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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010780
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】車椅子
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/10 20060101AFI20220107BHJP
   A61G 5/12 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A61G5/10 703
A61G5/12 704
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020111512
(22)【出願日】2020-06-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】516101569
【氏名又は名称】株式会社キョウワコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100163533
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 義信
(72)【発明者】
【氏名】柵木 貞雄
(57)【要約】      (修正有)
【課題】飛行機や新幹線の狭い通路でも使用でき、且つ強度的にも着脱迅速性や着脱簡便性にも優れた車椅子を提供する。
【解決手段】車椅子から主用後輪を着脱する車輪着脱機構は、本体フレーム12の一対の側板12Aに形成されると共に主用後輪の車軸26Aが架け渡される切り欠きであって、垂直溝部分40Aの突き当りに車軸26Aが回動自在に支持される半円形状の回動支持部40Bが形成された一対の切り欠き溝40と、一対の切り欠き溝40のL字溝形状の水平溝部分40Cの高さが車軸26Aの高さになるように本体フレーム12を上昇させると共に水平溝部分40Cの突き当りまで車軸26Aを挿入したら本体フレーム12を下降させて垂直溝部分40Aを介して車軸26Aを回動支持部40Bに嵌め込む本体フレーム昇降手段と、で構成する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子の利用者が座る本体フレームと、
前記本体フレームに支持されると共に前記利用者が背をもたれかける背もたれフレームと、
前記本体フレームに座った前記利用者が肘を掛けるアームレストと、
前記本体フレームに回動自在に支持された左右一対の小径な前輪と、
前記本体フレームに回動自在に支持された丸棒状の車軸で連結された左右一対の小径な補助用後輪と、
前記補助用後輪よりも大径な車輪同士を丸棒形状の車軸で連結した車軸連結車輪であって、前記車軸が前記本体フレームに車輪着脱機構によって着脱自在に回動支持された左右一対の主用後輪と、を少なくとも有し、
前記車輪着脱機構は、
前記本体フレームの左右に対向して配設された一対の側板の車椅子後端側に左右に対向して形成されると共に前記主用後輪の前記車軸が架け渡されるL字溝形状の切り欠きであって、前記L字溝形状の垂直溝部分の突き当りに前記車軸が回動自在に支持される半円形状の回動支持部が形成された一対の切り欠き溝と、
前記一対の切り欠き溝の前記L字溝形状の水平溝部分の高さが前記車軸の高さになるように前記本体フレームを上昇させると共に前記水平溝部分の突き当りまで前記車軸を挿入したら前記本体フレームを下降させて前記垂直溝部分を介して前記車軸を前記回動支持部に嵌め込む本体フレーム昇降手段と、を備えたことを特徴とする車椅子。
【請求項2】
前記本体フレーム昇降手段は、
前記一対の側板に対向して形成され、前記補助用後輪の車軸を昇降スライド可能に回動支持すると共に前記本体フレームの昇降ストロークの長さに形成された楕円形状の一対の縦長孔と、
前記補助用後輪の上方に位置すると共に前記一対の側板に揺動自在に支持され、揺動することによって前記補助用後輪に対して接離する一対の押圧部材と、
前記一対の側板に揺動中心が揺動自在に支持されると共に前端部が揺動ピンを介して前記押圧部材に連結され、前記押圧部材を前記補助用後輪に接する方向に揺動させて前記補助用後輪を下向きの力で押圧するL字形状の一対の揺動レバーと、
前記一対の揺動レバーの後端部同士を連結する連結棒と、を備えた請求項1に記載の車椅子。
【請求項3】
前記L字溝形状の一対の切り欠き溝における前記水平溝部分の突き当りには前記半円形状な前記回動支持部に対向して前記水平溝部分に挿入された前記車軸が遊嵌される円弧状の凹部が形成される請求項1又は2に記載の車椅子。
【請求項4】
前記アームレストは左右一対の肘掛け部材を有すると共に前記車椅子にアームレスト着脱機構によって着脱自在に支持され、
前記アームレスト着脱機構は、
前記左右一対の肘掛け部材の後端上部同士を連結する上側連結棒と、
前記左右一対の肘掛け部材の後端下部同士を連結する下側連結棒と、
前記一対の側板の車椅子後端側に左右に対向して斜め下向きの溝形状に形成された切り欠きであって、前記下側連結棒が架設される下側切り欠き溝と、
前記背もたれフレームの左右に対向して配設された左右一対の縦板に形成されると共に前記上側連結棒が架設される溝形状の切り欠きであって、前記下側切り欠き溝に架設された前記下側連結棒を揺動中心として前記一対の肘掛け部材を揺動したときに前記一対の肘掛け部材が水平になるまで前記上側連結棒が挿入する上側切り欠き溝と、を備えた請求項1~3の何れか1項に記載の車椅子。
【請求項5】
前記本体フレームには、前記車輪着脱機構に回動支持された前記車軸が前記本体フレームから外れないようにロックする車軸ロック手段が設けられる請求項1~4の何れか1項に記載の車椅子。
【請求項6】
前記背もたれフレームには、前記アームレスト着脱機構に支持された前記上側連結棒が前記背もたれフレームから外れないようにロックする上側連結棒ロック手段が設けられる請求項1~5の何れか1項に記載の車椅子。
【請求項7】
前記主用後輪及び前記アームレストを取り外した後の前記車椅子の最大幅は40cm未満である請求項1~6の何れか1項に記載の車椅子。
【請求項8】
前記車椅子は非金属材料で形成されている請求項1~7の何れか1項に記載の車椅子。
【請求項9】
前記連結棒の中央部に回動自在に吊設された足踏み部材を備えた請求項2に記載の車椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車椅子に係り、特に飛行機や新幹線等の狭い通路でも走行可能な車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
