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特開2022-107628抗VEGF DARPINを用いた眼の容態の治療方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107628
(43)【公開日】2022-07-22
(54)【発明の名称】抗VEGF DARPINを用いた眼の容態の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20220714BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220714BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220714BHJP
   C07K 14/435 20060101ALN20220714BHJP
【FI】
A61K38/17
A61P27/02
A61P43/00 111
C07K14/435 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022076645
(22)【出願日】2022-05-06
(62)【分割の表示】P 2020106978の分割
【原出願日】2014-11-04
(31)【優先権主張番号】61/900,246
(32)【優先日】2013-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/016,620
(32)【優先日】2014-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591018268
【氏名又は名称】アラーガン、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】ホーマン トーマス
(72)【発明者】
【氏名】チータム ジャネット
(72)【発明者】
【氏名】ホイットカップ スコット
(72)【発明者】
【氏名】リッパ エリック
(57)【要約】
【課題】滲出型加齢黄斑変性及び網膜に関する他の容態に罹患している患者の治療方法の提供。
【解決手段】アンキリン反復ドメインを含む結合タンパク質を、各用量間で25~35日間の間隔を挟んで2~5用量でまず投与し、次に、より長い用量間間隔で追加の用量で投与することによる、滲出型加齢黄斑変性及び網膜に関する他の容態に罹患している患者の治療方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
VEGF-AxxxとVEGFR-2の間の結合の阻害方法であって、このような阻害を必要とする患者へ、アンキリン反復ドメインを含む組換え結合タンパク質約0.25mg~約4mgを投与する工程を含み、この中で、前記組換え結合タンパク質は、2~5用量で投与され、各用量間には25~35日の間隔がある、前記方法。
【請求項2】
黄斑変性の治療方法であって、このような治療を必要とする患者へ、アンキリン反復ドメインを含む組換え結合タンパク質約0.25mg~約4mgを投与する工程を含み、この中で、前記組換え結合タンパク質は、2~5用量で投与され、各用量間には25~35日の間隔がある、前記方法。
【請求項3】
前記黄斑変性は、滲出型黄斑変性である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
網膜の疾患に罹患している患者における視力の改善方法であって、このような改善を必要とする患者へ、アンキリン反復ドメインを含む組換え結合タンパク質約0.25mg~約4mgを投与する工程を含み、この中で、前記組換え結合タンパク質は、2~5用量で投与され、各用量間には25~35日の間隔がある、前記方法。
【請求項5】
網膜の前記疾患は、滲出型黄斑変性、ポリープ状脈絡膜血管新生、及び網膜血管腫性増殖、糖尿病黄斑浮腫、病的近視、及び網膜分枝血管閉塞症から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
網膜における液体の減少方法であって、このような減少を必要とする患者へ、アンキリン反復ドメインを含む組換え結合タンパク質約0.25mg~約4mgを投与する工程を含み、この中で、前記組換え結合タンパク質は、2~5用量で投与され、各用量間には25~35日の間隔がある、前記方法。
【請求項7】
前記液体は、硝子体内液、網膜下液、及び網膜内嚢胞内液から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
網膜厚の減少方法であって、このような減少を必要とする患者へ、アンキリン反復ドメインを含む組換え結合タンパク質約0.25mg~約4mgを投与する工程を含み、この中で、前記組換え結合タンパク質は、2~5用量で投与され、各用量間には25~35日の間隔がある、前記方法。
【請求項9】
前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して2用量で投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して3用量で投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して4用量で投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して5用量で投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、前記2~5用量に続く追加の用量を、各追加の用量間に25~115日の間隔を有して投与することをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して2用量で投与された後、各追加の用量間に50~115日の間隔を有して追加の用量で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して2用量で投与された後、各追加の用量間に50~90日の間隔を有して追加の用量で投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して2用量で投与された後、各追加の用量間に50~60日の間隔を有して追加の用量で投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して2用量で投与された後、各追加の用量間に80~90日の間隔を有して追加の用量で投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して2用量で投与された後、各追加の用量間に105~115日の間隔を有して追加の用量で投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して3用量で投与された後、各追加の用量間に50~115日の間隔を有して追加の用量で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して3用量で投与された後、各追加の用量間に50~90日の間隔を有して追加の用量で投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して3用量で投与された後、各追加の用量間に50~60日の間隔を有して追加の用量で投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して3用量で投与された後、各追加の用量間に80~90日の間隔を有して追加の用量で投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して3用量で投与された後、各追加の用量間に105~115日の間隔を有して追加の用量で投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して4用量で投与された後、各追加の用量間に50~115日の間隔を有して追加の用量で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項25】
前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して4用量で投与された後、各追加の用量間に50~90日の間隔を有して追加の用量で投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して4用量で投与された後、各追加の用量間に50~60日の間隔を有して追加の用量で投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して4用量で投与された後、各追加の用量間に80~90日の間隔を有して追加の用量で投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して4用量で投与された後、各追加の用量間に105~115日の間隔を有して追加の用量で投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して5用量で投与された後、各追加の用量間に50~115日の間隔を有して追加の用量で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項30】
前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して5用量で投与された後、各追加の用量間に50~90日の間隔を有して追加の用量で投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して5用量で投与された後、各追加の用量間に50~60日の間隔を有して追加の用量で投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して5用量で投与された後、各追加の用量間に80~90日の間隔を有して追加の用量で投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して5用量で投与された後、各追加の用量間に105~115日の間隔を有して追加の用量で投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記結合タンパク質は、少なくとも5kDaの分子量を有するポリエチレングリコール部分をさらに含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記ポリエチレングリコール部分は、5kDa、10kDa、及び20kDaからなる群から選択される分子量を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記アンキリン反復ドメインのN末端キャッピングモジュールは、位置5にAsp残基を含む、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記アンキリン反復ドメインは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7のアンキリン反復ドメインからなる群から選択される、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記結合タンパク質は、配列番号3のアミノ酸1~126を含むアンキリン反復ドメインを含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記結合タンパク質は、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、及び配列番号22からなる群から選択されるアンキリン反復配列モチーフを有する反復モジュールを含むアンキリン反復ドメインを含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記結合ドメインは、109M未満のKdでVEGF-Axxxを結合する、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記結合タンパク質は、VEGFR-1に対するVEGF-Axxxの結合を阻害する、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記アンキリン反復ドメインは、そのC末端で、ポリペプチドリンカー及びC末端Cys残基に対するペプチド結合を介して共役し、この中で、前記C末端Cysのチオールは、マレイミドカップリング型ポリエチレングリコールへさらに共役する、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記マレイミドカップリング型ポリエチレングリコールは、[3-(3-マレイミド-1-オキソプロピル)アミノ]プロピル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレンである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ポリペプチドリンカーは、2~24のアミノ酸からなる、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記結合タンパク質は、医薬として許容され得る担体及び/または希釈剤とともに投与される、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記担体はPBSである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記結合タンパク質は、硝子体内注射によって投与される、請求項45または46に記載の方法。
【請求項48】
前記結合タンパク質は、約0.25mg、約0.5mg、約1mg、約2mg、約3mg、または約4mgの用量で投与される、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記方法は、黄斑変性、ポリープ状脈絡膜血管新生、網膜血管腫性増殖、糖尿病黄斑浮腫、病的近視、網膜分枝血管閉塞症、または網膜中心静脈閉塞症に罹患している患者において当該容態を治療する上で有効である、請求項1及び9~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
患者の最高矯正視力は、治療の開始12週間後に少なくとも15文字まで改善する、請求項1~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記患者は、治療の開始4、8、または12週間後に、中心網膜における液体の約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%の減少を経る、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記患者は、治療の開始4、8、または12週間後に、網膜内浮腫、網膜内嚢胞、及び網膜下液のうちの1つ以上において、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%の減少を経る、請求項1~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記患者は、治療の開始4、8、または12週間後に、網膜内浮腫、網膜内嚢胞、及び網膜下液のうちの1つ以上において、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%の減少を経る、請求項1~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記減少は、スペクトルドメインOCTによって評価される、請求項52または53に記載の方法。
【請求項55】
前記患者は、治療の開始4、8、または12週間後に、以下、すなわち中心網膜厚、網膜内浮腫、網膜内嚢胞、及び網膜下液のうちの少なくとも2つにおける、または少なくとも3つにおける、または全部における減少を経る、請求項1~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記患者は、ラニビズマブ療法、ベバシズマブ療法、アフリベルセプト療法、またはペガプタニブ療法に対して不応性である、請求項1~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記患者は、ラニビズマブ、ベバシズマブ、またはアフリベルセプトの3回の硝子体内注射後の斑の中央1mm2の領域における20%未満の減少を有している、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記患者は、3用量、4用量、5用量、または6用量のラニビズマブ療法に対して不応性である、請求項56または57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記患者は、3用量、4用量、5用量、または6用量のベバシズマブ療法に対して不応性である、請求項56または57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記患者は、3用量、4用量、5用量、または6用量のアフリベルセプト療法に対して不応性である、請求項56または57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記患者は、3用量、4用量、5用量、または6用量のペガプタニブ療法に対して不応性である、請求項56または57のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2014年6月24日出願の米国仮出願第62/016,620号及び2013年11月5日出願の米国仮出願第61/900,246号の利益を請求する。これらの出願の両方の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
