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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107454
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】ステッチャー装置
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/30 20060101AFI20220713BHJP
【FI】
B29D30/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002417
(22)【出願日】2021-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】森野 浩昭
【テーマコード(参考)】
4F215
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215VD10
4F215VK02
4F215VL06
4F215VL11
4F215VP10
(57)【要約】
【課題】カーカスプライの圧着後の成型ドラムを後退させることなく、カーカスバンド取出位置に移動させることができるステッチャー装置を提供する。
【解決手段】ステッチャー装置10は、ドラム案内路18に沿って移動可能な成型ドラム16の外周にゴム部材14を介して巻き付けられたカーカスプライ6をゴム部材14に圧着するための装置である。ステッチャー装置10は、成型ドラム16が挿し入れられることで当該成型ドラムの外周を取り囲み可能な環状フレーム30と、カーカスプライ6を外周より押圧してゴム部材14に圧着し得るように環状フレーム30に設けられた圧着装置32と、を備え、環状フレーム30が周方向に複数に分割して開閉可能に設けられている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラム案内路に沿って移動可能な成型ドラムの外周にゴム部材を介して巻き付けられたカーカスプライを前記ゴム部材に圧着するためのステッチャー装置であって、
前記成型ドラムが挿し入れられることで当該成型ドラムの外周を取り囲み可能な環状フレームと、
前記カーカスプライを外周より押圧して前記ゴム部材に圧着し得るように前記環状フレームに設けられた圧着装置と、を備え、
前記環状フレームが周方向に複数に分割して開閉可能に設けられた、
ステッチャー装置。
【請求項2】
前記環状フレームは、当該環状フレームの軸直角方向に移動可能な複数のフレーム部分を含み、当該複数のフレーム部分が軸直角方向に移動して互いに離れることにより前記環状フレームが開かれた状態になる、請求項1に記載のステッチャー装置。
【請求項3】
前記環状フレームは、水平方向に対向する一対のフレーム部分を含む二分割式である、請求項1又は2に記載のステッチャー装置。
【請求項4】
前記ドラム案内路の上方において当該ドラム案内路に交差する方向に延びるフレーム案内路と、
前記一対のフレーム部分をそれぞれ吊り下げ支持する一対のフレーム支持体であって、前記フレーム案内路に沿って互いに離れる方向及び近づく方向に移動することで前記環状フレームの開閉を行う前記一対のフレーム支持体と、
前記環状フレームの底部側で当該環状フレームを閉じた状態に固定する固定部と、
をさらに備える、請求項3に記載のステッチャー装置。
【請求項5】
前記固定部が、
前記一対のフレーム部分の底部にそれぞれ設けられ、前記環状フレームが閉じた状態で両者が一体となって先端ほど幅が狭い凸状をなす一対のフレーム側係合部と、
前記ドラム案内路側に設けられ、一体となった前記一対のフレーム側係合部が嵌合する凹状をなし、当該一体となった一対のフレーム側係合部が嵌合することにより前記環状フレームを閉じた状態に固定する案内路側係合部と、
を備える、請求項4に記載のステッチャー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、グリーンタイヤを成型するためのタイヤ成型装置において、カーカスバンドの成型に用いるステッチャー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に空気入りタイヤは、複数のゴム部材とコードを主材とする複数の補強部材とを含んで構成されている。代表的には、図12に示すように、インナーライナー1、トレッドゴム2、サイドウォールゴム3、リムストリップ4等の各部が各々要求される特性に応じたゴム部材により形成され、これらのゴム部材がコ-ドを含む補強部材であるベルトプライ5やカーカスプライ6及びビード7等と組み合されてタイヤTが構成されている。
【0003】
