(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107582
(43)【公開日】2022-07-22
(54)【発明の名称】織物構造体
(51)【国際特許分類】
D06M 15/263 20060101AFI20220714BHJP
D06M 101/06 20060101ALN20220714BHJP
【FI】
D06M15/263 ZAB
D06M101:06
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021214582
(22)【出願日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】110101008
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】110123379
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】518150806
【氏名又は名称】▲達▼▲亜▼帆布(上海)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】林 義堅
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA02
4L033AB05
4L033AB09
4L033AC11
4L033CA18
4L033CA70
4L033DA00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】廃棄問題に対する環境に優しい解決策として役立つ、分解性織物構造体を提供する。
【解決手段】織物構造体は、繊維ベース層20と接着剤層30、40とを含む。繊維ベース層は、網目23を有し、その基本組成がセルロースである繊維を含む。接着剤層は網目の中に入り込む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物構造体であって、
複数の網目を有し、セルロースの基本組成を有する繊維を含む繊維ベース層と、
接着剤層であって、前記接着剤層が前記網目の中に入り込む、接着剤層と、
を備える、織物構造体。
【請求項2】
前記網目の上方に位置する前記接着剤層の表面上に配置されたコーティングをさらに備え、前記コーティングがアクリル樹脂材料を含む、請求項1に記載の織物構造体。
【請求項3】
前記コーティングの厚さが0.01mm~0.15mmの範囲にある、請求項2に記載の織物構造体。
【請求項4】
前記接着剤層がスラリーを含み、前記スラリーがリン、アンチモンまたは臭素をベースとする添加剤を含む、請求項1に記載の織物構造体。
【請求項5】
前記接着剤層が光沢剤を含む、請求項1に記載の織物構造体。
【請求項6】
前記接着剤層が補助剤を含む、請求項1に記載の織物構造体。
【請求項7】
前記繊維ベース層の厚さが0.2mm~0.8mmの範囲にある、請求項1に記載の織物構造体。
【請求項8】
前記接着剤層が、前記繊維ベース層の第1の表面上に位置する第1の接着剤層と、前記第1の表面とは反対側の前記繊維ベース層の第2の表面上に位置する第2の接着剤層とを備え、前記第1の接着剤層の厚さおよび前記第2の接着剤層の厚さが0.2mm~0.8mmの範囲にある、請求項1に記載の織物構造体。
【請求項9】
前記接着剤層の表面上に配置された遮光層をさらに備える、請求項1に記載の織物構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、織物構造体に関し、特に、分解性織物構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、広告もしくは日光の遮蔽のために、または店舗および建物用のキャノピーとして従来使用された織物構造体(例えば、帆布)は、通常、ポリエチレン(PE)によって織られている。それらは、PE縦糸および横糸によって織られた、単色織物層または色の縞を有する織物層である。これらの織物層自体は防水性ではないため、防水機能のためにそれらの表面上に積層フィルム層をコーティングしなければならない。積層フィルム層は、低比重という利点を有するが、積層フィルム層を織物層の表面に付着させるのは容易ではなく、積層フィルム層は薄く材料自体も十分な柔らかさを欠いているので、PEによって織られた織物構造体が曲げられたりぶつけられたりすると、積層フィルム層が折り目において損傷を受けたり剥がれたりして、その防水機能を失う傾向がある。
