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特開2022-107523風の乱流のアクティブセンシングを用いた風力タービンのための推力制御
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107523
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】風の乱流のアクティブセンシングを用いた風力タービンのための推力制御
(51)【国際特許分類】
   F03D 7/04 20060101AFI20220713BHJP
【FI】
F03D7/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022000809
(22)【出願日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】17/144,377
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513131419
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック レノバブレス エスパーニャ, エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】ピエリーノ・ジャンニ・ボナンニ
(72)【発明者】
【氏名】シュ・フー
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスコ・ぺローネ
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB08
3H178CC02
3H178DD32X
3H178DD52X
3H178EE02
3H178EE13
3H178EE23
(57)【要約】
【課題】風の乱流のアクティブセンシングを用いた風力タービンのための推力制御を提供する。
【解決手段】風力タービンおよび方法は、現場に配置され、ロータブレードを有するロータを有する風力タービンの複数の推力限界を規定するために提供され、推力限界は、動作中に越えるべきではないロータ上の空気力学的推力の値を規定する。本方法は、現場を表す風速分布を提供するステップと、風速の関数として乱流パラメータを表す一定の乱流確率の1つまたは複数の等値線を定義するステップと、を含む。等値線は、風速分布の乱流の分位点レベルに対応し、乱流パラメータは風速変動を示す。乱流パラメータは、アクティブセンシングシステムを用いてロータの上流の風速を連続的に測定し、測定された風速から風速変動を計算することによって決定される。乱流範囲は等値線に対して定義され、推力限界は乱流範囲に対して定義される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現場に配置され、複数のブレード(7)を有するロータ(5)を有する風力タービン(1)のための複数の推力限界を規定するための方法であって、前記推力限界は、動作中に越えるべきではない前記ロータ(5)上の空気力学的推力の値を規定し、前記方法は、
前記現場を表す風速分布を提供するステップと、
風速の関数としての乱流パラメータを表す一定の乱流確率の1つまたは複数の等値線を規定するステップであって、前記等値線は、前記風速分布の乱流の分位点レベルに対応し、前記乱流パラメータは風速変動を示す、ステップであって、
前記乱流パラメータは、アクティブセンシングシステム(60)を用いて前記ロータ(5)の上流の風速を実質的に連続的に測定し、前記測定された風速から前記風速変動を計算することによって決定されるステップと、
前記等値線に対して乱流範囲を規定するステップと、
前記乱流範囲の推力限界を規定するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記アクティブセンシングシステム(60)は、ドップラーライダシステム(62)を使用して、前記風力タービン(1)の風上に向けられた複数の測定ビーム(64)を生成し、到来する風の流れをサンプリングする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定ビーム(64)は、前記ロータ(5)からの距離が増加するにつれて増加するサンプルフィールドを画定するために前記ロータ(5)の軸線(70)に対して異なる角度に向けられた固定測定ビーム(64)であり、前記固定測定ビーム(64)の各々は、風速を前記ロータ(5)からの複数の異なる範囲で測定する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ドップラーライダシステム(62)は、5つの固定測定ビーム(64)を生成し、各固定測定ビーム(64)は、前記ロータ(5)から10個の異なる範囲の風速を検出する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記風力タービン(1)は、ナセル(4)を含み、前記ドップラーライダシステム(62)は、前記ナセル(4)の頂上に取り付けられ、前記固定測定ビーム(64)は、中心軸方向ビーム(68)と、前記中心軸方向ビーム(68)から離れた角度で突出し、円周の周りに等間隔に離間した複数の追加ビーム(72)と、を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
各固定測定ビーム(64)についての前記複数の異なる範囲からの風測定値は、前記到来する風の流れの平均風速および前記風速の標準偏差を計算するために使用され、前記風速の前記標準偏差は前記乱流パラメータに対応する、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記風速測定および前記標準偏差の計算は、少なくとも4Hzのレートで実行され、前記標準偏差の計算は、ローパスフィルタによって平滑化される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ローパスフィルタのフィルタ時定数は、前記到来する風の流れの典型的な風速および前記ロータ(5)からの風速測定値の平均範囲を近似するように調整可能であり、選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記等値線は、風速範囲内の前記風速の一次関数として前記標準偏差を定義する、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記現場の風速分布は、前記風力タービン(1)の現場における風の測定値に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記決定された乱流パラメータおよび前記決定された風速に基づいて前記推力限界のうちの1つを選択するステップと、前記ロータ(5)上の推力が前記選択された推力限界を下回るように前記風力タービン(1)を動作させるステップと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ロータ(5)上の推力が前記所定の推力限界を下回るように前記風力タービン(1)を動作させるステップは、前記ロータ(5)上の前記推力を前記選択された推力限界と比較するステップと、前記推力が前記選択された推力限界を上回る場合には、前記ブレード(7)をピッチして前記ロータ(5)上の前記推力を低減するために、集合ピッチ信号を前記ロータ(5)の前記ブレード(7)に送信するステップと、を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
