(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107657
(43)【公開日】2022-07-22
(54)【発明の名称】微細藻類の高密度培養のための滅菌培地、および空気圧縮、空気冷却、二酸化炭素自動供給、密封式垂直型フォトバイオリアクター、収集、乾燥用の装置、ならびにこれらを使用した、二酸化炭素のバイオマス変換固定を提供することを特徴とする空気および水の浄化方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20220714BHJP
C12P 1/00 20060101ALI20220714BHJP
C12N 1/12 20060101ALI20220714BHJP
C02F 1/78 20060101ALI20220714BHJP
B01D 69/08 20060101ALI20220714BHJP
C02F 3/34 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
C12M1/00 E
C12P1/00 Z
C12N1/12 A
C02F1/78
B01D69/08
C02F3/34 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081970
(22)【出願日】2022-05-19
(62)【分割の表示】P 2019520924の分割
【原出願日】2017-07-05
(31)【優先権主張番号】10-2016-0084680
(32)【優先日】2016-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】519003310
【氏名又は名称】グリーンテク ベンチャーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨン ナム
(72)【発明者】
【氏名】パク ヨン ウー
(57)【要約】
【課題】微細藻類の培養のためのシステムの提供。
【解決手段】微細藻類用培養ブロス生産システムは、微小気泡発生器を用いて培養ブロスを滅菌するためのデバイスと、大気中の二酸化炭素および酸素を培養ブロス中に注入するための空気圧縮均圧化デバイスとを含む。同システムはまた、水温が高すぎる時に好適な培養ブロス温度を維持するための空気冷却デバイスと、光合成を促進するための二酸化炭素自動供給デバイスと、汚染物質を遮断しかつ溶存二酸化炭素および酸素濃度を高めるための密封式垂直型フォトバイオリアクターとを含む。同システムは、中空糸膜を用いた高効率収集デバイスと、空気圧縮によって発生した廃熱を用いる熱気乾燥デバイスとをさらに含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小気泡発生器を用いて培養ブロスを滅菌するためのデバイスと;
大気からの二酸化炭素および酸素を培養ブロス中に注入するための空気圧縮均圧化デバイスと;
好適な培養ブロス温度を維持するための空気冷却デバイスと;
光合成を促進するための二酸化炭素自動供給デバイスと;
微細藻類を接種した培地を含有するよう構成された密封式垂直型フォトバイオリアクターと;
中空糸膜を含む収集デバイスと;
熱気乾燥デバイスと
を備える、培養ブロス中での微細藻類の培養のための装置。
【請求項2】
空気圧縮均圧化デバイスが、大気中の二酸化炭素および酸素を10バールまで圧縮するデバイスと、空気圧を均圧化するためのデバイスと、圧縮した気体を培養ブロス中に注入するためのパイプおよび気体逆流防止デバイスとを含む、請求項1記載の装置。
【請求項3】
二酸化炭素自動供給デバイスが、pHセンサーを用いて培養ブロス中に液化二酸化炭素を供給する、請求項1記載の装置。
【請求項4】
二酸化炭素自動供給デバイスが、微細藻類が淡水微細藻類である場合は、培養ブロスのpHが7.26以上である時に二酸化炭素を自動的に供給し、かつ培養ブロスのpHが7.26未満である時に二酸化炭素を自動的に供給停止し;かつ、微細藻類が海水微細藻類である場合は、培養ブロスのpHが7.30以上である時に二酸化炭素を自動的に供給し、かつ培養ブロスのpHが7.30未満である時に二酸化炭素を自動的に供給停止する、請求項3記載の装置。
【請求項5】
圧縮気体が前記装置の最下部に注入される、請求項1記載の装置。
【請求項6】
気体の圧力を制御するためのデバイスをさらに備える、請求項5記載の装置。
【請求項7】
浄化対象の空気および水を培養ブロス中での微細藻類の培養のための装置に供給する段階を含む、バイオマスで空気および水を浄化しかつ二酸化炭素を固定または変換するための方法であって、該装置が、
微小気泡発生器を用いて培養ブロスを滅菌するためのデバイスと;
大気からの二酸化炭素および酸素を培養ブロス中に注入するための空気圧縮均圧化デバイスと;
好適な培養ブロス温度を維持するための空気冷却デバイスと;
二酸化炭素自動供給デバイスと;
微細藻類を接種した培地を含有するよう構成された密封式垂直型フォトバイオリアクターと;
中空糸膜を用いた収集デバイスと;
熱気乾燥デバイスと
を備える、
前記方法。
【請求項8】
空気圧縮均圧化デバイスが、大気中の二酸化炭素および酸素を10バールまで圧縮するデバイスと、空気圧を均圧化するためのデバイスと、圧縮した気体を培養ブロス中に注入するためのパイプおよび気体逆流防止デバイスとを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
二酸化炭素自動供給デバイスが、pHセンサーを用いて培養ブロス中に液化二酸化炭素を供給する、請求項7記載の方法。
【請求項10】
二酸化炭素自動供給デバイスが、微細藻類が淡水微細藻類である場合は、培養ブロスのpHが7.26以上である時に二酸化炭素を自動的に供給し、かつ培養ブロスのpHが7.26未満である時に二酸化炭素を自動的に供給停止し;かつ、微細藻類が海水微細藻類である場合は、培養ブロスのpHが7.30以上である時に二酸化炭素を自動的に供給し、かつ培養ブロスのpHが7.30未満である時に二酸化炭素を自動的に供給停止する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
圧縮気体が前記装置の最下部に注入される、請求項7記載の方法。
【請求項12】
気体の圧力を制御するためのデバイスをさらに備える、請求項11記載の方法。
【請求項13】
接続された同一の垂直型フォトバイオリアクター間における培養ブロスの相互交換およびフローが、気体の圧力を制御するためのデバイスの浮力によって誘発される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
