(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107495
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂、およびポリエステル樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/695 20060101AFI20220713BHJP
C08G 63/85 20060101ALI20220713BHJP
D01F 6/84 20060101ALI20220713BHJP
D01F 6/92 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
C08G63/695
C08G63/85
D01F6/84 306C
D01F6/92 307N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118238
(22)【出願日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】P 2021002207
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000228073
【氏名又は名称】日本エステル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592197315
【氏名又は名称】ユニチカトレーディング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大山田 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】福林 夢人
(72)【発明者】
【氏名】種田 祐路
(72)【発明者】
【氏名】高宮 和博
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 徳嶺
【テーマコード(参考)】
4J029
4L035
【Fターム(参考)】
4J029AA03
4J029AB01
4J029AB04
4J029AC03
4J029AD01
4J029AE01
4J029AE02
4J029BA02
4J029BA03
4J029BA05
4J029BA10
4J029BD07A
4J029BF09
4J029BH04
4J029CA02
4J029CB04A
4J029CB05A
4J029CB06A
4J029CC05A
4J029CD03
4J029CH04
4J029GA02
4J029GA12
4J029HA01
4J029HB01
4J029HD01
4J029JB131
4J029JB171
4J029JC751
4J029JE222
4J029JF321
4J029JF371
4J029JF471
4J029KB02
4J029KB16
4J029KB25
4J029KD01
4J029KD02
4J029KE03
4J029KE05
4L035AA05
4L035BB31
4L035EE20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】長期間にわたる使用においても良好な撥水性を維持し得る、ポリエステル樹脂を提供する。
【解決手段】芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとからなるポリエステルに、シリコーンが含有されたポリエステル樹脂である。前記シリコーンの90%以上がポリエステルと共重合されている。ポリエステル樹脂中における、共重合されたシリコーンの含有量が1~60質量%である。発明のポリエステル樹脂は、極限粘度が0.5~0.8であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとからなるポリエステルに、シリコーンが含有されたポリエステル樹脂であって、
前記シリコーンの90%以上がポリエステルと共重合されており、
ポリエステル樹脂中における、共重合されたシリコーンの含有量が1~60質量%である、ポリエステル樹脂。
【請求項2】
極限粘度が0.5~0.8である、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリエステル樹脂を含有する繊維。
【請求項4】
請求項1または2に記載のポリエステル樹脂を含有するフィルム。
【請求項5】
請求項1または2に記載のポリエステル樹脂を含有する成形体。
【請求項6】
請求項1または2に記載のポリエステル樹脂を含有する樹脂溶液。
【請求項7】
請求項1または2に記載のポリエステル樹脂を含有する粉体。
【請求項8】
エステル化反応及び重縮合反応を行うポリエステル樹脂を製造する方法であって、
ポリエステル原料とシリコーンとの混合物に、
スズ系エステル化触媒をポリエステルの全酸成分1モルに対して、1×10-5~1×10-4モルを添加し、反応温度250~270℃にてエステル化反応を行った後、