網膜は、眼の裏側の内面を覆う神経組織の薄い層である。網膜は、種々の種類のニューロンからなり、そのうち、最もなじみがあるのが、視覚の原因となる光受容体、光に対してより感受性のある杆体、及び色彩に対してより感受性のある錐体である。中心の高い視力の原因となるのは眼のこの部分である。
【0003】
網膜の疾患、及び特に網膜黄斑は、先進国における50歳を超える人々の視力障害及び失明の主要因である。これらの疾患には、加齢黄斑変性、近視性黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、糖尿病網膜症、網膜静脈分枝閉塞症、及び網膜中心静脈閉塞症が含まれる。黄斑変性は、子供において同様に生じる可能性がある。
【0004】
これらの疾患のうちのいくつかは、血管内皮増殖因子A(VEGF-A)と呼ばれるタンパク質を阻害する薬剤を用いて治療することができる。VEGF-Aは、血管の発達を刺激する。加齢黄斑変性の滲出型(または血管型)形態において、異常に高レベルのVEGFは、新たな血管の、光受容体に対する不可逆的な損傷を生じる黄斑への発達を刺激し、加えて、これらの新たに形成された血管は、血液及びタンパク質を網膜へと漏出し、光受容体によって既に占有された領域に瘢痕が形成される。VEGF-Aを阻害することは、これらの新たな血管の形成を遮断し、血液及びタンパク質の漏出を遮断し、したがって視覚を保護する。
【0005】
眼におけるVEGF-Aを阻害するのに現に使用されている薬剤は、ベバシズマブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、及びペガプタニブのたったの数個しかない。ラニビズマブは、VEGF-Aを阻害する抗体フラグメントであり、ベバシズマブは、これもまたVEGF-Aを阻害するヒト化モノクローナル抗体であり、ラニビズマブと同じ親抗体に由来する。アフリベルセプトは、ヒトIgG1のFc部分へ融合したヒトVEGF受容体1及び2の細胞外ドメインを含む組換え融合タンパク質である。ペガプタニブは、ラニビズマブ、ベバシズマブ、及びアフリベルセプトほど有効ではなく、そのため、さほど頻繁に使用されてはいない。
【0006】
実際、そういうわけで、眼におけるVEGFを阻害するのに使用され得る療法は、ベバシズマブ/ラニビズマブ及びアフリベルセプトのたったの2つしかない。それゆえ、利用可能な当該数個の療法よりも有効な、または当該療法とは異なる利益を提供する、網膜の疾患を治療することのできる療法について、当該技術分野における需要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、本発明の方法が、滲出型加齢黄斑変性及び網膜に関する他の容態を、患者への驚くべき利益を用いて治療するために使用され得ることを発見した。一実施形態において、当該方法は、組換え結合タンパク質の頻繁な用量に続くあまり頻繁ではない用量を送達することを含む。
【0008】
したがって、本発明の一実施形態において、患者へ約0.25mg~約4mgの結合タンパク質を投与した後、同じ用量を25~35日後に投与し、次に、当該結合タンパク質をさらに最高3回まで、同じ用量間間隔で任意に投与することができる。これらの初回の頻繁な用量の後、当該結合タンパク質を投与し続けて、少なくとも1つの追加の用量を与えるが、各追加の用量間の間隔は50~115日間である。治療はこの方法を続行され、患者が当該結合タンパク質を必要とする限り、50~115日間間隔で当該結合タンパク質を投与する。
【0009】
これは一例である。
本方法を使用して、網膜の疾患に罹患している患者における視力を改善し、網膜における異常な液体を減少させ、及び異常な網膜厚を減少させ得る。
【0010】
これら及び他の実施形態は、以下にさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明による結合タンパク質(アビシパル)1mg及び2mgを1日目ならびに4週後及び8週後に受容する滲出型加齢黄斑変性(「AMD」)に罹患している患者、ならびにラニビズマブ0.5mgを1日目ならびに4、8、12及び16週後に受容する患者における基線ならびに1、4、8、12、16、及び20週後の最高矯正視力(「BCVA」)を示す。図2~7も、このように治療した患者由来のデータを示す。
図2図2は、先に説明した3つの患者群におけるBCVAにおける15文字以上の改善のある患者の比率を示す。2.0mgのアビシパルは、各週について示す3つの棒からなるセットにおける左の棒であり、1.0mgのアビシパルは中央の棒であり、0.5mgのラニビズマブは右の棒である。
図3図3は、15文字未満のBCVAの損失として評価された、安定した視覚を達成した患者の比率を示す。2.0mgのアビシパルは、各週について示す3つの棒からなるセットにおける左の棒であり、1.0mgのアビシパルは中央の棒であり、0.5mgのラニビズマブは右の棒である。
図4図4は、2.0mgのアビシパル、1.0mgのアビシパル、及び0.5mgのラニビズマブを受容する患者における平均中心網膜厚を示す
図5図5は、網膜内液、網膜内嚢胞、及び網膜下液(3区画全部)が治療後に消散した患者の比率を示す。2.0mgのアビシパルは、各週について示す3つの棒からなるセットにおける左の棒であり、1.0mgのアビシパルは中央の棒であり、0.5mgのラニビズマブは右の棒である。
図6A図6A図6Gは、20/320+1の基線視力(スネレン法)を有する、かつ基線(1日目)ならびに4週後及び8週後に2mgのアビシパルを用いて治療した88歳のコーカサス人男性の網膜の画像を示す。示している画像は、基線(図6A)及びその後4週ごと(図6B図6G)時である。
図6B図6A図6Gは、20/320+1の基線視力(スネレン法)を有する、かつ基線(1日目)ならびに4週後及び8週後に2mgのアビシパルを用いて治療した88歳のコーカサス人男性の網膜の画像を示す。示している画像は、基線(図6A)及びその後4週ごと(図6B図6G)時である。
図6C図6A図6Gは、20/320+1の基線視力(スネレン法)を有する、かつ基線(1日目)ならびに4週後及び8週後に2mgのアビシパルを用いて治療した88歳のコーカサス人男性の網膜の画像を示す。示している画像は、基線(図6A)及びその後4週ごと(図6B図6G)時である。
図6D図6A図6Gは、20/320+1の基線視力(スネレン法)を有する、かつ基線(1日目)ならびに4週後及び8週後に2mgのアビシパルを用いて治療した88歳のコーカサス人男性の網膜の画像を示す。示している画像は、基線(図6A)及びその後4週ごと(図6B図6G)時である。
図6E図6A図6Gは、20/320+1の基線視力(スネレン法)を有する、かつ基線(1日目)ならびに4週後及び8週後に2mgのアビシパルを用いて治療した88歳のコーカサス人男性の網膜の画像を示す。示している画像は、基線(図6A)及びその後4週ごと(図6B図6G)時である。
図6F図6A図6Gは、20/320+1の基線視力(スネレン法)を有する、かつ基線(1日目)ならびに4週後及び8週後に2mgのアビシパルを用いて治療した88歳のコーカサス人男性の網膜の画像を示す。示している画像は、基線(図6A)及びその後4週ごと(図6B図6G)時である。
図6G図6A図6Gは、20/320+1の基線視力(スネレン法)を有する、かつ基線(1日目)ならびに4週後及び8週後に2mgのアビシパルを用いて治療した88歳のコーカサス人男性の網膜の画像を示す。示している画像は、基線(図6A)及びその後4週ごと(図6B図6G)時である。
図7A図7A図7Gは、20/63+1の基線視力(スネレン法)を有する、かつ基線(1日目)ならびに4週後及び8週後に2mgのアビシパルを用いて治療した75歳のラテンアメリカ系女性の網膜の画像を示す。示している画像は、基線(図7A)及びその後4週ごと(図7B図7G)時である。
図7B図7A図7Gは、20/63+1の基線視力(スネレン法)を有する、かつ基線(1日目)ならびに4週後及び8週後に2mgのアビシパルを用いて治療した75歳のラテンアメリカ系女性の網膜の画像を示す。示している画像は、基線(図7A)及びその後4週ごと(図7B図7G)時である。
図7C図7A図7Gは、20/63+1の基線視力(スネレン法)を有する、かつ基線(1日目)ならびに4週後及び8週後に2mgのアビシパルを用いて治療した75歳のラテンアメリカ系女性の網膜の画像を示す。示している画像は、基線(図7A)及びその後4週ごと(図7B図7G)時である。
図7D図7A図7Gは、20/63+1の基線視力(スネレン法)を有する、かつ基線(1日目)ならびに4週後及び8週後に2mgのアビシパルを用いて治療した75歳のラテンアメリカ系女性の網膜の画像を示す。示している画像は、基線(図7A)及びその後4週ごと(図7B図7G)時である。
図7E図7A図7Gは、20/63+1の基線視力(スネレン法)を有する、かつ基線(1日目)ならびに4週後及び8週後に2mgのアビシパルを用いて治療した75歳のラテンアメリカ系女性の網膜の画像を示す。示している画像は、基線(図7A)及びその後4週ごと(図7B図7G)時である。
図7F図7A図7Gは、20/63+1の基線視力(スネレン法)を有する、かつ基線(1日目)ならびに4週後及び8週後に2mgのアビシパルを用いて治療した75歳のラテンアメリカ系女性の網膜の画像を示す。示している画像は、基線(図7A)及びその後4週ごと(図7B図7G)時である。
図7G図7A図7Gは、20/63+1の基線視力(スネレン法)を有する、かつ基線(1日目)ならびに4週後及び8週後に2mgのアビシパルを用いて治療した75歳のラテンアメリカ系女性の網膜の画像を示す。示している画像は、基線(図7A)及びその後4週ごと(図7B図7G)時である。
図8図8及び図9は、4.2mgのアビシパル、3.0mgのアビシパル、及び0.5mgのラニビズマブを1日目、次いで患者がある再治療基準を満たした場合、16週後以内に投与した、175名の滲出型AMDに罹患している患者の試験における、治療後に網膜内液、網膜内嚢胞、及び網膜下液が消散した患者の比率を示す。図8は、3区画全部における液体が消散した患者の比率を示し、4.2mgのアビシパルは、各週について示す3つの棒からなるセットにおける左の棒であり、3.0mgのアビシパルは中央の棒であり、ラニビズマブは右の棒である。図9は、これらの区画のうちの1つ、2つ、3つ全部、または0において液体が消散した患者の比率を示す。
図9図8及び図9は、4.2mgのアビシパル、3.0mgのアビシパル、及び0.5mgのラニビズマブを1日目、次いで患者がある再治療基準を満たした場合、16週後以内に投与した、175名の滲出型AMDに罹患している患者の試験における、治療後に網膜内液、網膜内嚢胞、及び網膜下液が消散した患者の比率を示す。図8は、3区画全部における液体が消散した患者の比率を示し、4.2mgのアビシパルは、各週について示す3つの棒からなるセットにおける左の棒であり、3.0mgのアビシパルは中央の棒であり、ラニビズマブは右の棒である。図9は、これらの区画のうちの1つ、2つ、3つ全部、または0において液体が消散した患者の比率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(組換え結合タンパク質)
本発明の方法は、設計したアンキリン反復ドメインを含む結合ドメインを含む結合タンパク質を投与する。このような結合タンパク質及び当該結合タンパク質が含有する設計したアンキリン反復ドメインの例は、米国特許第7,417,130号、米国特許第8,110,653号及び米国特許出願公開第2011/0207668号において説明されており、これらの3つすべての全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0013】
「反復タンパク質」という用語は、1つ以上の反復ドメインを含むタンパク質を指す。一実施形態において、反復タンパク質の各々は、最多4個の反復ドメインを含む。別の実施形態において、反復タンパク質の各々は最多2個の反復ドメインを含む。別の実施形態において、反復タンパク質の各々はたった1個の反復ドメインを含む。反復タンパク質は、追加の非反復タンパク質ドメイン、ポリペプチドタグ及び/またはポリペプチドリンカーも含んでもよい。
【0014】
「反復ドメイン」という用語は、構造単位として2個以上の連続反復単位(モジュール)を含むタンパク質ドメインを指し、この中で、構造単位は同じ折りたたみを有し、かつ例えば接合疎水性中心を有する高次らせん構造を作るよう密接に積み重なっている。
【0015】
「設計した反復タンパク質」及び「設計した反復ドメイン」という用語はそれぞれ、米国特許第7,417,130号及び米国特許第8,110,653号において説明される手順の結果として得られる反復タンパク質または反復ドメインを指す。設計した反復タンパク質及び設計した反復ドメインは、合成的であり、天然由来ではない。当該反復タンパク質及び反復ドメインはそれぞれ、対応して設計した核酸の発現によって得られる人工のタンパク質またはドメインである。
【0016】
哺乳類VEGFファミリーは、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D(FIGFとしても公知)及び胎盤由来増殖因子(PIGF)(PGFとしても公知)と呼ばれる5つの糖タンパク質からなる。VEGF-Aは、血管新生抑制療法に有効な標的であることが示されている(Ellis,L.M.及びHicklin,D.J.,Nature Rev.Cancer 8,579~591,2008)。VEGF-Aリガンドは、VEGFR-1(FLT1としても公知)、VEGFR-2(KDRとしても公知)及びVEGFR-3(FLT4としても公知)と命名された3つの構造的に類似のIII型受容体チロシンキナーゼへ結合して当該チロシンキナーゼを活性化する。VEGFリガンドは、これらのチロシンキナーゼ受容体の各々に対して特有の結合特異性を有しており、当該結合特異性は、機能の多様性に寄与している。リガンド結合に応じて、VEGFRチロシンキナーゼは、別個の下流シグナル伝達経路網を活性化させる。VEGFR-1及びVEGFR-2は主として、血管内皮に認められるのに対し、VEGFR-3は主にリンパ管内皮に認められる。これらの受容体はすべて、細胞外ドメイン、単一膜貫通領域、及びキナーゼ挿入ドメインによって中断される共通チロシンキナーゼ配列を有する。より近年には、ニューロン誘導仲介因子のセマフォリン/コラプシンファミリーに対する受容体として元来同定されたニューロピリン(NRP-1)は、VEGF-Aに対するアイソフォーム特異的受容体として作用することが示された。
【0017】
VEGF-A遺伝子内の8個のエキソンからの代替的スプライシングによって生じるVEGF-Aの種々のアイソフォームは公知である。アイソフォームはすべて、エキソン1~5及び末端エキソンであるエキソン8を含有する。ヘパリン結合ドメインをコードするエキソン6及びエキソン7は、含まれることができまたは排除することができる。このことは、当該アイソフォームのアミノ酸番号により、VEGF-A165、VEGF-A121、VEGF-A189などと呼ばれるタンパク質のファミリーを生じる。しかしながら、エキソン8は、ヌクレオチド配列に2つの3’スプライス部位を含有し、当該部位は、長さが同一だがC末端アミノ酸配列が異なっているアイソフォームの2つのファミリーを生じるよう細胞によって使用されることができる(Varey,A.H.R.ら,British J.Cancer 98,1366~1379,2008)。アイソフォームの血管新生促進ファミリーであるVEGF-Axxx(「xxx」は、成熟タンパク質のアミノ酸番号を示す)は、エキソン8(エキソン8aの包含を結果として生じる)における最も近位の配列の使用によって生じる。より近年説明された血管新生抑制VEGF-Axxxbアイソフォームは、当該近位スプライス部位から当該遺伝子にさらに沿った遠位スプライス部位66bpの使用によって生じる。このことは結果的に、エキソン8a外でのスプライシング、及びVEGF-AxxxbファミリーをコードするmRNA配列の生成を生じる。VEGF-A165は、優勢な血管新生促進アイソフォームであり、種々のヒト固形腫瘍において共通して過剰発現している。VEGF-A165bは、エキソン8bによりコードされる、同定されたアイソフォームのうちの最初のものであり、血管新生抑制効果を有することが示された(Vareyら,同書、Konopatskaya,O.ら,Molecular Vision 12,626~632,2006)。当該アイソフォームは、VEGF-Aの内在性阻害形態であり、内皮細胞のVEGF-A誘発性増殖および遊走を低下させる。当該形態はVEGFR-2へ結合することはできるが、VEGF-A165b結合は結果的に、下流のシグナル伝達経路の受容体のリン酸化または活性化を生じない。
