(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107565
(43)【公開日】2022-07-22
(54)【発明の名称】シーリング材の劣化状態測定方法および劣化診断器
(51)【国際特許分類】
G01N 3/40 20060101AFI20220714BHJP
G01N 17/00 20060101ALI20220714BHJP
G01N 19/00 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
G01N3/40 E
G01N17/00
G01N19/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002490
(22)【出願日】2021-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】721000295
【氏名又は名称】有馬 洋一
(72)【発明者】
【氏名】有馬 洋一
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050AA02
2G050AA04
2G050BA03
2G050BA05
2G050BA09
2G050BA10
2G050BA12
2G050EB01
2G050EC10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シーリング材を切り取ることなく簡単な操作で劣化状態を診断しうるシーリング材の劣化状態測定方法およびシンプルな構造の劣化診断器を提供することを目的とする。
【解決手段】建物の外壁の目地部に充填されたシーリング材に測定針3を所望の深さまで差し込む第1工程と、測定針3の長手方向の一端にねじり荷重を加えることで他端にかかる反発力を測定する第2工程によって、シーリング材の劣化状態を測定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁の目地部に充填されたシーリング材に測定針を所望の深さまで差し込む第1工程と、前記測定針の長手方向の一端にねじり荷重を加えることで他端にかかる反発力を測定する第2工程からなることを特徴とする、シーリング材の劣化状態測定方法。
【請求項2】
ケーシングと、前記ケーシング内に設けた圧縮バネと、前記ケーシングの上端および下端を貫通して上下動する測定針を備えた劣化診断器であって、前記測定針は突起状の先端部と、前記圧縮バネの一端と固着している胴部を備えていることを特徴とする、劣化診断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁の目地部に充填されたシーリング材の劣化状態を測定する方法および劣化診断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁の目地部に充填されているシーリング材は、紫外線や雨水や外気温の変化等によって経年劣化して硬くなり、シール性の性能低下やひび割れなどの損傷を生じさせる。したがって、一定年数を経過したときにシーリング材の劣化状態を診断して、必要に応じて補修や取り替えを行うことが重要である。
【0003】
下記特許文献1は、外壁目地部から切断具を用いてシーリング材を部分的に切り抜いて試験体を採取し、その切り抜いた試験体の切断側面の硬度をデュロメータを用いて測定する方法が開示されている。この方法によれば、外壁目地部の目地幅と同等の幅を有する試験体を採取することで、採取箇所にかかわらず略一定した幅(厚み)を有する試験体を得ることができ、これによって測定した硬度を補正する必要がなく、硬度測定を精度よく安定して行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のシーリング材の劣化診断方法は、切断具が外壁目地部の目地幅と略同等の外径を有しているため、シーリング材と外壁材との接着界面の硬度を測定することは可能であるが、シーリング材の内部の劣化状況を診断することはできない。また、診断をする際にシーリング材を部分的に切り抜く必要があるため、切り抜いた部分に新たなシーリング材を充填して修復を行う必要があり、作業に手間が掛かる。更に、切断具を用いて試験体を採取した後にデュロメータによって硬度を測定する必要があるため、作業に時間が掛かる。
【0006】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、シーリング材を切り取ることなく簡単な操作で劣化状態を診断しうるシーリング材の劣化状態測定方法およびシンプルな構造の劣化診断器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、シーリング材の劣化状態測定方法であって、建物の外壁の目地部に充填されたシーリング材に測定針を所望の深さまで差し込む第1工程と、前記測定針の長手方向の一端にねじり荷重を加えることで他端にかかる反発力を測定する第2工程からなることを特徴とするものである。
【0008】
また、ケーシングと、前記ケーシング内に設けた圧縮バネと、前記ケーシングの上端および下端を貫通して上下動する測定針を備えた劣化診断器であって、前記測定針は突起状の先端部と、前記圧縮バネの一端と固着している胴部を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シーリング材を切り取ることなく簡単な操作でシーリング材の劣化状態を診断することができ、また、切断具とデュロメータを使い分ける手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る劣化診断器の分解斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る劣化診断器の平面図である。
【
図3】本実施形態に係る劣化診断器の断面図である。
【
図4】本実施形態に係る劣化診断器を用いてシーリング材の表面を測定している状態を示した図である。
【
図5】本実施形態に係る劣化診断器を用いてシーリング材の内部を測定している状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、
図1~3に基づいて説明する。
本実施形態における劣化診断器1は、建物の外壁の目地部に充填されたシーリング材5の劣化状態を診断するためのものである。劣化診断器1は、ケーシング2、測定針3、圧縮バネ4を備える。
【0012】
