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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107511
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】フェイスシールド
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220713BHJP
【FI】
A41D13/11 L
A41D13/11 Z
A41D13/11 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198346
(22)【出願日】2021-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2021002264
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521469760
【氏名又は名称】昭和アルミニウム缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100113310
【弁理士】
【氏名又は名称】水戸 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】田代 泰
(72)【発明者】
【氏名】木村 宣彦
(72)【発明者】
【氏名】小関 照雄
(57)【要約】
【課題】装着しながらの飲食が可能なフェイスシールドを提供する。
【解決手段】飛沫の飛散に対応するためのフェイスシールド10は、ユーザに装着される装着部22と、装着部22によりユーザに装着したときにユーザの顔面を覆うシート材30と、シート材30を保持する保持部21と、を備え、装着部22によりユーザに装着したときにフェイスシールド10の前後方向の中心位置又は重心位置が当該装着部22よりも前側にある構造であり、装着部22は、かかる構造に起因する姿勢くずれが生じないようにユーザに装着されるものである。装着部22は、ユーザの首の後ろ側に当たる湾曲部分22aと上体前部に当たる屈曲部分22eとを含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛沫の飛散に対応するためのフェイスシールドであって、
ユーザに装着される装着部と、
前記装着部によりユーザに装着したときにユーザの顔面を覆うシールド材と、
前記シールド材を保持するシールド材保持部と、
を備え、
前記装着部によりユーザに装着したときに前記フェイスシールドの前後方向の中心位置又は重心位置が当該装着部よりも前側にある構造であり、
前記装着部は、前記構造に起因する姿勢くずれが生じないようにユーザに装着されるものである、
ことを特徴とするフェイスシールド。
【請求項2】
前記装着部は、ユーザの上体前部に当たる部分と首の後ろ側に当たる部分とを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のフェイスシールド。
【請求項3】
前記装着部は、ユーザの耳にかけられる部分と、あごの下にかけられる部分と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のフェイスシールド。
【請求項4】
前記シールド材は、ユーザのあごの位置よりも下方に位置する下端を有する、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のフェイスシールド。
【請求項5】
前記シールド材保持部は、折りたたみ可能である、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のフェイスシールド。
【請求項6】
分解可能な複数の部分の組立により構成されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフェイスシールド。
【請求項7】
前記装着部と前記シールド材保持部との間に前記フェイスシールドの左右方向に延びる部分を有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフェイスシールド。
【請求項8】