重縮合触媒をポリエステルの全酸成分1モルに対して、1×10-5~1×10-4モルを添加し、反応温度250~270℃にて重縮合反応を行う、ポリエステル樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期間にわたる使用において良好な撥水性を維持し得るポリエステル樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂は、耐熱性、寸法安定性、機械的特性等の優れた特性を有することから、繊維、フィルム、成形体等の様々な分野で広く使用されている。そして撥水性等の性能を付与するために、例えば、ポリエステル樹脂からなる繊維や布帛等を、撥水性樹脂としてのフッ素系樹脂やシリコーン系樹脂を含有する分散液等で処理して、表面にこれらの樹脂を付着させることが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、表面加工処理により付与される撥水性は、耐久性が低く、長期間の使用や繰り返しの洗濯等により撥水性が低下するという欠点を有している。また十分な撥水性の耐久性を付与し得る量の樹脂を用いて表面処理を行うと、繊維やフィルム等とした場合に風合いが硬くなったり、タッチが粗くなったりするという問題点があった。
【0005】
本発明の目的は、このような現状に鑑み、繊維やフィルム等の成型品とした場合に、撥水加工処理を施さずとも優れた撥水性能を有し、撥水性の耐久性(撥水耐久性)に優れるポリエステル樹脂を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、ポリエステルにシリコーンが特定範囲で共重合されており、さらに共重合されたシリコーンの反応率が高いポリエステル樹脂であれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとからなるポリエステルに、シリコーンが含有されたポリエステル樹脂であって、前記シリコーンの90%以上がポリエステルと共重合されており、ポリエステル樹脂中における、共重合されたシリコーンの含有量が1~60質量%である、ポリエステル樹脂。
(2)極限粘度が0.5~0.8である、(1)のポリエステル樹脂。
(3)(1)または(2)のポリエステル樹脂を含有する繊維。
(4)(1)または(2)のポリエステル樹脂を含有するフィルム。
(5)(1)または(2)のポリエステル樹脂を含有する成形体。
(6)(1)または(2)のポリエステル樹脂を含有する樹脂溶液。
(7)(1)または(2)のポリエステル樹脂を含有する粉体。
(8)エステル化反応及び重縮合反応を行うポリエステル樹脂を製造する方法であって、
ポリエステル原料とシリコーンとの混合物に、
スズ系エステル化触媒をポリエステルの全酸成分1モルに対して、1×10-5~1×10-4モルを添加し、反応温度250~270℃にてエステル化反応を行った後、
重縮合触媒をポリエステルの全酸成分1モルに対して、1×10-5~1×10-4モルを添加し、反応温度250~270℃にて重縮合反応を行う、ポリエステル樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリエステル樹脂は、撥水性および撥水耐久性に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル樹脂は、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとからなるポリエステルに、シリコーンが含有されてなるものである。
【0010】
本発明のポリエステル樹脂における芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸を主成分とすることが好ましい。全酸成分中のテレフタル酸の含有量は80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましい。テレフタル酸の含有量が80モル%未満であると、結晶性や耐熱性に劣る場合がある。
【0011】
本発明のポリエステル樹脂における、テレフタル酸以外の酸成分としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ドデカン二酸等、ダイマー酸等が挙げられる。これらを2種類以上併用してもよく、これらの酸のエステル形成性誘導体を使用してもよい。
【0012】
本発明のポリエステル樹脂における脂肪族ジオールは、エチレングリコールを主成分とすることが好ましい。全脂肪族ジオール中のエチレングリコールの含有量は、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましい。エチレングリコールの含有量が80モル%未満であると、結晶性や耐熱性に劣る場合がある。
【0013】
