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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010752
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】空調服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/002 20060101AFI20220107BHJP
   A41D 13/005 20060101ALI20220107BHJP
   A41D 27/28 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D13/005 103
A41D27/28 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020111467
(22)【出願日】2020-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】593161375
【氏名又は名称】山真製鋸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛
【テーマコード(参考)】
3B011
3B035
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB01
3B011AC02
3B011AC18
3B011AC21
3B035AA03
3B035AB03
3B035AB07
3B035AB09
3B035AB14
3B035AB18
3B035AC15
3B035AC19
3B035AD08
(57)【要約】
【課題】洗濯が繰り返されると布地が伸縮してファンの嵌込み穴が変形してしまう。穴が大きくなるとファンを嵌込もうとしても隙間ができてしまい、空気漏れが発生し、更に大きくなると脱落する恐れがある。一方、穴が小さくなるとファンを嵌込めなくなる。
【解決手段】布地5を切断して形成した嵌込み穴9の穴縁部9aに沿って、布地5の一方の面に環状の樹脂リング11を縫着により固定する。樹脂リング11は適当な剛性と耐熱性を有するエポキシ樹脂製である。樹脂リング11は適度な剛性を有しているので、洗濯の繰り返しによる布地5の伸縮に追従せずに形状を維持する。寧ろ、樹脂リング11に固定された布地5の近傍の伸縮を抑制する。その一方で、曲げられても割れたり亀裂が発生したりすることは阻止され、弾性的に復元されて元の扁平な状態に戻るよう、適度な弾性も残されている。従って、洗濯槽の中で撹拌されても樹脂リング11が変形することはない。従って、嵌込み穴9のサイズは繰り返し洗濯されてもジャストサイズに保持される。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の嵌込み穴が布地に設けられた衣服本体と、前記嵌込み穴に嵌込まれて前記衣服本体に装着されるファンで構成される空調服において、
前記嵌込み穴の穴縁部に沿って、前記布地の一方の面に環状の樹脂リングが固定されており、前記樹脂リングの有する剛性により前記穴縁部が保形されることを特徴とする空調服。
【請求項2】
請求項1に記載した空調服において、
布地の切断により現れた布端が嵌込み穴の縁になっていることを特徴とする空調服。
【請求項3】
請求項2に記載した空調服において、
樹脂リングは布地に縫着により固定されていることを特徴とする空調服。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載した空調服において、
樹脂リングはエポキシ樹脂製であることを特徴とする空調服。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載した空調服において、
樹脂リングの環状の幅は3~8mm、厚さは1~4mmに設定されていることを特徴とする空調服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンの回転で空気を吹き付けて身体を冷やす空調機構を備えた衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空調機構を備えた衣服、すなわち空調服は、ファンの回転で空気を取込み、身体と衣服との間に気流を形成することにより、身体の表面から出る汗を気化させて身体から熱を奪うことで冷却する原理に基づいている。
工事現場等で働く作業員は安全性を考慮して厚手の作業服を着なければならず、夏場には大量の汗をかき易い。この場合、身体と衣服との間に熱が籠って熱中症になり易い。このような問題を解消するために空調服が開発され、その実用性の高さが評価されている。
最近では、空調服の快適さが広く知られるようになっており、上記した作業用だけでなく、通常の日常生活で着用するジャケット、ベスト等の上着にも空調機構を備えたものが提案されており、益々普及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3223985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空調服は、嵌込み穴にファンを嵌込んで装着しており、嵌込み穴はファンをぴったりと嵌込むことができるようにジャストサイズに設計されている。更に、特許文献1ではワッペンを穴縁に沿って取付けて補強することが提案されている。