風力タービン(1)であって、
複数のブレード(7)を有するロータ(5)と、
前記ブレード(7)の長手方向軸線の周りで前記ブレード(7)を回転させるように前記ブレード(7)と共に構成されたピッチシステムと、
前記風力タービン(1)に取り付けられたアクティブセンシングシステム(60)であって、到来する風の流れの風速を検出するために前記風力タービン(1)の風上に測定ビーム(64)を生成するドップラーライダシステム(62)を含む、アクティブセンシングシステム(60)と、
前記ドップラーライダシステム(62)と通信する制御システムと、を含み、前記制御システムは、
前記到来する風の流れの前記風速を実質的に連続的に測定し、前記測定された風速から風速変動に対応する乱流パラメータを計算し、
前記乱流パラメータおよび前記測定された風速に基づいて推力レベルを選択し、前記推力レベルは、異なる乱流範囲に対する複数の推力限界から選択され、前記複数の推力限界は、風速の風速分布の分位点ベースの回帰および前記乱流パラメータによって決定され、
前記ロータ(5)上の空気力学的推力が前記選択された推力レベルを下回るように前記ブレード(7)を集合的にピッチするために前記ピッチシステムに信号を送信する、
ように構成される、風力タービン(1)。
【請求項14】
前記ドップラーライダシステム(62)は、前記風力タービン(1)の風上に複数の固定測定ビーム(64)を生成して前記到来する風の流れをサンプリングするように構成され、前記固定測定ビーム(64)の各々は、前記ロータ(5)の軸線(70)に対して異なる角度で、かつ前記ロータ(5)からの複数の異なる範囲で風速を検出する、請求項13に記載の風力タービン(1)。
【請求項15】
ナセル(4)をさらに含み、前記ドップラーライダシステム(62)は、前記ナセル(4)の頂上に取り付けられ、前記固定測定ビーム(64)は、中心軸方向ビーム(68)と、前記中心軸方向ビーム(68)から離れた角度で突出し、円周の周りに等間隔に離間した複数のビーム(72)と、を含む、請求項14に記載の風力タービン(1)。
【請求項16】
前記制御システムは、各固定測定ビーム(64)についての前記複数の異なる範囲からの前記風測定値を使用して、前記到来する風の流れの平均風速および前記風速の標準偏差を計算するように構成され、前記風速の前記標準偏差は前記乱流パラメータに対応する、請求項15に記載の風力タービン(1)。
【請求項17】
前記風速測定および前記標準偏差の計算は、少なくとも4Hzのレートで前記制御システムによって実行され、前記標準偏差の計算はローパスフィルタによって平滑化される、請求項16に記載の風力タービン(1)。
【請求項18】
前記制御システムは、前記到来する風の流れの典型的な風速および前記ロータ(5)からの風速測定値の平均範囲を近似するように、前記ローパスフィルタの前記フィルタ時定数を設定する、請求項17に記載の風力タービン(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風の乱流がドップラーライダシステムなどのアクティブセンシングシステムで直接測定され、制御プロセスの入力として使用される、風力タービンロータの動的推力制御に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、現代の風力タービンは、送電網に電気を供給するために使用されている。この種の風力タービンは、一般に、タワーと、タワー上に配置されたロータと、を含む。典型的には、ハブおよび複数のブレードを含むロータは、ブレードへの風の影響下で回転するようになっている。前記回転は、通常、ロータシャフトを介して発電機に直接(「直接駆動」)またはギヤボックスを使用して伝達されるトルクを生成する。このようにして、発電機は、送電網に供給することができる電気を生成する。
【0003】
可変速風力タービンは、典型的には、発電機トルクおよびブレードのピッチ角を変動させることによって制御することができる。その結果、空気力学的トルク、ロータ速度および電力が変動する。
【0004】
可変速風力タービンの一般的な従来技術の制御戦略を、図3を参照して説明する。図3では、典型的な可変速風力タービンの動作が、風速の関数としてのピッチ角(β)、発電電力(P)、発電機トルク(M)、およびロータの回転速度(ω)に関して示されている。
【0005】
第1の動作範囲では、カットイン風速から第1の風速(例えば、約5または6m/s)まで、ロータは、ロータを正確に制御することができる程度に十分に高い実質的に一定の速度で回転するように制御されてもよい。カットイン風速は、例えば、約3m/sであってもよい。
【0006】
第1の風速(例えば、約5または6m/s)から第2の風速(例えば、約8.5m/s)までの第2の動作範囲において、目的は、一般に、最大エネルギーを取り込むようにブレードのピッチ角を一定に維持しながら出力を最大にすることである。この目的を達成するために、発電機トルクおよびロータ速度は、出力係数Cpを最大にするように、先端速度比λ(ロータブレードの先端の接線速度を支配的な風速で割ったもの)を一定に保つように変動させることができる。
【0007】
出力を最大化し、Cpをその最大値で一定に保つために、ロータトルクは、以下の式:T=k.ωに従って設定され得、ここで、kは定数であり、ωは発電機の回転速度である。直接駆動風力タービンでは、発電機速度は実質的にロータ速度に等しい。ギヤボックスを備える風力タービンでは、通常、ロータ速度と発電機速度との間に実質的に一定の比が存在する。
【0008】
公称ロータ回転速度に達すると開始し、公称出力に達するまで広がる第3の動作範囲では、ロータ速度を一定に保つことができ、発電機トルクをそのような効果まで変動させることができる。風速に関して、この第3の動作範囲は、実質的に第2の風速から公称風速まで、例えば約8.5m/s~約11m/sに及ぶ。
【0009】
公称風速からカットアウト風速(例えば、約11m/s~25m/s)まで延在することができる第4の動作範囲では、ロータによって供給される空気力学的トルクを実質的に一定に維持するためにブレードを回転(「ピッチ」)させることができる。実際には、ロータ速度を実質的に一定に維持するようにピッチを作動させることができる。カットアウト風速では、風力タービンの動作が中断される。
【0010】
第1、第2、および第3の動作範囲では、すなわち公称風速(準公称動作範囲)を下回る風速では、ブレードは通常、一定のピッチ位置、すなわち「定格ピッチ位置未満」に保たれる。前記デフォルトピッチ位置は、一般に、0°ピッチ角に近くてもよい。しかしながら、「定格未満」条件における正確なピッチ角は、風力タービンの完全な設計に依存する。
【0011】
