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特開2022-107879注意喚起溝、路面切削機械及び路面切削方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107879
(43)【公開日】2022-07-25
(54)【発明の名称】注意喚起溝、路面切削機械及び路面切削方法
(51)【国際特許分類】
   E01F 9/529 20160101AFI20220715BHJP
   E01F 9/512 20160101ALI20220715BHJP
   E01C 23/12 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
E01F9/529
E01F9/512
E01C23/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002538
(22)【出願日】2021-01-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年土木学会全国大会第75回年次学術講演会で発表する論文「車輌運動シミュレーションによる注意喚起用指向性ランブルストリップスの検討」を令和2年3月31日に土木学会に提出した。 第40回交通工学研究発表会で発表する論文「指向性を有するランブルストリップスの車輌振動及び体感分析」を令和2年5月8日に交通工学研究会に提出した。 論文「指向性を有するランブルストリップスの車輌振動及び体感分析」を令和2年9月7日~9月8日にオンライン形式で開催された第40回交通工学研究発表会で公開した。 論文「車輌運動シミュレーションによる注意喚起用指向性ランブルストリップスの検討」を令和2年9月9日~9月11日にオンライン形式で開催された令和2年土木学会全国大会第75回年次学術講演会で公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】504238806
【氏名又は名称】国立大学法人北見工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】507194017
【氏名又は名称】株式会社高速道路総合技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】505398941
【氏名又は名称】東日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505398963
【氏名又は名称】西日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000181354
【氏名又は名称】鹿島道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富山 和也
(72)【発明者】
【氏名】シン ジャン
(72)【発明者】
【氏名】平田 恭介
(72)【発明者】
【氏名】原尾 彰
(72)【発明者】
【氏名】岡部 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文子
(72)【発明者】
【氏名】野田 哲也
【テーマコード(参考)】
2D053
2D064
【Fターム(参考)】
2D053AA03
2D053AB03
2D053AC01
2D053AC02
2D053AD01
2D053BA01
2D053BA09
2D053FA01
2D064AA01
2D064AA02
2D064EA14
2D064JA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】滑らかなスロープ面を切削構築して、逆走車の運転手の注意を喚起することが出来て、且つ、車両や搭乗者への衝撃の影響が小さい注意喚起溝、路面切削機械及び路面切削方法を提供する。
【解決手段】注意喚起溝(M1)は、円弧状部分(M1A)とスロープ状部分(M1B)とを有しており、円弧状部分(M1A)は車両の進むべき方向(X:進行方向:順方向)の手前側端部に位置して所定の切削深さ(D1)に形成され、円弧状部分(M1A)に連続して(切削されていない)道路面(SF)に到達する様に上昇する傾斜面によりスロープ状部分(M1B)が構成されており、前記傾斜面は車両の進むべき方向(X)の微細距離(δL:例えば10mm)毎に垂直方向に微細距離(δV:例えば1mm)だけ上昇する微細な階段状部分が多数連続して構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧状部分とスロープ状部分とを有しており、円弧状部分は車両の進むべき方向の手前側端部に位置して所定の切削深さに形成され、スロープ状部分は円弧状部分に連続して道路面に到達する様に上昇する傾斜面により構成されており、前記傾斜面は車両の進むべき方向の微細距離毎に垂直方向に微細距離だけ上昇する微細な階段状部分が多数連続して構成されていることを特徴とする注意喚起溝。
【請求項2】
第1及び第2の傾斜面から構成されており、
第1の傾斜面は、車両の進むべき方向の手前側端部に位置しており、所定の切削深さの最深部まで降下する傾斜を有し、
第2の傾斜面は、最深部から道路面に到達する様に上昇する傾斜面により構成され、
第1の傾斜面の道路面に対する傾斜角度は第2の傾斜面の道路面に対する傾斜角度よりも大きく、第1の傾斜面の傾斜角度は第2の傾斜面の傾斜角度の余角であることを特徴とする注意喚起溝。
【請求項3】
道路面を移動するための走行装置と、道路面を切削する切削装置と、走行距離を測定する距離センサと、距離センサの測定結果が入力される制御装置を含む路面切削機械において、
切削装置を垂直方向に移動する油圧シリンダと、油圧シリンダに圧油を供給或いは排出する圧油配管系統と、圧油配管系統に介装された電磁弁と、油圧シリンダのピストンに接続されたロッドの変位量を計測するセンサを有しており、
制御装置は、ロッドの変位量を計測するセンサの計測結果に基づいて切削装置の上下方向位置を決定する機能と、
距離センサの計測結果に基づいて圧油配管系統の電磁弁を制御して油圧シリンダへの圧油供給量を制御し、以て、切削装置の上下方向位置を調整する機能を有することを特徴とする路面切削機械。
【請求項4】
円弧状部分とスロープ状部分とを有し、円弧状部分は車両の進むべき方向の手前側端部に位置して所定の切削深さに形成され、円弧状部分に連続して道路面に到達する様に上昇する傾斜面によりスロープ状部分が構成されている注意喚起溝を切削する路面切削方法において、
道路が延在する方向に路面切削機械を走行させつつ注意喚起溝を切削し、
路面切削機械の切削装置を道路面からが所定の切削深さまで下降させて注意喚起溝の手前側端部の円弧状部分を切削する工程と、
円弧状部分に連続して道路面に到達する様に上昇する傾斜面により構成されるスロープ状部分を切削する工程を有し、
スロープ状部分を切削する工程では、道路の延在する方向の微細距離毎に切削装置を垂直方向に微細距離だけ上昇して微細な階段状部分を切削するサイクルを車両の進むべき方向の予め定めた長さだけ多数連続して繰り返すことを特徴とする路面切削方法。
【請求項5】
第1及び第2の傾斜面から構成されており、第1の傾斜面は車両の進むべき方向の手前側端部に位置しており、所定の切削深さの最深部まで降下する傾斜を有し、第2の傾斜面は最深部から道路面に到達する様に上昇する傾斜面により構成され、第1の傾斜面の道路面に対する傾斜角度は第2の傾斜面の道路面に対する傾斜角度よりも大きく、第1の傾斜面の傾斜角度は第2の傾斜面の傾斜角度の余角である注意喚起溝を切削する路面切削方法において、
道路の幅方向に路面切削機械を走行させて注意喚起溝を切削し、