ところで、空調服は汗が浸み込んだり汚れたりした場合にはファンを取外して衣服本体のみを通常の衣服と同様に洗濯機で洗って使用できるようになっているが、洗濯が繰り返されると、次第に布地が伸び縮みして、その結果として嵌込み穴が大きくなったり小さくなったりと変形してしまう。穴が大きくなるとファンを嵌込もうとしても隙間ができてしまい、空気漏れが発生する。更に大きくなると脱落する恐れがある。高所で作業するような場合にはこれが起こるとファンが加速度を付けて落下することになり非常に危険である。一方、穴が小さくなるとファンを嵌込めなくなる。
空調服の使用が当たり前になると、このような耐久性に対する不満も聞こえてくる。
【0005】
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、洗濯が繰り返しなされても嵌込み穴のサイズや形状の保持機能が上手く働いて耐久性が改善された、新規かつ有用な空調服を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために為されたものであり、請求項1の発明は、円形の嵌込み穴が布地に設けられた衣服本体と、前記嵌込み穴に嵌込まれて前記衣服本体に装着されるファンで構成される空調服において、前記嵌込み穴の穴縁部に沿って、前記布地の一方の面に環状の樹脂リングが固定されており、前記樹脂リングの有する剛性により前記穴縁部が保形されることを特徴とする空調服である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載した空調服において、布地の切断により現れた布端が嵌込み穴の縁になっていることを特徴とする空調服である。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載した空調服において、樹脂リングは布地に縫着により固定されていることを特徴とする空調服である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかに記載した空調服において、樹脂リングはエポキシ樹脂製であることを特徴とする空調服である。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかに記載した空調服において、樹脂リングの環状の幅は3~8mm、厚さは1~4mmに設定されていることを特徴とする空調服である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の空調服の衣服本体に設けられたファンの嵌込み穴は、保形機能が上手く働いて繰り返し洗濯されても変形し難くなっている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る空調服の衣服本体の前を開いた状態の正面図である。
図2図1でファンを装着した状態の正面図である。
図3】嵌込み穴を囲む布地と樹脂リングの分解斜視図である。
図4図3の布地への樹脂リングの固定状態を示す斜視図である。
図5図4に装着するファンの斜視図である。
図6図5でファンを装着した状態の一部断面を含む側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態に係る空調服1を図面にしたがって説明する。
図1図2で示すように、衣服本体3の前を開くと、身ごろの内側が見える。身ごろは一枚の合成繊維製の布地5で構成されており、この布地5の内側では横方向の一方の端寄りに、ポケット7が取付けられている。このポケット7はパッチポケット仕様になっており、上縁がポケット口になって開口している。
また、図1に示すように、中心側には、左右方向に間隔をあけて、2つの嵌込み穴9、9が設けられている。この嵌込み穴9は真円形をしており、布地5が切断されて形成されている。布地5の切断で現われた布端5aがそのまま穴縁を構成しており、その穴縁の周囲が被固定領域となる穴縁部9aになっている。布地5は不織布なのでほつれない。
【0014】
図3図5に示すように、嵌込み穴9の穴縁部9aに沿って布地5の内面に環状の樹脂リング11が固定されている。樹脂リング11には、変形させようとする外力に抗して形状を維持する剛性を有することが求められており、曲げ弾性率を指標として適当な素材が選択される。
この実施の形態では、樹脂リング11はエポキシ樹脂で構成されている。なお、エポキシ樹脂は、過酷な使用状況、例えば50℃前後の炎天下でも変形しない耐熱性も有しており、この点からも好ましい素材になっている。一方、ビニールの場合には、寒いときにはカチッとしているが、暑いとフニャフニャになって広がってしまい、ファン15が通り抜けてしまうため、好ましくない。
【0015】
樹脂リング11は平らなシート材が同芯状に大小2つの円周で打ち抜かれて扁平な環状に形成されており、上下面が平面になっている。環状の幅(W)は3~8mm、好ましくは5mm前後、厚さ(D)は1~4mm、好ましくは2mm前後に設定されている。
樹脂リングの穴径(R)はファン15のサイズに対応して約7.5cmに設定されている。
【0016】
樹脂リング11の上下面11a、11bが平面になっているので、下面11bは布地5にぴったりと重ね合わせることができる。