【0018】
「タンパク質」という用語は、ポリペプチドの少なくとも一部が、当該ポリペプチド鎖(複数可)内の及び/または当該ポリペプチド鎖(複数可)間の二次構造、三次構造、または四次構造を形成することによって、規定の三次元配置を有している、または獲得することができる、当該ポリペプチドを指す。タンパク質が2つ以上のポリペプチドを含む場合、個々のポリペプチド鎖は、例えば2つのポリペプチド間のジスルフィド結合によって非共有結合的にまたは共有結合的に結合していてもよい。二次構造または三次構造を形成することによって、既定の三次元配置を個々に有している、または獲得することができるタンパク質の一部は、「タンパク質ドメイン」と呼ばれる。このようなタンパク質ドメインは、当業者に周知である。
【0019】
組換えタンパク質、組換えタンパク質ドメイン及びこれらに類するものにおいて使用する「組換え」という用語は、当該ポリペプチドが当業者によって周知の組換えDNA技術の使用によって生成されることを意味する。例えば、ポリペプチドをコードする組換えDNA分子(例えば、遺伝子合成によって生成される)は、細菌発現プラスミド(例えば、pQE30,Qiagen)へとクローン化することができる。このような構築された組換え発現プラスミドが細菌(例えば、大腸菌)へと挿入されると、この細菌は、この組換えDNAによってコードされるポリペプチドを産生することができる。この対応して生成されるポリペプチドは、組換えポリペプチドと呼ばれる。
【0020】
「ポリペプチドタグ」という用語は、ポリペプチド/タンパク質へ結合したアミノ酸配列を指し、この中で、当該アミノ酸配列は、ポリペプチド/タンパク質の精製、検出、またはターゲティングに有用であり、あるいは当該アミノ酸配列は、ポリペプチド/タンパク質の物理化学的挙動を改良し、あるいは当該アミノ酸配列は、エフェクター機能を保有する。結合タンパク質の個々のポリペプチドタグ、部分及び/またはドメインは、互いに直接的にまたはポリペプチドリンカーを介して結合してもよい。これらのポリペプチドタグはすべて、当該技術分野で周知であり、当業者にとって完全に入手可能である。ポリペプチドタグの例は、小さなポリペプチド配列、例えば、His、myc、FLAG、または酵素(例えば、アルカリホスファターゼのような酵素)のようなStrep-タグもしくはStrep-部分であり、これらは、ターゲティング及び/またはエフェクター分子として使用することのできるポリペプチド/タンパク質、または部分(免疫グロブリンまたはそのフラグメントなど)の検出を可能にする。
【0021】
「ポリペプチドリンカー」という用語は、例えば2つのタンパク質ドメイン、1つのポリペプチドタグ及び1つのタンパク質ドメイン、1つのタンパク質ドメイン及びポリエチレングリコールのような1つの非ポリペプチド部分、または2つの配列タグを結合することができる。このような追加のドメイン、タグ、非ポリペプチド部分及びリンカーは、当業者に公知である。例のリストは、米国特許第7,417,130号及び米国特許第8,110,653号に提供されている。このようなリンカーの例は、可変長のグリシン-セリンリンカー、及びプロリン-トレオニンリンカーである。一実施形態において、当該リンカーは、2アミノ酸と24アミノ酸の間の長さを有し、別の実施形態において、当該リンカーは、2アミノ酸と16アミノ酸の間の長さを有する。
【0022】
「ポリペプチド」という用語は、複数の、すなわちペプチド結合を介して結合した2つ以上のアミノ酸のうちの1つ以上の鎖からなる分子に関する。一実施形態において、ポリペプチドは、ペプチド結合を介して結合した8個超のアミノ酸からなる。
【0023】
「ポリマー部分」という用語は、タンパク質性ポリマー部分または非タンパク質性ポリマー部分のいずれかを指す。一実施形態において、「タンパク質性ポリマー部分」とは、室温で1か月間、PBS中約0.1mMの濃度で保存した場合、オリゴマーまたは凝集体の10%超(または、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定される、5%超、2%超、1%超、及びいずれかの検出可能な量超過)を形成せずに、安定した三次構造を形成しないポリペプチドである。このようなタンパク質性ポリマー部分は、SECのための分子量標準物質として球状タンパク質を使用する場合に、当該ポリマー部分の有効な分子量よりも大きな、SECにおける見かけの分子量で流れる。一実施形態において、SECによって測定されるタンパク質性ポリマー部分の見かけの分子量は、当該ポリマー部分のアミノ酸配列から算出される有効分子量よりも1.5倍、2倍または2.5倍大きい。一実施形態において、SECによって測定される非タンパク質性ポリマー部分の見かけの分子量は、当該ポリマー部分の分子組成から算出される有効分子量よりも2倍、4倍または8倍大きい。一実施形態において、タンパク質性ポリマー部分のアミノ酸の50%超、70%超または90%超でさえ、円二色性(CD)測定によって測定される室温でのPBS中の約0.1mMの濃度で安定した二次構造を形成しない。一実施形態において、当該タンパク質性ポリマーは、ランダムコイル立体配座の典型的な近紫外CDスペクトルを示す。このようなCD分析は、当業者に周知である。また、50超、100、200、300、400、500、600、700または800個のアミノ酸を含むタンパク質性ポリマー部分を使用することができる。
【0024】
タンパク質性ポリマー部分の例は、XTEN(登録商標)(Amunixの登録商標、WO07/103515)ポリペプチド、またはWO08/155134において説明されるプロリン残基、アラニン残基及びセリン残基を含むポリペプチドである。このようなタンパク質性ポリマー部分は、例えば、標準的なDNAクローン化技術を使用する遺伝子融合ポリペプチドの生成によって本発明の結合ドメインへ共有結合でき、その後、当該ポリペプチドの標準的な発現及び精製が続く。VEGF-Axxxを結合する反復ドメイン及びこのようなタンパク質性ポリマー部分を含む結合タンパク質の例は、配列番号1及び配列番号4に示す。配列番号1のアミノ酸位置1~159は反復ドメインに対応し、配列番号1のアミノ酸位置161~1025はタンパク質性ポリマー部分に対応する。配列番号4のアミノ酸位置1~126は反復ドメインに対応し、配列番号4のアミノ酸位置131~540はタンパク質性ポリマー部分に対応する。
【0025】
本発明のポリマー部分は、分子量において広範に変化し得る(すなわち、約1kDa~約150kDa)。一実施形態において、ポリマー部分は、少なくとも2kDa、5kDa、10kDa、20kDa、30kDa、50kDa、70kDaまたは100kDaの分子量を有する。
【0026】
一実施形態において、当該ポリマー部分は、ポリペプチドリンカーによって結合ドメインへ結合する。このようなポリペプチドリンカーの例は、配列番号8及び配列番号9のアミノ酸1~8である。
【0027】
非タンパク質性ポリマー部分の例は、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレンである。「ペグ化した」という用語は、PEG部分が例えば本発明のポリペプチドへ共有結合したことを意味する。非タンパク質性ポリマー部分を結合するのに有用な、反復ドメインとC末端Cys残基の間のポリペプチドリンカーを含有する反復タンパク質の例は、配列番号2、3、5、6及び7である。いくつかの実施形態において、PEGは、使用する場合、直鎖状または分枝状のいずれかの配置であることができる。
【0028】
具体的な実施形態において、PEG部分またはいずれかの他の非タンパク質性ポリマーは、例えば、マレイミドリンカーを介してシステインチオールへ連結することができるとともに、当該システインは、本明細書に説明する結合ドメイン(例えば、配列番号3)のN末端またはC末端へペプチドリンカーを介して連結される。
【0029】
「結合タンパク質」という用語は、1つ以上の結合ドメイン及び、一実施形態においては、以下にさらに説明するように1つ以上のポリマー部分を含むタンパク質を指す。一実施形態において、結合タンパク質は、最多4個の結合ドメインを含む。一実施形態において、結合タンパク質は、最多2個の結合ドメインを含む。別の実施形態において、結合タンパク質は、たった1つの結合ドメインを有する。さらに、いずれかのこのような結合タンパク質は、結合ドメイン、多量体化部分、ポリペプチドタグ、ポリペプチドリンカー及び/または単一のCys残基ではない追加のタンパク質ドメインを含んでもよい。多量体化部分の例は、機能的免疫グロブリンFcドメインを提供するよう対形成する免疫グロブリン重鎖定常部、及びロイシンジッパーまたは2つのポリペプチドの間に分子間ジスルフィド結合を形成する遊離チオールを含む当該ポリペプチドである。単一のCys残基は、他の部分を当該ポリペプチドへ、例えば、当業者に周知のマレイミド化学特性を用いることによって共役させるために使用してもよい。
【0030】
一実施形態において、当該結合タンパク質は、最多4個のポリマー部分を含む。別の実施形態において、当該結合タンパク質は、最多2個のポリマー部分を含む。別の実施形態において、当該結合タンパク質は、たった1個のポリマー部分を有する。
【0031】
一実施形態において、当該結合タンパク質は、球状タンパク質を分子量標準物質として使用するSECによって室温でPBS中で0.1mMの濃度で分析した場合、約10kDa、15kDa、20kDa、25kDa、30kDa、35kDa、40kDa、45kDa、50kDa、55kDa、60kDa、65kDa、70kDa、75kDa、80kDa、85kDa、90kDa、95kDa、100kDa、200kDa、300kDa、400kDa、500kDa、600kDa、700kDa、800kDa、900kDa、または1000kDaの見かけの分子量を有する。一実施形態において、当該結合タンパク質は、34kDaの見かけの分子量を有する。
【0032】
当業者は、本明細書で使用する度数に関する種々の用語の意味を正しく認識している。例えば、本明細書で、量を指す脈絡で使用する場合、「約」という用語は、所望の機能をなおも実行するまたは所望の結果をなおも達成する、示された量に近い量及び示された量を含む量を表し、例えば、「約1mg」には、1mg及び所望の機能をなおも実行するまたは所望の結果をなおも達成する1mgにかなり近い量が含まれる。
【0033】
「結合ドメイン」という用語は、タンパク質足場と同じ「折りたたみ」(三次元配置)を呈する、かつ以下に定義するように、所定の特性を有するタンパク質ドメインを意味する。このような結合ドメインは、合理的な、または最も普遍的にはコンビナトリアルタンパク質工学技術、当該技術分野で公知の技術によって得られ得る(Skerra,2000,同書、Binzら,2005,同書)。例えば、所定の特性を有する結合ドメインは、(a)以下にさらに定義するタンパク質足場と同じ折りたたみを呈するタンパク質ドメインの多様な収集を提供する工程、及び(b)所定の特性を有する少なくとも1つのタンパク質ドメインを得るために多様な収集をスクリーニングする工程及び/または当該収集から選択する工程を含む方法によって得ることができる。タンパク質ドメインの多様な収集は、使用されるスクリーニング及び/または選択システムに従っていくつかの方法によって提供され得、ファージディスプレイまたはリボソームディスプレイのような当業者に周知の方法の使用を含み得る。
【0034】
「タンパク質足場」という用語は、アミノ酸の挿入、置換または欠失が高度に許容できる露出した表面積を持つタンパク質を意味する。本発明の結合ドメインを生成するために使用することのできるタンパク質足場の例は、抗体または一本鎖FvフラグメントもしくはFabフラグメントのような当該抗体のフラグメント、黄色ブドウ球菌由来のプロテインA、シロチョウ由来のビリン結合タンパク質または他のリポカリン、アンキリン反復タンパク質または他の反復タンパク質、及びヒトフィブロネクチンである。タンパク質足場は、当業者に公知である(Binzら,2005,同書、Binzら,2004,同書)。
【0035】
「所定の特性」という用語は、標的への結合、標的の遮断、標的仲介性反応の活性化、酵素活性及び関連するさらなる特性のような特性を指す。所望の特性の種類に応じて、当業者は、所望の特性を用いた結合ドメインのスクリーニング及び/または選別を実行するためのフォーマットおよび必要な工程を識別することができる。好ましくは、所望の特性は標的への結合である。
【0036】
一実施形態において、本発明の結合ドメインは、抗体に存在するような免疫グロブリンの折りたたみ及び/またはフィブロネクチンIII型ドメインを含まない。免疫グロブリンの折りたたみは、2つのβシートの中に配置された約7個の逆平行β鎖からなる2層のサンドイッチからなる共通の全βタンパク質折りたたみである。免疫グロブリンの折りたたみは、当業者に周知である。例えば、免疫グロブリン折りたたみを含むこのような結合ドメインは、WO07/080392またはWO08/097497に説明されている。
【0037】
別の実施形態において、本発明の結合ドメインは、VEGFR-1またはVEGFR-2においてみられるような免疫グロブリン様ドメインを含まない。このような結合ドメインは、WO00/075319に説明されている。
【0038】
一実施形態において、当該結合ドメインは、70アミノ酸と300アミノ酸の間を含み、別の実施形態において、当該結合は、100アミノ酸と200アミノ酸の間を含む。
【0039】
一実施形態において、当該結合ドメインは、遊離Cys残基を欠失している。遊離Cys残基は、ジスルフィド結合の形成に関与していない。別の実施形態において、当該結合ドメインは、いずれのCys残基もない。
【0040】
一実施形態において、本発明の結合タンパク質は、真核細胞もしくは細菌細胞のような原核細胞において発現し得、または無細胞のインビトロでの発現系を用いることによって発現し得る。
【0041】
「構造単位」という用語は、ポリペプチド鎖に沿って互いに近い二次構造の2つ以上のセグメント間の三次元相互作用によって形成されたポリペプチドの局所的に規則正しい部分を指す。このような構造単位は構造モチーフを呈する。「構造モチーフ」という用語は、少なくとも1つの構造単位に存在する二次構造要素の三次元配置を指す。構造モチーフは、当業者に周知である。構造単位単独は、規定の三次元配置を獲得することはできないが、例えば反復ドメインにおける反復モジュールとしての当該構造単位の連続配置は、高次らせん構造を結果的に生じる隣接する単位の相互の安定化をもたらす。
【0042】
「反復単位」という用語は、1つ以上の天然の反復タンパク質の反復配列モチーフを含むアミノ酸配列を指し、この中で「反復単位」は、複数のコピーに認められ、かつ当該タンパク質の折りたたみを決定するモチーフ全部に対して共通の規定の折りたたみ形態を呈する。このような反復単位の例は、アルマジロ反復単位、ロイシンに富む反復単位、アンキリン反復単位、テトラトリコペプチド反復単位、HEAT反復単位、及びロイシンの豊富なバリアント反復単位である。2つ以上のこのような反復単位を含有する天然のタンパク質は、「天然の反復タンパク質」と呼ばれる。反復タンパク質の個々の反復単位のアミノ酸配列は、互いに比較した場合、有意な数の突然変異、置換、付加及び/または欠失を有し得るが、反復単位の一般的なパターン、またはモチーフをなおも実質的に保有している。
【0043】
「反復配列モチーフ」という用語は、1つ以上の反復単位から推定されるアミノ酸配列を指す。一実施形態において、反復単位は、同じ標的に対する結合特異性を有する反復ドメインに由来する。
【0044】
「折りたたみ形態」という用語は、反復単位の三次構造を指す。折りたたみ形態は、αヘリックスもしくはβシートの少なくとも複数部分を形成するアミノ酸ストレッチ、または直鎖状ポリペプチドもしくはループを形成するアミノ酸ストレッチ、またはαヘリックス、βシート及び/もしくは直鎖状ポリペプチド/ループのうちのいずれかの組み合わせによって決まる。
【0045】