上述した動作は、図3に示す曲線のようないわゆる出力曲線に変換することができる。そのような出力曲線は、風力タービンの理論的最適動作を反映することができる。しかしながら、公称風速付近の風速の範囲では、図4に示すように、ロータ上の空気力学的推力が高くなり得る。このような高い空気力学的推力は、ブレード根元部に高い曲げ荷重をもたらす。ブレード根元部での高荷重は、タワーでの高荷重につながる可能性がある。風力タービンが高荷重を繰り返し受けると、ブレードなどの風力タービン部品の疲労寿命が低下され得る。
【0012】
これに関して、ロータ上の推力限界を規定することが知られており、これは、動作中に超えることができないロータ上の空気力学的推力の最大レベルとして理解される。したがって、風力タービンの動作は、必要に応じて、推力限界を超える推力を回避するように調整される。したがって、動作は理論的な最適動作から逸脱し、電気エネルギー出力は悪影響を受ける。
【0013】
いくつかの場所では、特に沖合の用途では、そのような推力限界が規定されている場合であっても、ブレードは根元部での高荷重および高度に乱流の風における疲労損傷を時々被ることが分かっている。
【0014】
したがって、ロータの上流の風の乱流を確実かつ正確に測定することができ、そのような測定値を使用して、そのような乱流に対応するためにロータ上の推力限界をより正確に規定することが有益であろう。本発明は、この必要性に対する解決策を提供する。
【発明の概要】
【0015】
本発明の態様および利点は、その一部を以下の説明に記載しており、あるいはその説明から明らかになり、あるいは本発明の実践により学ぶことができる。
【0016】
一態様では、本開示は、現場に配置され、複数のブレードを有するロータを有する風力タービンのための複数の推力限界を規定する方法に関し、推力限界は、動作中に超えるべきでないロータ上の空気力学的推力の値を規定する。本方法は、現場を表す風速分布を提供するステップと、風速の関数としての乱流パラメータを表す一定の乱流確率の1つまたは複数の等値線を規定するステップと、を含み、等値線は、風速分布の乱流の分位点レベルに対応し、乱流パラメータは風速変動を示す。乱流パラメータは、アクティブセンシングシステムを用いてロータの上流の風速を実質的に連続的に測定し、測定された風速から風速変動を計算することによって決定される。乱流範囲は、等値線に対して規定される。推力限界は、各乱流範囲に対して規定される。
【0017】
本方法の一実施形態では、アクティブセンシングシステムは、ドップラーライダシステムを使用して、風力タービンの風上に向けられた複数の固定測定ビームを生成し、到来する風の流れをサンプリングする。例えば、特定の実施形態では、固定測定ビームの各々は、ロータに対して異なる角度で、かつロータから複数の異なる範囲で風速を検出することができる。例えば、一実施形態では、ドップラーライダシステムは、5つの固定測定ビームを生成することができ、各固定測定ビームは、ロータから10個の異なる範囲の風速を検出する。
【0018】
特定の実施形態では、風力タービンはナセルを含み、ドップラーライダシステムはナセルの頂上に取り付けられる。固定測定ビームは、中心軸方向ビームと、中心軸方向ビームから離れた角度で突出し、円周の周りに等間隔に離間した複数の他のビームと、を含むことができる。例えば、4つの固定ビームは、円周上で90度離間されてもよい。別の実施形態では、ビームは空間内に固定される必要はなく、スキャン構成で使用されてもよい。
【0019】
本方法の一実施形態では、各固定測定ビームについての複数の異なる範囲からの風測定値を使用して、到来する風の流れの平均風速およびサンプリングされたフィールド全体の風速の標準偏差を計算し、風速の標準偏差は乱流パラメータに対応する。風速測定および標準偏差の計算は、少なくとも4Hzのレートで実行されてもよく、標準偏差計算は、ローパスフィルタによって平滑化されてもよい。ローパスフィルタのフィルタ時定数は、到来する風の流れの典型的な風速を近似するように調整および選択することができる。
【0020】
一実施形態では、本方法は、風速範囲内の風速の一次関数として標準偏差を定義する等値線を含むことができる。
【0021】
現場の風速分布は、風力タービンの現場における風の測定値に基づいてもよい。
【0022】
本方法はまた、決定された乱流パラメータおよび決定された風速に基づいて推力限界のうちの1つを選択するステップと、ロータ上の推力が選択された推力限界を下回るように風力タービンを動作させるステップと、を含むことができる。例えば、ロータ上の推力を選択された推力限界と比較することができ、推力が選択された推力限界を上回る場合には、本方法は、集合ピッチ信号をロータのブレードに送信してブレードをピッチし、ロータ上の推力を低減するステップを含む。
【0023】
本開示はまた、複数のブレードを有するロータと、ブレードの長手方向軸線の周りでブレードを回転させるようにブレードで構成されたピッチシステムと、を含む風力タービンを含む。風力タービンは、到来する風の流れの風速を検出するために風力タービンの風上に複数の固定測定ビームを生成するドップラーライダシステムなどの、風力タービンに取り付けられたアクティブセンシングシステムを含む。風力タービンは、ドップラーライダシステムと通信し、到来する風の流れの風速を実質的に連続的に測定し、かつ測定された風速の風速変動に対応する乱流パラメータを計算するように構成された制御システムを含む。制御システムはまた、乱流パラメータおよび測定された風速に基づいて推力レベルを選択するように構成され、推力レベルは、異なる乱流範囲に対する複数の推力限界から選択され、複数の推力限界は、風速の風速分布の分位点ベースの回帰および乱流パラメータによって決定される。制御システムは、ロータ上の空気力学的推力が、選択された推力レベルを下回るようにブレードを集合的にピッチするためにピッチシステムに信号を送信する。
【0024】
特定の実施形態では、ドップラーライダシステムは、到来する風の流れをサンプリングするために風力タービンの風上に複数の固定測定ビームを生成するように構成され、固定測定ビームの各々は、ロータの軸線に対して異なる角度で、かつロータからの複数の異なる範囲で風速を測定する。
【0025】
一実施形態では、ドップラーライダシステムは、風力タービンのナセルの頂上に取り付けられ、固定測定ビームは、中心軸方向ビームと、中心軸方向ビームから離れた角度で突出し、円周の周りに等間隔に離間した複数のビームと、を含む。
【0026】
制御システムは、各固定測定ビームについての複数の異なる範囲からの風測定値を使用して、到来する風の流れの平均風速および風速の標準偏差を計算するように構成されてもよく、風速の標準偏差は乱流パラメータに対応する。
【0027】
制御システムは、少なくとも4Hzのレートで風速測定値および標準偏差の計算を実行し、標準偏差計算をローパスフィルタで平滑化することができる。制御システムは、例えば10秒で、到来する風の流れの典型的な風速およびロータからの風速測定値の平均範囲を考慮するようにローパスフィルタのフィルタ時定数を設定することができ、これにより10m/sの典型的な風速および100メートルの移動距離を反映することができる。
【0028】