路面切削機械の切削装置は概略円筒形状であり、円筒形状の切削装置の回転軸を道路面に対して傾斜させた状態で下降することにより注意喚起溝を切削し、切削装置の回転軸の道路面に対する傾斜角度は、第2の傾斜面の道路面に対する傾斜角度に等しいことを特徴とする路面切削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定間隔を隔てて路面に複数形成されて、道路における自動車が進むべき方向(進行方向)に対して自動車が逆方向に走行した場合(逆走した場合)に、当該自動車の運転手にその旨を報知する注意喚起溝と、その製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
道路における自動車が進むべき方向(進行方向)に対して逆方向に自動車を走行させる行為(所謂「逆走」)は、当該逆走車両だけではなく、その他の自動車及び交通規則を遵守している運転手も巻き込んだ重大な事故につながる危険性が非常に高く、近年、大きな社会問題となっている。
その様な逆走の対策としては、「誤進入し難くする」ため、或いは「仮に誤進入した場合には直ちに運転手に気づかせる」ため、標識や路面標示を工夫する対策、障害物を設置する対策、或いは通信技術(IT)を活用した対策が試みられている。係る対策の一環として、路面形状を工夫することにより逆走している自動車(逆走車)の運転手に注意を喚起する技術が試みられている。
【0003】
逆走車の運転手に注意を喚起して逆走を防止する従来技術として、例えば、道路舗装面の進行方向に一定形状の凸部を形成し、車両が逆走した場合には、車両が当該凸部に乗り上げた場合に逆走車の運転手に対して明確な走行異音と振動を感知せしめ、以て、逆走車の運転手の注意を喚起する様な路面(注意喚起路面)を構築する技術が存在する(特許文献1参照)。
係る従来技術(特許文献1)は、路面に対し凸型の注意喚起構造物を構築するものであり、当該構造物に車両が乗上げた際に運転手が感じる衝撃が大きく、運転手の注意を喚起する効果がある。
しかし、車両や搭乗者、搭載物への衝撃の影響が大きく、また、除雪作業等で用いられる機械装置が凸型の注意喚起構造物を通過する際に当該構造物に引っ掛かり、機械装置や作業者が大きなダメージを受けると共に、機械装置の破損を招く恐れがある。また、凸型の注意喚起構造物が除雪機械に削られることもある。
【0004】
その他の従来技術として、小型路面切削機の走行車輪に距離センサを設け、切削機器の高さインジケータに上下移動量を感知するセンサを設け、それぞれのセンサからのデータに基づいて、予め入力された移動ピッチに対する切削装置の上下動するタイミングと、あらかじめ設定入力された切削深さを確保する切削歯先の適正下がり量を、油圧アクチュエータの油圧制御信号として出力して切削装置をコントロールする路面切削機械及び切削方法が存在する(特許文献2参照)。
しかし、係る従来技術(特許文献2)では、走行距離に応じてシリンダ移動量(切削機構の上昇量)を細かくミリメートル単位で制御することは意図しておらず、滑らかなスロープ面を切削構築することについては開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5873727号
【特許文献2】特許第6552279号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、滑らかなスロープ面を切削構築して、逆走車の運転手の注意を喚起することが出来て、且つ、車両や搭乗者への衝撃の影響が小さい注意喚起溝、路面切削機械及び路面切削方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の注意喚起溝(M1)は、円弧状部分(M1A)とスロープ状部分(M1B)とを有しており、円弧状部分(M1A)は車両の進むべき方向(X:進行方向:順方向)の手前側端部に位置して所定の切削深さ(D1)に形成され、スロープ状部分(M1B)は円弧状部分(M1A)に連続して(切削されていない)道路面(SF)に到達する様に上昇する傾斜面により構成されており、前記傾斜面は車両の進むべき方向(X)の微細距離(δL:例えば10mm)毎に垂直方向に微細距離(δV:例えば1mm)だけ上昇する微細な階段状部分が多数連続して構成されていることを特徴としている。
ここで、円弧状部分(M1A)の最深部の道路面(SF)からの垂直方向距離が50mm以下であることが好ましい。円弧状部分(M1A)の最深部の道路面(SF)からの垂直方向距離が50mmよりも大きいと、道路面の陥没と同様に、たとえ車両の進むべき方向(X:進行方向:順方向)に走行していても、注意喚起溝(M1)を通過する自動車に与える衝撃が大き過ぎて、悪影響を及ぼす可能性が有ることによる。
【0008】
また本発明の注意喚起溝(M2)は、第1及び第2の傾斜面(M2A、M2B)から構成されており、
第1の傾斜面(M2A)は、車両の進むべき方向(X:進行方向:順方向)の手前側端部に位置しており、所定の切削深さ(D2)の最深部まで降下する傾斜を有し、
第2の傾斜面(M2B)は、最深部から(切削されていない)道路面(SF)に到達する様に上昇する傾斜面により構成され、
第1の傾斜面(M2A)の道路面(SF)に対する傾斜角度(ξ)は第2の傾斜面(M2B)の道路面(SF)に対する傾斜角度(θ)よりも大きく、第1の傾斜面(M2A)の傾斜角度(ξ)は第2の傾斜面(M2B)の傾斜角度(θ)の余角(ξ+θ=90°)であることを特徴としている。
【0009】
また本発明の路面切削機械(100)は、道路面(SF)を移動するための走行装置(案内輪2及び駆動輪1)と、道路面(SF)を切削する切削装置(3)と、(走行装置による)走行距離を測定する距離センサ(4)と、距離センサ(4)の測定結果が入力される制御装置(10)を含む路面切削機械(100)において、
(走行装置を構成する案内輪2及び車体6を上下動し以て)切削装置(3)を垂直方向に移動する油圧シリンダ(8)と、油圧シリンダ(8)に圧油を供給或いは排出する圧油配管系統(11)と、圧油配管系統(11)に介装された電磁弁(12:高速応答バルブ)と、油圧シリンダ(8)のピストンに接続されたロッド(8A)の変位量を計測するセンサ(13:例えば、リニアポテンションセンサ)を有しており、
制御装置(10)は、ロッド(8A)の変位量を計測するセンサ(13)の計測結果に基づいて切削装置(3)の上下方向位置を決定する機能と、
距離センサ(4)の計測結果に基づいて圧油配管系統(11)の電磁弁(12)を制御して油圧シリンダ(8)への圧油供給量を制御し、以て、切削装置(3)の上下方向位置を調整する機能を有することを特徴としている。
【0010】
本発明の路面切削方法は、円弧状部分(M1A)とスロープ状部分(M1B)とを有し、円弧状部分(M1A)は車両の進むべき方向(X:進行方向:順方向)の手前側端部に位置して所定の切削深さ(D1:50mm以下)に形成され、円弧状部分(M1A)に連続して(切削されていない)道路面(SF)に到達する様に上昇する傾斜面によりスロープ状部分(M1B)が構成されている注意喚起溝(M1)を切削する路面切削方法において、
道路が延在する方向に路面切削機械(100)を走行させつつ注意喚起溝(M1)を切削し、
路面切削機械(100)の切削装置(3)を道路面(SF)から所定の切削深さ(D1:50mm以下)まで下降させて注意喚起溝(M1)の手前側端部の円弧状部分(M1A)を切削する工程と、
円弧状部分(M1A)に連続して(切削されていない)道路面(SF)に到達する様に上昇する傾斜面により構成されるスロープ状部分(M1B)を切削する工程を有し、
スロープ状部分(M1B)を切削する工程では、道路(SF)の延在する方向(順走方向X或いは逆走方向Y)の微細距離(δL:例えば10mm)毎に切削装置(3)を垂直方向に微細距離(δV:例えば1mm)だけ上昇して微細な階段状部分を切削するサイクルを車両の進むべき方向(X)の予め定めた長さ(注意喚起溝M1の車両の進むべき方向長さ:例えば1m)だけ多数連続して繰り返すことを特徴としている。
