、一対のビード3がある。
【0019】
また、タイヤ製造過程においてカーカスバンドの外径側に設けられる構成部材として、1又は複数(図の場合は2)のベルト4a、補強層4b、ベース4c及びキャップ4dがある。ベース4c及びキャップ4dが一体化してドレッドとなる。タイヤ製造過程において、ベルト4a、補強層4b及びドレッドが積層されてベルトバンドとなる。
【0020】
ビード3がセットされてタイヤ形状に膨張させられたカーカスバンドの外径側に、ベルトバンドが組み合わせられて、加硫成型前の生タイヤとなる。なお、図14に示した構成部材の他にも、必要に応じて様々な部材が空気入りタイヤに使用される。
【0021】
次に、本実施形態のタイヤ製造装置10について説明する。図1に示すように、本実施形態のタイヤ製造装置10は、第1成型ドラムD1と、第2成型ドラムD2と、インナーライナー層1の成型のために成型ドラムD1、D2が移動する第1移動部11と、インナーライナー層1の上にプライ層2を成型するために成型ドラムD1、D2が移動する第2移動部12と、第1移動部11と第2移動部12との間で成型ドラムD1、D2を交換するターンテーブル13と、インナーライナー層1の上に積層されたプライ層2の上から押圧するステッチャー装置40と、を有している。さらに、タイヤ製造装置10には、ステッチャー装置40が押圧を行うステッチャーポジション15と、後述する受け渡しポジション16とが設けられている。
【0022】
そして、図1に示すように、第1移動部11、ターンテーブル13、第2移動部12、ステッチャーポジション15、受け渡しポジション16が、この順に並んでいる。ただし、ステッチャーポジション15は第2移動部12上で、かつ、第2移動部12の受け渡しポジション16側の端部付近の場所にある。
【0023】
成型ドラムD1、D2は円筒状で、周知の構造により外径が拡縮可能となっている。成型ドラムD1、D2上でインナーライナー層1やプライ層2が成型されるとき、成型ドラムD1、D2の外径は拡張した状態である。成型ドラムD1、D2からインナーライナー層1等を取り外すとき、成型ドラムD1、D2の外径は縮小する。
【0024】
図2に示すように、成型ドラムD1、D2は水平な回転軸20を有している。成型ドラムD1、D2は回転軸20を中心に回転可能である。回転軸20の一方の端部が回転装置21によって保持されている。回転装置21には成型ドラムD1、D2を回転させるモータが設けられている。回転装置21は移動台22に載っている。
【0025】
図1に示すように、第1移動部11及び第2移動部12は、それぞれレール11a、12aからなる。これらのレール11a、12aの上を、移動台22が走行する。そのため、第1移動部11及び第2移動部12を成型ドラムD1、D2が移動できる。第1移動部11と第2移動部12とは平行になっている。第1移動部11及び第2移動部12の延長方向、成型ドラムD1、D2の移動方向、及び移動中の成型ドラムD1、D2の回転軸20の延長方向は、一致している。
【0026】
第1移動部11の横には、第1押し出し機30、第2押し出し機31及び第3押し出し機32が、タイヤ製造装置10の一部として配置されている。第1押し出し機30、第2押し出し機31及び第3押し出し機32は第1移動部11に沿って並んでいる。第1押し出し機30、第2押し出し機31及び第3押し出し機32は、それぞれゴムの供給装置である。第1押し出し機30、第2押し出し機31及び第3押し出し機32は、それぞれ、長尺状のゴム部材であるゴムストリップを、第1移動部11の成型ドラムD1、D2に向かって押し出す。
【0027】
第1押し出し機30から押し出されるゴムストリップは、サイドウォール1cとするためのものである。また、第2押し出し機31から押し出されるゴムストリップは、チェーファー1bとするためのものである。また、第3押し出し機32から押し出されるゴムストリップは、インナーライナー1aとするためのものである。
【0028】
第1押し出し機30の前に成型ドラムD1、D2が移動して来て停止すると、第1押し出し機30が成型ドラムD1、D2に向かってゴムストリップを押し出し始める。第1押し出し機30がゴムストリップを押し出している間、成型ドラムD1、D2は回転軸20を中心に回転しながら回転軸20の延長方向に一定速度で移動する。このようにして、ゴムストリップが成型ドラムD1、D2に螺旋巻きされて、サイドウォール1cが成型される。チェーファー1b及びインナーライナー1aも、サイドウォール1cと同様にゴムストリップが螺旋巻きされて成型される。
