(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107469
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】加飾フィルム、加飾フィルムの製造方法、加飾成形体、及び加飾成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20220713BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002439
(22)【出願日】2021-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】390023009
【氏名又は名称】共和レザー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】室伏 翼
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK07
4F100AK15
4F100AK16
4F100AK25
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AR00D
4F100AS00C
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA41A
4F100CA13
4F100CB00B
4F100CB01
4F100DC13
4F100DC13A
4F100DD01
4F100GB31
4F100HB00
4F100HB00A
4F100JL10
4F100JL10D
4F100JL11
4F100JL11B
4F100JL14A
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】転写シートを用いることなく、任意のデザインパターンを被着体に容易に形成することができる加飾フィルム、加飾フィルムの製造方法、加飾フィルムを備える加飾成形体及び加飾成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】剥離部と非剥離部とを有する加飾層と、接着層と、接着層保護シートと、をこの順で有し、前記剥離部と非剥離部とは、深さが、加飾層の厚みに対し、加飾層の表面側から100%未満である切り取り線にて区画される、成形体の加飾に用いられる加飾フィルム及びその応用。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離部と非剥離部とを有する加飾層と接着層とを有する加飾積層体、及び、
接着層保護シート、をこの順で有し、
前記剥離部と非剥離部とは、深さが、加飾層の厚みに対し、加飾層の表面側から100%未満である切り取り線にて区画される、成形体の加飾に用いられる加飾フィルム。
【請求項2】
前記加飾層における切り取り線の深さは、加飾層の厚みに対し、加飾層の表面側から25%以上100%未満である請求項1に記載の加飾フィルム。
【請求項3】
前記剥離部は、剥離補助部を備える請求項1又は請求項2に記載の加飾フィルム。
【請求項4】
前記加飾層の、前記接着層側とは反対の面に、さらに、前記加飾層とは異なる色相の着色シートを有する請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の加飾フィルム。
【請求項5】
加飾層の一方の面に、接着層を形成して加飾積層体を形成する工程と、
接着層保護シートを準備し、準備した接着層保護シートにより、前記接着層を被覆して、前記加飾層と接着層と接着層保護シートとを有する加飾フィルム前駆体を形成する工程と、
前記加飾層に、剥離部と非剥離部とを区画する、深さが、加飾層の厚みに対し、加飾層の表面側から100%未満である第一切り取り線を形成する工程と、
前記加飾フィルム前駆体を貫通する第二切り取り線を、前記第一切り取り線との交部が生じる位置に形成する工程と、を有する、
成形体の加飾に用いられる加飾フィルムの製造方法。
【請求項6】
成形体と、
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の加飾フィルムから前記接着層保護シート及び加飾積層体の剥離部が剥離された加飾積層体の非剥離部と、を有する加飾成形体。
【請求項7】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の加飾フィルムから接着層保護シートを剥離して加飾積層体を得る工程、
接着層保護シートを剥離した加飾積層体を、接着層を介して成形体の表面に貼り付ける工程、及び、
前記成形体の表面に貼り付けた加飾積層体の剥離部を剥離する工程、
を有する加飾成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加飾フィルム、加飾フィルムの製造方法、加飾成形体、及び加飾成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、鉄道車輌、航空機などの外装材として、さまざまな意匠の合成樹脂加飾フィルム(以下、加飾フィルムと称することがある)が用いられている。加飾フィルムを、被着体、例えば、自動車等の外面に貼り付ける加飾方法を行うことで、自動車等の外装として、任意の意匠を簡易に付与することができる。また、加飾フィルムは、自動車等の本来の外装材を傷付けることなく剥離することができ、張り替えも行うことができる。
加飾フィルムとしては、例えば、自動車の屋根、スポイラーなどの一部領域の全面を被覆するために用いられる加飾シートが挙げられる。
加飾シートとしては、作業性の向上を図るために、形状保持層を備えた接着層を有する加飾シートが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の加飾シートが形状保持層を有することで、加飾シートを貼り付ける成形体に適合する形状に予備成形を行うことで、貼り付け性が向上されるとされている。
【0003】
また、文字、図柄などのデザインパターンを貼り付けるためのアプリケーションシート(以下、「転写シート」と称する)が知られている。転写シートが有する文字、図柄などのデザインパターンのみを、被着体に貼り付けることで、任意のデザインパターンを任意の領域に形成することができる。
加飾用の転写シートは、装飾シート、装飾用粘着シート等(以下、「装飾シート等」と称する)が有する文字又は図柄などのデザインパターンを、転写シート形成用の基材シートに転写して加飾用の転写シートを得ることで形成される。形成された加飾用の転写シートを被着体へ貼り付け、転写シートの基材シートのみを剥がすことにより、デザインパターンによる被着体の加飾を施すことができる。
装飾シートとしては、立体的な成形体に貼付しても装飾面の伸び、歪みなどを生じないため、装飾フィルムとアプリケーションテープとを備え、且つ、装飾フィルム及びアプリケーションテープのそれぞれが特定の引っ張り弾性率を満たす加飾シートが提案されている(特許文献2参照)。
