(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107456
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】風呂給湯器
(51)【国際特許分類】
F24H 15/196 20220101AFI20220713BHJP
【FI】
F24H1/00 602B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002420
(22)【出願日】2021-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】301050924
【氏名又は名称】株式会社ハウステック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】杉山 晴香
(72)【発明者】
【氏名】小俣 康二
(72)【発明者】
【氏名】毛利 徹太郎
【テーマコード(参考)】
3L024
【Fターム(参考)】
3L024CC08
3L024EE02
3L024EE08
3L024EE13
3L024GG06
3L024GG12
3L024GG18
3L024GG50
3L024HH01
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、風呂試運転機能を有する風呂給湯器を提供することにある。
【解決手段】本発明は、浴槽の風呂循環口に接続された循環往き配管、循環戻り配管と、これらから構成される循環経路に組み込まれた風呂ポンプと、水流センサと風呂温度センサ及び風呂水位センサと、循環経路に湯張り弁を介し接続された給湯配管と、コントローラを具備した風呂給湯器であり、風呂給湯器の設置後に浴槽に対する適切な湯張り量を記憶するための試運転操作を実施可能とする風呂給湯器であり、試運転操作時に風呂循環口に対応する水位とするための初期湯張り量を100~120Lに設定して湯張りを行い、水流センサによる循環経路内の連続した水流の確認を行い、連続水流を検知できない場合は更に20Lの湯張りを必要回数、連続した水流の確認ができるまで行い、水流を確認できた時点の湯張り量に応じた風呂循環口の位置を記憶する試運転シーケンスを備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽に設けられた風呂循環口に対し接続された循環往き配管及び循環戻り配管と、前記循環往き配管及び循環戻り配管を備えて構成される循環経路に組み込まれた風呂ポンプと、前記循環経路に設けられた水流センサと風呂温度センサ及び風呂水位センサと、前記循環経路に湯張り弁を介し接続されて前記湯張り弁の開閉で前記循環往き配管及び循環戻り配管を介し前記浴槽に給湯可能な給湯配管と、前記風呂ポンプと前記水流センサと前記風呂温度センサと前記風呂水位センサと前記湯張り弁に接続され、これらの動作や検知データより制御を行うコントローラを具備した風呂給湯器であり、
前記風呂給湯器の設置後に前記浴槽に対する適切な湯張り量を記憶するための試運転操作を実施可能とする風呂給湯器であって、
前記試運転操作時に前記風呂循環口に対応する水位とするための初期湯張り量を100~120Lに設定して湯張りを行い、前記水流センサによる前記循環経路内の連続した水流の確認を行い、連続水流を検知できない場合は更に20Lの湯張りを必要回数、前記連続した水流の確認ができるまで行い、前記水流を確認できた時点の湯張り量に応じた前記風呂循環口の位置を記憶する試運転シーケンスを前記コントローラに備えたことを特徴とする風呂給湯器。
【請求項2】
浴槽に設けられた風呂循環口に対し接続された循環往き配管及び循環戻り配管と、前記循環往き配管及び循環戻り配管を備えて構成される循環経路に組み込まれた風呂ポンプと、前記循環経路に設けられた水流センサと風呂温度センサ及び風呂水位センサと、前記循環経路に湯張り弁を介し接続されて前記湯張り弁の開閉で前記循環往き配管及び循環戻り配管を介し前記浴槽に給湯可能な給湯配管と、前記風呂ポンプと前記水流センサと前記風呂温度センサと前記風呂水位センサと前記湯張り弁に接続され、これらの動作や検知データより制御を行うコントローラを具備した風呂給湯器であり、