【0003】
このため、
図1および
図2に示されているようなPVCによって織られた織物構造体10が、上記の問題に対する解決策として浮上した。織物構造体10は、中央の繊維ベース層11の上面および下面に接着されたまたは熱間圧接された、PVC層12およびPVC層13から構成される。織物構造体10は、良好な引張強度および良好な防水機能を示すので、通常、防水の、日光を遮蔽用のまたは広告用の帆布として採用されている。しかしながら、ポリ塩化ビニルの略称であるPVCは、Greenpeaceによって「有毒プラスチック」と見なされている。その毒性にもかかわらず、PVCは安価で製造が容易であるため、PVCの製造は、最も広く使用されているプラスチックの中でPEに次ぐものとなっている。PVCは我々の日常生活の至る所に存在し、環境および我々の健康に深刻な被害を引き起こす。
【0004】
さらに、5つの最も広く使用されているプラスチック(PE、PVC、PP、PS、ABS)の中で、PVCは塩素を含有する唯一のプラスチックである。PVCは塩素を含むため、可塑剤を添加することによって柔らかさが変化し得る。さらに、PVCは、極めて悪い熱安定性を示す。可塑剤とは別に、太陽または高温にさらされたときにPVC製品が熱分解するのを防ぐために、PVCには安定剤を添加しなければならない。安定剤は、通常、鉛、カドミウムまたは亜鉛などの重金属である。したがって、PVCはそれ自体ほど単純ではない。PVCは、環境および我々の健康に有害な可塑剤および安定剤を含有する。添加剤を一切含まないPVC自体は無毒であるが、役に立たない。
【0005】
したがって、Greenpeaceによって使用されている「有毒プラスチック」という用語は、添加剤を一切含まないPVC自体を指すわけではなく、単に添加剤を含有するPVC製品を指すわけでもない。「有毒プラスチック」という用語は、PVC製品のライフサイクル全体を指し、原材料の抽出から始まる、製造、使用から廃棄までのその各段階が環境および我々の健康にとって有害である。
【0006】
さらに、PVCは、腐食に耐性があり、明るい色、高い硬度および高い耐久性を有するが、より劣る熱安定性および光安定性を示す。日光に長時間さらされると、または100℃に置かれると、PVCは分解され、その結果、塩化水素が放出される。従って、プラスチックを製造する際には、耐熱性、靭性、伸展性などを強化するために、安定剤、可塑剤および抗劣化剤(antiager)などのいくつかの有毒な補助材料を添加する必要がある。純粋なPVCの密度は1.4g/cm3であり、可塑剤などの添加剤を含むPVCの密度は1.15~2.00g/cm3である。PVC中の有害な添加剤および可塑剤は、流出または気化し得、したがって生物の内分泌系および生殖系を乱し、癌を発症するリスクをもたらし得る。その結果、EU諸国によっていくつかの種類の可塑剤が高懸念物質としてリストに挙げられており、これらの物質の使用は完全に禁止されている。さらに、米国では、例えば、プラスチック廃棄物の75%が最終的に埋め立てごみとなり、これは環境に有害である。したがって、PVCによって織られた織物構造体の上記問題に関しては、依然として改善の余地が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、廃棄問題に対する環境に優しい解決策として役立つ織物構造体を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の織物構造体は、繊維ベース層と接着剤層とを含む。繊維ベース層は、網目を有し、その基本組成がセルロースである繊維を含む。接着剤層は網目の中に入り込む。
【0009】
本開示の一実施形態において、織物構造体は、網目の上に位置する接着剤層の表面上に配置されたコーティングをさらに含む。コーティングは、アクリル樹脂材料を含む。
【0010】
本開示の一実施形態において、コーティングの厚さは0.01mm~0.15mmの範囲である。
【0011】
本開示の一実施形態において、接着剤層はスラリーを含む。スラリーは、リン、アンチモンまたは臭素を基礎とする添加剤を含む。