このようなタイヤの成型法として、インナーライナーを含むゴム部材上にカーカスプライを積層して円筒状のカーカスバンドを成型した後、このカースバンドに対してビードセット、ターンアップを行って円筒状のグリーンケースを成型し、このグリーンケースの外周に、ベルト及びトレッド等を積層した円筒状のベルトバンドを組み付け合体させてグリンタイヤ(未加硫タイヤ)を成型する方法がある。また、生産性を向上するために、カーカスバンドを成型する工程、グリーンケースを成型する工程、ベルトバンドを成型する工程、グリーンケースとベルトバンドを合体させる工程を、それぞれ別の成型ドラムを用いて行うことが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、カーカスバンドを成型する工程において、ドラム案内路に沿って移動可能な成型ドラムの外周にインナーライナーなどのゴム部材を巻き付け、その上にカーカスプライを貼り付けた後、ステッチャー装置を用いてカーカスプライを外周より押圧することにより、カーカスプライとその内側のゴム部材との間のエアを排出し、カーカスプライをゴム部材に圧着させることが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2006/048924号
【特許文献2】国際公開第2007/080640号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カーカスバンドを成型する工程とその後のグリーンケースを成型する工程とで別の成型ドラムを用いる場合、カーカスバンドをトランスファー装置によってグリーンケースを成型するための成型ドラムに移送する必要がある。その際、成型後のカーカスバンドを持つ成型ドラムをトランスファー装置に受け渡すために、成型ドラムをカーカスバンド取出位置に移動させる。
【0007】
このようにカーカスバンドを取り出す際、生産性の観点から、カーカスプライを巻き付けるための成型位置とカーカスバンドの取出位置との間に、カーカスプライを圧着させるためのステッチャー装置を設けることが望ましい場合がある。しかしながら、その場合に、ステッチャー装置として成型ドラムの外周を取り囲む環状フレームを持つものを用いると、圧着後のカーカスバンドを持つ成型ドラムを上記取出位置に移動させるためには、成型ドラムを一旦後退させ、ステッチャー装置をドラム案内路上から退避させてから前進させなければならず、カーカスバンドの取り出しに時間がかかるという問題がある。
【0008】
本発明の実施形態は、このような問題に鑑みてなされたものであり、カーカスプライの圧着後の成型ドラムを後退させることなく、カーカスバンド取出位置に移動させることができるステッチャー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係るステッチャー装置は、ドラム案内路に沿って移動可能な成型ドラムの外周にゴム部材を介して巻き付けられたカーカスプライを前記ゴム部材に圧着するためのステッチャー装置であって、前記成型ドラムが挿し入れられることで当該成型ドラムの外周を取り囲み可能な環状フレームと、前記カーカスプライを外周より押圧して前記ゴム部材に圧着し得るように前記環状フレームに設けられた圧着装置と、を備え、前記環状フレームが周方向に複数に分割して開閉可能に設けられたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態に係るステッチャー装置であると、圧着装置を備える環状フレームが周方向に複数に分割して開閉できるように構成されているため、圧着装置による圧着後、環状フレームを開くことにより、成型ドラムを通過させることができる。そのため、カーカスプライの圧着後に成型ドラムを後退させることなく、ドラム案内路に沿ってカーカスバンド取出位置に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係るステッチャー装置の正面図
図2】同実施形態におけるカーカスバンドの成型ドラム、ステッチャー装置、トランスファー装置及びビードセットドラムを示す平面図
図3】同ステッチャー装置による圧着段階での側面図
図4】同ステッチャー装置における圧着直後の状態を示す正面図
図5】同ステッチャー装置における圧着終了後、固定具による固定を解除した状態を示す正面図
図6】同ステッチャー装置の環状フレームを開いた状態を示す正面図
図7】同ステッチャー装置の環状フレームに成型ドラムが挿し入れられた状態を示す平面図
図8】同ステッチャー装置の環状フレームが開いた状態を示す平面図
図9】同実施形態において成型ドラムをカーカスバンド取出位置に移動させた状態を示す平面図
図10】同ステッチャー装置の圧縮ローラの配置を示す一部拡大正面図
図11】他の実施形態に係るステッチャー装置の開閉動作を示す平面図