微小気泡発生器を用いて培養ブロスを滅菌するためのデバイスと;
大気からの二酸化炭素および酸素を培養ブロス中に注入するための空気圧縮均圧化デバイスと;
好適な培養ブロス温度を維持するための空気冷却デバイスと;
光合成を促進するための二酸化炭素自動供給デバイスと;
微細藻類を接種した培地を含有するよう構成された密封式垂直型フォトバイオリアクターと;
中空糸膜を含む収集デバイスと;
熱気乾燥デバイスと
を備える、微細藻類の培養のためのシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、微細藻類を効率的に培養および収集するためのデバイスと、バイオマスを用いた二酸化炭素の固定および変換を通じて、空気を浄化しならびに有機性廃水である汚水中の窒素およびリンを生物学的に処理および浄化するための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
光合成を行う微生物である微細藻類は、20億~30億年前に原始地球上に登場した。それら微細藻類は、その強力な発育力および繁殖力により、早期の地球上に豊富に存在した炭素を光合成を通じて有機物質に変換し、そしてその代謝能の結果として酸素を排出した。それら微細藻類は動物の登場を可能にし、かつ今日まで生存している。
【0003】
現在の地球環境が、エネルギー源の枯渇と、温室ガスの過剰放出に起因する地球温暖化の影響とによって、深刻な危機に直面していることは否定できない。したがって、二酸化炭素の放出と化石燃料の使用を減らすため、生物由来のバイオエネルギーが代替エネルギー源として大きな注目を集めている。ゆえに、従来の化石燃料に大きく依存する輸送用燃料を、近い将来、再生可能かつカーボンニュートラルなバイオ燃料に置き換えることの必要性は、非常に高いといえる。
【0004】
バイオエネルギーは、他のタイプの再生可能エネルギーより貯蔵が容易であるだけでなく、内燃機関に直接使用することができる。通常のディーゼル燃料と混合して使用することもでき、かつ、非毒性で生分解性の物質である。現在まで、ほとんどのバイオディーゼル燃料は、パーム油、ナタネ油、または油分を多く含む他の植物から生産されている。しかし、そうした植物由来バイオディーゼル燃料には持続可能性の問題が生じている。例えば、バイオディーゼル燃料の年間世界消費量(2015年において約20億トン)をナタネから生産するには、朝鮮半島の面積の約2倍に等しい土地が必要となる。また、生産できる総エネルギーの半分以上が加工中に消費される。微細藻類を用いたバイオディーゼル燃料生産の研究開発が近年大きな注目を集めているのは、これらの理由による。
【0005】
微細藻類の使用には多数の利点がある。第一に、微細藻類は、概して、植物よりはるかに優れた生産性特性を示す。増殖が特に速い微細藻類は3時間ごとに分裂して倍増する。微細藻類は、二酸化炭素に加えて、アンモニア、硝酸塩類、リン酸塩類などの汚染物質も除去できるので、廃水処理にも有用である。また、培養した微細藻類は、従来の化石燃料の代替となりうることに加えて、抗酸化物などの有用な天然物質も生産できる。そうした物質の抽出後、副産物を飼料または肥料として用いることもできるので、微細藻類は多様な目的に利用可能な燃料源となる。
【0006】
しかし、微細藻類を大量培養するには克服すべきさまざまな技術的ハードルがある。微細藻類を培養する工程が総コストの50%超を占め、次に、収集、濃縮、乾燥、ならびに、分離および抽出の工程が続く。既存の培養方法として、韓国登録特許第10-0679989号(特許文献1)(Raceway-type outdoor mass microalgal culture vessel provided with seed culture vessel)および韓国公開特許第10-2012-0014387号(特許文献2)(Photobioreactors for microalgal mass cultures and cultivation methods using them)などがある。しかし、従来のレースウェイポンド型培養システムおよびフォトバイオリアクターは、広い設置面積を要し、初期設置コストも高い。小型のレースウェイポンドの場合は、初期設備コストは低いが、微細藻類によりバイオフィルムが形成されることと、培養期間が長くなることとにより、収率が低下する。加えて、化学的作用物質である凝集剤が収集工程に用いられることにより、二次的な水汚染の問題が生じる。フォトバイオリアクターは収率が良好であるが、藻類の壁への付着を防ぐようなフローを誘発するため水平構造に限られるという点で制約がある。この水平構造は、大気中への二酸化炭素の導入を困難にするのみならず、光合成産物である酸素の放出も制限する。このことは、酸素中毒を介して、増殖ひいては生産性を制約する。
【0007】
つまり、微細藻類を商業化するには、初期設備コストが低く、かつ微細藻類の増殖要因(光、二酸化炭素、窒素、リン、微量ミネラル)を低コストで提供することによって作動コストを低下させるような、低コストかつ高エネルギーの組合せ技術の開発が急務であるといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国登録特許第10-0679989号
【特許文献2】韓国公開特許第10-2012-0014387号
【発明の概要】
【0009】
いくつかの態様において、本明細書に説明する不利点を少なくともある程度克服する、微細藻類を増殖させかつ収集するためのフォトバイオリアクターと方法とが、本発明の1つの点において提供され、その本発明によって前述のニーズのかなりの部分が満たされる。
【0010】
本発明の1つの態様は、微小気泡発生器を用いて培養ブロスを滅菌するためのデバイスと;大気からの二酸化炭素および酸素を培養ブロス中に注入するための空気圧縮均圧化デバイスと;水温が既定の最高温度より高いことに応答して、好適な培養ブロス温度を維持するための空気冷却デバイスとを含む、微細藻類用培養ブロス生産システムに関する。同システムはまた、光合成を促進するための二酸化炭素自動供給デバイスと;微細藻類を接種した培地を含有するよう構成された密封式垂直型フォトバイオリアクターであって、培地に光が入ることを許容し、汚染物質を遮断し、かつ溶存二酸化炭素および酸素濃度を高めるよう構成された、密封式垂直型フォトバイオリアクターと;中空糸膜を用いた高効率収集デバイスと;空気圧縮によって発生した廃熱を用いる熱気乾燥デバイスとを含む。
【0011】