「連続した」という用語は、反復単位または反復モジュールが直列に配置された配置を指す。設計された反復タンパク質において、少なくとも2つの反復単位があるが、通常約2反復単位~6反復単位であるものの、6個以上の反復単位または20個以上の反復単位でもあり得る。ほとんどの場合、反復単位は、高度の配列同一性(対応する位置における同じアミノ酸残基)または配列類似性(異なってはいるが類似の物理化学的特性を有するアミノ酸残基)を呈し、当該アミノ酸残基のうちのいくつかは、天然のタンパク質において認められる異なる反復単位において強力に保存されている鍵となる残基であり得る。しかしながら、天然のタンパク質において認められる異なる反復単位間のアミノ酸の挿入及び/または欠失、及び/または置換による高度の配列変化は、共通の折りたたみ形態を維持する限り可能である。
【0046】
X線結晶法、NMRまたはCD分光法のような物理化学的手段によって反復タンパク質の折りたたみ形態を直接決定するための方法は、当業者に周知である。反復単位もしくは反復配列モチーフを識別及び決定するための方法、または相同性検索(BLASTなど)のような、このような反復単位または反復モチーフを含む関連タンパク質のファミリーを識別するための方法は、バイオインフォマティクスの分野で十分確立されており、当業者に周知である。開始反復配列モチーフを精製する工程は、反復過程を含み得る。
【0047】
「反復モジュール」という用語は、天然の反復タンパク質の反復単位に元来由来する設計された反復ドメインの反復したアミノ酸配列を指す。反復ドメインにおいて含まれる各反復モジュールは、天然の反復タンパク質のファミリーまたはサブファミリー、例えば、アルマジロ反復タンパク質またはアンキリン反復タンパク質のファミリーの1つ以上の反復単位に由来する。
【0048】
「反復モジュール」は、対応する反復モジュールのすべてのコピー中に存在するアミノ酸残基を有する位置(「固定された位置」)及び異なるまたは「無作為化した」アミノ酸残基を有する位置(「無作為化した位置」)を含み得る。
【0049】
「キャッピングモジュール」という用語は、反復ドメインのN末端またはC末端の反復モジュールへ融合したポリペプチドを指し、この中で当該キャッピングモジュールは、反復モジュールと密な三次相互作用を形成し、それにより連続反復モジュールと接触していない側にある反復モジュールの疎水性中心を溶媒から遮蔽するキャップを提供する。N末端及び/またはC末端のキャッピングモジュールは、キャッピング単位、もしくは反復単位に隣接した天然の反復タンパク質において認められる他のドメインであり得、または当該キャッピング単位もしくは当該ドメインに由来し得る。「キャッピングユニット」という用語は、天然の折りたたまれたポリペプチドが反復単位へN末端またはC末端で融合した特定の構造単位を規定し、当該ポリペプチドが反復単位と密な三次相互作用を形成し、それにより片側にある反復単位の疎水性中心を溶媒から遮蔽するキャップを提供する、当該ポリペプチドを指す。このようなキャッピング単位は、反復配列モチーフとの配列類似性を有し得る。キャッピングモジュール及びキャッピング反復は、米国特許第7,417,130号及び米国特許第8,110,653号に説明されている。例えば、配列番号2のN末端キャッピングモジュールは、位置1~32に由来するアミノ酸によってコードされる。位置5にグリシン残基またはアスパラギン酸残基を有するこのようなN末端キャッピングモジュールも好ましい。
【0050】
「標的」という用語は、核酸分子、ポリペプチドもしくはタンパク質、炭水化物、またはこのような個々の分子のうちのいずれかの部分、もしくはこのような分子の2つ以上からなる複合体を含む、いずれかの他の天然分子のような個々の分子を指す。標的は、細胞全体もしくは組織試料全体であってもよく、または標的はいずれかの非天然の分子もしくは部分であってもよい。好ましくは、標的は、天然のもしくは非天然のポリペプチド、または例えば、天然もしくは非天然のリン酸化、アセチル化、もしくはメチル化によって修飾された化学的修飾を含有するポリペプチドである。いくつかの実施形態において、標的とはVEGF-AxxxまたはVEGFR-2である。
【0051】
「共通配列」という用語は、当該共通配列が複数の反復単位の構造上の及び/または配列の整列によって得られるアミノ酸配列を指す。2つ以上の構造上の及び/または配列の整列した反復単位を用いることで、ならびに整列における間隙を許容することで、各位置における最も頻繁なアミノ酸残基を決定することが可能である。共通配列とは、各位置において最も頻繁に表されるアミノ酸を含む配列である。2つ以上のアミノ酸が単一の位置で平均を上回って表される事象において、共通配列には当該アミノ酸のサブセットが含まれ得る。当該2つ以上の反復単位は、単一の反復タンパク質中に含まれる反復単位から、または2つ以上の異なる反復タンパク質から取られ得る。
【0052】
共通配列及び当該共通配列を決定するための方法は、当業者に周知である。
【0053】
「共通アミノ酸残基」とは、共通配列中のある位置に認められるアミノ酸である。2つ以上の、例えば、3つ、4つまたは5つのアミノ酸残基が2つ以上の反復単位において類似の確率で認められる場合、共通アミノ酸は、最も頻繁に認められるアミノ酸のうちの1つまたは当該2つ以上のアミノ酸残基からなる組み合わせであり得る。
【0054】
一実施形態において、非天然結合タンパク質または結合ドメインも使用してもよい。
【0055】
「非天然の」という用語は、合成のまたは天然由来ではない、例えば人間によって作られたことを意味する。「非天然結合タンパク質」または「非天然結合ドメイン」という用語は、当該結合タンパク質または当該結合ドメインが合成であり(すなわち、アミノ酸からの化学合成によって生成されており)、または組換えでありかつ天然由来ではないことを意味する。「非天然結合タンパク質」または「非天然結合ドメイン」とはそれぞれ、対応して設計された核酸の発現によって得られる人工のタンパク質またはドメインである。好ましくは、当該発現は、真核細胞もしくは細菌細胞において、または無細胞インビトロ発現系を用いることによって行われる。さらに、当該用語は、当該結合タンパク質または当該結合ドメインの配列が、配列データベースにおいて、例えばGenBank、EMBL-BankまたはSwiss-Protにおいて非人工的な配列エントリーとして存在していないことを意味する。これらのデータベースおよび他の類似の配列データベースは当業者に周知である。
【0056】
結合ドメインは、VEGF-Axxxへの結合によってまたはVEGFR-2への結合によってのいずれかで、VEGF-AxxxとVEGFR-2の間の見かけの解離定数(Kd)が102倍を超えて高まる方法でVEGFR-2へのVEGF-Axxxの結合を阻害することができる。他の実施形態において、解離定数は、103倍を超えて、104倍を超えて、105倍を超えて、または106倍を超えて高まる。一実施形態において、VEGF-AxxxまたはVEGFR-2との結合ドメインの相互作用についてのKdは、107M未満、108M未満、または109M未満、1010M未満、または1011M未満である。表面プラズモン共鳴(SPR)のようなタンパク質間相互作用の解離定数を決定する方法は、当業者に周知である。
【0057】
当該結合ドメインはVEGF-Axxxを結合する。一実施形態において、当該結合ドメインはヒトVEGF-A165を結合する。他の実施形態において、当該結合ドメインは他のVEGF-Aアイソフォームを結合し得る。
【0058】
一実施形態において、当該結合タンパク質及び/または結合ドメインは、100mMのジチオトレイトール(DTT)を含有するPBS中での37℃で1時間または10時間のインキュベーションの際に当該結合タンパク質及び/または結合ドメインの本来の三次元構造を失わない。「PBS」は本明細書で使用する場合、137mMのNaCl、10mMのリン酸塩及び2.7mMのKClを含有しかつ7.4のpHを有するリン酸緩衝水溶液を意味する。
【0059】
一実施形態において、当該結合タンパク質は、VEGFR-2に対するVEGF-Axxxの結合を阻害しかつ先に定義したような変性中間地点温度及び非凝集特性を有する結合ドメインを含み、この中で、当該結合タンパク質は、IC50値が100nM未満のHUVEC回転楕円体の出芽を阻害する。
【0060】
「HUVEC」という用語は、正常ヒト臍帯静脈から分離することのできるかつVEGF-A刺激に応答性のあるヒト臍帯静脈内皮細胞を意味する。
【0061】
HUVEC回転楕円体の出芽を測定するアッセイは、当業者に周知である。
【0062】
IC50値とは、HUVEC回転楕円体の出芽のような実験的に決定されるパラメータのインビトロでの50%阻害に必要な結合タンパク質または結合ドメインのような物質の濃度である。IC50値は、当業者によって容易に決定することができる(Korff T.及びAugustin H.G.,J.Cell Biol.143(5),1341~1352,1998)。
【0063】
一実施形態において、結合タンパク質及び/または結合ドメインは、10nM未満、1nM未満、0.1nM未満、または0.05nM未満のIC50値でHUVEC回転楕円体の出芽を阻害する。
【0064】
別の実施形態において、ラニビズマブ、ベバシズマブ、アフリベルセプト、またはペガプタニブの対応するIC50値よりも低いIC50値でHUVEC回転楕円体の出芽を阻害するモノマー結合タンパク質及び/または結合ドメインを使用することができる。
【0065】
一実施形態において、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、PIGFまたはPDGFとの結合ドメインの相互作用についてのKdは、1nM超、10nM超、102nM超、103nM超、または104nM超である。
【0066】
一実施形態において、VEGF-Axxxは、イヌVEGF-A164またはサルVEGF-A165またはヒトVEGF-A165のいずれかであり、VEGF-Axxxbは、イヌVEGF-A164bまたはサルVEGF-A165bまたはヒトVEGF-A165bのいずれかである。
【0067】
別の実施形態は、結合ドメインを含む組換え結合タンパク質であり、この中で当該結合ドメインは、VEGFR-2へのVEGF-Axxx結合を阻害し、かつこの中で当該結合ドメインは、反復ドメインまたは設計した反復ドメインである。このような反復ドメインは、VEGF-Axxxへの結合に関与する1つ、2つ、3つまたはそれより多くの内部反復モジュールを含んでもよい。一実施形態において、このような反復ドメインは、N末端キャッピングモジュール、2~4つの内部反復モジュール、及びC末端キャッピングモジュールを含む。一実施形態において、当該結合ドメインは、アンキリン反復ドメインまたは設計したアンキリン反復ドメインである。
【0068】
一実施形態において、当該結合タンパク質は、ポリエチレングリコール(PEG)部分へ共役した、本明細書に説明する結合ドメインを含む。一実施形態において、PEG部分は、当該結合ドメインの単一のCys残基へ共役している。Cys残基は、当該結合ドメインのC末端で遺伝子導入することができる。次に、PEG部分は、化学的手段によって、例えば、当業者に周知のマレイミド化学特性を用いることによって、共役することができる。
【0069】
別の実施形態は、VEGF-Axxxに対する結合特異性を有する少なくとも1つの反復ドメインを含む先に定義した組換え結合タンパク質であり、この中で、当該反復ドメインは、VEGF-Axxxへの結合について、配列番号1~7の反復ドメインの群から選択される反復ドメインと競合する。一実施形態において、当該反復ドメインは、VEGF-Axxxへの結合について、配列番号1または配列番号3の反復ドメインと競合する。別の実施形態において、当該反復ドメインは、VEGF-Axxxへの結合について、配列番号3の反復ドメインと競合する。
【0070】
「結合について競合する」という用語は、本発明の2つの異なる結合ドメインが同じ標的を個々に結合することができながら、両方が同じ標的へ同時に結合することができないことを意味する。したがって、このような2つの結合ドメインは、標的への結合について競合する。競合ELISAまたは競合SPR測定(例えば、BioRad製のProteon機を用いることによる)のような、2つの結合ドメインが標的への結合について競合するかどうかを決定する方法は、当業者に周知である。
【0071】
VEGF-Axxxへの結合について、選択した反復タンパク質と競合する組換え結合タンパク質は、競合性酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)のような当業者に周知の方法によって識別することができる。
【0072】
別の実施形態は、配列番号1~7の反復ドメインからなる群から選択されるVEGF-Axxxに対する結合特異性を有する反復ドメインを含む組換え結合タンパク質である。一実施形態において、当該反復ドメインは、配列番号2または配列番号3の反復ドメインから選択される。別の実施形態において、当該反復ドメインは、配列番号3の反復ドメインである。
【0073】
一実施形態において、アンキリン反復ドメインは、アンキリン反復配列モチーフ
1D23G4TPLHLAA56GHLEIVEVLLK7GADVNA(配列番号10)
を有する反復モジュールを含み、式中、1、2、3、4、5、6、及び7は互いに独立して、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W及びYの群から選択されるアミノ酸残基を表す。
【0074】
別の実施形態において、アンキリン反復ドメインは、アンキリン反復配列モチーフ
1D23GWTPLHLAA45GHLEIVEVLLK6GADVNA(配列番号11)
を有する反復モジュールを含み、式中、1は、F、T、N、R、V、A、I、K、Q、S及びYからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、一実施形態において、1は、F、T、N、RまたはVであり、別の実施形態において、1はFまたはTであり、2はW、Y、H及びFからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、別の実施形態において、2はW、YまたはHであり、3はM、I、F及びVからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、別の実施形態において、3はMまたはIであり、4はH、A、K、G、L、M、N、T、V、W及びYからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、別の実施形態において、4は、H、AまたはKであり、5は、E、Y、F、V、H、I、L、N及びRからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、別の実施形態において、5は、E、Y、F、VまたはHであり、別の実施形態において、5は、E、Y、FまたはVであり、かつ6は、A、N、Y、H及びRからなる群から選択されるアミノ酸残基を表す。
【0075】
別の実施形態において、アンキリン反復ドメインは、アンキリン反復配列モチーフ
1D23G4TPLHLAA56GHLEIVEVLLK7GADVN8(配列番号12)
を有する反復モジュールを含み、式中、1は、T、E、A、D、F、K、N、Q、R、S、W及びYからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、別の実施形態において、1はTまたはEであり、2は、V、F、Y、A、H、I、K、R、T及びWからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、別の実施形態において、2はV、FまたはYであり、3はS、A、N、F及びMからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、別の実施形態において、3は、S、AまたはNであり、別の実施形態において、3はSまたはAであり、4は、Y、F、S及びWからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、5は、A、S、L及びYからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、別の実施形態において、5はAまたはSであり、6は、D、N、M、A、I、K及びYからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、別の実施形態において、6はD、NまたはMであり、別の実施形態において、6はDまたはNであり、7は、A、Y、H、N及びDからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、かつ8はアミノ酸残基TまたはAを表す。
【0076】
別の実施形態において、アンキリン反復ドメインは、アンキリン反復配列モチーフ
