(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107470
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】蒸着マスクの製造装置、及び蒸着マスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/04 20060101AFI20220713BHJP
C25D 1/10 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
C23C14/04 A
C25D1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002444
(22)【出願日】2021-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】木村 遼太郎
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029BD08
4K029HA01
(57)【要約】
【課題】欠陥を抑制可能な蒸着マスクの製造装置及び製造方法を提供すること。
【解決手段】蒸着マスクの製造装置は被めっき部材を支持する第1面を有する支持母材、第1面上で被めっき部材の外周を囲むように設けられる第1の支持部材及び第2の支持部材、及び第1面から所定の高さ離れて設けられる電極部を有し、第1の支持部材は、第1面上に設けられる第1の壁部、及び第1の壁部の上部において第1面の内側に向けて突出する第1の庇部を有し、第2の支持部材は、第1面上に設けられる第2の壁部、及び第2の壁部の上部において第1面の内側に向けて突出する第2の庇部を有し、第1の壁部は、第1面から所定の高さに亘って高さが減少する第1の部分、及び第1の部分によって第1の壁部の内側面に第1の段差部を有し、第2の壁部は、第2の壁部の内側面に第1面から所定の高さで電極部が突出することで形成される第2の段差部を有する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被めっき部材を支持する第1面を有する支持母材と、
前記第1面上で、前記被めっき部材の外周を囲むように設けられる第1の支持部材及び第2の支持部材と、
前記第1面から所定の高さ離れて設けられる電極部と、を有し、
前記第1の支持部材は、前記第1面上に設けられる第1の壁部と、前記第1の壁部の上部において前記第1面の内側に向けて突出する第1の庇部と、を有し、
前記第2の支持部材は、前記第1面上に設けられる第2の壁部と、前記第2の壁部の上部において前記第1面の内側に向けて突出する第2の庇部と、を有し、
前記第1の壁部は、前記第1面から前記所定の高さに亘って高さが減少する第1の部分と、前記第1の部分によって前記第1の壁部の内側面に第1の段差部と、を有し、
前記第2の壁部は、前記第2の壁部の内側面に前記第1面から前記所定の高さで前記電極部が突出することで形成される第2の段差部を有し、
前記第1の支持部材と前記の第2の支持部材とは、前記第1の段差部及び前記第2の段差部と、前記第1面との間に前記被めっき部材を挟み込むことが可能なように配置されている、蒸着マスクの製造装置。
【請求項2】
前記第1の庇部と前記第2の庇部との距離は、前記第1の段差部と前記第2の段差部との距離より小さい、請求項1に記載の蒸着マスクの製造装置。
【請求項3】
前記第1の庇部及び前記第2の庇部は、前記被めっき部材の第2面の一部を覆い、
前記第2の庇部が前記第2面を覆う長さは、前記第1の庇部が前記被めっき部材を覆う長さより大きい、請求項2に記載の蒸着マスクの製造装置。
【請求項4】
断面視において、前記第2の庇部と前記第2面との距離は、前記第1の庇部と前記第2面との距離と同等である、請求項3に記載の蒸着マスクの製造装置。
【請求項5】
断面視において、前記第2の庇部の端部と前記第2面に設けられる第1レジストマスクの端部との距離は、前記第1の庇部の端部と前記第1レジストマスクの端部との距離と同等である、請求項3に記載の蒸着マスクの製造装置。
【請求項6】
断面視において、前記第2の庇部と前記第2面との距離は10mmであり、前記第2の庇部の端部と前記第1レジストマスクの端部との距離は4mmである、請求項5に記載の蒸着マスクの製造装置。
【請求項7】
断面視において、前記第1レジストマスクに対して、前記第1の段差部が設けられる側と、前記第1の段差部が設けられる側の反対側とに、剥離層が設けられる、請求項5に記載の蒸着マスクの製造装置。
【請求項8】
前記第2面の内側領域に第1の膜厚で前記第1レジストマスクを形成し、
請求項6に記載の蒸着マスクの製造装置を用いて、前記第1レジストマスクに対して、前記第1の段差部が設けられる側及び前記第1の段差部が設けられる側の反対側の、ぞれぞれの前記第2面上に剥離層を形成する、ことを含む蒸着マスクの製造方法。
【請求項9】
前記第1の段差部及び前記第2の段差部と、前記第1面との間に、前記被めっき部材を挟み込む、請求項8に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項10】
前記剥離層を金属膜で形成する、請求項9に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項11】
前記剥離層をめっき法で形成する、請求項10に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項12】
前記剥離層の厚さは、前記第1の膜厚と同等である、請求項8に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項13】
前記剥離層の厚さは、119.5μm以上120.5μm以下である、請求項8に記載の蒸着マスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、蒸着マスクの製造装置、及びそれを用いた蒸着マスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光素子として有機EL素子を用いる有機EL表示装置が知られている。有機EL素子は、アノード電極と、カソード電極と、アノード電極とカソード電極との間に設けられる有機EL材料を含む層(以下、「有機EL層」という)を有する。有機EL層は、例えば、発光層、電子注入層、正孔注入層といった機能層を含む。アノード電極と、カソード電極とのそれぞれに電圧を印加し、アノード電極と、カソード電極との間に電流を流すことで、有機EL素子は発光する。
【0003】
有機EL素子の発光層の形成には、例えば、真空蒸着法が用いられる。真空蒸着法は、真空下において、蒸着材料をヒータによって加熱することにより昇華させ、基板の表面に堆積(蒸着)させる方法である。真空蒸着法を用いることで、基板の表面に、蒸着材料の薄膜を形成することができる。また、真空蒸着法では、多数の微細な開口パターンを備えたマスク(蒸着マスク)を用いることにより、高精細な薄膜パターンを形成することができる。