本発明の路面切削方法において、切削装置(3)の幅寸法が道路の幅寸法に比較して小さい場合には、注意喚起溝(M1)の起点を揃え、必要なラップ量(注意喚起溝M1を道路幅方向に隣接して再度切削する場合における道路幅方向の重なり量)を考慮して、複数回道路幅方向に移動して、複数回に亘って注意喚起溝(M1)を切削するのが好ましい。
【0011】
或いは本発明の路面切削方法は、第1及び第2の傾斜面(M2A、M2B)から構成されており、第1の傾斜面(M2A)は車両の進むべき方向(X:進行方向:順方向)の手前側端部に位置しており、所定の切削深さ(D2)の最深部まで降下する傾斜を有し、第2の傾斜面(M2B)は最深部から(切削されていない)道路面(SF)に到達する様に上昇する傾斜面により構成され、第1の傾斜面(M2A)の道路面(SF)に対する傾斜角度(ξ)は第2の傾斜面(M2B)の道路面(SF)に対する傾斜角度(θ)よりも大きく、第1の傾斜面(M2A)の傾斜角度(ξ)は第2の傾斜面(M2B)の傾斜角度(θ)の余角(ξ+θ=90°)である注意喚起溝(M2)を切削する路面切削方法において、
道路の幅方向に路面切削機械(100)を走行させて注意喚起溝(M2)を切削し、
路面切削機械(100)の切削装置(3)は概略円筒形状であり、円筒形状の切削装置(3)の回転軸を道路面(SF)に対して傾斜させた状態で下降することにより注意喚起溝(M2)を切削し、切削装置(3)の回転軸の道路面(SF)に対する傾斜角度は、第2の傾斜面(M2B)の道路面(SF)に対する傾斜角度(θ)に等しいことを特徴としている。
ここで、路面切削機械(100)の切削装置(3)の長さが、注意喚起溝(M2)の端部から道路端部までの長さよりも長い場合には、円筒形状の切削装置(3)の回転軸を道路面(SF)に対して傾斜させた状態で下降する工程を、同一の注意喚起溝(M2)について複数回繰り返すことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
円弧状部分(M1A)とスロープ状部分(M1B)を含む本発明の注意喚起溝(M1)によれば、車両の進むべき方向(X:進行方向:順方向)の手前側端部の円弧状部分(M1A)に連続して(切削されていない)道路面(SF)に到達するスロープ状部分(M1A)を有しているため、進行方向に走行する自動車の車輪は、走行の慣性により円弧状部分(M1A)に嵌り込むこと無く、円弧状部分(M1A)を飛び越えて、スロープ状部分(M1B)における車両の進むべき方向(進行方向)前方の領域に着地する。スロープ状部分(M1B)の車両の進むべき方向前方の領域における道路面(SF)に対する深さ寸法は、円弧状部分(M1A)に比較して遥かに短い(浅い)ので、スロープ状部分(M1B)に着地した際の車輪に対する衝撃は比較的小さく、運転手が体感する衝撃も比較的小さい。そして、注意喚起溝(M1)を通過する車両及び当該車輌に装着された機器が受ける衝撃も小さく、損傷する可能性も低い。
一方、車両の進むべき方向(X:進行方向:順方向)とは逆方向(逆走方向Y)に走行している自動車(逆走している自動車:逆走車)の場合には、車輪が注意喚起溝(M1)のスロープ状部分(M1B)を走行して、最下方に達した直後に注意喚起溝(M1)の円弧状の部分(M1A)に衝突する。その衝突の際に逆走する自動車の運転手が体感する衝撃は、正規の進行方向に進行している場合に比較して遥かに大きい。
また、衝突の衝撃力の垂直方向分力により、自動車は上方に跳び上がり、道路面(SF)より上方に浮き上がる。そのため、逆走する自動車が注意喚起溝(M1)を乗り越える際の段差は、注意喚起溝の深さ(D1)に道路面(SF)上方まで跳び上がった距離(J1)を加算した距離(D1+J1)となる。前記衝撃に加えて、注意喚起溝の深さ(D1)に道路面(SF)上方まで跳び上がった距離(J1)を加算した距離(D1+J1)を乗り越えることによる衝撃が逆走する自動車に付加されるため、逆走する自動車の運転手は非常に大きな衝撃を体感し、その体感と道路脇に設置される看板や注意喚起溝に塗布される進入禁止マーク等と併せることにより進行方向に対して「逆走」していることを確実に認識できる。
【0013】
また、第1及び第2の傾斜面(M2A、M2B)から構成される本発明の注意喚起溝(M2)によれば、走行するべき方向(進行方向)に走行する自動車の車輪は、第1の傾斜面(M2A)及び溝の最深部を飛び越えて、第2の傾斜面(M2B)における走行するべき方向前方の領域に着地する。第2の傾斜面(M2B)における走行するべき方向前方の領域の深さ寸法は、最深部の深さ寸法(D2)に比較して遥かに短い(浅い)ので、運転手が体感する衝撃も比較的小さく、注意喚起溝(M2)を通過する車両及び当該車輌に装着された機器が受ける衝撃も小さい。そのため、損傷する可能性も低い。
一方、車両の進むべき方向とは逆方向に走行している自動車(逆走車)の場合には、車輪は第2の傾斜面(M2B)を走行して、最深部に到達すると、第1の傾斜面(M2A)の道路面(SF)に対する傾斜角度(ξ)は比較的大きいため、第2の傾斜面(M2B)を走行した車輪は第1の傾斜面(M2A)に衝突する。衝突の際に運転手が体感する衝撃は、車両の進むべき方向に進行している場合に比較して遥かに大きい。また、衝突の衝撃力の垂直方向分力により、自動車は上方に跳び上がるので、自動車が注意喚起溝(M2)を乗り越える際の段差は、最深部の深さ(D2)に道路面(SF)上方まで跳び上がった距離を加算した距離となる。最深部の深さ(D2)に道路面上方まで跳び上がった距離を加算した段差を乗り越えることによる衝撃が逆走する自動車に付加されるため、当該逆走する自動車の運転手は非常に大きな衝撃を体感する。
【0014】
ここで、正規の進行方向に走行する際に車両や運転手等の受ける衝撃を小さくするために、スロープ状部分(M1B)は平滑であることが望ましい。
本発明の路面切削機械(100)或いは路面切削方法によれば、切削装置(3)を垂直方向に移動する油圧シリンダ(8)と、油圧シリンダ(8)に圧油を供給或いは排出する圧油配管系統(11)を有し、前記圧油配管系統(11)には電磁弁(12:高速応答バルブ)が介装されており、油圧シリンダ(8)のピストンに接続されたロッド(8A)の変位量を計測するセンサ(13:例えば、リニアポテンションセンサ)を有しており、制御装置(10)は、ロッド(8A)の変位量を計測するセンサ(13)の計測結果に基づいて切削装置(3)の上下方向位置を決定する機能と、距離センサ(4)の計測結果に基づいて圧油配管系統(11)の電磁弁(12)を制御して油圧シリンダ(8)への圧油供給量を制御し、以て、切削装置(3)の上下方向位置を調整する機能を有しているので、油圧シリンダ(8)の伸長或いは収縮量すなわち切削装置(3)の上下方向位置が高精度(例えば、ミリメートル単位)で制御され、切削装置(3)の切削器具の刃先位置も高精度で制御される。
例えば、(注意喚起溝M1の)スロープ状部分(M1B)或いは傾斜面を切削する際に、道路の延在する方向における微細距離(δL:例えば10mm)毎に切削装置(3)を垂直方向に微細距離(δV:例えば1mm)だけ上昇して微細な階段状部分を切削することが出来る。係る微細な階段状部分を切削するサイクルを車両の進むべき方向の予め定めた長さ(注意喚起溝Mの車両の進むべき方向長さ:例えば1m)だけ多数連続して繰り返すことにより、平滑なスロープ状部分(M1B)或いは傾斜面を切削することが出来る。
個々の溝全体の大きさから、微小変位の制御を行った結果として、スロープ状部分(M1B)或いは傾斜面は、事実上、平滑面と取り扱って差し支えはない。
【0015】
これにより、路面切削機械(100)の走行距離に対応するべき切削装置(3)の切削器具の刃先位置が正確に特定され、切削装置(3)で正確に路面を切削することが出来るので、スロープ状部分(M1B)或いは傾斜面も平滑となり、スロープ状部分(M1B)における凹凸が少なくなる。
そして、係る平滑なスロープ部分(M1B)であれば、正規の進行方向を走行する際に、車輪が円弧状の部分(M1A)を飛び越えてスロープ部分(M1B)に着地した際の衝撃は極めて小さくなり、車両や運転手等の受ける衝撃も小さく、車両に装着した機器が損傷する恐れも少ない。