布地5側の嵌込み穴9の穴サイズが、環状の樹脂リング11の穴サイズとほぼ同じに設定されており、樹脂リング11の下面11bを嵌込み穴9の穴縁部9aに同芯状に重ね合わせると、樹脂リング11の穴縁と嵌込み穴9の穴縁とが殆ど揃った状態になる。
【0017】
この状態で、樹脂リング11が布地5側に縫着されており、樹脂リング11は布地5にしっかりと固定されている。すなわち、樹脂リング11は扁平な状態で布地5側と一体になっている。縫着ライン13は樹脂リング11の幅方向中間に環状に連なっている。
布端5aは樹脂リング11の穴内に殆どはみ出さず、樹脂リング11のリング穴で綺麗な円穴ができている。樹脂リング11を芯として使用して布地5で包んだ場合には、綺麗な円穴ができず、ファン15を通し難くなるが、上記したように、布地5で樹脂リング11は包まれていないので、嵌込み穴9も整った円穴になっている。なお、縮んでも僅かであり、縫着ライン13が乱れることはない。
【0018】
樹脂リング11は適度な剛性を有しているので、洗濯の繰り返しによる布地5の伸縮に追従せずに形状を維持する。寧ろ、樹脂リング11に固定された布地5の近傍の伸縮を抑制する。
その一方で、曲げられても割れたり亀裂が発生したりすることは阻止され、弾性的に復元されて元の扁平な状態に戻るよう、適度な弾性も残されている。従って、洗濯槽の中で撹拌されても樹脂リング11が変形することはない。従って、嵌込み穴9のサイズは繰り返し洗濯されてもジャストサイズに保持される。
また、適度な弾性があることで、衣服本体3の一部を構成しても違和感がない。
【0019】
布地5の嵌込み穴9と樹脂リング11のリング穴を利用して軸流式のファン15が嵌込まれて装着される。
図5に示すように、ファン15のガードはプラスチックで形成されており、内側ガード17と外側ガード19に着脱自在に分離されるようになっている。
内側ガード17の本体は膨らんでフード状になっており羽根21とモータ(図示省略)が収容されている。この内側ガード17の開口側には雌ネジ筒17aが連なっており、筒内周面に雌ネジが形成されている。また、開口端に沿って環状のフランジ17bが径方向外方に広がっている。このフランジ17bは薄い平板状になっている。
外側ガード19の本体は扁平状になっており、内側ガード17との連結側には雄ネジ筒19aが連なっている。また、本体には環状のフランジ19bが径方向外方に広がっている。このフランジ19bは薄い平板状になっている。
【0020】
図5図6に示すように、布地5の内側から内側ガード17の雌ネジ筒17aを樹脂リング11のリング穴及び嵌込み穴9を通して外側に突き出し、外側にもってきた外側ガード19の雄ネジ筒19aを挿入させて螺合させる。螺進させると互いに接近していき、内側ガード17のフランジ17bは樹脂リング11に重なり、外側ガード19のフランジ19bは嵌込み穴9の穴縁部9aの布地5に重なって、これ以上の螺進が不可能になる。
【0021】
このようにしてファン15が布地5にぴったりと装着される。
樹脂リング11は耐久性に優れているので、嵌込み穴9及び樹脂リング11の穴は変形せずに繰り返しの洗濯にも耐えて形状を長期間にわたって保つことができる。すなわち、ジャストサイズに保たれる。従って、ファン15を布地5に装着する際には、外側ガード19の雄ネジ筒19aは通り難くもならないし、空気漏れも生じない。況や、ファン15が通り抜けて脱落することはない。
なお、樹脂リング11は内側ガード17のフランジ17bに当接するので摩擦により緩み止めとしての効果も期待できる。
【0022】
図2に示すように、衣服本体3に2つのファン15、15が装着されており、それぞれの内側ガード17、17側には電源ケーブル23、23が着脱自在に接続されている。この電源ケーブル23、23は途中で纏められて1本の電源ケーブル25になって、ポケット7側に寄せられている。この電源ケーブル25の端部は電池ケース27に着脱自在に接続されている。この電池ケース27にはリチウムイオン電池が収容されており、ケース表面には、モータ起動用のONスイッチ、OFFスイッチが設けられている。電池ケース27はポケット7に入れられている。モータ駆動により羽根21が回転すると、外部から取込まれた空気は身体と衣服本体3との間に流通して、袖口や襟口から排気され、身体を冷却する。
【0023】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、衣服はジャケット、ベスト等の上着でもズボンでもよく、それぞれの用途に応じてデザインは変わる。
すなわち、特許請求されている特性や形状を満足すれば、本発明の範囲は限定されず、従来からあるまたは将来案出される素材を任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0024】
1…空調服 3…衣服本体 5…布地 5a…布端
7…ポケット 9…嵌込み穴 9a…穴縁部 11…樹脂リング
11a…上面 11b…下面 13…縫着ライン 15…ファン
17…内側ガード 17a…雌ネジ筒 17b…フランジ 19…外側ガード
19a…雄ネジ筒 19b…フランジ 21…羽根 23…電源ケーブル
25…電源ケーブル 27…電池ケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6