前記装着部の一部または全部は、ビニールで被覆されている、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のフェイスシールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェイスシールドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マスク本体と、頭の後ろから耳の上にかけるマスク支えとで成り、マスク本体とマスク支えとは、透明のポリプロビレンないし塩化ビニール製の1枚の大きなハート又は楕円形シートとして、一体につながって切り抜かれ、口前展開部のマスク本体がV字ないしU字形に形成され、シートの上半分は、更に横に広いハート又は楕円形にくり抜かれて、細長いC字形をしたマスク支えとなり、マスク本体を一方の手に持ち、口鼻の前にあてがい、他方の手でマスク支えの中央部分を頭の後ろに引き、表側部分が後頭部の後ろに接するようにかけ、マスク支えの左右部分を、メガネのつるのように耳の上にかけて装着するマスクが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、使用者の鼻部から口部を含む顔面部下部側を覆う板状又はシート状のシールド部材と、使用者の項部又は両肩甲上部の少なくとも一方に掛着される掛着部と、掛着部に連設されて前記シールド部材を使用者の顔面部に対して非接触状態でかざすように保持する保持部とを有するシールド保持部材とを備えたことを特徴とする飛沫防止用フェイスシールドが開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、フレキシブル透明ビニールで作られた略長方形のフェイスシールドで、フェイスシールドの下部を上方へ折りたたみが可能で、鼻口部分の開放を可能としたフェイスシールドが開示されている。
【0005】
また、特許文献4には、顔面を覆える大きさの透明なシールドに、透明または半透明な顎当て(フレーム)をつけ、左右それぞれフレームとシールドの二か所に両耳で固定するための紐をつけるフェイスシールドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3228304号公報
【特許文献2】実用新案登録第3228469号公報
【特許文献3】実用新案登録第3227983号公報
【特許文献4】実用新案登録第3228407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、家族や親族、友人知人など気がおけない仲間と飲食する場合には、会話を楽しむことでコミュニケーションを図ることが非常に大切である。その一方で、新型コロナウィルスの感染拡大により、唾液等の飛沫の拡散を防止することで、感染の拡大を防止する対策が急務となっている。
【0008】
しかしながら、従来のフェイスシールドは顔面、特に口部近傍のすぐ前にあるので、飲食をする場合には、取り外さなければならない。また、フェイスシールドを取り外したまま会話をすると、万が一感染者がいた場合にはウィルスを拡散させてしまうおそれがあるものの、飲食するときにフェイスシールドを外し、会話するときには装着するというやり方ではあまりに煩わしく、会話も弾み難く飲食も美味しく感じなくなってしまうおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、装着しながらの飲食が可能なフェイスシールドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明が適用されるフェイスシールドは、飛沫の飛散に対応するためのフェイスシールドであって、ユーザに装着される装着部と、前記装着部によりユーザに装着したときにユーザの顔面を覆うシールド材と、前記シールド材を保持するシールド材保持部と、を備え、前記装着部によりユーザに装着したときに前記フェイスシールドの前後方向の中心位置又は重心位置が当該装着部よりも前側にある構造であり、前記装着部は、前記構造に起因する姿勢くずれが生じないようにユーザに装着されるものである、ことを特徴とするものである。
【0011】
ここで、前記装着部は、ユーザの上体前部に当たる部分と首の後ろ側に当たる部分とを含む、ことを特徴とすることができる。また、前記装着部は、ユーザの耳にかけられる部分と、あごの下にかけられる部分と、を含むことを特徴とすることができる。
また、前記シールド材は、ユーザのあごの位置よりも下方に位置する下端を有する、ことを特徴とすることができる。また、前記シールド材保持部は、折りたたみ可能である、ことを特徴とすることができる。
【0012】
ここで、分解可能な複数の部分の組立により構成されている、ことを特徴とすることができる。また、前記装着部と前記シールド材保持部との間に前記フェイスシールドの左右方向に延びる部分を有する、ことを特徴とすることができる。