足が不自由な人や介護が必要な老齢者は車椅子での移動が必要になる。車椅子の利用者にとって、家の中や一般の道路等のようにある程度の広い通路を確保できる場所では、車椅子をそのまま走行させることができる。しかし、利用者が仕事や旅行等で飛行機や新幹線等を利用する場合、通常の車椅子では幅が大きすぎて飛行機や新幹線の狭い通路を走行できない。
【0003】
一般的に、新幹線の通路幅は55~57cm程度であり、飛行機の通路は機種によって様々であるが40cm以上の場合が多い。一方、車椅子の幅は、後輪に付属しているハンドリム同士の幅で47~60cmである場合が多い。
【0004】
対策として、折り畳めるようにした車椅子があるが、結局、新幹線や飛行機の通路では使用できないことになり、本質的な解決にはならない。別の対策として、飛行機の通路を走行できるように、ハンドリム同士の幅で40cm未満にすることも考えられるが、この幅では利用者が座る座幅を更に狭くする必要があり、座り心地が悪くなる。
【0005】
したがって、車椅子を利用して飛行機に搭乗するには、大きな直径の主用後輪が外れる構造の空港用車椅子に乗り換えるのが通常である。
【0006】
このことから、普段の日常にも使用でき且つ飛行機や新幹線のような狭い通路でも使用できる構造の車椅子が提案されている(例えば特許文献1)。
【0007】
特許文献1の車椅子は、車椅子の前と後に小径なキャスタを有し且つ大径な後輪である主車輪を車椅子のフレームの左右に設けた一対の車軸保持部に着脱自在とする。そして、普段は車軸保持部に主車輪を取り付けて使用し、新幹線や飛行機のような狭い通路で使用するときは車軸保持部から主車輪を外して車椅子の幅を小さくし、前後のキャスタを使用して走行する。車軸保持部から主車輪を外す場合、後部キャスタに着設された両立スタンドのリフトアップレバーを踏んで両立スタンドを下げると、車椅子の後部が浮いて大径の主車輪が着脱可能となる。次に、主車輪の中心部に着設したボタンを押すと、主車輪に着設されたバネが付勢された突出ピンを引っ込めて、主車輪を取り外すことができる。
【0008】
また特許文献1では、車椅子の幅が大きくなるもう一つの要因であるアームレストを背もたれの後方に折り畳み可能又は座部の下側に折り畳み可能な構造にすることについても提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012-161457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の車椅子は次の欠点がある。
【0011】
(1)普段の使用頻度が高い大径な一対の主車輪を車椅子のフレームの左右に設けた一対の車軸保持部に着脱する片持ち支持構造であり、普段使用する主車輪の着脱構造としては強度的に問題が生じ易い。強度を出すためには、車軸保持部及び主車輪の片持ち車軸等を金属製にする必要があると考えられるが、金属製にすると飛行機搭乗時に利用者が車椅子に乗ったまま金属探知ゲートを通過できない。
【0012】
(2)また、ボーディングブリッジを渡って飛行機の乗降口の直前の狭い空間で一対の主車輪を車椅子から取り外すことになるが、リフトアップレバーを踏んで両立スタンドを下げた後、一方の主車輪を車椅子から取り外し、次に反対側に回って他方の主車輪を車椅子から取り外す。したがって、着脱迅速性や着脱簡便性に欠ける。
【0013】
(3)また、アームレストを背もたれの後方に折り畳み可能又は座部の下側に折り畳み可能な構造は、飛行機の乗降口の直前の狭い空間でアームレストを折り畳む際に車椅子に座っている利用者は車椅子から一旦降り、着脱後に再度座らなくてはならず、煩わしいと共に着脱迅速性や着脱簡便性に欠ける。
【0014】
即ち、飛行機や新幹線等の狭い通路でも走行できる車椅子に必要な条件としては、単に車椅子の幅に大きな影響のある主車輪を着脱できたりアームレストを折り畳めたりするだけでなく、必要なときに如何に手間をかけずに迅速且つ簡便に着脱したり折り畳んだりできるかが重要であり、この点において特許文献1は不十分である。
【0015】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、飛行機や新幹線の狭い通路でも使用でき、且つ強度的にも着脱迅速性や着脱簡便性にも優れた車椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、本発明に係る車椅子は、車椅子の利用者が座る本体フレームと、本体フレームに支持されると共に利用者が背をもたれかける背もたれフレームと、本体フレームに座った利用者が肘を掛けるアームレストと、本体フレームに回動自在に支持された左右一対の小径な前輪と、本体フレームに回動自在に支持された丸棒状の車軸で連結された左右一対の小径な補助用後輪と、補助用後輪よりも大径な車輪同士を丸棒形状の車軸で連結した車軸連結車輪であって、車軸が本体フレームに車輪着脱機構によって着脱自在に回動支持された左右一対の主用後輪と、を少なくとも有し、車輪着脱機構は、本体フレームの左右に対向して配設された一対の側板の車椅子後端側に左右に対向して形成されると共に主用後輪の車軸が架け渡されるL字溝形状の切り欠きであって、L字溝形状の垂直溝部分の突き当りに車軸が回動自在に支持される半円形状の回動支持部が形成された一対の切り欠き溝と、一対の切り欠き溝のL字溝形状の水平溝部分の高さが車軸の高さになるように本体フレームを上昇させると共に水平溝部分の突き当りまで車軸を挿入したら本体フレームを下降させて垂直溝部分を介して車軸を回動支持部に嵌め込む本体フレーム昇降手段と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明の車椅子によれば、本体フレームには、小径な前輪と小径な補助用後輪とを回動自在に支持させ、車椅子の幅が大きくなる要因である大径な一対の主用後輪を車軸で連結する車軸連結車輪にすることで普段使用される主用後輪の強度を確保した。
【0018】
そして、本発明では、従来のように一対の主用後輪を車椅子に別々に着脱するのではなく、車軸を車輪着脱機構によって車椅子に着脱自在に回動支持することによって着脱迅速性や着脱簡便性に優れた主用後輪の車輪着脱機構を構築した。
【0019】