図12】タイヤ構造の断面説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1に示す一実施形態に係るステッチャー装置10は、グリーンタイヤを成型するためのタイヤ成型装置において、カーカスバンド12を成型する際にカーカスプライ6の外周を押圧してその内周側のゴム部材14に圧着するために用いられるものである。
【0014】
ここで、カーカスバンド12とは、インナーライナーを含むゴム部材14とその外周に積層されたカーカスプライ6とを含む円筒状のタイヤ構成部材である。ゴム部材14としては、インナーライナー1、リムストリップ4、サイドウォールゴム3、スキージ(不図示)などが挙げられる(図12参照)。カーカスプライ6は、補強コードが埋設された1枚又は複数枚のプライシートからなり、各プライシートの間にプライテープ(不図示)を貼り付けてもよい。
【0015】
図2及び図3に示すように、カーカスバンド12を成型するための成型ドラム16は、ドラム案内路18に沿って移動可能に構成されている。成型ドラム16は、成型対象のカーカスバンド12の幅よりも大きい幅の周面を有し、かつ複数の周面構成用のピースにより拡縮可能に構成されてなる。
【0016】
成型ドラム16は、ドラム支持体20により支持されている。ドラム支持体20は、成型ドラム16をその軸部16Aの一端部で回転駆動可能に片持ち状態に支持しており、ヘッドストックとも称される。ドラム支持体20は、ドラム案内路18に設けられたレール22上をモータによって走行することにより、成型ドラム16をドラム案内路18に沿って移動させるよう構成されている。
【0017】
ドラム案内路18は、レール22と、レール22を支持する支持台24とを備える。ドラム案内路18は、成型ドラム16の外周にゴム部材14を巻き付け、さらにその上にカーカスプライ6を巻き付けるための、各成型位置(不図示)に成型ドラム16を移動させることができるように、当該各成型位置まで延在している。ドラム案内路18は、また、カーカスプライ6を巻き付けた後に成型ドラム16をステッチャー装置10まで移動させ、さらにその後、トランスファー装置26が待機するカーカスバンド取出位置(図2に示すトランスファー装置26の位置)まで成型ドラム16を移動させることができるように、当該カーカスバンド取出位置の手前まで延在している。
【0018】
成型ドラム16の周面にインナーライナー1やリムストリップ4などのゴム部材14を巻き付ける手段としては、特に限定されない。例えば、押出機により押し出されるリボン状のゴムストリップを成型ドラム16に螺旋状に巻き付けることにより、ゴム部材14を積層形成してもよい。
【0019】
ゴム部材14上にカーカスプライ6を巻き付ける手段としては、特に限定されず、例えば、上記1枚又は複数枚のプライシートをそれぞれのサービサーから供給して、ゴム部材14が巻き付けられた成型ドラム16の当該ゴム部材14上に前記プライシートを円筒状に巻き付けてもよい。その際、各プライシートの間にプライテープを貼り付けるために、例えば、押出機により押し出されるリボン状のゴムストリップを巻き付けてプライテープを積層形成してもよい。
【0020】
トランスファー装置26は、成型ドラム16からカーカスバンド12を受け取り、次工程であるグリーンケースを成型するための成型ドラムであるビードセットドラム28に移送させるための装置であり、公知の構成を採用することができる。
【0021】
トランスファー装置26は、成型ドラム16を受け入れ可能な空間部を有して、カーカスバンド12を外周側から保持することにより成型ドラム16からカーカスバンド12を受け取る。そして、成型ドラム16がトランスファー装置26から退出した後、ビードセットドラム28がトランスファー装置26内に進入して、トランスファー装置26からカーカスバンド12を受け取ることにより、ビードセットドラム28への受け渡しがなされる。
【0022】
ステッチャー装置10は、ゴム部材14上にカーカスプライ6を貼り付けて積層した後、カーカスプライ6をその外周より全周にわたって押圧して圧着する装置である。ステッチャー装置10は、カーカスプライ6を成型ドラム16上に巻き付ける成型位置に隣接して、ドラム支持体20により片持ちで支持された成型ドラム16の非支持側と対向するように設置されている。
【0023】
図1に示すように、ステッチャー装置10は、成型ドラム16が挿し入れられることで当該成型ドラム16の外周を全周にわたって取り囲み可能な環状フレーム30を備える。環状フレーム30は、その内側の空間部に成型ドラム16が軸方向に通過できるように設けられている。詳細には、環状フレーム30は、ドラム支持体20により片持ちで支持された成型ドラム16に対向し、かつ成型ドラム16と軸心を一致させて配され、その内周が成型ドラム16よりも径大の円形をなしている。
【0024】
環状フレーム30には、成型ドラム16の外周に巻き付けられたカーカスプライ6を、当該カーカスプライ6の外周より押圧してゴム部材14に圧着させるための圧着装置32が設けられている。圧着装置32は、カーカスプライ6を押圧することにより、その内側のゴム部材14にカーカスプライ6を圧着させることができるものであれば、特に限定されない。