また、転写シートとしては、剥離体上に粘着剤層を介して貼着された装飾用粘着シートを用い、該装飾用粘着シートを所望の形状にカッティングして、カッティング形成されたデザイン部分を、感圧粘着剤層が設けられた特定の物性を有するアプリケーションテープに貼着させて転写シートを作製する方法が提案されている(特許文献3参照)。この転写シートから剥離体を引き剥がし、被着体にデザイン部分を貼り付け、アプリケーションテープを剥離することでデザインを被着体に転写する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016―198900号公報
【特許文献2】特開2006-248120号公報
【特許文献3】特開平06-051702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の加飾シートでは、加飾シートを貼り付ける成形体に適合する形状に予備成形を行い、それをそのまま成形体に貼り付けるため、領域全面ではなく、特定の形状の文字又は図形等のデザイン部分のみを成形体に付与することは困難である。
また、特許文献2及び特許文献3に記載の装飾シート等では、装飾層とは別に、さらにアプリケーションテープなどの転写シートを必要とし、転写シートの弾性率、熱特性などを所定の範囲に制御する必要があった。また、転写までデザイン部分を転写シートに安定に保持するために、デザイン部分は転写シートとある程度の密着性が必要であった。
【0006】
本発明の一実施形態の課題は、転写シートを用いることなく、任意のデザインパターンを被着体に容易に形成することができる加飾フィルム及び加飾フィルムの製造方法を提供することである。
また、本発明の別の実施形態の課題は、転写シートを用いることなく、任意のデザインパターンを被着体に容易に形成することができる加飾フィルムを用いた、意匠性が良好な加飾成形体及び加飾成形体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決するための手段は以下の態様を含む。
<1> 剥離部と非剥離部とを有する加飾層と接着層とを有する加飾積層体、及び、接着層保護シート、をこの順で有し、前記剥離部と非剥離部とは、深さが、加飾層の厚みに対し、加飾層の表面側から100%未満である切り取り線にて区画される、成形体の加飾に用いられる加飾フィルム。
<2> 前記加飾層における切り取り線の深さは、加飾層の厚みに対し、加飾層の表面側から25%以上100%未満である、<1>に記載の加飾フィルム。
<3> 前記剥離部は、剥離補助部を備える<1>又は<2>に記載の加飾フィルム。
<4> 前記加飾層の、前記接着層側とは反対の面に、さらに、前記加飾層とは異なる色相の着色シートを有する<1>~<3>のいずれか1つに記載の加飾フィルム。
【0008】
<5> 加飾層の一方の面に、接着層を形成して加飾積層体を形成する工程と、接着層保護シートを準備し、準備した接着層保護シートにより、前記接着層を被覆して、前記加飾層と前記接着層と前記接着層保護シートとを有する加飾フィルム前駆体を形成する工程と、前記加飾層に、剥離部と非剥離部とを区画する、深さが、加飾層の厚みに対し、加飾層の表面側から100%未満である第一切り取り線を形成する工程と、前記加飾フィルム前駆体を貫通する第二切り取り線を、前記第一切り取り線との交部が生じる位置に形成する工程と、を有する、成形体の加飾に用いられる加飾フィルムの製造方法。
【0009】
<6> 成形体と、<1>~<4>のいずれか1つに記載の加飾フィルムから前記接着層保護シート及び加飾積層体の剥離部が剥離された加飾積層体の非剥離部と、を有する加飾成形体。
<7> <1>~<4>のいずれか1つに記載の加飾フィルムから接着層保護シートを剥離して加飾積層体を得る工程、接着層保護シートを剥離した加飾積層体を、接着層を介して成形体の表面に貼り付ける工程、及び、前記成形体の表面に貼り付けた加飾積層体の剥離部を剥離する工程、を有する加飾成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、転写シートを用いることなく、任意のデザインパターンを被着体に容易に形成することができる加飾フィルム及び加飾フィルムの製造方法を提供することができる。
本発明の別の実施形態によれば、転写シートを用いることなく、任意のデザインパターンを被着体に容易に形成することができる加飾フィルムを用いた、意匠性が良好な加飾成形体及び加飾成形体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の加飾フィルムの一例を示す概略断面図である。
【
図2】本開示の加飾フィルムにおける凹部形状の剥離補助部の一例を示す概略平面図である。
【
図3】本開示の加飾フィルムにおける凸部形状の剥離補助部であるタブの一例を示す概略平面図である。
【
図4】本開示の加飾フィルムの製造方法の工程IIIにおける矩形の加飾フィルム前駆体に第一切り取り線を形成した状態の一態様を示す概略平面図である。
【
図5】本開示の加飾フィルムの製造方法の工程IVにおける第一切り取り線を形成した矩形の加飾フィルム前駆体に、第二切り取り線を形成した状態の一態様を示す概略平面図である。
【
図6】本開示の加飾フィルムの剥離部と非剥離部との区画の一例を示す概略平面図である。
【
図7】本開示の加飾成形体の一例を示す部分概略断面図である。
【
図8】本開示の着色シートを有する加飾積層体を成形体に貼り付け、剥離部の着色シートを剥離した状態の一例を示す概略断面図である。
【
図9】実施例4の加飾フィルムに形成された剥離補助部である凹部の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の加飾フィルム、その製造方法、加飾成形体及びその製造方法について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されない。
なお、本開示において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0013】
本開示において「常温」とは、特に断らない限り、23℃を指す。
本開示における「加飾フィルム」は、少なくとも、加飾層と接着層とを有する加飾積層体及び接着層保護シートとをこの順に有する。
本開示では、加飾層と接着層との積層体を「加飾積層体」と称する。即ち、被着体である成形体には、加飾積層体が、接着層を介して貼着され、その後、加飾積層体の剥離部を剥離することで、加飾積層体の非剥離部が成形体におけるデザインパターンを形成する。
ここで、本開示における「主成分である樹脂」とは、当該成分が含まれる樹脂組成物の全量に対し、60質量%以上含有される樹脂を指す。本開示では、層を構成する主成分である樹脂を「主剤樹脂」とも称する。
本開示において「成形体」とは、加飾前の成形体(成形体の基体)を指す。
本開示においては、加飾フィルムの最外層、即ち、加飾層の接着層側とは反対の面であって、成形体に貼り付けられた場合に、視認される側を、加飾フィルムの表面と称する。
【0014】
[加飾フィルム]
本開示の加飾フィルムは、剥離部と非剥離部とを有する加飾層と、接着層と、接着層保護シートと、をこの順で有し、前記剥離部と非剥離部とは、深さが、加飾層の厚みに対し、加飾層の表面側から100%未満である切り取り線にて区画される、成形体の加飾に用いられる加飾フィルムである。