【0029】
成型ドラムD1、D2は、第1移動部11上を移動し、第1押し出し機30の前、第2押し出し機31の前、及び第3押し出し機32の前にそれぞれ停止する。そして停止する度に、成型ドラムD1、D2にゴムストリップが螺旋巻きされ、各タイヤ構成部材(サイドウォール1c、チェーファー1b、インナーライナー1a)が成型される。これらのタイヤ構成部材が成型されると、インナーライナー層1が完成する。
【0030】
第2移動部12の横には、第4押し出し機33、第1プライ供給装置34、及び第2プライ供給装置35が、タイヤ製造装置10の一部として配置されている。第4押し出し機33と、プライ供給装置34、35とは、第2移動部12を挟んで配置されている。
【0031】
第4押し出し機33はゴムの供給装置である。第4押し出し機33は、スキージ2bとするための長尺状のゴムであるゴムストリップを、第2移動部12の成型ドラムD1、D2に向かって押し出す。第1押し出し機30によるサイドウォール1cの成型方法と同じ方法で、第4押し出し機33によりスキージ2bが成型される。
【0032】
また、第1プライ供給装置34の前に成型ドラムD1、D2が移動して来て停止すると、第1プライ供給装置34は、シート状のカーカスプライ2aを、成型ドラムD1、D2に向かって送り出す。成型ドラムD1、D2は、回転することによりシート状のカーカスプライ2aを巻き取る。これにより、成型ドラムD1、D2上に、カーカスプライ2aの層が成型される。第2プライ供給装置35も、第1プライ供給装置34と同様にシート状のカーカスプライ2aを成型ドラムD1、D2に向かって送り出す。これにより、成型ドラムD1、D2上に、2つ目のカーカスプライ2aの層が成型される。
【0033】
成型ドラムD1、D2は、第2移動部12上を移動し、第4押し出し機33の前、第1プライ供給装置34の前、及び第2プライ供給装置35の前にそれぞれ停止する。そして停止する度に、成型ドラムD1、D2にゴムストリップやカーカスプライ2aが巻き付けられ、各タイヤ構成部材(スキージ2b、カーカスプライ2a)が成型される。これらのタイヤ構成部材が成型されると、プライ層2が完成する。
【0034】
第2移動部12の、第1移動部11とは反対側の端部付近には、ステッチャー装置40が設けられている。図3に示すように、ステッチャー装置40は、本体41と複数のローラ43を有している。ステッチャー装置40の本体41には、第2移動部12の延長方向から見て円形の孔42が形成されている。この孔42の周方向に沿って複数のローラ43が並んでいる。これらのローラ43は円環状に並んでいる。これらのローラ43は、本体41の内部に設けられているシリンダ等の装置によって、同時に、内径側に向かって進出したり、外径側に向かって後退したりする。
【0035】
ステッチャー装置40がステッチャーポジション15にあるとき、複数のローラ43が形成する円環の内径側に、インナーライナー層1及びプライ層2が積層された成型ドラムD1、D2が侵入できる。複数のローラ43が形成する円環の内径側に成型ドラムD1、D2が侵入すると、複数のローラ43が成型ドラムD1、D2に向かって進出してプライ層2を押圧する。そして、その押圧状態が保たれたまま成型ドラムD1、D2が回転軸20の延長方向(第2移動部12の延長方向)へ移動することにより、プライ層2の全体がローラ43によって押圧されてインナーライナー層1に密着し、カーカスバンドとなる。以下、この段落の方法でローラ43がプライ層2を押圧することを、「ステッチャーを行う」と表現することとする。
【0036】
図1及び図3に示すように、ステッチャー装置40は、レール44に吊り下げられている。レール44は第2移動部12の延長方向に直交する方向に延びている。レール44は、第2移動部12の上の場所から、第2移動部12から外れた場所まで、水平に延びている。ステッチャー装置40は、上部に設けられたサーボモータ45によって、レール44に沿って移動できる。つまり、ステッチャー装置40は、成型ドラムD1、D2の移動方向(第2移動部12の延長方向でもある)に直交する方向に移動できる。
【0037】