前記風呂給湯器の設置後に前記浴槽に対する適切な湯張り量を記憶するための試運転操作を実施可能とする風呂給湯器であって、
前記試運転操作時の前記湯張り時に、前記風呂循環口を覆った後の湯張り量と前記浴槽の水位変化量から前記浴槽の形状の学習を主に行い、前記風呂循環口の位置検出に関し、前記湯張り後の排水操作時の前記風呂水位センサの検知値で決定する試運転シーケンスを前記コントローラに備えたことを特徴とする風呂給湯器。
【請求項3】
前記コントローラにリモートコントローラが接続され、前記コントローラには、前記リモートコントローラの湯張りのためのスイッチ操作により前記試運転操作により決定された前記風呂循環口の検出位置に対応する湯張り量に基づいて算出された適量の湯張りを行う機能が備えられたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の風呂給湯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯張り機能を有する風呂給湯器において、「風呂自動」運転を行う上で必要な浴槽設置状況や状態、浴槽形状を記憶するための風呂試運転機能を有する風呂給湯器に関する。
【背景技術】
【0002】
風呂給湯器は、入浴時の快適性、使い勝手を向上させるための機能として、リモートコントローラのスイッチを押すだけで自動的に設定された風呂温度、風呂水位で浴槽にお湯を張り、沸き上げを行い、その後、一定時間、設定した風呂温度、風呂水位を一定に保つことで、利用者が快適に入浴ができるようにした全自動タイプの風呂機能を持った機種が広く一般的に普及している。
【0003】
この全自動タイプの風呂給湯器は、風呂給湯器と浴槽との間の循環経路内に風呂温度を検出可能なセンサと水位を検出可能なセンサを設けることで風呂湯温や風呂水位を認識可能としている。この風呂給湯器は、風呂湯温が下がったときは、自動で追焚動作を実施し、設定された風呂温度を保つよう動作し、水位が低下したことを検知したときは、検出した水位データから設定した水位に戻すために必要な足し湯量を計算し、自動で湯張り弁を開/閉し、必要湯量を足し湯するなどして水位を一定に保つことができる機能を有している機器である。
【0004】
しかしながら、上記機能のうち、風呂の水位を一定に保つ機能を確保するためには、水位を検出するセンサの精度もあるが、現地により異なる風呂給湯器本体と浴槽の設置高さの関係や浴槽に設置された循環口高さ、浴槽の形状、容量を正確にあらかじめ認識させることが必要である。このため、風呂給湯器の設置後に風呂給湯器と浴槽の設置状態や状況、浴槽形状をあらかじめ学習させる風呂試運転を実施することが一般的に行われている。
【0005】
従来技術として、特許文献1では、風呂給湯器設置後、浴槽の湯量が空の状態で、浴槽栓を閉めてから、自動で少量ずつお湯張りを行い、その度に循環確認、水位検知を行い、循環口位置や基準水位の位置、浴槽形状を学習する風呂試運転方法が開示されている。
また、特許文献2では、利用者の操作で設定された浴槽データに基づいて、その浴槽の基準量を推定し、試運転を行うことで循環口位置や基準水位の位置、浴槽形状を学習する風呂試運転方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-83157号公報
【特許文献2】特開2013-231563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法では、風呂の試運転時、少量ずつお湯張りを行い、お湯張り停止、循環確認、水位検知を行うことを何度も繰り返すため、風呂の試運転に時間がかかるといった欠点があった。そこで、試運転時間を短縮するため、少量ずつ行う湯張り量を多くして、確認回数を少なくすることで、試運転時間を短縮することも可能であるが、この一回分の少量湯張りでの水位上昇分が大きくなり、循環口位置を正確に把握できない場合があるため、適正な水位設定ができなくなるといった問題も考えられる。
また、特許文献2に記載の方法では、想定した基準水位に基づき試運転を行うため、試運転時間を短縮することができるが、事前に浴槽情報を機器に認識させるための手動操作が必要であり、試運転作業が煩雑になってしまうといった欠点がある。