1D23GWTPLHL4ADLG5LEIVEVLLK6GADVN7(配列番号13)
を有する反復モジュールを含み、式中、1は、K、T及びYからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、2は、アミノ酸残基NまたはMを表し、3は、アミノ酸残基TまたはFを表し、4は、アミノ酸残基SまたはAを表し、5は、アミノ酸残基HまたはRを表し、6は、A、Y、H及びNからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、かつ7は、アミノ酸残基AまたはTを表す。
【0077】
別の実施形態において、アンキリン反復ドメインは、アンキリン反復配列モチーフ
1D23G4TPLHLAA56GH7EIVEVLLK8GADVNA(配列番号14)
を有する反復モジュールを含み、式中、1は、A、N、R、V、Y、E、H、I、K、L、Q、S及びTからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、別の実施形態において、1は、A、N、R、VまたはYであり、別の実施形態において、1はAまたはRであり、2は、S、A、N、R、D、F、L、P、T及びYからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、別の実施形態において、2は、S、A、NまたはRであり、3は、T、V、S、A、L及びFからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、別の実施形態において、3は、T、V、S、AまたはLであり、別の実施形態において、3はT、VまたはSであり、4はW、F及びHからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、5は、P、I、A、L、S、T、V及びYからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、別の実施形態において、5はPまたはIであり、6は、W、F、I、L、T及びVからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、7は、アミノ酸残基LまたはPを表し、かつ8は、A、H、N及びYからなる群から選択されるアミノ酸残基を表す。
【0078】
別の実施形態において、アンキリン反復ドメインは、アンキリン反復配列モチーフ
1D23G4TPLHLAA56GHLEIVEVLLK7GADVNA(配列番号15)
を有する反復モジュールを含み、式中、1は、H、Q、A、K、R、D、I、L、M、N、V及びYからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、別の実施形態において、1は、H、Q、A、KまたはRであり、別の実施形態において、1はAまたはRであり、2は、Y、F及びHからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、3は、Q、F及びTからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、4は、W、M、G、H、N及びT、好ましくはW及びMからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、5は、T、A、M、L及びVからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、別の実施形態において、5は、T、AまたはMであり、6は、I、L、V、D及びTからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、別の実施形態において、6は、I、LまたはVであり、かつ7は、A、H、N及びYからなる群から選択されるアミノ酸残基を表す。
【0079】
別の実施形態において、アンキリン反復ドメインは、アンキリン反復配列モチーフ
1D23GWTPLHLAA45GHLEIVEVLLK6GADVNA(配列番号16)
を有する反復モジュールを含み、式中、1は、K、M、N、R及びVからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、2は、Y、H、M及びVからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、3は、F、L、M及びVからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、4は、R、H、V、A、K及びN、好ましくはR、H、V及びAからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、5は、F、D、H、T、Y、M及びKからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、別の実施形態において、5は、F、D、H、TまたはYであり、かつ6は、A、H、N及びYからなる群から選択されるアミノ酸残基を表す。
【0080】
別の実施形態において、アンキリン反復ドメインは、アンキリン反復配列モチーフ
1D23G4TPLHLAA56GHLEIVEVLLK7GADVN8(配列番号17)
を有する反復モジュールを含み、式中、1は、T、A、H、I、N及びSからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、2は、F、I、Q、R、V及びNからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、3は、A、G、N、Q及びVからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、4は、アミノ酸残基WまたはYを表し、5は、A、S、T及びMからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、6は、N、V、S、F、M及びWからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、7は、A、H、N及びYからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、かつ8は、アミノ酸残基TまたはAを表す。
【0081】
別の実施形態において、アンキリン反復ドメインは、アンキリン反復配列モチーフ
1D23G4TPLHL5A67GHLEIVEVLLK8GADVNA(配列番号18)
を有する反復モジュールを含み、式中、1は、K、A、V及びNからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、2は、N、I及びYからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、3は、T、F、Y及びWからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、4は、W、D及びYからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、5は、アミノ酸残基SまたはAを表し、6は、D、I及びMからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、7は、L、T及びYからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、かつ8は、A、H、Y及びNからなる群から選択されるアミノ酸残基を表す。
【0082】
別の実施形態において、アンキリン反復ドメインは、アンキリン反復配列モチーフ
1DFK2DTPLHLAA34GH5EIVEVLLK6GADVNA(配列番号19)
を有する反復モジュールを含み、式中、1は、L、S及びTからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、2は、G、S及びCからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、別の実施形態において、2はGまたはSであり、3は、アミノ酸残基SまたはAを表し、4は、Q、S、M及びNからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、別の実施形態において、4はQまたはSであり、5は、L、M及びQからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、かつ6は、A、H、N、Y及びDからなる群から選択されるアミノ酸残基を表す。
【0083】
別の実施形態において、アンキリン反復ドメインは、アンキリン反復配列モチーフ
1D2L34TPLHLA567GHLEIVEVLLK8GADVNA(配列番号20)
を有する反復モジュールを含み、式中、1は、Y、H、F、I、L及びW、好ましくはY及びHからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、2は、M、D、I、L、Vからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、別の実施形態において、2はMまたはDであり、3は、G、S及びVからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、4は、アミノ酸残基WまたはFを表し、5は、A、G及びTからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、6は、アミノ酸残基DまたはWを表し、7は、アミノ酸残基LまたはFを表し、かつ8は、A、H、N及びYからなる群から選択されるアミノ酸残基を表す。
【0084】
別の実施形態において、アンキリン反復ドメインは、アンキリン反復配列モチーフ
1D23G4TPL5LAA67GHLEIVEVLLK8GADVNA(配列番号21)
を有する反復モジュールを含み、式中、1は、K、S、I、N、T及びVからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、別の実施形態において、1は、KまたはSであり、2は、K、N、W、A、H、M、Q及びS、好ましくはK及びNからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、3は、F、Q、L、H及びV、好ましくはF、Q及びLからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、4は、アミノ酸残基FまたはTを表し、5は、アミノ酸残基QまたはHを表し、6は、アミノ酸残基YまたはSを表し、7は、N、H、Y及びMからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、別の実施形態において、7はNまたはHであり、かつ8は、A、H、N及びYからなる群から選択されるアミノ酸残基を表す。
【0085】
別の実施形態において、アンキリン反復ドメインは、アンキリン反復配列モチーフ
1D23GWT4LHLAADLG5LEIVEVLLK6GADVNA(配列番号22)
を有する反復モジュールを含み、式中、1は、F、Y、H及びW、好ましくはF、Y及びHからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、2は、I、M、D及びVからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、別の実施形態において、2は、I、MまたはDであり、3は、アミノ酸残基FまたはLを表し、4は、アミノ酸残基LまたはPを表し、5は、H、L及びYからなる群から選択されるアミノ酸残基を表し、かつ6は、A、H、N、C及びYからなる群から選択されるアミノ酸残基を表す。
【0086】
1つ以上のポリエチレングリコール部分は、当該結合タンパク質における異なる位置で結合し得、このような結合は、アミン、チオールまたは他の適切な反応基との反応によって達成し得る。ポリエチレングリコール部分の結合(ペグ化)は、部位特異的であり得、この中で、適切な反応基は、ペグ化が優先的に生じる部位を作るよう当該タンパク質へと導入され、または当該結合タンパク質中に元来存在する。当該チオール基は、システイン残基中に存在し得、当該アミン基は例えば、当該ポリペプチドのN末端で認められる一級アミンまたはリジンもしくはアルギニンのようなアミノ酸の側鎖中に存在するアミン基であり得る。一実施形態において、当該結合タンパク質は、所望の位置にシステイン残基を有するよう修飾され、例えば、マレイミド機能を保有するポリエチレングリコール誘導体との反応によって、システイン上での部位特異的ペグ化を可能にする。ポリエチレングリコール部分は、分子量において広範に変化し得(すなわち、約1kDa~約100kDa)、分枝状または直鎖状であり得る。一実施形態において、当該ポリエチレングリコールは、約1~約50kDaの分子量を有しており、別の実施形態において、当該ポリエチレングリコールは、約10kDa~約40kDa、約15kDa~約30kDa、または約20kDaの分子量を有する。このような結合タンパク質及び当該結合タンパク質を合成するための方法の例は、米国特許第8,710,187号(WO2011/135067としても公開)に提供されており、この全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0087】
一実施形態において、本明細書に説明する結合ドメインを含む組換えタンパク質を使用することができ、この中で、当該組換えタンパク質は、そのC末端のシステインチオールで、α-[3-(3-マレイミド-1-オキソプロピル)アミノ]プロピル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレン(NOF、Sunbright ME-200MA(20kD)またはSunbright ME-400MA(40kD))のようなマレイミドカップリング型PEGへ共役する。一実施形態において、本明細書に説明する結合ドメインを含む組換え結合タンパク質を使用することができ、この中で、当該結合ドメインは、そのC末端でペプチド結合を介して配列番号8へ共役し、それが順に、C末端システインチオールで、α-[3-(3-マレイミド-1-オキソプロピル)アミノ]プロピル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレン(NOF、Sunbright ME-200MA(20kD)またはSunbright ME-400MA(40kD))のようなマレイミドカップリング型PEGへ共役する。
【0088】
いくつかの実施形態において、C末端システインチオールは、ピリジルジスルフィドカップリング型PEG、ビニルスルホンカップリング型PEG、または他のチオール試薬を介してカップリングしたPEGへ共役することができる。
【0089】
いくつかの実施形態において、PEG及び適切な連結化合物は、少なくとも約2kD、5kD、10kD、20kD、30kD、40kD、50kD、70kD、または100kDの分子量を有する。一実施形態において、マレイミドカップリング型PEGは、少なくとも約2kD、5kD、10kD、20kD、30kD、40kD、50kD、70kD、または100kDの分子量を有する。
【0090】
ある実施形態において、α-[3-(3-マレイミド-1-オキソプロピル)アミノ]プロピル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレンは、少なくとも約20kDまたは少なくとも約40kDの分子量を有する。
【0091】
いくつかの実施形態において、組換え結合タンパク質は、N末端アミノ基で適切なPEG含有連結化合物へ共役することができる。このような実施形態において、PEG-エチレン試薬、PEG NHS-エステル、PEG NHS-カーボネート、PEG-p-ニトロフェニルカーボネート、PEG-トリアジン試薬、及びこれらに類するものは、本明細書に説明する適切な結合タンパク質のN末端で共役し得る。
【0092】
さらなる実施形態において、本発明は、特定の組換え結合タンパク質をコードする核酸分子に関する。さらに、当該核酸分子を含むベクターが考えられる。
【0093】
さらに、上記の結合タンパク質、特に反復ドメインを含む組換え結合タンパク質、または特定の組換え結合タンパク質をコードする核酸分子、ならびに任意に医薬として許容し得る担体及び/または希釈剤を含む医薬組成物が考えられる。
【0094】
(製剤)
医薬として許容し得る担体及び/または希釈剤は当業者に公知であり、以下により詳細に説明する。なおさらに、上記の組換え結合タンパク質、特に反復ドメインを含む結合タンパク質のうちの1つ以上を含む診断用組成物が考えられる。
【0095】