【0012】
本開示の一実施形態において、接着剤層は光沢剤を含む。
【0013】
本開示の一実施形態において、接着剤層は補助剤を含む。
【0014】
本開示の一実施形態において、繊維ベース層の厚さは、0.2mm~0.8mmの範囲である。
【0015】
本開示の一実施形態において、接着剤層は、繊維ベース層の第1の表面上に位置する第1の接着剤層と、前記第1の表面と反対側の前記繊維ベース層の第2の表面上に位置する第2の接着剤層とを含む。第1の接着剤層の厚さおよび第2の接着剤層の厚さは、0.2mm~0.8mmの範囲である。
【0016】
本開示の一実施形態において、織物構造体は、接着剤層の表面上に配置された遮光層をさらに含む。
【発明の効果】
【0017】
上記に基づいて、本開示の繊維ベース層は網目を有し、その基本組成がセルロースである繊維を含む。セルロースは天然繊維であるため、廃棄過程中により大きな分解速度および生物学的適合性を有し、その結果、織物構造体の廃棄問題に対する環境に優しい解決策として役立ち得る。
【0018】
本開示の前述の特徴および利点をさらに理解しやすくするために、図面を伴う実施形態を以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、従来の織物構造体の外観の概略図である。
【0020】
【
図2】
図2は、従来の織物構造体の概略断面図である。
【0021】
【
図3A】
図3Aは、本開示のいくつかの実施形態による織物構造体の繊維ベース層の外観の概略図である。
【0022】
【0023】
【
図4】
図4は、本開示のいくつかの実施形態による織物構造体の斜視断面図である。
【0024】
【
図5】
図5は、
図4中の断面領域5-5’の概略断面図である。
【0025】
【
図6】
図6は、本開示のいくつかの実施形態による織物構造体の概略断面図である。
【0026】
【
図7】
図7は、本開示のいくつかの実施形態による織物構造体の応用を例示する概略図である。
【0027】
【
図8】
図8は、本開示のいくつかの実施形態による木材パルプビスコース繊維と他の分解性材料の生分解率の比較を示す座標グラフである。
【0028】
各図中の層は例示であることに留意されたい。本開示は、図示されているとおりの形状、層の数および厚さ比に限定されない。
【発明の詳細な説明】
【0029】
本開示は、図面を参照することによってより包括的に理解され得る。しかしながら、本開示はまた、様々な形態で具体化され得、本明細書に記載されている実施形態に限定されるべきではない。図面中の層および領域の厚さまたはサイズは、明確にするために拡大されていることがあり得る。同一または類似の要素は同一または類似の参照数字によって指定されており、以下の段落ではその記述は省略される。
【0030】
図3Aは、本開示のいくつかの実施形態による織物構造体の繊維ベース層の外観の概略図である。
図3Bは、
図3A中の断面領域3B-3B’の概略断面図である。
図4は、本開示のいくつかの実施形態による織物構造体の斜視断面図である。
図5は、
図4中の断面領域5-5’の概略断面図である。
【0031】
まず、本実施形態の織物構造体60は、例えば、インクジェット塗装の広告用帆布であるが、本開示はこれに限定されない。織物構造体は、任意の他の適切な織物構造体であり得る。
図3A、
図3B、
図4および
図5を参照すると、実施形態において、織物構造体60は、繊維ベース層20および接着剤層(あるいは接着剤層30または接着剤層40)を含む。繊維ベース層20は、網目23を有し、その基本組成がセルロース(C
6H
10O
5)
nである繊維を含む。接着剤層(あるいは接着剤層30または接着剤層40)は、網目23中に入り込む。したがって、本実施形態の繊維ベース層20は網目を有し、その基本組成がセルロースである繊維を含む。セルロースは天然繊維であるため、廃棄過程中により大きな分解速度および生物学的適合性を示し、その結果、織物構造体の廃棄問題に対する環境に優しい解決策として役立ち得る。
【0032】
いくつかの実施形態において、繊維ベース層20は、その基本組成がセルロースである木材パルプビスコース繊維の縦糸21および横糸22によって織られた網目形状の織布であり得る。したがって、繊維ベース層20は、
図3Aおよび
