(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107868
(43)【公開日】2022-07-25
(54)【発明の名称】天井用部品の取付方法及び天井用部品の取付構造
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20220715BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
B60R11/02 M
B60R13/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002521
(22)【出願日】2021-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】特許業務法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 正起
(72)【発明者】
【氏名】山口 淳史
【テーマコード(参考)】
3D020
3D023
【Fターム(参考)】
3D020BA11
3D020BC04
3D020BC10
3D020BD01
3D020BD05
3D023BB02
3D023BD01
(57)【要約】
【課題】車両の製造コストの低廉化を実現しつつ、天井材からの天井用部品の脱落を好適に防止可能な天井用部品の取付方法及び天井用部品の取付構造を提供する。
【解決手段】本発明の取付方法は、天井材5に対してマイクロフォン装置7の取り付けを行う。天井材5は、第1面51及び第2面53を有している他、取付孔55が形成されている。マイクロフォン装置7はケース73及びベゼル75等を有している。この取付方法では、進入工程において、ベゼル75を弾性変形させつつ第2面53側から取付孔55内に進入させるとともに、ベゼル75を第1面51側まで通過させる。そして、取付工程において、ベゼル75を第1面51に当接させるとともに、ケース73の前方側当接片73e及び後方側当接片73fを第2面53に当接させる。これにより、ベゼル75と、前方側当接片73e及び後方側当接片73fとで天井材5を挟持させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固定されて車室の天井を構成する天井材に対し、天井用部品の取り付けを行う天井用部品の取付方法であって、
前記天井材は、前記車室に面する第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面とを有する板状をなし、
前記天井材には、前記第1面から前記第2面まで貫通する取付孔が形成され、
前記天井用部品は、部品本体と、
前記部品本体を固定するケースと、
弾性変形可能な弾性体からなり、前記ケースに固定されて前記車室に面しつつ第1面に当接する第1当接部とを有し、
前記ケースには、前記第2面に当接する第2当接部が形成され、
前記天井材と前記天井用部品とを準備する準備工程と、
前記第1当接部を弾性変形させつつ前記第2面側から前記取付孔内に進入させるとともに、前記第1当接部を前記第1面側まで通過させる進入工程と、
前記第1当接部を前記第1面に当接させるとともに、前記第2当接部を前記第2面に当接させることにより、前記第1当接部と前記第2当接部とで前記天井材を挟持させて前記天井材に前記天井用部品を取り付ける取付工程とを備えていることを特徴とする天井用部品の取付方法。
【請求項2】
前記第2面側において、前記部品本体に通電ケーブルを接続する接続工程を備えている請求項1記載の天井用部品の取付方法。
【請求項3】
車体に固定されて車室の天井を構成する天井材と、前記天井材に取り付けられる天井用部品とを備えた天井用部品の取付構造であって、
前記天井材は、前記車室に面する第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面とを有する板状をなし、
前記天井材には、前記第1面から前記第2面まで貫通する取付孔が形成され、
前記天井用部品は、部品本体と、
前記部品本体を固定するケースと、
弾性変形可能な弾性体からなり、前記ケースに固定されて前記車室に面しつつ前記第1面に当接する第1当接部とを有し、
前記ケースには、前記第2面に当接する第2当接部が形成され、