さらに、前記装着部の一部または全部は、ビニールで被覆されている、ことを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、装着しながらの飲食が可能なフェイスシールドを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施の形態に係るフェイスシールドを示す斜視図である。
図2】フェイスシールドの本体部を示す図であり、(a)はその平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
図3】シート材の外形形状を示す展開図である。
図4】フェイスシールドをユーザに装着した状態の右側面図である。
図5】第2の実施の形態に係るフェイスシールドを示す斜視図である。
図6】フェイスシールドの本体部を示す斜視図である。
図7】本体部の右側面図である。
図8】フェイスシールドを折りたたんだ状態を示す斜視図である。
図9】フェイスシールドをユーザに装着した状態の右側面図である。
図10】第3の実施の形態に係るフェイスシールドを示す斜視図である。
図11】フェイスシールドの本体部を示す図であり、(a)はその平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
図12】本体部を構成する部材を示す分解斜視図である。
図13】シート材の外形形状を示す図であり、(a)は表面図、(b)は(a)の線b-b断面である。
図14】フェイスシールドをユーザに装着した状態の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
まず、第1の実施の形態に係るフェイスシールド10を説明する。
図1は、第1の実施の形態に係るフェイスシールド10を示す斜視図であり、ユーザに装着されている状態を示す。
図1に示すフェイスシールド10は、例えば食事するユーザに装着されて顔面を覆うものである。ユーザの顔面と顔面に対向するフェイスシールド10の面との間には、比較的大きな隙間があるものの、シート材30が顔面の周囲を広く囲むように配設されていることから、複数人で食事したときであっても飛沫の飛散を防止することができる。
【0016】
前後方向において、ユーザの顔面からフェイスシールド10までの距離は、顔面とフェイスシールド10との間にユーザの腕が入る程度であれば良い。フェイスシールド10が顔面からあまりにも遠いと無駄であり、また、重心が左右のいずれかに偏って不安定となるおそれがある。その一方で、フェイスシールド10が顔面に近いと、ユーザの腕が自由に動かせなくなるおそれがある。このため、前後方向におけるユーザの顔面とフェイスシールド10との距離は、10cm~30cmとする。好ましくは、12cm~25cmで、より好ましい範囲は、13cm~20cmであり、例えば15cmとしてもよい。成人の後頭から鼻先端までの長さは、約20cmであることから、より好ましい範囲の上限は、成人の頭一つ分の長さである。
【0017】
かかるフェイスシールド10は、本体部20と、本体部20に保持されるシート材30と、本体部20が挿入されるチューブ状部材41と、を備える。
本体部20は、針金等の金属製の棒状部材を曲げて形成された枠である。シート材30は、透明なシートであり、例えば接着材や面ファスナー等の周知慣用の手段で保持される。シート材30は、シールド材の一例である。
チューブ状部材41は、柔らかい樹脂製であり、本体部20の外径とほぼ同じ寸法の内径を持つ。また、本体部20を構成する棒状部材の両端がチューブ状部材41以外の場所になるようにし、別部材で両端同士を接続する構成例を採用してもよい。その場合には、チューブ状部材41の代わりに、テープを巻き付けてもよい。
【0018】
[本体部20]
図2は、フェイスシールド10の本体部20を示す図であり、(a)はその平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
図2(a)又は(c)に示すように、本体部20は、本体部20の前側部分をなす保持部21と、保持部21の後ろ側部分をなす装着部22と、を含んで構成されている。本体部20の保持部21はシールド材保持部の一例であり、装着部22は装着部の一例である。
本体部20は、左右略対称に形成されている。本体部20は、両端がチューブ状部材41(図1参照)に挿入されることで無端状になっており、ユーザの装着感を向上させている。
【0019】
本体部20を形成する棒状部材は、太さが細すぎると歪みや曲がりが出る一方で、太すぎると重くなる。できるだけ細くてある程度の剛性があるものが好ましい。また、その形状は、肩で支えて、食事の際に腕を上下させても動かないような形状が良い。
【0020】
[本体部20の保持部21]