図3Bに示すように、網目23を有する。ここで、木材パルプビスコース繊維は、以下の工程により製造される。天然繊維(木材繊維またはコットンリンター)が原料として採用され、次いで、アルカリ化、熟成、スルホン化などの手順を通じて可溶性のキサントゲン酸セルロースが製造され、希釈された苛性アルカリ溶液中に溶解されてビスコースを製造する。次いで、ビスコースは湿式紡糸を経て、木材パルプビスコース繊維を製造する。さらに、木材パルプビスコース繊維の乾燥強度は30.0cN/texを超え、木材パルプビスコースは良好な吸湿性を示す。標準大気条件での木材パルプビスコース繊維の水分率は約13%である。木材パルプビスコース繊維は吸湿後に明らかに膨張し、その直径は約50%増加し得るが、本開示はこれに限定されない。他の実施形態において、繊維ベース層20は、その基本組成がセルロースである綿糸を用いて製造され得る。さらに、天然繊維は、廃棄過程および自然の水性環境において良好な分解効果を示す。したがって、天然繊維は、好ましい生物学的適合性および環境保護の利益を示す。
【0033】
いくつかの実施形態において、繊維ベース層20が、高密度の網目23を有し、高い引張特性を有するように、繊維ベース層20の目付量は、約170gsm~約200gsmであり、その厚さは、約0.2mm~約0.8mmである。例えば、繊維ベース層20の厚さは0.3mmであり得るが、本開示はこれに限定されない。
【0034】
いくつかの実施形態において、縦糸21と横糸22の交差の角度は90度であり、縦糸21と横糸22の幅は約0.2mm~約1mmである。本開示はこれに限定されない。
【0035】
いくつかの実施形態において、網目23の形状は四角形または他の適切な形状であり得、網目23の密度は、縦方向に34~50ストランド/平方インチ、横方向に35~50ストランド/平方インチである。さらに、網目23の各々は、実質的に同一の大きさを有し得る。本開示はこれに限定されない。
【0036】
いくつかの実施形態において、繊維ベース層20は、第1の表面24と、第1の表面24の反対側の第2の表面25とを有する。接着剤層30は、繊維ベース層20の第1の表面24上に位置する。接着剤層40は、繊維ベース層20の第2の表面25上に位置する。さらに、接着剤層30および接着剤層40は、繊維ベース層20上に取り付けられ、繊維ベース層20によって部分的に吸収されて網目23の中に入り込む。したがって、接着剤層30および接着剤層40は、網目23を部分的に覆い得るが、本開示はこれに限定されない。
【0037】
いくつかの実施形態において、接着剤層30および接着剤層40が網目23の中に入り込むことができるようにするために、接着剤層30および接着剤層40は、繊維ベース層20の第1の表面24および第2の表面25の上にそれぞれコーティングされ得る。例えば、スクレーパーを用いて、接着材料の液体を繊維ベース層20上にコーティングし得る。本開示はこれに限定されない。他の実施形態において、接着剤層30および接着剤層40はまた、積層フィルムを通してまたはその他の適切な様式で繊維ベース層20上に形成し得る。
【0038】
いくつかの実施形態において、接着剤層30および接着剤層40の材料は、防水性および防火性である水性ポリアクリラート(PA)織物コーティング接着剤であり得るが、本開示はこれに限定されない。代替の実施形態において、接着剤層30および接着剤層40の材料は、PU、PPまたはPEなどの材料であり得る。ここで、水性ポリアクリラート系織物コーティング接着剤は、以下から構成され得る。全組成物の総含有量の100重量%に基づいて、組成物は、主材料として200g/m2~230g/m2の範囲の45重量%~65重量%の水性ポリアクリラートと、20重量%~35重量%の難燃性スラリーと、4重量%~12重量%の光沢剤と、2重量%~8重量%の水と、0.4重量%~3重量%の補助剤とを含む。このようにして、織物構造体60の目付量は、約370g/m2~430g/m2であるが、本開示はこれに限定されない。
【0039】