本発明のポリエステル樹脂における、エチレングリコール以外の脂肪族ジオール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサメチレンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ダイマージオール等が挙げられる。これらを2種類以上併用してもよい。
【0014】
本発明のポリエステル樹脂中、ポリエステル樹脂に共重合されたシリコーンの含有量は1~60質量%であり、2~40質量%であることが好ましく、3~30質量%であることがより好ましい。ポリエステル共重合しているシリコーンの含有量が1質量%未満であると、撥水性、撥水性耐久性に劣るものとなる。一方、ポリエステルに共重合されたシリコーンの含有量が60質量%を超えると、例えば、本発明のポリエステル樹脂から繊維を得ようとする際の操業性に劣るものとなる。
【0015】
本発明のポリエステル樹脂において、シリコーンの90%以上がポリエステルと共重合されており、98%以上が共重合されていることが好ましく、100%が共重合されていることがより好ましい。つまり、ポリエステルに共重合されたシリコーンの反応率は、90%以上であり、98%以上であることが好ましく、100%であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂に対するシリコーンの反応率を90%以上と高い範囲とすることで、紡糸の際に切れ糸を抑制し操業性を向上したり、成形体とした場合の外観欠点等を抑制したりすることができ、さらに撥水耐久性に優れるものとなる。
【0016】
本発明において、反応率(共重合率)は下記式により算出される。
シリコーンの反応率(%)=((共重合されたシリコーンの質量/(共重合されたシリコーンの質量と未反応のシリコーンの質量との合計質量))×100
共重合されたシリコーンの質量と未反応のシリコーンの質量との求め方は、実施例において詳述する。
【0017】
本発明のポリエステル樹脂において、ポリエステルと反応して共重合されたシリコーンの一例を下記化学式(1)にて示す。また、ポリエステルと共重合しておらず未反応のシリコーンの一例を下記化学式(2)で示す。
【0018】
【0019】
【0020】
化学式(1)および化学式(2)中、R1は炭素数1~10のアルキル基、またはフェニル基であることが好ましく、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。中でも、立体障害が小さくポリエステルとの反応性が良好な観点から、メチル基、エチル基が好ましい。
化学式(1)および化学式(2)中、Rは2価の有機基である。
【0021】
化学式(1)および化学式(2)において、nは1~100の整数であることが好ましく、2~50の整数であることがより好ましく、3~30の整数であることがさらに好ましい。nが101以上の整数であるとエステルとの反応性が低下する場合がある。一方、nが0であるとシリコーン由来の性能をポリエステルに付与し難くなり、撥水性、撥水耐久性に劣る場合がある。
【0022】
化学式(2)中、Xはエステル形成可能な置換基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xとしては、例えば、アミノ基、エポキシ基、脂環式エポキシ基、カルビノール基、メタクリル基、ポリエーテル基、メルカプト基、カルボキシル基、フェノール基、シラノール基、アクリル基、カルボン酸無水物基、ポリエチレンオキサイド基、ポリプロピレンオキサイド基等が挙げられる。中でも、ポリエステルとの反応性の観点から、カルビノール基、カルボキシル基、ポリエーテル基が好ましい。
【0023】
化学式(2)で示されるシリコーンの例としては、カルビノール基で変性されたシリコーン、カルボキシル基で変性されたシリコーン、ポリエーテル基で変性されたシリコーン、エポキシ基で変性されたシリコーン、シラノール基で変性されたシリコーン、カルボン酸無水物で変性されたシリコーン等が挙げられる。この中でも、ポリエステルとの反応性の観点から、両末端がカルビノール基で変性されたシリコーン、両末端がカルボキシル基で変性されたシリコーン、両末端がポリエーテル基で変性されたシリコーンがより好ましい。
【0024】
本発明のポリエステル樹脂の極限粘度は0.5~0.80であることが好ましく、0.50~0.75であることがより好ましい。極限粘度が0.5未満であると、本発明のポリエステル樹脂から、例えば繊維を得た場合に、強度が低くなり操業性が低下する。一方、極限粘度が0.80を超えると、取扱性に劣る場合がある。なお、極限粘度は、フェノールと四塩化エタンとの等重量混合物を溶媒として、温度20℃で測定される。
【0025】
本発明のポリエステル樹脂には、必要に応じて、その特性を損なわない範囲で、他の樹脂、熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、防腐剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤等の各種の添加剤が含有されていてもよい。これらの添加剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