【0004】
電界めっき(めっき法)を用いる電鋳(電気鋳造)技術を用いて製造されるエレクトロファインフォーミングマスク(EFM)は、蒸着マスクの一つである。例えば、特許文献1には、蒸着マスクを電鋳技術により製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、破損した蒸着マスクを用いて有機EL表示装置を製造すると、蒸着マスクの破損部分に対応する有機EL素子は発光層が正常に蒸着されない。例えば、蒸着マスクの製造不良により微細な開口パターンが塞がれている等の欠陥があると、当該欠陥を含む蒸着マスクを用いて製造された有機EL表示装置の有機EL素子は発光層を蒸着されない。発光層を蒸着されない有機EL素子は発光しないため、有機EL表示装置は表示不良をおこす。また、蒸着マスクの製造不良により、本来分離されていなければならない開口パターンが繋がっている等の欠陥があると、当該欠陥を含む蒸着マスクを用いて製造された有機EL表示装置の有機EL素子は、本来発光層が形成されてはならない領域に発光層が形成され、素子分離不良をおこす。したがって、蒸着マスクの製造では、多数の微細な開口パターンを精度良く形成することに加え、欠陥を生成しない技術が求められている。また、欠陥を生成しない蒸着マスクを製造する装置(蒸着マスク製造装置)が求められる。
【0007】
本発明の一実施形態は、欠陥を抑制可能な蒸着マスクの製造装置、及び蒸着マスクの製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る蒸着マスクの製造装置は、被めっき部材を支持する第1面を有する支持母材と、前記第1面上で、前記被めっき部材の外周を囲むように設けられる第1の支持部材及び第2の支持部材と、前記第1面から所定の高さ離れて設けられる電極部と、を有し、前記第1の支持部材は、前記第1面上に設けられる第1の壁部と、前記第1の壁部の上部において前記第1面の内側に向けて突出する第1の庇部と、を有し、前記第2の支持部材は、前記第1面上に設けられる第2の壁部と、前記第2の壁部の上部において前記第1面の内側に向けて突出する第2の庇部と、を有し、前記第1の壁部は、前記第1面から前記所定の高さに亘って高さが減少する第1の部分と、前記第1の部分によって前記第1の壁部の内側面に第1の段差部と、を有し、前記第2の壁部は、前記第2の壁部の内側面に前記第1面から前記所定の高さで前記電極部が突出することで形成される第2の段差部を有し、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とは、前記第1の段差部及び前記第2の段差部と、前記第1面との間に前記被めっき部材を挟み込むことが可能なように配置されている。
【0009】
本発明の一実施形態に係る蒸着マスクの製造方法は、前記第2面の内側領域に第1の膜厚で前記第1レジストマスクを形成し、被めっき部材を支持する第1面を有する支持母材と、前記第1面上で、前記被めっき部材の外周を囲むように設けられる第1の支持部材及び第2の支持部材と、前記第1面から所定の高さ離れて設けられる電極部と、を有し、前記第1の支持部材は、前記第1面上に設けられる第1の壁部と、前記第1の壁部の上部において前記第1面の内側に向けて突出する第1の庇部と、を有し、前記第2の支持部材は、前記第1面上に設けられる第2の壁部と、前記第2の壁部の上部において前記第1面の内側に向けて突出する第2の庇部と、を有し、前記第1の壁部は、前記第1面から前記所定の高さに亘って高さが減少する第1の部分と、前記第1の部分によって前記第1の壁部の内側面に第1の段差部と、を有し、前記第2の壁部は、前記第2の壁部の内側面に前記第1面から前記所定の高さで前記電極部が突出することで形成される第2の段差部を有し、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とは、前記第1の段差部及び前記第2の段差部と、前記第1面との間に前記被めっき部材を挟み込むことが可能なように配置され、前記第1の庇部及び前記第2の庇部は、前記被めっき部材の第2面の一部を覆い、前記第2の庇部が前記第2面を覆う長さは、前記第1の庇部が前記被めっき部材を覆う長さより大きく、断面視において、前記第2の庇部の端部と前記第2面に設けられる第1レジストマスクの端部との距離は、前記第1の庇部の端部と前記第1レジストマスクの端部との距離と同等であり、前記第2の庇部と前記第2面との距離は10mmであり、前記第2の庇部の端部と前記第1レジストマスクの端部との距離は4mmである蒸着マスクの製造装置を用いて、前記第1レジストマスクに対して、前記第1の段差部が設けられる側及び前記第1の段差部が設けられる側の反対側の、ぞれぞれの前記第2面上に剥離層を形成する、ことを含む蒸着マスクの製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る方法で作製される蒸着マスクユニットの模式的な平面図を示す。
【
図2】
図1に示すA1-A2線に沿った断面構造を示す。
【
図3】
図3(A)、
図3(B)及び
図3(C)は本発明の一実施形態に係る蒸着マスクを製造する方法を示す模式的な断面図を示す。
【
図4】
図4(A)、及び
図4(B)は本発明の一実施形態に係る蒸着マスクを製造する方法を示す模式的な断面図を示す。
【
図5】本発明の一実施形態に係る蒸着マスクを製造する装置を示す模式的な平面図を示す。
【
図6】本発明の一実施形態に係る蒸着マスクを製造する装置を示す模式的な平面図を示す。
【
図7】
図7(A)は
図6に示すB1-B2に沿った断面構造を示し、
図7(B)は
図6に示すC1-C2に沿った断面構造を示す。
【
図8】本発明の一実施形態に係る蒸着マスクを製造する装置及び方法を示す模式的な平面図を示す。
【
図9】
図8(A)は
図8に示すD1-D2に沿った断面構造を示し、
図8(B)は
図8に示すE1-E2に沿った断面構造を示す。
【
図10】本発明の一実施形態に係る蒸着マスクを製造する装置を用いてめっき処理を行う場合の庇部の高さに対する剥離層の最外周の膜厚の関係を示すグラフである。
【
図11】
図11(A)、及び
図11(B)は本発明の一実施形態に係る蒸着マスクを製造する方法を示す模式的な断面図を示す。
【
図12】
図12(A)、及び
図12(B)は本発明の一実施形態に係る蒸着マスクを製造する方法を示す模式的な断面図を示す。
【
図13】
図13(A)、
図13(B)及び
図13(C)は本発明の一実施形態に係る蒸着マスクを製造する方法を示す模式的な断面図を示す。
【
図14】
図14(A)、及び
図14(B)は本発明の一実施形態に係る蒸着マスクを製造する方法を示す模式的な断面図を示す。
【