さらに、水性ポリアクリラート系織物コーティング接着剤は、防水機能および難燃性機能などの複数の機能を有する。水性ポリアクリラート織物コーティング層接着剤は、一般に、硬質成分(例えば、ポリアクリル酸メチル)と軟質成分(例えば、ポリアクリル酸ブチル)によって共重合されている。ポリアクリラートコーティング層の主モノマーは、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどである。その防水機能を促進するために、必要であれば、アクリルアミドおよびアクリロニトリルが添加され得る。重合開始剤としては、通常、過酸化物(例えば、過硫酸カリウム)が採用される。したがって、水性ポリアクリラート織物コーティング接着剤は、良好な耐光性および耐候性、黄変しにくいこと、良好な透明性および相溶性、カラーコーティング製品製造に好ましいこと、良好な耐洗濯性、良好な接着性、および費用対効果などの機能を有する。本開示はこれに限定されない。
【0040】
いくつかの実施形態において、難燃性スラリーは、リンをベースとする添加剤、アンチモンをベースとする添加剤、臭素をベースとする添加剤、ポリリン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、コロイド状五酸化アンチモン、三酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、ホウ酸亜鉛、酸化ジルコニウム、リン酸二アンモニウム、スルファミン酸、スルファミン酸塩、ホウ酸、ボラートおよび水酸化アルミニウムの少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。しかしながら、本開示はこれに限定されない。
【0041】
いくつかの実施形態において、光沢剤は、蛍光増白剤を含み、蛍光増白剤、分散剤および水から構成され得る。蛍光増白剤は、トリアジン-スチルベンの化合物であり得、分散剤は、メチレンジナフタレンスルホン酸ナトリウムの化合物であり得る。このため、蛍光増白剤の光学的効果を使用することによって、製造される織物構造体60の白色度が高められる。しかしながら、本開示はこれに限定されない。
【0042】
いくつかの実施形態において、補助剤は、紫外線安定剤、酸化防止剤もしくは帯電防止剤の1つまたはこれらの任意の組み合わせを含み、これらから構成され得る。しかしながら、本開示はこれに限定されない。
【0043】
いくつかの実施形態において、接着剤層30の厚さおよび接着剤層40の厚さは、約0.2mm~約0.8mmである。例えば、接着剤層30の厚さおよび接着剤層40の厚さは、0.3mmであり得るが、本開示はこれに限定されない。
【0044】
いくつかの実施形態において、織物構造体60は、網目23の上に位置する接着剤層(例えば、接着剤層40)の表面上に配置されたコーティング50をさらに含む。コーティング50は、アクリル樹脂材料(吸水性を有する)を含む。本開示はこれに限定されない。代替の実施形態において、接着剤層30および接着剤層40の材料は、PU、PPまたはPEなどの材料であり得る。さらに、コーティング50は、ブロッティング特性を示し得る。しかしながら、本開示はこれに限定されない。
【0045】
いくつかの実施形態において、コーティング50は、接着剤層40の表面上にコーティングされ得る。例えば、スクレーパーを用いて、コーティング材料の液体を接着剤層40上にコーティングし得る。本開示はこれに限定されない。他の実施形態において、コーティング50はまた、積層フィルムを通してまたはその他の適切な様式で接着剤層40上に形成し得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、コーティング50の厚さは、約0.01mm~約0.15mmである。例えば、コーティング50の厚さは0.02mmであり得、デジタルインクジェット塗装のポスター塗料がコーティング50の上面51上に付着され得る。しかしながら、本開示はこれに限定されない。
【0047】
いくつかの実施形態において、コーティング50の表面の凹凸微細構造は、織物構造体60の材料特性に基づくが、本開示はこれに限定されない。
【0048】
上記実施形態における要素の参照数字および説明の部分は、同一または類似の要素が同一の参照数字で表記されている以下の実施形態において用いられることに留意されたい。同一の技術的特徴の説明は省略する。省略された説明に関しては、上記の実施形態を参照することができ、以下の実施形態では繰り返さない。
【0049】
図6は、本開示のいくつかの実施形態による織物構造体の概略断面図である。