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みなされたものであって、実使用上必要最小限の風呂給湯器本体と浴槽の設置高さの関係や浴槽に設置された循環口高さ、浴槽形状、容量を学習させる新たな風呂試運転機能を備えた風呂給湯器を提供するものである。
また、本発明は、短時間で水位設定を可能とすることができ、さらには利用者の手間をかけずに正確な循環口位置を認識させることができる試運転機能を備えた風呂給湯器を提供することで、施工業者の負荷低減、使用者の快適な入浴に貢献する風呂給湯器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述課題を解決する手段として、以下の構成を有する。
(1)本発明の風呂給湯器は、浴槽に設けられた風呂循環口に対し接続された循環往き配管及び循環戻り配管と、前記循環往き配管及び循環戻り配管を備えて構成される循環経路に組み込まれた風呂ポンプと、前記循環経路に設けられた水流センサと風呂温度センサ及び風呂水位センサと、前記循環経路に湯張り弁を介し接続されて前記湯張り弁の開閉で前記循環往き配管及び循環戻り配管を介し前記浴槽に給湯可能な給湯配管と、前記風呂ポンプと前記水流センサと前記風呂温度センサと前記風呂水位センサと前記湯張り弁に接続され、これらの動作や検知データより制御を行うコントローラを具備した風呂給湯器であり、前記風呂給湯器の設置後に前記浴槽に対する適切な湯張り量を記憶するための試運転操作を実施可能とする風呂給湯器であって、前記試運転操作時に前記風呂循環口に対応する水位とするための初期湯張り量を100~120Lに設定して湯張りを行い、前記水流センサによる前記循環経路内の連続した水流の確認を行い、連続水流を検知できない場合は更に20Lの湯張りを必要回数、前記連続した水流の確認ができるまで行い、前記水流を確認できた時点の湯張り量に応じた前記風呂循環口の位置を記憶する試運転シーケンスを前記コントローラに備えたことを特徴とする。
【0010】
(2)本発明の風呂給湯器は、浴槽に設けられた風呂循環口に対し接続された循環往き配管及び循環戻り配管と、前記循環往き配管及び循環戻り配管を備えて構成される循環経路に組み込まれた風呂ポンプと、前記循環経路に設けられた水流センサと風呂温度センサ及び風呂水位センサと、前記循環経路に湯張り弁を介し接続されて前記湯張り弁の開閉で前記循環往き配管及び循環戻り配管を介し前記浴槽に給湯可能な給湯配管と、前記風呂ポンプと前記水流センサと前記風呂温度センサと前記風呂水位センサと前記湯張り弁に接続され、これらの動作や検知データより制御を行うコントローラを具備した風呂給湯器であり、前記風呂給湯器の設置後に前記浴槽に対する適切な湯張り量を記憶するための試運転操作を実施可能とする風呂給湯器であって、前記試運転操作時の前記湯張り時に、前記風呂循環口を覆った後の湯張り量と前記浴槽の水位変化量から前記浴槽の形状の学習を主に行い、前記風呂循環口の位置検出に関し、前記湯張り後の排水操作時の前記風呂水位センサの検知値で決定する試運転シーケンスを前記コントローラに備えたことを特徴とする。
【0011】
(3)本発明の風呂給湯器において、 前記コントローラにリモートコントローラが接続され、前記コントローラには、前記リモートコントローラの湯張りのためのスイッチ操作により前記試運転操作により決定された前記風呂循環口の検出位置に対応する湯張り量に基づいて算出された適量の湯張りを行う機能が備えられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、初期湯張り量を100~120Lに設定して湯張り後、循環確認により必要に応じて20Lずつ必要回数湯張りを行い、循環経路の連続水流発生の確認により風呂循環口の位置確認を行い、風呂の試運転を完了できるので、風呂試運転の時間短縮をすることができる。
具体的には従来10Lずつあるいは20Lずつ湯張りして都度循環確認していた風呂試運転方法に比べ、循環確認を4回程度低減できるためトータル4~5分程度時間短縮ができる試運転機能を備えた給湯器を提供できる。また、試運転を実施するに際し、特別な操作が不要のため、誰にでも簡単に試運転が実行できる。このため、施工業者の負荷を低減でき、使用者の快適な入浴に貢献する風呂給湯器を提供することができる。
【0013】