ステッチャー装置40の移動範囲のうち、第2移動部12の上の場所が、ステッチャーポジション15である。また、ステッチャー装置40の移動範囲のうち、第2移動部12から外れた場所のことを、待機ポジション17と言うこととする。ステッチャー装置40は、ステッチャーを行うときはステッチャーポジション15に進出し、成型ドラムD1、D2がステッチャーポジション15と受け渡しポジション16との間を移動するときは待機ポジション17に後退する。
【0038】
第1移動部11と第2移動部12との間には円形のターンテーブル13が設けられている。第1移動部11の右端部がターンテーブル13に接し、第2移動部12の左端部がターンテーブル13に接している。
【0039】
ターンテーブル13は、その下に設けられているモータによって180°ずつ回転可能となっている。ターンテーブル13には、第1移動部11のレール11a及び第2移動部12のレール12aとそれぞれ連結されるレール11b、12bが設けられている。ターンテーブル13上の2箇所のレール11b、12bは平行である。
【0040】
ターンテーブル13が第1の状態のとき、第1移動部11のレール11aとターンテーブル13の一方のレール11bが連結されるとともに、第2移動部12のレール12aとターンテーブル13の他方のレール12bが連結される。ターンテーブル13が180°回転して第2の状態となったとき、第1移動部11のレール11aとターンテーブル13の前記の他方のレール12bが連結されるとともに、第2移動部12のレール12aとターンテーブル13の前記の一方のレール11bが連結される。
【0041】
このように各レールが連結されるので、第1の状態のとき及び第2の状態のとき、成型ドラムD1、D2は、第1移動部11とターンテーブル13の間を行き来でき、第2移動部12とターンテーブル13の間を行き来できる。そして、成型ドラムD1、D2は、ターンテーブル13を経由することにより、第1移動部11と第2移動部12の間を行き来できる。
【0042】
第2移動部12の、第1移動部11とは反対側の端部と隣接する場所が、受け渡しポジション16である。受け渡しポジション16は、完成したカーカスバンドが、成型ドラムD1、D2から搬送装置18に受け渡される場所である。
【0043】
搬送装置18は、円筒状の筒部の内径側に多数の吸着部材が設けられた装置で、一般にトランスファー等と呼ばれるものである。成型ドラムD1、D2は外径面にカーカスバンドを保持した状態で搬送装置18の内径側に侵入できる。侵入後、搬送装置18の吸着部材がカーカスバンドの外径面を保持するとともに、成型ドラムD1、D2が縮径することにより、カーカスバンドが成型ドラムD1、D2から搬送装置18へ受け渡される。
【0044】
次に、本実施形態のタイヤ製造装置10によるタイヤ製造方法について説明する。本実施形態のタイヤ製造方法は、不図示の制御装置がタイヤ製造装置10の各部を制御することにより実行される。
【0045】
図4(タイムチャート)に示すように、第1移動部11でのインナーライナー層1の成型と、第2移動部12でのプライ層2の成型等とが、同時並行で行われる。
【0046】
詳細には、第1移動部11では、インナーライナー1a、チェーファー1b、サイドウォール1cの順に第1成型ドラムD1上に成型されていく。それによりインナーライナー層1が完成する。また、第2移動部12では、第2成型ドラムD2(第2移動部12にある第2成型ドラムD2は既にインナーライナー層1を保持している)が移動し、インナーライナー層1の上にスキージ2b及びカーカスプライ2aがこの順で積層される。それによりインナーライナー層1の上でプライ層2が完成する。
【0047】
第2移動部12においては、プライ層2が完成した後、引き続きステッチャーが行われる。詳細には、第2移動部12においては、プライ層2の完成と同時に又はその前後のタイミングで、図1のようにステッチャー装置40がステッチャーポジション15へ移動する。そして、プライ層2が完成した後、図5に示すように第2成型ドラムD2がステッチャーポジション15へ移動し、ステッチャー装置40の孔42の中に侵入する。第2成型ドラムD2が孔42の中に侵入すると、ステッチャー装置40のローラ43が第2成型ドラムD2に向かって進出して、第2成型ドラムD2上のプライ層2を押圧する。ローラ43による押圧状態が保たれた状態で、第2成型ドラムD2がその回転軸20の延長方向へ複数回往復移動することにより、プライ層2がインナーライナー層1に密着し、カーカスバンドとなる。
【0048】