車輪着脱機構は、本体フレームの左右に対向して配設された一対の側板の車椅子後端側に左右に対向して形成されると共に主用後輪の車軸が架け渡されるL字溝形状の切り欠きであって、L字溝形状の垂直溝部分の突き当りに車軸が回動自在に支持される半円形状の回動支持部が形成された一対の切り欠き溝と、一対の切り欠き溝のL字溝形状の水平溝部分の高さが車軸の高さになるように本体フレームを上昇させると共に水平溝部分の突き当りまで車軸を挿入したら本体フレームを下降させて垂直溝部分を介して車軸を回動支持部に嵌め込む本体フレーム昇降手段とで構成するようにした。
【0020】
即ち、一対の主用後輪を連結する車軸を本体フレームに形成した一対の切り欠き溝に回動支持し、本体フレームを本体フレーム昇降手段で昇降することにより切り欠き溝に車軸を取り付け可能又は取り外し可能となる車輪着脱機構とした。これにより、主用後輪の本体フレームからの着脱迅速性及び着脱簡便性に優れた車輪着脱機構を構成した。
【0021】
本発明の別態様において、本体フレーム昇降手段は、一対の側板に対向して形成され、補助用後輪の車軸を昇降スライド可能に回動支持すると共に本体フレームの昇降ストロークの長さに形成された楕円形状の一対の縦長孔と、補助用後輪の上方に位置すると共に一対の側板に揺動自在に支持され、揺動することによって補助用後輪に対して接離する一対の押圧部材と、一対の側板に揺動中心が揺動自在に支持されると共に前端部が揺動ピンを介して押圧部材に連結され、押圧部材を補助用後輪に接する方向に揺動させて補助用後輪を下向きの力で押圧するL字溝形状の一対の揺動レバーと、一対の揺動レバーの後端部同士を連結する連結棒と、連結棒の中央部に回動自在に吊設された足踏み部材と、を備えるように構成した。
【0022】
本発明における本体フレーム昇降手段によれば、補助用後輪は、本体フレームに本体フレームの昇降ストロークの長さに形成された楕円形状の縦長孔に補助用後輪を回動自在に支持するようにした。これにより、介護者が足踏み部材を踏むと、連結棒、揺動レバー、揺動ピンを介して押圧部材が補助用後輪を下向きの力で押圧するので、補助用後輪が動かないようにロックされると共に押圧反力によって、本体フレームは一対の切り欠き溝のL字溝形状の水平溝部分の高さが主用後輪の車軸の高さまで上昇する。これにより、主用後輪の本体フレームからの取り付け及び取り外しが可能となる。
【0023】
このように、介護者が足踏み部材を踏む動作で、主用後輪の着脱時に車椅子が動かないようにする補助用後輪のロックと主用後輪の取り付け又は取り外しのための本体フレームの上昇とを同時に行うようにしたので、車椅子に対する主用後輪の着脱を一層迅速に行うことができる。
【0024】
本発明の別態様において、L字溝形状の一対の切り欠き溝における水平溝部分の突き当りには半円形状な前記回動支持部に対向して水平溝部分に挿入された車軸が遊嵌される円弧状の凹部が形成されることが好ましい。
【0025】
これにより、一対のL字溝形状の切り欠き溝の水平溝部分の突き当りまで主用後輪の車軸を挿入すると、車軸は円弧状の遊嵌状態で凹部に落ち込む。これにより、例えば、車椅子の前が少し高くなる傾斜場所で主用後輪を車椅子に着脱する場合でも、車軸は凹部に一旦載置されて傾斜による転がりを防止するので、着脱を確実に行うことができる。
【0026】
本発明の別態様において、アームレストは左右一対の肘掛け部材を有すると共に車椅子にアームレスト着脱機構によって着脱自在に支持され、アームレスト着脱機構は、左右一対の肘掛け部材の後端上部同士を連結する上側連結棒と、左右一対の肘掛け部材の後端下部同士を連結する下側連結棒と、一対の側板の車椅子後端側に左右に対向して斜め下向きの溝形状に形成された切り欠きであって、下側連結棒が架設される下側切り欠き溝と、背もたれフレームの左右に対向して配設された左右一対の縦板に形成されると共に上側連結棒が架設される溝形状の切り欠きであって、下側切り欠き溝に架設された下側連結棒を揺動中心として一対の肘掛け部材を揺動したときに一対の肘掛け部材が水平になるまで上側連結棒が挿入する上側切り欠き溝と、を備えることが好ましい。
【0027】
本発明におけるアームレスト着脱機構によれば、一対の肘掛け部材を車椅子に取り付ける場合、先ず下側連結棒を本体フレームの対向する一対の側板に形成した一対の下側切り欠き溝に挿入して架設する。次に、下側連結棒を揺動軸として一対の肘掛け部材を揺動して、上側連結棒を背もたれフレームの対向する一対の縦板に形成された一対の上側切り欠き溝に一対の肘掛け部材が水平になるまで挿入して架設する。
【0028】
逆に、一対の肘掛け部材を車椅子から取り外す場合、先ず下側切り欠き溝に架設されている下側連結棒を揺動軸として、一対の肘掛け部材を揺動させて上側連結棒を上側切り欠き溝から取り外した後、下側連結棒を下側切り欠き溝から取り外す。これにより、アームレストを車椅子に迅速且つ簡便に着脱することができる。
【0029】
本発明の別態様において、本体フレームには、車輪着脱機構に回動支持された車軸が本体フレームから外れないようにロックする車軸ロック手段が設けられることが好ましい。これにより、車椅子の使用中に主用後輪が車椅子から外れることを確実に防止できる。
【0030】
本発明の別態様において、背もたれフレームには、アームレスト着脱機構に支持された上側連結棒が背もたれフレームから外れないようにロックする上側連結棒ロック手段が設けられることが好ましい。これにより、車椅子の使用中に肘掛け部材が車椅子から外れることを確実に防止できる。
【0031】
本発明の別態様において、主用後輪及びアームレストを取り外した後の車椅子の最大幅は40cm未満であることが好ましい。これにより、主用後輪と肘掛け部材を車椅子から取り外せば、飛行機内の狭い通路でも車椅子を使用できる。
【0032】
本発明の別態様において、車椅子は非金属材料で形成されていることが好ましい。これにより、飛行機搭乗時における金属探知ゲートを利用者は車椅子に乗ったまま通過することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の車椅子によれば、飛行機や新幹線の狭い通路でも使用でき、且つ強度的にも着脱迅速性や着脱簡便性にも優れた車椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の車椅子を斜め前方から見た斜視図
図2】本発明の車椅子を斜め後方から見た斜視図
図3】本発明の車椅子の一対の主用後輪及びアームレストを取り外した斜視図
図4】本発明の車椅子の車輪着脱機構を説明する部分拡大の斜視図
図5】本発明の車椅子のアームレスト着脱機構を説明する部分拡大の斜視図
図6】本発明の車椅子の車輪着脱機構及びアームレスト着脱機構を説明する部分拡大の側面図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下添付図面に従って、本発明に係る車椅子の好ましい実施の形態について詳述する。