保持部21は、平面視で略コ字状に形成され、シート材30を保持する部分である。より詳細には、保持部21は、三方向に延びる部分を有する。すなわち、保持部21は、左右方向に延びる前側部分21aと、前側部分21aの右端から後ろ側に延びる右側部分21bと、前側部分21aの左端から後ろ側に延びる左側部分21cと、を有する。
【0021】
図2(a)に示すように、右側部分21bと左側部分21cとは、後ろ側に行くに従ってその間隔が狭くなるように形成されている。なお、右側部分21bと左側部分21cは、互いに平行に形成されていてもよく、また、後ろ側に行くに従ってその間隔が広くなるように形成されていてもよい。
図2(b)に示すように、前側部分21aの中央部分には、下側に段付けされた段付け部21dが形成されている。かかる段付け部21dにより、本体部20全体の強度が上がる。
【0022】
[本体部20の装着部22]
装着部22は、曲線状に形成され、ユーザに装着される部分である。より詳細には、図2(b)に示すように、左右方向に湾曲形状に形成された湾曲部分22aと、湾曲部分22aの右側にて湾曲部分22aと保持部21の右側部分21bとを互いに接続する右側接続部分22bと、湾曲部分22aの左側にて湾曲部分22aと保持部21の左側部分21cとを互いに接続する左側接続部分22cと、を有する。
【0023】
右側接続部分22b及び左側接続部分22cの各々は、図2(b)、(c)に示すように、湾曲部分22aから下方に直線状に延びる直線部分22dと、本体部20の下端に位置し、180度近くまで折り曲げられた屈曲部分22eと、直線状に伸びて保持部21と接続する直線部分22fと、を有する。
なお、装着部22の直線部分22dには、ユーザと接触するときの当たりを緩和するための樹脂製のチューブ状部材42が設けられている(図1参照)。
【0024】
[シート材30]
図3は、シート材30の外形形状を示す展開図である。
シート材30は、上述の本体部20の三方向に延びる部分にて保持されるが(図1参照)、展開すると、図3に示すように、長方形である。シート材30の長辺部分31が本体部20に取り付けられる。例えば、図3に示す斜線部分である長辺部分31の上端領域31aが折り返され、その部分を本体部20に掛けるようにすると、上端領域31aの幅を調節することで、長辺部分31の下端31bの本体部20に対する相対位置を変えることができる。
短辺部分32は、シート材30が本体部20に取り付けられ本体部20から垂れ下がると、上下方向に延びる部分である。
シート材30は、必要に応じて本体部20から外すことができる。このため、本体部20のみ、及びシート材30のみで重ねて保管することができる。また、シート材30を新しいものに取り替える場合に容易に行うことができる。
【0025】
ここで、シート材30の厚さは、薄すぎると装着の際の取扱いがしにくく、厚すぎると曲げ部の加工がしにくい。できるだけ薄くて、取扱いのしやすい厚さが良く、例えば40μmを採用することができる。
また、シート材30の透明度は、厚さにも関係するが、前面が見える程度の透明度が必要である。少なくとも、テーブルの反対側に着席している者の顔が見えなければならない。
さらに、下部開口部は、食事の際にユーザの腕と接触することが考えられるので、容易に持ち上げられる程度の柔らかさが必要となる。
【0026】
またさらに、シート材30よりユーザを囲む面数は、シート材30と顔面との間に隙間があるので、飛沫が拡散しないように前面と両側面の3面が覆われていることが重要である。
さらにまた、シート材30の縦方向の長さは、好ましくは、頭頂部から首の下程度までである。短ければ飛沫が拡散する可能性がある一方で、長すぎると食事の際に腕が接触するので、邪魔となる。本実施形態では、頭頂部から少なくとも肩の辺りまでの長さとなっている。
さらに、シート材30の側面は、少なくとも口部から先にあれば良い。前すぎると横を向いたときに飛沫が漏れ出すおそれがある一方で、後ろすぎると無駄となる。本実施形態では、耳の前部付近から前の部分が覆われている。
【0027】
[本体部20の中心位置及び重心位置]
次に、本体部20の中心位置及び重心位置について図2(c)を用いて説明する。
図2(c)に示すように、本体部20の前後方向における中心位置は、一点鎖線で示す中心線23であり、本体部20の装着部22ではなく、保持部21に位置する。
また、本体部20の前後方向における重心位置は、二点鎖線で示す重心線24であり、中心線23よりも前後方向の前側に位置する。
本体部20の中心線23及び重心線24はいずれも、装着部22よりも前後方向の前側にある。
【0028】
[装着状態]
図4は、フェイスシールド10をユーザに装着した状態の右側面図である。