本発明は、以下の説明および添付の特許請求の範囲を参照してさらに支持および説明される。添付の図面は、本明細書に組み込まれて、本明細書の一部分を構成し、本発明の実施形態を例示し、説明と共に本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0029】
本発明の完全かつ可能な開示は、その最良の形態を含むと共に、当業者に向けられているが、その開示は本明細書に記載されており、本明細書は以下の添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】一例による風力タービンの斜視図である。
図2】一例による風力タービンのナセルの簡略化された内部図である。
図3】従来技術による風力タービンの出力曲線を示す図である。
図4】理論的な出力曲線に従って風力タービンが動作するときの風速の関数としての空気力学的推力を概略的に示す図である。
図5】一定の乱流の等値線を決定する一例を概略的に示す図である。
図6】風力タービンを動作させる方法の一例を概略的に示す図である。
図7】異なる風分布について動的推力レベルの影響を概略的に示す図である。
図8】異なる風分布について動的推力レベルの影響を概略的に示す図である。
図9】異なる風分布について動的推力レベルの影響を概略的に示す図である。
図10】年間エネルギー収量およびブレード根元部曲げモーメントに対する推力レベルの変動の影響を概略的に示す図である。
図11】年間エネルギー収量およびブレード根元部曲げモーメントに対する推力レベルの変動の影響を概略的に示す図である。
図12】風力タービンを動作させる方法の別の例を概略的に示す図である。
図13】ナセルの頂上に取り付けられた一実施形態によるアクティブセンシングシステムを有する風力タービンの側面図である。
図14】アクティブセンシングシステムからの複数の固定測定ビームを示す、図13の風力タービンロータの正面図である。
図15】中心軸方向ビームの周りに配置された複数の固定ビーム、ならびにビームの各々に沿った風速を検出するための固定距離の代表的な範囲の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
ここで、本発明の実施形態を詳細に参照するが、その1つまたは複数の例が図面に示されている。各々の例は、本発明を限定するのではなく、本発明を説明する目的で提示されている。実際、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、本発明において様々な修正および変更が行われ得ることは、当業者には明らかであろう。例えば、ある実施形態の一部として図示または記載された特徴は、またさらなる実施形態をもたらすために、別の実施形態において使用することができる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲に含まれるそのような修正および変更を包含することを意図している。
【0032】
図1は、風力タービン1の一例の斜視図を示している。図示するように、風力タービン1は、支持面3から延在するタワー2と、タワー2に取り付けられたナセル4と、ナセル4に結合されたロータ5と、を含む。ロータ5は、回転可能なハブ6と、ハブ6に結合され、ハブ6から外側に延在する少なくとも1つのロータブレード7と、を含む。例えば、図示する例では、ロータ5は3つのロータブレード7を含む。しかしながら、代替的な実施形態では、ロータ5は、3つより多いか、または少ないロータブレード7を含んでもよい。各ロータブレード7は、ロータ5の回転を容易にし、運動エネルギーが、風から、使用可能な機械的エネルギー、続いて電気エネルギーに変換され得るように、ハブ6から間隔を置いて配置されてもよい。例えば、ハブ6は、ナセル4内に配置されるか、またはナセルの部分を形成する発電機10(図2)に回転可能に結合されて、電気エネルギーの生成を可能にすることができる。ロータの回転は、例えば直接駆動風力タービンに、またはギヤボックスの使用によって発電機に伝達されてもよい。
【0033】
図2は、ナセル4内のギヤトレインおよび発電構成要素の一例の簡略化された内部図を示す。例えば、ロータ5は、ハブ6と共に回転するためにハブ6に結合された主ロータシャフト8を含むことができる。次に、発電機10は、ロータシャフト8の回転が発電機10を駆動するように、ロータシャフト8に結合されてもよい。例えば、図示する実施形態では、発電機10は、ギヤボックス9を介してロータシャフト8に回転可能に結合された発電機シャフト11を含む。
【0034】
図2において、風力タービンロータ5は、結合領域において2つのロータベアリングを介して支持フレーム12に回転可能に取り付けることができる。他の例では、支持フレーム12はハブ6を貫通しなくてもよく、したがって、ロータは、一般に主軸受と呼ばれる単一のロータ軸受によって支持されてもよい。
【0035】
発電機10は、発電機の出力電力を送電網の要件に適合させる変換器に電気的に結合することができる。いくつかの例では、変換器は、ナセル4の内側に配置されてもよい。しかしながら、他の例では、風力タービンの他の場所に配置されてもよい。
【0036】
風力タービンのロータ5および発電機10は、風力タービンタワー2の頂上に配置されたベッドプレートまたは支持フレーム12によって支持されてもよいことを理解されたい。
【0037】
ナセル4は、ヨーシステム20を介してタワー2に回転可能に結合される。ヨーシステムは、他方に対して回転するように構成された2つの軸受構成要素を有するヨー軸受(図2では見えない)を含む。タワー2は、第1の軸受構成要素に結合され、ナセル4、例えば、ベッドプレートまたは支持フレーム12は、第2の軸受構成要素に結合される。ヨーシステム20は、環状ギヤ21と、モータ23を有する複数のヨー駆動部22と、ギヤボックス24と、軸受構成要素の一方を他方に対して回転させるために環状ギヤと噛み合うピニオン25と、を含む。
【0038】
図3は、従来技術による風力タービンの従来の出力曲線を示す。以上に、風速の関数としての可変速風力タービンの動作について説明した。風力タービンの動作は、必ずしも風速の実際の直接測定に基づくものではないことに留意されたい。むしろ、風速は、ロータの回転速度から導出または推定されてもよい。典型的には、発電機速度は風力タービンで測定される。発電機速度から、ロータ速度を容易に導出することができる。
【0039】
図4は、理論的な出力曲線に従って風力タービンを動作させたときの風速の関数としての空気力学的推力を概略的に示す。図4に見られるように、ロータ上の空気力学的推力は、公称風速付近でピークに達する。本開示の態様によれば、空気力学的推力の高いピークを回避し、それによって構造荷重を制限するために、複数の推力レベルを導入することができる。
【0040】
図4には、最小、平均、および最大の推力限界を含む複数の推力限界(TL)が示されている。所与の瞬間における乱流のレベルに応じて、これらの推力限界のうちの1つを選択することができる。次いで、風力タービンは、ロータ上の空気力学的推力が、選択された推力限界未満に留まることを確実にするように動作する。
【0041】