【0036】
[車椅子の全体構成]
図1は本発明の実施の形態の車椅子を斜め前方から見た斜視図であり、図2は斜め後方から見た斜視図である。また、図3は、車椅子の一対の主用後輪及びアームレストを取り外した斜視図である。
【0037】
図1及び図2に示すように、本発明の実施の形態の車椅子10は、主として、車椅子10の利用者(図示せず)が座る本体フレーム12と、本体フレーム12に支持されると共に利用者が背をもたれかける背もたれフレーム14と、本体フレーム12に座った利用者が肘を掛けると共に車椅子10にアームレスト着脱機構18によって着脱自在に支持されたアームレスト16と、本体フレーム12に座った利用者が両足を置くフットレスト20と、本体フレーム12に回動自在に支持された左右一対の小径な前輪22と、本体フレーム12に回動自在に支持された左右一対の小径な補助用後輪24と、補助用後輪24よりも大径な車輪同士を丸棒形状の車軸26Aで連結した車軸連結車輪であって、車軸26Aが本体フレーム12に車輪着脱機構28によって着脱自在に回動支持された左右一対の主用後輪26と、で構成される。
【0038】
本発明の実施の形態の車椅子10において、主用後輪26及びアームレスト16を取り外した後の車椅子10の最大幅は40cm未満であることが好ましい。これにより、主用後輪26とアームレスト16とを車椅子10から取り外せば、例えば飛行機や新幹線のような狭い通路でも車椅子10を使用できる。
【0039】
なお、以下の説明において、車椅子10に座った利用者の正面側を前側とし、利用者の背面側を後側とし、利用者の両手方向を左右側として説明する。
【0040】
(本体フレーム)
本体フレーム12は、主として、左右に対向する一対の側板12Aと、一対の側板12A同士の間の前側位置を連結する水平な前側梁部材12B(図3参照)と、一対の側板12A同士の間の後側位置を連結する水平な後側梁部材12C(図3参照)と、利用者が座る座板12D(図3参照)とで構成される。
【0041】
一対の側板12Aの上面には、前端から後部にかけて水平面部12E(図3参照)が形成され、後端部に上に突起した山型の突起面部12F(図3参照)が形成され、水平面部12Eに座板12Dが載置される。
【0042】
なお、図1では、座板12Dの上にスポンジ状の座布団29(図1参照)を置いた状態で示している。また、本実施の形態では、前側梁部材12Bと後側梁部材12Cとして、平板形状のものを縦向きに配置したが、丸棒形状や角棒形状のものを使用することもできる。また、梁部材は前側梁部材12Bと後側梁部材12Cとの2本に限定されず、スペース的に余裕があれば更に増加することもできる。
【0043】
また、本体フレーム12の一対の側板12Aには、車輪着脱機構28に回動自在に支持された主用後輪26の車軸26Aが本体フレーム12から脱落しないようにロックする一対の車軸ロック手段30がそれぞれ設けられる。車軸ロック手段30としては、車軸26Aが本体フレーム12から外れないようにロックできればどのようなものでもよいが、先端部が鉤状に曲がった鉤状フックを使用することができる。
【0044】
(背もたれフレーム)
図2及び図3に示すように、背もたれフレーム14は、左右に対向する一対の縦板14Aと、一対の縦板14A同士の間の上側位置を連結する上側背板部材14Bと、一対の縦板14A同士の間の中央位置を連結する中央背板部材14Cとで構成される。そして、本体フレーム12の一対の側板12Aの後端部に形成された一対の突起面部12Fに一対の縦板14Aの下端位置が2本のボルト部材15(図3参照)でそれぞれ固定される。これにより、背もたれフレーム14が本体フレーム12に支持される。背もたれフレーム14は、本体フレーム12の座板12Dに座った利用者の背中がもたれかけ易いように、斜め後方に少しだけ傾斜して本体フレーム12に支持される。
【0045】
また、図1及び図2に示すように、背もたれフレーム14には、スポンジ状の背当て部材32(図1参照)が設けられ、利用者の背中が当たる感触を和らげている。また、図2及び図3に示すように、左右一対の縦板14Aの上端位置には、介護者が車椅子10を押すときに握る一対の握り棒34が設けられる。
【0046】
(アームレスト)
図3に示すように、アームレスト16は、主として左右一対の肘掛け部材16Aと、左右一対の肘掛け部材16Aの間を連結する丸棒形状の上側連結棒18Aと丸棒形状の下側連結棒18Bとで構成される。そして、この上側連結棒18Aと下側連結棒18Bは一対の肘掛け部材16Aを連結する以外に前記したアームレスト着脱機構18の構成要素を兼ねる。
【0047】
一対の肘掛け部材16Aは、水平部16Bと、水平部16Bの略中央位置から斜め後側に延設された傾斜部16Cとで構成され、上側連結棒18Aは一対の肘掛け部材16Aの後端上部同士、即ち水平部16Bの後端同士を連結する。また、下側連結棒18Bは、一対の肘掛け部材16Aの後端下部同士、即ち傾斜部16Cの後端同士を連結する。
【0048】
また、図1図3に示すように、アームレスト16の対向する一対の肘掛け部材16Aには、一対の主用後輪26のタイヤ26Bに当接して主用後輪26の回転を制動する一対の制動ブレーキ36が設けられる。
【0049】
制動ブレーキ36は、アームレスト16を車椅子10に取り付けたときに、主用後輪26の真上にくるように配置されている。制動ブレーキ36は、主用後輪26のタイヤ26Bに当接する当接部材36Aと、制動レバー36Bと、制動レバー36Bをアームレスト16の一対の肘掛け部材16Aに揺動自在に支持する揺動ピン36Cとで構成される。これにより、車椅子10に座った利用者が制動レバー36Bを揺動して当接部材36Aを主用後輪26のタイヤ26Bに当接させることで主用後輪26にブレーキをかけることができる。
【0050】
(フットレスト)
図1及び図3に示すように、フットレスト20は、主として左右に並設された一対の足載せ板20Aと、左右一対の足載せ板20Aを揺動自在に支持する揺動連結軸20Bと、揺動自在な一対の足載せ板20Aの略中央位置を吊り下げ支持する一対のベルト部材20C、20Cと、ベルト部材20Cの長さを調整する一対のバックル部材20D、20Dと、一対の足載せ板20Aを上向きに揺動させたときに一対の足載せ板20Aを略垂直な起立状態で本体フレーム12に係止する一対の係止手段20Eとで構成される。
【0051】