【0016】
ここで、円弧状部分(M1A)及びスロープ状部分(M1B)を有する注意喚起溝(M1)を切削する際には、路面切削機械(100)の走行方向は道路の延在方向となるが、第1及び第2の傾斜面(M2A、M2B)を有する注意喚起溝(M2)の切削は、路面切削機械(100)を道路の幅方向に走行させつつ実行される。
そのため、路面切削機械(100)を道路の延在方向に走行させることが出来ない場合であっても、路面切削機械(100)を道路の幅方向に走行させることが出来れば、第1及び第2の傾斜面(M2A、M2B)を有する注意喚起溝(M2)を路面に切削することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の注意喚起溝の第1実施形態の説明断面図である。
図2図1の注意喚起溝の平面図である。
図3図1の符号Aで示す部分の拡大断面図である。
図4】注意喚起溝の第1実施形態の作用効果を示す説明図である。
図5】本発明の注意喚起溝の第2実施形態の説明断面図である。
図6図5の注意喚起溝の平面図である。
図7】路面切削機械の実施形態を示す説明図である。
図8】路面切削機械の案内輪を垂直方向に移動する機構の拡大説明図である。
図9図8で示す機構の平面図である。
図10図8の油圧シリンダに圧油を供給する油圧回路を示す図である。
図11図1図4で示す注意喚起溝を路面に切削する工程を示すフローチャートである。
図12図5図6で示す注意喚起溝を路面に切削する1工程を示す説明図である。
図13図5図6で示す注意喚起溝を路面に切削する1工程の説明図であって、図12に続く工程を示す説明図である。
図14図5図6で示す注意喚起溝を路面に切削する工程図である。
図15図5図6で示す注意喚起溝を路面に切削する工程であって、図14に続く工程を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
最初に図1図4を参照して、本発明の注意喚起溝の第1実施形態について説明する。
図1図2において、車両の進むべき方向(矢印X:順方向、正規の進行方向)は左から右に向かう方向である。車両の進むべき方向Xに対する逆方向は矢印Yで示されており、図1図2における逆方向Yは右から左に向かう方向である。図2において、道路面の車幅が符号B1で示される。
図1で示す様に、第1実施形態に係る注意喚起溝M1は、円弧状部分M1Aとスロープ状部分M1Bとを有している。
【0019】
図1図2において、円弧状部分M1Aは車両の進むべき順方向Xの手前側(図1図2では左側)端部に位置しており、所定の切削深さD1に形成されている。円弧状部分M1Aにおける順方向X側の端部は切削深さD1であり、円弧状部分M1Aの最深部である。ここで、円弧状部分M1Aの切削深さD1(円弧状部分M1Aの最深部の道路面SFからの垂直方向距離)は50mm以下が望ましい設定になされている。切削深さD1が50mmよりも大きいと、車両の進むべき方向(X:順方向)に走行している場合でも、注意喚起溝M1を通過する自動車に与える衝撃が大き過ぎて、道路面の陥没と同様となり、当該自動車及びその運転手に対して悪影響を及ぼす可能性が有る。
スロープ状部分M1Bは、円弧状部分M1Aに連続して順方向X側に形成されている。スロープ状部分M1Bは(切削されていない)道路面SFに到達する様に上昇する傾斜面として形成されている。
図1において、注意喚起溝M1の長さ(1スパンの長さ)が符号L1、円弧状部分M1Aの長さが符号L11、スロープ状部分M1Bの長さが符号L12、道路方向に隣接する注意喚起溝M1との間隔が符号Iで表示されている。
ここで、路面切削機械100(図7)による注意喚起溝M1の切削方向C1は、車両の進行方向Xと同一である。なお、円弧状部分M1Aとスロープ状部分M1Bの境界は、図2において破線BD1で示されている。
【0020】
図3を参照して、スロープ状部分M1Bにおける傾斜面を説明する。図3において、スロープ状部分M1Bにおける傾斜面では、車両の進むべき方向(矢印X:順方向)の微細距離δL(例えば10mm)毎に、垂直方向に微細距離δV(例えば1mm)だけ上昇する微細な階段状部分が多数連続して、平滑なスロープ状部分M1Bを構成している。当該微細な階段状部分は所定長さ(例えば1m)だけ多数連続し、以てスロープ状部分M1Bを構成している。第1実施形態におけるスロープ部分M1Bのテーパ(勾配)は、δV/δLで表現することが出来る。
図3を参照して説明するに際して、車両の進むべき方向(X:順方向)の微細距離δL=10mm、垂直方向の微細距離δV=1mmを例示したが、微細距離δL、δVは施工仕様に基づき選択される。ここで、微細距離δL、δVがミリメートル単位で詳細に設定できることが、本発明の実施形態における特徴の一つである。
図1図2において、注意喚起溝M1は自動車の走行方向に連続して2箇所に形成されているが、図1図2において、注意喚起溝M1以外に、さらに多くの注意喚起溝M1を連続して形成することが出来る。また、注意喚起溝M1における道路幅方向(図1の紙面に垂直な方向:図2の上下方向)の大きさ、形成される注意喚起溝Mの数は、注意喚起溝Mを形成するべき道路の各種仕様や施工条件により、適宜決定される。
【0021】
図4を参照して、図1図3で示した第1実施形態に係る注意喚起溝M1の作用効果を説明する。
自動車が進行するべき方向Xに走行する自動車の車輪Wは、注意喚起溝M1の開始地点P1に達した状態(車輪W1)から、走行の慣性によって、円弧状部分M1Aに嵌り込むこと無く、円弧状部分M1Aを飛び越えて、スロープ状部分M1Bにおける正規の進行方向X前方の領域(地点P2)に着地する(車輪W2)。その後、自動車は注意喚起溝M1のスロープ部分M1Bを上昇し、道路面SFの地点P3に達し、さらに次の注意喚起溝M1の開始点P4に向かう。
ここで、スロープ状部分M1Bの進行方向前方の領域(地点P2)における道路面SFに対する深さ寸法は、円弧状部分M1A(の最深部D1の深さ寸法D1)に比較して遥かに短く、且つ、スロープ状部分M1Bは平滑なスロープである。そのため、車輪Wが地点P2に着地した際の衝撃は極めて小さくなり、車両や運転手等が体感する衝撃も比較的小さい。そして、注意喚起溝M1を通過する車両及び当該車輌に装着された機器が受ける衝撃も小さく、損傷する可能性も低い。
【0022】
一方、正規の進行方向とは逆方向Yに逆走している自動車の場合には、車輪Wは、注意喚起溝M1のスロープ状部分M1Bを走行して、スロープ状部分M1Bの最下方(地点P5)に達した直後に(車輪W3の状態の直後に)、注意喚起溝M1の円弧状の部分M1Aに衝突する。その衝突の際に逆走する自動車の運転手が体感する衝撃は、正規の進行方向Xに進行している場合に比較して遥かに大きい。また、車輪Wが円弧状部分M1Aに衝突した際の衝撃力における垂直方向分力により、車輪W(自動車)は上方に跳び上がり、道路面SFより上方に浮き上がる。浮き上がった車輪が符号W4で示されており、車輪W4が道路面SFよりも浮き上がった垂直距離が符号J1で示されている。
そのため、逆走する自動車が注意喚起溝M1を乗り越える際の段差は、注意喚起溝M1の深さD1に、車輪W4が道路面SF上方まで跳び上がった距離J1を加算した距離(D1+J1)となる。車輪Wが円弧状部分M1Aに衝突した際の衝撃に加えて、注意喚起溝M1の深さD1に道路面SF上方まで跳び上がった距離J1を加算した距離(D1+J1)だけ上昇して着地する衝撃(距離「D1+J1」を乗り越えることによる衝撃)が、逆走する自動車に付加されるため、逆走する自動車の運転手は非常に大きな衝撃を体感し、その体感と道路脇に設置される看板や注意喚起溝に塗布される進入禁止マーク等とを併せることにより、進行方向に対して「逆走」していることを確実に認識できる。そして逆走を継続した場合、自動車の運転手は上述した非常に大きな衝撃を連続して体感することになる。
【0023】
次に、図5図6を参照して、本発明の注意喚起溝の第2実施形態を説明する。