図7は、本開示のいくつかの実施形態による織物構造体の応用を例示する概略図である。
図6および
図7を参照すると、実施形態の織物構造体60は、接着剤層30の表面上に配置された遮光層80をさらに含む。本開示はこれに限定されない。他の実施形態において、遮光層80は、接着剤層40(図示せず)の表面上に配置され得る。さらに、遮光層80は、接着剤層30の表面上にのみ配置され得、接着剤層40の表面上にのみ配置され得、または接着剤層30と接着剤層40の表面の両方に同時に配置され得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、遮光層80は、接着剤層(接着剤層30および/または接着剤層40)の表面上にコーティングされ得る。例えば、スクレーパーで、コーティング材料の液体を、接着剤層(接着剤層30および/または接着剤層40)上にコーティングし得る。本開示はこれに限定されない。他の実施形態において、遮光層80は、積層フィルムを通して、または他の適切な様式で、接着剤層(接着剤層30および/または接着剤層40)上にも形成し得る。
【0051】
さらに、実施形態は、
図6および
図7に示されているように、織物構造体60上に配置されたインク70をさらに含み得る。織物構造体60のコーティング50のブロッティング機能により、インク70がコーティング50の上にインクジェット塗装された後に、コーティング50に追加の透明なコートまたは保護層を塗布する必要はない。インクジェット塗装後の視覚的効果および品質は、製品の経済的価値を増大させるように高められる。しかしながら、本開示はこれに限定されない。
【0052】
いくつかの実施形態において、織物構造体60のサイズは、織物構造体60がインク70の担体として機能し得るように、インク70のサイズより大きいが、本開示はこれに限定されない。
【0053】
図8は、本開示のいくつかの実施形態による木材パルプビスコース繊維と他の分解性材料の生分解率の比較を示す座標グラフである。
図8において、縦軸は生分解率(%)を示し、横軸は日数を示す。180日間でのポリエステル繊維の生分解率は約10%に過ぎず、ポリエステル短繊維の混紡織物の生分解率は約45%であり、これは環境保護の基準に適合しない。木材パルプビスコース繊維の生分解率は、45日間で75%超、180日間で90%超であり得、最終的には完全に分解され得る。したがって、木材パルプビスコース繊維は、ポリエステル繊維およびポリエステル短繊維の混紡織物よりもはるかに好ましい。PVCは分解することができないので、比較用の座標グラフにはPVCは含めていない。したがって、本開示では、木材パルプビスコース繊維が繊維ベース層20として採用される。木材パルプビスコース繊維の乾燥強度は30.0cN/texを超え、木材パルプビスコース繊維は高い吸湿性を示すので、織物構造体が良好な相溶性および強い相互結合力などの特性を示し得るように、水性ポリアクリラート織物コーティング接着剤を伴う木材パルプビスコース繊維が使用され得る。したがって、織物構造体は、好ましい製品としての役割(例えば、環境に優しい優れたインクジェット塗装広告用帆布としての役割)を果たし得る。本開示はこれに限定されない。
【0054】
本開示において、織物構造体60の繊維ベース層20によって採用される木材パルプビスコース繊維は、高密度の網目23を有し、高い引張特性を有し、水性ポリアクリラート織物コーティング接着剤から作られた接着剤層30および接着剤層40は、繊維ベース層20の第1の表面24および第2の表面25上にそれぞれコーティングされる。これらの層は、無毒、無臭および無味である乳白色の高度に結晶化されたポリマーである。これらの層は、PVCの密度の約60%であるわずか0.90~0.91g/cm3の密度を有する最も軽量のタイプのプラスチックの1つから作製される。プラスチックの中でもポリアクリラートは、最高の耐熱性を示し、80℃~100℃の熱変形温度を有し、優れた応力割れ抵抗および長い曲げ疲労寿命も示す。さらに、コーティング50は、主にアクリル樹脂から構成され、ポリアクリラートとともに適切な割合で使用されると、ブロッティング機能を有し得る。したがって、本開示の織物構造体60は、防火コーティング、防水コーティングおよびブロッティングコーティングの複合構造体であり得るが、本開示はこれに限定されない。