【0025】
この例では、圧着装置32は、特許文献2に記載の圧着ローラにより構成されている。すなわち、図1に示すように、圧着装置32として、環状フレーム30の内周に複数の圧着ローラ34が配置されている。複数の圧着ローラ34は、成型ドラム16より径大の同心円上において接線方向の軸心を有して当該軸心を中心に回転自在に配置されており、周方向に複数列(図では2列)でかつ一定のピッチで円状に配置されている。図10に示すように、各圧着ローラ34は、シリンダー装置等の進退手段36により径方向内方に向かって進出変位可能に支持されている。各列の圧着ローラ34,34は、径方向内方への進出変位状態時に、全体として周方向に間隔を空けないように周方向に位置をずらして配置され、隣接する列の圧着ローラ34と一部が軸方向において重なりを有するように設けられている。これにより、圧着ローラ34の円状配置の内方を通過する成型ドラム16上のカーカスプライ6を各列の圧着ローラ34により全周において同時に押圧できるようになっている。なお、図1及び図4~6において、2列の圧着ローラ34及び進退手段36は、手前側の列のものを実線で表し、奥側の列のものを点線で示している。
【0026】
環状フレーム30は、周方向に複数に分割して開閉可能に設けられている。環状フレーム30の周方向とは、その軸心を中心とした円周上の方向であり、成型ドラム16の外周に沿う方向である。
【0027】
この例では、環状フレーム30は、水平方向に対向する左右一対のフレーム部分38,40を含む二分割式であり、図6及び図8に示すように左右方向Xに開閉する。すなわち、環状フレーム30は、その軸直角方向、この例では水平方向に移動可能な左右一対のフレーム部分38,40を含み、該一対のフレーム部分38,40が互いに離れるように水平方向に移動することで環状フレーム30が開かれた状態になる。ここで、環状フレーム30の軸直角方向とは、環状フレーム30の軸心(中心)に対して垂直な方向であり、断面円形の中空部における径方向に相当する。
【0028】
より詳細には、一対のフレーム部分38,40は、図1及び図2に示すように、環状フレーム30の軸方向に平行な鉛直面を分割面42として、環状フレーム30を左右略均等に分割してなる。そして、一対のフレーム部分38,40を、ドラム案内路18を挟んだ両側に向けて互いに離れるように移動させることにより、環状フレーム30は開かれた状態になる。また、一対のフレーム部分38,40を互いに近づき接合させることにより、環状フレーム30は閉じた状態になって、成型ドラム16を全周にわたって取り囲み可能な環状に形成される。
【0029】
図1に示すように、環状フレーム30は、門形フレーム44に吊り下げられている。門形フレーム44は、ドラム案内路18の両側に設けられた一対の支柱44A,44Aと、該一対の支柱44A,44A間に架け渡された水平材44Bとからなり、水平材44Bはドラム案内路18の上方において当該ドラム案内路18に垂直に交差する方向に延びている。
【0030】
門形フレーム44の水平材44Bには、上記一対のフレーム部分38,40を水平方向に移動させるためのフレーム案内路46が設けられている。フレーム案内路46は、水平材44Bの上面に設けられたレール48を備えてなり、ドラム案内路18の上方において当該ドラム案内路18に垂直に交差する方向に延びている。
【0031】
フレーム案内路46には、一対のフレーム部分38,40をそれぞれ吊り下げ支持する左右一対のフレーム支持体50,52が当該フレーム案内路46に沿ってスライド可能に設けられている。フレーム支持体50,52は、レール48上を走行可能な走行部50A,52Aと、該走行部50A,52Aから垂れ下がって一対のフレーム部分38,40をそれぞれ保持する垂下部50B,52Bと、を備える。
【0032】
門形フレーム44の水平材44Bには、フレーム支持体50,52の走行部50A,52Aをレール48に沿ってそれぞれ進退変位させるシリンダー装置等の駆動部54,56が各別に設けられている。一対のフレーム支持体50,52は、駆動部54,56により、フレーム案内路46に沿って互いに離れる方向及び互いに近づく方向に移動することで、環状フレーム30の開閉を行うように構成されている。すなわち、駆動部54,56によって一対のフレーム支持体50,52が互いに離れる方向に移動することにより、一対のフレーム部分38,40が左右に開いて環状フレーム30が図6に示す開状態となる。そして、その状態から、駆動部54,56によって一対のフレーム支持体50,52が互いに近づく方向に移動することにより、一対のフレーム部分38,40が互いに近づき接合して環状フレーム30が図1に示す閉状態となる。
【0033】