図5図6において、車両の進むべき方向(矢印X:順方向、正規の進行方向)は左から右に向かう方向であり、進むべき方向の逆方向(矢印Y)は右から左に向かう方向である。道路面の車幅は図6において符号B2で示されている。
図5図6で示す第2実施形態に係る注意喚起溝M2は、第1の傾斜面M2A及び第2の傾斜面M2Bから構成されている。
第1の傾斜面M2Aは、車両の進むべき方向Xの手前側(図5図6では左側)端部に位置しており、所定の切削深さD2の最深部まで降下する傾斜を有している。
第2の傾斜面M2Bは、第1の傾斜面M2Aの最深部(深さD2の位置)に連続して順方向X側(図5図6では右側)に形成され、第2の傾斜面M2Bは道路面SFに到達する様に上昇する傾斜面として形成される。
第2の傾斜面M2Bは、図12図15で後述するように、回転切削装置3の回転軸を道路面SFに対して傾斜させた状態で道路面を切削して形成される。しかし、図1図3に示す注意喚起溝M1のスロープ状部分M1Bと同様に、車両の進むべき方向Xの微細距離δL(例えば10mm)毎に垂直方向に微細距離δV(例えば1mm)だけ上昇する微細な階段状部分が多数連続して構成することも可能である。
【0024】
第1の傾斜面M2Aの道路面SFに対する傾斜角度ξは第2の傾斜面M2Bの道路面SFに対する傾斜角度θよりも大きく、第1の傾斜面M2Aの傾斜角度ξは第2の傾斜面M2Bの傾斜角度θの余角(ξ+θ=90°)となる様に設定されている。
図5において、注意喚起溝M2の長さ(1スパンの道路方向の長さ)は符号L2、第1の傾斜面M2Aの長さは符号L21、第2の傾斜面M2Bの長さは符号L22、道路方向に隣接する注意喚起溝M2との間隔は符号Iで表示されている。
路面切削機械100(図7)による注意喚起溝M2の切削方向C2は、図6で示される様に、路面幅方向(矢印C2方向或いはその逆方向)である。なお、第1の傾斜面M2Aと第2の傾斜面M2Bの境界は、図2において破線BD2で示されている。
図5図6において、注意喚起溝M2は自動車の走行方向Xに連続して2箇所形成されているが、さらに多くの注意喚起溝M2を連続して設けることが出来る。また、注意喚起溝M2の道路幅方向の長さ、注意喚起溝M2の数は、注意喚起溝M2を施工するべき道路面の条件、各種施工条件により決定される。
【0025】
図5図6の第2実施形態の注意喚起溝M2は、図1図4の第1実施形態の注意喚起溝M1と同様の作用効果を奏する。すなわち、正規の進行方向Xに走行する自動車の車輪Wは、注意喚起溝M2の開始地点に達しった後、走行の慣性により、第1の傾斜面M2A(の最深部)に嵌り込むこと無く、第1の傾斜面M2Aを飛び越えて、第2の傾斜面M2Bにおける進行方向X前方の領域に着地する。その後、自動車は注意喚起溝M2の第2の傾斜面M2Bを上昇して道路面SFに到達し、次の注意喚起溝M1の開始点に向かう。
ここで、第2の傾斜面M2Bにおける進行方向X前方の着地点の深さ寸法は、第1の傾斜面M2Aの最深部における深さ寸法D2に比較して遥かに短いので、(第2の傾斜面M2Bにおける進行方向X前方に着地した)車輪Wに対する衝撃は比較的小さく、運転手が体感する衝撃も比較的小さい。そして、注意喚起溝M2を通過する車両及び当該車輌に装着された機器が受ける衝撃も小さく、損傷する可能性も低い。
【0026】
一方、正規の進行方向とは逆方向Yに逆走している自動車の場合には、車輪Wが注意喚起溝M2の第2の傾斜面M2Bを走行して、第2の傾斜面M2Bの最下方(深さ寸法D2の地点)に達した直後に、注意喚起溝M2の第1の傾斜面M2Aに衝突する。その衝突の際に逆走していた運転手が体感する衝撃は、正規の進行方向Xを走行している場合に比較して遥かに大きい。また、第1の傾斜面M2Aに衝突した際の衝撃力における垂直方向分力により、自動車は上方に跳び上がり、道路面SFより上方に浮き上がる。
そのため、逆走する自動車が注意喚起溝M2を乗り越える際の段差は、注意喚起溝M2の深さD2に、跳び上がった最高位置と道路面SFとの距離を加算した距離と等しくなる。第1の傾斜面M2Aに衝突した衝撃に加えて、注意喚起溝M2の深さD2に、跳び上がった最高位置と道路面SFとの距離を加算した距離の段差を乗り越えた際の衝撃が付加されるので、逆走する自動車の運転手は非常に大きな衝撃を体感することになり、その体感と道路脇に設置される看板や注意喚起溝に塗布される進入禁止マーク等とを併せることにより、進行方向に対して「逆走」していることを確実に認識できる。
その他の構成及び作用効果については、図5図6の注意喚起溝M2は、図1図4の注意喚起溝M1と同様である。
【0027】
次に図7図10を参照して、本発明の路面切削機械の実施形態を説明する。
路面切削機械の概要を示す図7において、全体を符号100で示す実施形態に係る路面切削機械は、車体6の底部に駆動輪1及び案内輪2を有しており、駆動輪1及び案内輪2は、路面切削機械100における道路面SFを移動するための走行装置を構成している。図7において、路面切削機械100の進行方向は矢印Kで示されている。
【0028】
図7では明示されていないが、後輪である案内輪2は路面切削機械100の車幅方向(図7の紙面に垂直な方向)の両端に設けられており、案内輪2の内側(車幅方向において、両端の案内輪2、2の間の領域)には溝切削用の回転切削装置3(切削装置:カッタドラム)が設けられている。回転切削装置3は、概略円筒形状に構成されている(図12参照)。
【0029】
回転切削装置3はその表面に多数の切削ビットが設けられている従来公知の機器であり、図示しない駆動装置により回転駆動される。
図7では明示されていないが、回転切削装置3の回転軸は、車体6に固定されている。従って、回転切削装置3の位置は車体6に対しては常に一定であり、回転切削装置3は車体6に対して相対変位はしない。ただし、記載の煩雑を防止するため、本明細書において、「回転切削装置3を上昇」、「回転切削装置3を下降」等の表現をする場合がある。
案内輪2は案内輪回転軸2Aによりリンク7の先端7Aに回転自在に軸支されており、リンク7の他端7Bは油圧シリンダ機構8のロッド8A先端に軸支されている。
シリンダ機構8はシリンダ8B(シリンダ本体)とロッド8Aを有するが、シリンダ機構及びシリンダ(本体)の双方をシリンダ8と総称する場合がある。
リンク7は、リンク回転軸7Cにより、車体6に固定されたブラケット9に回動可能に軸支されている。油圧シリンダ機構8によりブラケット9及び案内輪2を動かす詳細については、図8及び図9を参照して後述する。
【0030】
油圧シリンダ機構8のロッド8Aが伸長、収縮することにより、リンク7はリンク回転軸7Cを中心に回動し、案内輪2が下降、上昇する。より詳細には、ロッド8Aが伸長すると、リンク7がリンク回転軸7Cに対して反時計方向に回動して案内輪2を下降するので、車体6及び回転切削装置3は相対的に上昇して地面(路面SF)から離隔する。
一方、ロッド8Aが収縮すると、リンク7がリンク回転軸7Cに対して時計方向に回動して案内輪2を上昇するので、車体6及び回転切削装置3は相対的に下降して、地面(路面SF)を切削する。
【0031】
案内輪2の近傍には、路面切削機械100の走行距離を検出する装置であるエンコーダ4(距離センサ)が備えられ、駆動輪1が回転して路面切削機械100が走行すると案内輪2が回転し、案内輪2の回転をエンコーダ4が検出することにより、路面切削機械100の走行距離が正確に計測される。
路面切削機械100の車体6には、制御装置10(コントロールユニット)が搭載されている。
制御装置10は、例えば図1図4で示す注意喚起溝M1を切削する場合には、道路の延在する方向における微細距離δL(例えば10mm)毎に、回転切削装置3を垂直方向に微細距離δV(例えば1mm)だけ上昇して、微細な階段状部分を多数切削して、スロープ状部分M1Bを切削するために必要な制御を実行する機能を有している。
【0032】
次に、図8及び図9を参照して、回転切削装置3を上昇或いは下降する構成について説明する。