本開示の加飾フィルムは、剥離部と非剥離部とは、深さが、加飾層の厚みに対し、加飾層の表面側から100%未満である切り取り線にて区画されているため、加飾フィルムから接着層保護シートを剥離し、成形体に接着層を介して加飾層を貼着した後、切り取り線の存在により、剥離部のみを容易に剥離することができる。このため、加飾フィルムにおける非剥離部からなるデザインパターンを、複雑な形状であっても成形体の表面に容易に形成することができる。
【0015】
図1は、本開示の加飾フィルムの一例を示す概略断面図である。
図1に示す加飾フィルム10は、加飾層12と、接着層14と、接着層保護シート16とを有し、加飾層12の剥離部と非剥離部とを区画する切り取り線20を備える。
図1に示す加飾フィルム10は、さらに、任意の層としての表皮層18を有する。
図1に示す加飾フィルム10の切り取り線20の深さは、加飾層12の厚みに対し、加飾層12の表面側から100%未満の深さで形成される。従って、切り取り線は、接着層14と加飾層12とが接する界面には到達しない深さである。
【0016】
加飾フィルム10は、成形体を加飾する際には、接着層保護シート16を剥離して、成形体に貼り付けられ、成形体には、
図1に示す表皮層18と加飾層12と接着層14との積層体が貼付される。
本開示では、既述のように、少なくとも加飾層12と接着層14とを有する積層体を「加飾積層体」と称する。加飾積層体は、加飾層12及び接着層14に加え、例えば、表皮層18、プライマー層などの任意の層をさらに含んでいてもよい。
図1において、Aで示す領域が加飾フィルムの剥離部であり、Bで示す領域が非剥離部である。
【0017】
(加飾層)
本開示の加飾フィルムにおける加飾層の非剥離部は、接着層を介して成形体に貼付され、成形体に意匠性を付与する層である。
加飾層は、合成樹脂を含んで形成される。
【0018】
-合成樹脂-
合成樹脂は、シート状に成形し得る樹脂であれば、特に制限なく用いることができる。合成樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(以下、PVCとも称する)樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(以下、ABS樹脂とも称する)ウレタン樹脂、オレフィン樹脂などが挙げられる。
なかでも、加飾フィルムの耐久性がより良好であるという観点から、アクリル樹脂、PVC樹脂及びABS樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有することが好ましい。
【0019】
加飾層に用いうるアクリル樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)に代表されるメタクリル酸又はメタクリル酸エステルの重合体或いは共重合体、メタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルとスチレンの共重合体等が挙げられ、成形性の観点からは、メタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルとスチレンの共重合体及びメタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの共重合体の混合物等が挙げられる。
【0020】
加飾層に用いうる塩化ビニル樹脂(PVC)としては、従来、塩化ビニルレザーに使用されているものであれば特に制限なく使用できる。具体的には、平均重合度800~2000、好ましくは800~1500程度のポリ塩化ビニルの他、塩化ビニルを主体とする、エチレン、酢酸ビニル、メタクリル酸エステル等との共重合樹脂や、これらの樹脂とポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、アクリロニトリル、スチレン-ブタジエン共重合樹脂、部分ケン化ビニルアルコール等との混合樹脂等が挙げられる。
【0021】
加飾層に用いるABS樹脂は、公知のABS樹脂を適宜選択して用いることができる。ABS樹脂は1種のみを用いてもよく、互いに共重合比率の異なる2種以上を併用してもよい。
また、ABS樹脂と、前記PVC樹脂とを併用してもよい。
【0022】
加飾層には合成樹脂を1種のみ含んでもよく、目的に応じて2種以上含んでいてもよい。
2種以上の合成樹脂を含む場合には、互いに相溶性の高い樹脂同士を組み合わせることが好ましい。
【0023】
加飾層には、合成樹脂に加え、目的に応じてその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、着色剤、可塑剤、充填剤、滑剤、加工助剤、難燃剤、耐光安定剤、熱安定剤等が挙げられる。
【0024】
-着色剤-
加飾層が着色剤を含むことで、加飾フィルムに任意の色相を付与することができる。
加飾層に含まれ得る着色剤には特に制限はなく、例えば、染料、顔料、パール粒子、アルミ粉等の金属粉等が挙げられ、これらの着色剤から選択される1種以上を目的に応じて用いることができる。
加飾フィルムを、耐久性、耐候性を必要とする用途、例えば、車両用外装材、建造物の内外装材等に用いる場合には、顔料が好適に使用される。
【0025】
-加飾層の厚み-
加飾層の厚みには特に制限はない。成形体への貼り付け容易性の観点からは、加飾層の厚みは50μm~400μmの範囲であることが好ましく、100μm~350μmの範囲であることがより好ましい。
【0026】
-加飾層の形成方法-
加飾層の形成方法には特に制限はなく、公知のシート成形法を適用すればよい。成形法としては、カレンダー法、キャスティング法、溶融押出し法、溶液法等が挙げられ、これらのいずれを用いてもよい。なかでも、製造の簡易性、装置のメンテナンスが容易であるという観点からは、カレンダー法が好ましい。
例えば、加飾層をカレンダー法により形成することで、種々の着色剤を含有する加飾層を簡易に製造することができ、また、着色剤の種類や添加量を変更する際に必要な装置内の清掃が容易に行われるため、所望の色相と、所望の絞模様と、を有する様々な変型例を簡易に製造しうる。
このため、色相と絞模様のバリエーションが豊富で、耐久性に優れる加飾フィルムの小ロット生産に適する。
【0027】
(接着層)
本開示の加飾フィルムは、成形体に加飾積層体を接着する目的で、加飾層の一方の面に接着層を備える。
接着層の形成に使用される接着剤、粘着剤には特に制限はなく、加飾積層体を貼着する成形体の種類により適宜選択される。
【0028】
なかでも、接着層は、加飾積層体を成形体に貼り付ける際の作業性、及び、剥離部を剥離しやすいという観点からは、初期低タックである接着層であることが好ましく、さらに、加飾層の安定性の観点からは、後述するように貼り付け経時後の接着安定性が良好な接着層であることが好ましい。
【0029】
-接着層の初期低タック-
接着層の初期低タックの目安としては、下記剥離試験方法(I)にて測定した初期剥離強度が0.1N/cm~5N/cmの範囲であることが好ましく、1N/cm~5N/cmの範囲であることがより好ましい。
(剥離試験方法(I))
加飾フィルムから接着層保護シートを剥離し、加飾積層体の接着層側をステンレス鋼板に貼り付け、JIS Z 0237(2009年)に規定する粘着テープの180°剥離試験に準じて剥離強度を測定する。
【0030】
-接着層の貼り付け経時後の接着安定性-
接着層の貼り付け経時後の接着安定性の観点からは、下記試験方法(II)で測定した経時後の剥離強度が、6.5N/cm以上が好ましく、7N/cm以上がより好ましく、8N/cm以上が更に好ましい。