本発明の別の態様は、浄化対象の空気および水を微細藻類用培養ブロス生産システムに供給する段階を含む、バイオマスで空気および水を浄化しかつ二酸化炭素を固定または変換するための方法に関する。微細藻類用培養ブロス生産システムは、微小気泡発生器を用いて培養ブロスを滅菌するためのデバイスと;大気からの二酸化炭素および酸素を培養ブロス中に注入するための空気圧縮均圧化デバイスと;水温が既定の最高温度より高いことに応答して、好適な培養ブロス温度を維持するための空気冷却デバイスとを含む。同システムはまた、光合成を促進するための二酸化炭素自動供給デバイスと;微細藻類を接種した培地を含有するよう構成された密封式垂直型フォトバイオリアクターであって、培地に光が入ることを許容し、汚染物質を遮断し、かつ溶存二酸化炭素および酸素濃度を高めるよう構成された、密封式垂直型フォトバイオリアクターと;中空糸膜を用いた高効率収集デバイスと;空気圧縮によって発生した廃熱を用いる熱気乾燥デバイスとを含む。
【0012】
以上、本明細書に記載する本発明の詳細な説明がよりよく理解され、かつ、当技術分野に対する本発明の寄与がよりよく認識されるよう、本発明の特定の態様をやや大まかに概説した。無論、本発明には、以下に説明され、そして添付の特許請求の範囲の内容を形成するような追加的態様も存在する。
【0013】
この点において、本発明の少なくとも1つの態様を詳しく説明する前に理解されるべき点として、本発明は、その適用において、以下の説明に記述されるかまたは図面に図示される構築の詳細および構成要素の配置に限定されるわけではない。本発明は、説明する態様に加えて他の態様も可能であり、かつ、さまざまな方式で実施および実現されうる。そして、これも理解されるべき点として、本明細書および要約に用いられる語法および術語は説明を目的としたものであり、限定的なものとみなされるべきでない。
【0014】
よって当業者には、本開示の基礎となっている概念が、本発明の複数の目的を実現するための他の構造、方法、およびシステムを設計するための基礎として容易に利用されうることが理解されるであろう。したがって、特許請求の範囲は、本発明の精神および範囲から逸脱しない限りにおいて、そのような等価構築物を含むものとみなされることが重要である。
[本発明1001]
微小気泡発生器を用いて培養ブロスを滅菌するためのデバイスと;
大気からの二酸化炭素および酸素を培養ブロス中に注入するための空気圧縮均圧化デバイスと;
水温が既定の最高温度より高いことに応答して、好適な培養ブロス温度を維持するための空気冷却デバイスと;
光合成を促進するための二酸化炭素自動供給デバイスと;
微細藻類を接種した培地を含有するよう構成された密封式垂直型フォトバイオリアクターであって、該培地に光が入ることを許容し、汚染物質を遮断し、かつ溶存二酸化炭素および酸素濃度を高めるよう構成された、密封式垂直型フォトバイオリアクターと;
中空糸膜を用いた高効率収集デバイスと;
空気圧縮によって発生した廃熱を用いる熱気乾燥デバイスと
を備える、微細藻類用培養ブロス生産システム。
[本発明1002]
微小気泡発生器が、地下水中または汚水処理場からの処理水中に存在する競合微細藻類および微生物を、OHラジカルを用いて滅菌する、本発明1001の微細藻類用培養ブロス生産装置。
[本発明1003]
空気加圧デバイスが、大気中の二酸化炭素および酸素を10バールまで圧縮するデバイスと、空気圧を均圧化するためのデバイス(タンク)と、圧縮した気体を培養ブロス中に注入するためのパイプおよび気体逆流防止デバイスとからなる、本発明1001の微細藻類用培養ブロス生産装置。
[本発明1004]
空気冷却デバイスが、水温が既定の最適温度より高いことに応答して、各微細藻類種に対する最適水温を維持するためのものである、本発明1001の微細藻類用培養ブロス生産装置。
[本発明1005]
二酸化炭素自動供給デバイスが、急速増殖期における光合成を促進するために、pHセンサーを用いて培養ブロス中に液化二酸化炭素を供給する、本発明1001の微細藻類用培養ブロス生産装置。
[本発明1006]
二酸化炭素自動供給デバイスが、微細藻類が淡水微細藻類である場合は、培養ブロスのpHが7.26以上である時に二酸化炭素を自動的に供給し、かつ培養ブロスのpHが7.26未満である時に二酸化炭素を自動的に供給停止し;かつ、微細藻類が海水微細藻類である場合は、培養ブロスのpHが7.30以上である時に二酸化炭素を自動的に供給し、かつ培養ブロスのpHが7.30未満である時に二酸化炭素を自動的に供給停止する、本発明1005の微細藻類用培養ブロス生産装置。
[本発明1007]
気泡形態の気体が垂直方向に上昇して培養ブロス中にさざ波が生じるよう、圧縮気体が前記装置の最下部に注入され、これにより、微細藻類がフォトバイオリアクターの壁に付着することを防いで、光合成の要素である光の透過率を増大させ、このようにして増殖要因である溶存二酸化炭素、窒素、および酸素の濃度を上昇させて、ひいては光合成を促進し、かつ、光合成の代謝産物である酸素が、前記装置の最上部に配された排出パイプを通って大気中にただちに排出される、本発明1001の微細藻類用培養ブロス生産装置。
[本発明1008]
気体の圧力を精密制御するためのデバイスをさらに備える、本発明1007の微細藻類用培養ブロス生産装置。
[本発明1009]
接続された同一の垂直型フォトバイオリアクター間における培養ブロスの相互交換およびフローが、精密に圧力調整された空気の浮力のみによって誘発される、本発明1008の微細藻類用培養ブロス生産装置。
[本発明1010]
フォトバイオリアクターからパイプを通じて収集された濃縮微細藻類が、水とバイオマスとを分離して収集できるよう中空糸膜に通される、本発明1001の微細藻類用培養ブロス生産装置。
[本発明1011]
分離された水が、気泡発生デバイスを用いて滅菌され、かつ培養ブロスに再使用される、本発明1010の微細藻類用培養ブロス生産装置。
[本発明1012]
収集されたバイオマス(濃縮微細藻類)が、本発明1003の空気圧縮機デバイスによって発生した廃熱を用いて乾燥される、本発明1010の微細藻類用培養ブロス生産装置。
[本発明1013]
最適化された通年の微細藻類培養を確実にするビニール温室と、そのための操作デバイスとをさらに備える、本発明1001の微細藻類用培養ブロス生産装置。
[本発明1014]
浄化対象の空気および水を微細藻類用培養ブロス生産システムに供給する段階を含む、バイオマスで空気および水を浄化しかつ二酸化炭素を固定または変換するための方法であって、該微細藻類用培養ブロス生産システムが、
微小気泡発生器を用いて培養ブロスを滅菌するためのデバイスと;
大気からの二酸化炭素および酸素を培養ブロス中に注入するための空気圧縮均圧化デバイスと;
水温が既定の最高温度より高いことに応答して、好適な培養ブロス温度を維持するための空気冷却デバイスと;
光合成を促進するための二酸化炭素自動供給デバイスと;