図5は、一定の乱流確率の等値線を決定する例を概略的に示す。風力タービンの複数の推力限界を規定する方法では、推力限界は、動作中に越えるべきではないロータ上の空気力学的推力の値を規定し、図5の例を使用することができる。現場を表す風速分布が提供される。この具体例では、10m/s~20m/sの風の範囲が設けられている。典型的には、推力限界は、公称風速を中心とする風速の範囲、例えば、公称風速を1~3m/s下回る風速から公称風速を1~3m/s上回る風速の範囲で作用する。
【0042】
風速分布は、風力タービンまたはウインドパークの設置前に、例えば、メットマストを使用して、風速測定値から取得することができる。風速分布はまた、同様の場所における風速測定値から、またはコンピュータシミュレーションから得ることができる。
【0043】
図5では、一定の乱流確率の複数の等値線が定義されている。等値線は、風速の関数としての風速変動を示す乱流パラメータを表す。この特定の例では、乱流パラメータは、平均風速に対する風速の標準偏差である。さらなる例では、例えば乱流強度または風速の分散などの他の乱流パラメータを使用することができる。乱流強度は、標準偏差を平均風速で割ったものとして定義することができる。標準偏差は分散の平方根である。
【0044】
図5に示す特定の例では、乱流パラメータは風速の一次関数であると仮定される。
【0045】
図5の等値線は、風速分布の乱流の確率の分位点レベルに対応する。3つの線は、5%、50%、および95%分位点(すなわち、分位点ベースの回帰が使用されている)に対応する。この例における標準偏差は、風速の一次関数であると仮定される。
σlim=aσV+bσ∈[Von,Voff
【0046】
ここで、σlimは、等値線のうちの1つの風速Vの関数としての標準偏差である。パラメータaσおよびbσは、一次関数のパラメータである。VonおよびVoffは、一次関数が決定される風の範囲の下端および上端における風速である。
【0047】
等値線ごとに異なるパラメータaσ、bσを定義してもよい。
【0048】
風速分布は、風速とその標準偏差との組み合わせのデータ点の集合とみなすことができる。
【0049】
分位点ベースの回帰において、一定の分位点レベルに対して最小化されるべきコスト関数Jσは、以下の式で与えられる。
【数1】
【0050】
95%の等値線は、風速分布における乱流が、示されたレベルを下回っている、すなわち、この例では、所与の風速に対する風速の標準偏差がこの線を下回っているという95%の信頼水準を表す。
【0051】
この特定の例では、10m/s~20m/sの範囲が選択されたが、異なる風速範囲が使用されてもよいことは明らかである。いくつかの例では、風速範囲は、例えば10~12m/s、12~14m/sなどのより小さな部分に分割されてもよい。これらのより小さな範囲のそれぞれについて、分位点ベースの回帰を実施して、等値線の部分を見出すことができた。そのような場合、上記の式では、等値線はいくつかの線形部分を含むことができる。
【0052】
等値線が定義されると、乱流範囲を等値線に対して定義することができる。乱流範囲は、等値線の上、等値線の下、または等値線間で定義することができる。これにより、乱流範囲の1つまたは複数の縁部または端部は、等値線によって画定される。
【0053】
この特定の例では、乱流範囲は5%未満で定義されてもよく、第2の乱流範囲は5%から95%まで広がり、第3の乱流範囲は95%等値線を超える乱流に対して定義されてもよい。5%、50%、および95%の値は単なる例として示されており、他の値を使用できることは明らかである。また、図示する例よりも多くの等値線(およびより多くの乱流範囲)を定義できることも明らかなはずである。
【0054】
最後に、これらの範囲のそれぞれについて、(ピーク)荷重が非常に乱気流の風でも所定の許容レベル以下に維持されるように推力限界を定義することができる。一方、風の乱れが少ない場合、ピーク荷重が許容レベル未満に留まるため、より高い制限を使用することができる。
【0055】
図6は、風力タービンを動作させる方法の一例を概略的に示す。図5を参照してちょうど示したように、異なる乱流範囲に対して複数の推力限界が定義されると、風力タービンを動作させるための方法は、風速および乱流パラメータを推定することと、推定された乱流パラメータおよび推定された風速に基づいて推力限界を選択することとを含むことができる。次いで、ロータ上の推力が選択された推力限界を下回るように、風力タービンを動作させることができる。
【0056】
ブロック30の入力は、n個の定義された等値線の各々のパラメータaσiおよびbσiを含み、nは等値線の総数であり、iは個々の等値線の数である。ブロック30の出力は、所与の平均風速Vに対する標準偏差σの1つまたは複数の値である。この特定の場合には、各風速に対して2つの標準偏差値σ5%およびσ95%が定義される。
【0057】
動作中、風速Vは実質的に連続的に決定され得る。本明細書において実質的に連続的とは、風力タービンの動作において意味のある方法で考慮することができるように、風速が十分に高い頻度で決定されることを意味する。
【0058】
風力タービンは、ロータの上流の風の状態を測定するためのリモートセンシングシステム、例えば、SODAR(音波検出および測距)またはLIDAR(光検出および測距)を含むことができる。風力タービンの制御システムは、リモートセンシングシステムから風の状態を受信し、上流の風の測定値に基づいてロータに衝突する風速および乱流を決定するように構成することができる。
【0059】
あるいは、風力タービンは、ナセル風速計を含んでもよく、制御システムは、ナセル風速計の測定値(すなわち、ナセル風速計は、風速Vの連続測定値を与える)に基づいて風速および乱流を決定するように構成される。間隔(最新の間隔)について、平均風速V、および風速変動(この例では標準偏差σ)を、ナセル風速計からのデータから計算することができる。しかしながら、風が風速計に到達すると風が乱れるため、ナセル風速計を用いた風速測定の信頼性に限界があることが知られている。
【0060】
さらに別の例では、風速は、出力、ブレードのピッチ角、およびロータの回転速度を決定することによって推定することができる。出力、ブレードのピッチ角、およびロータの回転速度に基づいて、カルマンフィルタを使用して風速を推定することができる。典型的には、出力、ブレードからのピッチ角(これは適切なピッチ制御に利用可能であるべきである)、およびロータの回転速度(典型的には、発電機ロータの回転速度を測定することができる)を測定するために、風力タービンに適切なセンサおよびシステムが設けられる。カルマンフィルタの使用は、風速を推定するために信頼できることが分かっている。
【0061】
時系列の風速測定値Vから、平均風速Vおよび風速の変動を示す乱流パラメータをブロック40で導出することができる。ブロック40の出力のうちの1つは、選択された乱流パラメータであり、この場合は風速の標準偏差σである。ブロック40の出力は、ブロック30および50への入力として提供される。
【0062】
ブロック50内で、複数の乱流範囲が、例えば、最低分位点レベルより下、最高分位点レベルより上、および最低分位点レベルと最高分位点レベルとの間で定義される。各乱流範囲について、推力限界が定義される。この特定の例では、Tmaxは最高推力限界であり、Tminは最低推力限界であり、Tmeanは平均推力限界である。Tminが起動されると、荷重を許容レベル以下に維持することがより優先され、潜在的な電力出力が最も犠牲になる。