【0031】
(剥離試験方法(II))
加飾フィルムから接着層保護シートを剥離し、加飾積層体の接着層側をステンレス鋼板に貼り付け、20℃にて24時間保持した後、JIS Z 0237(2009年)に規定する粘着テープの180°剥離試験に準じて剥離強度を測定する。
【0032】
接着層を有する試験片を被着体である硬質基材の表面に密着させ、24時間養生することで、硬質基材と接着層との密着面積がより大きくなり、両者の分子間力がより多点で発生し、さらに、接着層の熟成が進み、硬質基材上に接着層がより安定に固定化される。
【0033】
-接着層の形成-
接着層としては、エチレン酢酸ビニル、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、ポリエステル、ポリアミド、及び合成ゴムから選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む粘着剤又はホットメルト接着剤を含有する接着層であることが好ましい。
上記粘着剤又はホットメルト接着剤により形成される接着層の厚さは、接着安定性の観点から、乾燥膜厚で20μm~80μmの範囲であることが好ましく、30μm~60μmの範囲であることがより好ましい。
加飾層上に接着剤を形成する方法としては、転写法、塗布法等の層形成に係る公知の方法をいずれも使用できる。
均一な厚みの接着層を簡易に形成しうるという観点からは、転写法を用いることが好ましい。
また、後述のように接着層保護シートに凹凸設けて、接着層に凹凸を転写する場合には、接着剤の形成に塗布法を用いてもよい。
【0034】
(接着層保護シート)
本開示の加飾フィルムは、接着層の加飾層とは反対側の面に接着層保護シートを有する。
接着層保護シートとしては、合成樹脂フィルム(合成樹脂基材)、及び離型処理された合成樹脂フィルムなどを用いることができる。
接着層保護シートに用いられる合成樹脂基材には、接着層保護シートとして、表面に接着層を形成し、保持し得る強度を有する限り、特に制限はない。
【0035】
接着層保護シートにおける合成樹脂基材に用いうる合成樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が挙げられ、なかでも、寸法安定性の観点から、PP及びPETが好ましい。合成樹脂基材は、無延伸基材であっても、一軸又は二軸延伸基材であってもよい。
【0036】
接着層保護シートの厚みは、強度、作業性、及び取扱い性がより良好であるという観点からは、5μm~100μmであることが好ましく、40μm~80μmであることがより好ましい。
接着層保護シートの厚みが上記範囲であることで、接着層保護シートをラミネートする際、剥離する際の作業性がより良好となり、接着層保護シートをロール状に巻き取ることができ、保存、搬送等をより容易に行えるため取り扱い性が良好となる。
【0037】
接着層保護シートの接着剤と接する側の面は平滑であってもよく、凹凸を有していてもよい。
なかでも、接着層保護シートが凹凸を有する場合、接着層保護シートの凸部に対応して形成される接着層の凹部が、加飾積層体を成形体に貼り付ける際に、空気や水分などの流体の流通経路となり、所望されない流体がより速やかに排出され、貼り付け性が向上するという観点から好ましい。
接着層保護シート表面の凹凸は、接着層保護シートを構成する合成樹脂基材をエンボス加工することにより設けることができる。
接着層保護シート表面の凹凸に接して、接着層を設けることで、接着層の接着層保護シート表面と接する側の表面に、接着層保護シート表面の凹凸により形成された凹凸が形成される。
成形体に加飾積層体を密着させる際の流体の除去性がより向上するという観点からは、接着層の接着層保護シート表面と接する側の表面に、接着層保護シート表面の凹凸により形成された凹凸を有し、前記接着層表面の凹凸を、前記接着層表面の全面に亘り有することが好ましく、なかでも、凹凸の凹部が、接着層保護シートの端部に至るまでは連続的に形成されていることがより好ましい。
【0038】
(その他の層)
本開示の加飾フィルムは、加飾層、接着層及び接着層保護シートに加え、目的に応じて任意の層(その他の層と称する)をさら設けてもよい。
その他の層としては、耐久性をより向上させる目的で、加飾層の、接着層を有する面とは反対側の面、即ち、加飾フィルムの表面に設けられる表皮層、加飾層と接着層との密着性をより向上させる目的で設けられるプライマー層、加飾積層体の剥離部と非剥離部との視認性を向上させる目的で設けられる加飾層とは異なる色相の着色シートなどが挙げられる。
【0039】
(表皮層)
本開示の加飾フィルムは、表皮層を有していてもよい。
表皮層は、加飾フィルムの最表面に設けられ、表皮層により、加飾フィルムに耐久性を付与することができる。
表皮層は、合成樹脂を用いて形成されることが好ましい。
加飾フィルムの耐久性の観点から、表皮層は、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂から選ばれる少なくとも1種の合成樹脂を含有することが好ましい。
【0040】
表皮層に用い得るフッ素樹脂としては、分子内に1以上のフッ素原子を含有する樹脂が挙げられ、例えば、フッ素原子を含むオレフィンを重合して得られる樹脂等が挙げられる。
フッ素樹脂としては、より具体的には、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、六フッ化エチレンプロピレン樹脂、エチレン-四フッ化エチレン共重合体、フッ化ビニリデン樹脂等が挙げられる。
【0041】
表皮層に用い得るアクリル樹脂、及びポリ塩化ビニル(PVC)樹脂としては、加飾層に用いる合成樹脂と同様の樹脂を挙げることができる。
【0042】
表皮層は、Tダイなどで押出し成形する押出し法、カレンダー法、キャスティング法等を適用して形成してもよく、市販のフィルムを適用して形成してもよい。
表皮層の厚みは、耐久性及び凹凸模様を形成した際の凹凸模様保持性の観点から、5μm~100μmが好ましく、10μm~60μmがより好ましい。
【0043】
(プライマー層)
本開示の加飾フィルムは、加飾層と接着層との密着性をより向上させることを目的として、加飾層と接着層との間にプライマー層を設けてもよい。
プライマー層は、例えば、プライマー層形成用の樹脂を適切な溶媒で溶解し、加飾層の裏面に塗布し、乾燥して形成することができる。
プライマー層の形成に用いる樹脂は、加飾層に含まれる合成樹脂、及び、接着層に含まれる接着剤又は粘着剤としての樹脂との親和性の観点から、ポリエステル樹脂等を含んで形成されることが好ましい。
プライマー層の塗布量には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択される。一般的には、接着性向上効果の観点から、1g/m2~5g/m2の範囲であることが好ましく、2g/m2~3g/m2の範囲であることがさらに好ましい。
【0044】
(加飾層とは異なる色相の着色シート)
本開示の加飾フィルムは、加飾層の、接着層側とは反対の面に、さらに、加飾層とは異なる色相の着色シートを有していてもよい。
加飾層とは異なる色相の着色シート(以下、単に「着色シート」と称することがある)は、加飾積層体の剥離部と非剥離部との区画の視認性を向上させる目的で加飾フィルムの表面に設けられる。