微細藻類を接種した培地を含有するよう構成された密封式垂直型フォトバイオリアクターであって、該培地に光が入ることを許容し、汚染物質を遮断し、かつ溶存二酸化炭素および酸素濃度を高めるよう構成された、密封式垂直型フォトバイオリアクターと;
中空糸膜を用いた高効率収集デバイスと;
空気圧縮によって発生した廃熱を用いる熱気乾燥デバイスと
を備える、
前記方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に従う効率的な微細藻類培養を行うための設備および装備の透視図である。
【
図2】本発明に従う微細藻類培養を行うための温室の前面図および後面図である。
【
図3】本発明に従う微細藻類培養を行うための温室の側面図である。
【
図4】本発明に従う微細藻類培養を行うための温室の断面図である。
【
図5】本発明に従う微細藻類培養のために設置される温室の第一の透視図である。
【
図6】本発明に従う微細藻類培養のために設置される温室の第二の透視図である。
【
図7】本発明に従う微細藻類培養のために設置される温室の第三の透視図である。
【
図8】本発明に従って培養ブロスを滅菌するための微小気泡発生デバイスの構造図である。
【
図9】本発明に従って培養ブロスを滅菌するために設置される微小気泡発生デバイスを示した図である。
【
図10】本発明に従う培養ブロスならびに空気(二酸化炭素および窒素)の供給パイプを示した第一の図である。
【
図11】本発明に従う培養ブロスならびに空気(二酸化炭素および窒素)の供給パイプを示した第二の図である。
【
図12】本発明に従って設置される空気圧縮機を示した第一の図である。
【
図13】本発明に従って設置される空気圧縮機を示した第二の図である。
【
図14】本発明に従って設置される、圧縮空気の圧力調節用のタンクおよび空気冷却デバイスを示した図である。
【
図15】本発明に従って設置される二酸化炭素自動供給デバイスを示した図である。
【
図16】本発明に従う垂直型フォトバイオリアクターの側面図である。
【
図17】本発明に従って設置される垂直型フォトバイオリアクターを示した第一の図である。
【
図18】本発明に従って垂直型フォトバイオリアクター上に設置される空気圧調節デバイスを示した図である。
【
図19】本発明に従って設置される垂直型フォトバイオリアクターを示した第二の図である。
【
図20】本発明に従って設置される垂直型フォトバイオリアクターを示した第三の図である。
【
図21】本発明に従う垂直型フォトバイオリアクターのブロック図である。
【
図22】本発明に従う垂直型フォトバイオリアクターに関する日次増殖グラフである。
【
図23】本発明に従う垂直型フォトバイオリアクターに関する1か月の増殖グラフである。
【
図24】本発明に従う中空糸膜式の微細藻類収集デバイスの正面図である。
【
図25】本発明に従う中空糸膜式の微細藻類収集デバイスの側面図である。
【
図26】本発明に従って設置される中空糸膜式の微細藻類収集デバイスを示した図である。
【
図27】本発明に従う中空糸膜式の微細藻類収集デバイスの作動結果の写真である。
【
図28】本発明に従って設置される微細藻類乾燥デバイスを示した図である。
【
図29】本発明に従って設置される微細藻類乾燥デバイスの、乾燥後の内部の写真である。
【
図30】本発明に従う微細藻類乾燥デバイスによる乾燥前および乾燥後(右側)の写真である。
【
図31】本発明に従って設置される温室用の自動制御システムを示した図である。
【
図32】本発明に従う増殖温度の関数として細胞密度を示したグラフである。
【
図33】本発明に従う増殖用照明の関数として細胞密度を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
本発明の諸態様は、微小気泡発生器を用いて培養ブロスを滅菌するためのデバイスと、大気中の二酸化炭素および酸素を培養ブロス中に注入するための空気圧縮均圧化デバイスと、水温が高すぎる時に好適な培養ブロス温度を維持するための空気冷却デバイスとを有する、微細藻類用培養ブロス生産システムに関する。同システムはまた、光合成を促進するための二酸化炭素自動供給デバイスと、汚染物質を遮断しかつ溶存二酸化炭素および酸素濃度を高めるための密封式垂直型フォトバイオリアクターと、中空糸膜を用いた高効率収集デバイスと、空気圧縮によって発生した廃熱を用いる熱気乾燥デバイスとを含む。追加的諸態様は、本明細書に説明する微細藻類用培養ブロス生産システムを用いて空気および水を浄化しかつ二酸化炭素を固定または変換するための方法に関する。
【0017】
本発明の諸態様において、汚水処理場から出る、窒素およびリンを多量に含む廃水を、微小気泡発生デバイスを用いて滅菌して、微細藻類培養ブロスに用いることができる;培養した微細藻類は、バイオマス(微細藻類)のみを収集するため中空糸膜に通される;その後、浄化された水は河川に排出されるか、または、微小気泡発生デバイスを通って再滅菌されて、コストを節約しかつ水環境を向上させるため培養ブロスに再使用される。
【0018】
空気加圧均圧化デバイスは、大気中の二酸化炭素、酸素、および窒素などを圧縮して、これらを一定の圧力でフォトバイオリアクター内に供給し、これにより、微細藻類の増殖に必要な要因を提供するのみならず、空気環境も向上させる。密封式垂直型フォトバイオリアクターは、光合成の要素である光の浸入率を高め、大気中の競合種またはコンタミネーション物質を締め出し、二酸化炭素など前述の増殖要因の溶解を容易にし、かつ、光合成の代謝産物である酸素を、フォトバイオリアクターの最上部に位置する排出パイプを通して排出する。
【0019】
窒素およびリンを多量に含む廃水と、大気中の二酸化炭素などの空気汚染物質とを、微細藻類のための増殖要因として用いることにより、コストを節約できかつ環境を保護できる。加えて、微細藻類を培養および収集する本発明の単純な方法は、高濃度かつ高純度の収集を毎日行うことを可能にする。
【0020】
技術的問題:現在まで、微細藻類培養用の生(raw)培養ブロスの処理における中核的段階である滅菌には、塩素系の酸化剤(微酸性の次亜塩素酸ナトリウムなど)が用いられている。しかし、そうした物質は環境に優しくなく、トリハロメタン(THM)およびハロ酢酸(HAA)などの有害な二次副産物を生じずにすむ、経済的実現可能性がより高い技術が開発される必要がある。
【0021】
土着微細藻類によるコンタミネーションを伴わずにさまざまなタイプの微細藻類を低コストかつ高効率で通年培養できる培養デバイスと;この微細藻類を効果的に収集できるデバイスと;加圧空気発生器ならびに培養ブロスの供給および収集用パイプなど、これらのデバイスをサポートできる他の装備とからなる、増殖条件の最適化を通じて微細藻類の生産を最大化できる設備を開発する必要がある。
【0022】