また、本発明のポリエステル樹脂には、繊維とした際の白度を向上させ、良好な色調の布帛を得る目的で、艶消し剤や白色顔料として一般的に使用されている酸化チタンが含有されていてもよい。酸化チタンの含有量としては、本発明のポリエステル樹脂100質量部に対して、0.05~5質量部が好ましい。
【0027】
次に、本発明のポリエステル樹脂の製造方法について、以下に述べる。
本発明のポリエステル樹脂の製造は、エステル化反応と重縮合反応を行うものである。
まず、任意のエステル化反応缶に、ポリエステル原料とシリコーンとの混合物と、エステル化触媒としてスズ系エステル化触媒を投入し、エステル化反応を行う。
【0028】
ポリエステル原料としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサメチレンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ダイマージオール等の脂肪族ジオール、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ドデカン二酸等、ダイマー酸等の芳香族ジカルボン酸成分が挙げられる。
【0029】
また、ポリエステル原料として、エチレンテレフタレートオリゴマーを使用することもできる。エチレンテレフタレートは公知又は市販のものを使用することができる。また、公知の製造方法によって製造することもできる。
【0030】
特に、エチレンテレフタレートオリゴマーとしては、例えばエチレングリコールとテレフタル酸とのエステル化反応物を好適に用いることができる。また、エチレンテレフタレートオリゴマーの数平均重合度は、特に限定的されないが、例えば2~20程度とすることができる。
【0031】
本発明の製造方法に用いられるシリコーンとしては、上記化学式(2)で示されるシリコーンが挙げられる。シリコーンの分子量は、500~10,000であることが好ましく、900~6,000であることがより好ましい。分子量が500未満であると、得られるポリエステル樹脂は撥水性に劣る場合があり、10,000を超えるとシリコーンとポリエステルとの反応が進みにくく、未反応のシリコーンがポリエステル中に多量に残存し、反応率が低下する場合がある。
【0032】
本発明の製造方法において、エステル化触媒としてスズ系エステル化触媒を用いることで、他のエステル化触媒(例えば、チタン系エステル化触媒等)を添加して製造されたポリエステル樹脂と比較すると、シリコーンとポリエステルとのエステル化反応が進み、未反応のシリコーンが残りにくく、撥水性に優れるポリエステル樹脂を製造することができる。
【0033】
スズ系エステル化触媒としては、モノ-n-ブチルスズオキサイドやテトラブチルスズ、ブチルクロロスズジヒドロキシ、ブチルトリス-2-エチルヘキサオート、しゅう酸スズ、ジメチルスズマレート等が挙げられる。シリコーンとポリエステルとの反応性の点から、モノ-n-ブチルスズオキサイドが好ましい。
【0034】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において、スズ系エステル化触媒の添加量は、ポリエステルの全酸成分1モルに対して、1×10-5~1×10-4モルであり、2×10-5~6×10-5モル%であることが好ましい。スズ系エステル化触媒の添加量がこの範囲を外れて少ない場合は、ポリエステル原料とシリコーンの反応が進行せず、未反応のシリコーンが樹脂中に存在することになり、反応率が低下する。そのため、未反応のシリコーンが異物となり、ポリエステル樹脂を用いて繊維を得ようとすると、紡糸の際に切れ糸が発生しやすくなったり、成形体を得ようとすると外観欠点等が発生しやすくなったりする。また繊維等とした場合、撥水耐久性が低くなる。
一方、スズ系エステル化触媒の添加量がこの範囲を外れて多い場合は、シリコーンが反応中に分解され、分解したシリコーンが樹脂中に含有し異物となる。その結果、紡糸の際に切れ糸が発生しやすくなったり、成形体を得ようとすると外観欠点等が発生しやすくなったりする。また、繊維等とした場合に撥水耐久性が低下する。
【0035】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において、エステル化反応温度は、250~270℃であり、255~265℃であることが好ましい。
反応温度がこの範囲よりも低い場合は、ポリエステル原料とシリコーンの反応が進行せず、未反応のシリコーンが樹脂中に存在することになり、反応率が低下する。そのため、未反応のシリコーンが異物となり、その結果、得られたポリエステル樹脂を用いて繊維を得ようとすると紡糸の際、切れ糸が発生しやすくなったり、成形体を得ようとすると外観欠点が発生しやすくなったりする。また、繊維等とした場合の、撥水耐久性が低くなる。
一方、反応温度がこの範囲よりも高い場合は、シリコーンが反応中に分解され、分解したシリコーンが樹脂中に含有し異物となり、その結果、ポリエステル樹脂を用いて繊維を得ようとすると、紡糸の際に切れ糸が発生しやすくなったり、成形体を得ようとすると外観欠点等が発生しやすくなったりする。また、繊維等とした場合に撥水耐久性が低下する。
