(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107682
(43)【公開日】2022-07-22
(54)【発明の名称】姿勢矯正就寝パッド
(51)【国際特許分類】
A61F 5/01 20060101AFI20220714BHJP
A47C 27/00 20060101ALI20220714BHJP
A47C 27/12 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
A61F5/01 E
A47C27/00 D
A47C27/12 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086140
(22)【出願日】2022-05-26
(62)【分割の表示】P 2019203597の分割
【原出願日】2019-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】393023145
【氏名又は名称】株式会社ユメロン黒川
(74)【代理人】
【識別番号】110002804
【氏名又は名称】弁理士法人フェニックス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 裕文
(57)【要約】
【課題】 若年者及び高齢者を問わずに、横臥時に使用者の猫背や円背、即ち、胸椎後弯や腰椎前弯を矯正できる姿勢矯正就寝パッドを提供すること。
【解決手段】 シート状の中間材1のみをカバー体2の中に収容して、かつ、前記中間材1と前記カバー体2とを所定間隔で線状に圧潰して接合して、これら並列する接合部3の間に膨出部4を形成する一方、
この膨出部4の形成位置を、使用者の横臥時における当該使用者の胸椎および腰椎の椎骨Vの位置に対応させるという技術的手段を採用した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の中間材のみがカバー体の中に収容され、かつ、前記中間材と前記カバー体とが所定間隔で線状に圧潰されて接合され、これら並列する接合部の間に膨出部が形成されている一方、
この膨出部の形成位置が、使用者の横臥時における当該使用者の胸椎および腰椎の椎骨の位置に対応していることを特徴とする姿勢矯正就寝パッド。
【請求項2】
前記接合部が6~8cmの間隔で設けられていることを特徴とする請求項1記載の姿勢矯正就寝パッド。
【請求項3】
前記膨出部における最大厚みが4cm以上であることを特徴とする請求項1または2記載の姿勢矯正就寝パッド。
【請求項4】
前記中間材が、繊維同士が絡んで粒状の繊維粒が形成され、これら複数の繊維粒が立体的に配置されてシート状に構成されていることを特徴とする請求項1~3の何れか一つに記載の姿勢矯正就寝パッド。
【請求項5】
前記中間材および前記カバー体が熱可塑性樹脂製であり、前記接合部が熱融着により形成されていることを特徴とする請求項1~4の何れか一つに記載の姿勢矯正就寝パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、就寝パッドの改良、更に詳しくは、若年者及び高齢者を問わずに、横臥時に使用者の猫背や円背、即ち、胸椎後弯や腰椎前弯を矯正できる姿勢矯正就寝パッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒトの脊柱は7個の頸椎、12個の胸椎、5個の腰椎、仙骨および尾骨から成り立っており、正常なヒトの脊柱は、胸椎が後方に向かって、腰椎が前方に向かって緩やかに湾曲しており、これらを胸椎後弯、腰椎前弯という。
【0003】
ヒトは加齢に伴って、胸椎は後弯が増大し、腰椎は前弯が減少して、いわゆる猫背や円背になることが明らかにされている。これにより腰痛や転倒事故、肩こり等の発生の可能性が高まると推定されている(非特許文献1参照)。
【0004】
また、近年では、パソコン等でのデスクワークの増加や、スマートフォンの長時間利用などにより、若年者でも、猫背等の姿勢の悪さが指摘されている。
【0005】
そこで、正しい姿勢(胸椎後弯、腰椎前弯)に矯正するための手段の一つとして、敷きパッドの上に横臥する方法が考えられる。従来、敷きパッドについては、体圧分散機能に着目した開発が多数行われており、低反発マット、高反発マット、凹凸形状マットなどが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、単に体圧分散機能を有するマットでは、胸椎後弯、腰椎前弯を矯正することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献1】高井逸史、宮野道夫、中井伸夫、山口武彦、吉村知倫、白濱晴美、村上将典、井上健太郎、柄崎隆治、周藤浩:加齢による姿勢変化と姿勢制御、日本生理人類学会誌 6(2)11-16(2001)