前記天井用部品は、前記第1当接部を弾性変形させつつ前記第2面側から前記取付孔内を前記第1面側まで通過させ、かつ、前記第1面に前記第1当接部を当接させて前記第1当接部と前記第2当接部とで前記天井材を挟持することにより、前記天井材に取り付けられることを特徴とする天井用部品の取付構造。
【請求項4】
前記部品本体には、前記第2面側において通電ケーブルが接続されている請求項3記載の天井用部品の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井用部品の取付方法及び天井用部品の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の天井用部品の取付方法(以下、単に取付方法という。)が開示されている。この取付方法は、天井材に対して天井用部品の取り付けを行う。天井材は、車体に固定されることにより、車室の天井を構成している。天井材は、第1面と第2面とを有する板状をなしている。第1面は車室に面している。第2面は第1面の反対側に位置している。また、天井材には、第1面から第2面まで貫通する取付孔が形成されている。
【0003】
天井用部品は部品本体とケースとを有している。この天井用部品は具体的には音響部品である。また、部品本体は具体的にはマイクロフォンである。ケースは樹脂製である。ケースは第1爪と第2爪とを有している。
【0004】
この取付方法では、まず初めに準備工程を行う。準備工程では、天井材及び天井用部品を準備する。次に進入工程を行う。進入工程では、天井材の第1面側からケースを取付孔内に進入させ、第1爪を天井材の第2面側に位置させる。
【0005】
次に第1取付工程を行う。第1取付工程では、第2面側において、第1爪を取付孔の周縁に係止させることにより、天井材にケースを取り付ける。次に、第2取付工程を行う。第2取付工程では、第2面側からケースの第2爪に部品本体を係止させることにより、ケースに部品本体を取り付ける。こうして、天井材に対する天井用部品の取り付けが完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、天井材の第1面を車室に面する状態とするためには、天井材の第2面を車室と反対側、つまり車体に向けた状態で天井材を車体に取り付ける必要がある。しかし、上記従来の取付方法では、天井材に対して天井用部品を取り付けるに当たって、ケースを天井材の第1面側から取付孔に進入させている。このため、第2面を車体に向けた状態では、天井材に対する天井用部品の取り付け作業が不可能、又は、天井材に対する天井用部品の取り付け作業が極めて困難となる。このため、この取付方法では、天井材に対する天井用部品の取り付け作業の効率を高くできない。一方、天井材に対する天井用部品の取り付け作業を優先すれば、天井用部品の取り付けが完了した天井材について、第2面を車体に向ける作業が必要となるため、作業の工数が増加する。これらのことから、この取付方法では、車両の製造効率を高くできず、車両の製造を低コスト化することが難しい。
【0008】
また、この取付方法では、第1爪を取付孔の周縁に係止させることにより、ケースを天井材に取り付けている。ところで、天井材には、比較的剛性の低い樹脂が採用される場合があり得る。このため、このような剛性の低い天井材では、天井材が撓むため、取付孔の周縁に第1爪を好適に係止させることができない。これにより、この取付方法では、天井材に対する天井用部品の取り付け強度を十分に確保し難く、天井用部品が天井材から脱落するおそれがある。
【0009】
そこで、剛性の低い天井材の天井材を採用した場合には、第2面側において、取付孔の周縁となる個所に天井材よりも剛性の高い部材を設け、この部材を介して取付孔の周縁に第1爪を係止させることにより、ケースに対する天井用部品の取り付け強度を確保することが考えられる。また、天井材にケースをねじ止めすることによって、天井材に対する天井用部品の取り付け強度を確保することも考えられる。しかし、これらの作業を行なえば、その分、天井用部品を天井材に取り付けるに当たっての工数が増加し、取り付け作業の効率が低下する。この点においても、車両の製造を低コスト化することが難しい。