さらに、第2移動部12側では、ステッチャーが終わると、第2成型ドラムD2がステッチャーポジション15からターンテーブル13側の場所に一時的に退避する。第2成型ドラムD2がターンテーブル13側の場所に退避している間に、図6に示すようにステッチャー装置40が待機ポジション17に後退する。ステッチャー装置40が後退した後、図7に示すように第2成型ドラムD2は受け渡しポジション16へ移動する。受け渡しポジション16には搬送装置18が待機しており、第2成型ドラムD2から搬送装置18へのカーカスバンドの受け渡しが行われる。
【0049】
第1移動部11においてインナーライナー層1が完成すると、第1成型ドラムD1はインナーライナー層1を保持した状態でターンテーブル13へ移動する。また、カーカスバンドを搬送装置18へ受け渡した後の第2成型ドラムD2は、何も保持せず、ターンテーブル13へ移動する。
【0050】
図8に示すように第1成型ドラムD1及び第2成型ドラムD2がターンテーブル13上に載ると、ターンテーブル13が180°回転する。それにより、第1成型ドラムD1が第2移動部12側に移動し、第2成型ドラムD2が第1移動部11側に移動する。
【0051】
ターンテーブル13を介した成型ドラムD1、D2の移動の後、再び、第1移動部11でのインナーライナー層1の成型と、第2移動部12でのプライ層2の成型等とが、同時並行で行われる。
【0052】
具体的には、第2移動部12に移動した第1成型ドラムD1に対し、プライ層2が積層され、プライ層2に対してステッチャーが行われる。ステッチャーにより完成したカーカスバンドは、受け渡しポジション16において搬送装置18に受け渡される。また、第1移動部11に移動した第2成型ドラムD2において、インナーライナー層1が成型される。
【0053】
以上のような第1移動部11でのインナーライナー層1の成型と、第2移動部12でのプライ層2の成型等とが、繰り返される。
【0054】
なお、搬送装置18に受け渡されたカーカスバンドは、後工程に搬送される。後工程では、カーカスバンドに対してビード3がセットされる工程、カーカスバンドをタイヤ形状に膨張させる工程、膨張したカーカスバンドにベルトバンド(ベルト4a及びトレッドからなる円筒部材)を組み合わせる工程等の周知の工程が実施され、生タイヤが完成する。生タイヤが金型に入れられて加硫成型されると空気入りタイヤが完成する。
【0055】
次に、本実施形態の効果について説明する。上記の通り、本実施形態のタイヤ製造装置10では、ステッチャーポジション15と受け渡しポジション16とが隣接している。そのため、ステッチャーが終わって完成したカーカスバンドを、すぐに受け渡しポジション16へ送ることができる。そのためタイヤの製造の効率が良い。
【0056】
また、ステッチャーが終わって完成したカーカスバンドを受け渡しポジション16へ送るときに、第1移動部11等を経由させる必要がないため、第1移動部11でのインナーライナー層1の成型が終わるまでカーカスバンドを受け渡しポジション16へ送れない、という問題も生じない。
【0057】
また、本実施形態のタイヤ製造装置10では、第1移動部11、第2移動部12、ステッチャーポジション15、受け渡しポジション16の順に並んでいる。そのため、インナーライナー層1が成型される第1移動部11から、カーカスバンドが搬送される受け渡しポジション16まで、部材が一方向へ搬送されていくことになる。そのため、カーカスバンドの製造効率が良い。
【0058】
また、本実施形態のタイヤ製造装置10では、ステッチャーポジション15でステッチャーを行うためのステッチャー装置40が、ステッチャーポジション15に対して進退可能である。そのため、カーカスバンドの受け渡しのために成型ドラムD1、D2がステッチャーポジション15から受け渡しポジション16まで移動するときに、ステッチャー装置40がステッチャーポジション15から離れることができ、成型ドラムD1、D2の移動の邪魔にならない。
【0059】
また、本実施形態のタイヤ製造装置10では、第1移動部11において、第1押し出し機30、第2押し出し機31及び第3押し出し機32から押し出されたゴムストリップが成型ドラムD1、D2へ螺旋巻きされて、インナーライナー層1が成型される。このようなゴムストリップの螺旋巻きによる成型には時間がかかる。
【0060】