着色シートにおける「色相」は、無彩色も含む意味で用いられる。加飾層が無彩色、例えば、加飾層が白色の場合、着色シートとして黒色のシートを有する例等が挙げられる。加飾層が有色の場合、例えば、加飾層の色相に対し、色相環の反対の位置にある補色又はそれに近い色の着色シートを有する例が挙げられ、加飾層の色相とは対照的な色相の着色シートを選択することが好ましい。
着色シートは、合成樹脂製、紙製等の任意のものでよく、市販品であってもよい。着色シートの、加飾フィルムの表皮層又は加飾層と接触する側の面は、粘着層を有し、着色シートを剥離するまでの間、安定して固定化されることが好ましい。なお、着色シートが有する粘着層の粘着性は、接着層において述べたと同程度の低粘着性であることが、着色シートの安定な固定化と、剥離しやすさとの両立という観点から好ましい。
着色シートの使用方法については、加飾成形体の製造方法において詳述する。
【0045】
(切り取り線)
本開示の加飾フィルムの層構成は、上記の通りである。
上記層構成を有する加飾フィルムには、加飾積層体の剥離部と非剥離部とを区画するための切り取り線を有する。切り取り線の深さは、加飾層の厚みに対し、加飾層の表面側から100%未満である。
本開示においては、前記剥離部と非剥離部とを区画する切れ込みであって、加飾層に形成された切れ込みが加飾フィルムの平面視にて線状に連続して形成された状態を「切り取り線」と称する。切り取り線における切れ込みの深さは、加飾層の厚みに対し、加飾層の表面側から100%未満であり、加飾フィルムの切り取り線で区画された剥離部を剥離することにより、加飾フィルムの被着体に、加飾フィルムによるデザインパターンが形成される。
【0046】
加飾フィルムにおいて、加飾積層体の剥離部と非剥離部とを区画する切り取り線の深さは、剥離部と非剥離部との連繋性、及び、剥離部の剥離容易性を両立しうるという観点から、加飾層の厚みを100%としたとき、加飾層の表面側から25%以上の深さであることが好ましく、60%以上の深さであることがより好ましい。切り取り線の深さは、加飾層の厚みに対し、加飾層の表面側から100%未満であり、加飾層の表面側から98%以下の深さであることが好ましい。
即ち、加飾層における切り取り線の深さは、加飾層の厚みに対し、加飾層の表面側から25%以上100%未満であることが好ましい。
切り取り線の深さが、上記範囲にあることで、加飾フィルムの剥離部を、切り取り線の形状に沿って、特に力を加えることなく、容易に剥離することが可能となり、切り取り線の形状に対応するデザイン性に優れるデザインパターンを有する意匠表現がより容易に実現できる。
【0047】
図1により、切り取り線の深さについて説明する。加飾層12における切り取り線20において、
図1において、加飾層12の厚みをαとし、切り取り線20の深さをβとした場合、αとβとは、下記式に表される関係にある。
α>β 式
好ましくは、α>β≧(α×0.25)であり、
より好ましくは、(α×0.98)≧β≧(α×0.60)である。
【0048】
切り取り線の深さが25%未満である場合には、剥離部の剥離により高い応力を要するため、剥離部の剥離が容易に行えない懸念がある。
また、切り取り線の深さが、加飾層の厚みに対し、100%以上となった場合、具体的には、切り取り線の深さが加飾層の厚みに対して100%以上となり、切り込み線の先端が接着層に到達する場合(100%深さ)、又は、接着層の内部まで到達する場合(100%を超える深さ)等でも、剥離部と非剥離部との区画は行うことができるが、剥離部と非剥離部との連繋性が低くなり、加飾フィルムから接着層保護シートを剥離する際に、慎重に剥離しないと、加飾積層体の剥離部と非剥離部とが分離する懸念があるため、好ましくない。
【0049】
本開示の加飾フィルムは、剥離部の剥離を効率よく行う目的で、剥離部は、剥離補助部を有していてもよい。
剥離補助部は、剥離部をめくり易くするために設けられる部分構造であり、剥離部に凹部を設けて、凹部の端部をつまんで剥離する態様、剥離部に突出部(タブ)を設けて、タブをつまんで剥離する態様が挙げられる。
【0050】
図2は、剥離部に凹部を設けた状態の一例を示す概略部分平面図である。
図2では、剥離補助部である凹部21Aは、破線で囲まれた部分に形成されている。
図2の平面図に示す破線20は、加飾層に設けられた切り取り線20を表し、Aが剥離部を示し、Bが非剥離部を示す。
図2に示すように、加飾フィルムの端部に、先端が鋭角となる三角形状の凹部(剥離補助部)21Aを有する場合、凹部の先端とは反対側の加飾フィルムの端部において剥離部をつまむことで剥離部をより剥離しやすくなる。
図2では、剥離補助部である凹部21Aは、三角形状の凹部であるが、凹部の形状には制限はなく、任意の形状を選択することができる。
図2に示す如く、剥離補助部としての凹部が三角形状の凹部である場合、凹部の頂部、即ち、2本の線の交差する三角形の頂部の角度は鋭角であることが、剥離がより容易に行えるという観点から好ましい。
【0051】
図3は、剥離部に剥離補助部であるタブ21Bを設けた態様を示す概略平面図である。
図3では、矢印に示される箇所がタブ21Bであり、剥離部は加飾フィルムの端部に突出したタブ、即ち、凸状の剥離補助部21Bをつまむことで容易に剥離できる。
図3の平面図に示す破線20は、加飾層に設けられた切り取り線20を表し、切り取り線20で囲まれた領域Aが剥離部を示し、領域Bが非剥離部を示す。
図3では、タブである凸部の形状は、平行四辺形の形状が示されるが、タブの形状には特に制限はなく、任意の形状を選択することができる。
タブは、加飾フィルムの製造時に、例えば、後述する加飾フィルムの製造方法において、工程IVで第二切り取り線を加飾フィルム前駆体に形成する際に、第二切り取り線の形成と同時に、
図3に仮想線としての一点破線で示す如き第二切り取り線を形成することで、凸部としてのタブ21Bを容易に形成することができる。
【0052】
本開示の加飾フィルムは、前記構成としたため、転写シートを用いることなく、任意のデザインパターンを被着体に容易に形成することができる。本開示の加飾フィルムによれば、複雑なデザインパターンを任意の成形体に設けることができ、その応用範囲は広い。応用範囲としては、車両の外装材、建造物の内外装材、窓等のディスプレイ、船舶の内外装などが挙げられるが、これに限定されない。
【0053】
本開示の加飾フィルムの製造方法には特に制限はないが、以下に述べる本開示の加飾フィルムの製造方法により製造することで効率よく、複雑なデザインパターンを有する加飾成フィルムが製造できる。
【0054】
[加飾フィルムの製造方法]
本開示の加飾フィルムの製造方法(以下、本開示の製造方法Aと称することがある)は、加飾層の一方の面に、接着層を形成して加飾積層体を形成する工程(工程I)と、前記接着層を接着層保護シートにより被覆して、加飾層と接着層と接着層保護シートとを有する加飾フィルム前駆体を形成する工程(工程II)と、前記加飾層に、前記剥離部と非剥離部とを区画する、深さが、加飾層の厚みに対し、加飾層の表面側から100%未満である第一切り取り線を形成する工程(工程III)と、前記加飾フィルム前駆体を貫通する第二切り取り線を、前記第一切り取り線との交部が生じる位置に形成する工程(工程IV)と、を有する成形体の加飾に用いられる加飾フィルムの製造方法である。
【0055】
(工程I)