図1に示すように、一対の足載せ板20Aは、本体フレーム12の対向する一対の側板12Aの間の内側に配置され、足を載せ易いように幅広な前側部20Fと、前側部20Fよりも幅狭な後側部20GとでL字板形状に形成される。
【0052】
揺動連結軸20Bは、一対の足載せ板20Aの後側部20Gの後端位置を水平に貫通支持することによって一対の足載せ板20A同士を連結すると共に揺動連結軸20Bの両端が本体フレーム12の一対の側板12Aに揺動自在に支持される。これにより、一対の足載せ板20Aは揺動連結軸20Bを揺動中心として足載せ板20Aが地面や床面に接面又は近接する略水平な水平状態から略垂直な起立状態まで起伏可能である。
【0053】
ベルト部材20Cは、一方端が一対の足載せ板20Aの略中央位置に形成されたスリット孔(揺動連結軸20Bよりも前側)に掛け渡されると共に他端が座板12Dに形成されたスリット孔に掛け渡され、ベルト部材20Cの両端はバックル部材20Dによって締結される。バックル部材20Dによってベルト部材20Cの長さを調整することにより、一対の足踏み板20Aを水平にしたり少しだけ前が高くなるように傾斜させたりすることができる。
【0054】
係止手段20Eは、一対の足載せ板20Aの前側部20Fの左右側辺に水平方向に突起した一対の突起片20Hと、本体フレーム12の一対の側板12Aの前辺上部に形成されると共に足載せ板20Aが上向きに揺動したときに一対の突起片20Hが嵌り込む一対の切り欠き係止溝20Jとで構成される。これにより、水平状態の一対の足載せ板20Aが上向きに揺動して一対の突起片20Hが一対の切り欠き係止溝20Jに嵌り込んで係止されることによって、一対の足載せ板20Aは起立状態を維持する。また、一対の足載せ板20Aを起立させて本体フレームの内部(一対の側板12Aの間)に収納することにより、車椅子10の利用者が車椅子10から降りるときに足載せ板20Aが邪魔にならない。
【0055】
(前輪)
図1及び図3に示すように、一対の前輪22はキャスタを好適に使用することができ、本体フレーム12の一対の側板12Aの前側下部の外面にそれぞれヨーク22Aが設けられ、ヨーク22Aに車輪22Bが旋回支持部材22Cを介して旋回自在に支持される。
【0056】
(補助用後輪)
図3に示すように、一対の補助用後輪24は丸棒形状の車軸24Aによって連結されると共に、車軸24Aは本体フレーム12の一対の側板12Aの後側下部に形成された楕円形状の一対の縦長孔42E(図4参照)に回動自在に支持される。この縦長孔42Eは、一対の主用後輪26の車軸24Aを本体フレーム12に着脱自在に支持する車輪着脱機構28における本体フレーム昇降手段42の構成要素を兼ねる。
【0057】
(主用後輪)
図1図3に示すように、一対の主用後輪26は丸棒形状の車軸26Aによって連結されると共に車輪着脱機構28によって本体フレーム12に着脱自在に支持される。一対の主用後輪26の外側面にはそれぞれ一対のハンドリム38、38が取り付けられており、車椅子10の利用者はハンドリム38を回転させることにより介護者の介護なしに自力で車椅子10を走行させることができる。
【0058】
また、図3に示すように、一対の主用後輪26を連結する車軸26Aの左右端部には、車軸中央部26Dよりも大径な一対のガイド部26Cが形成され、車輪着脱機構28の一対の切り欠き溝40に車軸26Aを挿入して架設する際の車軸軸芯方向の位置決めを容易に行えるようにする。
【0059】
次に、本発明の実施の形態の車椅子10の大きな特徴である車輪着脱機構28とアームレスト着脱機構18について詳しく説明する。
【0060】
図4は車椅子10における車輪着脱機構28を説明するために部分拡大した斜視図であり、図5はアームレスト着脱機構18を説明するために部分拡大した斜視図である。また、図6は車輪着脱機構28及びアームレスト着脱機構18を説明するために部分拡大した側面図である。
【0061】
(車輪着脱機構)
図4及び図6に示すように、車輪着脱機構28は、主として、本体フレーム12の一対の側板12Aに形成された一対の切り欠き溝40と、本体フレーム昇降手段42とで構成される。
【0062】
一対の切り欠き溝40は、主用後輪26の車軸26Aが架け渡されるL字溝形状の切り欠きであって、L字溝形状の垂直溝部分40A(図6参照)の突き当りに車軸26Aが回動自在に支持される半円形状の回動支持部40B(図6参照)が形成されている。また、一対の切り欠き溝40におけるL字溝形状の水平溝部分40C(図6参照)の突き当りには、回動支持部40Bに対向して車軸26Aが遊嵌状態で載置される円弧形状の載置部40D(図6参照)が形成されている。
【0063】
一対の切り欠き溝40の溝幅W(図6参照)は、一対の主用後輪26を連結する車軸26Aの車軸中央部26Dの直径D1よりも僅かに大きいと共に車軸両端のガイド部26Cの直径D2よりも小さく形成される。また、左右一対の切り欠き溝40同士の間の距離は車軸中央部26Dの長さL(図4参照)に一致する。これにより、車軸26Aを一対の切り欠き溝40に挿入して架設する場合、車軸両端のガイド部26Cが挿入をガイドする。
【0064】
また、本体フレーム12の一対の側板12Aには、車輪着脱機構28に着脱自在に回動支持された一対の主用後輪26の車軸26Aが本体フレーム12から外れないようにロックする車軸ロック手段30が設けられる。車軸ロック手段30としては、車軸26Aが本体フレーム12から外れないようにロックできればどのような手段でもよいが、本実施の形態では車軸26Aを鉤状に曲がった先端部に引っ掛ける一対の鉤状フック30Aを用いた。鉤状フック30Aは、基端部が回動ピン30Bを介して一対の側板12Aにそれぞれ回動自在に支持されるようにした。これにより、一対の切り欠き溝40の回動支持部40Bに回動自在に支持された一対の主用後輪26の車軸26Aを車軸ロック手段30で確実にロックすることができる。
【0065】
なお、車椅子10に座った利用者の体重によって、本体フレーム12には下向きの荷重が加わっているので、車輪着脱機構28の一対の切り欠き溝40の回動支持部40Bに回動自在に支持された車軸26Aは車軸ロック手段30がなくても回動支持部40Bから外れることはまずないと考えられる。しかし、車軸ロック手段30を設けることで車軸26Aを回動支持部40Bに確実にロックすることができる。
【0066】
図4に示すように、本体フレーム昇降手段42は、主として、本体フレーム12の一対の側板12Aに形成され、一対の補助用後輪24を回動自在に支持する楕円形状の縦長孔42Eと、一対の補助用後輪24に対して接離する左右一対の押圧部材42Aと、左右一対の揺動レバー42Bと、左右一対の揺動レバー42Bの後端部同士を連結する連結棒42Cと、足踏み部材42Dとで構成される。