【特許文献1】特開2006-167324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の敷きパッドに上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、若年者及び高齢者を問わずに、横臥時に使用者の猫背や円背、即ち、胸椎後弯や腰椎前弯を矯正できる姿勢矯正就寝パッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0010】
即ち、本発明は、シート状の中間材1のみをカバー体2の中に収容して、かつ、前記中間材1と前記カバー体2とを所定間隔で線状に圧潰して接合して、これら並列する接合部3の間に膨出部4を形成する一方、
この膨出部4の形成位置を、使用者の横臥時における当該使用者の胸椎および腰椎の椎骨Vの位置に対応させるという技術的手段を採用したことによって、姿勢矯正就寝パッドを完成させた。
【0011】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、前記接合部3を6~8cmの間隔で設けるという技術的手段を採用することもできる。
【0012】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、前記膨出部4における最大厚みを4cm以上にするという技術的手段を採用することもできる。
【0013】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、前記中間材1を、繊維同士が絡んだ粒状の繊維粒を形成して、これら複数の繊維粒を立体的に配置してシート状に構成するという技術的手段を採用することもできる。
【0014】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、前記中間材1および前記カバー体2を熱可塑性樹脂製にして、前記接合部3を熱融着により形成するという技術的手段を採用することもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、シート状の中間材のみをカバー体の中に収容して、かつ、前記中間材と前記カバー体とを所定間隔で線状に圧潰して接合し、これら並列する接合部の間に膨出部を形成する一方、この膨出部の形成位置を、使用者の横臥時における当該使用者の胸椎および腰椎の椎骨の位置に対応させることによって、若年者及び高齢者を問わずに、横臥時に使用者の猫背や円背、即ち、胸椎後弯や腰椎前弯を矯正することができる。
【0016】
また、本発明の姿勢矯正就寝パッドによれば、膨出部で椎骨を確実に支持することになるため、横臥すると体重により膨出部が押し潰されて沈み込んで長手方向に延伸し、椎骨の間隔を広げるとともに、胸椎や腰椎付近の筋肉をストレッチしてほぐれやすくなる。
【0017】
特に、就寝時に使用する場合には、長時間ストレッチ状態を持続させることができ、しかも、睡眠中には筋肉が弛緩するため、よりストレッチ効果が高くなり、更に、寝返り等の運動により、胸椎や腰椎付近の筋肉がほぐれ、胸椎後弯および腰椎前弯の矯正が可能になることから、産業上の利用価値は頗る大きい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態の姿勢矯正就寝パッドを表わす全体斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態の姿勢矯正就寝パッドを表わす説明断面図である。
【
図3】本発明の実施形態の姿勢矯正就寝パッドの使用状態を表わす説明側面図である。
【
図4】本発明の実施形態の姿勢矯正就寝パッドの実証試験の結果を表わすグラフである。
【
図5】本発明の実施形態の姿勢矯正就寝パッドの実証試験の結果を表わすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を
図1から
図5に基づいて説明する。図中、符号1で指示するものは中間材であり、また、符号2で指示するものはカバー体、符号3で指示するものは接合部、符号4で指示するものは膨出部である。
【0020】
本発明を構成するにあっては、まず、シート状の中間材1のみをカバー体2の中に収容する。パッドのサイズは、成人が横臥できるように、長手方向190cm、幅方向60~120cmとする(
図1参照)。本実施形態では、中間材1として、繊維同士が絡んで粒状の繊維粒が形成され、これら複数の繊維粒が立体的に配置されてシート状に構成したものを採用する。こうすることによって、適当な硬さと弾力性を持たせることができる。
【0021】
具体的には、複数の繊維粒同士は、この繊維粒の塊から外側の突出繊維によって立体的に絡まっている。繊維粒は略球形状であることが好ましく、弾力性の観点から平均粒径が3~10mmの範囲内であることが好ましい。
【0022】
繊維粒の材料は合成繊維または天然繊維などを使用することができ、合成繊維としては、ポリエステル等のポリオレフィン系繊維、アクリル繊維、ポリアミド繊維、セルロース繊維などを採用することができるが、良好な弾力性が得られることからポリエステル繊維であることが好ましい。また、繊維粒を構成する繊維の繊維長は5~50mmの範囲内であることが好ましく、繊維の太さ(繊度)は1~40デニールの範囲内であることが好ましい。
【0023】