工程Iでは、加飾層の一方の面に、接着層を形成して加飾積層体を形成する。
まず、加飾層形成用の合成樹脂を含む加飾層形成用組成物を用いて、加飾層を形成し、得られた加飾層の一方の面に、接着層を形成して、加飾積層体を得る。
加飾層及び接着層の形成方法は既述の通りである。
即ち、加飾層は、合成樹脂として、好ましくは、PVC樹脂、アクリル樹脂及びABS樹脂から選ばれる少なくとも1種を含み、所望により着色剤を含む加飾層形成用組成物をカレンダー法等によりシート状に成形して形成することが好ましい。
接着層は常法により形成することができ、好ましくは、接着層の形成に用いられる粘着剤又はホットメルト接着剤を用いて、塗布法又は転写法により形成すればよい。
加飾層及び接着層の好ましい厚みは、加飾フィルムの説明において述べたとおりである。
得られた加飾積層体が、成形体に付与されて成形体の加飾に適用される。
【0056】
工程Iでは、加飾層の形成後に、プライマー層を形成し、その後、接着層を形成する工程(工程V)を有していてもよい。プライマー層を設けることにより、加飾層と接着層との密着性をより向上させることができる。
プライマー層の形成に用いられる樹脂の種類、プライマー層の厚みなどは既述のとおりである。プライマー層の形成工程である工程Vは、任意の工程である。
【0057】
(工程II)
工程IIでは、接着層保護シートを準備し、準備した接着層保護シートにより、接着層を被覆して、加飾層と接着層と接着層保護シートとを有する加飾フィルム前駆体を形成する。本開示において「加飾フィルム前駆体」とは、加飾層、接着層及び接着層保護シートを有する積層体であって、剥離部と非剥離部との区画をするための切り取り線が形成されていない積層体を指す。
接着層保護シートは、加飾フィルムの項で説明したように、接着層と接する側の面は平滑であるか、又は凹凸を有するフィルムであって、合成樹脂フィルム、離型処理された合成樹脂フィルム等を用いることができる。
接着層保護シートの好ましい厚みは、加飾フィルムの項で述べたとおりである。接着層保護シートの一方の面が離型処理されている場合には、離型処理された面を、加飾積層体の接着層と接するように接着層を被覆すればよい。
接着層保護シートは、市販品を用いてもよい。
【0058】
(工程III)
工程IIIは、工程IIにおいて得られた加飾フィルム前駆体の前記加飾層に、前記剥離部と非剥離部とを区画する、深さが、加飾層の厚みに対し、加飾層の表面側から100%未満である第一切り取り線を形成する工程である。第一切り取り線の形成は、カッティング装置により行うことができる。任意の深さの切り取り線を形成できるカッティング装置であれば、特に制限なく用いることができる。
工程IIIでは、カッティング装置を使用し、加飾層の表面側から刃を入れ、加飾層に第一切り取り線を形成する。カッティング装置に使用する刃種は任意のものでよい。
カッティング装置のカッターヘッドに把持したカッター(刃)を、加飾層に押接させながら、カッターヘッドをX-Y方向に移動させることにより、所望の形状の第一切り取り線26を加飾層に形成すればよい。
【0059】
図4は、矩形の加飾フィルム前駆体24に第一切り取り線26を形成した状態の一態様を示す概略平面図である。第一切り取り線26は、所定の深さで連続して形成され、実線で表示すべきところ、
図4では、第一切り取り線26は、他の線との区別を明確にするため、便宜上、破線で示している。
図4に示す態様では、非剥離部は、複雑なデザインパターンをなす連続した領域である。工程IIIでは、第一切り取り線により、任意のデザインパターンを加飾フィルム前駆体に形成する。第一切り取り線の深さは、加飾層の厚みを100%とした場合、加飾層の表面側から25%以上100%未満の深さであることが、剥離部と非剥離部との連繋性、及び、剥離部の剥離容易性を両立しうるという観点から好ましい。
【0060】
(工程IV)
工程IVでは、前記加飾フィルム前駆体を貫通する第二切り取り線を、前記第一切り取り線との交部が生じる位置に形成する。
工程IVでは、加飾層の表面側から刃を入れ、加飾層、接着層及び接着層保護シートを有する加飾フィルム前駆体を貫通する第二切り取り線を形成する。
第二切り取り線の形成に使用する刃種は任意のものでよい。工程IVでは、第二切り取り線の形成に用いられるカッティング装置のカッターヘッドに把持したカッター(刃)を、加飾層に押接させながら、カッターヘッドをX-Y方向に移動させることにより、加飾フィルム前駆体を貫通する第二切り取り線を形成する。
第二切り取り線の形成に際して、第二切り取りを第一切り取り線との交部が生じる位置に形成する。その結果、第二切り取り線と第一切り取り線との交部を有する剥離部が形成される。
【0061】
図5は、第一切り取り線26を形成した矩形の加飾フィルム前駆体24に、第二切り取り線28を形成した状態の一態様を示す概略平面図である。
図5では、第二切り取り線28は一点破線で示される。
矢印で明示した箇所が、第一切り取り線26と第二切り取り線28との交部である。
第二切り取り線の形成により、加飾フィルム10を得る。
既述のように、第二切り取り線の形成時に、加飾フィルム前駆体において、剥離部に相当する領域の端部に凸部を設ける形状で第二切り取り線を形成することで、工程IVにおいて、剥離補助部としての凸部(タブ)を形成することができる。
【0062】
図6は、第二切り取り線の形成により、完成した加飾フィルムにおいて、第一切り取り線26で区画された剥離部と非剥離部との一例を示す概略平面図である。
図6では、非剥離部の領域がBで示され、剥離部の領域がA-1~A-7で示される。
図6で斜線の領域Bが、非剥離部としてのデザインパターンとして成形体に固定される。
図6に示すように、剥離部は、複数の領域に分割されることにより、非剥離部が鋭角的な先端を有する場合でも、容易に剥離することができ、剥離部を剥離する際に、非剥離部からなるデザインパターンの変形を抑制することができる。
【0063】
(任意の工程)
本開示の加飾フィルムの製造方法では、既述の工程I、工程II、工程III及び工程IVに加え、任意の工程をさらに含むことができる。
任意の工程としては、既述のプライマー層を形成する工程(工程V)、表皮層を形成する工程(工程VI)、着色シートを付与する工程(工程VII)等が挙げられる。
【0064】
(工程VI)
本開示の加飾フィルムの製造方法では、加飾層の接着層側とは反対の面に表皮層を形成する工程(工程VI)を有してもよい。
表皮層は、合成樹脂としてフッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有することが好ましい。表皮層の形成は、公知の方法により行うことができる。また、市販の表皮層を用いてもよい。
表皮層の形成は、加飾層の表面(接着層を有する側とは反対の面)に、成形した表皮層を積層することで行うことができる。
工程Iで得た加飾層に表皮層を積層させ、一対のロールを用いてラミネート加工を行い、両者を加熱圧着する方法が好ましく挙げられる。加熱圧着の際のラミネート温度は100℃~190℃が好ましい。
表皮層を形成することで、加飾フィルムの耐久性をより向上させることができる。
【0065】
(工程VII)
本開示の加飾フィルムの製造方法では、剥離層と非剥離部との区画をより明確にするため、加飾層又は任意の層である表皮層の表面に着色シートを付与することができる。