また、従来定量ずつ湯張りして風呂循環口位置を決定していたため、風呂循環口の位置等の影響で、風呂循環口の水位がその定量湯張り分ズレてしまう場合があった。しかし、本発明において、浴槽からの排水時に連続して水位を検知することができるので、その水位の低下がなくなったことを認識することで風呂循環口の水位と認識することができ、風呂循環口の検出位置ズレがなく、再現性の極めて高い水位設定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る風呂給湯器の構成と浴槽の関係を表す模式図である。
【
図2】
図1に示す浴槽に対する試運転時の湯張り状態の一例を説明するための模式図である。
【
図3】
図1に示す浴槽において排水時の水位を示す模式図である。
【
図4】
図1に示す浴槽における排水時の水位検知チャートの一例を示すグラフである。
【
図5】従来の風呂給湯器において10Lずつ湯張りを行って試運転を行う状態を示す説明図である。
【
図6】従来の風呂給湯器において、20Lずつ湯張りを行って試運転を行う状態を示す説明図である。
【
図7】本発明に係る風呂給湯器において湯張りする場合の初期の状態を示す説明図である。
【
図8】本発明に係る風呂給湯器において循環口位置まで排水する場合の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第1実施形態に係る風呂給湯器について図面に基づき詳しく説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に制限されるものではない。
図1は、浴槽15と該浴槽15の近傍に配置された風呂給湯器1を示す構成図である。
本実施形態の風呂給湯器1は、浴槽15の側壁下部に設けられた風呂循環口16に対し接続された循環往き配管8-2と循環戻り配管8-1を備え、これらの循環往き配管8-2と循環戻り配管8-1は相互に接続されて風呂循環経路8が構成されている。風呂循環経路8の一部が風呂給湯器1の内部に引き込まれ、風呂給湯器1の内部に収容されている風呂循環経路8には、本図では浴槽15に近い側から順に風呂水位センサ13と風呂温度センサ14と風呂ポンプ12と水流センサ11と追焚熱交換器4が組み込まれているが、その配置は特に限定するものではない。
風呂給湯器1は、箱型のケースの内部に前述の風呂水位センサ13、風呂温度センサ14、風呂ポンプ12、水流センサ11、追焚熱交換器4に加え、後述する給湯熱交換器3、コントローラ5、湯張り弁9、流量センサ10などが組み込まれて構成されている。
【0016】
以上の構成により、浴槽15の風呂循環口16より上まで湯水が収容されている場合、風呂ポンプ12を作動させることにより浴槽15内の湯水を循環戻り配管8-1に吸い込み、追焚熱交換器4に供給できるようになっている。また、追焚熱交換器4で加熱した温水を循環往き管8-2を介し浴槽15に戻すことができる。従って
図1に示す構成では、風呂循環経路8に沿って浴槽15の湯水を循環しながら目的の湯温に調整することにより、追焚できるようになっている。
【0017】
浴槽15からの湯水が風呂循環経路8を循環する際、循環戻り配管8-1に吸い込まれた湯水は風呂水位センサ13、風呂温度センサ14、風呂ポンプ12、水流センサ11の各位置をこれらの順番に通過する。このため、風呂温度センサ14により、浴槽15から循環戻り配管8-1に引き込まれた湯水の温度を計測することができる。風呂温度センサ14で測定する湯水の温度は、浴槽15に収容されている湯水の温度と同じであると見なすことができる。また、水流センサ11は、風呂循環経路8内の水流の有無を計測することができる。
【0018】
水流センサ11と追焚熱交換器4の間の風呂循環経路8には、給湯配管7からの分岐管7Aが接続されている。給湯配管7の基端側は風呂給湯器1の内部に設けられた給湯熱交換器3に接続され、給湯配管7の先端側には給湯口7-1が形成されている。この給湯口7-1から浴室他の給湯負荷側への湯水の供給ができるようになっている。給湯熱交換器3には給水管6が接続され、この給水管6には給水口6-1に接続した水道などから水が供給される。
給湯熱交換器3と給湯口7-1の間の給湯配管7から分岐管7Aが延出され、この分岐管7Aが先に説明した風呂循環経路8に接続されている。また、分岐管7Aには、給湯配管7への接続部分に近い側から順に電磁式の湯張り弁9と流量センサ10が組み込まれている。