【0063】
所与の瞬間に乱流レベル(ブロック40からの出力)および風速(ブロック40からの出力)が既知である場合には、風力タービンがどの乱流範囲で動作しているかも既知である。
【0064】
それが既知である場合には、ブロック50において、適切な推力限界Tselが、先に定義された推力限界から選択されてもよい。次いで、ロータ上の空気力学的推力が選択された限界未満に留まることを確実にするために、風力タービンを動作させることができる。
【0065】
この目的のために、例えばブレード内の適切な歪みまたは変形センサを使用して、ロータ上の空気力学的推力を直接測定することができる。あるいは、推定された風速、ロータの回転速度、およびブレードのピッチ角に基づいて推力を計算することによって、ロータ上の推力を推定することができる。
【0066】
動作中、次いで、ロータの推定推力を選択された推力限界と比較することができ、推定推力が選択された推力限界を上回る場合には、集合ピッチ信号を(風力タービン制御から)ロータのブレード(またはピッチ制御システム)に送信して、ブレードをピッチし、ロータ上の推力を低減することができる。
【0067】
到来する風の流れにおける実際の乱流を検出および測定するための方法およびシステムの代替実施形態が、図12図15に概略的に示されている。この方法およびシステムは、以下でより詳細に説明するように、ロータ5の上流の複数の距離/範囲66で風の流れの風速を検出するために、例えばナセル4の頂上の風力タービン1に取り付けられたアクティブセンシングシステム60を利用する。次いで、風速測定値を使用して、推力限界制御プロセス(図12)に提供される乱流強度(風速変動)の尺度を導出する。
【0068】
図12図15の実施形態は、ナセルに取り付けられた風速計から風速を測定すること、または出力、ブレードのピッチ角、およびロータの回転速度から風速を推定することと比較して、明確な利点を提供することができる。例えば、これらの2つの方法では、乱流強度を推定するために、スライディングデータ窓内の風速の標準偏差が計算され、データ窓の時間長は比較的長く、例えば最大60秒とすることができ、これは、乱流強度推定値が実際の乱流変化に応答するのが遅くなる可能性があるという点で望ましくない場合がある。また、測定された風速における比較的大きな風の変動は、長時間にわたって風の乱流の推定値に過度に影響を与える可能性がある。したがって、図12図15の実施形態は、特定の環境において、これらの潜在的な欠点に対処することが望ましい場合がある。
【0069】
図13図15を概して参照すると、アクティブセンシングシステム60は、到来する風の流れをサンプリングするために風力タービンロータ5の風上に向けられた複数の固定測定ビーム64を生成するドップラーライダシステム62によって実装することができる。図に示す実施形態では、固定測定ビーム64は、図13および図15から理解することができるように、ロータ5からの距離が増加するにつれて増加するサンプルフィールドを画定するように、ロータ5の軸線70に対してある角度でドップラーライダシステム62から外側に向けられてもよい。
【0070】
固定測定ビーム64の各々は、システム62から複数の距離で風速を検出および測定することができる。例えば、図15では、各ビーム64は、システム62から10個の別個の距離または範囲66で風速を検出および測定し、範囲点66は20メートル離れている。固定測定ビーム64の数、各ビーム64に沿った範囲点66の数、および範囲点66間の距離は、固定ビームではなくスキャンビームの構成を使用する実施形態を含む様々な実施形態に対して変動し得ることを理解されたい。
【0071】
図示の実施形態では、ドップラーライダシステム62は、固定測定ビーム64のうちの5つを生成し、これらのビームのうちの1つは、ロータ軸線70に本質的に平行に向けられた中心ビーム68である。他のビーム72は、円周74の周りに等間隔に配置されている。例えば、4つの固定ビーム72は、円周74上で90度離間されてもよい。
【0072】
図12は、ドップラーライダシステム62からの情報を利用するように特に修正された図6の推力限界制御プロセスを示す。プロセスステップ55において、固定測定ビーム64からの複数の信号がコントローラに入力される。各ビーム64の異なる範囲点66からの風速測定値は、到来する風の流れの平均風速Vおよび風速の標準偏差σを計算するために使用される。標準偏差σは、(乱流強度パラメータとして)プロセスブロック50に入力され、図6のブロック50に関して上述したように使用される。したがって、図6のプロセスブロック40における平均風速の標準偏差σの推定は排除される。さらに、プロセスブロック55で計算された到来する風の流れの平均風速Vは、(図12に破線で示すように)プロセスブロック30への入力として使用することができ、図6に関して上述したプロセスブロック40での平均風速Vの推定も省略することができる。あるいは、プロセスブロック55からの風速の標準偏差σをプロセスブロック40に入力し、プロセスブロック40で導出された推定値のチェックとして用いてもよい。
【0073】
プロセスブロック55において、風速測定値ならびに風速の平均風速Vおよび標準偏差σの計算は、実質的に連続的に決定され、これは、風速が、風力タービンの動作において意味のある方法で考慮され得るように十分に高い頻度で決定されることを意味する。例えば、測定および計算は、少なくとも4Hzのレートで実行されてもよい。加えて、標準偏差計算は、フィルタ時定数を有するローパスフィルタによって平滑化することができ、フィルタ時定数は、到来する風の流れの典型的な風速およびロータからの例えば10秒での風速測定値の平均範囲を考慮して調整および選択され、10m/sの典型的な風速および100メートルの移動距離を反映する。
【0074】
上述した図6の推力限界制御プロセスの他の態様は、図12のプロセスにも適用される。例えば、この方法は、風速範囲内の風速の一次関数として標準偏差を定義する等値線を含むことができる。
【0075】
また、現場の風速分布は、風力タービンの現場での風の測定値に基づいてもよい。
【0076】
図12図15の方法はまた、決定された乱流パラメータおよび決定された風速に基づいて推力限界のうちの1つを選択するステップと、ロータ上の推力が選択された推力限界を下回るように風力タービンを動作させるステップと、を含むことができる。例えば、ロータ上の推力を選択された推力限界と比較することができ、推力が選択された推力限界を上回る場合には、本方法は、集合ピッチ信号をロータのブレードに送信してブレードをピッチし、ロータ上の推力を低減するステップを含む。
【0077】
本開示のさらなる態様では、図示する例によれば、風力タービンが提供される。風力タービンは、複数のブレードを有するロータと、ブレードの長手方向軸線の周りでブレードを回転させるための1つまたは複数のピッチシステムと、発電機と、制御システムと、を含む。制御システムは、風速および乱流を推定し、かつ乱流および推定風速に基づいて推力レベルを選択するように構成され、推力レベルは、異なる乱流範囲に対する複数の推力限界から選択され、かつロータ上の空気力学的推力が選択された推力レベルを下回るようにブレードを集合的にピッチするためにピッチシステムに信号を送信するように構成される。複数の推力レベルは、風速の風速分布および乱流を示すパラメータの分位点ベースの回帰によって決定されている。