【0067】
本体フレーム12の一対の側板12Aにそれぞれ形成された一対の縦長孔42Eは、一対の補助用後輪24の車軸24Aの両端部を昇降スライド可能に回動支持すると共に本体フレーム昇降手段42で本体フレーム12を昇降させる昇降ストロークの長さに形成されている。
【0068】
また、本体フレーム12の一対の側板12Aの後端下部には、水平に突起した水平突起部12Gが形成されており、本体フレーム昇降手段42の足踏み部材42Dを踏むことによって一対の主用後輪26の車軸26A両端部が水平突起部12Gに当接すると、本体フレーム12の水平溝部分40Cの高さが主用後輪26の車軸26Aの高さになるように設定されている。
【0069】
押圧部材42Aは、一対の補助用後輪24の直ぐ真上に配置されると共に押圧部材42Aの前端部が揺動ピン42Fを介して本体フレーム12の一対の側板12Aに揺動自在に支持される。揺動ピン42Fを揺動中心として、一対の押圧部材42Aが揺動することによって、一対の押圧部材42Aは一対の補助用後輪24に対して接離する動作を行う。
【0070】
押圧部材42Aは、対向する一対の略長方形な押圧板42A1同士の間の前端部を連結部材42A2で連結すると共に一対の押圧板42A1の長手方向にそれぞれ溝状のスライド孔42A3が形成される。
【0071】
一対の揺動レバー42BはL字形状に形成されると共に一対の揺動レバー42Bの揺動中心位置(L字の水平から垂直に変わる位置)に揺動軸42Gが貫通支持され、揺動軸42Gの両端が本体フレーム12の一対の側板12Aに揺動自在に支持される。また、一対の揺動レバー42Bの前端部(先端部)がスライドピン42Hに貫通支持され、スライドピン42Hの両端が一対の押圧板42A1にそれぞれ形成されたスライド孔42A3に架設される。
【0072】
連結棒42Cは、一対の揺動レバー42Bの後端部同士を連結すると共に、足踏み部材42Dは、連結棒42Cの中央部に回動自在に吊設されている。
【0073】
これにより、車椅子10の介護者が足踏み部材42Dに足を掛けて押し下げると、連結棒42Cを介して揺動レバー42Bが揺動軸42Gを揺動中心として揺動し、スライドピン42Hがスライド孔42A3をスライドする。これにより、押圧部材42Aは揺動ピン42Fを揺動中心として揺動し、補助用後輪24に接離する。押圧部材42Aが補助用後輪24に接近する方向に揺動すると、押圧部材42Aが補助用後輪24を下向きの力で押圧する。これにより、押圧部材42Aが補助用後輪24を下向きの力で押圧する反力によって、本体フレーム12は一対の側板12Aに形成された縦長孔42Eに沿って上昇する。また、介護者が足踏み部材42Dを元の位置に持ち上げると、本体フレーム12は一対の側板12Aに形成された縦長孔42Eに沿って下降し、最終的に押圧部材42Aによる補助用後輪24の押圧が解除される。
【0074】
即ち、本体フレーム昇降手段42は、本体フレーム12を昇降させる役目と、補助用後輪24が動かないようにロックする役目とを同時に行う。
【0075】
このように、車輪着脱機構28は、一対の主用後輪26を連結する車軸26Aを一対の切り欠き溝40に挿入して回動支持部40Bに回動自在に支持するという極めてシンプルな着脱構造としたので、上記した車輪着脱機構28を非金属材料で製作しても車椅子10としての強度を確保できる。
【0076】
(アームレスト着脱機構)
図5及び図6に示すように、アームレスト着脱機構18は、主として、アームレスト16の左右一対の肘掛け部材16Aの後端上部同士を連結する上側連結棒18Aと、左右一対の肘掛け部材16Aの後端下部同士を連結する下側連結棒18Bと、本体フレーム12の左右一対の側板12Aの後端側に左右に対向して斜め下向きの溝形状に形成された切り欠きであって、下側連結棒18Bが架設される下側切り欠き溝18Cと、背もたれフレーム14の左右に対向して配設された左右一対の縦板14Aに形成されると共に上側連結棒18Aが架設される溝形状の切り欠きであって、下側切り欠き溝18Cに架設された下側連結棒18Bを揺動中心としてアームレスト16を揺動したときに一対の肘掛け部材16Aが水平になるまで上側連結棒18Aが挿入する上側切り欠き溝18Dと、で構成される。
【0077】
下側切り欠き溝18Cは斜め下向きの溝形状に形成されているので、車椅子10の利用者がアームレスト16を上向きに揺動させない限り、アームレスト16が背もたれフレーム14から外れることはない。しかし、アームレスト16を車椅子10から外れないように、アームレスト着脱機構18に上側連結棒18Aをロックするアームレストロック手段19を設けることが好ましい。
【0078】
アームレストロック手段19は、アームレスト16が車椅子10から外れないようにロックできればどのようなものでもよいが、上記した車軸ロック手段30と同様に鉤状フック19Aを回動ピン19Bで背もたれフレーム14の対向する一対の縦板14Aに支持する構造を採用することができる。
【0079】
[車椅子の使用方法]
図4図6を使用して、上記の如く構成された車椅子10の使用方法として、介護者が車輪着脱機構28によって車椅子10から一対の主用後輪26を着脱する方法及びアームレスト着脱機構18によって車椅子10からアームレスト16を着脱する方法について説明する。
【0080】
(主用後輪の着脱方法)
介護者が車椅子10の本体フレーム12から一対の主用後輪26を取り外す場合、先ず一対の主用後輪26を連結する車軸26Aをロックしている一対の車軸ロック手段30のロックを解除する。車軸ロック手段30を有しない場合には、このステップは省略できる。
【0081】
次に、介護者は、本体フレーム昇降手段42の足踏み部材42Dを踏んで下向きに揺動させて、一対の押圧部材42Aが一対の補助用後輪24を下向きの力で押圧する。この下向きの力で押圧する押圧反力によって本体フレーム12を上昇させる。
【0082】
本体フレーム12の上昇によって、図6に示すように、本体フレーム12に形成された一対の切り欠き溝40の水平溝部分40Cの高さと主用後輪26の車軸26Aの高さとが同じになる。これにより、主用後輪26を連結する車軸26Aは実線矢印で示すように、切り欠き溝40の垂直溝部分40Aの突き当りに形成された回動支持部40Bから外れて水平溝部分40Cの突き当りに形成された載置部40Dの位置に移動する。
【0083】
同時に、押圧部材42Aが補助用後輪24を下向きの力で押圧することによって、補助用後輪24が動かないようにロックされる。これにより、車椅子10から主用後輪26を取り外す際に車椅子10を固定することができる。
【0084】