着色シートを付与することで、剥離部と非剥離部とを色分けし、剥離部の視認性をより高めることができる。例えば、加飾層が白色であり、着色シートとして黒色のシートを用いることにより、まず、第一切り取り線に沿って、剥離部の着色シートを剥離することで、剥離部(黒色)と非剥離部(白色)との境界が鮮明となり、非剥離部のデザインパターンが、デザイン性に優れる複雑な形状であるとしても、剥離部のみを確実に剥離することがより容易となる。
【0066】
工程VIIは、既述の工程III、即ち、第一切り取り線の形成前に行われる。
まず、加飾フィルムにおける加飾層の色相とは対照的な色相を有する着色シートを準備する。
着色シートは、合成樹脂製、紙製等の任意のものでよく、市販品を用いてもよい。着色シートは、加飾フィルムの加飾層又は表皮層と接触する側の面は、粘着層を有する物を用いる。既述のように、粘着層の粘着性は、一時的に着色シートを加飾フィルム前駆体に固定すればよいため、既述した接着層における低粘着性と同じ程度の粘着性であることが好ましい。
着色シートを、粘着層を介して、加飾フィルム前駆体の加飾層又は表皮層に積層する。得られた着色シートを有する加飾フィルム前駆体に対して、既述の第一切り取り線の形成工程(工程III)及び第二切り取り線の形成工程(工程IV)を行って切り取り線を形成して、着色シートを有する加飾フィルムを得ることができる。
【0067】
[加飾成形体]
本開示の加飾成形体は、成形体と、既述の本開示の加飾フィルムから前記接着層保護シート及び加飾積層体の剥離部が剥離された 加飾積層体の非剥離部と、を有する加飾成形体である。
図7は、本開示の加飾成形体の一例を示す概略断面図である。
図7に示す加飾成形体30は、成形体(成形体基材)32と、成形体32の面上に、接着層14と、加飾層12と、任意の層である表皮層18とを有する加飾積層体の非剥離部を有する。
加飾成形体30は、
図1に示す加飾フィルム10から接着層保護シート16を剥離した加飾積層体を成形体32に貼付し、その後、加飾積層体の剥離部を剥離することで形成される。
【0068】
本開示の加飾フィルムが適用される成形体には、特に制限はなく、樹脂成形体、自動車などの車両、窓ガラス、建造物の外装など、いずれにも適用することができる。
従って、本開示の加飾フィルムによれば、任意の成形体を被加飾体として、意匠性の高いデザインパターンを有する加飾成形体とすることができる。
本開示の加飾成形体は、本開示の加飾フィルムを用いて形成されるために、複雑なデザインパターンを有する意匠性に優れた加飾成形体となり、その応用範囲は広い。
【0069】
[加飾成形体の製造方法]
本開示の加飾成形体は、本開示の加飾成形体の製造方法により製造されることが好ましい。
本開示の加飾成形体の製造方法は、既述の本開示の加飾フィルムから接着層保護シートを剥離する工程(工程i)、接着層保護シートを剥離した加飾積層体を、接着層を介して成形体の表面に貼り付ける工程(工程ii)、及び、前記成形体の表面に貼り付けた加飾積層体の剥離部を剥離する工程(工程iii)を有する。
【0070】
(工程i)
工程iでは、本開示の加飾フィルムから接着層保護シートを剥離する。加飾フィルムから接着層保護シートを剥離して加飾積層体を形成することで、加飾積層体の接着層が露出する。
【0071】
(工程ii)
工程iiでは、加飾積層体の接着層を介して、加飾積層体を成形体の表面に貼り付ける。接着層保護シートの剥離と、加飾積層体の成形体への貼り付けは、作業者の手作業により、段階的に実施してもよい。即ち、工程iにおいて、接着層保護シートを徐々に剥離し、加飾積層体の接着層を部分的に露出させ、工程iで露出させた加飾積層体の接着層を、立体形状を有する成形体の表面に対向させ、加飾積層体を押圧することで、接着層を介して成形体の表面に貼り付ける。
上記の接着層保護シートの部分的な剥離と、引き続き行われる加飾積層体の貼り付けを交互に段階的に実施し、最終的に加飾積層体全体を成形体に貼り付けてもよい。
また、面積の小さい加飾フィルムの場合には、一段階で貼り付けてもよい。
【0072】
(工程iii)
工程iiiでは、成形体の表面に貼り付けた加飾積層体の剥離部を剥離する。この工程iiiにより、成形体の面上には、加飾積層体の非剥離部のみが貼付され、加飾積層体の非剥離部からなるデザインパターンが成形体上に形成されて、加飾成形体を得る。
【0073】
既述の加飾フィルムの製造方法において任意の工程である工程VIIで得られた着色シートを有する加飾フィルムを用いて成形体を加飾する場合について説明する。
着色シートを有する加飾フィルムを成形体に貼付し、その後、着色シートの加飾フィルムの剥離部に対応する部位の着色シートのみを剥離する。加飾フィルムを成形体に貼り付ける前に、着色シートの加飾フィルムの剥離部に対応する部位の着色シートのみを剥離してもよい。
その結果、
図8に概略断面図の一例として示すように、成形体32の面上に、着色シート22が貼付された、表皮層18と加飾層12と接着層14とを有する加飾積層体が、接着層14を介して貼り付けられる。加飾積層体の剥離部(領域A)は着色シート22を有さない領域となり、非剥離部(領域B)は、剥離部とは色相の異なる着色シート22が貼付された領域となるため、加飾積層体の剥離部と非剥離部とのコントラストが際立ち、剥離部のみを確実に剥離することがより容易となる。
成形体に貼付した後、工程iiiで剥離部を剥離し、その後、非剥離部の上に残置している着色シート22を剥離することで、
図7に一例として示す如き層構成を有する本開示の加飾成形体30が得られる。
【0074】
本開示の加飾成形体は、任意の成形体に複雑なデザインパターンを有する成形体であり、本開示の加飾成形体の製造方法によれば、任意の成形体としては、自動車、鉄道等の車両、窓ガラス、家具、建装、壁装などが挙げられ、本開示の加飾成形体の製造方法によれば、これら種々の成形体に、複雑なデザインパターンの意匠を容易に付与できることから、その応用範囲は広い。
【実施例0075】
以下、実施例を挙げて本開示の加飾フィルム、その製造方法、加飾成形体及びその製造方法について具体的に説明するが、本開示は以下の具体例に制限されるものではない。
以下の実施例において、濃度及び各成分の含有量を示す「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0076】
〔実施例1〕
(工程VI:表皮層の準備)
KFCフィルム FT-50Y(商品名)、クレハエクステック(株)(厚み:50μm)を表皮層として準備した。表皮層は無色透明であった。
【0077】
(工程I:加飾層及び接着層を有する加飾積層体の成形)
PVC樹脂〔TH800(商品名)、大洋塩ビ(株)〕100kgに、顔料〔PV MAF 725(商品名)、大日精化工業(株)〕2kgを投入し、カレンダー法により、乾燥後の厚みが150μmになるようにシート状に成形して加飾層を得た。加飾層は、目視で黒色であった。
加飾層と、表皮層とを積層し、積層体を一対のロールを用いてラミネート加工を行った。ラミネート温度は150℃であった。
加飾層の表皮層を有しない側にアクリル系粘着剤〔Tg:-20℃、分子量:20万〕を、乾燥後の膜厚が35μmとなる量で塗布し、これを乾燥させて接着層形成し、加飾積層体を得た。
得られた接着層を、試験方法(I)により剥離強度を測定したところ、初期剥離強度は4.7N/cmであり、試験方法(II)にて測定した経時後剥離強度は7.1N/cmであった。