環状フレーム30の底部側には、環状フレーム30を閉じた状態に固定する固定部58が設けられている。この例では、固定部58は、一対のフレーム部分38,40の底部にそれぞれ設けられた一対のフレーム側係合部60,62と、ドラム案内路18側に設けられた案内路側係合部64とで構成されている。
【0034】
フレーム側係合部60,62は、図1に示すように、環状フレーム30を閉じた状態において、両者60,62が一体となって、先端(即ち、下端)ほど幅の狭い凸状をなすように構成されている。換言すれば、一対のフレーム側係合部60,62は、環状フレーム30の底面に設けられた断面テーパ状の凸部を、上記分割面42の延長上で左右に二分割することにより形成されており、環状フレーム30を閉じた状態において一対のフレーム側係合部60,62が接合されて、左右両側に傾斜面を持つ断面テーパ状の凸部(環状フレーム30の軸心に垂直な断面において先端ほど漸次幅狭の台形状の凸部)が形成される。
【0035】
案内路側係合部64は、上記の一体となったフレーム側係合部60,62が嵌合する凹状をなし、フレーム側係合部60,62が嵌合することにより環状フレーム30を閉じた状態に固定する。すなわち、案内路側係合部64は、フレーム側係合部60,62の上記断面テーパ状の凸部に対応して、底部側ほど幅が狭くなるように両側面が傾斜した凹部64Aを有する。
【0036】
案内路側係合部64は、シリンダー装置等の進退手段66により上下方向に変位可能に支持されている。進退手段66は、ドラム案内路18の支持台24の下面に取り付けられており、その出力軸66Aが支持台24に設けた開口部68から上方に突出し、該出力軸66Aの上端に案内路側係合部64が取り付けられている。
【0037】
上記したステッチャー装置10を用いて、カーカスプライ6を圧着してからカーカスバンド12を取り出す方法は次のように行われる。
【0038】
成型ドラム16に巻き付けられたゴム部材14の上にカーカスプライ6を貼り付けた後(図2参照)、成型ドラム16をステッチャー装置10に移動させ、環状フレーム30の内側に挿し入れて、カーカスプライ6の圧着を行う(図7参照)。
【0039】
カーカスプライ6の圧着方法としては、環状フレーム30の圧着ローラ34を進退手段36により予め径方向内方に変位させておき、この状態で環状フレーム30の内側に成型ドラム16を軸方向に進入させて、進入と同時に成型ドラム16上のカーカスプライ6をその一端から他端にかけて圧着ローラ34により押圧してもよい。あるいはまた、圧着ローラ34を径方向外方に位置させた状態で、環状フレーム30の内側に成型ドラム16を軸方向中央部付近まで進入させ、この中央部付近を基準として成型ドラム16を軸方向の両側にそれぞれ移動させながら、圧着ローラ34を進退手段36により径方向内方に変位させてカーカスプライ6を押圧してもよい。
【0040】
このようにしてカーカスプライ6を圧着した後、進退手段36により圧着ローラ34を径方向外方に変位させる(図4参照)。その後、環状フレーム30の底部側で固定部58による固定を解除する。詳細には、図5に示すように、進退手段66により案内路側係合部64を下方に変位させてフレーム側係合部60,62との係合を解除する。これにより、圧着終了後直ちに僅かな時間で固定を解除することができる。
【0041】
その後、駆動部54,56により一対のフレーム支持体50,52を互いに離れる方向にスライド移動させる。これにより、図6及び図8に示すように、一対のフレーム部分38,40が左右に開いて環状フレーム30が開状態となる。
【0042】
環状フレーム30が開状態になることにより、一対のフレーム部分38,40の間には、成型ドラム16とともにドラム支持体20がドラム案内路18に沿って通過可能な間隙が形成される。そのため、図9に示すように、ドラム支持体20を一対のフレーム部分38,40の間隙を通過させて、成型ドラム16をトランスファー装置26に受け渡すカーカスバンド取出位置まで移動させることができる。
【0043】
カーカスバンド取出位置において、成型ドラム16はトランスファー装置26内に挿し入れられ、この状態でトランスファー装置26がカーカスバンド12を外周側から保持することによりカーカスバンド12を受け取る。その後、成型ドラム16はドラム案内路18上を移動することにより、トランスファー装置26から退出し、上記一対のフレーム部分38,40の間隙を通ってゴム部材14を巻き付けるための成型位置まで戻る。
【0044】
一対のフレーム部分38,40の間隙を成型ドラム16が通過した後、駆動部54,56により、一対のフレーム支持体50,52を互いに近づく方向にスライド移動させて接合させる(図5参照)。
【0045】
その後、環状フレーム30の底部側で固定部58により固定する。この例では、進退手段66により案内路側係合部64を上方に変位させてフレーム側係合部60,62と係合させる。すなわち、一対のフレーム側係合部60,62が接合することにより形成された断面テーパ状の凸部を、案内路側係合部64を上方に移動させて、その凹部64A内に嵌合させる。これにより、一対のフレーム部分38,40は環状フレーム30の底部側で固定され、環状フレーム30が閉状態になる。