図4に示すように、フェイスシールド10は、装着部22がユーザの前側と後ろ側とに当たる。すなわち、装着部22の湾曲部分22aがユーザの首の後ろ側に当たると共に、装着部22の屈曲部分22eが上体前部に当たることで、フェイスシールド10がユーザに装着される。かかる装着状態は、フェイスシールド10を肩にのせて装着した状態であるということもできる。
【0029】
ここで、ユーザにフェイスシールド10を装着したときの本体部20の前後方向の中心位置(中心線23の位置)は、装着部22の位置よりも前後方向の前側であり、また、ユーザの顔面よりも前後方向の前側である。
シート材30の下端は、ユーザのあごの位置よりも下方に位置する。
【0030】
また、フェイスシールド10を構成する本体部20及びシート材30において、シート材30は上述のとおり、透明なシートであり、金属製の本体部20に比べて軽量である。そのため、本体部20の重心位置は、フェイスシールド10の重心位置とほぼ変わらない。そのため、ユーザにフェイスシールド10を装着したときの前後方向の重心位置は、装着部22の位置よりも前後方向の前側であり、また、ユーザの顔面よりも前後方向の前側に位置する。
【0031】
このようなユーザと中心位置ないし重心位置との関係により、フェイスシールド10は、ユーザに装着した状態では、本体部20がユーザから離れる方向ないし下方に回転しようとする。しかしながら、本実施の形態に係るフェイスシールド10では、首の後ろ側に当たる他に上体前部にも当たる装着部22を備えることから、フェイスシールド10の姿勢くずれを防止することができ、ユーザはフェイスシールド10を安定的に装着できる。
【0032】
かかる観点により、第1の実施の形態に係るフェイスシールド10は、飛沫の飛散に対応するためのフェイスシールド10であって、ユーザに装着される装着部22と、装着部22によりユーザに装着したときにユーザの顔面を覆うシート材30と、シート材30を保持する保持部21と、を備え、装着部22によりユーザに装着したときにフェイスシールド10の前後方向の中心位置又は重心位置が当該装着部22よりも前側にある構造であり、装着部22は、かかる構造に起因する姿勢くずれが生じないようにユーザに装着されるものである、ことを特徴とするものである。
この場合、装着部22は、ユーザの上体前部に当たる屈曲部分22eと首の後ろ側に当たる湾曲部分22aとを含む。
【0033】
また、本実施の形態に係るフェイスシールド10は、頭部には装着されないことから、顔を上下左右に動かしたときに、フェイスシールド10の位置は変わらない。このため、フェイスシールド10の可動範囲を大きく確保しておく必要がなくなる。
【0034】
[変形例]
なお、第1の実施の形態では、シート材30は本体部20の上面を覆うものではないが、シート材30で本体部20の上面を覆うようにしてもよい。
また、第1の実施の形態では、本体部20は一体的に形成されているが、これに限られず、本体部20を折りたたむことが可能な構造を採用してもよい。具体的には、保持部21と装着部22とを接続する接続部分に回転可能なヒンジを設ける。
【0035】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態に係るフェイスシールド50を説明する。
図5は、第2の実施の形態に係るフェイスシールド50を示す斜視図であり、ユーザに装着されている状態を示す。
図5に示すフェイスシールド50は、第1の実施の形態に係るフェイスシールド10(図1参照)と同じく、ユーザの顔面と顔面に対向するフェイスシールド50の面との間に隙間がある。
【0036】
フェイスシールド50は、本体部60と、本体部60に保持されるシート材30と、を備える。
本体部60は、樹脂製の枠を含んで構成されている。シート材30は、上述した第1の実施の形態と同じ構成を用いることができる。
【0037】
[本体部60]
図6は、フェイスシールド50の本体部60を示す斜視図であり、図7は、本体部60の右側面図である。
図6又は図7に示すように、本体部60は、本体部60の前側部分をなす保持部61と、保持部61の後ろ側部分をなす装着部62と、を含んで構成されている。本体部60の保持部61はシールド材保持部の一例であり、装着部62は装着部の一例である。
本体部60は、左右略対称に形成されている。
本体部60は、前後方向の後ろ側が自由端であり、ユーザの頭部の大きさに応じて対応することができる。
【0038】
[本体部60の保持部61]
保持部61は、図6に示すように、三方向に延びる略コ字状に形成され、シート材30を保持する。具体的には、保持部61は、左右方向に延びる前側部分61aと、前側部分61aの右端から後ろ側に延びる右側部分61bと、前側部分61aの左端から後ろ側に延びる左側部分61cと、を有する。