この状態で介護者は、一対の主用後輪26を車椅子10から取り外す方向、即ち載置部40Dの位置から実線矢印で示す水平溝部分40Cの入口方向に転がせば、一対の主用後輪26を車椅子10から迅速且つ簡便に取り外すことができる。
【0085】
次に介護者は、本体フレーム昇降手段42の足踏み部材42Dを上向きに揺動させて、補助用後輪24を下向きに押圧していた押圧部材42Aの押圧を解除する。これにより、補助用後輪24のロックが解除されると共に本体フレーム12は下降する。この結果、補助用後輪24の車軸24Aは本体フレーム12に形成された縦長孔42Eの上端に当接した状態で回動支持されるので、車椅子10は前輪22と補助用後輪24とにより走行することができる。
【0086】
なお、補助用後輪24の車軸24Aは本体フレーム12に形成された縦長孔42Eの上端に当接した状態で回動支持されているが、利用者の体重による下向きの荷重が本体フレーム12に加わっているので、補助用後輪24の回転が不安定になることはない。
【0087】
また、介護者が一対の主用後輪26を車輪着脱機構28によって本体フレーム12に取り付ける場合も上記した取り外しの場合と同様に本体フレーム昇降手段42で本体フレームを昇降させることにより、破線矢印で示すように、主用後輪26を本体フレーム12に取り付けることができる。
【0088】
なお、上記の主用後輪26の着脱方法において、主用後輪26を本体フレームに取り付ける又は取り外すと説明したが、車椅子10に取り付ける又は取り外すと表現しても同じである。また、一対の主用後輪26の車軸26Aを回動自在に支持する回動支持部40Bは、L字溝形状の切り欠き溝40の垂直溝部分40Aの突き当りに形成した半円形状であるが、本体フレーム12に座っている利用者の体重により本体フレーム12には下向きの荷重が加わっているので、主用後輪26の回転が不安定になることはない。
【0089】
上記した主用後輪26の着脱方法から分かるように、本発明の車椅子10における車輪着脱機構28は次のメリットがある。
【0090】
(A)従来技術のように一対の主用後輪26を本体フレーム12に着脱自在に片持ち支持するのではなく、一対の主用後輪26を連結する車軸26Aを本体フレーム12に着脱自在に支持するようにしたので、強度の強い車輪着脱構造を構成できる。
【0091】
(B)従来技術のように一対の主用後輪26を車椅子10から別々に取り外すのではなく、車軸26Aを車椅子10から取り外すことで一対の主用後輪26を一度に取り外すことができる。これにより、車椅子10から主用後輪26の取り外しを迅速且つ簡便に行うことができる。
【0092】
即ち、従来技術のように一対の主用後輪26を車椅子10から別々に取り外す場合は、介護者は車椅子10の一方側の側方に回って一方の主用後輪26を取り外したら、他方側の側方に回って他方の主用後輪26を取り外さなければならず、狭い空間での作業が難しい。これに対して、本発明の車輪着脱機構28によれば、介護者は車椅子10を押すのと同じ車椅子10の後方から一対の主用後輪26を取り外すことができるので、狭い空間であっても一対の主用後輪26の着脱作業を容易に行うことができる。
【0093】
また、介護者が足踏み部材42Dを踏む動作で、主用後輪26の取り外し時に車椅子10が動かないようにする補助用後輪24のロックと本体フレーム12の上昇とを同時に行うようにしたので、車椅子10に対する主用後輪26の着脱を一層迅速に且つ安全に行うことができる。
【0094】
したがって、飛行機への搭乗の際に、ボーディングブリッジを渡って飛行機の乗降口の直前の狭い空間で一対の主用後輪26を車椅子10から取り外す場合であっても、他の乗客に迷惑をかけずに迅速且つ簡便に取り外すことができる。
【0095】
(アームレストの着脱方法)
介護者がアームレスト16を車椅子10から取り外す場合、本体フレーム12の対向する一対の側板12Aに形成した下側切り欠き溝18Cに架設されている下側連結棒18Bを揺動中心として、アームレスト16を車椅子10の後側に揺動させる。これにより、上側連結棒18Aが上側切り欠き溝18Dから外れるので、次にアームレスト16を車椅子10の斜め後方上向きに持ち上げれば、下側連結棒18Bが下側切り欠き溝18Cから外れる。これにより、アームレスト16を車椅子10から迅速且つ簡便に取り外すことができる。
【0096】
また、介護者がアームレスト16を車椅子10に取り付ける場合、先ずアームレスト16の下側連結棒18Bを一対の下側切り欠き溝18Cの突き当りまで挿入して架設する。次に、下側連結棒18Bを揺動中心としてアームレスト16を車椅子10の前側に揺動して、アームレスト16の上側連結棒18Aを一対の上側切り欠き溝18Dに突き当るまで挿入して架設する。これにより、アームレスト16の一対の肘掛け部材16Aが水平になる。したがって、アームレスト16を車椅子10に迅速且つ簡便に取り付けることができる。
【0097】
このアームレスト16の着脱において、本体フレーム12に形成された下側切り欠き溝18Cは斜め下向きに切り欠かれているので、車椅子10の利用者がアームレスト16を上向きに揺動させない限り、アームレスト16が車椅子10から外れてしまうことはない。
【0098】
上記したアームレスト16の着脱方法から分かるように、本発明の車椅子10におけるアームレスト着脱機構18は次のメリットがある。
【0099】
(C)従来技術のようにアームレスト16を背もたれの後方に折り畳んだり座部の下側に折り畳んだりする構造ではなく、アームレスト16を連結する下側連結棒18Bと上側連結棒18Aを本体フレーム12に形成した下側切り欠き溝18Cと背もたれフレーム14に形成した上側切り欠き溝18Dとにそれぞれ架設する構造とした。
【0100】
これにより、本発明の車椅子10におけるアームレスト着脱機構18は、従来技術のようにアームレスト16を折り畳む際に車椅子10に座っている利用者は車椅子10から一旦降りる必要がない。また、介護者は車椅子10を押すのと同じ車椅子10の後方からアームレスト16を着脱できるので、狭い空間であってもアームレスト16の着脱作業を迅速且つ簡便に行うことができる。
【0101】
したがって、飛行機への搭乗の際に、ボーディングブリッジを渡って飛行機の乗降口の直前の狭い空間でアームレスト16を車椅子10から取り外す場合であっても、他の乗客に迷惑をかけずに迅速且つ簡便に取り外すことができる。
【0102】
更には、アームレスト着脱機構18は、従来技術のようにアームレスト16を背もたれの後方に折り畳んだり座部の下側に折り畳んだりする構造ではなく、上記の如く極めてシンプルな着脱機構であるため、強度の強いアームレスト着脱構造を構成できる。