図7を参照して上述した様に、油圧シリンダ機構8に圧油を供給、排出することにより、図示しないピストンに接続されたロッド8Aが伸長、収縮する。そして、リンク7を介して案内輪2が上昇し或いは下降すると、(相対的に)回転切削装置3が下降し或いは上昇する。
係る回転切削装置3の上昇或いは下降を制御するため、ロッド8Aの変位(伸縮、身長)を計測する計測装置として、図8図9で示す様に、リニアポテンションセンサ13が設けられている。
図8図9において、リニアポテンションセンサ13は、油圧シリンダ8Bに固定されたシリンダ部分13Aと、ロッド状部分13Bとから構成されている。ロッド状部分13Bの一端は、油圧シリンダ8B内のピストン(図示せず)に固定されて以てロッド8Aに固定されており、ロッド8Aが伸縮するにつれて、リニアポテンションセンサ13のロッド状部分13Bがシリンダ状部分内13Aを摺動する。
ロッド状部分13Bの他端はリンク7に固定されており、ロッド8Aがリンク7に回動可能に固定されている箇所近傍に固定されている。
【0033】
ここで、リニアポテンションセンサ13のロッド状部分13Bがシリンダ状部分13A内に収容された寸法により、リニアポテンションセンサ13の抵抗値Rが変化する。従って、リニアポテンションセンサ13の抵抗値Rを計測すれば、リニアポテンションセンサ13のロッド状部分13Bがシリンダ状部分13A内に収容された寸法が演算され、油圧シリンダ8のロッド8Aの伸縮量及び位置が正確に求まる。
係る原理により、リニアポテンションセンサ13によって、油圧シリンダ8のロッド8Aの伸縮量及び位置が正確に決定されれば、案内輪2の上下方向位置を正確に求めることが出来、車体6の上下方向位置及び回転切削装置3の上下方向位置も正確に求めることが出来る。
上述した様に、案内輪2はリンク7を介して油圧シリンダ8のロッド8Aに連結されている。図8では、走行時の案内輪2の上下方向位置Q1(回転切削装置3が切削していない状態)、注意喚起溝切削時の案内輪2の上下方向位置Q2(回転切削装置3が切削している状態)、及び走行時でも切削時でもない中間の状態の案内輪2の上下方向位置Q3が示されている。案内輪2の上下方向位置Q1、Q2、Q3に対応して、回転切削装置3の上下方向位置も走行位置、切削位置、中間位置において異なる。なお、図8では中間位置Q3の案内輪2(及びリンク7)を実線で、走行位置Q1、切削位置Q2の案内輪2(及びリンク7)は一点鎖線で表示している。
エンコーダ4(距離センサ)は図示しないリンク機構により車体6側に固定されており、且つ、エンコーダ4(距離センサ)は案内輪2の近傍に設けられている。
【0034】
図10を参照して、油圧シリンダ機構8へ圧油を供給し、排出する油圧回路について説明する。
図10において、油圧供給源14(油圧ポンプを含む)から油圧シリンダ8L、8Rに圧油を供給或いは排出する圧油配管系統11L、11Rには、それぞれ電磁弁12L、12R(電磁切換弁)が介装されている。油圧シリンダ8L、8Rは、それぞれ、左右の案内輪2L、2Rを上下させるために設けられている。
電磁弁12L、12Rは高速応答バルブであり、それぞれ3ポート電磁弁を有しており、電磁弁12L、12Rよりも油圧シリンダ8側の領域にはチェックバルブ15、絞り弁16が設けられている。
圧油配管系統11L、11Rに高速応答バルブである電磁弁12L、12Rを介装することにより、油圧シリンダ8L、8Rに供給される圧油量が正確に制御され、その結果、案内輪2L、2Rの上下移動量と、回転切削装置3の上昇量或いは下降量も高精度に制御される。
【0035】
エンコーダ4(距離センサ)による計測結果と、リニアポテンションセンサ13による油圧シリンダ8のロッド8Aの変位量の計測結果は、制御装置10に送信される。制御装置10は入力されたエンコーダ4の計測結果に基づき路面切削機械100の走行距離を演算し、リニアポテンションセンサ13によるロッド8Aの変位量の計測結果に基づき案内輪2の上下方向位置、回転切削装置3の上下方向位置を演算して、決定する。
さらに制御装置10は、演算された路面切削機械100の走行距離に基づいて、圧油配管系統11に介装された電磁弁12(高速応答バルブ)を制御して、油圧シリンダ8への圧油供給量を制御し、油圧シリンダ8のロッド8Aの変位量を制御することにより、回転切削装置3の上下方向位置を調整している。
図7図10で示す路面切削機械100では、リニアポテンションセンサ13と圧油配管系統11の電磁弁12(高速応答バルブ)とを組み合わせることにより、回転切削装置3の上下方向位置を、従来技術では不可能なレベル(例えば1mm単位)まで正確に調節(制御)することが出来るので、図3に示すスロープ状部分M1Bを形成するに際して、車両の進むべき方向の微細距離δL(例えば10mm)毎に、垂直方向に微細距離δV(例えば1mm)だけ上昇する様に、回転切削装置3の上下方向移動を微細に調整することが出来る。
【0036】
次に、図7図10の路面切削機械100を用いて図1図4で示す注意喚起溝M1を切削する態様について、主として図11を参照して説明する。
図11において、路面切削機械100を走行させて注意喚起溝M1を形成するべき予定位置まで移動させる。ステップS1では、路面切削機械100が注意喚起溝M1の円弧状部分M1Aの形成予定位置に達したか否かを判断する。
路面切削機械100を前記注意喚起溝M1の形成予定位置まで走行させる際は、案内輪2の上下方向位置を走行位置とし(図8の位置Q1)、回転切削装置3(の最下面位置)の上下方向位置を道路面SFより所定距離だけ上方に位置させた状態で走行させる。この時、回転切削装置3は道路面SFを切削していない。
【0037】
ステップS1において、路面切削機械100が注意喚起溝M1の円弧状部分M1Aの形成予定位置に達したか否かの判断は、例えば路面切削機械100に搭乗している作業者の判断で行なわれるが、その他の手法(例えば、測位衛星からの情報の受信等)により行うことも出来る。さらに、注意喚起溝M1の円弧状部分M1Aの形成予定位置より手前側に注意喚起溝形成制御のスタート地点を設定し、路面切削機械100がスタート地点から走行した距離に基づき、注意喚起溝M1の円弧状部分M1Aの形成予定位置に達したか否かを判断することも可能である。
ステップS1において、路面切削機械100が注意喚起溝M1の円弧状部分M1Aの形成予定位置に達した場合(ステップS1が「Yes」)ステップS2に進み、路面切削機械100が注意喚起溝M1の円弧状部分M1Aの形成予定位置に達していない場合(ステップS1が「No」)、ステップS3に進む。
【0038】
ステップS2では、路面切削機械100の走行を停止する。そして、ステップS4に進む。
一方、ステップS3では、路面切削機械100の注意喚起溝M1に向けての走行を継続させる。そして、ステップS1に戻る(ステップS1が「No」のループ)。
ステップS4及びステップS5は、注意喚起溝M1の円弧状部分M1Aを切削する工程であり、ステップS4では、路面切削機械100を停止した状態で回転切削装置3を回転駆動すると共に下降させる。ステップS4で回転切削装置3を回転駆動しつつ下降させることにより、注意喚起溝M1の円弧状部分M1Aが切削される。図1図2で示す様に、円弧状部分M1Aの深さ寸法はD1(所定深さ)であり、ステップS4における「切削」は回転切削装置3の切削深さが道路面SF(地表)から図1図2で示す寸法D1(所定深さ)に達するまで実行される。なお、所定深さD1は、上述した様に、50mm以下に設定されている。
【0039】
ステップS5では、回転切削装置3の切削深さが所定深さD1に達したか否かを判断する。当該判断は、リニアポテンションセンサ13によるシリンダ8のロッド8Aの変位量の計測結果に基づき、回転切削装置3の上下方向位置を演算、決定して行われる。
ステップS5において、回転切削装置3の切削深さが所定深さD1に達した場合(ステップS5が「Yes」)は、円弧状部分M1Aの切削が完了したと判断してステップS6に進む。