【0010】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、車両の製造コストの低廉化を実現しつつ、天井材からの天井用部品の脱落を好適に防止可能な天井用部品の取付方法及び天井用部品の取付構造を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の天井用部品の取付方法は、車体に固定されて車室の天井を構成する天井材に対し、天井用部品の取り付けを行う天井用部品の取付方法であって、
前記天井材は、前記車室に面する第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面とを有する板状をなし、
前記天井材には、前記第1面から前記第2面まで貫通する取付孔が形成され、
前記天井用部品は、部品本体と、
前記部品本体を固定するケースと、
弾性変形可能な弾性体からなり、前記ケースに固定されて前記車室に面しつつ第1面に当接する第1当接部とを有し、
前記ケースには、前記第2面に当接する第2当接部が形成され、
前記天井材と前記天井用部品とを準備する準備工程と、
前記第1当接部を弾性変形させつつ前記第2面側から前記取付孔内に進入させるとともに、前記第1当接部を前記第1面側まで通過させる進入工程と、
前記第1当接部を前記第1面に当接させるとともに、前記第2当接部を前記第2面に当接させることにより、前記第1当接部と前記第2当接部とで前記天井材を挟持させて前記天井材に前記天井用部品を取り付ける取付工程とを備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明の取付方法では、準備工程で準備される天井用部品が第1当接部を有している。この第1当接部は、弾性変形可能な弾性体からなり、ケースに固定されている。そして、この取付方法では、進入工程において、第1当接部を弾性変形させることにより、第1当接部を天井材の第2面側から取付孔内に進入させて、取付孔内を第1面側まで通過させる。こうして、この取付方法では、天井材に対するケース、ひいては天井用部材の取り付けを第2面側から行いつつも、第1当接部を天井材の第1面側、つまり車室側に位置させることができる。このように、この取付方法では、天井用部品を天井材に取り付けるに当たって、ケースを第1面側から取付孔に進入させる必要がない。
【0013】
これにより、第1面を車室に面する状態とするため、天井材の第2面を車体に向けた状態としていても、この取付方法では、天井材に対して天井用部材を好適に取り付けることができる。こうして、この取付方法によれば、天井材に対する天井用部品の取り付け作業の効率を高くすることができるため、結果として、車両の製造効率を高くすることができる。
【0014】
また、この取付方法では、取付工程において、第1当接部を第1面に当接させるとともに、第2当接部を第2面に当接させる。そして、これらの第1当接部と第2当接部とで天井材を挟持することによって、天井材に天井用部品を取り付ける。
【0015】
これにより、この取付方法では、たとえ天井材の剛性が低く、天井材が撓みやすい場合であっても、第1当接部と第2当接部とが天井材を挟持することで、天井材に対する天井用部品の取り付け強度を好適に確保できる。このように、この取付方法では、天井材に対する天井用部品の取り付け強度を確保するに当たって、天井材に剛性の高い部材を別途に設けたり、天井材にケースをねじ止めしたりする必要もない。
【0016】
したがって、本発明の天井用部品の取付方法によれば、車両の製造コストの低廉化を実現しつつ、天井材からの天井用部品の脱落を好適に防止できる。
【0017】
本発明の取付方法は、第2面側において、部品本体に通電ケーブルを接続する接続工程を備えていることが好ましい。上記のように、この取付方法では、天井材に対する天井用部材の取り付けを第2面側から行うことができる。このため、天井材に対する天井用部材の取り付けを第1面側から行いつつ、部品本体に対する通電ケーブルの接続を第2面側から行う場合に比べて、この取付作業では、接続工程を好適に行うことができる。この結果、この取付方法では、天井材に対する天井用部材の取り付け作業の効率を十分に高くすることができる。
【0018】
本発明の天井用部品の取付構造は、車体に固定されて車室の天井を構成する天井材と、前記天井材に取り付けられる天井用部品とを備えた天井用部品の取付構造であって、