【0078】
例では、制御システムは、カルマンフィルタ技術を使用して風速を推定することができ、カルマンフィルタは、出力、ブレードピッチ角、およびロータの回転速度などの変数によって供給される。
【0079】
他の実施形態では、制御システムは、図12図15のアクティブセンシングシステム60と通信しており、上述したように、到来する風の流れの風速を実質的に連続的に測定し、測定された風速の風速変動に対応する乱流パラメータを計算するように構成されている。
【0080】
特定の実施形態では、風力タービンは、上述したドップラーライダシステム62を利用して、風力タービンの風上に向けられた複数の固定測定ビーム64を生成し、到来する風の流れをサンプリングすることができ、固定測定ビームの各々は、ロータ5の軸線70に対して異なる角度で、ロータ5からの複数の異なる範囲66で風速を検出する。
【0081】
一実施形態では、ドップラーライダシステム62は、風力タービン1のナセル4の頂上に取り付けられる。固定測定ビーム64は、中心軸方向ビーム68と、中心軸方向ビームから離れた角度で突出してロータ5からの距離が増加するにつれて増加するサンプルフィールドを画定する複数の他のビーム72とを含むことができ、ビーム72は、円周74の周りに等間隔に配置される。
【0082】
図7図9は、異なる風分布に対する動的推力レベルの効果を概略的に示している。図7図9は、所与の現場における同じ風力タービンの異なる風速分布を示す。上述の例によれば、特定の風速分布に基づいて、乱流確率の分位点レベルが定義されている。図7では、同じ場所で、風は比較的低い乱流強度を有する。図8では、風速分布は平均であるか、または理論的な風速分布に実質的に匹敵する。最後に、図9には、比較的高い乱流を有する風速分布が示されている。
【0083】
図7の場合、しばしば選択される推力限界は、エネルギー生成を優先する高い限界である。しかしながら、図9の場合、より頻繁に選択される推力限界はかなり低い限界であり、電力出力を犠牲にするが、荷重が所定の限界未満に留まることを保証する。
【0084】
すべての場合において、風力タービンは、急激に変化する推力限界を回避するために何らかの形態の制御を組み込むことができる。これは、例えば、乱流が等値線に近い場合に起こり得る。このような急激な変化を避けるために、ヒステリシス制御を組み込んでもよい。そのような制御を実施する1つの方法は、推力範囲に入ることと推力限界の選択との間の時間遅延であり得る。そのような制御を実施する別の方法は、乱流範囲間の分離を有し、定義された推力範囲間の推力限界を(直線的に)変動させることである。
【0085】
動作の一例では、所定の等値線の各々について、1つまたは複数のチェックレベルが定義され、風の乱流パラメータがチェックレベルのうちの1つに達するまで推力限界は変更されない。チェックレベルは、等値線の周りに小さなバンドを定義することができる。
【0086】
図10および図11は、年間エネルギー収量およびブレード根元部曲げモーメントに対する推力レベルの変動の影響を概略的に示す。図10には、3つの異なるシナリオにおける3つの異なる設定を有する風力タービンのAEP(年間エネルギー生産量)が示されている。3つの異なる設定は、単一の高推力限界Tmean、単一の低推力限界Tmin、および複数の推力限界Tvarを含む。可変推力限界は、本開示の例に従って定義されるように、Tmin、Tmean、およびTmeanよりも高いTmaxを含む。3つのシナリオは、文字A、B、およびCで示される異なるレベルの乱流強度を有する風速シミュレーションを含む。シナリオAは、比較的低いまたはほとんど乱流のないシナリオに対応し、シナリオBは、「平均的な」乱流に対応するのに対し、シナリオCは、非常に乱流の多い風に対応する。
【0087】
図11には、同じ3つの設定(Tmean、Tmin、Tvar)および同じ3つのシミュレートされたシナリオ(A、BおよびC)のブレード根元部での曲げモーメントが示されている。図10では、推力限界を動的に変動させると、シナリオAおよびBで年間エネルギー生産量が増加することが分かる。図11では、推力限界を動的に変動させると、荷重が制御されることも保証されることが分かる。最も乱流の風のシナリオ(C)では、ブレード根元部モーメントは、単一の高い推力限界で制御の限界に達する。シナリオCでは、単一の推力限界により、年間エネルギー生産量はわずかに増加するが、荷重が高くなるという大きなコストが発生する。これらの高荷重は、将来の性能の低下、または風力タービンもしくはその構成要素の早期の交換もしくは廃棄につながり得る疲労損傷をもたらす可能性がある。
【0088】
分位点ベースの回帰を用いて本明細書に開示した方法で推力限界を定義することにより、関心のある現場における乱流強度分布に基づいて現場固有の調整が可能になる。信頼水準(分位点)としきい値の両方を調整して、比較的低い乱流を有する場所では風からの出力抽出を最大にすることができるが、高い乱流を有する場所では、信頼水準および相対推力しきい値の適切な定義によって、(荷重に関して)構造安全性と出力抽出との間のより良いトレードオフを達成することができる。
【0089】
本明細書に開示した例によれば、複数のブレードを有するロータを含む風力タービンを動作させるための方法が開示されている。本方法は、風速の時系列を決定するステップと、時系列からの風速の変動を示す平均風速および乱流パラメータを導出するステップと、を含むことができる。次いで、導出された乱流パラメータおよび風速に基づいて、複数の推力限界から推力限界を選択することができる。選択された推力限界に基づいて、風力タービンは、ロータ上の推力が選択された推力限界を下回ることを確実にするように動作することができる。
【0090】
複数の推力限界は、(風速範囲内の)各可能な風速に対する乱流パラメータの範囲に対して定義することができる。所与の平均風速における乱流パラメータの範囲は、平均風速の乱流パラメータが風力タービンの位置を表す風データの所与の値を下回る信頼区間によって定義される。
【0091】
いくつかの例では、風力タービンの位置を表す風データは、風力タービンの公称風速を含む風速帯のデータを含む。ロータ上の空気力学的推力および対応する荷重が高くなり得るのは、公称風速付近の風速のためである。カットイン風速に近い風速、および公称風速よりも著しく高い風速の場合、空気力学的推力は比較的低い。前者の場合、これは風のエネルギーが低いためであり、後者の場合、これは、ロータトルクを公称レベルに保つのに十分に高いピッチ角まで風力タービンのブレードが既にピッチされているためである。カットイン風速に近く、カットアウト風速に近い、または公称風速よりも著しく高い風速は、このような確率分析から安全に除外することができる。
【0092】
本発明のさらなる態様は、以下の条項の主題によって提供される。