【0055】
さらに、織物構造体60はPVCを含まず、無毒であるため、織物構造体60は、屋内および屋外広告ならびに屋内装飾に特に適している。織物構造体60は、医療標準の使用にも適合する。さらに、現在市販されている製品と比較して、織物構造体60の重量は35%減少し、したがって織物構造体60は軽く、柔らかい。織物構造体60は、設置または分解が容易で便利であり、取り外しが容易である。加えて、織物構造体60は優れた組み立て構造強度を示し、所定の成形機で加工することができるので、織物構造体60の幅(W)は、顧客のニーズに基づいてカスタマイズされ得る。幅(W)は、最大5.0mに達し得る。このように、織物構造体60は、実用的なデザインの要望に基づいて、柔軟にインクジェット塗装され得る。したがって、織物構造体60は、応用性および選択性がより大きくなり得る。
【0056】
本開示の木材パルプビスコース繊維は、(織物構造体60の)OEKO-TEX STANDARD 100試験報告書SH004 133085.1により、OEKO-TEX(登録商標)ラベルを使用することが、OEKO-TEX(登録商標)によるSTANDARD 100によって認証されている。報告書には次のように記載されている:OEKO-TEX(登録商標)によってSTANDARD 100に分類される製品クラスIによれば、別表4中の製品の試験結果は、上記の商品が乳児用の最新織物製品の規格および現行のEU REACHの附属書XVII(アゾ染料、ニッケル等の使用の制限を含む)に準拠することを示す。一方、上記の商品は、米国の消費者製品安全性改善法(CPSIA)における子供向け製品の総鉛含有量制限にも適合している。認証された企業は、ISO17050 1に従って対象物の指定された要件への適合性が証明されていることを宣言し、OEKO-TEX(登録商標)ラベルが試験サンプルに適合する商品にのみ適用されることを保証する。宣言は、審査および検証を受ける。
【0057】
以下は、本開示の織物構造体60と従来のPVC織物構造体との比較である。
【表1】
【0058】
従来のPVC織物構造体と比較して、本開示の織物構造体はより軽量であり、迅速に交換され得る。本開示の織物構造体は刺激臭を有さない。本開示の織物構造体は、人体に対して毒性でも有害でもなく、感作を引き起こさない。本開示の織物構造体は可塑剤を含有しないので、2年より長く保存され得る。本開示の織物構造体は、より深刻な汚染を引き起こすことなく埋められ、燃焼され得、そのコーティングは分解性でリサイクル可能である。さらに、木材パルプビスコース繊維の生分解率は90%またはそれより高い。
【0059】
本開示の織物構造体60は、EUによって認定された実験室認証機関であるSGS(上海)によって試験された。織物構造体60は、欧州規格EN13501-1-B-s1-d0による耐火性に関する分類Bの要件を満たす。織物構造体60の製品の燃焼機能は、煙の生成に関する追加の分類s1の要件、および燃焼中の発炎燃焼滴/粒子の生成に関する追加の分類d0の要件を満たす。したがって、本開示の織物構造体60は、耐火性に関してより高い安全基準を有する欧州規格に適合する。換言すれば、本開示の織物構造体60は、国際規格に適合する難燃性および耐火性の特性を示す。
【0060】
本開示の織物構造体60は、欧州のTUV感作試験および皮膚刺激試験によって認証されている。試験報告書には、以下のように記載される。
【0061】
感作試験
【0062】
試験の環境条件:22℃~26℃(室温);湿度:50%~70%。試験は、ISO 10993-10:2010に従う。試験対象:体重302.4g~362.8gの白色雄モルモット30匹。抽出媒体:1.0.9%の塩化ナトリウム、2.綿実油。陰性対照:同じ抽出媒体。抽出物の調製:抽出物試料の2つの媒体は、それぞれ6cm2/ml、70℃で24時間調製した。試験方法:最大化試験。試験手順:1.誘導段階:抽出物を動物の背部に注射した。1週間後、抽出物パッチで注射部位を48時間覆った。2.刺激段階:皮膚準備後、動物の腹部領域を抽出物パッチで24時間覆った。評価指標:パッチ除去の24時間後および48時間後に、動物の処置された部位の紅斑または腫脹を観察した。
【0063】