【0039】
[本体部60の装着部62]
図6又は図7に示すように、装着部62は、保持部61の左右端のそれぞれと接続する接続部分62aと、接続部分62aと回転可能に連結されている回転部分62bと、接続部分62aと回転部分62bとを連結するためのネジ部材等の連結部材62cと、回転部分62bの各下端同士をつなぐ紐部材62dと、を有する。
接続部分62a及び回転部分62bは、樹脂製であり、連結部材62cは金属製であり、紐部材62dは、あまり伸縮しないポリエチレン製である。
連結部材62cにより、接続部分62aと回転部分62bとの相対位置関係を変更することができる。
【0040】
紐部材62dには、紐に沿って移動可能であると共に任意の位置で止めることができる留め具ないしひも止め具62eが取り付けられている。2つの紐部材62dにひも止め具62eを通した状態で、紐部材62dの先端同士を互いに固着してある。ひも止め具62eは、バネの付勢力により、紐部材62dが通る通り穴が狭くなる構成であり、バネの付勢力に抗して通り穴を広げると、ひも止め具62eを紐部材62dに対して移動させることができる。
【0041】
[本体部60の中心位置及び重心位置]
次に、本体部60の中心位置及び重心位置について図7を用いて説明する。
図7に示すように、本体部60の前後方向における中心位置は、一点鎖線で示す中心線63であり、保持部61に位置し、より詳細には、装着部62に近い保持部61の端部付近に位置する。
また、本体部60の前後方向における重心位置は、二点鎖線で示す重心線64であり、中心線63よりも前後方向の前側に位置する。
本体部60の中心線63及び重心線64はいずれも、装着部62よりも前後方向の前側にある。
【0042】
[折りたたみ状態]
図8は、フェイスシールド50を折りたたんだ状態を示す斜視図である。
フェイスシールド50は、耳掛け部を構成する接続部分62aと回転部分62bが連結部材62cにより相対回転可能に連結されていることから、折りたたむことが可能である。図8に示すように、連結部材62cにより互いに連結されている接続部分62a及び回転部分62bを折りたたむことで、立体的な状態から平面的な状態に移行できる。
このようなコンパクト化により、製品として搬送や保管を行う場面では、物流スペースの効率を高めることができ、また、ユーザが携帯する場面では、持ち運びし易くなる。
【0043】
[装着状態]
図9は、フェイスシールド50をユーザに装着した状態の右側面図である。
図9に示すように、フェイスシールド50は、装着部62をユーザの耳に掛けて装着される。具体的には、装着部62の接続部分62aと回転部分62bとにより形成された形状を利用してユーザの耳に掛けられる。
また、装着部62の紐部材62dは、ユーザのあごと首との間に位置し、あごの下に掛けられる。すなわち、紐部材62dをあご紐として用いている。このように、耳掛けとあご紐により、フェイスシールド50がユーザに装着される。
このような装着は、ユーザがフェイスシールド50を両手で持って顔の前に用意し、紐部材62dが首の前に来るように顔の前から本体部60を耳に掛ける。
【0044】
ここで、ユーザにフェイスシールド50を装着したときの本体部60の前後方向の中心位置(中心線63の位置)は、装着部62よりも前後方向の前側である。フェイスシールド50の中心位置も同じく、装着部62よりも前後方向の前側である。
第2の実施の形態の場合にも、シート材30の下端は、ユーザのあごの位置よりも下方に位置する。
【0045】
また、本体部60の重心位置(重心線64の位置)は、装着部62よりも前後方向の前側であり、本体部60よりもはるかに軽量のシート材30をも含むフェイスシールド50の場合の重心位置も同じく、装着部62よりも前後方向の前側である。
このため、フェイスシールド50は、本体部60がユーザから離れる方向ないし下方に回転しようとする。しかしながら、本実施の形態に係るフェイスシールド50は、耳掛けとあご紐の作用を有する装着部62により、フェイスシールド50の姿勢くずれを防止することができ、ユーザはフェイスシールド50を安定的に装着できる。
また、紐部材62dの長さをひも止め具62eで調節することで、本体部60の角度を調整することができる。
【0046】
かかる観点により、第2の実施の形態に係るフェイスシールド50は、飛沫の飛散に対応するためのフェイスシールド50であって、ユーザに装着される装着部62と、装着部62によりユーザに装着したときにユーザの顔面を覆うシート材30と、シート材30を保持する保持部61と、を備え、装着部62によりユーザに装着したときにフェイスシールド50の前後方向の中心位置又は重心位置が当該装着部62よりも前側にある構造であり、装着部62は、かかる構造に起因する姿勢くずれが生じないようにユーザに装着されるものである、ことを特徴とするものである。