生産性を最大化するには、従来のレースウェイポンド型培養システムまたはフォトバイオリアクターなど、バッチ型の方法(接種後、増殖がピークに達した時にバッチ収集を行う方法)は避けるべきである。方法は、高い増殖密度を維持するための毎日の持続的な収集と、採光および栄養といった増殖条件の最適化とを行えるものであるべきである。
【0023】
そのような技術を用いて、二酸化炭素のバイオマス変換を通じて空気を浄化するデバイス、ならびに、廃水中に含有される大量の窒素およびリンを生物学的に処理することによって廃水を浄化するデバイスなど、他の技術を開発することができる。
【0024】
技術的解決策:上述の目的を実現するため、本発明は、気候を問わず通年培養を行える、すべての培養関連装備がその中に含有されたビニール温室を提供する。廃水中の土着微細藻類または病原体を除去しかつ垂直型フォトバイオリアクターを滅菌するための方法については、生培養ブロス中で微小気泡を用いることにより、水中の固形物が水面まで上昇して効果的な除去が可能となり、かつ、強力な酸化剤であるオゾンを原水中に導入することにより、水中の溶存オゾンと気泡とが、水圧によって破裂するまで水中に拡散および漂流する。気泡内のオゾン分子が分解する時に生じるヒドロキシルラジカル(OH-)が、生培養ブロスを浄化および完全に滅菌し、従来の塩素系酸化剤の代わりとなる。
【0025】
光合成の鍵となる要素である二酸化炭素、窒素、および酸素は、空気圧縮機を用いて10バールまで圧縮され、そして、空気中の競合種または病原体を濾過除去するため多段のマイクロフィルターに通される。この浄化された圧縮空気が、毎日24時間、パイプを通じて各フォトバイオリアクターの最下部に供給される。日光がある日中は、空気中に濃度350 ppmで存在する二酸化炭素が光合成に使われ、そして光がない夜間は、微細藻類の呼吸に必要な大気中の酸素が供給されて、最適な増殖条件を提供する。垂直型フォトバイオリアクターもまた提供される;このことは、下部パイプを通じて導入された圧縮空気が水面まで上昇して、気泡を形成しかつ自然なさざ波を引き起こすことを意味する。これは、微細藻類が壁面に付着することを防ぐのみならず、大気中の二酸化炭素および窒素などが培養ブロス中に溶解することも誘導する。これらの最適な増殖条件下で迅速な増殖が生じる。濃度がピークに達すると、日光が遮断されるので、吸光に最適な培養濃度を維持するため24時間ごとに1/2を収集する。収集量と同量の培養ブロスを、増殖に必要な栄養素とともに、フォトバイオリアクターに補充する。
【0026】
前述の方法により、限られた空間内であっても、気候を問わず年間を通じて高密度培養が可能である。
【0027】
本発明の諸態様の効果:無償で入手できる環境中の二酸化炭素および窒素などを使用し、大気環境を向上させ、かつ、処理した廃水中のリンおよび窒素を培養ブロスに用いることで浄水効果を実現できる。
【0028】
汚染物質を微細藻類培養の資源として用いることにより、資源の好循環をもたらすことができ、かつ、生産コストを最少にすることにより経済的実現可能性を確保できる。
【0029】
現在まで、培養ブロスのコンタミネーションに起因する生産性の低下が微細藻類の培養にとって最大のハードルとなっているが、環境に優しいオゾンおよびヒドロキシルラジカル(OH-)による滅菌がこの障害を克服し、かつ、フォトバイオリアクターの密封構造が空気中の競合藻類または汚染物質から培養系を保護して、最適な増殖環境を提供する。
【0030】
垂直構造は培養ブロスの収集および供給を容易にし、これにより、24時間ごとの収集および光条件の最適化を可能にして生産性を最大化する。
【0031】
収集された微細藻類は、微細藻類を水から分離するため中空糸膜に通される。水は次に微小気泡発生デバイスで滅菌されて、培養ブロスに再使用される。濃縮された微細藻類は、圧縮機から排出される温かい空気を用いて乾燥される。
【0032】
本発明の態様に従う微細藻類増殖収集システム10を
図1に示す。
図1に示すように、微細藻類増殖収集システム10は、温室101と、品質管理室102と、冷凍区画103とを含む。微細藻類増殖収集システム10はまた、加圧オゾンの供給を生じさせるための微小気泡発生器など、入ってきた増殖培地を滅菌するための滅菌器200も含む。
【0033】
本発明は、微細藻類由来のバイオマスを、コンタミネーションを伴わず連続的かつ経済的に大量生産するための方法に関する。
【0034】
微細藻類は、光合成を通じて有機化合物を生産する一次生産者である。それらの産物であるバイオマスは化石燃料の液体エネルギーに代わるものであり、一方、強力な抗酸化能があるそれらの同化色素物質は、薬剤など、環境に優しい有用な天然物質をもたらすことができる。微細藻類は、さまざまな石油化学製品の代替物として台頭しつつあり、かつ、栄養的に完全な食品として、食品または健康補助食品にも用いられている。これらの有用な物質を抽出した後、副産物を動物飼料または肥料として使用できる。近年、有機微細藻類の副産物が、植物の増殖促進およびペスト予防に用いられている。
【0035】
微細藻類を大量生産するプラントの成功を決定するのは、微細藻類の培養に必要な4つの要素(水、二酸化炭素、光、栄養素)のうち最も重要である、水(培養ブロス)の取扱いである。
【0036】
微細藻類の培養ブロスの水の主な供給源は、地下水、湖沼、河川、および海水である。しかし、21世紀の急速な工業化により、空気、水、および土壌の深刻な汚染が生じている。このことは、原水をそのまま用いることはできず、水中の異物性デブリ、毒素、残存抗生物質、および微生物などを除去するため完全に滅菌しなければならないことを意味している。
【0037】
現在まで、微細藻類培養用の生培養ブロスの処理における中核的段階である滅菌には、塩素系の酸化剤(微酸性の次亜塩素酸ナトリウムなど)が用いられている。しかし、そうした物質は環境に優しくなく、トリハロメタン(THM)およびハロ酢酸(HAA)などの有害な二次副産物が生じることが、微細藻類の大量培養にとってハードルとなっている。したがって、滅菌器200は、生培養ブロス中で微小気泡を用いることにより、水中の固形物を効果的に除去する。強力な酸化剤であるオゾンを原水中に添加することにより、水中の溶存オゾンと気泡とが、水圧によって破裂するまで水中に拡散および漂流する。気泡内のオゾン分子が分解する時に生じるヒドロキシルラジカル(OH-)が、生培養ブロスを浄化および完全に滅菌する。
【0038】
微細藻類培養ブロスを処理するための微小気泡デバイスの構成および性能は以下のとおりである:1) 構成 ‐ポンプ:5~10トン/時、‐導入される気体:空気、酸素、オゾン;および、2) 性能 ‐気泡サイズ:<20マイクロメートル、‐溶存気体濃度:>80%、‐固形物の許容サイズ:<5 mm。
【0039】