結論:48時間の観察期間中、対照群の皮膚反応の評価尺度は0であり、試験群の皮膚反応の評価尺度は0であり、感作反応が存在しなかったことを示す。ISO10993-10:2010の手順に従って、試験試料抽出物の皮膚感作の試験結果は要件に適合する。
【0064】
皮膚刺激試験
【0065】
試験の環境条件:22℃~26℃(室温);湿度:50%~70%。試験は、ISO 10993-10:2010に従う。試験対象:体重2.3kg~2.7kgの雄の健康なニュージーランドウサギ6匹。抽出媒体:1.0.9%の塩化ナトリウム、2.綿実油。陰性対照:同じ抽出媒体。接触様式:皮膚への塗布。接触時間:24時間。評価指標:24時間、48時間および72時間で、接触部位の皮膚の問題(skin issue)上の紅斑または腫脹を観察した。
【0066】
結論:パッチ除去の24時間後、48時間後および72時間後に、0.9%塩化ナトリウムの抽出物注射で処置された皮膚の問題の一次刺激スコアは0であった(平均スコアは0であった)。パッチ除去の24時間後、48時間後および72時間後に、綿実油の抽出物注射で処置された皮膚問題の一次刺激スコアは0であった(平均スコアは0であった)。ISO10993-10:2010の手順に従って、試験試料抽出物の皮膚刺激試験の試験結果は要件に適合する。
【0067】
したがって、上記の試験報告は、本開示の織物構造体60が医療標準の使用に適合することを証明している。
【0068】
本開示の織物構造体60は、添加剤を一切添加することなくマイナス40℃で耐寒性を示す。織物構造体60は、低温での使用のための標準試験(ASTM D2136-2002)に合格する。
【0069】
上記を要約すると、本開示の繊維ベース層は網目を有し、その基本組成がセルロースである繊維を含む。セルロースは天然繊維であるため、廃棄過程中により大きな分解速度および生物学的適合性を示し、その結果、織物構造体の廃棄問題に対する環境に優しい解決策として役立ち得る。さらに、本開示の織物構造体は、広告用帆布として好ましいインクジェット塗装効果を示す。現在市販されている広告用帆布と比較して、本開示の織物構造体の重量は、ほぼ半分減少し、より柔らかく、より便利に使用し得る。本開示の織物構造体の取り付けおよび取り外しも迅速かつ簡単である。さらに、本開示の織物構造体の材料は軽量であり、コンパクトなサイズを有し、輸送コストを効果的に削減し得る。さらに、本開示の織物構造体においては、従来の広告用帆布によって採用されているPVCと比較して、木材パルプビスコース繊維の製造がより容易で、エネルギー効率がより高い。対照的に、PVC製品は、典型的にはエネルギー集約的な製品である。PVCの製造は、炭化カルシウム法およびエチレン法のいずれにおいてもより多くのエネルギーとコストを消費し、これは、省エネルギー、低炭素排出、リサイクルおよび再利用という現在の世界的な傾向に反する。さらに、木材パルプビスコース繊維から作られた環境に優しいインクジェット塗装広告用帆布の廃棄過程も環境保護の要件に適合する。さらに、本開示の織物構造体は、容易に破砕およびリサイクルされ、外装、植木鉢、ハンドバッグの裏地などの他の製品に変換され得る。本織物構造体を燃焼させた後に生成される気体は、大気汚染を引き起こす可能性が低く、分解のために最終的に埋め立てごみになるときに土壌および水を汚染する他の有毒物質を生成しない。したがって、本織物構造体は、環境に優しい解決策であり得る。
【0070】
上記実施形態を参照して本開示を説明してきたが、上記実施形態は本開示を限定することを意図していない。本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、記載された実施形態に対する修正を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって定義され、上記の詳細な説明によって定義されない。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本織物構造体は、織物分野に適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
10,60:織物構造体
11,20:繊維ベース層
12,13:PVC層
21:縦糸
22:横糸
23:網目
24:第1の表面
25:第2の表面
30,40:接着剤層
50:コーティング
51:上面
70:インク
80:遮光層
【外国語明細書】