【0036】
エステル化反応終了後、得られたエステル化物を、任意の重縮合反応缶に移送し、重縮合触媒を添加し、重縮合反応を行う。重縮合触媒としては、アンチモン系重縮合触媒、チタン系重縮合触媒等が挙げられるが、中でも、シリコーン共重合ポリエステルの重縮合反応が比較的短時間で進み、その結果シリコーンの反応率が高くなり、撥水耐久性に優れたポリエステル樹脂を製造することができることから、チタン系重縮合触媒が好ましい。
【0037】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において、重縮合触媒の添加量は、ポリエステルの全酸成分1モルに対して、1×10-5~1×10-4モルであり、2×10-5~6×10-5モルであることが好ましい。重縮合触媒の添加量がこの範囲よりも少ない場合は、ポリエステル原料とシリコーンの反応が進行せず、未反応のシリコーンが樹脂中に存在することになり、反応率が低下する。そのため、未反応のシリコーンが異物となり、得られた樹脂を用いて繊維とする場合に、紡糸の際に切れ糸が発生しやすくなったり、または成形体とする場合に外観欠点等が発生したりする。また、繊維等とした場合、撥水耐久性が低下する。
一方、重縮合触媒の添加量がこの範囲よりも多い場合は、シリコーンが反応中に分解され、分解したシリコーンが樹脂中に含有し、異物となる。その結果、得られた樹脂を用いて繊維とする場合に、紡糸の際に切れ糸が発生しやすくなったり、または成形体とする場合に、外観欠点等が発生したりする。また、繊維とした場合に撥水耐久性が低下する。
【0038】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において、重縮合反応の温度は、250~270℃であり、255~265℃で行うことが好ましい。
反応温度がこの範囲よりも低い場合は、ポリエステル原料とシリコーンの反応が進行せず、未反応のシリコーンが樹脂中に存在することになり、反応率が低下する。そのため、未反応のシリコーンが異物となり、得られた樹脂を用いて繊維とする場合に紡糸の際、切れ糸が発生しやすくなったり、または成形体とする場合に、外観欠点等が発生したりする。又は、繊維とした場合、撥水耐久性が低下する。一方、反応温度がこの範囲よりも高い場合は、シリコーンが反応中に分解され、分解したシリコーンが樹脂中に含有し、異物となる。その結果、得られた樹脂を用いて繊維とする場合に、紡糸の際に切れ糸が発生しやすくなったり、または成形体とする場合に、外観欠点等が発生したりする。また、繊維とした場合、撥水耐久性が低下する。
【0039】
重縮合反応において、反応缶の圧力は、1.0hPa以下で行うことが好ましい。重縮合反応時の圧力が1.0hPaを超えると、重縮合反応時間が長くなり、生産性に劣る場合がある。
【0040】
重縮合反応時には、必要に応じて、上記の重合触媒と併せて、ヒンダードフェノール系抗酸化剤を添加したり、樹脂の熱分解を抑制したりする目的でリン化合物を添加したりすることができる。
【0041】
ヒンダードフェノール系抗酸化剤としては、例えば2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、3,9-ビス{2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1’-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等が用いられるが、効果とコストの点で、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンが好ましい。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0042】
リン化合物としては、例えば亜リン酸、リン酸、トリメチルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリデシルフォスフェート、トリフェニルフォスフォート等のリン化合物を用いることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0043】
本発明のポリエステル樹脂の用途としては、特に限定されるものではないが、繊維、フィルム、成形体、樹脂溶液、粉体等が挙げられる。それぞれの用途に対して、本発明のポリエステル樹脂を単独又は他の樹脂組成物等と複合して用いることができ、製造方法においては公知の技術で加工が可能である。
【0044】