【0019】
以上説明の風呂給湯器1では、給湯熱交換器3を通過した湯水を湯張り弁9の開閉により分岐管7Aを介し風呂循環経路8に供給することができる。また、流量センサ10は給湯配管7から分岐管7Aを介し風呂循環経路8に供給される湯水の量を計測することができる。換言すると、給湯配管7から風呂循環経路8の循環往き配管8-2、循環戻り配管8-1を介し浴槽15側に供給した湯水の量を計測することができる。
なお、浴槽15に供給される湯水は、上述のように循環往き配管8-2、循環戻り配管8-1両方を介して供給されても、循環往き配管8-2単独で供給されてもどちらでも構わない。
【0020】
更に、風呂給湯器1の内部に制御用のコントローラ5が設けられている。このコントローラ5は、湯張り弁9と流量センサ10と水流センサ11と風呂ポンプ12と風呂水位センサ13と風呂温度センサ14にそれぞれ配線等を介し電気的に接続され、これら各機器の動作を制御し、これら各機器から得られた検知データを把握して記録することができる構成を有する。
また、コントローラ5には、これら各機器からの検知データを基に後に説明する試運転シーケンスを実施できる機能を有する。
【0021】
本実施形態に係る風呂給湯器1は、前述の課題を解決するために、以下の手法で風呂試運転を実施できるものであり、システム構成は
図1に示す通り一般的な風呂給湯器に対し特別な機器の追加なしで実現可能である。また、以下に説明する試運転シーケンスはコントローラ5が制御できる操作であるので、コントローラ5に追加機能として記憶させておくことで容易に実施できる。
【0022】
現地によって異なる風呂給湯器1と浴槽15の設置高さの関係や浴槽15に設置された循環口16の高さ、浴槽形状、容量をあらかじめ学習するため、設置工事完了後に実施する本実施形態に係る試運転では、浴槽が空で、浴槽排水口15Aを風呂排水栓17で閉じた状態で、以下の「1」~「4」の動作、あるいは「1」~「5」に基づく試運転シーケンスによる試運転操作を実行する。
【0023】
「1」最初に、湯張り弁9を開け、流量センサ10で浴槽15に対する湯量を計量しつつ
図2に示すQ1[L]の定量湯張り(例えば100[L])を行い、更に風呂ポンプ12を作動させて風呂循環経路8の水流を水流センサ11で検知し、連続した水流を検知できるか否か確認する。
ここで、仮に、連続した水流を確認できるということは、
図2に示すQ1[L]の定量湯張りにより、浴槽15の風呂循環口16を覆うまで水位が達していることを意味している。
一方、連続した水流が確認できなければ、浴槽15の風呂循環口16まで水位が達していないことを意味しているため、湯張り弁9を再度開け、流量センサ10で計量しつつ
図2に示すQ2[L]を検知するまで湯張り(例えば20[L])を繰り返し行い、その都度、風呂ポンプ12を作動させ、風呂循環経路8内の水流が継続して生じるまで湯張りを繰り返し実施する。
なお、ここで風呂循環経路8の水流を検知する手段としてバタフライ式の近接スイッチを内蔵した水流スイッチに限らず、風呂ポンプ12の回転数や電流等、風呂循環水の水流を検知できる手段であれば、方式は特に問われるものではない。
【0024】
「2」その後、風呂循環経路8内の空気を完全に排出するため、十分な循環確認後風呂ポンプ12を停止させ、風呂水位センサ13にて浴槽15内の水位を検出し、その値をコントローラ5に内蔵されているメモリなどに記憶する(水位:L1)。
なお、以下の表1に示すように一般的に使用されている浴槽15は、満水容量が200L以上のものが大半であり、また、風呂循環口16を覆うために必要な湯張り量は80~120L程度であることが一般的である。
従って、試運転時の最初の湯張り量を100L程度(100L~120L)となるように連続して行っても、風呂循環口16を大きく上回る水位まで湯張りしてしまうことはなく、使い勝手上、違和感のない風呂循環口16より上の水位になる場合が大半である。
また、この最初の湯張り量について、風呂試運転者が手動で決定することができるならば、更に試運転に要する時間を短縮することができる。
【0025】
【0026】
「3」その後、更に湯張り弁9を開け、流量センサ10で計測しつつ