微細藻類増殖収集システム10は、微細藻類培地フィーダー装置301と、空気/CO2フィーダー装置302と、1つまたは複数の圧縮機401と、圧縮機401から来た空気を貯蔵するための高圧タンク402と、空気冷却器403と、フォトバイオリアクターシステム500とを含む。特定の例において、フォトバイオリアクターシステム500は、垂直配置型フォトバイオリアクター(VPBR)のアレイを含む。
【0040】
浄化および滅菌された培養ブロスは、接続されたパイプ301を通してポンピングされることによって、垂直配置型フォトバイオリアクター500内に導入される。
【0041】
中間リアクター内で培養された高濃度の微細藻類が、フォトバイオリアクターの底部に設置されたパイプを通してフォトバイオリアクターに接種され、その後、適量(生培養ブロスの0.5%)の栄養素が導入される。
【0042】
空気圧縮機401によって圧縮された空気は、圧力調節(高圧タンク)デバイス402内に一時的に貯蔵される。空気冷却器403のマイクロフィルター(1x 5ミクロン、1x 1ミクロン)を用いることにより、設定空気圧において、土着微細藻類(競合する微細藻類または病原体など)の塵粒片(file dust particles)が濾過除去される。
【0043】
浄化された空気(二酸化炭素、窒素、および酸素を含む)は、供給パイプ302を通って移動され、そして、フォトバイオリアクター500の底部に設置された精密制御デバイスのフィルターを通過する時に2回目の浄化が行われる。
【0044】
導入された空気は気泡を形成し、その気泡は最上部まで上昇してさざ波を作り出す。このことは、微細藻類が増殖中にフォトバイオリアクターの壁に付着することを防ぎ、かつ、日光を遮断する。加えて、培養ブロスが水平および垂直に移動し、これにより光(増殖要因)との接触機会を増加しかつ増殖が促進される。
【0045】
ピーク(細胞数50,000,000個/ml)に達したら、培養ブロスの1/2を24時間間隔で回収(収集)する。これにより、光合成を行うための光吸収に最適な培地内競合(細胞数25,000,000個/ml)を維持することができる。収集量と同量のオゾン滅菌済み培養ブロスを、増殖に必要な栄養素を添加して、フォトバイオリアクターに補充する。
【0046】
本発明は、諸態様において説明するように、この培養方法を繰り返すことによって生産性を最大にすることができる。下部パイプ301を通って回収された培養ブロス(高密度の微細藻類)は、水と微細藻類とを分離して収集するため、逆浸透原理を利用した中空糸膜分離器600に通される。水は次に、微小気泡発生器200を通って浄化および滅菌されて、フォトバイオリアクター500内で再使用される。収集した高密度の微細藻類は、空気圧縮中に発生した熱を用いる乾燥機700内で乾燥される。微細藻類増殖収集システム10の作動を監理するため制御パネル800が利用される。
【0047】
図2に、本発明に従う微細藻類培養を行うための温室101の前面および後面図を示す;
図3は、本発明に従う微細藻類培養を行うための温室101の側面図である。
図4は、本発明に従う微細藻類培養を行うための温室101の断面図であり、天井自動開閉機110と、シェード112と、シェード駆動モーター114と、窓駆動モーター116と、窓駆動モーター116によって作動される窓118とを示している。
【0048】
図5は、本発明に従う微細藻類培養のために設置される温室101の第一の透視図であり、分解された状態のフォトバイオリアクター500を示している。
図6は、本発明に従う微細藻類培養のために設置される温室101の第二の透視図であり、フォトバイオリアクター500が組み立てられる領域を示している。
図7は、本発明に従う微細藻類培養のために設置される温室101の第三の透視図であり、温室101内に設置された組み立て済みのフォトバイオリアクター500を示している。
【0049】
図8は、本発明に従って培養ブロスを滅菌するための微小気泡発生デバイス200の構造図であり、酸素発生器210と、オゾン発生器212と、ポンプ214とを含む滅菌器200、および浮遊タンク216を示している。原水または汚水の形態である培養ブロスが浮遊タンク216内に入れられ、その培養ブロスを通して下からオゾンが通気される。余剰のオゾンが浮遊タンク216の最上部から集められ、浮遊タンク216の最下部に送り戻される。
【0050】
図9は、本発明に従って培養ブロスを滅菌するために設置される微小気泡発生デバイス200を示した図であり、浮遊タンク216への接続を示している。
【0051】
図10は、本発明に従う培養ブロスならびに空気(二酸化炭素および窒素)の供給パイプ301ならびに302を示した第一の図である。
図10に示すように、ライン302を介して圧縮機401からフォトバイオリアクター500に空気/CO
2が供給され、かつ、ライン301を介してポンプ510からフォトバイオリアクター500に培地が供給される。
図11は、本発明に従う培養ブロスならびに空気(二酸化炭素および窒素)の供給パイプ301ならびに302を示した第二の図である。
【0052】
図12は、本発明に従って設置される空気圧縮機401を示した第一の図であり、
図13は、本発明に従って設置される空気圧縮機を示した第二の図である。
【0053】
図14は、本発明に従って設置される、圧縮空気の圧力調節用のタンク402および空気冷却デバイス403を示した図である。
図14には培地用の貯蔵タンク410も示されている。
図15は、本発明に従って設置される二酸化炭素自動供給デバイス412を示した図である。
【0054】
図16は、本発明に従う垂直型フォトバイオリアクター500の側面図であり、
図17は、本発明に従って設置される垂直型フォトバイオリアクター500の透視図である。
図18は、本発明に従って垂直型フォトバイオリアクター500上に設置される空気圧調節デバイス520を示した図であり、
図19は、本発明に従って設置される垂直型フォトバイオリアクター500を示した第二の図である。
図20は、本発明に従って設置される垂直型フォトバイオリアクター500を示した第三の図である。
図21は、本発明に従う垂直型フォトバイオリアクター500のブロック図である。
図21に示すように、空気/CO
2は、圧縮機401と、タンク402と、冷却器403とを介して供給される。培地はタンク410を介して供給される。微細藻類は、垂直型フォトバイオリアクター500内で増殖して、タンク550内に集められる。
【0055】
図22は、本発明に従う垂直型フォトバイオリアクターに関する日次増殖グラフであり、
図23は、本発明に従う垂直型フォトバイオリアクターに関する1か月の増殖グラフである。
【0056】
図24は、本発明に従う中空糸膜式の微細藻類収集デバイス600の正面図であり、