この場合、装着部62は、ユーザの耳にかけられる接続部分62a及び回転部分62bと、あごの下にかけられる紐部材62dと、を含む。
【0047】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態に係るフェイスシールド70を説明する。
図10は、第3の実施の形態に係るフェイスシールド70を示す斜視図であり、ユーザに装着されている状態を示す。
図10に示すフェイスシールド70は、第1の実施の形態に係るフェイスシールド10(図1参照)と同じく、ユーザの顔面と顔面に対向するフェイスシールド70の面との間に隙間がある。
【0048】
フェイスシールド70は、本体部80と、本体部80に保持されるシート材90と、を備える。
本体部80は、棒状部材で形成された枠であり、複数の部材で構成されている。シート材90は、透明なシートであり、シールド材の一例である。
【0049】
[本体部80]
図11は、フェイスシールド70の本体部80を示す図であり、(a)はその平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
図11(a)又は(c)に示すように、本体部80は、左右略対称に形成されている。具体的には、本体部80は、本体部80の前側部分をなす保持部81と、保持部81の後ろ側部分をなす装着部82と、を含んで構成されている。本体部80の保持部81はシールド材保持部の一例であり、装着部82は装着部の一例である。
【0050】
フェイスシールド70の本体部80は、第1の実施の形態に係るフェイスシールド10の本体部20(図2参照)と基本的な形状が同じであるものの、複数の部材を組み立てて構成されている点で、一体で形成されている本体部20と異なる。
本体部80の保持部81は保持部21(図2参照)に対応し、装着部82は装着部22(同図参照)に対応する。以下、具体的に説明する。
【0051】
[本体部80の保持部81]
保持部81は、左右方向に延びる前側部分81aと、前側部分81aの右端から後ろ側に延びる右側部分81bと、前側部分81aの左端から後ろ側に延びる左側部分81cと、を有する。
【0052】
[本体部80の装着部82]
装着部82は、左右方向に湾曲形状に形成された湾曲部分82aと、湾曲部分82aの右側にて湾曲部分82aと保持部81の右側部分81bとを互いに接続するための右側接続部分82bと、湾曲部分82aの左側にて湾曲部分82aと保持部81の左側部分81cとを互いに接続するための左側接続部分82cと、を有する。
また、装着部82は、図11(c)に示すように、湾曲部分82aから下方に直線状に延びる直線部分82dと、本体部80の下端に位置し、180度近くまで折り曲げられた屈曲部分82eと、を有する。さらに、装着部82は、同図(b)に示すように、屈曲部分82eの端部から左右方向に直線状に延びて右側接続部分82b又は左側接続部分82cに接続する直線部分82fと、を有する。
【0053】
このように、湾曲部分82aと右側接続部分82bとの間に、屈曲部分82e及び直線部分82fが位置する。上下方向における屈曲部分82eに対する直線部分82fの位置にバリエーションを持たせたり、直線部分82fの左右方向の長さにバリエーションを持たせたりすることで、体形が異なるユーザに合うように種々のサイズのフェイスシールド70を設計することが可能になる。また、直線部分82fにより、ユーザの前側と後ろ側に当たる装着部82の左右方向の寸法を抑えつつ、保持部81の左右方向の寸法が大きくなる形状を容易に形成することができる。
なお、第3の実施の形態では、直線部分82fは直線状に形成されているがこれに限られず、左右方向の延びる形状であればよい。
直線部分82fは、左右方向に延びる部分の一例である。
【0054】
[本体部80を構成する部材]
図12は、本体部80を構成する部材を示す分解斜視図である。
図12に示すように、第3の実施の形態に係る本体部80は、本体部80の上側に位置する保持部81(以下、天棒80Aという)と、下側に位置する湾曲部分82a、直線部分82d、82f及び屈曲部分82eを含む装着部82の一部(以下、肩掛け部80Bという)と、装着部82の残部である右側接続部分82b(以下、縦棒80Cという)及び左側接続部分82c(以下、縦棒80Dという)と、を分解可能に互いに組み立てることで構成されている。