医薬組成物は、先に説明した結合タンパク質及び医薬として許容し得る担体、希釈剤、または安定化剤を含む(Remingtonの医薬科学第16版,Osol,A.編[1980])。当業者に公知の適切な担体、賦形剤または安定化剤は、塩類溶液、リンゲル溶液、デキストロース溶液、ハンク溶液、不揮発油、オレイン酸エチル、塩類溶液中の5%デキストロース、等張性及び化学的安定性を高める物質、緩衝液ならびに保存料である。他の適切な担体には、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸及びアミノ酸コポリマーのような、組成物を受容する個体に対して有害な抗体の産生をそれ自体誘導しないいずれかの担体が含まれる。医薬組成物は、抗癌薬または血管新生抑制薬(例えば、ヒトVEGF-Axxxb、好ましくはヒトVEGF-A165b)のような追加の活性薬を含む組み合わせ製剤でもあり得る。
【0096】
一実施形態において、製剤は、先に説明した結合タンパク質、ならびに0.04%のポリソルベート20を含むがこれに限定しない非イオン性洗剤のような洗剤、ヒスチジン、リン酸塩または乳酸のような緩衝液、及びスクロースまたはトレハロースのような糖を含む。当該製剤は、PBSも含んでもよい。
【0097】
インビボでの投与に使用することになっている製剤は、無菌または滅菌済みでなければならない。このことは、濾過滅菌膜を通じての濾過によって容易に達成される。
【0098】
(治療方法)
一実施形態において、本発明の方法は、VEGF-AxxxとVEGFR-2の間の結合を阻害することを必要とする患者へ、配列番号1~7のアンキリン反復ドメインからなる群から選択されるアンキリン反復ドメインを含む組換え結合タンパク質約0.25mg~約4mgの用量を投与することによる、このような阻害の方法を含む。
【0099】
いくつかの実施形態において、アンキリン反復ドメインは、配列番号1~5のアンキリン反復ドメインからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、アンキリン反復ドメインは、配列番号2または配列番号3のアンキリン反復ドメインからなる群から選択される。一実施形態において、組換え結合ドメインは、Kdが109M未満のVEGF-Axxxを結合する。
【0100】
当該方法は、虚血性網膜症、血管新生網膜症、または虚血性網膜症及び血管新生網膜症の両方と関連した容態を含むある特定の眼の容態を治療するのに使用することができる。本明細書に開示する方法によって治療することのできる虚血性網膜症と関連したいくつかの容態には、糖尿病黄斑浮腫、中心静脈閉塞症、及び分枝静脈閉塞症を含むことができる。本明細書に開示する方法によって治療することのできる血管新生網膜症と関連したいくつかの容態には、増殖糖尿病網膜症、滲出型加齢黄斑変性、病的近視、脈絡膜血管新生、ヒストプラスマ症続発性血管新生、ポリープ状脈絡膜血管新生、及び網膜血管腫性増殖を含むことができる。当該方法は、加齢関連黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、病的近視網膜分枝血管閉塞症、及び網膜中心静脈閉塞症を治療するのに使用してもよい。当該方法は、既存の抗VEGF療法に対して不応性の先に列挙した疾患に罹患している患者を治療するのにも使用してもよい。
【0101】
本明細書で使用する「治療する」ことは、医学的に取り扱うことを意味する。治療することには、例えば、AMDの発症を予防し及びその重症度を軽減するために本発明の組換え結合タンパク質を投与することが含まれる。
【0102】
黄斑変性は、斑の下にある脈絡叢血管の血管新生増殖から結果的に生じる。2種類の進行性黄斑変性、すなわち滲出型及び萎縮性がある。滲出型黄斑変性は、黄斑変性全体の15%を含むに過ぎないが、ほぼすべての滲出型黄斑変性は失明をもたらす。いったん片眼が滲出型黄斑変性によって影響されると、当該容態はたいてい常にもう一方の眼に影響する。滲出型及び萎縮型の黄斑変性はしばしば、当該疾患が主として老年者において認められるので、加齢黄斑変性または加齢「湿潤性」黄斑変性と呼ばれる。
【0103】
本明細書で使用する場合、「抗VEGF療法に対して不応性の」は、ラニビズマブ療法、ベバシズマブ療法、アフリベルセプト療法、またはペガプタニブ療法のような公知の抗VEGF療法を用いて満足のいく生理学的応答を達成することができないことを指す。このような患者は、例えば、ラニビズマブ、ベバシズマブ、またはアフリベルセプトの少なくとも3回の硝子体内注射(または上記の療法のうちのいずれかからなる組み合わせの少なくとも3回の硝子体内注射)の後、異常な中心網膜厚(斑の中央1mm2の領域)における20%未満の減少を有することがある。一実施形態において、抗VEGF療法に対して不応性の患者は、ラニビズマブ療法、ベバシズマブ療法、アフリベルセプト療法、またはペガプタニブ療法にもかかわらず、視力の継続的な悪化を経る。別の実施形態において、抗VEGF療法に対して不応性の患者は、ラニビズマブ療法、ベバシズマブ療法、アフリベルセプト療法、またはペガプタニブ療法にもかかわらず、網膜の肥厚を経る。いくつかの実施形態において、抗VEGF療法に対して不応性の患者は、ラニビズマブ療法、ベバシズマブ療法、アフリベルセプト療法、またはペガプタニブ療法を受けているにもかかわらず、ごくわずかな解剖学的改善を実証している。
【0104】
いくつかの実施形態において、当該結合タンパク質は、1回の注射当たり約0.1mgと約10mgの間の結合タンパク質を1用量で硝子体内へ投与される。いくつかの実施形態において、当該結合タンパク質は、1回の注射当たり約0.25mgと約5mgの間の結合タンパク質を、1回の注射当たり約0.25mgと約4mgの間の結合タンパク質を、1回の注射当たり約0.25mgと約3mgの間の結合タンパク質を、1回の注射当たり約0.25mgと約2mgの間の結合タンパク質を、及び1回の注射当たり約0.25mgと約1mgの間の結合タンパク質を1用量で投与され、他の実施形態において、当該結合タンパク質は、1回の注射当たり約0.5mgと約5mgの間の結合タンパク質を、1回の注射当たり約0.5mgと約4mgの間の結合タンパク質を、1回の注射当たり約0.5mgと約3mgの間の結合タンパク質を、1回の注射当たり約0.5mgと約2mgの間の結合タンパク質を、及び1回の注射当たり約0.5mgと約1mgの間の結合タンパク質を1用量で投与され、他の実施形態において、当該結合タンパク質は、1回の注射当たり約1mgと約5mgの間の結合タンパク質を、1回の注射当たり約1mgと約4mgの間の結合タンパク質を、1回の注射当たり約1mgと約3mgの間の結合タンパク質を、及び1回の注射当たり約1mgと約2mgの間の結合タンパク質を1用量で投与される。
【0105】
一実施形態において、当該結合タンパク質は、1回の注射当たり約0.1mg、約0.2 mg、約0.25mg、約0.3mg、約0.35mg、約0.4mg、約0.45mg、約0.5mg、約0.55mg、約0.6mg、約0.65mg、約0.7mg、約0.75mg、約0.8mg、約0.9mg、約0.95mg、約1mg、約1.1mg、約1.2mg、約1.3mg、約1.4mg、約1.5mg、約1.6mg、約1.7mg、約1.8mg、約1.9mg、約2mg、約2.0mg、2.1mg、約2.2mg、約2.3mg、約2.4mg、約2.5mg、約2.6mg、約2.7mg、約2.8mg、約2.9mg、約3mg、約3.0mg、3.1mg、約3.2mg、約3.3mg、約3.4mg、約3.5mg、約3.6mg、約3.7mg、約3.8mg、約3.9mg、約4mg、約4.0mg、4.1mg、約4.2mg、約4.3mg、約4.4mg、約4.5mg、約4.6mg、約4.7mg、約4.8mg、約4.9mg、約5mg、及び約5.0mgの結合タンパク質を1用量で投与される。
【0106】
一実施形態において、当該結合タンパク質は、各用量間で25~35日間の間隔で2~5用量の初回用量で投与され、すなわち、当該結合タンパク質の単回用量が患者の眼に投与された後、別の用量が同じ眼に25~35日後に投与され、投与は、必要な場合、眼が合計2~5回の初回用量を受けるまで反復される。
【0107】
一実施形態において、当該結合タンパク質は、2用量でまず投与され、各用量間には25~35日間の間隔がある。この実施形態において、治療される眼につき合計2初回用量となるよう、当該結合タンパク質の単回用量(例えば、0.5mg~約4mgの結合タンパク質の単回注射)が眼に投与された後、同じ用量が当該眼に25~35日後に投与される。
【0108】
一実施形態において、当該結合タンパク質は、3用量でまず投与され、各用量間には25~35日間の間隔がある。この実施形態において、治療される眼につき合計3初回用量となるよう、当該結合タンパク質の単回用量(例えば、0.5mg~約4mgの結合タンパク質の単回注射)が眼に投与され、同じ用量が当該眼に25~35日後に投与された後、25~35日後に再度投与される。
【0109】
一実施形態において、当該結合タンパク質は、4用量でまず投与され、各用量間には25~35日間の間隔がある。この実施形態において、治療される眼につき合計4初回用量となるよう、当該結合タンパク質の単回用量(例えば、0.5mg~約4mgの結合タンパク質の単回注射)が眼に投与され、同じ用量が当該眼に25~35日後に投与され、25~35日後に再度投与された後、25~35日後になおも再度投与される。
【0110】
一実施形態において、当該結合タンパク質は、5用量でまず投与され、各用量間には25~35日間の間隔がある。この実施形態において、治療される眼につき合計5初回用量となるよう、当該結合タンパク質の単回用量(例えば、0.5mg~約4mgの結合タンパク質の単回注射)が眼に投与され、同じ用量が当該眼に25~35日後に投与され、25~35日後に再度投与され、25~35日後になおも再度投与された後、25~35日後にさらに1回投与される。
【0111】
別の実施形態において、当該結合タンパク質は、各用量間で25~35日間の間隔でまず2~5用量で眼に投与され、次に各追加用量間で50~130日間の間隔で、少なくとも1回の追加用量が投与される。
【0112】
一実施形態において、各追加の用量間には50~100日、50~95日、50~90日、50~85日、50~80日、50~75日、50~70日、50~65日、及び50~60日の間隔があり、別の実施形態において、各追加の用量間には55~100日、55~95日、55~90日、55~85日、55~80日、55~75日、55~70日、55~65日、及び55~60日の間隔があり、別の実施形態において、各追加の用量間には60~100日、60~95日、60~90日、60~85日、60~80日、60~75日、60~70日、及び60~65日の間隔があり、別の実施形態において、各追加の用量間には65~100日、65~95日、65~90日、65~85日、65~80日、65~75日、及び65~70日の間隔があり、別の実施形態において、各追加の用量間には70~100日、70~95日、70~90日、70~85日、70~80日、及び70~75日の間隔があり、別の実施形態において、各追加の用量間には75~100日、75~95日、75~90日、75~85日、及び75~80日の間隔があり、別の実施形態において、各追加の用量間には80~100日、80~95日、80~90日、及び80~85日の間隔があり、別の実施形態において、各追加の用量間には85~100日、85~95日、及び85~90日の間隔があり、別の実施形態において、各追加の用量間には90~100日、及び90~95日の間隔がある。別の実施形態において、各追加の用量間には30日、35日、40日、45日、50日、55日、60日、65日、70日、75日、80日、85日、90日、95日、100日、105日、110日、115日、120日、125日、または130日の間隔がある。
【0113】
例えば、一実施形態において、治療される眼につき合計3初回用量となるよう当該結合タンパク質の単回用量(0.5mg~約4mgの結合タンパク質の単回注射など)が眼に投与され、同じ用量が25~35日後に投与された後、25~35日後に再度投与され、その際、当該同じ用量は次に、眼が治療を必要とする限り、55~65日ごとに眼に投与される。
【0114】
いくつかの実施形態によると、本発明の方法による組換え結合タンパク質の注射を受ける患者は、異常な中心網膜厚の、基線からの20%以上の減少、25%以上の減少、30%以上の減少、35%以上の減少、40%以上の減少、45%以上の減少、50%以上の減少、55%以上の減少、60%以上の減少、65%以上の減少、70%以上の減少、75%以上の減少、80%以上の減少、85%以上の減少、90%以上の減少、95%以上の減少、99%の減少、または100%の減少を実証することができる。
【0115】
いくつかの実施形態によると、本明細書に開示する結合タンパク質の1回以上の注射を受けた後にラニビズマブ、ベバシズマブ、アフリベルセプト、またはペガプタニブのような抗VEGF治療に対して不応性の患者は、異常な中心網膜厚の、基線からの約20%またはそれ以上の減少を実証することができる。いくつかの実施形態によると、本明細書に開示する結合タンパク質の1回以上の注射を受けた後の患者は、異常な中心網膜厚の、基線からの約30%以上の減少を実証することができる。さらに他の実施形態によると、本明細書に開示する結合タンパク質の1回以上の注射を受けた後の患者は、異常な中心網膜厚の、基線からの40%以上を下回る減少を実証することができる。
【0116】
例えば、加齢黄斑変性のような眼の容態の治療のための方法には、本明細書に説明する頻度で0.5mg~5mgの範囲の量の組換え結合タンパク質の硝子体内注射を含むことができる。組換え結合タンパク質は、配列番号3のアンキリン反復ドメインを含む。
【0117】
別の例において、ラニビズマブ、ベバシズマブ、またはラニビズマブ及びベバシズマブのような抗VEGF治療に対して不応性の患者における加齢黄斑変性の治療のための方法には、0.5mg~5mgの範囲の量の組換え結合タンパク質の硝子体内注射を含むことができる。組換え結合タンパク質は、配列番号3のアンキリン反復ドメインを含む。このような例において、このような単回注射または複数回注射を受けている患者は、1回、またはそれより多数回の注射を受けた後に異常な中心網膜厚の20%を超える減少を経ることができる。いくつかの実施形態において、このような単回注射または複数回注射を受けている患者は、1回、2回、3回、4回、5回、またはそれより多数回の注射を受けた後に網膜の肥厚を経ない。
【0118】
別の例において、ラニビズマブ、ベバシズマブ、またはラニビズマブ及びベバシズマブのような抗VEGF治療に対して不応性の患者における糖尿病黄斑浮腫の治療のための方法には、0.5mg~5mgの範囲の量の組換え結合タンパク質の硝子体内注射を含むことができる。組換え結合タンパク質は、配列番号3のアンキリン反復ドメインを含む。このような例において、このような単回注射または複数回注射を受けている患者は、1回、2回、3回、4回、5回、またはそれより多数回の注射を受けた後に、異常な中心網膜厚の20%を超える減少を経ることができる。いくつかの実施形態において、このような単回注射または複数回注射を受けている患者は、1回、2回、3回、4回、5回、またはそれより多数回の注射を受けた後に網膜の肥厚を経ない。
【実施例0119】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明される。本発明者らは、ポリエチレングリコールに共役した配列番号3のアンキリン反復ドメインを含む本発明の結合タンパク質であるアビシパルペゴールを検査した(本化合物は、総称名「アビシパルペゴール」を有しており、本明細書では時折、単に「アビシパル」と呼ぶ)。
【0120】
(概要)
本発明者らは、抗VEGF療法に対して不応性の、進行性滲出型AMDに罹患している患者へ硝子体内注射として投与されるアビシパルペゴールを、非盲検の用量漸増型安全性評価において既に検査した。本発明者らは、滲出型AMDに罹患している未治療の患者におけるアビシパル及びラニビズマブの無作為化した二重盲検評価を用いて当該試験を追跡した(「第2期試験」)。本目的は、網膜浮腫及び最高矯正視力(BCVA)に及ぼす4.2mg及び3mgのアビシパルを用いた治療効果の安全性及び持続時間を評価し、アビシパルの全身性薬物動態特性を特徴づけることとした。
【0121】
本実施例において、本発明者らは、アビシパル及びラニビズマブの無作為化した二重盲検比較を実施した(「第3期試験」)。患者を、3つの群、すなわちアビシパル1mg、アビシパル2mgまたはラニビズマブ0.5mgのうちの1つへ無作為に分け、20週間追跡した。患者は全員、0週後、4週後、及び8週後に3回の毎月用量を受けた。ラニビズマブ処置した患者は、追加のラニビズマブ用量を12週後及び16週後に受けたのに対し、アビシパル患者は、偽注射を受けた。第3期の目的は、BCVA及び網膜浮腫に及ぼす類似のまたはより良好な効果が、より少数回用量のアビシパル(3用量)とラニビズマブ(5用量)とで達成できるかどうかを評価することとし、アビシパルの最終用量の8週間後及び12週間後と第4及び第5の用量のラニビズマブの4週間後との比較をした。