本発明のポリエステル樹脂を用いて繊維を得る際には、単繊維の全てが本発明のポリエステル樹脂で形成されている繊維のみならず、本発明のポリエステル樹脂と、本発明のポリエステル樹脂以外の樹脂組成物(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂や他の共重合成分を含有するポリエステル樹脂などに加え二酸化チタンなどの無機粒子を含有したポリエステル樹脂など)との複合繊維であってもよい。複合繊維の形態としては、芯鞘型、サイドバイサイド型、海島型が挙げられる。例えば、本発明のポリエステル樹脂を用いて芯鞘型の繊維を得る際には、撥水性の観点から本発明のポリエステル樹脂を鞘部に用いることが好ましい。なお、この場合、芯部と鞘部の質量比率(芯/鞘)は60/40~90/10とすることが好ましい。
【実施例0045】
次に、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、実施例中の各種の特性値等の測定、評価方法は次の通りである。
(a)極限粘度
得られたポリエステル樹脂を用い、フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、公知の方法を用いて、温度20℃で測定した。
【0046】
(b)ポリエステル樹脂中のシリコーンの含有量、反応率
得られたポリエステル樹脂を、ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解させ、重水素化テトラクロロエタンを添加し、130℃の加熱によりヘキサフルオロイソプロパノールを除去した。
その後、日本電子社製のJNM-ECZ400R/S1型NMR装置を用いて、1H-NMRを測定した。得られたチャートの各成分のプロトンのピーク(テレフタル酸のピーク(δ:約8.0ppm)、エチレングリコールのピーク(δ:約4.6ppm)、ジエチレングリコールのピーク(δ:約3.8ppm)、反応して共重合されたシリコーン中のプロトンのピークの積分強度から、共重合したシリコーンの含有量を求めた。
【0047】
また、シリコーンの反応率は、共重合されたシリコーンの質量と未反応のシリコーンの質量とを求め、下記式にて算出した。
シリコーンの反応率(%)=(共重合されたシリコーンの質量/(共重合されたシリコーンと未反応のシリコーンとの合計質量)×100
【0048】
共重合されたシリコーンの質量と未反応のシリコーンの質量は、下記のようにして求めた。
実施例1~8および11、比較例1~11においては、ポリエステルと反応し共重合されたシリコーンおよび未反応のシリコーンの何れも示すプロトンのピーク(δ:約3.5ppm)と、未反応のシリコーンのみを示すプロトンのピーク(δ:約0.5ppm)との積分強度から、共重合されたシリコーンの質量と未反応のシリコーンの質量を求めた。
【0049】
実施例9においては、ポリエステルと反応し共重合されたシリコーンを示すプロトンのピーク(δ:約0.9ppm)と、未反応のシリコーンを示すプロトンのピーク(δ:約0.8ppm)との積分強度から、共重合されたシリコーンと未反応のシリコーンとの質量を求めた。
実施例10においては、ポリエステルと反応し共重合されたシリコーンおよび未反応のシリコーンの何れも示すプロトンのピーク(δ:約0.5ppm)と、未反応のシリコーンのみを示すプロトンのピーク(δ:約5.2ppm)との積分強度から、共重合されたシリコーンの質量と未反応のシリコーンの質量を求めた。
【0050】
(c)シリコーンの分子量
実施例、比較例にて用いたシリコーンについて、水酸基価(mgKOH/g)、官能基当量(g/mol)から分子量を算出した。
【0051】
(d)接触角
得られたポリエステル樹脂について、OCS社製のゲルカウンターにて、押出機の温度260~290℃、回転数130rpm、巻き取り機の温度30~50℃、回転数2m/minの条件にて、膜厚0.2mmのシートを作製した。このシートについて、KRUSS社製の高機能自動接触角計DSA30を用い、静滴法により測定した。接触角が大きいほど撥水性に優れると判断した。
【0052】
(e)動摩擦係数、静摩擦係数
上記の接触角の測定に用いたシートについて、東洋精機製作所社製の摩擦測定機TR-2にて、200gのメッキクロム金属片、試験速度100mm/min、試験距離:180mm、測定環境:23℃×50%RHの条件にて測定した。
【0053】
(f)操業性(糸切れ回数)
得られたポリエステル樹脂を用いて、紡糸装置で24時間連続で溶融紡糸した際の、1錘当たりの糸切れの回数を数え、下記のように評価した。
○:糸切れが1回以下
×:糸切れが2回以上発生した
【0054】
(g)繊維の撥水性
得られた筒編地を用いて、JIS L 1092に記載のスプレー法に従って評価した。4級以上を合格とした。
【0055】
(h)撥水耐久性(洗濯耐久性)
得られた筒編地を用い、JIS L 0217に記載の103法に従って、洗濯を10回施した後(HL10)、JIS L 1092に記載のスプレー法に従って、撥水性を評価した。4級以上を合格とした。
【0056】
実施例1
エステル化反応器に、テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)のスラリー(TPA/EGモル比=1/1.6)を供給し、温度250℃、圧力50hPaの条件で反応させ、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