図25は、本発明に従う中空糸膜式の微細藻類収集デバイス600の側面図である。概して、中空糸膜式の微細藻類収集デバイス600は、培養物を高圧で中空糸に通すことによって、培養した微細藻類を濃縮する。中空糸の開口部は、微細藻類が通り抜けるには小さすぎるので、微細藻類が濃縮される。
図26は、本発明に従って設置される中空糸膜式の微細藻類収集デバイス600を示した図である。
【0057】
図27は、本発明に従う中空糸膜式の微細藻類収集デバイス600の作動結果の写真である。
図27に示すように、生培地(右端)が濾過されて、濃縮液(中央の容器)と上清(左端)とが生成される。
【0058】
図28は、本発明に従って設置される微細藻類乾燥デバイス700を示した図である。
図29は、本発明に従って設置される微細藻類乾燥デバイス700の、乾燥後の内部の写真である。
図30に、濃縮した微細藻類を、本発明に従う微細藻類乾燥デバイス700内で乾燥する前(左のバケツ)および乾燥した後(右のバケツ)の写真を示す。
図31は、本発明に従って設置される温室101用の自動制御システム800を示した図である。
【0059】
以下に、本発明の例示的諸態様を参照しながら、本発明の一態様を説明する。それらの態様は、本発明の1か月間の試験運用の結果を表している。本明細書に含有される諸態様は本発明の例示的態様であり、当業者には、これらの態様が、本発明の保護範囲をこれら態様に制限することを意図したものではないことが明白であろう。
【0060】
本発明者が発明した高効率垂直型フォトバイオリアクターの生産性を評価する目的で、本実験において、冷水種の海水微細藻類であるナンノクロロプシス属の種(Nannochloropsis sp.)を、2トンの培養ブロスによる屋外増殖実験に用いた。1か月間行われたその実験において、平均日産量は0.1% CO2を導入した培養系において0.953 g/Lであり、一方、空気のみを導入した場合は0.574 g/Lであった。温度分布については、範囲は最低20℃~最高31℃であった。この範囲内の温度によって生産性に有意差は生じないことが示された。光は5,000~40,000ルクスの明るさで照らし、光の強さと微細藻類の増殖とが非常に緊密に関係していることが見いだされた。また、本実験で試みた、加圧下のリアクター内浮遊によって微細藻類を培養する方法は、非常に有効であることが見いだされた。
【0061】
本実験で用いた株は、Korean Marine Microalgae Culture Centerから入手したナンノクロロプシス属の種(KMMCC-290)であり、CONYWY基本培地を用いて同株を培養した(Cuillard and Ryther, 1962)。同株を、温度25℃の条件下で液体培養および固体培養し、貯蔵するかまたは接種に用いた。
【0062】
屋外培養試験用の実験デバイスの基本構成は、
図21に示す、フォトバイオリアクター、空気圧縮機、二酸化炭素インジェクター、培養ブロスミキサー、および培養ブロス収集器である。フォトバイオリアクターを、長さ4,000 mm、直径140 mmの特殊な透明ポリカーボネートパイプに接続し、2本のラインの各々に20本のフォトバイオリアクターを取り付けた。微小気泡デバイス(OH-)を用いて滅菌した海水2,000 Lを注入した。細胞濃度が1 mLあたり約5.0 x 10
7個となるよう、各ラインに、培養ブロスの総量2,000 Lの1/10である200 Lを接種した。接種から8時間後、窒素および他の無機栄養素の供給源として、滅菌したウシ尿を濃度0.5%になるまで注入して、培養を続けた。1本のラインには空気圧縮機を通して空気(0.03%の二酸化炭素を含む)を供給し、他方のラインには0.1%の液化二酸化炭素を混入させた。
【0063】
接種した培養ブロスは、接種後最初の5日間、各培養パイプの最上部に取り付けられた接続用PVCパイプに培養ブロスが届かないように空気圧縮機弁を調整して、最適化状態で培養した。6日目に、培養ブロスの50%または1,000 Lを、下部パイプを通して排出し、収集した。各ラインから排出した培養ブロスと同量である500 Lの新しい培養ブロスを各ラインに補充した。これを24時間ごとに繰り返し、フォトバイオリアクターを30日間連続で作動させた。
【0064】
収集した1,000 Lの高濃度培養ブロスを中空糸膜を用いてさらに濃縮し、約30分後に、濃縮した微細藻類を淡水で2回脱塩した。脱塩した微細藻類を、オーブン乾燥機を用いて含水率4%以下まで乾燥させ、その後、細胞の総質量を決定するため細胞の乾燥総重量を調べた。
【0065】
各培養ブロスから集めた一定量の標本を希釈し、血球計数器を用いて細胞数を計測した。計測した細胞数を細胞質量で除算して、細胞1個当たりの乾燥重量を得た。培養中の照度は、600~300,000ルクスを測定できる可搬式ルクス計を用いて測定したことに注意されたい。単位はルクスで示す。
【0066】
図22に示すように、空気のみ注入したライン(ラインA)、および、空気と0.1%二酸化炭素との混合物を注入したライン(ラインB)において、無機栄養素を添加する前の細胞数は0.55~0.60 x 10
7個であり、初期の希釈率が好適であったことが示された。接種後2日目から収集まで、いずれのラインにおいても細胞数は概ね倍増し、収集1日前である接種後5日目にはそれぞれ2.6 x 10
7個および4.8 x 10
7個になった。予測されたとおり、二酸化炭素を注入したラインBでは細胞の増殖率がラインAより高かった。収集前のラインBの細胞数はラインAのほぼ2倍であった。
【0067】
接種後6日目以降に細胞の収集を試みた。この時期に培養ブロスを抽出することは、それまでの実験において指数増殖率が120~150時間でピークに達したという結果に基づいて決定した。したがって、6日目以降、収集のため24時間ごとに培養ブロスを抽出した。このとき抽出した培養ブロスの量は、1,000 L、または総量2,000 Lの50%であった。これは、50%を抽出した直後に新しい培養ブロスを補充すると、24時間後に最適な培養状態に達したからである。6日目の抽出直前のフォトバイオリアクター内の細胞濃度は、ラインAおよびラインBのそれぞれにおいて、1 mlあたり3.5 x 107個および6.1 x 107個であった。
【0068】
最初の接種後、指数増殖期のピークに達すると判断された6日目以降に、1,000 Lの培養ブロスを抽出した。
図23に示すように、抽出量と同量の培養ブロスをフォトバイオリアクターに補充しながら、さらに25日間培養を続けた。増殖率を分析するため、接種直後および抽出直前に培養ブロス中の細胞数を計測した。抽出した微細藻類の細胞数および細胞乾燥重量を調べることにより、
図23および表1に示すように日ごとの平均細胞数および増殖率などを分析した。