【0122】
第3期における主要効能変数は、16週後(第3の注射の8週間後)の試験眼におけるBCVAの基線からの平均の変化とした。2mg及び1mgのアビシパルで処置した患者はそれぞれ、5.3文字を獲得したラニビズマブ処置患者と比較して、8.2文字及び6.3文字を獲得した(第4の注射の4週間後)。鍵となる副次的効能変数は、網膜内液の除去とした。網膜内液は、光干渉断層撮影法を用いて評価するように、網膜内浮腫、網膜内嚢胞及び網膜下液として特徴づけた。治療の第3の用量の4週間後である12週後には、網膜内液のない患者の比率は、アビシパル2mg群、アビシパル1mg及びラニビズマブ群において78%、68%及び50%であった。アビシパルの第3の用量の8週間後でありかつラニビズマブの第4の用量の4週間後である16週後には、網膜内液のない患者の比率はそれぞれ、アビシパル2mg群、アビシパル1mg群及びラニビズマブ群において52%、44%及び19%であった。網膜内液の存在は、視力の喪失をもたらす網膜における神経網の破壊を生じる。網膜内液の除去は、視力を維持する。
【0123】
(患者の選択)
およそ64名の患者を以下の群のうちの1つへ3:3:2の割り当てで無作為に分けた。
・基線、4週後及び8週後に投与した2mgのアビシパル(3回の注射)
・基線、4週後及び8週後に投与した1mgのアビシパル(3回の注射)
・基線、4週後、8週後、12週後及び16週後に投与した0.5mgのラニビズマブ(5回の注射)
【0124】
64名の患者を選択した。当該患者は平均年齢が76.6歳であり、主としてコーカサス人であり、大部分が女性であった。基線では、平均BCVAは58.5文字~60.4文字に及んだ(約20/63スネレン当量)。平均基線中心網膜厚(「CRT」)は、463μmと526μmの間に及んだ。人口統計学的特徴または基線特徴のうちのいずれかについて、治療群間に有意差はなかった(表1)が、主として古典的な病変に罹患している患者の比率は、他の治療群におけるよりもアビシパル2.0mg群において顕著に高かった。
【0125】
BCVAは、Arch Ophthalmol.,119(10):1417~1436(2001)において説明されるETDRS法の変法を用いることによって定量化した。BCVA検査は、眼との接触を要するいかなる検査にも先行し、以下の屈折矯正を実施した。
【0126】
屈折矯正は、視力が低下しない限り、4メートルで実施し、視力が低下した場合には、屈折矯正は1メートルで実施した。右眼をまず屈折矯正した後、左眼を屈折矯正した。試行フレームは患者の顔面上に配置し、レンズ細胞が眼窩の前面に平行であり、瞳孔の前側で中心を占めているよう調整される。レンズ細胞は、角膜からの適切な距離に調整される。屈折矯正を受けない眼は、折りたたまれた組織を用いたパッチ貼付及び眼の上の黒色遮眼子の適用によって閉塞した。開始時のおおよその屈折矯正から得たレンズ補正物を試行フレームへと挿入した。レンズは、眼に最も近い区画に挿入することによって位置取られ、円筒状レンズ補正物を球面補正の前側にある区画の中に配置し、軸を調整した。患者には、偏心視を用いることが奨励され、必要な場合、もう一方の眼を完全に閉塞することを確実にした。球体倍率、円筒軸、及び円筒倍率を次に測定し、精密にした。
【0127】
BVCA検査は、4メートルで開始した。まず、右眼を検査した後、左眼を検査した。参加者の眼から視力チャートまでの距離は、4メートル(13フィート1.5インチ、または157.5インチ)とした。参加者は、立位または座位を許可され、いずれの場合も、試験者は、参加者が快適に立位または座位にあり、かつ検査中に頭部は前後に動かず、かつ参加者の眼は4メートルの距離にとどまっていることを確認した。試験者は、参加者の読み取った各文字を正または誤として点数化した。いったん参加者が、限定的な1文字応答で文字を識別してから次の文字を読み取ったら、先行文字の訂正は受け入れなかった。参加者が次の文字を読み取る前に音読を変更した場合(例えば、「それは『C』でした、『O』ではありません」)、当該変更は受け入れた。参加者が次の文字を読み取り始めた後に応答を変更した場合、当該変更は受け入れなかった。参加者が文字を読み取れないと言った場合、推測するよう奨励した。参加者が、2つ以上の文字のうちの1つとして1文字を識別した場合、1文字を選択するよう依頼し、必要な場合、次の文字を読み取ったとしても推測するよう依頼した。読み取りまたは推測をするよう促したにもかかわらず、さらなる意味のある読み取りができない(通常、参加者が1文字で推測できない)ことが明白となった場合、試験者は当該眼に対する検査を停止した。参加者に推測するよう促すいくつかの理由があった。文字を識別できない参加者の陳述はしばしば信頼できず、参加者に推測するよう促すことは参加者の尽力を最大限にするのを助け、異なる診療所において実施した手順間の均一性を確実にするのを助け、参加者のバイアス(詐病)を防止するのに役立つかもしれない。
【0128】
19個以下の文字を4メートルで正確に読み取っている眼を1メートルで検査した。1メートルで検査する前に、+0.75の球体を既に試行フレームにある4メートル補正へ加えて、より近い検査距離を補正した。参加者は4メートル検査のために立位または座位で居ることはできるが、参加者は1メートル検査のためには座位しかできなかった。参加者は、1メートルで最初の6行のみを読み取るよう依頼され、その距離で最高スコアを30とした。
【0129】
右眼の検査が終了した後、検査は左眼について反復し、4メートルで開始した。
表1:人口統計学的特徴及び基線特徴(第3期、mITT)
【0130】
(鍵となる安全性変数)
・有害事象(AE)及び重篤有害事象(SAE)
・BCVA
・全身の身体測定
・血液化学的性質、血液学的性質及び尿分析
・注射後評価
【0131】
(免疫原性測定及び全身の薬物動態測定)
・アビシパルの全身(血清)濃度
・アビシパルに対する結合抗体及び中和抗体
【0132】
(効能測定)
・糖尿病網膜症の早期治療の試験(ETDRS)視力プロトコルを用いて評価されるBCVA
・基線からの平均変化
・BCVAレスポンダー因子分析:
1.基線から15文字以上の改善(改善された視力)
2.基線から15文字未満の喪失(安定した視力)
・光干渉断層撮影法(OCT)によって測定されかつ中央読み取りセンター(CRC)によって評価される網膜浮腫または中心網膜厚(中心窩の中央1mm2の領域、CRT)
・CRCによって測定されるOCTによる網膜内液、網膜内嚢胞、及び網膜下液の評価
【0133】
OCTとは、網膜の高解像度画像化光学切片を提供するレーザー系非侵襲的診断システムである。試験眼における網膜の中央の1mm亜領域の厚さを、Heidelberg Engineering社製Spectralis Spectral Domain OCT(SD-OCT)またはCarl Zeiss社製Cirrus Spectral Domain OCTのいずれかを用いることによって捕捉した。Spectralis OCT装置は、512A走査及び49B走査を用いた体積走査を6.0mm×6.0mmで、ならびに斑上で固定した6.0mm走査長及び768解像度で水平及び垂直B走査を用いた交差毛髪走査を捕捉した。当該装置は、Heidelberg Eye Explorer第1.6.2.0版及びHRA2/Spectralis Family Acquisition Module第5.1.2.0版以上の版を用いて実行した。Cirrus OCT装置は、512A走査及び128B走査を6.0mm×6.0mmで用いる斑立方体走査、ならびに水平及び垂直B走査を6.0mm走査長で用いる交差毛髪走査、ならびに斑上で固定した1024A走査を捕捉した。装置は、Cirrusソフトウェア第4.5版以上で実行していた。
【0134】
スクリーニング外来で患者から収集した電子OCT像は、患者の適格性を確認するために、CRCによって再調査した。試験外来全部で患者全員から収集した電子OCT像は、CRCへ送って、網膜液の消散に及ぼす治療効果を評価した。
【0135】
同じOCTシステム(すなわち、SpectralisまたはCirrus)を用いて、本試験中、いかなる付与された患者についてもCRTを評価した。
【0136】
疾患の再発を確認するのに使用したデータには、試験眼についての中央読み取りセンターによって等級分類されたBCVA及びCRTが含まれる。治験責任医師によって評価される1.25mm2超の新たな出血または既存の出血は、再治療症例報告様式(CRF)に記録した。このCRFに記録した陽性応答は、新たな出血の確認または既存の出血の増加として用いた。
【0137】
アビシパル治療した患者は、試験投薬の第3の注射後(12週後)に活動性疾患の証拠がある場合、標準療法(SOC)へと脱出することができ、ラニビズマブ治療した患者は、活動性の疾患の証拠があるにもかかわらず、4週間の間隔で反復注射を受けた。
【0138】
(活動性疾患の証拠)
本発明者らのプロトコルは、12週後以降で、OCTに網膜液のある眼は4週間隔で投与した3回の連続注射後に網膜液の減少がなかった眼を除き治療すべきであると規定した。このような眼について、継続治療が無益であり得、眼科医及び患者が治療を中断するよう選択し得ることは可能である。治療は、OCTに(治療を停止した時の訪問と比較して)網膜液が増えた場合に後の訪問でこれらの眼において再開され得る。OCTに網膜液がないが、活動性CNVに関する他の徴候がある場合、眼は治療すべきである。これらの徴候には、新たな網膜下出血もしくは網膜内出血、持続性の網膜下出血もしくは網膜内出血、別の説明のない最後の訪問と比較して低い視力、最後の血管造影図と比較してフルオレセイン血管造影(FA)における病変の大きさの増加、またはFAにおける漏逸が含まれる。
【0139】
(鍵となる経過観察訪問)
・第1期:3日後、1、2、4、8、12、16、20、24週後/終了
・第2期:3日後、1、2、4、6、8、12、16、20、24、28及び32週後/終了
・第3期:3日後、1、4、8、12、16、20週後/終了
【0140】
(分析)
安全性集団を有害事象について分析し、改変した治療意図(mITT)集団を性質、人口統計、基線特徴、中心網膜厚、及びBCVAについて分析し、CRT及びBCVAの最終観察繰越法(last-observation-carried-forward(LOCF))を用いて、SOC(例えば、ラニビズマブ、アフリベルセプト、ベバシズマブ)を用いた治療を受けている患者を追跡するデータを入力した。
【0141】
(安全性)
因果関係にかかわらず、試験眼における最も普遍的な(2事象以上/群)の有害事象(AE)は、アビシパル群における網膜出血、硝子体浮遊物、硝子体剥離及び眼痛、ならびにラニビズマブ群における黄斑部瘢痕及び網膜出血であった(表2)。いずれの群においても報告された重篤な有害事象はなかった。炎症関連AEは、2mg治療した患者のうちの2例において、及び1mg治療した患者のうちの3例において生じた(表2)。有害事象のいずれも、第一の試験注射後に生じず、脈絡膜炎AE及びぶどう膜炎AEは、第二の注射後に生じ、虹彩炎AE及び硝子体炎AEは、第三の注射後に生じた。ラニビズマブ治療した群において眼の炎症に関する報告はなかった。
表2:試験眼における因果関係にかかわらない有害事象(2事象以上/群の発病率)及び眼の炎症(いずれかの事象)
【0142】
(効能)
2mg及び1mgのアビシパル群において、12週後まで患者はSOCへと脱出しなかった。2mgの群において、3名の患者は12週後にSOCへと脱出し、5名の患者は16週後に脱出した。1mgの群において、5名の患者は12週後に、6名が16週後に脱出した。12週後に活動性疾患の証拠のあるラニビズマブ治療した患者は、ラニビズマブで再治療し続け、6名のラニビズマブ治療した患者は12週後に、3名が16週後に、SOCについての基準を満たした。
【0143】
(最高矯正視力(BCVA))
基線からの平均BCVA変化は、すべての群において改善し、アビシパルの最後の用量の4週間後である12週後に、基線からのBCVAの変化は、2mg治療群、1mg治療群及びラニビズマブ治療群においてそれぞれ、8.9文字、6.2文字及び5.3文字であった。16週後に、主要評価項目である基線からのBCVAの変化は、は、図1に示すように、個々の群において8.2文字、6.3文字及び5.3文字であった。アビシパル治療群とラニビズマブ治療群の間の差はしたがって、統計的に有意ではないにもかかわらず、かなりあった(図1ならびに図2図3、及び図4において、標準治療を受けた後のデータは欠測とみなし、欠測値は、LOCFを用いて帰属させられる)。
【0144】
BCVAにおいて15文字以上の改善のある患者の比率は、ラニビズマブ群と比較して2mgアビシパル群において数的に高かった。12週後、2mgアビシパル群、1mgアビシパル群及びラニビズマブ群における22%、8%及び13%がそれぞれ15文字以上改善した。16週後、当該値は22%、12%及び13%であった(図2)。アビシパル群における0名の患者及びラニビズマブ群における1名の患者が、20週間の試験中に15文字以上を喪失した。
【0145】
安定した視力は、15文字未満のBCVAの喪失として評価した。アビスパル群における患者は全員、安定した視力を達成し、ラニビズマブ群における1名の患者は達成しなかった(図3)。
【0146】
(中心網膜厚)
基線CRT値は2mgアビシパル治療群とラニビズマブ治療群の間で同等だが、1mgアビシパル群はおよそ60μm厚かった。12週後までに、CRT減少は3つの治療群においてそれぞれ140μm、195μm及び126μmであった。16週後に、これらの値は111μm、161μm、及び127μmであり、2.0mgアビシパル治療群とラニビズマブ治療群の間の差はいずれの時点でも有意ではなかった。CRTが正常値の上限まで低下したまたは当該上限を下回った患者の比率は、1~16週後でアビシパル群において数的に高く、8週後の差は、ラニビズマブ群と比較して1mg群において有意に大きかった(p=0.041)。12週後、CRTが正常値の上限まで低下したまたは当該上限を下回った患者の比率は、3つの治療群においてそれぞれ57%、64%及び44%であった。16週後に、当該値は48%、52%及び44%であった。図4は、本試験にわたる平均CRT値を示す。
【0147】
(液体の解剖学的消散に及ぼす治療の効果)
sdOCT像における網膜内液、網膜内嚢胞及び網膜下液の存在は、活動性滲出型病変の測定結果として読み取りセンターによって点数化された。第一、第二、及び第三の用量の4週間後に3つの液体区画が全部消散した(全乾燥)患者の比率は、2mgアビシパル群において52%、74%及び78%、1mgアビシパル群において40%、52%及び68%、ならびにラニビズマブ群において13%、19%及び50%であった。16週後、アビシパル2.0mg及び1.0mgの第三の注射の8週間後ならびにラニビズマブの第四の注射の4週間後である16週後に、これらの値は2mgアビシパル群、1mgアビシパル群及びラニビズマブ群においてそれぞれ、52%、44%及び19%であった。図5は、網膜内液、網膜内嚢胞、及び網膜下液(3区画全部)が治療後に消散した患者の比率を示す。2mgアビシパルを用いて治療した患者における2つの例は、図6及び図7に示す。これらの患者における中心網膜厚の顕著な減少があり、中心網膜における異常な液体の消散によって証明される。
【0148】
(先行知見との比較)
1.0mgアビシパル及び2.0mgアビシパルは、治療開始4週間後、8週間後、または12週間後に網膜内液、網膜内嚢胞、及び網膜下液を有効に減少させるために使用され得ることはすべて、疾患の進行に関するこのような測定結果に及ぼすより多量の用量の効果によってさらに驚くべきことになる。滲出型AMDに罹患している175名の未治療患者の臨床試験において、4.2mg及び3.0mgのアビシパルは、網膜液を消散させる上で初回用量後にラニビズマブほど有効ではないことが認められた。患者は、1日目に投薬された後、ある特定の再治療基準を満たした場合、16週後以前に投薬された。図8は、網膜内液、網膜内嚢胞、及び網膜下液(3つの区画全部)が消散した患者の比率を示し、図9は、液体がこれらの区画のうちの1つ、2つ、3つ全部、または0において消散した患者の比率を示す。
【0149】