このエチレンテレフタレートオリゴマー70質量部に、下記の化学式(3)で示されるカルビノール変性シリコーン(信越化学工業社製シリコーン、商品名「KF-6000」、R2;CH2CH2CH2-O-CH2CH2、分子量=950)を30質量部、スズ系エステル化触媒としてのジメチルスズオキサイドを全酸成分1モルに対して5×10-5モル添加し、反応温度260℃で2時間エステル化反応を行った。
【0057】
【0058】
そして、得られたエステル化反応物をエステル化反応器から重縮合反応缶へ移送し、得られたエステル化反応物に対して、チタン系重縮合触媒としてのテトラブチルチタネートを全酸成分1モルに対して5×10-5モル添加し、反応温度260℃にて、圧力を徐々に減じて75分後に1.0hPa以下にした。この条件下で攪拌しながら重縮合反応(溶融重合反応)を5時間行い、極限粘度0.68のポリエステル樹脂を得た。
【0059】
[繊維および筒編地の製造]
得られたポリエステル樹脂のみを単独で押出機に供給し、引き続いて紡糸装置に供給し紡糸口金(孔径0.20mm、紡糸孔36個)より溶融紡糸を行った。紡出後、空気流により冷却し、オイリング装置を通過させて0.5質量%の付着量となるように油剤を付与した。次いで集束ガイドで集束し、交絡を付与した後、紡糸速度1400m/minのローラで引き取り、捲取機にて巻き取った。得られた繊維(半未延伸糸)は220dtex/36fであり、毛羽、単糸切れによる欠点はなかった。これを通常の延伸装置を用い、725m/minの速度で倍率2.77倍、温度160℃で延伸し、80dtex/36fのポリエステル繊維を得た。
次に、このポリエステル繊維を用い、英光産業社製の筒編機(NDP-01)を用いて約40cmの筒編地を作成した。
【0060】
実施例2~7、比較例1~10
触媒の添加量、エステル化反応温度、重縮合反応温度、またはシリコーンの含有量を変えた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂を得た。
[繊維および筒編地の製造]
実施例2~7、比較例1~10で得られたポリエステル樹脂をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にして、80dtex/36fのポリエステル繊維および筒編地を得た。
【0061】
実施例8
シリコーンの種類を、式(3)に示すカルビノール変性シリコーン(信越化学工業社製シリコーン、商品名「KF-6001」、分子量=1840)に変えた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂を得た。
[繊維および筒編地の製造]
得られたポリエステル樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして、80dtex/36fのポリエステル繊維および筒編地を得た。
【0062】
実施例9
シリコーンの種類を、式(4)に示すカルボキシル変性シリコーン(信越化学工業社製シリコーン、商品名「X-22-162C」、R3;CH2CH2、分子量=2280)に変えた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂を得た。
[繊維および筒編地の製造]
得られたポリエステル樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして、80dtex/36fのポリエステル繊維および筒編地を得た。
【0063】
【0064】
実施例10
シリコーンの種類を式(5)に示すポリエーテル変性シリコーン(信越化学工業社製シリコーン、商品名「X-22-4952」、R4;CH2CH2CH2-O、分子量=2240)に変えた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂を得た。
[繊維および筒編地の製造]
得られたポリエステル樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして、80dtex/36fのポリエステル繊維および筒編地を得た。
【0065】
【0066】
実施例11
重縮合反応の反応時間を4時間に変えた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂を得た。
[繊維および筒編地の製造]
得られたポリエステル樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして、80dtex/36fのポリエステル繊維および筒編地を得た。
【0067】
実施例12
[繊維および筒編地の製造]