しかし、本実施形態のタイヤ製造装置10では、ステッチャー前のインナーライナー層1とプライ層2の組み立て体を、第1移動部11を経由させることなくステッチャーポジション15へ送ることができる。また、ステッチャー後のカーカスバンドを、第1移動部11を経由させることなく受け渡しポジション16へ送ることができる。そのため、第1移動部11におけるインナーライナー層1の成型に時間がかかったとしても、その成型が終わるのを待たなくても、インナーライナー層1とプライ層2の組み立て体をステッチャーポジション15へ送ることができるし、カーカスバンドを受け渡しポジション16へ送ることができる。そのため、カーカスバンドの製造効率が良い。
【0061】
また、本実施形態のタイヤ製造方法では、ステッチャーポジション15から、隣接する受け渡しポジション16へカーカスバンドを送ることになるので、カーカスバンドの製造効率が良い。
【0062】
以上の実施形態に対し様々な変更を行うことができる。以下では実施形態の変更例について説明する。
【0063】
<変更例1>
図9に示す変更例では、ステッチャー装置40の左右いずれか一方に上下方向に延びる軸116が設けられている。そして、その軸116を軸としてステッチャー装置40が上から見て90°回転可能となっている。
【0064】
ステッチャー装置40は、成型ドラムD1、D2がステッチャーポジション15と受け渡しポジション16との間を移動するとき等は、第2移動部12の左右いずれか一方の待機ポジション117において、第2移動部12に平行になって待機している。待機ポジション117にあるときのステッチャー装置40を図9に破線で示す。
【0065】
一方、ステッチャー装置40は、ステッチャーを行うときは、軸116を軸として90°回転してステッチャーポジション15へ進出する。ステッチャーポジション15にあるときのステッチャー装置40を図9に実線で示す。
【0066】
<変更例2>
図10に示す変更例では、第1移動部211と第2移動部212が並列して設けられている。第1移動部211は、インナーライナー層1を成型するためのインナーライナー層成型ドラムD21、D22が移動する場所である。また、第2移動部212は、プライ層2を成型するためのプライ層成型ドラムD23が移動する場所である。
【0067】
第1移動部211は、更に第1-1移動部211aと第1-2移動部211bに分離されている。そして、第1-1移動部211aと第1-2移動部211bの間にターンテーブル213が配置されている。本変更例のターンテーブル213は、上記実施形態のターンテーブル13と同じものである。
【0068】
第1-1移動部211aの横には2つの押し出し機230、231が配置され、第1-2移動部211bの横には1つの押し出し機232が配置されている。インナーライナー層成型ドラムD21、D22がターンテーブル213を介して第1-1移動部211aと第1-2移動部211bとを行き来しながら、押し出し機230、231、232からゴムストリップを巻き取ることにより、インナーライナー層1が成型される。
【0069】
また、第2移動部212の横には、プライ供給装置234、235及び押し出し機233が配置されている。プライ層成型ドラムD23が第2移動部212を移動しながら、プライ供給装置234、235からカーカスプライ2aを巻き取り、押し出し機233からゴムストリップを巻き取ることにより、プライ層2が成型される。
【0070】
第1-2移動部211bの端部付近では、第1-2移動部211bのレール上にステッチャーポジション215が設定されている。ステッチャーポジション215には上記実施形態のものと同じステッチャー装置40が進退可能となっている。
【0071】
ステッチャーポジション215に隣接して受け渡しポジション216が設けられている。受け渡しポジション216は、ステッチャーポジション215で完成したカーカスバンドを搬送装置218へ受け渡す場所である。搬送装置218は、円筒状で、その内径側にプライ層2やカーカスバンドを保持できる。
【0072】
第2移動部212の端部に隣接する場所から受け渡しポジション216にかけて、第1移動部211及び第2移動部212に対して垂直な方向に延びる第3移動部201が設けられている。この第3移動部201の上を搬送装置218が移動可能となっている。
【0073】
受け渡しポジション216を挟んでステッチャーポジション215と反対側の場所には、第4移動部202が設けられている。カーカスバンドの外径側にビード3をセットするためのビードセット用ドラムD24が、第4移動部202を移動可能となっている。
【0074】