図15】本発明の一実施形態に係る蒸着マスクユニットを製造する方法を示す模式的な断面図を示す。
【
図16】
図16(A)、及び
図16(B)は本発明の一実施形態に係る蒸着マスクユニットを製造する方法を示す模式的な断面図を示す。
【
図17】
図17(A)、及び
図17(B)は本発明の一実施形態に係る蒸着マスクユニットを製造する方法を示す模式的な断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号(又は数字の後にa、b、A、Bなど)を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0012】
本明細書において、ある部材又は領域が他の部材又は領域の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限りこれは他の部材又は領域の直上(又は直下)にある場合のみでなく他の部材又は領域の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の部材又は領域の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
【0013】
また、本明細書において「αはA、B又はCを含む」、「αはA,B及びCのいずれかを含む」、「αはA,B及びCからなる群から選択される一つを含む」、といった表現は、特に明示が無い限り、αはA乃至Cの複数の組み合わせを含む場合を排除しない。さらに、これらの表現は、αが他の要素を含む場合も排除しない。
【0014】
<1.蒸着マスクユニット100の構造>
図1は、蒸着マスクユニット100の模式的な平面図である。
図2は、
図1に示すA1とA2に沿った断面構造である。
図1及び
図2に示す蒸着マスクユニット100の構成は一例であって、蒸着マスクユニット100の構成は、
図1及び
図2に示す構成に限定されない。
【0015】
図1に示すように、蒸着マスクユニット100は、少なくとも1つの蒸着マスク102と、少なくとも1つの蒸着マスク102を囲む支持フレーム108と、支持フレーム108と少なくとも1つの蒸着マスク102とを接続する接続部106を含む。
図1に示す態様では、少なくとも1つの蒸着マスク102が複数の蒸着マスク102から成り、複数の蒸着マスク102が、それぞれ接続部106を介して支持フレーム108に固定される。
【0016】
図1の挿入拡大図に示すように、蒸着マスク102は複数の開口103を有する。蒸着マスク102の中で、複数の開口103は、所定の領域内に配列されて1つのマスクパターン104を形成する。蒸着マスク102は、複数のマスクパターン104を含んでもよい。蒸着マスク102は、マスクパターン104が形成されない領域で接続部106と接続され、支持フレーム108に保持される。
【0017】
図2に示すように、蒸着マスク102は板状部材であり、複数の開口103は板状部材を貫通する貫通孔である。詳細は後述するが、蒸着マスク102は金属材料を用いて形成される。蒸着マスク102を平板状に支持するため、支持フレーム108が設けられる。複数の蒸着マスク102を保持するため、格子状の枠が支持フレーム108に設けられてもよい。蒸着マスクユニット100では、支持フレーム108がマザーガラス基板のサイズに対応し、マスクパターン104はマザーガラス基板の中に作り込まれる個々の表示パネルに対応して配置され、複数の開口103は表示パネル内の画素の配列に対応して配置される。
【0018】
接続部106は、蒸着マスク102と支持フレーム108を接続し、これらを互いに固定する機能を有する。したがって、支持フレーム108は蒸着マスク102と直接接触しないものの、接続部106は蒸着マスク102の非開口部(マスクパターン104が形成されない領域)において蒸着マスク102と接し、かつ、支持フレーム108の側面と接する。
【0019】
なお、
図1及び
図2に示す一例は、支持フレーム108に複数の蒸着マスク102が保持される態様を示すが、本発明の一実施形態はこれに限定されず、例えば、支持フレーム108に一つの蒸着マスク102が接続部106を介して保持される構成を有していてもよい。
【0020】
本発明の一実施形態に係る蒸着マスクユニット100は、表示パネルの製造工程の中で、有機EL素子を形成する工程で用いられる。具体的には、真空蒸着法を用いて有機EL素子の発光層を形成する工程で用いられる。発光層を形成する工程では、マザーガラス基板側の蒸着領域が蒸着マスク102側のマスクパターン104と整合するように配置され、蒸着材料が複数の開口103を通過し、蒸着材料が蒸着領域に堆積する。
【0021】
蒸着マスク102、及び接続部106はニッケル(Ni)、銅(Cu)、チタン(Ti)、クロム(Cr)などの0価の金属材料を用いて形成される。すなわち、剥離層116、及び接続部106は、金属膜を有する。蒸着マスク102、及び接続部106の材料の組成は互いに同一であってもよい。蒸着マスク102、及び接続部106と同様に、支持フレーム108もニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)などの0価の金属材料を用いて形成される。例えば、支持フレーム108の材料の組成は鉄(Fe)とクロム(Cr)とを含む合金、又は鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)の合金でもよく、合金には炭素(C)が含まれていてもよい。
【0022】
<2.蒸着マスクユニット100の製造方法>
図3(A)乃至
図4(B)は蒸着マスク102の製造方法を示す模式的な断面図であり、
図5及び
図6は蒸着マスク102の製造方法及び蒸着マスク製造装置150を示す模式的な平面図であり、
図7(A)は
図6に示すB1-B2に沿った断面構造であり、
図7(B)は
図6に示すC1-C2に沿った断面構造であり、
図8は蒸着マスク102の製造方法及び蒸着マスク製造装置150を示す模式的な断面図であり、
図9(A)は
図8に示すD1-D2に沿った断面構造であり、
図9(B)は
図8に示すE1-E2に沿った断面構造であり、
図10は蒸着マスク製造装置150を用いてめっき処理を行う場合の庇部の高さに対する剥離層116の最外周の膜厚の関係を示すグラフであり、
図11(A)乃至
図17(B)は蒸着マスク102の製造方法を示す模式的な断面図である。
図3(A)乃至
図17(B)に示す蒸着マスク102の製造方法又は蒸着マスク製造装置150の構成は一例であって、蒸着マスク102の製造方法又は蒸着マスク製造装置150の構成は、
図3(A)乃至
図17(B)に示す構成に限定されない。
図1及び
図2と同一、又は類似する構成については、ここでの説明を省略する。
【0023】