また、パッド表面を被覆するカバー体2の生地としては、ダブルラッセル編地を採用することができ、優れた通気性および伸長性を発揮することができる。生地を構成する素材としては、前記中間材1と同様に、合成繊維または天然繊維などを使用することができるが、ポリエステル繊維を採用する。
【0024】
次いで、前記中間材1と前記カバー体2とを所定間隔で線状に圧潰して接合し、これら並列する接合部3の間に膨出部4を形成する(
図2参照)。接合部3の形状は、直線や曲線、破線などを種々の形状を採用することができるが、適切な弾力性および伸長性を付与するためには、幅方向に渡って形成される複数の平行直線であることが好ましい。なお、この接合部3は、パッドを丸めて折り畳む際の折り目にもなる。
【0025】
そして、この膨出部4の形成位置が、使用者の横臥時における当該使用者の胸椎および腰椎の椎骨Vの位置に対応させることができる(
図3参照)。
【0026】
本実施形態では、前記接合部3を6~8cmの間隔で設けることができ、より好ましくは中間値である7cmにする。即ち、成人の平均的な体格において、胸椎および腰椎の椎骨Vの間隔は約3.5cmであるため、この7cmという値は、胸椎および腰椎の椎骨Vの間隔の約2倍に対応するものである。
【0027】
また、本実施形態では、前記膨出部4における最大厚みを4cm以上にすることができ、より好ましくは5cm以上にする。このように、本発明では、従来の敷きパッドに設けられている接合部の間隔よりも狭く、かつ、膨出部の厚みを大きくすることによって、弾力性を向上させることができ、ストレッチ効果を大きくすることができる。
【0028】
また、本発明の姿勢矯正就寝パッドによれば、膨出部4で椎骨Vを確実に支持することになるため、横臥すると体重により膨出部が押し潰されて沈み込んで長手方向に延伸し、椎骨Vの間隔を広げるとともに、胸椎や腰椎付近の筋肉をストレッチしてほぐれやすくなる。
【0029】
特に、就寝時に使用する場合には、長時間ストレッチ状態を持続させることができ、しかも、睡眠中には筋肉が弛緩するため、よりストレッチ効果が高くなり、更に、寝返り等の運動により、胸椎や腰椎付近の筋肉がほぐれ、胸椎後弯および腰椎前弯の矯正が可能になるのである。
【0030】
なお、接合部3を形成するためには、縫製や接着などの方法を選択し得るが、前記中間材1および前記カバー体2を熱可塑性樹脂製にすることにより、熱融着により形成することができ工程を簡素化することができる。この熱融着の方法としては、超音波振動のホーンを用いて所望の位置をヒートプレスすることによって接合する。また、中間材1とカバー体2とが一体となって確実に固定され、中間材1がカバー体2の内部で千切れたり移動したりするのを防止することができる。
【0031】
『実証試験』
以下、本発明に係る姿勢矯正就寝パッドを用いて、ヒトでの実証試験を行った結果について説明する。
【0032】
(被験者)
被験者は健康な高齢者15名(男性8名、女性7名)とした。年齢、身長、体重、足長の平均と標準偏差は、それぞれ69.6±5.4歳、159.4±8.7cm、56.1±8.5kg、23.1±1.3cmであった。
【0033】
(試験方法)
被験者には、1週間、就寝時に本発明の姿勢矯正就寝パッドを使用してもらった。1週間後に、被験者それぞれについて、胸椎後弯度、腰椎前弯度の測定を行った。
【0034】
(測定方法)
胸椎後弯度、腰椎前弯度の測定は、以下の方法により行った。まず、身体6か所(隆椎、胸椎最後弯部、腰椎最前弯部、第一仙椎、右上後腸骨棘、右上前腸骨棘)に反射マーカーを装着し、各部位の3次元空間座標を測定した。胸椎最後弯部及び腰椎最前弯部の同定は、コンフォメーチャーを用いて行った。
【0035】
次に、被験者は、床反力計の上で閉眼・閉足位にて、安静立位姿勢および骨盤を最大に前傾させた立位姿勢でそれぞれ10秒間保持し、被験者の背面および右側面に、5台の高速度カメラを配置して3次元空間座標を取得した。そして、得られた3次元空間座標から、隆椎と第一仙骨間を結んだ直線への、胸椎最後弯部及び腰椎最前弯部からの相対距離(%CS)を求めることにより、胸椎後弯度、腰椎前弯度をそれぞれ測定した。
【0036】
(試験結果)
本発明の姿勢矯正就寝パッドの使用前後での、被験者それぞれの胸椎後弯度、腰椎前弯度を比較した。安静立位姿勢、骨盤前傾姿勢のどちらにおいても、胸椎後弯度の減少がみられた(
図4参照)。また、腰椎前弯度についても、安静立位姿勢、骨盤前傾姿勢のどちらにおいても、増大の結果が得られた(
図5参照)。これにより、姿勢矯正就寝パッドに、胸椎後弯度及び腰椎前弯度の矯正効果があることが実証された。
【0037】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、中間材1を構成する繊維の材質、長さ、太さなどは適宜変更することができる。
【0038】
また、カバー体2の生地はダブルラッセル編地に限らず、織物や不織布などの生地を採用することもでき、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0039】
1 中間材
2 カバー体
3 接合部
4 膨出部
V 椎骨