図2に示すQ3[L]の定量湯張り(例えば30[L])を行い、その後、風呂ポンプ12を作動させ、風呂循環経路8の水流が継続することを確認するとともに、風呂循環経路8内の空気を完全に排出し、その後、風呂ポンプ12を停止させ、風呂水位センサ13にて再度水位を検出し、その値をコントローラ5に記憶する(水位:L2)。
【0027】
「4」先にコントローラ5に記憶した
図2に示す水位L1と規定量Q3[L](ここでは30[L])足し湯後の水位L2から、浴槽15の形状を検出し、把握できる。
即ち、この浴槽15は、
図2に示すようにQ3[L](ここでは30[L])で水位変化(L2-L1)が存在する浴槽15であることを認識することができる。即ち、水位変化量ΔLs(=(L2-L1)/Q3))の浴槽15であることを認識することができ、湯張り動作は完了となる。
【0028】
なお、浴槽15の形状の確からしさを確認するために、再度湯張り弁9を開け、流量センサ10でQ4[L]の定量湯張り(例えば20[L]等の定量であったり、試運転で設定した水位にするのに必要な湯量)を行い、その後、風呂ポンプ12を作動させ、風呂循環経路8の水流が継続することを確認するとともに、風呂循環経路8内の空気を完全に排出し、その後、風呂ポンプ12を停止させ、風呂水位センサ13にて再度水位を検出しコントローラ5に記憶する(水位:L3)。算出できるL3水位は、約L2+ΔLs・Q4となる。
そのL3の水位が前述のΔLsから算出される水位と比較し、検証し、異なっていれば補正することもできる。
なお、上記「1」~「4」の浴槽湯張り状態(Q1~Q4とL1~L3の関係)を
図2に示す。
【0029】
「5」以上の試運転動作により、実使用上違和感のない風呂循環口16の位置を検出することができ、浴槽15の形状の学習が完了する。
次に、いたって簡単な操作のみで、より正確な風呂循環口16の位置を把握し学習する方法について説明する。
その操作は、湯張り完了後、風呂排水栓17を開けて浴槽排水口15Aを開放し、排水する作業のみでより正確な風呂循環口16の位置検出が可能となる。浴槽15の水を排水した後、連続して風呂水位センサ13の検出値をコントローラ5がモニタする。すると、風呂循環経路8内に設置した風呂水位センサ13の検出値が、
図3に示すようにL3からL4に水位が下がるのと比例して
図4に示すように徐々に低下する。
図4は、
図3に示すように排水した場合、横軸に排水時間を縦軸に水位を示すグラフであるが、浴槽15内の水位はL3からL4に至るまで排水時間の経過とともに一定の割合で減少する。
そして、浴槽15の水位が風呂循環口16を下回ると、風呂水位センサ13の検出値は配管内の水位を検出するだけとなり、比例的水位低下とならない変化点が現れる。
【0030】
この時の風呂水位センサ13の検出値L4の位置(
図4参照)が、正確な風呂循環口16を覆う水位であり、その位置を検出することができる。そして、L4の水位に一定の水位(例えば3cm)を加算した水位を浴槽15の基準水位として、先に算出したΔLsなどから各設定水位、各々の湯張り量を算出することができ、簡単かつ短時間で正確な水位設定が可能となる風呂試運転操作を提供することができる。
【0031】
また、先に説明した「1」~「4」の風呂試運転操作、あるいは、「5」の風呂試運転操作により、風呂循環口16を覆う正確な水位をコントローラ5が把握できるので、先に算出したΔLsなどから浴槽15に応じた設定水位、そのための湯張り量を算出できるので、風呂試運転により決定した浴槽15に応じた設定水位と湯張り量をコントローラ5に記憶させておくならば、風呂給湯器1を設置後に使用者が風呂を使用する場合に常に適切な湯張りができる。
以上説明のように、風呂循環口16を覆った後の湯張り量と浴槽の水位変化量から浴槽の形状の学習を行い、風呂循環口16の位置検出に関し、湯張り後の排水操作時の風呂水位センサ13の検知値で決定する試運転シーケンスをコントローラ5に備えさせることができる。
【0032】
また、
図1に示すようにコントローラ5にリモートコントローラ18を接続して設け、このリモートコントローラ18に設けた湯張りのためのスイッチ操作により、先の試運転操作により決定された風呂循環口16の検出位置に対応する適切な湯張り量に基づいて算出された適量の湯張りを行う機能を前記コントローラ5に備えている構成とすることができる。これにより、リモートコントローラ18による浴槽15に対する適切な湯張り操作を実施できる。