図3(A)は、第1支持基板110の第2の面110Aに、第1レジストマスク114を形成する段階を示す。本発明の一実施形態では、第1支持基板110は金属製である。第1支持基板110は、例えば銅(Cu)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)などの金属材料、又はこれらの合金を用いて形成される。合金は、例えば鉄(Fe)とクロム(Cr)を含む合金、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、及びマンガン(Mn)の合金でもよく、合金には炭素(C)が含まれていてもよい。例えば、第1支持基板110は、鉄(Fe)を主成分とし、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)を含有するステンレス鋼で形成されていてもよい。また、本発明の一実施形態では、第1支持基板110は金属製である例を示すが、第1支持基板110は金属製に限定されない。例えば、第1支持基板110は、ガラス、石英、セラミクス、プラスチックなどの絶縁物から形成されてもよい。本発明の一実施形態では、第1支持基板110は被めっき部材と呼ぶことがある。
【0024】
第1レジストマスク114は、感光性の樹脂材料を用い、フォトリソグラフィによって形成する。感光性の樹脂材料としては、塗布型のフォトレジスト、又はドライフィルムレジスト(DFR)を用いることができる。第1レジストマスク114は、
図1において示す蒸着マスクユニット100において、複数の蒸着マスク102が配置されるとき、それら(複数の蒸着マスク102全部)を囲む枠状の形態を有する。
【0025】
図3(B)は、剥離層116を形成する段階を示す。剥離層116を形成する段階の詳細は後述する。剥離層116は、第1レジストマスク114が形成された第1支持基板110の第2の面110Aにおいて、枠状の第1レジストマスクから露出した領域に形成される。具体的には、蒸着マスク製造装置150を用いることで、剥離層116は、第2の面110Aに設けられた第1レジストマスク114に対して、第1の段差部156Aが設けられる側と、第1の段差部156Aが設けられる側の反対側の両方に設けられる。すなわち、剥離層116は、第1レジストマスク114が設けられない第2の面110Aの一部に設けられる。剥離層116は、例えば、蒸着マスク102を形成する材料と同じ金属材料を用いて形成される。すなわち、剥離層116は、金属膜を有する。剥離層116は、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、チタン(Ti)、クロム(Cr)などの0価の金属材料を用いて形成される。剥離層116は、めっき法を用いて形成することができる。例えば、剥離層116は、第1支持基板110上にニッケルめっき処理によって作製される。めっき法を用いて剥離層116を形成する場合、第1支持基板110を洗浄し、第2の面110Aに離型剤が塗布されていてもよい。
【0026】
図3(C)は、第1レジストマスク114を除去する段階を示す。第1レジストマスク114は、剥離液により除去される。第1レジストマスク114が除去された領域には開口部118が形成される。換言すると、第1レジストマスク114が第1支持基板110上から除去され、剥離層116は開口部118を挟んで内側領域120と外側領域122に分離される。
【0027】
剥離層116を形成する場合において、
図4(A)に示すように、第1レジストマスク114の膜厚d1は、剥離層116の設計膜厚d2と同じまたは略同等に形成されていることが好ましい。剥離層116をめっき法で形成する場合、剥離層116は導電性を有する第1支持基板110の第2の面110A上から膜厚を増す方向に成長する。剥離層116が所望の設計膜厚d2となるまで成長したとき、第1レジストマスク114の上面が剥離層116に接しない程度の膜厚とすることで、後の第1レジストマスク114の剥離工程を良好に行うことができる。
【0028】
一般的に、剥離層116を形成する段階では、蒸着マスク102の最外周に電界が集中する。その結果、蒸着マスク102の最外周の膜厚は、蒸着マスクの内側の膜厚と比較して厚くなる。したがって、
図4(B)に示すように、剥離層116が第1レジストマスク114より厚く(d2>d1)形成され、第1レジストマスク114の上面に被さるように剥離層116が成長してしまう。このような状態で第1レジストマスク114を除去すると剥離層116の一部が剥がれてしまうことが問題となる。すなわち、第1レジストマスク114を剥離液に浸漬すると膨潤し、それに伴って第1レジストマスク114の上面に被さった剥離層116の一部が押し上げられるため、剥離層116が剥がれてしまう。剥離層116が剥がれてしまうと、後に剥離層116上に形成される蒸着マスク102は破損した不良品となってしまう。破損した蒸着マスクを用いて有機EL表示装置を製造すると、蒸着マスクの破損部分に対応する有機EL素子は発光層を蒸着されない。発光層を蒸着されない有機EL素子は発光しないため、有機EL表示装置では、表示不良となることが問題となる。
【0029】
前述した通り、めっき法により形成される剥離層116は、中央部よりも最外周付近で膜の成長が促進されやすく、膜厚が大きくなる傾向がある。従って、最外周付近で第1レジストマスク114の膜厚を剥離層116の膜厚が越えないような条件を設定すると、中央部付近での剥離層116の膜厚が不足する場合がある。
【0030】
このような不具合を解消するために、本発明の一実施形態に係る蒸着マスク102の製造方法では、
図3(B)に示す剥離層116を形成する段階を、
図5に示す蒸着マスク製造装置150を用いて行う。具体的には、本発明の一実施形態に係る蒸着マスク102の製造方法では、
図5及び
図6に示す蒸着マスク製造装置150を用いて、
図4(A)に示す構造を形成する。
【0031】
図5は、蒸着マスク製造装置150において、一例として、第2の支持部材164が着脱自在な部材であり、第2の支持部材164が支持母材151の第1の面151A(
図7(A))から取り外された態様を示し、
図6は、蒸着マスク製造装置150において、第2の支持部材164が支持母材151の第1の面151A(
図7(A))に取り着けられた態様を示す。
図5又は
図6に示すように、蒸着マスク製造装置150は、支持母材151と、第1支持基板110(
図8)を収納する収納部152と、第1支持基板110の外縁部111(
図8)を覆う枠型部154とを有する。収納部152は支持母材151と枠型部154との間に設けられる。
【0032】
枠型部154は、第1の支持部材162と、第2の支持部材164と、第1の支持部材162を支持母材151の第1の面151A(
図7(A))に固定する固定部材166A及び166Bと、第2の支持部材164を支持母材151の第1の面151A(
図7(A))に固定する固定部材168とを有する。また、枠型部154は、第1の支持部材162と、第2の支持部材164とによって設けられる開口部190を有する。