前記天井材は、前記車室に面する第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面とを有する板状をなし、
前記天井材には、前記第1面から前記第2面まで貫通する取付孔が形成され、
前記天井用部品は、部品本体と、
前記部品本体を固定するケースと、
弾性変形可能な弾性体からなり、前記ケースに固定されて前記車室に面しつつ前記第1面に当接する第1当接部とを有し、
前記ケースには、前記第2面に当接する第2当接部が形成され、
前記天井用部品は、前記第1当接部を弾性変形させつつ前記第2面側から前記取付孔内を前記第1面側まで通過させ、かつ、前記第1面に前記第1当接部を当接させて前記第1当接部と前記第2当接部とで前記天井材を挟持することにより、前記天井材に取り付けられることを特徴とする。
【0019】
本発明の天井用部品の取付構造(以下、単に取付構造という。)によれば、本発明の取付方法を実現できる。
【0020】
したがって、本発明の天井用部品の取付構造によれば、車両の製造コストの低廉化を実現しつつ、天井材からの天井用部品の脱落を好適に防止できる。
【0021】
また、本発明の取付構造において、部品本体には、第2面側において通電ケーブルが接続されていることが好ましい。この場合には、天井材に対する天井用部材の取り付け作業の効率を十分に高くすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の天井用部品の取付方法によれば、車両の製造コストの低廉化を実現しつつ、天井材からの天井用部品の脱落を好適に防止できる。また、本発明の天井用部品の取付構造によれば、車両の製造コストの低廉化を実現しつつ、天井材からの天井用部品の脱落を好適に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、車体、天井材及び天井用部材等を示す断面図である。
【
図2】
図2は、ケース及び第1当接部を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施例の取付方法に係り、準備工程で準備された天井材及び天井用部材を示す要部拡大断面図である。
【
図4】
図4は、実施例の取付方法に係り、進入工程を示す要部拡大断面図である。
【
図5】
図5は、実施例の取付方法に係り、取付工程を示す要部拡大断面図である。
【
図6】
図6は、実施例の取付方法に係り、接続工程を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1に示す車両1は、車体3と、天井材5と、マイクロフォン装置7とを有している。車両1は、具体的には乗用自動車である。そして、この車両1では、実施例の取付構造9によって、天井材5にマイクロフォン装置7が取り付けられている。マイクロフォン装置7は、本発明における「天井用部品」の一例である。
【0026】
本実施例では、
図1に示す実線矢印によって、車体3及びマイクロフォン装置7の上下方向及び前後方向を規定している。また、
図2では、
図1に対応して、車体3及びマイクロフォン装置7の上下方向及び前後方向を規定している他、車体3及びマイクロフォン装置7の幅方向である左右方向を規定している。そして、
図3以降では、
図1及び
図2に対応して車体3及びマイクロフォン装置7の上下方向、前後方向及び左右方向を規定している。これらの上下方向、前後方向及び左右方向は互いに直交する関係にある。
【0027】
図1に示すように、車体3は、前後方向及び左右方向に板状に延びるルーフパネル31を有している他、通電ケーブル33と、バッテリ(図示略)と、制御装置(図示略)とを有している。ルーフパネル31は、金属の板材によって形成されている。通電ケーブル33は、バッテリ及び制御装置に通電可能に接続されている。また、車体3には、車室CRが形成されている。なお、図示を省略するものの、車体3には、車両1の走行に必要な動力装置等が設けられている。
【0028】
天井材5は樹脂製であり、前後方向及び左右方向に延びる板状をなしている。天井材5は、車体3に固定されており、ルーフパネル31の下方に配置されている。これにより、天井材5は車室CRの天井を構成している。また、天井材5とルーフパネル31との間には、取付空間11が形成されている。取付空間11には、上記の通電ケーブル33が配置されている他、マイクロフォン装置7が配置されている。