【0078】
(工程II:接着層保護シートの貼付)
表面平滑な平らなPP樹脂シート(フジコー(株)、BK0A(商品名)、厚さ:60μm)を準備し、樹脂シートの表面温度を150℃とする条件で凹凸を形成した。凹凸を形成したPP樹脂シートの断面を電子顕微鏡で測定したところ、凸部のサイズは、幅120μm、高さ25μmであった。
得られた凹凸を有する接着層保護シートにより、工程Iで得た加飾積層体の接着層を被覆して、加飾フィルム前駆体を得た。
【0079】
(工程III:第一切り取り線の形成)
カッティング装置(コングスバーグ社製)を用いて、工程IIで得た加飾フィルム前駆体の表皮層側と、カッターヘッドに把持されているカッターの刃先とが対向するように、加飾フィルム前駆体をカッティング装置の所定位置に載置し、
図4にて破線で示す形状の第一切り取り線を加飾層の表皮層側から形成した。第一切り取り線の深さは38.8μmであり、加飾層の厚みの25.8%の深さであった。
【0080】
(工程IV:第二切り取り線の形成)
加飾フィルム前駆体の接着層保護シートまでを貫通する第二切り取り線を、第一切り取り線との交部が生じるように形成して剥離部を形成した。第二切り取り線は、
図5の一点破線で示す形状で、第二切り取り線を第一切り取り線との交部が生じるように形成して剥離部を形成した。
【0081】
上記工程を経て、
図6の概略平面図に示す剥離部A-1~A-7と、非剥離部Bとを有する実施例1の加飾フィルムを得た。
【0082】
〔実施例2〕
実施例1の工程IIIにおいて、第一切り取り線の深さを、加飾層の厚みの61.2%である深さ91.9μmに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2の加飾フィルムを得た。
【0083】
〔実施例3〕
実施例1の工程IIIにおいて、第一切り取り線の深さを、加飾層の厚みの98.0%である深さ147.0μmに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例3の加飾フィルムを得た。
【0084】
〔実施例4〕
実施例1の工程III及び工程IVの後に、以下の剥離補助部の形成工程を実施して、
図9(A)に部分拡大図で示した如き凹部としての剥離補助部(めくり部)を形成した以外は、実施例1と同様にして実施例4の加飾フィルムを得た。
図9(A)は、実施例4の加飾フィルムの部分拡大平面図であり、剥離補助部としての凹部が形成された領域を二点破線で囲むことで明示している。
【0085】
(剥離補助部の形成工程)
工程IVにおいて成された第一切り取り線と第二切り取り線との交部を起点として凹部形状の剥離補助部(めくり部)を形成した。
めくり部は、
図9(B)に概略的に示す如き頂部の角度αが30℃であって、底辺が3mmの三角形の先端部の形状の凹部として形成した。
図9(A)において、A-3及びA-4で示される領域が剥離部であり、剥離部は、剥離補助部である凹部を有することで、剥離容易性がより良好となることが期待できる。
【0086】
〔実施例5〕
実施例1の工程IIIの前に、工程VIIの着色シート付与を行った以外は、実施例1と同様にして実施例5の加飾フィルムを得た。
着色シートとして、リンテックサインシステム(株)、品番:AP111、厚み:110μmの白色の着色シートを準備した。
着色シートの粘着層の初期剥離強度は、実施例1の接着層と同程度であった。
着色シートの粘着層を介して、着色シートを、加飾フィルムの表皮層上に積層した。
その後、着色シートを有する加飾フィルム前駆体に対し、実施例1と同様に、工程III及び工程IVを行って第一切り取り線及び第二切り取り線を形成して、実施例5の加飾フィルムを得た。
【0087】
〔比較例1〕
実施例1において、工程IIIを行わず、第一切り取り線を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして比較例1の加飾フィルムを得た。
【0088】
〔比較例2〕
実施例1の工程IIIにおいて、第一切り取り線の深さを、加飾層の厚みの100%である深さ150μmに変更した以外は、実施例1と同様にして比較例2の加飾フィルムを得た。
【0089】
〔加飾フィルムの評価〕
得られた加飾フィルムを用いて、以下に記載された手順にて加飾成形体を作製し、以下の項目を評価した。
結果を表1に示す。
【0090】
(加飾成形体の製造)
まず、被着体である成形体を準備した。成形体は、表面が曲面である車両のサイドドア部を用いた。
実施例1~実施例5及び比較例1~比較例2で得た加飾フィルムから接着層保護シートを剥離し、加飾積層体を得た。(工程i)
得られた加飾積層体の接着層を介して、加飾積層体を成形体に貼り付けた。このとき、接着層保護シートの剥離と、加飾積層体の成形体への貼り付けを、作業者の手作業により行い、接着層保護シートを徐々に剥離し、加飾積層体の接着層を部分的に露出させ、露出させた加飾積層体の接着層を、立体形状を有する成形体の表面に対向させ、加飾積層体を押圧することで、接着層を介して加飾積層体を成形体に貼り付けた。(工程ii)
【0091】
貼り付け後、成形体の表面に貼り付けた加飾積層体の剥離部を剥離した。(工程iii)このようにして、成形体の面上に加飾積層体の非剥離部のみを有し、加飾積層体の非剥離部からなるデザインパターンが成形体上に形成された加飾成形体を得た。
剥離部を剥離除去した後、24時間熟成した。
【0092】
評価基準は、作業者10名の実作業による評価とし、最も評価数の多いランクを採用した。
【0093】
-1.剥離部と非剥離部との連繋性-
A:接着層保護シートの剥離工程において、剥離部と非剥離部との連繋が維持され、問題なし
B:接着層保護シートの剥離工程において、剥離部と非剥離部との連繋が解消され、問題あり
C:剥離部と非剥離部とが形成されていないので、問題あり
上記では、ランクAが実用上問題のない評価結果である。
【0094】
-2.剥離部の剥離容易性-
A:加飾積層体の剥離部の剥離作業が極めて容易であり、問題なし
B:加飾積層体の剥離部の剥離作業が容易であり、問題なし
C:加飾積層体の剥離部の剥離作業が困難であり、問題あり
D:加飾積層体の剥離部の剥離作業が不可能であり、問題あり
上記では、A及びBが実用上問題のない評価結果である。
【0095】
-総合評価-
A:1.の連繋性及び2.の剥離容易性が、いずれも良好であり、問題なし
B:1.の連繋性及び2.の剥離容易性の、双方又は一方が不良であり、問題あり
総合評価では、Aが問題のない評価結果である。
【0096】
【0097】
表1の結果より、実施例1~実施例5の加飾フィルムは、いずれも、加飾成形体の製造に適しており、複雑なデザインパターンを加飾成形体に製造することができた。
また、切り取り線の深さが加飾層の60%以上である実施例2及び実施例3の加飾フィルム、剥離補助部を有する実施例4の加飾フィルム、着色シートを有する実施例5の加飾フィルムは、実施例1の加飾フィルムに対して剥離部の剥離容易性がより良好であった。
【0098】
これに対し、第一切り取り線を有しない比較例1の加飾フィルムは剥離容易性に劣り、第一切り取り線の深さが深すぎる比較例2の加飾フィルムでは剥離部と非剥離部との連携性が低く、加飾積層体全体を成形体に貼り付けすることができなかった。