【0033】
第1の支持部材162は、第1の庇部162A(
図7(A)、
図7(B))と、第1の壁部157Aとを有する。第1の支持部材162は、平面視において、コの字型の形状を有する。コの字型の形状は、第1の辺190Aと、第2の辺190Bと、第3の辺190Cを含む。第1の辺190Aは、第2の支持部材164に含まれる第4の辺190Dと向かい合う(対向する)。第2の辺190Bは、第3の辺190Cと向かい合う(対向する)。第1の庇部162A(
図7(A)、
図7(B))と、第1の壁部157Aとは、支持母材151の第1の面151A(
図7(A))上に設けられる。第1の壁部157Aは、支持母材151の第1の面151Aの上部において、第1の面151Aと第1の庇部162Aとの間に、第1の面151Aと第1の庇部162Aとに接するように設けられる。第1の庇部162Aは、第1の壁部157Aの上部において、第1の面151Aの内側に向けて突出するように設けられる。第1の支持部材162は、固定部材166A、166B及び166Cによって、支持母材151の第1の面151Aに着脱自在である。固定部材166の個数は任意である。本発明の一実施形態では、固定部材166の個数は例えば8個である。
【0034】
第2の支持部材164は、電極部163と、第3の支持部材165と、第4の辺190Dと、第2の庇部165Aと、第2の壁部157Bとを有する。電極部163と、第3の支持部材165と、第4の辺190Dと、第2の庇部165Aと、第2の壁部157Bとは、支持母材151の第1の面151A(
図7(A))上に設けられる。第2の壁部157Bは、支持母材151の第1の面151Aの上部において、支持母材151の第1の面151Aと第2の庇部165Aとの間に、支持母材151の第1の面151Aと第2の庇部165Aとに接するように設けられる。電極部163は、支持母材151の第1の面151Aの上部において、第1の面151Aと第2の庇部165Aとの間に、第2の庇部165Aに接するように設けられる。第2の庇部165Aは、電極部163の上部において、電極部163に接し、第1の面151Aの内側に向けて突出するように設けられる。第2の支持部材164は、固定部材168によって、支持母材151の第1の面151A(
図7(A))に着脱自在である。固定部材168の個数は任意である。第3の支持部材165は、電極部163を取り囲むように設けられる。本発明の一実施形態では、固定部材168の個数は例えば2個である。例えば、第1の支持部材162又は第2の支持部材164の少なくともいずれか一方を支持母材151の第1の面151A(
図7(A))から着脱自在とすることで、第1支持基板110(
図8)を収納部152に収納することと、第1支持基板110(
図8)を収納部152から取り外すこととが可能なる。
【0035】
図6と
図7(A)と
図7(B)に示すように、第2の支持部材164が第1の面151Aに取り着けられた態様では、第1の支持部材162と第2の支持部材164とは隣接して設けられ、第1の庇部162Aと第2の庇部165Aとは隣接して設けられ、第1の段差部156Aと第2の段差部156Bとは隣接して設けられ、第1の壁部157Aと第2の壁部157Bとは隣接して設けられる。また、開口部190は、第1の辺190Aと、第2の辺190Bと、第3の辺190Cと、第4の辺190Dとの4つの辺から構成される。長さL1は、第1の辺190Aと第4の辺190Dとの長さであり、第1の庇部162Aと第2の庇部165Aとの間の長さでもある。長さL2は、第2の辺190Bと第3の辺190Cとの長さであり、第1の庇部162Aと第1の庇部162Aとの間の長さでもある。また、収納部152の長さL3は、開口部190の長さL1に対応する長さであり、収納部152の長さL4は、開口部190の長さL2に対応する長さである。収納部152の長さL3は、第1の段差部156Aと第2の段差部156Bとの間の長さでもある。収納部152の長さL4は、第1の庇部162Aと第2の庇部165Aとの長さでもある。なお、本発明の一実施形態では、長さを距離とも呼ぶ。
【0036】
長さL1は長さL2よりも短く(小さく)、長さL3は長さL4よりも短く(小さく)は、長さL1は長さL3よりも短く(小さく)、長さL2は長さL4よりも短い(小さい)。すなわち、開口部190の開口部部分は、収納部152より小さい。また、開口部190の開口部部分は、第1支持基板110より小さい。よって、第1支持基板110が収納部152に、確実に収納及び固定されるため、蒸着マスク製造装置150をめっき浴に浸漬する際に、第1支持基板110の位置がずれることがない。その結果、第1支持基板110の上に形成される剥離層116の膜厚が剥離層116の中心部と外周部とで一様に形成され、剥離層116が面内で均一に形成される。本発明の一実施形態では、長さL1は第1の幅とよぶことがあり、長さL2は第2の幅とよぶことがあり、長さL3は第3の幅とよぶことがあり、長さL4は第4の幅とよぶことがある。
【0037】
図7(A)と
図7(B)によれば、固定部材166Aが、第1の支持部材162に設けられる開口部176Aと、支持母材151に設けられる開口部186Aとを貫通し、固定部材166Bが、第1の支持部材162に設けられる開口部176Bと、支持母材151に設けられる開口部186Bとを貫通し、固定部材166Cが、第1の支持部材162に設けられる開口部176Cと、支持母材151に設けられる開口部186Cとを貫通することで、第1の支持部材162が第1の面151Aに取り着けられ、固定される。また、固定部材168が、第3の支持部材165に設けられる開口部178と、電極部163に設けられる開口部173と、支持母材151に設けられる開口部186Dとを貫通することで、第2の支持部材164が第1の面151Aに取り着けられ、固定される。
【0038】
図7(A)に示すように、第1の壁部157Aは、第1の部分157Cと、第1の段差部156Aとを有する。第1の部分157Cは、第1の面151Aから所定の高さKに亘って高さが減少するように設けられる。第1の段差部156Aは、第1の部分157Cによって第1の壁部157Aの内側面に設けられる。第2の壁部157Bは、第2の段差部156Bを有する。第2の段差部156Bは、第2の壁部157Bの内側面に第1の面151Aから所定の高さKで電極部163が突出することで形成される。電極部163は、第1の面151Aから所定の高さK離れて設けられ、第2の支持部材164(第3の支持部材165)の第2の庇部165Aに対して反対側に突出している。電極部163が、第2の庇部165Aに対して反対側に突出することで、クリップなどの接続部材が電極部163に接続されやすくなる。その結果、後述するめっき処理の際に、接続部材を経由して電極部163に電圧が印加され易くなる。
【0039】
図8、
図9(A)及び
図9(B)は、蒸着マスク製造装置150を用いて剥離層116を形成する段階を示す。以降の説明では、