本発明は、ある特定の実施形態及び実施例の脈絡において開示されてきたが、本発明が、具体的に開示された実施形態を超えて、本発明の他の代替的な実施形態及び/もしくは使用ならびに明白な改変及びその等価物へと展開することは当業者によって理解されるであろう。加えて、変化量の数が示され詳細に説明されてきたが、本発明の範囲内である他の改変は、本開示に基づいて当業者に対して容易に明白であろう。本実施形態の具体的な特徴及び態様の種々の組み合わせまたは部分的組み合わせが当該範囲内で行うことができなおも当該範囲内に収まることも企図される。よって、開示した実施形態の種々の特徴及び態様が、開示した本発明の変動する様式を実施するために互いに組み合わせることができまたは置換することができることは理解されるべきである。したがって、開示した本明細書における本発明の範囲は、先に説明した特定の開示した実施形態によって制限されるべきではないが、特許請求の範囲の公正な読み取りによってのみ決定されるべきであることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図8
図9
【配列表】
2022107628000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-06-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
VEGF-AxxxとVEGFR-2の間の結合の阻害方法であって、このような阻害を必要とする患者へ、アンキリン反復ドメインを含む組換え結合タンパク質約0.25mg~約4mgを投与する工程を含み、この中で、前記組換え結合タンパク質は、2~5用量で投与され、各用量間には25~35日の間隔がある、前記方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0118
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0118】
別の例において、ラニビズマブ、ベバシズマブ、またはラニビズマブ及びベバシズマブのような抗VEGF治療に対して不応性の患者における糖尿病黄斑浮腫の治療のための方法には、0.5mg~5mgの範囲の量の組換え結合タンパク質の硝子体内注射を含むことができる。組換え結合タンパク質は、配列番号3のアンキリン反復ドメインを含む。このような例において、このような単回注射または複数回注射を受けている患者は、1回、2回、3回、4回、5回、またはそれより多数回の注射を受けた後に、異常な中心網膜厚の20%を超える減少を経ることができる。いくつかの実施形態において、このような単回注射または複数回注射を受けている患者は、1回、2回、3回、4回、5回、またはそれより多数回の注射を受けた後に網膜の肥厚を経ない。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕VEGF-AxxxとVEGFR-2の間の結合の阻害方法であって、このような阻害を必要とする患者へ、アンキリン反復ドメインを含む組換え結合タンパク質約0.25mg~約4mgを投与する工程を含み、この中で、前記組換え結合タンパク質は、2~5用量で投与され、各用量間には25~35日の間隔がある、前記方法。
〔2〕黄斑変性の治療方法であって、このような治療を必要とする患者へ、アンキリン反復ドメインを含む組換え結合タンパク質約0.25mg~約4mgを投与する工程を含み、この中で、前記組換え結合タンパク質は、2~5用量で投与され、各用量間には25~35日の間隔がある、前記方法。
〔3〕前記黄斑変性は、滲出型黄斑変性である、前記〔2〕に記載の方法。
〔4〕網膜の疾患に罹患している患者における視力の改善方法であって、このような改善を必要とする患者へ、アンキリン反復ドメインを含む組換え結合タンパク質約0.25mg~約4mgを投与する工程を含み、この中で、前記組換え結合タンパク質は、2~5用量で投与され、各用量間には25~35日の間隔がある、前記方法。
〔5〕網膜の前記疾患は、滲出型黄斑変性、ポリープ状脈絡膜血管新生、及び網膜血管腫性増殖、糖尿病黄斑浮腫、病的近視、及び網膜分枝血管閉塞症から選択される、前記〔4〕に記載の方法。
〔6〕網膜における液体の減少方法であって、このような減少を必要とする患者へ、アンキリン反復ドメインを含む組換え結合タンパク質約0.25mg~約4mgを投与する工程を含み、この中で、前記組換え結合タンパク質は、2~5用量で投与され、各用量間には25~35日の間隔がある、前記方法。
〔7〕前記液体は、硝子体内液、網膜下液、及び網膜内嚢胞内液から選択される、前記〔6〕に記載の方法。
〔8〕網膜厚の減少方法であって、このような減少を必要とする患者へ、アンキリン反復ドメインを含む組換え結合タンパク質約0.25mg~約4mgを投与する工程を含み、この中で、前記組換え結合タンパク質は、2~5用量で投与され、各用量間には25~35日の間隔がある、前記方法。
〔9〕前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して2用量で投与される、前記〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の方法。
〔10〕前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して3用量で投与される、前記〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の方法。
〔11〕前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して4用量で投与される、前記〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の方法。
〔12〕前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して5用量で投与される、前記〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の方法。
〔13〕前記方法は、前記2~5用量に続く追加の用量を、各追加の用量間に25~115日の間隔を有して投与することをさらに含む、前記〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の方法。
〔14〕前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して2用量で投与された後、各追加の用量間に50~115日の間隔を有して追加の用量で投与される、前記〔13〕に記載の方法。
〔15〕前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して2用量で投与された後、各追加の用量間に50~90日の間隔を有して追加の用量で投与される、前記〔14〕に記載の方法。
〔16〕前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して2用量で投与された後、各追加の用量間に50~60日の間隔を有して追加の用量で投与される、前記〔14〕に記載の方法。
〔17〕前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して2用量で投与された後、各追加の用量間に80~90日の間隔を有して追加の用量で投与される、前記〔14〕に記載の方法。
〔18〕前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して2用量で投与された後、各追加の用量間に105~115日の間隔を有して追加の用量で投与される、前記〔14〕に記載の方法。
〔19〕前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して3用量で投与された後、各追加の用量間に50~115日の間隔を有して追加の用量で投与される、前記〔13〕に記載の方法。
〔20〕前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して3用量で投与された後、各追加の用量間に50~90日の間隔を有して追加の用量で投与される、前記〔19〕に記載の方法。
〔21〕前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して3用量で投与された後、各追加の用量間に50~60日の間隔を有して追加の用量で投与される、前記〔19〕に記載の方法。
〔22〕前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して3用量で投与された後、各追加の用量間に80~90日の間隔を有して追加の用量で投与される、前記〔19〕に記載の方法。
〔23〕前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して3用量で投与された後、各追加の用量間に105~115日の間隔を有して追加の用量で投与される、前記〔19〕に記載の方法。
〔24〕前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して4用量で投与された後、各追加の用量間に50~115日の間隔を有して追加の用量で投与される、前記〔13〕に記載の方法。
〔25〕前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して4用量で投与された後、各追加の用量間に50~90日の間隔を有して追加の用量で投与される、前記〔24〕に記載の方法。
〔26〕前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して4用量で投与された後、各追加の用量間に50~60日の間隔を有して追加の用量で投与される、前記〔24〕に記載の方法。
〔27〕前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して4用量で投与された後、各追加の用量間に80~90日の間隔を有して追加の用量で投与される、前記〔24〕に記載の方法。
〔28〕前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して4用量で投与された後、各追加の用量間に105~115日の間隔を有して追加の用量で投与される、前記〔24〕に記載の方法。
〔29〕前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して5用量で投与された後、各追加の用量間に50~115日の間隔を有して追加の用量で投与される、前記〔13〕に記載の方法。
〔30〕前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して5用量で投与された後、各追加の用量間に50~90日の間隔を有して追加の用量で投与される、前記〔29〕に記載の方法。
〔31〕前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して5用量で投与された後、各追加の用量間に50~60日の間隔を有して追加の用量で投与される、前記〔29〕に記載の方法。
〔32〕前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して5用量で投与された後、各追加の用量間に80~90日の間隔を有して追加の用量で投与される、前記〔29〕に記載の方法。
〔33〕前記結合タンパク質は、各用量間に25~35日の間隔を有して5用量で投与された後、各追加の用量間に105~115日の間隔を有して追加の用量で投与される、前記〔29〕に記載の方法。
〔34〕前記結合タンパク質は、少なくとも5kDaの分子量を有するポリエチレングリコール部分をさらに含む、前記〔1〕~〔33〕のいずれか一項に記載の方法。
〔35〕前記ポリエチレングリコール部分は、5kDa、10kDa、及び20kDaからなる群から選択される分子量を有する、前記〔34〕に記載の方法。
〔36〕前記アンキリン反復ドメインのN末端キャッピングモジュールは、位置5にAsp残基を含む、前記〔1〕~〔35〕のいずれか一項に記載の方法。
〔37〕前記アンキリン反復ドメインは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7のアンキリン反復ドメインからなる群から選択される、前記〔1〕~〔36〕のいずれか一項に記載の方法。
〔38〕前記結合タンパク質は、配列番号3のアミノ酸1~126を含むアンキリン反復ドメインを含む、前記〔1〕~〔37〕のいずれか一項に記載の方法。
〔39〕前記結合タンパク質は、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、及び配列番号22からなる群から選択されるアンキリン反復配列モチーフを有する反復モジュールを含むアンキリン反復ドメインを含む、前記〔1〕~〔37〕のいずれか一項に記載の方法。
〔40〕前記結合ドメインは、10 9 M未満のKdでVEGF-Axxxを結合する、前記〔1〕~〔39〕のいずれか一項に記載の方法。
〔41〕前記結合タンパク質は、VEGFR-1に対するVEGF-Axxxの結合を阻害する、前記〔1〕~〔40〕のいずれか一項に記載の方法。
〔42〕前記アンキリン反復ドメインは、そのC末端で、ポリペプチドリンカー及びC末端Cys残基に対するペプチド結合を介して共役し、この中で、前記C末端Cysのチオールは、マレイミドカップリング型ポリエチレングリコールへさらに共役する、前記〔1〕~〔41〕のいずれか一項に記載の方法。
〔43〕前記マレイミドカップリング型ポリエチレングリコールは、[3-(3-マレイミド-1-オキソプロピル)アミノ]プロピル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレンである、前記〔42〕に記載の方法。
〔44〕前記ポリペプチドリンカーは、2~24のアミノ酸からなる、前記〔42〕に記載の方法。
〔45〕前記結合タンパク質は、医薬として許容され得る担体及び/または希釈剤とともに投与される、前記〔1〕~〔44〕のいずれか一項に記載の方法。
〔46〕前記担体はPBSである、前記〔45〕に記載の方法。
〔47〕前記結合タンパク質は、硝子体内注射によって投与される、前記〔45〕または〔46〕に記載の方法。
〔48〕前記結合タンパク質は、約0.25mg、約0.5mg、約1mg、約2mg、約3mg、または約4mgの用量で投与される、前記〔1〕~〔47〕のいずれか一項に記載の方法。
〔49〕前記方法は、黄斑変性、ポリープ状脈絡膜血管新生、網膜血管腫性増殖、糖尿病黄斑浮腫、病的近視、網膜分枝血管閉塞症、または網膜中心静脈閉塞症に罹患している患者において当該容態を治療する上で有効である、前記〔1〕及び〔9〕~〔48〕のいずれか一項に記載の方法。
〔50〕患者の最高矯正視力は、治療の開始12週間後に少なくとも15文字まで改善する、前記〔1〕~〔49〕のいずれか一項に記載の方法。
〔51〕前記患者は、治療の開始4、8、または12週間後に、中心網膜における液体の約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%の減少を経る、前記〔1〕~〔50〕のいずれか一項に記載の方法。
〔52〕前記患者は、治療の開始4、8、または12週間後に、網膜内浮腫、網膜内嚢胞、及び網膜下液のうちの1つ以上において、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%の減少を経る、前記〔1〕~〔51〕のいずれか一項に記載の方法。
〔53〕前記患者は、治療の開始4、8、または12週間後に、網膜内浮腫、網膜内嚢胞、及び網膜下液のうちの1つ以上において、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%の減少を経る、前記〔1〕~〔51〕のいずれか一項に記載の方法。
〔54〕前記減少は、スペクトルドメインOCTによって評価される、前記〔52〕または〔53〕に記載の方法。
〔55〕前記患者は、治療の開始4、8、または12週間後に、以下、すなわち中心網膜厚、網膜内浮腫、網膜内嚢胞、及び網膜下液のうちの少なくとも2つにおける、または少なくとも3つにおける、または全部における減少を経る、前記〔1〕~〔54〕のいずれか一項に記載の方法。
〔56〕前記患者は、ラニビズマブ療法、ベバシズマブ療法、アフリベルセプト療法、またはペガプタニブ療法に対して不応性である、前記〔1〕~〔55〕のいずれか一項に記載の方法。
〔57〕前記患者は、ラニビズマブ、ベバシズマブ、またはアフリベルセプトの3回の硝子体内注射後の斑の中央1mm 2 の領域における20%未満の減少を有している、前記〔56〕に記載の方法。
〔58〕前記患者は、3用量、4用量、5用量、または6用量のラニビズマブ療法に対して不応性である、前記〔56〕または〔57〕のいずれか一項に記載の方法。
〔59〕前記患者は、3用量、4用量、5用量、または6用量のベバシズマブ療法に対して不応性である、前記〔56〕または〔57〕のいずれか一項に記載の方法。
〔60〕前記患者は、3用量、4用量、5用量、または6用量のアフリベルセプト療法に対して不応性である、前記〔56〕または〔57〕のいずれか一項に記載の方法。
〔61〕前記患者は、3用量、4用量、5用量、または6用量のペガプタニブ療法に対して不応性である、前記〔56〕または〔57〕のいずれか一項に記載の方法。
【外国語明細書】