【0029】
ここで、この車両1では、天井材5が比較的剛性の低い樹脂によって形成されている。このため、天井材5は、車室CR側又は取付空間11側から荷重が付加されることにより、撓みが生じ易くなっている。なお、天井材5の材質は適宜設計可能であり、撓みの生じ難い高い剛性を有する樹脂によって天井材5を形成しても良い。
【0030】
天井材5は、第1面51と、第2面53とを有している。第1面51は、車室CRに面しており、天井材5の表面を構成している。第2面53は、第1面51の反対側に位置しており、ルーフパネル31及び取付空間11に面している。第2面53は、天井材5の裏面を構成している。
【0031】
また、天井材5には、取付孔55が形成されている。取付孔55は、略矩形状に形成されており、天井材5を第1面51から第2面53まで貫通している。こうして、取付孔55は、車室CRと取付空間11とを連通している。取付孔55の内径の長さは、第1長さL1に設定されている。
【0032】
また、天井材5では、取付孔55の周囲の板厚が第2長さL2となっている。そして、この天井材5では、取付孔55から遠ざかるにつれて、板厚が第2長さL2よりも長くなっている。ここで、第2長さL2は、第1長さL1よりも短い関係にある。なお、天井材5について、板厚が第2長さL2で一定とされていても良い。
【0033】
マイクロフォン装置7は、マイクロフォン本体71と、ケース73と、ベゼル75とを有している。マイクロフォン本体71は、本発明における「部品本体」の一例である。また、ベゼル75は、本発明における「第1当接部」の一例である。
【0034】
詳細な図示を省略するものの、マイクロフォン本体71は、筐体と、筐体の内部に設けられたダイヤフラム及び制御基板等とを有している他、コネクタ部71aを有している。コネクタ部71aには、通電ケーブル33が接続されている。マイクロフォン本体71は、通電ケーブル33を通じてバッテリから給電が行われるとともに、制御装置によって作動制御が行われることにより、主に車室CR内で生じた音声を電気信号に変換可能となっている。なお、
図1等では、説明を容易にするため、マイクロフォン本体71を模式的に図示している。
【0035】
図2に示すケース73は、ABS樹脂製であり、比較的高い剛性が確保されている。
ケース73は、基部73aと、第1立壁73bと、第2立壁73cと、支持壁73dと、前方側当接片73eと、後方側当接片73fとを有している。前方側当接片73e及び後方側当接片73fは、本発明における「第2当接部」の一例である。なお、
図2では、説明を容易にするため、マイクロフォン本体71の図示を省略している。
【0036】
基部73aは、ケース73の下端に位置している。基部73aは、前後方向及び左右方向に延びる略矩形状をなしている。
図1に示すように、基部73aの上部、すなわち、基部73aにおける取付空間11側には、マイクロフォン本体71が固定されている。また、
図2に示すように、基部73aには、マイクロフォン本体71に音声を伝達するための複数の伝達孔730が形成されている。各伝達孔730は、基部73aを上下方向に貫通している。なお、各伝達孔730の個数や形状は適宜設計可能である。
【0037】
図2に示すように、第1立壁73bは、ケース73の前部に位置している。一方、第2立壁73cは、ケース73の後部に位置している。これらの第1立壁73b及び第2立壁73cは、それぞれ基部73aと一体をなしており、ケース73から上方に向かって直線状に延びている。
【0038】
支持壁73dは、ケース73において、第1立壁73bと第2立壁73cとの間に配置されている。支持壁73dについても、基部73aと一体をなしており、ケース73から上方に向かって直線状に延びている。支持壁73dは、基部73aに固定されたマイクロフォン本体71を支持可能となっている。
【0039】
前方側当接片73eは、第1立壁73bに一体に形成されており、第1立壁73bから前方に向かって矩形の板状に延びている。後方側当接片73fは、第2立壁73cに一体に形成されており、第2立壁73cから後方に向かって矩形の板状に延びている。ここで、前方側当接片73eは、ベゼル75よりも前方に長く延びており、後方側当接片73fは、ベゼル75よりも後方に長く延びている。
【0040】