図1乃至
図7(B)と同一、又は類似する構成についての説明を省略する場合がある。
【0040】
図8、
図9(A)及び
図9(B)に示すように、剥離層116を形成する段階では、第1支持基板110を収納部152に収納し、固定する。具体的には、第1支持基板110を支持母材151の第1の面151Aに載置し、第1支持基板110の周囲の少なくとも2辺を、第1の支持部材162のコの字型の形状の角部を挟んだ少なくとも2辺に突き当てる。例えば、第1支持基板110の2辺を、収納部152の第1の辺190Aと第2の辺190Bとに第3の辺190C)に、突き当てる。
【0041】
このとき、第1支持基板110の点線の円162C(
図9(A))に示すように、第1支持基板110の1辺の外縁部111は、第1の段差部156Aに突き当たる。換言すると、第1支持基板110の外縁部111の一部は、第1の支持部材162の第1の段差部156Aに嵌め込まれ、第1支持基板110は第1の面151Aと第1の段差部156Aとの間に挟みこまれる。
【0042】
次に、第2の支持部材164を支持母材151の第1の面151Aに取り着け、固定する。このとき、点線の円164C(
図9(A))に示すように、第1支持基板110の1辺の外縁部111は、第2の段差部156Bに突き当たる。換言すると、第1支持基板110の外縁部111の一部は、第2の支持部材164の第2の段差部156Bに嵌め込まれ、第1支持基板110は第1の面151Aと第2の段差部156Bとの間に挟みこまれる。第1支持基板110の第2の面110Aの一部は、開口部190に対して露出され、第1支持基板110の第2の面110Aの残りの一部は、枠型部154に覆われる。
【0043】
結果として、第1の支持部材162及び第2の支持部材164は、第1の面151A上で、第1支持基板110の外周を囲むように設けられる。また、支持母材151の第1の面151Aは、第1支持基板110を支持ずることができる。
【0044】
続いて、第1支持基板110が収納された蒸着マスク製造装置150をめっき浴に浸漬する。めっき浴に充填された金属材料を含む溶液と、電極部163との間に電圧を印加することで、めっき処理を行う。蒸着マスク製造装置150を用いることで、剥離層116は導電性を有する第1支持基板110の第2の面110A上から膜厚を増す方向に成長し、第1支持基板110の第2の面110A上に剥離層116を形成することができる。換言すると、剥離層116は、第2の面110Aに設けられた第1レジストマスク114に対して、第1の段差部156Aが設けられる側と、第1の段差部156Aが設けられる側の反対側の両方に設けられる。すなわち、剥離層116は、第1レジストマスク114が設けられない第2の面110Aの一部に設けられる。剥離層116は、金属材料を用いて形成された金属膜を有する。
【0045】
図9(A)に示すように、第1の支持部材162又は第1の庇部162Aは第1レジストマスク114と第1支持基板110の第2の面110Aの一部とを覆う。D1-D2に沿った断面構造(断面視)において、第1の庇部162Aの第1支持基板110に面した部分と、第2の面110Aとの距離Hは、例えば、10mmである。また、第1の支持部材162の第1の庇部162Aの端部と第2の面110Aに設けられた第1レジストマスク114の端部との距離Wは、例えば4mmである。このとき、剥離層116の設計膜厚d2は、120μmである。本発明の一実施形態において、距離Hは庇部の高さともよばれ、距離Wは被覆幅ともよばれる。
【0046】
第2の支持部材164又は第2の庇部165Aは第1レジストマスク114と第1支持基板110の第2の面110Aの一部とを覆う。D1-D2に沿った断面構造(断面視)において、第2の庇部165Aの第1支持基板110に面した部分(面)と、第2の面110Aとの距離Hは、例えば10mmであり、第3の支持部材165の第2の庇部165Aの端部と第2の面110Aに設けられた第1レジストマスク114の端部との距離Wは、例えば4mmであり、第2の庇部165Aが第1支持基板110を覆う長さは、第1の庇部162Aが第1支持基板110を覆う長さより長い(大きい)。
【0047】
図9(B)に示すように、第1の支持部材162は第1レジストマスク114と第1支持基板110とを覆う。また、D1-D2に沿った断面構造(断面視)と同様に、E1-E2に沿った断面構造(断面視)においても、第1の庇部162Aの第1支持基板110に面した部分(面)と、第2の面110Aとの距離Hは10mmであり、第1の庇部162Aの端部と第2の面110Aに設けられた第1レジストマスク114の端部との距離Wは4mmであり、剥離層116の設計膜厚d2は120μmである。
【0048】
第1支持基板110を収納部152に収納し、固定するとき、第1支持基板110は第1の支持部材162のコの字型の形状の角部を挟んだ少なくとも2辺に突き当て、第1支持基板110が第1の支持部材162及び第2の支持部材164(第3の支持部材165)の一部に入り込む。その結果、第1支持基板110が収納部152に安定的に固定されるため、第1支持基板110の上に形成される剥離層116の膜厚が剥離層116の中心部と外周部とで一様に形成され、剥離層116が面内で均一に形成される。
【0049】
また、本発明の一実施形態に係る蒸着マスク製造装置150は、開口部190を有し、距離Wと距離Hとが所定の値で構成されるため、第1の庇部162Aが第1支持基板110及び第1レジストマスク114を覆うことができる。その結果、蒸着マスク製造装置150は、蒸着マスク製造装置150内における、めっき浴に充填された金属材料を含む溶液の循環を制御することができる。つまり、第1支持基板110の最外周付近では、溶液の循環が抑制されることにより、剥離層116の成長に伴って近傍の溶液中のイオン濃度が低下する。それに伴い、第1支持基板110の最外周付近での剥離層116の成長速度が低下するため、中央部に比べて膜厚が大きくなるのを抑制することができる。したがって、蒸着マスク製造装置150は、循環を制御された金属材料を剥離層116として、第1支持基板110の上に均一に形成し、剥離層116の膜厚を剥離層116の中心部と外周部とで一様に形成することができる。
【0050】
図10に示すように、例えば、距離H(庇部の高さH)が3.5mmのとき、剥離層116の最外周の膜厚は19.5μm以上20.5μm以下であり、距離H(庇部の高さH)が6mmのとき、剥離層116の最外周の膜厚は59.5μm以上60.5μm以下であり、距離H(庇部の高さH)が9mmのとき、剥離層116の最外周の膜厚は99.5μm以上100.5μm以下であり、距離H(庇部の高さH)が10mmのとき、剥離層116の最外周の膜厚は119.5μm以上120.5μm以下である。すなわち、剥離層116の設計膜厚d2を設定した場合、