一方、回転切削装置3の切削深さが所定深さD1に達していない場合はステップS4に戻り、回転切削装置3による円弧状部分M1Aの切削を継続する(ステップS5が「No」のループ)。
【0040】
ステップS6~ステップS11は、円弧状部分M1Aに続くスロープ状部分M1Bを切削する工程であり、路面切削機械100が車両の進むべき方向Xに微細距離δL(例えば10mm、図3参照)だけ前進する毎に、回転切削装置3を垂直方向に微細距離δV(例えば1mm、図3参照)だけ上昇させて、微細な階段状のスロープ状部分M1Bを形成する。
明確には図示されていないが、スロープ状部分M1Bの勾配、形状を決定する微細距離δL(X方向)及びδV(垂直方向)については、ステップS1以前の段階で制御装置10に設定する。
【0041】
ステップS6では、路面切削機械100を順方向(方向X)に前進させる。
ステップS7では、路面切削機械100がステップS6の開始から微細距離δL(例えば10mm)前進したか否かを判断する。当該判断は、エンコーダ4の計測結果に基づき、路面切削機械100の走行距離を演算することにより行なわれる。
ステップS7の判断の結果、路面切削機械100が微細距離δL前進した場合(ステップS7が「Yes」)ステップS8に進む。路面切削機械100が微細距離δL前進していない場合はステップS6に戻り、路面切削機械100の前進を継続する(ステップS7が「No」のループ)。
【0042】
ステップS8(路面切削機械100が微細距離δL前進した場合)では、回転切削装置3を上昇させる。その際、圧油配管系統11に介装された電磁弁12(高速応答バルブ)を制御し、油圧シリンダ8への圧油供給量を制御し、油圧シリンダ8のロッド8Aの変位量を制御し、以て、回転切削装置3の上下方向位置を調整する。
ステップS9では、回転切削装置3が微細距離δV(例えば1mm)だけ上昇したか否かを判断する。当該判断は、リニアポテンションセンサ13によるシリンダ8のロッド8Aの変位量の計測結果に基づき、回転切削装置3の上下方向位置を演算、決定して行われる。
ステップS9で、回転切削装置3が微細距離δV上昇した場合(ステップS9が「Yes」)はステップS10に進む。一方、回転切削装置3が微細距離δV上昇していない場合はステップS8に戻り、回転切削装置3の上昇を継続する(ステップS9が「No」のループ)。
ステップS10(回転切削装置3が微細距離δV上昇した場合)では、回転切削装置3の上昇を停止する。
【0043】
ステップS6~ステップS10における工程、すなわち、回転切削装置3を微細距離δL前進する毎に微細距離δV上昇させて微細な階段状部分を切削する工程は、路面切削機械100がスロープ状部分M1Bの車両の進むべき方向Xに所定長さ(例えば1m)進むまで、多数回連続して繰り返される。ステップS6~ステップS10における工程を多数回連続して繰り返すことにより、平滑なスロープ状部分M1Bが切削される。
図示の実施形態において、回転切削装置3(の切削深さ)が道路面SFより上方の高さとなった時、スロープ状部分M1Bの車両の進むべき方向長さが必要な所定長さ(例えば1m)となる様に予め設定しているので、路面切削機械100が所定長さを走行すれば、スロープ状部分M1Bの切削が終了する。
【0044】
ステップS11では、回転切削装置3の切削深さが道路面SFより上方の所定高さに到達したか否かを判断する。係る判断は、リニアポテンションセンサ13によるシリンダ8のロッド8Aの変位量の計測結果に基づき、回転切削装置3の上下方向位置を演算、決定することにより行われる。リニアポテンションセンサ13によるシリンダ8のロッド8Aの変位量として、ステップS6の開始時における回転切削装置3の切削深さ(すなわち所定深さD1)からの累積変位量を用い、回転切削装置3の上下方向位置を決定することも出来る。
或いは、エンコーダ4の計測結果に基づき、路面切削機械100の走行距離を演算して、路面切削機械100が所定長さ(例えば1m)を走行したか否かにより、ステップS11の判断を実行することも可能である。
ステップS11において、回転切削装置3の切削深さが道路面SFより上方の所定高さに達した場合(ステップS11が「Yes」)は、スロープ状部分M1Bの切削が完了したと判断して、ステップS12に進む。
一方、回転切削装置3の切削深さが道路面SFより上方の所定高さに達していない場合はステップS6に戻り、スロープ状部分M1Bを切削する工程を継続する(ステップS11が「No」のループ)。
【0045】
ステップS12(回転切削装置3の切削深さが道路面SFより上方の所定高さに達した場合)では、回転切削装置3を路面切削機械100の車体6に対して非切削時位置(図8の走行位置Q1)まで上昇させる。そして、係る状態で、路面切削機械100を走行させる。そしてステップS13に進む。
ステップS13では、注意喚起溝M1の切削作業を終了するか、或いは引き続き注意喚起溝M1の切削作業を継続するかを判断する。例えば、路面切削機械100が一回走行すると切削装置3の幅寸法の注意喚起溝M1が切削される。図示はされていないが、切削装置3の幅寸法が道路の幅寸法に比較して小さい場合には、注意喚起溝M1の起点を揃え、必要なラップ量(注意喚起溝M1を道路幅方向に隣接して再度切削する場合における道路幅方向の重なり量)を考慮して、路面切削機械100を道路幅方向に移動しつつ、複数回に亘って注意喚起溝M1を切削する。この様に道路幅方向に路面切削機械100を移動して注意喚起溝M1を切削する場合には、ステップS13において「No」を選択して、ステップS1以降を繰り返す。
ステップS13の判断は、例えば路面切削機械100に搭乗している作業者が、注意喚起溝M1の施工計画に基づき行う。
ステップS13の判断の結果、注意喚起溝M1の切削作業を終了する場合(ステップS13が「Yes」)、制御を終了する。
注意喚起溝M1の切削作業を継続する場合(ステップS13が「No」)は、ステップS1に戻り、切削した注意喚起溝M1のX方向(順方向)における所定位置において、ステップS1~ステップS11と同様の作業を行う。
【0046】
円弧状部分M1Aとスロープ状部分M1Bを含む第1実施形態に係る注意喚起溝M1によれば、正規の進行方向に走行する自動車の車輪は、走行の慣性により進行方向の手前側端部の円弧状部分M1Aに嵌り込むこと無く、円弧状部分M1Aを飛び越えて、スロープ状部分M1Bにおける正規の進行方向Xについて前方の領域に着地する。スロープ状部分M1Bの進行方向X前方の領域における道路面SFに対する深さ寸法は、円弧状部分M1Aに比較して遥かに短く、且つスロープ状部分M1Bは平滑なスロープであるので、車輪に対する衝撃は比較的小さく、運転手が体感する衝撃も比較的小さい。そして、車両及び当該車輌に装着された機器が受ける衝撃も小さく、損傷する可能性も低い。
一方、正規の進行方向Xとは逆方向Yを逆走している自動車の場合には、車輪が注意喚起溝M1のスロープ状部分M1Bを走行して、最下方に達した直後に注意喚起溝M1の円弧状部分M1Aに衝突する。その衝突の際に運転手が体感する衝撃は、正規の進行方向Xに進行している場合に比較して遥かに大きい。また、衝突の衝撃力の垂直方向分力により、自動車は上方に跳び上がり、道路面SFより上方に浮き上がる。そのため、段差は注意喚起溝の深さD1に道路面SF上方まで跳び上がった距離J1を加算した距離(D1+J1)となる。前記衝撃に加えて、距離(D1+J1)の段差を乗り越えることによる衝撃が、逆走する自動車に付加されるため、逆走する自動車の運転手は非常に大きな衝撃を体感し、その体感により進行方向に対して「逆走」していることを確実に認識できる。逆走を継続した場合、自動車の運転手は上述した非常に大きな衝撃を連続して体感することになり、その体感と道路脇に設置される看板や注意喚起溝に塗布される進入禁止マーク等を併せることにより、逆走の認識はさらに高まる。
【0047】