天棒80A、肩掛け部80B、縦棒80C及び縦棒80Dは、分解可能な複数の部分の一例である。
【0055】
天棒80A及び肩掛け部80Bは、金属製の棒状部材を曲げて形成された部材である。ここにいう棒状部材は、ビニール(vinyl)例えばポリ塩化ビニル(PVC、polyvinyl chloride)等で鉄芯が被覆された針金で入手容易な市販品であり、各端部Eでは被覆が除去されて鉄芯が露出している。端部Eでの被覆除去の加工は行い易い。
一方、縦棒80C、80Dは、天棒80A及び肩掛け部80Bの鉄芯に対応する穴が軸方向に貫通するように形成された樹脂部材である。
このように、天棒80A及び肩掛け部80Bの各端部Eを、縦棒80C、80Dの穴に差し込む継手部としている。
組み立て状態では、天棒80A及び肩掛け部80Bの鉄芯が縦棒80C、80Dに隠れることから、仮に鉄芯が汚れても目立たず、また、掃除が簡便である。
【0056】
ここで、縦棒80C、80Dを樹脂部材以外の部材例えばビニール被覆の針金等で構成してもよいが(装着部の全部の一例)、縦棒80C、80Dとして樹脂部材を採用している(装着部の一部の一例)。その理由は次の技術的観点による。
第3の実施の形態に係るフェイスシールド70では、3つの部材に分けており、中間に位置する縦棒80C、80Dを継手の太い側(穴に差し込まれる側)とするのが好ましいこと、および、天棒80A及び肩掛け部80Bは曲げ加工が施されるので、ここを太い側にすると、加工がしにくくなることによる。
また、縦棒80C、80Dを継手の太い側とすることから、縦棒80C、80Dの外径が太くなり、軽量化をしないと本体部80の重さが重くなってしまうことによる。
さらに、縦棒80C、80Dを穴加工する場合、肉厚が薄くなり強度が必要となるが、天棒80A及びシート材90(図10参照)の重さに耐え、且つ、継手の穴加工後の強度が保てる材質として、軽量化の観点で樹脂部材とした。
【0057】
[シート材90]
図13は、シート材90の外形形状を示す図であり、(a)は表面図、(b)は(a)の線b-b断面である。
図13(a)に示すように、シート材90は、長辺部分91と短辺部分92を持つ長方形である。長辺部分91の上端領域91aは、同図(b)に示すように、所定幅で表面側から裏面側に折り返され、かつ、上端領域91aが袋状になるように、左右方向の各端部91cが溶着されている。
なお、長辺部分91の下端91bには、折り返し部分がない。
【0058】
[本体部80の中心位置及び重心位置]
本体部80の前後方向における中心位置及び重心位置は、図11(c)に示すように、装着部82よりも前後方向の前側にある。すなわち、一点鎖線で示す中心線83は、本体部80の装着部82ではなく、保持部81に位置する。二点鎖線で示す重心線84は、中心線83よりも前後方向の前側に位置する。第1の実施の形態の場合(図2(c)参照)と同じである。
【0059】
[装着状態]
図14は、フェイスシールド70をユーザに装着した状態の右側面図である。
図14に示すように、フェイスシールド70は、シート材90の端部91cを溶着することで袋状になった上端領域91aを本体部80の保持部81に装着することで、使用できる状態になる。
フェイスシールド70は、装着部82の湾曲部分82aがユーザの首の後ろ側に当たると共に、装着部82の屈曲部分82eが上体前部に当たることで、フェイスシールド70がユーザに装着される。第1の実施の形態の場合と同様である。
シート材90の下端91bは、ユーザのあごの位置よりも下方に位置する。
【0060】
このように、第3の実施の形態では、フェイスシールド70の本体部80を複数の部分の組立により構成していることから、第1の実施の形態の場合に比べて、保管の際に大きなスペースが必要にならない。また、搬送時の省スペース化を図ることができる。
【0061】
以上説明した第1の実施の形態、第2の実施の形態及び第3の実施の形態によれば、フェイスシールド10,50,70を装着したままでも、飲食と会話を同時に楽しむことができる。また、第1の実施の形態及び第3の実施の形態には、顔を上下左右に動かした場合(ビール等をジョッキで飲んだとしても)当該フェイスシールド10,70の位置は変わらない。
【符号の説明】
【0062】
10,50,70…フェイスシールド、20,60,80…本体部、21,61,81…保持部、22,62,82…装着部、22a,82a…湾曲部分、22e,82e…屈曲部分、30,90…シート材、62a…接続部分、62b…回転部分、62c…連結部材、62d…紐部材、80A…天棒、80B…肩掛け部、80C、80D…縦棒、82f…直線部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14