図10を用いて距離H(庇部の高さH)を設定することができる。例えば、本発明の一実施形態では、上述のように、距離H(庇部の高さH)が10mmとすることで、剥離層116の設計膜厚d2が120μmとすることができる。
【0051】
本発明の一実施形態に係る蒸着マスク製造装置150は、開口部190を有し、
図10に基づいて、距離Wと距離Hとが所定の値で構成され、剥離層116の膜厚を制御することができる。その結果、剥離層116の膜厚が中央部と最外周付近との間でばらつきを生ずることがないため、後述する、剥離層116を第1支持基板110の第2の面110Aから剥離する段階において、剥離層116が剥がれること、破損することなどを抑制することができる。
【0052】
図11(A)は、剥離層116の上に接着層124を設ける段階を示す。接着層124は、未露光の状態で所定の接着力又は粘着力を有するレジストフィルムを用いることが好ましい。レジストフィルムは、例えば、ドライフィルムレジストである。接着層124は剥離層116の内側領域120の全面を覆い、接着層124の端部が剥離層116の外側に広がっていることが好ましい。接着層124の端部は、剥離層116の外側領域122まで広がっていてもよい。フィルム状の部材として供給される剥離層116がこのような大きさを有することで、剥離層116の内側領域を確実に覆うことができる。
【0053】
図11(B)に示すように、接着層124の外周部は未露光であり、接着層124の内側領域は露光されてもよい。具体的には、接着層124において、剥離層116の端部と重なる領域を含む外周部132を未露光領域とし、外周部132より内側の領域を露光して露光領域とし、外周部132より内側の領域の露光面を硬化させる処理を行ってもよい。外側領域122(露光処理される領域)は、少なくとも一部が剥離層116と重なっていることが好ましい。接着層124の選択的な露光は、フォトマスクを用いて行うことができる。例えば、接着層124として用いられる感光性のドライフィルムレジストがポジ型である場合、透光部130を囲むように遮光部129が形成された第1フォトマスク126が用いられる。このような露光処理により、接着層124には、外側領域122(未露光領域)と比べて硬化し、接着力が低下した領域(外側領域122の内側の領域)が形成される。
【0054】
なお、ドライフィルムレジストは、上述のように、露光処理によって表面の粘着力は失われるが、未露光の状態で既に他の表面と接している箇所は、光照射により硬化した後も、その接着力を維持する。
【0055】
図12(A)は、第2支持基板112の第2の面112Aに接着層124を密接させて、剥離層116を第1支持基板110ごと張り合わせる段階を示す。このとき、接着層124の大部分は露光されており、その表面は粘着力を失っている。よって第2支持基板112は、接着層124の未露光の外周部132において固定される。一方、接着層124と剥離層116との界面は、露光前の時点で既に密着させており、露光によって粘着力は失われるものの、ある程度の密着力は保たれている。なお、第2支持基板112は、第1支持基板110と同様の材料で形成される。
【0056】
また、未露光の外周部132と剥離層116との界面は、貼り合わせ後にベーク処理を行うことで、密着性を増すことができる。ベーク処理の条件は、例えば、60℃、1時間である。
【0057】
図12(B)は、剥離層116を第1支持基板110の第2の面110Aから剥離する段階を示す。剥離層116は、第1支持基板110との界面に物理的な力を作用させることで、第1支持基板110から剥離することができる。例えば、鋭利な先端を有する治具を、第1支持基板110と剥離層116との界面に押し当てて剥離のきっかけとなる部分を形成し、その後、第1支持基板110を引き剥がすように外力を加えることで、剥離層116を第1支持基板110から剥離することができる。
【0058】
図13(A)は、剥離層116が設けられた第2支持基板112上に、第2レジストマスク138を形成する段階を示す。第2レジストマスク138は所定のパターンで形成される。すなわち、第2レジストマスク138は、複数の開口103、及び後述するダミーパターン140を形成する領域に選択的に形成される。例えば、ネガ型のフォトレジストを剥離層116上に塗布し、複数の開口103とダミーパターン140を形成する領域が選択的に露光されるように、フォトマスクを用いて露光を行う。また、ポジ型のフォトレジストを剥離層116上に塗布し、非開口部が選択的に露光されるように、フォトマスクを用いて露光を行う。その後、現像を行うことで、パターニングされた第2レジストマスク138を得ることができる。なお、第2レジストマスク138は、剥離層116を蒸着マスクユニット100から容易に剥離することができるように、剥離層116の外縁部にも形成することが好ましい。
【0059】
図13(B)は、めっき法を用いて、第2レジストマスク138によって被覆されていない領域にめっきパターンを形成し、蒸着マスク102を形成する段階を示す。めっきパターンの形成は、一段階で行ってもよく、数段階に分けて行ってもよい。複数の段階で行う場合、異なる段階で異なる金属が形成されるように、めっき処理を行ってもよい。また、めっき処理は、めっきパターンの上面が第2レジストマスク138の上面よりも低くなるように行ってもよく、高くなるように行ってもよい。後者の場合、めっきパターンの上面(表面)を研磨することでめっきパターン上面の平坦化を行ってもよい。次に、
図13(C)に示すように、第2レジストマスク138を剥離液によるエッチング、及び/又はアッシングによって除去することで、剥離層116上に複数の開口103によってマスクパターンが形成される蒸着マスク102を製造することができる。
【0060】
なお、
図13(B)及び
図13(C)に示すように、蒸着マスク102を形成するとき、蒸着マスク102から離隔するダミーパターン140が形成される。ダミーパターン140は、平面視において複数の蒸着マスク102を囲むように構成される。ダミーパターン140と蒸着マスク102は同時に形成されるため、これらは互いに同一の組成と厚さを有することができる。
【0061】
図14(A)は、蒸着マスク102のマスクパターン104を保護するための保護フィルム142の一態様を示す。保護フィルム142は、ドライフィルムレジストを用いることができる。保護フィルム142は、例えば、光硬化性樹脂膜144が、剥離膜145と保護膜146とによって挟まれた構造を有する。光硬化性樹脂膜144には、ネガ型の光硬化性樹脂が含まれる。すなわち、光によって硬化する高分子又はオリゴマーが含まれる。光硬化性樹脂膜144の厚さは任意に選択することができ、例えば、20μm以上500μm以下、50μm以上200μm以下、又は50μm以上120μm以下の範囲から選択することができる。保護膜146は高分子材料を含む。高分子材料は、例えばポリオレフィン、ポリイミド、ポリエステル、ポリスチレン、又はフッ素含有ポリオレフィンなどから選択することができる。