【0069】
(表1)AラインおよびBラインにおける比増殖率、平均細胞数、および平均細胞乾燥重量
【0070】
0.1% CO2を注入したラインBについて、25日間にわたる総細胞数を除算することによって、抽出直前の1 mlあたり1日平均細胞数を調べ、6.35 x 107個/mlという値を得た。一方、指数増殖期における細胞の増殖率に適用される以下の式を用いて、フォトバイオリアクター内部の増殖率を調べた。
【0071】
細胞増殖率の式 N = N02n において、Nはt時間経過後の細胞数であり、N0は初期細胞数である。小文字nはt時間以内の世代数である。上式にLog関数を適用すると、LogN = LogN0 + nLog2 となる。総世代数nは LogN - LogN0 ÷ Log2 (0.301) となる。ここで、初期細胞数N0は、高濃度の加圧浮遊培養ブロス100 Lの抽出後に同量の新しい培養ブロスを補充した、2トンのフォトバイオリアクター内の総細胞数である。5時間後の細胞数Nは、培養ブロスの追加後24時間が経過した抽出の直前に、総細胞数となる。
【0072】
ラインBにおいて、初期細胞数および抽出直前の総細胞数は以下のとおりであり、したがって、総世代数nは約4.40世代となる。初期細胞数 N0 = 3.0 x 106個/ml;収集直前の細胞数 N = 6.35 x 107個/ml;総世代数 n = LogN - LogN0 ÷ 0.301 ≒ 4.40 であった。
【0073】
一方、細胞の比増殖率kは、0.301/gという値を有することが見いだされた;ここでgは倍加時間である。倍加時間は、総培養時間を世代数で除算したものである。ラインBのgの値は、24時間を世代数4.4で除算したものであり、約5.45時間となる。したがって、ラインBの比増殖率kは、0.301を5.45時間で除算した、約0.055という値を有することが見いだされた。ここで、g = t/n = 24時間/4.4世代 ≒ 5.45、k = 0.301/g = 0.301/5.45 ≒ 0.055 である。
【0074】
空気のみを注入したラインAについては、希釈後の初期細胞数は2.8 x 106個/mlと計測され、総世代数は約3.77世代、世代時間は約6.37時間、比増殖率kの値は0.047となった。
【0075】
一方、収集した細胞のうち100 Lを乾燥させて調べた、ラインBについての1日平均の細胞乾燥重量は、1,800 gと計算された。これを総細胞数で除算すると、細胞乾燥重量は0.015μg/個となる。これに、1日平均細胞数 6.35 x 107個/ml x 2,000 Lを乗算すると、ラインBの1リットルあたり1日平均細胞質量は0.953 g/Lとなった。二酸化炭素を供給しなかったラインAの細胞質量は0.574 g/Lと計算された。
【0076】
本実験は、2014年9月の1か月間にわたりGangneung市で行った。同地域の最低気温は20℃前後で、日中の最高気温は30℃を超える。培養ブロスの温度を25℃~30℃に保つため、培養ブロスの温度が29℃を超えた時は、冷却した空気を注入して、最高温度が30℃を上回らないよう調節した。実験期間中、培養ブロスで記録された最低温度は20℃で、最高温度は31℃に達した。
図32に見られるように、実験期間中の温度変化は細胞増殖に大きな影響を与えなかった。これは、温度の変動範囲が25℃±5℃と小さかったことが理由であると判断された。
【0077】
微細藻類の増殖に影響を及ぼす環境要因のうち、光の役割は非常に重要である。本実験の結果から、この光の影響を示す結果も得られた。実験を行った2014年9月頃のGangneungの天候は、約半分の時間が晴れ、残りの時間は曇りであった。雨または曇りの日は、照度が概ね5,000~30,000ルクスであり、晴れた日の日中は300,000ルクスを超えた。強すぎる光は光飽和によって光合成を停止させる可能性があり、かつ、放射熱が培養ブロスの温度上昇を引き起こして、冷水種の海洋生物であるナンノクロロプシス属の種の増殖を抑制する可能性がある。したがって、日光が強い快晴の日はシェードを設置して、光の強度を20,000~30,000ルクスに保った。
【0078】
接種後6日目から、実験を終了した30日目までの、微細藻類の増殖の観察から、
図33に示すように、光の強度と藻類の増殖との間に非常に緊密な相関があることが示された。また、0.1%の二酸化炭素を注入した場合は、酸素のみを注入した場合より増殖率の傾きが大きかった。
【0079】
生培養ブロス中の毒素を溶解する、本実験におけるヒドロキシルラジカル(OH-)は、再使用することができる。本発明の密封式垂直型フォトバイオリアクターは、微細藻類を培養および収集するための、経済的に実現可能で、技術的に高度な、環境に優しいシステムとなると考えられる。
【0080】
一方、この増殖率実験において、光および二酸化炭素が増殖の重要要素として作用したことが見いだされた;これに基づき、生産性をさらに高めるため、増殖に最適な二酸化炭素濃度、ならびに、光強度および異なる波長が増殖に及ぼす影響について、さらなる研究が行われるであろう。
【0081】
以上、本発明の好ましい態様を詳しく説明した;本発明の実施的な範囲は、添付の特許請求の範囲およびその等価物によって定義される。
【0082】
本発明の多数の特徴および利点は、詳述した本明細書から明らかであり、ゆえに、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲内に入る本発明のそうした特徴および利点のすべてに及ぶことを意図している。さらに、当業者には、多数の改変およびバリエーションが容易に考えられるであろうから、図示および説明したとおりの厳密な構成および作動に本発明を限定することは望ましくなく、したがって、好適なすべての改変および等価物は、本発明の範囲内に入ると主張されうる。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小気泡発生器を用いて培養ブロスを滅菌するためのデバイスと;
大気からの二酸化炭素および酸素を培養ブロス中に注入するための空気圧縮均圧化デバイスと;
水温が既定の最高温度より高いことに応答して、好適な培養ブロス温度を維持するための空気冷却デバイスと;
光合成を促進するための二酸化炭素自動供給デバイスと;
微細藻類を接種した培地を含有するよう構成された密封式垂直型フォトバイオリアクターであって、該培地に光が入ることを許容し、汚染物質を遮断し、かつ溶存二酸化炭素および酸素濃度を高めるよう構成された、密封式垂直型フォトバイオリアクターと;
中空糸膜を用いた高効率収集デバイスと;
空気圧縮によって発生した廃熱を用いる熱気乾燥デバイスと
を備える、微細藻類用培養ブロス生産システム。