この変更例でのカーカスバンドの製造方法においては、まず、第1移動部211でのインナーライナー層1の成型と、第2移動部212でのプライ層2の成型とが、並行して行われる。
【0075】
次に、図11に示すように、搬送装置218が、プライ層成型ドラムD23からプライ層2を受け取り、受け渡しポジション216へ移動する。また、ステッチャー装置40はステッチャーポジション215から待機ポジション217へ後退する。
【0076】
搬送装置218が受け渡しポジション216へ到達すると、図12に示すように、インナーライナー層成型ドラムD22(又はD21)が、インナーライナー層1を保持した状態で搬送装置218の内径側に侵入する。そして、搬送装置218から、インナーライナー層成型ドラムD22(又はD21)が保持しているインナーライナー層1の外径側に、プライ層2が受け渡される。これにより、インナーライナー層1とプライ層2の組み立て体が、インナーライナー層成型ドラムD22(又はD21)上に完成する。
【0077】
次に、インナーライナー層1とプライ層2の組み立て体を保持したインナーライナー層成型ドラムD22(又はD21)が、受け渡しポジション216から後退し(つまりターンテーブル213側へ移動し)、ステッチャーポジション215からも後退する。
【0078】
次に、ステッチャー装置40がステッチャーポジション215へ進出する。次に、図13に示すように、ステッチャーポジション215のステッチャー装置40の孔42に、インナーライナー層1とプライ層2の組み立て体を保持したインナーライナー層成型ドラムD22(又はD21)が侵入する。そして、ステッチャー装置40によるステッチャーが行われ、インナーライナー層成型ドラムD22(又はD21)上でカーカスバンドが完成する。
【0079】
次に、インナーライナー層成型ドラムD22(又はD21)が、カーカスバンドを保持した状態で、ステッチャーポジション215から後退する(つまりターンテーブル213側へ移動する)。次に、ステッチャー装置40もステッチャーポジション215から待機ポジション217へ後退する。
【0080】
次に、インナーライナー層成型ドラムD22(又はD21)が、カーカスバンドを保持した状態で、図12のときと同様に受け渡しポジション216にある搬送装置218の内径側に侵入し、カーカスバンドを搬送装置218へ受け渡す。その後、搬送装置218がカーカスバンドをビードセット用ドラムD24へ受け渡す。ビードセット用ドラムD24は、第4移動部202を移動して次の工程へカーカスバンドを搬送する。
【0081】
この変更例の装置及び方法でも、ステッチャーポジション215と受け渡しポジション216とが隣接しているため、効率的にカーカスバンドを成型することができる。
【符号の説明】
【0082】
D1…第1成型ドラム、D2…第2成型ドラム、1…インナーライナー層、1a…インナーライナー、1b…チェーファー、1c…サイドウォール、2…プライ層、2a…カーカスプライ、2b…スキージ、3…ビード、4a…ベルト、4b…補強層、4c…ベース、4d…キャップ、10…タイヤ製造装置、11…第1移動部、11a…レール、11b…レール、12…第2移動部、12a…レール、12b…レール、13…ターンテーブル、15…ステッチャーポジション、16…受け渡しポジション、17…待機ポジション、18…搬送装置、20…回転軸、21…回転装置、22…移動台、30…第1押し出し機、31…第2押し出し機、32…第3押し出し機、33…第4押し出し機、34…第1プライ供給装置、35…第2プライ供給装置、40…ステッチャー装置、41…本体、42…孔、43…ローラ、44…レール、45…サーボモータ、116…軸、117…待機ポジション、D21…インナーライナー層成型ドラム、D22…インナーライナー層成型ドラム、D23…プライ層成型ドラム、D24…ビードセット用ドラム、201…第3移動部、202…第4移動部、211…第1移動部、211a…第1-1移動部、211b…第1-2移動部、212…第2移動部、213…ターンテーブル、215…ステッチャーポジション、216…受け渡しポジション、217…待機ポジション、218…搬送装置、230…押し出し機、231…押し出し機、232…押し出し機、233…押し出し機、234…プライ供給装置、235…プライ供給装置
図1
図2
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