実施例1で得られたポリエステル樹脂を鞘部とし、極限粘度0.64の二酸化チタンを0.35質量%含有したポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を芯部として押出機に供給し、引き続いて紡糸装置に供給し紡糸口金(孔径0.35mm、紡糸孔48個)より芯/鞘質量比が85/15の同心円型芯鞘複合繊維を溶融紡糸した。紡出後、空気流により冷却し、オイリング装置を通過させて0.5質量%の付着量となるように油剤を付与した。次いで集束ガイドで集束し、交絡を付与した後、紡糸速度3000m/minのローラで引き取り、捲取機にて巻き取った。得られた繊維(半未延伸糸)は125dtex/48fであり、毛羽、単糸切れによる欠点はなかった。これを通常の延伸装置を用い、725m/minの速度で倍率1.53倍、温度160℃で延伸し、80dtex/48fの芯鞘複合ポリエステル繊維を得た。
次に、この芯鞘複合ポリエステル繊維を用い、英光産業社製の筒編機(NDP-01)を用いて約40cmの筒編地を作成した。
【0068】
実施例13
[繊維および筒編地の製造]
実施例2で得られたポリエステル樹脂を鞘部として用いた以外は実施例12と同様にして、80dtex/48fの芯鞘複合ポリエステル繊維および筒編地を得た。
【0069】
実施例14
[繊維および筒編地の製造]
実施例3で得られたポリエステル樹脂を鞘部として用いた以外は実施例12と同様にして、80dtex/48fの芯鞘複合ポリエステル繊維および筒編地を得た。
【0070】
実施例15
[繊維および筒編地の製造]
実施例8で得られたポリエステル樹脂を鞘部として用いた以外は実施例12と同様にして、80dtex/48fの芯鞘複合ポリエステル繊維および筒編地を得た。
【0071】
実施例16
[繊維および筒編地の製造]
実施例9で得られたポリエステル樹脂を鞘部として用いた以外は実施例12と同様にして、80dtex/48fの芯鞘複合ポリエステル繊維および筒編地を得た。
【0072】
実施例17
[繊維および筒編地の製造]
実施例10で得られたポリエステル樹脂を鞘部として用いた以外は実施例12と同様にして、80dtex/48fの芯鞘複合ポリエステル繊維および筒編地を得た。
【0073】
実施例、比較例で得られたポリエステル樹脂、シート、繊維の製造条件、特性値、または評価結果を表1と表2に示す。
【表1】
【表2】
【0074】
また、実施例、比較例で用いたシリコーンの詳細を表3に示す。
【表3】
【0075】
表1および表2から明らかなように、実施例1~11で得られたポリエステル樹脂は、シリコーンがポリエステル樹脂に共重合されており、また、反応率も高いものであった。このため、紡糸操業性に優れており、得られたシートや繊維(単一成分のポリエステル繊維、芯鞘複合ポリエステル繊維)は、撥水性、撥水耐久性に優れたものであった。
【0076】
一方、比較例1で得られたポリエステル樹脂は、共重合されたシリコーンの含有量が少なかったため、撥水性、撥水耐久性に劣るものとなった。
比較例2で得られたポリエステル樹脂は、共重合されたシリコーンの含有量が多すぎたため、紡糸時に糸切れが多発し、紡糸操業性が悪かった。
【0077】
比較例3で得られたポリエステル樹脂は、エステル化触媒であるジメチルスズオキサイドの添加量が少なかったため、反応率が低くなり、未反応のシリコーンが樹脂中に存在して異物となり、紡糸において糸切れが多発し、操業性に劣っていた。また、撥水耐久性に劣るものとなった。
比較例4で得られたポリエステル樹脂は、エステル化触媒であるジメチルスズオキサイドの添加量が多かったため、シリコーンの分解が起こり、分解したシリコーンが樹脂中に存在することで異物となり、紡糸において糸切れが多発し、操業性に劣っていた。また、撥水耐久性に劣るものとなった。
【0078】
比較例5では、エステル化反応温度が240℃と低かったため、反応が十分に進行せず、ポリエステル樹脂を得ることができなかったため、評価に付することができなかった。
比較例6で得られたポリエステル樹脂は、エステル化反応温度が280℃と高かったため、シリコーンの分解が進み、シリコーンの分解物が樹脂中に存在することで異物となり、紡糸において糸切れが多発し、操業性に劣っていた。また、撥水耐久性に劣るものとなった。
【0079】
比較例7で得られたポリエステル樹脂は、重縮合触媒であるテトラブチルチタネートの添加量が少なかったため、シリコーンの反応率が低く、未反応のシリコーンがポリエステル樹脂中に存在することで異物となり、紡糸において糸切れが多発し、操業性に劣っていた。また、撥水耐久性に劣るものとなった。
比較例8で得られたポリエステル樹脂は、重縮合触媒であるテトラブチルチタネートの添加量が多かったため、シリコーンの分解が起こり、分解したシリコーンが樹脂中に存在することで異物となり、紡糸において糸切れが多発し、操業性に劣っていた。また、撥水耐久性に劣るものとなった。
【0080】
比較例9では、重縮合反応温度が240℃と低かったため、反応が十分に進行せず、ポリエステル樹脂を得ることができなかったため、評価に付することができなかった。
【0081】
比較例10では、重縮合反応温度が280℃と高かったため、シリコーンの分解が進み、シリコーンの分解物がポリエステル樹脂中に存在することで異物となり、紡糸において糸切れが多発し、操業性が悪かった。また、撥水耐久性に劣るものとなった。