条項1:現場に配置され、複数のブレードを有するロータを有する風力タービンのための複数の推力限界を規定するための方法であって、推力限界は、動作中に越えるべきではないロータ上の空気力学的推力の値を規定し、方法は、
現場を表す風速分布を提供するステップと、
風速の関数としての乱流パラメータを表す一定の乱流確率の1つまたは複数の等値線を規定するステップであって、等値線は、風速分布の乱流の分位点レベルに対応し、乱流パラメータは風速変動を示す、ステップであって、
乱流パラメータは、アクティブセンシングシステムを用いてロータの上流の風速を実質的に連続的に測定し、測定された風速から風速変動を計算することによって決定されるステップと、
等値線に対して乱流範囲を規定するステップと、
乱流範囲の推力限界を規定するステップと、
を含む方法。
条項2:アクティブセンシングシステムは、ドップラーライダシステムを使用して、風力タービンの風上に向けられた複数の測定ビームを生成し、到来する風の流れをサンプリングする、条項1に記載の方法。
条項3:測定ビームは、固定され、ロータからの距離が増加するにつれて増加するサンプルフィールドを画定するためにロータの軸線に対して異なる角度に向けられ、固定測定ビームの各々は、風速をロータからの複数の異なる範囲で測定する、条項2に記載の方法。
条項4:ドップラーライダシステムは、5つの固定測定ビームを生成し、各固定測定ビームは、ロータから10個の異なる範囲の風速を検出する、条項3に記載の方法。
条項5:風力タービンは、ナセルを含み、ドップラーライダシステムは、ナセルの頂上に取り付けられ、固定測定ビームは、中心軸方向ビームと、中心軸方向ビームから離れた角度で突出し、円周の周りに等間隔に離間した複数の追加ビームと、を含む、条項4に記載の方法。
条項6:各固定測定ビームについての複数の異なる範囲からの風測定値は、到来する風の流れの平均風速および風速の標準偏差を計算するために使用され、風速の標準偏差は乱流パラメータに対応する、条項3に記載の方法。
条項7:風速測定および標準偏差の計算は、少なくとも4Hzのレートで実行され、標準偏差の計算は、ローパスフィルタによって平滑化される、条項6に記載の方法。
条項8:ローパスフィルタのフィルタ時定数は、到来する風の流れの典型的な風速およびロータからの風速測定値の平均範囲を近似するように調整可能であり、選択される、条項7に記載の方法。
条項9:等値線は、風速範囲内の風速の一次関数として標準偏差を定義する、条項6に記載の方法。
条項10:現場の風速分布は、風力タービンの現場における風の測定値に基づく、条項1に記載の方法。
条項11:決定された乱流パラメータおよび決定された風速に基づいて推力限界のうちの1つを選択するステップと、ロータ上の推力が選択された推力限界を下回るように風力タービンを動作させるステップと、をさらに含む、条項1に記載の方法。
条項12:ロータ上の推力が所定の推力限界を下回るように風力タービンを動作させるステップは、ロータ上の推力を選択された推力限界と比較するステップと、推力が選択された推力限界を上回る場合には、ブレードをピッチしてロータ上の推力を低減するために、集合ピッチ信号をロータのブレードに送信するステップと、を含む、条項11に記載の方法。
条項13:風力タービンであって、
複数のブレードを有するロータと、
ブレードの長手方向軸線の周りでブレードを回転させるようにブレードと共に構成されたピッチシステムと、
風力タービンに取り付けられたアクティブセンシングシステムであって、到来する風の流れの風速を検出するために風力タービンの風上に複数の測定ビームを生成するドップラーライダシステムを含む、アクティブセンシングシステムと、
ドップラーライダシステムと通信する制御システムと、を含み、制御システムは、
到来する風の流れの風速を実質的に連続的に測定し、測定された風速から風速変動に対応する乱流パラメータを計算し、
乱流パラメータおよび測定された風速に基づいて推力レベルを選択し、推力レベルは、異なる乱流範囲に対する複数の推力限界から選択され、複数の推力限界は、風速の風速分布の分位点ベースの回帰および乱流パラメータによって決定され、
ロータ上の空気力学的推力が選択された推力レベルを下回るようにブレードを集合的にピッチするためにピッチシステムに信号を送信する、
ように構成される、風力タービン。
条項14:ドップラーライダシステムは、風力タービンの風上に複数の固定測定ビームを生成して到来する風の流れをサンプリングするように構成され、固定測定ビームの各々は、ロータの軸線に対して異なる角度で、かつロータからの複数の異なる範囲で風速を測定する、条項13に記載の風力タービン。
条項15:ナセルをさらに含み、ドップラーライダシステムは、ナセルの頂上に取り付けられ、固定測定ビームは、中心軸方向ビームと、中心軸方向ビームから離れた角度で突出し、円周の周りに等間隔に離間した複数のビームと、を含む、条項14に記載の風力タービン。
条項16:制御システムは、各固定測定ビームについての複数の異なる範囲からの風測定値を使用して、到来する風の流れの平均風速および風速の標準偏差を計算するように構成され、風速の標準偏差は乱流パラメータに対応する、条項15に記載の風力タービン。
条項17:風速測定および標準偏差の計算は、少なくとも4Hzのレートで制御システムによって実行され、標準偏差の計算はローパスフィルタによって平滑化される、条項16に記載の風力タービン。
条項18:制御システムは、到来する風の流れの典型的な風速およびロータからの風速測定値の平均範囲を近似するように、ローパスフィルタのフィルタ時定数を設定する、条項17に記載の風力タービン。
【0093】
本明細書は、最良の態様を含む本発明を開示するため、およびどのような当業者も、任意の装置またはシステムの作製および使用ならびに任意の組み込まれた方法の実施を含む本発明の実践を可能にするために、例を使用している。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者であれば想到できる他の例を含むことができる。このような他の例は、それらが特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を含む場合、または特許請求の範囲の文言と実質的な差異を有さない均等な構造要素を含む場合、特許請求の範囲内であることを意図している。
【符号の説明】
【0094】
1 風力タービン
2 風力タービンタワー
3 支持面
4 ナセル
5 風力タービンロータ
6 ハブ
7 ロータブレード
8 ロータシャフト
9 ギヤボックス
10 発電機
11 発電機シャフト
12 支持フレーム
20 ヨーシステム
21 環状ギヤ
22 ヨー駆動部
23 モータ
24 ギヤボックス
25 ピニオン
30 プロセスブロック
40 プロセスブロック
50 プロセスブロック
55 プロセスブロック、プロセスステップ
60 アクティブセンシングシステム
62 ドップラーライダシステム
64 固定測定ビーム
66 範囲点、距離または範囲
68 中心ビーム、中心軸方向ビーム
70 ロータ軸線
72 固定ビーム
74 円周
図1
図2
図3
図4
図5
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【外国語明細書】