【0103】
本発明の実施の形態の車椅子10は、上記説明したように、車輪着脱機構28及びアームレスト着脱機構18を車椅子10の強度を確保できるシンプルな構造としたので、車椅子10を木材、硬質プラスチック等の非金属材料で製作することが可能となる。特に木材が好ましい。木材を使用することで、車椅子10に木のぬくもりを付与することができるだけでなく、飛行機搭乗の際の金属探知ゲートを利用者が車椅子10に乗ったまま通過することができる。
【符号の説明】
【0104】
10…車椅子、12…本体フレーム、12A…側板、12B…前側梁部材、12C…後側梁部材、12D…座板、12E…水平面部、12F…突起面部、12G…水平突起部分、14…背もたれフレーム、14A…縦板、14B…上側背板部材、14C…中央背板部材、15…ボルト部材、16…アームレスト、16A…肘掛け部材、16B…水平部、16C…傾斜部、18…アームレスト着脱機構、18A…上側連結棒、18B…下側連結棒、18C…下側切り欠き溝、18D…上側切り欠き溝、19…アームレストロック手段、19A…鉤状フック、19B…回動ピン、20…フットレスト、20A…足載せ板、20B…揺動連結軸、20C…ベルト部材、20D…バックル部材、20E…係止手段、20F…前側部、20G…後側部、20H…突起片、20J…切り欠き係止溝、22…前輪、22A…ヨーク、22B…車輪、22C…旋回支持部材、24…補助用後輪、24A…車軸、26…主用後輪、26A…車軸、26B…タイヤ、26C…ガイド部、26D…車軸中央部、28…車輪着脱機構、29…座布団、30…車軸ロック手段、30A…鉤状フック、30B…回動ピン、32…背当て部材、34…握り棒、36…制動ブレーキ、36A…当接部材、36B…制動レバー、36C…揺動ピン、38…ハンドリム、40…切り欠き溝、40A…垂直溝部分、40B…回動支持部、40C…水平溝部分、40D…載置部、42…本体フレーム昇降手段、42A…押圧部材、42A1…押圧板、42A2…連結部材、42A3…スライド孔、42B…揺動レバー、42C…連結棒、42D…足踏み部材、42E…縦長孔、42F…揺動ピン、42G…揺動軸、42H…スライドピン、W…切り欠き溝の幅、D1…車軸中央部の径、D2…ガイド部の径、L…一対の切り欠き溝同士の間の距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2020-10-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子の利用者が座る本体フレームと、
前記本体フレームに支持されると共に前記利用者が背をもたれかける背もたれフレームと、
前記本体フレームに座った前記利用者が肘を掛けるアームレストと、
前記本体フレームに回動自在に支持された左右一対の小径な前輪と、
前記本体フレームに回動自在に支持された丸棒状の車軸で連結された左右一対の小径な補助用後輪と、
前記補助用後輪よりも大径な車輪同士を丸棒形状の車軸で連結した車軸連結車輪であって、前記車軸が前記本体フレームに車輪着脱機構によって着脱自在に回動支持された左右一対の主用後輪と、を少なくとも有し、
前記車輪着脱機構は、
前記本体フレームの左右に対向して配設された一対の側板の車椅子後端側に左右に対向して形成されると共に前記主用後輪の前記車軸が架け渡されるL字溝形状の切り欠きであって、前記L字溝形状の垂直溝部分の突き当りに前記車軸が回動自在に支持される半円形状の回動支持部が形成された一対の切り欠き溝と、
前記一対の切り欠き溝の前記L字溝形状の水平溝部分の高さが前記車軸の高さになるように前記本体フレームを上昇させると共に前記水平溝部分の突き当りまで前記車軸を挿入したら前記本体フレームを下降させて前記垂直溝部分を介して前記車軸を前記回動支持部に嵌め込む本体フレーム昇降手段と、を備えたことを特徴とする車椅子。
【請求項2】
前記本体フレーム昇降手段は、
前記一対の側板に対向して形成され、前記補助用後輪の車軸を昇降スライド可能に回動支持すると共に前記本体フレームの昇降ストロークの長さに形成された楕円形状の一対の縦長孔と、
前記補助用後輪の上方に位置すると共に前記一対の側板に揺動自在に支持され、揺動することによって前記補助用後輪に対して接離する一対の押圧部材と、
前記一対の側板に揺動中心が揺動自在に支持されると共に前端部が揺動ピンを介して前記押圧部材に連結され、前記押圧部材を前記補助用後輪に接する方向に揺動させて前記補助用後輪を下向きの力で押圧するL字形状の一対の揺動レバーと、
前記一対の揺動レバーの後端部同士を連結する連結棒と、を備えた請求項1に記載の車椅子。
【請求項3】
前記L字溝形状の一対の切り欠き溝における前記水平溝部分の突き当りには前記半円形状な前記回動支持部に対向して前記水平溝部分に挿入された前記車軸が遊嵌される円弧状の凹部が形成される請求項1又は2に記載の車椅子。
【請求項4】
前記アームレストは左右一対の肘掛け部材を有すると共に前記車椅子にアームレスト着脱機構によって着脱自在に支持され、
前記アームレスト着脱機構は、
前記左右一対の肘掛け部材の後端上部同士を連結する上側連結棒と、
前記左右一対の肘掛け部材の後端下部同士を連結する下側連結棒と、
前記一対の側板の車椅子後端側に左右に対向して斜め下向きの溝形状に形成された切り欠きであって、前記下側連結棒が架設される下側切り欠き溝と、
前記背もたれフレームの左右に対向して配設された左右一対の縦板に形成されると共に前記上側連結棒が架設される溝形状の切り欠きであって、前記下側切り欠き溝に架設された前記下側連結棒を揺動中心として前記一対の肘掛け部材を揺動したときに前記一対の肘掛け部材が水平になるまで前記上側連結棒が挿入する上側切り欠き溝と、を備えた請求項1~3の何れか1項に記載の車椅子。
【請求項5】
前記本体フレームには、前記車輪着脱機構に回動支持された前記車軸が前記本体フレームから外れないようにロックする車軸ロック手段が設けられる請求項1~4の何れか1項に記載の車椅子。
【請求項6】
前記背もたれフレームには、前記アームレスト着脱機構に支持された前記上側連結棒が前記背もたれフレームから外れないようにロックする上側連結棒ロック手段が設けられる請求項に記載の車椅子。
【請求項7】
前記主用後輪及び前記アームレストを取り外した後の前記車椅子の最大幅は40cm未満である請求項1~6の何れか1項に記載の車椅子。
【請求項8】
前記車椅子は非金属材料で形成されている請求項1~7の何れか1項に記載の車椅子。
【請求項9】
前記連結棒の中央部に回動自在に吊設された足踏み部材を備えた請求項2に記載の車椅子。