【0062】
図14(B)は、保護フィルム142が蒸着マスク102の上に配置された状態を示す。保護フィルム142は、剥離膜145を剥離した後、光硬化性樹脂膜144が蒸着マスク102と保護膜146によって挟まれるように配置される。保護フィルム142は、少なくとも全てのマスクパターン104を覆うように設けられる。
【0063】
次に、光硬化性樹脂膜144を露光する。具体的には、
図15に示すように、遮光部129と透光部130を有する第2フォトマスク128を、透光部130がマスクパターン104と重なるように配置し、第2フォトマスク128を用いて露光を行う。その結果、露光された部分の現像液に対する溶解性が低下する。
【0064】
図16(A)は、光硬化性樹脂膜144を露光した後、保護膜146を剥離して現像を行い、マスクパターン104の上に第3レジストマスク148が形成された状態を示す。
図16(A)に示されるように、剥離層116の上に複数のマスクパターン104が形成される場合には、それぞれのマスクパターン104ごとに第3レジストマスク148が設けられる。なお、ダミーパターン140の上には後の工程で支持フレームが形成されるため、第3レジストマスク148は設けられていない。
【0065】
図16(B)は、ダミーパターン140の上に支持フレーム108を配置する段階を示す。支持フレーム108は、複数のマスクパターン104が形成されるとき、それぞれのマスクパターンの間に配置される。支持フレーム108は、外郭のパターンが幅広であり、外郭のパターンの内側に形成されるパターン(マスクパターン104の間に形成されるパターン)が幅狭の形態を有していてもよい。
【0066】
図17(A)は、めっき法を用い、接続部106を形成する段階を示す。接続部106では、蒸着マスク102の表面のうち支持フレーム108と第3レジストマスク148に覆われていない部分から主に、金属材料が堆積する。その結果、
図17(A)に示すように、蒸着マスク102の上面、及び支持フレーム108の側面に接する接続部106が形成される。接続部106が形成されることにより、蒸着マスク102と支持フレーム108が接続され、固定される。
【0067】
接続部106を形成した結果、接続部106の厚さは第3レジストマスク148の厚さと同じであってもよく、接続部106の厚さは第3レジストマスク148の厚さよりも小さくてもよく、
図17(A)に示すように、接続部106の厚さは第3レジストマスク148の厚さよりも大きくてもよい。接続部106の厚さが第3レジストマスク148の厚さよりも大きい場合、蒸着マスク102と支持フレーム108との間は、より強固に結合する。一方、接続部106の厚さが第3レジストマスク148の厚さ以下場合、接続部106が第3レジストマスク148の上に形成されることを抑制できる。その結果、第3レジストマスク148の除去の際に、接続部106が破壊されること、または、接続部106の破壊に起因してマスクパターン104が破損することなどの不具合を抑制することができる。
【0068】
図17(B)に示すように、第3レジストマスク148を、剥離液を用いて剥離することで、第2支持基板112上に蒸着マスクユニット100を形成することができる。その後、剥離層116を第2支持基板112から剥離し、さらに剥離層116を蒸着マスク102から剥離することで、
図2に示す蒸着マスクユニット100を得ることができる。
【0069】
なお、蒸着マスク102は微細なマスクパターン104が形成されるため、中央部と最外周近傍とで膜厚が均一になることは同様に要求される。従って、前述した蒸着マスク製造装置150は、
図13(B)(C)に示した蒸着マスク102の形成時のめっき処理の際に、第2支持基板112を収めるのに用いることもできる。
【0070】
本実施形態に係る蒸着マスクユニット100の製造工程において、剥離層116を第2支持基板112に転載した後に、光硬化性樹脂膜144を露光及び現像して第2レジストマスク138を形成する段階(
図16(A)から
図16(B))、及び第2レジストマスク138を剥離液で除去する段階(
図17(A)から
図17(B))において、薬液によるウエット処理が行われる。
【0071】
以上説明した、蒸着マスク製造装置150、蒸着マスク102の製造方法を用いることで、第1レジストマスク114の膜厚d1を必要以上に厚くすることを抑制できる。すなわち、第1レジストマスク114の厚膜化を抑制できる。また、蒸着マスク製造装置150、蒸着マスク102の製造方法を用いることで、第1レジストマスク114の厚膜化を抑制できるため、製造方法の簡略化及び製造に伴いコストの増加を抑制することができる。
【0072】
本発明の実施形態として上述した蒸着マスクの構成、蒸着マスクの製造装置、蒸着マスクの製造方法、蒸着マスクユニットの構成、及び蒸着マスクユニットの製造方法は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、蒸着マスクの構成、蒸着マスクの製造装置、蒸着マスクの製造方法、蒸着マスクユニットの構成、及び蒸着マスクユニットの製造方法を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0073】
また、上述した実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0074】
100:蒸着マスクユニット、102:蒸着マスク、103:開口、104:マスクパターン、106:接続部、108:支持フレーム、110:第1支持基板、110A:第2の面、111:外縁部、112:第2支持基板、112A:第2の面、114:第1レジストマスク、116:剥離層、118:開口部、120:内側領域、122:外側領域、124:接着層、126:第1フォトマスク、128:第2フォトマスク、129:遮光部、130:透光部、132:外周部、138:第2レジストマスク、140:ダミーパターン、142:保護フィルム、144:光硬化性樹脂膜、145:剥離膜、146:保護膜、148:第3レジストマスク、150:蒸着マスク製造装置、151:支持母材、151A:第1の面、152:収納部、154:枠型部、156A:第1の段差部、156B:第2の段差部、157A:第1の壁部、157B:第2の壁部、157C:第1の部分、162:第1の支持部材、162A:第1の庇部、162C:円、163:電極部、164:第2の支持部材、164C:円、165:第3の支持部材、165A:第2の庇部、166:固定部材、166A:固定部材、166B:固定部材、166C:固定部材、168:固定部材、173:開口部、176A:開口部、176B:開口部、176C:開口部、178:開口部、186A:開口部、186B:開口部、186C:開口部、186D:開口部、190:開口部、190A:第1の辺、190B:第2の辺、190C:第3の辺、190D:第4の辺