また、これらの前方側当接片73e及び後方側当接片73fにおける板厚は、マイクロフォン装置7の重量等に応じて設計されている。なお、前方側当接片73e及び後方側当接片73fの形状は矩形の板状に限らず、適宜設計可能である。また、例えば、後方側当接片73fの形成を省略し、前方側当接片73eがケース73の周方向に環状に延びる構成であっても良い。
【0041】
ベゼル75は、弾性体としての合成ゴムによって形成されており、弾性変形可能となっている。また、合成ゴム製であることから、ベゼル75は、ケース73よりも剛性が低くなっている。ベゼル75は、矩形の環状をなしており、ケース73の下部に固定されている。これにより、ベゼル75は、基部73aの外側から基部73aを周方向に覆っている。
【0042】
ここで、このベゼル75を形成するに当たっては、予め形成されたケース73を準備する。そして、ベゼル75を形成する成形型(図示略)内に、ケース73を収容しつつ、
ケース73の下部、すなわち、基部73aの周囲となる個所に対して、ベゼル75を構成する合成ゴムを射出成型している。これにより、ベゼル75は、ケース73に一体に形成されて、ケース73に固定されている。なお、ケース73とベゼル75とを別々に形成し、基部73aの周囲にベゼルを接着することによって、ベゼル75をケース73に固定しても良い。また、ベゼル75は、弾性変形可能であれば、合成ゴム以外の弾性体によって形成されても良い。
【0043】
また、
図2及び
図3等に示すように、ベゼル75の外径の長さは、第3長さL3となっている。この第3長さL3は、取付孔55の内径の長さである第1長さL1よりも長くなっている。つまり、ベゼル75は、取付孔55よりも大きい矩形の環状をなしている。また、
図3に示すように、ベゼル75と前方側当接片73eとにおける上下方向の間隔と、ベゼル75と後方側当接片73fとにおける上下方向の間隔とは、いずれも第2長さL2となっている。つまり、前方側当接片73e及び後方側当接片73fとベゼル75との上下方向の間隔は、天井材5における取付孔55の周囲の板厚と等しくなっている。
【0044】
取付構造9は、上記の天井材5と、マイクロフォン装置7と、通電ケーブル33とによって構成されている。そして、この取付構造9では、以下で説明する実施例の取付方法によって、天井材5に対するマイクロフォン装置7の取り付け作業が行われる。
【0045】
この取付方法では、まず初めに準備工程を行う。
図3に示すように、準備工程では、上記の天井材5と、マイクロフォン装置7とを準備する。ここで、準備工程で準備される天井材5は、車体3に固定される前の状態である。また、天井材5には、取付孔55が既に形成されている。そして、準備工程では、天井材5について、第1面51が下方に面し、第2面53が上方に面する状態とする。こうして、準備工程が完了する。なお、準備工程で準備されたマイクロフォン装置7には、ケース73にマイクロフォン本体71及びベゼル75が固定された状態にある。
【0046】
次に、進入工程を行う。進入工程を行うに当たっては、マイクロフォン装置7を天井材5の上方に位置させて、ケース73及びベゼル75と、天井材5の第2面53とを上下方向で対向させる。そして、この状態で、
図3の白色矢印で示すように、マイクロフォン装置7を下方に移動させて、天井材5の取付孔55にケース73の基部73a及びベゼル75を進入させる。
【0047】
ここで、ベゼル75の外径の長さは第2長さL2であり、取付孔55の内径の長さである第1長さL1よりも長い関係にある。しかし、ベゼル75は合成ゴム製であり、弾性変形可能である。このため、
図4に示すように、取付孔55にケース73の基部73a及びベゼル75を進入させるに当たり、ベゼル75は、取付孔55の内壁に当接しつつ、上方に向かって折れ曲がるように弾性変形する。これにより、ベゼル75の外径の長さが取付孔55の内径よりも短くなることで、
図4の白色矢印で示すように、ケース73の基部73a及びベゼル75は、第1面51側に向かって取付孔55内を下方に移動することができる。そして、基部73a及びベゼル75が取付孔55内を第1面51側まで通過することにより、進入工程が完了する。
【0048】
また、このように、基部73a及びベゼル75が取付孔55内を第1面51側まで通過することにより、ベゼル75は取付孔55の内壁と当接しなくなる。このため、ベゼル75は、取付孔55の内壁と当接する前の状態、つまり、外径が第2長さL2となる元の状態に復元する。