【0033】
以上説明した風呂試運転方法に対し、1回に少量ずつ(ここでは10Lずつ)湯張りする従来の試運転方法は
図5を基に以下に説明する湯張り方法であると説明できる。
図5に示すように10Lずつ湯張りを行って、風呂循環経路8を流れる湯水の循環確認を行う場合、風呂循環口16を超える水位とするためには、浴槽15における循環口16の位置容量110Lとした場合、循環口16の位置を検出できるまでに20分15秒の時間を要する。
図5では、浴槽15の底面と平行な水位線を10Lづつの水位線として示し、浴槽底面から11本目の水位線の位置で循環口16が完全に湯水で覆われた状態になることを示している。
この風呂試験運転方法では、湯張り11回で11分、循環確認11回として8分15秒(1回あたりの循環確認時間を45秒とする。)、水位検出に1分必要になると仮定し、合計所要時間は20分15秒を要する。ただし、10L分の誤差の可能性を含むが、風呂循環口16の位置は比較的正確に検出可能となる。
【0034】
先に説明した本実施形態の風呂試運転方法に対し、1回に20Lずつ湯張りする従来の試運転方法は
図6を基に以下に説明する湯張り方法であると説明できる。
図6に示すように1回に20Lずつ湯張りを行って、風呂循環経路8を流れる湯水の循環確認を行う場合、風呂循環口16を超える水位とするためには、浴槽15における循環口位置容量110Lとした場合、循環口の位置を検出できるまでに17分30秒の時間を要する。
図6では、浴槽15の底面と平行な水位線を20Lづつの水位線として示し、浴槽底面から120Lの湯水を供給した水位線の位置で循環口16が完全に湯水で覆われた状態になることを示している。
この風呂試験運転方法では、湯張り6回で12分、循環確認6回として4分30秒(1回あたりの循環確認時間を45秒とする。)、水位検出に1分必要になると仮定し、合計所要時間は17分30秒を要する。ただし、20L分の誤差の可能性を含み、風呂循環口16の位置検出精度は粗い検出可能となる。
【0035】
図5、
図6に示す湯張りに対し、上述の実施形態では、湯張り量10L/分として
図7に示すように湯張り2回(100L+20L)で12分必要となり、循環確認2回として1分30秒必要となり、水位検出に1分必要として、風呂循環口16の位置検出まで合計14分30秒必要となる。従って
図5と
図6を基に先に説明した従来方法より、5分程度以上短時間で正確な風呂循環口16の位置検出を可能とする風呂の試運転シーケンスを実施できる。
【0036】
また、風呂循環口16を超える位置まで水位を上昇させた後、
図8に示すように浴槽15の風呂排水栓17を抜いて排水し、風呂循環口16の位置まで水位が下がる時間は30秒程度で済む。即ち、排水に応じ
図4に示す排水時間と水位の関係を示すグラフを描くと、風呂水位センサ13の検出値が配管内の水位を検出するだけとなり、比例的水位低下とならない変化点が現れるまで30秒程度で達することとなるので、風呂循環口16の位置を検出するまでの時間を短縮できる。
【0037】
以上のように、本実施形態に係る試運転シーケンスに従う試運転方法を実施すると、合計約15分で正確な風呂循環口16の位置確認ができる。
従って
図5や
図6を基に先に説明した従来方法より、5分程度短時間で正確な風呂循環口16の位置検出を能とする風呂の試運転を実施できる。
【0038】
これに対し、従来の10Lずつ湯張りする方法が20分15秒かかるとして、本実施形態では約15分であるので、風呂循環口16の位置検出まで5分以上短縮できたこととなる。しかも、本実施形態の試運転方法によれば、風呂循環口16の位置を従来のいずれの方法よりも正確に把握することができる。
【符号の説明】
【0039】
1…風呂給湯器、2…加熱手段、3…給湯熱交換器、4…追焚熱交換器、5…コントローラ、6…給水管、6-1…給水口、7…給湯配管、7-1…給湯口、8…風呂循環経路、8-1…循環戻り配管、8-2…循環往き配管、9…湯張り弁、10…流量センサ、11…水流センサ、12…風呂ポンプ、13…風呂水位センサ、14…風呂温度センサ、15…浴槽、16…風呂循環口、17…風呂排水栓、18…リモートコントローラ。