【0046】
以上より、成型ドラム16からのカーカスバンド12の取り出しが完了する。
【0047】
本実施形態であると、カーカスプライ6を巻き付けるための成型位置とカーカスバンド12の取出位置との間に設けられたステッチャー装置10において、圧着装置32を備える環状フレーム30を左右に開閉できるように構成している。そのため、圧着装置32による圧着後、ドラム案内路18を挟んだ両側に左右のフレーム部分38,40を移動させて環状フレーム30を開くことにより、開かれた一対のフレーム部分38,40の間隙を成型ドラム16がドラム支持体20とともに通過することができる。そのため、カーカスプライ6の圧着後に成型ドラム16を一旦後退させることなく、そのままカーカスバンド取出位置まで前進移動させることができる。よって、カーカスバンド12の取り出しに要する時間を短縮することができる。
【0048】
また、環状フレーム30を吊り下げ式とし、すなわちドラム案内路18の上方に設けたフレーム案内路46からフレーム支持体50,52を介して吊り下げ支持した上で、環状フレーム30をその底部側で固定部58により固定して環状フレーム30が閉状態になるように構成している。そのため、圧着装置32によるカーカスプライ6の押圧時の圧に負けて一対のフレーム部分38,40が左右に変位しないように固定することができる。
【0049】
また、固定部58を、一対のフレーム側係合部60,62の接合によって形成された断面テーパ状の凸部と案内路側係合部64の凹部64Aとの嵌合により構成したので、環状フレーム30の軸心を案内路側係合部64により位置決めして固定することができる。そのため、左右二分割式の環状フレーム30を閉じたときにその軸心が成型ドラム16の軸心に対して左右にずれることがなく、簡易な構成で成型ドラム16と環状フレーム30の軸心を一致させることができる。
【0050】
なお、固定部58による固定方法は、上記のような一対のフレーム側係合部60,62と案内路側係合部64との係合による機械的な固定には限定されず、例えば電磁式な方法により固定してもよい。
【0051】
上記実施形態では、環状フレーム30を二分割式としたが、環状フレームは複数に分割されれば、分割数は限定されず、例えば3つまたは4つに分割されてもよい。
【0052】
上記実施形態では、左右一対のフレーム部分38,40をドラム案内路18の両側に互いに離れるように移動させて環状フレーム30を開状態とし、成型ドラム16がドラム支持体20とともに通過するための間隙を形成するように構成している。環状フレームを3つ以上のフレーム部分で構成する場合も同様に、複数のフレーム部分を環状フレームの軸直角方向に移動可能に設け、複数のフレーム部分を軸直角方向に互いに離れる方向に移動させることより環状フレームが開かれた状態になるように構成してもよい。それにより成型ドラムをドラム支持体とともに通過させるための間隙が形成され、その間隙を成型ドラムが通過してカーカスバンド取出位置に移動させることができる。
【0053】
環状フレーム30が開閉する際のフレーム部分38,40の移動方向は、環状フレーム30の軸直角方向(上記実施形態では左右方向X)に限定されるものではない。例えば、図11に示す他の実施形態のステッチャー装置10Aのように、左右一対のフレーム部分38,40をそれぞれ前後に回動させることにより環状フレーム30Aが開閉するように構成してもよい。
【0054】
すなわち、左右一対のフレーム部分38,40はドラム案内路18を挟んだ両側にそれぞれ設置された鉛直な軸70,72を中心に回動可能に設けられており、図11に示す閉じられた状態から、矢印で示すように、一方のフレーム部分38は、後方、すなわちカーカスプライ6の成型位置側に向かって回動し、もう一方のフレーム部分40は、前方、すなわちカーカスバンド12の取出位置側に向かって回動する。そのため、分割面42が環状フレーム30の軸方向に対して傾斜しており、フレーム部分38,40の回動時に先端同士が干渉しないようになっている。
【0055】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0056】
1…インナーライナー、6…カーカスプライ、10,10A…ステッチャー装置、12…カーカスバンド、14…ゴム部材、16…成型ドラム、18…ドラム案内路、30,30A…環状フレーム、32…圧着装置、38,40…フレーム部分、46…フレーム案内路、50,52…フレーム支持体、54,56…駆動部、58…固定部、60,62…フレーム側係合部、64…案内路側係合部
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