【0049】
次に、取付工程を行う。取付工程では、
図5に示すように、取付孔55内を第1面51側まで通過したベゼル75を第1面51に当接させる。この際、ベゼル75の外径は第2長さL2となっているため、ベゼル75が第1面51に当接することにより、取付孔55はベゼル75によって下方から覆われることになる。
【0050】
また、取付工程では、第2面53に対して、前方側当接片73e及び後方側当接片73fをそれぞれ当接させる。ここで、このマイクロフォン装置7では、前方側当接片73e及び後方側当接片73fとベゼル75との上下方向の間隔が第2長さL2となっており、天井材5における取付孔55の周囲の板厚と等しくなっている。このため、このマイクロフォン装置7では、基部73a及びベゼル75が取付孔55内を第1面51側まで通過し、ベゼル75が第1面51に当接すれば、同時に、前方側当接片73e及び後方側当接片73fが第2面53に当接することになる。
【0051】
このように、ベゼル75が第1面51に当接し、前方側当接片73e及び後方側当接片73fが第2面53に当接することにより、このマイクロフォン装置7では、ベゼル75と、前方側当接片73e及び後方側当接片73fとで天井材5を上下方向に挟持する。これにより、天井材5にケース73、ひいてはマイクロフォン装置7が取り付けられて、取付工程が完了する。
【0052】
次に、接続工程を行う。接続工程では、
図6に示すように、マイクロフォン本体71のコネクタ部71aに通電ケーブル33を接続する。これにより、マイクロフォン本体71と通電ケーブル33とが通電可能に接続される。こうして、天井材5に対するマイクロフォン装置7の取り付け作業が完了する。
【0053】
また、接続工程が行われると同時に、マイクロフォン装置7が取り付けられた天井材5を車体3に固定する組付工程が行われる。この際、
図1に示すように、天井材5は、第2面53を車体3の上方、すなわち、ルーフパネル31に向けた状態で車体3に固定される。こうして、天井材5が車体3に固定され、天井材5が車室CRの天井を構成するとともに、マイクロフォン装置7が取付空間11内に配置されて、車室CRの天井に臨む状態となる。なお、接続工程と組付工程とを別々に行っても良い。
【0054】
このように、この取付方法では、進入工程において、ベゼル75を弾性変形させることにより、ケース73の基部73a及びベゼル75を天井材5の第2面53側から取付孔55内に進入させて、取付孔55内を第1面51側まで通過させる。こうして、この取付方法では、天井材5に対するケース73、ひいてはマイクロフォン装置7の取り付けを第2面53側から行いつつも、ベゼル75を天井材5の第1面51側、つまり車室CR側に位置させることが可能となっている。このように、この取付方法では、マイクロフォン装置7を天井材5に取り付けるに当たって、ケース73を第1面51側から取付孔55に進入させる必要がない。
【0055】
これにより、この取付方法によれば、天井材5の第2面53を上方に面した状態のままで、天井材5に対するマイクロフォン装置7の取り付け作業から、マイクロフォン本体71に対する通電ケーブル33の接続作業、さらには、車体3に対する天井材5の固定作業までを一連で行うことができる。こうして、この取付方法によれば、天井材5に対するマイクロフォン装置7の取り付け作業の効率を高くすることができるため、結果として、車両1の製造効率を高くできる。
【0056】
また、この取付方法では、取付工程において、ベゼル75を第1面51に当接させるとともに、前方側当接片73e及び後方側当接片73fを第2面53に当接させる。ここで、ベゼル75は、取付孔55内を第1面51側まで通過し、第1面51側に至ることにより、弾性変形した状態から元の状態に復元して第1面51に当接する。また、マイクロフォン装置7において、前方側当接片73e及び後方側当接片73fとベゼル75との上下方向の間隔は、天井材5における取付孔55の周囲の板厚と等しくなっている。このため、基部73a及びベゼル75を天井材5の第2面53側から取付孔55内に進入させて、ベゼル75が第1面51に当接すれば、前方側当接片73e及び後方側当接片73fは、それぞれ第2面53に当接する。
【0057】