ケーシング2は長手軸Pに沿う円柱状の本体部21と、本体部21の長手方向の両端をそれぞれ閉塞する端板221、222を設けている。端板221、222は、中央に沿って貫通する貫通孔231、232が設けられている。端板221には、後述する圧縮バネ4の内径に係止する突起24が、端板221の板厚方向の一側に突出している。また、端板221の上面には、硬度を目視するための硬度目盛り盤25を設けている。なお、ケーシング2は、円柱状以外に多角柱状にして使用時に滑りにくく握りやすい形状としても良い。
【0013】
本体部21の側面には、矩形状にくり抜いた開口26と、後述する測定針3をシーリング材5に差し込む深さを目視するための深さ目盛り盤27と、深さ目盛り基部28を備えている。開口26の短辺は圧縮バネ4の外径より短く、長辺は本体部21の長手方向の長さと同等である。深さ目盛り基部28は、ケーシング2内をP軸方向に上下に低抵抗で摺動可能な輪状の円板であり、その内径は圧縮バネ4の外径よりも大きく、外径は本体部21の内径よりも小さい。
【0014】
測定針3は、端板221、222の貫通孔231、232を貫通してケーシング2内をP軸方向に上下動する金属材料からなり、先端部31と胴部33とつまみ部34とを備えている。先端部31は使用時にシーリング材5と接触する三角形状の板状片であり、胴部33と固着している。また先端部31の底辺32は、胴部33の断面の直径より長くなっている。これにより、先端部31はシーリング材5に差し込み易く、測定針3にねじり荷重を加えた際に先端部31がシーリング材5の内部で空回りするのを防いでいる。胴部33は先端部31とつまみ部34とを連結する弾性を有する線材であり、下部は圧縮バネ4の下端41と溶接等で固着している。尚、先端部31は三角形状に限定されず、突起状のものであればよい。
【0015】
つまみ部34は円柱状を有し、胴部33の上端と固着している。つまみ部34を長手軸Pを中心に回動することによって胴部33および先端部31が回動する。また、つまみ部34には、胴部33と連結した部分を残して周囲を三日月状にくり抜いた孔35と、硬度を指し示す指示部36が設けられている。なお、つまみ部34は、円柱状以外に多角柱状にして使用時に滑りにくく握りやすい形状としても良い。
【0016】
圧縮バネ4は、ケーシング2内に設けたコイルバネであり、上下の端板221、222に挟まれた状態で長手軸Pに沿って付勢状態(伸びようとする力)を維持しながらケーシング2内に配置している。圧縮バネ4の外径は深さ目盛り基部28の内径より小さく、端板221、222の貫通孔231、232の直径よりも大きい。圧縮バネ4の下端41は、深さ目盛り基部28の直径と同じ大きさに1周巻いた後、長手軸Pの方向へ折り曲げて測定針3の胴部33と固着している。また、圧縮バネ4の上端42は端板221の突起24によって係止されている。また、圧縮バネ4の下端41は、シーリング材5の差し込み深さを測定するのに用いるため、深さ目盛り基部28より下方に位置し、深さ目盛り基部28と見分けるために別色にするのが望ましい。
【0017】
次に、本実施形態に係る劣化診断器1の作用および効果について
図4、5に基づいて説明する。
【0018】
作業者は、深さ目盛り基部28と圧縮バネ4の下端41が重なった状態でケーシング2内の最下部に位置していることを確認した後、一方の手で劣化診断器1のケーシング2を持ち、測定針3をシーリング材5の表面に押し当てる。測定針3は圧縮バネ4の付勢力に反発して上方に押し上げられると共に、圧縮バネ4の下端41が深さ目盛り基部28を上方に押し上げる。作業者は、測定針3の押圧力とシーリング材5表面から受ける反発力との釣り合いが取れた地点まで測定針3を押し当てる。この時、深さ目盛り基部28と圧縮バネの下端42は依然重なった状態であることから、シーリング材5の差し込み深さR1は0を示している。
【0019】
次に、他方の手で測定針3のつまみ部34を回動して測定針3にねじり荷重を加える。作業者は、つまみ部34の回動により受けた胴部33のねじり荷重と先端部31の反発力との釣り合いが取れた地点までつまみ部34を回動する。そして測定針3の胴部33と接続した圧縮バネ4の下端41と、端板221の突起24により回動制限を受けた圧縮バネ4は、長手軸Pの軸心方向に収縮する。作業者は、つまみ部34に設けた指示部36が、孔35を介してケーシング2の上端に設けた硬度目盛り盤25上の数値を目視して、シーリング材5の表面部分の硬度を測定する。
【0020】
これにより、作業者は、(1)測定針3の先端部31をシーリング材5に押し当てる、(2)測定針3のつまみ部34を回動する、の2操作でシーリング材5の劣化状態を診断することができる。硬度を確認後、つまみ部34から手を離す。ねじり荷重を受けていた測定針3の胴部33と収縮していた圧縮バネ4は解放され、つまみ部34は回動した方向と逆の方向に回動して元の位置に戻る。
【0021】
続いて、一方の手で劣化診断器1のケーシング2を持ちながら、他方の手でつまみ部34を下方に押し下げて測定針3の先端部31をシーリング材5の内部へ押し込む。深さ目盛り基部28と重なった状態となっている圧縮バネ4の下端41が下方へ下がる。この時、深さ目盛り基部28は動かずそのままの位置に留まっているため、深さ目盛り基部28から圧縮バネ4の下端42までの距離R2が、測定針3の先端部31をシーリング材5の内部に刺し込んだ距離となる。シーリング材5の差し込み深さR2は、深さ目盛り盤27を用いて測定する。
【0022】
所望の深さまで測定針3をシーリング材5に刺し込んだ後、つまみ部34を回動して先端部31にねじり荷重を加える。上述と同様、つまみ部34の回動により受けた胴部33のねじり荷重と先端部31の反発力との釣り合いが取れた地点までつまみ部34を回動し、つまみ部34に設けた指示部36が指し示した数値から硬度を測定する。更に深い位置の硬度を測定する場合は、つまみ部34から手を離してねじり荷重を解放し、測定針3を所望の深さまで押し下げて、上記の操作を繰り返す。
【0023】
これにより、作業者はシーリング材5を切り取ることなく、所望の位置および深さの硬度を測定することができる。また、測定針3と圧縮バネ4で測定が可能なため、劣化診断器1の構造をシンプルにすることができる。
【0024】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではない。これら実施形態が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 劣化診断器
2 ケーシング
21 本体部
221、222 端板
231、232 貫通孔
24 突起
25 硬度目盛り盤
26 開口
27 深さ目盛り盤
28 深さ目盛り基部
3 測定針
31 先端部
32 底辺
33 胴部
34 つまみ部
35 孔
36 指示部
4 圧縮バネ
41 下端
42 上端
5 シーリング材
P 長手軸
R1、R2 深さ距離