図示の実施形態に係る路面切削機械100或いは路面切削方法によれば、回転切削装置3を垂直方向に移動する油圧シリンダ8に圧油を供給或いは排出する圧油配管系統11には電磁弁12(高速応答バルブ)が介装されており、油圧シリンダ8のロッド8Aの変位量を計測するリニアポテンションセンサ13を有している。制御装置10は、ロッド8Aの変位量を計測するリニアポテンションセンサ13の計測結果に基づいて切削装置3の上下方向位置を正確に決定し、エンコーダ4(距離センサ)の計測結果に基づいて圧油配管系統11の電磁弁12を制御して油圧シリンダ8への圧油供給量を制御し、以て、切削装置3の上下方向位置を高精度にて調整している。そのため、油圧シリンダ8の伸長或いは収縮量すなわち切削装置3の上下方向位置が高精度(例えば、ミリメートル単位)で制御され、切削装置3の切削器具の刃先位置も高精度で制御される。
例えば、注意喚起溝M1のスロープ状部分M1Bを切削する際に、道路の延在する方向における微細距離δL(例えば10mm)毎に切削装置3を垂直方向に微細距離δV(例えば1mm)だけ上昇して微細な階段状部分を切削することが出来る。係る微細な階段状部分を切削するサイクルを車両の進むべき方向の予め定めた長さ(例えば1m)だけ多数連続して繰り返すことにより、平滑なスロープ状部分M1Bを切削することが出来る。
【0048】
また、図示の実施形態における路面切削機械100或いは路面切削方法により、路面切削機械100の走行距離に対応する切削装置3の切削器具の刃先位置が正確に特定され、正確に路面を切削することが出来るので、スロープ状部分M1Bも平滑となり、微細な凹凸が少なくなる。
そのような平滑なスロープ部分M1Bであれば、正規の進行方向Xを走行する際に、車輪が円弧状の部分M1Aを飛び越えてスロープ部分M1Bに着地した際の衝撃は極めて小さくなり、車両や運転手等の受ける衝撃も小さく、車両に装着した機器が損傷する恐れも少ない。
【0049】
次に図12図15を参照して、図7図10の路面切削機械100を用いて、図5図6で示す注意喚起溝M2を切削する態様を説明する。
上述した様に、注意喚起溝M1を切削する際には、路面切削機械100の走行方向は道路の延在方向となるが、図5図6で示す注意喚起溝M2の切削は、路面切削機械100を道路の幅方向C2(或いはその逆方向)に走行させつつ実行される。
図12に示す状態では、路面切削機械100における概略円筒形状の回転切削装置3は、その回転軸3Sが道路面SFに対して傾斜している。回転切削装置3の回転軸3Sの道路面SFに対する傾斜角度は、注意喚起溝M2の第2の傾斜面M2Bの道路面SFに対する傾斜角度θ(図5参照)に等しく設定されており、回転切削装置3における第1の傾斜面M2A側の端面3Aの道路面SFに対する傾斜角度は、第1の傾斜面M2Aの道路面SFに対する傾斜角度ξ(傾斜角度θの余角であり、ξ+θ=90°:図5参照)に等しく設定されている。
図12において、回転切削装置3の軸方向長さは符号L3で示されており、切削する注意喚起溝M2は、仮想線(一点鎖線)で示されている。
【0050】
そして、図12に示す状態から、回転切削装置3を所定の切削深さD2まで下降させて道路面SFを切削しつつ、路面切削機械100を道路の幅方向(図12の紙面に垂直な方向)に走行することにより、図13で示す様に、図5図6で示す第1の傾斜面M2A及び第2の傾斜面M2Bから構成される注意喚起溝M2が形成される。
形成される注意喚起溝M2における最深部の深さは寸法D2であり、第2の傾斜面M2Bの長さは回転切削装置3の軸方向長さL3に等しい。ここで、最深部の深さD2は50mm以下に設定されている。
図13を参照すれば明らかな様に、第2の傾斜面M2Bの道路面SFに対する傾斜角度θ、注意喚起溝M2における最深部の深さD2、第2の傾斜面M2Bの長さL3(=回転切削装置3の軸方向長さ)には次式で示す関係が成立する。
θ=arcsin(D2/L3)
なお、図12図13では、煩雑さを回避するため、回転切削装置3のみを表示し、路面切削機械100等の表示は省略した。また、図12図13において、回転切削装置3は、上述した様に、道路面SFに対して傾斜角度θ(第2の傾斜面M2Bの道路面SFに対する傾斜角度)だけ傾斜しているが、回転切削装置3を支持する路面切削機械100は道路面SFに対して水平な状態で走行する。
【0051】
図12図13を参照して説明したように、回転切削装置3を道路面SFに対して傾斜させた状態で下降する工程を、同一の注意喚起溝M2について2回(或いは複数回)繰り返す場合について、図14図15を参照して説明する。
図14において、路面切削機械100を幅方向寸法B2の道路の幅方向(矢印F1)に走行させて、回転切削装置3により注意喚起溝M2-1を切削する。
ここで、図示しない路面切削機械100の進行方向が矢印F1方向であり、且つ、路面切削機械100のF1方向長さが注意喚起溝M2-1の端部M2Eから道路端部REまでの長さL4よりも長い場合には、同一の注意喚起溝M2を切削する際に、第1段階として図14に示す注意喚起溝M2-1を切削した後、第2段階で図15に示す様に注意喚起溝M2-2を切削する必要がある。
図15に示す第2段階の注意喚起溝M2-2を切削する際は、路面切削機械100(回転切削装置3)を第1段階とは反対の矢印F2の方向に走行させて、切削する。符号M2Wは注意喚起溝M2-1と注意喚起溝M2-2の重複部分を示す。
ただし、注意喚起溝M2を繰り返し切削する回数は、3回或いはそれ以上の回数とすることも出来る。
なお、図14図15では、それぞれ道路の進行方向に注意喚起溝M2(M2-1及びM2-2)を2列切削する例を示している。
【0052】
第1及び第2の傾斜面M2A、M2Bから構成される本発明の第2実施形態の注意喚起溝M2においても、正規の進行方向に走行する自動車の車輪は、第1の傾斜面M2A及び溝の最深部を飛び越えて、第2の傾斜面M2Bにおける正規の進行方向X前方の領域に着地する。第2の傾斜面M2Bにおける正規の進行方向X前方の領域の道路面SFにおける深さ寸法は、最深部の深さ寸法D2に比較して遥かに短い(浅い)ので、運転手が体感する衝撃も比較的小さい。そして車両及び当該車輌に装着された機器が受ける衝撃も小さく、損傷する可能性も低い。
一方、正規の進行方向Xとは逆方向Yに逆走している自動車の場合には、車輪は第2の傾斜面M2Bを走行して、最深部に到達すると、第1の傾斜面M2Aの道路面SFに対する傾斜角度ξは比較的大きいため、当該車輪は第1の傾斜面M2Aに衝突する。その衝突の際に運転手が体感する衝撃は、正規の進行方向Xに進行している場合に比較して遥かに大きい。また、衝突の衝撃力の垂直方向分力により、自動車は上方に跳び上がるので、自動車が注意喚起溝M2を乗り越える際の段差は、最深部の深さD2に道路面SF上方まで跳び上がった距離を加算した距離となる。前記衝撃に加えて、係る段差を乗り越えることによる衝撃が、逆走する自動車に付加されるため、逆走する自動車の運転手は非常に大きな衝撃を体感し、その体感と道路脇に設置される看板や注意喚起溝に塗布される進入禁止マーク等とを併せることにより、進行方向に対して「逆走」していることを確実に認識できる。
ここで、第1及び第2の傾斜面M2A、M2Bを有する注意喚起溝M2の切削は、路面切削機械100を道路の幅方向に走行させて実行することが出来る。
【0053】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0054】
1・・・駆動輪
2・・・案内輪
3・・・切削装置(回転切削装置)
4・・・エンコーダ(距離センサ)
6・・・車体
7・・・リンク
8・・・油圧シリンダ
8A・・・ロッド
9・・・ブラケット
10・・・制御装置
11・・・圧油配管系統
12・・・電磁弁(高速応答バルブ)
13・・・リニアポテンションセンサ
100・・・路面切削機械
M1、M2・・・注意喚起溝
M1A・・・円弧状部分
M1B・・・スロープ状部分
M2A・・・第1の傾斜面
M2B・・・第2の傾斜面
SF・・・道路面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15