このように、この取付方法では、第2面53側から取付孔55内に基部73a及びベゼル75を進入させれば、別途に作業を行うことなく、ベゼル75を第1面51に当接させることができるとともに、前方側当接片73e及び後方側当接片73fをそれぞれ第2面53に当接させることができる。そして、これらのベゼル75と、前方側当接片73e及び後方側当接片73fとで天井材5を上下方向に挟持することによって、天井材5にケース73、ひいては、マイクロフォン装置7が取り付けられる。
【0058】
ここで、天井材5は、剛性の低い樹脂によって形成されており、撓みが生じ易くなっている。この点、この取付方法では、たとえ天井材5の剛性が低く、天井材5が撓みやすい場合であっても、ベゼル75と、前方側当接片73e及び後方側当接片73fとが天井材5を挟持することで、天井材5に対するマイクロフォン装置7の取り付け強度が好適に確保されている。このように、この取付方法では、天井材5に対するマイクロフォン装置7の取り付け強度を確保するに当たって、天井材5の第2面53に剛性の高い部材を別途に設けたり、天井材5にケース73をねじ止めしたりする必要がない。
【0059】
したがって、実施例の取付方法及び取付構造9によれば、車両1の製造コストの低廉化を実現しつつ、天井材5からのマイクロフォン装置7の脱落を好適に防止できる。
【0060】
特に、この取付方法では、第2面53側において、接続工程、すなわち、マイクロフォン本体71のコネクタ部71aに対する通電ケーブル33の接続作業が行われる。この点、上記のように、この取付方法では、天井材5に対するマイクロフォン装置7の取り付け作業を第2面53側から行うため、接続工程についても好適に行うことが可能となっている。
【0061】
また、この取付方法では、ベゼル75が第1面51に当接することによって、取付孔55がベゼル75によって覆われることになる。これにより、取付孔55が車室CR側から見えなくなるため、この取付方法では、車室CRの美観も高くすることができる。
【0062】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0063】
例えば、実施例の取付方法では、取付工程の後に接続工程を行っているが、これに限らず、接続工程は、進入工程や取付工程よりも先に行われていても良い。
【0064】
また、取付工程において、ベゼル75と、前方側当接片73e及び後方側当接片73fとで天井材5を上下方向に挟持することによって、天井材5にケース73を取り付けた後、ケース73に対してマイクロフォン本体71を固定しても良い。また、コネクタ部71aに通電ケーブル33が接続された状態で、マイクロフォン本体71をケース73に固定しても良い。
【0065】
さらに、マイクロフォン装置7のケース73では、第1立壁73b及び第2立壁73cに対して、前方側当接片73e及び後方側当接片73fがそれぞれ一体に形成されている。しかし、これに限らず、第1立壁73b及び第2立壁73cに対して、前方側当接片73e及び後方側当接片73fをそれぞれ上下方向に移動可能に設けることにより、天井材5の板厚に応じて、第1立壁73b及び第2立壁73cをそれぞれ上下方向に移動させることで、前方側当接片73e及び後方側当接片73fを第2面53に当接させても良い。
【0066】
また、ベゼル75は、基部73aを周方向に囲う矩形の環状をなしているが、これに限らず、ベゼル75は、基部73aを周方向に覆うことなく、基部73aの外周側に向かって板状に延びる形状等であっても良い。
【0067】
さらに、マイクロフォン装置7に換えて、本発明における「天井用部材」として、ランプやスピーカ等の機能部品を採用しても良い。また、本発明における「天井用部材」として、装飾パネル等の加飾部品を採用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、乗用自動車や産業車両等の車両に利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
3…車体
5…天井材
7…マイクロフォン装置(天井用部品)
9…取付構造
33…通電ケーブル
51…第1面
53…第2面
55…取付孔
71…マイクロフォン本体(部品本体)
73…ケース
73e…前方側当接片(第2当接部)
73f…後方側当接片(第2当接部)
75…ベゼル(第1当接部)
CR…車室